(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】包装シート
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20241022BHJP
B65D 73/00 20060101ALI20241022BHJP
B65D 75/34 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B65D65/40 A
B65D73/00 Z
B65D75/34
(21)【出願番号】P 2021107482
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】511069932
【氏名又は名称】昭北ラミネート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】石原 沙知
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-091718(JP,A)
【文献】特開2011-110745(JP,A)
【文献】特開2016-128327(JP,A)
【文献】実開昭61-129756(JP,U)
【文献】特開2020-001706(JP,A)
【文献】特開2021-017246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 73/00
B65D 75/34
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の容器体に形成された凹部の開口を閉鎖する蓋材として使用されるPTP用の包装シートであって、
少なくとも片方の金属光沢面が印刷面となるアルミニウム箔で成る基材と、前記基材の片方の面の最外層に設けられて当該片方の面を覆う透明又は半透明な耐熱コート層と、前記基材の反対側の面の最外層に設けられて当該反対側の面を覆う層であって、加熱されることによって前記容器体のフランジ部に溶着する透明又は半透明なヒートシール層と、前記印刷面に形成された第一の情報印刷部とを備え、
前記第一の情報印刷部は、所定のピッチで多数のドットが連続するドットパターンを有し、前記ドットパターンは、同じ面積の潜在情報ドットが連続する潜在情報領域と、同じ面積の背景ドットが連続する背景領域とで構成され、前記背景領域が前記潜在情報領域に重ならないように配置されており、
前記潜在情報ドット及び前記背景ドットは互いに異なる面積に設定され、前記背景ドット及び潜在情報ドットの形状は、直径が0.2~0.6mmの範囲の円形又は一辺が0.2~0.6mmの範囲の正方形に設定され、前記背景ドット及び潜在情報ドットが連続する上記ピッチは、0.3~0.8mmの範囲に設定されており、
前記第一の情報印刷部の表示を見た時に、前記印刷面が前記第一
の情報印刷部の背景となることを特徴とする包装シート。
【請求項2】
第一の情報印刷部は、前記ドットパターンと同じインキで所定の情報を表示するベタパターンを有している請求項1記載の包装シート。
【請求項3】
前記基材の印刷面の外面に、又は前記基材の印刷面の外面と前記第一の情報印刷部の外面とに跨るように形成された第二の情報印刷部とを備える請求項1又は2記載の包装シート。
【請求項4】
物品を収容する包装袋の生地として使用される包装シートであって、
片方の面が印刷面となる透明又は半透明な基材と、前記印刷面に形成された第一の情報印刷部と、前記第一の情報印刷部及びその周辺領域の外面を覆う金属層と、前記第一の情報印刷部が設けられている面の最外層に設けられ、加熱されることによって相手方に溶着するシーラント層とを備え、
前記第一の情報印刷部は、所定のピッチで多数のドットが連続するドットパターンを有し、前記ドットパターンは、同じ面積の潜在情報ドットが連続する潜在情報領域と、同じ面積の背景ドットが連続する背景領域とで構成され、前記背景領域が前記潜在情報領域に重ならないように配置されており、
前記潜在情報ドット及び前記背景ドットは互いに異なる面積に設定され、前記背景ドット及び潜在情報ドットの形状は、直径が0.2~0.6mmの範囲の円形又は一辺が0.2~0.6mmの範囲の正方形に設定され、前記背景ドット及び潜在情報ドットが連続する上記ピッチは、0.3~0.8mmの範囲に設定されており、
前記第一の情報印刷部は、前記基材を通して視認され、前記第一の情報印刷部の表示を見た時に、前記金属層の金属光沢面が前記第一
の情報印刷部の背景となることを特徴とする包装シート。
【請求項5】
第一の情報印刷部は、前記ドットパターンと同じインキで所定の情報を表示するベタパターンを有している請求項4記載の包装シート。
【請求項6】
物品を収容する包装袋の生地として使用される包装シートであって、
片方の面が印刷面となる透明又は半透明な基材と、前記印刷面に形成された第二の情報印刷部
と、前記基材の印刷面の外面に、又は前記基材の印刷面の外面と前記第二の情報印刷部の外面とに跨るように形成され
た第一の情報印刷部と、前記第一の情報印刷部及びその周辺領域の外面を覆う金属層と、前記第一の情報印刷部が設けられている面の最外層に設けられ、加熱されることによって相手方に溶着するシーラント層とを備え、
前記第一の情報印刷部は、所定のピッチで多数のドットが連続するドットパターンを有し、前記ドットパターンは、同じ面積の潜在情報ドットが連続する潜在情報領域と、同じ面積の背景ドットが連続する背景領域とで構成され、前記背景領域が前記潜在情報領域に重ならないように配置されており、
前記潜在情報ドット及び前記背景ドットは互いに異なる面積に設定され、前記背景ドット及び潜在情報ドットの形状は、直径が0.2~0.6mmの範囲の円形又は一辺が0.2~0.6mmの範囲の正方形に設定され、前記背景ドット及び潜在情報ドットが連続する上記ピッチは、0.3~0.8mmの範囲に設定されており、
前記第一の情報印刷部は、前記基材を通して視認され、前記第一の情報印刷部の表示を見た時に、前記金属層の金属光沢面が前記第一の情報印刷部の背景となることを特徴とする包装シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品やその他の物品の包装に使用される包装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医薬品等が偽造されて市場に流通するのを規制するため、医薬品等が真正品か偽造品かを判別できるようにする技術、すなわちPTP包装体に偽造防止機能をもたせる技術が複数提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているように、プラスチックシートから形成した容器体(底材)と、容器体に貼合した、アルミニウム箔から形成した蓋材とを備えたPTP包装体であって、容器体の外表面に複数の凸レンズ状の突部を形成した凸レンズ集合部と、蓋材の容器体側に複数の模様を配した模様部とを備えたPTP包装体があった。このPTP包装体は、外部から模様を立体視することができ、見る角度を変えることによって、三次元モアレ模様の形状、大きさ、位置等が変化して見える。この模様の見え方は簡単には真似ができないので、あらかじめ模様の図柄を決めておくことによって、真正品か偽造品かを判別することができる。
【0004】
また、本願出願人による特許文献2に開示されているように、PTP用の包装シートに、格子柄の模様パターンが形成された模様層を設けておき、表面に格子柄の刻印パターンを備えた熱圧着用金型で相手方の容器体に熱圧着されると、模様パターンと刻印パターンとが重なってモアレ模様が現れる包装シートがあった。モアレ模様は、偽造が困難で、しかも意匠性に優れているので、PTP用の包装シート等の用途に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-91718号公報
【文献】特開2020-1706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のPTP包装体は、容器体に凸レンズ集合部を形成するため、容器体成形用に既存の金型を修正したり、新規に金型を製作したりする必要があるので、手間と費用が掛かる。また、特許文献2の包装シートは、内側の広い領域又は全領域に格子柄の模様パターンを設けるため、その他の表示を行う場合に表示できる情報の量が制限される。
【0007】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、多くの情報を見栄えよく表示することができ、優れた偽造防止効果も得られる包装シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも片方の面が印刷面となる基材と、前記印刷面に形成された第一の情報印刷部とを備え、前記第一の情報印刷部は、所定のピッチで多数のドットが連続するドットパターンを有し、前記ドットパターンは、同じ面積の潜在情報ドットが連続する潜在情報領域と、同じ面積の背景ドットが連続する背景領域とで構成され、前記潜在情報ドットと前記背景ドットとが互いに異なる面積に設定されている包装シートである。
【0009】
前記背景ドット及び潜在情報ドットの形状は、直径が0.2~0.6mmの範囲の円形又は一辺が0.2~0.6mmの範囲の正方形に設定され、前記背景ドット及び潜在情報ドットが連続する上記ピッチは、0.3~0.8mmの範囲で、且つ前記背景ドット及び前記潜在情報ドットが互いに重ならない値に設定されている。第一の情報印刷部は、前記ドットパターンと同じインキで所定の情報を表示するベタパターンを有する構成にすることが好ましい。
【0010】
シート状の容器体に形成された凹部の開口を閉鎖する蓋材として使用されるPTP用の包装シートの場合、前記基材はアルミニウム箔で成り、片方の面の最外層に、当該片方の面を覆う透明又は半透明な耐熱コート層が設けられ、反対側の面の最外層に、当該反対側の面を覆う層であって、加熱されることによって前記容器体のフランジ部に溶着する透明又は半透明なヒートシール層が設けられた構成とする。前記基材の印刷面は金属光沢面であり、前記第一の情報印刷部の表示を見た時、前記金属光沢面が、前記第一の情報印刷部の背景となる。この場合、前記基材の印刷面の外面に、又は前記基材の印刷面の外面と前記第一の情報印刷部の外面とに跨るように形成された第二の情報印刷部とを備える構成にすることができる。
【0011】
また、物品を収容する包装袋の生地として使用される包装シートの場合、前記基材は透明又は半透明な素材で成り、前記第一の情報印刷部及びその周辺領域の外面を覆う金属層を備え、前記第一の情報印刷部が設けられている方の面の最外層に、加熱されることによって相手方に溶着するシーラント層を備えた構成とする。前記第一の情報印刷部は、前記基材を通して視認され、前記基材を通じて前記第一の情報印刷部の表示を見た時、前記金属層の金属光沢面が、前記第一の情報印刷部の背景となる。この場合、前記基材の印刷面に形成された第二の情報印刷部を備え、前記第一の情報印刷部は、前記基材の印刷面の外面に、又は前記基材の印刷面の外面と前記第二の情報印刷部の外面とに跨るように形成されている構成にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の包装シートは、独特なドットパターンを用いて潜在情報を表示するので、表示する情報の量を増やしつつ、優れた偽造防止効果が得られる。また、ドットパターンの背景に金属光沢面を配し、ドットとドットの隙間から金属光沢面を適度に露出させることによって、ドットパターンによる情報表示が独特な色調で良い見栄えになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の包装シートの第一から第三の実施形態及びその変形例[PTP用の包装シート]を蓋材とするPTP包装体を示す平面図(a)、A-A断面図(b)である。
【
図2】第一の実施形態の包装シートを表面側から見た時の外観を示す平面図(a)、積層構造を示す拡大断面図(b)である
【
図3】
図2の中の第一の情報印刷部のドットパターンの構成の一例を示す図である。
【
図4】
図2の中の第一の情報印刷部のドットパターンの構成の他の例を示す図である。
【
図5】本発明の包装シートの第二の実施形態を表面側から見た時の外観を示す平面図(a)、第一の情報印刷部のレイアウトを示す平面図(b)、第二の情報印刷部のレイアウトを示す平面図(c)である
【
図6】第二の実施形態の包装シートの積層構造を示す拡大断面図である
【
図7】本発明の包装シートの第三の実施形態の積層構造を示す拡大断面図(a)、第三の実施形態の包装シートの変形例の積層構造を示す拡大断面図(b)である。
【
図8】本発明の包装シートの第四及び第五の実施形態及びその変形例[包装袋用の包装シート]を生地とする包装袋を示す斜視図(a)、縦断面図(b)である。
【
図9】第四の実施形態の包装シートの積層構造を示す拡大断面図(a)、包装袋に組み立てられた時のシール部の拡大断面図(b)である。
【
図10】第四の実施形態の包装シートの一変形例の積層構造を示す拡大断面図(a)、
他の積層構造を示す拡大断面図(b)である。
【
図11】
包装シートの一形態の積層構造を示す拡大断面図である。
【
図12】
図11の包装シートの一変形例の積層構造を示す拡大断面図(a)、他の変形例の積層構造を示す拡大断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の包装シートの第一の実施形態(PTP用の包装シート10)について、
図1~
図4に基づいて説明する。
図1(a)、(b)は、薬用の錠剤等を包装するPTP包装体12を示している。PTP包装体12は、ほぼ透明な樹脂製の容器体14に形成された凹部14a内に収容物16を入れ、蓋材を容器体14のフランジ部14bに貼り付けて凹部14aの開口が閉鎖されている。包装シート10は、このPTP包装体12の蓋材として使用される。
【0015】
容器体14の材質は、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等が使用され、平坦な樹脂シートを用意し、その内側をエンボス成形して帯状の容器シートに加工した後、容器シートを容器体14の外形に打ち抜くことによって製造される。
【0016】
包装シート10は、
図2(a)、(b)に示すように、アルミニウム箔18を基材とし、アルミニウム箔18の両側に複数の層が積層された帯状の蓋材シートから製作され、蓋材シートを容器体14の外形に打ち抜くことによって製造される。アルミニウム箔18は金属箔なので、面18a,18bの両方が、金属特有の光沢を有している。以下、面18a,18bを金属光沢面18a,18bと称する。
【0017】
アルミニウム箔18の金属光沢面18a(印刷面)には、ドットパターン20とベタパターン22とを有した第一の情報印刷部24が設けられている。ドットパターン20は、所定のピッチで連続する多数のドットによって「SHL」の文字を大きくぼんやりと表示し、ベタパターン22は、通常のベタ印刷で「SHL」の文字を小さく明瞭に表示している。ドットパターン20とベタパターン22は、例えば、塩化ビニル樹脂に着色用の顔料を配合したインキをグラビア塗工方式等により同時に印刷し、これを乾燥させることによって形成される。ドットパターン20の構成については後で詳しく説明する。
【0018】
アルミニウム箔18の金属光沢面18a及び第一の情報印刷部24は、ほぼ透明な耐熱コート層26で覆われて保護されている。耐熱コート層26は、包装シート10を容器体14に熱接着させる際にヒートシールバー等で加熱されるので、耐熱性に優れたエポキシ樹脂、ニトロセルロース、又はアクリル系樹脂を主剤とするコート剤が好適である。
【0019】
アルミニウム箔18の金属光沢面18bは、ほぼ透明なヒートシール層28で覆われている。ヒートシール層28は、包装シート10を容器体14に熱接着するときに、容器体14のフランジ部14bに溶着する層であり、容器体14とアルミニウム箔18を良好に接着できる材料が選択される。例えば、容器体14の材質がポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)の場合、ヒートシール層28の材料はポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)とポリエステル樹脂との混合物が好適である。
【0020】
次に、第一の情報印刷部24のドットパターン20について、
図3に基づいて説明する。ドットパターン20は、所定のピッチd(ドットの中心間距離)で連続する多数のドットによって、「SHL」の潜在文字を表示する。破線で示す「SHL」の輪郭の内側は、潜在情報ドット30aが連続する潜在情報領域30で、潜在情報ドット30aは面積S1の正方形のドットである。また、破線で示す「SHL」の輪郭の外側は、背景ドット32aが連続する背景領域32で、背景ドット32aは面積S2(<S1)の円形のドットである。
【0021】
包装シート10は、耐熱コート層26がほぼ透明なので、容器体14aに貼り付けられてPTP包装体12になった状態で、耐熱コート層26の側から見た時に、第一の情報印刷部24を視認することができる。そして、ドットパターン20を見ると、
図3に示すように、相対的に薄い色の背景(背景領域32)の中に、少し濃い色の「SHL」の文字(潜在情報領域30)がぼんやりと認識される。潜在情報領域30が背景領域32より濃い色に見えるのは、潜在情報ドット30aの面積が背景情報ドット32aよりも大きいからである。一方、ベタパターン22を見ると、少し小さい「SHL」の文字が明瞭に認識される。さらに、ドットパターン20の表示は、潜在情報ドット30a及び背景ドット32aの隙間から露出している金属光沢面18aの影響で、上品で高品質感や安心感を与える独特な色調が得られ、非常に良い見栄えになる。
【0022】
図3に示すドットパターン20は、例えば
図4に示す構成に変更することができる。
図4の例では、潜在情報領域30の潜在情報ドット30aが面積S1の円形のドットで、背景領域32の背景ドット32aは面積S2(>S1)の円形のドットになっている。このドットパターン20を耐熱コート層26の側から見ると、相対的に濃い色の背景(背景領域32)の中に、少し薄い色の「SHL」の文字(潜在情報領域30)がぼんやりと認識される。潜在情報領域30が背景領域32よりも薄い色に見えるのは、潜在情報ドット30aの面積が背景情報ドット32aよりも小さいからである。
【0023】
このように、ドットパターン20は、文字情報等をぼんやりと表示させるのに適しており、その色調や見栄えは、潜在情報ドット30aと背景ドット32aの形状や面積S1.S2、各ドットのピッチdを調節することによって容易に変化させることができる。これは、ドットパターン20による表示が簡単には偽造できないことを意味しており、ドットパターン20のレイアウト又は見栄えをチェックすることによって、偽造かどうかの判別が可能になる。
【0024】
以上説明したように、PTP用の包装シート10は、独特なドットパターン20を用いて潜在情報を表示するので、表示する情報の量を増やしつつ、優れた偽造防止効果が得られる。しかも、ドットパターン20の背景に金属光沢面18aが配され、ドットとドットの隙間から基材の金属光沢面18aが適度に露出し、ドットパターン20による情報表示が独特な色調で良い見栄えになる。
【0025】
様々なドットパターン20を試作して色調や見栄えの評価を行ったところ、背景ドット30a及び潜在情報ドット32aの形状は、直径が0.2~0.6mmの範囲の円形又は一辺が0.2~0.6mmの範囲の正方形とし、背景ドット30a及び潜在情報ドット32aが連続するピッチdは、0.3~0.8mmの範囲で、且つ背景ドット30a及び潜在情報ドット32bが互いに重ならない値に設定すると、ドットパターン20による表示が適度な不明瞭さで視認可能になり、且つ、金属光沢面18aが露出する影響で、非常に上品で高品質感や安心感を与える色調で非常に良い見栄えにできることが分かった。
【0026】
また、PTP用の包装シート10の場合、PTP包装体12に組み立てられた状態で、表面に熱圧着用金型の刻印パターンによる凹凸が発生するので、情報表示の色調が見る角度によって微妙に変化し、より高い偽造防止効果と良い見栄えが得られる。
【0027】
次に、本発明の包装シートの第二の実施形態(PTP用の包装シート34)について、
図5、
図6に基づいて説明する。ここで、上記の包装シート10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
包装シート34は、
図1(a)、(b)に示すように、PTP包装体12の蓋材として使用される。上記の包装シート10との違いは、包装シート10の構成に加えて第二の情報印刷部36が設けられている点である。
【0029】
第二の情報印刷部36は、耐熱コート層26の内面側に、基材であるアルミニウム箔18の金属光沢面18aの外面と第一の情報印刷部24の外面とに跨るように設けられ、通常のベタ印刷で会社名、製品名、バーコード等の情報を明瞭に表示している。第二の情報印刷部36も、第一の情報印刷部24と同様に、塩化ビニル樹脂に着色用の顔料を配合したインキをグラビア塗工方式等により印刷し、これを乾燥させることによって形成される。
【0030】
第一及び第二の情報印刷部24,36のインキの色は、用途や情報表示の内容に応じて自由に選択できる。例えば、PTP用の包装シート34の場合、
図5(a)に示すように、第二の情報印刷部36は、第一の情報印刷部24のドットパターン20とだけ重なるようにレイアウトされているので、第一及び第二の情報印刷部24,36のインキを同じ色にしても、各情報を読み取ることができる。
【0031】
しかし、情報表示のデザイン性をよくしたい時や、第二の情報印刷部36と第一の情報印刷部24のベタパターン22が部分的に重なるようにレイアウトする時は、インキを異なる色にするとよい。この場合、第一の情報印刷部24は、ドットパターン20でぼんやりした情報表示を行うことから、比較的明るい有彩色又は白色のインキを選択し、第二の情報印刷部36は、製品名やバーコード等が明確に表示されるように、暗い色のインキを選択することが好ましい。なお、第一及び第二の情報印刷部24,36は、全く重ならないようにレイアウトすることも可能である。
【0032】
包装シート34によれば、上記の包装シート10と同様の効果を得ることができ、さらに、第二の情報印刷部36を備えているので、表示する情報の量を増やすことができる。
【0033】
次に、本発明の包装シートの第三の実施形態(PTP用の包装シート40)について、
図7(a)に基づいて説明する。ここで、上記の包装シート10,34と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
包装シート40は、
図1(a)、(b)に示すように、PTP包装体12の蓋材として使用される。上記のPTP用の包装体34との違いは、アルミニウム箔18の金属光沢面18aだけでなく金属光沢面18bも印刷面とし、金属光沢面18bにも第一の情報印刷部24h(ドットパターン20、ベタパターン22)が設けられている点である。第一の情報印刷部24hは、金属光沢面18aの第一の情報印刷部24と同様の構成であり、情報の内容は同じでなくてもよい。
【0035】
包装シート40はヒートシール層28がほぼ透明なので、ほぼ透明な容器体14aに貼り付けられてPTP包装体12になった状態で、容器体12の側から見た時に、第一の情報印刷部24h(ドットパターン20、ベタパターン22)による表示を視認することができる。
【0036】
包装シート40によれば、上記の包装シート34と同様の効果を得ることができ、第一の情報印刷部24hを備えているので、表示する情報の量をさらに増やすことができる。また、
図7(b)に示す変形例の包装シート40xのように、アルミニウム箔18及び第一の情報印刷部24hの外面側に、上記と同様の第二の情報印刷部36hを追加し、その外側にヒートシール層28を設ける構成にすれば、表示する情報の量をさらに増やすことも可能である。
【0037】
次に、本発明の包装シートの第四の実施形態(包装袋用の包装シート42)について、
図8~
図10に基づいて説明する。ここで、上記の包装シート10,34,40と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
図8(a)、(b)は、収容物Sを包装する包装袋44を示している。包装袋44は、筒状に重ねた生地の中に収容物Sが入れられ、両端の開口44aが、開口44a付近の生地同士を重ねて熱接着する(シール部44b)ことによって閉鎖されている。包装シート42は、包装袋44の生地として使用される。
【0039】
包装シート42は、
図9(a)に示すように、ほぼ透明な耐熱フィルム46を基材としている。耐熱フィルム46は、熱接着される際にヒートシールバー等で加熱されるので、耐熱性に優れたポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、2軸延伸ポリプロピレン樹脂(OPP樹脂)、セロファン、又はポリアミド(ナイロン)等の樹脂フィルムが好適である。あるいは、半透明の薄い紙フィルム等を使用してもよい。
【0040】
耐熱フィルム46の内面側には、上記と同様の第一の情報印刷部24(ドットパターン20、ベタパターン22)が設けられ、その内面側に、ほぼ透明な仲介層48とアルミニウム箔等で成る金属層50が順に設けられている。仲介層48は、金属層50を樹脂フィルム46の内面側に接着する又は定着させる働きをする接着剤又は定着剤等の層である。
【0041】
さらに、金属層48は、シーラント層52で覆われている。シーラント層52は、相手方のシーラント層52に溶着する層で、ポリエチレン樹脂(PE樹脂)や無延伸ポリプロピレン(CPP樹脂)等が好適で、透明でも不透明でもよい。
【0042】
図8に示す包装シート42は、耐熱フィルム46の表面が外面42aとなり、シーラント層52の表面が内面42bとなる。そして、包装袋44に組み立てた状態で、シール部44bでは、
図9(b)に示すように、2つの包装シート42のシーラント層52同士が相互に溶着して強く接合される。
【0043】
包装シート42は、基材である耐熱フィルム46がほぼ透明なので、包装袋44になった状態で外面42aから見た時、耐熱フィルム46を通して第一の情報印刷部24(ドットパターン20、ベタパターン22)による表示が視認される。そして、金属層50の金属光沢面50aが第一の情報印刷部24の背景になるので、ドットパターン20の潜在情報ドット30a及び背景ドット32aの隙間から金属光沢面50aが適度に露出し、上品で高品質感や安心感を与える独特な色調が得られ、非常に良い見栄えになる。
【0044】
以上説明したように、包装袋用の包装シート42は、上記のPTP用の包装シート10と同様に、表示する情報の量を増やしつつ、優れた偽造防止効果が得られる。また、
図10(a)に示す変形例の包装シート42xのように、基材である耐熱フィルム46の内面側に、上記の第二の情報印刷部36を追加すれば、表示する情報の量をさらに増やすことも可能である。
【0045】
その他、第一の情報印刷部24の背景に金属光沢面を配置する必要がなければ、
図10(b)
に示す包装シート42yのように、包装シート42の構成から金属層50及び接着層48を無くすことができる。この場合、シーラント層52が第一の情報印刷部24の背景になるように、シーラント層52を不透明な素材にするとよい。
【0046】
次に、
包装シートの一形態(包装袋用の包装シート54)について、
図11、
図12に基づいて説明する。ここで、上記の包装シート10,34,40,42と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
包装シート54は、
図8(a)、(b)に示すように、包装袋44の生地として使用される。上記の包装シート42との違いは、耐熱フィルム46で成る基材が、基材本体56の表面に金属層58が積層された基材60に置き換えられている点と、金属層58の外面(金属光沢面58a)を印刷面とし、金属光沢面58aに第一の情報印刷部24が設けられている点と、金属光沢面58a及び第一の情報印刷部24が、ほぼ透明な耐熱コート層26で覆われている点である。
【0048】
基材60を構成する基材本体56は、耐熱フィルム46と同様の樹脂製又は紙製のフィルムで、ここでは透明でも不透明でもよい。金属層58は、アルミニウム箔等の金属箔を貼着して設けてもよいし、蒸着によって設けてもよい。耐熱コート層26は、金属光沢面58aの第一の情報印刷部24を保護するために設けられている。
【0049】
包装シート54は、包装シート42と異なり、包装袋44になった状態で外面54aから見た時、ほぼ透明な耐熱コート層26を通して第一の情報印刷部24(ドットパターン20、ベタパターン22)による表示が視認される。そして、金属光沢面58aが第一の情報印刷部24の背景になるので、ドットパターン20の潜在情報ドット30a及び背景ドット32aの隙間から金属光沢面58aが適度に露出し、上品で高品質感や安心感を与える独特な色調が得られ、非常に良い見栄えになる。
【0050】
包装袋用の包装シート54は、上記の包装シート42と同様に、表示する情報の量を増やしつつ、優れた偽造防止効果が得られる。また、
図12(a)に示す変形例の包装シート54xのように、金属層58及び第一の情報印刷部24の外面側に第二の情報印刷部36を追加すれば、表示する情報の量をさらに増やすことも可能である。
【0051】
その他、第一の情報印刷部24の背景に金属光沢面を配置する必要がなければ、
図12(b)に示す変形例の包装シート54yのように、包装シート54の構成から金属層60を無くすことができる。この場合、基材60(基材本体58)又はシーラント層52が第一の情報印刷部24の背景になるように、どちらかを不透明な素材にするとよい。
【0052】
なお、本発明の包装シートは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第一の情報印刷部や第二の情報印刷部が表示する情報の内容は、文字やバーコードに限定されず、文字、図形、記号、絵柄又はこれらの組み合わせを自由に表示することができる。また、ドットパターンの潜在情報ドット及び背景ドットの形状は、見栄えが良好であれば、円形や正方形以外の形状にしてもよい。
【0053】
上記実施形態の説明の中で、透明性を有する層(又は部材)について、「ほぼ透明」と記載したが、これは「透明」又は「半透明」であることを意味しており、透明度は、包装シートとして使用される状態で、情報印刷部による情報表示を外部から視認できる程度の透明度にする必要がある。個々の層に求められる透明度は、層構造、各層の厚み、情報印刷部のインキの色や明るさ、ドットの大きさやピッチ、その他の条件によって違ってくるので、実際に包装シートを試作し、見栄えの評価を行って決定するするとよい。
【符号の説明】
【0054】
10,34,40,40x PTP用の包装シート
12 PTP包装体
18 アルミニウム箔(基材)
18a,18b 金属光沢面
20 ドットパターン
22 ベタパターン
24,24h 第一の情報印刷部
26 耐熱コート層
28 ヒートシール層
30 潜在情報領域
30a 潜在情報ドット
32 背景領域
32a 背景ドット
36,36h 第二の情報印刷部
42,42x,42y,54,54x,54y 包装袋用の包装シート
42a,54a 外面
42b,54b 内面
44 包装袋
46 耐熱フィルム
48 仲介層
50 金属層
50a 金属光沢面
52 シーラント層
56 基材本体(基材)
58 金属層(基材)
58a 金属光沢面
60 基材