IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゲオデシック イノベーションズ,エス.エル.の特許一覧

特許7575098貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法
<>
  • 特許-貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法 図1
  • 特許-貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法 図2
  • 特許-貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法 図3
  • 特許-貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法 図4
  • 特許-貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法 図5
  • 特許-貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法 図6
  • 特許-貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法 図7
  • 特許-貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法 図8
  • 特許-貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法 図9
  • 特許-貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/467 20230101AFI20241022BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20241022BHJP
   C02F 1/48 20230101ALI20241022BHJP
【FI】
C02F1/467
C02F1/461 101Z
C02F1/48 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021523154
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 IB2019058767
(87)【国際公開番号】W WO2020084388
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】521173937
【氏名又は名称】ゲオデシック イノベーションズ,エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】イバニェス ボテッラ,フアン
(72)【発明者】
【氏名】ボティハ イバニェス,ルイス
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/154442(WO,A1)
【文献】特表2014-511758(JP,A)
【文献】特開平06-086983(JP,A)
【文献】特開2003-285064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0029300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/46-1/50
C02F1/70-1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムであって、該システムは、
少なくとも一つの混合セル(電気穿孔・電解酸化)(1.1)と、
電流および電圧を調整可能な、少なくとも一つのソース(2.2)と、
少なくとも一つの酸化還元電位プローブ(3.4)と、
変圧器/絶縁体(3.2)と、
少なくとも一つのpHプローブ(3.6)と、
少なくとも一つの温度プローブ(3.8)と、
少なくとも一つの導電率プローブ(3.5)と、
少なくとも一つのプローブ用コントローラ(3.1)と、
全ての構成要素と有線あるいは無線で接続されたコントローラ(2.1)と、
前記プローブ用コントローラ(3.1)に隣接して配置される低周波信号発振器(3.3)と、
前記コントローラ(2.1)に隣接して配置される信号受信器(2.3)と、
前記コントローラ(2.1)と接続された通信モデム(2.4)と、
データ用接続手段(ファイバ、モバイルGPRS/3G/4G/5G)と、
前記コントローラ(2.1)からデータを受信するようプログラムされたインターネットプラットフォームを介してアクセス可能なサーバ(2.8)と、
水を前記混合セル(1.1)に通過させて、貯水槽(1.4)から、または、貯水槽(1.4)に向かって再循環させる水処理循環路と、
酸性溶液を前記混合セル(1.1)の内部に通過させて、前記貯水槽(1.4)から、または前記貯水槽(1.4)に向かって循環させる、前記水処理循環路とは完全に独立した二次浄化循環路と、
一組のソレノイド弁(1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,1.10,1.11,1.12)と、
配線(2.7)を介して前記コントローラ(2.1)に接続された流体ポンプジェットと、
を備え、
前記混合セル(1.1)は、複数のアノードおよびカソード(4,5)を備え、該アノードおよびカソード(4,5)は、角柱形状を形成するように配置され、直方体形状を有する内部筐体(6)に収容され、一方、前記内部筐体(6)は、円柱状の外部筐体(7)に収容され、該外部筐体(7)の端部には、接続フランジ(8)および(8’)が設けられ、前記外部筐体(7)は閉鎖ロッド(9)に接合され、
前記コントローラ(2.1)は、
キャリブレーションデータと、アルゴリズムと、操作プログラムとを格納することと、
電流源を調整することと、
稼働パラメータおよびプローブによって測定されたデータを記録し格納することと、
前記電流源の出力によって制限される、カスタマイズ可能な稼働範囲内で稼働強度を修正することと、
前記コントローラ(2.1)に格納された前記アルゴリズムによって、循環路の管理の際、電解セルの自動保守を実施することと、
を自動的に実行可能なようにプログラムされている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
貯水機能を有する循環路内の水に対し、電気穿孔および酸化作用を組み合わせて消毒及び保全を行うためのシステムであって、
前記コントローラ(2.1)は、水処理調整における指示を構築する操作プログラムを実現する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の、貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うためのシステムであって、
処理水の瞬時酸化還元電位値から調整を設定し、この瞬時値は、pHおよび温度による補正因子により分析的に補正される、ことを特徴とする、システム。
【請求項4】
請求項1および3に記載の貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うためのシステムであって、
処理水の酸化還元電位が補正されると、処理制御システムは、水中の前記酸化還元電位の所定の範囲を維持し、該所定の範囲は、最大値および最小値の間、300mv~500mvである、ことを特徴とする、システム。
【請求項5】
請求項1および4に記載の貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うためのシステムであって、
酸化還元電位の範囲において、還元体の濃度が最小で、かつ酸化体の量が中程度である水質となる、ことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1、4、および5に記載の貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うためのシステムによって、貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うための方法であって、
サンプリング箇所の酸化還元電位値によって、前記コントローラ(2.1)は、
ゼロ:フェーズ[B]が稼働していない状態、フェーズ[A]+[B]が稼働していない状態であって、前記酸化還元電位値が最適値域にあり、その傾向が安定している場合と、
フェーズ[B]:前記酸化還元電位値の挙動が軽微~中程度の補正を必要とする場合と、
フェーズ[A]+[B]:前記酸化還元電位値が高程度の補正を必要とする場合、または中程度の補正が高程度の補正になる場合と、
を含む信号を出すよう、電源を制御する、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うためのシステムによって、貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うための方法であって、
温度プローブ(3.8)、伝導率プローブ(3.5)、pHプローブ(3.6)、及び、酸化還元電位プローブ(3.4)は、サンプリング箇所での測定を引き続き行うか、または、時間間隔毎に制御し、
前記プローブ用コントローラ(3.1)は、前記低周波信号発振器(3.3)から、前記コントローラ(2.1)に接続された前記信号受信器(2.3)に対し、各プローブからの信号値を送信する、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うためのシステムによって、貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うための方法であって、
電源の稼働強度、ひいては前記混合セル(電気穿孔・電解酸化)(1.1)を循環する電流強度が可変強度であり、酸化還元電位値によって、アルゴリズム「alg_I」で自動的に構築される、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うためのシステムであって、
自動学習システムにより、前記サーバ(2.8)から前記アルゴリズムが更新される、ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1および9に記載の貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うためのシステムによって、貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うための方法であって、
自動学習システムは、
a)初期時のt=0で、前記コントローラ(2.1)が、標準初期アルゴリズム「alg_I(0)f(ORP)」に基づいて動作する、
b)t=0時点から一定の頻度で、
日付と、
時間と、
酸化還元電位値と、
pH値と、
温度の値と、
伝導率の値と、
補正酸化還元電位値と、
強度値と、
電圧値と、
電流密度値と、
残留酸化体値と、
を含む動作データが、VPNでサーバに送られ、データベースに記録される、
c)データ量が統計的に顕著な値に達した際、前記サーバ(2.1)内の統計モデルは、前記酸化還元電位の挙動傾向における想定され得るパターンおよび各処理フェーズ([A],[B])に対する感度を把握するよう動作を始める、
d)前記システムは、更新時、VPNで前記コントローラ(2.1)に送信されたアルゴリズム「alg_I(0)f(ORP)」を推定する、
といった段階によって実行される、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うためのシステムによって、貯水機能を有する循環路内の水に対し消毒及び保全を行うための方法であって、
アルゴリズムおよび前記コントローラ(2.1)によって、
稼働強度と、
稼働電圧と、
水の伝導率と、
前記混合セル(1.1)のある特定の電気抵抗の増加を検知するための、初期状態の前記混合セル(1.1)の電気抵抗と、
を含むデータが随時処理されている、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気穿孔および電解酸化を組み合わせた技術を利用したシステムおよび方法を開示し、貯水槽、遊泳プール、冷却塔等の閉・半閉水循環路の衛生状態を充分に維持することを目的としている。これにより、水中の酸化体濃度を、想定される病原体や汚染物質となり得るものによって引き起こされた再汚染に対し、充分に対処できる程度のものにできる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、電気穿孔および最先端の電解酸化の技術を同時に、あるいは交互に組み合わせて実施することを基礎とする。この二つの技術により、一般的な微生物学的リスクを伴う設備での水処理が実現され、従来技術における不便な点がすべて解消され、非常に高い水質が保障される。
【0003】
したがって、本発明は、その新規性として、システムおよび方法を特定の物質の電気穿孔セルに応用し、電気穿孔および電解酸化の混合セルとして作用させる。その結果、処理過程において、バクテリアの電気穿孔が行われるだけでなく、ヒドロキシル遊離基や、水中に存在する塩化物から生成された活性塩素といった酸化体の生成に加え、水中に含まれる還元体から直接的な酸化反応が引き起こされる。電極が作製される際、どの種類のカバーを選択するかによって、所望の酸化体の特性が決定される。このように、リアクタの電気物理学的現象と、直接電解酸化および酸化体の電気化学的生成の現象とを、その場で組み合わせることができ、後者は、循環路のあらゆる箇所において、残留殺生物剤として作用する。
【0004】
水が貯留されているような、閉水循環路または半閉水循環路(貯水槽、遊泳プール、冷却塔)に、この消毒技術を応用した場合、電気穿孔によって循環路全体を消毒しようとすると、二つの深刻な欠点が顕著になる。第1の欠点として、確実に消毒が実施し続けられるよう、循環路内の全ての水を電気穿孔セルで定期的に処理する再循環ラインを構築することが必須であり、必要以上にエネルギーコストが掛かっていた。
【0005】
第2に、電気穿孔は、循環路の遠隔地点で生成され、水を再汚染する病原体として作用し得るバイオフィルム等の抵抗構造には適用できない。そのため、電気穿孔は、セルに物理的に設けられる。
【0006】
特定の物質を電気穿孔セルに配置することにより、電気穿孔セルは、電気穿孔および電解酸化の混合セルになる。これにより、処理過程において、バクテリアの電気穿孔が行われるだけでなく、ヒドロキシル遊離基や、水中に存在する塩化物から生成された活性塩素といった酸化体の生成に加え、水中に含まれる還元体から直接的な酸化反応が引き起こされる。電極が作製される際、どの種類のカバーを選択するかによって、所望の酸化体の特性が決定される。このように、リアクタの電気物理学的現象と、直接電解酸化および酸化体の電気化学的生成の現象とを、その場で組み合わせることができ、後者は、循環路のあらゆる箇所において、残留殺生物剤として作用する(図3)。これにより、エネルギーコストを犠牲にすることなく、消毒薬としての電気穿孔の利点を維持することができ、水質を最適化し、抵抗構造の破壊およびその形成自体の予防により、循環路のあらゆる箇所において確実に消毒を行う。
【0007】
技術水準の一部として、特許文献1が挙げられる。ここでは、水処理の方法および装置が開示され、飲料水の質を担保しつつ、水処理を行いながら、化学薬品の過度な使用が避けられている。この水は、直接、人が消費するために使用されてもよく、また、高い水質が求められる産業における一連の工程で使用されてもよい。該発明によれば、水処理装置は、カソードと、二つの金属(第1および第2)のマトリクスからなるアノードと、アノードおよびカソードに所定の電位差を供給する手段と、を備える。また、稼働中、所定の電位差が供給されると、未処理水が稼働中のアノード・カソード間を流れている間、電気穿孔および酸化体の生成の両方が実行されるようマトリクスが配置され、その結果、稼働中に汚染物質が除去される。このためには、まず、同じ形状を有する二つのアノードを準備する必要があり、そのうち一つの表面は、全て白金からなる。一定の速度で、一定の条件のもと、白金表面に遊離塩素が生成され、遊離塩素は、ほぼ同じ状況下で、バクテリアや有機物質と等しく反応する。しかし、遊離塩素は、初期段階の反応速度が非常に速く、正確に測定することが困難である。したがって、初期段階での急速なバクテリア除去、そして水中の他の物質との反応後の水質は、第1アノードで測定され、反応から一定時間が経過して、より正確な測定のため、遊離塩素濃度が求められる。試験溶液中の遊離塩素濃度は、当該出願のパラメータをもとに測定される。ここには、関連化合物濃度およびpH値も含まれる。そして、第1アノードと同様の大きさ・形状を有する第2アノードを試験溶液に使用する。マトリクス金属は白金に集合するが、これは、試験溶液処理後のある特定のタイミングで、遊離塩素濃度が全て白金からなる表面を有するアノードで得られた濃度の約50%になるまで続けられる。そして、生存するバクテリアの残留量を特定するため、二つの試験溶液が検査される。
【0008】
該発明は、電気穿孔処理を活用し、充分なレベルにまで水を浄化させるため、必要に応じて残りのバクテリアを破壊する。セルは、膜で囲まれており、生セルには、膜外の溶液とセル内の溶液とで、約100mVの電位差がある。これは、膜の内外で200,000V/cm~300,000V/cmの電位勾配に相当する。セルを通して外部電位が供給されると、膜の高いオーム抵抗により、電位の大部分が失われる。供給電位が、一定の値よりは高く、限界値よりは低い範囲にある時、化学物質の交換に使用できる孔が膜に形成される。電位がこの範囲にあれば、外部電位が除去されると、孔は再び閉じる。しかし、電位が限界値を越えると、膜の孔は開いたままとなる。これにより、必要な化学物質が失われることで、または、セル内外の浸透圧の差によって水が入ってくることで、バクテリアが除去される。
【0009】
該発明はしたがって、その主たる請求項において、カソードと、二つの金属(第1および第2)のマトリクスからなるアノードと、アノードおよびカソードに所定の電位差を供給する手段と、を備える水処理装置を提示する。稼働中、所定の電位差が供給されると、未処理水が稼働中のアノード・カソード間を流れている間、電気穿孔および酸化体の生成の両方が実行されるようマトリクスが配置され、その結果、稼働中に生物汚染物質が除去される。
【0010】
特許文献1の問題点として、例えば、必要量以上の遊離塩素が白金表面に生成されてしまう可能性が挙げられる。つまり、一度電極が作製済のマトリクスとともに設けられると、塩素が過剰に生成されてしまった場合、該電極は動的に機能することができず、最初のものとは異なるマトリクスを有する新たな電極を作製する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第1741675号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
こうした望ましくない状況を回避するため、本発明は、さらに発展した産業用システムを活用し、現在まで使用されている従来の技術の代わりとなり得る、高性能な運転制御システムにおいて、革新的な組み合わせを使用した方法を適用する。具体的な解決手段は下記の通りである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
・化学薬品は使用せず、健康、環境、そして設備資材にダメージを与えることを回避する。
【0014】
・遊離塩素生成における従来技術は使用せず、前駆体として水に塩化ナトリウムを添加する。
【0015】
本発明の特徴をよりよく理解する一助として、以降の説明を補足する目的で、実戦的な実現における好ましい例は、下記図面を含む。これらの図面は、本記載において必須要素として例示されるが、下記に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、技術水準における電気穿孔セルの特徴の模式図を表す。
図2図2は、再循環ラインの図である。再循環ラインは、循環路の遠隔地点で生成され、水を再汚染する病原体として作用し得るバイオフィルムに加え、循環路内の全ての水を電気穿孔セルで処理する。
図3図3は、電気穿孔および電解酸化の混合セルの図であり、ここでは、リアクタで、電気物理学的現象と、直接電解酸化現象および酸化体の電気化学的生成とを、その場で組み合わせ、後者は、循環路のあらゆる箇所において、残留殺生物剤として作用する。
図4図4は、電気穿孔/電解セル内の電気穿孔および還元体の直接電解酸化の効果により、水中に存在する還元体が劇的に減少する様子を表す。
図5図5は、グラフであり、該グラフでは、還元体の水中への供給と、酸化還元電位の値の継続的な測定における変化によると、システムは、(エネルギーを調整することで)フェーズ[B]またはフェーズ[A+B]で動作可能であり、フェーズ[A+B]では、フェーズ[B]と比較し、高いエネルギーが必要となることが示される。
図6図6は、サンプリング箇所でプローブにより得た値を元の値とする、酸化還元電位の補正値を示す。
図7図7は、システムおよびその構成要素の一般概要を示す。システムは、処理対象となる主要水循環路に設置される。
図8図8は、混合セル(1.1)の外面図を表す。
図9図9は、混合セル(1.1)の内面図を表す。
図10図10は、本発明の混合セル(1.1)の内部および外部の立面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
水中還元体濃度(バクテリア、アンモニア、有機物等)に対する、所定の水中酸化体濃度(例えば、活性塩素)により、結果として、酸化作用における還元電位、つまり酸化還元電位として知られる可測均衡が生じる。これは、的確に概念化・制御され得るもので、目的パラメータや、本出願の対象となる設備における水の衛生状態を示す指標である。こうして、酸化還元電位の値が基準電極において測定される遊泳プールや冷却塔のような、水が滞留し、一般的な微生物学的リスクを伴う循環路において、酸化還元電位の値の減少は、存在する酸化体に対して、生物・微生物由来の、有機または無機物質由来の物質が増加したことによるものであるか、または、存在する還元体に対して、こうした酸化体が減少したことによるものである。この逆の場合は、同様に考えることができ、酸化還元電位の値が増加したということは、還元体に対して酸化体が増加した、または、酸化体に対して還元体が減少した、ということを示唆する。
【0018】
本発明は、電気穿孔および最先端の電解酸化技術における、(供給エネルギーレベルに合わせた)二つのフェーズを、正確に、同時あるいは交互に組み合わせることを提案するものである。これにより、従来技術における問題点を全て回避しつつ、非常に高い水質を確実なものとしながら、この種の設備の水処理目標を達成する。
【0019】
フェーズ[A](図4
水中の還元体が、電気穿孔/電解セル内の電気穿孔効果および還元体の直接電解酸化によって、大幅に減少する。
【0020】
フェーズ[B](図4
この目的に合わせて的確に設計・製造された電気穿孔セル内において、酸化体(例えば、水中に自然に溶けている塩化物から生成される活性塩素やヒドロキシル遊離基)がその場で生成されるよう、電解酸化が選択されている。フェーズ[A]で事前に除去されてはいるものの、非常に微量に存在する還元体のもとで生成された残留酸化体により、循環路が清潔に保たれ、水中の還元体の増加リスクが抑えられる。ORP(酸化還元電位)濃度の変化に伴う挙動が反映され、この相関傾向により、プロセス全体を把握し調整することが可能となる。
【0021】
水中の還元体供給と、それによって引き起こされる、酸化還元電位の値の継続測定における変化に伴って、システムは、(エネルギーを調整することにより)フェーズ[B]またはフェーズ[A+B](図4図5)で動作可能となる。ここで、フェーズ[A+B]は、フェーズ[B]よりも大きなエネルギーを必要とする。
【0022】
フェーズ[A]で水質が大幅に改善されたことにより、生成された残留酸化体に頼る必要性を低いまま維持できる(フェーズ[B])。これにより、残留酸化体を集中的に生成する必要がなくなり、その濃度挙動が非常に安定する。
【0023】
続いての技術的な挑戦としては、電界の動的供給を実現することである。該電界は、下記事項を達成する際に必須となる:(i)電気穿孔(高電流密度>250A/m2)(図4)、(ii)リアクタにおける還元体の直接酸化(>200A/m2)(図4)、(iii)低強度の電位(<100A/m2)下における、電解セルで開始される酸化体の生成(図4)。
【0024】
この方法を適用可能な産業システムを設計する目的において、以下に列挙する、信号の取得および分配(信号の信頼性、プローブの干渉および信号の無線送信における干渉の除去)に関連するものの中で、特に有利な要素を実現可能にした。該要素とは、電解セルの設計(電気穿孔を効率的に実行できるものであり、高度な酸化作用および電気穿孔が期待できるもの)、水循環路およびそのロジックの設計、都度の水中伝導率に関わらず、毎回異なる電流密度を供給可能な電源システムの設計、自動保守を実現するシステムの設計、そして全ての決定を管理し、自動学習による継続的改善につなげるソフトウェアおよび制御電子機器である。
【0025】
好ましい実施形態は、処理対象となる主要水循環路、例えば、水が閉鎖空間または半閉鎖空間(遊泳プール、槽、冷却塔、インテリア用噴水等の循環路)に貯留されているような循環路に設置されるシステムにおいて実現される。
【0026】
システムは、以下に列挙する要素を含む。
【0027】
少なくとも一つの混合セル(電気穿孔/電解酸化)(1.1)であって、複数のアノードおよびカソード(4,5)を備え、アノードおよびカソード(4,5)は、角柱形状を形成するように配置され、直方体形状を有する内部筐体(6)に収容され、一方、内部筐体(6)は、円柱状の外部筐体(7)に収容され、外部筐体(7)の端部には、接続フランジ(8)および(8’)が設けられ、外部筐体(7)は閉鎖ロッド(9)に接合されている。
【0028】
電流および電圧を調整可能な、少なくとも一つのソース(2.2)。
【0029】
少なくとも一つの酸化還元電位プローブ(3.4)。
【0030】
プローブからの信号による電流の干渉を可能な限り回避する変圧器/絶縁体(3.2)。
【0031】
少なくとも一つのpHプローブ(3.6)であって、これにより、処理対処の水について、瞬時にpHデータを取得可能であり、二次酸性溶液循環路を稼働させる際には、それに合ったpH溶液を得ることができる。
【0032】
少なくとも一つの温度プローブ(3.8)。
【0033】
少なくとも一つの伝導率プローブ(3.5)。
【0034】
少なくとも一つのプローブ用コントローラ(3.1)。
【0035】
全ての構成要素と有線あるいは無線で接続されたコントローラ(2.1)であって、キャリブレーションデータと、アルゴリズムと、操作プログラムとを格納することと、電流源を調整することと、稼働パラメータおよびプローブによって測定されたデータを記録し格納することと、電流源の出力によって制限される、自由に設定可能な稼働範囲内で稼働強度を修正することと、コントローラ(2.1)に格納されたアルゴリズムによって、循環路の管理の際、電解セルの自動保守を実施することと、を自動的に実行可能なようにプログラムされている。
【0036】
プローブ用コントローラ(3.1)に隣接して配置される低周波信号発振器(3.3)。
【0037】
コントローラ(2.1)に隣接して配置される信号受信器(2.3)。
【0038】
コントローラ(2.1)と接続された通信モデム(2.4)。
【0039】
データ用接続手段(ファイバ、モバイルGPRS/3G/4G/5G)。
【0040】
コントローラ(2.1)からデータを受信し、格納し、処理し、稼働アルゴリズムの更新として送り返し、同時に、システムのいかなる操作・機能を遠隔で実施し、制御するよう、プログラムされたインターネットプラットフォームを介してアクセス可能なサーバ(2.8)。
【0041】
水を混合セル(1.1)に通過させて、貯水槽(1.4)から、または、貯水槽(1.4)に向かって再循環させる水処理循環路であって、水ポンプ(1.2)と、水路とを備える。
【0042】
酸性溶液を混合セル(1.1)の内部に通過させて、この種の溶液を収容するよう用意された槽(1.4)から、または槽(1.4)に向かって循環させる、水処理循環路とは完全に独立した二次浄化循環路であって、水路と、槽(1.4)と、酸性溶液ポンプ(1.3)とを備える。
【0043】
配線(2.7)を介して、コントローラ(2.1)から送られる指令に従って、独立、択一的、かつ隔離された状態で、混合電気穿孔/電解セル(1.1)が含まれる水処理循環路および二次浄化循環路を開閉する、一組のソレノイド弁(1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,1.10,1.11,1.12)。
【0044】
配線(2.7)を介してコントローラ(2.1)に接続された流体ポンプジェットであって、水(主要循環路)または酸性溶液(二次浄化循環路)を循環させる。
【0045】
システムは、コントローラ(2.1)によって実現される方法を実践することにより機能するが、この方法において、水処理調整における指示を構築する操作プログラムが実現される。処理水の瞬時酸化還元電位値から調整を実施する。まず、この瞬時値は、pHおよび温度による補正因子により分析的に補正される。処理水の酸化還元電位が補正されると、処理制御システムは、水中の酸化還元電位の所定の範囲を維持し、この所定の範囲は、最大値および最小値(ORPMAX~ORPMIN)の間、一般的は、300mv~500mvの値をとる。しかし、これらの値は、設備の要件によって自由に設定され得る。この酸化還元電位の範囲において、還元体の濃度が最小(処理中、フェーズ[A]の効果により実現)で、かつ酸化体の量が中程度(処理中、フェーズ[B]によって維持)である水質となる。「酸化体の量が中程度」の定義は、管理者が設定する基準、および/または場合によって該当する法規制によって定められ得る。
【0046】
サンプリング箇所の酸化還元電位値によって、コントローラ(2.1)は、以下に列挙する信号を出すよう、電源を制御する。(図5
【0047】
・ゼロ:フェーズ[B]でも、フェーズ[A]+[B]でも稼働していない状態であって、酸化還元電位値が最適値域にあり、その傾向が安定している場合。
【0048】
・フェーズ[B]:酸化還元電位値の挙動が軽微~中程度の補正を必要とする場合。
【0049】
・フェーズ[A]+[B]:酸化還元電位値が高程度の補正を必要とする場合、または中程度の補正が高程度の補正になる場合。
【0050】
温度プローブ(3.8)、伝導率プローブ(3.5)、pHプローブ(3.6)、そして酸化還元電位プローブ(3.4)は、サンプリング箇所での測定を引き続き行うか、制御を行う。時間間隔「ts」毎に、プローブ用コントローラ(3.1)は、発振器(3.3)から、コントローラ(2.1)に接続された受信器(2.3)に対し、各プローブからの信号値を送信する。低周波信号(ZIGBeeプロトコル等)、または、光ファイバ、イーサネット、その他信号送信における信頼性の高い方法によって、送信が行われる。
【0051】
電源の稼働強度、ひいては混合電気穿孔/電解酸化セル(1.1)を循環する電流強度が、前述の通り、可変強度であり(図5)、酸化還元電位値によって、アルゴリズム「alg_I」で自動的に構築される。このアルゴリズムは、自動学習システムにより、サーバから更新される。自動学習システムは、以下のように実施される。
【0052】
初期時のt=0で、コントローラ(2.1)が、後述する標準初期アルゴリズム「alg_I(0)f(ORP)」に基づいて動作する。
【0053】
t=0時点から一定の頻度で、
・日付
・時間
・酸化還元電位値
・pH値
・温度の値
・伝導率の値
・補正酸化還元電位値
・強度値
・電圧値
・電流密度値
・残留酸化体値(低い頻度で手動により取得する分析値)
を含む動作データが、VPNでサーバに送られ、データベースに記録される
【0054】
データ量が統計的に顕著な値に達した際、サーバ内の統計モデルは、酸化還元電位の挙動傾向における想定され得るパターンおよび各処理フェーズ([A],[B])に対する感度を把握するよう動作を始める。これらにより、傾向に従って調整を行うにあたり、初期のアルゴリズムよりも的中率の高いアルゴリズム「alg_I(0)f(ORP)」(図6)が推定される。このアルゴリズムは、更新時、VPNでコントローラ(2.1)に送信される。
【0055】
こうして、プローブで取得したサンプリング箇所を原点として、補正酸化還元電位の値をもとに、コントローラ(2.1)は、以下に列挙する決定を下す(図6)。
【0056】
各参照符号は、以下の通りである。
ORPi:時間iにおける瞬時補正酸化還元電位値
ORPMIN・ORPMAX・ORPll・ORPhl:調整時に送信される酸化還元電位の最小値、最大値、低い値、高い値
mi:時間経過に伴う、酸化還元電位の前後の瞬時値を表す曲線の平均傾斜であって、所定の時間間隔tiごとの時間iにおける曲線の傾きの平均値として算出されたもの。
ti:時間iおよび時間(i-5’)の間の時間間隔
mおよびM:ORP挙動において傾向変化を促す必要があることを示す曲線f(ORP,t)の値であって、設備ごとに自由に設定が可能であり、自動学習の更新対象ともなる
【0057】
・ORPi<ORPMINならば、フェーズ[A]+フェーズ[B]を起動
・ORPi>ORPMAXならば、ソースをポジション・ゼロへ(停止)
・ORPMIN<ORPi<ORPllかどうか
・mi<0ならば、フェーズ[A]+フェーズ[B]を起動
・mi≧0ならば、フェーズ[B]を起動
・ORPll<ORPi<ORPhlかどうか
・mi<0かどうか
・|mi|>|m|のならば、フェーズ[A]+フェーズ[B]を起動
・|mi|<|m|ならば、フェーズ[B]を起動
・mi≧0かどうか
・mi<Mならば、フェーズ[B]を起動
・mi≧Mならば、ゼロ(ソース停止)
・ORPhl<ORPi<ORPMAXかどうか
・mi<0ならば、フェーズ[B]
・mi≧0ならば、ソースをポジション・ゼロへ(停止)
【0058】
システムは、アルゴリズムによって自動保守を行う方法を実施することを提示する。このアルゴリズムは、コントローラ(2.1)によって、
-稼働強度
-稼働電圧
-水の伝導率
-初期状態の混合電気穿孔/電解酸化セルの電気抵抗
を、継続的に処理するものである。
【0059】
データ処理に寄り、以下に列挙する事項が把握される。
【0060】
伝導率(f[cond])に基づく水の電気抵抗
【0061】
強度および電圧(f[I,v])に基づく、システム全体の電気抵抗(水+混合電気穿孔/電解酸化セル)
【0062】
水の電気抵抗およびシステム全体の電気抵抗f[Ra,Rs]に基づく、混合電気穿孔/電解酸化セル(Rci)特有の電気抵抗
【0063】
初期状態における混合セル特有の電気抵抗をRC0としたときの、混合セル特有の電気抵抗における増加
【0064】
アルゴリズムを利用し、カスタムされたコントローラ(2.1)によって、(電極に石灰および/または汚れが蓄積されたことによって主に引き起こされる)混合セル(1.1)特有の電気抵抗における増加が、許容範囲を超えたことが検知されると、自動浄化シーケンスが実行される。抵抗の増加、ひいては蓄積された汚れによって、ただちに浄化の指示が出されるか、保守動作の実行に理想とされる所定の待機時間を経て、浄化が実行される。
【0065】
浄化の実施のため、コントローラ(2.1)は、以下に列挙する動作を順次実行するよう、種々の機械要素(ソース、弁、ポンプ)に信号を送信する。
【0066】
(起動していた場合)混合セル(1.1)の電源(2.2)の停止。
【0067】
水ポンプ(1.2)の停止。
【0068】
主要循環路(水)のソレノイド弁(1.5および1.6)の閉状態への切り替え。
【0069】
混合セル(1.1)のソレノイド弁(1.7および1.9)による排水循環路の開状態への切り替え。
【0070】
混合セル(1.1)のソレノイド弁(1.7および1.9)による排水循環路の閉状態への切り替え。
【0071】
ソレノイド弁(1.10および1.11)による、閉状態の酸性溶液再循環路の開状態への切り替え。
【0072】
酸性溶液ポンプ(1.3)の起動。
【0073】
最終工程は、設定時間(カスタマイズ可)中は起動状態のまま維持され、完了後、以下シーケンスを続行する。
【0074】
酸性溶液ポンプ(1.3)の停止。
【0075】
ソレノイド弁(1.10および1.9)による、混合セル(1.1)の酸性回復循環路の開状態への切り替え。
【0076】
ソレノイド弁(1.10および1.11)による、閉状態の酸性溶液再循環路の閉状態への切り替え。
【0077】
ソレノイド弁(1.10および1.9)による、混合セル(1.1)の酸性回復循環路の閉状態への切り替え。
【0078】
ソレノイド弁(1.8および1.7)による、リンス循環路の開状態への切り替え。
【0079】
ソレノイド弁(1.8および1.7)による、リンス循環路の閉状態への切り替え。
【0080】
ソレノイド弁(1.5および1.6)による、主要循環路(水)の開状態への切り替え。
【0081】
水ポンプ(1.2)の起動。
【0082】
必要であれば、電源(2.2)の起動。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10