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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20241022BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20241022BHJP
   C23C 16/507 20060101ALI20241022BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/302 101C
C23C16/507
H05H1/46 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022125677
(22)【出願日】2022-08-05
(65)【公開番号】P2024022245
(43)【公開日】2024-02-16
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】301071413
【氏名又は名称】株式会社 セルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】和田 和夫
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-311310(JP,A)
【文献】特開2005-228738(JP,A)
【文献】特開2008-071528(JP,A)
【文献】特開2020-009935(JP,A)
【文献】特開平8-330286(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0849396(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/3065
C23C 16/507
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に気体を供給する気体供給部と、
高周波電力を出力する高周波発生源と、
箱状であり前記高周波発生源を収納する筐体と、
導体から平面視渦巻き状に延在する管状に形成され前記筐体の外側に配置される少なくとも1つの渦巻き部と、導体から管状に形成され前記少なくとも1つの渦巻き部それぞれの中央部側の一端部に連続し前記一端部から前記筐体側へ延在する少なくとも1つの立ち上げ部と、を有し、前記チャンバの外側に配置されるとともに、前記チャンバ内に前記気体が充填された状態で前記高周波発生源から高周波電力が供給されることにより、前記チャンバ内に高周波磁界を発生させて前記チャンバ内にプラズマを発生させる誘導コイルと、
前記筐体の内側の領域と前記渦巻き部が配置される領域とを隔てるように配置された遮蔽板と、
前記誘導コイルの内側に冷媒を供給する冷媒供給部と、を備え、
少なくとも1つの前記立ち上げ部は、それぞれ、前記遮蔽板に貫設された貫通孔に挿通された状態で絶縁部材を介して前記遮蔽板に固定され、少なくとも1つの前記渦巻き部側とは反対側が前記高周波発生源の出力端に電気的に接続され、
少なくとも1つの前記渦巻き部それぞれの外側の他端部は、前記遮蔽板に固定された状態で接地されている、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
少なくとも1つの前記渦巻き部は、
平面視渦巻き状に延在し、中央部側の一端部が前記立ち上げ部を介して前記高周波発生源の出力端に電気的に接続され、外側の他端部が前記遮蔽板に固定された状態で接地された第1渦巻き部と、
平面視渦巻き状に延在し、前記第1渦巻き部と隣り合う位置に配置されるとともに、中央部側の一端部が前記立ち上げ部を介して前記高周波発生源の出力端に電気的に接続され、外側の他端部が前記遮蔽板に固定された状態で接地された第2渦巻き部と、を有し、
前記第2渦巻き部の巻回方向は、前記第1渦巻き部の巻回方向と逆向きである、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記冷媒は、純度99%以上の水である、
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空チャンバと、真空チャンバの外側に設けられた磁場形成部材と、磁場形成部材に高周波電力を供給する高周波電源と、高周波電源と磁場形成部材とに接続された配線の途中に設けられた整合器と、を備え、磁場形成部材が、概略長方形の巻回部をその短辺方向に複数並べた線状導電部を有する誘導結合プラズマ処理装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-228738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたような誘導結合プラズマ処理装置では、誘導コイルの過度の温度上昇を抑制し、誘導コイルの劣化を抑制するために誘導コイルを冷却する機構が要請されている。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、誘導コイルの劣化を抑制することができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るプラズマ処理装置は、
チャンバと、
前記チャンバ内に気体を供給する気体供給部と、
高周波電力を出力する高周波発生源と、
箱状であり前記高周波発生源を収納する筐体と、
導体から平面視渦巻き状に延在する管状に形成され前記筐体の外側に配置される少なくとも1つの渦巻き部と、導体から管状に形成され前記少なくとも1つの渦巻き部それぞれの中央部側の一端部に連続し前記一端部から前記筐体側へ延在する少なくとも1つの立ち上げ部と、を有し、前記チャンバの外側に配置されるとともに、前記チャンバ内に前記気体が充填された状態で前記高周波発生源から高周波電力が供給されることにより、前記チャンバ内に高周波磁界を発生させて前記チャンバ内にプラズマを発生させる誘導コイルと、
前記筐体の内側の領域と前記渦巻き部が配置される領域とを隔てるように配置された遮蔽板と、
前記誘導コイルの内側に冷媒を供給する冷媒供給部と、を備え、
少なくとも1つの前記立ち上げ部は、それぞれ、前記遮蔽板に貫設された貫通孔に挿通された状態で絶縁部材を介して前記遮蔽板に固定され、少なくとも1つの前記渦巻き部側とは反対側が前記高周波発生源の出力端に電気的に接続され、
少なくとも1つの前記渦巻き部それぞれの外側の他端部は、前記遮蔽板に固定された状態で接地されている
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、誘導コイルが、導体から長尺の管状に形成され、冷媒供給部が、誘導コイルの内側に冷媒を供給する。これにより、誘導コイルの温度が過度に上昇することが抑制されるので、誘導コイルの劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置の概略構成図である。
図2】実施の形態1に係るプラズマ処理装置の正面図である。
図3】実施の形態1に係るプラズマ処理装置の側面図である。
図4】実施の形態1に係るプラズマ処理装置の一部を示し、(A)は図2におけるA-A線での断面矢視図であり、(B)は図3におけるB-B線での断面矢視図である。
図5】実施の形態1に係るプラズマ処理装置の一部の底面図である。
図6】実施の形態1に係るプラズマ処理装置の一部の分解斜視図である。
図7】実施の形態1に係るプラズマ処理装置の一部を示し、(A)は平面図であり、(B)は分解斜視図である。
図8】実施の形態1に係るプラズマ処理装置の一部を示す断面図である。
図9】本発明の実施の形態2に係る成膜装置の概略構成図である。
図10】実施の形態2に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図11】(A)は実施の形態2に係る基板の一部を示す断面図であり、(B)は実施の形態2に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に
係るプラズマ処理装置は、いわゆる誘導結合プラズマ型CVD装置である。図1に示すように、このプラズマ処理装置1は、チャンバ101と、ステージ190と、高周波印加部102と、原料ガス供給部121、122、123と、エッチャントガス供給部111と、を備える。また、プラズマ処理装置1は、高周波印加部102、原料ガス供給部121、122、123およびエッチャントガス供給部111を制御する制御部200と、冷媒供給部171と、を備える。更に、プラズマ処理装置1は、図2および図3に示すように、チャンバ101を支持する支持台109を備える。このプラズマ処理装置1は、例えばチャンバ101内に配置された基板Wの上面側にSiOのような酸化膜、SiONのような酸窒化絶縁膜、SiNのような窒化膜等の絶縁膜を成膜する。ここで、基板W1は、例えばSi基板、サファイヤ基板、ガラス基板等が挙げられる。
【0010】
チャンバ101は、扁平な矩形箱状であり厚さ方向における一面側が開放されたチャンバ本体1011と、チャンバ本体1011の開放部分を覆う蓋体1012と、を有する。蓋体1012は、環状でありチャンバ本体1011の+Z方向側の端面全体に亘って配設されたOリングのようなシール部材(図示せず)を介してチャンバ本体1011に装着されておりチャンバ101内が密閉されている。また、蓋体1012を厚さ方向から見たときの蓋体1012の中央部には、開口部1012bが形成されている。そして、蓋体1012には、後述する供給管125から供給される原料ガス、エッチャントガスをチャンバ101内へ導入するための導入路1012aが形成されている。この導入路1012aは、蓋体1012の上面側における開口部1012bの外周部から開口部1012bの内壁に至るように延在しており、延在方向における一端部が蓋体1012の上面側に開口し他端部が開口部1012bの内壁に開口している。また、チャンバ本体1011の側壁には、透光性材料から形成され、利用者がチャンバ101内を視認するための窓1011aが配設されている。また、蓋体1012の+Z方向側には、ガラスのような誘電体材料から形成され開口部1012bを閉塞するように配置された誘電体窓141と、誘電体窓141を蓋体1012に固定する窓固定部材142と、が配設されている。
【0011】
支持台109は、+Z方向側にチャンバ101が載置されたベース部材1092と、ベース部材1092を支持する支持フレーム1091と、を有する。支持フレーム1091は、外形が略直方体状となるようにフレームを組み合わせることにより形成されており、内側にフレームで囲まれた略直方体状の領域S1が形成されている。
【0012】
図1に戻って、ステージ190は、チャンバ101内に配置され、絶縁膜を成膜する対象となる基板Wを支持する。このステージ190は、Al、SUS、Cu等の金属で形成されている。また、ステージ190には、基板W1を加熱するためのヒータ191が埋設されている。
【0013】
原料ガス供給部121、122、123は、チャンバ101内へ絶縁膜の基となる原料ガスを導入する気体供給部である。原料ガスとしては、例えばSiH、O、Nが挙げられる。原料ガス供給部121は、例えばSiHガスを貯留するガス貯留部121aと、ガス貯留部121aからSiHガスが供給される供給管121bと、を有する。また、原料ガス供給部121は、供給管121bに接続され供給管121bを流れる原料ガスを希釈するための希釈用ガスを供給管121b内へ供給する供給管121eを有する。希釈用ガスとしては、例えばHガスを採用することができる。更に、原料ガス供給部121は、供給管121bを流れる原料ガスの流量を調節するための流量調節バルブ121cと、供給管121eを流れる希釈用ガスの流量を調節するための流量調節バルブ121dと、を有する。原料ガス供給部122は、例えばOガスを貯留するガス貯留部122aと、ガス貯留部121aからOガスが供給される供給管122bと、供給管122bに接続され前述の希釈用ガスを供給管122b内へ供給する供給管122eと、を有する。また、原料ガス供給部122は、供給管122bを流れるOガスの流量を調節するための流量調節バルブ122cと、供給管122eを流れる希釈用ガスの流量を調節するための流量調節バルブ122dと、を有する。原料ガス供給部123は、例えばNガスを貯留するガス貯留部123aと、ガス貯留部123aからNガスが供給される供給管123bと、供給管123bに接続され前述の希釈用ガスを供給管123b内へ供給する供給管123eと、を有する。また、原料ガス供給部123は、供給管123bを流れるNガスの流量を調節するための流量調節バルブ123cと、供給管123eを流れる希釈用ガスの流量を調節するための流量調節バルブ123dと、を有する。供給管121b、122b、123bは、供給管125に共通接続されている。供給管125は、図2に示すように、長尺の管状であり供給管121b、122b、123bが共通接続された第1部位1251と、長尺の管状であり一端部で第1部位の内側に連通し+Z方向側まで屈曲しながら延在する第2部位1252と、を有する。また、供給管125は、第2部位1252の他端部に設けられ第2部位1252の内側と蓋体1012の導入路1012aの蓋体1012の上面に開口した部分とを連通させる結合部1253を有する。
【0014】
図1に戻って、エッチャントガス供給部111は、チャンバ101内へエッチャントガスを供給する気体供給部である。エッチャントガスとしては、例えばCFが挙げられる。エッチャントガス供給部111は、例えばCFガスを貯留するガス貯留部111aと、ガス貯留部111aからCFガスが供給される供給管111bと、供給管111bに接続され供給管111bを流れるエッチャントガスを希釈するための希釈用ガスを供給管111b内へ供給する供給管111eと、を有する。また、エッチャントガス供給部111は、供給管111bを流れるCFガスの流量を調節するための流量調節バルブ111cと、供給管111eを流れる希釈用ガスの流量を調節するための流量調節バルブ111dと、を有する。供給管111bは、供給管112に接続されている。供給管112は、図2および図3に示すように、長尺の管状であり供給管111bが共通接続された第3部位1121と、長尺の管状であり一端部で第3部位1121の内側に連通しチャンバ101の+Z方向側まで屈曲しながら延在する第4部位1122と、を有する。また、供給管112は、第4部位1122の他端部に設けられ第4部位1122の内側と蓋体1012の導入路1012aの蓋体1012の上面に開口した部分とを連通させる結合部1123を有する。また、流量調整バルブ121c、122c、123c、121d、122d、123d、111c、111dは、チャンバ101のーZ方向側に形成された支持フレーム1091で囲まれた領域S1内に纏めて配置されている。ここで、流量調整バルブ121c、122c、123c、121d、122d、123d、111c、111dは、矩形板状であり厚さ方向がY軸方向に沿うよう姿勢で支持フレーム1091に固定された支持プレート1093の+Y方向側に纏めて固定されている。
【0015】
図1に戻って、チャンバ101には、その内部に連通する排気管182を介して真空ポンプ181が取り付けられている。真空ポンプ181は、例えばターボ分子ポンプを採用することができる。この真空ポンプ181が動作することにより、チャンバ101内の気体が排気管182を通じて排気され、チャンバ101内が減圧状態となる。真空ポンプ181および排気管182は、図3に示すように、チャンバ101のーZ方向側に形成された支持フレーム1091で囲まれた領域S1内における支持プレート1093の-Y方向側に配置されている。
【0016】
図1に戻って、高周波印加部102は、高周波電力を発生する高周波発生源1021と、整合器1022と、チャンバ101の外側においてチャンバ101の誘電体窓141に対向して配置された誘導コイル1023と、を有する。また、高周波印加部102は、図2および図3に示すように、扁平な矩形箱状であり高周波発生源1021および整合器1022を収納する筐体1024aと、扁平な矩形箱状であり誘導コイル1023の一部を収納する筐体1024bと、を有する。更に、高周波印加部102は、図4(A)および(B)に示すように、筐体1024bの-Z方向側において誘導コイル1023を囲繞するように重ねて配置された枠体1025a、1025bと、筐体1024bの内側の領域と枠体1025a、1025bの内側の領域とを隔てるように配置された遮蔽板1024cと、を有する。
【0017】
誘導コイル1023は、金属のような導体から長尺の管状に形成され、チャンバ101の外側に配置されるとともに、チャンバ101内に原料ガス、エッチャントガスのような気体が充填された状態で高周波発生源1021から高周波電力が供給されることにより、チャンバ101内に高周波磁界を発生させてチャンバ101内にプラズマPLMを発生させる。誘導コイル1023は、枠体1025a、1025bの内側における+Y方向側の領域に配置されたサブコイル10231と-Y方向側に配置されたサブコイル10232とを含む。サブコイル10231は、管状であり、図5に示すように、平面視渦巻き状に延在している渦巻き部10231aと、平面視渦巻き状に延在しX軸方向において渦巻き部10231aと隣り合う位置に配置された渦巻き部10231bと、を有する。ここで、渦巻き部10231a、10231bは、それぞれ、最も外側に位置する端部が固定部材10233を介して遮蔽板1024cに接地されている。渦巻き部10231aは、-Z方向側から見たときに右回りに渦巻き状に延在しており、渦巻き部10231bは、左回りに渦巻き状に延在している。また、サブコイル10231は、渦巻き部10231a、10231bの最も外側における+Y方向側に配置された端部同士を連結する管継手10231cを有する。更に、サブコイル10231は、図4(B)に示すように、管状であり渦巻き部分10231a、10231bそれぞれのX軸方向における中央部に配置された端部から+Z方向へ延在する立ち上げ部10231eと、立ち上げ部10231eにおける渦巻き部10231a、10231b側とは反対側の端部に設けられ後述の冷媒管172に接続される管継手10231dと、を有する。そして、立ち上げ部10231eは、高周波発生源1021の出力端に電気的に接続されている。
【0018】
また、サブコイル10232も、管状であり、図5に示すように、平面視渦巻き状に延在している渦巻き部10232aと、平面視渦巻き状に延在しX軸方向において渦巻き部10232aと隣り合う位置に配置された渦巻き部10232bと、を有する。ここで、渦巻き部10231a、10231bは、それぞれ、最も外側に位置する端部が固定部材10233を介して遮蔽板1024cに接地されている。渦巻き部10232aは、-Z方向側から見たときに左回りに渦巻き状に延在し、渦巻き部10232bは、右回りに渦巻き状に延在している。また、サブコイル10232も、渦巻き部10232a、10232bの最も外側における+Y方向側に配置された端部同士を連結する管継手10232cを有する。更に、サブコイル10232も、図4(B)に示すように、管状であり渦巻き部分10232a、10232bそれぞれのX軸方向における中央部に配置された端部から+Z方向へ延在する立ち上げ部10232eと、立ち上げ部10232eにおける渦巻き部10232a、10232b側とは反対側の端部に設けられ後述の冷媒管172に接続される管継手10232dと、を有する。
【0019】
遮蔽板1024cは、図5に示すように、Y軸方向における中央部よりも+Y方向側でX軸方向に並列し遮蔽板1024cの厚さ方向に貫通する4つの貫通孔1024c1が設けられている。そして、サブコイル10231、10232それぞれの立ち上げ部10231e、10232eが、図4(A)および(B)に示すように、遮蔽板1024cの-Z方向側から貫通孔1024c1に挿通されて遮蔽板1024cの+Z方向側へ延在している。また、サブコイル10231、10232それぞれの立ち上げ部10231e、10232eは、絶縁保持部10235を介して遮蔽板1024cに固定されるとともに、筐体1024bに固定された支持アーム1024dに固定されている。絶縁支持部1025は、図6に示すように、平面視半円形であり中央部に立ち上げ部10231e、10232eが内側に配置される凹部10235a1が形成された2つの絶縁部材10235aと、平面視半円環状であり内側で絶縁部材10235aを保持する2つの保持部材10235bと、を有する。2つの絶縁部材10235aは、例えばセラミックスから形成され、2つの保持部材10235bは、例えばアルミニウムのような金属から形成されている。保持部材10235bの厚さ方向における一端部には、内側へ延出する内鍔部10235b2が設けられている。そして、保持部材10235bは、内鍔部10235b2が絶縁部材10235aの遮蔽版1024c側とは反対側の周部に当接した状態で遮蔽板1024cに固定されている。ここで、2つの保持部材10235bには、それぞれ、厚さ方向に貫通する貫通孔10235b1が形成されており、遮蔽版1024cにおける貫通孔1024c2の外周部には、4つの螺子孔1024c2が形成されている。そして、保持部材10235bは、貫通孔10235b1に挿通された螺子(図示せず)が遮蔽板1024cの螺子孔1024c2に螺着されることで、遮蔽版1024cに固定されている。
【0020】
また、図5に示すように、サブコイル10231の渦巻き部10231a、10231bそれぞれの最も-Y方向側の部分が、遮蔽板1024cの-Z方向側に配置された固定部材10234より遮蔽板1024cに固定され、渦巻き部10231a、10231bそれぞれの管継手10231cに接続される端部が、遮蔽板1024cの-Z方向側に配置された固定部材10233より遮蔽板1024cに固定されている。また、サブコイル10232の渦巻き部10232a、10232bそれぞれの最も-Y方向側の部分も、遮蔽板1024cの-Z方向側に配置された固定部材10234より遮蔽板1024cに固定され、渦巻き部10232a、10232bそれぞれの管継手10232cに接続される端部も、遮蔽板1024cの-Z方向側に配置された固定部材10233より遮蔽板1024cに固定されている。ここで、固定部材10234は、図7(A)および(B)に示すように、サブコイル10231、10232が内側に配置される溝10234a2が形成された絶縁ブロック10234aと、平面視長方形状であり絶縁ブロック10234aにおける溝10234a2側に配置されサブコイル10231、10232を絶縁ブロック10234aに固定するための固定片10234bと、を有する。絶縁ブロック10234aは、例えばセラミックスから形成され、固定片10234bは、例えば銅のような金属から形成されている。絶縁ブロック10234aにおける溝10234a2の外周部には、螺子孔10234a3が形成されており、絶縁ブロック10234aにおける溝10234a2側とは反対側にも、螺子孔10234a1が形成されている。そして、絶縁ブロック10234aは、遮蔽板1024cにおける絶縁ブロック10234aが配置される部分に形成された貫通孔(図示せず)に挿通された螺子(図示せず)が螺子孔10234a1に螺着された状態で遮蔽板1024cに固定されている。また、固定片10234bの長手方向における両端部には、固定片10234bの厚さ方向に貫通する貫通孔10234b1が形成されている。そして、固定片10234bは、絶縁ブロック10234aの溝10234a2の内側にサブコイル10231、10232の一部が配置され、貫通孔10234b1に挿通された螺子(図示せず)が絶縁ブロック10234aの螺子孔10234a3に螺着された状態で絶縁ブロック10234aに固定されている。
【0021】
固定部材10233は、図8に示すように、サブコイル10231、10232の渦巻き部10231a、10231b、10232a、10232bが内側に配置される切欠部10233a1が形成されたアースブロック10233aと、アースブロック10233aにおける切欠部10233a1に対向して配置されサブコイル10231、10232をアースブロック10233aに固定するための固定片10233bと、を有する。アースブロック10233aおよび固定片10233bは、それぞれ、例えば銅のような金属から形成されている。また、アースブロック10233aには、厚さ方向に貫通する貫通孔10233a2が形成されている。また、固定片10233bには、固定片10233bの厚さ方向に貫通する貫通孔10233b1が形成されている。そして、固定片10233bは、アースブロック10233aの切欠部10233a1の内側にサブコイル10231、10232の一部が配置された状態でアースブロック10233aに固定されている。ここで、固定片10233bとアースブロック10233aとは、固定片10233bの貫通孔10233b1、アースブロック10233aの貫通孔10233b1および遮蔽板1024cに形成された貫通孔1024c3に挿通された螺子(図示せず)と螺子に螺号するナット(図示せず)とにより遮蔽板1024cに共締め固定されている。
【0022】
図1に戻って、高周波印加部102は、誘導コイル1023に高周波数(例えば周波数13.56MHz)の交流を印加することにより、チャンバ101内に供給された原料ガスまたはエッチャントガスに高周波数の電磁場を印加する。これにより、チャンバ101内にプラズマPLMが発生する。
【0023】
冷媒供給部171は、管状の誘導コイル1023に前述の管継手10231d、10232dを介して接続された冷媒管172を通じて、誘導コイル1023の内側に冷媒を供給する。冷媒としては、例えば純度99%以上の水を採用することができる。
【0024】
制御部200は、高周波印加部102がチャンバ101内にプラズマを発生させた状態を維持するように高周波印加部102を制御する。制御部200は、原料ガス供給部121、122、123によりSiHガス、Oガス、Nガスをチャンバ101内へ供給する第1状態と、エッチャントガス供給部111によりCFガスをチャンバ101内へ供給する第2状態と、が交互に切り替わるように原料ガス供給部121、122、123およびエッチャントガス供給部111を制御する。
【0025】
本実施の形態に係るプラズマ処理装置1によれば、誘導コイル1023が、金属から長尺の管状に形成され、冷媒供給部171が、誘導コイル1023の内側に冷媒を供給する。これにより、誘導コイル1023の温度が過度に上昇することが抑制されるので、誘導コイル1023の劣化を抑制することができる。
【0026】
また、本実施の形態に係る誘導コイル1023は、サブコイル10231、10232を有し、サブコイル10231の渦巻き部10231aの巻回方向が、渦巻き部10231bの巻回方向と逆向きになっている。また、サブコイル10232の渦巻き部10232aの巻回方向も、渦巻き部10232bの巻回方向と逆向きになっている。これにより、サブコイル10231、10232それぞれで発生する磁場の分布を均一にすることができるので、チャンバ101内に比較的均一なプラズマPLMを発生させることができる。
【0027】
(実施の形態2)
本実施の形態に係るプラズマ処理装置は、ステージ190に載置された基板にバイアスを印加するバイアス印加部を備える点で実施の形態1と相違する。図9に示すように、本実施の形態に係るプラズマ処理装置2は、チャンバ101と、ステージ190と、高周波印加部102と、バイアス印加部106、原料ガス供給部121、122、123と、エッチャントガス供給部111と、を備える。なお、図9において、実施の形態1と同様の構成については図1と同一の符号を付している。また、プラズマ処理装置2は、実施の形態1に係るプラズマ処理装置1と同様に、高周波印加部102、原料ガス供給部121、122、123およびエッチャントガス供給部111を制御する制御部200と、冷媒供給部171と、を備える。バイアス印加部106は、ステージ190に支持された基板Wに高周波のバイアスを印加する。バイアス印加部106は、ステージ190に対して0Vと-2000Vの負電圧との間で振動する高周波電圧(例えば周波数13.56MHzの高周波電圧)を印加する。バイアス印加部106は、高周波発生源1061と整合器1062とを有する。
【0028】
制御部200は、高周波印加部102がチャンバ101内にプラズマを発生させ、バイアス印加部106が基板Wに高周波バイアスを印加している状態を維持するように高周波印加部102およびバイアス印加部106を制御する。制御部200は、原料ガス供給部121、122、123によりSiHガス、Oガス、Nガスをチャンバ101内へ供給する第1状態と、エッチャントガス供給部111によりCFガスをチャンバ101内へ供給する第2状態と、が交互に切り替わるように原料ガス供給部121、122、123およびエッチャントガス供給部111を制御する。
【0029】
次に、本実施の形態に係るプラズマ処理装置2を用いて絶縁膜を成膜するための成膜処理について図10および図11を参照しながら説明する。まず、図11に示すように、一面に凹部または段差部が形成された基板を準備する準備工程を行う(ステップS1)。準備工程では、例えば図11(A)に示すような凹部TRが形成された基板W1を準備する。ここで、凹部TRのアスペクト比D1/W1は、10以下である。また、基板W1としては、例えばSi基板、サファイヤ基板、ガラス基板等が挙げられる。
【0030】
図10に戻って、次に、プラズマ処理装置2が、基板W1に高周波電圧を印加しながら基板W上に絶縁膜であるSiNを形成する成膜工程を行う(ステップS2)。成膜工程において使用する原料ガスは、SiHガス、Oガス、Nガスである。また、成膜工程においてチャンバ101へ供給するSiHガス、Oガス、Nガスの流量比は、1:2:20となるように設定されている。また、成膜工程における基板Wの温度は、40℃以下であることが好ましい。続いて、プラズマ処理装置2が、基板W1に高周波電圧を印加しながら絶縁膜であるSiN膜をドライエッチングするエッチング工程を行う(ステップS3)。エッチング工程において使用するエッチャントガスは、CFガスである。また、エッチング工程では、Oガスも使用する。また、エッチング工程において、チャンバ101へ供給するCFガス、Oガスの流量比は、100:7となるように設定することができる。ここで、チャンバ101内の圧力は、1Pa以上1.5Pa以下の圧力雰囲気となるように設定することが好ましい。
【0031】
ここで、1回のエッチング工程における絶縁膜のエッチング量は、1回の成膜工程における絶縁膜の成膜量の20%以下になるように設定されている。なお、1回のエッチング工程におけるエッチング量は、1回の成膜工程における成膜量の6.9%以上であることが好ましく、12%以上15%以下であることがより好ましい。また、エッチング工程におけるバイアス印加部106の出力電力は、成膜工程におけるバイアス印加部106の出力電力よりも小さくてもよい。
【0032】
その後、プラズマ処理装置2が、基板W1に対して行ったエッチング工程の回数が、予め設定された基準回数に到達したか否かを判定する(ステップS4)。ここでは、制御部200が、1つの基板W1に対して行われたエッチング工程の回数をカウントし、そのカウント値と予め設定された基準回数を示す値とを比較する。基準回数は、成膜する絶縁膜の厚さ、凹部TRの深さ等に応じて適宜設定することができるが、例えば3回に設定される。プラズマ処理装置2は、基板Wに対して行ったエッチング工程の回数が基準回数に到達していないと判定すると(ステップS4:No)、再びステップS2の処理を実行する。このようにして、プラズマ処理装置2は、エッチング工程の回数が基準回数に到達するまで、成膜工程とエッチング工程とを交互に複数回繰り返す。一方、成膜装置は、基板Wに対して行ったエッチング工程の回数が基準回数に到達したと判定すると(ステップS4:Yes)、成膜工程を行い(ステップS5)、一連の成膜処理が終了する。
【0033】
プラズマ処理装置2が、前述の成膜処理を行うことにより、図11(B)に示すような、一面に凹部TRを有する基板Wと、凹部TRの内側および基板Wの一面を覆う絶縁膜ILと、を備える半導体装置が生成される。この半導体装置は、凹部TRに絶縁膜ILが埋め込まれた構造を有する。そして、凹部TRが、その開口端部にテーパ部TPを有しており、テーパ部TPの基板Wの厚さ方向における長さD2が、凹部TRの基板Wの厚さ方向における深さD1の16%以下になっている。また、絶縁膜ILの平均表面粗さは、1nm以下である。また、テーパ部TPの基板Wの厚さ方向に直交する方向における長さW2は、長さD2の2倍以下の長さである。
【0034】
ところで、例えば引用文献1に記載された誘導結合プラズマ処理装置は、前述のような基板Wに形成された凹部TRに絶縁膜を埋め込む絶縁膜埋め込み方法で使用される場合がある。そして、凹部TRが絶縁膜で埋め込まれるまで絶縁膜の成膜を継続することによる一般的な絶縁膜埋込方法では、シリコン絶縁膜を形成する工程後におけるシリコン基板の上面の表面粗さが一般的な半導体装置へ適用する場合に必要とされる表面粗さに比べて大きい。このため、この絶縁膜埋め込み方法により作製されたシリコン基板の半導体装置への適用を考慮した場合、シリコン基板の上面に対してCMPを行うことが必須となり、その分、製造工程数が増加する。
【0035】
これに対して、本実施の形態に係る成膜方法では、成膜工程後における絶縁膜の表面粗さを一般的な半導体装置へ適用する場合に必要とされる表面粗さとしつつ、CMPを不要とすることができるので、CMP工程を削減することによる製造工程数の削減を図ることができる。また、本実施の形態に係る成膜方法では、1回のエッチング工程におけるエッチング量が、1回の成膜工程における成膜量の6.9%超且つ20.6%未満、詳細には12%以上15%以下である。これにより、この成膜方法を用いて作製された前述の半導体装置の絶縁膜ILの表面平均粗さを20nm以下にしつつ、テーパ部TPの基板Wの厚さ方向における長さが、凹部TRの基板Wの厚さ方向における深さの16%以下にすることができる。従って、基板Wへの絶縁膜ILの成膜前後における凹部TRの形状変化が低減されるので、凹部TRの形状変化に起因した半導体装置の設計特性からのずれを低減できる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば基板W上にSiN膜、AlN膜等の他の種類の膜を成膜するものであってもよい。
【0037】
以上、本発明の各実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態及び変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、MEMS(Micro Electron Mechanical System)、MOS-FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)等の電子デバイスの製造に好適である。
【符号の説明】
【0039】
1:プラズマ処理装置、101:チャンバ、102:高周波印加部、106:バイアス印加部、109:支持台、111:エッチャントガス供給部、111a,111e,121a,122a、123a:ガス貯留部、111b,112,121b,121e,122b,122e,123b,123e,125:供給管、111c,111d,121c,121d,122c,122d,123c,123d:流量調節バルブ、121,122,123:原料ガス供給部、141:誘電体窓、142:窓固定部材、171:冷媒供給部、172:冷媒管、181:真空ポンプ、182:排気管、190:ステージ、191:ヒータ、200:制御部、1011:チャンバ本体、1012:蓋体、1012a:導入路、1012b:開口部、1021,1061:高周波発生源、1022,1062:整合器、1023:誘導コイル、1024a,1024b:筐体、1024c:遮蔽板、1024c1,1024c3,10233b1,10235b1:貫通孔、1024c2,10234a1,10234a3:螺子孔、1024d:支持アーム、1025a,1025b:枠体、1091:支持フレーム、1092:ベース部材、1093:支持プレート、1121:第3部位、1122:第4部位、1123,1253:結合部、1251:第1部位、1252:第2部位、10231,10232:サブコイル、10231a,10231b,10232a,10232b:渦巻き部、10231c,10231d,10232c,10232d:管継手、10231e,10232e:立ち上げ部、10233,10234:固定部材、10233a:アースブロック、10233a1:切欠部、10233b,10234b:固定片、10234a:絶縁ブロック、10234a2:溝、10235:絶縁保持部、10235a:絶縁部材、10235a1:凹部、10235b:保持部材、10235b2:内鍔部、PLM:プラズマ、S1:領域、TP:テーパ部、TR:凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11