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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】地盤改良装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022198660
(22)【出願日】2022-12-13
(65)【公開番号】P2024084403
(43)【公開日】2024-06-25
【審査請求日】2022-12-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504045271
【氏名又は名称】株式会社システムプランニング
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 敏弘
【合議体】
【審判長】有家 秀郎
【審判官】太田 恒明
【審判官】▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-6409(JP,A)
【文献】特公平6-3015(JP,B2)
【文献】特開2013-83125(JP,A)
【文献】特開2006-37432(JP,A)
【文献】特開2008-57322(JP,A)
【文献】特開2011-69093(JP,A)
【文献】特開2014-88758(JP,A)
【文献】特開2018-35573(JP,A)
【文献】特開2021-169733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラなどで走行する装置本体に搭載した回転駆動源と、前記回転駆動源に設けたドリルロッドと、前記ドリルロッドから外周に張り出して設けた回転撹拌翼と、前記ドリルロッドの周囲に非回転状態に設けたケーシングと、前記ケーシングに取り付けた非回転の抵抗翼を備え、前記回転撹拌翼の回転力と、前記非回転の抵抗翼の抵抗によって土を撹拌させる地盤改良装置であって、
前記ドリルロッドの下部には、前記ドリルロッドと遊嵌状態となる非回転リングを設け、
前記非回転の抵抗翼は、
前記ケーシングと前記非回転リングにおのおの一端を固定して、前記回転攪拌翼より長くほぼ水平方向に張り出した上下の水平抵抗翼と、
前記上下の水平抵抗翼の張り出し端を垂直に連結して、前記回転撹拌翼の外側に配置した垂直抵抗翼と、を有し、
前記上下の水平抵抗翼の間に前記回転撹拌翼が位置しており、
前記ケーシングの外周に、鉛直方向に回転阻止板を凸設し、
前記回転阻止板を、前記装置本体から水平方向に突設して取り付けた案内板の縦溝内で鉛直方向に摺動可能に構成した、
地盤改良装置。
【請求項2】
回転しない前記ケーシングに沿って信号線を取り付け、
前記信号線には各種のセンサーを取り付けて、土砂の撹拌状態を地上部で把握できるように構成した、
請求項1に記載の地盤改良装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する撹拌翼と回転しない抵抗翼を併せ持つ地盤改良装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤を改良する装置として、回転する撹拌翼で土砂を撹拌しながら、注入口から硬化剤を吐出し、土砂と硬化剤を撹拌して円柱状の硬化柱を形成して地盤を改良する方法が知られている。
そのための装置として例えば特許第3747093号公報に記載された地盤改良装置が公知である。(図7
この装置では、回転式攪拌翼dが、ドリルロッドcの下部に固設され外方へ延びる下部回転式攪拌翼dと、該下部回転式攪拌翼の上方でドリルロッドcに固設され外方へ延びる上部回転式攪拌翼fとから構成してある。
そして、ケーシングbの下端部に固定され上部回転式攪拌翼fより長く水平方向に延びる水平軸部gと該水平軸部gの先端から垂直下方に延びて上部回転式攪拌翼fの外側を通る垂直軸部hとからなるブラケットが形成され、該ブラケットの垂直軸部hの下端からドリルロッドc側に向い、ドリルロッドcと非接触の位置まで延びると共に、下部回転式攪拌翼dと上部回転式攪拌翼fとの間に配置される非回転式攪拌翼aを固設した構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3747093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したような従来の改良装置では、次のような問題が存在する。
(1)回転しない撹拌翼aは、その先端が片持ちの状態であり、抵抗板として作用するための抵抗力は、すべてケーシングbの上端の固定力とドリルロッドcのガイド機能だけに依存している。
(2)ドリルロッドcの下端のビットdの付近には、硬化剤の吐出口eが形成してあり、この吐出口eから吐出した硬化剤と土砂とが撹拌することが期待しているが、その硬化状態など、地中での撹拌状態を把握することはできない。そのために撹拌の程度は作業員の経験や勘に頼よらざるを得ず、客観性に乏しいものであった。
(3)あるいは特開2016-217006号記載の発明にあるように、改良体よりも外側に張り出した「供回り防止翼」を周囲の地山に食い込ませて回転に抵抗させる装置も存在するが、軟弱な粘土層では供回りを完全には防止できないことが知られている。
(4)さらにはこの装置では、硬質の地山では「供回り防止翼」が地中への貫入の際の抵抗となってしまい貫入が困難となりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、クローラなどで走行する装置本体に搭載した回転駆動源と、前記回転駆動源に設けたドリルロッドと、前記ドリルロッドから外周に張り出して設けた回転撹拌翼と、前記ドリルロッドの周囲に非回転状態に設けたケーシングと、前記ケーシングに取り付けた非回転の抵抗翼を備え、前記回転撹拌翼の回転力と、前記非回転の抵抗翼の抵抗によって土を撹拌させる地盤改良装置であって、前記ドリルロッドの下部には、前記ドリルロッドと遊嵌状態となる非回転リングを設け、前記非回転の抵抗翼は、前記ケーシングと前記非回転リングにおのおの一端を固定して、前記回転攪拌翼より長くほぼ水平方向に張り出した上下の水平抵抗翼と、前記上下の水平抵抗翼の張り出し端を垂直に連結して、前記回転撹拌翼の外側に配置した垂直抵抗翼と、からなり、前記上下の水平抵抗翼の間に前記回転撹拌翼が位置しており、前記ケーシングの外周に、鉛直方向に回転阻止板を凸設し、前記回転阻止板を、前記装置本体から水平方向に突設して取り付けた案内板の縦溝内で鉛直方向に摺動可能に構成したことを特徴とする。
また、本願発明は、前記発明において、回転しない前記ケーシングに沿って信号線を取り付け、前記信号線には各種のセンサーを取り付けて、土砂の撹拌状態を地上部で把握できるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本願発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)撹拌時の抵抗部材となる非回転部の下端は、非回転リングに固定してあり、この非回転リングはドリルロッドの外周に遊嵌状態で相互に回転自在に取り付けてある。そのために回転しない抵抗体は、上端の固定部と、先端の非回転リングとで支持することができるので大きい抵抗力を発揮することができる。
(2)地中に侵入するケーシングは、その外部に添って鉛直方向に回転阻止板を凸設してある。そしてこの回転阻止板を、装置本体の案内板の縦溝に鉛直方向に摺動可能に配置してある。そのためにケーシングは、上端だけでなく下部でも回転に対する抵抗を与えることができ、大きい抵抗力を発揮することができる。
(3)回転しないケーシングに沿って信号線を取り付け、その信号線には各種のセンサーを取り付けてある。その結果、土砂の撹拌状態を地上部で把握でき、撹拌の程度を観察しながら撹拌位置の下降を行うことでき、良好な改良柱を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例の側面図。
図2】他の実施例の側面図。
図3】非回転部分を区別した説明図。
図4】回転部分を区別した説明図。
図5】ケーシングの回転を阻止する構造の説明図。
図6】ケーシングとドリルロッドの継ぎ足し状態の説明図。
図7】従来の装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例
【0009】
<1>全体の構成。(図1,2)
本発明に係る改良装置は、クローラなどで走行する走行装置に回転駆動源1を搭載し、この回転駆動源1にドリルロッド2を取り付け、そのドリルロッド2の下部には回転撹拌翼21を設ける。
さらにドリルロッド2を囲んで上端を非回転状態で固定したケーシング3を取り付け、このケーシング3の下部には非回転の抵抗翼(水平抵抗翼31、垂直抵抗翼32)を備える。
こうして回転攪拌翼21の回転と、非回転の抵抗翼(水平抵抗翼31、垂直抵抗翼32)の抵抗によって土を攪拌して地中に改良体の柱を形成するための地盤改良装置である。
【0010】
<2>非回転部。(図3
非回転状態のケーシング3の中間と下部に、おのおの基端を固定して、回転撹拌翼21より長くかつほぼ水平方向に延びる水平抵抗翼31を複数枚、設ける。
そして上下の水平抵抗翼31の張り出した端部を、垂直方向に伸びる垂直抵抗翼32で連結する。
この垂直抵抗翼32は、回転撹拌翼21の外側に位置するように配置してある。
その際に、上の水平抵抗翼31の内側端はケーシング3に固定し、下の水平抵抗翼31の内側端はドリルロッド2とは拘束関係になく、相互に自由に回転する遊嵌状態の非回転リング33に取り付ける。
この非回転リング33への固定位置は、非回転リング33を平面的に見た場合、両側に2か所、あるいは等分割した3か所など、対称位置に設ける。
そのために、非回転リング33にはその周囲から対等な外力が作用してバランスを維持することができ、各抵抗翼を安定して維持することができる。
また、水平抵抗翼31を正確な水平ではなく、上側では外側を下げ、下側では外側を上げる形状で取り付けると、地中での抵抗を減らすことができるが、それが「ほぼ水平」の意味である。
【0011】
<3>回転部。(図4
地盤改良装置の本体には、モータ、ギヤなどで構成した回転駆動部1を、クローラなどで走行する走行装置に立設したリーダに沿って上下動自在に取り付ける。
そしてこの回転駆動部1には、ドリルロッド2の上端を鉛直方向に取り付け、ドリルロッド2の下端には、回転撹拌翼21を直交方向に取り付ける。
このドリルロッド2は、その外径より内径の大きいケーシング3の内部に回転自在に位置している。
そして前記した、ケーシング3の中間と下部からほぼ水平に伸びる水平抵抗翼31の間には、ドリルロッド2から水平方向に、かつ放射状態で回転撹拌翼21を凸設させて設ける。
さらに、ドリルロッド2の下端にも、直交する方向に回転撹拌翼21を設ける。
さらに、ドリルロッド2の下端付近には、硬化剤を吐出する吐出口を開口して、土砂内に硬化剤を噴出させる。
【0012】
<4>ケーシングと駆動源の取り付け。
前記したように、ケーシング3はその上端を駆動源1に取り付ける。
このようにケーシング3はその上端を、駆動源1を介して走行装置に固定するから、ケーシング3は回転することがない。
【0013】
<5>ケーシングの回転阻止。(図5
ケーシング3の外側には、鉛直方向に回転阻止板34を凸設する。
一方、走行装置には不動の案内板11を水平方向に凸設し、中央には挿入孔12を開設し、その挿入孔12の周囲には縦溝13を溝状に形成する。
するとケーシング3の外周に鉛直に設けた回転阻止板34を、案内板11の縦溝13に沿って鉛直方向に摺動可能に収納することができる。
この縦溝13は、例えば平面的に対称位置に4か所設ける。
対向する2か所は回転阻止板34を挿入するために、他の2か所は、ケーシング3を上下方向に連結するボルトを通過させるためのものであるが、その数や配置に限定するものではない。
例えば改良する地盤が軟弱である場合、回転阻止板34を挿入する縦溝13が1か所であってもケーシング3の回転を阻止することが可能である。
【0014】
<6>ケーシングとドリルロッドの延長。(図6
地中で構築する改良体の鉛直方向の長さによってケーシング3、ドリルロッド2の全長が異なってくる。
そこで、ケーシング3、およびドリルロッド2ともに短い分割ケーシング3a、分割ドリルロッド2aとして構成しておき、順次接続して長手方向に延長するができるように構成する。
特に小型、中型機はセルフ式であるため、重量の大きい駆動モータが走行装置本体のリーダーの最上部に位置した場合、リーダーを垂直に起こすことが困難となる。
そこでリーダーを寝かせず、垂直の姿勢を維持させたまま、ケーシング3とドリルロッド2を側方から継ぎ足してゆく。
継ぎ足しのためには、ネジ接続、上下方向のボルト接続を採用する。
接続部には、Oリングなどのシール板を介在させて、セメントミルクや泥土の侵入を阻止する。もしセメントミルクがケーシング3内に侵入すると、ロッドの回転による接触によって発熱するという問題が生じるから、それを阻止するためである。
【0015】
<7>センサーの設置。
前記したように、本願発明のケーシング3は回転しない。
そこでケーシング3の内面に沿って、あるいはその外部に鉛直方向に取り付けた回転阻止板34に沿って信号線を取り付けることができる。
そして信号線の先端には圧力センサー、電気抵抗値センサーなどで検知装置を設けて信号線で情報を地上部に取り出す。
すると、ドリルロッド2の下端の吐出口から吐出した硬化剤と、周囲の土砂との撹拌の程度を、硬化剤の注入による地中内の圧力、すなわち未硬化改良体の変形状態を、地上部において把握することができる。
また電気抵抗器を取り付けておくと、改良体に撹拌不良による土塊が発生すると抵抗値が上がることから、地上においてリアルタイムで状況を把握することができる。
撹拌状態が良好でないことが分かれば、その地中の位置での撹拌時間、撹拌速度を調整してより良好な改良体を構築することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 :回転駆動源
11:案内板
12:挿入孔
13:縦溝
2 :ドリルロッド
21:回転撹拌翼
3 :ケーシング
31:水平抵抗翼
32:垂直抵抗翼
33:非回転リング
34:回転阻止板
2a:分割ドリルロッド
3a:分割ケーシング
a :非回転式撹拌翼
b :ケーシング
c :ドリルロッド
d :回転式攪拌翼
e :吐出口
f :上部回転式攪拌翼
g :水平軸部
h :垂直軸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7