(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電動弁制御装置および電動弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20241022BHJP
H02P 8/08 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
H02P8/08
(21)【出願番号】P 2023162857
(22)【出願日】2023-09-26
(62)【分割の表示】P 2023533379の分割
【原出願日】2022-12-28
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2022016471
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 勇介
(72)【発明者】
【氏名】成川 文太
(72)【発明者】
【氏名】荻原 開
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-329698(JP,A)
【文献】特開2021-185326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
H02P 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号を出力する回転角度センサーを有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記ステッピングモーターにパルスを入力する毎に前記回転角度センサーの信号に基づいて前記ローターの回転角度を取得し、
(3)前記回転角度の変化があらかじめ設定された変化パターンと一致したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、
前記変化パターンが、前記第2方向への回転を
一意に示す前記回転角度の変化を含むことを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項2】
前記変化パターンが、前記第1方向への回転を
一意に示す前記回転角度の変化をさらに含む、請求項1に記載の電動弁制御装置。
【請求項3】
前記変化パターンが、前記ステッピングモーターに所定の順番で繰り返し入力される複数個のパルスに対応する前記回転角度の変化を含む、請求項1に記載の電動弁制御装置。
【請求項4】
前記複数個のパルスの個数を「比較対象パルス数」としたとき、
前記電動弁制御装置が、直近の前記比較対象パルス数のパルスの入力に対する前記回転角度の変化を取得し、前記比較対象パルス数のパルスと各パルスに対応する前記回転角度の変化との組み合わせが、前記変化パターンのパルスと各パルスに対応する前記回転角度の変化との組み合わせと一致したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止する、請求項3に記載の電動弁制御装置。
【請求項5】
前記電動弁制御装置が、前記変化パターンを設定する動作において、前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第1方向に回転させているときに前記第2方向への回転を示す前記回転角度の変化を検出すると、前記複数個のパルスに対応する前記回転角度を取得し、当該回転角度に基づいて前記変化パターンを設定する、請求項3に記載の電動弁制御装置。
【請求項6】
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号を出力する回転角度センサーを有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記ステッピングモーターにパルスを入力する毎に前記回転角度センサーの信号に基づいて前記ローターの回転角度を取得し、
(3-1)前記第2方向への回転を
一意に示す前記回転角度の変化を検出したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、または、
(3-2)前記第2方向への回転を
一意に示す前記回転角度の変化を検出したあとに、前記第1方向への回転を
一意に示す前記回転角度の変化を検出したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止する、ことを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項7】
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号(以下、「回転角度信号」という。)を出力する回転角度センサーを有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記回転角度信号を取得し、
(3)前記回転角度信号の変化があらかじめ設定された変化パターンと一致したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、
前記変化パターンが、前記第2方向への回転を
一意に示す前記回転角度信号の変化を含むことを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項8】
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号(以下、「回転角度信号」という。)を出力する回転角度センサーを有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記回転角度信号を取得し、
(3-1)前記第2方向への回転を
一意に示す前記回転角度信号の変化を検出したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、または、
(3-2)前記第2方向への回転を
一意に示す前記回転角度信号の変化を検出したあとに、前記第1方向への回転を
一意に示す前記回転角度信号の変化を検出したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止する、ことを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項9】
前記電動弁が、前記ローターに取り付けられた永久磁石
と、前記弁本体に接合された円筒形状のキャンと、前記ローターとともに前記ステッピングモーターを構成するステーターと、前記ステーターを収容するハウジングと、を有し、
前記ローターが、前記キャンの内側に配置され、
前記ステーターと前記ハウジングとが、前記キャンが配置される内側空間を形成し、
前記ハウジングが、前記回転角度センサーが配置される空間と、当該空間と前記内側空間とを区画する壁部と、を有し、
前記回転角度センサーが、
前記壁部および前記キャンを介して前記永久磁石と径方向に向かい合い、前記永久磁石によって生じる磁場の回転角度に応じた信号を出力する、請求項1
、請求項6
、請求項7または請求項8に記載の電動弁制御装置。
【請求項10】
前記電動弁と、請求項1、請求項6、請求項
7または請求項
8に記載の電動弁制御装置と、を有する電動弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁制御装置および電動弁制御装置を有する電動弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の電動弁の一例を開示している。このような電動弁は、エアコンの冷凍サイクルに組み込まれる。電動弁は、弁本体と、弁体と、弁体を移動させるためのステッピングモーターと、を有している。ステッピングモーターは、ローターとステーターとを有している。ステッピングモーターにパルスが入力されるとローターが回転する。電動弁は、ローターの回転に応じて弁体を移動させる移動機構を有する。ローターは、基準位置から全開位置までの間で回転される。ローターが基準位置に向かう方向(第1方向)に回転すると、弁体が弁口に近づく。ローターが基準位置にあるとき、ローターに取り付けられた可動ストッパが弁本体に取り付けられた固定ストッパに接して、ローターの第1方向への回転が規制される。ローターが全開位置にあるとき、弁体が弁本体の弁口から最も離れる。
【0003】
電動弁は、電動弁制御装置によって制御される。電動弁制御装置は、初期化動作において、ステッピングモーターにパルスを入力してローターを第1方向に回転させ、ローターを基準位置に位置付ける。ステッピングモーターに入力するパルスの数は、可動ストッパが固定ストッパに接するために十分な数(以下、「初期化数」という。)である。初期化数は、ローターを全開位置から基準位置まで回転させるときにステッピングモーターに入力されるパルス数に基づいて設定される。ローターが第1方向に回転して可動ストッパが固定ストッパに接すると、ローターが基準位置に位置付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動弁制御装置は、ステッピングモーターに入力したパルス数が初期化数に達するまで、ステッピングモーターにパルスを入力する。そのため、電動弁制御装置は、ローターが基準位置に位置付けられた後もパルスを入力することがあり、初期化動作に長い時間がかかる。また、ローターが基準位置に位置付けられた後にステッピングモーターにパルスが入力されると、可動ストッパが固定ストッパに繰り返し衝突して騒音が発生する。特に、初期化動作の直前にローターが基準位置に近い位置にあると、騒音が長い時間発生する。また、可動ストッパが固定ストッパに繰り返し衝突すると可動ストッパ、固定ストッパおよび移動機構が損耗するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、電動弁の初期化動作にかかる時間を短くして騒音を抑制することができる電動弁制御装置および電動弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号を出力する回転角度センサーを有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記ステッピングモーターにパルスを入力する毎に前記回転角度センサーの信号に基づいて前記ローターの回転角度を取得し、
(3)前記回転角度の変化があらかじめ設定された変化パターンと一致したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、
前記変化パターンが、前記第2方向への回転を示す前記回転角度の変化を含むことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号を出力する回転角度センサーと、前記ローターの位置に応じた信号を出力する位置センサーと、を有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記ステッピングモーターにパルスを入力する毎に、前記回転角度センサーの信号に基づいて前記ローターの回転角度を取得し、かつ、前記位置センサーの信号に基づいて前記ローターの位置を取得し、
(3)前記回転角度の変化があらかじめ設定された変化パターンと一致し、かつ、前記ローターの位置があらかじめ設定された近接位置または前記近接位置よりも前記基準位置に近い位置であるとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、
前記変化パターンが、前記第2方向への回転を示す前記回転角度の変化を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明において、
前記変化パターンが、前記第1方向への回転を示す前記回転角度の変化をさらに含む、ことが好ましい。
【0010】
本発明において、
前記変化パターンが、前記ステッピングモーターに所定の順番で繰り返し入力される複数個のパルスに対応する前記回転角度の変化を含む、ことが好ましい。
【0011】
本発明において、
前記電動弁制御装置が、前記変化パターンを設定する動作において、前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第1方向に回転させているときに前記第2方向への回転を示す前記回転角度の変化を検出すると、前記複数個のパルスに対応する前記回転角度を取得し、当該回転角度に基づいて前記変化パターンを設定する、ことが好ましい。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号を出力する回転角度センサーを有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記ステッピングモーターにパルスを入力する毎に前記回転角度センサーの信号に基づいて前記ローターの回転角度を取得し、
(3-1)前記第2方向への回転を示す前記回転角度の変化を検出したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、または、
(3-2)前記第2方向への回転を示す前記回転角度の変化を検出したあとに、前記第1方向への回転を示す前記回転角度の変化を検出したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止する、ことを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号を出力する回転角度センサーと、前記ローターの位置に応じた信号を出力する位置センサーと、を有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記ステッピングモーターにパルスを入力する毎に、前記回転角度センサーの信号に基づいて前記ローターの回転角度を取得し、かつ、前記位置センサーの信号に基づいて前記ローターの位置を取得し、
(3-1)前記第2方向への回転を示す前記回転角度の変化を検出し、かつ、前記ローターの位置があらかじめ設定された近接位置または前記近接位置よりも前記基準位置に近い位置であるとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、または、
(3-2)前記第2方向への回転を示す前記回転角度の変化を検出したあとに、前記第1方向への回転を示す前記回転角度の変化を検出し、かつ、前記ローターの位置が前記近接位置もしくは前記近接位置よりも前記基準位置に近い位置であるとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明において、
前記電動弁が、前記ローターに取り付けられた永久磁石を有し、
前記回転角度センサーが、前記永久磁石によって生じる磁場の回転角度に応じた信号を出力する、ことが好ましい。
【0015】
本発明において、
前記電動弁が、前記ローターに取り付けられた永久磁石を有し、
前記ローターが、前記第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記第2方向に回転されると前記弁口から離れ、
前記回転角度センサーが、前記永久磁石によって生じる磁場の回転角度に応じた信号を出力し、
前記位置センサーが、前記磁場の強さに応じた信号を出力する、ことが好ましい。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号(以下、「回転角度信号」という。)を出力する回転角度センサーを有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記回転角度信号を取得し、
(3)前記回転角度信号の変化があらかじめ設定された変化パターンと一致したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、
前記変化パターンが、前記第2方向への回転を示す前記回転角度信号の変化を含むことを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号(以下、「回転角度信号」という。)を出力する回転角度センサーと、前記ローターの位置に応じた信号(以下、「位置信号」という。)を出力する位置センサーと、を有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記回転角度信号を取得し、かつ、前記位置信号を取得し、
(3)前記回転角度信号の変化があらかじめ設定された変化パターンと一致し、かつ、前記位置信号があらかじめ設定された近接位置または前記近接位置よりも前記基準位置に近い位置に対応する値であるとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、
前記変化パターンが、前記第2方向への回転を示す前記回転角度信号の変化を含むことを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号(以下、「回転角度信号」という。)を出力する回転角度センサーを有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記回転角度信号を取得し、
(3-1)前記第2方向への回転を示す前記回転角度信号の変化を検出したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、または、
(3-2)前記第2方向への回転を示す前記回転角度信号の変化を検出したあとに、前記第1方向への回転を示す前記回転角度信号の変化を検出したとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止する、ことを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、前記ローターの回転角度に応じた信号(以下、「回転角度信号」という。)を出力する回転角度センサーと、前記ローターの位置に応じた信号(以下、「位置信号」という。)を出力する位置センサーと、を有し、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターへのパルスの入力を開始して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記回転角度信号を取得し、かつ、前記位置信号を取得し、
(3-1)前記第2方向への回転を示す前記回転角度信号の変化を検出し、かつ、前記位置信号があらかじめ設定された近接位置または前記近接位置よりも前記基準位置に近い位置に対応する値であるとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止し、または、
(3-2)前記第2方向への回転を示す前記回転角度信号の変化を検出したあとに、前記第1方向への回転を示す前記回転角度信号の変化を検出し、かつ、前記位置信号が前記近接位置もしくは前記近接位置よりも前記基準位置に近い位置に対応する値であるとき、前記ステッピングモーターへのパルスの入力を停止する、ことを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁装置は、
前記電動弁と、前記電動弁制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電動弁制御装置が、
(1)ステッピングモーターへのパルスの入力を開始してローターを第1方向に回転させる、
(2)ステッピングモーターにパルスを入力する毎に回転角度センサーの信号に基づいてローターの回転角度を取得する、
(3)回転角度の変化があらかじめ設定された変化パターンと一致したとき、ステッピングモーターへのパルスの入力を停止する。
そして、変化パターンが、第2方向への回転を示す回転角度の変化を含む。
【0022】
または、本発明によれば、電動弁制御装置が、
(1)ステッピングモーターへのパルスの入力を開始してローターを第1方向に回転させる、
(2)ステッピングモーターにパルスを入力する毎に回転角度センサーの信号に基づいてローターの回転角度を取得する、
(3-1)第2方向への回転を示す回転角度の変化を検出したとき、ステッピングモーターへのパルスの入力を停止する、または、
(3-2)第2方向への回転を示す回転角度の変化を検出したあとに、第1方向への回転を示す回転角度の変化を検出したとき、ステッピングモーターへのパルスの入力を停止する。
【0023】
ステッピングモーターにパルスが入力されると、パルスに対応する駆動電流がステーターに供給され、ローターが回転する。ステッピングモーターには、複数個のパルス(すなわち駆動電流)が所定の順番で繰り返し入力される。そして、ローターが第1方向に回転されて基準位置に到達すると、電動弁はローターの第1方向への回転が規制された状態になる。この状態においてステッピングモーターにさらに複数個のパルスが入力されると、複数個のパルスに含まれる特定のパルスの入力によってローターが第2方向に回転し、その後に、複数個のパルスに含まれる他の特定のパルスの入力によってローターが第1方向に回転し、ローターが再び基準位置に到達する。そのため、第2方向への回転を示す回転角度の変化の検出に応じてステッピングモーターへのパルスの入力を停止することで、ローターが基準位置に到達したあとに速やかに初期化動作を終了することができる。したがって、電動弁の初期化動作にかかる時間を短くして騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例に係る電動弁装置を有するエアコンシステムのブロック図である。
【
図3】
図2の電動弁装置が有する弁本体アセンブリの断面図である。
【
図4】
図2の電動弁装置が有するステーターユニットの断面図である。
【
図5】
図2の電動弁装置が有するローターおよびステーターを示す図である。
【
図6】
図2の電動弁装置が有するコンピュータ、モータードライバ、磁気センサー、永久磁石およびステッピングモーターを説明する図である。
【
図7】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[1]入力時)。
【
図8】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[2]入力時)。
【
図9】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[3]入力時)。
【
図10】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[4]入力時)。
【
図11】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[5]入力時)。
【
図12】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[6]入力時)。
【
図13】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[7]入力時)。
【
図14】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[8]入力時)。
【
図15】ローターの第1方向の回転が規制されている状態において、ステッピングモーターにローターを第1方向に回転させるパルスを入力したときのローターの動きを説明する図である。
【
図16】ローターの第1方向の回転が規制されている状態において、ステッピングモーターにローターを第1方向に回転させるパルスを入力したときのローターの動きを説明する図である。(
図15の続き)。
【
図17】ローターの回転角度の変化の一例を示すグラフである。
【
図19】磁気センサーが出力する信号の一例を示すグラフである。
【
図20】
図2の電動弁装置が有するコンピュータが実行する初期化動作の一例を示すフローチャートである。
【
図21】
図2の電動弁装置が有するコンピュータが実行する変化パターン設定動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施例に係る電動弁装置1について、
図1~
図21を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施例に係る電動弁装置を有するエアコンシステムのブロック図である。
図2は、
図1の電動弁装置の断面図である。
図3は、
図2の電動弁装置が有する弁本体アセンブリの断面図である。
図4は、
図2の電動弁装置が有するステーターユニットの断面図である。
図5は、
図2の電動弁装置が有するローターおよびステーターを示す図である。
図5において、ローターおよびステーターを模式的に示す。
図6は、
図2の電動弁装置が有するコンピュータ、モータードライバ、磁気センサー、永久磁石およびステッピングモーター(ローター、ステーター)を説明する図である。
図6Aにおいて、コンピュータ、モータードライバ、磁気センサー、永久磁石、ローター、および、ステーターを模式的に示す。
図6Bは、複数個のパルスとステーターに供給される駆動電流との対応の一例を示す。
図7~
図14は、ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である。
図7~
図14は、パルスP[1]~P[8]入力時に対応している。
図7~
図14において、ローターおよびステーターを模式的に示している。
図15、
図16は、ローターの第1方向の回転が規制されている状態において、ステッピングモーターにローターを第1方向に回転させるパルスを入力したときのローターの動きを説明する図である。
図17は、ローターを第1方向に回転させたときの回転角度の変化の一例を示すグラフである。
図18は、変化パターン情報の一例を示す図である。
図19は、磁気センサーが出力する信号の一例を示すグラフである。
図20は、
図2の電動弁装置が有するコンピュータが実行する初期化動作の一例を示すフローチャートである。
図21は、
図2の電動弁装置が有するコンピュータが実行する変化パターン設定動作の一例を示すフローチャートである。
【0027】
図1に、車両に搭載されるエアコンシステム200の一例を示す。このエアコンシステム200は、配管205を介して順に接続された圧縮機201、凝縮器202、電動弁装置1(電動弁5)および蒸発器203を有している。電動弁装置1は、膨張弁である。エアコンシステム200は、エアコン制御装置210を有している。エアコン制御装置210は、電動弁装置1と通信可能に接続されている。エアコン制御装置210は、電動弁装置1を用いて配管205を流れる冷媒の流量を制御する。
【0028】
図2~
図4に示すように、電動弁装置1は、電動弁5と、電動弁制御装置90と、を有している。
【0029】
電動弁5は、弁本体アセンブリ7と、ステーターユニット50と、を有している。弁本体アセンブリ7は、弁本体10と、キャン20と、弁体30と、駆動機構40と、を有している。
【0030】
弁本体10は、例えば、アルミニウム合金などの金属製である。弁本体10は、本体部11と、円筒部12と、接続部13と、を有している。本体部11は、直方体形状を有している。円筒部12は、本体部11の上面から突出している。円筒部12は、本体部11にねじ構造により取り付けられている。本体部11には、弁室14と、流路15、16と、弁口17と、弁座18と、が設けられている。流路15は、弁室14に接続されている。流路16は、弁口17を介して弁室14に接続されている。弁座18は、弁室14において弁口17を囲んでいる。接続部13は、円環板形状を有している。接続部13の内周縁は、円筒部12の上部に接合されている。
【0031】
キャン20は、ステンレスなどの金属製である。キャン20は、円筒形状を有している。キャン20は、下端が開口しかつ上端が塞がれている。キャン20の下端は、接続部13の外周縁に接合されている。
【0032】
弁体30は、第1軸部31と、第2軸部32と、弁部33と、段部34と、を有している。第1軸部31は、円柱形状を有している。第2軸部32は、円柱形状を有している。第2軸部32の径は、第1軸部31の径より小さい。第2軸部32は、第1軸部31の上端に同軸に連設されている。段部34は、上方を向く円環状の平面である。段部34は、第1軸部31と第2軸部32との連設部分に配置されている。弁部33は、第1軸部31の下端に同軸に連設されている。弁部33は、弁口17と向かい合っている。
【0033】
駆動機構40は、弁体30を軸線L方向(
図2、
図3の上下方向)に移動させる。弁体30の移動によって弁口17が開閉する。駆動機構40は、ローター41と、弁軸ホルダー42と、ガイドブッシュ43と、ストッパ部材44と、を有している。
【0034】
ローター41は、円筒形状を有している。ローター41の外径は、キャン20の内径より若干小さい。ローター41は、キャン20の内側に配置される。ローター41は、弁本体10に対して回転可能であり、軸線L方向に移動可能である。ローター41は、複数のN極および複数のS極を有している。複数のN極および複数のS極は、ローター41の外周面に配置されている。複数のN極および複数のS極は、軸線L方向に延在している。複数のN極および複数のS極は、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、ローター41は、N極を12個有し、S極を12個有している。互いに隣り合うN極とS極との間の角度は、15度である。
【0035】
弁軸ホルダー42は、円筒形状を有している。弁軸ホルダー42は、下端が開口しかつ上端が塞がれている。弁軸ホルダー42の上壁部42aには支持リング45が固定されている。支持リング45は、ローター41と弁軸ホルダー42とを連結している。弁軸ホルダー42は、ローター41とともに回転する。弁軸ホルダー42は、可動ストッパ42sを有している。弁軸ホルダー42は、軸孔42bを有している。軸孔42bは、弁軸ホルダー42の上壁部42aに配置されている。軸孔42bには、弁体30の第2軸部32が軸線L方向に移動可能に配置される。第2軸部32には、抜け止め用のプッシュナット35が取り付けられている。弁軸ホルダー42の上壁部42aの下面にはワッシャー46が配置される。ワッシャー46と弁体30の段部34との間には閉弁ばね47が配置される。閉弁ばね47は、コイルばねであり、弁体30を弁口17に向けて押す。弁軸ホルダー42の内周面には、雌ねじ42cが形成されている。可動ストッパ42sは、ローター41に対して固定されている。
【0036】
ガイドブッシュ43は、基部43aと、支持部43bと、を有している。基部43aは、円筒形状を有している。基部43aは円筒部12の嵌合穴12aに圧入されている。支持部43bは、円筒形状を有している。支持部43bの外径は、基部43aの外径より小さい。支持部43bの内径は、基部43aの内径と同じである。支持部43bは、基部43aの上端に同軸に連設されている。支持部43bの外周面には、雄ねじ43cが形成されている。雄ねじ43cは、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cと螺合される。ガイドブッシュ43の内側には、弁体30の第1軸部31が配置される。ガイドブッシュ43は、弁体30を軸線L方向に移動可能に支持する。
【0037】
ストッパ部材44は、ガイドブッシュ43の基部43aに取り付けられている。ストッパ部材44は、固定ストッパ44sを有している。固定ストッパ44sは、弁本体10に対して固定されている。
【0038】
永久磁石48は、キャン20の内側においてローター41の上方に配置されている。永久磁石48は、円環板形状を有している。永久磁石48は、1つのN極と1つのS極とを有しており、N極とS極とは径方向に対向している。永久磁石48は、固定具49および支持リング45を介してローター41に取り付けられている。永久磁石48は、ローター41と同軸に配置されている。永久磁石48は、ローター41とともに回転し、ローター41とともに軸線L方向に移動する。
【0039】
ステーターユニット50は、ステーター60と、ハウジング70と、ケース80と、を有している。
【0040】
ステーター60は、円筒形状を有している。ステーター60は、A相ステーター61と、B相ステーター62と、を有している。
【0041】
A相ステーター61は、複数のクローポール型の極歯61a、61bを内周に有している。
図5において、A相ステーター61の径方向外方が上方に対応し、径方向内方が下方に対応する。極歯61aの先端は下方に向いており、極歯61bの先端は上方に向いている。極歯61aと極歯61bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、A相ステーター61は、極歯61aを12個有し、極歯61bを12個有している。互いに隣り合う極歯61aと極歯61bとの間の角度は、15度である。A相ステーター61のコイル61cが通電されると、極歯61aと極歯61bとは互いに異なる極性の磁極となる。
【0042】
B相ステーター62は、複数のクローポール型の極歯62a、62bを内周に有している。
図5において、B相ステーター62の径方向外方が上方に対応し、径方向内方が下方に対応する。極歯62aの先端は下方に向いており、極歯62bの先端は上方に向いている。極歯62aと極歯62bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、B相ステーター62は、極歯62aを12個有し、極歯62bを12個有している。互いに隣り合う極歯62aと極歯62bとの間の角度は、15度である。B相ステーター62のコイル62cが通電されると、極歯62aと極歯62bとは互いに異なる極性の磁極となる。
【0043】
A相ステーター61とB相ステーター62とは、同軸に配置されている。A相ステーター61は、B相ステーター62と接している。軸線L方向から見たときに互いに隣り合うA相ステーター61の極歯61aとB相ステーター62の極歯62aとの間の角度は、7.5度である。つまり、B相ステーター62は、極歯61aと極歯62aとが軸線L方向に並ぶ位置からA相ステーター61に対して軸線L周りに7.5度回転した位置にある。
図6Aに示すように、A相ステーター61のコイル61cの端子A1、A2およびB相ステーター62のコイル62cの端子B1、B2は、電動弁制御装置90(モータードライバ94)に接続されている。
【0044】
ステーター60の内側には、キャン20が配置される。キャン20の内側には、ローター41が配置される。ステーター60とローター41とはステッピングモーター66を構成する。
【0045】
ステッピングモーター66にパルスP(P[1]~P[8])が入力されることによりローター41が回転する。具体的には、ステッピングモーター66のステーター60にパルスPに応じた駆動電流が供給されることによりローター41が回転する。本明細書において、「ステッピングモーター66にパルスPが入力されること」は、「ステッピングモーター66のステーター60にパルスPに応じた駆動電流が供給されること」と同義である。パルスP[1]~P[8]が昇順または降順で繰り返しステッピングモーター66に入力される。すなわち、パルスP[1]~P[8]は、1周期分のパルスPであり、ステッピングモーター66に所定の順番で繰り返し入力される「複数個のパルスP」である。ステッピングモーター66のステップ角は3.75度である。
【0046】
ステッピングモーター66には、
図6Bに示すパルスP[1]~P[8]が順番に入力される。
図7~
図14に、パルスP[1]~P[8]が入力されたときのローター41とステーター60との位置関係の例を示す。
図7~
図14において、ローター41とステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)との位置関係を把握しやすくするため、基準となる極歯61aおよび基準となるローター41の磁極(S極)に印(黒丸)を付している。
【0047】
ローター41を第1方向(
図7~
図14において時計方向)に回転させる場合、ステッピングモーター66にパルスPを昇順(パルスP[1]~P[8]の順番)で繰り返し入力する。ローター41が第1方向に回転すると、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cとガイドブッシュ43の雄ねじ43cとのねじ送り作用によってローター41および弁軸ホルダー42が下方に移動する。すなわち、ローター41が弁口17に近づく。ローター41とともに永久磁石48も下方に移動する。ローター41(弁軸ホルダー42)が、閉弁ばね47を介して弁体30を下方に押す。弁体30が下方に移動して弁部33が弁座18に接する。このときのローター41の位置は、閉弁位置Rcである。この状態からローター41を第1方向にさらに回転させると、閉弁ばね47が圧縮されてローター41および弁軸ホルダー42が下方にさらに移動する。弁体30は下方に移動しない。そして、弁軸ホルダー42の可動ストッパ42sがストッパ部材44の固定ストッパ44sに接すると、ローター41の第1方向への回転が規制される。このときのローター41の位置は、基準位置Rxである。可動ストッパ42sと固定ストッパ44sとは、ローター41の第1方向への回転を規制するストッパ機構STである。
【0048】
ローター41の第1方向の回転が規制されている状態において、ステッピングモーター66にパルスPを昇順で入力したときのローター41の回転角度の変化について、
図15~
図17を参照して説明する。
図15、
図16において、ローター41とステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)との位置関係を把握しやすくするため、基準となる極歯61aおよび基準となるローター41の磁極(S極)に印(黒四角)を付している。
図15、
図16において、右方が第1方向に対応し、左方が第2方向に対応する。
図17において、横軸はステッピングモーター66に入力したパルス数を示し、縦軸はローター41の回転角度を示す。横軸の目盛は、1パルス毎に付している。縦軸の目盛は、ステップ角毎に付している。
図17において、ローター41が第1方向に回転すると回転角度が増加し、第2方向に回転すると回転角度が減少する。
【0049】
ステッピングモーター66にパルスPを昇順で入力するとローター41が第1方向に回転して回転角度が増加する(
図17のN0~N1)。そして、例えば、ステッピングモーター66にパルスP[1]を入力したとき、ローター41が基準位置Rxに位置付けられる(
図15A、
図17のN1)。このとき、可動ストッパ42sと固定ストッパ44sとが接しており、ローター41の第1方向への回転が規制されている。続いて、ステッピングモーター66にパルスP[2]、P[3]、P[4]、P[5]を入力すると、ローター41が回転せず、ローター41の回転角度が変化しない(
図15B~
図15E、
図17のN1~N2)。続いて、ステッピングモーター66にパルスP[6]を入力するとローター41が第2方向に回転する(
図16A、
図17のN2~N3)。このときのローター41の回転角度は、ステップ角の3倍の角度である。続いて、ステッピングモーター66にパルスP[7]、P[8]、P[1]を入力すると、パルスPを入力する毎にローター41が第1方向にステップ角ずつ回転して、ローター41が再び基準位置Rxに位置付けられる(
図16B~
図16D、
図17のN3~N4)。これ以降、パルスPの入力に応じて、ローター41の回転角度が
図17のN1~N4の期間と同じ変化を繰り返す。
【0050】
ローター41を第1方向と反対の第2方向(
図7~
図14において反時計方向)に回転させる場合、ステッピングモーター66にパルスPを降順(パルスP[8]~P[1]の順番)で繰り返し入力する。ローター41が第2方向に回転すると、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cとガイドブッシュ43の雄ねじ43cとのねじ送り作用によってローター41および弁軸ホルダー42が上方に移動する。すなわち、ローター41が弁口17から離れる。ローター41とともに永久磁石48も上方に移動する。ローター41(弁軸ホルダー42)がプッシュナット35を上方に押す。プッシュナット35とともに弁体30が上方に移動して、弁体30が弁座18から離れる。ローター41を第2方向にさらに回転させると、ローター41が全開位置Rzに到達する。ローター41が全開位置Rzにあるとき、弁体30が弁口17から最も離れる。
【0051】
ハウジング70は、合成樹脂製である。ハウジング70は、射出成形によって成形されている。ハウジング70は、ステーター60を収容している。ハウジング70は、ステーター60と一体成形(インサート成形)されていてもよい。ステーター60とハウジング70とを別々に作製し、ハウジング70の内側にステーター60を嵌め込んでもよい。ハウジング70およびステーター60は、ステーターユニット50の内側空間74を形成している。内側空間74にはキャン20が挿入され、ステーター60がキャン20の外周面に配置される。
【0052】
ケース80は、合成樹脂製である。ケース80は、ハウジング70の側方に配置されている。ケース80は、ハウジング70に接合されている。
【0053】
電動弁5において、弁口17、キャン20、弁体30、ローター41、弁軸ホルダー42、ガイドブッシュ43、永久磁石48、ステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。
【0054】
電動弁制御装置90は、メイン基板91Aと、サブ基板91Bと、を有している。メイン基板91Aは、ケース80に収容されている。サブ基板91Bは、ハウジング70とケース80とにまたがって配置されている。サブ基板91Bは、メイン基板91Aに電気的に接続されている。
【0055】
電動弁制御装置90は、
図1に示すように、不揮発性メモリ92と、通信装置93と、モータードライバ94と、磁気センサー95と、コンピュータ100と、を有している。これらは、メイン基板91Aおよびサブ基板91Bに実装されている。電動弁制御装置90は、エアコン制御装置210からの命令に基づいて、電動弁5を制御する。
【0056】
不揮発性メモリ92は、電源が切断された場合でも保持する必要があるデータを記憶する。不揮発性メモリ92は、例えば、EEPROMやフラッシュメモリである。不揮発性メモリ92には、初期化数Xと、変化パターン情報Jと、磁束密度判定値Kと、が記憶される。
【0057】
初期化数Xは、ローター41を基準位置Rxに位置付けるためにステッピングモーター66に入力されるパルスの数である。初期化数Xには、ローター41を第1方向に回転させたときに可動ストッパ42sが固定ストッパ44sに接するために十分な数が設定されている。初期化数Xは、ローター41を全開位置Rzから基準位置Rxまで回転させるときにステッピングモーター66に入力されるパルス数(フルストローク数)に基づいて設定されている。初期化数Xには、例えば、フルストローク数を1.2倍した値が設定されている。
【0058】
変化パターン情報Jは、ローター41が基準位置Rxにある状態において、ステッピングモーター66にパルスPを昇順で入力したときのローター41の回転角度の変化を示す情報である。ローター41が基準位置Rxにある状態とは、ストッパ機構STによってローター41の第1方向への回転が規制されている状態である。変化パターン情報Jは、例えば、工場出荷時に不揮発性メモリ92に記憶される。変化パターン情報Jは、磁気センサー95によって実際に検知された磁場の回転角度に基づいて設定される。本実施例において、変化情報はパルスP[1]~P[8]に対応して設定されている。変化パターン情報Jは、変化パターンに相当する。
【0059】
図18Aに、本実施例における変化パターン情報Jの一例を示す。変化パターン情報Jは、パルスPと変化情報との組み合わせが格納されている。変化情報は、ローター41の回転角度の変化に関する情報である。変化情報において、「1」が第1方向への回転を示し、「2」が第2方向への回転を示し、「0」が無回転(回転角度の変化なし)を示す。
図18Aの変化パターン情報Jは、ステッピングモーター66にパルスP[7]、P[8]、P[1]が順に入力されるとローター41が第1方向に回転し、パルスP[2]、P[3]、P[4]、P[5]、が順に入力されるとローター41が回転せず、パルスP[6]が入力されるとローター41が第2方向に回転することを示している。
【0060】
なお、変化パターン情報Jの変化情報には、上記「1」、「2」、「0」以外の情報が設定されていてもよい。例えば、
図18Bに示すように、変化パターン情報Jの変化情報には、パルスPに対応して変化したローター41の回転角度が設定されていてもよい。正の角度は第1方向への回転を示し、負の角度は第2方向への回転を示す。また、変化パターン情報Jの変化情報はパルスPに対応していなくてもよい。例えば、
図18Cに示すように、変化パターン情報Jには、変化情報とその順番が設定されていてもよい。変化パターン情報Jには、少なくとも第2方向への回転を示す変化情報が含まれていればよい。
【0061】
磁束密度判定値Kは、ローター41が近接位置Rkまたは近接位置Rkよりも基準位置Rxに近い位置にあるか否かの判定に用いられる。具体的には、磁束密度判定値Kには、ローター41が近接位置Rkに位置付けられたときに磁気センサー95によって検知される磁束密度の大きさ(磁場の強さ)に対応する値が設定されている。近接位置Rkは、例えば、基準位置Rxと閉弁位置Rcとの間の位置である。磁束密度判定値Kは、磁気センサー95によって実際に検知された磁束密度の大きさに基づいて設定される。磁束密度判定値Kは、例えば、工場出荷時に不揮発性メモリ92に記憶される。
【0062】
通信装置93は、有線通信バス220を介してエアコン制御装置210と通信可能に接続されている。エアコンシステム200は、例えば、Local Interconnect Network(LIN)やController Area Network(CAN)などの通信方式を採用している。なお、通信装置93は、エアコン制御装置210と無線通信可能に接続されていてもよい。
【0063】
モータードライバ94は、コンピュータ100から入力されるパルスPに基づいてステッピングモーター66に駆動電流を供給する。
図6Bに、パルスPとモータードライバ94が供給する駆動電流との対応の一例を示す。
図6Bにおいて、(+)は、端子A1から端子A2への駆動電流、または、端子B1から端子B2への駆動電流を供給することを示し、(-)は、端子A2から端子A1への駆動電流、または、端子B2から端子B1への駆動電流を供給することを示し、(0)は、駆動電流を供給しないことを示す。
【0064】
磁気センサー95は、サブ基板91Bに実装されている。磁気センサー95は、キャン20の上端近傍に配置されている。磁気センサー95は、キャン20を介して永久磁石48と横方向に向かい合う。なお、サブ基板91Bをキャン20の上方に配置し、磁気センサー95が、キャン20を介して永久磁石48と軸線L方向に向かい合ってもよい。
【0065】
磁気センサー95は、ローター41に取り付けられた永久磁石48によって生じる磁場を検知する。
【0066】
磁気センサー95は、磁場の回転角度に応じた信号(回転角度信号Sa)を出力する。回転角度信号Saは、ローター41の回転角度に応じた信号である。磁気センサー95は、ローター41の回転角度に応じた信号を出力する回転角度センサーである。なお、電動弁制御装置90において、回転角度センサーとして、磁気センサー以外の他の種類のセンサーを採用してもよい。
【0067】
磁気センサー95は、磁束密度の大きさに応じた信号(磁束密度信号Sm)を出力する。磁気センサー95によって検知される磁束密度の大きさは、永久磁石48(ローター41)の軸線L方向の位置に応じて変化する。磁気センサー95によって検知される磁束密度の大きさは、ローター41が基準位置Rxにあるとき最も小さく、ローター41が全開位置Rzにあるとき最も大きくなる。磁束密度信号Smは、ローター41の位置に応じた信号(位置信号)である。磁気センサー95は、ローター41の位置に応じた信号を出力する位置センサーである。なお、電動弁制御装置90において、位置センサーとして、磁気センサー以外の他の種類のセンサーを採用してもよい。
【0068】
図19に、ローター41が基準位置Rx(パルス数=0)から全開位置Rz(パルス数=500)まで回転されたときの回転角度信号Saおよび磁束密度信号Smの一例を示す。
図19において、実線が回転角度信号Saを示すグラフであり、破線が磁束密度信号Smを示すグラフである。横軸が、パルス数である。縦軸が、磁気センサー95が出力する角度データおよび磁束密度の大きさである。回転角度信号Saが示す値(角度データ)は、0~360度に対応している。磁束密度信号Smが示す値(磁束密度の大きさ)は、永久磁石48が下方に移動すると小さくなり、永久磁石48が上方に移動すると大きくなる。
【0069】
本実施例において、回転角度信号Saは、ローター41の角度に応じた電圧値である。コンピュータ100は、回転角度信号SaをA/D変換して得た値(角度データ)を用いる。角度データを用いてローター41の回転角度が算出される。コンピュータ100は、回転角度信号Sa(角度データ)をローター41の回転角度を示す情報として用いてもよい。
【0070】
本実施例において、磁束密度信号Smは、ローター41の位置に応じた電圧値である。コンピュータ100は、磁束密度信号SmをA/D変換して得た値をローター41の位置を示す情報として用いる。
【0071】
コンピュータ100は、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースおよびA/D変換器などが1つのパッケージに組み込まれた組込機器用のマイクロコンピュータである。コンピュータ100は、不揮発性メモリ92、通信装置93およびモータードライバ94を含んでいてもよい。コンピュータ100は、CPUがROMに格納されたプログラムを実行することにより、回転制御部101、回転角度取得部102、位置取得部103および位置判定部104として機能する。
【0072】
回転制御部101は、ステッピングモーター66にパルスPを入力してローター41を第1方向または第2方向に回転させる。具体的には、回転制御部101は、エアコン制御装置210から受信した命令に基づいて、モータードライバ94にパルスP[1]~P[8]を入力する。モータードライバ94は、入力されたパルスP[1]~P[8]に応じて、A相ステーター61のコイル61cおよびB相ステーター62のコイル62cに駆動電流を供給する。
【0073】
回転角度取得部102は、ローター41の回転角度を取得する。具体的には、回転角度取得部102は、回転制御部101がステッピングモーター66にパルスPを入力する毎に磁気センサー95が出力する回転角度信号Saに基づいてローター41の回転角度を取得する。
【0074】
位置取得部103は、ローター41の軸線L方向の位置を取得する。具体的には、位置取得部103は、回転制御部101がステッピングモーター66にパルスPを入力する毎に磁気センサー95が出力する磁束密度信号Smに基づいて磁束密度の大きさ(ローター41の位置)を取得する。
【0075】
位置判定部104は、ローター41が基準位置Rxに位置付けられたか否かを判定する。具体的には、位置判定部104は、回転角度取得部102によって取得されたローター41の回転角度の変化を変化パターン情報Jと比較する。また、位置判定部104は、位置取得部103によって取得された磁束密度の大きさを磁束密度判定値Kと比較する。そして、位置判定部104は、ローター41の回転角度の変化が変化パターン情報Jと一致し、かつ、磁束密度の大きさが磁束密度判定値K以下であるとき、ローター41が基準位置Rxに位置付けられたと判定する。
【0076】
次に、電動弁制御装置90の初期化動作の一例を、
図20を参照して説明する。電動弁制御装置90は、初期化動作を実行することによって、ローター41を基準位置Rxに位置付ける。
【0077】
電動弁制御装置90(具体的にはコンピュータ100)は、エアコン制御装置210から初期化命令を受信すると(S110)、ステッピングモーター66へのパルスP(昇順)の入力を開始して、ローター41を第1方向に回転させる(S120)。電動弁制御装置90は、回転制御部101として機能する。これにより、パルスPに応じた駆動電流がステーター60に供給され、ローター41が第1方向に回転する。
【0078】
電動弁制御装置90は、パルスPの入力毎に、回転角度信号Saに基づいてローター41の回転角度を取得する(S130)。電動弁制御装置90は、回転角度取得部102として機能する。
【0079】
電動弁制御装置90は、パルスPの入力毎に、磁束密度信号Smに基づいて磁束密度の大きさを取得する(S140)。電動弁制御装置90は、位置取得部103として機能する。
【0080】
電動弁制御装置90は、初期化動作において入力したパルスPの数が初期化数X以上であったとき(S150でY)、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止する(S160)。そして、電動弁制御装置90は、ローター41が基準位置Rxに位置付けられたことを確認できないと判定して、エアコン制御装置210に初期化動作が異常終了したことを通知する(S170)。
【0081】
電動弁制御装置90は、初期化動作において入力したパルスPの数が初期化数Xより小さいとき(S150でN)、ローター41の回転角度の変化が変化パターン情報Jと一致したか否かを判定する(S180)。電動弁制御装置90は、位置判定部104として機能する。具体的には、電動弁制御装置90は、直近8個のパルスPの入力に対するローター41の回転角度の変化を取得する。そして、電動弁制御装置90は、直近8個のパルスPと各パルスPに対応する回転角度の変化との組み合わせが、変化パターン情報JのパルスPと変化情報との組み合わせと一致するか否かを判定する。
【0082】
電動弁制御装置90は、ローター41の回転角度の変化が変化パターン情報Jと一致しなかったとき(S180でN)、ステップS130に戻る。
【0083】
電動弁制御装置90は、ローター41の回転角度の変化が変化パターン情報Jと一致したとき(S180でY)、ローター41の位置が近接位置Rkまたは近接位置Rkよりも基準位置Rxに近い位置にあるか否かを判定する(S190)。電動弁制御装置90は、位置判定部104として機能する。具体的には、電動弁制御装置90は、直近のパルスPの入力に応じて取得した磁束密度の大きさが磁束密度判定値K以下であるか否かを判定する。
【0084】
電動弁制御装置90は、磁束密度の大きさが磁束密度判定値Kより大きいとき(S190でN)、ローター41の位置が近接位置Rkまたは近接位置Rkよりも基準位置Rxに近い位置にないと判定して、ステップS130に戻る。なお、電動弁制御装置90は、磁束密度の大きさが磁束密度判定値Kより大きいとき(S190でN)、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止し(S160)、ローター41が基準位置Rx以外の位置で第1方向への回転が規制されたと判定して、エアコン制御装置210に初期化動作が異常終了したことを通知してもよい(S170)。
【0085】
電動弁制御装置90は、磁束密度の大きさが磁束密度判定値K以下のとき(S190でN)、ローター41の位置が近接位置Rkまたは近接位置Rkよりも基準位置Rxに近い位置にあると判定して、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止する(S210)。電動弁制御装置90は、変化パターン情報Jのうち無回転の変化情報に対応するパルスP(
図18Aの変化パターン情報JにおけるパルスP[2]、P[3]、P[4]、P[5])を最後の入力として、パルスPの入力を停止することが好ましい。そして、電動弁制御装置90は、ローター41が基準位置Rxに位置付けられたと判定して、エアコン制御装置210に初期化動作が正常終了したことを通知する(S220)。
【0086】
なお、上述した初期化動作において、ローター41の位置の判定に係る動作(S140、S190)を省略してもよい。しかしながら、初期化動作にローター41の位置の判定に係る動作を含めることで、例えば、異物詰まりや故障などによって、ローター41が基準位置Rx以外の位置で第1方向への回転が規制された場合に、電動弁制御装置90が、ローター41が基準位置Rxに位置付けられたと誤って判定することを抑制できる。
【0087】
エアコン制御装置210は、電動弁5の初期化動作が正常終了した旨の通知を受けると、配管205を流れる冷媒の流量の制御を開始する。また、エアコン制御装置210は、電動弁5の初期化動作が異常終了した旨の通知を受けると、電動弁装置1において変化パターン情報Jを再設定するために、電動弁制御装置90に変化パターン設定命令を送信する。
【0088】
次に、電動弁制御装置90の変化パターン設定動作の一例を、
図21を参照して説明する。電動弁制御装置90は、変化パターン設定動作を実行することによって、変化パターン情報Jおよび磁束密度判定値Kを設定する。
【0089】
電動弁制御装置90は、エアコン制御装置210から変化パターン設定命令を受信すると(S310)、ステッピングモーター66へのパルスP(昇順)の入力を開始して、ローター41を第1方向に回転させる(S320)。これにより、パルスPに応じた駆動電流がステーター60に供給され、ローター41が第1方向に回転する。
【0090】
電動弁制御装置90は、パルスPの入力毎に、磁気センサー95の回転角度信号Saに基づいてローター41の回転角度を取得する(S330)。
【0091】
電動弁制御装置90は、パルスPの入力毎に、磁気センサー95の磁束密度信号Smに基づいて磁束密度の大きさを取得する(S340)。
【0092】
電動弁制御装置90は、変化パターン設定動作において入力したパルスPの数が初期化数X以上であったとき(S350でY)、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止する(S360)。そして、電動弁制御装置90は、変化パターン情報Jおよび磁束密度判定値Kを正常に設定できなかったと判定して、エアコン制御装置210に変化パターン設定動作が異常終了したことを通知する(S370)。
【0093】
電動弁制御装置90は、変化パターン設定動作において入力したパルスPの数が初期化数Xより小さいとき(S350でN)、第2方向への回転を示すローター41の回転角度の変化があったか否かを判定する(S380)。第2方向への回転を示すローター41の回転角度の変化は、例えば、
図17のN2~N3の期間に示す回転角度の変化である。
【0094】
電動弁制御装置90は、第2方向への回転を示すローター41の回転角度の変化がなかったとき(S380でN)、ステップS330に戻る。
【0095】
電動弁制御装置90は、第2方向への回転を示すローター41の回転角度の変化があったとき(S380でY)、パルスPの1周期分に対応するローター41の回転角度を取得したか否かを判定する(S390)。パルスPの1周期分に対応するローター41の回転角度は、例えば、
図17のN3~N5の期間に示す回転角度である。具体的には、電動弁制御装置90は、第2方向への回転を示すローター41の回転角度の変化があったあとに8個のパルスP(パルスP[1]~P[8]を含む)がステッピングモーター66に入力され、各パルスPに対応するローター41の回転角度を取得したか否かを判定する。
【0096】
電動弁制御装置90は、パルスPの1周期分に対応するローター41の回転角度を取得していないとき(S390でN)、ステップS330に戻る。
【0097】
電動弁制御装置90は、パルスPの1周期分に対応するローター41の回転角度を取得したとき(S390でY)、当該回転角度に基づいて変化パターン情報Jを生成して不揮発性メモリ92に記憶する。また、電動弁制御装置90は、直近のパルスPの入力に応じて取得した磁束密度の大きさに基づいてローター41が近接位置Rkにあるときの磁束密度の大きさを算出し、当該磁束密度の大きさを磁束密度判定値Kとして不揮発性メモリ92に記憶する(S400)。
【0098】
電動弁制御装置90は、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止する(S410)。そして、電動弁制御装置90は、変化パターン情報Jおよび磁束密度判定値Kを正常に設定できたと判定して、エアコン制御装置210に変化パターン設定動作が正常終了したことを通知する(S370)。
【0099】
エアコン制御装置210は、電動弁5の変化パターン設定動作が正常終了した旨の通知を受けると、電動弁制御装置90に初期化命令を送信する。また、エアコン制御装置210は、電動弁5の変化パターン設定動作が異常終了した旨の通知を受けると、エアコンシステム200を停止したり、エアコンシステム200を縮退動作させたりするなど、異常発生時の動作を実行する。
【0100】
また、電動弁制御装置90は、例えば、工場出荷時において、変化パターン情報Jが不揮発性メモリ92に記憶されていないとき、変化パターン設定動作を実行して、変化パターン情報Jを設定する。
【0101】
以上説明したように、本実施例に係る電動弁装置1は、電動弁5と、電動弁5を制御する電動弁制御装置90とを有している。電動弁5は、弁口17を有する弁本体10と、ローター41を有するステッピングモーター66と、ローター41が第1方向に回転されると弁口17に近づきかつローター41が第2方向に回転されると弁口17から離れる弁体30と、ローター41が基準位置Rxにあるときにローター41の第1方向への回転を規制するストッパ機構STと、を有する。電動弁制御装置90は、ローター41の回転角度に応じた信号(回転角度信号Sa)およびローター41の位置に応じた信号(磁束密度信号Sm)を出力する磁気センサー95を有している。
【0102】
電動弁制御装置90は、ローター41を基準位置Rxに位置付ける初期化動作において、
(1)ステッピングモーター66へのパルスPの入力を開始してローター41を第1方向に回転させ、
(2)ステッピングモーター66にパルスPを入力する毎に、磁気センサー95の回転角度信号Saに基づいてローター41の回転角度を取得し、かつ、磁気センサー95の磁束密度信号Smに基づいてローター41の位置を取得し、
(3)ローター41の回転角度の変化が変化パターン情報Jと一致し、かつ、ローター41の位置が近接位置Rkまたは近接位置Rkよりも基準位置Rxに近い位置であるとき、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止する。
変化パターン情報Jが、第2方向への回転を示す回転角度の変化を含む。
【0103】
ステッピングモーター66にパルスPが入力されると、パルスPに対応する駆動電流がステーター60に供給され、ローター41が回転する。ステッピングモーター66には、パルスP[1]~P[8](すなわち駆動電流)が所定の順番で繰り返し入力される。そして、ローター41が第1方向に回転されて基準位置Rxに到達すると、電動弁5はローター41の第1方向への回転が規制された状態になる。この状態においてステッピングモーター66にさらにパルスP[1]~P[8]が入力されると、パルスP[1]~P[8]に含まれる特定のパルスPの入力によってローター41が第2方向に回転し、その後に、パルスP[1]~P[8]に含まれる他の特定のパルスPの入力によってローター41が第1方向に回転し、ローター41が再び基準位置Rxに到達する。そのため、第2方向への回転を示すローター41の回転角度の変化の検出に応じてステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止することで、ローター41が基準位置Rxに到達したあとに速やかに初期化動作を終了することができる。したがって、電動弁5の初期化動作にかかる時間を短くして騒音を抑制することができる。
【0104】
また、変化パターン情報Jが、第1方向への回転を示す回転角度の変化をさらに含む。変化パターン情報Jが、ステッピングモーター66に所定の順番で繰り返し入力されるパルスP[1]~P[8]に対応する回転角度の変化を含む。このようにすることで、ローター41が基準位置Rxに位置付けられたことをより確実に判定できる。
【0105】
また、電動弁制御装置90が、変化パターン設定動作において、ステッピングモーター66にパルスPを入力してローター41を第1方向に回転させているときに第2方向への回転を示すローター41の回転角度の変化を検出すると、パルスP[1]~P[8]に対応する回転角度を取得し、当該回転角度に基づいて変化パターン情報Jを設定する。このようにすることで、電動弁5の経年変化などが生じた場合に、当該電動弁5に適した変化パターン情報Jを再設定することができる。
【0106】
上述した実施例において、電動弁制御装置90は、ローター41の回転角度の変化があらかじめ設定された変化パターン情報Jと一致し、かつ、ローター41の位置があらかじめ設定された近接位置Rkまたは近接位置Rkよりも基準位置Rxに近い位置である(磁束密度の大きさが磁束密度判定値K以下である)とき、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止するものである。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されるものではない。
【0107】
例えば、電動弁制御装置90は、ローター41の位置(磁束密度の大きさ)の判定を行わず、ローター41の回転角度の変化と変化パターン情報Jとの一致のみ判定して、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止するものであってもよい。または、電動弁制御装置90は、回転角度信号Saの変化とあらかじめ設定された変化パターンとの一致を判定するようにしてもよい。
【0108】
または、電動弁制御装置90は、初期化動作において、
(1)ステッピングモーター66へのパルスPの入力を開始してローター41を第1方向に回転させ、
(2)ステッピングモーター66にパルスPを入力する毎に磁気センサー95の回転角度信号Saに基づいてローター41の回転角度を取得し、
(3-1)第2方向への回転を示す回転角度の変化を検出したとき、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止し、または、
(3-2)第2方向への回転を示す回転角度の変化を検出したあとに、第1方向への回転を示す回転角度の変化を検出したとき、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止する、ようにしてもよい。
【0109】
または、電動弁制御装置90は、初期化動作において、
(1)ステッピングモーター66へのパルスPの入力を開始してローター41を第1方向に回転させ、
(2)ステッピングモーター66にパルスPを入力する毎に、磁気センサー95の回転角度信号Saに基づいてローター41の回転角度を取得し、かつ、磁気センサー95の磁束密度信号Smに基づいてローター41の位置を取得し、
(3-1)第2方向への回転を示す回転角度の変化を検出し、かつ、ローター41の位置が近接位置Rkまたは近接位置Rkよりも基準位置Rxに近い位置であるとき、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止し、または、
(3-2)第2方向への回転を示す回転角度の変化を検出したあとに、第1方向への回転を示す回転角度の変化を検出し、かつ、ローター41の位置が近接位置Rkもしくは近接位置Rkよりも基準位置Rxに近い位置であるとき、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止する、ようにしてもよい。
【0110】
これらにようにすることで、より簡易的な判定によって、ローター41が基準位置Rxに位置付けられたか否かを判定できる。
【0111】
上述した実施例では、磁気センサー95が永久磁石48によって生じる磁場を検知するものであったが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、電動弁装置1において、永久磁石48を省略して、磁気センサー95がローター41の磁極によって生じる磁場を検知するようにしてもよい。
【0112】
上述した実施例では、電動弁制御装置90が、変化パターン設定命令の受信に応じて変化パターン情報Jを設定するものであった。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されるものではない。電動弁制御装置90は、初期化動作においてローター41が基準位置Rxに位置付けられたことを確認できないと判定したとき(
図20のS170)、変化パターン情報Jを再設定するようにしてもよい。具体的には、電動弁制御装置90は、初期化動作において取得したローター41の回転角度において、第2方向への回転を示すローター41の回転角度の変化があったときからパルスPの1周期分に対応するローター41の回転角度を保持する。そして、電動弁制御装置90は、ローター41が基準位置Rxに位置付けられたことを確認できないと判定したとき、保持した回転角度に基づいて変化パターン情報Jを再設定する。
【0113】
本明細書において、「円筒」や「円柱」等の部材の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材にも用いられている。例えば、「円筒形状の部材」は、円筒形状の部材と実質的に円筒形状の部材とを含む。
【0114】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1…電動弁装置、5…電動弁、7…弁本体アセンブリ、10…弁本体、11…本体部、12…円筒部、12a…嵌合穴、13…接続部、14…弁室、15…流路、16…流路、17…弁口、18…弁座、20…キャン、30…弁体、31…第1軸部、32…第2軸部、33…弁部、34…段部、35…プッシュナット、40…駆動機構、41…ローター、42…弁軸ホルダー、42a…上壁部、42b…軸孔、42c…雌ねじ、42s…可動ストッパ、43…ガイドブッシュ、43a…基部、43b…支持部、43c…雄ねじ、44…ストッパ部材、44s…固定ストッパ、45…支持リング、46…ワッシャー、47…閉弁ばね、48…永久磁石、49…固定具、50…ステーターユニット、60…ステーター、61…A相ステーター、61a…極歯、61b…極歯、61c…コイル、62…B相ステーター、62a…極歯、62b…極歯、62c…コイル、66…ステッピングモーター、70…ハウジング、74…内側空間、80…ケース、ST…ストッパ機構、90…電動弁制御装置、91A…メイン基板、91B…サブ基板、92…不揮発性メモリ、93…通信装置、94…モータードライバ、95…磁気センサー、100…コンピュータ、101…回転制御部、102…回転角度取得部、103…位置取得部、104…位置判定部、200…エアコンシステム、201…圧縮機、202…凝縮器、203…蒸発器、205…配管、210…エアコン制御装置、220…有線通信バス、P…パルス、L…軸線、X…初期化数、J…変化パターン情報、K…磁束密度判定値、Rx…基準位置、Rk…近接位置、Rc…閉弁位置、Rz…全開位置、Sa…回転角度信号、Sm…磁束密度信号