(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】撹拌翼及び撹拌構造体
(51)【国際特許分類】
B01F 27/1111 20220101AFI20241022BHJP
B01F 27/96 20220101ALI20241022BHJP
B01F 27/81 20220101ALI20241022BHJP
B01F 27/07 20220101ALI20241022BHJP
【FI】
B01F27/1111
B01F27/96
B01F27/81
B01F27/07
(21)【出願番号】P 2023199437
(22)【出願日】2023-11-24
【審査請求日】2023-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501002460
【氏名又は名称】阪和化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【氏名又は名称】小林 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【氏名又は名称】山本 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100224650
【氏名又は名称】野口 晴加
(72)【発明者】
【氏名】町井 秀一郎
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-038027(JP,A)
【文献】特公昭45-006223(JP,B1)
【文献】特開昭52-053565(JP,A)
【文献】特開2022-028574(JP,A)
【文献】特表2023-544244(JP,A)
【文献】特開昭54-093260(JP,A)
【文献】特開2020-097012(JP,A)
【文献】実開昭53-074773(JP,U)
【文献】実開昭51-141862(JP,U)
【文献】特開昭63-059341(JP,A)
【文献】実開昭48-053666(JP,U)
【文献】実開昭60-155933(JP,U)
【文献】実開昭51-003959(JP,U)
【文献】実開平03-032933(JP,U)
【文献】実公昭50-043797(JP,Y1)
【文献】特開2015-199437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/1111
B01F 27/96
B01F 27/81
B01F 27/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被撹拌物を撹拌するために、撹拌槽内部に設置され、撹拌時の回転軸となる上下方向に延びる撹拌軸に取り付けられる撹拌翼であって、
前記撹拌軸に取り付けられ、水平方向に延びると共に上下方向に離隔した位置に配置される円板状の上円板及び下円板と、
前記上円板の上面に設置され、前記被撹拌物に進入する際に前記被撹拌物に衝撃力を作用させる上刃と、
前記下円板の下面に設置され、前記被撹拌物に進入する際に前記被撹拌物に衝撃力を作用させる下刃と、
前記上円板及び前記下円板の少なくとも一方に設けられ、前記上円板及び前記下円板で区画される空間に連通する開口と、
前記上円板及び前記下円板の間に取り付けられ、前記開口から流入した前記被撹拌物を水平外方向に吐き出す板状の羽根板とを備
え、
前記上刃及び前記下刃の各々は、周方向に所定間隔で複数設けられ、
前記上刃及び前記下刃の各々は、前記上円板及び前記下円板の各々の外周縁近傍において外周縁に沿って設けられ、
前記上刃及び前記下刃の各々は、その後端に上下方向の頂点が位置し、前記後端から先端に向かって二段階に傾斜した鋸刃形状を有し、上下方向視において前記後端が前記上円板及び前記下円板の外周縁上に配置されると共に、前記先端が前記後端よりも前記撹拌軸側且つ前記撹拌軸の回転方向側に配置される、撹拌翼。
【請求項2】
前記上円板、前記下円板及び前記羽根板の各々は、前記撹拌軸にボスを介して取り付けられ、前記上円板及び前記羽根板の各々は、前記ボスと一体的に接続され、前記下円板は、前記ボスにボルトによって取り付けられる、請求項1記載の撹拌翼。
【請求項3】
被撹拌物を撹拌するために、撹拌槽内部に設置され、撹拌時の回転軸となる上下方向に延びる撹拌軸に取り付けられる撹拌翼であって、
前記撹拌軸に取り付けられ、水平方向に延びると共に上下方向に離隔した位置に配置される円板状の上円板及び下円板と、
前記上円板の上面に設置され、前記被撹拌物に進入する際に前記被撹拌物に衝撃力を作用させる上刃と、
前記下円板の下面に設置され、前記被撹拌物に進入する際に前記被撹拌物に衝撃力を作用させる下刃と、
前記上円板及び前記下円板の少なくとも一方に設けられ、前記上円板及び前記下円板で区画される空間に連通する開口と、
前記上円板及び前記下円板の間に取り付けられ、前記開口から流入した前記被撹拌物を水平外方向に吐き出す板状の羽根板とを備
え、
前記上円板、前記下円板及び前記羽根板の各々は、前記撹拌軸にボスを介して取り付けられ、前記上円板及び前記羽根板の各々は、前記ボスと一体的に接続され、前記下円板は、前記ボスにボルトによって取り付けられる、撹拌翼。
【請求項4】
前記上刃及び前記下刃の各々は、周方向に所定間隔で複数設けられる、請求項
3記載の撹拌翼。
【請求項5】
前記上刃及び前記下刃の各々は、前記上円板及び前記下円板の各々の外周縁近傍において外周縁に沿って設けられる、請求項
4記載の撹拌翼。
【請求項6】
前記上刃及び前記下刃の各々は、その後端に上下方向の頂点が位置し、前記後端から先端に向かって二段階に傾斜した鋸刃形状を有し、上下方向視において前記後端が前記上円板及び前記下円板の外周縁上に配置されると共に、前記先端が前記後端よりも前記撹拌軸側且つ前記撹拌軸の回転方向側に配置される、請求項
5記載の撹拌翼。
【請求項7】
前記開口は、前記上円板の中央部分に設けられる、請求項1
から請求項6のいずれかに記載の撹拌翼。
【請求項8】
前記開口は、前記上円板及び前記下円板の中央部分に設けられる、請求項1
から請求項6のいずれかに記載の撹拌翼。
【請求項9】
前記開口は、前記下円板の中央部分に設けられる、請求項1
から請求項6のいずれかに記載の撹拌翼。
【請求項10】
前記羽根板は、水平方向に且つ放射状に複数枚取り付けられる、請求項1
から請求項6のいずれかに記載の撹拌翼。
【請求項11】
前記羽根板は、その先端部分が回転方向に対して後退した湾曲形状を有する、請求項
10記載の撹拌翼。
【請求項12】
前記上円板、前記上刃、前記下円板及び前記下刃の各々は、別部材を組み合わせることで構成される、請求項1
から請求項6のいずれかに記載の撹拌翼。
【請求項13】
被撹拌物を撹拌するために撹拌槽内部で用いられる撹拌構造体であって、
撹拌時の回転軸となる上下方向に延びる撹拌軸と、
前記撹拌軸に対して垂直方向に取り付けられる請求項1から請求項
6のいずれかに記載の撹拌翼とを備える、撹拌構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は撹拌翼及び撹拌構造体に関し、特に撹拌槽内部に設置される撹拌翼と、撹拌軸及び撹拌翼を備える撹拌構造体とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図21は、従来のディスパー翼を用いた撹拌槽の内部構造を模式的に示す正面図である。
【0003】
図21を参照して、水平断面円形の筒状容器である撹拌槽261は、その内壁266に沿って4枚の邪魔板267が90°毎に設置されており、撹拌槽261の内部に撹拌装置251が上方から投入されて設置された状態で、図示しない上方で蓋が閉じられている。撹拌装置251は、撹拌の回転軸となる上下方向に延びる撹拌軸252と、撹拌軸252の下端に接続されるディスパー翼253と、撹拌軸252の上端に接続される図示しない外部モーターとから主に構成されている。撹拌槽261内部には、被撹拌物である流体270が所定量投入されている。
【0004】
図22は、
図21で示したディスパー翼の翼部を製造する前の金属ブランクの概略拡大平面図であり、
図23は、
図21で示したディスパー翼の翼部を示す図であり、(A)は概略平面図であり、(B)はXXIIIB-XXIIIB矢視図である。
【0005】
次に、
図21から
図23を参照して、ディスパー翼253は、鋼板等の金属性材料からなり、撹拌軸252を挿入するボス255と、ボス255の外周に接続される円板状の翼部256とを有するものである。翼部256の外周縁部分には、上下方向に突出した上向き刃257a~257h及び下向き刃258a~258hが交互に連続して形成されている。翼部256の中央部分には、撹拌軸252を挿入するための撹拌軸用孔276が形成されている。
【0006】
翼部256は、
図22で示すような金属ブランク273から形成される。金属ブランク273は、チップソーのように円板状の平板の周縁に連続した鋸刃形状の刃275が形成されている。この刃275を一点鎖線で示す折曲線に沿って交互に上下方向に90°折り曲げ加工することによって
図23で示すような上向き刃257a~257h及び下向き刃258a~258hが形成される。
【0007】
このように形成された翼部256をボス255に撹拌軸用孔276の周囲に設けられたボス接続用孔277a~277dを介して図示しないねじ等の取付部材によって固定することで、ディスパー翼253が完成する。
【0008】
図21を再度参照して、使用に際しては、図示しない外部モーターの駆動によって撹拌軸252が矢印Bの方向に回転する。これに伴いディスパー翼253が回転すると、流体270にはディスパー翼253の周囲を旋回するような流れが生じる。その際に、ディスパー翼253からの距離が近い方が流体270の流れる速度が相対的に速く、距離が遠い方が流体270の流れる速度が相対的に遅くなる。この速度差によって流体270にせん断力を作用させる。又、ディスパー翼253の回転に伴って、上向き刃257a~257h及び下向き刃258a~258hの各々が流体270に進入する。その際に、上向き刃257a~257h及び下向き刃258a~258hの各々が流体270に接触することで衝撃力を作用させる。このようなせん断力及び衝撃力の作用によって流体270の撹拌(分散)が促進される。
【0009】
他の撹拌装置としては、例えば特許文献1に示すようなものがある。
【0010】
特許文献1に示す攪拌装置は、軸心周りに回転する円錐台の基部と基部の傾斜部に設けられた複数の羽根部とを備えたものである。複数の羽根部は各々、軸心に垂直な径方向における内方端と、この内方端に繋がり且つ回転方向前方に凸である前方曲部と、前方曲部に対して径方向外方に繋がり且つ回転方向後方に凸である後方曲部を有する攪拌羽根である。又、羽根部は、回転方向の傾斜角が異なる複数の面部で構成されており、面部は、隣接する面部同士が折り曲げ部を介して繋がっている。
【0011】
前方曲部により、内方端において攪拌対象をより強力に吸引しつつ、吸引した攪拌対象を径方向外方へとよりスムーズに移動させることが可能である。又、後方曲部により、吸引した攪拌対象を攪拌羽根から径方向外方へとより力強く吐出することが可能である。前方曲部による吸引の強化と後方曲部による吐出の強化とが相乗的に作用することにより、攪拌対象全体の混合が促進されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来のディスパー翼253は、流体270に撹拌軸252の回転方向に沿った流れを発生させ、特にディスパー翼253の近傍で大きなせん断力と衝撃力を作用させることで流体270の分散を目的とした撹拌を促進するものである。一方で、その構造上、流体270の吐き出し能力を有しないため、流体270の上下方向へ循環する流れは起こりにくいものであった。そのため流体270の粘度が高くなるに従って、流体270の流れが悪くなり撹拌不良が発生する虞があった。
【0014】
又、特許文献1で開示されている攪拌装置は、その羽根部の形状によって、一定の吐き出し能力を有するものであるが、せん断能力を維持しながらより吐き出し能力に優れた撹拌装置が望まれていた。
【0015】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、撹拌効率に優れた撹拌翼及び撹拌構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、被撹拌物を撹拌するために、撹拌槽内部に設置され、撹拌時の回転軸となる上下方向に延びる撹拌軸に取り付けられる撹拌翼であって、撹拌軸に取り付けられ、水平方向に延びると共に上下方向に離隔した位置に配置される円板状の上円板及び下円板と、上円板の上面に設置され、被撹拌物に進入する際に被撹拌物に衝撃力を作用させる上刃と、下円板の下面に設置され、被撹拌物に進入する際に被撹拌物に衝撃力を作用させる下刃と、上円板及び下円板の少なくとも一方に設けられ、上円板及び下円板で区画される空間に連通する開口と、上円板及び下円板の間に取り付けられ、開口から流入した被撹拌物を水平外方向に吐き出す板状の羽根板とを備え、上刃及び下刃の各々は、周方向に所定間隔で複数設けられ、上刃及び下刃の各々は、上円板及び下円板の各々の外周縁近傍において外周縁に沿って設けられ、上刃及び下刃の各々は、その後端に上下方向の頂点が位置し、後端から先端に向かって二段階に傾斜した鋸刃形状を有し、上下方向視において後端が上円板及び下円板の外周縁上に配置されると共に、先端が後端よりも撹拌軸側且つ撹拌軸の回転方向側に配置されるものである。
【0017】
このように構成すると、被撹拌物を軸方向から吸い込み水平外方向に吐き出しながら、被撹拌物にせん断力及び衝撃力を作用させることができる。又、被撹拌物に対して上刃及び下刃が所定間隔で進入し、衝撃力を作用させる。更に、被撹拌物に対してせん断力及び衝撃力を近接した位置で作用させることができる。更に、被撹拌物に対する上刃及び下刃の進入がスムーズになる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、上円板、下円板及び羽根板の各々は、撹拌軸にボスを介して取り付けられ、上円板及び羽根板の各々は、ボスと一体的に接続され、下円板は、ボスにボルトによって取り付けられるものである。
このように構成すると、下円板が脱着可能なものとなる。
請求項3記載の発明は、被撹拌物を撹拌するために、撹拌槽内部に設置され、撹拌時の回転軸となる上下方向に延びる撹拌軸に取り付けられる撹拌翼であって、撹拌軸に取り付けられ、水平方向に延びると共に上下方向に離隔した位置に配置される円板状の上円板及び下円板と、上円板の上面に設置され、被撹拌物に進入する際に被撹拌物に衝撃力を作用させる上刃と、下円板の下面に設置され、被撹拌物に進入する際に被撹拌物に衝撃力を作用させる下刃と、上円板及び下円板の少なくとも一方に設けられ、上円板及び下円板で区画される空間に連通する開口と、上円板及び下円板の間に取り付けられ、開口から流入した被撹拌物を水平外方向に吐き出す板状の羽根板とを備え、上円板、下円板及び羽根板の各々は、撹拌軸にボスを介して取り付けられ、上円板及び羽根板の各々は、ボスと一体的に接続され、下円板は、ボスにボルトによって取り付けられるものである。
このように構成すると、被撹拌物を軸方向から吸い込み水平外方向に吐き出しながら、被撹拌物にせん断力及び衝撃力を作用させることができる。又、下円板が脱着可能なものとなる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、上刃及び下刃の各々は、周方向に所定間隔で複数設けられるものである。
【0019】
このように構成すると、被撹拌物に対して上刃及び下刃が所定間隔で進入し、衝撃力を作用させる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、上刃及び下刃の各々は、上円板及び下円板の各々の外周縁近傍において外周縁に沿って設けられるものである。
【0021】
このように構成すると、被撹拌物に対してせん断力及び衝撃力を近接した位置で作用させることができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成において、上刃及び下刃の各々は、その後端に上下方向の頂点が位置し、後端から先端に向かって二段階に傾斜した鋸刃形状を有し、上下方向視において後端が上円板及び下円板の外周縁上に配置されると共に、先端が後端よりも撹拌軸側且つ撹拌軸の回転方向側に配置されるものである。
【0023】
このように構成すると、被撹拌物に対する上刃及び下刃の進入がスムーズになる。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、開口は、上円板の中央部分に設けられるものである。
【0025】
このように構成すると、被撹拌物が上円板の上方から上円板及び下円板の間に吸い込まれ水平外方向に吐き出される。
【0026】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、開口は上円板及び下円板の中央部分に設けられるものである。
【0027】
このように構成すると、被撹拌物が上円板の上方及び下円板の下方から上円板及び下円板の間に吸い込まれ水平外方向に吐き出される。
【0028】
請求項9記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、開口は、下円板の中央部分に設けられるものである。
【0029】
このように構成すると、被撹拌物が下円板の下方から上円板及び下円板の間に吸い込まれ水平外方向に吐き出される。
【0030】
請求項10記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、羽根板は、水平方向に且つ放射状に複数枚取り付けられるものである。
【0031】
このように構成すると、被撹拌物が羽根板に沿って流れやすくなる。
【0032】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明の構成において、羽根板は、その先端部分が回転方向に対して後退した湾曲形状を有するものである。
【0033】
このように構成すると、被撹拌物が羽根板に沿って後方に流れやすくなる。
【0036】
請求項12記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、上円板、上刃、下円板及び下刃の各々は、別部材を組み合わせることで構成されるものである。
【0037】
このように構成すると、上刃及び下刃の枚数や取付け角度を容易に変更できる。
【0038】
請求項13記載の発明は、被撹拌物を撹拌するために撹拌槽内部で用いられる撹拌構造体であって、撹拌時の回転軸となる上下方向に延びる撹拌軸と、撹拌軸に対して垂直方向に取り付けられる請求項1から請求項6のいずれかに記載の撹拌翼とを備えるものである。
【0039】
このように構成すると、被撹拌物を軸方向から吸い込み水平外方向に吐き出しながら、被撹拌物にせん断力及び衝撃力を作用させることができる。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、被撹拌物を軸方向から吸い込み水平外方向に吐き出しながら、被撹拌物にせん断力及び衝撃力を作用させることができるので、撹拌効率が向上する。又、被撹拌物に対して上刃及び下刃が所定間隔で進入し、衝撃力を作用させるので、撹拌効率がより向上する。更に、被撹拌物に対してせん断力及び衝撃力を近接した位置で作用させることができるので、撹拌効率がより向上する。更に、被撹拌物に対する上刃及び下刃の進入がスムーズになるので、撹拌効率がより向上する。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、下円板が脱着可能なものとなるので、必要に応じて下円板を付け外しすることによって、組立精度が向上する。
請求項3記載の発明は、被撹拌物を軸方向から吸い込み水平外方向に吐き出しながら、被撹拌物にせん断力及び衝撃力を作用させることができるので、撹拌効率が向上する。又、下円板が脱着可能なものとなるので、必要に応じて下円板を付け外しすることによって、組立精度が向上する。
【0041】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、被撹拌物に対して上刃及び下刃が所定間隔で進入し、衝撃力を作用させるので、撹拌効率がより向上する。
【0042】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、被撹拌物に対してせん断力及び衝撃力を近接した位置で作用させることができるので、撹拌効率がより向上する。
【0043】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、被撹拌物に対する上刃及び下刃の進入がスムーズになるので、撹拌効率がより向上する。
【0044】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、被撹拌物が上円板の上方から上円板及び下円板の間に吸い込まれ水平外方向に吐き出されるので、撹拌翼の上方に位置する被撹拌物の上下方向への循環が起こりやすくなり、撹拌効率が向上する。
【0045】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、被撹拌物が上円板の上方及び下円板の下方から上円板及び下円板の間に吸い込まれ水平外方向に吐き出されるので、撹拌翼の上方及び下方に位置する被撹拌物の上下方向への循環が起こりやすくなり、撹拌効率が向上する。
【0046】
請求項9記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、被撹拌物が下円板の下方から上円板及び下円板の間に吸い込まれ水平外方向に吐き出されるので、撹拌翼の下方に位置する被撹拌物の上下方向への循環が起こりやすくなり、撹拌効率が向上する。
【0047】
請求項10記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、被撹拌物が羽根板に沿って流れやすくなるので、吐き出し性能が向上する。
【0048】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明の効果に加えて、被撹拌物が羽根板に沿って後方に流れやすくなるので、吐き出し性能がより向上する。
【0050】
請求項12記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、上刃及び下刃の枚数や取付け角度を容易に変更できるので、設計変更が容易となる。
請求項13記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、被撹拌物を軸方向から吸い込み水平外方向に吐き出しながら、被撹拌物にせん断力及び衝撃力を作用させることができるので、撹拌効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】この発明の第1の実施の形態による撹拌構造体の撹拌槽の内部構造を模式的に示す正面図である。
【
図2】
図1で示した“II”部分の撹拌翼の内部構造を模式的に示す拡大図である。
【
図3】
図1で示した撹拌翼を示す図であり、(A)は概略平面図であり、(B)は概略正面図であり、(C)は概略底面図である。
【
図4】
図1で示した撹拌翼を構成する部材を示した図であり、(1)は上円板部材を示す概略平面図であり、(2)は下円板部材を示す概略平面図であり、(3)は上刃部材及び下刃部材の各々を示す概略正面図である。
【
図5】
図1で示した撹拌翼の羽根板部材の曲げ工程を示す模式図である。
【
図6】
図1で示した撹拌翼のボスを示す概略断面図である。
【
図7】
図4から
図6で準備した部材を組み立てる第1の工程を示した図であり、(A)は上円板部材に上刃部材を取り付けた状態を示す図であり、(B)は(A)のVIIB-VIIB矢視図である。
【
図8】
図4から
図6で準備した部材を組み立てる第2の工程を示した図であり、(A)はボスに羽根板部材を取り付けた状態を示す図であり、(B)は(A)のVIIIB-VIIIB矢視図である。
【
図9】
図4から
図6で準備した部材を組み立てる第3の工程を示した図であり、(A)は
図7で示した上円板とボスに取り付けられた羽根板とを組み合わせた状態を示す図であり、(B)は(A)のIXB-IXB矢視図である。
【
図10】
図4から
図6で準備した部材を組み立てる第4の工程を示した図であり、(A)は下円板部材に下刃部材を取り付けた状態を示す図であり、(B)は(A)のXB-XB矢視図である。
【
図11】
図4から
図6で準備した部材を組み立てる第5の工程を示した図であり、(A)は
図10で示した下円板をボスに取り付けた状態を示す概略平面図であり、(B)は“XIB”部分の概略拡大図である。
【
図12】この発明の第2の実施の形態による撹拌構造体の撹拌翼を示す図であり、(A)は概略平面図であり、(B)は概略正面図であり、(C)は概略底面図である。
【
図13】
図12で示した撹拌翼を用いた撹拌構造体の撹拌槽の内部構造を模式的に示す正面図でる。
【
図14】
図14は、
図13で示した“XIV”部分の撹拌翼の内部構造を模式的に示す拡大図である。
【
図15】この発明の第3の実施の形態による撹拌構造体の撹拌翼を示す図であり、(A)は概略平面図であり、(B)は概略正面図であり、(C)は概略底面図である。
【
図16】
図15で示した撹拌翼を用いた撹拌構造体の撹拌槽の内部構造を模式的に示す正面図である。
【
図17】
図16で示した“XVII”部分の撹拌翼の内部構造を模式的に示す拡大図である。
【
図18】この発明の他の実施の形態による撹拌翼の上刃及び下刃の他の構成を模式的に示す平面図であり、(1)は第4の実施の形態を示す図であり、(2)は第5の実施の形態を示す図であり、(3)は第6の実施の形態を示す図である。
【
図19】この発明の他の実施の形態による撹拌翼の羽根板の形状を模式的に示す平面図であり、(1)は第7の実施の形態を示す図であり、(2)は第8の実施の形態を示す図であり、(3)は第9の実施の形態を示す図であり、(4)は第10の実施の形態を示す図である。
【
図21】従来のディスパー翼を用いた撹拌槽の内部構造を模式的に示す正面図である。
【
図22】
図21で示したディスパー翼の翼部を製造する前の金属ブランクの概略拡大平面図である。
【
図23】
図21で示したディスパー翼の翼部を示す図であり、(A)は概略平面図であり、(B)はXXIIIB-XXIIIB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、この発明の第1の実施の形態による撹拌構造体の撹拌槽の内部構造を模式的に示す正面図である。
【0053】
図1を参照して、この実施の形態における撹拌構造体10の撹拌槽71は、基本的に上述した従来の撹拌槽261と同様の構成であり、水平断面円形の筒状容器であって、内壁76に4枚の邪魔板77を90°毎に設置したものである。撹拌槽71の内部には撹拌装置1が上方から投入されて設置された状態で、図示しない上方で蓋が閉じられている。撹拌装置1は、撹拌の回転軸となる上下方向である鉛直方向に延びる撹拌軸2と、撹拌軸2の下端に水平方向(撹拌軸2に対して垂直方向)に接続される撹拌翼3と、撹拌軸2の上端に接続される図示しない外部モーターとから主に構成されている。この撹拌翼3の具体的な構成については後述する。
【0054】
使用に際しては、撹拌槽71内部に、被撹拌物として流体70(本発明にあっては、流動性を有する連続体を言い、低粘度~高粘度の液体、気体、粉粒体、ペースト体や、気体と液体、異種の液体、又は、固体と液体の混合物等を含む。)が所定量投入される。その後、図示しない外部モーターの駆動によって撹拌軸2が矢印A1の方向に回転され、これに伴い撹拌翼3が撹拌槽71内部にて回転し、流体70が撹拌される。
【0055】
図2は、
図1で示した“II”部分の撹拌翼の内部構造を模式的に示す拡大図であり、
図3は、
図1で示した撹拌翼を示す図であり、(A)は概略平面図であり、(B)は概略正面図であり、(C)は概略底面図である。
【0056】
次に、
図1から
図3を参照して、撹拌翼3は、撹拌軸2の下端が挿入される円筒形状のボス61と、ボス61を介して撹拌軸2の外周に接続され水平方向に延びる正円の円板状の上円板11と、上円板11から下方に離隔した位置に配置される正円の円板状の下円板21とを有する。上円板11の外周縁13及び下円板21の外周縁23の直径(外径)は同一である。
【0057】
上円板11の上面12の外周縁13の近傍には、外周縁13に沿って周方向に所定間隔で複数の上刃31a~31hが設けられている。上刃31a~31hの各々は、平板状の刃の板厚面が上円板11の上面に接地するように取り付けられており、撹拌軸2側に配置される撹拌軸側端部と、外周縁13側に配置される外周縁側端部を有している。撹拌軸側端部は刃の先端33として流体70に先に進入する部分であり、外周縁13側端部が刃の後端34となる。上刃31a~31hの各々は、上下方向の頂点35が刃の後端34の上方に位置し、頂点35から先端33に向かって下方向に二段階に傾斜した鋸刃形状を有するものである。そして、上下方向視において後端34(外周縁側端部)が上円板11の外周縁13上に配置されると共に、先端33(攪拌軸側端部)が後端34よりも撹拌軸2側且つ撹拌軸2の矢印A1で示す回転方向側に配置されている。
【0058】
下円板21の下面22の外周縁23の近傍には、外周縁23に沿って周方向に所定間隔で複数の下刃41a~41hが設けられている。下刃41a~41hの各々の形状や配置に関する構成は、前述した上刃31a~31hの構成と基本的に同様であるが、上刃31a~31hとは上下方向視において交互に配置されるように(上下方向視において重ならないように)周方向にずらして配置されている。
【0059】
加えて、上円板11の中央部分には、ボス61の外周に接する位置に上円板11及び下円板21で区画される空間69に連通する環状の開口16が設けられている。
【0060】
又、上円板11及び下円板21の間には水平方向に且つ放射状に複数枚の羽根板51a~51fがボス61を介して撹拌軸2に取り付けられている。羽根板51a~51fはその先端部分53が矢印A1で示す回転方向に対して後退した湾曲形状となっている。
【0061】
撹拌翼3をこれらのように構成した効果については後述する。
【0062】
このような撹拌翼3を、流体70を投入した撹拌槽71内で矢印A1の方向に回転させると、流体70には撹拌翼3の周囲を旋回する流れが生じる。これに加えて、撹拌翼3の上方に位置する流体70は撹拌翼3の回転に伴って、開口16から空間69内へ吸い込まれ、羽根板51a~51fによって押し出されることで水平外方向に吐き出される。吐き出された流体70は、撹拌槽71の内壁76に当たることで上下方向へ循環することになる。更に、邪魔板77に当たることで上下方向への循環が促進される。このような状態に加えて、撹拌翼3からの距離が近い方が流体70の流れる速度が相対的に速く、距離が遠い方が流体70の流れる速度が相対的に遅くなる。この速度差によって流体70にせん断力を作用させることができる。又、撹拌翼3の回転によって上刃31a~31h及び下刃41a~41hの各々が流体70に進入する際に流体70に接触することで衝撃力を作用させることができる。このようなせん断力及び衝撃力の作用によって流体70の撹拌(分散)が促進される。
【0063】
このように、上述のような構成の撹拌翼3及び撹拌翼3を備えた撹拌構造体10は、被撹拌物である流体70を軸方向から吸い込み水平外方向に吐き出しながら、流体70にせん断力及び衝撃力を作用させることができるので、撹拌効率が向上する。
【0064】
又、撹拌翼3は上述の通り、上刃31a~31h及び下刃41a~41hの各々が周方向に所定間隔で設けられるものであるから、流体70に対して上刃31a~31h及び下刃41a~41hが所定間隔で進入し、衝撃力を作用させるので、撹拌効率がより向上する。
【0065】
更に、撹拌翼3は上述の通り、上刃31a~31h及び下刃41a~41hの各々が上円板11の外周縁13及び下円板21の外周縁23の各々に沿って設けられるものであるから、流体70に対してせん断力及び衝撃力を近接した位置で作用させることができるので、撹拌効率がより向上する。
【0066】
更に、撹拌翼3は上述の通り、上刃31a~31h及び下刃41a~41hが鋸刃形状で先端が後端よりも撹拌軸2側且つ撹拌軸2の回転方向側に配置されるものであるから、流体70に対する上刃31a~31h及び下刃41a~41hの進入がスムーズになるので、撹拌効率がより向上する。
【0067】
更に、撹拌翼3は上述の通り、開口16が上述の通り上円板11の中央部分に設けられているものであるから、流体70が上円板の11上方から上円板11及び下円板21の間に吸い込まれ水平外方向に吐き出されるので、撹拌翼の上方に位置する流体70の上下方向への循環が起こりやすくなり、撹拌効率が向上する。
【0068】
更に、撹拌翼3は上述の通り、羽根板51a~51fが水平方向に且つ放射状に取り付けられているものであるから、流体70が羽根板51a~51fに沿って流れやすくなるので、吐き出し性能が向上する。
【0069】
更に、撹拌翼3は上述の通り、羽根板51a~51fが、湾曲形状を有するものであるから、流体70が羽根板51a~51fに沿って後方に流れやすくなるので、吐き出し性能がより向上する。
【0070】
次に、撹拌翼3の製造工程について説明する。
【0071】
図4は、
図1で示した撹拌翼を構成する部材を示した図であり、(1)は上円板部材を示す概略平面図であり、(2)は下円板部材を示す概略平面図であり、(3)は上刃部材及び下刃部材の各々を示す概略正面図である。
【0072】
図3及び
図4を参照して、撹拌翼3の上円板11に相当する上円板部材11’、下円板21に相当する下円板部材21’、上刃31a~31h及び下刃41a~41hに相当する上刃部材31a’~31h’及び下刃部材41a’~41h’を、鋼板等の金属板を抜き出し加工や切り出し加工することによって形成する。
【0073】
まず、
図4の(1)を参照して、平面視正円形の円板状の上円板部材11’の全体の直径(外径)d
1を各部材の寸法設定の基準とする。上円板部材11’の中央部分には正円形の開口16’が形成されている。この開口16’はその一部分が組み立て後の撹拌翼3の上円板11の開口16となる。被撹拌物の良好な吸い込みの観点から、開口16’の直径d
2は、上円板部材11’の外径d
1の半分に設定されている。又、一点鎖線は上刃部材31a’~31h’の取付位置を示すものである。
【0074】
次に、
図4の(2)を参照して、平面視正円形の円板状の下円板部材21’はその外径d
3が上円板部材11’の外径d
1と同一であり、中央部分には撹拌軸2を挿入するための撹拌軸用孔27とボルトを挿入するためのボルト用孔28a~28dとを設ける。一点鎖線は下刃部材41a’~41h’の取付位置を示すものである。この下刃部材41a’~41h’の取付位置は、上円板部材11’と下円板部材21’とを重ね合わせた際に上述した上刃部材31a’~31h’の取付位置と上下方向視において重ならないように周方向にずらして設定される。
【0075】
更に、
図4の(3)を参照して、上刃部材31a’~31h’及び下刃部材41a’~41h’は、
図3において説明したような平板状の板厚面が上下方向を向いた状態で後端の上方に位置する頂点から先端に向かって二段階に傾斜した鋸刃形状となっている。
【0076】
図5は、
図1で示した撹拌翼の羽根板部材の曲げ工程を示す模式図である。
【0077】
図5を参照して、鋼板等の金属材料からなる矩形状の平板を、点Oを中心として板厚の中心線tまでの板厚半径Rがd
1/3となるように曲げ加工を行う。すると全体の弧長がCL
1の曲げ板となる。その後、必要な弧長CL
2となるように両端を切り落として、羽根板部材51a’~51h’を形成する。
【0078】
図6は、
図1で示した撹拌翼のボスを示す概略断面図である。
【0079】
図6を参照して、ボス61は金属材料からなる丸棒を円筒形状に加工して形成される。ボス61は、その外径d
4が0.3×d
1に設定されている。ボス61の上部には、水平外方向に撹拌軸2と撹拌翼3とを接続するためのねじを挿入するねじ用タップ63を設ける。又、ボス61の下部には、下円板21を固定するためのボルトを挿入するための4つのボルト用タップ62b、62d(一部図示せず)を下端から上方に向かって設ける。
【0080】
図7は、
図4から
図6で準備した部材を組み立てる第1の工程を示した図であり、(A)は上円板部材に上刃部材を取り付けた状態を示す図であり、(B)は(A)のVIIB-VIIB矢視図である。
【0081】
図7の(A)を参照して、上刃部材31a’~31h’を
図4の(A)の上円板部材11’の印をつけた位置に溶接によって取り付ける。この際、上刃部材31a’~31h’の先端が回転方向側を向けた状態で、上刃部材31a’~31h’の各々の後端が上円板部材11’の外周縁13’に接するように配置する。すると、
図7の(B)に示した上円板11となる。
【0082】
図8は、
図4から
図6で準備した部材を組み立てる第2の工程を示した図であり、(A)はボスに羽根板部材を取り付けた状態を示す図であり、(B)は(A)のVIIIB-VIIIB矢視図である。
【0083】
図8の(A)を参照して、次にボス61に下円板部材21’を、ボルト68a~68dによって取り付ける。そして、下円板部材21’及びボス61の上面に予め記載した図示しない印の位置に羽根板部材51a’~51f’を配置する。尚、羽根板部材51a’~51f’はボス61との接続部分のみを溶接する。すると、
図8の(B)に示した状態となる。その後、次の工程に進む前にボルト68a~68d及び下円板部材21’は再度取り外す。
【0084】
図9は、
図4から
図6で準備した部材を組み立てる第3の工程を示した図であり、(A)は
図7で示した上円板とボスに取り付けられた羽根板とを組み合わせた状態を示す図であり、(B)は(A)のIXB-IXB矢視図である。
【0085】
図9を参照して、上刃31a~31hが取り付けられた上円板11を、ボス61に取り付けられた羽根板51a~51fの上に載置して、上円板11と羽根板51a~51fとを溶接する。すると、
図9の(B)に示した状態となる。
【0086】
図10は、
図4から
図6で準備した部材を組み立てる第4の工程を示した図であり、(A)は下円板部材に下刃部材を取り付けた状態を示す図であり、(B)は(A)のXB-XB矢視図である。
【0087】
図10を参照して、下刃部材41a’~41h’を
図4の(B)に示す下円板部材21’の印をつけた位置に溶接によって取り付ける。この際、下刃部材41a’~41h’の先端が回転方向側を向けた状態で、下刃部材41a’~41h’の各々の後端が下円板部材21’の外周縁23’に接するように配置する。すると、
図10の(B)に示した下円板21となる。
【0088】
図11は、
図4から
図6で準備した部材を組み立てる第5の工程を示した図であり、(A)は
図10で示した下円板をボスに取り付けた状態を示す概略平面図であり、(B)は“XIB”部分の概略拡大図である。
【0089】
図11の(A)を参照して、下刃41a~41hが取り付けられた下円板21を、ボルト68a~68dによってボス61の下端に再度取り付ける。その後、
図11の(B)を参照して、上円板11の外周縁13及び下円板21の外周縁23の外方に露出している羽根板51aの露出部分55を上円板11の外周縁13及び下円板21の外周縁23に合わせてグラインダー等で削り取る。他の羽根板51b~51fについても同様の処理を行い、
図3で示した撹拌翼3が完成する。
【0090】
このような撹拌翼3は上述の通り、下円板21(下円板部材21’)がボルトを介してボス61と取り付けられるものであるため、下円板21が脱着可能なものとなるので、溶接時等の必要に応じて下円板21を付け外しすることによって、組立精度が向上する。
【0091】
又、撹拌翼3は上述の通り、上円板11、上刃31a~31h、下円板21及び下刃41a~41hの各々が別部材である上円板部材11’、下円板部材21’、上刃部材31a’~31h’及び下刃部材41a’~41h’を組み合わせることで構成されるものであるから、上刃31a~31h及び下刃41a~41hの枚数や取付け角度を容易に変更できるので、設計変更が容易となる。
【0092】
図12は、この発明の第2の実施の形態による撹拌構造体の撹拌翼を示す図であり、(A)は概略平面図であり、(B)は概略正面図であり、(C)は概略底面図である。又、
図13は、
図12で示した撹拌翼を用いた撹拌構造体の撹拌槽の内部構造を模式的に示す正面図であり、
図14は、
図13で示した“XIV”部分の撹拌翼の内部構造を模式的に示す拡大図である。
【0093】
尚、この実施の形態における撹拌翼93及び撹拌構造体90の構成は、基本的に第1の実施の形態の撹拌翼3及び撹拌構造体10と同様であるので、ここではその相違点を中心に説明する。
【0094】
図12及び
図14を参照して、撹拌翼93の上刃105a~105h、下刃115a~115h及び羽根板121a~121fの構成は、第1の実施の形態で説明したものと同様である。又、上円板101及び下円板111の基本な構成も第1の実施の形態と同様であるが、上円板101及び下円板111の中央部分の各々には、円板101と下円板111との間の空間99と連通する環状の開口106及び開口116が設けられている。このように構成した効果については後述する。
【0095】
ボス131は、その下端が上円板101の下面と面一となる位置において、環状の平板状の取付用上板103に溶接等によって固定されている。羽根板121a~121fは円柱形状の羽根板取付軸132に取り付けられている。この実施の形態では、下円板111はボルトではなく、羽根板121a~121fに溶接等によって一体的に取り付けられている。又、羽根板取付軸132の下端は環状の平板状の取付用下板113に取り付けされている。これによって、上述した開口116は上円板101の開口106と同様に環状のものとなる。
【0096】
このような撹拌翼93は、第1の実施の形態と同様の撹拌軸92の下端が挿入され、図示しない外部のモーター等と接続した撹拌装置91として、第1の実施の形態と同様の構成の撹拌槽94の内部に投入される。又、撹拌槽94の内部には、被撹拌物として第1の実施の形態と同様の流体130が投入される。撹拌軸92を矢印A2の方向に回転させると、これに伴い撹拌翼93が撹拌槽94内部にて回転し、流体130には撹拌翼93の周囲を旋回する流れが生じる。
【0097】
この際に、上円板101の上方及び下円板111の下方の各々の流体130が上円板101の開口106及び下円板111の開口116から上円板101と下円板111との間の空間99に吸い込まれ水平外方向に吐き出される。吐き出された流体130は、撹拌槽94の内壁96に当たることで上下方向へ循環することになる。更に、邪魔板97に当たることで上下方向への循環が促進される。このような状態に加えて、流体130に生じる流れの速度差によって流体130にせん断力を作用させることができる。又、撹拌翼93の回転によって上刃105a~105h及び下刃115a~115hの各々が流体130に進入する際に流体130に接触することで衝撃力を作用させることができる。このようなせん断力及び衝撃力の作用によって流体130の撹拌(分散)が促進される。
【0098】
このように、撹拌翼93及び撹拌翼93を備えた撹拌構造体90は、被撹拌物である流体130を軸方向から吸い込み水平外方向に吐き出しながら、流体130にせん断力及び衝撃力を作用させることができるので、撹拌効率が向上する。
【0099】
又、撹拌翼93は上述の通り、開口106が上円板101の中央部分に設けられており、開口116が下円板111の中央部分に設けられているものであるから、流体130が上円板の上方及び下円板の下方から上円板101及び下円板111の間に吸い込まれ水平外方向に吐き出されるので、撹拌翼93の上方及び下方に位置する流体130の上下方向への循環が起こりやすくなり、撹拌効率が向上する。
【0100】
図15は、この発明の第3の実施の形態による撹拌構造体の撹拌翼を示す図であり、(A)は概略平面図であり、(B)は概略正面図であり、(C)は概略底面図である。又、
図16は、
図15で示した撹拌翼を用いた撹拌構造体の撹拌槽の内部構造を模式的に示す正面図であり、
図17は、
図16で示した“XVII”部分の撹拌翼の内部構造を模式的に示す拡大図である。
【0101】
尚、この実施の形態における撹拌翼153及び撹拌構造体150の構成は、基本的に第1の実施の形態の撹拌翼3及び撹拌構造体10と同様であるので、ここではその相違点を中心に説明する。
【0102】
図15及び
図17を参照して、撹拌翼153の上刃165a~165h、下刃175a~175h及び羽根板181a~181fの構成は第1の実施の形態で説明したものと同様である。又、上円板161及び下円板171の基本な構成も第1の実施の形態と同様であるが、上円板161には開口が設けられていないものである。下円板171の中央部分には上円板161と下円板171との間の空間159と連通する環状の開口176が設けられている。このように構成した効果については後述する。
【0103】
ボス191はその下端が上円板161の下面と面一となる位置において、上円板161に溶接等によって固定されている。羽根板181a~181fは円柱形状の羽根板取付軸192に取り付けられている。この実施の形態では、第2の実施の形態と同様に下円板111はボルトではなく、羽根板181a~181fに溶接等によって一体的に取り付けられている。又、羽根板取付軸192の下端は環状の平板状の取付用下板193に取り付けされている。これによって、上述した開口176は第2の実施の形態の開口116と同様に環状のものとなる。
【0104】
次に
図15から
図17を参照して、このような撹拌翼153は、第1の実施の形態と同様の撹拌軸152の下端が挿入され、図示しない外部のモーター等と接続した撹拌装置151として、第1の実施の形態と同様の構成の撹拌槽154の内部に投入される。又、撹拌槽154の内部には、被撹拌物として第1の実施の形態と同様の流体190が投入される。撹拌軸152を矢印A3の方向に回転させると、これに伴い撹拌翼153が撹拌槽154内部にて回転し、流体190には撹拌翼153の周囲を旋回する流れが生じる。
【0105】
この際に、下円板171の下方の各々の流体190が下円板111の開口176から上円板161と下円板171との間の空間159に吸い込まれ水平外方向に吐き出される。吐き出された流体190は、撹拌槽154の内壁156に当たることで上下方向へ循環することになる。更に、邪魔板157に当たることで上下方向への循環が促進される。このような状態に加えて、流体190に生じる流れの速度差によって流体190にせん断力を作用させることができる。又、撹拌翼153の回転によって上刃165a~165h及び下刃175a~175hの各々が流体190に進入する際に流体190に接触することで衝撃力を作用させることができる。このようなせん断力及び衝撃力の作用によって流体190の撹拌(分散)が促進される。
【0106】
このように、撹拌翼153及び撹拌翼153を備えた撹拌構造体150は、被撹拌物である流体190を軸方向から吸い込み水平外方向に吐き出しながら、流体190にせん断力及び衝撃力を作用させることができるので、撹拌効率が向上する。
【0107】
又、撹拌翼153は上述の通り、開口176が下円板171の中央部分に設けられているものであるから、流体190が下円板171の下方から上円板161及び下円板171の間に吸い込まれ水平外方向に吐き出されるので、撹拌翼153の下方に位置する流体190の上下方向への循環が起こりやすくなり、撹拌効率が向上する。
【0108】
図18は、この発明の他の実施の形態による撹拌翼の上刃及び下刃の他の構成を模式的に示す平面図であり、(1)は第4の実施の形態を示す図であり、(2)は第5の実施の形態を示す図であり、(3)は第6の実施の形態を示す図である。
【0109】
この第4から第6の実施の形態では、上刃及び下刃以外の構成は第1の実施の形態と同様の構成である。
【0110】
図18の(1)を参照して、第4の実施の形態の撹拌翼201の上刃211及び下刃212はその後端が上円板及び下円板の外周縁から外側に飛び出すようにして取り付けられたものである。このような撹拌翼201は図示しない被撹拌物に対して上刃211及び下刃212が所定間隔で進入し、衝撃力を作用させるので、撹拌効率が向上する。
【0111】
図18の(2)を参照して、第5の実施の形態の撹拌翼202の上刃213及び下刃は214その配置が上円板及び下円板の外周縁より撹拌軸側に設けられたものである。このような撹拌翼202は図示しない被撹拌物に対して上刃213及び下刃214が所定間隔で進入し、衝撃力を作用させるので、撹拌効率が向上する。
【0112】
図18の(3)を参照して、第6の実施の形態の撹拌翼203の上刃215及び下刃216は上下方向視においてやや湾曲したものである。このような撹拌翼203は図示しない被撹拌物に対して上刃215及び下刃216が所定間隔で進入し、衝撃力を作用させるので、撹拌効率が向上する。
【0113】
図19は、この発明の他の実施の形態による撹拌翼の羽根板の形状を模式的に示す平面図であり、(1)は第7の実施の形態を示す図であり、(2)は第8の実施の形態を示す図であり、(3)は第9の実施の形態を示す図であり、(4)は第10の実施の形態を示す図である。
【0114】
この第7から第10の実施の形態では、羽根板以外の構成は第1の実施の形態と同様の構成である。
【0115】
図19の(1)を参照して、第7の実施の形態の撹拌翼204は、羽根板221が直線的に構成されたものである。このような撹拌翼204は図示しない被撹拌物が羽根板221に沿って流れやすくなるので、吐き出し性能が向上する。
【0116】
図19の(2)を参照して、第8の実施の形態の撹拌翼205は湾曲した羽根板222の根元がボスと離れており、先端も下円板の外周縁から離れているものである。このような撹拌翼204は図示しない被撹拌物が羽根板222に沿って流れやすくなるので、吐き出し性能が向上する。
【0117】
図19の(3)を参照して、第9の実施の形態の撹拌翼206は直線的な羽根板223の根元がボスと離れており、先端も下円板の外周縁から離れているものである。このような撹拌翼206は図示しない被撹拌物が羽根板223に沿って流れやすくなるので、吐き出し性能が向上する。
【0118】
図19の(4)を参照して、第10の実施の形態の撹拌翼207は直線的な羽根板224を細かく点在させたものである。このような撹拌翼207は図示しない被撹拌物が羽根板224に沿って流れやすくなるので、吐き出し性能が向上する。
【0119】
尚、上記の各実施の形態では、上円板及び下円板の外周縁の直径は同一のものであったが、多少異なるものであってもよく、本発明と同一の作用効果を生じるものであれば、実質的に本発明に含まれる。
【0120】
又、上記の各実施の形態では、平面視正円形の上円板及び下円板は円板状を有するものであったが、これに限らない。ここで述べる円板状とは、正六角形等の円に近い形状のものや楕円形のものも円板状に含まれる。
【0121】
更に、上記の各実施の形態では、上円板及び下円板は特定の構成からなるものであったが、これに限らない。従来のディスパー翼で示した翼部のような、円板状の平板の周縁に設けられた連続した鋸刃形状の刃を交互に上下方向に90°折り曲げ加工して形成された上向き刃及び下向き刃を有する上円板及び下円板を2枚取り付けるようなものであってもよい。
【0122】
更に、上記の各実施の形態では、上刃及び下刃は特定の構成からなるものであったが、これに限らない。被撹拌物に衝撃力を与えられるものであれば、例えば刃を面取して他の形状や配置のものであってもよい。刃の数や配置も必要に応じて適宜変更可能である。
【0123】
更に、上記の各実施の形態では、羽根板は特定の構成からなるものであったが、これに限らない。吸い込んだ被撹拌物を吐き出す効果が得られるものであれば、他の形状や配置のものであってもよい。羽根板の数や配置も必要に応じて適宜変更可能である。
【0124】
更に、上記の各実施の形態では、上円板及び下円板の開口は中央部分に設けられる環状のものであったが、これに限らず他の部分に設けてもよい。又、被撹拌物を十分に吸い込むことができるものであれば他の形状であってもよいもよい。
【0125】
更に、上記の各実施の形態では、開口の直径は上円板の外径の半分の長さに設定され、ボスの外径は上円板の外径の0.3倍の長さに設定されているものであったが、被撹拌物の良好な吸い込みの観点からは、開口の直径は上円板の外径の半分以上の長さであることが好ましい。又、ボスの外周部分から開口の縁までの長さが上円板の外径の0.15倍以上の長さであることが好ましい。
【0126】
更に、上記の各実施の形態では、上円板、下円板、上刃、下刃及び羽根板の各々はそれぞれ別部材からなるものであったが、これに限らない。上円板及び上刃を一体的に加工する等、部分的に一体的な部材を設けてもよいし、全体を3Dプリンター等で一体的に製造してもよい。
【0127】
更に、上記の各実施の形態では、撹拌翼はボスを介して撹拌軸に取り付けられるものであったが、これに限らない。撹拌軸に直接取り付けられるものであってもよいし、他の手段によって撹拌軸に取り付けられるものであってもよい。
【0128】
更に、上記の第1及び第4から第9の実施の形態では、下円板はボスにボルトを介して脱着可能に設けられていたが、これに限らずボルト以外の手段によるものであってもよい。又、ボスや羽根板に一体的に取り付けられるものであってもよい。
【0129】
更に、上記の第2及び第3の実施の形態では、下円板は羽根板と一体的に取り付けられものであったが、これに限らず、脱着可能に取り付けられるものであってもよい。
【0130】
更に、上記の各実施の形態では、鋼板を用いたものであったが、被撹拌物との相性に問題が無ければ、他の金属材料や、木材、樹脂等他の材料からなるものであってもよい。
【実施例】
【0131】
以下、本発明について具体的な実施例を挙げて説明する。又、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
<試験1>(分散実験)
1.試験条件
以下の器具を使用して、着脱色試験を行った。流体の均一分散の達成は、流体の分散により脱色が進み、脱色が完了した時点とした。
・撹拌槽…内径D400mm、高さH800mm、液深500mm
・試験流体…水あめ(粘性係数0.2Pa・s)
・薬品…1規定ヨウ素溶液による着色法、1規定チオ硫酸ナトリウム水溶液による脱色法
・撹拌装置…実施例1として、上述した第1の実施の形態によるもの、すなわち、上円板のみに開口を備える撹拌翼を用いた。撹拌翼は、SUS304よりなる板厚2mmの金属板を加工した上円板、下円板、上刃、下刃及び羽根板の各々の部材と、SUS304の丸棒から加工した外形がφ28mmのボスとを溶接等で一体的に接続して形成されたものである。羽根径はφ120mmに設定されている。又、開口は上円板及び下円板の双方に設けられており、別部材の開口塞ぎプレートを下円板の開口を塞ぐように取り付けてある。実施例3では、開口塞ぎプレートを上円板の開口を塞ぐように取り付けてある。撹拌翼は液深タンジェントライン(TL)の位置に配置した。
【0132】
実施例2として、上述した第2の実施の形態によるもの、すなわち、上円板及び下円板の双方に開口を備える撹拌翼を用いた。撹拌翼は、その形状及び設置位置は実施例1と共通のものであるが、開口塞ぎプレートは使用しない。
【0133】
実施例3として、上述した第3の実施の形態によるもの、すなわち、下円板のみに開口を備える撹拌翼を用いた。撹拌翼は、その形状及び設置位置は実施例1と共通のものであるが、開口塞ぎプレートは上円板の開口を塞ぐように取り付けらえれている。
【0134】
比較例としては、背景技術としての従来のディスパー翼を用いた。ディスパー翼は、SUS304よりなる板厚2mmの金属板を加工した翼部をSUS304よりなる丸棒を加工した外径がφ28mmのボスにネジで固定して形成されている。羽根径はφ120mmに設定されている。ディスパー翼は液深TLの位置に配置した。
2.試験結果
図20は試験1の結果を示す図である。
【0135】
尚、試験1における比較例及び実施例1~3の撹拌翼の回転数は全て共通である(1200rpm)。
【0136】
図を参照して、分散開始から15秒後には、比較例1では槽上部に分散不良部が発生していることが目視できるが、実施例1から実施例3ではほとんど発生していない。これは、実施例1から実施例3の各々では撹拌翼の回転に伴って吐き出された試験流体が槽上部まで循環することに起因する。又、分散開始から分散が完了するまでに、比較例は60秒を要したのに対して、実施例1は20秒、実施例2は19秒、実施例3は39秒で分散が完了し、いずれも比較例を大きく上回る結果となっている。
【0137】
尚、分散完了までの時間に加えて動力(kW)を計測の上、消費する電力量が少ないほど、撹拌効率がよいものとする。その結果を下記の表に示す。
【0138】
【表1】
上述のように同じ回転数で要する動力は、比較例に対して実施例1及び実施例2は比較例の2.3倍程度、実施例3は比較例の1.4倍程度といずれも増加している。しかしながら、分散完了までに要する時間は、実施例1が20秒、実施例2が19秒、実施例3が39秒であり、比較例の60秒を大きく上回る結果となっている。そのため、動力と分散完了までの時間の積で求められる電力量については、実施例1は2.56×10^
-3kWh、実施例2は2.43×10^
-3kWh、実施例3は3.03×10^
-3kWhとなっており、比較例の3.33×10^
-3kWhと比べて低く抑えられている。
【0139】
よって、実施例1~3のいずれの構成も比較例の構成と比較してより有利な効果が認められることが分かる。
【符号の説明】
【0140】
1、91、151…撹拌装置
2、92、152…撹拌軸
3、93、153、201、202、203、204、205、206、207…撹拌翼
10、90、150…撹拌構造体
11、101、161…上円板
12…上面
13…上円板の外周縁
16、106、116、176…開口
21、111、171…下円板
22…下面
23…上円板の外周縁
31a~31h、105a~105h、165a~165h、211、213、215…上刃
33、117、177…先端
34、118、178…後端
35…頂点
41a~41h、115a~115h、175a~175h、212、214、216…下刃
51a~51f、121a~121f、181a~181f、221、222、223、224…羽根板
53…先端部分
61、131、191…ボス
68a~68d…ボルト
69、99、159…空間
70、130、190…流体(被撹拌物)
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【要約】
【課題】 撹拌効率が向上した撹拌翼及び撹拌構造体を提供する。
【解決手段】 撹拌翼3は、撹拌軸の下端が挿入される円筒形状のボス61と、ボス61の外周に接続され水平方向に延びる円板状の上円板11と、上円板11から下方に離隔した位置に配置される円板状の下円板21とを有する。上円板11の上面12及び下円板21の下面22には、それぞれの外周縁13、23に沿って周方向に所定間隔で複数の上刃31a~31h及び下刃41a~41hが設けられている。上円板11の中央部分には、ボス61の外周に接する位置に上円板11及び下円板21で区画される空間に連通する開口が設けられている。上円板11及び下円板21の間には水平方向に且つ放射状に複数枚の羽根板51a~51fがボス61に取り付けられている。羽根板51a~51fはその先端部分53が回転方向に対して後退した湾曲形状となっている。
【選択図】
図3