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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】農業支援システム、方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
A01G7/00 603
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2024002130
(22)【出願日】2024-01-10
【審査請求日】2024-01-15
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520308732
【氏名又は名称】HarvestX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長田 知明
(72)【発明者】
【氏名】西本 容子
(72)【発明者】
【氏名】市川 友貴
(72)【発明者】
【氏名】半澤 誠規
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-055100(JP,A)
【文献】特開2021-052635(JP,A)
【文献】特開2014-226057(JP,A)
【文献】特開2022-006700(JP,A)
【文献】特開2021-023190(JP,A)
【文献】特開平04-287622(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113207680(CN,A)
【文献】自動授粉・収穫ロボットXV3によるイチゴの授粉,2023年09月12日,インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=VWFwXnBoh_w>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域を囲むように配置された3以上の梵天からなる授粉部から構成される操作機構と、制御部と、を備える農業支援システムであって、
前記制御部は、
所定の花の雌蕊を特定する箇所特定ステップと、
前記操作機構に、前記3以上の梵天が、前記箇所特定ステップにおいて特定した前記所定の花の雌蕊を囲むように接触させる操作ステップと、
を実行する、
農業支援システム。
【請求項2】
前記操作ステップは、
前記1または複数の授粉部が前記所定の花の雌蕊に接触するまでは前記1または複数の授粉部を振動させないステップと、
前記1または複数の授粉部が前記所定の花の雌蕊に接触する際、または、接触した後に前記1または複数の授粉部を振動させるステップと、を含む、請求項1記載の農業支援システム。
【請求項3】
前記操作ステップは、前記授粉部を振動させる振動ステップを含み、前記操作ステップは、前記に応じて、前記授粉部を振動させる際の振幅、周波数および振動方向の少なくともいずれか1つを制御する振動制御ステップを含む、請求項1記載の農業支援システム。
【請求項4】
前記授粉部は、第1梵天および第2梵天を含み、
前記操作機構の延伸する方向において前記第1梵天の第1位置は、前記第2梵天の第2位置とは異なる位置に設けられている、請求項1記載の農業支援システム。
【請求項5】
前記第1梵天および前記第2梵天は、前記花に応じた前記第1位置および前記第2位置に設けられている、請求項4記載の農業支援システム。
【請求項6】
前記操作ステップは、
前記3以上の梵天の少なくともいずれか2以上の梵天が前記所定の花の雌蕊に接触する際、または、接触した後に前記梵天を第1強度で振動させるステップを含む、請求項1記載の農業支援システム。
【請求項7】
前記操作ステップは、
前記所定の花の雌蕊が前記所定の領域に含まれているときに、前記梵天を第1強度で振動させるステップを含む、請求項1記載の農業支援システム。
【請求項8】
前記操作ステップは、前記3以上の梵天のうち少なくともいずれか1つの梵天が前記所定の花の雌蕊に接触する際、または、接触した後に前記梵天を第2強度で振動させるステップを含み、前記操作ステップは、前記梵天を前記第1強度または前記第2強度のいずれかの強度で選択的に振動させるステップであり、前記第1強度は、前記第2強度よりも大きい、請求項6記載の農業支援システム。
【請求項9】
前記制御部は、
前記3以上の梵天を帯電させる帯電ステップと、を実行し、前記操作ステップは、前記帯電ステップにおいて前記3以上の梵天を帯電させた後に、前記3以上の梵天を前記所定の花の雌蕊に接触させるステップである、請求項1記載の農業支援システム。
【請求項10】
前記箇所特定ステップは、第1の花のおしべ、および、第2の花の雌蕊を特定するステップであり、前記操作ステップは、前記3以上の梵天を前記第1の花のおしべを囲むように接触させた後に、前記3以上の梵天を前記第2の花の雌蕊を囲むように接触させるステップである、請求項1記載の農業支援システム。
【請求項11】
前記制御部は、
前記操作ステップにおいて前記授粉部を前記所定の花の雌蕊接触させるに、前記所定の花の雌蕊以外の障害物を特定する障害物特定ステップと、
前記障害物特定ステップにおいて特定した前記障害物を除外する障害物除外ステップと、を実行し、
前記操作ステップは、前記障害物除外ステップにおいて前記障害物が除外された後に、前記授粉部を前記所定の花の雌蕊に接触させるステップである、請求項1記載の農業支援システム。
【請求項12】
前記授粉部を囲むように形成された抑制部を備え、
前記抑制部は、前記操作ステップにおいて前記授粉部を前記所定の花の雌蕊接触させる際に、前記所定の花の雌蕊が、前記授粉部から離れる方向へ逃げることを抑制する
請求項1記載の農業支援システム。
【請求項13】
前記抑制部は、筒状に形成されたガイド部材から構成される、請求項12記載の農業支援システム。
【請求項14】
植物の画像を撮影する撮影機構と、を備え、
前記箇所特定ステップは、前記撮影機構により撮影された前記植物の画像に基づき、前記所定の花の雌蕊を特定するステップである、請求項1から13のいずれか記載の農業支援システム。
【請求項15】
前記授粉部は、羽毛素材等の柔らかな先端を有する3以上の梵天から構成される、請求項1から13のいずれか記載の農業支援システム。
【請求項16】
プロセッサと、メモリとを備える農業支援システムに実行される方法であって、前記プロセッサが、請求項1から請求項13のいずれかに係る発明において実行される全てのステップを実行する方法。
【請求項17】
プロセッサと、メモリとを備える農業支援システムに実行されるプログラムであって、前記プロセッサが、請求項1から請求項13のいずれかに係る発明において実行される全てのステップを実行するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、農業支援システム、方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
イチゴなどの虫媒花は、自然界で昆虫(例えばミツバチ)を媒介して授粉が行われる。現在、植物工場のような閉鎖的または半閉鎖的な空間で植物を計画的に生産することが多い。しかし、このような植物工場では、昆虫を飛ばすために欠かせない太陽光、紫外線は足りないとともに、花粉交配用のハチの価格が高騰しているので、昆虫による自然の受粉は難しい。
【0003】
よって、イチゴを栽培する植物工場においては、作業者が筆や綿棒などを使って花をなぞって授粉させる作業が行われている。しかしながら、このような人工授粉の作業は、手間がかかるだけではなく、確実に授粉させるために十分な経験と熟練も必要であり、コストが高くなる。
【0004】
例えば特許文献1は、蜂と人手作業に頼らず、植物の花を自動的かつ確実に授粉させることができる技術を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-052635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
植物の所定の箇所に対する操作をより効果的に行うことができていないという課題がある。そこで、本開示は、上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、植物の所定の箇所に対する操作をより効果的に行う技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
植物と接触して所定の操作を行う操作機構と、制御部と、を備える農業支援システムであって、制御部は、植物の所定の箇所を特定する箇所特定ステップと、操作機構に、箇所特定ステップにおいて特定した植物の所定の箇所に所定の操作を行う操作ステップと、を実行し、操作ステップは、操作機構が植物の所定の箇所を囲むように所定の操作を行うステップである、農業支援システム。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、植物の所定の箇所に対する操作をより効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1の実施形態に係る自動授粉装置の機能的な構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る自動授粉装置1の外観の例を示す図である。図2Aは、自動授粉装置1の外観と、授粉部100の構成を示す図であり、図2Bは、自動授粉装置1の別の構成にかかる外観の例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る自動授粉装置を使用して花を授粉させる局面を示す外観図である。
図4】第1の実施形態に係る自動授粉装置の授粉部100を示す図である。図4Aは、授粉部100の側面図を示す図であり、図4Bは授粉部100の上面図を示す図である。
図5】授粉部100に設けられたガイド部材131を示す図である。
図6図6Aは、ガイド部材131の上面図を示す図であり、図6Bはガイド部材131の側面図を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る自動授粉装置により、授粉処理を行う動作を示すフローチャートである。
図8】本開示の第2の実施形態に係る自動授粉装置の機能的な構成を示す図である。
図9】第2の実施の形態に係る自動授粉装置を使用して花を授粉させるときの花の上面概略図である。
図10】第2の実施の形態に係る自動授粉装置の接触箇所情報3201のデータ構造を示す図である。
図11】第2の実施形態に係る自動授粉装置により、授粉処理を行う動作を示すフローチャートである。
図12】本開示の第3の実施形態に係る自動授粉システムの機能的な構成を示す図である。
図13】第3の実施形態に係る自動授粉システムにより、植物工場内の花を授粉させる動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
本開示にかかる自動授粉装置1(農業支援システム)は、制御部と、植物と接触して所定の操作を行う操作機構と、操作ステップにおいて植物の所定の箇所に所定の操作を行う際に操作機構が、植物の所定の箇所から離れることを抑制するための離間抑制部と、植物の画像を撮影する撮影機構と、を備える。
操作機構は、1または複数の授粉部から構成される。
操作機構は、所定の領域を囲むように配置された3以上の授粉部から構成される。
授粉部は、羽毛、羊毛、人毛、動物等の毛、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、植物等の繊維等の柔らかな先端を有する梵天から構成される。
操作機構は、第1授粉部および第2授粉部を含み、操作機構の延伸する方向において第1授粉部の第1位置は、第2授粉部の第2位置とは異なる位置に設けられている。
第1授粉部および第2授粉部は、植物に応じた第1位置および第2位置に設けられている。
操作機構の具体的な構成は以下の通り説明する。
【0012】
なお本開示においては、植物の所定の箇所に所定の操作を行う操作ステップとして、1または複数の授粉部が所定の花の雌蕊を囲むように1または複数の授粉部を所定の花の雌蕊に接触させる所定の操作を行う授粉処理を一例として開示するがこれに限られない。
例えば、操作ステップは、操作機構が植物の所定の箇所を囲むように所定の操作を行うものであっても良い。例えば、所定の操作は、花の授粉操作、果実の収穫操作、葉掻き操作、果実の間引き操作からなる群から選択される少なくとも1つを含んでも良い。
【0013】
本開示の実施形態においては、花の雄蕊または雌蕊に対する操作を開示する。なお、操作ステップは、1または複数の授粉部を第1の花のおしべに接触させた後に、1または複数の授粉部を第2の花の雌蕊に接触させるように所定の操作を行うものとしても良い。
具体的に、第1の花に対する授粉処理を行った後に、異なる第2の花に対する授粉処理を実行しても良い。これにより、授粉部100は第1の花の雄蕊から花粉を吸着するとともに、第2の花の雌蕊に対して吸着した花粉を授粉させることができる。また、授粉部を所定の花の雄蕊に接触させた後に、授粉部を当該所定の花(同じ花)の雌蕊に接触させるように移動させても良い。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0014】
<第1の実施形態>
<構成>
以下、図1及び図2を参照しながら、本開示の第1の実施形態に係る自動授粉装置1の構成について説明する。自動授粉装置1は、主に植物工場、温室やビニールハウスのように植物を計画的に生産するシステムにおいて、植物の花に対して自動的に授粉処理を行う装置である。具体的には、イチゴ及びトマトなど、花粉が同じ花の柱頭につく自家授粉の花に対し、自動的に授粉処理を行う装置である。
【0015】
図1は第1の実施形態に係る自動授粉装置1を示す機能ブロック構成図である。図1に示すように、自動授粉装置1は、授粉部100(操作機構)と、第1カメラ201、第2カメラ202(撮影機構)と、制御部300とを有している。授粉部100と、第1カメラ201、第2カメラ202と、制御部300とは、ネットワークNWを介して相互に接続される。ネットワークNWは、通信を行うための通信網であり、例えば、インターネット、イントラネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、ワイヤレスLAN(Wireless LAN:WLAN)、ワイヤレスWAN(Wireless WAN:WWAN)、仮想プライベートネットワーク(Virtual Private Network:VPN)等を含む通信網により構成されている。また、授粉部100と、第1カメラ201、第2カメラ202と、制御部300とは、例えば、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等により相互に直接接続してもよい。
【0016】
図2は第1の実施形態に係る自動授粉装置1の外観の例を示す図である。図2Aに、自動授粉装置1の外観と、授粉部100の構成を示す。なお、図2Aにおいて、左図は自動授粉装置1の全体の外観を示し、右図は、授粉部100の外観を示す。図2Bに、自動授粉装置1の別の構成にかかる外観の例を示す。
【0017】
図2Aに示すように、自動授粉装置1は、本体部106と、授粉部100(操作機構)と、本体部106に配置されるアーム102と、アームを移動可能に駆動する駆動部(図示しない)と、自動授粉装置1を走行させる走行部(図示しない)とを有している。走行部は、例えば、自動授粉装置1の下面に設置され、地面を走行するための車輪であるとしてもよく、レール上を移動可能な車輪であるとしてもよい。
【0018】
授粉部100は、アーム102の先端に搭載される。第2カメラ202は、授粉部100(つまり、アーム102の先端)に搭載されるが、アーム102に搭載されることとしてもよい。第1カメラ201は、本体部106に搭載される。つまり、第2カメラ202は、アーム102の動作と連動して移動する一方、第1カメラ201は、アーム102の動作に連動しないこととする。ただし、第1カメラ201が、アーム102に搭載されることとしてもよい。
【0019】
また、本開示においては授粉させる花、雄蕊および雌蕊等を第1カメラ201、第2カメラ202等の撮影データに基づき特定する構成を一例として開示するがこれに限られない。例えば、花、雄蕊および雌蕊等に設けられたRFIDタグ等に基づき、非光学的な手法により特定しても良い。その他、匂いセンサ、花粉センサ等に基づき授粉させる花、雄蕊および雌蕊等を特定しても良い。
【0020】
図2Bは、図2Aに示す構成において、さらに、授粉部100において、梵天12の軸方向に移動可能な駆動機構101を有している例を示す。例えば、自動授粉装置1が、アーム102を駆動させることにより、授粉させる花の近傍まで授粉部100を移動させたとする。花に対して授粉部100を進入させる角度を定める場合、制御部300は、アーム102を駆動させて、花に対して授粉部100の梵天12を所定の角度に傾けたとする。制御部300は、駆動機構101を駆動させることにより、梵天12の軸方向に沿って梵天12を花に対して接触させることができる。これにより、花に対して、所望の角度で所望の位置に梵天12を接触させることができる。
【0021】
授粉部100は、図2Aに示すように、移動可能なアーム102の先端部に設けられ、植物の花と接触して授粉処理を行うものである。授粉部100は、植物の花と接触させるための先端部に、羽毛素材等の柔らかな先端を有する耳かきの先端に設けられるような繊維状の部材を有している。具体的に、授粉部100は、梵天12から構成される。
梵天12は、図4A図4Bに示すように第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123の3つの梵天(第1授粉部、第2授粉部、第3授粉部)から構成される。なお、梵天(授粉部)の数は、3つである必要は必ずしもなく、3つよりも少なくとも構わないし、3つよりも多くても良い。梵天12を、花の雄蕊や雌蕊等へ接触させることにより授粉処理が行われるが、授粉処理においては梵天12が大きいと葉や花弁などの障害物と接触することにより、適切に梵天12を雄蕊や雌蕊等へ接触させることが難しい場合がある。このような場合においても、比較的小さな複数の梵天を組み合わせて、梵天12を形成することにより、葉や花弁等の障害物へ干渉することなく、より効果的に花の雄蕊や雌蕊に対して授粉部100(梵天12)を接触させることが可能となる。
第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123は、それぞれ、モータ113から伸びる第1アーム124、第2アーム125、第3アーム126により支持される。つまり、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123は、それぞれ、第1アーム124、第2アーム125、第3アーム126の先端に設けられ、第1アーム124、第2アーム125、第3アーム126の他端はモータ113に接続される。なお、第1アーム124、第2アーム125、第3アーム126の他端は一のモータ113に接続される必要は必ずしもなく、それぞれ異なるモータに接続されても良い。
本開示において、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123は、所定の領域127を囲むように互いに隣接して配置(円形状に並んで配置)される。所定の領域127は、梵天12の授粉処理の際の進入方向(花、雄蕊、雌蕊等の方向、操作機構の延伸する方向)に対して、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123の先端面に比べて窪んだ空間として形成される。
また、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123は、アーム102の駆動により、授粉部100の進入方向に対して異なる位置に設けられていても良い。例えば、アーム102の駆動による授粉部100の進入方向は、第1アーム124、第2アーム125、第3アーム126の延伸方向と略同一であることが好適である。この場合において、第1アーム124、第2アーム125、第3アーム126の延伸方向において、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123は異なる位置に設けられる。例えば、第1アーム124、第2アーム125、第3アーム126の長さを互いに相違させることにより実現することができる。このように、梵天12は、授粉部100の進入方向に対して、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123の先端面は、それぞれ異なる位置となり、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123の先端面により段差が設けられた構成としても良い。これにより、梵天12を花、雄蕊、雌蕊に対して、より効果的に接触させることが可能となり、授粉をより効果的に行うことができる。
例えば、本開示においては、第1梵天121は、第2梵天122および第3梵天123に比べて、アーム102から遠い位置に設けられる構成としても良い。これにより、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123の雌蕊に対する接触態様をより良好なものとすることができ、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
授粉部100は、当該繊維状の部材としての梵天12の繊維を植物の花と接触させることで授粉処理を行う。例えば、授粉部100は、梵天12と、モータ113と、発光部112と、第2カメラ202を有する。授粉部100は、制御部300の制御に従って、授粉すべき花の雌蕊及び雄蕊に、梵天12を接触させる。
具体的に、所定の領域127に雌蕊が囲まれる(含まれる)ように第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123を移動させることにより、授粉すべき花の雌蕊に、梵天12を接触させるように操作機構を制御する。
なお、モータ113とアーム102または本体部106との間にはモータ113の振動を抑制するためのダンパーが設けられても良い。これにより、モータ113の振動は、授粉部100に伝わるのみで、アーム102または本体部106へ振動が伝わることを抑制することができる。モータ113の振動を授粉部100へ効果的に伝えることにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0022】
梵天12は、モータ113の軸の位置に基づいて、所定の形状に繊維を配置した構成としており、図示する例では、モータ113の軸に対し、円形状の部材と、当該部材に繊維を備え付けた構成としている。つまり、梵天12は、軸の位置を原点とした円形状の外周に繊維を配置した構成を有している。すなわち、梵天12は、軸と、軸の外周部に設けられる複数の繊維からなる。なお、軸の面積に対して、繊維を配置する面積を大きくしてもよいし、軸の面積と同程度、または、軸の面積よりも小さくしてもよい。なお、梵天12において、繊維を円形状の外周に配置することの他に、円形に敷き詰めて配置することとしてもよい。また、梵天12において、円形以外の形状(多角形等)に繊維を配置してもよい。制御部300は、第2カメラ202の撮影画像に基づいて、撮影画像における蕊の位置を特定する。発光部112は、例えば、LED(light emitting diode)である。制御部300は、第2カメラ202で撮影される撮影画像の明るさなどの情報に応じて発光部112を発光させるか否かを制御することとしてもよい。これにより、第2カメラで、より鮮明に撮影画像を得ることができる。そして、授粉部100は、制御部300の制御に従って、梵天12の繊維の部分をモータ113で振動させながら、雄蕊にある花粉をなぞるように、花粉をまんべんなく均一に雌蕊に付着させる。また、授粉部100を、花の蕊に接触させながら上下方向及び左右方向に動かすこともできる。
【0023】
好ましくは、授粉部100のサイズ及び形状は、授粉の対象となる花の形態(構造、形状、大きさ、花の構造、形状、大きさ等)に応じて設計してよい。第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123の配置は、授粉の対象となる花の形態(構造、形状、大きさ、花の構造、形状、大きさ等)に応じて設計してよい。授粉部100を振動させる際の振幅、周波数および振動方向の少なくともいずれか1つは、授粉の対象となる花の形態に応じて制御してよい。
操作機構のサイズ、形状、配置の少なくともいずれか1つは、対象となる植物の形態(構造、形状、大きさ、花の構造、形状、大きさ等)に応じて設計してよい。操作機構を振動させる際の振幅、周波数および振動方向の少なくともいずれか1つは、対象となる植物の形態(構造、形状、大きさ、花の構造、形状、大きさ等)に応じて制御してよい。
【0024】
また、授粉部100は、花に接触して回転すること、及び花をなぞることのほか、花に振動を与えることによって授粉処理を行うこととしてもよい。花を傷つけずに花粉を雌蕊に付着させることができる限り、授粉処理として、上記のうちの一つの動作のみを実行してもよいし、二つ以上の動作を同時に実行してもよいし、別の動作を実行してもよい。
【0025】
図2において、授粉部100が梵天からなる例を示しているが、これに限らず、授粉部100は軸と、軸部分よりも太い掻き出し部からなってもよい。例えば、授粉部100は、上記の掻き出し部が、軸部分と同程度の弾性または剛性を有する部材により構成されており、例えば、綿棒のような素材により実現してもよい。また、授粉部100は、例えば、例えば、上記の掻き出し部が、軸部分とは異なる弾性、剛性、密度を有する部材により構成されており、例えば、繊維状の部材を有する刷毛のような素材により構成されていてもよい。
また、授粉部100を、上位の軸部分ではなく掻き出し部のみにより構成してもよい。制御部300は、授粉処理として、授粉部100の掻き出し部を花の蕊に接触しながら上下方向及び左右方向に動かす。つまり、授粉部100の形態としては、花を傷つけずに花粉を雌蕊に付着させることができるものであればよい。
また、モータ113は、授粉部100を回転可能な構成としても良い。具体的に、モータ113は、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123のそれぞれを回転させる制御を実行しても良いし、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123からなる梵天12の全体を、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123が所定の領域127の周囲を回転させるように制御しても良い。なお、第2の実施形態、第3の実施形態においても同様である。
これにより、雌蕊に対して授粉部の先端が接触する場合に比べて、授粉部による雄蕊、雌蕊に対する接触が柔らかくなり、構造的に脆弱である雄蕊、雌蕊を傷めることを抑制できる。
【0026】
授粉部100の掻き出し部を花の蕊に接触しながら動かすときは、雄蕊に接触している部分が雌蕊に接触するように動かすことにより、雄蕊の花粉が雌蕊に付着し、より効果的に授粉を行うことができる。
【0027】
移動可能なアーム102の先端部には、操作ステップにおいて植物の所定の箇所に所定の操作を行う際に、操作機構が、植物の所定の箇所から離れることを抑制するための離間抑制部が備えられる。離間抑制部は、筒状に形成されたガイド部材から構成される。
アーム102の先端部に離間抑制部を設けた場合には、梵天12は複数の梵天から構成されるものではなく、単一の梵天から構成させるものとしても良い。離間抑制部を設けることにより、比較的大きな梵天12において、梵天12が葉や花弁等の障害物へ干渉する場合においても効果的に花の雄蕊や雌蕊に対して授粉部100(梵天12)を接触させることが可能であるからである。複数の梵天とガイド部材とを組み合わせると操作機構が大柄になってしまい、ガイド部材が植物や花弁と接触することにより、植物や花を傷つけてしまうことがある。ガイド部材と組み合わせる場合は、単一の梵天と組み合わせることが好適である。
具体的に、授粉部100の梵天12を雌蕊に接触させる際に、梵天12が雌蕊周囲の花弁に接触することにより、花が授粉部100から離れる方向へ逃げてしまう場合がある。ガイド部材131は筒状に形成されており、花を授粉部100から離れる方向へ逃げることを抑制することができる。特に、本開示においては授粉部100は、複数の第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123を、から構成されており、雌蕊に比べて大きな形状に形成されており、梵天12を雌蕊に接触させる際に梵天12が花弁に接触しやすくなる。そのため、花粉を雌蕊に付着させる際に、花が授粉部100から離れる方向へ逃げないように離間抑制部を設けることにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0028】
ガイド部材131の構成について説明する。図5は、授粉部100に設けられたガイド部材131を示す図である。図6Aは、ガイド部材131の上面図を示す図であり、図6Bはガイド部材131の側面図を示す図である。
ガイド部材131は、モータ113に対して、梵天12のアームを囲むように接続される。なお、ガイド部材131は、モータ113に設けられる必要はなく、アーム102先端部を含む、任意の位置に設けられていても良い。
ガイド部材131は、アーム102から、授粉部100の先端に向かって広がるように円錐形状に形成されており、当該円錐の内側に梵天12が位置するように形成されている。なお、ガイド部材131は円錐形状である必要はなく、梵天12が内側に位置するように形成された円筒形状でも構わない。ガイド部材131は、授粉部100の先端に向かって広がるような円錐形状で形成することにより、アーム102の先端部においてガイド部材131の大きさを、授粉部100の先端におけるガイド部材131の大きさに比べて小さくすることができるため、他のガイド部材131の根元の部分(アーム102との接続部分)が他の植物や花などと干渉することを抑制できる。
ガイド部材131は、外周に空隙からなるスリット1311、1312、1313、1314が設けられている。これにより、ガイド部材131の重量を軽くすることができる。本開示においてガイド部材131は一例として、円錐および円筒形状で形成されたものを説明したがこれに限られない。ガイド部材131は、梵天12が内側に位置するように形成され、かつ、花を授粉部100から離れる方向へ逃げることを抑制可能な任意の形状で形成することが許される。
【0029】
第1カメラ201は、花を識別して花の位置を特定するためのものである。具体的には、第1カメラ201は、制御部300の制御に従って、自動で花を判別し花の部分にピントを合わせて撮影し、画像データを生成する装置である。第1カメラ201は、例えばCCD(Charge Coupled Device)等の撮影装置と、撮影した画像を画像データに変換する変換装置とを備えるデジタルカメラ等により構成されている。また、第1カメラ201は、例えば赤外線センサ又は深度センサのようなセンサにより、撮影した花までの距離及び角度を検知して、さらに授粉部100から花までの距離及び角度を算出する。第1カメラ201により取得したデータは、制御部300で使用される。
【0030】
第1カメラ201は、図2に示すように、自動授粉装置1の本体部106に搭載されている。第1カメラ201は、アームの先端側にある植物の全体、及びそれぞれの花の画像を取得するように、上下方向、左右方向、前後方向の少なくともいずれかに動きながら撮影することができる。
【0031】
また、好ましくは、第1カメラ201が撮影した画像データから、深層学習の手法を用いて、花弁の開いている程度に基づき、花が咲いているか、満開しているか、すなわち、授粉に適しているかを認識することとしてもよい。この場合に、自動授粉装置1は、授粉に適している花のみに対して授粉処理を行う。
【0032】
第2カメラ202は、花と授粉部100との接触状況を取得するためのものである。具体的には、第2カメラ202は、授粉部100が授粉処理を行っているときに、少なくとも花、または、授粉部100と花との両方を撮影して画像データを生成する装置である。制御部300は、第2カメラ202の撮影画像に基づいて、授粉部100と花との位置関係を検出する。第2カメラ202は、例えばRGBカメラ等の撮影装置と、撮影した画像を画像データに変換する変換装置とを備えるデジタルカメラ等により構成されている。制御部300は、第2カメラ202が生成した撮影データに基づき、授粉部100と花とが接触しているか否か、すなわち、花が授粉したか否かを判定する。
【0033】
第2カメラ202は、図2に示すように、移動可能なアーム102の先端部において、授粉部100の近傍に配置されている。このような配置にしているのは、授粉部100が授粉処理を行っているときに、授粉部100と花に近い位置に撮影して、精度の高い画像を取得するためである。
【0034】
また、好ましくは、第2カメラ202が撮影した画像データから、深層学習の手法を用いて、授粉部100と花とが接触している時間(接触時間)を計測し、当該接触時間が所定時間以上である場合、花が授粉したと判定することとしてもよい。
【0035】
制御部300は、授粉処理を制御するように、授粉部100及び第1カメラ201、第2カメラ202の動作を制御する装置であり、例えば、各種コンピュータやサーバ装置を含む装置等により構成されている。具体的には、制御部300は、第1カメラ201の撮影画像に基づき、授粉すべき花へ授粉部100を移動させるようアーム102を駆動させるとともに、第2カメラ202の撮影画像に基づき、花と授粉部100とが接触しているか否かを判定し、接触していないと判定した場合に、再び授粉部100を花へ移動させて授粉処理を行うように制御する。なお、制御部300をサーバ装置で構成する場合、単体で動作するサーバ装置に限られず、ネットワークNWを介して通信を行うことで協調動作する分散型サーバシステムや、クラウドサーバにより構成してもよい。
【0036】
制御部300は、通信手段310と、記憶手段320と、制御手段330とを備える。
【0037】
通信手段310は、ネットワークNWを介して授粉部100及び第1カメラ201、第2カメラ202と有線または無線で通信を行うための通信インタフェースであり、互いの通信が実行できるのであればどのような通信プロトコルを用いてもよい。この通信手段310は、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信プロトコルにより通信が行われる。
【0038】
記憶手段320は、各種制御処理や制御手段330内の各機能を実行するためのプログラム、入力データ等を記憶するものであり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含むメモリや、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等を含むストレージから構成される。また、記憶手段320は、授粉部100及び第1カメラ201、第2カメラ202と通信を行ったデータや、後述する各処理にて生成されたデータを一時的に記憶する。
【0039】
制御手段330は、記憶手段320に記憶されるプログラムを読み込んで、プログラムに含まれる命令を実行することにより、制御部300の全体の動作を制御するものである。制御手段330は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ(Microprocessor)、プロセッサコア(Processor core)、マルチプロセッサ(Multiprocessor)、ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)を含む装置等から構成される。制御手段330の機能として、動作制御モジュール331と、接触判定モジュール332とを備えている。
【0040】
動作制御モジュール331は、第1カメラ201の撮影画像に基づき、授粉すべき花へ授粉部100を移動させて授粉処理を行う。具体的には、動作制御モジュール331は、第1カメラ201により取得した花のデータに基づいて、授粉部100を所定の角度で所定の距離を移動させ、花と接触するようにする。例えば、授粉部100は梵天を有しており、動作制御モジュール331は、梵天の繊維の部分を振動させながら、雄蕊にある花粉をなぞるように、花粉をまんべんなく均一に雌蕊に付着させる。
【0041】
また、動作制御モジュール331は、後述する接触判定モジュール332が、授粉部100と花とが接触していないと判定した場合に、再び授粉部100を花へ移動させて授粉処理を行う。
【0042】
接触判定モジュール332は、第2カメラ202の撮影画像に基づき、花と授粉部100とが接触しているか否かを判定する。具体的には、接触判定モジュール332は、第2カメラ202により検出した授粉部100と花との位置関係に基づいて、授粉部100が授粉処理を行っているときに、授粉部100と花とが接触しているか否か、すなわち、花が授粉したか否かを判定する。
<処理の流れ>
【0043】
以下、図3乃至図7を参照しながら、本開示の第1の実施形態に係る自動授粉装置1の処理の流れについて説明する。図3は、第1の実施形態に係る自動授粉装置1を使用して花を授粉させる局面を示す外観図であり、図7は、第1の実施形態に係る自動授粉装置1により、授粉処理を行う動作を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS401において、制御部300は、植物の所定の箇所を特定する箇所特定ステップを実行する。具体的に、制御部300は、第1カメラ201の撮影画像に基づいて、花を識別して花の位置を特定する。第1カメラ201は、自動で花を判別し花の部分にピントを合わせて撮影するとともに、例えば赤外線センサ又は深度センサのようなセンサにより、撮影した花までの距離及び角度を検知して、さらに授粉部100から花までの距離及び角度を算出する。
【0045】
箇所特定ステップは、所定の花の雌蕊を特定する。箇所特定ステップは、第1の花のおしべ、および、第2の花の雌蕊を特定するステップである。箇所特定ステップは、撮影機構により撮影された植物の画像に基づき、植物の所定の箇所を特定するステップである。
具体的に、制御部300は、第1カメラ201により撮影した画像データに基づき、花の雄蕊、雌蕊を特定する。なお、制御部300は、第1の花の雄蕊、第2の花の雌蕊、などの複数の花のそれぞれの雄蕊および雌蕊の位置を特定しても良い。
【0046】
<障害物特定ステップ>
制御部は、操作ステップにおいて操作機構が植物の所定の箇所に所定の操作を行う際の障害物を特定する障害物特定ステップを実行する。
具体的に、制御部300は、授粉部100の位置から、特定した雄蕊、雌蕊の位置に基づき、授粉部100を雄蕊、雌蕊に接触させる際の経路(到達パス)を計算する。具体的に、制御部300は、授粉部100から雄蕊、雌蕊の位置の間に存在する枝や葉、花弁、その他、任意のオブジェクト等の障害物の形状、大きさ、位置、内容(枝、葉、その他、除外できる障害物か否か)などを特定する。制御部300は、授粉部100を、障害物を避けながら、雄蕊、雌蕊の位置まで移動させるための経路を計算する。なお、経路の計算は、機械学習、深層学習、その他、任意の人工知能技術を用いても良い。
制御部300は、除外することができる障害物を無視して、除外することができない障害物のみを考慮して、授粉部100を、障害物を避けながら、雄蕊、雌蕊の位置まで移動させるための経路を計算しても良い。後述する障害物除外ステップにより除外可能な障害物は除外することにより、到達パスを形成しても良い。
【0047】
<障害物除外ステップ>
制御部は、障害物特定ステップにおいて特定した障害物を除外する障害物除外ステップを実行する。操作ステップは、障害物除外ステップにおいて障害物が除外された後に、植物の所定の箇所に所定の操作を行う。
具体的に、制御部300は、アーム102により、または、不図示の他のアーム等を用いることにより、障害物特定ステップにおいて特定した障害物を除外する。例えば、アーム102を移動させることにより、アーム102の一部を雄蕊、雌蕊の周囲の障害物に接触させ移動させることにより障害物を除外しても良い。また、アーム102の一部を花に接触させ移動させることにより、授粉部100を雄蕊、雌蕊に接触させる際の到達パスを新たに形成しても良い。
このように、制御部300は、到達パスに含まれる障害物を除外したり、到達パスの経路を変更することにより、授粉部を雄蕊、雌蕊に接触させるための到達パスを形成する。なお、制御部300は、到達パスを形成できなかった場合には、特定した雄蕊、雌蕊に対する授粉処理をスキップしても良い。この場合は、制御部300は、他の花の雄蕊、雌蕊に対する授粉処理を引き続き行う。
また、ステップS402以降の操作ステップは、障害物除外ステップにおいて障害物が除外された後に実行しても良い。
【0048】
また、第1カメラ201は、生成した各種データを制御部300に送信する。
【0049】
<帯電ステップ>
制御部は、1または複数の授粉部を帯電させる帯電ステップを実行する。
具体的に、制御部300は、アーム102を移動させ、梵天12を、アーム102の近傍に設けられ梵天12を接触可能な位置に設けられた不図示のフッ素樹脂板に擦り付けることにより、梵天12をプラスに帯電させる。梵天12を帯電させることにより、雄蕊の花粉をより吸い付けやすくすることができる。これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
なお、梵天12をプラスに帯電させる素材としては、シリコン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル、セロファン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、白金、ポリスチレン、ゴム、金、ニッケル、銀、銅、鉄、エボナイト、クロム等のマイナスに帯電しやすい任意の材料を用いることができる。同様に、梵天12は、羽毛、羊毛、人毛、動物等の毛、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、麻、絹、植物等の繊維等のプラスに帯電しやすい任意の材料を用いることができる。また、授粉部100は、ガラス、雲母、鉛、木材等の繊維以外の材料を用いて構成しても構わない。
また、ステップS402以降の操作ステップは、帯電ステップにおいて1または複数の授粉部を帯電させた後に、1または複数の授粉部を所定の花の雌蕊に接触させる所定の操作を行っても良い。
【0050】
ステップS402において、制御部は、操作機構に、箇所特定ステップにおいて特定した植物の所定の箇所に所定の操作を行う操作ステップを実行する。操作ステップは、1または複数の授粉部が所定の花の雌蕊を囲むように1または複数の授粉部を所定の花の雌蕊に接触させる所定の操作を行う。操作ステップは、操作機構を振動させる振動ステップを含む。
具体的に、制御部300は、第1カメラ201の撮影画像に基づき、授粉すべき花へ授粉部100をアーム102等により移動させて授粉処理を行う。制御部300は、第1カメラ201により取得した花のデータに基づいて、授粉部100を所定の角度で所定の距離を移動させ、花と接触するようにする。例えば、授粉部100は梵天12を有している。制御部300は、授粉処理として、モータ113を制御することにより、梵天12の繊維の部分を振動させながら、雄蕊にある花粉をなぞるように、花粉をまんべんなく均一に雌蕊に付着させる。
【0051】
授粉処理の詳細を以下に詳しく説明する。
【0052】
<授粉処理(第一実施例)>
操作ステップは、1または複数の授粉部が所定の花の雌蕊に接触するまでは1または複数の授粉部を振動させないステップと、1または複数の授粉部が所定の花の雌蕊に接触する際、または、接触した後に1または複数の授粉部を振動させるステップと、を含む。
具体的に、制御部300は、授粉部100を花と接触させるまでは、モータ113を制御することにより、梵天12の繊維の部分を振動させないように制御する。制御部300は、アーム102を移動させることにより梵天12を振動させないまま静かに花に接触させるように制御する。制御部300は、ステップS401において特定した到達パスに沿って、アーム102を移動させることにより、梵天12を花に接触させるように移動させる。制御部300は、第1カメラ201または第2カメラ202の撮影画像に基づき、授粉部100が花と接触していると判定した場合に、モータ113を制御することにより、梵天12の繊維の部分を振動させるように制御する。
授粉部100が花に接触する前に振動させてしまうと、花の周囲の葉や他の花などに接触してしまい、授粉処理の対象となる花を押しやってしまうことにより、授粉処理の対象となる花が授粉部100から離れる方向へ逃げてしまう場合がある。また、授粉部100が花に接触する前に振動させてしまうと、花の雄蕊などを損傷させてしまう場合がある。特に、授粉処理の対象となる花が授粉部100に比べて小さい場合に、花が授粉部100から離れる方向へ逃げてしまうことが多い。制御部300は、授粉部100を花に接触した際、または接触した後に振動させることにより、花が授粉部100から離れる方向へ逃げることを抑制することができる。また、授粉部100による雄蕊の損傷を抑制することができる。これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0053】
<授粉処理(第二実施例)>
操作ステップは、3以上の授粉部のうち少なくともいずれか1つの授粉部が所定の花の雌蕊に接触する際、または、接触した後に授粉部を第2強度で振動させる。
具体的に、制御部300は、アーム102を移動させることにより梵天12を振動させないまま静かに花に接触させるように制御する。制御部300は、第1カメラ201または第2カメラ202の撮影画像に基づき、複数の梵天12のうち1の梵天(例えば、第1梵天121とする)が花と接触していると判定した場合(この場合、第2梵天122、第3梵天123は花に接触していない)に、モータ113を制御することにより、第1梵天121の繊維の部分を第2強度で振動させるように制御する。例えば、制御部300は、第1梵天121が第2強度で振動するように、第2パラメータで、モータ113を制御する。制御部300は、第1梵天121を、第2の振幅、第2の周波数および第2の振動方向で振動させるように制御しても良い。なお、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123を含む梵天12を、第2強度で振動させても良い。
操作ステップは、3以上の授粉部の少なくともいずれか2以上の授粉部が所定の花の雌蕊に接触する際、または、接触した後に授粉部を第1強度で振動させる。操作ステップは、所定の花の雌蕊が所定の領域に含まれているときに、授粉部を第1強度で振動させる。
具体的に、制御部300は、第1カメラ201または第2カメラ202の撮影画像に基づき、複数の梵天12のうち2以上の梵天(例えば、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123とする)が花と接触していると判定した場合に、モータ113を制御することにより、梵天12の繊維の部分を第1強度で振動させるように制御する。同様に、制御部300は、第1カメラ201または第2カメラ202の撮影画像に基づき、第1梵天121、第2梵天122、第3梵天123により囲まれる所定の領域127に、花の雌蕊が囲まれている(含まれる)と判定した場合に、モータ113を制御することにより、梵天12の繊維の部分を第1強度で振動させるように制御しても良い。この場合、第1強度は、第2強度よりも大きいものとする。具体的に、第1強度における振幅、周波数の少なくともいずれかは、第2強度における振幅、周波数よりも大きいものとする。
例えば、制御部300は、梵天12が第1強度で振動するように、第1パラメータで、モータ113を制御する。制御部300は、梵天12を、第1の振幅、第1の周波数および第1の振動方向で振動させるように制御しても良い。
なお、授粉処理(第二実施例)において、制御部300は、操作ステップは、授粉部100(梵天12)を第1強度または第2強度のいずれかの強度で選択的に振動させる。具体的に、複数の梵天12のうちすべての梵天が花に接触していない場合にはモータ113を制御することにより梵天12を振動させないように制御し、複数の梵天12のうち1の梵天が花に接触したと判定した場合にはモータ113を制御することにより梵天12を第2強度で梵天12を振動させるように制御し、複数の梵天12のうち少なくとも2以上の梵天が花に接触したと判定した場合にはモータ113を制御することにより梵天12を第1強度で梵天12を振動させるように制御する。
これにより、花が授粉部100から離れる方向へ逃げることを抑制しつつ、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0054】
また、授粉部100が帯電している場合において、授粉部100は雌蕊の周囲に配置された雄蕊の花粉をより吸い付けやすくすることができる。つまり、授粉部100は、より効果的に雄蕊の花粉を吸着させる。そして、授粉部100が、雌蕊に接触すると授粉部100は放電し吸着した花粉を、雌蕊に対して放出する。これにより、授粉部100による雌蕊に対する授粉ムラを軽減できるとともに、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0055】
ステップS403において、第2カメラ202は、花と授粉部との接触状況を取得する。具体的には、第2カメラ202は、授粉部100が授粉処理を行っているときに、授粉部100と花との両方を撮影して授粉部100と花との位置関係を検出する。また、第2カメラ202は、生成した各種データを制御部300に送信する。
【0056】
ステップS404において、制御部300は、第2カメラの撮影画像に基づき、花と授粉部とが接触しているか否かを判定する。具体的には、制御部300は、第2カメラ202により検出した授粉部100と花との位置関係に基づいて、授粉部100が授粉処理を行っているときに、授粉部100と花とが接触しているか否か、すなわち、花が授粉したか否かを判定する。
【0057】
ステップS404において、授粉部100と花とが接触していると判定された場合、この花の授粉が完了したとし、次の花の授粉処理へ移行する一方、授粉部100と花とが接触していないと判定された場合、ステップS401の処理に戻り、再び授粉部100をこの花へ移動させて授粉処理を行う。
【0058】
また、図示していないが、制御部300は、接触していると判定した花の位置を、授粉済位置として記憶してよい。具体的には、授粉済位置は、自動授粉装置1の位置(例えば、GPS位置)と授粉部100の移動情報とに基づいて、三次元的な位置として記憶してよい。このように、自動授粉装置1は、記憶した授粉済位置情報に基づき、授粉済位置以外の花のみに対して、ステップS401からステップS404の授粉処理を行うことで、授粉処理の効率を向上させることができる。
<効果>
【0059】
以上のように、本実施形態によると、制御部は、第1カメラの撮影画像に基づき、授粉すべき花へ授粉部を移動させて授粉処理を行うとともに、第2カメラの撮影画像に基づき、花と授粉部とが接触しているか否かを判定し、接触していないと判定した場合に、再び授粉部を花へ移動させて授粉処理を行う。
【0060】
これにより、蜂と人手作業に頼らず、植物の花を、自動的、かつ、より確実に授粉させることができるので、植物工場などで授粉作業の効率を向上させ、コストを低減することができる。
【0061】
また、花を、より確実に授粉させることができるので、授粉不良に起因する着果不良及び奇形果の発生を防止して、果実の生産量及び秀品率を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態のように、梵天12を花に接触させるための機構である授粉部100及びアーム102とは別に設置される第1カメラ201の撮影画像に基づいて、授粉をさせるべき花を特定しつつ、花に対して梵天12が接触しているか否か(つまり、授粉を行わせることができているか)については、梵天12に近い位置に設置される第2カメラ202の撮影画像に基づいて判定を行う。これにより、花に授粉をさせる精度を、よりいっそう向上させることができる。
【0063】
<第2の実施形態>
本開示の第2の実施形態は、作るべき果実の形状に応じて、授粉処理を制御する自動授粉装置に関する。
【0064】
<構成>
以下、図8を参照しながら、本開示の第2の実施形態に係る自動授粉装置の構成について説明する。図8は、第2の実施形態に係る自動授粉装置の機能的な構成を示す図である。
【0065】
図8に示すように、第2の実施形態に係る自動授粉装置は、制御部300の記憶手段320に接触箇所情報3201が記憶している以外、実施形態1に係る自動授粉装置と構成が同様である。
【0066】
接触箇所情報3201は、作るべき果実の形状に応じて、花の蕊のうち、授粉部100を接触させる接触箇所を示す情報である。具体的には、接触箇所としては、例えば、花の中心にある雌蕊の頂点を原点とし、中心から最も離れている雌蕊を通る平面に平行している平面をXY平面とする三次元座標系に基づいて、三次元的な位置として記憶してよい。
【0067】
図9は、第2の実施の形態に係る自動授粉装置を使用して花を授粉させるときの花の上面概略図である。図9において、外周にある大きめの円形の図形は、花粉を有する雄蕊601を示す。図9において、内周にある小さめの図形(点線で示す)は、雌蕊602である。
【0068】
制御部300は、例えば、楕円形の果実を作るため、授粉時に花粉の付着先となる雌蕊の位置情報をあらかじめ特定し、接触箇所情報3201として記憶する。つまり、制御部300は、接触箇所情報3201として、作るべき果実の形状と、授粉部100により花粉を付着させる雌蕊の位置とを対応付けて記憶させている。作るべき果実の形状としては、例えば、楕円型、ハート型など対称的な形状のものがあるが、対称的ではない形状についても接触箇所情報3201において花粉の付着先となる雌蕊の位置情報を記憶することとしてもよい。
【0069】
図10は、接触箇所情報3201のデータ構造を示す図である。図10に示すように、接触箇所情報3201の各レコードは、項目「形状ID」、項目「形状の名称」、項目「授粉させる雌蕊の位置」、項目「売上金額・出荷数」、項目「人気度」等の情報を含む。
【0070】
項目「形状ID」は、作るべき果実の形状それぞれを識別するための情報である。
【0071】
項目「形状の名称」は、作るべき果実の形状の名称を示す。
【0072】
項目「授粉させる雌蕊の位置」は、作るべき果実の形状に応じて、花の蕊のうち、授粉させる位置(つまり、授粉部100を接触させる接触箇所)を示す。接触箇所情報3201において、花の蕊のうち、授粉させる位置は、三次元座標系に基づく三次元的な位置として保持することとしてもよいし、花の中心にある雌蕊の頂点を原点とし、雌蕊を通る平面などの平面に基づく二次元的な位置として保持することとしてもよい。
【0073】
項目「売上金額・出荷数」は、果実の形状と、当該果実の形状を有する植物が出荷されることにより記録される売上金額及び出荷数の少なくともいずれかの情報を示す。つまり、項目「売上金額・出荷数」は、売上の実績を示す情報である。
【0074】
項目「人気度」は、果実の形状ごとの需要を見積もるために算出されるパラメータである。例えば、外部のコンピュータ装置が、果実の形状(楕円形、ハート型など)についてSNS(Social Networking Service)、インターネット等で投稿されている件数、画像としてアップロードされている数、これら果実の形状を示す画像に対してユーザが反応をした実績(例えば、コンバージョン率)等に基づいて、当該パラメータを算出することとしてもよい。
【0075】
第2の実施形態に係る自動授粉装置は、以上の構成およびデータに基づいて、特定の形状を有する果実を作るため、授粉部100の梵天12を花に接触させることによる授粉を制御する。制御部300は、第2カメラ202の撮影画像、および、接触箇所情報3201に基づいて、例えば、図9に示す黒い領域を、花に授粉部100を接触させる位置として特定し、当該黒い領域に授粉部100を接触させるように授粉部100を移動させる。
【0076】
好ましくは、授粉部100のサイズ及び形状は、花の形態及び接触箇所に応じて設計してよい。
【0077】
<処理の流れ>
以下、図11を参照しながら、本開示の第2の実施形態に係る自動授粉装置の処理の流れについて説明する。図11は、第2の実施形態に係る自動授粉装置により、授粉処理を行う動作を示すフローチャートである。
【0078】
ステップS801において、制御部300は、作るべき果実の形状に応じて、花の蕊のうち、授粉部を接触させる接触箇所の情報をあらかじめ記憶部に記憶する。具体的には、例えば上記した三次元的な位置を接触箇所情報3201として記憶する。
【0079】
ステップS802において、制御部300は、第2カメラ202の撮影画像および接触箇所の情報に基づいて、花に対して授粉部100を接触させる位置を特定する。具体的には、第2カメラ202の撮影画像に基づいて、授粉すべき花ごとに三次元座標系を作成するとともに、接触箇所の情報に基づいて、当該三次元座標系における接触箇所を特定する。
【0080】
ステップS803において、制御部300は、特定した位置に授粉部100を接触させるように授粉部を移動させて、授粉処理を行う。ステップS802に特定した全ての接触箇所が接触されていると判定した場合に、当該花の授粉を完了とする。
【0081】
なお、説明を簡潔にするため図示していないが、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、花を識別して花の位置を特定する処理(障害物特定ステップ、障害物除外ステップ、帯電ステップを含む)、花へ授粉部100を移動させる処理(授粉処理(第一実施例)、授粉処理(第二実施例))、及び花と授粉部100とが接触しているか否かを判定する処理を行う。
【0082】
また、制御部300は、果実の各形状の売上金額又は出荷数に基づいて、作るべき果実の形状を特定してもよい。例えば、制御部300は、売上金額及び出荷数に基づいて、各形状の売上単価を算出する。例えば、楕円形の果実が、通常の形状の果実より売上単価が高い場合、制御部300は、楕円形の果実に対応している接触箇所の情報を記憶手段に記憶する。
【0083】
また、実施形態の説明では、各形状の果実の売上金額又は出荷数に関する情報は、制御部300に接触箇所情報3201として記憶させる構成について説明している。この他に、外部のコンピュータ装置によって、接触箇所情報3201を管理することとしてもよい。当該外部のコンピュータ装置が、制御部300に接触箇所情報3201を送信して、制御部300が接触箇所情報3201を使用することとしてもよい。つまり、作るべき形状を決定するのは、制御部300であってもよいし、自動授粉装置1とは異なる別のコンピュータ装置であってもよい。
【0084】
<効果>
以上のように、本実施形態によると、作るべき果実の形状に応じて、授粉処理を行うことができるので、人気のある形状の果実を生産して、収益性を向上させることができる。
【0085】
また、図2等で説明したように、梵天12に近い位置にある第2カメラ202の撮影画像に基づいて、蕊に対し、梵天12を接触させるべき位置において梵天12を接触させたか否かを判定しているため、所望の形状の果実を作る可能性を、よりいっそう高めることができる。
【0086】
<第3の実施形態>
本開示の第3の実施形態では、植物工場に用いられる自動授粉システムに関する。
【0087】
<構成>
以下、図12を参照しながら、本開示の第3の実施形態に係る自動授粉装置の構成について説明する。図12は、本開示の第3の実施形態に係る自動授粉システムの機能的な構成を示す図である。
【0088】
図12に示すように、第3の実施形態に係る自動授粉システム4は、自動授粉装置1と、識別装置2と、移動ルート生成装置3とを備える。自動授粉装置1と識別装置2とは、ネットワークNWを介して相互に接続される。
【0089】
自動授粉装置1は、本開示の第1の実施形態又は第2の実施形態に記載の自動授粉装置である。
【0090】
識別装置2は、例えば、植物の上方に設置され、植物工場内を撮影し、開花している花を識別する複数のカメラである。識別装置2は、植物工場全体の状況を把握するように、好ましくは、植物工場の天井に配置してよい。
【0091】
移動ルート生成装置3は、識別装置2によって識別される花の位置に基づき、自動授粉装置1の移動ルートを生成する。例えば、移動ルート生成装置3はコンピュータであり、開花している花を全て授粉させるための最短のルートを算出し、自動授粉装置1の移動ルートとして生成する。
<処理の流れ>
【0092】
以下、図13を参照しながら、本開示の第3の実施形態に係る自動授粉システム4の処理の流れについて説明する。図12は、第3の実施形態に係る自動授粉システムにより、植物工場内の花を授粉させる動作を示すフローチャートである。
【0093】
ステップS1001において、識別装置2は、植物工場内を撮影し、授粉すべき花の位置を特定する。例えば、識別装置2は、撮影した画像データを認識し、開花している花を、授粉すべき花として特定し、植物工場を基にする三次元座標系における花の三次元座標を特定する。
【0094】
ステップS1002において、移動ルート生成装置3は、授粉すべき花の位置に基づき、自動授粉装置1の移動ルートを生成する。また、移動ルート生成装置3は、ネットワークNWを介して、生成した移動ルートを自動授粉装置1に送信する。
【0095】
ステップS1003において、自動授粉装置1は、移動ルートに従って移動し、授粉処理を行う。具体的には、実施形態1又は実施形態2に記載の処理を行う。
【0096】
また、図示していないが、自動授粉システムは、果実の注文数に応じて、自動授粉装置1の移動ルート、授粉処理を行う日時、及び授粉させる花の数を制御することとしてもよい。これにより、注文数によって計画的に授粉処理を行い、果実を生産することができる。
【0097】
<効果>
以上のように、本実施形態の自動授粉システムによると、施設内の全体の状態を把握しながら、自動授粉装置を最適なルートに従って移動させて、授粉作業を効率的に行うことができるので、必要な自動授粉装置の台数を少なくして、授粉作業のコストをさらに低減することができる。
【0098】
<付記>
以上の各実施形態で説明した事項を以下に付記する。
【0099】
(付記1)
植物と接触して所定の操作を行う操作機構と、制御部と、を備える農業支援システムであって、制御部は、植物の所定の箇所を特定する箇所特定ステップと、操作機構に、箇所特定ステップにおいて特定した植物の所定の箇所に所定の操作を行う操作ステップと、を実行し、操作ステップは、操作機構が植物の所定の箇所を囲むように所定の操作を行うステップである、農業支援システム。
これにより、植物の所定の箇所に対する操作をより効果的に行うことができる。所定箇所に対して授粉部の先端が接触する場合に比べて、授粉部による所定の箇所に対する接触が柔らかくなり、植物の所定の箇所を傷めることを抑制できる。
【0100】
(付記2)
操作機構は、1または複数の授粉部から構成され、箇所特定ステップは、所定の花の雌蕊を特定するステップであり、操作ステップは、1または複数の授粉部が所定の花の雌蕊を囲むように1または複数の授粉部を所定の花の雌蕊に接触させる所定の操作を行うステップである、付記1記載の農業支援システム。
これにより、花の雌蕊に対して花粉を一様に付着させることができる。植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0101】
(付記3)
操作ステップは、1または複数の授粉部が所定の花の雌蕊に接触するまでは1または複数の授粉部を振動させないステップと、1または複数の授粉部が所定の花の雌蕊に接触する際、または、接触した後に1または複数の授粉部を振動させるステップと、を含む、付記2記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。植物や雄蕊に対する損傷を抑制することができる。
【0102】
(付記4)
操作ステップは、操作機構を振動させる振動ステップを含み、操作ステップは、植物に応じて、操作機構を振動させる際の振幅、周波数および振動方向の少なくともいずれか1つを制御する振動制御ステップを含む、付記1記載の農業支援システム。
これにより、植物の構造、形状、大きさ、花の構造、形状、大きさに応じて、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0103】
(付記5)
操作機構は、所定の領域を囲むように配置された3以上の授粉部から構成される、付記2記載の農業支援システム。
雌蕊を囲むように授粉部を操作することにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。雌蕊に対して授粉部の先端が接触する場合に比べて、授粉部による雌蕊に対する接触が柔らかくなり、構造的に脆弱であるおしべ、雌蕊を傷めることを抑制できる。
【0104】
(付記6)
操作機構は、第1授粉部および第2授粉部を含み、操作機構の延伸する方向において第1授粉部の第1位置は、第2授粉部の第2位置とは異なる位置に設けられている、付記5記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0105】
(付記7)
第1授粉部および第2授粉部は、植物に応じた第1位置および第2位置に設けられている、付記6記載の農業支援システム。
これにより、植物の構造、形状、大きさ、花の構造、形状、大きさに応じて、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0106】
(付記8)
操作ステップは、3以上の授粉部の少なくともいずれか2以上の授粉部が所定の花の雌蕊に接触する際、または、接触した後に授粉部を第1強度で振動させるステップを含む、付記5記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。植物や雄蕊に対する損傷を抑制することができる。
【0107】
(付記9)
操作ステップは、所定の花の雌蕊が所定の領域に含まれているときに、授粉部を第1強度で振動させるステップを含む、付記5記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。植物や雄蕊に対する損傷を抑制することができる。
【0108】
(付記10)
操作ステップは、3以上の授粉部のうち少なくともいずれか1つの授粉部が所定の花の雌蕊に接触する際、または、接触した後に授粉部を第2強度で振動させるステップを含み、操作ステップは、授粉部を第1強度または第2強度のいずれかの強度で選択的に振動させるステップであり、第1強度は、第2強度よりも大きい、付記8または9記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。植物や雄蕊に対する損傷を抑制することができる。
【0109】
(付記11)
操作機構は、1または複数の授粉部から構成され、箇所特定ステップは、所定の花の雌蕊を特定するステップであり、制御部は、1または複数の授粉部を帯電させる帯電ステップと、を実行し、操作ステップは、帯電ステップにおいて1または複数の授粉部を帯電させた後に、1または複数の授粉部を所定の花の雌蕊に接触させる所定の操作を行うステップである、付記1記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0110】
(付記12)
操作機構は、1または複数の授粉部から構成され、箇所特定ステップは、第1の花のおしべ、および、第2の花の雌蕊を特定するステップであり、操作ステップは、1または複数の授粉部を第1の花のおしべに接触させた後に、1または複数の授粉部を第2の花の雌蕊に接触させるように所定の操作を行うステップである、付記1記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0111】
(付記13)
制御部は、操作ステップにおいて操作機構が植物の所定の箇所に所定の操作を行う際の障害物を特定する障害物特定ステップと、障害物特定ステップにおいて特定した障害物を除外する障害物除外ステップと、を実行し、操作ステップは、障害物除外ステップにおいて障害物が除外された後に、植物の所定の箇所に所定の操作を行うステップである、付記1記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0112】
(付記14)
操作ステップにおいて植物の所定の箇所に所定の操作を行う際に、操作機構が、植物の所定の箇所から離れることを抑制するための離間抑制部を備える、付記1記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0113】
(付記15)
離間抑制部は、筒状に形成されたガイド部材から構成される、付記14記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0114】
(付記16)
所定の操作は、花の授粉操作、果実の収穫操作、葉掻き操作、果実の間引き操作からなる群から選択される少なくとも1つである、付記1から15のいずれかに記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する様々な操作を効果的に行うことができる。
【0115】
(付記17)
植物の画像を撮影する撮影機構と、を備え、箇所特定ステップは、撮影機構により撮影された植物の画像に基づき、植物の所定の箇所を特定するステップである、付記1から16のいずれか記載の農業支援システム。
これにより、植物の所定の箇所に対する操作をより効果的に行うことができる。
【0116】
(付記18)
操作機構は、1または複数の授粉部から構成され、授粉部は、羽毛素材等の柔らかな先端を有する梵天から構成される、付記1から17のいずれか記載の農業支援システム。
これにより、植物に対する授粉をより効果的に行うことができる。
【0117】
(付記19)
プロセッサと、メモリとを備える農業支援システムに実行される方法であって、プロセッサが、付記1から付記17のいずれかに係る発明において実行される全てのステップを実行する方法。
これにより、植物の所定の箇所に対する操作をより効果的に行うことができる。
【0118】
(付記20)
プロセッサと、メモリとを備える農業支援システムに実行されるプログラムであって、プロセッサが、付記1から付記17のいずれかに係る発明において実行される全てのステップを実行するプログラム。
これにより、植物の所定の箇所に対する操作をより効果的に行うことができる。
【符号の説明】
【0119】
1 自動授粉装置、100 授粉部、12 梵天、121 第1梵天、122 第2梵天、123 第3梵天、124 第1アーム、125 第2アーム、126 第3アーム、201 第1カメラ、202 第2カメラ、300 制御部、310 通信手段、320 記憶手段、330 制御手段、2 識別装置、3 移動ルート生成装置、4 自動授粉システム
【要約】
【課題】 蜂と人手作業に頼らず、植物の花を自動的かつ確実に授粉させることができる技術を提供する。
【解決手段】植物と接触して所定の操作を行う操作機構と、制御部と、を備える農業支援システムであって、制御部は、植物の所定の箇所を特定する箇所特定ステップと、操作機構に、箇所特定ステップにおいて特定した植物の所定の箇所に所定の操作を行う操作ステップと、を実行し、操作ステップは、操作機構が植物の所定の箇所を囲むように所定の操作を行うステップである、農業支援システム。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13