特許 7575147 鉄筋吊治具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B1)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-10-21

(45)【発行日】2024-10-29

(54)【発明の名称】鉄筋吊治具

(51)【国際特許分類】

   E04G 21/12 20060101AFI20241022BHJP

   E01D 1/00 20060101ALI20241022BHJP

   E01D 21/00 20060101ALI20241022BHJP

【ＦＩ】

E04G21/12 105D

E01D1/00 C

E01D21/00 A

【請求項の数】 2

(21)【出願番号】P 2024101442

(22)【出願日】2024-06-24

【審査請求日】2024-07-26

【早期審査対象出願】

(73)【特許権者】

【識別番号】524239276

【氏名又は名称】親和建設株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100124419

【弁理士】

【氏名又は名称】井上 敬也

(74)【代理人】

【識別番号】100162293

【弁理士】

【氏名又は名称】長谷 久生

(72)【発明者】

【氏名】後藤 寛明

【審査官】坪内 優佳

(56)【参考文献】

【文献】国際公開第２０２３／０４７８８７（ＷＯ，Ａ１）

【文献】実開昭５５－０６５３６３（ＪＰ，Ｕ）

【文献】登録実用新案第３１３２７３５（ＪＰ，Ｕ）

【文献】登録実用新案第３１３３９１８（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開２００９－２３５７１１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０００－１０４４０４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００５－０９８１０３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１０－１６８８７９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００８－２２３４５８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１７－０４３９５２（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０４Ｇ ２１／１２－２１／２２

Ｅ０１Ｄ ２１／００

Ｅ０１Ｄ １／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

高速道路の橋脚等の鉄筋コンクリート構造物の工事現場において、予め地上で仮組みした鉄筋をクレーン移動するための鉄筋吊治具であって、
吊治具本体と、仮組み時に鉄筋を載せるための鉄筋受け部材を備えており、
前記吊治具本体は、所定の間隔で複数の貫通穴が穿設されており、
前記鉄筋受け部材は、鉄筋を載せる鉄筋受部と貫通穴を備えており、
さらに、前記鉄筋受け部材を前記吊治具本体に固定するための固定部材と、
前記鉄筋受け部材を支えるために前記吊治具本体の貫通穴に挿入する支えピン部材を備えており、前記固定部材と前記支えピン部材は線材を介して繋がっていることを特徴とする鉄筋吊治具。

【請求項2】

前記鉄筋受け部材を前記吊治具本体に設置する際、上下方向に隣接する前記鉄筋受け部材は、互いに前記吊治具本体の異なる面になるように設置することを特徴とする請求項１に記載の鉄筋吊治具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、高速道路の橋脚等の鉄筋コンクリート構造物の工事現場において、予め地上で仮組みした鉄筋をクレーン移動するための鉄筋吊治具に関する。

【背景技術】

【0002】

高速道路の橋脚等の柱状構造物（鉄筋コンクリート構造物）の鉄筋部分（主に配筋）を予め工事現場付近の地上で仮組みしておき、それを工事現場にクレーン移動させるプレファブリケーションという方法は、工期を短縮し、施工の効率を向上させる効果的な手段として知られている。プレファブリケーションの利点としては、現場での組立時間が大幅に削減されるため工期が短縮され、地上での作業が多くなるため高所作業による事故のリスクが低減されることが挙げられる。

【0003】

特許文献１には、「支持受け金具が邪魔にならず組立が容易で、鉄筋の仮組み施工の時間短縮によるコストダウンが図れる鉄筋仮組治具の支持受け装置を得ること（特許文献１：要約）」を課題として、「支持受け金具を回動可能に複数枢着した仮組治具体を所用数配設してなる仮組治具に於いて、該支持受け金具が支持状態から回動して反転状態で保持できるように、仮組治具体又は支持受け金具の少なくともどちらか一方に任意に保持解除ができる保持手段を設け、該保持手段を磁石としている（特許文献１：要約）」鉄筋仮組治具の支持受け装置（特許文献１：考案の名称）が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】実用新案登録第３１３２７３５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

特許文献１に係る鉄筋仮組治具の支持受け装置（特許文献１：考案の名称）は、支持受け金具が支持状態から回動して反転状態で保持できるように、仮組治具体又は支持受け金具の少なくともどちらか一方に任意に保持解除ができる保持手段を設けたので、移載治具により載せ換え移載した時、持上げられた鉄筋により支持受け金具が反転し、その反転状態で保持されるので、仮組みする時の上部側の支持受け金具が邪魔にならず、耐震構造に組む鉄筋の組立でも仮組治具体の支持受け金具の最下段から順次、容易に組上げ施工ができる。しかしながら、特許文献１に係る鉄筋仮組治具の支持受け装置（特許文献１：考案の名称）のように支持受け金具と支持受け金具の（垂直方向の）間隔が固定されていると、現場毎に配筋の垂直方向の間隔が異なることも多いため、その都度支持受け金具の間隔を変えて支持受け装置を造り変えなければならない。

【0006】

本発明の目的は、高速道路の橋脚等の鉄筋コンクリート構造物の工事現場において、予め地上で仮組みした鉄筋をクレーン移動するための（あらゆる現場に対応することができる）汎用性の高い鉄筋吊治具を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0007】

上記課題を解決するために、請求項１に記載された発明は、高速道路の橋脚等の鉄筋コンクリート構造物の工事現場において、予め地上で仮組みした鉄筋をクレーン移動するための鉄筋吊治具であって、
吊治具本体と、仮組み時に鉄筋を載せるための鉄筋受け部材を備えており、
前記吊治具本体は、所定の間隔で複数の貫通穴が穿設されており、
前記鉄筋受け部材は、鉄筋を載せる鉄筋受部と貫通穴を備えており、
さらに、前記鉄筋受け部材を前記吊治具本体に固定するための固定部材と、
前記鉄筋受け部材を支えるために前記吊治具本体の貫通穴に挿入する支えピン部材を備えており、前記固定部材と前記支えピン部材は線材を介して繋がっていることを特徴とする鉄筋吊治具であることを特徴とするものである。

【0008】

請求項２に記載された発明は、請求項１に記載された発明において、前記鉄筋受け部材を前記吊治具本体に設置する際、上下方向に隣接する前記鉄筋受け部材は、互いに前記吊治具本体の異なる面になるように設置する鉄筋吊治具であることを特徴とするものである。

【発明の効果】

【0010】

本発明は、高速道路の橋脚等の鉄筋コンクリート構造物の工事現場において、予め地上で仮組みした鉄筋をクレーン移動するための鉄筋吊治具である。吊治具本体と、仮組み時に鉄筋を載せるための鉄筋受け部材を備えており、吊治具本体は、所定の間隔で複数の貫通穴が穿設されており、鉄筋受け部材は、鉄筋を載せる鉄筋受部と貫通穴を備えているので、前記鉄筋受け部材を前記吊治具本体に固定する際、現場毎に所定の間隔で穿設された貫通穴から選択することができる。従って、鉄筋受け部材を吊治具本体に設置する際、鉄筋受け部材と鉄筋受け部材の間隔を現場に合わせて自由に選択することができる。

【0011】

鉄筋受け部材を吊治具本体に設置する際、上下方向に隣接する鉄筋受け部材は、互いに吊治具本体の異なる面になるように設置するので（高速道路の橋脚等の鉄筋コンクリート構造物の工事現場において）地上で仮組みした鉄筋をクレーン移動させた後、仮組みされた鉄筋（主に配筋）を、鉄筋吊治具から取り外す際、鉄筋受け部材を固定する固定部材（ボルト・ナット）を緩めてから、支えピン部材を（鉄筋受け部材の）貫通穴から抜いて（鉄筋受け部材を、固定部材を回転軸にして）下方向に回動させる作業をする際、下方向に隣接する鉄筋受け部材が干渉することが無い。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】本発明に係る鉄筋吊治具の分解図である。

【図2】鉄筋吊治具の全体図である。

【図3】仮組みした鉄筋に鉄筋吊治具を設置した状態を表した図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

＜鉄筋吊治具の構造＞
以下、本発明に係る鉄筋吊治具１０の一実施形態について、図１～図３に基づいて詳細に説明する。図１は、本発明に係る鉄筋吊治具１０の分解図である。

【0014】

本発明に係る鉄筋吊治具１０は、高速道路の橋脚等の鉄筋コンクリート柱状構造物の工事現場において、予め地上で仮組みした鉄筋をクレーン移動するための鉄筋吊治具である。図１に記載したように、鉄筋吊治具１０は、吊治具本体２０と、仮組み時に鉄筋を載せるための鉄筋受け部材３０から構成されている（図１：分解図参照）。

【0015】

吊治具本体２０は、全長１１００ｍｍ程度、幅１２０ｍｍ程度、厚さ１２ｍｍ程度の鋼板（ＳＳ４００）であり、所定の間隔（２５ｍｍ間隔）で複数の貫通穴４０（Φ１２ｍｍ（固定部材７０用）、或いはΦ１１ｍｍ（支えピン部材８０用）が穿設されている。貫通穴４０についてもう少し詳細に記載すると、貫通穴４０は吊治具本体２０の縦方向に沿って二列に穿設されている。縦列の一方は、固定部材７０用の貫通穴４０であり、縦列の他方は、支えピン部材８０用の貫通穴４０である。

【0016】

鉄筋受け部材３０は、横１５０ｍｍ×縦７０ｍｍ、厚さ６ｍｍ程度の鋼板（ＳＳ４００）であり、鉄筋を載せる鉄筋受部５０（凹部の幅４０ｍｍ程度、凹部の曲率Ｒ２０ｍｍ程度）と貫通穴６０（Φ１２ｍｍ（固定部材７０用）を備えている。

【0017】

さらに、鉄筋吊治具１０は、鉄筋受け部材３０を２０吊治具本体に固定するための固定部材７０と、鉄筋受け部材３０を支えるために吊治具本体２０の貫通穴４０に挿入する支えピン部材８０を備えている。尚、固定部材７０と支えピン部材８０は、作業性を考慮しており、互いに線材（ステンレス製ワイヤー等）で繋がっている。

【0018】

図２は、鉄筋吊治具１０の全体図である。鉄筋受け部材３０を吊治具本体２０に設置する際、上下方向に隣接する鉄筋受け部材３０は、互いに吊治具本体２０の異なる面になるように設置されている。上下方向に隣接する鉄筋受け部材３０を吊治具本体２０の異なる面（裏表）に設置することによって、地上で仮組みした鉄筋をクレーン移動させた後、仮組された鉄筋（主に配筋）を、鉄筋吊治具１０から取り外す際、鉄筋受け部材３０を固定する固定部材７０（ボルト・ナット）を緩めてから、支えピン部材８０を（鉄筋受け部材の）貫通穴から抜いて、（支えピン部材８０を（鉄筋受け部材の）貫通穴から抜いてから、鉄筋受け部材３０を固定する固定部材７０（ボルト・ナット）を緩めても良い）（鉄筋受け部材３０を、固定部材７０を回転軸にして）下方向に回動させる作業をする際、下方向に隣接する鉄筋受け部材３０が干渉することが無いように工夫されている。

【0019】

＜鉄筋吊治具の使用方法＞
図３は、仮組みした鉄筋に鉄筋吊治具１０を設置した状態を表した図である。即ち、鉄筋吊治具１０の使用方法を説明するための図である。地上で仮組みされた鉄筋（主に配筋）に図３に記載したように、複数の鉄筋吊治具１０を取り付け、複数の鉄筋吊治具１０の先端部を（クレーンに取り付けられたフックを使って確保しつつ）地上で仮組みされた鉄筋（主に配筋）を、複数の鉄筋吊治具１０と一緒に吊上げて工事現場に移動させる（図３参照。）

【0020】

地上で仮組みした鉄筋をクレーンにて工事現場に移動させた後、工事現場で鉄筋（主に配筋）の設置が完了後、鉄筋受け部材３０を固定する固定部材７０（ボルト・ナット）を緩めてから、支えピン部材８０を（鉄筋受け部材の）貫通穴６０から抜いて、（支えピン部材８０を（鉄筋受け部材の）貫通穴６０から抜いてから、鉄筋受け部材３０を固定する固定部材７０（ボルト・ナット）を緩めても良い）（鉄筋受け部材３０を、固定部材７０を回転軸にして）下方向に回動させることにより（クレーンにて工事現場に移動させた）仮組みした鉄筋から（複数の）鉄筋吊治具１０を取り外す。

【0021】

＜鉄筋吊治具の効果＞
鉄筋吊治具１０は、吊治具本体２０に所定の間隔で穿設された貫通穴４０が穿設されており、鉄筋受け部材３０の設置間隔を自由に選択することができるので、鉄筋受け部材３０を吊治具本体２０に固定する際、現場毎に（所定の間隔（２５ｍｍ）で穿設された）貫通穴４０を選択することで、鉄筋受け部材３０を吊治具本体２０に設置する際、鉄筋受け部材３０と鉄筋受け部材３０の間隔を現場に合わせて自由に選択することができる。

【0022】

鉄筋受け部材３０を吊治具本体２０に設置する際、上下方向に隣接する鉄筋受け部材３０は、互いに吊治具本体２０の異なる面（表裏の関係）になるように設置するので（高速道路の橋脚等の鉄筋コンクリート構造物の工事現場において）地上で仮組みした鉄筋をクレーン移動させた後、仮組みされた鉄筋（主に配筋）を、鉄筋吊治具１０から取り外す際、鉄筋受け部材３０を固定する固定部材７０（ボルト・ナット）を緩めてから、支えピン部材８０を（鉄筋受け部材３０の）貫通穴６０から抜いて（鉄筋受け部材３０を、固定部材７０を回転軸にして）下方向に回動させる作業をする際、下方向に隣接する鉄筋受け部材３０が干渉することが無い。

【0023】

＜鉄筋吊治具の変更例＞
本発明に係る鉄筋吊治具は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、吊治具本体、鉄筋受け部材、貫通穴（吊治具本体）、鉄筋受部、貫通穴（鉄筋受け部材）、固定部材、支えピン部材等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更することができる。

【産業上の利用可能性】

【0024】

本発明に係る鉄筋吊治具は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、高速道路の橋脚等の鉄筋コンクリート構造物の工事現場において、予め地上で仮組みした鉄筋をクレーン移動するための鉄筋吊治具として好適に用いることができる。

【符号の説明】

【0025】

１０・・鉄筋吊治具
２０・・吊治具本体
３０・・鉄筋受け部材
４０・・貫通穴（吊治具本体）
５０・・鉄筋受部
６０・・貫通穴（鉄筋受け部材）
７０・・固定部材
８０・・支えピン部材

【要約】      （修正有）

【課題】高速道路の橋脚等の鉄筋コンクリート構造物の工事現場において、予め地上で仮組みした鉄筋をクレーン移動するための（あらゆる現場に対応することができる）汎用性の高い鉄筋吊治具を提供すること。
【解決手段】高速道路の橋脚等の鉄筋コンクリート構造物の工事現場において、予め地上で鉄筋を仮組みするための鉄筋吊治具であって、吊治具本体２０と、仮組み時に鉄筋を載せるための鉄筋受け部材３０を備えており、吊治具本体２０は、所定の間隔で複数の貫通穴４０が穿設されており、鉄筋受け部材３０は、鉄筋を載せる鉄筋受部５０と貫通穴６０を備えており、さらに、鉄筋受け部材３０を吊治具本体２０に固定するための固定部材と、鉄筋受け部材３０を支えるために吊治具本体２０の貫通穴４０に挿入する支えピン部材を備えることを特徴とする鉄筋吊治具とした。
【選択図】図１

【図1】

【図2】

【図3】