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特許7575148情報処理方法、プログラム及び情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/30 20180101AFI20241022BHJP
【FI】
G06F8/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024130248
(22)【出願日】2024-08-06
【審査請求日】2024-08-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524296464
【氏名又は名称】株式会社クラウドシフト
(74)【代理人】
【識別番号】110004174
【氏名又は名称】弁理士法人エピファニー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 幹也
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】特許第7506957(JP,B1)
【文献】特表2018-534657(JP,A)
【文献】特許第7512569(JP,B1)
【文献】特開2023-172931(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112487182(CN,A)
【文献】インターテックリサーチ株式会社,ChatGPT Advanced Data Analysis-その2(Webスクレーピング),インターテックリサーチブログ [online],日本,2023年09月04日,[検索日2024.06.13], retrieved from the Internet: <URL: https://www.itrco.jp/wordpress/2023/09/chatgpt%e3%81%ab%e8%a8% 8a%e3%81%84%e3%81%a6%e3%81%bf%e3%81%9f%e3%83%bc%e3%81 %9d%e3%81%ae29%ef%bc%88%e7%b6%9aadvanced-data- analysis%ef%bc%89/>
【文献】福田 和宏,ChatGPTにオフィス文書作りを任せる AI時代の丸投げ仕事術,日経パソコン,日本,日経BP社,2023年10月09日,第923号,pp.30-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/00-8/38
8/60-8/77
9/44-9/445
9/451
18/00-18/40
G06N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムコードを生成するための情報処理方法であって、
受付ステップと出力ステップと取得ステップとを、コンピュータに実行させ
前記受付ステップでは、設計プロンプトを受け付け、
前記設計プロンプトは、前記プログラムコードを生成する指示を有し、且つ、複数の層に階層化されている複数のプロンプトで構成され、
前記複数のプロンプトは、設計情報を定めるプロンプトを含み、且つ、隣接する前記層の前記プロンプトは、互いに関連付けられており、
前記出力ステップでは、前記設計プロンプトを大規模言語モデルへ出力し、
前記取得ステップでは、前記大規模言語モデルから前記プログラムコードを取得
前記設計プロンプトは、設計指示を含み、
前記設計指示は、前記複数のプロンプトに基づいて大規模言語モデルで生成されるプログラムコードが1つのまとまったシステムを構成することを指示する、情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記設計プロンプトは、システム概要、システム環境定義、システム言語指定、又はフレームワーク指定を、含む、情報処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記設計情報は、アクター、ユースケース、画面、画面要素、機能、テーブル又はカラムを含む、情報処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理方法であって、
前記複数のプロンプトは、下記(a)のプロンプトと、下記(b)のプロンプトとを含む、情報処理方法。
(a)各画面の各画面要素に対して実装する機能を指示するプロンプト
(b)前記(a)を実現するために、各テーブル又は各カラムに対する参照又は書込を指示するプロンプト
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
参照ステップを更にコンピュータに実行させ
前記参照ステップでは、参照情報を表示し、
前記参照情報は、前記取得ステップで生成された前記プログラムコードの構成要素と、前記設計プロンプトを構成する前記プロンプトと、の対応部分を示す、情報処理方法。
【請求項6】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
プロンプト生成ステップを更にコンピュータに実行させ
前記プロンプト生成ステップは、上層の前記プロンプトに基づいて、当該プロンプトよりも下層の前記プロンプトを生成する、情報処理方法。
【請求項7】
請求項に記載の情報処理方法であって、
前記プロンプト生成ステップでは、前記層の前記プロンプトの前記設計情報についての要素一覧又は機能一覧を、前記下層の前記プロンプトとして生成するように、前記上層の前記プロンプトを前記大規模言語モデルへ出力することで、前記下層の前記プロンプトを生成する、情報処理方法。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記設計情報を定める前記プロンプトそれぞれが、各層で、各ノードを構成し、
前記出力ステップでは、上層から順番に前記プロンプトそれぞれを前記大規模言語モデルに出力することで、前記大規模言語モデルに、前記各ノードと対応させて前記プログラムコードを生成させる、情報処理方法。
【請求項9】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記設計プロンプトは、Markdown形式又はMarkup形式で表された指示を含む、情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、請求項1請求項9のいずれか1つに記載の情報処理方法を実行させるプログラム。
【請求項11】
請求項1請求項9のいずれか1つに記載の情報処理方法の各ステップを実行する少なくとも1つの情報処理装置を備える、情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラム及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、大規模言語モデルの分野におけるプロンプト生成技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7313757号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大規模言語モデルにプロンプトを与えることで、様々なデータを生成可能である。ユーザは1つのまとまったデータセットを欲することがある。データセットの部分ごとに断片的に大規模言語モデルを用いた生成作業が行われると、生成されたデータを統合する作業のために工数が増大する問題があった。
【0005】
本発明は、大規模言語モデルを利用したデータセット生成を効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、階層化されたデータセットを生成する情報処理方法であって、受付ステップと、出力ステップと、取得ステップとを備え、前記受付ステップでは、設計プロンプトを受け付け、前記設計プロンプトは、前記データセットを生成する指示を有し、且つ、複数の層に階層化されている複数のプロンプトで構成され、隣接する前記層の前記プロンプトは、互いに関連付けられており、前記出力ステップでは、前記設計プロンプトを大規模言語モデルへ出力し、前記取得ステップでは、前記大規模言語モデルから前記データセットを取得する、情報処理方法が提供される。
【0007】
本発明によれば、大規模言語モデルを利用したデータセット生成を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の情報処理システム100及び情報処理装置1を示す図である。
図2図2Aは情報処理装置1のハードウェア構成図であり、図2Bは制御部12の機能ブロック図である。
図3】実施形態の情報処理方法を説明するためのフローチャートである。
図4図4Aは、設計情報を階層化したツリー構造の一例である。図4Bは実施形態のシート表示ステップS1及び受付ステップS2を説明するための図である。
図5】マークダウン(Markdown)形式のプロンプト階層構造の一例を説明するための図であり、実施形態の出力ステップS4を説明するための図である。
図6】実施形態の取得ステップS5を説明するための図である。
図7図7Aは実施形態の参照ステップS6でシートSTの設計情報を選択する様子を示しており、図7Bは対応部分がハイライト表示される様子を示す図である。
図8図8Aは、マークダウン形式の一例としてのマーメイド(Mermeid)記法のプロンプトの一例を示す図であり、図8B図8Aのプロンプトにより生成されるデータの一例であるプログラムコード(SQLコード)を示す図である。
図9図8Aのプロンプトにより描画されるER図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.実施形態の構成の説明
1.1.情報処理システムの構成
図1に示すように、情報処理システム100は、一例として、情報処理装置1と、大規模言語モデルサーバ2(大規模言語モデルの一例)とを備える。これらは、通信網6(例えば、インターネット等)を介して情報のやりとりが可能なように接続されている。
【0011】
情報処理装置1は、実施形態に係る情報処理方法の各ステップ(後述の図3以降で説明)を実行する。実施形態の情報処理方法は、階層化された任意のデータセットを、大規模言語モデルサーバ2に生成させる。実施形態における「データセット」とは「データの集まり」というほどの意味であり、データの目的、対象、用途、及び形式等について限定は無い。以下の実施形態では、一例として、大規模言語モデルサーバ2に生成させるデータセットは、ユーザUが所望するシステムを構築するためのプログラムコードであるものとする。
【0012】
実施形態では、この「プログラムコード」は、「コンピュータに対する指令を規定した情報」を広く意味している。実施形態のプログラムコードは、自然言語以外の任意のプログラム言語によるソースコードを含むが、これに限られず任意のマークアップ(Markup)言語又はマークダウン(Markdown)言語、又は任意のスタイルシート言語(CSS等)等も含むものとする。生成されたプログラムコードが、適合した仕様、環境において実行されることで、ユーザUが所望するシステムの開発及び実装を行うことができる。
【0013】
図2に示す大規模言語モデルサーバ2は、例えば多数の教師データを用いてトレーニングされたニューラルネットワークを有する。大規模言語モデルサーバ2は、情報処理装置1からの出力を入力データとして受け取り、この入力データに対する回答を生成して、この回答を情報処理装置1に出力する。
【0014】
大規模言語モデルサーバ2が受け取る上記入力データは、一般に「プロンプト」と称される。実施形態における「プロンプト」は、大規模言語モデルサーバ2に任意の指示を出すための入力データである。プロンプトは、文又は図表等の任意の形式を採用可能であり、任意の指示、命令又は質問等を設定可能である。プロンプトが文で表される場合、様々な言語を使用可能であり、大規模言語モデルサーバ2で読み取り可能な任意の言語を採用可能である。例えば、実施形態において、プロンプトを記述する言語としては、任意の自然言語、任意のプログラミング言語、任意のデータベース言語、任意のマークアップ言語又はマークダウン言語、又は任意のスタイルシート言語(CSS等)を採用可能である。
【0015】
大規模言語モデルサーバ2の具体的構成は、特に限定されるものではないが、いわゆる生成AIと呼ばれる任意の大規模言語モデルを採用可能である。大規模言語モデルとして、一例としてOpenAI社のChatGPT等が採用されてもよい。大規模言語モデルサーバ2には、1種類の大規模言語モデルのみ(例えばChatGPTのみ)が採用されてもよいが、これに限られず、複数の大規模言語モデルが組み合わせて採用されてもよい。
なお、実施形態では、大規模言語モデルサーバ2は、RAG(Retrieval Augmented Generation)のようにデータベースと連携させるような形態を採用していない。実施形態では、大規模言語モデルサーバ2へ入力するプロンプトを適切化(例えば、入力する順番等)することで、ユーザUが所望するシステムを構築するためのプログラムコードを効率的に生成する。
【0016】
1.2.情報処理装置のハードウェア構成
図2Aに示すように、情報処理装置1は、一例として、通信部10と、記憶部11と、制御部12と、情報出力部13と、入力部14とを有し、これらの構成要素が情報処理装置1の内部において通信バス15を介して電気的に接続されている。
【0017】
通信部10は、一例として、USB、IEEE1394、Thunderbolt(登録商標)、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段を採用することができる。なお、通信部10は、例えば、無線LANネットワーク通信、3G/LTE/5G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等の無線型の通信手段を介して通信網6と接続される構成を採用してもよい。また、通信部10は、先述した有線型の通信手段と無線型の通信手段とを併用する構成であってもよい。
【0018】
記憶部11は、一例として、制御部12によって実行される情報処理装置1の各種のプログラム、定数、変数及び設定値といった各種の値を記憶する。記憶部11には、任意の記憶デバイスを採用可能である。一例として、記憶部11には、ソリッドステートドライブ(SSD)等のストレージデバイスや、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等を採用することができる。また、情報処理装置1は、記憶部11に加えて、外部の記憶部(例えば、外付けの記憶媒体、クラウドストレージ等)を併用してもよい。実施形態では、一例として、記憶部11が、後述するシートST及び設計プロンプト20a、20b(図4B及び図5参照)と、プログラムコード(図6参照)とを格納可能に構成されている。
【0019】
制御部12は、情報処理装置1の情報処理に係る処理及び制御を実行するように構成される。制御部12は、例えば、中央処理装置(CPU)で構成することができ、実施形態において、制御部12は、後述するフローチャートの各ステップに係るプログラムを実行可能なプロセッサの一例である。制御部12は、例えば、記憶部11に記憶されたプログラムを読み出すことによって、情報処理装置1に係る各種の機能を実現する。また、情報処理装置1におけるソフトウェアの情報処理は、例えば、記憶部11に記憶されている各種のプログラムがハードウェアとしての制御部12によって処理されることで、実現される。
【0020】
情報出力部13は、一例として、情報処理装置1の表示部である。情報出力部13は、情報処理装置1の筐体に含まれてもよいし、外付けされてもよい。情報出力部13は、ユーザUが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(GUI)の画面を表示する。情報出力部13には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパーディスプレイといった表示デバイスの他、点灯可能なライトやプロジェクターといった表示デバイスを採用することもできる。なお、情報処理装置1において、情報出力部13を備えるか否かは任意である。例えば、情報処理装置1の出力が情報処理装置1の設置された場所とは独立した離れた場所にある表示部に表示されてもよい。また、情報出力部13は、音声で出力するデバイスを有していてもよい。
【0021】
入力部14は、一例として、ユーザUによってなされる情報処理装置1への操作入力を受け付けるように構成される。入力部14は、情報処理装置1の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。入力部14は、例えば、タッチパネル、スイッチボタン、マウス、及びキーボード等の少なくとも1つを採用することができる。なお、情報処理装置1が入力部14を備えるか否かは任意である。例えば、情報処理装置1とは独立して遠隔地に設けられた他の情報処理端末の入力部を介して、ユーザUの操作入力を受け付けてもよく、この操作入力を情報処理装置1がネットワーク経由で受け付けてもよい。
【0022】
1.3.情報処理装置の機能ブロック構成
図2Bを参照して、本実施形態に係る情報処理装置1の機能構成について説明する。記憶部11に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部12によって具体的に実現されることで、制御部12に含まれる各機能部が実行される。
【0023】
情報処理装置1の制御部12は、一例として、シート表示部121と、受付部122と、プロンプト生成部123と、出力部124と、取得部125と、参照部126と、を備える。これらの機能部のうち幾つかは、大規模言語モデルサーバ2と情報を授受する。
【0024】
上記の機能部(シート表示部121~参照部126)は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUがコンピュータプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。プログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよいし、外部サーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出して機能を実現するいわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。ハードウェアによって実現する場合、ASIC、FPGA、又はDRPなどの種々の回路によって実現することができる。実施形態においては、様々な情報やこれを包含する概念を取り扱うが、これらは、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低又は量子ビットによって表され、上記のソフトウェア又はハードウェアの態様によって通信や演算が実行され得るものである。なお、ソフトウェアは、汎用ОSであってもよいし、専用ОSであってもよい。
【0025】
1.4.情報処理装置が実行する処理(情報処理方法)
図2Bで制御部12が備える各機能部は、図3のフローチャートの各ステップを実行可能に構成されている。実施形態に係るプログラムは、図3の各ステップ(情報処理方法)を実行することにより、コンピュータ(情報処理装置1)に実施形態の情報処理方法を実行させることができる。
【0026】
シート表示部121は、シート表示ステップS1(図4B参照)を実行可能に構成されている。受付部122は、受付ステップS2(図4B及び図5参照)を実行可能に構成されている。プロンプト生成部123は、プロンプト生成ステップS3(図4B)を実行可能に構成されている。出力部124は、出力ステップS4(図5参照)を実行可能に構成されている。取得部125は、取得ステップS5(図6参照)を実行可能に構成されている。参照部126は、参照ステップS6(図7参照)を実行可能に構成されている。各ステップの具体的内容は後述する。
【0027】
2.実施形態の動作等の説明
2.1.実施形態の情報処理方法の概要
実施形態は、次に述べる複数の特徴を含んでいる。
特徴の一つは、所望システムを構築するための設計情報を階層管理する点である。
特徴の他の一つは、大規模言語モデルサーバ2に発行するプロンプトを階層管理する点である。
特徴の更に他の一つは、大規模言語モデルサーバ2の生成結果を階層管理する点である。
実施形態の階層管理では、管理対象となる構成要素(各設計情報、各プロンプト、又は各生成結果等)が、ツリー構造の各層及び各ノードに適切に配置される。このツリー構造内で、隣接する層の構成要素同士(ノード同士)が互いに関連付けて管理される。
これらの各特徴について独立して発明成立可能であるが、実施形態では一例として、これらの特徴を全て備える情報処理方法、プログラム、及び情報処理システムが提供される。
【0028】
具体的には、実施形態では、一例として、ユーザUの所望するシステムを得るための設計情報が、体系的に階層化された「設計情報ツリー」として管理される(図4A参照)。設計情報ツリーは、複数の設計情報ノードを持つ。設計情報は、一例として、要件定義、基本設計、又はワークフロー等を含んでおり、これらが各設計情報ノードに割り当てられる。
【0029】
また、実施形態では、一例として、大規模言語モデルサーバ2に出力されるべきプロンプトが、各設計情報ノードに対応させて階層管理される(図4B及び図5参照)。実施形態では、体系的な設計情報ツリーに応じて、適切な順番で、プロンプトが大規模言語モデルサーバ2に発行される(図5参照)。これにより大規模言語モデルサーバ2は任意のデータ(一例としてプログラムコード)を生成可能となる。
【0030】
また、実施形態では、一例として、大規模言語モデルサーバ2が生成した生成データを、「階層化された1まとまりのデータセット」として体系的に管理可能である。実施形態では、具体例の1つとして、生成されたプログラムコードが、「ドキュメントツリー構造(つまりプログラムコードツリー構造)」として管理される(図6参照)。ドキュメントツリー構造はドキュメントノードを有しており、各ドキュメントノードは、対応する設計情報ノード及び/又はプロンプトノードと紐づけられる。紐づけにより、元となる設計情報ノード又はプロンプトノードと、そこから生成されたドキュメントノードとを、関連付けて管理可能である。対応箇所の参照が容易となり(図7A及び図7B参照)、これによりプロンプト又は生成データ(プログラムコード)の修正、変更、削除又は追加等が容易となる。設計情報ツリー構造における必要なノードに対して、任意のプロンプトを追加発行することが容易となる。プロンプトの修正、削除又は追加発行等に伴って、対応する生成データ(対応するプログラムコード)の修正、削除、又は追加等が行われるとともに、階層化されたデータセット(プログラムツリー構造)も自動更新される。
【0031】
2.2.設計情報について
実施形態の設計情報を説明する。図4Aは、ユーザUの所望するシステムを構成する設計情報の一例を示す。この設計情報は、一例として、システム概要D、アクターD1-1、D1-2・・・、ユースケースD2-1、D2-2・・・、画面D3-1、D3-2、D3-3・・・、画面要素D4-1、D4-2、D4-3・・・、機能D5-1、D5-2、D5-3・・・、テーブル・カラムD6-1、D6-2、D6-3・・・などを含む。実施形態では、システム概要Dは、システムの環境、仕様等のシステム全体に関わる設計情報を含んでいる。
【0032】
実施形態では、図4Aのように階層化されたツリー構造を構築する。このツリー構造は、設計情報を複数の層L~L・・・に階層化しつつ複数の設計情報の関連性を規定したものである。実施形態では、このツリー構造において、どの画面のどの画面要素に対してどのような機能を実装するか、及びそのためにデータベースのどの情報(テーブル・カラム)に対して参照又は書込を行うか等を、階層管理するものとする。
【0033】
2.3.情報処理方法及び具体的処理の説明
図3に示すように、実施形態の情報処理方法は、一例として、シート表示ステップS1と、受付ステップS2と、プロンプト生成ステップS3と、出力ステップS4と、取得ステップS5と、参照ステップS6と、を備える。以下、各ステップの詳細を説明する。
【0034】
(シート表示ステップS1)
図4Bを参照されたい。シート表示ステップS1では、シート表示部121が、情報出力部13に、図4BのシートSTを表示させる。ユーザUは、入力部14を介してシートSTに設計情報を記入可能である。シートSTは、層L~L・・・に応じて入力領域が分けられている。各領域には、システム概要、アクター、ユースケース、画面・・・のように、図4Aの各ノードの設計情報が文字列として記入される。図4Bでは、簡略化のため、システム概要D、ユースケースD2-1、画面D3-1、D3-2が記入される様子を便宜上図示している。
【0035】
(受付ステップS2)
図4B及び図5を参照しつつ説明する。まず、「設計プロンプト」を説明する。実施形態において、「設計プロンプト」は、ユーザUの所望するシステムを構築するためのプログラムコード(例えば図6のプログラムコードPC3-1、PC3-2、PC3-3・・・)を、大規模言語モデルサーバ2に生成させる指示を有する。この指示は、一例として、任意の言語の指示文であってもよく、自然言語の指示文でもよい。
【0036】
実施形態では、一例として、二種類の設計プロンプト20a、20bが提供される。区別のため、これらを第1設計プロンプト20a(図4B参照)又は第2設計プロンプト20b(図5参照)と称する。
【0037】
図4BのシートSTは、第1設計プロンプト20aを構成する各プロンプトを受け付けるためのものである。実施形態の受付ステップS2では、一例として、受付部122が、図4BのシートSTを介して、ユーザUからの第1設計プロンプト20aの入力を受け付ける。
【0038】
実施形態では、ユーザUがシートSTに自然言語で設計情報(任意のアクター、任意のユースケース、任意の画面・・・等)を記入する。大規模言語モデルサーバ2は自然言語を解釈可能なので、自然言語の設計情報は、自然言語のプロンプトとして取り扱うことが可能である。実施形態では、ユーザUがシートSTを介してシートST内の情報に基づいて大規模言語モデルサーバ2に指示を出しているので、ユーザUは実質的にシートSTにプロンプトを記入している。このような意味で、実施形態では、シートST内に自然言語で記入された設計情報を、第1設計プロンプト20aとも称している。第1設計プロンプト20aは、複数の自然言語プロンプトで構成されている。
【0039】
留意されたい点として、実際的な例としては、情報処理装置1が、最終的にプロンプトを生成するために、各ノードの各レコードに格納された文字列に対して具体的な指示を追加する処理やこれをマークダウン形式に加工する処理を実行することが望ましい。プロンプトとして完成された文字列が最初から登録されるケースも有り得るものの、一般的には、シートSTに格納された文字列だけでは、大規模言語モデルサーバ2に対するプロンプトとしての要件を満たしていないことも多いからである。この場合、シートSTに登録された文字列に対して、情報処理装置1がノードごとの具体的な指示を連結することで、プロンプトを生成することが好ましい。マークダウン記法の場合、複数レコードを組み合わせることでマークダウンとり、そのマークダウンを使って何をするかを指定する命令を追加することでプロンプトを生成可能である。
【0040】
この点に関し、実施形態では、一例として、シートSTにおいて各ノードの各レコードに記入された文字列に対して、所定の追記変換処理を施すものとする。第2設計プロンプト20bは、第1設計プロンプト20aの各設計情報に対して追記変換処理を行ってマークダウン記法にしたものである。実施形態では、一例として、シート表示部121が予め設定した追記変換処理を実行する。この追記変換処理は、大規模言語モデルサーバ2に対するプロンプト要件を満たすように文字列の不足を補いつつ、マークダウン形式の一例であるマーメイド(Mermeid)記法にしたがって、シートSTの各入力領域(各セル)にある自然言語プロンプトを、マーメイド記法プロンプトPRM、PRM1―1・・・(図5参照)に書き換え可能である。第2設計プロンプト20bは、複数のマークダウン言語プロンプト(つまりマーメイド記法プロンプトPRM、PRM1―1・・・)で構成されている。
【0041】
以上のように、第1及び第2設計プロンプト20a、20bは、両方とも図4Aに示す設計情報ツリーに基づくプロンプトであり、同じ内容が異なる記法で表されたものである。
【0042】
実施形態では、一例として、第1及び第2設計プロンプト20a、20bそれぞれでは、各層L~L・・・に応じて、システム概要、アクター、ユースケース・・・のように異なる設計情報が定義されている。図5に示すように、実施形態では、第2設計プロンプト20bを構成する複数のプロンプトPRM、PRM1―1、PRM1―2・・・が、複数の層L~L・・・に階層化されている。
【0043】
第1及び第2設計プロンプト20a、20bそれぞれにおいて、隣接する層のプロンプトは、互いに関連付けられている。例えば図4Bの第1設計プロンプト20aでは、層LにアクターD1-1の情報が入力され、層LにユースケースD2-1、D2-2が入力され、これらの情報の関連性が層L及び/又は層Lの入力領域に明記される。また、図5の第2設計プロンプト20bでは、一例として、マークダウン形式でプロンプトを記述することで隣接する層のプロンプトを関連付けており、より具体的にはマーメイド(Mermeid)記法で隣接する層のプロンプトを関連付けている。隣接する層のプロンプトを関連付ける具体的な例は、「4.プロンプト及びプログラムコードの具体例」で説明する。
【0044】
第1設計プロンプト20aにおいて、システム概要D0が設計指示D0-1を含む。設計指示D0-1は、複数のプロンプトに基づいて大規模言語モデルサーバ2が生成するデータが「1つのまとまったデータセット」を構成することを示す。実施形態では、一例として、大規模言語モデルサーバ2がデータセットとしてプログラムコードを生成するものであり、このプログラムコードが1つのまとまったシステムを構築するように用いられる。そこで、実施形態では、設計指示D0-1は、一例として、第1設計プロンプト20aを構成する複数のプロンプト(設計情報)が、1つのまとまったシステムを構築することを示す。これに対応して、第2設計プロンプト20bは、システム概要プロンプトPRMが設計指示プロンプトPRM0-1を含む。設計指示プロンプトPRM0-1は、一例として、第2設計プロンプト20bを構成する複数のプロンプトPRM、PRM1-1、PRM1-2・・・が、1つのまとまったシステムを構築することを示す。
【0045】
(プロンプト生成ステップS3)
実施形態では、一例として、上層のノードに基づいて、この上層ノードよりも下層にあるノードが、大規模言語モデルサーバ2により自動生成されてもよい。例えば、ユースケースから必要画面一覧が生成され、ユースケース及び画面から画面要素一覧が生成されてもよく、画面要素から機能一覧が生成されてもよい。このような形で連鎖的に、上層から下層に向かって、図4Aの設計情報ツリーの各ノードが自動作成される機能が、情報処理装置1に搭載されもよい。実施形態では、上記のように自動生成されたノードの各レコードに相当する文字列が、次の層のプロンプトとして自動生成されてもよい。この自動生成の一例としてプロンプト生成ステップS3を説明する。
【0046】
図4Bを参照されたい。実施形態では、一例として、プロンプト生成ステップS3が設けられている。図4Bに矢印でプロンプト生成ステップS3を例示しているが、実施形態では一例として、プロンプト生成部123が、上層(例えば層L)のプロンプト(例えばユースケースD2-1)に基づいて、下層(例えば層L)のプロンプト(例えば画面D3-1、D3-2)を生成する。
【0047】
このようなプロンプト生成ステップS3の一形態として、大規模言語モデルサーバ2を利用してプロンプト生成ステップS3を実現する。すなわち、プロンプト生成ステップS3では、上層のプロンプトを大規模言語モデルサーバ2へ出力する(図2B参照)。これにより、大規模言語モデルサーバ2に下層のプロンプトを生成させる。
【0048】
例えば上層のプロンプトとしてユースケースD2-1の設計情報を採用する場合、例えば「このユースケースD2-1においてどのような画面が必要となるか」を質問する質問文を、プロンプト生成部123が大規模言語モデルサーバ2に対してプロンプトとして入力してもよい。これにより、大規模言語モデルサーバ2に、下層のプロンプトとして、画面D3-1~D3-3の設計情報を生成させてもよい。他の例として、大規模言語モデルサーバ2を用いなくともよい。この場合は例えばプロンプト生成部123が予め定めたルールベース処理を実行したり予め定めたテーブル等を参照したりすることで、上層のプロンプトが入力されるとこれに応じて下層のプロンプトを出力するようにしてもよい。
【0049】
なお、プロンプト生成部123の処理は、第1及び第2設計プロンプト20a、20bの何れにも適用可能である。
【0050】
(出力ステップS4)
図5を参照されたい。出力ステップS4では、出力部124が、第2設計プロンプト20bを大規模言語モデルサーバ2へ出力する。実施形態では、一例として、出力ステップS4において、出力部124が、上層Lから下層L側に向かって順番に、各層のプロンプトPRM、PRM1-1、PRM1-2・・・を大規模言語モデルサーバ2に出力する。これを実現するためのデータ処理方式として、実施形態では、一例としてバッチ処理を採用してもよい。
【0051】
(取得ステップS5)
図6を参照されたい。取得ステップS5では、一例として、取得部125が、大規模言語モデルサーバ2からプログラムコードPC3-1、PC3-2、PC3-3・・・を取得する。便宜上、各プログラムコードPC3-1、PC3-2、PC3-3・・・をまとめてプログラムコード群30とも称する。取得部125は、階層構造を保持した状態で、取得した各プログラムコードPC3-1、PC3-2、PC3-3・・・を、記憶部11に格納する。各プログラムコードPC3-1、PC3-2、PC3-3・・・と各プロンプトPRM3-1、PRM3-2、PRM3-3・・・とは、互い紐づけされながら記憶部11に保存される。この紐づけは、両ツリー構造の対応するノード同士を紐づけるものである。
【0052】
ここで、アクター及びユースケースは要件定義なので、これを受けてさらに下の階層で、各設計情報(画面、画面要素、機能、データオブジェクト・・・など)が、順番に決定されていく。実施形態の一例において、実際にプログラムコードが生成及び格納されるのは「画面」に対応する階層L以降となり、この点を踏まえて図6では層L~Lに対応するプログラムコードは生成されていない。なお、留意されたい点として、「画面」の階層Lは、画面が無いというケースもあり得るが、この場合、バッチファイルやAPIでその下に機能が紐付けられることもありうる。また、最上位の層Lは様々な用途があり、システムの概要を記載したり、環境を定義したり、言語やフレームワークを指定したりすることが可能である。このように、層Lでは主に前提条件を設定可能であり、大規模言語モデルサーバ2はこれを基にして言語を選択したり、環境を構築したりすることができる。
【0053】
実施形態の取得部125は、一例として、シート表示部121のシートSTを格納フォーマットとして流用する。これにより、各プログラムコードPC3-1、PC3-2、PC3-3・・・と第1及び第2設計プロンプト20a、20bの各プロンプトとの対応関係を、ユーザUが容易に把握可能となる。
【0054】
(参照ステップS6)
図7A及び図7Bを参照されたい。参照ステップS6では、一例として、参照部126が、参照情報40を情報出力部13に表示する。参照情報40は、取得ステップS5で生成されたプログラムコード群30の構成要素(つまり各プログラムコードPC3-1、PC3-2、PC3-3・・・)と、第1又は第2設計プロンプト20a、20bを構成する各プロンプトと、の対応部分をユーザUに提示する。一例として、実施形態の参照情報40は、ユーザUがシートSTにおいてマウスカーソルMCで設計情報D3-3を選択すると、その対応部分であるプログラムコードPC3-3がハイライト表示(図7Bのハッチング参照)されるものでもよい。
【0055】
なお、図7Bは一例を示したにすぎず、本発明がこれに限定されるものではない点に留意されたい。実施形態では、情報処理装置1は、各プログラムコードの保存だけでなく、プログラムコードのロケーションも保存し、常にロケーションが自動更新されることが好ましい。「ロケーション」とは、例えば、ファイル名、行番号、ID、及びclassなどを含む。プログラムコードとそのロケーションの保存は、設計ツリーと同じテーブル(テーブルST)でも良いが、これに限定されず、リレーションを確保可能であれば他のテーブルでもよい。
【0056】
上位ノード又は同一ノード上における順番が、前のプロンプトでプログラムが書き換わった場合、後に位置するロケーションの情報は、都度書き換わり、常にロケーションが自動更新されることが好ましい。
【0057】
実施形態では、色々な階層又はレコードを跨った様々なプロンプト生成パターンを採用可能である。一例として、プロンプト生成ごとにID管理を行って、生成結果のプログラムコード及びロケーションについて関連付けを自動更新することが好ましい。
【0058】
3.実施形態の作用・効果の説明
以上説明したように、実施形態によれば、設計プロンプト内の複数のプロンプトが、複数の層L~L・・・に適切に階層化されている。このため、設計プロンプトに基づいて、大規模言語モデルサーバ2が、体系的なデータセット(一例として、体系的なプログラムコード)を生成可能となる。その結果、断片的なデータセットを統合する手間や工数を抑制可能となるので、大規模言語モデルサーバ2を利用したデータ生成を効率的に行うことができる。ユーザUのデータセット生成作業を効率的に支援できる利点もある。
【0059】
特に、実施形態では、ユーザUの所望する任意のシステム開発のために、体系的なプログラムコードの生成をすることができる。断片的なプログラムコードを統合する作業は工数増大を招く問題がある。実施形態は、この問題を効果的に抑制可能である。
【0060】
また、実施形態によれば、参照ステップS6において、参照情報40をユーザUに提示することで、ユーザUはデータセット(プログラムコード)の確認又は編集等を容易に実施できる利点がある。
【0061】
また、実施形態によれば、シート表示ステップS1において、ユーザUが、シートST内で各層L~L・・・ごとのプロンプトを容易に整理できる利点がある。
【0062】
また、実施形態によれば、プロンプト生成ステップS3において、上層のプロンプトに基づいて下層のプロンプトを生成することで、上下層間での設計情報の関連性を反映させて体系的にプロンプトを生成可能な利点がある。
【0063】
また、実施形態によれば、プロンプト生成ステップS3において、大規模言語モデルサーバ2を利用して自動的に下層のプロンプトを生成可能な利点がある。
【0064】
また、実施形態によれば、出力ステップS4において、上層から下層へ適切な順番で、大規模言語モデルサーバ2に体系的にプロンプトを与えることができる利点がある。
【0065】
また、実施形態によれば、第2設計プロンプト20bにマークダウン(Markdown)形式を採用することで、複数のプロンプトを階層化管理する際の利便性が飛躍的に高まる利点がある。
【0066】
また、実施形態によれば、第1設計プロンプト20aが設計指示D0-1を含んでおり、これに対応する設計指示プロンプトPRM0-1を大規模言語モデルサーバ2に与えることができる。これにより、ユーザUの所望する1つのまとまったデータセットに関する前提情報を与えたうえで、大規模言語モデルサーバ2に、多数のプロンプトを体系的且つ統一的に処理させることができる利点がある。
【0067】
4.プロンプト及びプログラムコードの具体例
図8A図8B及び図9を参照されたい。図8Aはマーメイド記法によるプロンプトの一例であり、図8B図8Aの内容をプロンプトとして大規模言語モデルサーバ2に生成させたプログラムコード(SQLコード)の一例である。ただし一部の内容を「・・・」で省略している点に留意されたい。また、ここで述べる例はプロンプト間の関連付けを例示するものなので、簡略化のため、プロンプト階層化における層番号の指定等については言及しない。
【0068】
図8Aのプロンプト例PRMex1は、複数のプロンプトを関連付ける手法の一例である。プロンプト例PRMex1は、プロンプト例PRMex2の内容と、プロンプト例PRMex3、PRMex4それぞれの内容との間での関連付けを行っている。
【0069】
図9は、図8Aの内容に基づくER図である。実施形態では、マーメイド記法を採用することで、プログラムコード生成と各種作図(ER図等の任意の図)とを、同時に実現可能な利点がある。
【0070】
5.変形例等
図4BのシートSTは、設計情報を一覧表にまとめることのできる任意のフォーマットを採用可能である。シートSTは、一例として、スプレッドシートでもよく、或いは任意の表計算ソフト等におけるデータ入力領域であってもよい。シートSTは一例であり、シート以外の任意の入力フォームを採用可能である。設計情報を一覧表にまとめる機能があることが好ましいが、これに限定されず、任意のデータ入力方式及びデータ形式を採用可能である。
【0071】
実施形態では、第1設計プロンプト20aを第2設計プロンプト20bに変換して大規模言語モデルサーバ2に出力している。しかしこれに限られず、変形例の1つとして、第1設計プロンプト20a(図4BのシートSTの内容)を自然言語のままで大規模言語モデルサーバ2に出力してもよく、この場合には第2設計プロンプト20bが省略されてもよい。
【0072】
ただし、他の変形例として、実施形態で述べたプロンプト又はプログラムコードにおいて、ユーザUが手作業で任意の操作(修正、変更、追記、又は削除等)を介入可能なことは、もちろんである。例えば、記憶部11に保存された第2設計プロンプト20bのデータに対して、ユーザUが任意の追加入力を行うことができる。あるいは、ユーザUはシートST又は任意のフォーマット形式に任意のマークダウン形式等又は任意のプログラム言語等でプロンプトを記入してもよく、これが第1設計プロンプト20aとして大規模言語モデルサーバ2に出力されてもよい。この変形例では、自然言語プロンプトを変換する処理は不要なので、第2設計プロンプト20bも存在しない。
【0073】
他の変形例として、第2設計プロンプト20bの記述方式についても、マーメイド記法に限定されず、任意のマークダウン形式の記述方式が採用されてもよく、又はマークダウン形式に限らず階層化表現が可能な任意のフォーマットが採用されてもよい。
【0074】
参照ステップS6において、ハイライト表示は一例であり、任意の参照機能を採用可能である。対応部分を特定可能な任意の情報を表示するものでよく、例えば対応部分の行番号等を表示するものでもよい。
【0075】
他の変形例として、プロンプトは、各ノードからバラバラに且つ適切な順番で、大規模言語モデルサーバ2に与えられてもよい。このような変形例がデフォルトの状態に設定されてもよい。例えば、画面要素から機能、機能から参照するデータの種別やデータ型・・・といったように、ひとつひとつ細かく定義する必要がある用途で、本変形例を利用可能である。
【0076】
他の変形例として、情報処理装置1が、特定のノードにおける複数レコード文字列を、マーメイド等のマークダウン形式に変換して、これをプロンプトとして大規模言語モデルサーバ2に対して出力してもよい。特に、シーケンス図、ER図、又はクラス図等の生成で使用されることが好ましい。マーメイド記法に限定されず、例えば任意の文字列に対してプルダウン等で関連性の選択をすると、情報処理装置1が、指定されたマークダウン形式に自動変換してもよい。これは、ユーザUにとって、マークアップする手間を省略可能な利点がある。例えばマーメイド記法であれば、以下のような定義をユーザが記入しなくても、情報処理装置1が自動的に定義するように構成されてもよい。
` ` ` mermaid
erDiagram
||--o{ :
||--|{ :
【0077】
他の変形例として、情報処理装置1は、複数ノードにわたるツリーの枝単位で文字列を連結させて、プロンプトを生成発行してもよい。例えば複数の階層で機能を詳細に定義する場合などで利用可能である。
【0078】
実施形態のプロンプト生成ステップS3の変形例として、情報処理装置1は、親ノード1レコードに対して子ノードNレコード(Nは任意の自然数)でプロンプトを生成してもよい。例えば親ノード(上層ノード)に画面、子ノード(下層ノード)にその画面で使用される複数画面要素があるとし、それをプロンプトとして、情報処理装置1が予め記憶した変換処理に従ってCSSを生成したり又は大規模言語モデルサーバ2にCSSを生成させたりしてもよい。例えばログイン画面のIDフォーム、パスワードフォーム、ログインボタン、及びパスワード忘れボタンから、CSSを生成させてもよい。
【0079】
実施形態に係る情報処理方法において、大規模言語モデルサーバ2に生成させる「階層化されたデータセット」は、プログラムコード(図6のプログラムコード群30)に限られず、任意のデータセットを採用可能である。変形例として、「階層化されたデータセット」は、例えばインタラクティブな物語のシナリオ分岐ツリー構造でもよい。この場合には、分岐する各シナリオが、図6等におけるプログラムコードと同様に、ドキュメントノードとして取り扱われてもよい。他の例として、「階層化されたデータセット」は、ゲームのシナリオパターンのツリー構造でもよい。一例として、図4Aの設計情報ツリーにおけるアクター及びユースケースを、例えばシナリオ1及びシナリオ2等に置換されてもよい。
【0080】
実施形態に係る情報処理方法の他の例として、「階層化されたデータセット」は、工業設計デザイン分野又は建築設計分野における階層化された任意のデータセットであってもよい。例えば工業分野では、各階層にBOM(Bill of Materials)を連動させてパーツアッセンブルしてもよい。ここで、BOMとは、製造業などで、製品の製造に必要な部品の一覧表、部品表、又は部品構成表のことを指す。
【0081】
実施形態に係る情報処理方法において、「階層化されたデータセット」に含まれるデータ形式は、テキストデータに限定されない。大規模言語モデルサーバ2には、非テキストデータ(例えば、画像、音声、楽曲、動画、又は3Dデータ(3Dモデル3Dシーン)など)を生成可能な任意の大規模言語モデルを採用可能である。この場合、設計プロンプトが任意の非テキストデータを生成させるためのプロンプトを含んでもよく、任意の非テキストデータが「階層化されたデータセット」に含まれてもよい。なお、上述した3Dデータには、例えば、3次元CGやCAD(Computer Aided Design)といったものを含めることができる。
【0082】
また、実施形態に係る情報処理方法の一例では、システム設計のためのプログラムコードを生成する形態を説明したがこれに限定されるものではない。実施形態に係る情報処理方法は、例えば、静止画、動画、CG(コンピューターグラフィックス)、CAD等といった画像(オブジェクト)を生成するものとして用いることもできる。
例えば、CGの場合、シーングラフ(画像内の要素間の関係性を示したもの)の要素(例えば、物体、質感、光源、及びカメラ等)をノードとして捉えることが可能であり、当該要素には関連性が与えられている。この「要素」を実施形態で説明した「層」として捉え、各プロンプトを実施形態で説明した要領で作成することで、画像(オブジェクト)を生成することができる。この変形例の構成に、例えば、質感、テクスチャー、アニメーション等の各種のライブラリを連結することで、利便性の高い画像(オブジェクト)の制作アプリケーションを構築することができる。
【0083】
上記列挙した「階層化されたデータセット」のバリエーションにおいても、実施形態の情報処理方法、プログラム及び情報処理システムを適用可能である。具体的には、これら各変形例に対して、図3のシート表示ステップS1~参照ステップS6を適用してもよい。これら各変形例では、設計指示D0-1が、複数のプロンプトが「1つのまとまったデータセット」を構成することを示してもよい。
【0084】
なお、実施形態では、様々な階層パターンでプロンプトを渡すケースが想定され、プロンプトの渡し方にも様々なパターンを採用可能である。第1の例として、単純に自然言語の文字列の羅列のみを渡してもよい。第2の例として、マークダウン記法とそれによって何を行わせるか命令文の組み合わせを渡してもよい。第3の例として、JSON形式による階層構造をそのまま活かした命令を渡してもよい。第4の例として、画像、ベクターデータ、音声、3Dオブジェクト、モーションデータ、又はインタラクションなどを渡してもよい。この第4の例では、一覧表に格納先のロケーションを記述してもよい。第5の例として、上記第1~第4の例を2つ以上組み合わせて採用してもよい。
【0085】
以下、種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
[付記1]
階層化されたデータセットを生成する情報処理方法であって、
受付ステップと、出力ステップと、取得ステップとを備え、
前記受付ステップでは、設計プロンプトを受け付け、
前記設計プロンプトは、前記データセットを生成する指示を有し、且つ、複数の層に階層化されている複数のプロンプトで構成され、
隣接する前記層の前記プロンプトは、互いに関連付けられており、
前記出力ステップでは、前記設計プロンプトを大規模言語モデルへ出力し、
前記取得ステップでは、前記大規模言語モデルから前記データセットを取得する、情報処理方法。
【0086】
[付記2]
付記1に記載の情報処理方法であって、
前記データセットは、システムを構築するためのプログラムコードを含む、情報処理方法。
【0087】
[付記3]
付記1又は付記2に記載の情報処理方法であって、
参照ステップを更に備え、
前記参照ステップでは、参照情報を表示し、
前記参照情報は、前記取得ステップで生成された前記データセットの構成要素と、前記設計プロンプトを構成する前記プロンプトと、の対応部分を示す、情報処理方法。
【0088】
[付記4]
付記1~付記3のいずれか1つに記載の情報処理方法であって、
シート表示ステップを更に備え、
前記シート表示ステップでは、文字列の入力を受け付けるためのシートを表示させ、
前記シートは、前記層に応じて、入力領域が分けられ、
前記受付ステップでは、前記シートの内容に基づいて前記プロンプトを受け付ける、情報処理方法。
【0089】
[付記5]
付記1~付記4のいずれか1つに記載の情報処理方法であって、
プロンプト生成ステップを更に備え、
前記プロンプト生成ステップは、上層の前記プロンプトに基づいて、当該プロンプトよりも下層の前記プロンプトを生成する、情報処理方法。
【0090】
[付記6]
付記5に記載の情報処理方法であって、
前記プロンプト生成ステップでは、上層の前記プロンプトを前記大規模言語モデルへ出力することで、下層の前記プロンプトを生成する、情報処理方法。
【0091】
[付記7]
付記1~付記6のいずれか1つに記載の情報処理方法であって、
前記出力ステップでは、上層から順番に前記プロンプトを前記大規模言語モデルに出力する、情報処理方法。
【0092】
[付記8]
付記1~付記7のいずれか1つに記載の情報処理方法であって、
前記設計プロンプトは、Markdown形式又はMarkup形式で表された指示を含む、情報処理方法。
【0093】
[付記9]
付記1~付記8のいずれか1つに記載の情報処理方法であって、
前記設計プロンプトは、設計指示を含み、
前記設計指示は、前記設計プロンプトを構成する前記複数のプロンプトに基づいて前記大規模言語モデルが生成するデータが、1つのまとまったデータセットを構成することを示す、情報処理方法。
【0094】
[付記10]
コンピュータに、付記1~付記9のいずれか1つに記載の情報処理方法を実行させるプログラム。
【0095】
[付記11]
付記1~付記9のいずれか1つに記載の情報処理方法の各ステップを実行する少なくとも1つの情報処理装置を備える、情報処理システム。
【0096】
上記において、実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1 :情報処理装置
2 :大規模言語モデルサーバ
6 :通信網
10 :通信部
11 :記憶部
12 :制御部
13 :情報出力部
14 :入力部
15 :通信バス
20a :設計プロンプト(第1設計プロンプト)
20b :設計プロンプト(第2設計プロンプト)
30 :プログラムコード群
40 :参照情報(ハイライト表示)
100 :情報処理システム
121 :シート表示部
122 :受付部
123 :プロンプト生成部
124 :出力部
125 :取得部
126 :参照部
、L、L、L、L、L :層
:設計情報(システム概要)
0-1 :設計情報(設計指示)
1-1、D1-2 :設計情報(アクター)
2-1、D2-2 :設計情報(ユースケース)
3-1~D3-3 :設計情報(画面)
4-1~D4-3 :設計情報(画面要素)
5-1~D5-3 :設計情報(機能)
6-1~D6-3 :設計情報(テーブル・カラム)
PRM :プロンプト(システム概要プロンプト)
PRM0-1 :プロンプト(設計指示プロンプト)
PRM1-1、PRM1-2 :プロンプト(アクター)
PRM2-1、PRM2-2 :プロンプト(ユースケース)
PRM3-1~PRM3-3 :プロンプト(画面)
PRM4-1~PRM4-3 :プロンプト(画面要素)
PRM5-1~PRM5-3 :プロンプト(機能)
PRM6-1~PRM6-3 :プロンプト(テーブル・カラム)
PRMex1~PRMex4 :プロンプト例

PC3-1~PC3-3 :プログラムコード(画面)
PC4-1~PC4-3 :プログラムコード(画面要素)
PC5-1~PC5-3 :プログラムコード(機能)
PC6-1~PC6-3 :プログラムコード(テーブル・カラム)
ST :シート
MC :マウスカーソル
U :ユーザ
【要約】
【課題】大規模言語モデルを利用したデータセット生成を効率的に行うことを目的とする。
【解決手段】階層化されたデータセットを生成する情報処理方法であって、受付ステップと、出力ステップと、取得ステップとを備え、前記受付ステップでは、設計プロンプトを受け付け、前記設計プロンプトは、前記データセットを生成する指示を有し、且つ、複数の層に階層化されている複数のプロンプトで構成され、隣接する前記層の前記プロンプトは、互いに関連付けられており、前記出力ステップでは、前記設計プロンプトを大規模言語モデルへ出力し、前記取得ステップでは、前記大規模言語モデルから前記データセットを取得する、情報処理方法が提供される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9