(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】携帯用身体温度調整装置
(51)【国際特許分類】
G05D 23/20 20060101AFI20241022BHJP
A61F 7/00 20060101ALI20241022BHJP
A61F 7/03 20060101ALI20241022BHJP
A61F 7/10 20060101ALI20241022BHJP
G05D 23/19 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G05D23/20 A
A61F7/00 310J
A61F7/08 333
A61F7/10 351
G05D23/19 Z
(21)【出願番号】P 2024530054
(86)(22)【出願日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2024017770
【審査請求日】2024-05-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517312135
【氏名又は名称】株式会社リブレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 邦彦
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第214157658(CN,U)
【文献】国際公開第2023/032719(WO,A1)
【文献】特開2016-059794(JP,A)
【文献】特開2016-093352(JP,A)
【文献】中国実用新案第209629949(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00
A61F 7/03
A61F 7/10
G05D 23/19
G05D 23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子と、
通電により、前記ペルチェ素子の一面で吸熱または発熱した熱を伝熱する板で、縦方向に沿う縦幅
が、横方向に沿う横幅と同等または、横幅より大きく形成された伝熱板と、
前記一面の反対側にある前記ペルチェ素子の他面に形成されたヒートシンクと、
風を送る送風ファンと、
ハウジングと、
複数の吸気口からなる吸気部と、
複数の排気口からなる排気部と、を備え、
前記ハウジングは、その底側に
外面を外部に露出した状態で配置された前記伝熱板に対し、全周に亘り外周縁に沿って立設する周縁側部と、前記周縁側部で包囲された内部空間を前記伝熱板の反対側で塞ぐ天井部と、前記周縁側部と前記天井部との間には、使用者の手で把持する把持部を有し、
前記吸気部が、前記外周縁に沿った前記周縁側部の全周囲のうち、30%以上を占める範囲に亘って配設されていること、
前記伝熱板は、隣接して配置された載置板部材に取り付けられ、かつ前記
外面の反対側にある内面が前記ペルチェ素子の前記一面と接触した状態で、前記ハウジングの前記底をなすことにより、前記ペルチェ素子の前記一面で生じた前記熱である冷熱または温熱が、前記伝熱板を介して直接身体に熱伝導すること、
前記送風ファンが風を送るのに伴う回転動作で、その中心を通って延伸した仮想軸線に対し、前記内面が垂直に交差した態様で、前記伝熱板は配置され、前記排気部は、前記天井部のうち、前記仮想軸線と交差する位置に、前記仮想軸線に沿って前記送風ファンと一列状に隣り合って並ぶ態様で、配置されていること、
前記送風ファンにより、前記吸気部から前記内部空間に送られる外気が、前記載置板部材により、前記伝熱板と非接触の下で、前記ヒートシンクと接触して前記排気部から放出すること、
前記把持部は、前記周縁側部全周のうち、前記縦方向に沿った部分と前記天井部とを繋ぐ部位に配設され、前記周縁側部の平面視下では、前記ハウジングの前記底側に向けて凹み、かつ前記天井部の平面視下では、外周側から前記排気部に向けて前記天井部を円弧状に切り欠いた形態で、曲面をなして形成されていること、
前記吸気部は、前記周縁側部内に設けられ、前記縦方向かつ前記横方向と直交する高さ方向に対し、前記把持部との隣接を避けた位置に形成された第1吸気部と、前記把持部と前記高さ方向で隣り合う位置に配置された第2吸気部とからなること、
当該携帯用身体温度調整装置の使用時に、前記第2吸気部が使用者の手で遮られた場合でも、前記第1吸気部から吸気した外気が、前記ペルチェ素子の前記他面で生じた排熱と前記ヒートシンクで熱交換され、前記第1吸気部からの吸気により、前記ペルチェ素子での破損、焼損が防止できていること、
を特徴とする携帯用身体温度調整装置。
【請求項2】
ペルチェ素子と、
通電により、前記ペルチェ素子の一面で吸熱または発熱した熱を伝熱する板で、縦方向に沿う縦幅
が、横方向に沿う横幅と同等または、横幅より大きく形成された伝熱板と、
前記一面の反対側にある前記ペルチェ素子の他面に形成されたヒートシンクと、
風を送る送風ファンと、
ハウジングと、
複数の吸気口からなる吸気部と、
複数の排気口からなる排気部と、を備え、
前記ハウジングは、その底側に
外面を外部に露出した状態で配置された前記伝熱板に対し、全周に亘り外周縁に沿って立設する周縁側部と、前記周縁側部で包囲された内部空間を前記伝熱板の反対側で塞ぐ天井部と、前記周縁側部と前記天井部との間には、使用者の手で把持する把持部を有し、
前記吸気部が、前記外周縁に沿った前記周縁側部の全周囲のうち、30%以上を占める範囲に亘って配設されていること、
制御部を有し、前記制御部で前記ペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、前記ペルチェ素子の前記一面で、吸熱と発熱とが切り替わること、
前記伝熱板は、隣接して配置された載置板部材に取り付けられ、かつ前記
外面の反対側にある内面が前記ペルチェ素子の前記一面と接触した状態で、前記ハウジングの前記底をなすことにより、前記ペルチェ素子の前記一面で生じた前記熱である冷熱または温熱が、前記伝熱板を介して直接身体に熱伝導すること、
前記送風ファンにより、前記吸気部から前記内部空間に送られる外気が、前記載置板部材により、前記伝熱板と非接触の下で、前記ヒートシンクと接触して
、前記天井部に配置した前記排気部から放出すること、
前記把持部は、前記周縁側部全周のうち、前記縦方向に沿った部分と前記天井部とを繋ぐ部位に配設され、前記周縁側部の平面視下では、前記ハウジングの前記底側に向けて凹み、かつ前記天井部の平面視下では、外周側から前記排気部に向けて前記天井部を円弧状に切り欠いた形態で、曲面をなして形成されていること、
前記吸気部は、前記周縁側部内に設けられ、前記縦方向かつ前記横方向と直交する高さ方向に対し、前記把持部との隣接を避けた位置に形成された第1吸気部と、前記把持部と前記高さ方向で隣り合う位置に配置された第2吸気部とからなること、
当該携帯用身体温度調整装置の使用時に、前記第2吸気部が使用者の手で遮られた場合でも、前記第1吸気部から吸気した外気が、前記ペルチェ素子の前記他面で生じた排熱と前記ヒートシンクで熱交換され、前記第1吸気部からの吸気により、前記ペルチェ素子での破損、焼損が防止できていること、
を特徴とする携帯用身体温度調整装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する携帯用身体温度調整装置において、
前記排気部は、前記ハウジングの前記天井部に配設され、
前記吸気部をなす吸気部総面積S1は、前記排気部をなす排気部総面積S2(S2≦S1)に比べ、同等または大きくなっていること、
を特徴とする携帯用身体温度調整装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載する携帯用身体温度調整装置において
、
前記吸気部全体に占める前記第1吸気部の範囲の割合が、少なくとも30%を満たしていること、
を特徴とする携帯用身体温度調整装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載する携帯用身体温度調整装置において、
前記把持部は、前記周縁側部と前記天井部とを繋ぐ部分で、前記ハウジングの前記底側に凹む形態で形成されていること、
を特徴とする携帯用身体温度調整装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載する携帯用身体温度調整装置において、
前記周縁側部は、前記縦方向に沿う縦側側部と、前記横方向に沿う横側側部を含み、前記横方向の少なくとも片側では、前記縦側側部と前記横側側部との間が、曲面で形成されていること、
を特徴とする携帯用身体温度調整装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載する携帯用身体温度調整装置において、
前記ペルチェ素子に電力を供給する電源が、前記ハウジングの前記内部空間に配設されていること、
を特徴とする携帯用身体温度調整装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載する携帯用身体温度調整装置において、
前記ハウジングには、携行時に人の持ち運びを補助する携行補助手段を装着する取付部が形成されていること、
を特徴とする携帯用身体温度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内にペルチェ素子ユニットを収め、このペルチェ素子で吸熱下となった冷却面に呈する冷熱により、伝熱板を介して身体を冷やす、または発熱下となった加熱面に呈する温熱により、この伝熱板を介して身体を温める装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人にとって不快な猛暑日は近年、年間を通じて数多くあり、猛暑による熱中症の防止策として、小まめに水分を摂取することや、適度に冷房装置を使用することが、奨励されている。しかしながら、例えば、蒸し暑い環境下で働く作業者や、ヒートアイランド化した街頭を歩く若者のほか、炎天下の野外でレクリエーションやスポーツ、観戦等、野外活動を行っている人にとって、暑さをしのぐことは、容易でない。
【0003】
そこで、避暑を求める人が、このような屋外等でも手軽に携行できる携帯用身体温度調整装置の一例として、特許文献1に開示した温度制御装置が、開発されている。特許文献1は、略矩形状で、かつ弓状に湾曲した輪郭形態で形成された筐体に、ペルチェ素子を収容し、このペルチェ素子の伝熱面として、一方側の主面を、外部に露出した態様で筐体の内周面側に配置し、他方側の主面に形成した放熱部材を、外部に露出した態様で、筐体の外周面側に配置した薄型の温度制御装置である。
【0004】
特許文献1は、温度制御装置を胸ポケットに収容して使用者の胸元を冷やす、または温める用途や、温度制御装置を襟に装着して使用者の首元を冷やす、または温める用途で、着衣する衣服に装着して使用される。そのため、特許文献1は、衣服の装着時に、使用者の邪魔とならないよう、適度に薄くして小型化した形態で構成され、使用者の携行に適す温度制御装置となっている。
【0005】
特許文献1では、薄型形状のファンにより、外気(空気)が、吸気口から吸気されて放熱部材を冷やし、その冷却後の送風(空気)が、放熱部材の近傍にある排気口から排気される。吸気口は、ファン正面にあるほか、このファン正面と衣服との密着で吸気できない場合に備え、ファンの外周りの段差部にも数箇所、小さな開口で局部的に設けられている。排気口は、筐体の一端面に数箇所、小さな開口で設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、以下の問題があった。
【0008】
(1)ペルチェ素子の伝熱面で冷却効率が経時的に低下してしまう問題
温度制御装置は、コンパクトで薄型化した構成となっているため、ファンの外周りの段差部にある吸気口や、筐体の一端面にある排気口は、必然的に小さな開口でしか形成できない。しかも、この温度制御装置は、衣服のポケット内に収容して装着された使い方で用いられる。
【0009】
そのため、内部空間の狭いポケット内では、空気の流通経路が元々、確保し難いことに加え、筐体の一端面にある排気口や、ファンの外周りの段差部にある吸気口でも、衣服の一部で塞がれてしまい易く、特に吸気口では、空気の流入が、衣服によって遮断されてしまう虞もある。
【0010】
すなわち、特許文献1の技術は、ペルチェ素子で発熱した熱を外部へ排熱するにあたり、吸気口から供給する外気(空気)により、放熱部材を十分に冷やすことができないばかりか、吸気されて放熱部材と接触した熱交換後の空気を、排気口から外部に排気し難くなっている。
【0011】
ペルチェ素子は、両方の伝熱面において、吸熱側と発熱側との間で生じる熱移動により、吸熱側の伝熱面で低温の熱を、発熱側の伝熱面で高温の熱を、それぞれ呈する特性である。それ故に、特許文献1では、ペルチェ素子において、発熱側で生じた熱が、効率良く外部に排熱されず、吸熱側の伝熱面で、吸熱が次第に起こり難くなるため、ペルチェ素子の伝熱面での冷却効率が、経時的に低下していくばかりか、ペルチェ素子に破損・焼損を招いてしまう虞もある。
【0012】
(2)悴んだ手等をペルチェ素子の伝熱面で十分に温めることができない問題
例えば、冬季に手で水仕事を行う場合、寒風に晒されながら屋外で手作業を行う場合、手に荷物を下げて低温下の街頭を歩く場合等のように、人が、手に冷えを感じながらも活動しているような場合、手の指や掌は冷たくなり、冷えによる手の悴みで、思うように手の指を動かすことができなくなることがある。
【0013】
このような状況下で、悴んだ手が温められると、手の指の動きが元に戻るため、悴んだ手を温める採暖具のニーズは、潜在的に高く、一般的には、多くの人が、使い捨てタイプのカイロを使用して掌や手の指を温めている。
【0014】
しかしながら、市販の使い捨てタイプのカイロは、発熱を開始して以降、終了するまでの間、発熱状態を継続したまま、その途中で発熱を停止することができず、発熱している最中に、使用者の手の指の動きが元に戻った後でも、このカイロの発熱が続いている場合もある。そのため、使い捨てタイプのカイロでは、使用者の使い勝手が良くない上に、このカイロは、発熱終了後には廃棄処分となり、環境上、好ましくない。
【0015】
他方、特許文献1では、温度制御装置は、衣服のポケット内に収容して装着されるものであることから、ペルチェ素子の伝熱面である主面を小型化し、装置全体をコンパクトかつ薄型化した構成となっている。
【0016】
そのため、人が、この温度制御装置の使用で、悴んだ手の指や掌を温めようとしても、ペルチェ素子の伝熱面である主面が、温めたい指の全域や掌の全域のうちの一部分で、局部的にしか接触できず、ペルチェ素子の伝熱面で、悴んだ手の指や掌を、効率良く十分に温めることができない虞がある。
【0017】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、冷えた手の加熱や、高熱状態にある額の冷却等、部分的に身体部位の温度を調節したい場合に、手で把持しながら、熱が安定した状態の下で、所望とする身体部位を一時的に効率良く温める、または冷やすことができる携帯用身体温度調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するためになされた、本発明の一態様である携帯用身体温度調整装置は、ペルチェ素子と、通電により、前記ペルチェ素子の一面で吸熱または発熱した熱を伝熱する板で、縦方向に沿う縦幅に対し、横方向に沿う横幅と同等または、横幅より大きく形成された伝熱板と、前記一面の反対側にある前記ペルチェ素子の他面に形成されたヒートシンクと、風を送る送風ファンと、ハウジングと、複数の吸気口からなる吸気部と、複数の排気口からなる排気部と、を備え、前記ハウジングは、その底側に片面を外部に露出した状態で配置された前記伝熱板に対し、全周に亘り外周縁に沿って立設する周縁側部と、前記周縁側部で包囲された内部空間を前記伝熱板の反対側で塞ぐ天井部と、前記周縁側部と前記天井部との間には、使用者の手で把持する把持部を有し、前記吸気部が、前記外周縁に沿った前記周縁側部の全周囲のうち、30%以上を占める範囲に亘って配設されていること、を特徴とする。
【0019】
この態様によれば、携帯用身体温度調整装置は、伝熱板の片面を、冷熱を呈する冷却面とした場合と、温熱を呈する加熱面とした場合に使い分けて、一例である手の指や掌、額等、使用者の身体の一部にある身体表面部位に、伝熱板の片面を接触させることにより、身体表面部位の温度を調節ことができる。
【0020】
また、携帯用身体温度調整装置では、吸気部が、外周縁に沿った周縁側部の全周囲のうち、30%以上を占める範囲に亘って配設されている。そのため、吸気部では、外気である空気は、ペルチェ素子の他面で生じた排熱を、ヒートシンクから外部へ効率良く放熱させるのに十分足り得る流量を確保して、ハウジングの内部空間に吸気できるようになる。
【0021】
これにより、携帯用身体温度調整装置は、ペルチェ素子の他面で生じた排熱を、持続的に放熱できないことに起因して生じるペルチェ素子のダメージを、抑制することができているため、ペルチェ素子の一面に呈する冷熱、または温熱が、持続的に安定した挙動で、伝熱板の片面に伝熱し易くなっている。
【0022】
従って、携帯用身体温度調整装置では、ペルチェ素子の一面及び他面において、冷却効率または発熱効率が経時的に低下してしまうのを抑制できている。
【0023】
上記の態様においては、前記排気部は、前記ハウジングの前記天井部に配設され、前記吸気部をなす吸気部総面積S1は、前記排気部をなす排気部総面積S2(S2≦S1)に比べ、同等または大きくなっていること、が好ましい。
【0024】
この態様によれば、ペルチェ素子の他面で生じた排熱を、ヒートシンクから外部へ効率良く放熱するにあたり、第1吸気部では、外気である空気は、ハウジングの内部空間に十分な量で吸気することができる。他方、ハウジングの内部空間では、送風ファンにより、空気の吸気に伴った排気が、外部に強制的に排気部を通じて放出できる。
【0025】
そのため、排気部では、排気部総面積S2が、吸気部総面積S1より小さくなっていても、ハウジングの内部空間で、排気が滞留するのを防止することができる。しかも、排気部総面積S2を吸気部総面積S1より小さくして、ハウジングの天井部に排気部を配設することにより、使用者が、携帯用身体温度調整装置を使用する際に、排気部が、携帯用身体温度調整装置の把持部を把持する手の邪魔になってしまうのを防ぐことができる。
【0026】
上記の態様においては、前記吸気部は、前記周縁側部の中で、前記把持部との隣接を避けた位置に形成された第1吸気部と、前記把持部と隣接した位置に形成された第2吸気部とからなり、前記吸気部全体に占める前記第1吸気部の範囲の割合が、少なくとも30%を満たしていること、が好ましい。
【0027】
この態様によれば、使用者が、携帯用身体温度調整装置を手で把持して使用する際、吸気部のうち、一例として、たとえ第2吸気部が、使用者の手の指で遮られたとしても、外部の空気が、第1吸気部を通じて十分に吸気できる。これにより、ヒートシンクでは、ペルチェ素子の他面から生じる排熱と、第1吸気部より十分な量で吸気された空気との熱交換が、効率の低下を抑えて行うことができる。
【0028】
そのため、ペルチェ素子が持続的に通電され続けても、ペルチェ素子の一面で生じる吸熱、または発熱に及ぶ悪影響が抑制できている。
【0029】
上記の態様においては、前記把持部は、前記周縁側部と前記天井部とを繋ぐ部分で、前記ハウジングの底側に凹む形態で形成されていること、が好ましい。
【0030】
この態様によれば、例えば、手の指や掌、額等、所望とする身体表面部位に、伝熱板の片面を配置して接触した状態を維持するにあたり、使用者は、把持部に置いた手の指で携帯用身体温度調整装置を保持することで、伝熱板の片面を身体表面部位に安定して接触させることができる。
【0031】
上記の態様においては、前記周縁側部は、前記縦方向に沿う縦側側部と、前記横方向に沿う横側側部を含み、前記横方向の少なくとも片側では、前記縦側側部と前記横側側部との間が、曲面で形成されていること、が好ましい。
【0032】
この態様によれば、例えば、手の指や掌、額等、所望とする身体表面部位に、伝熱板の片面を配置して接触した状態を維持するにあたり、使用者は、手の指で把持部を把持しながら、掌が、縦側側部と横側側部との間に形成された曲面で包み込まれ易くなる。
【0033】
そのため、使用者は、無理のない自然体で、所望とする身体表面部位に携帯用身体温度調整装置を、安定した状態で保持することができる。
【0034】
上記の態様においては、前記ペルチェ素子に電力を供給する電源が、前記ハウジングの前記内部空間に配設されていること、が好ましい。
【0035】
この態様によれば、電源は、電気配線により、制御部を介して、ペルチェ素子をはじめ、送風ファン等と電気的に接続されるが、電源と接続するこの電気配線は、ハウジングの内部空間に存在し、ハウジングの外には露出しない。
【0036】
そのため、使用者が、携帯用身体温度調整装置を使用して、例えば、手の指や掌、額等、所望とする身体表面部位を温める、または冷やす場合に、このような電気配線が、外部の物に引っ掛かってしまうこともなく、使用者の邪魔にもならない。
【0037】
上記の態様においては、制御部を有し、前記制御部で前記ペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、前記ペルチェ素子の前記一面で、吸熱と発熱とが切り替わること、が好ましい。
【0038】
この態様によれば、携帯用身体温度調整装置は、制御部により、伝熱板の片面を、身体を冷やすための冷熱を呈する冷却面とする場合と、身体を温めるための温熱を呈する加熱面とする場合を、簡単に選択できるようになる。
【0039】
これにより、携帯用身体温度調整装置は、使用者の用途に合わせて、例えば、手の指や掌、額等、所望とする身体表面部位に対し、伝熱板の片面で冷却面となった冷熱で身体を冷やすことや、伝熱板の片面で加熱面となった温熱で身体を温めることを、臨機応変に対応でき、自在に使い分けることができる。
【0040】
上記の態様においては、前記ハウジングには、携行時に人の持ち運びを補助する携行補助手段を装着する取付部が形成されていること、が好ましい。
【0041】
この態様によれば、使用者は、携帯用身体温度調整装置を使用していない間、携行補助手段により、例えば、携帯用身体温度調整装置を首から吊る形態や、手首に掛け回す形態、ズボンのポケットやベルトに引っ掛ける形態等で、身に着けることができる。
【0042】
そのため、使用者は、携帯用身体温度調整装置を使用していないときでも、邪魔にならない態様で、携帯用身体温度調整装置を保管することができる。
【発明の効果】
【0043】
従って、本発明の一態様である携帯用身体温度調整装置によれば、冷えた手の加熱や、高熱状態にある額の冷却等、部分的に身体部位の温度を調節したい場合に、手で把持しながら、熱が安定した状態の下で、所望とする身体部位を一時的に効率良く温める、または冷やすことができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置を、縦方向一方側からの側視で示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す携帯用身体温度調整装置を、縦方向他方側からの側視で示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す携帯用身体温度調整装置の正面図である。
【
図4】
図1に示す携帯用身体温度調整装置の背面図である。
【
図5】
図1に示す携帯用身体温度調整装置を、縦方向他方側から視た側面図である。
【
図6】
図1に示す携帯用身体温度調整装置を、縦方向一方側から視た側面図である。
【
図7】
図1に示す携帯用身体温度調整装置を、横方向から視た側面図である。
【
図10】
図1に示す携帯用身体温度調整装置の分解斜視図である。
【
図11】実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置を手で把持して使用する様子を、親指側から視た図である。
【
図12】
図11と同様の様子を、人差し指側から視た図である。
【
図13】実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置を首から吊り下げて携行する様子を示す図である。
【
図14】実施形態2に係る携帯用身体温度調整装置を、天井部側から視た斜視図である。
【
図15】
図14に示す携帯用身体温度調整装置を、伝熱板側から視た斜視図である。
【
図16】
図14に示す携帯用身体温度調整装置の正面図である。
【
図17】
図14に示す携帯用身体温度調整装置を、横方向から視た側面図である。
【
図18】
図14に示す携帯用身体温度調整装置を、縦方向から視た側面図である。
【
図21】
図14に示す携帯用身体温度調整装置の分解斜視図である。
【
図22】実施形態1,2の変形例に係る携帯用身体温度調整装置に構成した伝熱板を、表面側から視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明に係る携帯用身体温度調整装置について、実施形態1,2を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る携帯用身体温度調整装置は、ペルチェ素子で、吸熱下となった冷却面に呈する冷熱により、伝熱面を介して身体を冷やす、または発熱下となった加熱面に呈する温熱により、伝熱面を介して身体を温める装置である。
【0046】
この携帯用身体温度調整装置は、手軽に持ち運びできる態様で構成され、例えば、冷たくなっている手を温めたい場合、腹部や腰部を採暖したい場合のほか、発熱した人の額を冷やしたい場合等、所望とする身体部位の温度を調整する用途で使用される。
【0047】
(実施形態1)
はじめに、実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置について、
図1~
図13を用いて説明する。
図1は、実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置を、縦方向一方側からの側視で示す斜視図であり、縦方向他方側からの側視で示す斜視図を、
図2に示す。
【0048】
図3は、実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置の正面図であり、背面図を
図4に、縦方向他方側から視た側面図を
図5に、縦方向一方側から視た側面図を
図6に、横方向から視た側面図を
図7に、それぞれ示す。
図8は、
図1中、A-A矢視断面図であり、
図9は、
図1中、B-B矢視断面図である。
図10は、実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置の分解斜視図である。
【0049】
なお、本実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置1において、
図1中、左上-右下方向を縦方向Lとし、
図1中、左下-右上方向を横方向Wとし、
図1中、上下方向を高さ方向Hとして、
図2以降の各図でも、
図1に定義した方向に準じる。また、各図では、携帯用身体温度調整装置1に必要な電気配線、コネクタ類等の図示は省略されている。
【0050】
図1~
図10に示すように、携帯用身体温度調整装置1は、ペルチェ素子2、伝熱板3、ヒートシンク4、送風ファン5、操作制御部6(制御部)、電源7、USBプラグ接続部8、照明灯9、及びハウジング10等を備えている。ペルチェ素子2、ヒートシンク4、送風ファン5、及び電源7は、ハウジング10の内部に収容されている。
【0051】
操作制御部6、USBプラグ接続部8、及び照明灯9は、ハウジング10に配設されている。伝熱板3は、ハウジング10の底として配置されている。照明灯9は、LGD(Light Emitting Diode)を用いた照明用のライトであり、懐中電灯として機能する。
【0052】
(ペルチェ素子2について)
はじめに、ペルチェ素子2bについて、説明する。ペルチェ素子2は、板状の半導体熱電素子の一種である。電源7より、ペルチェ素子2に直流電流が供給されると、ペルチェ素子2では、ペルチェ効果により、一面2aが、吸熱して吸熱下の状態(冷却面)になると同時に、その反対側の他面2bが、発熱して発熱下の状態(加熱面)となる。
【0053】
本実施形態では、ペルチェ素子2は、例えば、20~30℃程の温度幅で、外気温度と相対的に吸熱と同時に発熱する特性を有する。
【0054】
すなわち、例えば、夏季に外気温度35℃の下で作動する場合のペルチェ素子2では、冷却面は、15~5℃の熱を呈し、この熱は、身体を冷やすための冷熱となる。同時に、加熱面は、55~65℃の熱を呈し、この熱は排熱となる。
【0055】
他方、冬季に外気温度5℃の下で作動する場合のペルチェ素子2では、冷却面は、-15~-25℃の熱を呈し、この熱は排熱となる。同時に、加熱面は、25~35℃の熱を呈し、この熱は、身体を温めるための温熱となる。
【0056】
なお、本実施形態では、外気温度との対比で、20~30℃程の温度幅で、吸熱と同時に発熱する温度特性を有するペルチェ素子2を一例に挙げた。
【0057】
しかしながら、ペルチェ素子は、本実施形態に挙げた温度特性に限定されるものではなく、凍傷を負わない程度の冷熱で身体を冷やし、かつ火傷を負わない程度の温熱で温めることができる温度特性であれば、適宜変更して構成されていても良い。その一例として、ペルチェ素子の温度特性が、外気温度との対比で、30~40℃程の温度幅や、10~20℃程の温度幅である。
【0058】
(伝熱板3について)
次に、伝熱板3について、説明する。伝熱板3は、通電により、ペルチェ素子2の一面2aで吸熱または発熱した熱を伝熱する金属製の板である。伝熱板3は、例えば、アルミニウム材等のように、金属の中でも、比較的熱伝導率が高く、かつ比較的比重が小さく、軽量で安価な材料からなる。
【0059】
伝熱板3は、
図4及び
図10に示すように、縦方向Lに沿う縦幅mに対し、本実施形態では、横幅nより大きくし、矩形状の四隅をR形状に置換した略トラック状の形態で形成されている。
【0060】
図10に示すように、伝熱板3は、ハウジング10内を仕切る載置板部12に取付けられている。伝熱板3の表面3a及び裏面3bは、表面形状をなす平均的な粗さとして、数~数十μm程度で、面上にある微細な凹凸の高低差を、小さく抑制して仕上げられている。
【0061】
特に、表面3aにおける平均的な表面粗さが、一例として、5~30μm程の高い表面精度になっていると良い。
図11及び
図12に示すように、携帯用身体温度調整装置1の使用時に、伝熱板3の表面3aが、手の指や掌、額等、使用者HMの身体表面部位BSと直に接触した状態では、特に手触りの感覚や、皮膚の感触が、使用者HMにとって不快にならず、良好になるからである。
【0062】
携帯用身体温度調整装置1では、
図8~10に示すように、伝熱板3は、載置板部12の開口13に挿通したペルチェ素子2の一面2aと、グリス層(図示省略)を介して、密着した状態で配設されている。グリス層は、一例として、少なくとも熱伝導率5W/m・Kを満たす等、比較的高い熱伝導性を有すると共に、零度から80℃近傍までの温度範囲内で、比較的高い粘性を維持した性状である。具体的には、伝熱板3の裏面3bと、ペルチェ素子2の一面2aとが、互いに面接触するよう、対向して配置されている。
【0063】
しかしながら、厳密には、伝熱板3の裏面3bをなす面形状と、ペルチェ素子2の一面2aをなす面形状との精度差に起因して、裏面3bと一面2aとの間には、僅かな隙間(空隙)がある。そのため、この空隙をグリスで埋めた状態で形成されたグリス層を、裏面3bと一面2aとの間に設けることにより、ペルチェ素子2の一面2aで生じた熱は、伝熱ロスを抑えて、伝熱板3の表面3a(片面)に伝熱するようになっている。
【0064】
(ヒートシンク4について)
次に、ヒートシンク4について、説明する。
図10に示すように、ヒートシンク4は、ペルチェ素子2の他面2bに対し、ほぼ全域に亘って当接可能な大きさで形成された平板4a上に、隣接するフィン4b同士の間に隙間を設けて、無数のフィン4bを垂直に立設してなる。ヒートシンク4は、平板4aを、グリス層(図示省略)を介して、ペルチェ素子2の他面2bと密着した状態で配設されている。
【0065】
携帯用身体温度調整装置1では、
図8~10に示すように、ヒートシンク4の平板4a上の表面と、ペルチェ素子2の他面2bとが、互いに面接触するよう、対向して配置されている。
【0066】
しかしながら、厳密には、ヒートシンク4の平板4aの表面をなす面形状と、ペルチェ素子2の他面2bをなす面形状との精度差に起因して、平板4aの表面と他面2bとの間には、僅かな隙間(空隙)がある。
【0067】
そのため、この空隙をグリスで埋めた状態で形成されたグリス層を、平板4aの表面と他面2bとの間に設けることにより、ペルチェ素子2の他面2bで生じた排熱は、伝熱ロスを抑えて、ヒートシンク4に伝熱するようになっている。
【0068】
(ハウジング10について)
次に、ハウジング10について、説明する。
図1~
図10に示すように、ハウジング10は、大別して周縁側部40と、天井部50と、把持部60とからなる。周縁側部40は、ハウジング10の底側(
図6中、上下方向下側)で、表面3a(片面)を外部に露出した状態で配置された略トラック形平板状に形成された伝熱板3に対し、全周に亘り外周縁3cに沿って立設されている。
【0069】
周縁側部40は、
図1~
図3に示すように、縦方向Lに沿う縦側側部41を、横方向W両側にそれぞれ含むと共に、横方向Wに沿う横側側部42を、縦方向L両側にそれぞれ含んでいる。周縁側部40では、縦側側部41と横側側部42との間が、曲面で形成されたコーナー部43となっている。
【0070】
すなわち、周縁側部40は、対向する2つの縦側側部41と、対向する2つの横側側部42と、4つのコーナー部43で形成されている。
図1~
図3に示すように、4つのコーナー部43のうち、縦方向L他方側(
図3中、右側)にある2つの第1コーナー部43Aでは、コーナー部43の曲面が、縦方向L一方側(
図3中、左側)にある2つの第2コーナー部43Bと比べ、曲率半径を大きくして形成されている。
【0071】
これにより、
図11及び
図12に示すように、使用者HMが、携帯用身体温度調整装置1を手HDで把持して使用する際に、使用者HMは、第1コーナー部43Aを掌で無理なく包み込んで保持し易く、自然体で携帯用身体温度調整装置1を把持することができるからである。
【0072】
なお、
図11は、本実施形態に係る携帯用身体温度調整装置を手で把持して使用する様子を、親指側から視た図であり、
図12は、その様子を、人差し指側から視た図である。
【0073】
天井部50は、周縁側部40で包囲された内部空間10Sを伝熱板3の反対側で塞いだ状態で、周縁側部40と接続されている。
図1~
図3、及び
図7に示すように、天井部50は、上方(
図7中、上側)に向けた凸状に複雑な曲面をなして膨らみ、最も高い位置に、複数の排気口31からなる排気部30を具備している。
【0074】
周縁側部40と天井部50との間には、把持部60が、横方向W両側に一対で形成されている。
図1~
図3、及び
図7示すように、把持部60は、周縁側部40と天井部50とを繋ぐ部分で、ハウジング10の底側に位置する伝熱板3に向けて凹む形態で、かつ滑らかな曲面形状をなして形成されている。
【0075】
把持部60は、使用者HMにより、使用時に携帯用身体温度調整装置1を保持するにあたり、
図11及び
図12に示すように、把持する手HDの指(親指TB、人差し指NF、中指MF)を、包み込むような態様で載置できる。
【0076】
周縁側部40には、
図7~
図9示すように、複数の吸気口23からなる吸気部20が形成されている。吸気部20は、周縁側部40で包囲された内部空間10Sに、吸気口23を通じて外気(空気)を取入れる。
【0077】
携帯用身体温度調整装置1で、吸気部20全域をなす吸気部総面積S1は、排気部30全域をなす排気部総面積S2との対比で、例えば、1~3倍の大きさであり、本実施形態では、約2.1倍の大きさとなっている。また、この吸気部20は、
図1及び
図2、
図7~
図10示すように、伝熱板3の外周縁3cに沿った周縁側部40の全周囲のうち、30%以上を占める範囲に亘って配設されている。
【0078】
具体的には、吸気部20は、横方向W両側とも、周縁側部40の縦側側部41に設けられ、吸気部20の範囲は、片側で距離Q(Q<m)、両側で距離2×Qである。周縁側部40の周長Pに占める吸気部20の全範囲長2×Qの割合は、本実施形態では、約45%となっている。
【0079】
また、この吸気部20は、
図7示すように、周縁側部40の中で、把持部60との隣接を避けた位置に形成された第1吸気部21と、把持部60と隣接した位置に形成された第2吸気部22で構成されている。吸気部20では、第1吸気部21は、縦方向Lに対し、第2吸気部22を挟む両側に、第2吸気部22と隣接して配置されている。
【0080】
ここで、携帯用身体温度調整装置1の使用にあたり、それを把持する使用者HMの手HDと、第1吸気部21及び第2吸気部22との位置関係について、
図11及び
図12を用いて簡単に説明する。
【0081】
図11及び
図12に示すように、使用者HMが、携帯用身体温度調整装置1を手HDで把持して使用する際に、使用者HMは、把持部60を、手HDの指(親指TB、人差し指NF、中指MF)で包み込むような態様で把持する。
【0082】
このとき、
図11及び
図12に示すように、吸気部20のうち、特に第2吸気部22が、親指TB、人差し指NF、及び中指MFで遮られてしまい易く、第2吸気部22を通じた内部空間10Sへの吸気に支障を来たす場合も想定される。しかしながら、第1吸気部21が、把持部60との隣接を避けた位置に形成されている。
【0083】
これにより、万が一、第2吸気部22が、使用者HMの手HDで塞がれてしまった場合にも、第1吸気部21は、使用者HMの手HDによる影響を受け難い位置に配置されている。そのため、外部の空気は、内部空間10Sにあるヒートシンク4の冷却に悪影響を及ぶことなく、第1吸気部21を通じて十分に吸気することできる。
【0084】
しかも、
図7に示すように、片側につき、距離Qの吸気部20では、第1吸気部21の範囲は、距離(q1+q2)(q1<Q、q2<Q)であり、第2吸気部22の範囲は、距離q3(q3<Q)である。横方向W両側では、第1吸気部21の全範囲は、距離2×(q1+q2)であり、第2吸気部22の範囲は、距離2×q3である。
【0085】
そして、吸気部20の全範囲長2×Qに占める第1吸気部21の全範囲長2×(q1+q2)の割合(q1+q2)/Qとして、本実施形態では、約38%となっている。
【0086】
図13は、実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置を首から吊り下げて携行する様子を示す図である。携帯用身体温度調整装置1は、
図13に示すように、携行時に使用者HMの持ち運びを補助する携行補助手段70を備えている。携行補助手段70は、携帯用身体温度調整装置1を、
図13に例示するように、首から吊るす首掛けストラップや、手首に掛け回すハンドストラップ等である。
【0087】
図2及び
図5に示すように、ハウジング10には、取付部11が、周縁側部40のうち、横方向W両側にあるコーナー部43にそれぞれ配置されている。取付部11は、周縁側部40の一部を開口した一対の穴を有し、一方の穴から他方の穴へと紐材を挿通可能に配設され、携行補助手段70と自在に着脱可能な態様で形成されている。
【0088】
横方向W両側の取付部11に連結した紐材で携行補助手段70を装着することより、使用者HMは、携帯用身体温度調整装置1を使用していないときに、首から吊り下げて持ち運ぶことができる。
【0089】
(送風ファン5について)
次に、送風ファン5について、説明する。送風ファン5は、吸気部20を通じて吸引した外気を、隣接するヒートシンク4側から導入して、排気部30の排気口31に向けて風を送るファンであり、本実施形態では、遠心送風機の一種である多翼送風機(シロッコファン)である。
【0090】
シロッコファンは、回転の中心軸に対し、その周方向に沿って複数の羽根を環状に配置した略筒状の送風機で、中心軸に沿って吸い込まれた風を、回転する羽根同士の間から径外方向に吹き出す。
【0091】
携帯用身体温度調整装置1では、伝熱板3の表面3aが、身体を冷やすための冷熱を呈する冷却面である場合、一例として、ペルチェ素子2の裏面3bからの排熱により高温化したヒートシンク4は、送風ファン5により吸気された空気と熱交換を行って空冷される。
【0092】
ヒートシンク4との熱交換で昇温した空気は、ペルチェ素子2の他面2bでの発熱温度よりもかなり低く、吸気の温度により近付いた温度(例えば、吸気した空気に比べ温度差5℃程高い温度)となり、たとえ使用者HMに晒されたとしても違和感ない状態で、送風ファン5により、排気部30の排気口31を通じてハウジング10の外へ排気される。
【0093】
このとき、送風ファン5は、ハウジング10の内部空間10Sで空気の滞留を生じない大風量の下で、外部から吸気部20を通じて温度の低い外気を吸気し、内部空間10Sで昇温した空気を、強制的に排気部30からハウジング10の外に排気する。
【0094】
また、伝熱板3の表面3aが、身体を温めるための温熱を呈する加熱面である場合には、一例として、ペルチェ素子2の裏面3bからの排熱により低温化したヒートシンク4は、送風ファン5により、吸気した空気との熱交換を経て温度調整される。
【0095】
ヒートシンク4との熱交換で温度調整された空気は、ペルチェ素子2の他面2bでの吸熱温度よりかなり高く、吸気の温度により近付いた温度(例えば、吸気した空気に比べ温度差5℃程低い温度)となり、たとえ使用者HMに晒されたとしても違和感ない状態で、送風ファン5により、排気部30の排気口31を通じてハウジング10の外へ排気される。
【0096】
このとき、送風ファン5は、ハウジング10の内部空間10Sで空気の滞留を生じない大風量の下で、外部から吸気部20を通じて外気を吸気し、内部空間10Sで降温した空気を、強制的に排気部30からハウジング10の外に排気する。
【0097】
なお、携帯用身体温度調整装置1では、伝熱板3の表面3aが、身体を温めるための温熱を呈する加熱面として使用される場合、ペルチェ素子2の通電中、送風ファン5による送風が行われなくても良い。また、送風ファンは、シロッコファン以外にも、例えば、プロペラファン(軸流)、ターボファン等であっても良い。
【0098】
(操作制御部6について)
次に、操作制御部6について、説明する。操作制御部6は、図示しない電気配線により、ペルチェ素子2、送風ファン5、及び照明灯9と、それぞれ電気的に接続され、ペルチェ素子2、送風ファン5、電源7、及び照明灯9に対する操作機能と、供給する電力を制御する機能とを備える。
【0099】
具体的には、操作制御部6は、ペルチェ素子2に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、ペルチェ素子2の一面2aで、吸熱と発熱とを切り替える制御を行う。操作制御部6の操作により、ペルチェ素子2に供給する直流電流の向きが逆転されると、ペルチェ素子2に供給される電流は、一の向きとは反対の他の向きとなる。
【0100】
すなわち、直流電流が一の向きで供給されると、ペルチェ素子2の一面2aが吸熱下となり、伝熱板3の表面3aは、冷却面となって冷熱を呈する。また、直流電流が、一の向きとは逆に他の向きで供給されると、ペルチェ素子2の一面2aが発熱下となる。これにより、伝熱板3の表面3aは、加熱面となって温熱を呈するようになり、伝熱板3の表面3aでは、冷却面と加熱面とが相互に入れ替わる。
【0101】
また、操作制御部6は、電源のオン/オフ操作、照明灯9の点灯オン/オフ操作、送風ファン5と連動したペルチェ素子2の作動オン/オフ操作や、照明灯9の点灯オン/オフ操作とペルチェ素子2の作動オン/オフ操作との操作モードを切替える機能を有する。
【0102】
なお、操作制御部6は、伝熱板3の表面3aを、吸熱下の冷却面とする場合に、ペルチェ素子2と連動して送風ファン5を作動させる一方で、伝熱板3の表面3aを、発熱下の加熱面とする場合には、ペルチェ素子2との連動を解除して、送風ファン5の作動を停止させ、ペルチェ素子2だけを作動させる機能を有していても良い。
【0103】
(電源7について)
次に、電源7について、説明する。電源7は、ハウジング10の内部空間10Sで載置板部12に配設されている。電源7は、ペルチェ素子2のほか、送風ファン5と照明灯9に電力を供給する。電源7は、一次電池や二次電池であり、本実施形態では、例えば、リチウムイオン電池等の蓄電池である。電源7は、操作制御部6及び、USBコネクタレセプタクルであるUSBプラグ接続部8と、図示しない電気配線で電気的に接続されている。
【0104】
USBプラグ接続部8は、USBコネクタプラグ(図示せず)と、自在に着脱可能となっている。電源7では、外部の電力供給源に導通したUSBコネクタプラグ(図示せず)を、USBプラグ接続部8に接続することにより、電力が電源7に充電される。
【0105】
(調査について)
本出願人は、吸気部20を周縁側部40に配設するにあたり、把持部60を把持する使用者HMの手HDの位置と、吸気部20から内部空間10Sに供給する吸気への影響との関係について、検証するための調査を行った。
【0106】
調査では、作動中のペルチェ素子2に対し、吸熱・発熱を適切な状態で維持する観点の下、周縁側部40の周長Pに占める吸気部20の全範囲長2×Qの割合(第1の割合)と、吸気部20の全範囲長2×Qに占める第1吸気部21の全範囲長2×(q1+q2)の割合(第2の割合)について、双方とも、割合の大きさを変化させた複数種のサンプルを用いて、最低限必要となる割合を、それぞれ確認した。
【0107】
なお、携帯用身体温度調整装置1及び各サンプルとも、後述するように、ペルチェ素子の他面が、通電により発熱下となる場合であり、ペルチェ素子の他面にヒートシンクを設けて形成されたものである。
【0108】
また、吸気部から吸気され、排気部から排気されるまでの空気の流路を短くして、吸気と排気に伴う空気の流れを効率良くするため、携帯用身体温度調整装置1と同様、サンプルも、周縁側部のうち、ヒートシンクとより近接した位置に吸気部を配置した構成である。
【0109】
調査結果は、第1の割合及び第2の割合とも、30%を満たさないと、不具合を生じるものであった。すなわち、第1の割合及び第2の割合が、いずれも30%未満の場合には、使用者HMが、携帯用身体温度調整装置1を手HDで把持して使用する際に、吸気部20のうちのほとんどの部分が、主として親指TB、人差し指NF、及び中指MF等の手HDで遮られてしまう。
【0110】
そのため、温度の低い空気(外気)が、経時的に外部からハウジング10の内部空間10Sに吸気し難くなり、このことに起因して、外気により、高温化しているヒートシンク4を十分に冷却できていない事象が生じている虞があった。
【0111】
従って、吸気部20は、伝熱板3の外周縁3cに沿った周縁側部40の全周囲のうち、30%以上を占める範囲に亘って配設されていることが必要であることと、吸気部20の全範囲長2×Qに占める第1吸気部21の全範囲長2×(q1+q2)の割合(q1+q2)/Qを、少なくとも30%を満たしていることが必要であることが、調査より判った。
【0112】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る携帯用身体温度調整装置について、
図14~
図21を用いて説明する。
【0113】
図14は、実施形態2に係る携帯用身体温度調整装置を、天井部側から視た斜視図であり、伝熱板側から視た斜視図を、
図15に示す。
図16は、
図14に示す携帯用身体温度調整装置の正面図であり、横方向から視た側面図を
図17に、縦方向から視た側面図を
図18に、それぞれ示す。
【0114】
【0115】
実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置1では、天井部50を、複雑な幾何学的な曲面形状に形成すると共に、吸気部20を、周縁側部40の縦側側部41に配設した。これに対し、実施形態2に係る携帯用身体温度調整装置101では、天井部50が、フラットな平面で形成されていると共に、吸気部20は、略トラック形状の伝熱板3の外周縁3cに沿って立設した周縁側部40に、ほぼ全周に亘って形成されている。
【0116】
実施形態2では、実施形態1とは異なる部分を中心に説明し、実施形態1と共通する部分の説明は、同じ符号を用いて簡略、または省略する。
【0117】
図14~
図21に示すように、携帯用身体温度調整装置101は、ペルチェ素子2、伝熱板3、ヒートシンク4、送風ファン5、操作制御部6(制御部)、電源7、USBプラグ接続部(不図示)、及びハウジング10等を備えている。
【0118】
ペルチェ素子2、ヒートシンク4、送風ファン5、及び電源7は、ハウジング10の内部に収容されている。操作制御部6、USBプラグ接続部、及び照明灯9は、ハウジング10に配設されている。伝熱板3は、ハウジング10の底として配置されている。
【0119】
図14~
図21に示すように、ハウジング10は、大別して周縁側部40と、天井部50と、把持部60とからなる。周縁側部40は、ハウジング10の底側(
図14中、上下方向下側)で、表面3a(片面)を外部に露出した状態で配置された略トラック形平板状に形成された伝熱板3に対し、全周に亘り外周縁3cに沿って立設されている。
【0120】
天井部50は、周縁側部40で包囲された内部空間10Sを伝熱板3の反対側で塞いだ状態で、周縁側部40と接続されている。
図16~
図18に示すように、天井部50は、フラットに形成され、中央部に、複数の排気口31からなる排気部30を具備している。
【0121】
周縁側部40には、
図14及び
図15に示すように、複数の吸気口23からなる吸気部20が形成されている。吸気部20は、周縁側部40で包囲された内部空間10Sに、吸気口23を通じて外気(空気)を取入れる。携帯用身体温度調整装置101で、吸気部20全域をなす吸気部総面積S1は、排気部30全域をなす排気部総面積S2との対比で、本実施形態では、約2倍の大きさとなっている。
【0122】
また、この吸気部20は、
図14~
図21に示すように、伝熱板3の外周縁3cに沿った周縁側部40の全周囲のうち、30%以上を占める範囲に亘って配設されている。
【0123】
具体的には、吸気部20は、周縁側部40のうち、USBプラグ接続部を避けた部分の全域に配設され、周縁側部40の周長Pに占める吸気部20の全範囲長の割合は、本実施形態では、約93%となっており、吸気部20の全範囲長は、0.93×Pである。
【0124】
また、この吸気部20は、
図17及び
図18に示すように、周縁側部40の中で、把持部60との隣接を避けた位置に形成された第1吸気部21と、把持部60と隣接した位置に形成された第2吸気部22で構成されている。
【0125】
吸気部20では、第1吸気部21は、縦方向Lに対し、第2吸気部22を挟む両側に、第2吸気部22と隣接し、横方向Wにも周り込んで配置されている。
【0126】
携帯用身体温度調整装置101では、
図16及び
図17に示すように、吸気部20の全範囲長0.93×Pのうち、第2吸気部22の全範囲長はK(0<K)である。また、第1吸気部21の全範囲長は、吸気部20の全範囲長0.93×Pと第2吸気部22の全範囲長2×Kとの差(0.93×P-2×K)である。
【0127】
吸気部20の全範囲長0.93×Pに占める第1吸気部21の全範囲長の割合(0.93×P-2×K)/0.93/Pは、本実施形態では、約70%となっている。すなわち、
図16及び
図17に示すように、携帯用身体温度調整装置101では、第1吸気部21は、周縁側部40の周長Pのうち、約65%に相当する部分に設けられている。
【0128】
他方、吸気部20のうち、特に第2吸気部22は、親指TB、人差し指NF、及び中指MFで遮られてしまい易く、第2吸気部22を通じた内部空間10Sへの吸気に支障を来たす場合も想定される。しかしながら、第1吸気部21が、把持部60との隣接を避けた位置に、周縁側部40の周長Pのうち、実に約65%に相当する部分に形成されている。
【0129】
これにより、万が一、第2吸気部22が、使用者HMの手HDで塞がれてしまった場合でも、第1吸気部21は、使用者HMの手HDによる影響を受け難い位置に配置されているため、外部の空気は、内部空間10Sにあるヒートシンク4の冷却に悪影響を及ぶことなく、第1吸気部21を通じて十分に吸気することできている。
【0130】
次に、実施形態1,2に係る携帯用身体温度調整装置1,101の作用・効果について説明する。
【0131】
本実施形態1,2に係る携帯用身体温度調整装置1,101は、ペルチェ素子2と、通電により、ペルチェ素子2の一面2aで吸熱または発熱した熱を伝熱する板で、縦方向Lに沿う縦幅mに対し、横方向Wに沿う横幅nと同等または、横幅nより大きく形成された伝熱板3,3Xと、一面2aの反対側にあるペルチェ素子2の他面2bに形成されたヒートシンク4と、風を送る送風ファン5と、ハウジング10と、複数の吸気口23からなる吸気部20と、複数の排気口31からなる排気部30と、を備え、ハウジング10は、その底側に表面3aを外部に露出した状態で配置された伝熱板3,3Xに対し、全周に亘り外周縁3cに沿って立設する周縁側部40と、周縁側部40で包囲された内部空間10Sを伝熱板3の反対側で塞ぐ天井部50と、周縁側部40と天井部50との間には、使用者HMの手HDで把持する把持部60を有し、吸気部20が、外周縁3cに沿った周縁側部40の全周囲のうち、30%以上を占める範囲に亘って配設されていること、を特徴とする。
【0132】
この特徴により、携帯用身体温度調整装置1,101は、伝熱板3の表面3aを、冷熱を呈する冷却面とした場合と、温熱を呈する加熱面とした場合に使い分けて、一例である手の指や掌、額等、使用者HMの身体の一部にある身体表面部位BSに、伝熱板3の表面3aを接触させることにより、身体表面部位BSの温度を調節ことができる。
【0133】
すなわち、例えば、蒸し暑い環境下で作業を行っている場合、炎天下の野外でレクリエーションやスポーツ、観戦等、野外活動を行っている場合や、夏季にヒートアイランド化した街頭を歩くような場合のほか、発熱した人の額を冷やしたい場合等には、使用者HMは、所持した携帯用身体温度調整装置1,101の伝熱板3の表面3aを、熱くなっている使用者HMの身体表面部位BS(手の指や掌、額等)に接触させるだけで、伝熱板3の表面3aに呈する冷熱により、表面3aの全域で当接した身体表面部位BSを効果的に冷やすことができる。
【0134】
これにより、使用者HMは、携帯用身体温度調整装置1,101の伝熱板3から伝熱した冷熱により、快適さを得ることができる。
【0135】
また、例えば、冬季に手で水仕事や、寒風に晒されながら低温下の屋外で手作業行う場合や、手に荷物を下げて低温下の街頭を歩く場合等のように、人が、手に冷えを感じながらも活動し続けているような場合には、使用者HMは、所持した携帯用身体温度調整装置1,101の伝熱板3の表面3aを、冷たくなっている使用者HMの身体表面部位BS(手の指や掌等)に接触させるだけで、伝熱板3の表面3aに呈する温熱により、表面3aの全域で当接した身体表面部位BSを効果的に温めることができる。
【0136】
また、使用者HMは、携帯用身体温度調整装置1,101の伝熱板3から伝熱した温熱により、冷たくなっている手等を温めることができるほか、冷えによる手の悴みで、思うように動かなくなっていた手の指を、元の動きに戻すことができるため、快適さを得ることができる。
【0137】
特に、携帯用身体温度調整装置1,101を採暖具として使用する場合、携帯用身体温度調整装置1,101は、市販の使い捨てタイプのカイロのように、使用者HMにとって携帯し易く、持ち運びに便利な態様となっている。
【0138】
しかも、使用者HMは、手の指や掌等の身体表面部位BSを、一時的に効果的に温めたい場合や、冷やしたい場合に、携帯用身体温度調整装置1,101は、ちょうど使い捨てタイプのカイロのような要領で、場所を選ばず、所望のタイミングで、必要とする時間だけ、廃棄処分を生じず自由に使用できるため、使用者HMにとって、携帯用身体温度調整装置1,101の使い勝手は優れている。
【0139】
加えて、携帯用身体温度調整装置1,101では、吸気部20が、外周縁3cに沿った周縁側部40の全周囲のうち、30%以上を占める範囲に亘って配設されている。
【0140】
そのため、吸気部20では、外気である空気ARが、ペルチェ素子2の他面2bで生じた排熱を、ヒートシンク4から外部へ効率良く放熱させるのに十分足り得る流量を確保して、ハウジング10の内部空間10Sに吸気することができている。
【0141】
これにより、携帯用身体温度調整装置1,101は、ペルチェ素子2の他面2bで生じた排熱を、持続的に放熱できないことに起因して生じるペルチェ素子2のダメージを、抑制することができているため、ペルチェ素子2の一面2aに呈する冷熱、または温熱が、持続的に安定した挙動で、伝熱板3の表面3aに伝熱し易くなっている。
【0142】
それ故に、携帯用身体温度調整装置1,101では、ペルチェ素子2の一面2a及び他面2bおいて、冷却効率または発熱効率が経時的に低下してしまうのを抑制できている。
【0143】
従って、実施形態1,2に係る携帯用身体温度調整装置1,101によれば、冷えた手の加熱や、高熱状態にある額の冷却等、部分的に身体表面部位BSの温度を調節したい場合に、手HDで把持しながら、熱が安定した状態の下で、所望とする身体表面部位BSを一時的に効率良く温める、または冷やすことができる、という優れた効果を奏する。
【0144】
また、実施形態1,2に係る携帯用身体温度調整装置1,101では、排気部30は、ハウジング10の天井部50に配設され、吸気部20をなす吸気部総面積S1は、排気部30をなす排気部総面積S2(S2≦S1)と比べ、大きくなっていること、を特徴とする。
【0145】
この特徴により、ペルチェ素子2の他面2bで生じた排熱を、ヒートシンク4から外部へ効率良く放熱するにあたり、
図11及び
図12に示すように、第1吸気部21では、外気である空気ARは、ハウジング10の内部空間10Sに十分な量で吸気することができる。
【0146】
他方、ハウジング10の内部空間10Sでは、送風ファン5により、空気ARの吸気に伴った排気EXが、外部に強制的に排気部30を通じて放出できる。そのため、排気部30では、排気部総面積S2が吸気部総面積S1より小さくなっていても、ハウジング10の内部空間10Sで、排気EXが滞留することはない。
【0147】
しかも、排気部総面積S2を吸気部総面積S1より小さくして、ハウジング10の天井部50に排気部30を配設することにより、使用者HMが、携帯用身体温度調整装置1を使用する際に、排気部30が、携帯用身体温度調整装置1の把持部60を把持する手HDの邪魔になってしまうのを防ぐことができる。
【0148】
また、実施形態1,2に係る携帯用身体温度調整装置1,101では、吸気部20は、周縁側部40の中で、把持部60との隣接を避けた位置に形成された第1吸気部21と、把持部60と隣接した位置に形成された第2吸気部22とからなり、吸気部20全体に占める第1吸気部21の範囲の割合が、少なくとも30%を満たしていること、を特徴とする。
【0149】
この特徴により、
図11及び
図12に示すように、使用者HMが、携帯用身体温度調整装置1を手HDで把持して使用する際、吸気部20のうち、主に第2吸気部22が、使用者HMの手HDの指(親指TB、人差し指NF、中指MF)で遮られたとしても、外部の空気ARが、第1吸気部21を通じて十分に吸気できる。
【0150】
これにより、ヒートシンク4では、ペルチェ素子2の他面2bから生じる排熱と、第1吸気部21より十分な量で吸気された空気ARとの熱交換が、効率の低下を抑えて行うことができる。そのため、ペルチェ素子2が持続的に通電され続けても、ペルチェ素子2の一面2aで生じる吸熱、または発熱に及び悪影響が抑制できている。
【0151】
すなわち、ペルチェ素子2において、一面2aが、吸熱下となる冷却面で、他面2bが、発熱下となる加熱面の場合、他面2bで生じる発熱は、第1吸気部21より十分な量で吸気された空気ARと熱交換を行って、効率良く外部に排熱できる。
【0152】
これにより、一面2aと他面2bとの間で生じる熱移動が、経時的に持続し易く、ペルチェ素子2は、大幅な効率低下を招くことを回避することができる。そのため、一面2aで生じる吸熱は、経時的にコンスタントな冷却効率の下で行われ、ペルチェ素子2が、破損や焼損するのを防止することできる。
【0153】
同様に、一面2aが、発熱下となる加熱面で、他面2bが、吸熱下となる冷却面の場合、他面2bで生じる冷熱は、第1吸気部21より十分な量で吸気された空気ARと熱交換を行って、効率良く外部に排熱できる。
【0154】
これにより、一面2aと他面2bとの間で生じる熱移動が、経時的に持続し易く、ペルチェ素子2は、大幅な効率低下を招くことを回避することができる。そのため、一面2aで生じる発熱は、経時的にコンスタントな発熱効率の下で行われ、ペルチェ素子2が、破損や焼損するのを防止することできる。
【0155】
また、実施形態1,2に係る携帯用身体温度調整装置1,101では、把持部60は、周縁側部40と天井部50とを繋ぐ部分で、ハウジング10の底側に凹む形態で形成されていること、を特徴とする。
【0156】
この特徴により、伝熱板3の表面3aを身体表面部位BSに配置して接触した状態を維持するにあたり、
図11及び
図12に示すように、使用者HMは、把持部60に置いた手HDの指(親指TB、人差し指NF、中指MF)で携帯用身体温度調整装置1を保持することで、伝熱板3の表面3aを身体表面部位BSに安定して接触させることができる。
【0157】
また、実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置1では、周縁側部40は、縦方向Lに沿う縦側側部41と、横方向Wに沿う横側側部42を含み、横方向Wの少なくとも片側では、縦側側部41と横側側部42との間にあるコーナー部43(第1コーナー部43A、第2コーナー部43B)が、曲面で形成されていること、を特徴とする。
【0158】
この特徴により、伝熱板3の表面3aを身体表面部位BSに配置して接触した状態を維持するにあたり、
図11及び
図12に示すように、使用者HMは、手HDの指(親指TB、人差し指NF、中指MF)で把持部60を把持しながら、使用者HMの掌が、コーナー部43で包み込まれ易くなる。
【0159】
そのため、使用者HMは、無理のない自然体で、所望とする身体表面部位BSに携帯用身体温度調整装置1を、安定した状態で保持することができる。
【0160】
また、実施形態1,2に係る携帯用身体温度調整装置1,101では、ペルチェ素子2に電力を供給する電源7が、ハウジング10の内部空間10Sに配設されていること、を特徴とする。
【0161】
この特徴により、電源7は、図示しない電気配線により、操作制御部6を介して、ペルチェ素子2をはじめ、送風ファン5及び照明灯9と電気的に接続されているが、電源7と接続するこの電気配線は、ハウジング10の内部空間10Sに存在し、ハウジング10の外には露出していない。
【0162】
そのため、使用者HMが、
図11及び
図12に示すように、携帯用身体温度調整装置1,101を使用して身体表面部位BSを温める、または冷やす場合に、このような電気配線が、外部の物に引っ掛かってしまうこともなく、使用者HMの邪魔にもならない。
【0163】
それ故に、携帯用身体温度調整装置1,101は、電気配線による悪影響を全く受けず、市販の使い捨てタイプのカイロのように、携帯して使用する上で、使用者HMによる携帯用身体温度調整装置1,101の使い勝手は良い。
【0164】
また、実施形態1,2に係る携帯用身体温度調整装置1,101では、操作制御部6を有し、操作制御部6でペルチェ素子2に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、ペルチェ素子2の一面2aで、吸熱と発熱とが切り替わること、を特徴とする。
【0165】
この特徴により、携帯用身体温度調整装置1は、操作制御部6により、伝熱板3の表面3aを、身体を冷やすための冷熱を呈する冷却面とする場合と、身体を温めるための温熱を呈する加熱面とする場合を、簡単に選択できる。
【0166】
これにより、携帯用身体温度調整装置1,101は、使用者HMの用途に合わせて、所望とする身体表面部位BSに対し、伝熱板3の表面3aで冷却面となった冷熱で身体を冷やすことや、伝熱板3の表面3aで加熱面となった温熱で身体を温めることを、臨機応変に対応でき、自在に使い分けることができる。
【0167】
また、実施形態1に係る携帯用身体温度調整装置1では、ハウジング10には、携行時に人の持ち運びを補助する携行補助手段70を装着する取付部11が形成されていること、を特徴とする。
【0168】
この特徴により、使用者HMは、携帯用身体温度調整装置1を使用していない間、携行補助手段70により、例えば、携帯用身体温度調整装置1を首から吊る形態や、手首に掛け回す形態、ズボンのポケットやベルトに引っ掛ける形態等で、身に着けることができる。
【0169】
そのため、使用者HMは、携帯用身体温度調整装置1を使用していないときでも、邪魔にならない態様で、携帯用身体温度調整装置1を保管することができる。
【0170】
また、携帯用身体温度調整装置1を使用する場合に、使用者HMは、携行補助手段70とハウジング10の取付部11との連結を解除するだけで、携帯用身体温度調整装置1を、所望とする身体表面部位BSに簡単に配置することができ、手HDで把持部60を掴んで使用できるようになる。
【0171】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0172】
例えば、実施形態1、2では、抗菌処理を伝熱板に施していない携帯用身体温度調整装置を挙げたが、携帯用身体温度調整装置は、抗菌処理を施した伝熱板を備えていても良い。
【0173】
図22は、実施形態1,2の変形例に係る携帯用身体温度調整装置に構成した伝熱板を、表面側から視た平面図であり、
図22中、E-E矢視断面図を、
図23に示す。
図22及び
図23に例示するように、コーティング層3dが、伝熱板3の表面3aに密着して被覆されている。
【0174】
コーティング層3dは、例えば、チタンアパタイト系の物質等を含み、ウイルスや細菌を不活化すると共に、増殖を抑制する抗ウイルス・抗菌ウイルスの作用を有する抗菌剤からなる。
【0175】
変形例に係る携帯用身体温度調整装置では使用時に、伝熱板3Xが、手の指や掌、額等、使用者HMの身体表面部位BSに直に接触しても、使用者HMは、コーティング層3dにより、携帯用身体温度調整装置を、安全衛生上、安心して使用することができる。
【0176】
また、例えば、実施形態1、2では、供給する電力を制御する機能として、電源のオン/オフ操作、照明灯9の点灯オン/オフ操作、送風ファン5と連動したペルチェ素子2の作動オン/オフ操作や、照明灯9の点灯オン/オフ操作とペルチェ素子2の作動オン/オフ操作との操作モードを切替える機能を具備する操作制御部6を挙げた。
【0177】
しかしながら、本発明に係る携帯用身体温度調整装置では、制御部は、タイマ機能を具備して構成されていても良い。
【0178】
これにより、制御部は、送風ファンと連動するペルチェ素子に対し、例えば、3~15分間等、一定時間の間、電力を供給し続けて、ペルチェ素子の作動をON状態に維持した後、タイムアップとなった時点で、電力の供給を自動的に遮断して、ペルチェ素子の作動をOFF状態に切り替えることができる。
【0179】
このように、制御部にタイマ機能を設けることにより、本発明に係る携帯用身体温度調整装置の使用者が、ペルチェ素子への通電を必要としていないのにも拘わらず、誤って通電し続けている状態となっていることに起因して、ペルチェ素子で無駄な電力が消費してしまうのを防ぐことができる。
【0180】
ひいては、本発明に係る携帯用身体温度調整装置は、必要な電力を供給する電源で節電できるようになるほか、特に、蓄電池で構成した電源の場合、蓄電池、使用者は、蓄電池に蓄えた電気を長持ちさせて、携帯用身体温度調整装置を使用することができる。
【0181】
なお、タイマ機能を具備した制御部は、送風ファンと連動するペルチェ素子に対し、例えば、1~3時間経過後等、設定した一定時間を経た時点で、作動OFF状態にあったペルチェ素子に電力の供給を開始して、作動ON状態に切り替える構成であっても良い。
【0182】
これにより、使用者が、作業中に手を操作に使えない等の理由により、本発明に係る携帯用身体温度調整装置を操作し難い状況下にあっても、ペルチェ素子への通電を必要とするタイミングで、この携帯用身体温度調整装置を使用することができるようになる。
【0183】
また、実施形態1,2と変形例では、携帯用身体温度調整装置1,101に対し、その形状、構成部品の構造、構成部品の配置等、仕様は、
図1~
図23に示したような、実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0184】
また、実施形態2に係る携帯用身体温度調整装置101では、
図17に示すように、把持部60を、周縁側部40と天井部50とを繋ぐ部分で、ハウジング10の底側に位置する伝熱板3に向けて凹む形態で、かつ滑らかな曲面形状で形成した。
【0185】
しかしながら、本発明に係る携帯用身体温度調整装置では、把持部が、実施形態2のように、伝熱板3に向けて部分的に凹ませた形態ではなく、伝熱板の外周縁に沿って立設した周縁側部と、フラットな平面で形成された天井部との接続箇所で、天井部全周囲で周縁側部と略直角状に繋げ、その角に面取りを施した部分全体に構成されていても良い。
【0186】
また、実施形態1,2に係る携帯用身体温度調整装置1,101に対し、操作制御部6は、例えば、電圧制御や電流制御等により、ペルチェ素子2に供給する電力を、一例として、3段階等、複数の段階に変化させることにより、ペルチェ素子で吸熱する冷熱の温度と、発熱する温熱の温度を可変させる制御を行っても良い。
【0187】
すなわち、この場合には、操作制御部6は、ペルチェ素子2において、一面2aに呈する熱の温度を、高温状態、中温状態、及び低温状態と、3段階に可変させる。
【0188】
高温状態は、操作制御部6からペルチェ素子2への電力の供給をフルにして、ペルチェ素子2の出力を100%とした状態である。この状態では、一面2aに呈する温熱は、3段階の中で最も高い温度であり、一面2aに呈する冷熱は、3段階の中で最も低い温度となっている。
【0189】
低温状態は、ペルチェ素子2への電力の供給を、例えば、高温状態と比べ、半分程に抑えて、ペルチェ素子2の出力を50%にした状態である。この状態では、一面2aに呈する温熱は、3段階の中で最も低い温度であり、一面2aに呈する冷熱は、3段階の中で最も高い温度である。
【0190】
中温状態は、高温状態と低温状態との間であり、操作制御部6からペルチェ素子2への電力の供給を、高温状態と低温状態との間に抑えて、ペルチェ素子2の出力を70~90%程とした状態であり、一面2aに呈する温熱と冷熱はいずれも、高温状態と低温状態の中間となる温度である。
【符号の説明】
【0191】
1、101 携帯用身体温度調整装置
2 ペルチェ素子
2a 一面
2b 他面
3,3X 伝熱板
3a 表面(片面)
3c 外周縁
4 ヒートシンク
5 送風ファン
6 操作制御部(制御部)
7 電源
10 ハウジング
10S 内部空間
11 取付部
20 吸気部
21 第1吸気部
22 第2吸気部
23 吸気口
30 排気部
31 排気口
40 周縁側部
41 縦側側部
42 横側側部
50 天井部
60 把持部
70 携行補助手段
L 縦方向
W 横方向
m 縦幅
n 横幅
【要約】
携帯用身体温度調整装置は、通電により、ペルチェ素子の一面で吸熱または発熱した熱を伝熱する板で、縦幅に対し、横幅と同等または、横幅より大きく形成された伝熱板と、ペルチェ素子の他面に形成されたヒートシンクと、風を送る送風ファンと、ハウジングと、吸気部と、排気部と、を備える。ハウジングは、その底側に片面を外部に露出した状態で配置された伝熱板に対し、全周に亘り外周縁に沿って立設する周縁側部と、周縁側部で包囲された内部空間を、伝熱板の反対側で塞ぐ天井部と、周縁側部と天井部との間には、使用者の手で把持する把持部を有し、周縁側部には、吸気部が、外周縁に沿う全周囲のうち、30%以上を占める範囲に亘って配設されている。