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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ショベルの管理装置、ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20241022BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20241022BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 A
G05B23/02 T
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022510063
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011295
(87)【国際公開番号】W WO2021193396
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020057513
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】古賀 方土
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-236302(JP,A)
【文献】特開2018-013914(JP,A)
【文献】特開2003-034953(JP,A)
【文献】特開2007-257366(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0049502(KR,A)
【文献】国際公開第2014/203990(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/142331(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショベルの動作を示す稼働データのうち、前記ショベルの異常の有無の判定を行う時期に応じた稼働データであって、前記ショベルの異常がない状態とされるときの稼働データを学習データとして、前記ショベルの稼働データと前記ショベルの異常度との関係を学習する学習部と、
前記ショベルの動作を示す稼働データと、前記ショベルの不具合に関する不具合情報と、を含む車両情報に基づいて、前記学習データから除外する前記稼働データの範囲を決定する範囲決定部と、を有し、
前記範囲決定部は、
前記範囲が除外された稼働データから、前記異常の有無の判定する処理を実行する時点を基準として、前記学習データの範囲を決定する、ショベルの管理装置。
【請求項2】
ショベルの動作を示す稼働データのうち、前記ショベルの異常の有無の判定を行う時期に応じた稼働データであって、前記ショベルの異常がない状態とされるときの稼働データを学習データとして、前記ショベルの稼働データと前記ショベルの異常度との関係を学習する学習部を有し、
前記異常の有無の判定の結果と、前記学習データとされた稼働データが取得された期間を示す情報と、を表示装置に表示させる、ショベルの管理装置。
【請求項3】
ショベルの動作を示す稼働データのうち、前記ショベルの異常の有無の判定を行う時期に応じた稼働データであって、前記ショベルの異常がない状態とされるときの稼働データを学習データとして、前記ショベルの稼働データと前記ショベルの異常度との関係を学習する学習部と、
前記ショベルの動作を示す稼働データと、前記ショベルの不具合に関する不具合情報と、を含む車両情報に基づいて、前記学習データから除外する前記稼働データの範囲を決定する範囲決定部と、を有し、
前記学習データから除外される稼働データは、
前記不具合情報が示す不具合発生時点から所定の期間を遡った時点までの第一の期間に取得された稼働データ及び前記不具合情報が示す修理完了時点から所定の期間が経過した時点までの第二の期間に取得された稼働データであり、
前記学習データに含まれる稼働データのうち、前記第一の期間より前に取得された第一の稼働データと、前記第二の期間の後に取得された第二の稼働データとを比較し、
前記比較の結果に応じて、前記第一の稼働データを前記学習データから除外するか否かを判定する、ショベルの管理装置。
【請求項4】
前記異常の有無の判定する処理を実行する際に、前記学習部に入力される稼働データが取得された期間と、前記学習データとされる稼働データが取得された期間とは、非連続である、請求項1乃至3の何れか一項に記載のショベルの管理装置。
【請求項5】
前記学習データから除外される稼働データは、
前記不具合情報が示す不具合発生時点から所定の期間を遡った時点までの第一の期間に取得された稼働データである、請求項に記載のショベルの管理装置。又は
【請求項6】
前記学習データから除外される稼働データは、
前記不具合情報が示す修理完了時点から所定の期間が経過した時点までの第二の期間に取得された稼働データである、請求項5記載のショベルの管理装置。
【請求項7】
前記学習データに含まれる稼働データのうち、前記第一の期間より前に取得された第一の稼働データと、前記第二の期間の後に取得された第二の稼働データとを比較し、
前記比較の結果に応じて、前記第一の稼働データを前記学習データから除外するか否かを判定する、請求項6記載のショベルの管理装置。
【請求項8】
前記第一の稼働データと、前記第二の稼働データとが類似していると判定された場合に、前記第一の稼働データと前記第二の稼働データとを学習データとする、請求項7記載のショベルの管理装置。
【請求項9】
前記不具合情報は、
前記ショベルのメンテナンスが開始された日付を示す情報と、前記ショベルのメンテナンスが完了した日付を示す情報とを含む、請求項1又は3の何れか一項に記載のショベルの管理装置。
【請求項10】
前記異常の有無の判定の結果と、前記学習データとされた稼働データが取得された期間を示す情報と、を表示装置に表示させる、請求項1、3乃至9の何れか一項に記載のショベルの管理装置。
【請求項11】
前記ショベルの異常度に応じて異常の有無を判定する異常判定部を有し、
前記学習部は、
前記異常の有無の判定する処理を実行する実行日に基づき抽出された前記ショベルの稼働データの入力を受けて、前記ショベルの異常度を前記異常判定部に対して出力する、
請求項1乃至10の何れか一項に記載のショベルの管理装置。
【請求項12】
前記ショベルの管理装置は、
前記ショベルの支援装置から、前記支援装置において入力された、前記ショベルのメンテナンスが開始された開始日と、前記ショベルのメンテナンスが完了した完了日との通知を受け付ける、請求項1乃至11の何れか一項に記載のショベルの管理装置。
【請求項13】
前記ショベルの管理装置は、
前記支援装置において、前記ショベルのメンテナンスを開始した開始日を入力するための開始ボタンが操作されると、前記開始日の通知を前記支援装置から受け付け、
前記支援装置において、前記ショベルのメンテナンスが完了した完了日を入力するための完了ボタンが操作されると、前記完了日の通知を前記支援装置から受け付ける、請求項12記載のショベルの管理装置。
【請求項14】
管理装置と通信を行うショベルであって、
前記ショベルの異常の有無の判定を行う時期に応じた稼働データであって、前記ショベルの異常がない状態とされるときの稼働データを学習データとして、前記ショベルの稼働データと前記ショベルの異常度との関係を学習する学習部を有する前記管理装置に対し、前記ショベルの動作を示す稼働データと、前記ショベルのメンテナンスの開始日と完了日とを示す情報とを送信する通信装置と、
前記ショベルのメンテナンスの開始日を入力するための開始スイッチと、前記ショベルのメンテナンスの完了日を入力するための完了スイッチと、
前記ショベルの動作を制御するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、
前記開始スイッチの操作により、所定範囲内に接近した人を検知したときの記録を示す情報と、メンテナンスのための接近であることを示す情報とを対応付けて記憶装置に記憶する、ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルの管理装置、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、作業機械の正常動作時における動作波形を表す複数の参照データと、作業機械の運転変数の特徴量の時系列からなる検証データとを用いて、作業機械が異常か否かの判定を行う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-83731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、作業機械の動作データを学習データとした異常判定モデルを生成し、この異常判定モデルを用いて、作業機械の異常の有無を判定する場合がある。
【0005】
この場合、作業機械が正常に動作している正常時の動作データを学習データとすることが一般的であるが、正常時の動作データの中には、学習データとしては不適切な動作データが含まれる場合がある。
【0006】
そこで、上記事情に鑑み、適切な範囲の学習データを用いることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るショベルの管理装置は、ショベルの動作を示す稼働データのうち、前記ショベルの異常の有無の判定を行う時期に応じた稼働データであって、前記ショベルの異常がない状態とされるときの稼働データを学習データとして、前記ショベルの稼働データと前記ショベルの異常度との関係を学習する学習部と、前記ショベルの動作を示す稼働データと、前記ショベルの不具合に関する不具合情報と、を含む車両情報に基づいて、前記学習データから除外する前記稼働データの範囲を決定する範囲決定部と、を有し、前記範囲決定部は、前記範囲が除外された稼働データから、前記異常の有無の判定する処理を実行する時点を基準として、前記学習データの範囲を決定する
【0011】
本発明の実施形態に係るショベルは、管理装置と通信を行うショベルであって、管理装置と通信を行うショベルであって、前記ショベルのメンテナンスの開始日と、前記ショベルのメンテナンスの完了日とを入力するための入力装置と、前記ショベルの異常の有無の判定を行う時期に応じた稼働データを入力とし、異常が無いこと示す情報を出力とするデータセットを学習データとして、前記ショベルの稼働データと前記ショベルの異常度との関係を学習する学習部を有する前記管理装置に対し、前記ショベルの動作を示す稼働データと、前記入力装置から入力された前記開始日と前記完了日とを示す情報とを送信する通信装置と、を有する。
【0012】
本発明の実施形態に係るショベルは、管理装置と通信を行うショベルであって、前記ショベルのメンテナンスの開始日を入力するための開始スイッチと、前記ショベルのメンテナンスの完了日を入力するための完了スイッチと、を有する。
【発明の効果】
【0013】
適切な範囲の学習データを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ショベルの管理システムの一例を示す概要図である。
図2】ショベルの管理システムの一例を示す構成図である。
図3】管理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】マスタ情報記憶部の一例を示す図である。
図5】不具合情報記憶部の一例を示す図である。
図6】動作情報記憶部の一例を示す図である。
図7】車両情報記憶部の一例を示す図である。
図8】管理装置の機能を説明する図である。
図9】パラメータ保持部が保持するパラメータの一例を示す図である。
図10】管理装置の処理を説明するフローチャートである。
図11A】データ範囲決定部の処理を説明する第一の図である。
図11B】データ範囲決定部の処理を説明する第二の図である。
図12A】異常判定の結果の出力例を示す第一の図である。
図12B】異常判定の結果の出力例を示す第二の図である。
図13】他の実施形態の管理装置の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
以下に図面を参照して、実施形態について説明する。図1は、ショベルの管理システムの一例を示す概要図である。
【0016】
本実施形態のショベルの管理システムSYSは、ショベル100と、管理装置300と、ショベル100の支援装置400とを含む。ショベルの管理システムSYSにおいて、ショベル100と管理装置300と支援装置400とは、互いにネットワークを介して通信を行う。管理装置300はショベル100を管理する。支援装置400は、ショベル100の作業を支援する。以下の説明では、ショベルの管理システムSYSを、管理システムSYSと呼ぶ。
【0017】
本実施形態のショベル100は、作業機械の一例である。ショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回可能に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメント(作業装置)としてのブーム4、アーム5、及び、バケット6と、キャビン10を備える。
【0018】
下部走行体1は、例えば、左右一対のクローラを含み、それぞれのクローラが走行油圧モータ1A、1B(図2参照)で油圧駆動されることにより、自走する。
【0019】
上部旋回体3は、旋回油圧モータ2A(図2参照)で駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
【0020】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及び、バケット6は、それぞれ、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及び、バケットシリンダ9により油圧駆動される。
【0021】
キャビン10は、オペレータ(作業員)が搭乗する操縦室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
【0022】
ショベル100は、例えば、基地局を末端とする移動体通信網、上空の通信衛星を利用する衛星通信網、インターネット等を含む所定の通信ネットワークNWを通じて、管理装置300と相互に通信を行うことができる。
【0023】
また、本実施形態の管理装置300は、ショベル100から作業の実積を示す実績情報を取得する。
【0024】
実績情報とは、所定の種別の作業(例えば、掘削作業、積込み作業、仕上げ作業等の繰り返し作業)の作業パターンに関する実績情報(以下、「作業パターン実績情報」)と、作業時の環境条件に関する実績情報(以下、「環境条件実績情報」)とを含む。
【0025】
作業パターンとは、所定の種別の作業を行う際のショベル100のアイドリング中を含む一連の動作の型を示す。アイドリング中とは、ショベル100の非操作時である。例えば、作業パターンには、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及び、バケット6等の動作要素の作業時の動作軌跡等が含まれる。また、作業パターン実績情報は、具体的に、ショベル100が実際に所定の種別の作業を行った際の当該ショベル100の作業パターンの実績を表す各種センサの検出情報等である。また、環境条件には、ショベル100の周辺環境に関する条件等の外的環境条件の他、ショベル100の動作に影響を与えるショベル100の可変される仕様(例えば、アームの長さ、バケットの種類等)等の内的環境条件が含まれうる。
【0026】
ショベル100は、作業パターン実績情報及び環境条件実績情報を取得すると、作業パターン実績情報及び環境条件実績情報を含む各種情報を管理装置300に送信(アップロード)する。
【0027】
管理システムSYSにおいて、管理装置300は、ショベル100から受信した作業パターン実績情報及び環境条件実績情報を学習データとして、ショベル100の異常の有無を判定する異常判定モデルを作成する。
【0028】
より具体的には、管理装置300は、ショベル100が正常に動作しているときの作業パターン実績情報及び環境条件実績情報の中から、学習データに用いる作業パターン実績情報及び環境条件実績情報を特定する。以下の説明では、作業パターン実績情報及び環境条件実績情報を含む情報を、ショベル100の稼働データと呼ぶ場合がある。
【0029】
そして、本実施形態の管理装置300は、特定された稼働データを学習データとした学習により、異常判定モデルを生成し、ショベル100の異常の有無の判定を行う。
【0030】
尚、図1の例では、管理システムSYSに含まれるショベル100は1台としたが、これに限定されない。管理システムSYSに含まれるショベル100の台数は任意であって良く、管理装置300と通信が可能なショベル100は全て管理システムSYSに含まれてもよい。
【0031】
また、本実施形態の管理装置300は、ショベル100と地理的に離れた位置に設置される情報処理装置である。管理装置300は、例えば、ショベル100が作業する作業現場外に設けられる管理センタ等に設置され、一又は複数のサーバコンピュータ等を中心に構成されるサーバ装置である。この場合、サーバ装置は、管理システムSYSを運用する事業者或いは当該事業者に関連する関連事業者が運営する自社サーバであってもよいし、クラウドサーバであってもよい。
【0032】
本実施形態の支援装置400は、例えば、スマートフォンやタブレット型等の可搬型の端末装置であってよい。支援装置400は、例えば、ショベル100のメンテナンスの開始日と、メンテナンスの完了日等を含む情報が入力されると、入力された情報を管理装置300に送信する。
【0033】
次に、図2を参照して、本実施形態の管理システムSYSについて、さらに説明する。図2は、ショベルの管理システムの一例を示す構成図である。
【0034】
尚、図中において、機械的動力ラインは二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御ラインは細い実線でそれぞれ示される。
【0035】
本実施形態のショベル100の油圧アクチュエータを油圧駆動する油圧駆動系は、エンジン11と、メインポンプ14と、レギュレータ14aと、コントロールバルブ17を含む。また、ショベル100の油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1A,1B、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。
【0036】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、後述するエンジン制御装置(ECU:Engine Control Unit)74による制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。
【0037】
レギュレータ14aは、メインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、レギュレータ14aは、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(傾転角)を調節する。
【0038】
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ライン16を通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、上述の如く、コントローラ30による制御の下、レギュレータ14aにより斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出流量(吐出圧)が制御されうる。
【0039】
コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26に対する操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ライン16を介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、操作装置26の操作状態に応じて、油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1A,1B、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)に選択的に供給する。
【0040】
具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の制御弁を含む。例えば、コントロールバルブ17は、ブーム4(ブームシリンダ7)に対応する制御弁を含む。また、例えば、コントロールバルブ17は、アーム5(アームシリンダ8)に対応する制御弁を含む。
【0041】
また、例えば、コントロールバルブ17は、バケット6(バケットシリンダ9)に対応する制御弁を含む。また、例えば、コントロールバルブ17は、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)に対応する制御弁を含む。また、例えば、コントロールバルブ17には、下部走行体1の右側のクローラ及び左側のクローラのそれぞれに対応する右走行制御弁及び左走行制御弁が含まれる。
【0042】
本実施形態に係るショベル100の操作系は、パイロットポンプ15と、操作装置26と、操作バルブ31を含む。
【0043】
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットライン25を介して操作装置26及び操作バルブ31にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、エンジン11により駆動される。
【0044】
操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各種動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、オペレータがそれぞれの動作要素を駆動する油圧アクチュエータ(即ち、走行油圧モータ1A,1B、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)の操作を行うための操作入力手段である。操作装置26は、その二次側のパイロットラインがコントロールバルブ17にそれぞれ接続される。
【0045】
これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット圧が入力されうる。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じて、それぞれの油圧アクチュエータを駆動することができる。
【0046】
操作バルブ31は、コントローラ30からの制御指令(例えば、制御電流)に応じて、パイロットライン25の流路面積を調整する。これにより、操作バルブ31は、パイロットポンプ15から供給される一次側のパイロット圧を元圧として、二次側のパイロットラインに制御指令に対応するパイロット圧を出力することができる。
【0047】
操作バルブ31は、その二次側ポートが、コントロールバルブ17のそれぞれの油圧アクチュエータに対応する制御弁の左右のパイロットポートに接続され、コントローラ30からの制御指令に応じたパイロット圧を制御弁のパイロットポートに作用させる。これにより、コントローラ30は、オペレータにより操作装置26が操作されていない場合であっても、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、操作バルブ31を介して、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給させ、油圧アクチュエータを動作させることができる。
【0048】
尚、操作バルブ31に加えて、油圧アクチュエータ内に発生する過剰な油圧を作動油タンクにリリーフする電磁リリーフ弁が設けられてもよい。これにより、オペレータによる操作装置26に対する操作量が過剰な場合等において、積極的に、油圧アクチュエータの動作を抑制させることができる。例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9のボトム側油室及びロッド側油室のそれぞれの過剰な圧力を作動油タンクにリリーフする電磁リリーフ弁が設けられてよい。
【0049】
本実施形態に係るショベル100の制御系は、コントローラ30と、ECU74と、吐出圧センサ14bと、操作圧センサ15aと、表示装置40と、入力装置42と、撮像装置80と、状態検出装置S1と、通信機器T1を含む。
【0050】
コントローラ30は、ショベル100の駆動制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは、その組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置と、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置と、各種入出力用のインタフェース装置等を含むコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、例えば、補助記憶装置にインストールされる各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
【0051】
例えば、コントローラ30は、オペレータ等の所定操作により予め設定される作業モード等に基づき、目標回転数を設定し、ECU74に制御指令を出力することより、ECU74を介して、エンジン11を一定回転させる駆動制御を行う。
【0052】
また、例えば、コントローラ30は、必要に応じてレギュレータ14aに対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させることにより、いわゆる全馬力制御やネガコン制御を行う。
【0053】
また、例えば、コントローラ30は、ショベル100に関する各種情報を管理装置300にアップロードする機能(以下、「アップロード機能」)を有していてもよい。具体的には、コントローラ30は、ショベル100の所定の種別の作業時における作業パターン実績情報及び環境条件実績情報を、通信機器T1を通じて、管理装置300に送信(アップロード)してよい。
【0054】
コントローラ30は、例えば、補助記憶装置等にインストールされる一以上のプログラムをCPU上で実行することにより実現される、アップロード機能に関する機能部として、情報送信部301を含む。
【0055】
また、例えば、コントローラ30は、オペレータによる操作装置26を通じたショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能に関する制御を行う。また、コントローラ30は、オペレータによる操作装置26を通じたショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能に関する制御を行ってよい。
【0056】
コントローラ30は、例えば、補助記憶装置等にインストールされる一以上のプログラムをCPU上で実行することにより実現される、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能に関する機能部として、作業パターン取得部302と、マシンガイダンス部303を含む。
【0057】
尚、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。即ち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されてもよい。例えば、上述したマシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能は、専用のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。
【0058】
ECU74は、コントローラ30からの制御指令に応じて、エンジン11の各種アクチュエータ(例えば、燃料噴射装置等)を制御し、エンジン11を設定された目標回転数(設定回転数)で定回転させる(定回転制御)。このとき、ECU74は、エンジン回転数センサ11aにより検出されるエンジン11の回転数に基づき、エンジン11の定回転制御を行う。
【0059】
吐出圧センサ14bは、メインポンプ14の吐出圧を検出する。吐出圧センサ14bにより検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0060】
操作圧センサ15aは、上述の如く、操作装置26の二次側のパイロット圧、即ち、操作装置26におけるそれぞれの動作要素(油圧アクチュエータ)の操作状態に対応するパイロット圧を検出する。操作圧センサ15aによる操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に対応するパイロット圧の検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0061】
表示装置40は、コントローラ30と接続され、コントローラ30による制御下で、キャビン10内の着座したオペレータから視認し易い位置に設けられ、各種情報画像を表示する。表示装置40は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。
【0062】
入力装置42は、キャビン10内の着座したオペレータから手が届く範囲に設けられ、オペレータによる各種操作を受け付け、操作内容に対応する信号を出力する。例えば、入力装置42は、表示装置40と一体化される。
【0063】
また、本実施形態の入力装置42は、ショベル100のメンテナンスを開始する際に、操作されるスイッチ42aと、メンテナンスが完了した際に操作されるスイッチ42bとを含む。スイッチ42aは、メンテナンス開始スイッチの一例であり、ショベル100のメンテナンスを行う作業員等によって操作される。スイッチ42bは、メンテナンス完了スイッチの一例であり、ショベル100のメンテナンスを行った作業員等によって操作される。
【0064】
なお、本実施形態のスイッチ42aとスイッチ42bとは、例えば、支援装置400のディスプレイに表示されてもよい。その場合、支援装置400の利用者によって、スイッチ42aとスイッチ42bとが操作されてもよい。
【0065】
本実施形態のショベル100は、例えば、メンテナンス(修理)の開始時と、メンテナンスの終了時とに、スイッチ42aとスイッチ42bとを操作することで、例えば、メンテナンスが開始されたこと、メンテナンスが終了したこと等を、周囲の作業員等に通知してもよい。
【0066】
本実施形態では、スイッチ42aとスイッチ42bとを操作することにより、後述する図5図7におけるメンテナンスの開始日とメンテナンスの完了日が特定できる。なお、スイッチ42aとスイッチ42との操作により、日付の特定に加え、時刻も合わせて特定できるようにしてもよい。
【0067】
また、撮像装置80に撮像された画像から、アクチュエータが動作する前にショベル100から所定範囲内に人が存在すると判断された場合には、オペレータが操作レバーを操作しても、アクチュエータの動作を動作不能、若しくは、微速状態にしてもよい。具体的には、ショベル100から所定範囲内に人が存在すると判断された場合、ゲートロック弁(図示せず)をロック状態にすることでアクチュエータを動作不能にすることができる。電気式の操作レバーの場合には、コントローラ30から操作用制御弁への信号を無効にすることで、アクチュエータを動作不能にすることができる。
【0068】
他の方式の操作レバーを用いる場合も、コントローラ30からの制御指令に対応するパイロット圧を出力し、コントロールバルブ内の対応する制御弁のパイロットポートにそのパイロット圧を作用させる操作用制御弁を用いる場合には、同様である。アクチュエータの動作を微速にしたい場合には、コントローラ30から操作用制御弁への信号を小さくすることで、アクチュエータを微速状態にすることができる。
【0069】
このように、検出される物体が所定範囲内に存在すると判断されると、操作装置が操作されてもアクチュエータは駆動されない、若しくは、操作装置への入力よりも小さい出力で微速駆動を行う。
【0070】
更に、オペレータによる操作レバーの操作中に、ショベル100から所定範囲内に人が存在すると判断された場合には、オペレータの操作に係わらずアクチュエータの動作を停止、若しくは、減速させてもよい。具体的には、ショベル100から所定範囲内に人が存在すると判断された場合、ゲートロック弁をロック状態にすることでアクチュエータを停止させる。
【0071】
コントローラ30からの制御指令に対応するパイロット圧を出力し、コントロールバルブ内の対応する制御弁のパイロットポートにそのパイロット圧を作用させる操作用制御弁を用いる場合には、コントローラ30から操作用制御弁への信号を無効、若しくは減速指令を出力することで、アクチュエータを動作不能にすることができる。また、検出された物体がトラックの場合には、停止制御は不要である。
【0072】
検出されたトラックを回避するようにアクチュエータは制御される。このように、検出された物体の種類を容易に認識に基づいて、アクチュエータは制御される。
【0073】
また、コントローラ30は、ショベルから所定範囲内に人が存在すると判断したときの場所、時間、動作内容(走行、旋回等)を記憶する。ここで、コントローラ30がON状態の際に、作業者がメンテナンスを行うためにショベルへ接近するとコントローラ30は人が存在すると判断する。しかしながら、この時の接近は、正常な作業に基づくメンテナンスを行うための接近である。
【0074】
このため、作業者がスイッチ42aを操作することにより、コントローラ30は操作後の作業者の接近がメンテナンスを行うための接近であると判断し、人検知が判断された旨の記録(場所、日時、動作内容等)とメンテナンス時の接近である旨の記録とを対応付けて記憶することができる。言い換えれば、コントローラ30は、コントローラ30がON状態の際に、スイッチ42aの操作を受け付けると、所定範囲内への人の接近を、メンテナンスのための接近と判定する。そして、コントローラ30は、所定範囲内に接近した人を検知した記録を示す情報と、メンテナンスのための人の接近であることを示す情報と、を対応付けてメモリ装置等に記憶する。所定範囲内に接近した人を検知した記録を示す情報とは、人の接近が検知された場所と日時等を含む。
【0075】
ショベル100のコントローラ30は、人検知が判断された旨の記録(場所、日時、動作内容等)とメンテナンス時の接近である旨の記録とを対応付けられた状態で管理装置300へ送信させる。その後、メンテナンス終了時に作業者がスイッチ42bを操作すると、コントローラ30はメンテナンスが終了したと判断し、人検知が判断された旨の記録とメンテナンス時の接近である旨の記録との対応付けも終了する。これにより、管理装置300において人検知が判断された旨の記録(場所、日時等)があっても、人検知と判断された要因がメンテナンスのための接近であることと把握することができる。
【0076】
また、入力装置42は、表示装置40と別に設けられてもよい。入力装置42は、表示装置40のディスプレイに実装されるタッチパネル、操作装置26に含まれるレバーの先端に設けられるノブスイッチ、表示装置40の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグル等を含む。入力装置42に対する操作内容に対応する信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0077】
撮像装置80は、ショベル100の周辺を撮像する。撮像装置80は、ショベル100の前方を撮像するカメラ80F、ショベル100の左方を撮像するカメラ80L、ショベル100の右方を撮像するカメラ80R、及び、ショベル100の後方を撮像するカメラ80Bを含む。
【0078】
カメラ80Fは、例えば、キャビン10の天井、即ち、キャビン10の内部に取り付けられている。また、カメラ80Fは、キャビン10の屋根、ブーム4の側面等、キャビン10の外部に取り付けられていてもよい。カメラ80Lは、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、カメラ80Rは、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、カメラ80Bは、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
【0079】
撮像装置80(カメラ80F,80B,80L,80R)は、それぞれ、例えば、非常に広い画角を有する単眼の広角カメラである。また、撮像装置80は、ステレオカメラや距離画像カメラ等であってもよい。撮像装置80によるショベル100の周辺の撮像画像(以下、「周辺画像」)は、コントローラ30に取り込まれる。
【0080】
状態検出装置S1は、ショベル100の各種状態に関する検出情報を出力する。状態検出装置S1から出力される検出情報は、コントローラ30に取り込まれる。
【0081】
例えば、状態検出装置S1は、アタッチメントの姿勢状態や動作状態を検出する。具体的には、状態検出装置S1は、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の俯仰角度(以下、それぞれ、「ブーム角度」、「アーム角度」、「バケット角度」)を検出してよい。
【0082】
つまり、状態検出装置S1は、ブーム角度、アーム角度、及びバケット角度のそれぞれを検出するブーム角度センサ、アーム角度センサ、及びバケット角度センサを含んでよい。
【0083】
また、状態検出装置S1は、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の加速度、角加速度等を検出してよい。この場合、状態検出装置S1は、例えば、ブーム4、アーム5、及び、バケット6のそれぞれに取付けられる、ロータリエンコーダ、加速度センサ、角加速度センサ、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)等を含みうる。また、状態検出装置S1は、ブーム4、アーム5、及び、バケット6のそれぞれを駆動するブームシリンダ7、アームシリンダ8、及び、バケットシリンダ9のシリンダ位置、速度、加速度等を検出するシリンダセンサを含みうる。
【0084】
また、例えば、状態検出装置S1は、機体、つまり、下部走行体1及び上部旋回体3の姿勢状態を検出する。具体的には、状態検出装置S1は、水平面に対する機体の傾斜状態を検出してよい。この場合、状態検出装置S1は、例えば、上部旋回体3に取り付けられ、上部旋回体3の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度(以下、「前後傾斜角」及び「左右傾斜角」)を検出する傾斜センサを含みうる。
【0085】
また、例えば、状態検出装置S1は、上部旋回体3の旋回状態を検出する。具体的には、状態検出装置S1は、上部旋回体3の旋回角速度や旋回角度を検出する。この場合、状態検出装置S1は、例えば、上部旋回体3に取り付けられるジャイロセンサ、レゾルバ、ロータリエンコーダ等を含みうる。つまり、状態検出装置S1は、上部旋回体3の旋回角度等を検出する旋回角度センサを含んでよい。
【0086】
また、例えば、状態検出装置S1は、アタッチメントを通じてショベル100に作用する力の作用状態を検出する。具体的には、状態検出装置S1は、油圧アクチュエータの作動圧(シリンダ圧)を検出してよい。この場合、状態検出装置S1は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9のそれぞれのロッド側油室及びボトム側油室の圧力を検出する圧力センサを含みうる。
【0087】
また、例えば、状態検出装置S1は、コントロールバルブ17内の制御弁のスプールの変位を検出するセンサを含んでよい。具体的には、状態検出装置S1は、ブームスプールの変位を検出するブームスプール変位センサを含んでよい。また、状態検出装置S1は、アームスプールの変位を検出するアームスプール変位センサを含んでよい。
【0088】
また、状態検出装置S1は、バケットスプールの変位を検出するバケットスプール変位センサを含んでよい。また、状態検出装置S1は、旋回スプールの変位を検出する旋回スプール変位センサを含んでよい。また、状態検出装置S1は、右走行制御弁及び左走行制御弁のそれぞれを構成する右走行スプール及び左走行スプールの変位を検出する右走行スプール変位センサ及び左走行スプール変位センサを含んでよい。
【0089】
また、例えば、状態検出装置S1は、ショベル100の位置や上部旋回体3の向き等を検出する。この場合、状態検出装置S1は、例えば、上部旋回体3に取り付けられるGNSS(Global Navigation Satellite System)コンパス、GNSSセンサ、方位センサ等を含みうる。
【0090】
通信機器T1は、通信ネットワークNWを通じて外部機器と通信を行う。通信機器T1は、例えば、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する移動体通信モジュールや、衛星通信網に接続するための衛星通信モジュール等である。
【0091】
情報送信部301は、ショベル100の所定の種別の作業時における作業パターン実績情報及び環境条件実績情報を、通信機器T1を通じて、管理装置300に送信する。
【0092】
情報送信部301により送信される作業パターン実績情報には、例えば、状態検出装置S1から入力される各種検出情報が含まれる。
【0093】
また、情報送信部301により送信される環境条件実績情報には、例えば、撮像装置80から入力されるショベル100の周辺画像が含まれる。また、情報送信部301により送信される環境条件実績情報には、ショベル100の内的環境条件、例えば、大容量バケット仕様、ロングアーム仕様、クイックカップリング仕様等の可変される仕様に関する情報が含まれてもよい。
【0094】
情報送信部301は、例えば、予め規定される対象の種別の作業が行われているか否かを逐次判定し、対象の種別の作業が行われていると判定すると、当該作業が行われている期間の作業パターン実績情報(つまり、状態検出装置S1から入力される各種検出情報)及び環境条件情報(つまり、撮像装置80から入力されるショベル100の周辺画像)を紐付けて、内部メモリ等に記録する。
【0095】
このとき、併せて、対象の種別の作業の開始及び終了に関する日時情報、並びに、当該作業時のショベル100の位置情報が、作業パターン実績情報及び環境条件実績情報のセットに更に紐付けられる態様で、内部メモリに保存されてもよい。このとき、日時情報は、例えば、コントローラ30内部の所定の計時手段(例えば、RTC(Real Time Clock))から取得されうる。そして、情報送信部301は、ショベル100のキーオフ時(停止時)等の所定のタイミングにおいて、記録された作業パターン実績情報及び環境条件実績情報のセットを、通信機器T1を通じて、管理装置300に送信する。また、情報送信部301は、対象の種別の作業が行われるたびに、その終了後、記録された作業パターン実績情報及び環境条件実績情報のセットを、通信機器T1を通じて、管理装置300に送信してもよい。
【0096】
尚、環境条件実績情報には、撮像装置80に代えて、或いは、加えて、ショベル100に搭載される他のセンサにより検出される検出情報が含まれてよい。例えば、ショベル100には、ミリ波レーダ、LIDAR(Light Detecting and Ranging)等の他のセンサが搭載され、環境条件実績情報には、これらの距離センサの検出情報が含まれる態様であってもよい。以下、後述する現環境条件情報についても同様である。
【0097】
また、環境条件実績情報には、天候情報が含まれてもよい。天候情報は、例えば、状態検出装置S1に含まれうる雨滴感知センサ、照度センサ等の検出情報が含まれうる。また、情報送信部301は、作業パターン実績情報だけを管理装置300に送信してもよい。
【0098】
また、情報送信部301は、状態検出装置S1の検出情報や撮像装置80によるショベル100の周辺画像を、通信機器T1を通じて、逐次、管理装置300にアップロードしてもよい。この場合、管理装置300は、ショベル100からアップロードされる情報の中から対象の種別の作業が行われたときの情報を抽出し、作業パターン実績情報及び環境情報を生成してよい。
【0099】
作業パターン取得部302は、所定の種別の作業を行う場合に、所定の目標指標に関する現在の環境条件に最適の作業パターン(最適作業パターン)を管理装置300から取得する。例えば、作業パターン取得部302は、オペレータによる入力装置42に対する所定操作(以下、「取得要求操作」)に応じて、ショベル100の現在の環境条件に関する情報(以下、「現環境条件情報」)を含む、作業パターンの取得を要求する信号(取得要求信号)を、通信機器T1を通じて、管理装置300に送信する。
【0100】
これにより、管理装置300は、ショベル100の現在の環境条件に合わせた最適な作業パターンをショベル100に提供できる。現環境条件情報には、例えば、撮像装置80によるショベル100の最新の周辺画像が含まれる。
【0101】
また、現環境条件情報には、ショベル100の内的環境条件、例えば、大容量バケット仕様、ロングアーム仕様、クイックカップリング仕様等の可変される仕様に関する情報が含まれてもよい。また、現環境条件情報には、状態検出装置S1に含まれうる雨滴感知センサや照度センサ等の検出情報、つまり、天候情報が含まれてもよい。そして、作業パターン取得部302は、取得要求信号に応じて管理装置300から送信され、通信機器T1により受信される作業パターンに関する情報を取得する。
【0102】
マシンガイダンス部303は、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能に関する制御を行う。つまり、マシンガイダンス部303は、オペレータによる操作装置26を通じた各種動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、並びに、ブーム4、アーム5、及びバケット6を含むアタッチメント)の操作を支援する。
【0103】
例えば、マシンガイダンス部303は、オペレータにより操作装置26を通じてアーム5の操作が行われている場合に、予め規定される目標設計面(以下、単に「設計面」)とバケット6の先端部(例えば、爪先や背面)とが一致するように、ブーム4及びバケット6の少なくとも一つを自動的に動作させてよい。
【0104】
また、マシンガイダンス部303は、併せて、アーム5を操作する操作装置26の操作状態に依らず、アーム5を自動的に動作させてもよい。つまり、マシンガイダンス部303は、オペレータによる操作装置26の操作をトリガにして、予め規定された動作をアタッチメントに行わせてよい。
【0105】
より具体的には、マシンガイダンス部303は、状態検出装置S1、撮像装置80、通信機器T1、及び入力装置42等から各種情報を取得する。また、マシンガイダンス部303は、例えば、取得した情報に基づいてバケット6と設計面との間の距離を算出する。そして、マシンガイダンス部303は、算出したバケット6と設計面との距離等に応じて、操作バルブ31を適宜制御し、油圧アクチュエータに対応する制御弁に作用するパイロット圧を個別に且つ自動的に調整することにより、それぞれの油圧アクチュエータを自動的に動作させることができる。
【0106】
操作バルブ31には、例えば、ブーム4(ブームシリンダ7)に対応するブーム比例弁が含まれる。また、操作バルブ31には、例えば、アーム5(アームシリンダ8)に対応するアーム比例弁が含まれる。また、操作バルブ31には、例えば、バケット6(バケットシリンダ9)に対応するバケット比例弁が含まれる。また、操作バルブ31には、例えば、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)に対応する旋回比例弁が含まれる。また、操作バルブ31には、例えば、下部走行体1の右側のクローラ及び左側のクローラのそれぞれに対応する右走行比例弁及び左走行比例弁が含まれる。
【0107】
マシンガイダンス部303は、例えば、掘削作業を支援するために、操作装置26に対するアーム5の開閉操作に応じて、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の少なくとも一つを自動的に伸縮させてよい。
【0108】
掘削作業は、設計面に沿ってバケット6の爪先で地面を掘削する作業である。マシンガイダンス部303は、例えば、オペレータが操作装置26に対して手動でアーム5の閉じ方向の操作(以下、「アーム閉じ操作」)を行っている場合に、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9のうちの少なくとも一つを自動的に伸縮させる。
【0109】
また、マシンガイダンス部303は、例えば、法面や水平面の仕上げ作業を支援するためにブームシリンダ7、アームシリンダ8、及び、バケットシリンダ9の少なくとも一つを自動的に伸縮させてもよい。仕上げ作業は、例えば、バケット6の背面を地面に押さえ付けながら設計面に沿ってバケット6を手前に引く作業を含む。
【0110】
マシンガイダンス部303は、例えば、オペレータが操作装置26に対して手動でアーム閉じ操作を行っている場合に、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも一つを自動的に伸縮させる。これにより、所定の押し付け力でバケット6の背面を完成前の斜面(法面)或いは水平面に押し付けながら、完成後の法面或いは水平面である設計面に沿ってバケット6を移動させることができる。
【0111】
また、マシンガイダンス部303は、上部旋回体3を設計面に正対させるために旋回油圧モータ2Aを自動的に回転させてもよい。この場合、マシンガイダンス部303は、入力装置42に含まれる所定のスイッチが操作されることにより、上部旋回体3を設計面に正対させてよい。また、マシンガイダンス部303は、所定のスイッチが操作されるだけで、上部旋回体3を設計面に正対させ且つマシンコントロール機能を開始させてもよい。
【0112】
また、例えば、マシンガイダンス部303は、所定の種別の作業(例えば、掘削作業、積込み作業、仕上げ作業等)が行われている場合に、オペレータによる操作装置26に対する操作に応じて、アタッチメント、上部旋回体3、及び、下部走行体1の少なくとも一部の動作を、作業パターン取得部302により取得された作業パターン(最適作業パターン)に合わせるように制御する。
【0113】
これにより、オペレータは、ショベル100の操縦に関する習熟度に依らず、ショベル100の動作を、所定の目標指標、例えば、作業の速さの評価が相対的に高くなるように管理装置300から出力される、現在のショベル100の環境条件に最適な作業パターンに合わせることができる。
【0114】
また、マシンガイダンス部303は、最適作業パターンに基づき、ショベル100の動作の制御を行いながら、オペレータに対して、当該最適作業パターンに対応するショベル100の動作を表示装置40に表示させてもよい。例えば、マシンガイダンス部303は、最適作業パターンに基づき、ショベル100の動作の制御を行っている場合、最適作業パターンに対応するシミュレーション結果の動画を表示装置40に表示させる。これにより、オペレータは、実際の作業パターンの内容を表示装置40の動画で確認しながら、作業を進めることができる。
【0115】
本実施形態の管理装置300は、マスタ情報記憶部310、不具合情報記憶部320、動作情報記憶部330、車両情報記憶部340、情報収集部350、データ範囲決定部360、学習部370、異常判定部380を有する。
【0116】
マスタ情報記憶部310は、ショベル100を特定するためのマスタ情報が格納される。不具合情報記憶部320は、ショベル100の不具合に関する不具合情報が格納される。動作情報記憶部330は、ショベル100から送信される、ショベル100の動作に関する動作情報が格納される。動作情報は、ショベル100の稼働データを含む。車両情報記憶部340は、ショベル100毎に、マスタ情報、不具合情報、動作情報を対応付けた車両情報が格納される。上述した各記憶部の詳細は後述する。
【0117】
本実施形態の情報収集部350は、マスタ情報記憶部310、不具合情報記憶部320、動作情報記憶部330に格納される情報を収集して、各記憶部に格納する。また、情報収集部350は、収集した各情報を対応付けて車両情報とし、車両情報記憶部340へ格納する。具体的には、情報収集部350は、ショベル100を販売している企業等によって管理されるシステムや、ショベル100のメンテナンスを行う企業等によって管理されるシステムと通信を行い、マスタ情報や不具合情報を収集する。また、情報収集部350は、ショベル100から動作情報を収集する。そして、情報収集部350は、マスタ情報、不具合情報、動作情報を対応付けた車両情報を車両情報記憶部340へ格納する。
【0118】
データ範囲決定部360は、車両情報記憶部340に格納された車両情報と、ショベル100の異常の有無の判定を行う時期と、に基づき、動作情報記憶部330に格納された動作情報に含まれる稼働データにおいて、学習部370に入力する学習データとする範囲を決定する。
【0119】
学習部370は、学習データに基づき、ショベル100の稼働データと、ショベル100における異常の有無との関係を学習する。具体的には、学習部370は、異常がない状態とされる時の稼働データ(学習データ)に基づき、入力された稼働データと、ショベル100の異常の有無との関連付けた異常判定モデルを生成する。
【0120】
異常判定部380は、異常判定モデルの出力に基づき、ショベル100の異常の有無を判定し、判定結果を出力する。
【0121】
以下に、本実施形態の管理装置300について、さらに説明する。図3は、管理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0122】
本実施形態の管理装置300は、それぞれバスBで相互に接続されている入力装置311、出力装置312、ドライブ装置313、補助記憶装置314、メモリ装置315、演算処理装置316及びインタフェース装置317を含むコンピュータである。
【0123】
入力装置311は、各種の情報の入力を行うための装置であり、例えばキーボードやポインティングデバイス等により実現される。出力装置312は、各種の情報の出力を行うためものであり、例えばディスプレイ等により実現される。インタフェース装置317は、LANカード等を含み、ネットワークに接続する為に用いられる。
【0124】
管理装置300の有する情報収集部350、データ範囲決定部360、学習部370、異常判定部380を実現するプログラムは、管理装置300を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。プログラムは、例えば、記憶媒体318の配布やネットワークからのダウンロード等によって提供される。プログラムを記録した記憶媒体318は、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記憶媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記憶媒体を用いることができる。
【0125】
また、プログラムは、このプログラムを記録した記憶媒体318がドライブ装置313にセットされると、記憶媒体318からドライブ装置313を介して補助記憶装置314にインストールされる。ネットワークからダウンロードされたプログラムとプログラムは、インタフェース装置317を介して補助記憶装置314にインストールされる。
【0126】
補助記憶装置314は、管理装置300の有する各記憶部等を実現するものであり、管理装置300にインストールされたプログラムを格納すると共に、管理装置300による各種の必要なファイル、データ等を格納する。メモリ装置315は、管理装置300の起動時に補助記憶装置314からプログラムを読み出して格納する。そして、演算処理装置316はメモリ装置315に格納されたプログラムに従って、後述するような各種処理を実現している。
【0127】
次に、図4乃至図7を参照して、管理装置300の有する各記憶部について説明する。図4は、マスタ情報記憶部の一例を示す図である。
【0128】
本実施形態のマスタ情報記憶部310に格納されるマスタ情報は、情報の項目として、機体識別番号、納入日、納入場所を含み、項目「機体識別番号」と、その他の項目とが対応付けられている。
【0129】
本実施形態のマスタ情報は、項目「機体識別番号」、「納入日」、「納入場所」の値を含む情報である。本実施形態のマスタ情報は、例えば、ショベル100の販売会社等によって管理される情報であり、情報収集部350によって収集され、マスタ情報記憶部310に格納される。
【0130】
項目「機体識別番号」の値は、ショベル100を特定するための識別情報である。項目「納入日」の値は、ショベル100を購入又はレンタルした企業等に引き渡された日を示す。また、項目「納入日」の値は、ショベル100を用いた作業が行われる作業現場に搬入された日であってもよい。
【0131】
項目「納入場所」の値は、ショベル100を用いた作業が行われる作業現場の所在地を示す。また、項目「納入場所」の値は、ショベル100を購入又はレンタルした企業の所在地を示してもよい。尚、マスタ情報記憶部310は、ショベル100による作業が行われる作業現場の位置を示す緯度・経度等の位置情報が含まれてもよい。
【0132】
図5は、不具合情報記憶部の一例を示す図である。不具合情報記憶部320に格納される不具合情報は、情報の項目として、機体識別番号、不具合発生日、修理完了日を有し、項目「機体識別番号」と、その他の項目とが対応付けられている。
【0133】
本実施形態の不具合情報は、項目「機体識別番号」、「不具合発生日」、「修理開始日」、「修理完了日」の値を含む情報である。本実施形態の不具合情報は、例えば、ショベル100のメンテナンス等の管理を行う会社等によって管理される情報であり、情報収集部350によって収集され、不具合情報記憶部320に格納される。
【0134】
項目「不具合発生日」の値は、ショベル100において動作の不具合が発生した日付を示す。より具体的には、項目「不具合発生日」の値は、例えば、ショベル100の操作者が不具合の発生に気づき、メンテナンス会社等に不具合の発生を通知した日を示してもよい。また、項目「不具合発生日」の値は、例えば、ショベル100のメンテナンスを行う作業員等によって、ショベル100の不具合が確認された日を示してもよい。
【0135】
項目「修理開始日」の値は、ショベル100の修理(メンテナンス)を開始した日を示す。具体的には、項目「修理開始日」の値は、ショベル100のメンテナンスを行う作業員等によって、スイッチ42aが操作された日付けを示す。
【0136】
項目「修理完了日」の値は、ショベル100の修理(メンテナンス)が完了した日を示す。具体的には、項目「修理完了日」の値は、ショベル100のメンテナンスを行った作業員等によって、スイッチ42bが操作された日付けを示す。
【0137】
本実施形態の管理装置300は、このように、メンテナンスの開始日と完了日とを、不具合発生日と対応付けて管理することで、不具合が発生してからメンテナンスが開始されるまでの期間や、メンテナンスにかかった日数等を、管理システムSYSの管理者等に把握させることができる。
【0138】
図6は、動作情報記憶部の一例を示す図である。本実施形態の動作情報記憶部330に格納された動作情報は、情報の項目として、機体識別番号、取得日時、稼働データ、補修作業の有無を含み、項目「機体識別番号」と、その他の項目とが対応付けられている。
【0139】
本実施形態の動作情報は、項目「機体識別番号」、「取得日時」、「稼働データ」、「作業の種類」の値を含む情報である。本実施形態の動作情報は、ショベル100の情報送信部301によって、通信機器T1を介して送信される情報であり、情報収集部350によって受信されて、動作情報記憶部330に格納される。
【0140】
項目「取得日時」の値は、稼働データを取得した日時を示す。項目「稼働データ」の値は、ショベル100から送信される作業パターン実績情報及び環境条件実績情報を含む情報である。言い換えれば、項目「稼働データ」の値は、状態検出装置S1から出力される各種の検出情報を含む情報であり、ショベル100の動作を示す情報である。
【0141】
項目「作業の種類」の値は、ショベル100が行っている作業の種類を示す。具体的には、項目「作業の種類」の値は、ショベル100が行っている作業が、通常の作業であるか、又は、補修作業であるかを示す。ショベル100の補修作業とは、例えば、ショベル100の修理等の過程で行われる作業(動作)である。
【0142】
図7は、車両情報記憶部の一例を示す図である。
【0143】
本実施形態の情報収集部350は、マスタ情報記憶部310、不具合情報記憶部320、動作情報記憶部330のそれぞれから、機体識別番号毎に、マスタ情報、不具合情報、動作情報を収集し、これらの情報を対応付けた車両情報を車両情報記憶部340へ格納する。したがって、車両情報は、情報収集部350によって生成される情報と言える。
【0144】
本実施形態の車両情報は、情報の項目として、機体識別番号、納入日、納入場所、不具合発生日、修理完了日、取得日時、稼働データ、作業の種類を含み、項目「機体識別番号」と、その他の項目とが対応付けられている。
【0145】
本実施形態の車両情報は、項目「機体識別番号」、「納入日」、「納入場所」、「不具合発生日」、「修理開始日」、「修理完了日」、「取得日時」、「稼働データ」、「作業の種類」の値を含む情報である。
【0146】
図7の例では、機体識別番号「XL-0029」で特定されるショベル100は、2018年7月31日に○○件××市に納入され、2019年8月10日に不具合が発生し、2019年8月11日に修理を開始し、2019年8月15日に修理が完了したことがわかる。また、機体識別番号「XL-0029」で特定されるショベル100は、2019年8月20日に、通常作業を行っている最中の稼働データが取得されたことがわかる。
【0147】
次に、図8を参照して、本実施形態の管理装置300の機能について説明する。図8は、管理装置の機能を説明する図である。
【0148】
本実施形態の管理装置300は、記憶部305、情報収集部350、データ範囲決定部360、学習部370、異常判定部380を有する。
【0149】
記憶部305は、例えば、補助記憶装置314やメモリ装置315によって実現される。また、情報収集部350、データ範囲決定部360、学習部370、異常判定部380は、演算処理装置316がメモリ装置315等に格納されたプログラムを読み出して実行することで実現される。
【0150】
本実施形態の情報収集部350は、マスタ情報、不具合情報、動作情報を収集し、マスタ情報記憶部310、不具合情報記憶部320、動作情報記憶部330のそれぞれに格納する。また、情報収集部350は、ショベル100の機体識別番号毎に、マスタ情報、不具合情報、動作情報を対応付けた車両情報を生成し、車両情報記憶部340へ格納する。
【0151】
データ範囲決定部360は、稼働データにおいて、学習部370による学習に使用する学習データとする範囲を決定する。以下に、データ範囲決定部360について説明する。
【0152】
データ範囲決定部360は、入力受付部361、パラメータ保持部362、基準フラグ付与部363、除外範囲決定部364、採用範囲決定部365、学習データ出力部366を有する。
【0153】
入力受付部361は、管理装置300に対する各種の入力を受け付ける。具体的には、入力受付部361は、後述する異常判定を行う時期を示す情報の入力を受け付ける。異常判定を行う時期を示す情報とは、異常判定部380による異常判定処理を実行する日を示す。以下の説明では、異常判定処理を実行する日を、実行日と呼ぶ場合がある。
【0154】
パラメータ保持部362は、除外範囲決定部364、採用範囲決定部365によって参照されるパラメータを保持する。パラメータ保持部362によって保持されるパラメータは、管理システムSYSの管理者等によって任意に設定されてもよい。パラメータ保持部362に保持されるパラメータの詳細は後述する。
【0155】
基準フラグ付与部363は、車両情報を参照して、稼働データにおいて、学習データになり得ない第一の除外範囲を決定し、稼働データに対して、第一の除外範囲に基づくフラグを付与する。
【0156】
除外範囲決定部364は、パラメータ保持部362に格納されたパラメータと、第一の除外範囲とに基づき、第二の除外範囲を決定する。
【0157】
つまり、本実施形態の基準フラグ付与部363と除外範囲決定部364は、車両情報に含まれる動作情報において、学習データから除外される範囲を決定する範囲決定部の一例である。
【0158】
採用範囲決定部365は、パラメータ保持部362に格納されたパラメータと、第二の除外範囲とを参照し、入力受付部361が受け付けた異常判定を行う時期を基準にして、学習データに採用する稼働データの範囲を決定する。
【0159】
以下の説明では、採用範囲決定部365によって、決定された範囲の稼働データを学習データと呼ぶ場合がある。言い換えれば、学習データは、採用範囲決定部365によって決定された期間に取得された稼働データである。
【0160】
学習データ出力部366は、学習データを学習部370へ出力する。
【0161】
学習部370は、学習データを入力として、学習を行い、異常判定モデル375を生成する。つまり、学習部370は、ショベル100の異常の有無の判定を行う時期に応じた稼働データを入力とし、異常が無いことを示す情報を出力とするデータセットを学習データとして、異常判定モデル375を生成する。言い換えれば、学習部370は、正常時の稼働データと、異常が無いことを示す情報を出力とするデータセットを用いて、入力された稼働データと、ショベル100の異常度とを関連付けた異常判定モデルを生成する。
【0162】
そして、学習部370は、異常判定処理の対象とされる稼働データが入力されると、この稼働データを異常判定モデル375に対する入力として、ショベル100の異常の有無を示す指標値を得る。以下の説明では、異常判定モデル375の入力とされる稼働データを、判定用データと呼ぶ場合がある。
【0163】
本実施形態の学習部370は、例えば、学習の方法として、機械学習を用いてもよい。機械学習の手法としては、ディープラーニング、オートエンコーダ、SVM(support vector machine)等が挙げられる。
【0164】
異常判定部380は、異常判定を行う時期を示す情報と、パラメータとを参照して、異常判定に用いる稼働データの範囲を特定し、特定した稼働データを判定用データとして、学習部370へ入力させる。
【0165】
また、異常判定部380は、学習部370から出力される指標値に基づき、ショベル100に異常の有無を判定する。具体的には、例えば、異常判定部380は、学習部370から出力される指標値が所定の閾値より大きい場合に、異常が有ると判定してもよい。
【0166】
本実施形態では、異常判定部380による判定は、例えば、暖機モード中や自動再生モード中や手動再生モード中、更には、エンジン11の過給器の冷却運転時(ターボ冷却モード中)等に実行されてもよい。
【0167】
尚、本実施形態では、学習データに採用する稼働データの範囲とは、時間軸上の範囲を示しても良く、判定用データに用いる範囲とは、稼働データの数を示してもよい。
【0168】
具体的には、学習データは、採用範囲決定部365によって決定された期間において取得された稼働データ群であってもよい。また、判定用データは、異常判定を行う日以前に取得された所定数の稼働データを含む稼働データ群であってもよい。
【0169】
次に、図9を参照して、パラメータ保持部362が保持するパラメータについて説明する。図9は、パラメータ保持部が保持するパラメータの一例を示す図である。
【0170】
本実施形態のパラメータ保持部362は、例えば、パラメータの名称と値とを対応付けて保持していてもよい。
【0171】
図9の例では、パラメータ保持部362は、不具合出現期間としての○○日、修理後予備期間としての××日、バッファ期間としての○×日を保持している。
【0172】
不具合出現期間とは、不具合発生日よりも前にショベル100の動作に不具合が出現していた可能性を考慮して設定されたパラメータである。具体的には、例えば、ショベル100に不具合が出現してから、操作者がこの不具合に気付き、メンテナンスを行う会社等に不具合の発生を通知するまでに、数日かかる場合等がある。このような場合には、不具合発生日よりも前から、ショベル100の動作には不具合が生じていることになり、この間の稼働データは学習データとしては不適切である。
【0173】
修理後予備期間は、修理が完了した直後のショベル100の動作と通常の動作とが異なる可能性や、実際の修理完了日とシステムに入力された修理完了日とが一致しない可能性等を考慮して設定されたパラメータである。具体的には、例えば、一度修理が完了したものとして、修理完了日が入力された後に、追加で修理すべき箇所が見つかる場合等がある。この場合には、入力された修理完了日の直後のショベル100の動作は、通常の動作と異なっている可能性があり、この間の稼働データは学習データとしては不適切である。
【0174】
バッファ期間は、判定用データと、学習データとを切り分けることを考慮して設定されたパラメータである。例えば、判定用データとなる稼働データが取得される時期と、学習データに採用された稼働データが取得される時期とが近い場合、学習データと判定用データとが、類似したデータとなる可能性がある。
【0175】
その場合、異常判定モデル375は、判定用データと類似した学習データによって生成されるため、仮にショベル100の動作に異常があった場合でも正常の状態とされる可能性があり、異常を検知する精度の向上が阻害される場合がある。
【0176】
本実施形態のパラメータ保持部362には、上述したことを考慮して設定されたパラメータが保持される。
【0177】
次に、図10を参照して、本実施形態の管理装置300の処理について説明する。図10は、管理装置の処理を説明するフローチャートである。
【0178】
本実施形態の管理装置300は、データ範囲決定部360の入力受付部361によって、実行日及び機体識別情報の入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS1001)。尚、本実施形態では、異常判定処理の対象となるショベル100の機体識別番号のみが入力されてもよい。
【0179】
ステップS1001において、実行日及び機体識別情報の入力を受け付けていない場合、管理装置300は、実行日の入力を受け付けるまで待機する。
【0180】
ステップS100において、実行日及び機体識別情報の入力を受け付けた場合、データ範囲決定部360は、車両情報記憶部340を機体識別番号で検索する(ステップS1002)。
【0181】
続いて、データ範囲決定部360は、基準フラグ付与部363により、ステップS1002の検索の結果として取得された車両情報を参照して、車両情報に含まれる稼働データにおいて、学習データになり得ない第一の除外範囲を決定する(ステップS1003)。尚、基準フラグ付与部363は、第一の除外範囲に基づくフラグを稼働データに対して付与する。
【0182】
続いて、データ範囲決定部360は、除外範囲決定部364により、パラメータ保持部362に格納された不具合出現期間と、修理後予備期間と、第一の除外範囲と基づき、第二の除外範囲を決定する(ステップS1004)。
【0183】
続いて、データ範囲決定部360は、採用範囲決定部365により、判定用データとする稼働データの数と、パラメータ保持部362に格納されたバッファ期間と、に基づき、学習データとして採用する稼働データの範囲を決定する(ステップS1005)。
【0184】
続いて、データ範囲決定部360は、学習データ出力部366により、ステップS1005で決定された範囲の稼働データを学習データとして抽出し、学習部370へ学習データを出力する(ステップS1006)。
【0185】
続いて、管理装置300の学習部370は、学習データに基づき異常判定モデル375を生成する(ステップS1007)。
【0186】
続いて、管理装置300は、異常判定部380により、車両情報記憶部340から、実行日に基づき、判定用データとなる稼働データを抽出し、異常判定モデル375(学習部370)へ入力する(ステップS1008)。
【0187】
続いて、異常判定部380は、異常判定モデル375の出力を、学習データとして用いた稼働データの範囲を示す情報と共に出力し(ステップS1009)、処理を終了する。
【0188】
以下に、図11A図11Bを参照して、本実施形態のデータ範囲決定部360の処理についてさらに説明する。図11Aは、データ範囲決定部の処理を説明する第一の図であり、第一の除外範囲と第二の除外範囲について説明する図である。図11Bは、データ範囲決定部の処理を説明する第二の図であり、学習データの範囲について説明する図である。
【0189】
図11A図11Bの例では、入力受付部361が入力を受け付けた機体識別番号で車両情報記憶部340を検索した結果、時期tsから時期teまでの期間の稼働データを含む車両情報が抽出された場合を示している。時期は、日付を示してもよい。したがって、図11A図11Bの例では、日付tsから日付teまでの期間の稼働データが抽出されたことを示している。
【0190】
本実施形態のデータ範囲決定部360において、基準フラグ付与部363は、抽出された車両情報に納入日t0が含まれる場合、日付tsから納入日t0までの期間k1は、稼働データを学習データとしない期間であることを示すフラグを付与する。
【0191】
期間k1に取得された稼働データは、納入場所へ納入される前のショベル100の動作を示す情報である。言い換えれば、期間k1に取得された稼働データは、納入場所とは異なる環境で行われた動作を示す情報である。このため、本実施形態では、期間k1で取得された稼働データは、納入場所へ搬入された後に行われる異常判定のための学習データには採用しない。
【0192】
ここで、基準フラグ付与部363は、期間k1に対し、納入日前の期間であり、稼働データを学習データとして使用しないことを示すフラグ「0」を付与する。
【0193】
また、本実施形態では、車両情報に含まれる項目「作業の種類」の値が、「補修作業」である場合には、この稼働データは、学習データとして採用しない。したがって、基準フラグ付与部363は、作業の種類が「補修作業」である期間に対しても、稼働データを学習データとしない期間であることを示すフラグ「0」を付与する。
【0194】
また、基準フラグ付与部363は、抽出された車両情報に不具合発生日t1と修理完了日t2とが含まれる場合、不具合発生日t1から修理完了日t2までの期間k2に対し、不具合の修理期間であり、稼働データを学習データとしない期間であることを示すフラグ「2」を付与する。
【0195】
本実施形態では、基準フラグ付与部363によってフラグが付与された期間を、第一の除外範囲とする。したがって、ショベル100の納入前である期間k1と、ショベル100の不具合の修理期間である期間k2とは、この期間に取得された稼働データが学習データになり得ない第一の除外範囲となる。
【0196】
また、本実施形態の基準フラグ付与部363は、フラグ「0」、「2」が付与された期間以外の期間は、稼働データが学習データになり得る期間であることを示すフラグ「1」を付与する。
【0197】
次に、データ範囲決定部360は、除外範囲決定部364により、パラメータ保持部362に格納された不具合出現期間と、修理後予備期間とを参照し、第二の除外範囲を決定する。
【0198】
具体的には、除外範囲決定部364は、不具合発生日t1から、不具合出現期間として設定された日数を遡った日付t3を特定し、日付t3から不具合発生日t1までの期間k3(第一の期間)を第二の除外範囲とし、第二の除外範囲であることを示すフラグ「3」を付与する。
【0199】
また。除外範囲決定部364は、修理完了日t2から修理後予備期間として設定された日数を経過した日付t4を特定し、修理完了日t2から日付t4までの期間k4(第二の期間)を第二の除外範囲とし、第二の除外範囲であることを示すフラグ「3」を付与する。
【0200】
このように、本実施形態では、車両情報に含まれる不具合発生日の前と、修理完了日の後に、第二の除外範囲を設ける。
【0201】
したがって、本実施形態によれば、実際に不具合が出現した日と、ショベル100の操作者等が不具合の発生を報告した日とが一致しない場合であっても、学習データとして不適切な稼働データが、学習データに採用されることを抑制できる。
【0202】
また、本実施形態によれば、実際にショベル100の動作が不具合の発生前と同じように動作するようになった日と、ショベル100の修理の完了がされた日とが一致しない場合であっても、学習データとして不適切な稼働データが、学習データに採用されることを抑制できる。
【0203】
図11Aの例では、日付t0から日付t3までの期間に取得された稼働データと、日付t4から日付teまでの期間に取得された稼働データと、が学習データになり得るデータとなる。つまり、本実施形態では、フラグ「1」が付与された期間に取得された稼働データが、学習データとなり得る。
【0204】
次に、データ範囲決定部360は、採用範囲決定部365により、フラグ「1」が付与されている期間において、稼働データを学習データとして採用する期間を特定する。
【0205】
まず、採用範囲決定部365は、パラメータ保持部362を参照し、入力受付部361が受け付けた異常判定処理の実行日t5から、バッファ期間として設定された期間k5を遡った日付t6を特定する。
【0206】
尚、本実施形態では、実行日t5に取得された稼働データを含む所定数のデータ量を、異常判定モデル375に入力される判定用データとして取得する。言い換えれば、判定用データは、実行日t5の直近で取得された所定数の稼働データ群である。
【0207】
したがって、本実施形態では、期間k5は、判定用データが取得される期間よりも長い期間であることが好ましい。
【0208】
尚、バッファ期間は、異常の種類に応じて設定されてもよい。例えば、バッファ期間は、稼働データの突発的な変動として現れるような異常の有無を判定する場合には、判定用データを取得する期間と同じであってもよい。また、例えば、バッファ期間は、稼働データの緩やかな変動として現れる異常の有無を判定する場合には、判定用データが取得される期間よりも長い方が好ましい。
【0209】
続いて、採用範囲決定部365は、日付t6以前であって、フラグ「1」が付与されており、且つ、取得された稼働データが所定数以上となる期間を特定する。そして、採用範囲決定部365は、特定された期間に取得された稼働データを、学習データとする。ここで、所定数とは、学習データとして十分な数を示す。この学習データとして採用される稼働データの数は、予め設定されていてもよい。
【0210】
図11Bの例では、日付t6以前であって、フラグ「1」が付与された期間として、日付t4から日付t6までの期間k6が存在する。しかし、図11Bの例では、期間k6において取得された稼働データの数は、所定数未満であり、学習データとして十分なデータ量ではない。
【0211】
よって、採用範囲決定部365は、日付t6以前であって、フラグ「1」が付与された期間となる日付t3以前の期間を特定する。このとき、採用範囲決定部365は、日付t3以前の期間であって、期間k6において取得された稼働データの数との合計が所定数以上となるような期間を特定すれば良い。図11Bの例では、フラグ「1」が付与されており、且つ、取得された稼働データが所定数以上となる期間として、期間k6に加え、日付t7から日付t3までの期間k7が特定される。
【0212】
したがって、データ範囲決定部360は、期間k6と期間k7のそれぞれにおいて取得された稼働データ群を学習データとして学習部370へ出力する。学習部370は、この学習データに基づき、異常判定モデル375を生成する。
【0213】
このように、本実施形態によれば、ショベル100から収集した稼働データにおいて、適切な学習データの範囲を決定することができる。言い換えれば、本実施形態によれば、学習部370は、適切な学習データ(稼働データ)を用いて、稼働データとショベルの異常の有無との関係とを学習することができる。
【0214】
次に、異常判定部380による異常判定処理の結果の出力例について説明する。異常判定部380は、実行日t5に取得された稼働データを含む所定数の稼働データ群を、判定用データとして異常判定モデル375へ入力し、その出力に基づき異常の有無を判定した結果を出力する。
【0215】
図12Aは、異常判定の結果の出力例を示す第一の図であり、図12Bは、異常判定の結果の出力例を示す第一の図である。図12A図12Bのそれぞれに示す画面121A、画面121Bは、例えば、管理装置300の有する表示装置40に表示される。
【0216】
画面121Aは、表示領域122、123、124、125、126を含む。表示領域122には、異常判定処理を行った結果であることを示すメッセージと、異常判定処理を実行した実行日とを示す情報とが表示される。
【0217】
表示領域123には、例えば、実行日にショベル100の撮像装置80によって撮像された動画が表示される。
【0218】
表示領域124と表示領域125には、例えば、異常判定部380による異常の有無の判定結果が表示される。異常の有無の判定結果は、例えば、異常判定モデル375から出力される指標値等に応じて判定されて良い。例えば、本実施形態では、異常判定モデル375から出力される指標値が、所定の閾値より大きい場合等に、異常が有ると判定されてもよい。以下の説明では、異常判定モデル375から出力される指標値を、異常度と表現する場合がある。
【0219】
表示領域124は、例えば、異常度の変動を示すグラフ等が表示され、表示領域125は、例えば、異常度を示すメッセージが表示されてもよい。表示領域126は、表示領域123に、異常度が所定の閾値を超えた箇所の動画等を再生させるための操作ボタン等が表示される。
【0220】
また、表示領域124には、異常度の変動を示すグラフにおいて、稼働データを学習データとして採用した学習期間であることを示すマーカ124aと、稼働データを判定用データとして採用した評価期間であることを示すマーカ124bと、を表示させてもよい。また、表示領域124において、マーカ124a、124bは、それぞれが異なる表示態様であってもよい。
【0221】
画面121Aでは、マーカ124aが示す学習期間の異常度の変動は、マーカ124bが示す評価期間の異常度の変動と比較して小さく、学習に用いられた稼働データが、正常時の稼働データであったことがわかる。
【0222】
図12Bに示す画面124Bは、表示領域127、128を含む。表示領域127は、学習データに採用された稼働データが取得された期間を示す情報が表示される。表示領域128は、学習データを取得する期間から除外された期間を示す情報が表示される。言い換えれば、表示領域128には、取得した稼働データが学習データとなり得ない期間を示す情報が表示される。
【0223】
このように、本実施形態では、異常判定モデル375の生成に用いられた学習データとして、稼働データを使用した期間を表示させる。したがって、本実施形態によれば、学習データを取得した期間を可視化することができ、ショベル100のメンテナンス等を行う作業者に対し、異常の有無の判定結果に対する理解を深めさせることができる。
【0224】
また、本実施形態では、適切な範囲の学習データに基づく異常判定モデル375を用いて異常の有無の判定を行うため、判定結果の信頼性を向上させることができる。
【0225】
また、本実施形態では、異常の有無の判定対象となるショベル100から収集した稼働データを、学習データとするものとしたが、これに限定されない。学習データは、例えば、異常の有無の判定対象となるショベル100以外の他のショベルから収集した稼働データから採用されてもよい。この場合には、他のショベルは、異常の有無の判定対象となるショベル100と同機種であってもよい。
【0226】
また、本実施形態では、学習データとして稼働データを取得する作業機械をショベル100としたが、これに限定しない。本実施形態は、ショベル100以外の作業機械の異常判定にも用いることができる。
【0227】
また、本実施形態では、異常判定モデル375は、異常の有無の指標値を出力し、異常判定部380が指標値に基づき異常の有無を判定するものとしたが、これに限定されない。
本実施形態では、異常判定モデル375が異常の有無の判定まで行うようにしてもよい。
【0228】
また、本実施形態では、異常判定モデル375が出力した指標値を、異常の有無の判定結果として出力してもよい。この場合、指標値を用いた異常判定部380による判定の処理は不要となる。
【0229】
(他の実施形態)
以下に図面を参照して、他の実施形態について説明する。本実施形態では、データ範囲決定部360により、学習データとされた稼働データのうち、第一の除外範囲及び第二の除外範囲に取得された稼働データよりも前に取得された稼働データと、第一の除外範囲及び第二の除外範囲に取得された稼働データよりも後に取得された稼働データとの分布を比較する。
【0230】
以下の説明では、第一の除外範囲及び第二の除外範囲に取得された稼働データよりも前に取得された稼働データを第一の稼働データと表現し、第一の除外範囲及び第二の除外範囲に取得された稼働データよりも後に取得された稼働データを第二の稼働データと表現する場合がある。
【0231】
言い換えれば、本実施形態では、期間k7に取得された稼働データを第一の稼働データと表現し、期間k6に取得された稼働データを第二の稼働データと表現する場合がある。
【0232】
本実施形態では、第一の稼働データと第二の稼働データとの分布を比較した結果、それぞれの分布が異なる場合には、第一の稼働データを学習データから除外する。
【0233】
以下に、図13を参照して、本実施形態の管理装置300の動作について説明する。図13は、他の実施形態の管理装置の処理を説明するフローチャートである。
【0234】
図13のステップS1301からステップS1305までの処理は、図10のステップS1001からステップS1005までの処理と同様であるから、説明を省略する。
【0235】
図13のステップS1305において、学習データとして採用する稼働データの範囲が決定されると、採用範囲決定部365は、学習データとして採用された稼働データのうち、第一の稼働データの分布と第二の稼働データの分布とを比較する(ステップS1306)。なお、稼働データの分布とは、例えば、稼働データの特徴量等によって示されてもよい。
【0236】
続いて、採用範囲決定部365は、両者の分布が類似しているか否かを判定する(ステップS1307)。具体的には、採用範囲決定部365は、両者の類似度等を求め、類似度が所定の閾値以上である場合に、第一の稼働データの分布と第二の稼働データの分布とが類似していると判定してもよい。
【0237】
ステップS1307において、類似していると判定された場合、管理装置300は、後述するステップS1309へ進む。
【0238】
ステップS1307において、類似していないと判定された場合、採用範囲決定部365は、第一の稼働データを学習データから除外し、第二の稼働データを学習データとし(ステップS1308)、後述するステップS1309へ進む。つまり、ステップS1307において類似していないと判定された場合、採用範囲決定部365は、第一の除外範囲及び第二の除外範囲に取得された稼働データよりも後に取得された稼働データを学習データとする。
【0239】
図13のステップS1309からステップS1312までの処理は、図10のステップS1006からステップS1009までの処理と同様であるから、説明を省略する。
【0240】
以下に、図11Bを参照して、図13の処理について具体的に説明する。本実施形態の管理装置300は、学習データとして採用する稼働データの範囲が、期間k6と期間k7に取得された稼働データとさている。
【0241】
このとき、本実施形態では、期間k7に取得された稼働データを第一の稼働データとし、期間k6に取得された稼働データを第二の稼働データとして、両者の分布を比較する。そして、第一の稼働データと第二の稼働データとが類似していないと判定された場合、データ範囲決定部360は、期間k6に取得された稼働データを、学習データとする。なお、この場合には、期間k6において取得された稼働データの数が所定数以上である。
【0242】
本実施形態では、このように、修理前において、異常がない状態とされる時の稼働データと、修理後において、異常がない状態とされる時の稼働データと、を比較し、類似している場合にのみ、両者を学習データとして採用する。
【0243】
したがって、本実施形態によれば、修理(メンテナンス)による動作環境の変化等により、異常がない状態とされる時の稼働データが変化した場合であっても、変化による影響を受けることがない。そのため、本実施形態によれば、修理完了後(メンテナンス実施後)であっても、適切に故障の予兆を検出することができる。
【0244】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0245】
また、本国際出願は、2020年3月27日に出願された日本国特許出願2020-057513に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2020-057513の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0246】
30 コントローラ
31 操作バルブ
40 表示装置
42 入力装置
80 撮像装置
80B,80F,80L,80R カメラ
100 ショベル
300 管理装置
301 情報送信部
302 作業パターン取得部
303 マシンガイダンス部
310 マスタ情報記憶部
320 不具合情報記憶部
330 動作情報記憶部
340 車両情報記憶部
350 情報収集部
360 データ範囲決定部
370 学習部
380 異常判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13