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特許7575171負極組成物、これを含むリチウム二次電池用負極、および負極を含むリチウム二次電池
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  • 特許-負極組成物、これを含むリチウム二次電池用負極、および負極を含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】負極組成物、これを含むリチウム二次電池用負極、および負極を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20241022BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241022BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/64 A
H01M10/052
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023552557
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2022019530
(87)【国際公開番号】W WO2023113330
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0180143
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミンジン・コ
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111057184(CN,A)
【文献】特許第6361655(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極バインダー重合体、負極活物質、および負極導電材を含む負極組成物であって、
前記負極バインダー重合体は、(メタ)アクリルアミド基含有化合物;不飽和有機酸または不飽和有機酸の塩;α,β-不飽和ニトリルを含む単量体;およびジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物;を含み、
前記負極バインダー重合体100重量部を基準に、前記(メタ)アクリルアミド基含有化合物を、30重量部以上80重量部以下;前記α,β-不飽和ニトリルを含む単量体を、1重量部以上30重量部以下;および前記ジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物を、0.1重量部以上15重量部以下含む、負極組成物。
【請求項2】
前記ジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物は、アルキルジアクリルアミド;アルキレンオキシドジアクリルアミド;またはアルキレンオキシドジアクリレート;である、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリルアミド基含有化合物:前記不飽和有機酸または不飽和有機酸の塩が1:0.1~1:0.6のモル比である、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項4】
前記負極組成物100重量部を基準に前記負極バインダー重合体を1重量部以上20重量部以下含む、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項5】
前記負極バインダー重合体の重量平均分子量が100,000g/mol以上3,000,000g/mol以下である、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項6】
前記負極導電材は、点状導電材;面状導電材;および線状導電材からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項7】
前記負極活物質は、シリコン系活物質および炭素系活物質からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項8】
前記負極活物質は、シリコン系活物質を含み、前記シリコン系活物質は、SiOx(x=0)およびSiOx(0<x<2)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記シリコン系活物質100重量部を基準に前記SiOx(x=0)を70重量部以上含む、請求項7に記載の負極組成物。
【請求項9】
前記負極活物質は、シリコン系活物質からなり、前記シリコン系活物質は、SiOx(x=0)およびSiOx(0<x<2)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記シリコン系活物質100重量部を基準に前記SiOx(x=0)を70重量部以上含む、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項10】
前記シリコン系活物質の平均粒径(D50)は、5μm~10μmである、請求項9に記載の負極組成物。
【請求項11】
前記負極導電材は、点状導電材および線状導電材を含み、前記点状導電材:線状導電材の割合は、1:0.001~1:0.05を満たす、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項12】
前記負極活物質は、前記負極組成物100重量部を基準に60重量部以上である、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項13】
負極集電体層;および
前記負極集電体層の一面または両面に形成された請求項1~12のいずれか一項に記載の負極組成物を含む負極活物質層;
を含む、リチウム二次電池用負極。
【請求項14】
前記負極集電体層の厚さは、1μm以上100μm以下であり、
前記負極活物質層の厚さは、20μm以上500μm以下である、請求項13に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項15】
前記負極活物質層の厚さ変化率が下記式1を満たす、請求項13に記載のリチウム二次電池用負極:
[式1]
0%≦[(X2-X1)/X1]×100(%)≦15%
前記式1において、
X1は、前記リチウム二次電池用負極の0サイクルでの前記負極活物質層の厚さであり、
X2は、前記リチウム二次電池用負極の30サイクル後の前記負極活物質層の厚さである。
【請求項16】
正極;
請求項13に記載のリチウム二次電池用負極;
前記正極と前記負極との間に設けられた分離膜;および
電解質;を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年12月15日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0180143号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に含まれる。
【0002】
本願は、負極組成物、これを含むリチウム二次電池用負極、および負極を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
化石燃料使用の急激な増加により代替エネルギーやクリーンエネルギーの使用に対する要求が増加しており、その一環として最も活発に研究されている分野が電気化学反応を利用した発電、蓄電分野である。
【0004】
現在、このような電気化学エネルギーを利用する電気化学素子の代表的な例として二次電池が挙げられ、ますますその使用領域が拡大している傾向である。
【0005】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化され広く使用されている。また、このような高容量リチウム二次電池用電極として、単位体積当たりのエネルギー密度がより高い高密度電極を製造するための方法について研究が活発に進められている。
【0006】
一般に、二次電池は、正極、負極、電解質および分離膜から構成される。負極は、正極から出たリチウムイオンを挿入して脱離させる負極活物質を含み、前記負極活物質としては放電容量の大きいシリコン系粒子が用いられ得る。
【0007】
特に近年、高密度エネルギー電池に対する需要に応じて、負極活物質として、黒鉛系材料に比べて容量が10倍以上大きいSi/CやSiOxなどのようなシリコン系化合物を併用して容量を増やす方法に関する研究が活発に進められているが、高容量素材であるシリコン系化合物の場合、従来用いられている黒鉛と比較すると、容量は大きいものの、充電過程で急激に体積が膨張して導電経路を断絶して電池特性を低下させる問題点がある。
【0008】
そこで、シリコン系化合物を負極活物質として使用する際の問題を解消するために駆動電位を調節する方法、さらに活物質層上に薄膜をさらにコーティングする方法、シリコン系化合物の粒径を調節する方法などのような、体積膨張自体を抑制する方あるいは導電経路が断絶することを防止するための様々な方法などが議論されているが、前記方法の場合、むしろ電池の性能を低下させることがあるため、適用に限界があり、依然としてシリコン系化合物の含量が高い負極電池製造の商用化には限界がある。
【0009】
特に、体積の膨張に伴うバインダーの組成に関する研究も進められており、体積変化の大きい負極活物質の充放電に伴う体積膨張を抑制するために、側面で強い応力を有するバインダー高分子を使用しようとする研究が進められている。しかし、これらのバインダー高分子単独では、負極活物質の収縮膨張による電極の厚さの増加およびそれから導出されるリチウム二次電池の性能低下を抑制することには限界があった。
【0010】
また、前記のような問題点を解決するために、バインダー高分子に架橋剤を導入する研究も進められた。しかし、このような方法は、電池の長期保管によるスラリーの粘度の変化および相安定性の問題があり得、実際の工程への適用に困難がある。
【0011】
したがって、体積膨張の大きい負極活物質を用いた場合でも、負極の厚さの変化を最小化することができ、これにより容量維持率が改善される負極バインダーの研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2009-080971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
シリコン系負極に適用されるバインダーにおいて、スラリー分散性を改善し、接着性に優れたバインダーに対する研究を行った結果、高分子バインダーを特定の組成に変更し、部分架橋構造を有するようにした場合、前述の問題が解決できることがわかった。
【0014】
これによって、本願は、負極組成物、これを含むリチウム二次電池用負極、および負極を含むリチウム二次電池に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書の一実施態様は、負極バインダー重合体、負極活物質、および負極導電材を含む負極組成物であって、前記負極バインダー重合体は、(メタ)アクリルアミド基含有化合物;不飽和有機酸または不飽和有機酸の塩;α,β-不飽和ニトリルを含む単量体;およびジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物;を含み、前記負極バインダー重合体100重量部を基準に、前記α,β-不飽和ニトリルを含む単量体を、1重量部以上30重量部以下;および前記ジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物を、0.1重量部以上15重量部以下含む負極組成物を提供する。
【0016】
また他の実施態様において、負極集電体層;および前記負極集電体層の一面または両面に形成された本願に係る負極組成物を含む負極活物質層;を含むリチウム二次電池用負極を提供する。
【0017】
最後に、正極;本願に係るリチウム二次電池用負極;前記正極と前記負極との間に設けられた分離膜;および電解質;を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施態様による負極組成物は、(メタ)アクリルアミド基含有化合物;不飽和有機酸または不飽和有機酸の塩;α,β-不飽和ニトリルを含む単量体;およびジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物;を含む、負極バインダー重合体を負極組成物に含むことを特徴とする。
【0019】
特に、前記負極バインダー重合体100重量部に対して前記α,β-不飽和ニトリルを含む単量体1重量部以上30重量部以下;および前記ジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物0.1重量部以上15重量部以下を満足する。これにより、充/放電に伴う体積膨張の大きい負極活物質(特に、シリコン系活物質)を用いた場合でも、体積膨張および収縮を抑制し、電極スウェリング(Swelling)による厚さの変化を最小化することができ、これによるリチウム二次電池の寿命性能に優れることを特徴とする。
【0020】
本願に係る負極バインダー重合体は、線状高分子を一部架橋するために、特定の含量のジアクリルアミドまたはジアクリレートを含み、部分架橋構造(partially crosslinked)を形成することを特徴とする。
【0021】
前記のような特徴が適用された負極バインダー重合体が含まれる場合、バインダー自体の部分架橋構造(partially crosslinked)により充放電時の電極の厚さの変化が少なく、寿命評価の進行時に容量維持率が改善される特徴を有することになる。このとき、ジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物の含量でポリマーの部分架橋の程度が表現可能である。
【0022】
すなわち、本発明の一実施態様による負極組成物は、負極活物質として理論容量の高いシリコン系活物質を含んで容量特性を改善し、シリコン系活物質の問題点である充放電による体積膨張を本願に係る特定の負極バインダー重合体を用いて解決したことが特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本願の一実施態様によるリチウム二次電池用負極の積層構造を示す図である。
図2】本願の一実施態様によるリチウム二次電池の積層構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の説明に先立ち、まずいくつかの用語を定義する。
【0025】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0026】
本明細書において、「p~q」は「p以上q以下」の範囲を意味する。
【0027】
本明細書において、「比表面積」は、BET法により測定したものであり、具体的にはBEL Japan社のBELSORP-mini IIを用いて液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から算出されたものである。すなわち、本願において、BET比表面積とは、前記測定方法で測定された比表面積を意味し得る。
【0028】
本明細書において、「Dn」は粒度分布を意味し、粒径による粒子数累積分布のn%地点での粒子サイズを意味する。すなわち、D50は粒径による粒子数累積分布の50%地点での粒径(平均粒径)であり、D90は粒径による粒子数累積分布の90%地点での粒径であり、D10は粒径による粒子数累積分布の10%地点での粒径である。一方、粒度分布は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定してもよい。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入し、粒子がレーザービームを通過する際の粒子サイズによる回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。
【0029】
本明細書において、重合体がある単量体または化合物を単量体または化合物単位で含むという意味は、その単量体または化合物が重合反応に関与して重合体内で繰り返し単位として含まれることを意味する。本明細書において、重合体が単量体または化合物を含むというとき、これは重合体が単量体または化合物を単量体単位で含むということと同様に解釈される。
【0030】
本明細書において、「重合体」とは、「単独重合体」と明記しない限り、共重合体を含む広義の意味で使用されることが理解される。
【0031】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、分子量測定用として市販されている様々な重合度の単分散ポリスチレン重合体(標準試料)を標準物質とし、ゲル透過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)により測定したポリスチレン換算分子量である。本明細書において、分子量とは、特に記載がない限り、重量平均分子量を意味する。
【0032】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるように、図面を参考にして詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実施されることができ、以下の説明に限定されない。
【0033】
本明細書の一実施態様は、負極バインダー重合体、負極活物質、および負極導電材を含む負極組成物であって、前記負極バインダー重合体は、(メタ)アクリルアミド基含有化合物;不飽和有機酸または不飽和有機酸の塩;α,β-不飽和ニトリルを含む単量体;およびジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物;を含み、前記負極バインダー重合体100重量部を基準に、前記α,β-不飽和ニトリルを含む単量体を、1重量部以上30重量部以下;および前記ジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物を、0.1重量部以上15重量部以下含む負極組成物を提供する。
【0034】
本願に係る負極バインダー重合体は、線状高分子を一部架橋するために特定の量のジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物を含ませ、部分架橋構造(partially crosslinked)を形成することを特徴とする。すなわち、前記のような特徴が適用された負極バインダー重合体が含まれる場合、バインダー自体の部分架橋構造(partially crosslinked)により、充放電時の電極の厚さの変化が少なく、寿命評価の進行時に容量維持率が改善される特徴を有することになる。
【0035】
本願の一実施態様において、前記負極バインダー重合体は、(メタ)アクリルアミド基含有化合物;不飽和有機酸または不飽和有機酸の塩;α,β-不飽和ニトリルを含む単量体;およびジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物;を含んでもよい。
【0036】
本願の一実施態様において、前記負極バインダー重合体100重量部を基準に前記(メタ)アクリルアミド基含有化合物を、30重量部以上80重量部以下含んでもよい。
【0037】
他の一実施態様において、前記負極バインダー重合体100重量部を基準に前記(メタ)アクリルアミド基含有化合物を、30重量部以上80重量部以下、好ましくは35重量部以上75重量部以下、さらに好ましくは、40重量部以上70重量部以下含んでもよい。
【0038】
本願の一実施態様において、前記負極バインダー重合体100重量部を基準に前記不飽和有機酸または不飽和有機酸の塩を、5重量部以上40重量部以下、好ましくは10重量部以上35重量部以下、さらに好ましくは、15重量部以上35重量部以下含んでもよい。
【0039】
本願の一実施態様において、前記負極バインダー重合体100重量部を基準に前記α,β-不飽和ニトリルを含む単量体を、1重量部以上30重量部以下;および前記ジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物を、0.1重量部以上15重量部以下含む負極組成物を提供する。
【0040】
他の一実施態様において、前記負極バインダー重合体100重量部を基準に、前記α,β-不飽和ニトリルを含む単量体は、1重量部以上30重量部以下、好ましくは3重量部以上30重量部以下、さらに好ましくは5重量部以上30重量部以下であってもよい。
【0041】
また他の一実施態様において、前記負極バインダー重合体100重量部を基準に、前記ジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物は、0.1重量部以上15重量部以下、好ましくは0.5重量部以上12重量部以下を満たしてもよい。
【0042】
本願に係る負極バインダー重合体は、前記のように4種類の単量体を含むものであり、特に前記のような含量部を含むことを特徴とする。前記のような含量部を有することにより、負極バインダー重合体が部分架橋構造を形成することになり、結合力がよくなり、これを含む電極の充放電時の電極の厚さの変化が少なく、それに伴い寿命評価進行時の容量維持率が改善されるという特徴を有することになる。
【0043】
本願の一実施態様において、前記負極バインダー重合体100重量部を基準に前記の組成が特定重量部含まれるとは、前記負極バインダー重合体の単量体群の全体重量100の基準に対する各成分単量体の重量比をそれぞれ意味することができ、これを重量部と表記した。
【0044】
本願の一実施態様において、前記(メタ)アクリルアミド基含有化合物:前記不飽和有機酸または不飽和有機酸の塩が1:0.1~1:0.6のモル比である負極組成物を提供する。
【0045】
前記モル比とは、本願に係る負極バインダー重合体100重量部を基準にして含まれるモルの割合を意味し、具体的にはモル%の割合を意味し得る。
【0046】
本願の一実施態様において、前記負極バインダー重合体は(メタ)アクリルアミド基含有化合物を含んでもよい。
【0047】
本願の一実施態様において、前記(メタ)アクリルアミドとは、メタクリルアミドであるか;またはアクリルアミドを含んでもよい。
【0048】
本願の一実施態様において、前記不飽和有機酸は、バインダーに含まれ得る有機酸であれば制限なく使用することができるが、具体的にはアクリル酸を用いることができる。このとき、前記不飽和有機酸の塩は、不飽和有機酸においてイオンを含む塩の形態を意味することができ、これも制限なく使用することができる。このとき、不飽和有機酸は、例えば、カルボン酸またはその塩を含むものである。前記カルボン酸は、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、モノメチルイタコネート、メチルフマレート、モノブチルフマレートなどのカルボン酸モノマーまたはその塩を用いることができ、これらのうち単独または2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
本願の一実施態様において、α,β-不飽和ニトリルを含む単量体はアクリロニトリルであってもよい。
【0050】
本願の一実施態様において、前記ジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物は、アルキルジアクリルアミド;アルキレンオキシドジアクリルアミド;またはアルキレンオキシドジアクリレート;である負極組成物を提供する。
【0051】
具体的には、前記ジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物は、N,N-メチレンビスアクリルアミド;またはエチレングリコールジアクリレート;を含んでもよい。
【0052】
結局、本願に係る負極バインダー重合体は、前記のように特定含量部および組成を有する4つの成分を含むものであり、充/放電に伴う体積の膨張が大きい負極活物質(特に、シリコン系活物質)を使用する場合でも、体積膨張および収縮を抑制し、電極スウェリング(Swelling)による厚さの変化を最小化することができ、これによるリチウム二次電池の寿命性能を強化することができる。
【0053】
前記4つの成分が重合されて負極バインダー重合体を形成してもよい。
【0054】
本願の一実施態様において、前記負極バインダー重合体の重量平均分子量が100,000g/mol以上3,000,000g/mol以下の負極組成物を提供する。
【0055】
また他の一実施態様において、前記負極バインダー重合体の重量平均分子量は、100,000g/mol以上3,000,000g/mol以下、好ましくは200,000g/mol以上1,500,000g/mol以下の範囲を満たしてもよい。
【0056】
前記のように負極バインダー重合体の重量平均分子量が前記範囲を満たす場合、機械的強度に優れ、分子間の相互作用(interaction)が高く、電極の結着力に優れた特徴を有することになる。また、前記範囲を満たす場合、負極バインダーの粘度を適切な範囲で選定することができ、これを用いて負極を製造する場合、電極のコーティング性に優れた特徴を有することになる。
【0057】
本願の一実施態様において、前記負極バインダー重合体は、前記負極組成物100重量部を基準に1重量部以上20重量部以下で含まれてもよい。
【0058】
本願の他の一実施態様において、前記負極バインダー重合体は、前記負極組成物100重量部を基準に1重量部以上20重量部以下、好ましくは3重量部以上15重量部以下、さらに好ましくは4重量部以上15重量部以下であってもよい。
【0059】
前記のような範囲で含まれる場合、負極活物質は効果的に分散することができ、リチウム二次電池の充放電による負極活物質の収縮膨張に対して電極接着力と電極内部の活物質間の高い結着力を有することができる特徴を有することになる。
【0060】
本願の一実施態様において、前記負極バインダー重合体のヤング率(Young’s modulus)は10MPa以上であってもよい。
【0061】
また他の一実施態様において、前記負極バインダー重合体のヤング率(Young’s modulus)が、1×10MPa以上、好ましくは2×10MPa、より好ましくは5×10MPa以上であり、25×10MPa以下、好ましくは22×10MPa以下、さらに好ましくは20×10MPa以下を満たしてもよい。
【0062】
前記ヤング率の測定方法は、コーティングされた容器に前記負極バインダー重合体を入れ、長時間常温乾燥させて水分を除去する。水分を飛ばしたフィルムは電極乾燥温度に合わせて130℃で10hr真空乾燥を進行して乾燥したフィルムを得る。その後、乾燥したフィルムを6mm×100mmレベルの試料形態に切断または打抜して試料を採取し、UTM装置を用いて引張強度(ヤング率)を測定することができる。
【0063】
前記負極バインダー重合体のヤング率は、測定方式、速度、バインダーの測定状態によって異なるが、前記負極バインダー重合体のヤング率は、露点-5℃~10℃であり、温度が20℃~22℃程度のドライルームで測定した値を意味し得る。
【0064】
本願において露点とは、湿った空気を冷却していくと、ある温度で凝縮が始まるが、空気中の水蒸気分圧がその温度における水の飽和蒸気圧と同じになったためであり、このときの温度を意味する。すなわち、水蒸気を含む気体の温度をそのまま下げていった時、相対湿度が100%となって露が出始める時の温度を意味し得る。
【0065】
前記露点が-5℃~10℃であり、温度が20℃~22℃程度であると、一般にドライルームと定義することができ、このときの湿度は非常に低いレベルに該当する。
【0066】
前記負極バインダー重合体は、負極組成物が含まれた負極スラリー状態で負極活物質を分散させるための分散性と、乾燥後の負極集電体層および負極活物質層とバインディングするための接着力を同時に有するものである。また、その接着力は高い方ではないバインダーに該当する。すなわち、本願に係る前記負極バインダー重合体は、前記ヤング率を満足するものであり、面接着形態を有するバインダーを意味することができる。
【0067】
前記負極バインダー重合体は、親水性(hydrophilic)を有し、一般に、二次電池に使用される電解質または電解液に溶解しない性質を有する。このような特性は、負極またはリチウム二次電池に適用する際に、前記負極バインダー重合体に強い応力または引張強度を与えることができ、これによりシリコン系活物質の充放電に伴う体積膨張/収縮の問題を効果的に抑制することができる。
【0068】
本願の一実施態様において、前記負極バインダー重合体は、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)およびそれらの水素をLi、NaまたはKなどで置換された物質からなる群から選択される少なくとも一つをさらに含んでもよく、また、それらの様々な共重合体をさらに含んでもよい。
【0069】
本願の一実施態様による負極バインダー重合体は、シリコン系活物質の体積膨張および緩和において、負極構造の捻り、構造の変形を防止するために負極活物質および負極導電材を抑える役割をする。
【0070】
本願の一実施態様において、前記負極活物質は、シリコン系活物質および炭素系活物質からなる群から選択される少なくとも1つを含む、負極組成物を提供する。
【0071】
本願の一実施態様において、前記負極活物質は、シリコン系活物質および炭素系活物質からなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記シリコン系活物質は、SiOx(x=0)、SiOx(0<x<2)、SiC、およびSi合金からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0072】
本願の一実施態様において、前記負極活物質はシリコン系活物質を含み、シリコン系活物質はSiOx(x=0)およびSiOx(0<x<2)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記シリコン系活物質100重量部を基準に前記SiOx(x=0)を70重量部以上含むものである負極組成物を提供する。
【0073】
本願の一実施態様において、前記負極活物質はシリコン系活物質からなり、シリコン系活物質はSiOx(x=0)およびSiOx(0<x<2)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記シリコン系活物質100重量部を基準に前記SiOx(x=0)を70重量部以上含むものである負極組成物を提供する。
【0074】
本願の一実施態様において、前記シリコン系活物質は、SiOx(x=0)、SiOx(0<x<2)、SiCおよびSi合金からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0075】
本発明の活物質は、シリコン系活物質を含む。シリコン系活物質は、SiOx、Si/C、Siであってもよい。SiOxは、SiOx(0≦x<2)で表される化合物を含んでもよい。SiOの場合、リチウムイオンと反応せず、リチウムを貯蔵できないため、xは前記範囲内であることが好ましい。シリコン系活物質は、SiとCの複合体で構成されたSi/CまたはSiであってもよい。また、前記のシリコン系活物質を2種以上混合して使用してもよい。前記負極活物質は、上述したシリコン系活物質と共に炭素系活物質をさらに含んでもよい。前記炭素系活物質は、本発明の負極または二次電池に優れたサイクル特性または電池寿命性能の改善に寄与することができる。
【0076】
一般に、シリコン系活物質は、炭素系活物質に比べて10倍以上の高い容量を有することが知られており、これにより、シリコン系活物質を負極に適用する場合、薄い厚さでも高いレベルのエネルギー密度を有する電極の具現が可能であると期待されている。
【0077】
本願の一実施態様において、前記炭素系活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよく、好ましくは人造黒鉛および天然黒鉛からなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0078】
本願の一実施態様において、前記負極活物質は、(1)人造黒鉛、天然黒鉛、表面改質された黒鉛、コークス、硬質炭素、軟質炭素、炭素繊維、導電性炭素およびこれらの組み合わせの少なくとも1つ、(2)ケイ素ベース合金、(3)i)人工黒鉛、天然黒鉛、表面改質された黒鉛、コークス、硬質炭素、軟質炭素、炭素繊維、導電性炭素およびそれらの組み合わせのうち少なくとも1つ、およびii)Al、Ag、Bi、In、Ge、Mg、Pb、Si、Sn、Tiおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含むか、それからなる錯化合物、(4)リチウム錯体金属オキシド、(5)リチウム含有窒化物、(6)ケイ素-グラフェン、(7)ケイ素-炭素ナノチューブ、(8)酸化ケイ素、(9)ケイ素、および(10)これらの組み合わせを含む任意の物質であってもよい。
【0079】
本願の一実施態様において、前記シリコン系活物質は、SiOx(x=0)およびSiOx(0<x<2)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記シリコン系活物質100重量部を基準に前記SiOx(x=0)を70重量部以上含む負極組成物を提供する。
【0080】
また他の一実施態様において、前記シリコン系活物質100重量部を基準に前記SiOx(x=0)を70重量部以上、好ましくは80重量部以上、さらに好ましくは90重量部以上含んでもよく、100重量部以下、好ましくは99重量部以下、さらに好ましくは95重量部以下を含んでもよい。
【0081】
本願の一実施態様において、前記シリコン系活物質は、純粋シリコン(Si)のみをシリコン系活物質として用いてもよい。純粋シリコン(Si)をシリコン系活物質として用いるということは、前記のようにシリコン系活物質全100重量部を基準としたとき、他の粒子または元素と結合されない純粋なSi粒子(SiOx(x=0))を前記範囲で含むことを意味することができる。
【0082】
シリコン系活物質の場合、従来使用されている黒鉛系活物質と比べるとき、容量が著しく高く、これを適用しようとする試みが高まっているが、充放電過程で体積膨張率が高く、黒鉛系活物質に微量を混合して使用する場合などにとどまっている。
【0083】
従って、本発明の場合、容量性能向上のためにシリコン系活物質を負極活物質として使用しながらも、前記のような体積膨張に伴う導電性経路の維持および導電材、バインダー、活物質の結合の維持の問題点を解消するため、特定条件の熱架橋性負極バインダー溶液を使用したことを特徴とする。
【0084】
一方、本願発明の前記シリコン系活物質の平均粒径(D50)は、5μm~10μmであり、具体的には5.5μm~8μmであり、より具体的には6μm~7μmであってもよい。前記平均粒径が前記範囲で含まれる場合、粒子の比表面積が適切な範囲で含まれ、負極スラリーの粘度が適正範囲で形成される。これにより、負極スラリーを構成する粒子の分散が円滑になる。また、シリコン系活物質の大きさが前記下限値の範囲以上の値を有することで、負極スラリー内で導電材とバインダーからなる複合体により、シリコン粒子、導電材の接触面積に優れ、導電ネットワークが持続する可能性が高くなり、容量維持率が増加する。一方、前記平均粒径が前記範囲を満たす場合、大きすぎるシリコン粒子が排除され、負極の表面が滑らかに形成され、これにより充放電時の電流密度の不均一現象を防止することができる。
【0085】
本願の一実施態様において、前記シリコン系活物質は、一般に、特徴的なBET比表面積を有する。シリコン系活物質のBET比表面積は、好ましくは0.01m/g~150.0m/g、より好ましくは0.1m/g~100.0m/g、特に好ましくは0.2m/g~80.0m/g、最も好ましくは0.2m/g~18.0m/gである。BET比表面積は、(窒素を使用して)DIN 66131に従って測定される。
【0086】
本願の一実施態様において、シリコン系活物質は、例えば、結晶または非晶質の形態で存在してもよく、好ましくは多孔性ではない。ケイ素粒子は、好ましくは球状または破片状粒子である。代案として、しかしあまり好ましくはないが、ケイ素粒子は繊維構造を有するか、またはケイ素含有フィルムまたはコーティングの形態で存在してもよい。
【0087】
本願の一実施態様において、前記負極活物質が前記負極組成物100重量部を基準に60重量部以上である負極組成物を提供する。
【0088】
本願の一実施態様において、前記シリコン系活物質が前記負極組成物100重量部を基準に60重量部以上である負極組成物を提供する。
【0089】
他の一実施態様において、前記シリコン系活物質は、前記負極組成物100重量部を基準に60重量部以上、好ましくは65重量部以上、さらに好ましくは70重量部以上含まれてもよく、95重量部以下、好ましくは90重量部以下、より好ましくは85重量部以下含まれてもよい。
【0090】
本願に係る負極組成物によれば、容量が著しく高いシリコン系活物質を前記範囲で用いても、充放電過程で体積膨張率を抑える特定の導電材およびバインダーを用いるので、前記範囲を含んでも負極の性能を低下させず、充電および放電での出力特性に優れた特徴を持つことになる。
【0091】
本願の一実施態様において、前記シリコン系活物質は非球状形態を有してもよく、その円形度は例えば0.9以下、例えば0.7~0.9、例えば0.8~0.9、例えば0.85~0.9である。
【0092】
本願において、前記円形度(circularity)は下記式1-1で決定され、Aは面積であり、Pは境界線である。
[式1-1]
4πA/P
【0093】
従来は、負極活物質として黒鉛系化合物のみを用いることが一般的であったが、近年では高容量電池に対する需要が高まるにつれて、容量を高めるためにシリコン系化合物を混合して使用しようとする試みが増えている。ただし、シリコン系化合物の場合、充/放電過程で体積が急激に膨張し、負極活物質層内に形成された導電経路を破損して電池の性能をかえって低下させてしまうという限界が存在する。
【0094】
したがって、本願の一実施態様において、負極組成物は、前記特徴を有するバインダーを使用し、同時に特定の負極導電材を含んでもよい。
【0095】
本願の一実施態様において、前記負極導電材は、点状導電材;面状導電材;および線状導電材からなる群から選択される少なくとも1つを含む負極組成物を提供する。
【0096】
本願の一実施態様において、前記点状導電材は、負極に導電性を向上させるために使用されてもよく、化学的変化を誘発することなく、導電性を形成するもので、その形態が円状または点状である導電材を意味する。具体的には、前記点状導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、導電性繊維、フルオロカーボン、アルミニウム粉末、ニッケル粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化チタンおよびポリフェニレン誘導体からなる群から選択された少なくとも1種であってよく、好ましくは高い導電性を具現し、分散性に優れるという点でカーボンブラックを含んでもよい。
【0097】
本願の一実施態様において、前記点状導電材は、BET比表面積が40m/g以上70m/g以下であり、好ましくは45m/g以上65m/g以下、さらに好ましくは50m/g以上60m/g以下であってもよい。
【0098】
本願の一実施態様において、前記点状導電材の粒径は10nm~100nmであり、好ましくは20nm~90nm、さらに好ましくは40nm~60nmであってもよい。
【0099】
本願の一実施態様において、前記導電材は面状導電材を含んでもよい。
【0100】
前記面状導電材は、負極内でシリコン粒子間の面接触を増加させて導電性を改善し、同時に体積膨張による導電性経路の断絶を抑制する役割をする導電材を意味する。前記面状導電材は、板状導電材またはバルク型導電材と表されてもよい。
【0101】
本願の一実施態様において、前記面状導電材は、板状黒鉛、グラフェン、グラフェンオキシド、および黒鉛フレークからなる群から選択される少なくとも一つを含んでもよく、好ましくは板状黒鉛であってもよい。
【0102】
本願の一実施態様において、前記面状導電材の平均粒径(D50)は、2μm~7μmであり、具体的には3μm~6μmであり、より具体的には4μm~5μmであってもよい。前記範囲を満たす場合には、十分な粒子サイズにより、負極スラリーの過度な粘度上昇を起こさずに分散が容易である。したがって、同じ装備と時間を用いて分散させるとき、分散効果に優れる。
【0103】
本願の一実施態様において、前記面状導電材は、D10が0.5μm以上1.5μm以下であり、D50が4.0μm以上5.0μm以下であり、D90が7.0μm以上15.0μm以下である負極組成物を提供する。
【0104】
本願の一実施態様において、前記面状導電材は、BET比表面積が高い高比表面積面状導電材;あるいは低比表面積面状導電材を用いてもよい。
【0105】
本願の一実施態様において、前記面状導電材として高比表面積面状導電材;あるいは低比表面積面状導電材を制限なく使用することができるが、特に本願に係る面状導電材は、電極性能においてある程度分散の影響を受けることがあり得、分散に問題が発生しない低比表面積面状導電材を用いることが特に好ましい場合がある。
【0106】
本願の一実施態様において、前記面状導電材は、BET比表面積が1m/g以上であってもよい。
【0107】
他の一実施態様において、前記面状導電材は、BET比表面積が1m/g以上500m/g以下であり、好ましくは5m/g以上300m/g以下、さらに好ましくは5m/g以上250m/g以下であってもよい。
【0108】
また他の一実施態様において、前記面状導電材は、高比表面積面状導電材であり、BET比表面積が50m/g以上500m/g以下、好ましくは80m/g以上300m/g以下、さらに好ましくは100m/g以上250m/g以下の範囲を満たしてもよい。
【0109】
また他の一実施態様において、前記面状導電材は、低比表面積面状導電材であり、BET比表面積が1m/g以上40m/g以下、好ましくは5m/g以上30m/g以下、さらに好ましくは、5m/g以上25m/g以下の範囲を満たしてもよい。
【0110】
その他の導電材としては、炭素ナノチューブなどの線状導電材があり得る。炭素ナノチューブは、バンドル型炭素ナノチューブであってもよい。前記バンドル型炭素ナノチューブは、複数の炭素ナノチューブ単量体を含んでもよい。具体的には、ここで「バンドル型(bundle type)」とは、特に断りのない限り、複数の炭素ナノチューブ単位体が、炭素ナノチューブ単位体の長手方向の軸が実質的に同じ配向で並んで配列されるか、または絡み合っている、バンドル(bundle)またはロープ(rope)の形態の二次形状を指す。前記炭素ナノチューブ単量体は、黒鉛面(graphite sheet)がナノサイズ直径のシリンダーの形を有し、sp2結合構造を有する。このとき、前記黒鉛面が巻かれる角度および構造によって導体または半導体の特性を示すことができる。前記バンドル型炭素ナノチューブは、エンタングル型(entangled type)炭素ナノチューブと比較して負極製造時に均一に分散されることができ、負極内導電性ネットワークを円滑に形成して、負極の導電性が改善されることができる。
【0111】
本願の一実施態様において、前記負極導電材は線状導電材を含み、前記線状導電材は炭素ナノチューブである負極組成物を提供する。
【0112】
本願の一実施態様において、炭素ナノチューブはSWCNTまたは/およびMWCNTであってもよい。線状導電剤がSWCNTの場合、SWCNTの長さは0.5μm~100μm、好ましくは1μm~80μmであってもよい。
【0113】
本願の一実施態様において、前記負極導電材が、前記負極組成物100重量部を基準に5重量部以上40重量部以下である負極組成物を提供する。
【0114】
他の一実施態様において、前記負極導電材が、前記負極組成物100重量部を基準に5重量部以上40重量部以下、好ましくは5重量部以上30重量部以下、さらに好ましくは5重量部以上25重量部以下で含まれてもよい。
【0115】
本願の一実施態様において、前記負極導電材は、点状導電材および線状導電材を含み、前記点状導電材:線状導電材の割合は、1:0.001~1:0.05を満たしてもよい。
【0116】
本願の一実施態様において、前記負極導電材が点状導電材および線状導電材を含み、それぞれ前記組成および割合を満足することにより、既存のリチウム二次電池の寿命特性に大きな影響を及ぼさず、充電および放電が可能なポイントが多くなり、高いC-レートで出力特性に優れた特徴を有することになる。
【0117】
本願に係る負極導電材の場合、正極に適用される導電材とは全く別個の構成を有する。すなわち、本願に係る負極導電材の場合、充電および放電によって電極の体積膨張が非常に大きいシリコン系活物質間の接点を捉える役割を果たすもので、正極導電材は、圧延される際に緩衝役割のバッファの役割をしながら一部導電性を与える役割であり、本願発明の負極導電材とはその構成および役割が全く異なる。
【0118】
本願の一実施態様において、前記負極組成物を硬化または乾燥した後の負極活物質層の厚さの変化率が下記式1を満たすものであるリチウム二次電池用負極を提供する。
【0119】
[式1]
0%≦[(X2-X1)/X1]×100(%)≦15%
【0120】
前記式1において、
X1は、前記リチウム二次電池用負極の0サイクルでの前記負極組成物を硬化または乾燥した後の負極活物質層の厚さであり、
X2は、前記リチウム二次電池用負極の30サイクル後の負極組成物を硬化または乾燥した後の負極活物質層の厚さである。
【0121】
前記0サイクルとは、リチウム二次電池用負極を製造し、充電/放電を進行していない状態を意味することができ、具体的には製造後のリチウム二次電池用負極を意味することができる。
【0122】
本願の一実施態様において、前記負極組成物は、負極スラリー形成用溶媒を含んで負極スラリーを形成してもよく、前記負極スラリーを負極集電体層に塗布して負極を形成してもよい。
【0123】
このとき、負極スラリーの固形分含量は10%~60%を満たしてもよい。
【0124】
本願の一実施態様において、前記負極スラリー形成用溶媒は、前記負極組成物が溶解および分散できれば制限なく使用することができるが、具体的には蒸留水またはNMPを用いてもよい。
【0125】
本発明の一実施態様において、前記負極スラリーの混合方法は特に限定されず、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、超音波分散機、ホモゲナイザー、プラネタリーミキサー(planetary mixer)、ホバートミキサーなどが例示され、適切なのは、ホモゲナイザーおよび/またはプラネタリーミキサーを使用して混練することが好ましい。
【0126】
本願の一実施態様において、前記負極スラリーを負極集電体層に塗布する手段は特に限定されず、コンマコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ、ダイコータ、バーコータなど、従来公知のコーティング装置を使用してもよい。
【0127】
また、前記負極スラリーを塗布後、乾燥工程を進行することができ、乾燥手段も特に限定されず、温度は60℃~200℃が適当であり、100℃~180℃が好ましい。雰囲気は、乾燥空気または不活性雰囲気が可能である。電極(硬化塗布膜)の厚さは特に限定されないが、5μm~300μmが適当であり、10μm~250μmが好ましい。
【0128】
本願の一実施態様において、負極集電体層;および前記負極集電体層の一面または両面に形成された本願に係る負極組成物を含む負極活物質層;を含むリチウム二次電池用負極を提供する。
【0129】
本願の一実施態様において、前記負極活物質層の負極集電体層と接する面の反対面に、さらに負極活物質層を有してもよい。このとき、追加の負極活物質層は、炭素系、シリコン系など一般的に用いられる負極活物質層が用いられてもよい。
【0130】
図1は、本願の一実施態様によるリチウム二次電池用負極の積層構造を示す図である。具体的には、負極集電体層10の一面に負極活物質層20を含むリチウム二次電池用負極100を確認することができ、図1は、負極活物質層が一面に形成されたことを示すが、負極活物質層の両面に含んでもよい。
【0131】
本願の一実施態様において、前記負極集電体層は、一般に1μm~100μmの厚さを有する。このような負極集電体層は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で用いられてもよい。なかでも、電極活物質を負極に用いる場合には、集電体として銅箔が好ましい。
【0132】
本願の一実施態様において、前記負極集電体層の厚さは、1μm以上100μm以下であり、前記負極活物質層の厚さは、20μm以上500μm以下であるリチウム二次電池用負極を提供する。
【0133】
ただし、厚さは、使用される負極の種類および用途に応じて様々に変形することができ、これに限定されない。
【0134】
本願の一実施態様において、前記負極活物質層の厚さ変化率が下記式1を満たすものであるリチウム二次電池用負極を提供する。
【0135】
[式1]
0%≦[(X2-X1)/X1]×100(%)≦15%
【0136】
前記式1において、
X1は、前記リチウム二次電池用負極の0サイクルでの前記負極活物質層の厚さであり、
X2は、リチウム二次電池用負極の30サイクル後の前記負極活物質層の厚さである。
【0137】
前記0サイクルとは、リチウム二次電池用負極を製造し、充電/放電を進行していない状態を意味し、具体的には製造後のリチウム二次電池用負極を意味してもよい。
【0138】
なお、前記厚さの変化率は、上述した負極組成物を硬化または乾燥した後の負極活物質層の厚さの変化率を意味する。
【0139】
すなわち、本願に係るリチウム二次電池用負極は、特定の負極バインダー重合体を使用することで、サイクルを繰り返しても負極活物質の体積膨張を防止し、厚さの変化が少ないことを特徴とする。
【0140】
本願の一実施態様において、正極;本願に係るリチウム二次電池用負極;前記正極と前記負極との間に設けられた分離膜;および電解質;を含むリチウム二次電池を提供する。
【0141】
図2は、本願の一実施態様によるリチウム二次電池の積層構造を示す図である。具体的には、負極集電体層10の一面に負極活物質層20を含むリチウム二次電池用負極100を確認することができ、正極集電体層50の一面に正極活物質層40を含むリチウム二次電池用正極200を確認することができ、前記リチウム二次電池用負極100とリチウム二次電池用正極200が分離膜30を挟んで積層される構造で形成されることを示す。
【0142】
本明細書の一実施態様による二次電池は、特に上述したリチウム二次電池用負極を含んでもよい。具体的には、前記二次電池は、負極、正極、前記正極および負極の間に介在した分離膜および電解質を含んでもよく、前記負極は上述した負極と同様である。前記負極については上述したため、具体的な説明は省略する。
【0143】
前記正極は、正極集電体および前記正極集電体上に形成され、前記正極活物質を含む正極活物質層を含んでもよい。
【0144】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチール表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが用いられてもよい。また、前記正極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用されてもよい。
【0145】
前記正極活物質は、通常使用される正極活物質であってもよい。具体的には、前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や1つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;LiFeなどのリチウム鉄酸化物;化学式Li1+c1Mn2-c1(0≦c1≦0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-c2c2(ここで、Mは、Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BおよびGaからなる群から選択される少なくとも一つであり、0.01≦c2≦0.3を満たす)で表現されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-c3c3(ここで、Mは、Co、Ni、Fe、Cr、ZnおよびTaからなる群から選択される少なくとも一つであり、0.01≦c3≦0.1を満たす)またはLiMnMO(ここで、Mは、Fe、Co、Ni、CuおよびZnからなる群から選択される少なくとも一つである。)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMnなどが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。前記正極はLi-金属(metal)であってもよい。
【0146】
前記正極活物質層は、上述した正極活物質と共に、正極導電材および正極バインダーを含んでもよい。
【0147】
このとき、前記正極導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;あるいは、ポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。
【0148】
また、前記正極バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割をする。具体例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはそれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてもよい。
【0149】
分離膜としては、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、二次電池で分離膜として使用されるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液含湿能力に優れるものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれた、コーティングされた分離膜が用いられてもよく、選択的に単層または多層構造で使用されてもよい。
【0150】
前記電解質としては、リチウム二次電池製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0151】
具体的には、前記電解質は、非水系有機溶媒と金属塩を含んでもよい。
【0152】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、ピロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用されてもよい。
【0153】
特に、前記カーボネート系有機溶媒のうち環状カーボネートであるエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒として誘電率が高く、リチウム塩を良好に解離させるため好ましく使用することができ、このような環状カーボネートにジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率線状カーボネートを適当な割合で混合して使用すると、高い電気伝導率を有する電解質を作ることができ、より好ましく用いることができる。
【0154】
前記金属塩は、リチウム塩を用いることができ、前記リチウム塩は、前記非水電解液に溶解しやすい物質であり、例えば、前記リチウム塩のアニオンとしては、F、Cl、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCNおよび(CFCFSOからなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0155】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿命特性向上、電池容量減少抑制、電池の放電容量向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤がさらに1種以上含まれてもよい。
【0156】
本発明によるリチウム二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどの携帯機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用であり、特に中大型電池モジュールの構成電池として好ましく使用されることができる。したがって、本発明はまた、前記のようなリチウム二次電池を単位電池として含む中大型電池モジュールを提供する。
【0157】
本発明の一実施態様は、前記二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびそれを含む電池パックを提供する。前記電池モジュールおよび電池パックは、高容量、高い律速特性およびサイクル特性を有する前記二次電池を含むため、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車および電力貯蔵用システムからなる群から選択される中大型デバイスの電源として使用できる。
【実施例
【0158】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、該実施例は本記載を例示するものであり、本記載の範囲および技術思想の範囲内で種々の変更および修正が可能であることは当業者にとって明らかである。そのような変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することは当然である。
【0159】
<製造例>
<バインダー重合体の製造>
実施例1
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス流入管を備えた反応器に、水900g、アクリルアミド65g、アクリル酸20g、アクリロニトリル10g、N’N’-メチレンビスアクリルアミド5gを、重合開始剤としてアンモニウムパーサルフェート0.5gを投入した後、90℃に昇温して5時間重合後、NaOH水溶液でpHが5になるように調整してバインダー重合体を製造した。
【0160】
実施例2
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス流入管を備えた反応器に、水900g、アクリルアミド60g、アクリル酸23g、アクリロニトリル5g、N’N’-メチレンビスアクリルアミド12gを、重合開始剤としてアンモニウムパーサルフェート0.5gを投入した後、90℃に昇温して5時間重合後、NaOH水溶液でpHが5になるように調整してバインダー重合体を製造した。
【0161】
実施例3
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス流入管を備えた反応器に、水900g、アクリルアミド65g、アクリル酸20g、アクリロニトリル10g、N’N’-メチレンビスアクリルアミド5gを、重合開始剤としてアンモニウムパーサルフェート0.5gを投入した後、90℃に昇温して5時間重合後、NaOH水溶液でpHが5になるように調整してバインダー重合体を製造した。
【0162】
実施例4
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス流入管を備えた反応器に、水900g、アクリルアミド65g、アクリル酸20g、アクリロニトリル10g、エチレングリコールジアクリレート5gを、重合開始剤としてアンモニウムパーサルフェート0.5gを投入した後、90℃に昇温して5時間重合後、NaOH水溶液でpHが5になるように調整してバインダー重合体を製造した。
【0163】
比較例1
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス流入管を備えた反応器に、水900g、アクリルアミド50g、アクリル酸35g、N’N’-メチレンビスアクリルアミド15gを、重合開始剤としてアンモニウムパーサルフェート0.5gを投入した後、90℃に昇温して5時間重合後、NaOH水溶液でpHが5になるように調整してバインダー重合体を製造した。
【0164】
比較例2
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス流入管を備えた反応器に、水900g、アクリルアミド50g、アクリル酸30g、アクリロニトリル20gを、重合開始剤としてアンモニウムパーサルフェート0.5gを投入した後、90℃に昇温して5時間重合後、NaOH水溶液でpHが5になるように調整してバインダー重合体を製造した。
【0165】
比較例3
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス流入管を備えた反応器に、水900g、アクリルアミド15g、アクリル酸20g、アクリロニトリル60g、N’N’-メチレンビスアクリルアミド5gを、重合開始剤としてアンモニウムパーサルフェート0.5gを投入した後、90℃に昇温して5時間重合後、NaOH水溶液でpHが5になるように調整してバインダー重合体を製造した。
【0166】
比較例4
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス流入管を備えた反応器に、水900g、アクリルアミド45g、アクリル酸20g、アクリロニトリル10g、N’N’-メチレンビスアクリルアミド25gを、重合開始剤としてアンモニウムパーサルフェート0.5gを投入した後、90℃に昇温して5時間重合後、NaOH水溶液でpHが5になるように調整してバインダー重合体を製造した。
【0167】
比較例5
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス流入管を備えた反応器に、水900g、アクリルアミド45g、アクリル酸20g、アクリロニトリル10g、N’N’-メチレンビスアクリルアミド17gを、重合開始剤としてアンモニウムパーサルフェート0.5gを投入した後、90℃に昇温して5時間重合後、NaOH水溶液でpHが5になるように調整してバインダー重合体を製造した。
比較例6
【0168】
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス流入管を備えた反応器に、水900g、アクリルアミド40g、アクリル酸30g、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20g、N’N’-メチレンビスアクリルアミド5gを、重合開始剤としてアンモニウムパーサルフェート0.5gを投入した後、90℃に昇温して5時間重合後、NaOH水溶液でpHが5になるように調整してバインダー重合体を製造した。
【0169】
前記で製造した実施例1~4および比較例1~6の組成および含量は、表1のとおりであった。
【0170】
【表1】
【0171】
<実施例1、2、4および比較例1~6の負極スラリーの製造>
負極活物質として、1)d50=15μmの人造黒鉛を使用し、2)シリコンはSiOx(d50=1~6μm、0.9≦x≦1.5、具体的にはx=1.05)を用い、黒鉛:シリコン=7:3の重量比で混合し、導電材はSuper-P blackとSWCNT(Super-P:SWCNT重量比=1:0.005)を用い、活物質:導電材:バインダーを重量比で85:5:10の割合で混合して負極組成物を用意した。このとき、溶媒としての水の含量は、コーティング性、粘度、固形分を考慮して調整した。得られたスラリー組成物の粘度は5,000~6,000cpsとなるように調整した。
【0172】
このとき、バインダーとしては前記表1で製造したバインダーをそれぞれ用いた。
【0173】
<実施例3の負極スラリーの製造>
シリコン系活物質として、純粋なSi(平均粒径(D50):3.5μm)、導電材はSuper-P blackとSWCNT(Super-P:SWCNT重量比=1:0.005)を用い、活物質:導電材:バインダーを重量比で85:5:10の割合で混合して負極組成物を用意した。このとき、溶媒としての水の含量は、コーティング性、粘度、固形分を考慮して調整した。得られたスラリー組成物の粘度は5,000~6,000cpsとなるように調整した。
【0174】
このとき、バインダーとしては、前記表1で製造された実施例3のバインダーを用いた。
【0175】
<電池製造および電池特性評価>
前記実施例1~4および比較例1~6の負極スラリーを厚さ18μmの銅箔にコーティングして乾燥させ、該銅箔の一面に厚さ50μmの活物質層を形成し、直径14Φの円形に打ち抜いて試験用電極(負極)を製造した。正極として厚さ0.3mmの金属リチウム箔を使用し、分離膜として厚さ0.1mmの多孔質ポリエチレンシートを用い、電解質としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比1:1の混合溶媒に、リチウム塩としてLiPFを約1モル/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0176】
前記負極、正極、分離膜および電解質をステンレス容器の中に封止し、厚さ2mm、直径32mmの評価用コインセルを作製した。その評価結果を下記表2に示す。
【0177】
【表2】
【0178】
-初期効率(%):前記コインセルを0.05Cの定電流で電圧が0.01Vになるまで充電し、0.05Cの定電流で電圧が1.5Vになるまで放電して放電容量および初期効率をそれぞれ求め、(放電容量/充電容量)×100(%)の値で示した。
-容量維持率(%):前記コインセルを0.05Cの定電流で電圧が0.01Vになるまで充電し、0.05Cの定電流で電圧が1.5Vになるまで放電し、その後、サイクル特性は0.2Cの定電流に前記と同じ電圧範囲で実施して容量維持率試験を行い、30サイクルを基準に計算した。
-厚さ増加率(%):製造されたコインセルで負極活物質層を厚さ(X1)とし、前記コインセルを0.05Cの定電流で電圧が0.01Vになるまで充電し、0.05Cの定電流で電圧が1.5Vになるまで放電し、その後、サイクル特性は0.2Cの定電流で前記と同じ電圧範囲で行い、30サイクル後にコインセルから負極活物質層の厚さ(X2)を測定した。
【0179】
前記実施例1~4は、本発明に係る負極バインダーを用いた場合に該当する。これにより、充/放電に伴う体積膨張が大きい負極活物質(特に、シリコン系活物質)を用いた場合でも、体積膨張および収縮を抑制し、電極スウェリング(Swelling)による厚さの変化を最小化することができ、これによるリチウム二次電池の寿命性能に優れていることが確認できた。
【0180】
具体的には、線状高分子を一部架橋させるために特定含量のジアクリルアミドまたはジアクリレート化合物を含めて部分架橋構造(partially crosslinked)を形成し、バインダー自体の部分架橋構造(partially crosslinked)により、充放電時の電極の厚さの変化が少なく、寿命評価の進行時に容量維持率が改善される特徴を有することが確認できた。
【0181】
特に、前記実施例3の場合、負極活物質としてSiを100%適用した負極である。純粋なSiの場合、充放電によって体積膨張が激しく、一般にこれを適用することが困難であった。しかしながら、本発明による特定のバインダーを含むことにより、前記のように初期効率が他の実施例1、2および4より優れていることが確認できた。厚さ増加もまた純粋Si粒子を用いたため他の実施例1および2よりは物質特性上増加するが、本願発明のバインダーを適用することで厚さ増加率0~15%の範囲内に収まるものであり、この場合、負極を駆動するのに問題にならないレベルに該当する。すなわち、実施例3の負極の場合、容量特性を極大化すると同時に体積膨張を容易に抑えることが確認できた。
【0182】
前記比較例1および比較例2は、α,β-不飽和ニトリルを含む単量体;またはジアクリルアミドまたはジアクリレート含有化合物;を含まない場合である。この場合、初期効率は実施例と類似であるが、シリコン系活物質の体積膨張を抑えることができず、バインダーとしての役割を果たせないことが確認できる。
【0183】
前記比較例3から比較例5は、本願発明のように、負極バインダー重合体に4つの組成を含むが、その含量部が異なる場合であり、この場合でも比較例1および比較例2と同様に、シリコン系活物質の体積の膨張を抑えることができず、導電経路が破損して電池の性能が低下することが確認できた。
【0184】
さらに、比較例6は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマーを使用したものである。この場合、初期効率は実施例と類似であるが、シリコン系活物質の体積の膨張を抑えることができず、バインダーとしての役割を果たせないことが確認できる。
図1
図2