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特許7575174モータ制御装置、モータユニット、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】モータ制御装置、モータユニット、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20241022BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20241022BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241022BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241022BHJP
【FI】
H02P29/024
H02P27/06
B60L3/00 J
H02M7/48 M
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020154505
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048606
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】ニデックエレシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】岩上 直記
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-186871(JP,A)
【文献】特開2011-078216(JP,A)
【文献】特開昭60-219996(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155776(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0328514(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
H02P 27/06
B60L 3/00
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側アーム及び下側アームを有するモータ駆動回路と、
前記モータ駆動回路を制御する演算処理装置と、
前記演算処理装置を代替する代替回路と、
前記演算処理装置の状態に基づいて、前記演算処理装置が前記モータ駆動回路を制御する第1制御モードと、
前記代替回路が前記モータ駆動回路を制御する第2制御モードとの間で制御モードを切り替えるモード切替部と、
前記モータ駆動回路の入力電圧の大きさによって状態が変化する第1過電圧検出信号を出力する第1過電圧検出回路と、
を備え、
前記モード切替部は、前記演算処理装置の状態が正常状態から異常状態に変化したときに、前記制御モードを前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替え、
前記第2制御モードにおいて前記代替回路は、前記上側アーム及び前記下側アームの状態に基づいて、前記上側アーム及び前記下側アームに含まれるスイッチング素子の切り替えを制御し、
前記演算処理装置は、前記モータ駆動回路の入力電圧と第1閾値とを比較し、前記入力電圧が前記第1閾値を超えたときに、フェイルセーフ制御を実行し、
前記第1過電圧検出回路は、前記モータ駆動回路の入力電圧と前記第1閾値よりも高い第2閾値とを比較し、前記入力電圧が前記第2閾値を超えたときに、前記第1過電圧検出信号の状態を第1状態から第2状態に変化させ、
前記モード切替部は、前記第1過電圧検出信号の状態が前記第1状態から前記第2状態に変化したときにおいても、前記制御モードを前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替える、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記演算処理装置の状態を監視する監視部をさらに備え、
前記モード切替部は、前記演算処理装置の状態が正常状態から異常状態に変化したことを前記監視部が検知したときに、前記制御モードを前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替える
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記監視部は、前記演算処理装置と別に設けられる
請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記監視部は、前記演算処理装置の電源管理を行うPMICである
請求項2または請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記モータ駆動回路の入力電圧の大きさによって状態が変化する第2過電圧検出信号を出力する第2過電圧検出回路をさらに備え、
前記第2過電圧検出回路は、前記モータ駆動回路の入力電圧と前記第2閾値よりも高い第3閾値とを比較し、前記入力電圧が前記第3閾値を超えたときに、前記第2過電圧検出信号の状態を第1状態から第2状態に変化させ、
前記モード切替部は、前記第1過電圧検出信号及び前記第2過電圧検出信号の少なくとも一方が前記第1状態から前記第2状態に変化したときに、前記制御モードを前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替える
請求項1から4の何れかに記載のモータ制御装置。
【請求項6】
上側アーム及び下側アームを有するモータ駆動回路と、
前記モータ駆動回路を制御する演算処理装置と、
前記演算処理装置を代替する代替回路と、
前記モータ駆動回路の入力電圧の大きさによって状態が変化する第1過電圧検出信号を出力する第1過電圧検出回路と、
前記第1過電圧検出信号の状態に基づいて、前記演算処理装置が前記モータ駆動回路を制御する第1制御モードと、前記代替回路が前記モータ駆動回路を制御する第2制御モードとの間で制御モードを切り替えるモード切替部と、
前記モータ駆動回路と前記第1過電圧検出回路との間に介在する、第1分離回路と、
を備え、
前記演算処理装置は、前記モータ駆動回路の入力電圧と第1閾値とを比較し、前記入力電圧が前記第1閾値を超えたときに、フェイルセーフ制御を実行し、
前記第1過電圧検出回路は、前記モータ駆動回路の入力電圧と前記第1閾値よりも高い第2閾値とを比較し、前記入力電圧が前記第2閾値を超えたときに、前記第1過電圧検出信号の状態を第1状態から第2状態に変化させ、
前記モード切替部は、前記第1過電圧検出信号の状態が前記第1状態から前記第2状態に変化したときに、前記制御モードを前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替え、
前記第2制御モードにおいて前記代替回路は、前記上側アーム及び前記下側アームの状態に基づいて、前記上側アーム及び前記下側アームに含まれる前記スイッチング素子の切り替えを制御する
モータ制御装置。
【請求項7】
前記モータ駆動回路の入力電圧の大きさによって状態が変化する第2過電圧検出信号を出力する第2過電圧検出回路と、
前記モータ駆動回路と前記第2過電圧検出回路との間に介在する、第2分離回路と、
をさらに備え、
前記第2過電圧検出回路は、前記モータ駆動回路の入力電圧と前記第2閾値よりも高い第3閾値とを比較し、前記入力電圧が前記第3閾値を超えたときに、前記第2過電圧検出信号の状態を第1状態から第2状態に変化させ、
前記モード切替部は、前記第1過電圧検出信号及び前記第2過電圧検出信号の少なくとも一方が前記第1状態から前記第2状態に変化したときに、前記制御モードを前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替える
請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
前記モード切替部は、前記演算処理装置の状態が正常状態から異常状態に変化したときにおいても前記制御モードを前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替える
請求項6または請求項7に記載のモータ制御装置。
【請求項9】
前記演算処理装置の状態を監視する監視部をさらに備え、
前記モード切替部は、前記演算処理装置の状態が正常状態から異常状態に変化したことを前記監視部が検知したときに、前記制御モードを前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替える
請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項10】
前記監視部は、前記演算処理装置と別に設けられる
請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項11】
前記監視部は、前記演算処理装置の電源管理を行うPMICである
請求項または請求項10に記載のモータ制御装置。
【請求項12】
前記代替回路は、前記上側アーム及び前記下側アームの両方が正常状態にある場合、前記上側アームに含まれる前記スイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ前記下側アームに含まれる前記スイッチング素子の全てをオン状態に制御する
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項13】
前記代替回路は、前記上側アーム及び前記下側アームのうち前記上側アームが異常状態にある場合、前記上側アームに含まれる前記スイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ前記下側アームに含まれる前記スイッチング素子の全てをオン状態に制御する
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項14】
前記代替回路は、前記上側アーム及び前記下側アームのうち前記下側アームが異常状態にある場合、前記上側アームに含まれる前記スイッチング素子の全てをオン状態に制御し、且つ前記下側アームに含まれる前記スイッチング素子の全てをオフ状態に制御する
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項15】
前記代替回路は、前記上側アーム及び前記下側アームの両方が異常状態にある場合、前記上側アームに含まれる前記スイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ前記下側アームに含まれる前記スイッチング素子の全てをオフ状態に制御する
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項16】
前記代替回路は、前記モータ駆動回路のゲートドライバから出力される異常検出信号に基づいて、前記上側アーム及び前記下側アームが正常状態にあるか異常状態にあるかを判断する
請求項12から請求項15のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項17】
モータと、
前記モータを制御する請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
を備えるモータユニット。
【請求項18】
請求項17に記載のモータユニットを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、モータユニット、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動するインバータの異常時にインバータ及びモータを保護する技術として、インバータの上側アームまたは下側アームに含まれるスイッチング素子の全てをオン状態に制御するアクティブショートサーキット制御(ASC制御)と、インバータの全てのスイッチング素子をオフ状態に制御するシャットダウン制御(SD制御)とが知られている。以下では、ASC制御及びSD制御をフェイルセーフ制御と総称する。
【0003】
例えば特許文献1には、ASC制御の実行時にインバータの出力電流が過電流閾値を瞬間的に超えることに起因してASC制御がキャンセルされるのを防止するために、ASC制御の実行時に過電流閾値を通常時閾値からその通常時閾値よりも大きい短絡制御時閾値に変更する技術が開示されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、SD制御の実行時にスイッチング素子に過大なサージ電圧が印加されることを防止するために、SD制御の実行時に上側アームに含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、所定時間経過後に下側アームに含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-225236号公報
【文献】特開2014-217151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モータ制御装置は、インバータのスイッチング素子を制御するMCU(Micro Controller Unit)或いはCPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置を備える。一般的に、上記のASC制御及びSD制御を含むフェイルセーフ制御は演算処理装置によって実行される。そのため、演算処理装置に異常が生じると、フェイルセーフ制御が実行されない可能性がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて、演算処理装置の異常発生時にフェイルセーフ制御を実行可能なモータ制御装置、モータユニット、及び車両を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のモータ制御装置における一つの態様は、上側アーム及び下側アームを有するモータ駆動回路と、前記モータ駆動回路を制御する演算処理装置と、前記演算処理装置を代替する代替回路と、前記演算処理装置の状態に基づいて、前記演算処理装置が前記モータ駆動回路を制御する第1制御モードと、前記代替回路が前記モータ駆動回路を制御する第2制御モードとの間で制御モードを切り替えるモード切替部と、 前記モータ駆動回路の入力電圧の大きさによって状態が変化する第1過電圧検出信号を出力する第1過電圧検出回路と、を備える。前記モード切替部は、前記演算処理装置の状態が正常状態から異常状態に変化したときに、前記制御モードを前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替える。前記第2制御モードにおいて前記代替回路は、前記上側アーム及び前記下側アームの状態に基づいて、前記上側アーム及び前記下側アームに含まれるスイッチング素子の切り替えを制御する。 前記演算処理装置は、前記モータ駆動回路の入力電圧と第1閾値とを比較し、前記入力電圧が前記第1閾値を超えたときに、フェイルセーフ制御を実行し、前記第1過電圧検出回路は、前記モータ駆動回路の入力電圧と前記第1閾値よりも高い第2閾値とを比較し、前記入力電圧が前記第2閾値を超えたときに、前記第1過電圧検出信号の状態を第1状態から第2状態に変化させ、前記モード切替部は、前記第1過電圧検出信号の状態が前記第1状態から前記第2状態に変化したときにおいても、前記制御モードを前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替える
【0009】
本発明のモータ制御装置における一つの態様は、上側アーム及び下側アームを有するモータ駆動回路と、前記モータ駆動回路を制御する演算処理装置と、前記演算処理装置を代替する代替回路と、前記モータ駆動回路の入力電圧の大きさによって状態が変化する第1過電圧検出信号を出力する第1過電圧検出回路と、前記第1過電圧検出信号の状態に基づいて、前記演算処理装置が前記モータ駆動回路を制御する第1制御モードと、前記代替回路が前記モータ駆動回路を制御する第2制御モードとの間で制御モードを切り替えるモード切替部と、前記モータ駆動回路と前記第1過電圧検出回路との間に介在する、第1分離回路と、を備える。前記演算処理装置は、前記モータ駆動回路の入力電圧と第1閾値とを比較し、前記入力電圧が前記第1閾値を超えたときに、フェイルセーフ制御を実行する。前記第1過電圧検出回路は、前記モータ駆動回路の入力電圧と前記第1閾値よりも高い第2閾値とを比較し、前記入力電圧が前記第2閾値を超えたときに、前記第1過電圧検出信号の状態を第1状態から第2状態に変化させる。前記モード切替部は、前記第1過電圧検出信号の状態が前記第1状態から前記第2状態に変化したときに、前記制御モードを前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替える。前記第2制御モードにおいて前記代替回路は、前記上側アーム及び前記下側アームの状態に基づいて、前記上側アーム及び前記下側アームに含まれる前記スイッチング素子の切り替えを制御する。
【0010】
本発明のモータユニットにおける一つの態様は、モータと、前記モータを制御する上記態様のモータ制御装置と、を備える。
【0011】
本発明の車両における一つの態様は、上記態様のモータユニットを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、演算処理装置の異常発生時にフェイルセーフ制御を実行可能なモータ制御装置、モータユニット、及び車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態における車両の構成を模式的に示す図である。
図2図2は、本実施形態におけるモータ制御装置の内部回路の構成を模式的に示す図である。
図3図3は、通常時にMCUが不揮発性メモリに格納されるプログラムに従って実行するモータ制御処理を示すフローチャートである。
図4図4は、MCUが通常時モータ制御として実行するベクトル制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態における車両1の構成を模式的に示す図である。例えば車両1は、2つの駆動輪2と不図示の2つの操舵輪とを含む4つの車輪で走行する電気自動車である。本実施形態における車両1は、車速センサ3と、アクセルポジションセンサ(APS)4と、電子制御装置(ECU)5と、モータユニット6と、高電圧バッテリ7と、低電圧バッテリ8と、を備える。
【0015】
車速センサ3は、車両1の速度を検出し、その検出結果を車速データとして電子制御装置5に出力する。アクセルポジションセンサ4は、アクセルペダルの踏み込み量を検出し、その検出結果をアクセルポジションデータとして電子制御装置5に出力する。
【0016】
電子制御装置5は、車速センサ3から入力される車速データと、アクセルポジションセンサ4から入力されるアクセルポジションデータとに基づいて、後述のモータユニット6によって駆動輪2に伝達される駆動力を制御する。具体的には、電子制御装置5は、車速データ及びアクセルポジションデータに基づいて、運転者から要求される駆動力が駆動輪2に伝達されるトルク指令値Tm*を決定し、そのトルク指令値Tm*を示すモータ制御信号CSをモータユニット6に出力する。
【0017】
モータユニット6は、電子制御装置5から入力されるモータ制御信号CSに基づいて駆動輪2を駆動する。具体的には、モータユニット6は、モータ制御信号CSが示すトルク指令値Tm*に基づいてモータ10のトルクを制御することにより、運転者から要求される駆動力を駆動輪2に伝達する。モータユニット6は、モータ10と、減速機20と、ディファレンシャルギア30と、モータ制御装置40と、を備える。
【0018】
モータ10は、車両1の駆動源として用いられる高出力モータである。例えばモータ10は、インナーロータ型の三相同期モータである。モータ10は、ロータシャフト11と、U相端子12uと、V相端子12vと、W相端子12wと、U相コイル13uと、V相コイル13vと、W相コイル13wと、を有する。
【0019】
また、図1では図示を省略するが、モータ10は、モータハウジングと、モータハウジングに収容されたロータ及びステータとを有する。ロータは、モータハウジングの内部において、軸受け部品によって回転可能に支持される回転体である。ステータは、モータハウジングの内部において、ロータの外周面を囲う状態で固定され、ロータを回転させるのに必要な電磁力を発生させる。
【0020】
ロータシャフト11は、上記ロータと同軸接合される軸状体である。U相端子12u、V相端子12v及びW相端子12wは、それぞれモータハウジングの表面から露出する金属端子である。U相端子12u、V相端子12v及びW相端子12wは、モータ制御装置40と電気的に接続される。U相コイル13u、V相コイル13v及びW相コイル13wは、それぞれステータに設けられた励磁コイルである。U相コイル13u、V相コイル13v及びW相コイル13wは、モータ10の内部でスター結線される。
【0021】
U相コイル13uは、U相端子12uと中性点Nとの間に電気的に接続される。V相コイル13vは、V相端子12vと中性点Nとの間に電気的に接続される。W相コイル13wは、W相端子12wと中性点Nとの間に電気的に接続される。U相コイル13u、V相コイル13v及びW相コイル13wに流れる三相電流がモータ制御装置40によって制御されることにより、ロータを回転させるのに必要な電磁力が発生する。ロータが回転することにより、ロータシャフト11もロータに同期して回転する。ロータシャフト11の回転力は、減速機20及びディファレンシャルギア30を含む動力伝達機構を介して駆動輪2に伝達される。
【0022】
モータ制御装置40は、電子制御装置5から入力されるモータ制御信号CSに基づいてモータ10を制御する。具体的には、モータ制御装置40は、モータ制御信号CSが示すトルク指令値Tm*に基づいて、U相コイル13u、V相コイル13v及びW相コイル13wに流れる三相電流を制御することにより、モータ10のトルクをトルク指令値Tm*に対応する値に制御する。
【0023】
モータ制御装置40は、高電圧正極端子41と、高電圧負極端子42と、低電圧正極端子43と、低電圧負極端子44と、を電源端子として有する。高電圧正極端子41は、高電圧バッテリ7の正極端子と電気的に接続される。高電圧負極端子42は、高電圧バッテリ7の負極端子と電気的に接続される。低電圧正極端子43は、低電圧バッテリ8の正極端子と電気的に接続される。低電圧負極端子44は、低電圧バッテリ8の負極端子と電気的に接続される。
【0024】
高電圧バッテリ7及び低電圧バッテリ8は、例えばリチウムイオン電池或いはニッケル水素電池などの二次電池である。高電圧バッテリ7は、例えば470Vの高直流電圧HVを出力する。低電圧バッテリ8は、例えば12Vの低直流電圧LVを出力する。詳細は後述するが、モータ制御装置40の内部回路は、高電圧系回路と低電圧系回路とに区分される。高電圧バッテリ7からモータ制御装置40に出力される高直流電圧HVは、高電圧系回路を動作させる電源電圧として使用され、低電圧バッテリ8からモータ制御装置40に出力される低直流電圧LVは、低電圧系回路を動作させる電源電圧として使用される。
【0025】
モータ制御装置40は、U相出力端子45uと、V相出力端子45vと、W相出力端子45wと、を出力端子として有する。U相出力端子45uは、モータ10のU相端子12uと電気的に接続される。V相出力端子45vは、モータ10のV相端子12vと電気的に接続される。W相出力端子45wは、モータ10のW相端子12wと電気的に接続される。U相出力端子45u、V相出力端子45v、及びW相出力端子45wを介して、モータ制御装置40からモータ10へ三相電流が供給されることにより、トルク指令値Tm*によって決定されるトルクでモータ10が回転する。
【0026】
図2は、モータ制御装置40の内部回路の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、モータ制御装置40は、モータ駆動回路100と、第1分離回路210と、第2分離回路220と、MCU300と、PMIC(Power Management Integrated Circuit)400と、代替回路500と、第1過電圧検出回路610と、第2過電圧検出回路620と、論理和回路700と、マルチプレクサ800と、を備える。
【0027】
モータ駆動回路100は、高電圧バッテリ7から供給される直流電力を三相電力に変換してモータ10に出力する三相インバータである。モータ駆動回路100は、3つの上側スイッチング素子を含む上側アーム110と、3つの下側スイッチング素子を含む下側アーム120とを有する。上側アーム110は、U相上側スイッチング素子QUHと、V相上側スイッチング素子QVHと、W相上側スイッチング素子QWHと、を含む。下側アーム120は、U相下側スイッチング素子QULと、V相下側スイッチング素子QVLと、W相下側スイッチング素子QWLと、を含む。本実施形態において各スイッチング素子は、例えばNチャネル型IGBTである。また、各スイッチング素子は、逆並列にフリーホイールダイオードを備える。
【0028】
U相上側スイッチング素子QUHのコレクタ端子、V相上側スイッチング素子QVHのコレクタ端子、及びW相上側スイッチング素子QWHのコレクタ端子は、それぞれ高電圧正極端子41と電気的に接続される。U相下側スイッチング素子QULのエミッタ端子、V相下側スイッチング素子QVLのエミッタ端子、及びW相下側スイッチング素子QWLのエミッタ端子は、それぞれ高電圧負極端子42と電気的に接続される。なお、上記の通り、高電圧正極端子41は高電圧バッテリ7の正極端子と電気的に接続され、高電圧負極端子42は高電圧バッテリ7の負極端子と電気的に接続される。
【0029】
U相上側スイッチング素子QUHのエミッタ端子は、U相出力端子45uと、U相下側スイッチング素子QULのコレクタ端子とのそれぞれに電気的に接続される。すなわち、U相上側スイッチング素子QUHのエミッタ端子は、U相出力端子45uを介してモータ10のU相端子12uと電気的に接続される。
【0030】
V相上側スイッチング素子QVHのエミッタ端子は、V相出力端子45vと、V相下側スイッチング素子QVLのコレクタ端子とのそれぞれに電気的に接続される。すなわち、V相上側スイッチング素子QVHのエミッタ端子は、V相出力端子45vを介してモータ10のV相端子12vと電気的に接続される。
【0031】
W相上側スイッチング素子QWHのエミッタ端子は、W相出力端子45wと、W相下側スイッチング素子QWLのコレクタ端子とのそれぞれに電気的に接続される。すなわち、W相上側スイッチング素子QWHのエミッタ端子は、W相出力端子45wを介してモータ10のW相端子12wと電気的に接続される。
【0032】
モータ駆動回路100は、上記の各スイッチング素子を駆動するゲートドライバとして、U相上側ゲートドライバ111と、V相上側ゲートドライバ112と、W相上側ゲートドライバ113と、U相下側ゲートドライバ121と、V相下側ゲートドライバ122と、W相下側ゲートドライバ123と、を有する。
【0033】
U相上側ゲートドライバ111は、U相上側スイッチング素子QUHのゲート端子、コレクタ端子及びエミッタ端子と電気的に接続される。U相上側ゲートドライバ111は、マルチプレクサ800から出力されるU相上側ゲート制御信号UHGに基づいて、U相上側スイッチング素子QUHのゲート電圧を変化させる。ゲート電圧とは、ゲート端子とエミッタ端子との間の電圧である。具体的には、例えば、U相上側ゲート制御信号UHGがハイレベルのときに、U相上側ゲートドライバ111は、U相上側スイッチング素子QUHがオン状態となる値にゲート電圧を変化させる。一方、U相上側ゲート制御信号UHGがローレベルのときに、U相上側ゲートドライバ111は、U相上側スイッチング素子QUHがオフ状態となる値にゲート電圧を変化させる。
【0034】
また、U相上側ゲートドライバ111は、異常検出信号であるフォールト信号FLT1をMCU300及び代替回路500に出力する。U相上側ゲートドライバ111は、U相上側スイッチング素子QUHが正常状態にあるときにハイレベルのフォールト信号FLT1を出力する。一方、U相上側ゲートドライバ111は、U相上側スイッチング素子QUHが異常状態にあるときにローレベルのフォールト信号FLT1を出力する。例えば、U相上側スイッチング素子QUHに過大なコレクタ電流が流れると、コレクタ・エミッタ間電圧が飽和電圧を超える。この場合、U相上側スイッチング素子QUHは異常状態にあると判断される。例えばU相上側ゲートドライバ111は、U相上側スイッチング素子QUHのコレクタ・エミッタ間電圧を監視し、コレクタ・エミッタ間電圧が飽和電圧を超えたときに、ローレベルのフォールト信号FLT1を出力する。
【0035】
なお、U相上側スイッチング素子QUHが異常状態にあると判断される事象は、U相上側スイッチング素子QUHに過大なコレクタ電流が流れる事象に限定されない。例えば、U相上側スイッチング素子QUHの温度が大きく上昇する事象も、U相上側スイッチング素子QUHが異常状態にあると判断される事象である。そのため、例えばU相上側ゲートドライバ111は、U相上側スイッチング素子QUHの温度をサーミスタ等で監視し、その温度が閾値を超えたときに、ローレベルのフォールト信号FLT1を出力してもよい。さらに、U相上側ゲートドライバ111は、U相上側ゲートドライバ111の電源電圧が入力されない等が原因で動作しない場合もローレベルのフォールト信号FLT1を出力してもよい。
【0036】
V相上側ゲートドライバ112は、V相上側スイッチング素子QVHのゲート端子、コレクタ端子及びエミッタ端子と電気的に接続される。U相上側ゲートドライバ111と同様に、V相上側ゲートドライバ112は、マルチプレクサ800から出力されるV相上側ゲート制御信号VHGに基づいて、V相上側スイッチング素子QVHのゲート電圧を変化させる。
【0037】
また、U相上側ゲートドライバ111と同様に、V相上側ゲートドライバ112は、異常検出信号であるフォールト信号FLT2をMCU300及び代替回路500に出力する。すなわち、V相上側ゲートドライバ112は、V相上側スイッチング素子QVHが正常状態にあるときにハイレベルのフォールト信号FLT2を出力する。一方、V相上側ゲートドライバ112は、V相上側スイッチング素子QVHが異常状態にあるときにローレベルのフォールト信号FLT2を出力する。
【0038】
W相上側ゲートドライバ113は、W相上側スイッチング素子QWHのゲート端子、コレクタ端子及びエミッタ端子と電気的に接続される。U相上側ゲートドライバ111と同様に、W相上側ゲートドライバ113は、マルチプレクサ800から出力されるW相上側ゲート制御信号WHGに基づいて、W相上側スイッチング素子QWHのゲート電圧を変化させる。
【0039】
また、U相上側ゲートドライバ111と同様に、W相上側ゲートドライバ113は、異常検出信号であるフォールト信号FLT3をMCU300及び代替回路500に出力する。すなわち、W相上側ゲートドライバ113は、W相上側スイッチング素子QWHが正常状態にあるときにハイレベルのフォールト信号FLT3を出力する。一方、W相上側ゲートドライバ113は、W相上側スイッチング素子QWHが異常状態にあるときにローレベルのフォールト信号FLT3を出力する。
【0040】
U相下側ゲートドライバ121は、U相下側スイッチング素子QULのゲート端子、コレクタ端子及びエミッタ端子と電気的に接続される。U相上側ゲートドライバ111と同様に、U相下側ゲートドライバ121は、マルチプレクサ800から出力されるU相下側ゲート制御信号ULGに基づいて、U相下側スイッチング素子QULのゲート電圧を変化させる。
【0041】
また、U相上側ゲートドライバ111と同様に、U相下側ゲートドライバ121は、異常検出信号であるフォールト信号FLT4をMCU300及び代替回路500に出力する。すなわち、U相下側ゲートドライバ121は、U相下側スイッチング素子QULが正常状態にあるときにハイレベルのフォールト信号FLT4を出力する。一方、U相下側ゲートドライバ121は、U相下側スイッチング素子QULが異常状態にあるときにローレベルのフォールト信号FLT4を出力する。
【0042】
V相下側ゲートドライバ122は、V相下側スイッチング素子QVLのゲート端子、コレクタ端子及びエミッタ端子と電気的に接続される。U相上側ゲートドライバ111と同様に、V相下側ゲートドライバ122は、マルチプレクサ800から出力されるV相下側ゲート制御信号VLGに基づいて、V相下側スイッチング素子QVLのゲート電圧を変化させる。
【0043】
また、U相上側ゲートドライバ111と同様に、V相下側ゲートドライバ122は、異常検出信号であるフォールト信号FLT5をMCU300及び代替回路500に出力する。すなわち、V相下側ゲートドライバ122は、V相下側スイッチング素子QVLが正常状態にあるときにハイレベルのフォールト信号FLT5を出力する。一方、V相下側ゲートドライバ122は、V相下側スイッチング素子QVLが異常状態にあるときにローレベルのフォールト信号FLT5を出力する。
【0044】
W相下側ゲートドライバ123は、W相下側スイッチング素子QWLのゲート端子、コレクタ端子及びエミッタ端子と電気的に接続される。U相上側ゲートドライバ111と同様に、W相下側ゲートドライバ123は、マルチプレクサ800から出力されるW相下側ゲート制御信号WLGに基づいて、W相下側スイッチング素子QWLのゲート電圧を変化させる。
【0045】
また、U相上側ゲートドライバ111と同様に、W相下側ゲートドライバ123は、異常検出信号であるフォールト信号FLT6をMCU300及び代替回路500に出力する。すなわち、W相下側ゲートドライバ123は、W相下側スイッチング素子QWLが正常状態にあるときにハイレベルのフォールト信号FLT6を出力する。一方、W相下側ゲートドライバ123は、W相下側スイッチング素子QWLが異常状態にあるときにローレベルのフォールト信号FLT6を出力する。
【0046】
第1分離回路210及び第2分離回路220は、モータ制御装置40の内部回路を高電圧系回路と低電圧系回路とに分離する回路である。高電圧系回路は、上記のモータ駆動回路100を含む。低電圧系回路は、MCU300と、PMIC400と、代替回路500と、第1過電圧検出回路610と、第2過電圧検出回路620と、論理和回路700と、マルチプレクサ800と、を含む。
【0047】
第1分離回路210の入力端子は、高電圧正極端子41と電気的に接続される。第1分離回路210の出力端子は、第1過電圧検出回路610の入力端子と、MCU300の過電圧検出ポート310とに電気的に接続される。第1分離回路210は、高電圧系回路と低電圧系回路とを電気的に分離するとともに、高電圧バッテリ7から入力される高直流電圧HVを第1過電圧検出回路610に入力可能な低い電圧に変換して出力する。
【0048】
第2分離回路220の入力端子は、高電圧正極端子41と電気的に接続される。第2分離回路220の出力端子は、第2過電圧検出回路620の入力端子と電気的に接続される。第2分離回路220は、高電圧系回路と低電圧系回路とを電気的に分離するとともに、高電圧バッテリ7から入力される高直流電圧HVを第2過電圧検出回路620に入力可能な低い電圧に変換して出力する。第1分離回路210及び第2分離回路220は、例えばアイソレータ及び抵抗分圧回路などを含む回路によって構成される。
【0049】
第1分離回路210の出力電圧は、第2分離回路220の出力電圧と等しい。第1分離回路210及び第2分離回路220の出力電圧は、高電圧バッテリ7から入力される高直流電圧HV、すなわちモータ駆動回路100の入力電圧と比例関係にある。言い換えれば、第1分離回路210及び第2分離回路220の出力電圧は、モータ駆動回路100の入力電圧を表す。そのため、以下では、第1分離回路210及び第2分離回路220の出力電圧を、インバータ入力電圧VINVと呼称する。
【0050】
MCU300は、モータ駆動回路100を制御する演算処理装置である。MCU300は、例えば2つのプロセッサコアを搭載するデュアルコアタイプのMCUである。MCU300は、2つのプロセッサコアに加えて、プロセッサコアによって実行されるプログラム等を格納するフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、入出力ポート、通信ポート、および、これらを相互に接続する内部バスなどを有する。
【0051】
MCU300は、通信ポートとして、電子制御装置5とCAN(Controller Area Network)通信を行うCAN通信ポートと、PMIC400とSPI(Serial Peripheral Interface)通信を行うSPI通信ポートと、を有する。MCU300のCAN通信ポートは、不図示のCAN通信ケーブルを介して電子制御装置5と電気的に接続される。電子制御装置5から出力されるモータ制御信号CSは、CAN通信ケーブル及びCAN通信ポートを介してMCU300に入力される。MCU300のSPI通信ポートは、4線式のSPI通信バス320を介してPMIC400と電気的に接続される。
【0052】
MCU300は、電子制御装置5から入力されるモータ制御信号CSに基づいてモータ駆動回路100に含まれる各スイッチング素子のスイッチング制御を行う。具体的には、MCU300は、モータ制御信号CSが示すトルク指令値Tm*に基づいて、各スイッチング素子のスイッチングタイミングを表すタイミング信号を生成して出力ポートからマルチプレクサ800に出力する。スイッチングタイミングとは、各スイッチング素子の状態がオフ状態からオン状態に切り替わるタイミングと、オン状態からオフ状態に切り替わるタイミングである。タイミング信号は、例えばパルス幅変調された矩形波信号である。
【0053】
具体的には、MCU300は、U相上側スイッチング素子QUHのスイッチングタイミングを表すU相上側タイミング信号HPUをマルチプレクサ800に出力するとともに、U相下側スイッチング素子QULのスイッチングタイミングを表すU相下側タイミング信号LPUをマルチプレクサ800に出力する。
また、MCU300は、V相上側スイッチング素子QVHのスイッチングタイミングを表すV相上側タイミング信号HPVをマルチプレクサ800に出力するとともに、V相下側スイッチング素子QVLのスイッチングタイミングを表すV相下側タイミング信号LPVをマルチプレクサ800に出力する。
さらに、MCU300は、W相上側スイッチング素子QWHのスイッチングタイミングを表すW相上側タイミング信号HPWをマルチプレクサ800に出力するとともに、W相下側スイッチング素子QWLのスイッチングタイミングを表すW相下側タイミング信号LPWをマルチプレクサ800に出力する。
【0054】
MCU300は、入力ポートとして、第1分離回路210の出力端子と電気的に接続される過電圧検出ポート310を有する。詳細は後述するが、MCU300は、過電圧検出ポート310を介して第1分離回路210から入力されるインバータ入力電圧VINVと第1閾値VTH1とを比較し、インバータ入力電圧VINVが第1閾値VTH1を超えたときに、フェイルセーフ制御を実行する。フェイルセーフ制御とは、上側アーム110及び下側アーム120の一方に含まれるスイッチング素子の全てをオン状態にするとともに他方に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態にする制御(ASC制御)、もしくは上側アーム110及び下側アーム120の両方に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態にする制御(SD制御)のことである。なお、第1閾値VTH1は、MCU300の不揮発性メモリに予め格納されるデジタルデータである。また、過電圧検出ポート310を介して入力されるインバータ入力電圧VINVは、MCU300が内蔵するAD変換器によってデジタルデータに変換される。
【0055】
MCU300は、2つのプロセッサコアの異常を知らせる信号として第1エラー信号ER1及び第2エラー信号ER2をPMIC400に出力する。具体的には、MCU300は、2つのプロセッサコアが正常状態にあるとき、第1エラー信号ER1及び第2エラー信号ER2の両方をハイレベルにする。一方、MCU300は、2つのプロセッサコアの少なくとも一方が異常状態にあるとき、第1エラー信号ER1及び第2エラー信号ER2の少なくとも一方をローレベルにする。
【0056】
PMIC400は、MCU300の電源管理を行うとともに、MCU300の状態を監視する監視部として機能する。PMIC400は、MCU300と別に設けられる。PMIC400は、SPI通信バス320を介してMCU300と通信可能に接続される。PMIC400は、MCU300の電源管理に必要な処理を行うために、SPI通信バス320を介してMCU300と通信する。
【0057】
PMIC400は、低電圧正極端子43及び低電圧負極端子44を介して低電圧バッテリ8と電気的に接続される。PMIC400は、低電圧バッテリ8から出力される低直流電圧LVを基に低電圧系回路の動作に必要な電源電圧を生成して、MCU300、代替回路500、第1過電圧検出回路610、第2過電圧検出回路620、論理和回路700、及びマルチプレクサ800などに供給する。
【0058】
PMIC400は、MCU300の異常を知らせる信号としてリスタート信号RST、第1異常検知信号FOT、及び第2異常検知信号IOTを論理和回路700に出力する。具体的には、PMIC400は、MCU300が正常状態にあるとき、リスタート信号RST、第1異常検知信号FOT、及び第2異常検知信号IOTの全てをハイレベルにする。
【0059】
PMIC400は、MCU300が異常状態にあるとき、リスタート信号RST、第1異常検知信号FOT、及び第2異常検知信号IOTの少なくとも一つをローレベルにする。例えば、PMIC400は、MCU300から入力される第1エラー信号ER1及び第2エラー信号ER2の少なくとも一方がローレベルのとき、第1異常検知信号FOTをローレベルにする。また、PMIC400は、MCU300を再起動させる必要のある異常が生じたとき、リスタート信号RSTをローレベルにする。また、PMIC400は、その他の異常がMCU300に生じたとき、第2異常検知信号IOTをローレベルにする。
【0060】
代替回路500は、MCU300を代替する回路である。代替回路500は、第1論理和回路510と、第2論理和回路520と、マトリクス回路530と、第1スイッチ540と、第2スイッチ550と、を有する。
【0061】
第1論理和回路510には、U相上側ゲートドライバ111から出力されるフォールト信号FLT1と、V相上側ゲートドライバ112から出力されるフォールト信号FLT2と、W相上側ゲートドライバ113から出力されるフォールト信号FLT3と、が入力される。第1論理和回路510は、フォールト信号FLT1、FLT2及びFLT3の論理和を演算し、その演算結果を示す上側アームフォールト信号FLTHをマトリクス回路530に出力する。
【0062】
第1論理和回路510は、負論理の論理和回路である。従って、フォールト信号FLT1、FLT2及びFLT3の少なくとも一つがローレベルのときに、第1論理和回路510からローレベルの上側アームフォールト信号FLTHが出力される。フォールト信号FLT1、FLT2及びFLT3の全てがハイレベルのときに、第1論理和回路510からハイレベルの上側アームフォールト信号FLTHが出力される。言い換えれば、上側アーム110に含まれるU相上側スイッチング素子QUH、V相上側スイッチング素子QVH、及びW相上側スイッチング素子QWHの少なくとも一つが異常状態にあるときに、第1論理和回路510からローレベルの上側アームフォールト信号FLTHが出力される。上側アーム110に含まれるU相上側スイッチング素子QUH、V相上側スイッチング素子QVH、及びW相上側スイッチング素子QWHの全てが正常状態にあるときに、第1論理和回路510からハイレベルの上側アームフォールト信号FLTHが出力される。
【0063】
以下では、上側アーム110に含まれるU相上側スイッチング素子QUH、V相上側スイッチング素子QVH、及びW相上側スイッチング素子QWHの少なくとも一つが異常状態にあることを、「上側アーム110が異常状態にある」と記述する。また、上側アーム110に含まれるU相上側スイッチング素子QUH、V相上側スイッチング素子QVH、及びW相上側スイッチング素子QWHの全てが正常状態にあることを、「上側アーム110が正常状態にある」と記述する。すなわち、上側アーム110が異常状態にあるときに、第1論理和回路510からローレベルの上側アームフォールト信号FLTHが出力される。また、上側アーム110が正常状態にあるときに、第1論理和回路510からハイレベルの上側アームフォールト信号FLTHが出力される。
【0064】
第2論理和回路520には、U相下側ゲートドライバ121から出力されるフォールト信号FLT4と、V相下側ゲートドライバ122から出力されるフォールト信号FLT5と、W相下側ゲートドライバ123から出力されるフォールト信号FLT6と、が入力される。第2論理和回路520は、フォールト信号FLT4、FLT5及びFLT6の論理和を演算し、その演算結果を示す下側アームフォールト信号FLTLをマトリクス回路530に出力する。
【0065】
第2論理和回路520は、負論理の論理和回路である。従って、フォールト信号FLT4、FLT5及びFLT6の少なくとも一つがローレベルのときに、第2論理和回路520からローレベルの下側アームフォールト信号FLTLが出力される。フォールト信号FLT4、FLT5及びFLT6の全てがハイレベルのときに、第2論理和回路520からハイレベルの下側アームフォールト信号FLTLが出力される。言い換えれば、下側アーム120に含まれるU相下側スイッチング素子QUL、V相下側スイッチング素子QVL、及びW相下側スイッチング素子QWLの少なくとも一つが異常状態にあるときに、第2論理和回路520からローレベルの下側アームフォールト信号FLTLが出力される。下側アーム120に含まれるU相下側スイッチング素子QUL、V相下側スイッチング素子QVL、及びW相下側スイッチング素子QWLの全てが正常状態にあるときに、第2論理和回路520からハイレベルの下側アームフォールト信号FLTLが出力される。
【0066】
以下では、下側アーム120に含まれるU相下側スイッチング素子QUL、V相下側スイッチング素子QVL、及びW相下側スイッチング素子QWLの少なくとも一つが異常状態にあることを、「下側アーム120が異常状態にある」と記述する。また、下側アーム120に含まれるU相下側スイッチング素子QUL、V相下側スイッチング素子QVL、及びW相下側スイッチング素子QWLの全てが正常状態にあることを、「下側アーム120が正常状態にある」と記述する。すなわち、下側アーム120が異常状態にあるときに、第2論理和回路520からローレベルの下側アームフォールト信号FLTLが出力される。また、下側アーム120が正常状態にあるときに、第2論理和回路520からハイレベルの下側アームフォールト信号FLTLが出力される。
【0067】
マトリクス回路530は、第1論理和回路510から入力される上側アームフォールト信号FLTHと、第2論理和回路520から入力される下側アームフォールト信号FLTLとに基づいて、第1出力信号OUT1を第1スイッチ540に出力するとともに、第2出力信号OUT2を第2スイッチ550に出力する。
【0068】
上側アームフォールト信号FLTH及び下側アームフォールト信号FLTLの両方がハイレベルのとき、マトリクス回路530は、ローレベルの第1出力信号OUT1を第1スイッチ540に出力するとともに、ハイレベルの第2出力信号OUT2を第2スイッチ550に出力する。言い換えれば、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にあるときに、マトリクス回路530は、ローレベルの第1出力信号OUT1を第1スイッチ540に出力するとともに、ハイレベルの第2出力信号OUT2を第2スイッチ550に出力する。
【0069】
上側アームフォールト信号FLTHがローレベルであり、且つ下側アームフォールト信号FLTLがハイレベルのとき、マトリクス回路530は、ローレベルの第1出力信号OUT1を第1スイッチ540に出力するとともに、ハイレベルの第2出力信号OUT2を第2スイッチ550に出力する。言い換えれば、上側アーム110及び下側アーム120のうち上側アーム110が異常状態にあるときに、マトリクス回路530は、ローレベルの第1出力信号OUT1を第1スイッチ540に出力するとともに、ハイレベルの第2出力信号OUT2を第2スイッチ550に出力する。
【0070】
上側アームフォールト信号FLTHがハイレベルであり、且つ下側アームフォールト信号FLTLがローレベルのとき、マトリクス回路530は、ハイレベルの第1出力信号OUT1を第1スイッチ540に出力するとともに、ローレベルの第2出力信号OUT2を第2スイッチ550に出力する。言い換えれば、上側アーム110及び下側アーム120のうち下側アーム120が異常状態にあるときに、マトリクス回路530は、ハイレベルの第1出力信号OUT1を第1スイッチ540に出力するとともに、ローレベルの第2出力信号OUT2を第2スイッチ550に出力する。
【0071】
上側アームフォールト信号FLTH及び下側アームフォールト信号FLTLの両方がローレベルのとき、マトリクス回路530は、ローレベルの第1出力信号OUT1を第1スイッチ540に出力するとともに、ローレベルの第2出力信号OUT2を第2スイッチ550に出力する。言い換えれば、上側アーム110及び下側アーム120の両方が異常状態にあるときに、マトリクス回路530は、ローレベルの第1出力信号OUT1を第1スイッチ540に出力するとともに、ローレベルの第2出力信号OUT2を第2スイッチ550に出力する。
【0072】
第1スイッチ540は、3つの接点541、542及び543を有する。接点541は、ハイレベル電圧ライン561と電気的に接続される。ハイレベル電圧ライン561には、PMIC400からハイレベル電圧VHiが供給される。接点542は、ローレベル電圧ライン562と電気的に接続される。ローレベル電圧ライン562には、PMIC400からローレベル電圧VLoが供給される。言い換えれば、ローレベル電圧ライン562は、低電圧系回路のグランド端子である低電圧負極端子44と電気的に接続される。
【0073】
接点543は、マルチプレクサ800と電気的に接続される。以下では、接点543からマルチプレクサ800に出力される信号を上側アーム制御信号HGと呼称する。マトリクス回路530から第1スイッチ540に入力される第1出力信号OUT1がローレベルのとき、接点542と接点543とが電気的に接続されることにより、接点543からローレベル電圧VLoを有する上側アーム制御信号HGがマルチプレクサ800に出力される。また、マトリクス回路530から第1スイッチ540に入力される第1出力信号OUT1がハイレベルのとき、接点541と接点543とが電気的に接続されることにより、接点543からハイレベル電圧VHiを有する上側アーム制御信号HGがマルチプレクサ800に出力される。
【0074】
第2スイッチ550は、3つの接点551、552及び553を有する。接点551は、ハイレベル電圧ライン561と電気的に接続される。接点552は、ローレベル電圧ライン562と電気的に接続される。接点553は、マルチプレクサ800と電気的に接続される。以下では、接点553からマルチプレクサ800に出力される信号を下側アーム制御信号LGと呼称する。
【0075】
マトリクス回路530から第2スイッチ550に入力される第2出力信号OUT2がローレベルのとき、接点552と接点553とが電気的に接続されることにより、接点553からローレベル電圧VLoを有する下側アーム制御信号LGがマルチプレクサ800に出力される。マトリクス回路530から第2スイッチ550に入力される第2出力信号OUT2がハイレベルのとき、接点551と接点553とが電気的に接続されることにより、接点553からハイレベル電圧VHiを有する下側アーム制御信号LGがマルチプレクサ800に出力される。
【0076】
上記のように、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にあるときに、ローレベル電圧VLoを有する上側アーム制御信号HGをマルチプレクサ800に出力するとともに、ハイレベル電圧VHiを有する下側アーム制御信号LGをマルチプレクサ800に出力する。
【0077】
また、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120のうち上側アーム110が異常状態にあるときに、ローレベル電圧VLoを有する上側アーム制御信号HGをマルチプレクサ800に出力するとともに、ハイレベル電圧VHiを有する下側アーム制御信号LGをマルチプレクサ800に出力する。
【0078】
また、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120のうち下側アーム120が異常状態にあるときに、ハイレベル電圧VHiを有する上側アーム制御信号HGをマルチプレクサ800に出力するとともに、ローレベル電圧VLoを有する下側アーム制御信号LGをマルチプレクサ800に出力する。
【0079】
さらに、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が異常状態にあるときに、ローレベル電圧VLoを有する上側アーム制御信号HGをマルチプレクサ800に出力するとともに、ローレベル電圧VLoを有する下側アーム制御信号LGをマルチプレクサ800に出力する。
【0080】
第1過電圧検出回路610は、モータ駆動回路100の入力電圧であるインバータ入力電圧VINVの大きさによって状態が変化する第1過電圧検出信号DV1を論理和回路700に出力する。具体的には、第1過電圧検出回路610は、第1分離回路210から入力されるインバータ入力電圧VINVと第1閾値VTH1よりも高い第2閾値VTH2とを比較し、インバータ入力電圧VINVが第2閾値VTH2を超えたときに、第1過電圧検出信号DV1の状態を第1状態から第2状態に変化させる。本実施形態において、第1状態とはハイレベルであり、第2状態とはローレベルである。
【0081】
第2過電圧検出回路620は、モータ駆動回路100の入力電圧であるインバータ入力電圧VINVの大きさによって状態が変化する第2過電圧検出信号DV2を論理和回路700に出力する。具体的には、第2過電圧検出回路620は、第2分離回路220から入力されるインバータ入力電圧VINVと第2閾値VTH2よりも高い第3閾値VTH3とを比較し、インバータ入力電圧VINVが第3閾値VTH3を超えたときに、第2過電圧検出信号DV2の状態を第1状態から第2状態に変化させる。
【0082】
第1過電圧検出回路610及び第2過電圧検出回路620は、それぞれコンパレータを含むアナログ比較回路によって構成される。つまり、第2閾値VTH2及び第3閾値VTH3は、第1閾値VTH1のように不揮発性メモリに格納されるデジタルデータではなく、例えば抵抗分圧回路などによって生成されるアナログ電圧である。第1過電圧検出回路610において、アナログ電圧であるインバータ入力電圧VINVと、アナログ電圧である第2閾値VTH2とがコンパレータに入力され、そのコンパレータの出力信号が第1過電圧検出信号DV1として論理和回路700に出力される。同様に、第2過電圧検出回路620において、アナログ電圧であるインバータ入力電圧VINVと、アナログ電圧である第3閾値VTH3とがコンパレータに入力され、そのコンパレータの出力信号が第2過電圧検出信号DV2として論理和回路700に出力される。
【0083】
第1閾値VTH1、第2閾値VTH2及び第3閾値VTH3は、高電圧バッテリ7の定格電圧である470Vからモータ駆動回路100の耐圧である700Vまでの範囲で決定される。第1閾値VTH1は、470Vよりも高く且つ第2閾値VTH2よりも低い電圧値である。第2閾値VTH2は、第1閾値VTH1よりも高く且つ第3閾値VTH3よりも低い電圧値である。第3閾値VTH3は、第2閾値VTH2よりも高く且つ700Vよりも低い電圧値である。
【0084】
論理和回路700は、負論理の論理和回路である。論理和回路700には、PMIC400から出力されるリスタート信号RST、第1異常検知信号FOT、及び第2異常検知信号IOTと、第1過電圧検出回路610から出力される第1過電圧検出信号DV1と、第2過電圧検出回路620から出力される第2過電圧検出信号DV2と、が入力される。論理和回路700は、リスタート信号RST、第1異常検知信号FOT、第2異常検知信号IOT、第1過電圧検出信号DV1、及び第2過電圧検出信号DV2の論理和を演算し、その演算結果を示す信号をモード切替信号MSとしてマルチプレクサ800に出力する。
【0085】
リスタート信号RST、第1異常検知信号FOT、第2異常検知信号IOT、第1過電圧検出信号DV1、及び第2過電圧検出信号DV2の少なくとも一つがローレベルのときに、論理和回路700からローレベルのモード切替信号MSが出力される。また、リスタート信号RST、第1異常検知信号FOT、第2異常検知信号IOT、第1過電圧検出信号DV1、及び第2過電圧検出信号DV2の全てがハイレベルのときに、論理和回路700からハイレベルのモード切替信号MSが出力される。
【0086】
すなわち、以下の条件1から条件3までの全ての条件が満たされるときに、論理和回路700からハイレベルのモード切替信号MSが出力される。
(条件1)PMIC400によってMCU300が正常状態にあることが検知される。
(条件2)第1過電圧検出回路610によってインバータ入力電圧VINVが第2閾値VTH2以下であることが検知される。
(条件3)第2過電圧検出回路620によってインバータ入力電圧VINVが第3閾値VTH3以下であることが検知される。
【0087】
また、以下の条件4から条件6までの少なくとも一つの条件が満たされるときに、論理和回路700からローレベルのモード切替信号MSが出力される。
(条件4)PMIC400によってMCU300が異常状態にあることが検知される。
(条件5)第1過電圧検出回路610によってインバータ入力電圧VINVが第2閾値VTH2を超えたことが検知される。
(条件6)第2過電圧検出回路620によってインバータ入力電圧VINVが第3閾値VTH3を超えたことが検知される。
【0088】
マルチプレクサ800には、論理和回路700から出力されるモード切替信号MSと、MCU300から出力される各タイミング信号と、代替回路500から出力される上側アーム制御信号HG及び下側アーム制御信号LGと、が入力される。上記のように、MCU300から出力されるタイミング信号には、U相上側タイミング信号HPU、U相下側タイミング信号LPU、V相上側タイミング信号HPV、V相下側タイミング信号LPV、W相上側タイミング信号HPW、及びW相下側タイミング信号LPWが含まれる。
【0089】
マルチプレクサ800は、モード切替信号MSがハイレベルのときに、U相上側タイミング信号HPUをU相上側ゲート制御信号UHGとしてU相上側ゲートドライバ111に出力し、V相上側タイミング信号HPVをV相上側ゲート制御信号VHGとしてV相上側ゲートドライバ112に出力し、W相上側タイミング信号HPWをW相上側ゲート制御信号WHGとしてW相上側ゲートドライバ113に出力する。
また、マルチプレクサ800は、モード切替信号MSがハイレベルのときに、U相下側タイミング信号LPUをU相下側ゲート制御信号ULGとしてU相下側ゲートドライバ121に出力し、V相下側タイミング信号LPVをV相下側ゲート制御信号VLGとしてV相下側ゲートドライバ122に出力し、W相下側タイミング信号LPWをW相下側ゲート制御信号WLGとしてW相下側ゲートドライバ123に出力する。
【0090】
マルチプレクサ800は、モード切替信号MSがローレベルのときに、上側アーム制御信号HGをU相上側ゲート制御信号UHGとしてU相上側ゲートドライバ111に出力し、上側アーム制御信号HGをV相上側ゲート制御信号VHGとしてV相上側ゲートドライバ112に出力し、上側アーム制御信号HGをW相上側ゲート制御信号WHGとしてW相上側ゲートドライバ113に出力する。
また、マルチプレクサ800は、モード切替信号MSがローレベルのときに、下側アーム制御信号LGをU相下側ゲート制御信号ULGとしてU相下側ゲートドライバ121に出力し、下側アーム制御信号LGをV相下側ゲート制御信号VLGとしてV相下側ゲートドライバ122に出力し、下側アーム制御信号LGをW相下側ゲート制御信号WLGとしてW相下側ゲートドライバ123に出力する。
【0091】
上記のように、モード切替信号MSがハイレベルのとき、モータ駆動回路100は、MCU300から出力される各タイミング信号によって制御される。以下ではこのように、MCU300がモータ駆動回路100を制御する状態を第1制御モードと呼称する。また、モード切替信号MSがローレベルのとき、モータ駆動回路100は、代替回路500から出力される上側アーム制御信号HG及び下側アーム制御信号LGによって制御される。以下ではこのように、代替回路500がモータ駆動回路100を制御する状態を第2制御モードと呼称する。
【0092】
すなわち、マルチプレクサ800は、MCU300の状態、言い換えればモード切替信号MSの状態に基づいて、MCU300がモータ駆動回路100を制御する第1制御モードと、代替回路500がモータ駆動回路100を制御する第2制御モードとの間で制御モードを切り替えるモード切替部として機能する。マルチプレクサ800は、モード切替信号MSがハイレベルからローレベルに変化したときに、制御モードを第1制御モードから第2制御モードに切り替える。詳細は後述するが、第2制御モードにおいて代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の状態に基づいて、上側アーム110及び下側アーム120に含まれるスイッチング素子の切り替えを制御する。具体的には、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の状態に基づいて、上側アーム110及び下側アーム120の一方に含まれるスイッチング素子の全てをオン状態にするとともに他方に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態にする制御(ASC制御)、もしくは上側アーム110及び下側アーム120の両方に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態にする制御(SD制御)のどちらかを行う。
【0093】
次に、上記のように構成されるモータ制御装置40の動作について説明する。
まず、通常時におけるモータ制御装置40の動作について説明する。通常時とは、以下の条件1から条件3までの全ての条件が満たされるときである。
(条件1)PMIC400によってMCU300が正常状態にあることが検知される。
(条件2)第1過電圧検出回路610によってインバータ入力電圧VINVが第2閾値VTH2以下であることが検知される。
(条件3)第2過電圧検出回路620によってインバータ入力電圧VINVが第3閾値VTH3以下であることが検知される。
【0094】
条件1が満たされるとき、PMIC400から論理和回路700に出力されるリスタート信号RST、第1異常検知信号FOT、及び第2異常検知信号IOTの全てはハイレベルとなる。条件2が満たされるとき、第1過電圧検出回路610から論理和回路700に出力される第1過電圧検出信号DV1はハイレベルとなる。条件3が満たされるとき、第2過電圧検出回路620から論理和回路700に出力される第2過電圧検出信号DV2はハイレベルとなる。従って、条件1から条件3までの全ての条件が満たされるとき、論理和回路700からマルチプレクサ800にハイレベルのモード切替信号MSが出力される。モード切替信号MSがハイレベルのとき、モータ制御装置40の制御モードは、MCU300がモータ駆動回路100を制御する第1制御モードとなる。
【0095】
図3は、通常時にMCU300が、不揮発性メモリに格納されるプログラムに従って実行するモータ制御処理を示すフローチャートである。なお、MCU300は、図3に示すモータ制御処理を所定の制御周期で繰り返し実行する。
【0096】
図3に示すように、まず、MCU300は、過電圧検出ポート310を介して第1分離回路210から入力されるインバータ入力電圧VINVと第1閾値VTH1とを比較し、インバータ入力電圧VINVが第1閾値VTH1を超えたか否かを判定する(ステップS1)。具体的には、ステップS1においてMCU300は、AD変換器によってデジタルデータに変換されたインバータ入力電圧VINVと、不揮発性メモリから読み出した第1閾値VTH1とを比較することにより、インバータ入力電圧VINVが第1閾値VTH1を超えたか否かを判定する。なお、既に述べたように、第1閾値VTH1は、高電圧バッテリ7の定格電圧である470Vよりも高く且つ第2閾値VTH2よりも低い。
【0097】
ステップS1において「No」の場合、すなわち、インバータ入力電圧VINVが第1閾値VTH1以下の場合、MCU300は、電子制御装置5から入力されるモータ制御信号CSに基づいて通常時モータ制御を行う(ステップS2)。本実施形態では、MCU300は、通常時モータ制御として、電子制御装置5から入力されるモータ制御信号CSが示すトルク指令値Tm*に基づいて、モータ駆動回路100からモータ10に供給される三相電流をベクトル制御することにより、トルク指令値Tm*によって決定されるトルクでモータ10を回転させる。ベクトル制御は、三相同期モータであるモータ10の制御方式として一般的に知られているため、本実施形態では図4を参照しながらベクトル制御について簡単に説明する。
【0098】
図4は、ステップS2においてMCU300が、通常時モータ制御として実行するベクトル制御を示すフローチャートである。図4に示すように、MCU300は、モータ駆動回路100に設けられるシャント抵抗器などの不図示の電流センサから、U相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iwを含む三相電流の検出値を取得する(ステップS21)。
【0099】
続いて、MCU300は、U相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iwの検出値をクラーク変換することにより、固定座標系における二相電流Iα及びIβを算出する(ステップS22)。
【0100】
続いて、MCU300は、式(1)及び式(2)に基づくパーク変換により、固定座標系における二相電流Iα及びIβを、回転座標系におけるd軸電流Idとq軸電流Iqとに変換する(ステップS23)。なお、MCU300は、式(1)及び式(2)における「θ」として、モータ10に取り付けられるレゾルバ等の不図示の位置検出装置から、モータ10の回転角度θの検出値を取得する。
Id=Iα・cosθ+Iβ・sinθ …(1)
Iq=-Iα・sinθ+Iβ・cosθ …(2)
【0101】
続いて、MCU300は、トルク指令値Tm*に基づいて、目標d軸電流IdREFと目標q軸電流IqREFとを決定する(ステップS24)。MCU300の不揮発性メモリには、トルク指令値Tm*に対応する目標d軸電流IdREF及び目標q軸電流IqREFを示すテーブルデータが予め格納される。ステップS24においてMCU300は、不揮発性メモリに格納されるテーブルデータから、モータ制御信号CSが示すトルク指令値Tm*に対応する目標d軸電流IdREF及び目標q軸電流IqREFを読み出すことにより、目標d軸電流IdREFと目標q軸電流IqREFとを決定する。
【0102】
続いて、MCU300は、d軸電流Idと目標d軸電流IdREFとの偏差がゼロとなるd軸電圧VdをPI演算によって算出するとともに、q軸電流Iqと目標q軸電流IqREFとの偏差がゼロとなるq軸電圧VqをPI演算によって算出する(ステップS25)。
【0103】
続いて、MCU300は、式(3)及び式(4)に基づく逆パーク変換により、回転座標系におけるd軸電圧Vd及びq軸電圧Vqを、固定座標系における二相電圧Vα及びVβに逆変換する(ステップS26)。式(3)及び式(4)における「θ」として、レゾルバ等の不図示の位置検出装置から得られる回転角度θの検出値が用いられる。
Vα=Vd・cosθ-Vq・sinθ …(3)
Vβ=Vd・sinθ+Vq・cosθ …(4)
【0104】
続いて、MCU300は、空間ベクトル変換により、二相電圧値Vα及びVβを三相電圧に逆変換する(ステップS27)。三相電圧には、U相電圧Vu、V相電圧Vv及びW相電圧Vwが含まれる。最後に、MCU300は、上記の空間ベクトル変換により得られた三相電圧がモータ10に印加されるU相上側タイミング信号HPU、V相上側タイミング信号HPV、W相上側タイミング信号HPW、U相下側タイミング信号LPU、V相下側タイミング信号LPV、及びW相下側タイミング信号LPWを生成してマルチプレクサ800に出力する(ステップS28)。
【0105】
モード切替信号MSがハイレベルのとき、マルチプレクサ800は、MCU300から入力されるU相上側タイミング信号HPUをU相上側ゲート制御信号UHGとしてU相上側ゲートドライバ111に出力し、MCU300から入力されるV相上側タイミング信号HPVをV相上側ゲート制御信号VHGとしてV相上側ゲートドライバ112に出力し、MCU300から入力されるW相上側タイミング信号HPWをW相上側ゲート制御信号WHGとしてW相上側ゲートドライバ113に出力する。
また、モード切替信号MSがハイレベルのとき、マルチプレクサ800は、MCU300から入力されるU相下側タイミング信号LPUをU相下側ゲート制御信号ULGとしてU相下側ゲートドライバ121に出力し、MCU300から入力されるV相下側タイミング信号LPVをV相下側ゲート制御信号VLGとしてV相下側ゲートドライバ122に出力し、MCU300から入力されるW相下側タイミング信号LPWをW相下側ゲート制御信号WLGとしてW相下側ゲートドライバ123に出力する。
【0106】
上記のように、インバータ入力電圧VINVが第1閾値VTH1以下の場合には、MCU300が、電子制御装置5から入力されるモータ制御信号CSに基づいて、通常時モータ制御としてベクトル制御を実行することにより、モータ駆動回路100に含まれる各スイッチング素子が適切なタイミングでスイッチング制御される。その結果、モータ駆動回路1100からモータ10に供給されるU相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iwが適切に制御されることにより、トルク指令値Tm*によって決定されるトルクでモータ10が回転し、運転者から要求される駆動力がモータユニット6から駆動輪2に伝達される。
【0107】
以下、図3に戻って説明を続ける。図3のステップS1において「Yes」の場合、すなわち、インバータ入力電圧VINVが第1閾値VTH1を超えた場合、モータ駆動回路100に異常が生じた可能性が高く、さらにインバータ入力電圧VINVが上昇すればスイッチング素子等の故障に繋がるため、MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120の状態に基づいてフェイルセーフ制御を実行する(ステップS3)。
【0108】
まず、ステップS3においてMCU300は、上側アーム110及び下側アーム120が正常状態にあるか異常状態にあるかを判断する。具体的には、MCU300は、U相上側ゲートドライバ111から入力されるフォールト信号FLT1と、V相上側ゲートドライバ112から入力されるフォールト信号FLT2と、W相上側ゲートドライバ113から入力されるフォールト信号FLT3との全てがハイレベルの場合、上側アーム110が正常状態にあると判断する。また、MCU300は、フォールト信号FLT1、FLT2及びFLT3の少なくとも一つがローレベルの場合、上側アーム110が異常状態にあると判断する。
【0109】
また、MCU300は、U相下側ゲートドライバ121から入力されるフォールト信号FLT4と、V相下側ゲートドライバ122から入力されるフォールト信号FLT5と、W相下側ゲートドライバ123から入力されるフォールト信号FLT6との全てがハイレベルの場合、下側アーム120が正常状態にあると判断する。また、MCU300は、フォールト信号FLT4、FLT5及びFLT6の少なくとも一つがローレベルの場合、下側アーム120が異常状態にあると判断する。
【0110】
そして、MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にあると判断したとき、U相上側タイミング信号HPU、V相上側タイミング信号HPV及びW相上側タイミング信号HPWの全てをローレベルにセットしてマルチプレクサ800に出力する。これにより、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相上側ゲート制御信号UHG、V相上側ゲート制御信号VHG及びW相上側ゲート制御信号WHGは全てローレベルとなる。
また、MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にあると判断したとき、U相下側タイミング信号LPU、V相下側タイミング信号LPV及びW相下側タイミング信号LPWの全てをハイレベルにセットしてマルチプレクサ800に出力する。これにより、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相下側ゲート制御信号ULG、V相下側ゲート制御信号VLG及びW相下側ゲート制御信号WLGは全てハイレベルとなる。
【0111】
その結果、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てはオフ状態に制御され、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てはオン状態に制御される。言い換えれば、MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にあると判断したとき、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオン状態に制御するASC制御を実行する。これにより、上側アーム110に含まれるすべてのスイッチング素子を通る電流は遮断され、モータ10で発生した逆起電力は下側アーム120からなる閉回路内で還流する。これにより、インバータ入力電圧VINVのさらなる上昇や、モータ10のさらなる加速を防ぎ、スイッチング素子、高電圧バッテリ7の損傷を防ぐことができる。
【0112】
MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120のうち上側アーム110が異常状態にあると判断したとき、U相上側タイミング信号HPU、V相上側タイミング信号HPV及びW相上側タイミング信号HPWの全てをローレベルにセットしてマルチプレクサ800に出力する。これにより、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相上側ゲート制御信号UHG、V相上側ゲート制御信号VHG及びW相上側ゲート制御信号WHGは全てローレベルとなる。
また、MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120のうち上側アーム110が異常状態にあると判断したとき、U相下側タイミング信号LPU、V相下側タイミング信号LPV及びW相下側タイミング信号LPWの全てをハイレベルにセットしてマルチプレクサ800に出力する。これにより、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相下側ゲート制御信号ULG、V相下側ゲート制御信号VLG及びW相下側ゲート制御信号WLGは全てハイレベルとなる。
【0113】
その結果、上側アーム110及び下側アーム120のうち上側アーム110が異常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てはオフ状態に制御され、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てはオン状態に制御される。言い換えれば、MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120のうち上側アーム110が異常状態にあると判断したとき、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオン状態に制御するASC制御を実行する。これにより、上側アーム110に含まれるすべてのスイッチング素子を通る電流は遮断され、モータ10で発生した逆起電力は下側アーム120からなる閉回路内で還流する。これにより、インバータ入力電圧VINVのさらなる上昇や、モータ10のさらなる加速を防ぎ、スイッチング素子、高電圧バッテリ7の損傷を防ぐことができる。
【0114】
MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120のうち下側アーム120が異常状態にあると判断したとき、U相上側タイミング信号HPU、V相上側タイミング信号HPV及びW相上側タイミング信号HPWの全てをハイレベルにセットしてマルチプレクサ800に出力する。これにより、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相上側ゲート制御信号UHG、V相上側ゲート制御信号VHG及びW相上側ゲート制御信号WHGは全てハイレベルとなる。
また、MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120のうち下側アーム120が異常状態にあると判断したとき、U相下側タイミング信号LPU、V相下側タイミング信号LPV及びW相下側タイミング信号LPWの全てをローレベルにセットしてマルチプレクサ800に出力する。これにより、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相下側ゲート制御信号ULG、V相下側ゲート制御信号VLG及びW相下側ゲート制御信号WLGは全てローレベルとなる。
【0115】
その結果、上側アーム110及び下側アーム120のうち下側アーム120が異常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てはオン状態に制御され、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てはオフ状態に制御される。言い換えれば、MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120のうち下側アーム120が異常状態にあると判断したとき、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオン状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御するASC制御を実行する。これにより、下側アーム120に含まれるすべてのスイッチング素子を通る電流は遮断され、モータ10で発生した逆起電力は上側アーム110からなる閉回路内で還流する。これにより、インバータ入力電圧VINVのさらなる上昇や、モータ10のさらなる加速を防ぎ、スイッチング素子、高電圧バッテリ7の損傷を防ぐことができる。
【0116】
MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が異常状態にあると判断したとき、U相上側タイミング信号HPU、V相上側タイミング信号HPV及びW相上側タイミング信号HPWの全てをローレベルにセットしてマルチプレクサ800に出力する。これにより、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相上側ゲート制御信号UHG、V相上側ゲート制御信号VHG及びW相上側ゲート制御信号WHGは全てローレベルとなる。
また、MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が異常状態にあると判断したとき、U相下側タイミング信号LPU、V相下側タイミング信号LPV及びW相下側タイミング信号LPWの全てをローレベルにセットしてマルチプレクサ800に出力する。これにより、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相下側ゲート制御信号ULG、V相下側ゲート制御信号VLG及びW相下側ゲート制御信号WLGは全てローレベルとなる。
【0117】
その結果、上側アーム110及び下側アーム120の両方が異常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てはオフ状態に制御され、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てはオフ状態に制御される。言い換えれば、MCU300は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が異常状態にあると判断したとき、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御するSD制御を実行する。これにより、モータ10の回転によって発生した逆起電力は、各スイッチング素子のフリーホイールダイオードを経由して高電圧バッテリ7へ流れるため、スイッチング素子を保護することができる。
【0118】
以上が通常時におけるモータ制御装置40の動作についての説明である。次に、異常時におけるモータ制御装置40の動作について説明する。異常時とは、以下の条件4から条件6までの少なくとも一つの条件が満たされるときである。
(条件4)PMIC400によってMCU300が異常状態にあることが検知される。
(条件5)第1過電圧検出回路610によってインバータ入力電圧VINVが第2閾値VTH2を超えたことが検知される。
(条件6)第2過電圧検出回路620によってインバータ入力電圧VINVが第3閾値VTH3を超えたことが検知される。
【0119】
条件4が満たされるとき、PMIC400から論理和回路700に出力されるリスタート信号RST、第1異常検知信号FOT、及び第2異常検知信号IOTの少なくとも一つがローレベルとなる。条件5が満たされるとき、第1過電圧検出回路610から論理和回路700に出力される第1過電圧検出信号DV1はローレベルとなる。条件6が満たされるとき、第2過電圧検出回路620から論理和回路700に出力される第2過電圧検出信号DV2はローレベルとなる。従って、条件4から条件6までの少なくとも一つの条件が満たされるとき、論理和回路700からマルチプレクサ800にローレベルのモード切替信号MSが出力される。モード切替信号MSがローレベルのとき、モータ制御装置40の制御モードは、代替回路500がモータ駆動回路100を制御する第2制御モードとなる。
【0120】
第2制御モードにおいて代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の状態に基づいてフェイルセーフ制御を実行する。既に述べたように、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にあるときに、ローレベル電圧VLoを有する上側アーム制御信号HGをマルチプレクサ800に出力するとともに、ハイレベル電圧VHiを有する下側アーム制御信号LGをマルチプレクサ800に出力する。
【0121】
マルチプレクサ800は、モード切替信号MSがローレベルのときに、上側アーム制御信号HGをU相上側ゲート制御信号UHGとしてU相上側ゲートドライバ111に出力し、上側アーム制御信号HGをV相上側ゲート制御信号VHGとしてV相上側ゲートドライバ112に出力し、上側アーム制御信号HGをW相上側ゲート制御信号WHGとしてW相上側ゲートドライバ113に出力する。
また、マルチプレクサ800は、モード切替信号MSがローレベルのときに、下側アーム制御信号LGをU相下側ゲート制御信号ULGとしてU相下側ゲートドライバ121に出力し、下側アーム制御信号LGをV相下側ゲート制御信号VLGとしてV相下側ゲートドライバ122に出力し、下側アーム制御信号LGをW相下側ゲート制御信号WLGとしてW相下側ゲートドライバ123に出力する。
【0122】
従って、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にあるとき、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相上側ゲート制御信号UHG、V相上側ゲート制御信号VHG及びW相上側ゲート制御信号WHGは全てローレベルとなり、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相下側ゲート制御信号ULG、V相下側ゲート制御信号VLG及びW相下側ゲート制御信号WLGは全てハイレベルとなる。
【0123】
その結果、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てはオフ状態に制御され、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てはオン状態に制御される。言い換えれば、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にあるとき、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオン状態に制御するASC制御を実行する。これにより、上側アーム110に含まれるすべてのスイッチング素子を通る電流は遮断され、モータ10で発生した逆起電力は下側アーム120からなる閉回路内で還流する。これにより、インバータ入力電圧VINVのさらなる上昇や、モータ10のさらなる加速を防ぎ、スイッチング素子、高電圧バッテリ7の損傷を防ぐことができる。
【0124】
代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120のうち上側アーム110が異常状態にあるときに、ローレベル電圧VLoを有する上側アーム制御信号HGをマルチプレクサ800に出力するとともに、ハイレベル電圧VHiを有する下側アーム制御信号LGをマルチプレクサ800に出力する。これにより、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相上側ゲート制御信号UHG、V相上側ゲート制御信号VHG及びW相上側ゲート制御信号WHGは全てローレベルとなり、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相下側ゲート制御信号ULG、V相下側ゲート制御信号VLG及びW相下側ゲート制御信号WLGは全てハイレベルとなる。
【0125】
その結果、上側アーム110及び下側アーム120のうち上側アーム110が異常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てはオフ状態に制御され、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てはオン状態に制御される。言い換えれば、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120のうち上側アーム110が異常状態にあるとき、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオン状態に制御するASC制御を実行する。これにより、上側アーム110に含まれるすべてのスイッチング素子を通る電流は遮断され、モータ10で発生した逆起電力は下側アーム120からなる閉回路内で還流する。これにより、インバータ入力電圧VINVのさらなる上昇や、モータ10のさらなる加速を防ぎ、スイッチング素子、高電圧バッテリ7の損傷を防ぐことができる。
【0126】
代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120のうち下側アーム120が異常状態にあるときに、ハイレベル電圧VHiを有する上側アーム制御信号HGをマルチプレクサ800に出力するとともに、ローレベル電圧VLoを有する下側アーム制御信号LGをマルチプレクサ800に出力する。これにより、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相上側ゲート制御信号UHG、V相上側ゲート制御信号VHG及びW相上側ゲート制御信号WHGは全てハイレベルとなり、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相下側ゲート制御信号ULG、V相下側ゲート制御信号VLG及びW相下側ゲート制御信号WLGは全てローレベルとなる。
【0127】
その結果、上側アーム110及び下側アーム120のうち下側アーム120が異常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てはオン状態に制御され、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てはオフ状態に制御される。言い換えれば、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120のうち下側アーム120が異常状態にあるとき、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオン状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御するASC制御を実行する。これにより、下側アーム120に含まれるすべてのスイッチング素子を通る電流は遮断され、モータ10で発生した逆起電力は上側アーム110からなる閉回路内で還流する。これにより、インバータ入力電圧VINVのさらなる上昇や、モータ10のさらなる加速を防ぎ、スイッチング素子、高電圧バッテリ7の損傷を防ぐことができる。
【0128】
代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が異常状態にあるときに、ローレベル電圧VLoを有する上側アーム制御信号HGをマルチプレクサ800に出力するとともに、ローレベル電圧VLoを有する下側アーム制御信号LGをマルチプレクサ800に出力する。これにより、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相上側ゲート制御信号UHG、V相上側ゲート制御信号VHG及びW相上側ゲート制御信号WHGは全てローレベルとなり、マルチプレクサ800からモータ駆動回路100に出力されるU相下側ゲート制御信号ULG、V相下側ゲート制御信号VLG及びW相下側ゲート制御信号WLGは全てローレベルとなる。
【0129】
その結果、上側アーム110及び下側アーム120の両方が異常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てはオフ状態に制御され、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てはオフ状態に制御される。言い換えれば、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が異常状態にあるとき、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御するSD制御を実行する。これにより、モータ10の回転によって発生した逆起電力は、各スイッチング素子のフリーホイールダイオードを経由して高電圧バッテリ7へ流れるため、スイッチング素子を保護することができる。
【0130】
以上のように、本実施形態におけるモータ制御装置40は、上側アーム110及び下側アーム120を有するモータ駆動回路100と、モータ駆動回路100を制御するMCU300と、MCU300を代替する代替回路500と、MCU300の状態に基づいて第1制御モードと第2制御モードとの間で制御モードを切り替えるマルチプレクサ800と、を備える。マルチプレクサ800は、MCU300の状態が正常状態から異常状態に変化したときに、制御モードを第1制御モードから第2制御モードに切り替える。第2制御モードにおいて代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の状態に基づいてフェイルセーフ制御を行う。
このような本実施形態によれば、MCU300の異常発生時に代替回路500によるフェイルセーフ制御を実行することが可能となる。また、上側アーム110及び下側アーム120の状態に基づく適切なフェイルセーフ制御を実行することが可能となる。
【0131】
本実施形態におけるモータ制御装置40は、MCU300の状態を監視する監視部(PMIC400)をさらに備える。マルチプレクサ800は、MCU300の状態が正常状態から異常状態に変化したことを監視部が検知したときに、制御モードを第1制御モードから第2制御モードに切り替える。
MCU300等の演算処理装置を使う制御装置では、演算処理装置の状態を監視する監視回路を設けることが一般的であるため、既存の監視回路を本発明の監視部として利用すれば、新たな監視部用の部品を追加する必要はなく、低コストで本発明を実現できる。
【0132】
本実施形態において、監視部(PMIC400)は、MCU300と別に設けられる。これにより、演算処理装置であるMCU300に異常が生じても監視部がその影響を受けることを回避できる。
【0133】
本実施形態において、監視部は、MCU300の電源管理を行うPMIC400である。
MCU300の電源管理ICであるPMIC400を監視部として利用することにより、新たに監視部に対応する回路を設けることなく、低コストで本発明を実現できる。
【0134】
本実施形態におけるモータ制御装置40は、モータ駆動回路100の入力電圧(インバータ入力電圧VINV)の大きさによって状態が変化する第1過電圧検出信号DV1を出力する第1過電圧検出回路610をさらに備える。MCU300は、インバータ入力電圧VINVと第1閾値VTH1とを比較し、インバータ入力電圧VINVが第1閾値VTH1を超えたときにフェイルセーフ制御を行う。第1過電圧検出回路610は、インバータ入力電圧VINVと第1閾値VTH1よりも高い第2閾値VTH2とを比較し、インバータ入力電圧VINVが第2閾値VTH2を超えたときに、第1過電圧検出信号DV1の状態をハイレベルからローレベルに変化させる。マルチプレクサ800は、第1過電圧検出信号DV1の状態がハイレベルからローレベルに変化したときにおいても、制御モードを第1制御モードから第2制御モードに切り替える。
通常通り、第1閾値を超える過電圧が発生した時点でMCU300がフェイルセーフ制御を行うことによってインバータ入力電圧の上昇を抑えるが、第2閾値を超えるような大きな過電圧が発生した場合は、MCU300によるフェイルセーフ制御が正しく機能していない可能性が高く、そのような場合には第2制御モードに切り替えて代替回路500によるフェイルセーフ制御を行うことにより、MCU300の状態に関係なくフェイルセーフ制御を継続できる。また、代替回路500を使う場合でも上側アーム110及び下側アーム120の状態に基づく適切なフェイルセーフ制御を実行できる。
【0135】
本実施形態におけるモータ制御装置40は、モータ駆動回路100の入力電圧(インバータ入力電圧VINV)の大きさによって状態が変化する第2過電圧検出信号DV2を出力する第2過電圧検出回路620をさらに備える。第2過電圧検出回路620は、インバータ入力電圧VINVと第2閾値VTH2よりも高い第3閾値VTH3とを比較し、インバータ入力電圧VINVが第3閾値VTH3を超えたときに、第2過電圧検出信号DV2の状態をハイレベルからローレベルに変化させる。マルチプレクサ800は、第1過電圧検出信号DV1及び第2過電圧検出信号DV2の少なくとも一方がハイレベルからローレベルに変化したときに、制御モードを第1制御モードから第2制御モードに切り替える。
通常、第1閾値または第2閾値を検出した時点でMCU300または第1過電圧検出回路610によるフェイルセーフ制御によってインバータ入力電圧の上昇を抑えるが、第3閾値を超えるような大きな過電圧が発生した場合は、MCU300または第1過電圧検出回路610によるフェイルセーフ制御が正しく機能していない可能性が高く、そのような場合には第2制御モードに切り替えて代替回路500によるフェイルセーフ制御を行うことにより、MCU300または第1過電圧検出回路610の状態に関係なくフェイルセーフ制御を継続できる。すなわち、第1過電圧検出回路610のみを設けた場合と比較して第2過電圧検出回路620をさらに設けた方がフェイルセーフ制御を実行できる可能性が高まり、安全性が向上する。また、代替回路500を使う場合でも上側アーム110及び下側アーム120の状態に基づく適切なフェイルセーフ制御を実行できる。
【0136】
本実施形態において、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオン状態に制御する。
これにより、上側アーム110及び下側アーム120の両方が正常状態にある場合に、代替回路500によって適切なフェイルセーフ制御を行うことが可能である。
【0137】
本実施形態において、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120のうち上側アーム110が異常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオン状態に制御する。
これにより、上側アーム110及び下側アーム120のうち上側アーム110が異常状態にある場合に、代替回路500によって適切なフェイルセーフ制御を行うことが可能である。
【0138】
本実施形態において、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120のうち下側アーム120が異常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオン状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御する。
これにより、上側アーム110及び下側アーム120のうち下側アーム120が異常状態にある場合に、代替回路500によって適切なフェイルセーフ制御を行うことが可能である。
【0139】
本実施形態において、代替回路500は、上側アーム110及び下側アーム120の両方が異常状態にある場合、上側アーム110に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、且つ下側アーム120に含まれるスイッチング素子の全てをオフ状態に制御する。
これにより、上側アーム110及び下側アーム120の両方が異常状態にある場合に、代替回路500によって適切なフェイルセーフ制御を行うことが可能である。
【0140】
本実施形態において、代替回路500は、モータ駆動回路100の各ゲートドライバから出力される異常検出信号(フォールト信号)に基づいて、上側アーム110及び下側アーム120が正常状態にあるか異常状態にあるかを判断する。
これにより、ゲートドライバのフォールト信号を用いない場合よりも正確に上側アーム110及び下側アーム120が正常状態にあるか異常状態にあるかを判断できる。
【0141】
〔変形例〕
本発明は上記実施形態に限定されず、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
例えば、上記実施形態では、監視部であるPMIC400が、演算処理装置であるMCU300と別に設けられる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、監視部は演算処理装置に設けられていてもよく、または監視部を含んだ演算処理装置と、演算処理装置と別に設けられた監視部の両方を備えてもよい。
また、監視部が演算処理装置の内側に配置される場合、演算処理装置から出力される異常を知らせる信号をトリガとしてモード切替部(マルチプレクサ800)を動作させることにより、制御モードを切り替えてもよい。
また、上記実施形態では、演算処理装置と別に設けられる監視部としてPMIC400を例示したが、本発明はこれに限定されず、演算処理装置の状態を監視する機能を有する電子デバイスであれば、監視部として利用してもよい。
【0142】
上記実施形態では、モータ制御装置40を備えるモータユニットとして、電気自動車である車両1の駆動輪2に駆動力を与えるモータユニット6を例示したが、本発明はこれに限定されず、他のモータユニットに本発明のモータ制御装置を備えてもよい。
また、上記実施形態では、モータ制御装置40を備えるモータユニット6が電気自動車である車両1に搭載される場合を例示したが、本発明のモータユニットは、電気自動車以外の車両、またはモータの回転力が必要な装置などに適用することができる。
【0143】
上記実施形態では、モータユニット6は一つのモータ10とモータ駆動回路100を備え、モータ駆動回路100は、上側アーム、下側アーム合わせて6つのスイッチング素子を備える構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。モータユニット6はモータ10とは別に発電機用モータを備え、モータ駆動回路100は、モータ10を駆動する6つのスイッチング素子の他に、発電機用モータを駆動する6つのスイッチング素子を有する構成としてもよい。さらには、発電機用モータを駆動するスイッチング素子に対しても本発明のフェイルセーフ制御を実行することが可能な構成としてもよい。
【0144】
上記実施形態では、MCU300が正常時におけるモータ制御装置40の動作について、インバータ入力電圧の過電圧を検出した時にフェイルセーフ制御を開始する構成としたが、本発明はこれに限定されない。モータ10の回転数を検出する回転数検出部を設け、回転数検出部が任意の閾値を超える回転数を検出した時にフェイルセーフ制御を開始する構成としてもよい。
【0145】
上記実施形態では、MCU300の異常時におけるモータ制御装置40の動作について、インバータ入力電圧の過電圧またはMCU300の異常を検出した時にローレベルのモード切替信号MSをマルチプレクサ800に出力することにより、制御モードを第1制御モードから第2制御モードに切り替えてフェイルセーフ制御を行う構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。モータ10の回転数を検出する回転数検出部を設け、回転数検出部が任意の閾値を超える回転数を検出した時にローレベルのモード切替信号MSをマルチプレクサ800に出力することにより、制御モードを第1制御モードから第2制御モードに切り替えてフェイルセーフ制御を行う構成としてもよい。
【0146】
上記実施形態では、モータユニット6は高電圧バッテリ7の電圧を昇圧または降圧することなくモータ駆動回路100へ電力を入力する構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。モータユニット6は高圧バッテリ7の電圧を昇圧もしくは降圧するDCDCコンバータを備えていても良い。
【0147】
上記実施形態では、フェイルセーフ制御を実行したのちのインバータ入力電圧、モータ10の回転数、及びMCU300の状態などを検出する構成としてもよい。例えば、フェイルセーフ制御後に、インバータ入力電圧またはモータ回転数が所定の閾値以下に戻ったり、MCU300が異常状態から正常状態へ復帰したことを検出するなど、インバータ装置が安全性の低い状態から安全性の高い状態へ変化した場合に、モータ10の回転が停止していなくともフェイルセーフ制御を終了し、通常時のスイッチング制御へと戻る構成としてもよい。
【0148】
上記実施形態において、マルチプレクサ800から出力されるゲート制御信号を監視し、モータ駆動回路100の短絡状態を防ぐ構成としてもよい。例えば、U相上側ゲート制御信号UHGとU相下側ゲート制御信号ULGとの両方がハイレベルの場合は、U相上側スイッチング素子QUHとU相下側スイッチング素子QUHとの両方がオン状態となり、モータ駆動回路100は短絡する。ゲート制御信号がこのように同じ相で上下アーム共にハイレベルで出力されたことを検出した場合、ゲート制御信号のモータ駆動回路100への供給を停止したり、全てのスイッチング素子をオフとする構成としても良い。
【0149】
上記実施形態において、論理和回路700、第1論理和回路510、および第2論理和回路520は、いずれも負論理の論理和回路であるとしたが、正論理の論理和回路としてもよい。さらに、各信号の論理は逆としてもよく、例えば、次に述べる動作を実行してもよい。正論理の論理和回路700に少なくとも一つのハイレベル信号が入力された場合に、ハイレベルのモード切替信号MSをマルチプレクサ800に出力することで第1制御モードから第2制御モードに切り替える。上側アーム110に含まれるスイッチング素子の異常時に、3つの上側ゲートドライバの少なくとも一つはハイレベルのFLT信号を正論理の第1論理和回路510に出力する。正論理の第1論理回路510はマトリクス回路530にハイレベルの上側アームフォールト信号FLTHを出力する。マトリクス回路530はハイレベルの第1出力信号OUT1を第1スイッチ540に出力する。第1スイッチ540において、接点541と接点543とが電気的に接続されることにより、接点543からハイレベル電圧VHiを有する上側アーム制御信号HGがマルチプレクサ800に出力される。マルチプレクサ800は、U相上側ゲート制御信号UHG、V相上側ゲート制御信号VHG及びW相上側ゲート制御信号WHGをいずれもハイレベルとして3つの上側ゲートドライバに出力する。
【符号の説明】
【0150】
1…車両、2…駆動輪、3…車両センサ、4…アクセルポジションセンサ、5…電子制御装置、6…モータユニット、7…高電圧バッテリ、8…低電圧バッテリ、10…モータ、20…減速機、30…ディファレンシャルギア、40…モータ制御装置、100…モータ駆動回路、210…第1分離回路、220…第2分離回路、300…MCU(演算処理装置)、400…PMIC(監視部)、500…代替回路、610…第1過電圧検出回路、620…第2過電圧検出回路、700…論理和回路、800…マルチプレクサ(モード切替部)
図1
図2
図3
図4