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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20241022BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20241022BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20241022BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20241022BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241022BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/36
A61K8/73
A61K8/894
A61Q1/02
A61Q1/10
A61Q17/04
A61Q19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018236997
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2020097553
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】池田 智子
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】井上 典之
【審判官】小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-292415(JP,A)
【文献】特開2011-026498(JP,A)
【文献】特開2015-180678(JP,A)
【文献】特開2010-116354(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104696(WO,A1)
【文献】特開2010-174011(JP,A)
【文献】特表2005-524653(JP,A)
【文献】特開2009-161598(JP,A)
【文献】特開2018-197210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8-00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内相に(A)水溶性増粘剤を含み、かつ、
外相に(B)ポリエーテル鎖又はポリグリセリン鎖で架橋しているシリコーン架橋物、及び、(C)金属石鹸を含む、
油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
(A)水溶性増粘剤が多糖類系増粘剤である、請求項1に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
(A)水溶性増粘剤として二種以上の多糖類系増粘剤を含む、請求項1又は2に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項4】
(A)水溶性増粘剤としてセルロースナノファイバーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項5】
(C)金属石鹸がミリスチン酸亜鉛である、請求項1~のいずれか一項に記載の油中水型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料に関する。より詳しくは、べたつかず、塗布中のフィット感に優れることに加え、滑らかな使用性をも備えた油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型乳化タイプの化粧料は、水中油型乳化タイプに比較して耐水性に優れるうえに、エモリエント油、油溶性の薬剤、紫外線吸収剤などを効率的に配合できるといった特徴を有するため、スキンケア効果の高い化粧料とすることができる。しかし、油中水型乳化化粧料は安定性に乏しいことから、分散安定性の改善のために有機変性粘土鉱物やデキストリン脂肪酸エステル等の油溶性増粘剤を添加して外相(油相)を構成する油分を増粘し、そこに内相(水相)を抱え込ませるのが一般的である。ところが、油溶性増粘剤を添加することにより、清涼感が劣り、べたつきや油っぽさを生じることが問題となっている。
【0003】
一方で、油中水型乳化化粧料の内相(水相)に水溶性増粘剤を配合して、乳化粒子の安定性を向上させることも提案されている。
例えば、特許文献1には、特定のジエステル、非イオン界面活性剤、油溶性及び/又は水溶性増粘剤、粉体、及び水を所定量含む油中水型乳化化粧料が開示されており、油溶性及び/又は水溶性増粘剤を単独又は複数を組み合わせて使用することにより、安定性の向上を図っている。
特許文献2には、シリコーン系界面活性剤、油剤、油ゲル化剤、水溶性高分子増粘剤、及び水を含有する油中水型乳化化粧料が開示されており、水溶性高分子増粘剤の配合によって水相に適度な粘弾性を付与することにより、さっぱりとしてべたつかない感触が得られるとされている。
特許文献3には、セルロースを物理的に微細に加工した、平均粒子径が10~500nmであるセルロース微粒子及びセルロース複合体微粒子の群から選ばれた少なくとも1種類の微粒子を含有することを特徴とする油中水型乳化組成物が開示されており、水相に前記微粒子を分散させることにより経時安定性や伸びが向上するとされている。
【0004】
しかし、油中水型乳化化粧料に水溶性増粘剤を配合した場合、べたつきの無さは改善されるものの十分ではなく、油溶性増粘剤を配合した場合と比べて滑らかさやフィット感等において満足な結果を得ることは難しく、さらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-150184号公報
【文献】特開2008-127306号公報
【文献】特開2006-342140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、べたつきを抑えつつ滑らかな使用性を有し、さらに、塗布中のフィット感にも優れた油中水型乳化化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、油中水型乳化化粧料の内相(水相)に水溶性増粘剤を配合し、なおかつ、外相(油相)に乳化性架橋エラストマー及び金属石鹸の少なくとも一方を配合することにより、前記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
上述したように、油中水型乳化化粧料に、水溶性増粘剤を単独で配合すると、べたつきの無さは改善されるものの十分ではなく、滑らかさやフィット感等において十分な結果を得ることが難しかった。本発明者らは、水溶性増粘剤の他に、さらに乳化性架橋エラストマー及び金属石鹸の少なくとも一方を配合することにより、べたつきを抑えつつ滑らかさを改善できるほか、塗布中のフィット感にも優れた油中水型乳化化粧料が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、内相に(A)水溶性増粘剤を含み、かつ、外相に(B)乳化性架橋エラストマー及び(C)金属石鹸の少なくとも一方を含む油中水型乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記構成とすることにより、油中水型乳化化粧料において問題とされていたべたつきの無さ、滑らかな使用性、塗布中のフィット感を同時に改善することができる。またこれら以外にも、みずみずしさや塗布中ののびの良さといった使用感触を改善することができる。
なお本発明において「フィット感」とは、化粧料を塗布したときに化粧料が伸び続けてなかなか仕上がらないことがなく、化粧料の肌に対する止まりが良い感じをいう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、油中水型乳化化粧料の内相に(A)水溶性増粘剤を含み、かつ、外相に(B)乳化性架橋エラストマー及び(C)金属石鹸の少なくとも一方を含む。以下、各成分について詳しく説明する。
【0010】
<(A)水溶性増粘剤>
水溶性増粘剤は、化粧料に通常使用可能な水溶性増粘剤である。
水溶性増粘剤としては、例えば、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)などの植物系高分子、ジェランガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチンなどの動物系高分子、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン系高分子等が挙げられる。
また、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末などのセルロース系高分子等、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系高分子等が挙げられる。
さらに、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマーなどのビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミドなどのアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸などの無機系水溶性高分子、PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー等が挙げられる。
【0011】
なかでも、滑らかさに優れていることから、水溶性増粘剤として、多糖類系増粘剤を配合することが好ましく、特に多糖類系増粘剤を二種以上組み合わせて配合することが好ましい。
多糖類系増粘剤としては、結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系増粘剤;ジェランガム、カラギーナン、グアーガム、ローカストビンガム、アラビアガム、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン等の天然高分子多糖類系増粘剤などを挙げることができる。
【0012】
特に好ましい多糖類系増粘剤は、セルロースナノファイバーと呼ばれる、セルロース繊維をナノレベルまで解繊することにより得られる結晶セルロースである。セルロースナノファイバーは、繊維幅が好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下のものである。
セルロースナノファイバーは、機械的な解繊処理により得ることができる。好ましくは、解繊処理の前に、セルロースをTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル)触媒酸化し、セルロースミクロフィブリル表面にカルボキシ基(カルボン酸ナトリウム)を導入しておく。この予備処理により、その電気二重層斥力を利用して、より軽微な機械的解繊処理でミクロフィブリル単位に解くことができる。
セルロースナノファイバーは、水や水混和性有機溶剤を分散媒体とする水性分散体として市販されているものを使用でき、このような市販品としては、例えば「レオクリスタ C-2SP(第一工業製薬株式会社)」等を挙げることができる。
【0013】
水溶性増粘剤は、油中水型乳化化粧料の内相に分散し、内相を増粘する。水溶性増粘剤の配合量は、油中水型乳化化粧料の全体量に対して0.01~15質量%、好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%である。水溶性増粘剤の配合量が少なすぎると、滑らかさ等の改善を十分に実感できない場合があり、逆に配合量が多すぎると水相への分散が難しくなる。
【0014】
<(B)乳化性架橋エラストマー及び(C)金属石鹸>
乳化性架橋エラストマー及び金属石鹸は、油相を乳化、増粘又はゲル化して、油中水型乳化化粧料の安定性を向上させる。 乳化性架橋エラストマー及び金属石鹸は、一方を単独で配合してもよく、両方を組み合わせて配合してもよい。
【0015】
(B)乳化性架橋エラストマー
乳化性架橋エラストマーは、親水性鎖と架橋構造とを備えたエラストマーである。
乳化性架橋エラストマーは、例えば、ポリエーテル鎖又はポリグリセリン鎖で架橋しているシリコーン架橋物であって、任意にアルキル鎖やシリコーン鎖の分岐鎖を持つものから選択することができる。
【0016】
乳化性架橋エラストマーとしては、例えば、
・ポリエーテル鎖で架橋しているシリコーン架橋物である(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー、
・アルキル鎖を構造に持つポリエーテル変性シリコーン架橋物である(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、
・シリコーン鎖とアルキル鎖の2種類の分岐鎖を持つポリエーテル変性シリコーン架橋物である(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー、
・ポリグリセリン鎖で架橋しているシリコーン架橋物である(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー、
・アルキル鎖を構造に持つポリグリセリン変性シリコーン架橋物である(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー、
・シリコーン鎖とアルキル鎖の2種類の分岐鎖を持つポリグリセリン変性シリコーン架橋物である(ポリグリセリル-3/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー等を挙げることができる。
乳化性架橋エラストマーの市販品としては、例えば、KSG-210、KSG-310、KSG-360Z、KSG-710(以上、信越化学工業株式会社)などを挙げることができる。
【0017】
(C)金属石鹸
金属石鹸は、飽和もしくは不飽和高級脂肪酸の金属塩であり、特に限定されるものではないが、炭素数8~24、特に12~18の飽和及び/または不飽和脂肪酸のアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の塩であることが好ましい。
金属石鹸としては、例えば、ジステアリン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、ミリスチン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛などが挙げられる。
【0018】
本発明の油中水型乳化化粧料に乳化性架橋エラストマーを配合する場合には、油中水型乳化化粧料の全体量に対して0.01~30質量%、好ましくは1~10質量%である。乳化性架橋エラストマーの配合量が少なすぎると、安定性が損なわれる場合があり、逆に配合量が多すぎるとべたつきが顕著になる傾向がある。
一方、金属石鹸を配合する場合には、油中水型乳化化粧料の全体量に対して0.01~10質量%、好ましくは1~5質量%である。金属石鹸の配合量が少なすぎると、安定性が損なわれる場合があり、逆に配合量が多すぎると使用時ののびが重くなり、べたつき感が顕著になる傾向がある。
また、乳化性架橋エラストマーと金属石鹸とを組み合わせて配合する場合には、他方の配合量に応じて、上記配合量を適宜調整すればよい。
【0019】
<任意配合成分>
本発明の油中水型乳化化粧料には、上記(A)~(C)成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、化粧料に通常用いられる成分を配合することができる。例えば、各種溶媒、界面活性剤、粉末成分、薬剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、pH調整剤、香料、防腐剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0020】
特に、本発明に係る油中水型乳化化粧料は、べたつき等を抑えつつ安定性にも優れているため、粉末成分を安定に分散させることが可能である。配合可能な粉末成分は特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末等)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、セルロース粉末等の有機樹脂粉末;ポリメチルシルセスキオキサン末等のシリコーン樹脂粉末;ポリジメチルシロキサン架橋弾性体等のシリコーンゴム粉末;ジメチルシリル化無水ケイ酸、トリメチルシリル化無水ケイ酸等の疎水化シリカ粉末;ジメチルポリシロキサン処理二酸化チタン、同処理マイカ、同処理タルク、同処理酸化鉄等のジメチルシロキサン処理粉末;パルミチン酸デキストリン処理タルク、同処理マイカ、同処理二酸化チタン、同処理酸化鉄等のパルミチン酸デキストリン処理粉末等の疎水化表面処理粉末等が挙げられる。
【0021】
粉末成分を配合する場合には、その配合量は、油中水型乳化化粧料の全体量に対して好ましくは0.1~30質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。粉末成分の配合量が多すぎると塗布時ののびの良さ等が損なわれる傾向がある。
【0022】
<製法・用法>
本発明の油中水型乳化化粧料は、常法により調製することができ、乳化の方法は特に限定されるものでない。例えば、(A)水溶性増粘剤を含む水相と、(B)乳化性架橋エラストマー及び(C)金属石鹸の少なくとも一方を含む油相をそれぞれ70℃程度に加温して調製しておき、その後、水相を油相に徐々に添加して、乳化機で乳化し、室温まで放冷する等の方法が挙げられるが、これに限定されるものでない。
【0023】
本発明にかかる油中水型乳化化粧料は、化粧料に広く応用することが可能であり、例えば、乳化ファンデーション、サンケア化粧料、化粧下地等とすることができる。
【0024】
また本発明は、容器形態を限定されるものではない。例えばこの化粧料を含浸体に含浸させて、気密性を備えたコンパクト容器内に収容することも可能である。含浸体としては、樹脂、パルプ、綿等の単一又は混合素材からなる不織布、樹脂加工した繊維体、スポンジなどの発泡体、連続気孔を備えた多孔質体などが挙げられる。また含浸体の素材としては、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NR(天然ゴム)、ウレタン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、EVA(エチレン酢酸ビニル)、PVA(ポリビニルアルコール)、シリコン、エラストマー、などの例が挙げられるが、化粧料を含むことのできる含浸体であればこれらの素材に限られるものではない。
化粧料を含浸体から取り、肌に塗布するための塗布具としては、通常、液状の化粧料を肌に塗布する際に使用するスポンジ、パフ、チップ等が挙げられる。
【0025】
また、本発明にかかる油中水型乳化化粧料は、エアゾール化粧料の原液として収容することも可能である。噴射剤は、エアゾール化粧料に通常使用される噴射剤であれば特に限定されない。例えば、液化石油ガス、ジメチルエーテル、窒素、酸素、二酸化炭素、クロロフロロカーボン等が挙げられる。これらの噴射剤の一種又は二種以上を、原液とともに常法によりエアゾール缶に充填して、エアゾール化粧料を製造することができる。
【実施例
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0027】
下記の表1に掲げた組成を有する油中水型乳化化粧料を、油性成分を加温して溶解し粉末を分散させたものに、別途溶かした水相を添加し、攪拌処理にて乳化することにより調製した。得られた化粧料について、専門パネル10名による実使用試験を実施し、滑らかさ、べたつきの無さ、フィット感を以下の評価基準に従って評価した。
<評価基準>
A:良好であると評価したパネルが9名以上
B:良好であると評価したパネルが6~8名
C:良好であると評価したパネルが3~5名
D:良好であると評価したパネルが2名以下
【0028】
【表1】
*1 KSG-360Z(信越化学工業株式会社) 実分30~40%
【0029】
表1に示されるように、水相に水溶性増粘剤を配合し、なおかつ、油相に金属石鹸を配合した場合には、全ての評価項目において極めて優れた結果を得ることができた(実施例1~8)。特に、金属石鹸としてミリスチン酸亜鉛を配合した場合には、組み合わせる水溶性増粘剤の種類によらずフィット感に優れる傾向が認められた。また、水溶性増粘剤として、合成高分子系増粘剤よりも多糖類系増粘剤を配合した場合にべたつきの無さに優れる傾向が認められた。
一方、油相に金属石鹸も乳化性架橋エラストマーも含まない場合には滑らかさが劣り(比較例1)、水溶性増粘剤を含まない場合にはべたつきの無さは優れていたがフィット感が劣っていた(比較例4)。また、金属石鹸に代えて化粧料に汎用されている油溶性増粘剤を配合した場合には、著しいべたつきを生じた(比較例2及び3)。
【0030】
下記の表2に掲げた組成を有する油中水型乳化化粧料を、油性成分を加温して溶解し粉末を分散させたものに、別途溶かした水相を添加し、攪拌処理にて乳化することにより調製した。得られた化粧料について、専門パネル10名による実使用試験を実施し、滑らかさ、べたつきの無さ、フィット感のほか、みずみずしさ、塗布中ののびについて以下の評価基準に従って評価した。
<評価基準>
A:良好であると評価したパネルが9名以上
B:良好であると評価したパネルが6~8名
C:良好であると評価したパネルが3~5名
D:良好であると評価したパネルが2名以下
【0031】
【表2】
*1 KSG-360Z(信越化学工業株式会社) 実分30~40%
【0032】
表2に示されるように、水相に水溶性増粘剤としてセルロースナノファイバーを配合し、なおかつ、油相に乳化性架橋エラストマー及び金属石鹸の少なくとも一方を配合した場合には、全ての評価項目において極めて優れた結果を得ることができた(実施例10~16)。
一方、水溶性増粘剤を含まない場合や、乳化性架橋エラストマー及び金属石鹸に代えて化粧料に汎用されている他の油溶性増粘剤を配合した場合には、複数の評価項目において満足な結果が得られなかった(比較例5~7)。
【0033】
以下に、本発明の化粧料の処方を例示する。本発明はこれらの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。なお、配合量は全て化粧料全量に対する質量%で表す。
【0034】
処方例1:ファンデーション
(成分名) 配合量(質量%)
ジメチコン 20
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10
PEG-10ジメチコン 4
(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー(KSG-360Z(信越化学工業株式会社) 実分30~40%)

セスキイソステアリン酸ソルビタン 2
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
ミリスチン酸亜鉛 0.5
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー

ナイロン-12 2
ジメチルシリル化シリカ 1
疎水化処理顔料級酸化チタン 10
疎水化処理赤酸化鉄 0.7
疎水化処理黄酸化鉄 1.5
疎水化処理黒酸化鉄 0.1
水 29.98
グリセリン 5
防腐剤 0.2
セルロースナノファイバー 1
ヒドロキシエチルセルロース 0.02
【0035】
処方例2:コンシーラー
(成分名) 配合量(質量%)
ジメチコン 20
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10
PEG-10ジメチコン 4
(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー

セスキイソステアリン酸ソルビタン 2
ミリスチン酸亜鉛 0.5
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー

ナイロン-12 2
疎水化処理顔料級酸化チタン 12
疎水化処理赤酸化鉄 0.7
疎水化処理黄酸化鉄 1.5
疎水化処理黒酸化鉄 0.1
水 32.98
グリセリン 5
防腐剤 0.2
セルロースナノファイバー 1
ヒドロキシエチルセルロース 0.02
【0036】
処方例3:BBクリーム
(成分名) 配合量(質量%)
ジメチコン 20
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10
PEG-10ジメチコン 2
(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー 5
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン

セスキイソステアリン酸ソルビタン 2
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 3
ミリスチン酸亜鉛 0.5
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー

ナイロン-12 2
ジメチルシリル化シリカ 0.5
疎水化処理顔料級酸化チタン 6
疎水化処理赤酸化鉄 0.7
疎水化処理黄酸化鉄 1.5
疎水化処理黒酸化鉄 0.1
水 36.48
グリセリン 5
防腐剤 0.2
セルロースナノファイバー 1
ヒドロキシエチルセルロース 0.02
【0037】
処方例4:アイシャドー
(成分名) 配合量(質量%)
ジメチコン 20
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10
PEG-10ジメチコン 4
(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー(KSG-360Z(信越化学工業株式会社) 実分30~40%)

セスキイソステアリン酸ソルビタン 3
ミリスチン酸亜鉛 0.5
シリコーン処理ベンガラ被覆雲母チタン 5
シリコーン処理ベンガラ被覆雲母マイカ 5
疎水化処理顔料級酸化チタン 10
疎水化処理赤酸化鉄 0.7
疎水化処理黄酸化鉄 1.5
疎水化処理黒酸化鉄 0.1
水 28.98
グリセリン 5
防腐剤 0.2
セルロースナノファイバー 1
ヒドロキシエチルセルロース 0.02
【0038】
処方例5:スキンケアクリーム
(成分名) 配合量(質量%)
ジメチコン 20
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10
PEG-10ジメチコン 4
(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー(KSG-360Z(信越化学工業株式会社) 実分30~40%)

セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
ミリスチン酸亜鉛 0.5
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー

水 51.28
グリセリン 5
防腐剤 0.2
セルロースナノファイバー 1
ヒドロキシエチルセルロース 0.02
【0039】
処方例6:日焼け止め
(成分名) 配合量(質量%)
ジメチコン 20
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10
PEG-10ジメチコン 4
(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー(KSG-360Z(信越化学工業株式会社) 実分30~40%)

セスキイソステアリン酸ソルビタン 2
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7.5
ミリスチン酸亜鉛 0.5
疎水化処理酸化亜鉛 3
疎水化処理顔料級酸化チタン 8
疎水化処理微粒子酸化チタン 5
疎水化処理赤酸化鉄 0.7
疎水化処理黄酸化鉄 1.5
疎水化処理黒酸化鉄 0.1
水 26.48
グリセリン 5
防腐剤 0.2
セルロースナノファイバー 1
ヒドロキシエチルセルロース 0.02