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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20241022BHJP
   H02K 5/10 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K5/10 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019004307
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020114125
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】豊田 直樹
【合議体】
【審判長】小宮 慎司
【審判官】三浦 みちる
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-024001(JP,U)
【文献】特開2014-095441(JP,A)
【文献】実開昭61-108061(JP,U)
【文献】実開昭57-192751(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の電動機フレームと、
前記電動機フレームの側面に設けられた円形の第1穴と、
前記電動機フレーム側面に接続される中間座と、
前記中間座に設けられ、前記電動機フレームに前記中間座が接続される際に、前記第1穴と位置が一致するように配置される円形で前記第1穴と略同径の第2穴と、
前記中間座と電動機フレームとを接続する溶接部と、
前記溶接部から前記第1穴及び前記第2穴方向にかけて、電動機フレームと中間座との間で形成された間隙と、
前記第1穴の周縁部と、前記第2穴の周縁部に当接することにより前記第1穴及び第2穴の周縁部を覆うブッシングと、
を備え、
前記ブッシングは、前記間隙に挿入可能に構成される凸部を有し、
前記凸部は、更に、電動機フレーム方向もしくは中間座方向に突出し前記電動機フレーム及び前記中間座の側面に対して前記凸部が圧接される程度を増加する突出部を備え
前記凸部の根元部は前記第1穴の周縁部と前記第2穴の周縁部に当接している、
電動機。
【請求項2】
円筒形状の電動機フレームと、
前記電動機フレームの側面に設けられた円形の第1穴と、
前記電動機フレーム側面に接続される中間座と、
前記中間座に設けられ、前記電動機フレームに前記中間座が接続される際に、前記第1穴と位置が一致するように配置される円形で前記第1穴と略同径の第2穴と、
前記中間座と電動機フレームとを接続する溶接部と、
前記溶接部から前記第1穴及び前記第2穴方向にかけて、電動機フレームと中間座との間で形成された間隙と、
前記第1穴の周縁部と、前記第2穴の周縁部に当接することにより前記第1穴及び第2穴の周縁部を覆うブッシングと、
を備え、
前記ブッシングは、前記間隙に挿入可能に構成される凸部を有し、
前記凸部は、更に、前記凸部の先端に電動機フレーム方向もしくは中間座方向に突出し前記電動機フレーム及び前記中間座の側面に対して前記凸部が圧接される程度を増加する
突出部を備え
前記凸部の根元部は前記第1穴の周縁部と前記第2穴の周縁部に当接している、
電動機。
【請求項3】
前記突出部は断面半円形状である請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項4】
前記突出部は断面三角形状である請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項5】
前記溶接部はスポット溶接により形成されたものである請求項1から4の何れか一項に記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機において、電動機フレームの内部に連通する開口部に端子箱が設けられており、端子箱から当該開口部を経由して電動機内に電力線が敷設されている。端子箱と電動機フレームとは中間座を介して接続されている。電動機フレームと中間座は溶接によって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭58-075459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水や粉塵等の内部への侵入を防止するため、中間座と電動機フレームは、開口部周りが水密となるように、開口部の周縁部に沿った周囲が溶接、すなわち全周溶接される。このため、この構成の電動機は、生産性が低く、製造コストが高いという問題がある。
【0005】
そこで、電動機の内部への水、粉塵等の侵入を防止しつつ、生産性が高く、製造コストが低減された電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る電動機は、円筒形状の電動機フレームと、前記電動機フレームの側面に設けられた円形の第1穴と、前記電動機フレーム側面に接続される中間座と、前記中間座に設けられ、前記電動機フレームに前記中間座が接続される際に、前記第1穴と位置が一致するように配置される円形で前記第1穴と略同径の第2穴と、前記中間座と電動機フレームとの接続部において両者を接続する溶接部と、前記第1穴及び前記第2穴の近傍で電動機フレームと中間座との間で形成された間隙と、前記第1穴の周縁部と、前記第2穴の周縁部に当接することにより前記第1穴及び第2穴の周縁部を覆ブッシングと、を備える。前記ブッシングは、前記間隙に挿入可能に構成される凸部を有する。前記凸部は、更に、電動機フレーム方向もしくは中間座方向に突出し前記電動機フレーム及び前記中間座の側面に対して前記凸部が圧接される程度を増加する突出部を備える。前記凸部の根元部は前記第1穴の周縁部と前記第2穴の周縁部に当接している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る電動機の概略構成を示す正面図
図2】電動機フレームと中間座の概略構成を示す斜視図
図3】電動機フレームと中間座の概略構成を示す斜視図
図4】中間座の概略構成を示す斜視図
図5】電動機フレームと中間座の接続部の概略構成を示す拡大断面図であり、図2から図4のA-Aに沿った位置での断面を示す図
図6】第2実施形態における電動機フレームと中間座の接続部の概略構成を示す拡大断面図であり、図2から図4のA-Aに沿った位置での断面を示す図
図7】第2実施形態におけるブッシングの概略構成を示す拡大断面図
図8】第3実施形態におけるブッシングの概略構成を示す拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明において、同様の部位には同様の符号を付し、説明は省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る電動機1ついて、図1から図4を参照して説明する。図2及び図3では、軸受ブラケット12及び回転軸14、その他電動機1の内部構造は省略して描いている。
【0009】
図1から図4に示す様に、電動機1は、電動機フレーム10と、電動機フレーム10の円筒両端の開口部に設けられる軸受ブラケット12と、軸受ブラケット12の中央部に設けられた軸受部に回転自在に支持される回転軸14を備えて構成されている。
【0010】
電動機1は、例えばインバータ制御されることにより回転駆動されるモータである。電動機1は、図示しない固定子と回転子とを内部に格納して備え、回転軸14は、回転子の中心部に挿入固定されている。電動機フレーム10は鋼板製で全体的には円筒形状の部材である。中間座20は鋼板製の部材である。
【0011】
端子箱18と電動機フレーム10を接続する中間座20には略円形状の穴22が設けられている。電動機1を構成する電動機フレーム10の側面にも穴22と略同径の穴24が設けられている。電動機フレーム10と中間座20とは、穴22と穴24の位置を一致させて溶接固定される。実施形態の場合、溶接方法は例えばスポット溶接であり、全周溶接されていなくてもよい。中間座20には、ボルト穴20aが設けられており、図示しないボルトを通して端子箱18が螺設固定される。
【0012】
図5に示す様に、電動機フレーム10と中間座20とは、穴22及び穴24の位置を一致させるようにして配置された状態で、穴22及び穴24からやや離れた位置にて電動機フレーム10と中間座20とが近接する近接部27を備える。近接部27において、溶接部28により溶接固定される。この溶接部28は例えばスポット溶接によるものであり、穴22、穴24の周囲に数カ所が形成される。
【0013】
中間座20は近接部27もしくは溶接部28付近において、丸く曲率を有する曲部20bを有しており、曲部20bによって電動機フレーム10に対する角度が徐々に変化し、電動機フレーム10と中間座20とは、近接部27から穴22及び穴24方向にかけて、V字を描くようにして乖離し、間隙29を形成している。なお、近接部27において電動機フレーム10と中間座20は接触している必要はなく、溶接が可能な程度に近接していればよい。
【0014】
ブッシング26は、電動機フレーム10及び中間座20の穴22及び穴24の周縁部の端部に当接するようにして嵌め込み固定され、穴22及び穴24の周縁部を覆うように配置されている。ブッシング26はゴム等により構成されたリング形状の部材であり、ブッシング26の外周は穴22及び穴24と略同径となるように構成される。ブッシング26は、穴22及び穴24における電動機フレーム10及び中間座20の端部に当接することによりその内径側に穴30を形成している。ブッシング26は、その弾性により、電動機フレーム10及び中間座20の端部における穴22及び穴24に沿って水密に当接する。これにより、電動機フレーム10内部と中間座20及びこれに設置される端子箱18内部を連通するとともに当該内部を水密に保持する機能を有する。
【0015】
また、ブッシング26は凸部262を備えている。凸部262は、ブッシング26の設置時に間隙29に挿入されて間隙29に面する電動機フレーム10及び中間座20の側面に弾性的に圧接され、これにより電動機フレーム10、中間座20及びブッシング26の間の水密度を向上させる作用を奏する。凸部262の先端においては間隙29が狭くなっているため、これにより更に水密度を向上させることができる。
【0016】
ブッシング26により、電動機フレーム10内部と中間座20及びこれに設置される端子箱18内部を連通する穴30が形成される。この穴30内に、電動機1を駆動する電源線が配置されることにより電動機1が構成される。
【0017】
第1実施形態に係る電動機1によれば以下の効果を奏する。
ブッシング26は、電動機フレーム10及び中間座20の端部における穴22及び穴24の周縁部の端部に沿って当接するように設置される。ブッシング26はリング形状であり、電動機フレーム10と中間座20との近接部27付近において、電動機フレーム10と中間座20によって形成された間隙29に圧接挿入可能に構成される凸部262を備えている。電動機フレーム10と中間座20とは、近接部27において溶接により接続されている。ブッシング26が穴22及び穴24に沿って当接することにより電動機フレーム10内部と中間座20及びこれに設置される端子箱18内部を連通するとともに、これらの内部を水密に保持可能となる。
【0018】
上記構成により、内部への水、粉塵等の侵入を防止することが可能な電動機1を提供することができる。また、電動機フレーム10と中間座20との溶接はスポット溶接を採用することができる。本実施形態によればブッシング26により電動機1内部を水密に保持できるため、全周溶接により電動機1内部を水密に保持する必要が無いからである。
【0019】
また、電動機フレーム10と中間座20とをスポット溶接で接続可能であれば、電動機1の製造工程において、電動機フレーム10と中間座20とを、穴22、穴24周りにおいて全周溶接する必要がなくなる。このため、電動機1の生産性を向上させるとともに、製造コストの低減が可能となる。
【0020】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る電動機1について図6及び図7を参照して説明する。図6及び図7において第1実施形態と同様の構成には同様の符号を付して説明は省略する。図6及び図7に示す様に、ブッシング26は凸部263を備えている。凸部263は第1実施形態における凸部262に相当する。第2実施形態における凸部263の先端には図7に示す様に、図における左側すなわち電動機フレーム10方向に突出する突出部264を備えている。突出部264は図における右側すなわち中間座20方向に突出するように構成してもよいし、両側に突出するように構成してもよい。
【0021】
突出部264は断面半円形状を呈している。突出部264により、ブッシング26の設置時に凸部263が間隙29に挿入される際に、電動機フレーム10及び中間座20の側面に対して圧接される程度が増加し、これにより水密度が更に増加される。凸部263の先端においては間隙29が狭くなっているため、これにより更に水密度を向上させることができる。この構成によれば、第1実施形態に係る電動機1と同様の作用を奏する。
【0022】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る電動機1について図8を参照して説明する。図8において第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成には同様の符号を付して説明は省略する。図8に示す様に、ブッシング26は凸部265を備えている。凸部265は第2実施形態における凸部263に相当する。第3実施形態における凸部265の先端には、図8に示す様に、図における左側すなわち電動機フレーム10方向に突出する突出部266を備えている。突出部266は断面において、図における左側に頂点を備える三角形状もしくは山形形状を呈している。突出部266は図における右側すなわち中間座20方向に突出するように構成してもよいし、両側に突出するように構成してもよい。
【0023】
突出部266により、ブッシング26の設置時に凸部263が間隙29に挿入される際に、電動機フレーム10及び中間座20の側面に対して圧接される程度が増加し、これにより水密度が更に増加される。凸部265の先端においては間隙29が狭くなっているため、これにより更に水密度を向上させることができる。この構成によれば、第1実施形態、及び第2実施形態に係る電動機1と同様の作用を奏する。
【0024】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1…電動機、10…電動機フレーム、12…軸受ブラケット、18…端子箱、20…中間座、20b…曲部、22…穴(第2穴)、24…穴(第1穴)、26…ブッシング、262、263、265…凸部、264、266…突出部、27…接触部、28…溶接部、29…間隙、30…穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8