(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】意思決定支援装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20241022BHJP
【FI】
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2019124814
(22)【出願日】2019-07-03
【審査請求日】2022-06-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敬介
(72)【発明者】
【氏名】池田 智
(72)【発明者】
【氏名】柴田 順子
(72)【発明者】
【氏名】笹山 愛未
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503894(JP,A)
【文献】特開2006-072533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の治療方針に関する意思決定を行う決定者の個人情報及び周辺情報、及び、前記決定者の心理情報を示す状態情報を取得する取得部と、
前記個人情報
及び前記周辺情報
を用いて、前記決定者の静的な第1の特性を分析し、前記状態情報
に基づいて、前記決定者の心理状態を推定し、推定した心理状態に基づいて、前記決定者の認知及び行動に関する
第2の特性を分析する分析部と、
前記第1の特性及び前記
第2の特性の分析結果に応じて、前記患者に適した治療法を提示する提示部と
を備える、意思決定支援装置。
【請求項2】
前記分析部は、前記
心理状態に基づいて、前記
第2の特性を動的に分析し、
前記提示部は、前
記分析結果に応じて、前記治療法を動的に変更して提示する、
請求項1に記載の意思決定支援装置。
【請求項3】
前記分析部は、前記決定者の積極性及び消極性に基づく心理状態の指標値を算出し、
前記提示部は、前記指標値が所定の範囲内となるように前記治療法を動的に変更して提示する、
請求項2に記載の意思決定支援装置。
【請求項4】
前記分析部は、前記決定者の意思決定におけるバイアスの特性を分析する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の意思決定支援装置。
【請求項5】
前記提示部は、前
記分析結果に応じて、前記治療法の提示方法を決定し、当該提示方法に従って、前記治療法を提示する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の意思決定支援装置。
【請求項6】
前記提示部は、前
記分析結果に応じて、複数の治療法を比較可能に提示するとともに、当該複数の治療法の中から前記患者に最も適した治療法が選択されるように前記意思決定を促す説明方法を前記治療方針に関する説明を行う説明者に提示する、
請求項1~5のいずれか一つに記載の意思決定支援装置。
【請求項7】
前記提示部は、前記説明者に関する情報に基づいて、前記説明方法の内容を変更する、
請求項6に記載の意思決定支援装置。
【請求項8】
前記提示部は、前
記分析結果に基づいて設定した検索キーを用いて、各種の治療法が記憶されたデータベースから治療法を検索し、検索された治療法の中から前
記分析結果に応じて前記複数の治療法を選択して提示する、
請求項7に記載の意思決定支援装置。
【請求項9】
前記提示部は、さらに、提示した治療法を記憶部に記録し、要求に応じて、前記記憶部から当該治療法を読み出して再提示する、
請求項1~8のいずれか一つに記載の意思決定支援装置。
【請求項10】
前記提示部は、さらに、提示した治療法及び説明方法を記憶部に記録し、要求に応じて、前記記憶部から当該治療法及び当該説明方法を読み出して再提示する、
請求項6又は7に記載の意思決定支援装置。
【請求項11】
患者の治療方針に関する説明を行う説明者が用いる説明者端末装置と、前記治療方針に関する意思決定を行う決定者が用いる決定者端末装置と、前記治療方針に関する意思決定を支援する意思決定支援装置とを含む意思決定支援システムであって、
前記意思決定支援装置は、
前記決定者の個人情報及び周辺情報、及び、前記決定者の心理情報を示す状態情報を取得する取得部と、
前記個人情報
及び前記周辺情報
を用いて、前記決定者の静的な第1の特性を分析し、前記状態情報
に基づいて、前記決定者の心理状態を推定し、推定した心理状態に基づいて、前記決定者の認知及び行動に関する
第2の特性を分析する分析部と、
前記第1の特性及び前記
第2の特性の分析結果に応じて、前記決定者端末装置に複数の治療法を比較可能に表示させるとともに、当該複数の治療法の中から前記患者に最も適した治療法が選択されるように前記意思決定を促す説明方法を前記説明者端末装置に表示させる提示部と
を備える、意思決定支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、意思決定支援装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療の現場では、医師が患者に治療法等の説明を行って同意を得るインフォームド・コンセント(Informed Consent)から、治療方針の決定等の意思決定に患者やその家族が参加し、最適な患者ケアを目指すシェアード・ディシジョン・メーキング(Shared Decision Making)へと意思決定の手法が変化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-538556号公報
【文献】特表2001-516930号公報
【文献】特開2005-267358号公報
【文献】特開2001-331581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、患者の治療方針に関する意思決定が行われる際に、合理的な意思決定が行われるように支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る意思決定支援装置は、取得部と、分析部と、提示部とを備える。取得部は、患者の治療方針に関する意思決定を行う決定者の個人情報及び周辺情報を取得する。分析部は、前記個人情報及び周辺情報を用いて、前記決定者の特性を分析する。提示部は、前記特性の分析結果に応じて、前記患者に適した治療法を提示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る意思決定支援システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る説明者端末装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る決定者端末装置の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る意思決定支援装置の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る分析機能によって用いられる消極的姿勢指標、積極的姿勢指標及び中立的バイアス指標の関係を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る提示機能によって提示される治療法及び説明方法の表示例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る提示機能によって提示される治療法及び説明方法の表示例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る提示機能によって提示される治療法及び説明方法の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る提示機能によって提示される治療法及び説明方法の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る提示機能によって提示される治療法及び説明方法の具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係る提示機能によって提示される治療法及び説明方法の具体例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態に係る意思決定支援装置の処理回路によって実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第2の実施形態に係る提示機能によって再提示される治療法の表示例を示す図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態に係る提示機能によって再提示される治療法及び説明方法の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、意思決定支援装置及びシステムの実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る意思決定支援装置及びシステムは、例えば、病院等に設置され、治療方針に関する意思決定を行うインフォームド・コンセントやシェアード・ディシジョン・メーキングが行われる際に用いられる。
【0009】
一般的に、医療の現場では、手術等の治療法を決定する際に、医師が患者やその家族に対して、病状及び治療法、更には、治療に伴うリスク等について説明を行うインフォームド・コンセント(以下、IC)が行なわれている。ICでは、通常、医師が推奨する治療法に関して、印刷された文字による説明文書が患者や家族に手渡され、医師によって口頭で説明が行われた後に、質疑応答が行なわれる。この際には、通常、学会等のガイドラインに従って医師や病院が定めたな治療法として、外科手術、化学療法、放射線療法について説明が行われる。例えば、乳がんの場合には、病状(腫瘍の位置や大きさ、転移の状況等)や治療方針(手術の方法や手術時間、術後の治療等)、手術後の注意点(合併症等の医療リスク等)、手術の日程(入院日や手術日、入院期間等)等の説明が行われる。また、がんや脳卒中、心疾患表等、重篤な疾患の場合には、患者や家族がセカンドオピニオンを利用することもある。
【0010】
このようなICでは、医学的なエビデンスに基づいた治療法であっても、医師から一方的に治療法が提示される傾向があるが、一般的に、医学的なエビデンスには不確実性が伴っており、どの治療法にもリスクが存在する。また、個人の価値観は多様であり、全ての患者に同じ治療法が最良になるとは限らない。このため、近年では、重要な意思決定プロセスに患者や家族をより深く関与させるシェアード・ディシジョン・メーキング(以下、SDM)が試みられている。SDMでは、通常、医師が患者や家族に対して選択肢を示し、得失を説明した上で、患者に最終的な意思決定が委ねられる。例えば、乳がんの場合には、選択肢として、治療を受けない、全摘出+化学療法を行なう、部分切除術+放射線治療+化学療法を行なう等が示され、それぞれの選択肢について、メリットやデメリット等の情報が示される。
【0011】
しかしながら、上述したICやSDMでは、患者や家族、医師にとって、合理的な意思決定を行うことが難しい場合がある。
【0012】
例えば、患者や家族が、個人や家族に固有の問題によって、医師の説明を冷静に聞くことができない場合がある。ここで、固有の問題とは、例えば、患者の治療に伴う死亡や後遺症に関するリスクの問題や、治療費が支払えないかもしれない、或いは、収入がなくなる又は減少する等の経済的な問題、入院治療時に世話をしてもらえる近親者が存在しない、入院すると家族の世話ができなくなる、或いは、社会復帰が困難になる等の社会的な問題等である。これに対し、医師は一般的に多忙であるため、患者や家族から質問や相談が出されない限り、患者や家族に固有の問題を十分に把握して対応することは難しい。一方、患者や家族は、医師が多忙であること等により、質問や相談を行なうことを遠慮しがちである。また、患者や家族は、セカンドオピニオンを受けることを思い立っても、医師の心証を気にして言い出せないこともある。このような場合、患者や家族は、医師の説明及び提案に盲目的に従うことになる。
【0013】
また、行動経済学的な観点で、人には認知及び行動に関する様々なバイアスが働くことが知られており、このバイアスによって、合理的な意思決定がより困難になることもある。このバイアスは、患者や家族の側及び医師の側の双方に生じ得る。
【0014】
例えば、自分と似た患者と同じ治療法を盲目的に選択する「バンドワゴン効果」が知ら得ている。この「バンドワゴン効果」が強く働いた場合、例えば、高齢のがん患者については、他の要因も考慮して、医学的なエビデンスが存在する標準的な治療法ではなく、身体的負担が小さく、経済的な負担も小さい代替治療法を選択すべきかもしれない。
【0015】
また、例えば、がん治療によるリスクやコストを避けようとする「現状維持バイアス」も知られている。この「現状維持バイアス」が強く働いた場合、患者や家族は、研究段階で科学的な実証が不完全な治療法や医学的根拠の乏しい代替治療法等の情報に触れた際、手術をしなくてもこの治療法で治癒するのではないか、しばらく様子を見てから手術をしても良いのではないか等のように、問題を先送りすることがある。
【0016】
また、例えば、過去のコストを無駄にしたくないという「サンクトコスト・バイアス」も知られている。例えば、長らく抗がん剤治療を行なってきたが、抗がん剤の効果が得られなくなり、これ以上抗がん剤治療を継続することは心臓への負担が大きすぎる場合、抗がん剤治療を打ち切って緩和療法へと切り替えて、残りの人生を家族と有意義に過ごす方が合理的であり、望ましいと考えられる(この場合、がんで死ななくとも、がん治療による心不全で死亡することもあり得る)。しかし、「サンクトコスト・バイアス」が強く働いた場合、これまでの抗がん剤治療に投資した時間とコストという損失(サンクトコスト)を回避するために、患者や家族が、抗がん剤治療の継続を希望することがある。同様に、終末期医療において、助かる望みが非常に小さくても延命措置を継続することで、逆に患者の苦痛が増大してしまう場合や、有効な治療法が存在せず、治癒の見込みが非常に低い状況でも、サンクコストの損失回避のため、成功率5%の治療法にわずかな望みを繋ぐというように、患者がリスク選好的になる場合がある。
【0017】
また、例えば、不確実性が伴う意思決定において確実なものを強く好む傾向(確実性効果)と、利得よりも損失を大きく嫌う傾向(損失回避)とからなる「プロスペクト理論」もしられている。一般的に、治療法は選択肢が非常に多いため情報過多となることが多いが、「プロスペクト理論」によれば、手術の成功率だけを比較した場合に、成功率は95%であるが多数の患者で安全性が示されている手術よりも、限定的な患者でのみ有効性が示される成功率98%の手術がより良い手術であると誤解されかねない。
【0018】
また、例えば、医師から患者や家族へ治療法の選択肢が提示される際に、医師の経験やスキル、リスク選好的であるかリスク回避的であるか等の特性に応じて、提示される選択肢にバラつきや偏りが生じることもあり得る。
【0019】
以上の例に示されるように、人の認知及び行動にはバイアスが存在し、強いストレス下、すなわち、治療法の選択や終末期における治療中止の判断等のような極めて困難な意思決定を行う場合において、患者や家族、医師が合理的な意思決定を行うことが難しいこともある。この結果として、非合理的な意思決定を行い、それを後悔することになると、患者や家族、医師にとって、大きな精神的な傷となってしまうことがあり得る。
【0020】
さらに、SDMにおける意思決定は、様々なコンテキストを考慮して行なわれるべきであるが、単純なSDMは、逆に患者を混乱させる危険性もある。例えば、乳がんの場合に、何もしないという選択肢を提示することは、高齢者にとっては良い場合もあるが、若年者にとっては有害となる場合もあり得る。すなわち、何もしないという選択肢を提示することによって、現状を変更する方がより望ましい場合でも現状の維持を好む傾向である「現状維持バイアス」を強化しかねず、自身の手術を受けたくないという気持ちを正当化するための医学的根拠のない民間療法への傾倒を助長することもあり得る。
【0021】
このようなことから、本実施形態に係る意思決定支援装置及びシステムは、IC又はSDMにおいて、患者の治療方針に関する意思決定が行われる際に、合理的な意思決定が行われるように支援するものである。
【0022】
以下、本実施形態に係る意思決定支援装置及びシステムについて、詳細に説明する。なお、本実施形態では、治療方針に関する意思決定を行う者を「決定者」と呼び、治療方針に関する説明を行う者を「説明者」と呼ぶ。例えば、決定者は、治療を受ける患者自身や患者の家族等であり、説明者は、患者の診療を担当する医師等である。例えば、患者が意識不明であったり、未成年であったりする場合は、家族が決定者になることがあり得る。
【0023】
図1は、第1の実施形態に係る意思決定支援システムの構成例を示す図である。
【0024】
例えば、
図1に示すように、本実施形態に係る意思決定支援システム100は、説明者端末装置110と、決定者端末装置120と、意思決定支援装置130とを含む。ここで、各装置及びシステムは、ネットワーク140を介して相互に通信可能に接続されている。例えば、意思決定支援システム100は、インターネットを利用したクラウドコンピューティングによって実現される。
【0025】
説明者端末装置110は、IC又はSDMが行われる際に、患者の治療方針に関する説明を行う説明者が用いる端末装置である。例えば、説明者端末装置110は、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータ機器、又は、タブレット端末やスマートフォン等のモバイルデバイスによって実現される。
【0026】
決定者端末装置120は、IC又はSDMが行われる際に、患者の治療方針に関する意思決定を行う決定者が用いる端末装置である。例えば、決定者端末装置120は、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータ機器、又は、タブレット端末やスマートフォン等のモバイルデバイスによって実現される。
【0027】
意思決定支援装置130は、IC又はSDMが行われる際に、患者の治療方針に関する意思決定を支援する装置である。例えば、意思決定支援装置130は、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータ機器を用いたクラウドサーバーとして実装される。
【0028】
図2は、第1の実施形態に係る説明者端末装置110の構成例を示す図である。
【0029】
例えば、
図2に示すように、説明者端末装置110は、NW(network)インタフェース111と、記憶回路112と、入力インタフェース113と、ディスプレイ114と、処理回路115とを有する。
【0030】
NWインタフェース111は、処理回路115に接続されており、ネットワーク140を介して他の装置との間で行われるデータ通信を制御する。具体的には、NWインタフェース111は、処理回路115による制御のもと、他の装置との間で行われる各種データの送受信を制御する。例えば、NWインタフェース111は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(network interface controller)等によって実現される。
【0031】
記憶回路112は、処理回路115に接続されており、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路112は、処理回路115による制御のもと、各種データを記憶し、また、記憶されたデータの読み出し及び更新を行う。例えば、記憶回路112は、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0032】
入力インタフェース113は、処理回路115に接続されており、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース113は、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換して処理回路115に出力する。例えば、入力インタフェース113は、トラックボールやスイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサーを用いた非接触入力回路、マイクロフォンを用いた音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース113は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース113の例に含まれる。
【0033】
ディスプレイ114は、処理回路115に接続されており、各種情報及び各種データを表示する。具体的には、ディスプレイ114は、処理回路115による制御のもと、各種情報及び各種データを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ114は、LCD(Liquid Crystal Display)やタッチパネル等によって実現される。
【0034】
処理回路115は、入力インタフェース113を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、説明者端末装置110の動作を制御する。具体的には、処理回路115は、制御機能115aを有する。
【0035】
制御機能115aは、IC又はSDMにおいて、説明者によって治療方針に関する説明が行われる際に、当該説明者から受け付けた指示や操作を意思決定支援装置130に送信し、それに応じて意思決定支援装置130から提示される治療法や当該治療法に関する説明方法をディスプレイ114に表示する。
【0036】
ここで、処理回路115は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、制御機能115aは、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路112に記憶される。そして、処理回路115は、記憶回路112から当該プログラムを読み出して実行することで、制御機能115aを実現する。換言すると、当該プログラムを読み出した状態の処理回路115は、
図2に示す制御機能115aを有することとなる。
【0037】
図3は、第1の実施形態に係る決定者端末装置120の構成例を示す図である。
【0038】
例えば、
図3に示すように、決定者端末装置120は、NWインタフェース121と、記憶回路122と、入力インタフェース123と、ディスプレイ124と、センサー125と、処理回路126とを有する。
【0039】
NWインタフェース121、記憶回路122、入力インタフェース123、及びディスプレイ124は、それぞれ、上述した説明者端末装置110のNWインタフェース111、記憶回路112、入力インタフェース113、及びディスプレイ114と同様の構成を有する。
【0040】
センサー125は、意思決定を行う決定者の心理情報を示す状態情報を検出する。例えば、センサー125は、カメラやマイクロフォン、赤外線センサー等の非接触型センサーによって実現され、状態情報として、決定者の表情や仕草、声の調子、体温、心拍等を検出する。または、例えば、センサー125は、タブレット端末やスマートフォン等のモバイルデバイスに内蔵されたタッチパネル等の接触型センサーによって実現され、状態情報として、タッチパネルの押圧やスワイプ操作速度、操作間隔(遅延)等を検出する。または、センサー125は、IPカメラ等のIoT(Internet of Things)デバイスとして独立したセンサーユニットによって実現されてもよい。
【0041】
処理回路126は、入力インタフェース123を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、決定者端末装置120の動作を制御する。具体的には、処理回路126は、制御機能126aを有する。
【0042】
制御機能126aは、IC又はSDMにおいて、決定者によって治療方針に関する意思決定が行われる際に、当該決定者から受け付けた指示やセンサー125によって検出された決定者の状態情報を意思決定支援装置130に送信し、それに応じて意思決定支援装置130から提示される治療法をディスプレイ124に表示する。例えば、制御機能126aは、IC又はSDMにおいて、患者及び家族の両方が参加している場合には、患者及び家族それぞれの状態情報を検出して、意思決定支援装置130に送信する。
【0043】
ここで、処理回路126は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、制御機能126aは、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路122に記憶される。そして、処理回路126は、記憶回路122から当該プログラムを読み出して実行することで、制御機能126aを実現する。換言すると、当該プログラムを読み出した状態の処理回路126は、
図3に示す制御機能126aを有することとなる。
【0044】
図4は、第1の実施形態に係る意思決定支援装置130の構成例を示す図である。
【0045】
例えば、
図4に示すように、意思決定支援装置130は、NWインタフェース131と、記憶回路132と、入力インタフェース133と、ディスプレイ134と、処理回路135とを有する。
【0046】
NWインタフェース131、入力インタフェース133、及びディスプレイ134は、それぞれ、上述した説明者端末装置110や決定者端末装置120のNWインタフェース、入力インタフェース及びディスプレイと同様の構成を有する。
【0047】
記憶回路132は、処理回路135に接続されており、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路132は、処理回路135による制御のもと、各種データを記憶し、また、記憶されたデータの読み出し及び更新を行う。例えば、記憶回路132は、RAMやフラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。ここで、記憶回路132は、記憶部の一例である。
【0048】
ここで、本実施形態では、記憶回路132が、患者の医療情報を記憶する。
【0049】
例えば、患者の医療情報は、患者の現在の病名や病状、血液検査や画像検査の結果等を含む。また、患者の医療情報は、個人の年齢や性別、身長、体重、既往歴等をさらに含んでもよい。例えば、これらの医療情報は、予め、電子カルテシステムやPACS(Picture Archiving and Communication System)、放射線部門システム、検体検査システム等の医療情報システムから取得されて、記憶回路132に保存される。
【0050】
さらに、本実施形態では、記憶回路132は、患者の治療方針に関する意思決定を行う決定者の個人情報及び周辺情報を記憶する。
【0051】
例えば、決定者の個人情報は、患者及び家族それぞれに関する属性情報を含む。ここで、属性情報は、年齢や性別、身長、体重、既往歴等を含む。例えば、これらの属性情報は、予め、診療時や入院時に行われるアンケート等によって収集されて、記憶回路132に保存される。
【0052】
さらに、決定者の個人情報は、患者及び家族それぞれに関する特性情報を含む。ここで、特性情報は、個人の嗜好や選好等、認知及び行動に関する静的な特性を示す情報である。例えば、これらの特性情報は、予め、個人の購買履歴やウェブ閲覧履歴、SNS(Social Networking Service)等での書き込み等の情報、日常生活における行動等に関する情報から各種の特性を抽出することによって作成されて、記憶回路132に保存される。
【0053】
例えば、ここでいう各種の特性は、先進性特性、リスク特性、経済性特性、性格特性、相性特性等である。ここで、先進性特性は、先進的な治療法と標準的な治療法のどちらを好むか等、先進医療の受容に関わる特性である。また、リスク特性は、合併症や医療リスクに対する受容度等に関わる特性である。また、経済性特性は、治療費の支払い能力や自費医療等の高額医療を受容するか等の経済性に関わる特性である。また、性格特性は、楽天的又は悲観的、気が短い又は長い等、本人の性格に関わる特性である。また、相性特性は、好みの人(医師や看護師、患者等)のタイプや性格等、相手との相性に関わる特性である。
【0054】
一方、決定者の周辺情報は、患者及び家族それぞれに関する家族構成や生活環境に関する情報を含む。例えば、家族構成に関する情報は、配偶者や子供、父母、兄弟等、近親者に関する人数や年齢、居住地、職業、収入、通勤又は通学時間等を含む。また、生活環境に関する情報は、父母の介護の必要性や子供の通学等を含む世話の必要性等の情報を含む。例えば、これらの周辺情報は、予め、診療時や入院時に行われるアンケート等によって収集されて、記憶回路132に保存される。
【0055】
さらに、本実施形態では、記憶回路132は、患者の治療方針に関する説明を行う説明者に関する情報を記憶する。
【0056】
例えば、説明者に関する情報は、医師の経験やスキル、経歴、特性に関する情報を含む。ここで、特性に関する情報は、例えば、医師の個人的な特性を示す情報や、医療上の判断における傾向を示す情報等である。例えば、ここでいう個人的な特性は、せっかちである、気が長い等の特性である。また、医療上の判断における傾向は、特定の薬を選びがちである、緩和治療へ移るタイミングが遅れがちである、治療を中止する際の判断にバラつきがある等の傾向である。
【0057】
処理回路135は、入力インタフェース133を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、意思決定支援装置130の動作を制御する。具体的には、処理回路135は、取得機能135aと、分析機能135bと、提示機能135cとを有する。ここで、取得機能135aは、取得部の一例である。また、分析機能135bは、分析部の一例である。また、提示機能135cは、提示部の一例である。
【0058】
取得機能135aは、記憶回路132を参照して、患者の治療方針に関する意思決定を行う決定者の個人情報及び周辺情報を取得する。また、取得機能135aは、決定者端末装置120から送信された決定者の心理状態を示す状態情報を取得する。
【0059】
具体的には、取得機能135aは、IC又はSDMが行われる際に、最初に、意思決定を行う決定者の個人情報及び周辺情報を取得する。また、取得機能135aは、IC又はSDMが行われている間、所定の時間間隔で、決定者端末装置120から送信される決定者の状態情報を取得する。
【0060】
分析機能135bは、取得機能135aによって取得された決定者の個人情報及び周辺情報を用いて、決定者の特性を分析する。このとき、分析機能135bは、決定者が患者自身である場合には、患者の個人情報及び周辺情報を用いる。また、分析機能135bは、決定者が患者の家族である場合には、家族の個人情報及び周辺情報を用いる。
【0061】
また、分析機能135bは、取得機能135aによって取得された決定者の心理状態を示す状態情報をさらに用いて、決定者の特性を動的に分析する。このとき、分析機能135bは、決定者が患者自身である場合には、患者の状態情報を用いる。また、分析機能135bは、決定者が患者の家族である場合には、家族の状態情報を用いる。
【0062】
具体的には、分析機能135bは、IC又はSDMが行われる際に、最初に、決定者の個人情報及び周辺情報を用いて、決定者の静的な特性を分析する。例えば、分析機能135bは、前述した先進性特性、リスク特性、経済性特性、性格特性、相性特性等の特性を分析する。
【0063】
また、分析機能135bは、IC又はSDMが行われている間、取得機能135aによって決定者の状態情報が取得されるごとに、決定者の個人情報及び周辺情報に加えて、取得された状態情報をさらに用いて、決定者の動的な特性を分析する。
【0064】
具体的には、分析機能135bは、決定者の状態情報に基づいて、決定者の心理状態を推定する。例えば、分析機能135bは、決定者の表情や仕草、声の調子、体温、心拍等に基づいて、決定者が冷静であるか、又は、動揺していないか等を推定する。または、例えば、分析機能135bは、カメラによって得られた映像から心拍を推定する技術を用いて、決定者の心拍の速度や揺らぎを計測することにより、気持ちが動揺しているかを推定する。または、例えば、分析機能135bは、マイクロフォンによって収集された音声データから、声の震えやこもった低い発音を捉えることで、気持ちの動揺度合いを推定する。そして、分析機能135bは、推定した決定者の心理状態に基づいて、決定者の認知及び行動に関する特性を動的に分析する。
【0065】
ここで、分析機能135bは、決定者の意思決定におけるバイアスの特性を分析する。
【0066】
例えば、分析機能135bは、リスク選好特性、コスト選好特性及び時間選好特性のうちの少なくともいずれかの観点で、バイアスの特性を分析する。ここで、リスク選好特性は、リスク回避志向が強まっているか、リスク選好度が強くなって投機的になっているかを示す特性である。また、コスト選好特性は、サンクトコスト回避志向が強まっているか、コストに対して許容度が向上しているかを示す特性である。また、時間選好特性は、長期志向が強くなっているか、短期志向が強くなっているかを示す特性である(今は決めたくない、早く決めたい、そんな長く入院できない等)。
【0067】
また、分析機能135bは、決定者の積極性及び消極性に基づく心理状態の指標値を算出する。
【0068】
具体的には、分析機能135bは、決定者の発言内容、声色、顔色や表情、手や指の震え等から、リスク選好特性、コスト選好特性又は時間選好特性の観点で、決定者のバイアスの特性をスコア化する。
【0069】
例えば、分析機能135bは、決定者の消極的な姿勢及び積極的な姿勢の2面性を独立に評価し、0~1の値の範囲で、消極的な姿勢の度合いを示す消極的姿勢指標、及び、積極的な姿勢の度合いを示す積極的姿勢指標をそれぞれ算出する。
【0070】
そして、分析機能135bは、決定者が認知能力的に中立な状態、すなわち、心の動揺が小さく、冷静に状況判断を行って、必要なアクション(治療法の決定)について理性的な判断を行なえる状態かどうかを判定する。
【0071】
例えば、分析機能135bは、以下の式を用いて、消極的姿勢指標及び積極的姿勢指標から、決定者が認知能力的に中立な状態であるか否かを示す中立的バイアス指標NI(Neutrality Index)を算出する。
【0072】
NI=(1-積極的姿勢指標)×(1-消極的姿勢指標)
【0073】
ここで、中立的バイアス指標NIは、消極的姿勢指標及び積極的姿勢指標と同様に0~1の値で算出される。
【0074】
図5は、第1の実施形態に係る分析機能135bによって用いられる消極的姿勢指標、積極的姿勢指標及び中立的バイアス指標の関係を示す図である。
【0075】
例えば、
図5に示すように、消極的姿勢指標及び積極的姿勢指標のどちらも十分に小さい場合には、中立的バイアス指標NIは大きな値となる。
【0076】
そして、分析機能135bは、NIを所定の閾値と比較することによって、決定者が理性的な判断を行える状態であるか否かを判定する。例えば、分析機能135bは、閾値を0.5に設定し、NIが0.5以上である場合に、決定者のバイアスが強くなく、理性的な判断を行える状態である(中立的)と判定し)、NIが0.5未満である場合に、決定者のバイアスが強く、理性的な判断を行える状態ではない(消極的又は積極的)と判定する。
【0077】
提示機能135cは、分析機能135bによって得られた特性の分析結果に応じて、患者に適した治療法を提示する。
【0078】
ここで、提示機能135cは、特性の分析結果に基づいて設定した検索キーを用いて、各種の治療法が記憶されたデータベースから治療法を検索し、検索された治療法の中から特性の分析結果に応じて複数の治療法を選択して提示する。なお、提示機能135cによって検索される治療法のデータベースは、予め記憶回路132に構築されていてもよいし、例えば、医療機関や医療情報提供サイト等で蓄積されたデータベースのように、ネットワーク140を介して接続可能な他の装置に構築されたものでもよい。
【0079】
また、提示機能135cは、分析機能135bによって得られた特性の分析結果に応じて、提示する治療法を動的に変更して提示する。このとき、提示機能135cは、分析機能135bによって算出された決定者の積極性及び消極性に基づく指標値が所定の範囲内となるように、提示する治療法を動的に変更して提示する。ここで、例えば、所定の範囲には、決定者の年齢や性別等の属性に応じて適切な範囲が設定される。
【0080】
具体的には、提示機能135cは、IC又はSDMが行われる際に、最初に、取得機能135aによって取得された決定者の個人情報及び周辺情報と、分析機能135bによって行われた静的な特性の分析結果とに基づいて、患者にとって望ましい治療法が検索されるような検索キーを設定する。そして、提示機能135cは、設定した検索キーを用いて、各種の治療法が記憶されたデータベースから治療法を検索する。
【0081】
また、提示機能135cは、IC又はSDMが行われている間、取得機能135aによって取得された決定者の個人情報及び周辺情報と、分析機能135bによって行われた動的な特性の分析結果とに基づいて、患者にとって望ましい治療法が検索されるような検索キーを設定する。このとき、提示機能135cは、前述した中立的バイアス指標NIが所定の範囲内となるように検索キーワードを調整して、治療法を検索する。例えば、提示機能135cは、NIが所定の範囲外である場合に、消極的姿勢指標が積極的姿勢指標より大きいときは、決定者がより積極的になるように検索キーワードを調整し、積極的姿勢指標が消極的姿勢指標より大きいときは、決定者がより消極的になるように検索キーワードを調整する。そして、提示機能135cは、設定した検索キーを用いて、各種の治療法が記憶されたデータベースから治療法を検索する。
【0082】
そして、提示機能135cは、データベースから治療法を検索するごとに、検索した治療法の中から、決定者のバイアスの特性の分析結果に応じて、最も推奨される治療法(以下、合理的最適治療法)と、合理的最適治療法と対比して検討できるような少なくとも1つの代替治療法とを含む複数の治療法を選択する。
【0083】
例えば、提示機能135cは、決定者が選択肢の中庸を好む特性を有している場合には、治療成績VS費用の観点から、合理的最適治療法と2つの代替治療法の計3つの治療法を選択する(松竹梅の法則)。
【0084】
具体的には、提示機能135cは、治療成績を重視した代替法を「松」の治療法(パフォーマンス重視型代替治療法)とし、費用対効果を重視した合理的最適治療法を「竹」の治療法(コストパフォーマンス重視型合理的最適治療法)とし、費用を重視した代替法を「梅」の治療法(コスト重視型代替治療法)として、これらの3つの治療法を選択する。
【0085】
例えば、「松」の治療法は、コストは非常に高いが、治療成績が良好で身体的負担の小さい治療法である。または、例えば、「松」の治療法は、特定の先進医療機関で治療を受けられるが、全額個人負担となる治療法である。または、例えば、「松」の治療法は、居住地の近くの医療施設では行えないため、遠隔地の医療施設に入院する必要がある治療法である。
【0086】
また、例えば、「竹」の治療法は、医学会が採択した診療ガイドラインに準拠した標準的な治療法である。または、例えば、「竹」の治療法は、治療成績が十分高く、保険適用であるため、自己負担3割で治療を受けられる治療法である。または、例えば、「竹」の治療法は、抗がん剤による身体的負担は小さくはないが、現在最も普及している治療法である。または、例えば、「竹」の治療法は、現在受診中の医療機関に入院で受けられる治療法である。
【0087】
また、例えば、「梅」の治療法は、治療成績は高いとは言えないが、費用や身体的負担が小さい治療法である。または、例えば、「梅」の治療法は、積極的な治療を行なわないことである。または、例えば、「梅」の治療法は、前立腺がんの治療において、監視療法と呼ばれる治療法である。
【0088】
そして、提示機能135cは、特性の分析結果に応じて、選択した複数の治療法を比較可能に提示するとともに、当該複数の治療法の中から患者に最も適した治療法が選択されるように意思決定を促す説明方法を治療方針に関する説明を行う説明者に提示する。
【0089】
このとき、提示機能135cは、記憶回路132に記憶されている説明者に関する情報に基づいて、説明方法の内容を変更する。
【0090】
具体的には、提示機能135cは、特性の分析結果に応じて、決定者端末装置120に複数の治療法を比較可能に表示させるとともに、当該複数の治療法の中から患者に最も適した治療法が選択されるように意思決定を促す説明方法を説明者端末装置110に表示させる。
【0091】
ここで、提示機能135cは、特性の分析結果に応じて、治療法の提示方法を決定し、当該提示方法に従って、患者に適した治療法を提示する。
【0092】
図6及び7は、第1の実施形態に係る提示機能135cによって提示される治療法及び説明方法の表示例を示す図である。
【0093】
例えば、
図6の右側に示すように、提示機能135cは、決定者端末装置120のディスプレイ124に、複数の治療法A、B及びCを選択肢として並べて表示させる。また、例えば、提示機能135cは、決定者端末装置120のディスプレイ124に、決定者が検索サイト等を用いて質問やサーチを行うためのテキストボックスをさらに表示させる。
【0094】
この一方で、例えば、
図6の左側に示すように、提示機能135cは、説明者端末装置110のディスプレイ114に、シナリオボードウィンドウと、患者説明ウィンドウと、患者医療情報ウィンドウと、描画ウィンドウとを表示させる。
【0095】
ここで、提示機能135cは、患者説明ウィンドウには、決定者端末装置120のディスプレイ124に表示されている内容を表示させる。そして、提示機能135cは、患者説明ウィンドウを介して、各治療法の表示位置を変更する指示や各治療法の表示/非表示を切り替える指示を受け付け、受け付けた指示に応じて、決定者端末装置120のディスプレイ124における治療法の表示を変更する。これにより、例えば、説明者が、決定者からの要望に応じて、適宜に治療法の表示を変更することができる。
【0096】
また、提示機能135cは、患者医療情報ウィンドウに、患者の医療情報を表示させる。例えば、提示機能135cは、患者の現在の病名や病状、血液検査や画像検査の結果等を患者医療情報ウィンドウに表示させる。
【0097】
また、提示機能135cは、描画ウィンドウを介して、治療方針を説明するための図を描画する操作や文字を記入する操作を受け付け、受け付けた内容を決定者端末装置120のディスプレイ124に表示させる。ここで、描画ウィンドウを介して受け付けられた内容は、決定者端末装置120のディスプレイ124に表示される結果、患者説明ウィンドウにも表示されることになる。これにより、例えば、説明者が、描画ウィンドウを介して図を示すことによって、治療方針に関する決定者の理解を深めることができる。
【0098】
また、提示機能135cは、シナリオボードウィンドウに、決定者端末装置120のディスプレイ124に表示した複数の治療法に関する説明方法を表示させる。このシナリオボードウィンドウに表示される内容は、決定者には提示されず、説明者のみに提示されることになる。
【0099】
具体的には、提示機能135cは、決定者のバイアスの特性の分析結果に基づいて、選択した治療法をどのような順番や説明方法で決定者に提示するかを決定する。例えば、提示機能135cは、決定者端末装置120のディスプレイ124に表示させる治療法の提示方法として、複数の治療法を表示させる際の並べ方を決定する。また、例えば、提示機能135cは、説明者端末装置110のシナリオボードウィンドウに表示させる治療法の説明方法として、複数の治療法の説明順や、説明のポイント、NGワード等を決定する。
【0100】
例えば、
図6に示すように、提示機能135cは、決定者が松竹梅で選択することを好む特性を有している場合には、決定者端末装置120のディスプレイ124に、3つの治療法を表示させる。具体的には、提示機能135cは、前述した「竹」の治療法を表示させ、さらに、当該「竹」の治療法と対比するための治療法として、前述した「松」の治療法及び「梅」の治療法を表示させる。この場合に、例えば、提示機能135cは、「竹」の治療法Bを中央に表示させ、その左右に「松」の治療法A及び「梅」の治療法Cをそれぞれ表示させる。そして、例えば、提示機能135cは、説明者端末装置110のシナリオボードウィンドウに、松竹梅で選択する場合に適した治療法の説明方法を表示させる。
【0101】
また、例えば、
図7に示すように、提示機能135cは、決定者が二者択一で比較しながら望ましい案を選択するような積極的な特性を有している場合には、決定者端末装置120のディスプレイ124に、2つの治療法を表示させる。具体的には、提示機能135cは、決定者のバイアスの特性に基づいて、松竹梅の3つの治療法の中から2つの治療法を選択して表示させる。この場合に、例えば、提示機能135cは、最初に、「竹」の治療法Aと「松」の治療法Bとを表示させ、決定者によって「竹」の治療法Aが選択された場合に、「松」の治療法Bに替えて「梅」の治療法Cを表示させる。そして、例えば、提示機能135cは、説明者端末装置110のシナリオボードウィンドウに、二者択一で比較しながら選択する場合に適した治療法の説明方法を表示させる。
【0102】
このとき、提示機能135cは、記憶回路132に記憶されている説明者に関する情報を参照して、シナリオボードウィンドウに表示させる治療法の説明方法を決定する。例えば、提示機能135cは、説明者が医師である場合に、その医師の経験やスキル、経歴、特性に関する情報に基づいて、治療法の説明方法を変更する。
【0103】
例えば、提示機能135cは、治療法として、現在の治療を「中止する」、「変更する」及び「継続する」の3つの選択肢を提示する場合に、患者にとって最善な治療法が現在の治療を「変更する」であり、かつ、医師が治療を変更することに消極的な特性を有するときには、治療を変更するように医師を促すデータやコメントを決定し、説明方法に含めて提示する。例えば、提示機能135cは、治療を変更する際に、医師が治療法の説明をよりしやすくなるような情報や、医師の精神的負担を減らすような表現を含む情報を提示する。
【0104】
具体的には、例えば、提示機能135cは、現在の薬ではがんマーカーの値が下がらないことや、がんマーカーの値が下がらない場合は痛み等の症状が強くなって入院が必要になることを示すデータ、薬を変えた場合の効果の程度を示す統計的なデータ等を提示する。また、例えば、提示機能135cは、医師が、せっかちですぐに薬を変える傾向がある場合には、現在の薬をさらに続けることを薦めるコメントを、その場合に得られる効果を示す情報とともに提示する。
【0105】
ここで、提示機能135cによって提示される治療法及び説明方法について、いくつかの例を挙げてより具体的に説明する。
【0106】
図8~11は、第1の実施形態に係る提示機能135cによって提示される治療法及び説明方法の具体例を示す図である。
【0107】
例えば、
図8に示すように、提示機能135cは、松竹梅の法則で選択を簡便かつ円滑にガイドする場合に、決定者が納得しそうな「竹プラン」として、費用対効果を重視した治療法を表示し、それと対比するための「松プラン」として、治療成績を重視した治療法を表示させ、「梅プラン」として、費用を重視した治療法を表示させる。
【0108】
そして、この場合には、例えば、提示機能135cは、松竹梅の法則で選択を簡便かつ円滑にガイドするための説明方法として、治療成績VS費用の観点で各治療法がどのような患者に適するかを示す情報を説明者端末装置110のシナリオボードウィンドウに表示させる。例えば、提示機能135cは、松プランについて、「『治療成績』を重視する患者さんにお勧めです。」との情報を表示させる。また、例えば、提示機能135cは、竹プランについて、「『費用対効果』を重視する患者さんにお勧めです。」との情報を表示させる。また、例えば、提示機能135cは、梅プランについて、「『支出費用』を重視する患者さんにお勧めです。」との情報を表示させる。
【0109】
これらの情報を参照して、説明者(医者)が決定者(患者、家族)に説明を行うことによって、選択肢の中庸を好む決定者に対して、費用対効果を重視した治療法(竹プラン)を選択するように促すことができる。この結果、決定者(患者、家族)及び説明者(医者)の双方が納得するような結果が得られるようになる。
【0110】
また、例えば、
図9に示すように、提示機能135cは、標準治療を推奨する場合に、決定者が納得しそうな「竹プラン」として、標準治療を表示させ、それと対比するための「松プラン」として、免疫療法を表示させ、「梅プラン」として、緩和療法を表示させる。
【0111】
そして、この場合には、例えば、提示機能135cは、標準治療を推奨するための説明方法として、3つのプランの中から竹プランを選択するように決定者を促すための情報を説明者端末装置110のシナリオボードウィンドウに表示させる。例えば、提示機能135cは、松プランについて、「xx遺伝子変異のある患者さんには免疫チェックポイント阻害剤の有効性が認められています。治療費は保険適用外(自己負担)でxx円です。」との情報を表示させる。また、例えば、提示機能135cは、竹プランについて、「xxがんの患者さんのxx%はこの外科手術/化学療法/放射線療法を組み合わせた標準治療法を選択しています。5年生存率はxx%。保険適用で治療費はxx円程度。」との情報を表示させる。また、例えば、提示機能135cは、梅プランについて、「年齢を考慮して、積極的な治療をしない場合、放射線治療をお勧めします。5年生存率はxx%。保険適用により、治療費はxx円程度。」との情報を表示させる。
【0112】
これらの情報を参照して、説明者(医者)が決定者(患者、家族)に説明を行うことによって、選択肢の中庸を好む決定者に対して、標準治療(竹プラン)を選択するように促すことができる。この結果、決定者(患者、家族)及び説明者(医者)の双方が納得するような結果が得られるようになる。
【0113】
また、例えば、
図10に示すように、提示機能135cは、外科手術をしたくない患者に標準治療を推奨する場合に、決定者が選択するのが望ましい「竹プラン」として、標準治療を表示させ、それと対比するための「松プラン」として、粒子線治療を表示させ、「梅プラン」として、放射線治療を表示させる。
【0114】
そして、この場合には、例えば、提示機能135cは、外科手術をしたくない患者に標準治療を推奨するための説明方法として、3つのプランの中から梅プランを選択するように決定者を促すための情報を説明者端末装置110のシナリオボードウィンドウに表示させる。例えば、提示機能135cは、松プランについて、「一部のがんには粒子線治療が有効とされています。治療費は保険適用外(自己負担)でxx円です。残念ながら、適応が困難な症例です。」との情報を表示させる。また、例えば、提示機能135cは、梅プランについて、「放射線治療という選択肢もありますが、5年生存率はxx%と低めです。保険適用で、治療費はxx円程度ですが、あまりお勧めできません。」との情報を表示させる。また、例えば、提示機能135cは、竹プランについて、「xxがんの患者さんのxx%はこの外科手術/化学療法/放射線療法を組み合わせた標準治療法を選択しています。5年生存率はxx%。保険適用で治療費はxx円程度。」との情報を表示させる。
【0115】
これらの情報を参照して、説明者(医者)が決定者(患者、家族)に説明を行うことによって、外科手術をしたくない患者に対して、標準治療(竹プラン)を選択するように促すことができる。この結果、決定者(患者、家族)及び説明者(医者)の双方が納得するような結果が得られるようになる。
【0116】
また、例えば、
図11に示すように、提示機能135cは、民間療法に固執する患者に標準治療を推奨する場合に、決定者が選択するのが望ましい「竹プラン」として、標準治療を表示させ、それと対比するための「梅プラン」として、民間きのこ療法を表示させ、「松プラン」として、免疫療法を表示させる。
【0117】
そして、この場合には、例えば、提示機能135cは、民間療法に固執する患者に標準治療を推奨するための説明方法として、3つのプランの中から竹プランを選択するように決定者を促すための情報を説明者端末装置110のシナリオボードウィンドウに表示させる。例えば、提示機能135cは、梅プランについて、「『民間きのこ』療法には医学的根拠がありません。選択された患者さんの多くは効果が得られず、結局、標準治療を選択されています。」との情報を表示させる。また、例えば、提示機能135cは、竹プランについて、「xxがんの患者さんには外科手術/化学療法/放射線療法を組み合わせた標準治療法をお勧めしています。5年生存率はxx%。保険適用で治療費はxx円程度。」との情報を表示させる。また、例えば、提示機能135cは、松プランについて、「免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫治療の適用対象ですが、治療費が保険適用外(自己負担)のため、xx円と高額です。」との情報を表示させる。
【0118】
これらの情報を参照して、説明者(医者)が決定者(患者、家族)に説明を行うことによって、民間療法に固執する患者に対して、標準治療(竹プラン)を選択するように促すことができる。この結果、決定者(患者、家族)及び説明者(医者)の双方が納得するような結果が得られるようになる。
【0119】
以上、処理回路135が有する各処理機能について説明した。ここで、処理回路135は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、処理回路が有する各処理機能は、それぞれ、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路132に記憶される。そして、処理回路135は、記憶回路132から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路135は、
図4に示す各処理機能を有することとなる。
【0120】
図12は、第1の実施形態に係る意思決定支援装置130の処理回路135によって実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0121】
例えば、
図12に示すように、本実施形態では、IC又はSDMが開始された際に(ステップS101,Yes)、取得機能135aが、記憶回路132を参照して、患者の治療方針に関する意思決定を行う決定者の個人情報及び周辺情報を取得する(ステップS102)。例えば、取得機能135aは、説明者端末装置110を介して、説明者から治療法説明の開始指示を受け付け、当該開始指示を受け付けた場合に、決定者の個人情報及び周辺情報を取得する。
【0122】
続いて、分析機能135bが、取得機能135aによって取得された決定者の個人情報及び周辺情報を用いて、決定者の特性を分析する(ステップS103)。
【0123】
続いて、提示機能135cが、分析機能135bによって得られた特性の分析結果に応じて、患者に適した治療法を提示する(ステップS104)。具体的には、提示機能135cは、決定者端末装置120に治療法を表示させるとともに、説明者端末装置110に治療法及び当該治療法に関する説明方法を表示させる。なお、このとき、例えば、提示機能135cは、まずは説明者端末装置110のみに治療法を表示させ、説明者端末装置110を介して説明者から治療法の提示指示を受け付けた場合に、決定者端末装置120に治療法を表示させるようにしてもよい。
【0124】
続いて、取得機能135aが、決定者端末装置120から送信された決定者の心理状態を示す状態情報を取得する(ステップS105)。
【0125】
続いて、分析機能135bが、取得機能135aによって取得された決定者の心理状態を示す状態情報をさらに用いて、決定者の特性を動的に分析する(ステップS106)。
【0126】
続いて、提示機能135cが、分析機能135bによって得られた特性の分析結果に応じて、治療法を動的に変更して提示する(ステップS107)。具体的には、提示機能135cは、決定者端末装置120に表示されている治療法、並びに、説明者端末装置110に表示されている治療法及び説明方法を動的に変更する。
【0127】
そして、本実施形態では、IC又はSDMが終了するまで、上述したステップS105~S107の処理が所定の時間間隔で繰り返し実行され、IC又はSDMが終了した場合に(ステップS108,Yes)、処理が終了する。例えば、提示機能135cが、説明者端末装置110を介して、説明者から治療法説明の終了指示を受け付け、当該終了指示を受け付けた場合に、処理を終了させる。
【0128】
ここで、上述したステップS101、S102及びS105の処理は、例えば、処理回路135が、取得機能135aに対応する所定のプログラムを記憶回路132から読み出して実行することにより実現される。また、上述したステップS103及びS106の処理は、例えば、処理回路135が、分析機能135bに対応する所定のプログラムを記憶回路132から読み出して実行することにより実現される。また、上述したステップS104、S107及びS108の処理は、例えば、処理回路135が、提示機能135cに対応する所定のプログラムを記憶回路132から読み出して実行することにより実現される。
【0129】
なお、ここでは、単一のプロセッサによって各処理機能が実現されるものとして説明したが、実施形態はこれに限られず、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することによって、各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路135が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、ここでは、単一の記憶回路132が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、実施形態はこれに限られず、複数の記憶回路を分散して配置し、処理回路135が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0130】
上述したように、第1の実施形態では、意思決定支援装置130が、患者の治療方針に関する意思決定を行う決定者の個人情報及び周辺情報を取得し、取得した個人情報及び周辺情報を用いて、決定者の特性を分析し、当該特性の分析結果に応じて、患者に適した治療法を提示する。このような構成によれば、患者の治療方針に関する意思決定が行われる際に、合理的な意思決定が行われるように支援することができる。
【0131】
例えば、年齢、性別、家族構成等の個人特性情報を患者の日常生活のモニタリングデータ等からパーソナリティや行動パターン特性を静的な認知・行動バイアス情報に基づいて、患者にとって最も合理的な意思決定を支援することができる。また、決定者が、意思決定が非常に困難な状況にあっても、非合理的な意思決定をしたことにより後悔しないように非合理的な選択を避けられるように支援することができる。また、押し付けでなく、かつ、選択の自由が確保された意思決定が行われるように支援することができる。
【0132】
また、例えば、ICやSDM等の重要な意思決定において、患者及びその家族のバイアスの分析結果を基に治療法に関する選択肢を構成し、提示順序等を含む提示方法を支援することによって、患者及びその家族が強いストレス下にあっても合理的かつ理性的な意思決定ができるように支援することができる。例えば、終末期医療や治療法が見つからないような厳しい状況においても、非合理的な意思決定をしたことにより決定者が後悔することのないように支援することができる。このような、患者の余命や人生の質(Quality Of Life:QOL)を考慮した意思決定は、結果的に医療のコストを適正化し、効率化に寄与し得る。また、このような意思決定をすることにより、決定者が、あの時の選択は間違っていなかったと納得することができる。
【0133】
なお、上述した第1の実施形態では、決定者端末装置120が有するセンサー125によって検出された決定者の心理状態を示す状態情報を用いて、治療法を動的に変更して提示する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、決定者の家族構成や生活環境が変化した場合には(結婚や出産、収入の増減、転居等)、それに応じて、決定者のバイアスの特性も変化すると考えられる。そこで、例えば、意思決定支援装置130の提示機能135cが、さらに、このようなバイアスの特性に影響を与える情報を用いて、治療法を動的に変更して提示するようにしてもよい。このような情報は、例えば、定期的なアンケート等によって収集されて、記憶回路132に保存される。
【0134】
また、上述した第1の実施形態では、IC又はSDMが行われている間に、決定者及び説明者に治療法を提示する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0135】
(第2の実施形態)
例えば、IC又はSDMが終わった後で、IC又はSDMにおいて決定者に提示された治療法を再確認できるようにしてもよい。以下では、このような場合の例を第2の実施形態として説明する。なお、以下では、第2の実施形態について、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、第1の実施形態と共通する内容については詳細な説明を省略する。
【0136】
本実施形態では、意思決定支援装置130の処理回路135が有する提示機能135cが、さらに、提示した治療法を記憶回路132に記録し、要求に応じて、記憶回路132から当該治療法を読み出して再提示する。
【0137】
具体的には、提示機能135cは、第1の実施形態で説明したように決定者端末装置120に治療法を提示しながら、提示した全ての治療法を記憶回路132に記録する。
【0138】
そして、提示機能135cは、決定者端末装置120を介して、決定者又は他の操作者から治療法の再提示要求を受け付けた場合に、要求された治療法を記憶回路132から読み出して、決定者端末装置120のディスプレイ124に表示させる。
【0139】
図13は、第2の実施形態に係る提示機能135cによって再提示される治療法の表示例を示す図である。
【0140】
例えば、
図13に示すように、提示機能135cは、IC又はSDMが行われている間と同様に、決定者端末装置120のディスプレイ124に複数の治療法を比較可能に表示させる。そして、例えば、提示機能135cは、決定者端末装置120を介して、決定者又は他の操作者から各治療法の表示位置を変更する指示や各治療法の表示/非表示を切り替える指示を受け付け、受け付けた指示に応じて、決定者端末装置120のディスプレイ124における治療法の表示を変更する。
【0141】
上述した第2の実施形態によれば、例えば、ICやSDMが行われた後で、IC又はSDMに参加した患者や家族が、冷静になった状態で、提示された治療法を再検討することができる。また、例えば、IC又はSDMに参加しなかった家族等が、ICやSDMで提示された治療法を確認することができる。これにより、患者の治療方針について、より合理的な意思決定を行えるようになる。
【0142】
(第3の実施形態)
また、例えば、IC又はSDMが終わった後で、IC又はSDMにおいて説明者に提示された治療法及び説明方法を再確認できるようにしてもよい。以下では、このような場合の例を第3の実施形態として説明する。なお、以下では、第3の実施形態について、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、第1の実施形態と共通する内容については詳細な説明を省略する。
【0143】
本実施形態では、意思決定支援装置130の処理回路135が有する提示機能135cが、さらに、提示した治療法及び説明方法を記憶回路132に記録し、要求に応じて、記憶回路132から当該治療法及び当該説明方法を読み出して再提示する。
【0144】
具体的には、提示機能135cは、第1の実施形態で説明したように説明者端末装置110に治療法及び説明方法を提示しながら、提示した全ての治療法及び説明方法を記憶回路132に記録する。このとき、例えば、提示機能135cは、説明者が実際に行った説明の内容や、決定者が行った意思決定の内容をさらに記録してもよい。
【0145】
また、提示機能135cは、説明者端末装置110を介して、説明者又は他の操作者から治療法及び説明方法の再提示要求を受け付けた場合に、要求された治療法及び説明方法を記憶回路132から読み出して、説明者端末装置110のディスプレイ114に表示させる。
【0146】
図14は、第3の実施形態に係る提示機能135cによって再提示される治療法及び説明方法の表示例を示す図である。
【0147】
例えば、
図14に示すように、提示機能135cは、IC又はSDMが行われている間と同様に、説明者端末装置110のディスプレイ114にシナリオボードウィンドウ、患者説明ウィンドウ、患者医療情報ウィンドウ及び描画ウィンドウを表示させる。ここで、提示機能135cは、IC又はSDMが行われている間と同様に、決定者端末装置120のディスプレイ124に表示された内容を患者説明ウィンドウに表示させ、患者の医療情報を患者医療情報ウィンドウに表示させ、図や文字を描画ウィンドウに表示させ、治療法に関する説明方法をシナリオボードウィンドウに表示させる。
【0148】
そして、例えば、提示機能135cは、説明者端末装置110を介して、説明者又は他の操作者から治療法や説明方法の表示を変更する指示を受け付け、受け付けた指示に応じて、説明者端末装置110のディスプレイ114における治療法及び説明方法の表示を変更する。このとき、例えば、提示機能135cは、IC又はSDMが行われている間に、決定者が実際に行った説明の内容や、決定者が行った意思決定の内容をさらに表示させてもよい。
【0149】
上述した第3の実施形態によれば、例えば、ICやSDMが行われた後で、医師等が、ICやSDMで説明した治療法や説明内容を見直したり、意思決定に至る経緯を確認したりすることができる。また、例えば、患者の診療を担当する医師が交代した場合に、新しく担当することになった医師が、以前に担当していた医師がICやSDMで説明した治療法や説明内容を確認したり、以前に行われた意思決定の経緯を確認したりすることができる。これにより、患者の治療方針について、より合理的な意思決定を行えるようになる。
【0150】
なお、上述した各実施形態では、第2の実施形態と第3の実施形態とを別々に説明したが、意思決定支援装置130の処理回路135が有する提示機能135cは、第2及び第3の実施形態それぞれで説明した処理機能の両方を有するように構成されてもよい。
【0151】
また、上述した各実施形態では、本明細書における取得部、分析部及び提示部を、それぞれ、処理回路135の取得機能135a、分析機能135b及び提示機能135cによって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における取得部、分析部及び提示部は、実施形態で述べた取得機能135a、分析機能135b及び提示機能135cによって実現する他にも、ハードウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0152】
また、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで、機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合は、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態のプロセッサは、単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0153】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0154】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、患者の治療方針に関する意思決定が行われる際に、合理的な意思決定が行われるように支援することができる。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、各種の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0156】
100 意思決定支援システム
110 説明者端末装置
120 決定者端末装置
130 意思決定支援装置
135 処理回路
135a 取得機能
135b 分析機能
135c 提示機能