(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】固形漂白剤含有物及び洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/54 20060101AFI20241022BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20241022BHJP
C11D 3/33 20060101ALI20241022BHJP
C11D 3/36 20060101ALI20241022BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20241022BHJP
C11D 3/395 20060101ALI20241022BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20241022BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20241022BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20241022BHJP
C11D 7/36 20060101ALI20241022BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C11D7/54
C11D3/20
C11D3/33
C11D3/36
C11D3/37
C11D3/395
C11D7/22
C11D7/26
C11D7/32
C11D7/36
C11D17/06
(21)【出願番号】P 2020025127
(22)【出願日】2020-02-18
(62)【分割の表示】P 2018513235の分割
【原出願日】2017-04-21
【審査請求日】2020-02-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2016086619
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722013405
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】野利本 章宏
(72)【発明者】
【氏名】佐廣 浩一
(72)【発明者】
【氏名】豊田 剛司
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 好也
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】弘實 由美子
【審判官】関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-40909(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012235(WO,A1)
【文献】特開2014-193964(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047103(WO,A1)
【文献】特表平10-508629(JP,A)
【文献】特表平10-508329(JP,A)
【文献】特表平9-227108(JP,A)
【文献】特表平9-86908(JP,A)
【文献】特表2009-507122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形漂白剤として酸素系漂白剤を含有する第1の層と、コーティング層からなる第2の層を有する固形漂白剤含有物であって、前記コーティング層は前記固形漂白剤を覆うように形成されており、
前記酸素系漂白剤は、ペルオキシ硫酸・硫酸・五カリウム塩及び過炭酸ナトリウムの少なくとも一方であり、
前記コーティング層が、芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩を含有し、
前記芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩は、安息香酸、オルト-フタル酸、メタ-フタル酸、パラ-フタル酸、トリメリット酸、パラ-t-ブチル安息香酸及び1-ナフトエ酸からなる群から選ばれる少なくとも1つのナトリウム塩またはカリウム塩であり、
前記固形漂白剤含有物中の
前記コーティング層の割合が
20質量%以上50質量%以下である固形漂白剤含有物(ただし、前記コーティング層が、分子中にアミノ基又はイミノ基又はニトリロ基のうち少なくとも1種類以上の基を1~4個有し、かつカルボキシル基又はカルボキシル基の水素がアルカリ金属に置換された基を1~6個有する炭素数2~20の化合物を含有する場合を除く。)。
【請求項2】
前記固形漂白剤含有物の水分含有量が30質量%以下である請求項1記載の固形漂白剤含有物。
【請求項3】
請求項1記載の固形漂白剤含有物と、アミノカルボン酸塩、アミノカルボン酸塩の水和物、ヒドロキシアミノカルボン酸塩、ヒドロキシアミノカルボン酸塩の水和物、トリポリリン酸塩、ホスホノカルボン酸、ホスホノカルボン酸のアルカリ金属塩、ホスホノカルボン酸の水和物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸塩、グルタミン酸二酢酸塩の水和物、及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上の金属イオン捕集剤とを含有する洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1記載の固形漂白剤含有物と、1以上の非イオン性界面活性剤とを含有する洗浄剤組成物。
【請求項5】
請求項1記載の固形漂白剤含有物と、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上のアルカリ金属塩を含有する洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形漂白剤含有物及び洗浄剤組成物に関し、さらに詳しくは、コーティング層を有する固形漂白剤含有物及び洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
台所、浴室、洗面所、トイレ等の排水管や貯水部の洗浄、衣類等の洗濯、食器や調理器具の洗浄、浴用水やプール水などを清潔に維持するために、洗浄、殺菌、漂白などの目的で固形の漂白剤が広く使用されている。このような固形漂白剤は用途に応じて粉末、顆粒、錠剤など様々な形状で使用され、洗浄に寄与する種々の界面活性剤、アルカリ剤、金属イオン捕集剤などの他の成分と混合して用いられる場合がある。
【0003】
このように固形漂白剤を、その他の成分と混合して用いる場合には、固形漂白剤の高い反応性に起因して、固形漂白剤がその他の成分と反応する。その結果として、固形漂白剤の劣化、失活、分解のみならず、その他の成分の分解や劣化をも同時に引き起こし、洗浄、殺菌、漂白などの効果が著しく低下する。そのため、このような固形漂白剤とその他の成分との反応を防止するために、固形漂白剤をコーティングしたり、カプセル化したりする方法が提案されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、活性ハロゲン漂白剤のコア成分である塩素化イソシアヌル酸化合物の表面に無機塩からなる第1の層とn-アルキルスルホネート等の合成界面活性剤からなる第2の層を形成することにより塩素化イソシアヌル酸化合物の安定性が改善される旨が開示されている。また、特許文献3には、炭素数が16~18の脂肪酸石ケン及び炭素数が12~14のアルカリ金属脂肪酸石ケンでカプセル化した漂白剤粒子が開示されている。しかし、これらの合成界面活性剤や脂肪酸石ケンは高い起泡性を有する界面活性剤であり、このような界面活性剤を含有する漂白剤粒子を使用すると、泡を洗い流すために使用後に過剰なすすぎ作業が必要になるだけでなく、例えば、業務用の食器洗浄機やチラー設備などの水を循環して用いる場合に泡がポンプ内部に取り込まれることによる流速の低下などを引き起こすなどの問題を生じる。また、食器洗浄機においては洗浄液を高圧で噴射するために、無起泡性であることが求められる。そのため、このような界面活性剤を含有する漂白剤粒子は起泡性が必要とされない場合や起泡性が使用の妨げとなる場合には用いることができず、用途が限定されるという課題を残していた。
【0005】
特許文献4には、融点が40℃~50℃であり、且つ固体含量が40℃で35~100%、50℃で0~15%である1種類以上のパラフィンワックスで漂白剤を封入した粒子が開示されている。しかし、このようなパラフィンワックスは水に不溶であるために温度が融点に満たない条件で使用する場合には実質的に漂白剤を洗浄水中に放出することができないばかりか、粒子そのものが残渣となり残留するという問題があった。また、温度が40℃を超える条件で使用する場合であっても、溶融したパラフィンワックスが水に不溶であるために、パラフィンワックスの残留を防止するために乳化剤等を別途配合する必要があった。さらに、使用後に温度が低下すると再度残渣となるなどの問題が依然として存在していた。
【0006】
特許文献5には、飽和脂肪酸、微結晶ロウ及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体を含む多層被覆した漂白剤が開示されている。また、特許文献6にはパラフィンワックスなどからなる第1コート剤と、A型ゼオライト及びステアリン酸カルシウムの粉体からなる第2コート剤とからなる漂白剤カプセル化粒子が記載されている。しかし、このような被覆は飽和脂肪酸、微結晶ロウ、パラフィンワックス、A型ゼオライト、ステアリン酸カルシウムが水に不溶であるために、特許文献4に記載された発明の場合と同様の残渣が残留する問題があった。さらに、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンなどの有機高分子が固形漂白剤との反応性を有するため、固形漂白剤とポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンが直接接触しないように、脂肪酸などの層を設けて隔離する必要があり、加工が煩雑になるという問題があった。そして、これらの有機高分子等をコーティングに用いた場合には、製造開始時から使用終了時までを通じて前記の有機高分子と固形漂白剤の接触を完全に阻止しながら加工することが極めて困難であり、加工の際に漂白剤の劣化、失活、分解やその他の材料の分解が起こる可能性が高いという問題が存在していた。
【0007】
特許文献7にはポリ(メタクリル酸)などのポリカルボキシレート被覆を有する粒状の酸化成分を含む自動食器洗い機用粉末洗剤が記載されている。しかし、このようなポリカルボキシレートは通常の中性のpHでは水に不溶であり、アルカリ性のpHでは水への溶解性がやや改善されるものの、残渣が生じるという問題は依然として解決されていなかった。また、ポリカルボキシレートは、分子内のエステル基などの官能基に起因して、酸化性のハロンゲン漂白剤と反応性を有するので、このような官能基を含むポリマーで漂白剤を被覆した場合には、ポリカルボキシレートと漂白剤の間で徐々に分解反応が進み、被覆が劣化するために貯蔵安定性に悪影響をもたらすとともに、漂白剤が被覆剤との反応により劣化、失活、分解してしまうという問題があった。
【0008】
特許文献8には固体状塩素系漂白剤と安息香酸ナトリウムを含有し、錠剤形態である塩素系漂白剤組成物が開示されている。しかし、安息香酸ナトリウムを配合することにより、錠剤の吸湿が軽減される効果と滑沢効果により打錠性が改善されることが示唆されているのみで、洗浄に寄与する種々の界面活性剤、アルカリ剤、金属イオン捕集剤などの他の成分と固体状塩素系漂白剤の混合を可能にすることはできず、安息香酸ナトリウムをコーティング層に用いることができることは何らの示唆もされていない。
【0009】
これらの先行技術文献からも判る通り、固形漂白剤の安定化のために用いるコーティング材料としては比較的分子量の大きい界面活性剤、多糖類、ワックスなどの炭化水素、高分子ポリマーなどが適すると考えられてきた。しかし、これらの化合物をコーティング層に用いた場合には固形漂白剤を保護する効果が不十分であったことに加えて、これらの化合物自体が固形漂白剤と反応してしまう場合もあった。さらに、固形漂白剤が多くの有機物と反応性を有するために、限られた範囲の化合物から選択せざるを得ず、起泡や残渣が発生するという問題は依然として解決されていなかった。
【0010】
一方で、水溶性の無機塩などの化合物をコーティング材料に用いた場合には、不必要な起泡や残渣の発生を回避できるものの、水溶性の無機塩そのものがコーティング層を形成しないためにコーティング材料として適さないか、コーティング層を形成するとしても固形漂白剤を劣化、失活、分解などの要因から保護するという安定化効果が低いという欠点を有していた。これらの欠点を補うために、水溶性の無機塩は前記の比較的分子量の大きい界面活性剤、多糖類、ワックスなどの炭化水素、高分子ポリマーなどと組合せて、多層皮膜を形成するなどして用いる必要があった。
【0011】
以上のように、起泡することなく水への溶解性が良好で残渣を生ずることのないコーティング層を有する固形漂白剤含有物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】日本国特開平5-9500号公報
【文献】日本国特表平8-507095号公報
【文献】日本国特開昭62-177100号公報
【文献】日本国特開平6-313200号公報
【文献】日本国特開昭53-26782号公報
【文献】日本国特開2009-7566号公報
【文献】日本国特開昭63-154798号公報
【文献】日本国特開昭60-188498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
コーティング層を有する固形漂白剤含有物及びこれを配合した洗浄剤組成物を提供する。コーティング層を有する固形漂白剤含有物及びこれを配合した洗浄剤組成物は、固形漂白剤を劣化、失活、分解から保護することにより安定化されうる。さらに、少ない起泡のみを生じるか起泡しないという効果を奏しうる。また、水への溶解性が良好で、少ない残渣のみを生じるか残渣を生じないという効果を奏しうる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討をした結果、コーティング層に用いる材料として、芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩、非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩、炭素数が1乃至7の非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩及びこれらの混合物(以下、単にカルボン酸のアルカリ金属塩ということがある。)からなる群より選択される1以上から選択することにより、コーティング層を有する固形漂白剤含有物及びこれを配合した洗浄剤組成物は、固形漂白剤を劣化、失活、分解から保護することにより安定化されうることを見出した。さらに、本発明者らは、前記固形漂白剤含有物が少ない起泡のみを生じるか起泡しないという効果を奏しうることを見出した。また、本発明者らは、前記固形漂白剤含有物が水への溶解性が良好で、少ない残渣のみを生じるか残渣を生じないという効果を奏しうることを見出した。
【0015】
さらに、本発明者らは、コーティング層として用いる芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩、非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩、炭素数が1乃至7の非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩及びこれらの混合物は漂白剤粒子に対して安定であり、固形漂白剤とコーティング層の間で不都合な副反応が生じないため、固形漂白剤とコーティング層とを隔絶する別途の層を設ける必要が無く、固形漂白剤の表面に直接コーティング層を設けることができることを見出した。
【0016】
本発明において「起泡することが無い」とは、一定濃度に調節したコーティング層を有する固形漂白剤含有物の水溶液を混合または攪拌した際に泡の発生量が無いこと又は極めて少ないことを意味し、「水への溶解性が良好で残渣を生じない」とは一定濃度に調節したコーティング層を有する固形漂白剤含有物の水溶液が懸濁することなく清澄で不溶解物(沈殿物や浮遊物)を生じないこと又は極めて少ないことを意味する。また、「安定化されている」とは、コーティング層を有さない固形漂白剤と比べて、コーティング層を有する固形漂白剤含有物を一定期間保管した場合の、固形漂白剤の劣化、失活、分解の抑制(低減化)を意味する。
【0017】
本発明における「カルボン酸のアルカリ金属塩」とは分子中のカルボキシル基をアルカリ金属で中和した塩を意味する。分子中の全てのカルボキシル基が中和されていることを要せず、部分的に中和した塩でもよい。
【0018】
本発明における「固形」とは、固形漂白剤の使用温度の範囲内で固形であればよく、融点を有する化合物を含んでもよい。また、液体を公知の吸着剤等に吸着して粉末状にしたものや、オイルやゲルをカプセル状にしたものを含んでもよい。
【0019】
本発明におけるコーティング層を有する固形漂白剤含有物は、洗浄、殺菌、漂白などの効果をさらに高めるために、洗浄剤組成物と配合して使用することができる。このような洗浄剤組成物には固形漂白剤以外の成分として、アルカリ剤、キレート剤、界面活性剤などの種々の成分を配合しうる。
【0020】
即ち、本発明は、コーティング層を有する固形漂白剤含有物及びこれを配合した洗浄剤組成物に関する。
項1 固形漂白剤を含有する第1の層と、コーティング層からなる第2の層を有する固形漂白剤含有物であって、前記コーティング層が、芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩、非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩、炭素数が1乃至7の非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上を含有する固形漂白剤含有物。
項2 前記芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩が、安息香酸、オルト-フタル酸、メタ-フタル酸、パラ-フタル酸、トリメリット酸及びパラ-t-ブチル安息香酸のアルカリ金属塩並びにこれらの混合物からなる群より選択される1以上である項1記載の固形漂白剤含有物。
項3 前記非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びテトラデカン二酸のアルカリ金属塩並びにこれらの混合物からなる群より選択される1以上である項1記載の固形漂白剤含有物。
項4 前記炭素数が1乃至7の非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸及びヘプタン酸のアルカリ金属塩並びにこれらの混合物からなる群より選択される1以上である項1記載の固形漂白剤含有物。
項5 前記固形漂白剤が、ハロゲン系漂白剤、酸素系漂白剤及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上である項1記載の固形漂白剤含有物。
項6 前記ハロゲン系漂白剤が、ハロゲン化イソシアヌル酸、ハロゲン化イソシアヌル酸のアルカリ金属塩、ハロゲン化イソシアヌル酸のアルカリ金属塩の水和物、ハロゲン化ヒダントイン、次亜塩素酸金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上である項5記載の固形漂白剤含有物。
項7 前記酸素系漂白剤が、過炭酸塩、過ホウ酸塩、ペルオキシ硫酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上である項5記載の固形漂白剤含有物。
項8 項1記載の固形漂白剤含有物と、アミノカルボン酸塩、アミノカルボン酸塩の水和物、ヒドロキシアミノカルボン酸塩、ヒドロキシアミノカルボン酸塩の水和物及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上の金属イオン捕集剤とを配合してなる洗浄剤組成物。
項9 項1記載の固形漂白剤含有物と、1以上の非イオン性界面活性剤とを配合してなる洗浄剤組成物。
項10 項1記載の固形漂白剤含有物と、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上のアルカリ金属塩を配合してなる洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明のコーティング層を有する固形漂白剤含有物によれば、台所、浴室、洗面所、トイレ等の排水管や貯水部の洗浄、衣類等の洗濯、食器や調理器具の洗浄、浴用水やプール水などを清潔に維持するために、洗浄、殺菌、漂白などの目的で固形の漂白剤を使用する際に、洗浄、殺菌、漂白などの効果を高める成分として種々の界面活性剤、アルカリ剤、金属イオン捕集剤などの化合物と混合した場合に生じる漂白剤の劣化、失活、分解を改善するだけでなく、漂白剤と混合する種々の化合物の劣化や分解も同時に改善する。また、前記固形漂白剤含有物は少ない起泡のみを生じるか起泡しないという効果を奏しうることに加えて、水への溶解性が良好で少ない残渣のみを生じるか残渣を生じないという効果を奏しうるために幅広い用途に使用することができる。さらに漂白剤粒子がコーティング層により保護されるために、固形漂白剤とその他の化合物が接触することを防止し、固形漂白剤及びその他の化合物との間で生じる劣化、失活、分解などの不都合な副反応が生じないという特徴を有している。
【0022】
コーティング層に、芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩、非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩、炭素数が1乃至7の非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上を用いることにより、コーティング層を有する固形漂白剤含有物及びこれを配合した洗浄剤組成物は、固形漂白剤を劣化、失活、分解から保護することにより安定化されうる。さらに、前記の芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩、非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩、炭素数が1乃至7の非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上のいずれかを含んで形成されたコーティング層は固形漂白剤と接触しても極めて安定であり、固形漂白剤とコーティング層の間で不都合な副反応が生じないため、固形漂白剤とコーティング層とを隔絶する別途の層を設ける必要が無く、固形漂白剤の表面に直接コーティング層を設けることができるという特徴を有している。加えて、前記の芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩、非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩、炭素数が1乃至7の非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上のいずれかにより固形漂白剤にコーティング層を形成する際には、コーティング層が凝集し難く、加工性に優れるという特徴を有している。
【0023】
固形漂白剤がハロゲン系漂白剤、酸素系漂白剤及びこれらの混合物のいずれかであることにより、洗浄、殺菌、漂白などの効果に優れる。
【0024】
また、ハロゲン系漂白剤がハロゲン化イソシアヌル酸、ハロゲン化イソシアヌル酸のアルカリ金属塩、ハロゲン化イソシアヌル酸のアルカリ金属塩の水和物、ハロゲン化ヒダントイン、次亜塩素酸金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上であること、酸素系漂白剤が、過炭酸塩、過ホウ酸塩、ペルオキシ硫酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上であることにより、洗浄、殺菌、漂白などの効果に優れることに加えて、入手が容易で取り扱い性に優れ経済的に許容することができる範囲で実施することができる。
【0025】
本発明のコーティング層を有する固形漂白剤含有物を配合した洗浄剤組成物は、洗浄、殺菌、漂白などの目的で固形の漂白剤を使用する際に、洗浄剤組成物の効果を高めるために、アミノカルボン酸塩及びその水和物並びにヒドロキシアミノカルボン酸塩及びその水和物を含む種々の金属イオン捕集剤、非イオン性界面活性剤を含む種々の界面活性剤、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属ケイ酸塩及びアルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属リン酸塩を含む種々のアルカリ剤、などの洗浄剤成分と混合した場合であっても、固形漂白剤の劣化、失活、分解という問題が改善されるだけでなく、洗浄剤成分である金属イオン捕集剤、界面活性剤、アルカリ剤などの劣化や分解が生じるという問題も改善される。したがって、洗浄剤組成物が加温や加湿などの過酷な条件下で一定期間の貯蔵や保管を経ても、洗浄剤組成物の洗浄、殺菌、漂白などの効果がより高く維持されるという特徴を有している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「質量」は「重量」と同義である。
【0027】
本発明の固形漂白剤含有物は、固形漂白剤を含有する第1の層と、コーティング層からなる第2の層を有し、前記コーティング層が、芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩、非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩、炭素数が1乃至7の非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上を含有することを特徴とする。
【0028】
本発明における芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩は、分子内に1以上の芳香族環と1以上のカルボキシル基を有していればよく、下記の化学式(I-1)、(I-2)、(I-3)又は(I-4)で示されるカルボン酸のアルカリ金属塩である。なお、本明細書において、「置換基を有していてもよい」という場合には、例えば「置換基を有さず炭素鎖が直鎖である場合」や「炭素鎖が分岐している場合」をも含める意味である。
【0029】
【0030】
(式(I-1)中、R1、R2、R3、R4、R5はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1乃至6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6乃至14のアリール基、炭素数1乃至17の不飽和炭化水素、炭素数1乃至17のアシル基、炭素数1乃至6のアルコキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、メルカプト基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子を表す。)
【0031】
【0032】
(式(I-2)中、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1乃至6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6乃至14のアリール基、炭素数1乃至17の不飽和炭化水素、炭素数1乃至17のアシル基、炭素数1乃至6のアルコキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、メルカプト基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子を表す。R11はメチレン基、置換基を有していてもよい炭素数1乃至6のアルキレン基又は置換基を有していてもよい炭素数2乃至6の不飽和炭化水素を表す。)
【0033】
【0034】
(式(I-3)中、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1乃至6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6乃至14のアリール基、炭素数1乃至17の不飽和炭化水素、炭素数1乃至17のアシル基、炭素数1乃至6のアルコキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、メルカプト基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子を表す。)
【0035】
【0036】
(式(I-4)中、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1乃至6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6乃至14のアリール基、炭素数1乃至17の不飽和炭化水素、炭素数1乃至17のアシル基、炭素数1乃至6のアルコキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、メルカプト基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子を表す。)
【0037】
本発明に用いられる芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩としては、安息香酸、サリチル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ケイ皮酸、オルト-トルイル酸、メタ-トルイル酸、パラ-トルイル酸、オルト-フタル酸、メタ-フタル酸、パラ-フタル酸、フェニル酢酸、2-フェニルプロピオン酸、フェノキシ酢酸、フェニルピルビン酸、オルト-t-ブチル安息香酸、メタ-t-ブチル安息香酸、パラ-t-ブチル安息香酸、3,5-ジ-t-ブチル安息香酸、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸、オルト-ベンゾイル安息香酸、メタ-ベンゾイル安息香酸、パラ-ベンゾイル安息香酸、アントラニル酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシフェニル酢酸、3-ヒドロキシフェニル酢酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸、D-マンデル酸、L-マンデル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2-メトキシフェニル酢酸、3-メトキシフェニル酢酸及び4-メトキシフェニル酢酸のアルカリ金属塩、並びにこれらの混合物からなる群より選択される1以上が好ましい。
【0038】
入手容易性、安全性、固形漂白剤との非反応性及びコーティング層の形成のし易さ、洗浄剤組成物と配合した場合の固形漂白剤含有物の安定性が高いという観点から、芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩は、安息香酸、オルト-フタル酸、メタ-フタル酸、パラ-フタル酸、トリメリット酸及びパラ-t-ブチル安息香酸のアルカリ金属塩、並びにこれらの混合物からなる群より選択される1以上がより好ましい。
【0039】
金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩やカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩を用いることが出来る。入手の容易性の観点からアルカリ金属塩が好ましく、水への溶解性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩がさらに好ましい。
【0040】
本発明における非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩は、置換基を有していてもよい非環状の炭化水素鎖と少なくとも2のカルボキシル基を有していればよく、下記の化学式(II-1)または化学式(II-2)で示されるジカルボン酸のアルカリ金属塩である。
【0041】
【0042】
(式(II-1)中、R26は置換基を有していてもよい炭素数1乃至34のアルキレン基又は置換基を有していてもよい炭素数1乃至34の非環状の不飽和炭化水素を表す。)
【0043】
【0044】
本発明に用いられる非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、D-酒石酸、L-酒石酸、D-リンゴ酸、L-リンゴ酸、D-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸、グルタル酸、D-グルタミン酸、L-グルタミン酸、イタコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びテトラデカン二酸のアルカリ金属塩、並びにこれらの混合物からなる群より選択される1以上が好ましい。
【0045】
入手容易性及び安全性の観点から、非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びテトラデカン二酸のアルカリ金属塩、並びにこれらの混合物からなる群より選択される1以上がより好ましい。
【0046】
金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩やカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩を用いることが出来る。入手の容易性の観点からアルカリ金属塩が好ましく、水への溶解性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩がさらに好ましい。
【0047】
本発明における炭素数が1乃至7である非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩は、置換基を有していてもよい非環状の炭化水素鎖と1のカルボキシル基を有しかつ分子内の炭素数の合計が1乃至7であればよく、下記の化学式(III)で示されるカルボン酸のアルカリ金属塩である。
【0048】
【0049】
(式(III)中、R27は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1乃至6の非環状のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数1乃至6の非環状の不飽和炭化水素を表す。)
【0050】
本発明に用いられる炭素数が1乃至7の非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、アクリル酸、メタクリル酸、イソ酪酸及びイソ吉草酸のアルカリ金属塩、並びにこれらの混合物からなる群より選択される1以上が好ましい。
【0051】
入手容易性の観点から、炭素数が1乃至7の非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸及びヘプタン酸のアルカリ金属塩、並びにこれらの混合物からなる群より選択される1以上がより好ましい。さらに、固形漂白剤に対する非反応性と加工時の非凝集性の観点から、炭素数が3乃至5のプロピオン酸、酪酸及び吉草酸のアルカリ金属塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択される1以上がさらに好ましい。
【0052】
金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩やカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩を用いることが出来る。入手の容易性の観点からアルカリ金属塩が好ましく、水への溶解性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩がさらに好ましい。
【0053】
本発明に用いられるカルボン酸のアルカリ金属塩は、あらかじめ中和されたカルボン酸のアルカリ金属塩を用いてもよいし、カルボン酸をアルカリ金属で中和して作製してもよい。カルボン酸をアルカリ金属で中和する方法としては、アルカリ金属水酸化物などの水溶液にカルボン酸を溶解することで作製してもよい。
【0054】
例えば、分子内にカルボキシル基を2つ有するジカルボン酸のアルカリ金属塩を作製する場合には、ジカルボン酸のモル当量に相当する量の水酸化ナトリウムを予め溶解した水に、ジカルボン酸を溶解させることにより分子内の2つのカルボキシル基の内の1つがナトリウムで中和されたジカルボン酸のナトリウム塩を得ることができる。また、ジカルボン酸のモル当量の2倍に相当する量の水酸化ナトリウムを用いれば、分子内の2つのカルボキシル基がいずれもナトリウムで中和されたジカルボン酸のナトリウム塩を得ることができる。
【0055】
本発明に用いられる固形漂白剤は、ハロゲン系漂白剤、酸素系漂白剤及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0056】
ハロゲン系漂白剤としては、ハロゲン化イソシアヌル酸、ハロゲン化イソシアヌル酸のアルカリ金属塩、ハロゲン化イソシアヌル酸のアルカリ金属塩の水和物、ハロゲン化ヒダントイン、次亜塩素酸金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上が挙げられる。
【0057】
ハロゲン化イソシアヌル酸、ハロゲン化イソシアヌル酸のアルカリ金属塩、ハロゲン化イソシアヌル酸のアルカリ金属塩の水和物としては、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上が好ましく、入手容易性及び安全性の観点から、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの水和物及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上がより好ましい。
【0058】
ハロゲン化ヒダントインとしては、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1-クロロ-3-ブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジクロロ-5,5-エチルメチルヒダントイン及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上が好ましい。なお、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントインと1-クロロ-3-ブロモ-5,5-ジメチルヒダントインを合わせて単にブロモクロロ-5,5-ジメチルヒダントインという場合がある。
【0059】
次亜塩素酸金属塩としては、次亜塩素酸カルシウム(さらし粉)が好ましい。
【0060】
酸素系漂白剤としては、過炭酸塩、過ホウ酸塩、ペルオキシ硫酸塩、過安息香酸を含む有機過酸化物などが挙げられる。過炭酸塩としては、炭酸ナトリウムに過酸化水素を付加した炭酸ナトリウム過酸化水素付加物(単に過炭酸ナトリウムという場合がある。)が挙げられる。過ホウ酸塩としては、過ホウ酸ナトリウムが挙げられる。ペルオキシ硫酸塩としては、ペルオキシ硫酸・硫酸・五カリウム塩やペルオキソ二硫酸カリウム塩及びこれらの混合物が挙げられる。
入手容易性、取り扱いの容易性の観点から、酸素系漂白剤としては過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、ペルオキシ硫酸・硫酸・五カリウム塩及びその混合物からなる群より選択される1以上が好ましい。
【0061】
本発明におけるコーティング層を有する固形漂白剤含有物は、従来の固形漂白剤と比べて、コーティング層を有することにより安定化されているので、より広範な化合物群(洗浄剤成分)と配合して洗浄剤組成物とし、洗浄用、殺菌用、漂白用などの用途に使用することができる。これらの化合物群としては有機物、無機物及びこれらの混合物の群から選択される1以上を用いることができる。混合物として用いる場合には、混合後に成形工程を経てもよいし、そのまま用いてもよい。成形工程を経る場合には、粉末、顆粒、錠剤、押し出し成形物、注型固化物、スラリーなどいずれの大きさや剤形を採用することができる。
【0062】
また、本発明のコーティング層を有する固形漂白剤含有物には、発明の効果を損なわない範囲において、前記の有機物、無機物及びこれらの混合物の群から選択される1以上を添加剤としてコーティング層に含有してもよいし、固形漂白剤に含有してもよい。さらに、本発明のコーティング層とは別途の層として多層皮膜を形成させてもよい。
【0063】
前記の有機物としては、有機酸、有機高分子、界面活性剤、リンス剤、消泡剤、金属イオン捕集剤、色素、香料、酵素などが挙げられる。
【0064】
有機酸としては、芳香族カルボン酸、非環状カルボン酸を使用することができる。ただし、分子量が大きく水への溶解性が低い化合物を配合する場合は、水への溶解性が良好で少ない残渣のみを生じるか残渣を生じないという効果を奏しうるという本発明の効果を損なわない範囲の少量に留めることが好ましい。分子量が大きく水への溶解性が低い化合物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属塩と併用し、カルボン酸をアルカリ金属塩とすることにより水への溶解性を高めるなどの措置を講じることができる。
【0065】
このような有機酸としては、例えば、安息香酸、サリチル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ケイ皮酸、オルト-トルイル酸、メタ-トルイル酸、パラ-トルイル酸、オルト-フタル酸、メタ-フタル酸、パラ-フタル酸、フェニル酢酸、2-フェニルプロピオン酸、フェノキシ酢酸、フェニルピルビン酸、オルト-t-ブチル安息香酸、メタ-t-ブチル安息香酸、パラ-t-ブチル安息香酸、3,5-ジ-t-ブチル安息香酸、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸、オルト-ベンゾイル安息香酸、メタ-ベンゾイル安息香酸、パラ-ベンゾイル安息香酸、アントラニル酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシフェニル酢酸、3-ヒドロキシフェニル酢酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸、D-マンデル酸、L-マンデル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2-メトキシフェニル酢酸、3-メトキシフェニル酢酸、4-メトキシフェニル酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、D-酒石酸、L-酒石酸、D-リンゴ酸、L-リンゴ酸、D-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸、グルタル酸、D-グルタミン酸、L-グルタミン酸、イタコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などが挙げられる。
【0066】
有機高分子としては、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸のアルカリ金属塩、デキストリン、キサンタンガム、ペクチン、デンプンあるいはこれらの誘導体などの多糖類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、その他のセルロース誘導体などが挙げられる。または、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、オレフィン-無水マレイン酸ナトリウム塩共重合体、アクリル酸-マレイン酸ナトリウム塩共重合体、ジアリルジメチルアンモニウム-アクリル酸ナトリウム塩共重合体、ジアリルメチルアミンとマレイン酸ナトリウム塩共重合体などの合成高分子化合物などが挙げられる。
【0067】
界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びこれらの混合物が挙げられ、起泡性の少ない界面活性剤は好適に使用される。強い起泡性を有する界面活性剤を添加する場合には少ない起泡のみを生じるか起泡しないという効果を奏しうるという本発明の効果を損なわない範囲の少量の添加にとどめるか、または起泡を抑制する消泡剤をさらに添加するなどの措置をとることが好ましい。中でも、入手容易性、取り扱い容易性、低起泡性の観点から、1以上の非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0068】
陰イオン性界面活性剤としては、オレイン酸カリウム石ケン、ヒマシ油カリウム石ケン、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム石ケン、半硬化牛脂脂肪酸カリウム石ケンなどの脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウムなどのアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどのアルキルジアリルエーテルスルホン酸塩、アルキルリン酸カリウムなどのアルキルリン酸塩、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩などのナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩などの芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。
【0069】
陽イオン性界面活性剤としては、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジイソテトラデシルジメチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0070】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールラウレート、ポリエチレングリコールステアレート、ポリエチレングリコールオレエートなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、エチレンジアミン-ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのポリオキシエチレンアルキルアミン、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドなどのアルキルアルカノールアミド、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、パルミチン酸ジグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、オレイン酸ジグリセライドなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0071】
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのアルキルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどのアミンオキサイドなどが挙げられる。
【0072】
飲食店などの業務用の厨房で使用されている食器洗浄機には濯ぎ工程で食器の乾燥を速め、ウォータースポットとよばれる白斑を低減して美観良く仕上げるためにリンス剤が使用されている。このようなリンス剤として前記の非イオン界面活性剤や前記の有機高分子を用いることができるし、その他のリンス剤を用いることもできる。
【0073】
消泡剤としては、シリコーン系、鉱物油系、ポリエーテル系などの各種消泡剤が挙げられる。これらの消泡剤は液体、固体、エマルジョンなどの形態で市販されている。シリコーン系消泡剤としては、KM-89、KM-7750、KM-7752(以上、商品名、信越化学工業(株)製)、アンチフォーム(登録商標)E20(以上、商品名、花王(株)製)、TSA780、TSA739、YSA6406、YMA6509(以上、商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などが挙げられる。鉱物油系消泡剤としては、ノプコ(登録商標)8034、SNデフォーマーVL、SNデフォーマー269、ノプコ267A(以上、商品名、サンノプコ(株)製)などが挙げられる。ポリエーテル系消泡剤としては、SNデフォーマー470、SNデフォーマー14HP(以上、商品名、サンノプコ(株)製)などが挙げられる。その他にも、例えば「消泡剤の応用」(株式会社シーエムシー、佐々木恒孝監修、1991年5月30日初版第1刷発行)に記載されている消泡剤を用いてもよい。
【0074】
金属イオン捕集剤としては、ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、β-アラニンジ酢酸塩、アスパラギン酸ジ酢酸塩、メチルグリシンジ酢酸塩、イミノジコハク酸塩などのアミノカルボン酸塩及びこれらの水和物、セリンジ酢酸塩、ヒドロキシイミノジコハク酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン塩などのヒドロキシアミノカルボン酸塩及びこれらの水和物、トリポリリン酸塩、1-ジホスホン酸、α-メチルホスホノコハク酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸等のホスホノカルボン酸、これらのアルカリ金属塩及びこれらの水和物、ポリアクリル酸及びこれらのアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸塩及びこれらの水和物などが挙げられる。中でも、入手容易性、取り扱い容易性、金属イオン補修効果の観点から、アミノカルボン酸塩、アミノカルボン酸塩の水和物、ヒドロキシアミノカルボン酸塩、ヒドロキシアミノカルボン酸塩の水和物及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上の金属イオン捕集剤を用いることが好ましい。
【0075】
色素としては、スカーレットGコンク、パーマネントレッドGY、セイカファースト(登録商標)カーミン3870、セイカファーストエロー2200、セイカファーストエロー2700(B)(以上、商品名、大日精化工業(株)製)、Acid Blue 9、Direct Yellow 12(以上、商品名、東京化成工業(株)製)、フタロシアニンブルー、リボフラビン(以上、商品名、和光純薬工業(株)製)、ウルトラマリンブルー(以上、商品名、林純薬工業(株)製)などが挙げられる。
【0076】
香料としては、従来知られた香料を使用することができる。
【0077】
酵素としては、洗浄に有用な種々の酵素を使用することができる。
【0078】
前記の無機物としては、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の塩化物、硫酸アルミニウム塩、シロキサン類などが挙げられる。入手のし易さや、水への溶解のし易さ、取り扱いのし易さの観点から、ケイ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、アルカリ金属の水酸化物がより好ましい。
【0079】
ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、これらの水和物及びこれらの混合物などのアルカリ金属ケイ酸塩などが挙げられる。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩や、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどのアルカリ金属硫酸塩や、硫酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属硫酸塩などが挙げられる。リン酸塩としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどのアルカリ金属リン酸塩や、リン酸二水素アンモニウムなどが挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。アルカリ金属の塩化物としては塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。シロキサン類としてはジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。中でも、入手容易性、取り扱い容易性、塩基性の強さの観点から、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上のアルカリ金属塩を用いることが好ましい。
【0080】
本発明のコーティング層を有する固形漂白剤含有物は、粉末、顆粒、錠剤などの任意の性状を選択することができるが、洗浄剤組成物の配合原料として用いる場合の取り扱い性の観点から、粉末、顆粒であることが好ましい。また、本発明の固形漂白剤含有物の形状は特に限定されないが、球状、円柱状、円錐状、その他の多面体、針状等のいずれの形状でもよく、これらの形状物の混合物でもよい。また、本発明の固形漂白剤含有物を製造する際には、原料として粉末、顆粒、チルソネーター等による押出し成型品、押出し成形の粉砕物、打錠、造粒などの加工を事前に施した固形漂白剤を使用してもよく、固形漂白剤は添加剤を含んでもよい。
【0081】
本発明の固形漂白剤含有物が粉末又は顆粒の場合には、特に限定されないが、平均粒子径が1μm~5000μmの範囲であることが好ましく、10μm~3000μmがより好ましく、100μm~1500μmがさらに好ましい。前記の固形漂白剤含有物を洗浄剤などへの配合原料として使用する場合、平均粒子径が5000μm以下の場合は、粒子として大きすぎず取り扱い性がよく、3000μm以下ではより取り扱い性がよく、1500μm以下ではさらに取り扱い性がよい。また、平均粒子径が5000μm以下の場合は、直接洗浄や漂白に使用する場合においても開口部の小さい排水口などに直接入れることができるため使用し易く、3000μm以下ではより使用し易く、1500μm以下ではさらに使用し易い。一方、平均粒子径が1μm以上であれば、取り扱い時に僅かな風や静電気で飛散することが少ないため使用し易く、10μm以上ではより使用し易く、100μm以上ではさらに使用し易い。
【0082】
平均粒子径の測定は次のようにして行うことができる。目開き75μm、106μm、150μm、250μm、425μm、600μm、710μm、850μm、1000μm、1180μm、1400μm、1700μm、2000μmの13段のふるいと受け皿を用いて、受け皿の上に目開きの大きいふるいが上段になるように積み重ねる。最上部の目開き2000μmのふるいの上から試料を入れ、重ねたふるいを片手で支え、1分間に約120回の割合でふるい枠をたたく。時折、ふるいを水平に置き、ふるい枠を数回強くたたく。この操作を繰り返し、ふるい分けを十分に行なう。試料が静電気等により集合している場合や、ふるいの内側や裏面に微粉が付着している場合には、ブラシで静かに試料をほぐし、ふるい分け操作を再度行ない、ふるい網を通過したものはふるい下とする。なお、ふるい下とは、ふるい分け終了までに、ふるい網を通過した試験試料のことをいう。試料に粒径2000μmを超える粒子が含まれる場合は、目開き2360μm、2800μm、3350μm、4000μm、4750μm、5600μm、又はそれ以上の目開きのふるいを追加してもよく、粒径75μm以下の粒子が多い場合には、目開き63μm、53μm、45μm、38μm、又はそれ以下の目開きのふるいを追加してもよい。
【0083】
それぞれのふるい及び受け皿上に残留した粒子の質量を測定し、各ふるい上の粒子の質量割合(%)を算出する。受け皿から順に目開きの小さなふるい上の粒子の質量割合を足し合わせることにより積算していく。積算した質量割合が50%以上となる最初のふるいの目開きをaμmとし、aμmよりも一段大きいふるいの目開きをbμmとし、受け皿からaμmのふるいまでの積算した質量割合をc%、またaμmのふるい上の質量割合をd%とした場合、平均粒子径は次の数式1から求められる。
【0084】
【0085】
本発明の固形漂白剤含有物が錠剤の場合には、特に限定されないが、円柱形や俵型の形状を採用することができる。円柱形の場合は加工のし易さや強度の問題から直径が5mm~2000mmが好ましく、取り扱い性の観点から5mm~500mmがより好ましい。錠剤の高さは0.5mm~2000mmが好ましく、0.5mm~500mmがより好ましい。また、錠剤の直径(mm)を錠剤の高さ(mm)で除した値が1.0~10.0の範囲であることが好ましい。錠剤の直径や高さが所定の範囲であれば大き過ぎずに加工が容易である。錠剤の直径(mm)を錠剤の高さ(mm)で除した値が所定の範囲であれば、錠剤が割れたり欠けたりし難い。
【0086】
本発明の固形漂白剤含有物は、固形漂白剤にコーティング層を形成することにより製造することができる。当該製造方法は特に限定されないが、攪拌法、転動法、流動層法など既に知られた方法を採用してもよいし、これらを組み合せて用いてもよい。攪拌法を用いる場合は固形漂白剤を攪拌羽で攪拌することにより流動化し、コーティング層の成分を含む液体(以下、コーティング液という。)を添加又は噴霧し、必要により加熱等の乾燥の手段により揮発分を除去して、コーティング層を形成する。転動法を用いる場合は固形漂白剤を円筒状の処理層に入れて回転し固形漂白剤を流動化し、コーティング液を添加又は噴霧し、必要により加熱等の乾燥の手段により揮発分を除去して、コーティング層を形成する。流動層法を用いる場合は処理層内の固形漂白剤をブロアなどの送風機を用いて空気により流動化し、コーティング液を添加又は噴霧し、必要により加熱等の乾燥の手段により揮発分を除去して、コーティング層を形成する。
【0087】
本発明のコーティング層を有する固形漂白剤含有物を製造する際には、固形漂白剤を流動状態に維持して、コーティング液を前記固形漂白剤に接触させて濡らす工程と、コーティング液と接触した固形漂白剤を乾燥させることにより固形漂白剤の表面にコーティング層を形成する工程とを含んでもよい。この製法で得られる固形漂白剤含有物は、中心核となる固形漂白剤の外側にコーティング層が形成され、当該コーティング層により固形漂白剤が、固形漂白剤の劣化、失活、分解を引き起こす種々の要因から保護されることにより安定化される。コーティング層は固形漂白剤を完全に覆うように形成してもよいし、本発明の効果を損なわない範囲において部分的に形成してもよい。
【0088】
前記の固形漂白剤を濡らす工程と乾燥する工程は、同時に行ってもよく、交互に繰り返し行ってもよい。工程を速やかに完了するという観点から、同時に行うことがより好ましい。
【0089】
前記コーティング液は、コーティング層に含有する化合物、添加剤及びそれらの混合物の群から選択される1以上の溶質(以下、これらをまとめてコーティング材と云うことがある。)を、溶媒と混合することにより調製される。コーティング液の性状は、コーティング材が完全に溶媒に溶解した溶液状態でもよく、スラリーや、溶質が膨潤して分散している状態でもよい。前記の溶媒としては、入手し易さ及び取り扱い易さの観点から、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエンなどの有機溶媒、水及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上が好ましい。水、メタノール、エタノール及びこれらの混合物は、コーティング材を適度に溶解し、固形漂白剤を濡らした後、速やかに揮発し除去されるためより好ましく、取り扱い上の安全性や入手の容易さの観点から水がさらに好ましい。
【0090】
また、コーティング材が融点を有する場合は、融点より高い温度に加温して溶融状態のコーティング材を用いてもよい。この時、溶媒を使用しなければ、固形漂白剤を乾燥する工程を省略することができ、融点より低い温度に冷却することにより、溶融状態のコーティング材が固化し、容易にコーティング層を形成できるため好ましい。
【0091】
前記コーティング液を固形漂白剤に接触させる方法については、特に限定されない。例えば、スプレーによりコーティング液を固形漂白剤に噴霧してもよいし、固形漂白剤にコーティング液を直接滴下してもよい。コーティング液を均一に接触させるという観点から、スプレーによりコーティング液を噴霧する方法が好ましい。
【0092】
前記のスプレー操作に使用するスプレーノズルは特に限定されないが、二流体ノズルが好ましい。
【0093】
本発明の固形漂白剤含有物の製造方法において用いた水などの溶媒が乾燥工程を経ても完全に除去されない場合や、大気中の水分が固形漂白剤に吸収された場合などに、コーティング層を有する固形漂白剤含有物が微量の揮発分を含むことがある。このような揮発分は乾燥をさらに行うことにより除去できる。
【0094】
揮発分が水である場合、前記の固形漂白剤含有物中の水分含有量(質量%)は、水の沸点よりやや高い温度である110℃に設定した恒温乾燥器内で恒量になるまで乾燥させた際の質量減少量で定義され、次の数式2で表される。
【0095】
(数2)
水分含有量(質量%)=(W2-W1)×100/W2 (数式2)
W1:乾燥後の試料の質量(g)
W2:乾燥前の試料の質量(g)
【0096】
本発明の固形漂白剤含有物の水分含有量は特に限定されないが、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。水分含有量が少ないと固形漂白剤含有物中の単位質量当りの固形漂白剤の含有量を高くできるため有利である。そのため、製造後に乾燥工程を設けることが好ましい。例えば、溶媒に水を用いた場合には、110℃の温度下で恒量になるまで乾燥させた場合には、水分含有量がほぼ0質量%になっていると考えることができる。
【0097】
揮発分が水以外である場合でも、前述と同様に、揮発分が十分に乾燥できる温度であれば特に限定されないが、揮発分含有量は恒温乾燥器内で恒量になるまで乾燥させた際の質量減少量で定義され、数式2の場合と同様に求めることができる。なお、この時の温度は溶媒以外の固形漂白剤、コーティング材又はその他の添加剤が分解、蒸発、昇華する温度より低く設定されるべきである。
【0098】
固形漂白剤が塩素系の漂白剤である場合は、固形漂白剤含有物中の有効塩素含有量(Cl2換算値)は、よう素滴定法を用いて、数式3により算出することができる。すなわち、活性塩素とよう化カリウムとが反応して遊離するよう素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、次の数式3により有効塩素含有量を算出する。
【0099】
(数3)
有効塩素含有量(%)=a×f×0.35452/b (数式3)
a:滴定に要した0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液(ml)
b:試料(g)
f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
【0100】
なお、トリクロロイソシアヌル酸の理論上の有効塩素含有量は91.53%であり、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムでは64.48%であり、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム2水和物では55.40%である。
【0101】
固形漂白剤が酸素系である場合についても、固形漂白剤含有物中の有効酸素含有量(O2換算値)を、よう素滴定法を用いて算出することができる。すなわち、活性酸素とよう化カリウムとが反応して遊離するよう素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、次の数式4により有効酸素含有量を算出する。活性酸素とよう化カリウムとの反応を速めるために、1質量%に調整したモリブデン酸アンモニウム水溶液を少量加えてもよい。
【0102】
(数4)
有効酸素含有量(%)=a×f×0.08000/b (数式4)
a:滴定に要した0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液(ml)
b:試料(g)
f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
【0103】
本発明の固形漂白剤含有物については、固形漂白剤を含有する層と、コーティング層の割合(質量比)を適宜調節することができるが、コーティング層の割合が小さいほど相対的に固形漂白剤の割合が大きくなるので、固形漂白剤の殺菌、漂白、洗浄などの機能を維持する観点から有利となる。一方で、種々の洗浄剤成分と配合して洗浄剤組成物とする場合には、コーティング層の割合が大きいほど安定性がより向上する。
【0104】
従って、固形漂白剤に形成されたコーティング層の割合は、相対的な固形漂白剤の割合の観点と、安定性の向上の観点から一定の範囲内であることが望ましい。相対的な固形漂白剤の割合の観点から前記の固形漂白剤含有物の内、コーティング層の割合の上限は50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。一方、安定性の向上の観点から前記の固形漂白剤含有物の内、コーティング層の割合の下限は、安定性が向上する限り特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
【0105】
本発明の固形漂白剤含有物中のコーティング層の割合は、固形漂白剤が塩素系漂白剤の場合は、次の数式5により固形漂白剤含有物の有効塩素含有量から算出することができる。なお、本発明のコーティング層を有する固形漂白剤含有物が溶媒を含む場合には、予め溶媒含有量を前記数式2により求めておき、溶媒含有量を差し引いた後に数式5により算出してもよい。同様に、固形漂白剤が酸素系漂白剤である場合は有効塩素含有量に代えて、有効酸素含有量から算出することもできる。
【0106】
(数5)
コーティング層の割合(質量%)=(P1-P2)×100/P1 (数式5)
P1:原料に用いた固形漂白剤の有効塩素または有効酸素含有量(質量%)
P2:コーティング層を有する固形漂白剤含有物中の有効塩素又は有効酸素含有量(質量%)
【0107】
有効塩素含有量や有効酸素含有量を用いない場合でも、コーティング層を有する固形漂白剤含有物中のコーティング層の割合を算出するために、次の数式6による算出方法を採用することもできる。
【0108】
(数6)
コーティング層の割合(質量%)=Q1×100/Q2 (数式6)
Q1:コーティング層を有する固形漂白剤含有物中のコーティング層の質量(g)
Q2:コーティング層を有する固形漂白剤含有物の質量(g)
【0109】
例えば、コーティング層を有する固形漂白剤含有物1g中に、コーティング層が0.3g含まれる場合には、数式6によりコーティング層の割合(質量%)は、0.3×100/1=30となり、30%となる。
【0110】
コーティング層の同定及び定量は既に知られている方法により測定することができる。例えばコーティング層に用いた化合物の吸光度が既知である場合は、コーティング層に用いた化合物の既知の濃度に調節して検量線を作成する吸光度法によりコーティング層の含有量を算出することができるし、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなど広く知られた方法を用いて測定してもよい。コーティング層を定量するよりも、固形漂白剤を定量する方が容易である場合には、次の数式7により固形漂白剤の質量からコーティング層の質量を算出することもできる。
【0111】
(数7)
コーティング層の質量Q1=Q2-Q3 (数式7)
Q1:コーティング層を有する固形漂白剤含有物中のコーティング層の質量(g)
Q2:コーティング層を有する固形漂白剤含有物の質量(g)
Q3:コーティング層を有する固形漂白剤含有物中の固形漂白剤の質量(g)
【0112】
本発明の固形漂白剤含有物の製造に使用される加工装置は特に限定されず、市販の攪拌機、転動機、流動層機及びこれらを組合せた装置の群から選択される1以上の加工装置を使用することができる。1の加工装置で加工を完了してもよいし、複数の工程を別々の加工装置で行ってもよい。加工の容易性の観点から転動機、流動層機及びこれらを組み合わせた装置の群から選択される1以上の加工装置が好ましい。
【0113】
加工装置としては、以下の商品名で市販されているものが挙げられる。具体的には、DPZ-01(アズワン(株)製)、旋回流動層((株)ダルトン製)、ニューグラマシン((株)セイシン企業製)、スワラー(登録商標)(日本ニューマチック工業(株)製)、レーディゲミキサー((株)マツボー製)、グラニュレックス(登録商標)(フロイント産業(株)製)、スパイラフロー(登録商標)(フロイント産業(株)製)、CFグラニュレーター(フロイント産業(株)製)、ハイスピードミキサー((株)アーステクニカ製)、ハイスピードバキュームドライヤー((株)アーステクニカ製)、ダイナミックドライヤー((株)アーステクニカ製)、マルチプレックス(パウレック(株)製)、バーチカルグラニュレータ(パウレック(株)製)、アグロマスタ(登録商標)(ホソカワミクロン(株)製)、NARAMIXER & GRANULATOR((株)奈良機械製作所製)などが挙げられる。好ましく使用し得る加工装置としては、DPZ-01、旋回流動層、ニューグラマシン、グラニュレックス、スパイラフロー、CFグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ハイスピードバキュームドライヤー、ダイナミックドライヤー、マルチプレックス、バーチカルグラニュレータが挙げられる。
【0114】
本発明の固形漂白剤含有物の製造においては、原料となる固形漂白剤を流動状態に維持する工程と、流動状態の固形漂白剤にコーティング液を接触させる工程を含む。固形漂白剤の流動状態は攪拌や転動によってなされてもよく、ブロアなどから供給される空気流によってなされてもよい。その際の固形漂白剤の流動状態は、当該固形漂白剤が破壊されない強度に設定されることが好ましい。
【0115】
流動状態が、固形漂白剤が破壊されない強度であるか否かの判別は、加工に用いる固形漂白剤を前記の加工装置またはその他の方法で流動状態にして、コーティング層の形成に要する時間に渡って流動させた場合に、前記の固形漂白剤の平均粒子径の推移を測定することにより判別できる。即ち、固形漂白剤のみを所定の時間流動状態で処理した後の平均粒子径が、流動させる前のその平均粒子径より小さくなるほど、流動状態の強度が強すぎるために固形漂白剤が破壊されていることが示唆される。例えば、攪拌機や転動機においては流動状態の強度は攪拌時や転動時の回転数により調整される。攪拌時や転動時の回転数は速いほど流動状態の強度が強いと考えてよい。例えば流動層装置においては原料を流動状態にするために供給される空気(以下、流動エアーという。)の風量または風速により調整される。風量が多いほどまたは風速が速いほど流動状態の強度が強いと考えてよい。
【0116】
流動状態の強度が強すぎる場合は、固形漂白剤のコーティング層が形成される一方でコーティング層及び固形漂白剤またはそのいずれか一方が破壊されることにより微粉化するため、固形漂白剤にコーティング層が形成されないか、形成が不十分となる。その場合は流動状態の強度を下げることが好ましい。流動状態の強度は、攪拌機や転動機の回転数や流動層装置の流動エアーの流量を低下することにより下げることができる。従って、例えば固形漂白剤が粉体または顆粒である場合には、固形漂白剤のみを所定の時間流動状態で処理した後の平均粒子径が、処理前の平均粒子径より小さくなり過ぎる場合は流動状態の強度が強すぎるので、前記の回転数やエアー流量を低下して流動状態の強度を下げることが好ましい。ただし、発明の効果を損なわない範囲において前記処理後の固形漂白剤又は固形漂白剤含有物の平均粒子径が前記処理前の固形漂白剤の平均粒子径より小さくなることは許容される。
【0117】
一方、流動状態の強度が弱すぎる場合には、固形漂白剤が十分に流動化しないため、コーティング層の形成が不十分になるだけでなく、固形漂白剤の凝集や装置内壁への固着などを引き起こす。固形漂白剤にコーティング層が形成される過程においてはコーティング層の増大に伴い固形漂白剤含有物の平均粒子径が、加工前の固形漂白剤の平均粒子径より大きくなるのが通常であるが、粒子同士が凝集を引き起こした場合には、固形漂白剤含有物の平均粒子径の増大が急激に進む場合がある。加工後の固形漂白剤含有物の平均粒子径が極端に大きい場合には、加工時に固形漂白剤の凝集が急激に進んでいることが示唆される。凝集により生じた大きい粒子は、例えば洗浄剤組成物に配合した際に固形漂白剤の分散不良などを引き起こすため好ましくない。このように流動状態の強度が弱すぎる場合は、攪拌機や転動機の回転数や流動層装置の流動エアーの流量を高めて、流動状態の強度を上げることが好ましい。ただし、発明の効果を損なわない範囲において前記加工後の固形漂白剤又は固形漂白剤含有物の平均粒子径が前記加工前の固形漂白剤の平均粒子径より大きくなることは許容される。このように流動状態の強度は、適宜設定できる。
【0118】
また、前記のコーティング液を添加又は噴霧する際に、コーティング液の供給速度が速すぎる場合には流動状態の強度に関わらず固形漂白剤が濡れ過ぎるために固形漂白剤の凝集や装置内壁への固着を引き起こす。このような場合にはコーティング液の供給速度を下げることが好ましい。一方、コーティング液の供給速度が遅すぎる場合には処理に時間がかかりすぎるため、固形漂白剤の凝集や固着を生じない範囲においてコーティング液の供給速度を上げることが好ましい。このようにコーティング液の供給速度は、適宜設定できる。また、コーティング層に使用する化合物の種類によっても凝集の程度が異なるので、凝集しにくい化合物をコーティング層として選択することが好ましい。以上のように、前記の固形漂白剤の流動状態の強度と、前記のコーティング液の供給速度は固形漂白剤が破壊されないこと及び凝集や固着を生じない範囲に適宜調整することにより、本発明のコーティング層を有する固形漂白剤含有物を製造することができる。
【0119】
コーティング層を有する固形漂白剤含有物の加工時に微粉化や凝集がどの程度発生したかを評価する為に、原料に用いた固形漂白剤の平均粒子径に対して、加工後のコーティング層を有する固形漂白剤含有物の平均粒子径の減少率又は増加率を凝集率として、次の数式8により定義される。
【0120】
(数8)
凝集率(%)=D1×100/D2 (数式8)
D1:加工後のコーティング層を有する固形漂白剤含有物の平均粒子径
D2:原料に用いた固形漂白剤の平均粒子径
【0121】
凝集率は80%以上300%以下が好ましく、85%以上250%以下がより好ましく、90%以上200%以下がさらに好ましい。凝集率が80%以上の場合は、加工時に、固形漂白剤のコーティング層が形成される一方でコーティング層及び固形漂白剤の両方またはそのいずれか一方の微粉化が許容できる範囲であるため好ましく、85%以上であれば微粉化の程度がより小さいためより好ましく、90%以上であればさらに微粉化の程度が小さいためさらに好ましい。一方、凝集率が300%以下であれば、加工時に粒子の凝集の進行が許容できる範囲であるため洗浄剤組成物と配合する場合などに取り扱いが容易であるため好ましく、250%以下であればより取り扱いが容易であるためより好ましく、200%以下であればさらに取り扱いが容易であるためさらに好ましい。
【0122】
このようにして得られたコーティング層を有する固形漂白剤含有物の安定性は、一定条件下における保管試験後の有効塩素保持率又は有効酸素保持率が、コーティング前後でどの程度改善されたかにより評価される。有効塩素保持率(%)は次の数式9により定義される。有効塩素保持率(%)が100%に近いほど固形漂白剤が安定であることを意味し、0%に近いほど固形漂白剤が不安定であることを意味する。同様に、固形漂白剤が酸素系漂白剤である場合には、固形漂白剤の安定性は有効酸素保持率(%)により定義される。コーティング層を有する固形漂白剤含有物とコーティング層を有さない固形漂白剤をそれぞれ同一条件の保管試験に供した場合において、コーティング層を有する固形漂白剤含有物がコーティング層を有さない固形漂白剤に比べて、高い有効塩素保持率又は有効酸素保持率を示した場合に、固形漂白剤の安定性が改善されたと言える。
【0123】
(数9)
有効塩素又は有効酸素保持率(%)=R1×100/R2 (数式9)
R1:保管試験後の固形漂白剤又は固形漂白剤含有物の有効塩素又は有効酸素含有量(%)
R2:保管試験前の固形漂白剤又は固形漂白剤含有物の有効塩素又は有効酸素含有量(%)
【0124】
固形漂白剤の安定性を評価するための保管試験の条件として、以下の方法を採用することができる。
【0125】
例えば、本発明のコーティング層を有する固形漂白剤含有物とコーティング層を有さない漂白剤を、固形漂白剤の劣化、失活、分解の要因が存在する環境下で一定期間保管すると、固形漂白剤の安定性に差が現れる。その際、固形漂白剤の劣化、失活、分解の要因となるものは、特に限定されないが、酸性、塩基性、高温度、高湿度などが挙げられる。
【0126】
保管試験に際しては、固形漂白剤とその他の化合物を混合して行ってもよい。その他の化合物としては、前記有機物、無機物及びこれらの混合物の群から選択される1以上を用いてもよい。例えば、コーティング層を有する固形漂白剤含有物のみを高温高湿度下に一定期間保管することによって保管試験を行ってもよいし、コーティング層を有する固形漂白剤含有物を洗浄剤組成物と配合し、前記の洗浄剤組成物を一定期間保管することによって保管試験を行ってもよい。また、コーティング層を有する固形漂白剤含有物に予め物理的な衝撃を与えたり、前記の洗浄剤組成物と共に攪拌や混合などの工程を経た後に保管試験を行ってもよい。
【0127】
また、保管試験における、保管時の温度、湿度、包装形態は、適宜変更することができる。例えば、常温常圧条件下で行ってもよいし、温度や湿度を制御して、例えば温度40℃かつ相対湿度75%の環境下で行ってもよい。また、試験に供する固形漂白剤含有物をそのまま用いてもよいし、フィルムや容器に入れて用いてもよい。
【0128】
このような条件下における保管試験の終了後、コーティング層を有する固形漂白剤含有物がコーティング層を有さない固形漂白剤に比べて、高い有効塩素保持率又は有効酸素保持率を示した場合に、固形漂白剤の安定性が改善されたということができる。有効塩素保持率又は有効酸素保持率が高いほど保管後の固形漂白剤の洗浄、殺菌、漂白の効果が維持されることを意味する。どの程度固形漂白剤の安定性が改善されたかは、コーティング層を有する固形漂白剤含有物の性質のみならず、保管試験の条件設定によっても変わり得る。固形漂白剤の用途や使用条件によって、保管試験の条件は本明細書に記載した条件以外の範囲にも設定することができる。どのような保管試験であっても、用途や使用条件に適合する程度に固形漂白剤の安定性が改善されることが好ましい。
【実施例】
【0129】
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0130】
以下に、実験に用いられた主な薬剤を説明する。
・安息香酸ナトリウム、パラ-t-ブチル安息香酸ナトリウム、オルト-フタル酸、メタ-フタル酸、パラ-フタル酸、トリメリット酸:和光純薬工業(株)製(試薬)
・オルト-フタル酸二ナトリウム、メタ-フタル酸二ナトリウム、パラ-フタル酸二ナトリウム、トリメリット酸三ナトリウム:各々、オルト-フタル酸、メタ-フタル酸、パラ-フタル酸、トリメリット酸を水酸化ナトリウム水溶液に溶解して作製した。
・ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸:和光純薬工業(株)製(試薬)
・吉草酸ナトリウム、ヘキサン酸ナトリウム、ヘプタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム:各々、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸を水酸化ナトリウム水溶液に溶解して作製した。
・コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸:和光純薬工業(株)製(試薬)
・グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、テトラデカン二酸:東京化成工業(株)製(試薬)
・コハク酸二ナトリウム、グルタル酸二ナトリウム、アジピン酸二ナトリウム、ピメリン酸二ナトリウム、スベリン酸二ナトリウム、アゼライン酸二ナトリウム、セバシン酸二ナトリウム、ドデカン二酸二ナトリウム、テトラデカン二酸二ナトリウム:各々、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸を水酸化ナトリウム水溶液に溶解して作製した。
・水酸化ナトリウム:和光純薬工業(株)製(試薬)
・ミリスチン酸:和光純薬工業(株)製(試薬)
・アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:ライオン(株)製「ライポン(登録商標)PS-230」
・ラウリル硫酸ナトリウム:花王(株)製「エマール(登録商標)10PT」
・シリコーン系消泡剤:信越化学工業(株)製「KM-89」
・α-オレフィンスルホン酸ナトリウム:ライオン(株)製「リポラン(登録商標)PB-800」
・ヒドロキシプロピルセルロース:和光純薬工業(株)製(試薬)
・オクタン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製(試薬)
・炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製(試薬)
・パラフィンワックス(融点58~60℃):和光純薬工業(株)製(試薬)
・ステアリルアルコール:和光純薬工業(株)製(試薬)
・微細ゼオライト(合成ゼオライトA-4 平均粒子径2~5μm):和光純薬工業(株)製(試薬)
・ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム:四国化成工業(株)製「ネオクロール(登録商標)60G」(平均粒子径700μm)
・トリクロロイソシアヌル酸:四国化成工業(株)製「ネオクロール90G」(平均粒子径1097μm)
・過炭酸ナトリウム(炭酸ナトリウム過酸化水素付加物):(株)アデカ製「PC-2」(平均粒子径746μm)
・ペルオキシ硫酸・硫酸・五カリウム塩:ケマーズ(株)製「OXONE(登録商標)」(平均粒子径516μm)
・ブロモクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジクロロ-5,5-エチルメチルヒダントインの混合品(以下、ハロゲン化ヒダントイン混合物という):ロンザジャパン(株)製「ダントブロムRW」(平均粒子径886μm)
・メタケイ酸ナトリウム:シグマアルドリッチ(株)製(試薬)
・メタケイ酸ナトリウム・五水和物:シグマアルドリッチ(株)製(試薬)
・メタケイ酸ナトリウム・九水和物:シグマアルドリッチ(株)製(試薬)
・ニトリロ三酢酸三ナトリウム・一水和物:和光純薬工業(株)製(試薬)
・炭酸カリウム:和光純薬工業(株)製(試薬)
・硫酸カリウム:和光純薬工業(株)製(試薬)
・オレフィン-無水マレイン酸ナトリウム共重合体:ローム&ハース(株)製「ACUSOL(登録商標)460ND」
・エチレンジアミン-ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー:(株)アデカ製「アデカプルロニックTR-702」
・エタノール:和光純薬工業(株)製「試薬特級」
・その他の試薬や器具は通常入手することができる汎用品を使用した。
【0131】
(実施例1)
固形漂白剤として、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを用いた。100gのジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを加工装置「DPZ-01」(アズワン(株)製)に投入し、回転パンの回転数を40rpmに、仰角を45°に、ヒーター温度をHiに設定し、加熱しながらジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを流動状態に維持した。なお、仰角とは、回転パンの回転軸方向が水平方向となす角度をいう。この時、回転数が速く仰角が小さいほど流動状態のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが激しく動くので流動状態の強度が強いといえる。回転数、仰角、ヒーター温度は、固形漂白剤の流動を維持できる範囲で適宜調節することができる。即ち、固形漂白剤が噴霧したコーティング液により均一に濡れるようにするために調節するべきである。例えば、固形漂白剤が回転パンの下方に溜まり、流動が不十分である場合には回転数を速くするか仰角を大きくすることにより、固形漂白剤は回転パン全体に広がり易くなる。一方で、回転パンの回転数が速すぎたり仰角が大きすぎる場合は、回転パンの遠心力により円周方向に固形漂白剤が溜まり流動が不十分となるので、回転数を遅くするか仰角を小さくすることにより、再び固形漂白剤を回転パン全体に広げるように流動することができる。
流動状態のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムに、25質量%安息香酸ナトリウム水溶液(コーティング液)を噴霧し、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを濡らした。この時、コーティング液は噴霧速度約1g/分の液速でチューブポンプにより送液した。コーティング液の送液用には内径2mmのシリコーンチューブを用いた。噴霧時には0.1MPaの圧縮空気を内径2mmのポリエチレンチューブによりスプレーノズルに導入した。スプレーノズルは二流体ノズル(型式AM25、(株)アトマックス製)を用い、コーティング液を飛沫化するために0.1MPaの圧縮空気を供給した。回転パンが加熱されているので、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを濡らしたコーティング液中の水は乾燥し除去され、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの表面に安息香酸ナトリウムによるコーティング層が徐々に形成された。コーティング液を342g噴霧した所で操作を終了し、コーティング層に安息香酸ナトリウムを含有する固形漂白剤含有物のサンプルを176g得た。固形漂白剤及びコーティング層に用いる化合物の種類や量を変更する場合は、加工条件を適宜変更することができる。
【0132】
水分含有量
作製したサンプルの全量を110℃に設定したオーブン内で乾燥した所、1.5時間で恒量に達し、その時の重量は163gであったことから、サンプルに残存していた加工直後の水分量(以下、「水分含有量」という場合がある。)は表1に記載の通り7.4質量%と算出された。乾燥後の重量を基準として、使用した固形漂白剤とコーティング材の重量から求めた収率は88%であった。
【0133】
有効塩素含有量とコーティング層の割合
乾燥後のサンプルを0.10~0.13gの範囲で計量し、質量を正確に小数点以下4桁まで記録して200mlコニカルビーカーに入れ、蒸留水を加えて約100mlとし、よう化カリウム約1gと50質量%酢酸水溶液を約5ml加えて約5分間攪拌した。遊離したよう素を0.1Nのチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定し、溶液の黄色が薄くなってから指示薬としてでんぷん水溶液(10g/L)を約1ml加え、生じたよう素でんぷんの青い色が消えるまで滴定を継続し、チオ硫酸ナトリウム水溶液の滴定量から有効塩素含有量(%)を求めた。その結果、乾燥後のサンプルの有効塩素含有量は38.0%であった。この時原料に用いたジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの有効塩素含有量は理論値よりやや低く62.5%であったため、乾燥後のサンプルにおけるコーティング層の占める割合は表1に記載の通り39質量%と算出された。即ち乾燥後のサンプルは、安息香酸ナトリウムからなるコーティング層を有し、前記コーティング層が全重量の39質量%を占める固形漂白剤含有物であると考えられた。固形漂白剤及びコーティング層に用いる化合物の種類や量を変更する場合は、加工条件を適宜変更することができる。
【0134】
(実施例2)
固形漂白剤として、500gのジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを用いた。ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを加工装置「スパイラフロー」(型式SFC-MINI、フロイント産業(株)製)に投入した。排気ダンパーの開度を7.5、流動エアーのダンパーの開度を6、スリットエアーのダンパーの開度を7に設定し、給気ヒーターの温度を100℃に設定した。ローターの回転数は300rpmに設定し、装置を稼動し、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを流動状態にした。この時、排気ダンパー、流動エアー、スリットエアーの各ダンパーの開度が大きくローターの回転数が速いほどジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが激しく動くので、流動状態の強度が強いといえる。
流動状態のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの温度が60℃に達した時点で36質量%安息香酸ナトリウム水溶液(コーティング液)を噴霧速度約20g/分の流速で噴霧した。コーティング液の噴霧の際には、0.1MPaの圧縮空気を20L/分の流速で供給した。ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの温度は層内に設置された温度計により測定され、製品温度として表示される。製品温度が60℃±10℃の範囲になる様にコーティング液の供給速度を微調整した。スプレーノズルは二流体ノズル(型式ATU-MINI、フロイント産業(株)製)を用いた。コーティング液を540g噴霧した時点で加工を終了し、固形漂白剤含有物のサンプルを692g得た。装置から加工後のサンプルを抜取り、110℃の乾燥機内で1.5時間乾燥した時点で恒量に達した。固形漂白剤及びコーティング層に用いる化合物の種類や量を変更する場合は、加工条件を適宜変更することができる。
【0135】
水分含有量、有効塩素含有量、収率及びコーティング層の割合は実施例1と同様に算出した(以下、同様)。その結果は表1に記載の通り、水分含有量は1.9質量%、有効塩素含有量は46.3%であることからコーティング層の割合は26質量%であった。
【0136】
安定性試験1(保管試験)
加工を施していない固形漂白剤としてジクロロイソシアヌル酸ナトリウムと、コーティング層を有する固形漂白剤含有物として、実施例1及び実施例2で作製し、110℃で1.5時間乾燥させたサンプルとを用いて保管試験を行った。無水のメタケイ酸ナトリウムを3g、炭酸カリウムを2.0g、ニトリロ三酢酸三ナトリウム・一水和物を4.75g、エチレンジアミン-ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーを0.1g、固形漂白剤又は固形漂白剤含有物を0.15g混合し、50ml容量のガラス製ビーカーに入れ、60℃の水道水を3ml加えて、スパチュラで1周円を描くように軽く攪拌した。このときの室温は20℃で相対湿度は40%であった。そのまま室温で18時間静置した後に、混合物全体を200mlの蒸留水に溶解し、有効塩素含有量を測定し、有効塩素保持率を算出した。加工を施していない固形漂白剤を用いた場合の有効塩素保持率(コーティング前の有効塩素保持率)と比べて、コーティング層を有する固形漂白剤含有物を用いた場合の有効塩素保持率(コーティング後の有効塩素保持率)が向上している場合は、固形漂白剤の安定性が改善されているといえるので合格として○と評価し、向上していない場合や低下している場合は、固形漂白剤の安定性が改善されているとは言えないので不合格として×と評価した。コーティング前のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムと実施例1及び実施例2で作製したサンプルの保管試験後の有効塩素保持率は、それぞれ表10の通りであった。
【0137】
起泡性試験(発泡性評価)
実施例1及び実施例2で作製し、110℃で1.5時間乾燥させたコーティング層を有する固形漂白剤含有物を0.2質量%の濃度になるように水に溶解した水溶液を作製し、前記水溶液を100ml容量の比色管に20ml入れた。比色管を60℃の恒温水槽に30分間静置した後、比色管の蓋をおさえながら、両手で比色管を10回激しく上下に振とうした。振とう直後の泡の量を比色管の目盛りから読み取り、起泡量を評価した。起泡量の評価結果は、発泡が発生しない又は泡が1ml未満のものを合格として○とし、泡が発生し比色管の目盛りで泡が1ml以上から30ml未満のものを泡が発生したため不合格として×とし、30ml以上のものをさらに泡が多すぎるため不合格として××とした。結果は表10の通りであった。なお、比色管の容量が100mlであるため泡の測定可能な量は80mlまでである。そのため、起泡量が80mlを超える場合の泡量は「80<」と表記した。
【0138】
溶解性試験(残留物評価)
固形漂白剤含有物を0.2質量%及び5質量%の濃度になるように40℃の水100mlにそれぞれ溶解し、目視により未溶解の残留物を評価した。未溶解の残留物がある場合は30分以上攪拌を継続してから評価した。いずれの濃度においても水面及び水底に未溶解のコーティング層に由来する残渣が無かった場合は合格として○と評価し、0.2質量%の濃度では水面及び水底に未溶解のコーティング層に由来する残渣が無かったが5質量%の濃度では水面及び水底に未溶解のコーティング層に由来する残渣がある場合を不合格として×、いずれの濃度においても水面及び水底に未溶解のコーティング層に由来する残渣がある場合を不合格として××と評価した。結果は表10の通りであった。
【0139】
(実施例3~7)
表1に記載した条件以外は実施例2と同様の方法で、コーティング層にパラ-t-ブチル安息香酸ナトリウム、オルト-フタル酸二ナトリウム、メタ-フタル酸二ナトリウム、パラ-フタル酸二ナトリウム、トリメリット酸三ナトリウムを用いてコーティング層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。コーティング液の濃度(質量%)、作製したサンプルの水分含有量(質量%)、コーティング層の割合(質量%)は表1の通りであった。各サンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、110℃で1.5時間乾燥した後のサンプルを用いて、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表10の通りであった。
【0140】
(実施例8~16)
表2に記載した条件以外は実施例1又は実施例2と同様の方法で、コーティング層にコハク酸二ナトリウム、グルタル酸二ナトリウム、アジピン酸二ナトリウム、ピメリン酸二ナトリウム、スベリン酸二ナトリウム、アゼライン酸二ナトリウム、セバシン酸二ナトリウム、ドデカン二酸二ナトリウム、テトラデカン二酸二ナトリウムを用いてコーティング層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。コーティング液の濃度(質量%)、作製したサンプルの水分含有量(質量%)、コーティング層の割合(質量%)は表2の通りであった。各サンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、110℃で1.5時間乾燥した後のサンプルを用いて、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表11の通りであった。
【0141】
(実施例17~23)
表3に記載した条件以外は実施例1又は実施例2と同様の方法で、コーティング層にギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、吉草酸ナトリウム、ヘキサン酸ナトリウム、ヘプタン酸ナトリウムを用いてコーティング層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。コーティング液の濃度(質量%)、作製したサンプルの水分含有量(質量%)、コーティング層の割合(質量%)は表3の通りであった。各サンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、110℃で1.5時間乾燥した後のサンプルを用いて、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表12の通りであった。
【0142】
(実施例24~29)
表4に記載した条件以外は実施例2と同様の方法で、コーティング層がさらに2つの層を含有するように、2種類の化合物を用いてコーティング層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。即ち、第一の工程としてコーティング層に安息香酸ナトリウムを用いてコーティング層を有する固形漂白剤含有物を作製し、第2の工程として第1の工程で作製したコーティング層を有する固形漂白剤含有物にさらにセバシン酸二ナトリウム又はドデカン二酸二ナトリウムを用いてさらにコーティング層を形成し、コーティング層が安息香酸ナトリウムからなる内側の層とセバシン酸二ナトリウムまたはドデカン二酸二ナトリウムからなる外側の層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。コーティング液の濃度(質量%)、作製したサンプルの水分含有量(質量%)、コーティング層の割合(質量%)は表4の通りであった。各サンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、110℃で1.5時間乾燥した後のサンプルを用いて、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表13の通りであった。なお、実施例24~29においてコーティング層の割合は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量した。以下、定量方法を詳細に記載する。
【0143】
装置は高速液体クロマトグラフLC-2010AHT((株)島津製作所製)を用いた。カラムは高速液体クロマトグラフ用カラムHITACHI LaChrom(登録商標) C18-AQ((株)日立ハイテクサイエンス製)を用いた。移動相は濃度が60mMになるように調整したリン酸水素二アンモニウム水溶液とメタノールを重量比で9:1になるように混合した溶媒を用いた。移動相の流速は1ml/分に設定し、カラムオーブンの温度設定は40℃とした。検出には波長210nmの紫外線を用いた。このように設定した条件で、濃度既知のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの水溶液(ただし、有効塩素を当量の亜硫酸ナトリウムで中和した。)、安息香酸ナトリウムの水溶液、セバシン酸二ナトリウムの水溶液を用いてピーク面積と濃度の関係について検量線を作成した。この時、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム由来のピークは保持時間3.0分付近に、安息香酸ナトリウム由来のピークは保持時間8.0分付近に、セバシン酸二ナトリウム由来のピークは保持時間11.5分付近に検出された。
【0144】
前記のHPLCと同じ条件で、濃度既知の実施例24~29で作製したサンプルを測定し、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、セバシン酸ナトリウムをそれぞれ定量し、前記の数式6によりコーティング層の割合(質量%)を算出した。なお、実施例27~29で作製したドデカン二酸二ナトリウムを含むサンプルについては、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムと安息香酸ナトリウムのみを定量し、前記の数式7にてQ2を全体量としQ3をジクロロイソシアヌル酸ナトリウムと安息香酸ナトリウムの合計量とし残りのQ1をドデカン二酸二ナトリウムと見なして各成分の含有量とした。
【0145】
(実施例30~35)
表5に記載した条件以外は実施例2と同様の方法で、コーティング層が2種類の化合物の混合物からなるコーティング層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。即ち、コーティング液の第1の成分として安息香酸ナトリウムと第2の成分としてセバシン酸二ナトリウム又はドデカン二酸二ナトリウムから成る混合液を用いて、コーティング層が安息香酸ナトリウムとセバシン酸二ナトリウム又は安息香酸ナトリウムとドデカン二酸二ナトリウムの混合物から成るコーティング層を有する固形漂白剤含有物を作製した。コーティング液の濃度(質量%)、作製したサンプルの水分含有量(質量%)、コーティング層の割合(質量%)は表5の通りであった。コーティング層の割合は実施例24~29の場合と同様にHPLCにより定量した。各サンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、110℃で1.5時間乾燥した後のサンプルを用いて、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表14の通りであった。
【0146】
(実施例36~37)
表6に記載した条件以外は実施例24~29と同様の方法で、コーティング層がさらに2つの層を含有するように、2種類の化合物を用いてコーティング層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。即ち、第一の工程としてコーティング層に安息香酸ナトリウムを用いてコーティング層を有する固形漂白剤含有物を作製し、第2の工程として第1の工程で作製したコーティング層を有する固形漂白剤含有物にさらにオクタン酸ナトリウム又はデカン酸ナトリウムを用いてさらにコーティング層を形成し、コーティング層がさらに安息香酸ナトリウムからなる内側の層と、オクタン酸ナトリウムまたはデカン酸ナトリウムからなる外側の層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。コーティング液の濃度(質量%)、作製したサンプルの水分含有量(質量%)、コーティング層の割合(質量%)は表6の通りであった。コーティング層の割合は実施例24~29の場合と同様にHPLCにより定量した。各サンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、110℃で1.5時間乾燥した後のサンプルを用いて、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表15の通りであった。
このように、芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩、非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩、炭素数が1乃至7の非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上の化合物以外の化合物であっても、本発明の効果を損なわない範囲でコーティング層に含めることができる。
【0147】
(実施例38~39)
表7に記載した条件以外は実施例30~35と同様の方法で、コーティング層が2種類の化合物の混合物からなるコーティング層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。即ち、コーティング液として安息香酸ナトリウムとオクタン酸ナトリウムの混合液又は安息香酸ナトリウムとデカン酸ナトリウムの混合液を用いて、コーティング層が安息香酸ナトリウムとオクタン酸ナトリウムの混合物又は安息香酸ナトリウムとデカン酸ナトリウムの混合物から成るコーティング層を有する固形漂白剤含有物を作製した。コーティング液の濃度(質量%)、作製したサンプルの水分含有量(質量%)、コーティング層の割合(質量%)は表7の通りであった。コーティング層の割合は実施例24~29の場合と同様にHPLCにより定量した。各サンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、110℃で1.5時間乾燥した後のサンプルを用いて、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表16の通りであった。
【0148】
(比較例1~8)
表8に記載した条件以外は実施例1又は実施例2と同様の方法で、コーティング層にラウリル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリン酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウムを用いてコーティング層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。加工の際の噴霧速度が速すぎる場合には粒子同士が凝集したり、装置内壁に固形漂白剤が固着したりする場合がある。そのような場合にはコーティング液の供給速度を遅くすることにより凝集や固着を回避することができる。凝集や固着した粒子はゴムヘラなどの柔らかい器具を用いて、粒子が破壊されないようにほぐしてもよい。コーティング液の濃度(質量%)、作製したサンプルの水分含有量(質量%)、コーティング層の割合(質量%)は表8の通りであった。各サンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、110℃で1.5時間乾燥した後のサンプルを用いて、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表17の通りであった。
【0149】
(比較例9)
流動状態のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムに、22質量%濃度になるように調節したミリスチン酸のエタノール溶液を噴霧し、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを濡らした点と、表9に記載した条件以外は実施例1と同様の方法でコーティング層にミリスチン酸を用いてコーティング層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。コーティング液の濃度(質量%)、コーティング層の割合(質量%)は表9の通りであった。溶媒に水を用いていないので、乾燥工程を設けず、水分含有量も測定しなかった。比較例9で作製したサンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表18の通りであった。
【0150】
(比較例10)
ラウリル硫酸ナトリウムが24質量%になるように溶解し、なおかつシリコーン系消泡剤(KM-89)が5質量%になるように分散させたコーティング液(コーティング材の濃度は合計で29質量%)を作製した。該コーティング液を噴霧し、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを濡らした点と、表9に記載した条件以外は実施例1と同様の方法でコーティング層がラウリル硫酸ナトリウムとシリコーン系消泡剤の混合物からなる固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。コーティング液の濃度(質量%)、作製したサンプルの水分含有量(質量%)、コーティング層の割合(質量%)は表9の通りであった。比較例10で作製したサンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、110℃で1.5時間乾燥した後のサンプルを用いて、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表18の通りであった。
【0151】
(比較例11)
70gのジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを加工装置「DPZ-01」(アズワン(株)製)に投入し、回転パンの回転数を40rpmに、仰角を45°に、ヒーター温度をHiに設定し、加熱しながらジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを流動状態に維持した。流動状態のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムに温度計を差込み、温度計が68℃を表示した時点で、ヒーターの電源をOFFにして、68℃に加熱したパラフィンワックス(融点58~60℃)12gをピペットにて流動状態のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムに振り掛けるように約30秒かけて滴下した。適下開始から、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの流動部分にゴムヘラを差し込んで邪魔板の役割をさせ混合を促進させた。滴下終了から約30秒間攪拌を継続した後に、46℃に加温した18gの微細ゼオライトを加えて約20秒間混合した。ヘアドライヤーで加温しない空気を送風し、サンプルを冷却した。流動状態のサンプルに温度計を差込み、40℃以下まで冷却し、98gのサンプルを得た。コーティング層の割合(質量%)は表9の通りであった。溶媒に水を用いていないので、乾燥工程を設けず、水分含有量も測定しなかった。比較例11で作製したサンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表18の通りであった。
【0152】
(比較例12)
固形漂白剤として61gのジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを用い、コーティング層として13gのステアリルアルコール(融点59℃)と、26gの微細ゼオライトを用いて、比較例11と同様の方法で95gのサンプルを作製した。コーティング層の割合(質量%)は表9の通りであった。溶媒に水を用いていないので、乾燥工程を設けず、水分含有量も測定しなかった。比較例12で作製したサンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表18の通りであった。
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
(実施例40~42)
表19に記載した条件以外は実施例1と同様の方法で、固形漂白剤としてハロゲン化ヒダントイン混合物、ペルオキシ硫酸・硫酸・五カリウム塩、トリクロロイソシアヌル酸を用いて、実施例1と同様の方法でコーティング層に安息香酸ナトリウムを用いてコーティング層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。コーティング液の濃度(質量%)、作製したサンプルの水分含有量(質量%)、コーティング層の割合(質量%)は表19の通りであった。110℃で1.5時間乾燥した各サンプルについて実施例1及び実施例2の場合と同様に、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表20の通りであった。なお、実施例41の安定性試験1については、有効塩素保持率の代わりに有効酸素保持率を算出した。また、実施例40及び42の溶解性試験については、0.2質量%での試験のみ行った。いずれの実施例においても、固形漂白剤の種類は異なるものの、コーティング層の化合物は実施例1と同じであり、コーティング層の割合(質量%)も実施例1の場合以下であるので、5質量%での溶解性試験においてもコーティング層に由来する残渣が生じないのは明らかであるため、溶解性について○と判定した。なお、ハロゲン化ヒダントイン混合物とトリクロロイソシアヌル酸は、溶解度が100gの水に対してそれぞれ、0.54g、1.2gであるが、このような水への溶解度が低い固形漂白剤であっても使用することができる。
【0172】
【0173】
【0174】
(実施例43~45)
固形漂白剤として過炭酸ナトリウムを用いて、表21に記載した条件及びヒーター温度の設定をOFFにして加熱しなかったこと及びスプレー終了後にサンプルを40℃のオーブン内で1時間静置したこと以外は、実施例1と同様の方法でコーティング層にオルト-フタル酸二ナトリウム、安息香酸ナトリウム、1-ナフトエ酸ナトリウムを用いてコーティング層を有する固形漂白剤含有物のサンプルを作製した。コーティング液の濃度(質量%)は表21の通りであった。実施例43~45におけるコーティング層の割合は吸光度法により測定した。即ち、オルト-フタル酸二ナトリウム、安息香酸ナトリウム、1-ナフトエ酸ナトリウムのそれぞれについて所定の濃度に溶解した水溶液を用いて280nmの吸光度により検量線を作成した。作成した検量線を用い、実施例43~45で作製したコーティング層を有する固形漂白剤含有物を水に溶解し、水溶液中のオルト-フタル酸二ナトリウム、安息香酸ナトリウム、1-ナフトエ酸ナトリウムを定量することにより求めた。以下、定量方法をより詳細に説明する。
【0175】
オルト-フタル酸二ナトリウム水溶液を0.662(g/L)、0.331(g/L)、0.166(g/L)、0.0828(g/L)になるように調製した。各水溶液を大きさが12.4mm×12.4mm×45mm(光路長10mm)の石英製のセルに入れ、紫外可視分光光度計UV-1800((株)島津製作所製)のセルホルダにセットした。蒸留水をバックグラウンドとして280nmの吸光度を測定したところ、それぞれ1.85、0.956、0.490、0.252であったことから、オルト-フタル酸二ナトリウムの濃度と吸光度の関係は、濃度(g/L)=0.3624×吸光度-0.0114であった。次に、実施例43で作製したコーティング層を有する固形漂白剤含有物を1.088(g/L)になるように溶解し、有効酸素含有量が同じになるように調整した過炭酸ナトリウム(PC-2)の水溶液をバックグラウンドとして同じく吸光度を測定したところ、0.881であったことからオルト-フタル酸二ナトリウムは0.308(g/L)であることが判った。つまり、1.088g中の0.308gがコーティング層に用いたオルト-フタル酸二ナトリウムであり、前記の数式6よりコーティング層の割合は28質量%と求められた。
【0176】
同様の方法で安息香酸ナトリウム水溶液を0.582(g/L)、0.291(g/L)、0.146(g/L)、0.0728(g/L)の濃度になるように調製し、280nmの吸光度を測定した所、それぞれ0.889、0.463、0.238、0.122であったことから、安息香酸ナトリウムの濃度と吸光度の関係は、濃度(g/L)=0.6655×吸光度-0.012であった。実施例44で作製したサンプルを1.112(g/L)になるように溶解し、有効酸素含有量が同じになるように調整した過炭酸ナトリウム(PC-2)の水溶液をバックグラウンドとして同じく吸光度を測定したところ、0.481であったことから安息香酸ナトリウムは0.308(g/L)であることが判った。つまり、1.112g中の0.308gがコーティング層に用いた安息香酸ナトリウムであり、前記の数式6よりコーティング層の割合は28質量%と求められた。
【0177】
同様の方法で1-ナフトエ酸ナトリウムの水溶液を0.0504(g/L)、0.0252(g/L)、0.0126(g/L)、0.00630(g/L)、0.00315(g/L)の濃度になるように調製し、280nmの吸光度を測定した所、それぞれ1.54、0.773、0.387、0.194、0.0980であったことから、1-ナフトエ酸ナトリウムの濃度と吸光度の関係は、濃度(質量%)=0.0327×吸光度-0.000006であった。実施例45で作製したサンプルを0.1098(g/L)になるように水に溶解した際の吸光度は0.844であったことから1-ナフトエ酸ナトリウムは0.0279g/Lであることが判った。数式6よりコーティング層の割合は25質量%と求められた。
【0178】
実施例43~45で作製したサンプルについて、実施例1及び実施例2の場合と同様に、安定性試験1、起泡性試験、溶解性試験を行った。結果は表22の通りであった。なお、実施例43~45の安定性試験1については、有効塩素保持率の代わりに有効酸素保持率を算出した。
【0179】
【0180】
【0181】
安定性試験2(長期保管試験)
(実施例46~55)
ステンレス製のビーカーに蒸留水5gと炭酸カリウム3gを入れ、炭酸カリウムを溶解した。次に前記ビーカーを湯せんにより加熱しながら水溶液を攪拌し、液温が80℃に達した時点でメタケイ酸ナトリウム・五水和物50g、ニトリロ三酢酸三ナトリウム・一水和物30g、オレフィン-無水マレイン酸ナトリウム共重合体を1g、硫酸ナトリウム10.5gを入れて攪拌を続けた。その後、スラリー状になった組成物を攪拌しながら湯せんの温度を65℃に降温し、メタケイ酸ナトリウムを0.5g入れ30分間攪拌した後冷却し、ペースト状の洗浄剤組成物を得た。次に、実施例2、3、5、6、7、13、14、20、21及び22で作製したコーティング層を有する固形漂白剤含有物とコーティングをしていないジクロロイソシアヌル酸ナトリウムをそれぞれ0.10~0.13gの範囲で正確に計量し、質量を小数点以下4桁まで記録し、上部が開放されている円柱状のポリプロピレン製のカップ(内径25mm、高さ22mm)に入れ、60℃に加熱した前記ペースト状の洗浄剤組成物を2.5~3.5gの範囲で正確に計量し質量を少数点以下3桁まで記録し、固形漂白剤含有物又はジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの上に重ねるように加え、固形漂白剤含有物又は固形漂白剤を含有する洗浄剤組成物を作製した。前記の固形漂白剤含有物又は固形漂白剤を含有する洗浄剤組成物を入れたカップを樹脂製のバットに並べて、バット全体を厚さ0.1mmの低密度ポリエチレン製の袋に入れ、袋の開口部をヒートシールにより密閉し、温度が40℃で相対湿度(RH)が75%に維持された恒温恒湿機内で1ヶ月間保管した。1ヵ月後にカップ内の固形漂白剤含有物又は固形漂白剤を含有する洗浄剤組成物全量を約100mlの蒸留水に溶解し、安定性試験1の場合と同様に有効塩素含有量から有効塩素保持率を評価した。
【0182】
コーティング前のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを用いた場合は1ヵ月後の有効塩素が検出されず、有効塩素保持率は0%であった。実施例2、3、5、6、7、13、14、20、21及び22で作製したコーティング層を有する固形漂白剤含有物の有効塩素保持率は表23の通りであり、長期間の保管後でも高い有効塩素保持率を有していた。なお、安定性試験2においては、基準となるコーティング前のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの有効塩素保持率が0%であるため、各サンプルの有効塩素保持率がコーティング前のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムより低い有効塩素保持率となることはない。そのため、安定性試験1の場合とは評価基準が異なり、有効塩素保持率が5%未満の場合は安定性の改善効果がほとんど認められないため不合格として×、有効塩素保持率が5%以上の場合を、安定性の改善効果が認められるので合格として○、有効塩素保持率が70%以上の場合を合格の中でも特に優れるとして◎と評価した。
【0183】
【0184】
(実施例56~63)
実施例46~55と同様の方法で、実施例25、28、36、37で作製したコーティング層を有する固形漂白剤含有物について、及び実施例31、35、38、39で作製したコーティング層を有する固形漂白剤含有物について安定性試験2を行った。結果は表24及び25の通りであった。
【0185】
【0186】
【0187】
(比較例13~16)
実施例56~63と同様の方法で、比較例3、7、8、11で作製したコーティング層を有する固形漂白剤含有物について、安定性試験2を行った。結果は表26の通りであった。比較例13(比較例3で作製した固形漂白剤含有物を使用)と比較例16(比較例11で作製した固形漂白剤含有物を使用)では安定性試験2でも有効塩素保持率がそれぞれ1%、2%であり、安定性試験1での場合より安定性が低い結果となった。比較例14(比較例7で作製した固形漂白剤含有物を使用)と比較例15(比較例8で作製した固形漂白剤含有物を使用)では安定性試験2でも安定性試験1の場合と同様に有効塩素保持率の改善は認められなかった。安定性試験2の結果からも、本発明のコーティング層を有する固形漂白剤含有物は顕著な効果を有することが判った。
【0188】
【0189】
安定性試験3(摩損試験)
(実施例64~72)
実施例1、25、28、31、35、36、37、38、39で作製したコーティング層を有する固形漂白剤含有物に物理的な衝撃を加えた場合の安定性を評価するために、錠剤摩損度試験器(富山産業(株)製)を用いて摩損試験を行った。前記の錠剤摩損度試験器は内径約286mm、深さ約38mmのプラスチック製のドラム容器と、ドラム容器を垂直方向に回転する電動部とで構成されている。ドラム容器内部には、ドラム容器が1回転する度に容器内の試験サンプルを高さ約157mmまで持ち上げては落下するように仕切り板が設けられている。このような錠剤摩損度試験機は容易に入手可能であり、錠剤摩損度試験器については第17改正日本薬局方の参考情報を参照することができる。
【0190】
コーティング層を有する固形漂白剤含有物5gと直径約5mmの球状のガラスビーズ5gを錠剤摩損度試験器のドラム容器に入れ、ドラム容器を電動機で垂直方向に1分間に25回転の回転速度で1000回転した。1000回転終了後にコーティング層を有する固形漂白剤含有物からガラスビーズを取り除き、温度が40℃で相対湿度が75%RHの恒温恒湿機内での保管期間を3ヶ月としたこと以外は前記の安定性試験2と同様の方法で安定性を評価した。有効塩素保持率が5%未満の場合は安定性の改善効果がほとんど認められないため不合格として×、有効塩素保持率が5%以上10%未満の場合を、安定性の改善効果が認められるので合格として○、有効塩素保持率が10%以上の場合を合格の中でも特に優れるとして◎と評価した。結果は表27の通りであった。回転するドラム内でガラスビーズとの衝突によりコーティング層を有する固形漂白剤含有物が衝撃を受けた後でも、高い安定性を維持していることが判った。
【0191】
(比較例17)
比較例1と同じ条件で作製したコーティング層がラウリル硫酸ナトリウムからなる固形漂白剤含有物について、実施例64~72と同様の方法で安定性試験3を行った。結果は表27の通りであった。比較例1で作製したサンプルは回転するドラム内でガラスビーズとの衝突によりコーティング層を有する固形漂白剤含有物が衝撃を受けて摩損して有効塩素保持率を維持することができないと考えられた。
【0192】
【0193】
安定性試験4(攪拌保管試験)
(実施例73)
蓋付きのポリプロピレン製の樹脂容器(容量120ml、底面内径52mm)に蒸留水21g、水酸化ナトリウム13g、メタケイ酸ナトリウム・九水和物5g、ニトリロ三酢酸三ナトリウム・一水和物20g、ジイソブチレン-マレイン酸共重合体1g、炭酸ナトリウム10g、水酸化ナトリウム30g、実施例1で作製した固形漂白剤含有物2gをこの順番で加え、湯浴中で樹脂容器の内部が40℃になるように加熱しながらテフロン製の攪拌翼(攪拌翼径40mm)を用いて300rpmの回転数で2時間攪拌し、洗浄剤組成物を作製した。攪拌後の洗浄剤組成物の全量を3Lの蒸留水に溶解し、有効塩素含有量を評価した。また、同じ手順で別途作製した攪拌後の混合物が入った容器の蓋を密閉し、室温で2週間静置し、同様に2週間後の有効塩素含有量を評価した。投入量から算出した理論上の有効塩素含有量を基準として、攪拌後の安定性を評価した。結果は表28の通りであった。洗浄剤組成物の中で2時間攪拌した後も、投入した塩素剤の60%以上の有効塩素保持率を有し、さらに2週間後においても有効塩素含有量は低下しなかった。
【0194】
(比較例18)
実施例73と同様の方法でコーティング層を有する固形漂白剤含有物の代わりに固形漂白剤としてジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(コーティング層無し)用いて洗浄剤配合物を作製し、安定性試験4を行った。結果は表28の通りであった。2時間攪拌後の時点で有効塩素は検出されなかった。
【0195】
【0196】
漂白試験
(実施例74)
実施例73で作製したコーティング層を有する固形漂白剤含有物を配合した洗浄剤組成物を0.2質量%になるように蒸留水に溶解して洗浄剤水溶液を作製し、pH、有効塩素濃度(mg/L)を測定した。結果は表29の通りであった。さらに、この洗浄剤水溶液770mlを1L容量のビーカーに入れ、5cm×5cmの紅茶で染色した綿布(STC EMPA 167 日本資材(株)製)を布面積の半分が浸かるように浸漬し、30分間23℃で静置した。30分後に取り出した綿布を常温で乾燥させた後、白色度計(デジタル白色度計TC-6D、(有)東京電色製)を用いて洗浄剤水溶液に浸かっていた部分の白色度と浸かっていない部分の白色度それぞれについて白色度を評価した。結果は表29の通りであった。洗浄剤水溶液に浸かっていた部分の白色度は洗浄剤水溶液による漂白効果を反映しており、浸かっていない部分の白色度は元々の綿布の色を反映しているため、それぞれの部分の白色度の差が大きいほど洗浄剤水溶液が高い漂白効果を示していると考えることができる。実施例73で作製した洗浄剤組成物の水溶液は特に高い漂白力を有していた。なお、白色度は数値が大きいほど対象物の色が白色に近いことを意味する。白色度については、JIS Z 8715(日本工業規格「色の表示方法 白色度」)やJIS Z 8722(日本工業規格「色の測定方法 反射及び透過物体色」)を参照してもよいし、試験に供する綿布も染色方法や材質の異なるものを適宜選択して用いてもよい。また、白色度計が使用できない場合には目視で白さを評価してもよい。
【0197】
(比較例19~22)
実施例74と同様の方法で、比較例18で作製した洗浄剤組成物を0.2質量%になるように蒸留水に溶解した洗浄剤水溶液(比較例19)、固形漂白剤を加えなかったこと以外は比較例18と同じ方法で作製した洗浄剤組成物の0.2質量%水溶液(比較例20)、固形漂白剤としてジクロロイソシアヌル酸ナトリウムのみを溶かした水溶液(有効塩素濃度を実施例74と同じに調整したもの)(比較例21)、蒸留水のみ(比較例22)の4種類の場合について綿布の白色度を評価した。結果は表29の通りであった。比較例18で作製した洗浄剤組成物から作製した洗浄剤水溶液は有効塩素が検出されなかったため混合時に固形漂白剤(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム)が失活したものと考えられた。また、固形漂白剤を加えないで作製した洗浄剤組成物(比較例20)と比較例18で作製した洗浄剤組成物(比較例19)の漂白効果は同程度であったことから、固形漂白剤を配合しても洗浄剤組成物中で固形漂白剤が失活した場合には漂白効果に寄与しないと考えられた。
【0198】
【0199】
このように、本発明のコーティング層を有する固形漂白剤含有物を用いて作製した洗浄剤組成物は攪拌混合の後も有効塩素を保持することができるので、有効塩素がその他の洗浄剤組成物の成分と相乗的に作用することができるため、固形漂白剤を含まない洗浄剤組成物のみの場合や、同じ有効塩素濃度に調節した漂白剤のみの場合のいずれと比較した場合よりも高い漂白効果を有するものと考えられた。
【0200】
これらの結果より、本発明のコーティング層を有する固形漂白剤含有物は、洗浄剤成分と配合して洗浄剤組成物とした場合も良好な安定性を示し、洗浄、漂白、殺菌の効果を保持できる。また、本発明の固形漂白剤含有物は、起泡や残渣が極めて少ない又は生じないという効果を有するため、幅広い用途に用いることができる。水への溶解性が高く残渣が極めて少ない又は生じないという効果を有しつつも水の存在する洗浄剤組成物中でも長期間に渡って良好な安定性を示す点は特に顕著な効果である。また、予め物理的な衝撃を与えたり、前記の洗浄剤組成物として攪拌や混合など工程を経た後も本発明の固形漂白剤含有物は高い安定性を維持した点は特に顕著な効果である。これらの効果は固形漂白剤含有物のコーティング層が固形漂白剤とその他の成分との反応を抑制し、固形漂白剤を保護し、かつ起泡や残渣の要因とならないことに起因すると考えられる。
【0201】
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2016年4月22日出願の日本特許出願(特願2016-086619)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明により提供されるコーティング層を有する固形漂白剤含有物は、漂白剤の劣化、失活、分解を引き起こす要因から保護され、洗浄剤成分として使用される多様な化合物を配合して洗浄剤組成物とした場合でも安定性が改善されるとともに、起泡や残渣を生じないという効果を有する。これにより、台所、浴室、洗面所、トイレ等の排水管や貯水部の洗浄、あるいは食器、調理器具などの漂白、殺菌、洗浄や、衣類等の洗濯、風呂やプールなどの生活用水の維持管理などの分野で好適に用いられる。