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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】機械加工方法及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4097 20060101AFI20241022BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20241022BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20241022BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G05B19/4097 C
G05B19/4093 A
B23Q17/22 A
B23Q17/20 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020070976
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021168031
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲行
(72)【発明者】
【氏名】土屋 恵児
(72)【発明者】
【氏名】富所 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】西上 和宏
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-095879(JP,A)
【文献】特開昭62-152665(JP,A)
【文献】特開2005-004254(JP,A)
【文献】特開平9-292906(JP,A)
【文献】特開2006-252432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 17/00 - 23/00
B24B 49/00 - 49/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CADデータを利用してワークの数値制御加工を実行する機械加工方法であって、
前記CADデータを利用して前記ワークの被加工面の測定経路を生成する測定経路生成工程と、
前記測定経路生成工程で生成された前記測定経路に沿って前記被加工面の形状を測定して点群データを取得する測定工程と、
前記測定工程で取得された前記点群データから前記被加工面の3次元の地図状の画像として表示される形状データを生成するMAP形状生成工程と、
前記MAP形状生成工程で生成された前記形状データに基づいて加工経路を演算して加工プログラムを生成するパス生成工程と、
前記加工プログラムに基づいて前記ワークを加工する加工工程と、を具備し、
前記ワークは、前記被加工面に設計上の凹部領域が形成されており、
前記測定経路生成工程では、前記凹部領域を測定不要領域として前記凹部領域の測定を行わないよう前記測定経路が生成され、
前記加工プログラムは、加工が不要な領域の加工をパスできるようにしたことを特徴とする機械加工方法。
【請求項2】
前記加工工程を実行した後、前記測定工程、前記MAP形状生成工程、前記パス生成工程及び前記加工工程をこの順番で繰り返して実行することを特徴とする請求項1に記載の機械加工方法。
【請求項3】
前記加工工程を実行した後、前記測定工程及び前記MAP形状生成工程を再度実行してから前記MAP形状生成工程で生成された前記形状データに基づいて前記ワークの加工を終了するか否かを判定する確認工程を実行し、
前記確認工程で加工を継続すると判定したら、前記パス生成工程及び前記加工工程を再度実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機械加工方法。
【請求項4】
ワークを支持するワーク支持手段と、
前記ワークを加工する工具を支持する工具支持手段と、
前記ワークと前記工具が相対移動するよう前記ワーク支持手段または前記工具支持手段を移動させる送り手段と、
測定経路に沿って前記ワークの被加工面の形状を測定して点群データを取得する検出手段と、
加工プログラムに基づいて前記送り手段を制御して前記ワークの加工を実行する数値制御手段と、
前記数値制御手段に接続されて加工のための情報を送受信する電子計算機と、を具備し、
前記ワークは、前記被加工面に設計上の凹部領域が形成されており、
前記電子計算機は、
CADデータを利用して前記凹部領域を測定不要領域として前記凹部領域の測定を行わないよう前記測定経路を生成し、
前記点群データから前記被加工面の3次元の地図状の画像として表示される形状データを生成し、
加工が不要な領域の加工をパスできるよう前記形状データに基づいて加工経路を演算して前記加工プログラムを生成することを特徴とする工作機械。
【請求項5】
前記形状データを画像として表示する映像表示手段を有することを特徴とする請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記工具は、研削といしであり、
前記工具支持手段は、前記研削といしを回転させる駆動手段を有し、
前記送り手段は、前記ワーク支持手段または前記工具支持手段を3軸方向に送り、前記被加工面を研削することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工方法及び工作機械に関し、特に、ワークの被加工面を研削等によりCADデータ形状に加工する機械加工方法及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに対し平面を加工する技術として、例えば、特許文献1に開示されたワークの処理方法及び処理装置が知られている。この処理方法では、チャックテーブルの上面に載置された非変形状態のワークの表面の複数個所の位置を測定し、次いで、ワークをチャックテーブルの上面に沿うように変形させて、その変形状態で表面の位置を測定する。
【0003】
その後、前後の測定データを比較して、非変形状態における測定によって検出された表面の形状とは反転した形状の仮想面をスプライン補間によって設定する。そして、ワークをチャックテーブルの上面に沿うように変形させた状態において、仮想面に従う面形状がワークの測定された側面に出現するように、表面を切削する。
【0004】
また例えば、特許文献2には、加工装置によるワークの加工に先立って、計測装置により被加工部を計測する工作機械が開示されている。この工作機械では、計測装置による計測結果を基準データとして目標加工量を設定する。設定された目標加工量に基づいて被加工部に対する第1加工量を設定し、設定された第1加工量が得られるように、被加工部に第1加工を施す。
【0005】
その後、計測装置により加工済み部分を計測し、その計測結果に基づいて、目標加工量が得られるように加工済み部分に対する第2加工量を設定し、その第2加工量が得られるように、加工装置の動作を制御して被加工部に第2加工を施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-200693号公報
【文献】特開2012-61578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来技術による機械加工方法及び工作機械では、高精度な加工を高効率に実行するために改善すべき点があった。
【0008】
例えば、特許文献1に開示されたワークの処理方法では、非変形状態及び変形状態におけるワークの表面を測定して仮想面を設定し、その仮想面が形成されるようワークを切削する。これにより、湾曲している板状のワークに対して、加工負荷によるワークの移動や変形を回避することができるとされている。
【0009】
しかしながら、同文献に開示されたワークの処理方法では、ワークの被加工面の凹凸や設計形状に対応した加工の効率化が考慮されておらず、予め定義された加工領域の全体について測定及び加工が行われる。そのため、測定や加工が不要な領域についても各工程が行われることになり、加工時間を短縮して加工効率を改善する余地があった。
【0010】
また、特許文献2に開示された工作機械では、ダミーワークに対する被加工部の計測や加工を行う必要がなく、ワークの被加工部に対して直接的に計測や加工を施すことができるとされている。
【0011】
しかしながら、同文献に開示された工作機械は、予め定められた加工領域の全体について計測及び加工を行う構成であり、ワークに形成された設計形状としての穴部や、被加工面の凹凸に対応して加工領域を変化させることが難しかった。そのため、計測や加工が不要な領域において、不必要な測定や加工動作が実行されるという改善すべき点があった。
【0012】
また、従来技術の機械加工方法及び工作機械では、加工データの入力や測定プログラムの設定等が容易ではなく、作業者の負担も大きかった。そのため、生産性を向上させるために、作業者の負担を減らし、作業効率を高めることが望まれていた。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高精度な加工が可能であり、加工効率を向上させることができる機械加工方法及び工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の機械加工方法は、CADデータを利用してワークの数値制御加工を実行する機械加工方法であって、前記CADデータを利用して前記ワークの被加工面の測定経路を生成する測定経路生成工程と、前記測定経路生成工程で生成された前記測定経路に沿って前記被加工面の形状を測定して点群データを取得する測定工程と、前記測定工程で取得された前記点群データから前記被加工面の3次元の地図状の画像として表示される形状データを生成するMAP形状生成工程と、前記MAP形状生成工程で生成された前記形状データに基づいて加工経路を演算して加工プログラムを生成するパス生成工程と、前記加工プログラムに基づいて前記ワークを加工する加工工程と、を具備し、前記ワークは、前記被加工面に設計上の凹部領域が形成されており、前記測定経路生成工程では、前記凹部領域を測定不要領域として前記凹部領域の測定を行わないよう前記測定経路が生成され、前記加工プログラムは、加工が不要な領域の加工をパスできるようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の工作機械は、ワークを支持するワーク支持手段と、前記ワークを加工する工具を支持する工具支持手段と、前記ワークと前記工具が相対移動するよう前記ワーク支持手段または前記工具支持手段を移動させる送り手段と、測定経路に沿って前記ワークの被加工面の形状を測定して点群データを取得する検出手段と、加工プログラムに基づいて前記送り手段を制御して前記ワークの加工を実行する数値制御手段と、前記数値制御手段に接続されて加工のための情報を送受信する電子計算機と、を具備し、前記ワークは、前記被加工面に設計上の凹部領域が形成されており、前記電子計算機は、CADデータを利用して前記凹部領域を測定不要領域として前記凹部領域の測定を行わないよう前記測定経路を生成し、前記点群データから前記被加工面の3次元の地図状の画像として表示される形状データを生成し、加工が不要な領域の加工をパスできるよう前記形状データに基づいて加工経路を演算して前記加工プログラムを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の機械加工方法によれば、測定経路生成工程において、CADデータを利用してワークの被加工面の測定経路を生成し、次いで実行する測定工程では、経路生成工程で生成された測定経路に沿ってワークの被加工面の形状を測定して点群データを取得する。このような方法により、点群データを取得する必要がない領域については計測を省略して、点群データの取得が必要な領域についてのみ測定を行うことができる。よって、不必要な計測を行わない高効率な測定工程を実行することができる。
【0017】
また、MAP形状生成工程では、測定工程で取得された点群データから被加工面の形状データを生成し、パス生成工程においては、MAP形状生成工程で生成された形状データに基づいて加工経路を演算して加工プログラムを生成し、次いで実行する加工工程では、パス生成工程で生成された加工プログラムに基づいてワークを加工する。
【0018】
そして、前記加工プログラムは、加工が不要な領域の加工をパスできるように生成されている。即ち、加工が不要な領域については、ワークとそれを加工する工具とを高速度で相対移動させることができる。よって、加工工程に要する時間を大幅に短縮することができ、加工の高効率化を図ることができる。
【0019】
例えば、ワークの被加工面に設計上の凹部や穴等が形成されており、研削、切削または研磨等の加工が不要な領域が存在する場合には、その研削が不要な領域の加工をパスすることができる。
【0020】
また例えば、被加工面に僅かな凹凸があり、その凹凸を高精度なCADデータ形状に加工するために、先ずは凸部のみについて研削等の加工が必要である場合には、研削等が不要な凹部等の加工をパスするとができる。これにより、加工工程の時間を大幅に短縮して、加工が必要な凸部の領域のみを効率的に加工することができ、高精度な表面加工を短時間で効率良く実行することができる。
【0021】
また、本発明の機械加工方法によれば、前記加工工程を実行した後、前記測定工程、前記MAP形状生成工程、前記パス生成工程及び前記加工工程をこの順番で繰り返して実行しても良い。これにより、凹凸のある被加工面について、加工が必要な凸部の領域のみを効率良く順次加工して、全体として高精度なCADデータ形状を効率良く仕上げることができる。
【0022】
また、本発明の機械加工方法によれば、前記加工工程を実行した後、前記測定工程及び前記MAP形状生成工程を再度実行してから前記MAP形状生成工程で生成された前記形状データに基づいて前記ワークの加工を終了するか否かを判定する確認工程を実行し、前記確認工程で加工を継続すると判定したら、前記パス生成工程及び前記加工工程を再度実行しても良い。これにより、高効率な加工を実行しながら、被加工面が最終的に高精度に仕上げられたことを確認して加工を完了することができる。
【0023】
また、本発明の工作機械によれば、電子計算機は、CADデータを利用してワークの被加工面の形状を測定する測定経路を生成し、その測定経路に沿って測定する検出手段によって取得された点群データから被加工面の形状データを生成し、加工が不要な領域の加工をパスできるよう形状データに基づいて加工経路を演算して加工プログラムを生成する。このような構成により、不必要な測定や加工を減らし、ワークの被加工面の測定及び加工を高精度に効率良く実行することができる。
【0024】
また、本発明の工作機械によれば、前記形状データを画像として表示する映像表示手段を有しても良い。このような映像表示手段を介して、作業者は、視覚を通じてワークの加工状況を正確に把握することができる。よって、ミスの少ない正確な加工工程により、高精度且つ高効率な加工を実行することができる。
【0025】
また、本発明の工作機械によれば、前記工具は、研削といしであり、前記工具支持手段は、前記研削といしを回転させる駆動手段を有し、前記送り手段は、前記ワーク支持手段または前記工具支持手段を3軸方向に送り、前記被加工面を研削しても良い。このような構成により、高精度且つ高効率な研削加工が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る工作機械を前方斜め上から見た透視図である。
図2】本発明の実施形態に係る工作機械の研削といし及びテーブルの近傍を示す透視図である。
図3】本発明の実施形態に係る工作機械による加工の工程を示すフロー図である。
図4】本発明の実施形態に係る工作機械の測定経路の画像を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る工作機械のMAP形状の画像を説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係る工作機械の加工経路の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る機械加工方法及び工作機械を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る工作機械1を前方斜め上から見た透視図である。
【0028】
図1に示すように、工作機械1は、ワークWの被加工面を研削するCNC(Computerized Numerical Control)研削盤2と、CNC研削盤2の自動数値制御を行う操作盤3と、自動数値制御に用いる加工プログラムを生成する電子計算機4と、を有する。
【0029】
CNC研削盤2は、ワークWを研削する工具としての研削といし10と、ワークWを支持するワーク支持手段としてのテーブル12と、を有し、研削といし10によってワークWの被加工面である表面を略CADデータ形状に研削する。
CNC研削盤2は、例えば、ワークWの上面を平面研削するCNC平面研削盤でも良いし、複雑形状の研削が可能なCNC成形研削盤またはその他形式の研削盤であっても良い。
【0030】
テーブル12は、正面から見て左右方向水平(以下、適宜「X方向」と言う。)に往復動自在に構成されている。研削といし10は、上下方向(以下、適宜「Y方向」と言う。)に往復動自在な工具支持手段としてのといし軸頭15によって支持されている。また、研削といし10を支持するといし軸頭15は、前後方向水平(以下、適宜「Z方向」と言う。)に往復動自在に構成されたコラム13に支持されている。
【0031】
研削といし10を支持するといし軸頭15及びワークWを支持するテーブル12は、操作盤3に設けられた数値制御手段によって数値制御される図示しない送り手段によって送られて、それぞれ前述の方向に往復移動する。
【0032】
研削といし10及びテーブル12が配置された研削加工領域は、ハウジング14によって覆われている。ハウジング14の略中央前面及び上面は、作業者がワークWのセット及び取り外し等を行うために開口しており、該開口には、開閉自在な扉17が設けられている。
【0033】
CNC研削盤2は、ワークWの被加工面の形状を測定して点群データを取得する検出手段としての検出センサ21を備えている。
【0034】
CNC研削盤2の本体には、作業者がティーチング作業を行うための図示しない操作ボタンや、テーブル12等の位置を調節するための図示しない手動パルスハンドル等が設けられていても良い。
【0035】
ハウジング14の前方には、といし軸頭15及びテーブル12を移動させる送り手段を制御してワークWの加工を実行する数値制御手段及びその操作手段である操作盤3が設けられている。
【0036】
操作盤3には、作業者が各種加工情報を入力するための操作手段が設けられている。図示を省略するが、例えば、操作盤3には、数値制御手段の操作手段として、作業者がワークWの検出動作や研削加工の開始の指示を入力するスタートボタン、一時的に停止させる指示を入力する一時停止ボタン、及び全停止させる指示を入力する非常停止ボタン等が配置されても良い。
【0037】
工作機械1は、作業者がスタートボタンを押下して開始の指示を入力する、という簡単な操作のみで、テーブル12にセットされたワークWを自動で検出し、研削加工を自動で開始するよう構成されても良い。
【0038】
また、操作盤3には、各種加工条件等を表示する表示部26が設けられている。表示部26は、後述するワークWの形状データ33(図5参照)を画像として表示する映像表示手段であり、例えば、ディスプレイ等である。
【0039】
また、表示部26には、例えば、ワークWの取り代や仕上がり面の設定、研削終了までに要する予想時間、研削といし10の現在位置、及び現在行われている工程等が表示されても良い。これにより、作業者は表示部26によって研削加工の状況等を確認することができる。
【0040】
また例えば、表示部26はタッチパネル等から構成されても良く、操作手段としてのスタートボタン及び一時停止ボタンは、表示部26にタッチ入力可能なアイコン等として表示されても良い。これにより、スタートボタン及び一時停止ボタンを表示部26と一体化してコンパクトにまとめることができる。
【0041】
また、表示部26がタッチパネル等である場合において、表示部26は、作業者が表示部26に触れて操作することにより、表示部26に表示されている取り代や仕上がり面の設定値等を変更できるよう構成されても良い。これにより、作業者は、簡単な操作で基本的な加工条件等を設定することができる。
【0042】
工作機械1は、操作盤3に接続されて加工のための各種情報を送受信する操作端末としての電子計算機4を有する。電子計算機4は、例えば、作業者が持ち運び可能に形成されたパーソナルコンピュータ、タブレット端末、その他携帯型の専用操作機等であっても良い。
【0043】
電子計算機4は、情報通信可能に操作盤3に接続されている。情報通信の形式は、配線によって接続された有線通信形式でも良いし、配線を使用しない無線通信形式でも良い。また、有線通信形式の場合、電子計算機4と操作盤3との配線接続は、切り離し自在であっても良い。また、操作盤3と電子計算機4は、共通のハウジング内に形成され、一体的に構成されていても良い。
【0044】
電子計算機4は、作業者が情報入力操作を行う操作部27と、加工情報や操作情報を表示する表示部28と、を有する。操作部27は、例えば、キーボードやタッチパネル等である。作業者は、電子計算機4を操作することにより、ワークWの加工に関する各種設定値等を工作機械1に入力することができる。
【0045】
表示部28は、液晶パネル等からなるパーソナルコンピュータ用のモニター、ディスプレイ、タッチパネル等である。電子計算機4の表示部28は、形状データ33を画像として表示する映像表示手段として利用されても良い。
【0046】
図2は、CNC研削盤2の研削といし10及びテーブル12の近傍を前方右上から見た斜視図である。
図2に示すように、CNC研削盤2は、Z方向に延在する図示しないといし軸を有するといし軸頭15を備え、前記といし軸の先端近傍には、研削といし10が設けられている。
【0047】
研削といし10は、略円板状に形成されている。CNC研削盤2は、研削といし10を回転させる、例えば、モータ等の図示しない駆動手段を有する。研削といし10が回転しながらワークWの表面と接することにより、ワークWの表面が研削される。
【0048】
また、研削といし10は、下方が開口するといしカバー16によって覆われている。前述の通り、研削といし10は、Y方向及びZ方向に移動するといし軸頭15に支持されている。よって、研削といし10は、といし軸頭15と連動して、テーブル12に対してY方向及びZ方向に相対移動する。
【0049】
研削といし10の下方には、ワークWを載置するための支持手段となるテーブル12が設けられている。テーブル12は、例えば、電磁石等を内部に備える電磁チャック等であり、磁力によって、載置されたワークWを移動しないように支持することができる。
【0050】
また、前述の通り、テーブル12は、送り方向となるX方向に移動可能に形成されており、これにより、ワークWを移動させて、研削といし10とワークWのX方向の相対位置を調節することができる。このように、テーブル12及びといし軸頭15をそれぞれ移動させることにより、研削といし10とワークWとの相対位置を3軸方向、即ち、X方向、Y方向及びZ方向にそれぞれ変えることができる。
【0051】
といし軸頭15には、といしカバー16若しくは図示しないブラケット等を介して検出センサ21が設けられている。検出センサ21は、ワークWの被加工面の形状を測定して点群データを取得する検出手段である。
【0052】
検出センサ21は、測定経路31(図4参照)に沿って研削といし10による切り込み方向、即ちY方向のワークWの位置を検出すると共に、切り込み方向に垂直な送り方向、即ちX方向及びZ方向のワークWの位置を検出する。例えば、検出センサ21は、下方向に突出するプローブ23及びその先端に設けられた接触子22を有する接触式のセンサであっても良い。
【0053】
検出センサ21は、といし軸頭15に取り付けられているので、といし軸頭15と共にY方向及びZ方向に移動することになる。検出センサ21が取り付けられる位置は、といしカバー16の側方等でも良いし、といしカバー16の前面等でも良い。
【0054】
また、研削といし10近傍のといし軸頭15には、ブラケット等を介して、送り方向、即ちX方向及びZ方向のワークWの大きさを検出する検出手段として図示しないワークサイズ検出センサが設けられても良い。ワークサイズ検出センサとしては、例えば、レーザ光等によってワークWの有無を検出する非接触式のセンサ等であっても良い。
【0055】
また、図示を省略するが、テーブル12の側方には、研削といし10の位置を検出するといし径検出センサが設けられても良い。といし径検出センサとしては、例えば、エアセンサ等の非接触式のセンサや、プローブ及び接触子を有する接触式のセンサ、振動を検出する圧電素子等を有するAEセンサ等、各種センサを採用し得る。
【0056】
また、図示を省略するが、テーブル12の側方には、その他の検出手段として、研削といし10の端面の位置を検出するといし端面検出センサが設けられても良い。といし端面検出センサとしては、検出センサ21と同様に、接触式、非接触式の各種センサを採用し得る。
【0057】
また、テーブル12の側方には、検出センサ21でワークWの高さ等を測定する際に基準となるブロックである基準ブロック24が設けられている。基準ブロック24の上面には、位置測定の基準となる略球状の基準球25等が設けられても良い。
【0058】
テーブル12の角部近傍には、ワークWを載置する際に、X方向、Y方向の基準位置となる図示しない基準プレートが設けられても良い。作業者は、ワークWを載置する際に、X方向及びY方向の基準プレートにワークWの端部が接するようにワークWをセットする。これにより、作業者は、ワークWを所定の位置に容易にセットすることができる。
【0059】
CNC研削盤2は、研削といし10に研削液を供給するための図示しない研削液供給装置を有する。また、テーブル12の近傍には、研削といし10のドレッシングを行うための図示しないドレッサブロック等が設けられている。
【0060】
図3は、工作機械1による加工の工程を示すフロー図である。
図1ないし図3を参照して、本実施形態に係る工作機械1を用いた機械加工方法について詳細に説明する。工作機械1を用いた機械加工方法は、CADデータを利用して数値制御によりワークWの表面を研削する機械加工方法である。
【0061】
先ずステップS10として、作業者によってCADデータ取り込み工程が行われる。作業者は、ワークWを加工して生産される部品の設計CADデータを電子計算機4に入力する。換言すれば、電子計算機4は、CADソフトウエアからワークWの設計データ、即ちCADデータを読み込む。
【0062】
ワークWの設計形状は、特に限定されず、例えば、直方体状等の形状であっても良い。ワークWの設計形状は、完成後に他の部品等を組み付けるため、または、その他用途のために、ワークWの被加工面に設計上の凹部や窪み、穴等(図4参照。以下、適宜「凹部領域30」と言う。)が形成される形状でも良い。CADデータには、ワークWに加工される凹部領域30の位置情報を含む設計データが含まれている。
【0063】
ワークWの設計形状に凹部領域30がある場合、ワークWに形成される凹部領域30は、他の工作機械等を用いた先の工程で既に加工されている。作業者は、凹部領域30が加工形成されているワークWをテーブル12に載置して、加工の準備をする。
なお、CADデータの形式は、特に限定されるものではなく、例えば、DXF、IGES、STEP、その他一般的に利用されているフォーマットで良い。
【0064】
次に、作業者によって、ステップS20の研削方法入力工程が行われる。研削方法入力工程では、作業者によって、電子計算機4または操作盤3に、加工のための各種情報が入力される。
【0065】
入力される加工情報としては、例えば、荒研削、中研削、精研削等の研削粗さに関する基本的な情報や、といし径、といし幅等の研削といし10に関する情報、研削量、切り込み量、エアカット、前後ピッチ、開始位置切り込みフラグ、送り、ドレスインターバル、ドレス後エアカット、左右動作、前後動作、往復時切り込み動作、加工方向、加工前ドレス、スパークアウト(回数、前後ピッチ、送り、ドレスインターバル、ドレス後エ アカット、左右動作、前後動作)等の研削設定情報、ドレス量、ドレス切り込み量、ドレス速度、ゼロドレス回数等の加工前後のドレッシング情報等が挙げられる。
【0066】
次にステップS30で、測定経路生成工程が実行される。測定経路生成工程では、CADデータ取り込み工程(ステップS10)で入力されたCADデータに基づき、電子計算機4が演算を行い、ワークWの被加工面の測定経路31(図4参照)を生成する。
【0067】
図4は、工作機械1の測定経路31の画像を示す図である。
図4に示すように、CADデータを基にして生成された測定経路31は、ワークWの設計上の凹部領域30を測定不要領域とする。即ち、凹部領域30の測定を行わないよう測定経路31が生成される。これにより、研削加工を行う必要がないので加工のための測定が不要な凹部領域30については測定を行わない効率的な測定経路31が生成される。
【0068】
図1及び図4を参照して、測定経路31の生成は、電子計算機4の自動演算によって行われるので、作業者は、測定のための座標入力等の複雑な設定を行う必要がない。よって、測定経路31の設定は、容易であり、作業者の負担も少なく、工作機械1による生産性は優れたものとなる。
【0069】
電子計算機4は、測定経路31を生成する演算において、研削方法入力工程(図3のステップS20)で入力された各種加工情報を利用しても良い。これにより、無駄のない効率的な測定ができる測定経路31になる。
【0070】
電子計算機4で生成された測定経路31は、作業者が視認可能な画像として、操作盤3の表示部26または電子計算機4の表示部28に表示される。これにより作業者は、CADデータを基にして演算によって生成された測定経路31を正確に把握することができる。また、測定経路31の修正が必要な場合には、作業者は、修正すべき情報を電子計算機4に入力して、測定経路31を適正な経路に修正することができる。
【0071】
次に、図3に示すステップS40で、作業者によって、自動運転開始の指示が入力される。具体的には、図1ないし図3を参照して、作業者は、操作盤3を操作して、または、CNC研削装置の本体に設けられた運転開始ボタン等を押下して、加工開始の指示を入力する。
【0072】
ステップS40で加工開始の信号が入力されると、ステップS50に進み、測定工程が開始される。測定工程では、測定経路31(図4参照)に基づき自動数値制御によるワークWの測定が実行される。具体的には、操作盤3に設けられた数値制御手段は、CNC研削装置の検出センサ21を測定経路31に沿って送りながらワークWの表面の形状を検出して点群データを取得する。
【0073】
ワークWに対する検出センサ21の相対的な移行は、操作盤3の自動数値制御によって行われるので、作業者の操作は不要である。よって、容易且つ正確に高精度な点群データを取得することができる。
【0074】
検出センサ21は、測定経路生成工程(ステップS30)で電子計算機4によって生成された測定経路31に沿って移動し、ワークWの表面の設定された位置毎で高精度な設定を行い点群データを取得する。
【0075】
よって、測定が不要な凹部領域30(図4参照)、即ち、設計上の凹部や窪み、穴等の位置においては、不必要な測定を行うことがないので、無駄のない効率的な測定プロセスが実行される。
【0076】
次いでステップS60において、MAP形状生成工程が実行される。MAP形状生成工程では、測定工程(ステップS50)で取得された点群データから、電子計算機4による演算によって、被加工面の形状データ33(図5参照)が生成される。
【0077】
即ち、電子計算機4は、操作盤3から点群データを取得し、点群データから補間により、ワークWの表面の詳細なX方向及びZ方向の座標データとY方向のデータである高さデータとを生成する。点群データの補正方法としては、各種の3次元データ補正演算の方法を採用し得る。
【0078】
図5は、工作機械1のMAP形状の画像を説明する図であり、形状データ33の画像を模式的に示している。
図5を参照して、MAP形状生成工程で生成された形状データ33は、ワークWの表面の3次元化された座標データである。図1及び図5を参照して、生成された形状データ33は、作業者が視認できるよう、映像表示手段としての操作盤3の表示部26または電子計算機4の表示部28に、3次元の地図状の画像として表示される。
【0079】
具体的には、表示部26または表示部28に表示される形状データ33の画像には、ワークWの表面の等高線34が表示されても良い。また、形状データ33の画像は、ワークWの表面の高さに対応して色彩を変化させてカラーの地形図や写真のように表示されても良いし、モノクロの地形写真のように単一色の濃淡で表面の高さが表現されても良い。
【0080】
また、形状データ33の画像は、作業者がワークWの表面状態を正確に把握できるよう、視線方向を変えて表示可能である。また、形状データ33の画像は、作業者がワークWの表面形の僅かな凹凸を把握できるよう、高さ方向、即ちY方向の寸法を拡大して表示されている。
【0081】
このような映像表示手段を介して、作業者は、視覚を通じてワークWの加工状況を正確に把握することができる。よって、ミスの少ない正確な加工工程により、高精度且つ高効率な加工を実行することができる。
【0082】
図1ないし図3を参照して、ステップS70では、電子計算機4により、パス生成工程が実行される。パス生成工程では、電子計算機4は、MAP形状生成工程(ステップS60)で生成された形状データ33(図5参照)に基づいて加工経路35(図6参照)を演算して加工プログラムを生成する。
【0083】
図6は、工作機械1の加工経路35の画像を示す図である。
図6に示すように、パス生成工程では、研削加工が不要な領域の加工をパスできるような加工経路35を利用する加工プログラムが生成される。
【0084】
具体的には、形状データ33(図5参照)に基づいて、表面高さ、即ちY方向の高さ、が低く、研削といし10(図2参照)が接触することなく、削り加工が行われない領域については、研削加工が不要な領域として研削加工をパスする。即ち、パス領域では、操作盤3は、研削加工を行わないエアカット削除領域として、研削といし10を高速に送ることになる。
【0085】
図3を参照して、次にステップS80では、加工工程が実行される。加工工程では、パス生成工程(ステップS70)で生成された加工プログラムに基づいて図2に示すワークWの加工が行われる。具体的には、研削といし10によってワークWの被加工面が研削される。
【0086】
図1ないし図6を参照して、前述のとおり、電子計算機4で生成された加工プログラムの加工経路35は、CADデータ及び点群データに基づいて生成された形状データ33から演算により生成されたパス領域を有する。
【0087】
このように、パス生成工程(ステップS70)でパス領域を有する加工経路35が生成されることにより、加工工程(ステップS80)における加工時間が短縮され、工作機械1による研削加工の生産性が向上する。
図3を参照して、次にステップS90では、ステップS50と同様に測定工程が実行される。そして、数値制御手段は、加工工程の後の点群データを取得する。
【0088】
ステップS90の測定工程においても、CADデータから生成された測定経路31(図4参照)に基づいた測定が行われ、設計上加工が不要な領域についての点群データ取得は行われないので、効率的な測定となる。
【0089】
次にステップS100では、ステップS60と同様にMAP形状生成工程が行われ、ステップS90の測定工程で取得された点群データを基にして、図1に示す電子計算機4による自動演算によって図5に示す形状データ33が生成される。
【0090】
そして、この形状データ33は、映像化され、図1に示す操作盤3の表示部26または電子計算機4の表示部28に表示される。これにより作業者は、加工工程(ステップS80)の結果を正確に把握して確認することができる。
【0091】
次に、図1及び図3を参照して、ステップS110では、ステップS100のMAP形状生成工程で生成された形状データ33(図5参照)に基づいてワークWの加工を終了するか否かを判定する確認工程が実行される。
【0092】
確認工程では、ステップS100で生成された形状データ33から、ワークWの表面形状が目標とする加工形状に仕上げられていると判断した場合には、加工を終了すると判定する(ステップS100のYES)。そして、次のステップS120に進む。これにより、ワークWの研削加工の全プロセスが完了する。
【0093】
他方、確認工程(ステップS110)において、ステップS100のMAP形状生成工程で生成された形状データ33から、ワークWの表面形状が目標とする加工形状に仕上げられていないと判断した場合には、ワークWの加工を継続する必要があると判定する(ステップS100のNO)。
【0094】
確認工程(ステップS110)において、ワークWの加工を引き続き行うと判定した場合には(ステップS100のNO)、次にステップS70へと進み、パス生成工程が実行される。
【0095】
パス生成工程(ステップS70)では、ステップS100のMAP形状生成工程で生成された形状データ33に基づく電子計算機4の演算により、加工経路35(図6参照)が生成される。この加工経路35についても、前述のとおり、研削加工が不要な領域をパスする効率的な経路である。
【0096】
そして、ステップS80の加工工程へ進み、工作機械1は、生成された加工プログラムに基づいて、ワークWの加工を行い、その後、ステップS90の測定工程、ステップS100のMAP形状生成工程、ステップS110の確認工程が実行される。そして、確認工程における加工結果の判定によって、ワークWの加工プロセスを完了とするか、引き続き行うか、が決められる。
【0097】
このように、本実施形態に係る工作機械1では、加工工程(ステップS80)を実行した後、ステップS90で測定工程を、ステップS100でMAP形状生成工程を、再度実行する。そして、MAP形状生成工程(ステップS100)で生成された形状データ33に基づいてワークWの加工を終了するか否かを判定する確認工程(ステップS110)を実行する。これにより、高効率な研削加工を実行してから、被加工面が最終的に高精度に仕上げられたことを確認して加工を完了することができる。
【0098】
また、前述のとおり、加工工程(ステップS80)を実行した後、測定工程(ステップS90)、MAP形状生成工程(ステップS100)、パス生成工程(ステップS70)及び加工工程(ステップS80)をこの順番で繰り返して実行することができる。これにより、凹凸のある被加工面について、加工が必要な凸部の領域のみを効率良く順次加工して、全体として高精度な表面を、短時間で効率良く仕上げることができる。
【0099】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、工作機械1としてCNC研削盤2を有する構成について説明したが、本発明に係る機械加工方法及び工作機械は、これに限定されるものではない。本発明に係る機械加工方法を実行する工作機械は、その他形式の研削または研磨を行う工作機械や、切削工具を用いて切削加工を行う各種工作機械等であっても良い。本発明によれば、その他形式の工作機械であっても、測定及び加工の効率化を図り、時間を短縮して高精度な加工を実行することができる。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 工作機械
2 CNC研削盤
3 操作盤
4 電子計算機
10 研削といし
12 テーブル
13 コラム
14 ハウジング
15 といし軸頭
16 カバー
17 扉
21 検出センサ
22 接触子
23 プローブ
24 基準ブロック
25 基準球
26 表示部
27 操作部
28 表示部
30 凹部領域
31 測定経路
33 形状データ
34 等高線
35 加工経路
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6