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7575221尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20241022BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20241022BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20241022BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A23L2/00 F
A23L33/00
A23L2/00 T
A23L2/54
A61K33/00
A61P19/06
A61P1/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020146539
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041379
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恭介
(72)【発明者】
【氏名】水野 敬
(72)【発明者】
【氏名】蛭子 杏子
(72)【発明者】
【氏名】田島 華奈子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恭良
(72)【発明者】
【氏名】小杉 亘
(72)【発明者】
【氏名】水野 征一
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205105(JP,A)
【文献】特開2002-370980(JP,A)
【文献】特開2003-171297(JP,A)
【文献】サッポロビール株式会社の2020年6月3日付けニュースリリース「世界初!アンセリンで“尿酸値を下げる”ノンアルコールビールテイスト飲料「サッポロ うまみ絞り」新発売」,[オンライン],2020年06月03日,[検索日 2021.09.28], インターネット: <URL:https://www.sapporobeer.jp/news_release/items/20200603umamishibori350.pdf>
【文献】世界のウェブアーカイブ|パーソナルサイト「丁稚のあれこれ雑記帳」に掲載された2016年4月20日付け,[オンライン],2016年05月,[検索日 2021.09.28], インターネット: <URL:https://web.archive.org/web/20160507154628/http://detch.moe-nifty.com/tennis/2016/04/post-bc64.html>
【文献】ZHANG, T et al.,Sugar-containing carbonated beverages consumption is associated with hyperuricemia in general adults,Nutrition, Metabolism and Cardiovascular Diseases,[オンライン],2020年06月02日,Volume 30, Issue 10,pp.1645-1652,[検索日 2021.09.28], インターネット: <URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0939475320302155>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に溶解した炭酸ガスを尿酸値低下及び/又はビリルビン値低下の有効成分として含み、
前記炭酸ガスの溶解量が、3.5ガスボリューム(GV)以上であり、
炭酸水の形態である、尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物。
【請求項2】
前記炭酸ガスの溶解量が、6.0ガスボリューム(GV)以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
100mLあたり糖類の含有量が0.0gである、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスが水中に溶解している炭酸水は、レストランや家庭で広く飲用されており、その生理作用についても多くの研究がなされている。例えば、食前の炭酸水の飲用で満腹感をきたすこと、炭酸水の飲用で胃の活性化や心拍変動が生じること、炭酸水の口腔内刺激により足先温の低下や心拍変動が生じること、そして、炭酸水の飲用で精神的疲労を伴う作業における作業効率を上昇させる可能性があることなどが知られている(非特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Cuomo R.他、「The role of a pre-load beverage on gastric volume and food intake:comparison between non-caloric carbonated and non-carbonated beverage」、Nutrition Journal、Vol.10、114(2011)
【文献】Wakisaka S.他、「The Effects of Carbonated Water upon Gastric and Cardiac activities and Fullness in Healthy Young Women」、Journal of Nutritional Science and Vitaminology、Vol.58、pp.333-338(2012)
【文献】高木絢加他、「炭酸水による口腔への刺激が深部・末梢体温に及ぼす作用‐Sham-feeding(偽飲)による口腔内刺激を用いた評価」、日本栄養・食糧学会誌、Vol.67、No.1、pp.19-25(2014)
【文献】渡辺恭介他、「健常成人の急性精神的疲労に対する炭酸水の抗疲労効果」、第15回日本疲労学会総会(2019年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、水中に溶解している炭酸ガスの生理作用については依然として不明確な点も多く、特に長期的にこれを摂取したときの生理作用は十分には検討されていなかった。そこで、本発明は、水中に溶解している炭酸ガスの生理作用をより詳細に検討し、その新たな用途を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水中に溶解している炭酸ガスが尿酸値低下作用及びビリルビン値低下作用を有することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示す尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物を提供するものである。
〔1〕水中に溶解した炭酸ガスを尿酸値低下及び/又はビリルビン値低下の有効成分として含む、尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物。
〔2〕前記炭酸ガスの溶解量が、3.5ガスボリューム(GV)以上である、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕飲料の形態である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕炭酸水の形態である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明に従えば、水中に溶解した炭酸ガスを含む炭酸水などを摂取することにより尿酸値又はビリルビン値を低下させることができる。炭酸水は安全な飲料であることが知られているので、その継続的な摂取により高尿酸血症、痛風、及び肝炎・胆道系疾患・溶血性疾患による黄疸などを予防又は改善し、健康の増進を図ることが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物は、水中に溶解した炭酸ガス(二酸化炭素又はCO2ともいう。)を尿酸値低下及び/又はビリルビン値低下の有効成分として含んでいる。前記炭酸ガスを溶解させる水は、経口摂取できるものである限り当技術分野で通常使用される水を特に制限されることなく採用することができる。例えば、前記水は、純水、イオン交換水、ろ過水、井水、天然水、ミネラルウォーター、水道水、又はそれらの混合水などであってもよい。
【0008】
水中に前記炭酸ガスを溶解させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、前記水に前記炭酸ガスを圧入することで溶解(いわゆるカーボネーション)してもいいし、自然の力で炭酸ガスを溶解させても(すなわち炭酸ガスを含有する天然水を使用しても)よい。このように水中に溶解した炭酸ガスは、尿酸値低下及び/又はビリルビン値低下の有効成分として利用することができる。前記炭酸ガスの溶解量は、尿酸値又はビリルビン値を低下するのに有効な量である限り特に制限されないが、例えば、約1.0ガスボリューム(GV)以上であってもよく、好ましくは約1.5GV以上、より好ましくは約3.5GV以上である。前記炭酸ガスの溶解量がこのような範囲であると、尿酸値低下作用又はビリルビン値低下作用がより良好に発揮される。また、前記炭酸ガスの溶解量は、約6.0GV以下とすることができる。
【0009】
ここで、ガスボリューム[GV]とは、1気圧、20℃における、尿酸値低下用又はビリルビン値低下用組成物の体積に対する、尿酸値低下用又はビリルビン値低下用組成物中に溶解している炭酸ガスの体積の比を指す。ガスボリュームは、例えば、市販の測定器(京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500A)を用いて測定することができる。より具体的には、試料を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値から算出することで、その試料のガスボリュームの値を得ることができる。
【0010】
ある態様では、本発明の尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物は、経口的に摂取される経口組成物であってもよい。前記尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物の具体的な形態は、特に限定されないが、例えば、医薬組成物、医薬部外品、飲食品、又は飼料などであってもよく、当該飲食品は、例えば、一般食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、又は機能性表示食品など)、又は特別用途食品(病者用食品、乳幼児用食品、又は妊産婦・授乳婦用食品など)であってもよい。さらに具体的には、前記尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物は、液剤、エリキシル剤、及びリモナーゼ剤などの形態であってもよく、炭酸水(発泡水又はスパークリングウォーターともいう。)、果汁入り炭酸飲料、及び炭酸入りアルコール飲料などの飲料の形態であってもよいが、炭酸水であることが好ましい。
【0011】
ここで、炭酸水とは、実質的に糖類を含有しない無糖炭酸飲料を指す。健康増進法に基づく栄養表示基準においては、飲料100mLあたり0.5g未満であれば無糖と表示することができる。本明細書においても当該規定と同様に、糖類の含有量が100mLあたり0.5g未満を無糖炭酸飲料という。好ましい無糖炭酸飲料は、飲料100mLあたり糖類の含有量が0.0gである。
【0012】
本発明の尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物の摂取量は、特に限定されないが、例えば、成人に液体の前記経口組成物を摂取させる場合、1回約100~約500mL好ましくは1回約300~約500mLを、1日約1~約3回好ましくは1日約2~約3回摂取させてもよい。また、本発明の尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物は、単回摂取によって使用してもよいが、より効率的な尿酸値低下作用又はビリルビン値低下作用の発揮のためには、2日以上の継続的な摂取によって使用することが好ましく、約28日以上の継続的な摂取によって使用することが特に好ましい。
【0013】
本発明の尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物は、対象者の尿酸値又はビリルビン値を低下させるため又は対象者における尿酸値又はビリルビン値の上昇を抑制するために使用することができる。尿酸値及びビリルビン値(総ビリルビン値、直接ビリルビン値、又は間接ビリルビン値)は、当技術分野で通常用いられる血液検査方法(例えば、尿酸値については酵素法、ビリルビン値については酵素法又は化学酸化法など)によって適宜測定することができる。高尿酸値は、高尿酸血症、痛風などの疾患又は状態と関連しており、高ビリルビン値状態は、肝炎・胆道系疾患・溶血性疾患による黄疸などの疾患又は状態と関連しているから、本発明の尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物は、これらの疾患又は状態の予防又は改善に有用であり得る。このため、前記尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物には、例えば、以下のような表示を付してもよい。
・尿酸値が気になる方に
・食事のプリン体が気になる方に
・肝機能が気になる方に
・健康な肝機能を維持したい方に
【0014】
本発明の尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物は、本発明の目的を損なわない限り、当技術分野で通常使用される任意の不活性成分、例えば、薬学的又は食品的に許容される溶剤、緩衝剤、甘味料、酸味料、香料、消泡剤、及び酸化防止剤などの添加剤をさらに含んでもよい。また、本発明の尿酸値低下用及び/又はビリルビン値低下用組成物は、本発明の目的を損なわない限り、当技術分野で通常使用される追加の有効成分をさらに含んでもよく、当該追加の有効成分は、尿酸値低下作用又はビリルビン値低下作用を有する成分であってもいいし、他の作用を有する成分であってもよい。
【0015】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0016】
〔試験例〕
水に対して常法によってカーボネーションを行い、4.5GVの炭酸水を調製した。この炭酸水には、他の有効成分及び不活性成分は添加されていない。各炭酸水の尿酸値及びビリルビン値に対する効果を、二重盲検法により検討した。具体的には、同意説明を受けた被験者に対し、3週間の炭酸水を摂取しない期間の後に、4週間の間、4.5GVの炭酸水を、1回300mLずつ、1日2回(午前及び午後)摂取させた。なお、被験者の構成は、女性25名及び男性19名の合計44名であり、平均年齢は38.6±6.9歳だった。
【0017】
摂取期間の1日前及び摂取期間の1日後に血液検査を行い、尿酸値及びビリルビン値(総ビリルビン値、直接ビリルビン値、及び間接ビリルビン値)などを測定した。血液検査日には、被験者は炭酸水を摂取しなかった。尿酸値及びビリルビン値の平均値及び検定結果を表1に示す。検定においては、二元配置分散分析及びShaffer法による多重比較を行った。
【表1】
*: P<0.05
【0018】
炭酸水を摂取すると、尿酸値及びビリルビン値(総ビリルビン値、直接ビリルビン値、及び間接ビリルビン値)は、いずれも有意に低下した。なお、異なるガスボリュームの炭酸水を摂取させると、高いガスボリュームの炭酸水を摂取させた被験者の方が、尿酸値及びビリルビン値の値が低くなった。血液検査日には炭酸水を摂取させていなかったので、本試験効果は、炭酸水の長期摂取による生理作用を示している。
【0019】
以上より、水中に溶解した炭酸ガスを含む炭酸水などを摂取することにより尿酸値及びビリルビン値を低下できることが分かった。したがって、炭酸水の継続的な摂取により高尿酸血症、痛風、及び肝炎・胆道系疾患・溶血性疾患による黄疸などの疾患を予防又は改善し、健康の増進を図ることが期待できる。