(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/282 20060101AFI20241022BHJP
H01B 9/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01B7/282
H01B9/02 A
(21)【出願番号】P 2020147391
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 信之
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-030071(JP,A)
【文献】特開2020-087692(JP,A)
【文献】特開2018-078045(JP,A)
【文献】特開2018-088364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/282
H01B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に、内部半導電層と、絶縁体と、外部半導電層と、シースと、を順次備えるものであり、
前記絶縁体は、
前記導体側に配置される内層と、該内層の外側に配置される外層と、を備え、
該外層は、
吸水率を0.1%以下とするオレフィン系遮水樹脂組成物にて形成され、
前記内部半導電層と前記外部半導電層との間に位置する前記絶縁体は、前記内層及び前記外層のみからなる二層構造を有
し、
当該ケーブルに対し当該ケーブルの軸方向に直交する方向に荷重を掛けたときの前記軸方向に直交する方向に撓む量を、撓み量、
当該ケーブルが前記軸方向に直交する方向に撓んだ状態にて前記荷重を取り外し当該ケーブルに復帰が生じた後の前記軸方向に直交する方向に撓んだ量を、変位量、
とし、
前記撓み量と、前記変位量と、の合計値を、可撓性の値としたとき、
当該ケーブルは、
前記可撓性の値がサイズ22sqのときに280mmを超える
ことを特徴とするケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブルにおいて、
前記外層は、
この厚さを0.01mm以上0.1mm以下とする
ことを特徴とするケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のケーブルにおいて、
前記オレフィン系遮水樹脂組成物は、
高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかを主材とする
ことを特徴とするケーブル。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のケーブルにおいて、
前記外部半導電層は、
前記絶縁体の外周に半導電テープがテープ巻きされた状態にて形成される
ことを特徴とするケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体への浸水をし難くするケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架橋ポリエチレン等を絶縁体に用いたケーブルの技術としては、例えば、特許文献1に開示されているような技術が知られている。特許文献1の
図5に図示するケーブル1は、CVケーブル(高圧CVケーブル)とも呼ばれているものである。ケーブル1は、導体2上に内部半導電層3を被覆し、その上に架橋ポリエチレン等にて成形される絶縁体4が押出し被覆されている。さらに、この絶縁体4上に外部半導電層5が被覆されており、この外部半導電層5上に銅テープ等の銅遮蔽層6が形成され、この銅遮蔽層6上にポリ塩化ビニル等にて成形されるシース7が被覆されている。
【0003】
ところで、上記ケーブル1が水分のある環境に敷設された場合、ケーブル1内(絶縁体4)に浸水し、絶縁体4に水トリーが発生する虞があった。このように、絶縁体4に水トリーが発生した場合、特許文献1に開示されたケーブル1では、絶縁抵抗が低下する虞があるというような問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような問題点を有する特許文献1の技術に代わるケーブル(遮水ケーブル)の技術としては、例えば、
図4に図示するケーブル100(従来技術1)や、
図5に図示するケーブル200(従来技術2)のようなものが一般的に知られている。なお、「遮水ケーブル」とは、ケーブル内(絶縁体)へ浸水し難くなる構造を備えるケーブルである。
【0006】
図4に図示するケーブル100は、金属外装(金属コルゲート)108による遮水構造を備えている。ケーブル100は、導体101上に、内部半導電層102と、絶縁体103と、外部半導電層104と、遮蔽層105(特許文献1における銅遮蔽層6に相当するもの)と、押さえ巻きテープ106と、シース107と、金属外装(金属コルゲート)108と、を順次備えている。
【0007】
図5に図示するケーブル200は、金属ラミネートテープの遮水層207による遮水構造を備えている。ケーブル200は、導体201上に、内部半導電層202と、絶縁体203と、外部半導電層204と、遮蔽層205(特許文献1における銅遮蔽層6に相当するもの)と、半導電性押さえ巻き206と、遮水層207と、シース208と、を順次備えている。遮水層207は、金属ラミネートテープを「縦添え巻き」にて施され、重なり部209が形成されている。重なり部209は、金属ラミネートテープの周方向における一端と他端とが重なり合い融着されてなる部分である。
【0008】
ところで、
図4に図示するケーブル100では、金属外装108を備えているため、曲げ難く、また、端末処理の際に金属外装108を取り除く必要があった。したがって、ケーブル100では、この敷設作業における施工性が低下する虞があるというような問題点があった。
【0009】
図5に図示するケーブル200では、シース208の下に金属ラミネートテープの遮水層207を備えるため、ケーブル100(
図4参照)に比べて、曲げ易く、また、端末処理も簡易に行うことができる。したがって、ケーブル200によれば、この敷設作業における施工性がケーブル100よりも向上すると言える。しかしながら、ケーブル200では、ケーブル200の曲げにより遮水層207の重なり部209に皺が発生し易いことや、重なり部209の融着が不足していることにより、遮水性能にばらつきがあった。したがって、ケーブル200では、絶縁体203へ浸水し易くなる虞があるという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、敷設作業における施工性を従来技術よりも向上させつつ、絶縁体への浸水をし難くすることができるケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のケーブルは、導体上
に、内部半導電層と、絶縁体と、外部半導電層と、シースと、を順次備えるものであり、
前記絶縁体は、前記導体側に配置される内層と、該内層の外側に配置される外層と、を備
え、該外層は、吸水率を0.1%以下とするオレフィン系遮水樹脂組成物にて形成され、
前記内部半導電層と前記外部半導電層との間に位置する前記絶縁体は、前記内層及び前記
外層のみからなる二層構造を有し、当該ケーブルに対し当該ケーブルの軸方向に直交する方向に荷重を掛けたときの前記軸方向に直交する方向に撓む量を、撓み量、当該ケーブルが前記軸方向に直交する方向に撓んだ状態にて前記荷重を取り外し当該ケーブルに復帰が生じた後の前記軸方向に直交する方向に撓んだ量を、変位量、とし、前記撓み量と、前記変位量と、の合計値を、可撓性の値としたとき、当該ケーブルは、前記可撓性の値がサイズ22sqのときに280mmを超える、ことを特徴とする。
【0012】
上記(1)のような特徴を有する本発明によれば、絶縁体が内層と外層の二層構造となり、外層が吸水率を0.1%以下とするオレフィン系遮水樹脂組成物にて形成されることから、水分のある場所に敷設された場合であっても絶縁体へ浸水し難くなる。また、本発明によれば、外層が上記オレフィン系遮水樹脂組成物にて形成されることから、可撓性が良好で、端末処理も簡易に行うことができ、敷設作業における施工性が従来技術よりも向上する。
さらに、例えばサイズ22sqのときにケーブルの可撓性の値が280mmを超えることから、可撓性が良好であることが、より明確になる。したがって、敷設作業における施工性が従来技術よりも向上する。
【0013】
(2)請求項2記載の本発明のケーブルは、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記外層は、この厚さを0.01mm以上0.1mm以下とすることを特徴とする。
【0014】
上記(2)のような特徴を有する本発明によれば、外層の厚さを0.01mm以上0.1mm以下とすることにより、ケーブルの可撓性に影響を来すことがない。
【0015】
(3)請求項3記載の本発明のケーブルは、請求項1又は2に記載のケーブルにおいて、前記オレフィン系遮水樹脂組成物は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかを主材とすることを特徴とする。
【0016】
上記(3)のような特徴を有する本発明によれば、オレフィン系遮水樹脂組成物が高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかを主材とすることから、水分のある場所に敷設された場合であっても絶縁体へ浸水し難くなり、且つ、可撓性が良好であることが、より明確になる。
【0017】
(4)請求項4記載の本発明のケーブルは、請求項1、2又は3に記載のケーブルにおいて、前記外部半導電層は、前記絶縁体の外周に半導電テープがテープ巻きされた状態にて形成されることを特徴とする。
【0018】
上記(4)のような特徴を有する本発明によれば、外部半導電層の形成にあたり、絶縁体の外周に半導電テープがテープ巻きされることにより、ケーブルを曲げた際のケーブルの可撓性に影響を来すことがなくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、敷設作業における施工性を従来技術よりも向上させつつ、絶縁体への浸水をし難くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るケーブルの実施形態を示す図であって、ケーブルの端末の部分破断斜視図である。
【
図3】ケーブルの可撓性確認試験を説明するための概略図である。
【
図4】従来技術1に係るケーブルを示す斜視図である。
【
図5】従来技術2に係るケーブルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1-
図3を参照しながら、本発明に係るケーブルの実施形態について説明する。
【0024】
図1は本発明に係るケーブルの実施形態を示す図であって、ケーブルの端末の部分破断斜視図、
図2は
図1におけるA-A間断面図、
図3はケーブルの可撓性確認試験を説明するための概略図である。
【0025】
以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができるものとする。
【0026】
図1及び
図2において、引用符号1は、本発明に係るケーブルの実施形態を示している。ケーブル1は、所謂、CVケーブル(高圧CVケーブル)とも呼ばれているものであり、後述する絶縁体4へ浸水し難くなる構造を備える遮水ケーブルである。以下、本明細書では、ケーブル1のことを、適宜、「遮水ケーブル」や「CVケーブル(高圧CVケーブル)」と呼んでもよいものとする。
【0027】
図1及び
図2に図示するケーブル1は、導体2と、内部半導電層3と、絶縁体4と、外部半導電層5と、遮蔽層6と、押さえ巻きテープ7と、シース8と、を備えている。以下、ケーブル1の各構成について説明する。
【0028】
まず、導体2について説明する。
図1及び
図2に図示する導体2は、電流供給を行うものであり、公知のものが採用されている。
【0029】
つぎに、内部半導電層3について説明する。
図1及び
図2に図示する内部半導電層3は、導電性を付与した樹脂組成物を導体2の外周に押し出し成形することにより所定の厚さで形成されている。内部半導電層3を形成する導電性を付与した樹脂組成物としては、例えば、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体やエチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン系共重合体等のオレフィン系樹脂を主材とし、これにファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックを配合したものが挙げられる。
【0030】
つぎに、絶縁体4について説明する。
図1及び
図2に図示する絶縁体4は、内部半導電層3の外周に設けられている。絶縁体4は、内層9と、外層10と、の二層構造を備えている。内層9は、絶縁体4のうち、導体2側に配置される絶縁層であり、「第一層」と呼んでもよいものとする。外層10は、絶縁体4のうち、内層9の外側に配置される絶縁層であり、「第二層」と呼んでもよいものとする。以下、内層9と、外層10について説明する。
【0031】
図1及び
図2に図示する内層9は、一般的なケーブルに用いられる樹脂を内部半導電層3の外周に押し出し成形することにより所定の厚さで形成されている。上記樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)が挙げられる。
【0032】
図1及び
図2に図示する外層10は、本発明の特徴的な部分である。外層10は、オレフィン系遮水樹脂組成物を内層9の外周に押し出し成形することにより所定の厚さで形成されている。具体的には、外層10は、この厚さを0.01mm以上0.1mm以下となるように形成されている。外層10の厚さを上記範囲とするのは、ケーブル1の可撓性に影響を与えないようにするためである。
【0033】
上記オレフィン系遮水樹脂組成物は、吸水率を0.1%以下とするものである。上記オレフィン系遮水樹脂組成物は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)のいずれかを主材とするものである。
【0034】
表1に示すように、上記各材料の吸水率は、高密度ポリエチレンが0.01%以下、低密度ポリエチレンが0.015%以下、ポリプロピレンが0.1以下であり、いずれも、0.1%以下となっている。
【0035】
【0036】
外層10は、吸水率を0.1%以下とするオレフィン系遮水樹脂組成物(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)のいずれかを主材とするもの)にて形成されることから、水分のある場所にケーブル1が敷設された場合であっても絶縁体4へ浸水し難くなる。また、外層10が上記オレフィン系遮水樹脂組成物にて形成されることから、ケーブル1は、可撓性が良好であると言える。
【0037】
つぎに、外部半導電層5について説明する。
図1及び
図2に図示する外部半導電層5は、半導電テープ11にて形成されている。半導電テープ11は、導電性を付与した樹脂組成物にて成形されたテープである。外部半導電層5は、絶縁体4(外層10)の外周に半導電テープ11をテープ巻きすることにより所定の厚さで形成されている。絶縁体4の外周に半導電テープ11がテープ巻きされることにより、ケーブル1を曲げた際のケーブル1の可撓性に影響を来すことがなくなる。
【0038】
つぎに、遮蔽層6について説明する。
図1及び
図2に図示する遮蔽層6は、例えば、銅テープ等の金属テープにて形成されている。遮蔽層6は、外部半導電層5の外周に上記銅テープ等の金属テープをテープ巻きすることにより所定の厚さで形成されている。
【0039】
つぎに、押さえ巻きテープ7について説明する。
図1及び
図2に図示する押さえ巻きテープ7は、遮蔽層6の外周に巻き付けられるものである。押さえ巻きテープ7としては、例えば、ポリエステル不織布、ナイロン不織布、ポリプロピレンテープ、ポリエステルテープ、ガラステープ、紙テープ、セラミックス紙等が挙げられる。
【0040】
つぎに、シース8について説明する。
図1及び
図2に図示するシース8は、ケーブル1の最外層を構成するものである。シース8は、一般的なケーブルに用いられる樹脂を押さえ巻きテープ7の外周に押し出し成形することにより所定の厚さで形成されている。上記樹脂としては、塩化ビニルもしくはポリエチレンが挙げられる。
【0041】
つぎに、本発明に係るケーブル1の製造方法について説明する。
まず、導体2上に、内部半導電層3と、絶縁体4(内層9及び外層10)と、を形成する。内部半導電層3と、内層9と、外層10の形成は、三層押出成形によって行う。
【0042】
しかる後、外部半導電層5を形成する。外部半導電層5は、絶縁体4(外層10)の外周に半導電テープ11をテープ巻きにて巻き付けて形成する。上記外部半導電層5の形成後、遮蔽層6を形成する。遮蔽層6は、外部半導電層5の外周に銅テープ等の金属テープをテープ巻きにて巻き付けて形成する。遮蔽層6の形成後、遮蔽層6の外周に押さえ巻きテープ7をテープ巻きにて巻き付ける。
【0043】
しかる後、シース8を形成する。シース8の形成は、押さえ巻きテープ7の巻き付け後、押さえ巻きテープ7の外周に押出成形によって行う。以上により、ケーブル1の製造が完了する。
【0044】
以上のような本発明に係るケーブル1によれば、絶縁体4の外層10が吸水率を0.1%以下とするオレフィン系遮水樹脂組成物にて形成されることから、水分のある場所に敷設された場合であっても絶縁体4へ浸水し難くなる。また、本発明に係るケーブル1によれば、外層10が上記オレフィン系遮水樹脂組成物にて形成されることから、可撓性が良好で、端末処理も簡易に行うことができ、敷設作業における施工性が従来技術よりも向上する。
【0045】
また、本発明に係るケーブル1によれば、外層10の厚さを0.01mm以上0.1mm以下とすることにより、ケーブル1の可撓性に影響を来すことがない。
【0046】
また、本発明に係るケーブル1によれば、オレフィン系遮水樹脂組成物が高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかを主材とすることから、水分のある場所に敷設された場合であっても絶縁体4へ浸水し難くなり、且つ、可撓性が良好であることが、より明確になる。
【0047】
また、本発明に係るケーブル1によれば、外部半導電層5の形成にあたり、絶縁体4の外周に半導電テープ11がテープ巻きされることにより、ケーブル1を曲げた際のケーブル1の可撓性に影響を来すことがなくなる。
【0048】
つぎに、本発明に係るケーブル1の効果について説明する。
以上、
図1-
図3を参照しながら説明してきたように、本発明に係るケーブル1によれば、敷設作業における施工性を従来技術よりも向上させつつ、絶縁体4への浸水をし難くすることができるという効果を奏する。
【0049】
つぎに、ケーブルの可撓性確認試験(以下、「本試験」と言う)の結果に基づく、本発明の実施例と、比較例(従来技術1)と、の比較について説明する。ここでは、実施例1~9(表2参照)と、比較例1~9(表3参照)と、を例に挙げて説明するものとする。
【0050】
まず、本試験の目的及び実施方法について説明する。
本試験は、試料となるケーブルが所定の可撓性を有していることを確認することを目的とするものである。本試験は、
図3に図示するように、試料となるケーブル1、100の長手方向の一端17側を固定台12の上面13に固定し、ケーブル1、100の長手方向の他端18側に荷重14を掛けることにより実施する。荷重14は、ケーブル1、100の長手方向の他端18側に取り付けられた保持具15と、この保持具15に連続するワイヤ16と、を介して掛けられる。
【0051】
つぎに、表2に基づいて、本発明の実施例1~9について説明する。
実施例1~9は、本発明に係るケーブルである。表2に示す実施例1~9におけるケーブルの構成は、先に説明したケーブル1(
図1及び
図2参照)と同じであるので説明を省略する。
【0052】
【0053】
<実施例1>
実施例1は、表2に示すように、サイズが22sqとなるように形成したケーブル1を試料とし、荷重14を重り1(例えば12N程度とする。サイズに見合った荷重を適宜設定するものとする)とした場合である。
【0054】
<実施例2>
実施例2は、表2に示すように、サイズが38sqとなるように形成したケーブル1を試料とし、荷重14を重り2(重り1以上の荷重)とした場合である。
【0055】
<実施例3>
実施例3は、表2に示すように、サイズが60sqとなるように形成したケーブル1を試料とし、荷重14を重り3(重り2以上の荷重)とした場合である。
【0056】
<実施例4>
実施例4は、表2に示すように、サイズが100sqとなるように形成したケーブル1を試料とし、荷重14を重り4(重り3以上の荷重)とした場合である。
【0057】
<実施例5>
実施例5は、表2に示すように、サイズが150sqとなるように形成したケーブル1を試料とし、荷重14を重り5(重り4以上の荷重)とした場合である。
【0058】
<実施例6>
実施例6は、表2に示すように、サイズが200sqとなるように形成したケーブル1を試料とし、荷重14を重り6(重り5以上の荷重)とした場合である。
【0059】
<実施例7>
実施例7は、表2に示すように、サイズが250sqとなるように形成したケーブル1を試料とし、荷重14を重り7(重り6以上の荷重)とした場合である。
【0060】
<実施例8>
実施例8は、表2に示すように、サイズが325sqとなるように形成したケーブル1を試料とし、荷重14を重り8(重り7以上の荷重)とした場合である。
【0061】
<実施例9>
実施例9は、表2に示すように、サイズが400sqとなるように形成したケーブル1を試料とし、荷重14を重り9(重り8以上の荷重)とした場合である。
【0062】
つぎに、表3に基づいて、本発明の比較例1~9について説明する。
比較例1~9は、比較例に係るケーブルである。表3に示す比較例1~9におけるケーブルの構成は、本明細書の「発明が解決しようとする課題」の欄において説明した従来技術1に係るケーブル100(
図4参照)と同じであるので説明を省略する。
【0063】
【0064】
<比較例1>
比較例1は、表3に示すように、サイズが22sqとなるように形成したケーブル100を試料とし、荷重14を上記重り1とした場合である。
【0065】
<比較例2>
比較例2は、表3に示すように、サイズが38sqとなるように形成したケーブル100を試料とし、荷重14を上記重り2とした場合である。
【0066】
<比較例3>
比較例3は、表3に示すように、サイズが60sqとなるように形成したケーブル100を試料とし、荷重14を上記重り3とした場合である。
【0067】
<比較例4>
比較例4は、表3に示すように、サイズが100sqとなるように形成したケーブル100を試料とし、荷重14を上記重り4とした場合である。
【0068】
<比較例5>
比較例5は、表3に示すように、サイズが150sqとなるように形成したケーブル100を試料とし、荷重14を上記重り5とした場合である。
【0069】
<比較例6>
比較例6は、表3に示すように、サイズが200sqとなるように形成したケーブル100を試料とし、荷重14を上記重り6とした場合である。
【0070】
<比較例7>
比較例7は、表3に示すように、サイズが250sqとなるように形成したケーブル100を試料とし、荷重14を上記重り7とした場合である。
【0071】
<比較例8>
比較例8は、表3に示すように、サイズが325sqとなるように形成したケーブル100を試料とし、荷重14を上記重り8とした場合である。
【0072】
<比較例9>
比較例9は、表3に示すように、サイズが400sqとなるように形成したケーブル100を試料とし、荷重14を上記重り9とした場合である。
【0073】
本試験では、実施例1~9及び比較例1~9それぞれについて、「撓み量」及び「変位量」を測定し、「撓み量」の測定値及び「変位量」の測定値に基づいて算出された「可撓性」の値を比較する。
【0074】
ここで、「撓み量」とは、ケーブル1、100に対し、ケーブル1、100の軸方向に直交する方向(
図3に図示する矢印Bの指示する方向)に荷重14を掛けたときの上記軸方向に直交する方向に撓む量である。また、「変位量」とは、ケーブル1、100が上記軸方向に直交する方向に撓んだ状態にて荷重14を取り外しケーブル1、100に
図3で図示する矢印Cの指示する方向に戻ろうとする復帰が生じた後の上記軸方向に直交する方向に撓んだ量(荷重14を取り付ける前のケーブル1、100の他端18位置(
図3における引用符号18の指示する位置)を基準点とすると、この基準点から上記復帰が生じた後のケーブル1、100の他端18までの距離)である。また、「可撓性」の値とは、「撓み量」と、「変位量」と、の合計値である。
【0075】
本試験では、「可撓性」の目標値をサイズ22sqのときに280mmを超える、サイズ38sq~100sqのときに430mmを超える、サイズ150sq~400sqのときに680mmを超える数値とする。表2及び表3の「合否判定」の項目において、「○」は、「可撓性」の目標値を満たしている場合(本試験に合格している場合)、「×」は、「可撓性」の目標値を満たしていない場合(本試験に不合格である場合)を示している。
【0076】
つぎに、表2及び表3に示された測定結果から、実施例1~9と、比較例1~9と、を比較する。
表2より、実施例1は、「撓み量」が220mm、「変位量」が110mmであることから、「可撓性」の値は、330mmであった。表2より、実施例1の「可撓性」の値が280mmを超え、目標値を満たしていると言える。したがって、合否判定が「○」(本試験に合格)であった。
【0077】
また、表2より、実施例2は、「撓み量」が320mm、「変位量」が200mmであることから、「可撓性」の値は、520mmであった。また、表2より、実施例3は、「撓み量」が300mm、「変位量」が210mmであることから、「可撓性」の値は、510mmであった。また、表2より、実施例4は、「撓み量」が280mm、「変位量」が180mmであることから、「可撓性」の値は、460mmであった。以上、表2より、実施例2~4のいずれも、「可撓性」の値が430mmを超え、目標値を満たしていると言える。したがって、合否判定が「○」(本試験に合格)であった。
【0078】
また、表2より、実施例5は、「撓み量」が390mm、「変位量」が310mmであることから、「可撓性」の値は、700mmであった。また、表2より、実施例6は、「撓み量」が460mm、「変位量」が390mmであることから、「可撓性」の値は、850mmであった。また、表2より、実施例7は、「撓み量」が510mm、「変位量」が450mmであることから、「可撓性」の値は、960mmであった。また、表2より、実施例8は、「撓み量」が420mm、「変位量」が380mmであることから、「可撓性」の値は、800mmであった。また、表2より、実施例9は、「撓み量」が460mm、「変位量」が320mmであることから、「可撓性」の値は、780mmであった。以上、表2より、実施例5~9のいずれも、「可撓性」の値が680mmを超え、目標値を満たしていると言える。したがって、実施例5~9は、合否判定が「○」(本試験に合格)であった。
【0079】
上記結果から、実施例1~9のいずれも、可撓性が良好であり、曲げ易いことから、ケーブル1の敷設作業における施工性が良好であると言える。
【0080】
これに対し、表3より、比較例1は、「撓み量」が210mm、「変位量」が70mmであることから、「可撓性」の値は、280mmであった。表3より、比較例1の「可撓性」の値は280mmを超えず、目標値を満たしていないと言える。したがって、合否判定が「×」(本試験に不合格)であった。
【0081】
また、表3より、比較例2は、「撓み量」が310mm、「変位量」が120mmであることから、「可撓性」の値は、430mmであった。また、表3より、比較例3は、「撓み量」が280mm、「変位量」が120mmであることから、「可撓性」の値は、400mmであった。また、表3より、比較例4は、「撓み量」が250mm、「変位量」が130mmであることから、「可撓性」の値は、380mmであった。以上、表3より、比較例2~4のいずれも、「可撓性」の値は430mmを超えず、目標値を満たしていないと言える。したがって、合否判定が「×」(本試験に不合格)であった。
【0082】
また、表3より、比較例5は、「撓み量」が360mm、「変位量」が180mmであることから、「可撓性」の値は、540mmであった。また、表3より、比較例6は、「撓み量」が340mm、「変位量」が260mmであることから、「可撓性」の値は、600mmであった。また、表3より、比較例7は、「撓み量」が360mm、「変位量」が310mmであることから、「可撓性」の値は、670mmであった。また、表3より、比較例8は、「撓み量」が320mm、「変位量」が280mmであることから、「可撓性」の値は、600mmであった。また、表3より、比較例9は、「撓み量」が480mm、「変位量」が200mmであることから、「可撓性」の値は、680mmであった。以上、表3より、比較例5~9のいずれも、「可撓性」の値は680mmを超えず、目標値を満たしていないと言える。したがって、合否判定が「×」(本試験に不合格)であった。
【0083】
上記結果から、比較例1~9のいずれも、実施例1~9よりも、可撓性が良好ではなく、曲げ難いことから、ケーブル100の敷設作業における施工性が実施例1~9よりも低下すると言える。
【0084】
以上の説明からも明らかなように、本発明に係るケーブル1によれば、ケーブルの可撓性の値がサイズ22sqのときに280mmを超え、サイズ38sq~100sqのときに430mmを超え、サイズ150sq~400sqのときに680mmを超えることから、可撓性が良好であることが、より明確になる。したがって、敷設作業における施工性が従来技術よりも向上すると言える。
【0085】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
1…ケーブル、 2…導体、 3…内部半導電層、 4…絶縁体、 5…外部半導電層、 6…遮蔽層、 7…押さえ巻きテープ、 8…シース、 9…内層、 10…外層、 11…半導電テープ、 12…固定台、 13…上面、 14…荷重、 15…保持具、 16…ワイヤ、 17…一端、 18…他端