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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】消火部材設置構造、及び配電函
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/16 20060101AFI20241022BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20241022BHJP
   H02B 1/28 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A62C3/16 C
A62C3/00 E
H02B1/28 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020178427
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069313
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岸 玄二
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-140821(JP,A)
【文献】特開平01-256640(JP,A)
【文献】特開2009-055697(JP,A)
【文献】特開2020-081809(JP,A)
【文献】特表2014-509230(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2136262(KR,B1)
【文献】特開2021-045332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/16
A62C 3/00
H02B 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電函の内側に画定された収容空間に機器が配置され、
前記収容空間における前記機器の上方には金属製の導熱部が配置されており、
前記導熱部は、前記機器の上から当該機器を見た平面視での前記機器の面積より大きい面積の受熱面を備え、当該受熱面は前記機器の上方に配置されており、
前記収容空間には、熱に反応して消火性ガス又は消火性液体を発生させる消火部材が配置され、
前記消火部材に前記導熱部の熱が伝わるように前記消部材が前記導熱部と結合されていることを特徴とする消火部材設置構造。
【請求項2】
前記導熱部は、前記機器の上方であって当該機器と前記配電函の内面との間に、前記配電函の前記内面から離れて配置されている請求項に記載の消火部材設置構造。
【請求項3】
前記受熱面は、前記収容空間に臨む前記配電函の内面のうちの前記機器の上方に位置する面の全体を覆う請求項に記載の消火部材設置構造。
【請求項4】
前記消火部材は、前記受熱面に配置されている請求項又は請求項に記載の消火部材設置構造。
【請求項5】
複数の前記消火部材が前記受熱面に並んで配置されている請求項1~請求項のいずれか一項に記載の消火部材設置構造。
【請求項6】
前記消火性ガス及び消火性液体は空気より重い請求項1~請求項のいずれか一項に記載の消火部材設置構造。
【請求項7】
前記配電函は、前記収容空間と前記配電函の外側とを連通させる導入口を有し、前記導入口と、当該導入口を通じて前記配電函の外側から前記収容空間に導入された配線・配管材と、の隙間は隙間充填部材によって縮小されている請求項1~請求項のいずれか一項に記載の消火部材設置構造。
【請求項8】
機器を配置するための収容空間が内側に画定された配電函であって、
前記収容空間に配置された金属製の導熱部を有し、
前記導熱部は、前記収容空間に臨む前記配電函の内面のうちの少なくとも一つの面の全体を覆う受熱面を備えており、
前記収容空間に、熱に反応して消火性ガス又は消火性液体を発生させる消火部材を有し、
前記消火部材に前記導熱部の熱が伝わるように前記消部材が前記導熱部と結合されていることを特徴とする配電函。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火部材設置構造、及び配電函に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内又は屋外に配置される配電函には、例えば、コンセント、ブレーカ、端子台、中継器、電気部品及びブースタといった機器が収容される(例えば、特許文献1参照)。
また、配電函の内部には消火装置が装備されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の消火装置は、第1の容器と、第1の容器内に封入される熱膨張剤と、第1の容器内に収容される第2の容器と、第2の容器の一部に設けられた栓部材と、を有する。第2の容器の内部には、消火薬剤が封入されている。第2の容器は、熱膨張剤が熱によって膨張するときの加圧力により変形する。栓部材は、出火に結びつく所定の温度に熱膨張剤が過熱されたときに、消火薬剤を噴出するように開弁する。
【0003】
消火装置は、配電函の一例であるテレビ受像機の内部に収容されている。また、消火装置は、栓部材を火元となり得る機器に向けて配置されている。そして、機器の発熱に伴い、テレビ受像機の内部に収容された機器が過熱されると、熱膨張剤が過熱によって膨張する。機器の出火温度に結びつく温度にまで機器の温度が上昇し、熱膨張剤が過熱されると、熱膨張剤の膨張に伴う加圧力により第2の容器が押圧され、変形する。すると、栓部材が、消火薬剤により加圧され、粉砕される。その結果、消火薬剤が機器に向けて噴出され、機器から発火した場合は、機器が消火される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5058949号公報
【文献】特許第2718444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、配電函の内部には、発火する可能性のある機器が複数ある。このため、特許文献2の消火装置を内部に装備した配電函において、消火装置における過熱に反応する部位、及び消火薬剤の噴出する場所が、発火した機器から離れていると消火が遅れる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための消火部材設置構造は、配電函の内側に画定された収容空間に機器が配置され、前記収容空間における前記機器の上方には金属製の導熱部が配置されており、前記導熱部は、前記機器の上から当該機器を見た平面視での前記機器の面積より大きい面積の受熱面を備え、当該受熱面は前記機器の上方に配置されており、前記収容空間には、熱に反応して消火性ガス又は消火性液体を発生させる消火部材が配置され、前記消火部材に前記導熱部の熱が伝わるように前記消部材が前記導熱部と結合されていることを要旨とする。
【0008】
消火部材設置構造について、前記導熱部は、前記機器の上方であって当該機器と前記配電函の内面との間に、前記配電函の前記内面から離れて配置されていてもよい。
消火部材設置構造について、前記受熱面は、前記収容空間に臨む前記配電函の内面のうちの前記機器の上方に位置する面の全体を覆っていてもよい。
消火部材設置構造について、前記消火部材は、前記受熱面に配置されていてもよい。
【0009】
消火部材設置構造について、複数の前記消火部材が前記受熱面に並んで配置されていてもよい。
消火部材設置構造について、前記消火性ガス及び消火性液体は空気より重くてもよい。
【0010】
消火部材設置構造について、前記配電函は、前記収容空間と前記配電函の外側とを連通させる導入口を有し、前記導入口と、当該導入口を通じて前記配電函の外側から前記収容空間に導入された配線・配管材と、の隙間は隙間充填部材によって縮小されていてもよい。
【0012】
上記問題点を解決するための配電函は、機器を配置するための収容空間が内側に画定された配電函であって、前記収容空間に配置された金属製の導熱部を有し、前記導熱部は、前記収容空間に臨む前記配電函の内面のうちの少なくとも一つの面の全体を覆う受熱面を備えており、前記収容空間に、熱に反応して消火性ガス又は消火性液体を発生させる消火部材を有し、前記消火部材に前記導熱部の熱が伝わるように前記消部材が前記導熱部と結合されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、消火の遅れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態の配電函、及び消火部材装置を示す分解斜視図。
図2】消火部材設置構造の配電函、及び消火部材装置を示す斜視図。
図3】配電函を示す斜視図。
図4】消火部材設置構造における配電函内を示す正面図。
図5】消火部材設置構造を示す図4の5-5線断面図。
図6】消火部材設置構造を示す図4の6-6線断面図。
図7】消火部材を示す断面図。
図8】導入口及びケーブルを示す拡大図。
図9】機器を消火する状態を示す断面図。
図10】第2の実施形態の配電函、及び消火部材装置を示す分解斜視図。
図11】第2の実施形態の消火部材設置構造の配電函内を示す断面図。
図12】第2の実施形態の消火部材設置構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、消火部材設置構造、配電函、及び消火部材装置を具体化した第1の実施形態を図1図9にしたがって説明する。
【0018】
図1図2図3又は図4に示すように、消火部材設置構造は、配電函11を備える。
配電函11は、機器Kを収容する。配電函11は、一面に開口するボックス本体12と、ボックス本体12を開閉する蓋体30と、を備える。配電函11は、仮設工事の際に電源を供給する機器Kを収容する仮設ボックスとして使用される。この場合、機器Kとしては、スイッチ、ブレーカが挙げられる。また、配電函11は、ポール、電柱、及び建物の外壁に設置される。この場合、配電函11は屋外に配置され、ブースタといった機器Kを収容する収容函として用いられる。本実施形態の配電函11は、ポール70に設置されている。機器Kには、図示しない電気配線が接続される。配電函11は、ボックス本体12が前方に開口する向きで設置される。
【0019】
ボックス本体12は、合成樹脂製である。ボックス本体12は、四角平板状の背面壁13と、背面壁13の縁から突出する四角枠状の周壁14と、を備える。ボックス本体12は、背面壁13に図示しない四つの取付孔を備える。各取付孔は、背面壁13の隅付近に配置される。四つの取付孔は、背面壁13に機器固定板35を取り付けるための孔である。
【0020】
配電函11は、背面壁13に固定された機器固定板35を備える。機器固定板35は、四角板状である。機器固定板35の板厚方向の一面は接触面35aであり、機器固定板35の板厚方向の他面は固定面35bである。機器固定板35は、四つの貫通孔35cを有する。機器固定板35の各貫通孔35cを貫通したタッピングビス36は、取付孔に強制的にねじ込まれている。タッピングビス36が背面壁13に強制的にねじ込まれることにより、機器固定板35は、接触面35aを背面壁13に接触させた状態で背面壁13に固定されている。機器固定板35の固定面35bは、ボックス本体12の背面壁13と反対側に臨む。
【0021】
周壁14は、上壁15と、下壁16と、左壁17と、右壁18と、から構成される。上壁15、下壁16、左壁17、及び右壁18は四角板状である。ボックス本体12は、背面壁13と周壁14とで画定される空間に収容空間Sを有する。ボックス本体12は、背面壁13と反対側において開口する。配電函11は、ボックス本体12の上壁15が下壁16よりも鉛直方向の上側に位置する状態に設置される。上壁15と下壁16は、鉛直方向Yに対向する。左壁17と右壁18は水平方向Xに対向する。
【0022】
上壁15において、収容空間Sに臨む面を上壁面15aとする。下壁16において、収容空間Sに臨む面を下壁面16aとする。左壁17において、収容空間Sに臨む面を左壁面17aとする。右壁18において、収容空間Sに臨む面を右壁面18aとする。上壁面15a、下壁面16a、左壁面17a、及び右壁面18aは四角形状である。上壁面15aと下壁面16aを最短距離で結ぶ直線の長さを、鉛直長さL1とする。鉛直長さL1は、鉛直方向Yに沿った上壁面15aと下壁面16aとの間隔である。
【0023】
左壁面17aと右壁面18aを最短距離で結ぶ直線の長さを、水平長さL2とする。水平長さL2は、水平方向Xに沿った左壁面17aと右壁面18aとの間隔である。また、ボックス本体12において、鉛直方向Y及び水平方向Xに直交する方向を奥行方向Zとする。奥行方向Zへのボックス本体12の寸法を奥行長さL3とする。奥行長さL3は、ボックス本体12の開口縁から背面壁13に至るまでの最短寸法である。
【0024】
蓋体30は、合成樹脂製である。蓋体30は、右壁18に対し、図示しないヒンジ機構を介して開閉自在に一体化されている。なお、ヒンジ機構を介して蓋体30を一体化する位置は、右壁18以外の上壁15、下壁16、又は左壁17であってもよい。
【0025】
図3又は図5に示すように、蓋体30は、収容空間Sを閉鎖する閉位置を取る。蓋体30が閉位置に配置されると、蓋体30によってボックス本体12が閉鎖される。ボックス本体12が蓋体30によって閉鎖されることにより、配電函11の内側には閉じられた収容空間Sが画定される。蓋体30において、収容空間Sに臨む面を内面30aとする。ボックス本体12における背面壁13の内面、上壁面15a、下壁面16a、左壁面17a、右壁面18a、及び蓋体30の内面30aは、収容空間Sに臨む配電函11の内面である。
【0026】
図2又は図4に示すように、ヒンジ機構31を介して蓋体30を閉位置から回動させると、収容空間Sを開放することができる。蓋体30を開き切った開位置では、収容空間Sの全体がボックス本体12の前方に向けて開放される。
【0027】
ボックス本体12の上壁15は、庇19を備える。ボックス本体12は、背面壁13、及び下壁16に導入口20を備える。導入口20は、ボックス本体12内に配線・配管材を引き込むための孔である。導入口20は、収容空間Sと配電函11の外側とを連通させる。配線・配管材が引き込まれない導入口20は、閉塞部材21によって閉塞されている。導入口20を通じてボックス本体12内に配線・配管材を引き込むとき、閉塞部材21はボックス本体12から除去される。
【0028】
消火部材設置構造及び配電函11は、収容空間Sに配置される消火部材装置40を備える。
図1図2図4、又は図5に示すように、消火部材装置40は、収容空間Sに配置される導熱部材41と、導熱部材41が備える導熱部43と熱結合される消火部材50と、を有する。
【0029】
導熱部材41は、金属板製である。導熱部材41は、長四角板状の固定部42と、長四角板状の導熱部43と、を一体に備える。固定部42は、板厚方向の第1面に接触面42aを有する。接触面42aは平坦面である。固定部42は、板厚方向の第2面に露出面42bを有する。露出面42bは平坦面である。固定部42は、複数の固定孔42cを有する。固定孔42cは、固定部42を板厚方向に貫通する。
【0030】
導熱部43は、板厚方向の第1面に外面43aを有する。外面43aは平坦面である。また、外面43aは、固定部42の接触面42aに連続する。固定部42の接触面42aと、導熱部43の外面43aとは直交する。導熱部43は、板厚方向の第2面に受熱面43bを有する。受熱面43bは平坦な長四角形状の面である。また、受熱面43bは、固定部42の露出面42bに連続する。固定部42の露出面42bと、導熱部43の受熱面43bとは直交する。
【0031】
接触面42a又は露出面42bから導熱部材41を見たとき、導熱部材41は長四角形状である。接触面42a又は露出面42bから導熱部材41を見たときの導熱部材41の短辺での寸法を第1寸法W1とする。導熱部材41の第1寸法W1は、ボックス本体12の鉛直長さL1より遙かに小さい。
【0032】
接触面42a又は露出面42bから導熱部材41を見たときの導熱部材41の長辺での寸法を導熱部材41の第2寸法W2とする。導熱部材41の第2寸法W2は、ボックス本体12の水平長さL2より僅かに小さい。
【0033】
図6に示すように、外面43a又は受熱面43bから導熱部材41を見たときの導熱部材41の短辺での寸法を導熱部材41の第3寸法W3とする。導熱部材41の第3寸法W3は、ボックス本体12の奥行長さL3より若干小さい。したがって、導熱部43の第2面である受熱面43bの面積は、上壁15の上壁面15aの面積より小さい。
【0034】
図4に示すように、導熱部材41は、固定部42を機器固定板35に固定することによりボックス本体12に固定されている。詳細には、固定部42の固定孔42cに挿通した固定ビス44を、機器固定板35に強制的にねじ込むことで、導熱部材41がボックス本体12に固定されている。導熱部43の外面43aと、上壁面15aとの間には隙間が形成されている。また、導熱部43の外面43aと、上壁面15aとの間の隙間は、水平方向Xに一定である。
【0035】
図6に示すように、収容空間Sの内側から受熱面43bを見た場合、受熱面43bの長辺は、水平方向Xに延び、受熱面43bの短辺は、奥行方向Zに延びる。受熱面43bの一対の長辺のうちの一方は、上壁面15aの一対の長辺のうちの開口寄りの長辺の近傍で、当該長辺に平行に延び、他方は、上壁面15aの背面壁13寄りの長辺の近傍で、当該長辺に沿って延びる。受熱面43bの一対の短辺のうちの一方は、上壁面15aの一対の短辺のうちの左壁面17a寄りの短辺に沿って延び、他方は、右壁面18a寄りの短辺に沿って延びる。
【0036】
収容空間Sの内側から導熱部43及び上壁15を見た場合、導熱部43は、上壁面15aの全体を覆っている。なお、「上壁面15aの全体を覆う」とは、上壁面15aの全てを覆うことはもちろんのこと、収容空間S側から導熱部43及び上壁15を見た平面視において、上壁面15aのほぼ全体を覆い、上壁面15aの一部が見える場合も含む。
【0037】
消火部材50は、収容空間Sに配置された機器Kが発火した際の熱に反応して消火性ガス又は消火性液体を発生させる。
図7に示すように、消火部材50は、シート状である。消火部材50は、シート状の外装材51と、外装材51内に封入される消火薬剤52と、を有する。なお、図7は、消火部材50の断面図であるが、視認性を良好にするため、外装材51のハッチングを省略している。外装材51は、合成樹脂製のフィルムにより形成される。フィルムは厚さが0.5~3mm程度で、材質が好ましくはポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリプロピレンなど融点が110~160℃のポリオレフィンとなっている。外装材51内には枠53が配置されていてもよい。枠53は、例えば、ポリエチレン製である。枠53は矩形状である。枠53は、外装材51内に消火薬剤52の充填空間を確保する。
【0038】
消火薬剤52としては、例えば、電気絶縁性を有する気体、例えばハロゲン化物消火薬剤が用いられる。消火薬剤52は、その他にも、常温では液状をなし、火災時に加熱により気化するものが用いられる。つまり、消火薬剤52は、熱に反応して消火性ガスを発生させるものである。また、消火薬剤52は、火災時の加熱により液化して消火性液体を発生させるものであってもよい。発生した消火性ガス又は消火性液体は、空気より重い。このため、発生した消火性ガス又は消火性液体は、導熱部43の受熱面43bから下方へ落ちる。
【0039】
消火部材50は、厚さ方向の片面に貼着面50aを有する。貼着面50aは、消火部材50を受熱面43bに貼着する。
図2又は図6に示すように、貼着面50aの面積は、受熱面43bの複数箇所に貼着面50aを貼着すべく受熱面43bの面積より小さい。受熱面43bには、二つの消火部材50が貼着されている。消火部材50は厚さ方向における貼着面50aの反対面に反応面50bを有する。反応面50bの面積は、受熱面43bの面積より小さい。
【0040】
各消火部材50は、貼着面50a及び反応面50bの長辺が、受熱面43bの長辺方向に延びる状態で受熱面43bに貼着されている。二つの消火部材50は、受熱面43bの長辺方向に間隔を空けて受熱面43bに貼着されている。受熱面43bにおいて、二つの消火部材50が貼着された部分以外は、収容空間S内に露出している。二つの消火部材50のうち、左壁17寄りの消火部材50を第1消火部材501とし、右壁18寄りの消火部材50を第2消火部材502とする。
【0041】
次に、配電函11及び消火部材装置40を備える消火部材設置構造について説明する。
図5に示すように、配電函11は、ポール70に固定されている。ポール70への配電函11の固定は、バンドBで行われるが、ポール70への配電函11の固定方法は、バンドB以外でもよい。
【0042】
図2又は図4に示すように、配電函11において、蓋体30をヒンジ機構31によって回動させ、蓋体30を開位置に位置させると、収容空間Sの全体が前方に向けて開放される。また、機器固定板35の固定面35bは、収容空間Sから前方に臨む。収容空間Sには、機器Kが配置されている。機器Kは、機器固定板35に固定されている。本実施形態では、機器固定板35には二つの機器Kが固定されている。一方の第1機器K1は、機器固定板35の左壁17寄りに固定され、他方の第2機器K2は、機器固定板35の右壁18寄りに固定されている。第1機器K1は、第2機器K2よりも奥行方向Zの寸法、鉛直方向Yの寸法、及び水平方向Xの寸法が大きい。
【0043】
第1機器K1及び第2機器K2を上から見た平面視において、第1機器K1の上端面K1a及び第2機器K2の上端面K2aは四角形状である。収容空間Sには、消火部材装置40が配置されている。消火部材装置40の導熱部43は、図5又は図6に示すように、収容空間Sに配置される第1機器K1及び第2機器K2の上方に配置されている。導熱部43は、第1機器K1の上端面K1a、及び第2機器K2の上端面K2aの全面を上方から覆っている。受熱面43bは、収容空間Sに臨む内面のうち、第1機器K1及び第2機器K2の上方に位置する上壁面15aに沿う。受熱面43bの面積は、第1機器K1の平面視における上端面K1aの面積、及び第2機器K2の平面視における上端面K2aの面積よりも大きい。
【0044】
受熱面43bは、第1機器K1の上端面K1aに対し、水平方向X及び奥行方向Zに大きい。同じく、受熱面43bは、第2機器K2の上端面K2aに対し、水平方向X及び奥行方向Zに大きい。配電函11を上方から見た平面視において、導熱部43の先端縁よりも奥行方向Zに沿って背面壁13寄りに離れた位置に第1機器K1の上端面K1a及び第2機器K2の上端面K2aが位置している。
【0045】
図4に示すように、受熱面43bと、各上端面K1a,K2aとは互いに平行である。鉛直方向Yに沿った受熱面43bから第1機器K1の上端面K1aまでの距離T1と、鉛直方向Yに沿った受熱面43bから第2機器K2の上端面K2aまでの距離T2は等しい。なお、機器Kの機器固定板35に対する固定状態においては、距離T1と距離T2は異なっていてもよい。
【0046】
受熱面43bの一部には第1消火部材501が配置され、受熱面43bのその他の部分には第2消火部材502が配置されている。第1消火部材501は、第1機器K1の上方に配置されている。第2消火部材502は、第2機器K2の上方に配置されている。第1消火部材501の反応面50bと、第1機器K1の上端面K1aとは平行である。また、第2消火部材502の反応面50bと、第2機器K2の上端面K2aとは平行である。鉛直方向Yに沿った第1消火部材501の反応面50bから第1機器K1の上端面K1aまでの距離T3と、鉛直方向Yに沿った第2消火部材502の反応面50bから第2機器K2の上端面K2aまでの距離T4は等しい。
【0047】
配電函11の平面視において、図6に示すように、第1消火部材501における背面壁13寄りの一部は、第1機器K1の上端面K1aに重なり合っている。このため、第1消火部材501の反応面50bの一部は、鉛直方向Yにおいて第1機器K1の上端面K1aに対向する。一方、配電函11の平面視において、第2消火部材502は、第2機器K2の上端面K2aに重なり合っていない。このため、第2消火部材502の反応面50bは、鉛直方向Yにおいて第2機器K2の上端面K2aに対向していない。第2機器K2は、第2消火部材502よりも背面壁13寄りに配置され、奥行方向Zに離れている。
【0048】
図8に示すように、第1機器K1及び第2機器K2には配線・配管材としてのケーブル60が接続されている。ケーブル60は、第1機器K1及び第2機器K2の各々に対して接続されている。
【0049】
第1機器K1に接続されるケーブル60は、背面壁13の導入口20を通じて収容空間Sに引き込まれている。第2機器K2に接続されるケーブル60は、第1機器K1に接続されたケーブル60を引き込んだ導入口20とは別の導入口20を通じて収容空間Sに引き込まれている。導入口20の内周縁と、ケーブル60の外周面との隙間には隙間充填部材63が充填され、隙間が閉じられている。隙間充填部材63としては、パテ、モルタルが挙げられる。また、隙間を閉じる方法としては、隙間を覆うように粘着テープを背面壁13とケーブル60に貼着してもよい。
【0050】
次に、消火部材設置構造、配電函11、及び消火部材装置40の作用を説明する。
図9に示すように、第1機器K1から発火した場合、発火場所が鉛直方向Yにおいて第1消火部材501に対向していると、第1消火部材501の反応面50bが発火場所からの熱を受けて加熱される。発火場所が鉛直方向Yにおいて受熱面43bに対向していると、受熱面43bが発火場所からの熱を受けて加熱される。第2機器K2から発火した場合、第2機器K2は鉛直方向Yにおいて受熱面43bに対向しているため、受熱面43bが発火場所からの熱を受けて加熱される。
【0051】
したがって、第1機器K1及び第2機器K2のいずれかが発火し、発火場所から消火部材50が水平方向X及び奥行方向Zに離れていても、発火場所からの熱を受熱面43bで受けることができる。熱は、導熱部43の全体に速やかに伝わる。その結果、導熱部43の熱が第1消火部材501及び第2消火部材502に速やかに伝わる。そして、第1消火部材501及び第2消火部材502の温度が外装材51の融点を超えると、外装材51が溶融し、消火薬剤52から消火性ガス又は消火性液体が発生する。発生した消火性ガス又は消火性液体は、受熱面43bより下方に落ち、第1機器K1及び第2機器K2に散布される。その結果、火元となった第1機器K1及び第2機器K2のいずれかは、消火性ガス又は消火性液体により消火される。
【0052】
上記第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)消火部材設置構造では、第1機器K1及び第2機器K2の上方に受熱面43bが配置され、受熱面43bの一部に第1消火部材501及び第2消火部材502が配置されている。このため、第1機器K1及び第2機器K2のいずれかが発火し、その発火場所から第1消火部材501及び第2消火部材502が離れて配置されていても、発火に伴う熱を受熱面43bで受け、導熱部43を速やかに加熱させることができる。その結果、第1消火部材501及び第2消火部材502から消火性ガス又は消火性液体を発生させることができ、消火の遅れを無くすことができる。
【0053】
(1-2)導熱部43は、配電函11の上壁面15aに沿って配置されている。上壁面15aは、収容空間Sを画定する上壁15の内面であり、収容空間Sに臨む面である。そして、第1機器K1及び第2機器K2は収容空間Sに配置される。このため、上壁面15aに導熱部43を沿わせることで、受熱面43bによって上端面K1a,K2aの各々の全面を上から覆うことができる。その結果、第1機器K1及び第2機器K2のいずれから発火しても、発火に伴う熱を受熱面43bで受けることができる。
【0054】
(1-3)第1消火部材501及び第2消火部材502は、受熱面43bに配置されている。このため、発火場所によっては、発火場所からの熱によって第1消火部材501及び第2消火部材502を直接加熱できる。受熱面43bと反対側となる導熱部43の外面43aに第1消火部材501及び第2消火部材502が配置される場合と比べると、第1消火部材501及び第2消火部材502が加熱されやすくなる。
【0055】
(1-4)第1消火部材501と第2消火部材502は、受熱面43bにおいて水平方向Xに並んで配置されている。例えば、受熱面43bに消火部材50が一つだけ配置される場合と比べると、消火部材50によって消火できる範囲を広げることができ、消火性能を高めることができる。
【0056】
(1-5)消火部材50の消火薬剤52は、熱に反応すると、空気より重い消火性ガス又は消火性液体を発生させる。そして、第1消火部材501は第1機器K1の上方に配置され、第2消火部材502は第2機器K2の上方に配置されている。このため、消火部材50から消火性ガス又は消火性液体が発生すると、消火性ガス又は消火性液体を発火場所の上から散布できる。よって、消火部材50によって効率良く消火できる。
【0057】
(1-6)導入口20の内周縁と、ケーブル60の外周面との隙間には隙間充填部材63が充填され、隙間充填部材63によって隙間が縮小されている。このため、隙間に隙間充填部材63が充填されない場合と比べると、導入口20を通じて収容空間Sに入る空気を減らすことができ、延焼を抑制できる。特に、消火部材50から消火性ガスが発生した場合、消火性ガスが導入口20を通じて配電函11の外部に洩れることを抑制し、配電函11の内部に消火性ガスを充満させることができる。また、消火性ガスが導入口20を通じて配電函11の外部に洩れることを抑制することで、蓋体30を開いて収容空間Sを開放させるまで、消火性ガスを配電函11の内部に充満させておくことができ、一度、消火された後に、高温による自己発火を抑制できる。
【0058】
(1-7)配電函11と消火部材装置40とは予め一体化され、配電函11の収容空間Sには導熱部材41及び消火部材50が配置されている。このため、ポール70に固定された配電函11に機器Kを配置するだけで消火部材設置構造を構築できる。例えば、ボックス本体12と蓋体30だけの配電函11に、消火部材装置40として、導熱部材41と、消火部材50とを別々に配置する場合と比べると、消火部材設置構造を簡単に構築できる。
【0059】
(1-8)消火部材50は、シート状であり、かつ厚さ方向の片面に、受熱面43bに貼着される貼着面50aを有する。そして、貼着面50aの面積は、受熱面43bの複数箇所に貼着面50aを貼着すべく受熱面43bの面積より小さい。このため、受熱面43bに第1消火部材501と第2消火部材502を貼着できる。
【0060】
(1-9)消火部材50は貼着面50aを有するため、受熱面43bに消火部材50を簡単に貼着でき、消火部材設置構造の構築が容易になる。
(第2の実施形態)
次に、消火部材設置構造、配電函、及び消火部材装置を具体化した第2の実施形態を図10図12にしたがって説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の配電函を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0061】
図10図12に示すように、消火部材設置構造は、配電函71を備える。配電函71は、一面に開口するボックス本体72を備える。配電函71は、ボックス本体72が上方に開口する向きで設置される。
【0062】
ボックス本体72は、合成樹脂製である。ボックス本体72は、四角板状の底壁73と、底壁73の縁から突出する四角枠状の周壁74と、を備える。ボックス本体72の底壁73には機器固定板35が固定されている。詳細に図示しないが、機器固定板35は、貫通孔に挿通したタッピングビス36を底壁73に設けた取付孔に螺合することにより、底壁73に固定されている。
【0063】
ボックス本体72は、底壁73の四隅から突出するボス部69を備える。四つのボス部69の各々は、上端面から凹むボス孔69aを備える。ボス孔69aは雌ねじである。
周壁74は、第1側壁75と、第2側壁76と、第3側壁77と、第4側壁78と、から構成される。ボックス本体72は、底壁73と周壁74とで囲まれる空間に収容空間Sを有する。収容空間Sは、底壁73と反対側において開口する。
【0064】
第1側壁75において、収容空間Sに臨む面を第1側面75aとする。第2側壁76において、収容空間Sに臨む面を第2側面76aとする。第3側壁77において、収容空間Sに臨む面を第3側面77aとする。第4側壁78において、収容空間Sに臨む面を第4側面78aとする。第1側面75aと第2側面76aは第1方向N1に対向し、第3側面77aと第4側面78aは第2方向N2に対向する。
【0065】
第1側面75aと第2側面76aの最短距離を第1長さとする。第1長さは、第1方向N1に沿った第1側面75aと第2側面76aとの間隔である。第3側面77aと第4側面78aの最短距離を第2長さとする。第2長さは、第2方向N2に沿った第3側面77aと第4側面78aとの間隔である。
【0066】
また、ボックス本体72において、第1方向N1及び第2方向N2に直交する方向を第3方向N3とする。第3方向N3へのボックス本体72の寸法を第3長さとする。第3長さは、ボックス本体72の開口縁から底壁73に至るまでの最短寸法である。
【0067】
配電函71は、収容空間Sを閉鎖する蓋体80を備える。蓋体80は、合成樹脂製である。蓋体80は四角板状である。蓋体80は四隅にビス孔81を備える。ビス孔81に挿通したビス82をボックス本体72のボス孔69aに螺合することにより、蓋体80がボックス本体72に固定される。
【0068】
収容空間Sが蓋体80によって閉鎖されることにより、配電函71の内側には閉じられた収容空間Sが画定される。蓋体80は、板厚方向の一面に内面80aを有し、板厚方向の他面に外面80bを有する。第1側面75a、第2側面76a、第3側面77a、第4側面78a、及び蓋体80の内面80aは、収容空間Sに臨む配電函71の内面である。
【0069】
消火部材設置構造は、配電函71の収容空間Sに配置される消火部材装置90を備える。
消火部材装置90は、配電函71の蓋体80に固定される導熱部材91と、導熱部材91と熱結合される消火部材50と、を有する。
【0070】
導熱部材91は、金属製の四角板状である。導熱部材91は、板厚方向の第1面に接触面91aを有する。接触面91aは平坦面である。導熱部材91は、板厚方向の第2面に受熱面91bを有する。受熱面91bは平坦な四角形状である。導熱部材91は、四隅に固定部としての固定孔91cを備える。第2の実施形態では、導熱部材91における固定孔91c以外の部分が導熱部を構成している。
【0071】
導熱部材91の第1方向N1への寸法を第1寸法W1とする。導熱部材91の第1寸法W1は、ボックス本体72の第1長さより僅かに小さい。導熱部材91の第2方向N2への寸法を第2寸法W2とする。導熱部材91の第2寸法W2は、ボックス本体72の第2長さより僅かに小さい。導熱部材91の受熱面91bの面積は、蓋体80の内面80aの面積より若干小さい。
【0072】
導熱部材91は、接触面91aを蓋体80の内面80aに接触させた状態で、蓋体80に固定される。詳細には、導熱部材91の固定孔91cに挿通した固定ビス94を、蓋体80に強制的にねじ込むことで、導熱部材91が蓋体80に固定されている。
【0073】
収容空間Sの内側から導熱部材91及び蓋体80を見た平面視では、導熱部材91は、蓋体80の内面80aの全体を覆う。なお、「内面80aの全体を覆う」とは、内面80aの全てを覆うことはもちろんのこと、収容空間S側から導熱部材91及び蓋体80を見た平面視において、内面80aのほぼ全体を覆い、内面80aの一部が見える場合も含む。
【0074】
導熱部材91の受熱面91bには、二つの消火部材50が貼着されている。消火部材50の反応面50bの面積は、受熱面91bの面積より小さい。各消火部材50は、貼着面50a及び反応面50bの長辺が、受熱面91bの第1方向N1に延びる状態で受熱面91bに貼着されている。二つの消火部材50は、受熱面91bの第2方向N2に間隔を空けて受熱面91bに貼着されている。
【0075】
受熱面91bにおいて、二つの消火部材50が貼着された部分以外は、収容空間S内に露出している。二つの消火部材50のうち、第3側壁77寄りの消火部材50を第1消火部材501とし、第4側壁78寄りの消火部材50を第2消火部材502とする。
【0076】
次に、配電函71及び消火部材装置90を備える消火部材設置構造について説明する。
配電函71は、コンクリート基礎に設置されたり、天井に設置される。第2の実施形態では、配電函71はコンクリート基礎上に設置されている。
【0077】
配電函71において、蓋体80をボックス本体12から取り外すと、収容空間Sの全体が上方に向けて開放される。また、機器固定板35の固定面35bは、収容空間Sから上方に臨む。収容空間Sには、機器Kが配置されている。機器Kは、機器固定板35に固定されている。本実施形態では、機器固定板35には一つの機器Kが固定されている。機器Kは、機器固定板35の中央に固定されている。機器Kを上から見た平面視において、機器Kの上端面Kaは第1方向N1に長辺が延びる長四角形状である。
【0078】
収容空間Sには、消火部材装置90が配置されている。消火部材装置90の導熱部材91は、収容空間Sに配置される機器Kの上方に配置されている。導熱部材91は、機器Kの上端面Kaの全面を上方から覆っている。受熱面91bは、収容空間Sに臨む内面のうち、機器Kの上方に位置する蓋体80の内面80aに沿う。受熱面91bの面積は、機器Kの上端面Kaの面積よりも大きい。
【0079】
受熱面91bは、機器Kの上端面Kaに対し、第1方向N1及び第2方向N2に大きい。配電函71を上から見た平面視において、受熱面91bの外縁よりも内側に離れた位置に機器Kの上端面Kaが位置している。
【0080】
受熱面91bと、上端面Kaとは互いに平行である。受熱面91bの一部には第1消火部材501が配置され、受熱面91bのその他の部分には第2消火部材502が配置されている。第1消火部材501及び第2消火部材502は、機器Kの上方に配置されている。
【0081】
配電函71の平面視において、第2方向N2における第1消火部材501と第2消火部材502の間に機器Kが配置されている。このため、第1消火部材501及び第2消火部材502は、第3方向N3において、機器Kの上端面Kaに重なり合っていない。機器Kには図示しないケーブルが接続されている。配電函71には、図示しない電線管が接続されている。電線管の内部にケーブルが配線されている。
【0082】
次に、消火部材設置構造、配電函71、及び消火部材装置90の作用を説明する。
機器Kから発火した場合、発火場所は、鉛直方向Yにおいて第1消火部材501及び第2消火部材502に対向せず、受熱面91bに対向している。このため、受熱面91bは発火場所からの熱を受けて加熱される。
【0083】
したがって、機器Kが発火し、発火場所から消火部材50が離れていても、発火場所からの熱を受熱面91bで受けることができる。熱は、導熱部材91の全体に速やかに伝わる。その結果、導熱部材91の熱が第1消火部材501及び第2消火部材502に速やかに伝わる。そして、第1消火部材501及び第2消火部材502の温度が外装材51の融点を超えると、外装材51が溶融し、消火薬剤52から消火性ガス又は消火性液体が発生する。発生した消火性ガス又は消火性液体は、受熱面91bより下方に落ち、機器Kに散布される。その結果、火元となった機器Kは、消火性ガス又は消火性液体により消火される。
【0084】
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1-1)~(1-9)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(2-1)消火部材装置90の導熱部材91を蓋体80の内面80aに固定することで、蓋体80に導熱部材91と第1消火部材501及び第2消火部材502を一体化できる。そして、収容空間Sを閉鎖するためにボックス本体72に蓋体80を固定することで、消火部材装置90を収容空間Sに配置できる。このため、配電函71に機器Kを配置し、かつ配電函71を構築するだけで消火部材設置構造を構築できる。例えば、ボックス本体72と蓋体80だけの配電函71に、導熱部材91と、消火部材50とを別々に配置する場合と比べると、消火部材設置構造を簡単に構築できる。
【0085】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 消火部材50は、貼着面50aを有していなくてもよい。この場合、消火部材50は、接着剤によって受熱面43b,91bに接着されてもよいし、粘着テープで受熱面43b,91bに貼着されてもよい。
【0086】
○ 第1の実施形態において、ボックス本体12の下壁面16a、左壁面17a、右壁面18a、及び蓋体30の内面30aの少なくとも一つに沿うように導熱部材41を配置し、各面16a,17a,18a,30aの少なくとも一つに沿うように受熱面を設けてもよい。
【0087】
○ 第2の実施形態において、ボックス本体72の第1側面75a、第2側面76a、第3側面77a、第4側面78aの少なくとも一つに沿うように導熱部材91を配置し、各面75a,76a,77a,78aの少なくとも一つに沿うように受熱面を設けてもよい。
【0088】
○ 各実施形態において、導入口20とケーブル60との間の隙間は、隙間充填部材63によって縮小されていれば、隙間が閉塞されていなくてもよい。
○ 消火薬剤52から発生する消火性ガス又は消火性液体は、空気より軽くてもよい。
【0089】
○ 各実施形態において、消火部材50を一つだけ受熱面43b,91bに配置してもよい。この場合、消火部材50を、受熱面43b,91bの全面を覆うように消火部材50における貼着面50aの面積を、受熱面43b,91bの面積と等しくしてもよい。又は、消火部材50が受熱面43b,91bの一部を覆うように消火部材50における貼着面50aの面積を、受熱面43b,91bの面積より小さくしてもよい。
【0090】
○ 各実施形態において、複数の消火部材50を受熱面43b,91bに配置した場合、受熱面43b,91bの全面を覆うように、複数の消火部材50を隙間無く配置してもよい。
【0091】
○ 消火部材50は、受熱面43b,91bに三つ以上配置されていてもよいし、一つだけ配置されていてもよい。
○ 第1の実施形態において、第1消火部材501は、平面視において、第1機器K1の上端面K1aと鉛直方向Yに重ならないように受熱面43bに配置されていてもよい。その一方で、第2消火部材502は、平面視において、第2機器K2の上端面K2aの少なくとも一部と鉛直方向Yに重なるように受熱面43bに配置されていてもよい。
【0092】
又は、第1の実施形態において、第1消火部材501は、平面視において、第1機器K1の上端面K1aの少なくとも一部と鉛直方向Yに重なるように受熱面43bに配置され、第2消火部材502も、平面視において、第2機器K2の上端面K2aの少なくとも一部と鉛直方向Yに重なるように受熱面43bに配置されていてもよい。
【0093】
○ 第2の実施形態において、第1消火部材501及び第2消火部材502の少なくとも一方は、平面視において、機器Kの上端面Kaの一部と鉛直方向Yに重なるように受熱面91bに配置されていてもよい。
【0094】
○ 第1の実施形態において、消火部材50は、導熱部43の外面43aに配置されていてもよい。
○ 第1の実施形態において、消火部材50は周壁14の内面に貼着されていてもよい。この場合、消火部材50と導熱部43とは、例えば、金属板によって熱結合されている。なお、上壁15の上壁面15aに沿う導熱部43、及び受熱面43bに配置される消火部材50は、設けられていてもよいし、無くてもよい。
【0095】
○ 第2の実施形態において、消火部材50は、周壁74の内面に貼着されていてもよい。この場合、消火部材50と導熱部材91とは、例えば、金属板によって熱結合されている。なお、蓋体80の内面80aに沿う導熱部材91、及び受熱面91bに配置される消火部材50は、設けられていてもよいし、無くてもよい。
【0096】
○ 第1の実施形態において、導熱部材41は、導熱部43が上壁15の上壁面15aに沿って配置できれば、固定部42は、機器固定板35ではなく、周壁14のいずれかに固定されてもよい。
【0097】
○ 第2の実施形態において、導熱部材91は、導熱部材91に対し、直交する板状の固定部を備えていてもよく、この場合、導熱部材91の固定部は、周壁74のいずれかに固定される。
【0098】
○ 第1の実施形態において、導熱部43と固定部42は、外面43aと接触面42a、及び受熱面43bと露出面42bとが直交していなくてもよい。この場合、導熱部43の受熱面43bは、上壁15の上壁面15aに対し傾斜する。
【0099】
○ 各実施形態において、機器固定板35は無くてもよい。この場合、第1の実施形態では、機器Kは背面壁13に直接固定され、第2の実施形態では、機器Kは底壁73に直接固定される。
【0100】
○ 第1の実施形態において、導熱部43の外面43aと上壁15の上壁面15aとの間に隙間が存在していたが、導熱部43の外面43aと上壁15の上壁面15aとが接触していてもよい。
【0101】
○ 第1の実施形態において、配電函11と、消火部材装置40とを別体としておく。消火部材設置構造を構築するには、まず、ボックス本体12の上壁15が下壁16より鉛直方向Yの上方に位置するように配電函11をポール70に設置する。その後、収容空間Sに配置された機器Kの上方に受熱面43bが位置するように、消火部材装置40を収容空間S内に配置する。そして、消火部材装置40における導熱部材41の固定部42をボックス本体12に固定し、受熱面43bを上壁面15aに沿わせて配置するとともに、機器Kの上方に位置するように、受熱面43bを配置することで、消火部材設置構造が構築される。このように構成した場合、収容空間Sに配置した機器Kの真上に受熱面43bを配置すればよいため、発火した場合の熱を受熱面43bで受ける機能を有する消火部材設置構造を簡単に構築できる。
【0102】
なお、配電函11をポール70に設置した後、消火部材装置40を収容空間Sに配置し、その後、受熱面43bの下方に機器Kが配置されるように、機器Kを収容空間Sに配置してもよい。
【0103】
○ 隙間充填部材63は、配電函11の導入口20の内周面に接するように隙間に詰められるものに限らない。例えば、配電函11に接続された電線管等の保護管の内部であったり、配電函11と保護管とを接続する接続体の内部であってもよい。
【0104】
○ 第1の実施形態において、導熱部材41の第3寸法W3は、ボックス本体12の奥行長さL3より若干小さいが、これに限らない。蓋体30が、内側が凹む形状である場合は、第3寸法W3は奥行長さL3より大きくてもよい。この場合、導熱部材41の導熱部43は、ボックス本体12の開口縁を越えて、蓋体30の内側に入り込む。
【0105】
○ 第1の実施形態において、導熱部材41の固定部42は、機器固定板35に対しタッピングビス36以外の方法で固定されていてもよく、例えば、接着剤や、粘着テープによって機器固定板35に固定されていてもよい。第2の実施形態において、導熱部材91は、蓋体80に対し固定ビス94以外の方法で固定されていてもよく、例えば、接着剤や、粘着テープによって、蓋体80に固定されていてもよい。
【0106】
○ 第1の実施形態において、配電函11の鉛直長さL1、水平長さL2、及び奥行長さL3を変更して、配電函11の容積を変更してもよい。同じく、第2の実施形態において、配電函71の容積を変更してもよい。この場合、配電函11,71の容積の変更に合わせて、消火部材50を増減すればよい。
【符号の説明】
【0107】
K…機器、K1…第1機器、K2…第2機器、Ka,K1a,K2a…上端面、S…収容空間、11,71…配電函、20…導入口、40,90…消火部材装置、41…導熱部材、42…固定部、43…導熱部、43b,91b…受熱面、50…消火部材、50a…貼着面、60…配線・配管材としてのケーブル、63…隙間充填部材、91…導熱部を構成する導熱部材、91c…固定部としての固定孔、501…第1消火部材、502…第2消火部材。
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