(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】加工プログラムの分析装置と分析用プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4069 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
G05B19/4069
(21)【出願番号】P 2020200841
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】入江 航平
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/184460(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/179798(WO,A1)
【文献】特開2020-067863(JP,A)
【文献】特開2012-084079(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111413923(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/18-19/416
G05B19/42-19/46
B23Q15/00-15/28
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工プログラム内の隣接する複数の工具経路と、工具形状と、加工面形状とが入力され、前記複数の工具経路が交差する評価面と前記複数の工具経路との複数の交点を求める交点抽出部と、
前記複数の交点の各交点から、前記加工面形状に対して前記工具形状が接する工具位置までの距離を求める距離演算部と、
を備え
、
前記複数の交点は、前記評価面上で隣接している、加工プログラムの分析装置。
【請求項2】
前記距離演算部から出力される
、隣接する前記複数の交点における前記距離から、前記隣接する工具経路の少なくとも段差を求める分析部と、
前記分析部の分析結果を出力する出力部と、
を備えた請求項1に記載の加工プログラムの分析装置。
【請求項3】
前記距離演算部から出力される前記距離を補正量とする補正点を求め、該補正点を加えた工具経路を求める工具経路補正部と、
前記補正点を加えた工具経路を出力する出力部と、
を備えた請求項1に記載の加工プログラムの分析装置。
【請求項4】
前記交点抽出部は、複数の評価面を設定し、
隣接する前記複数の交点を評価面ごとに求める、請求項1から3のいずれか1項に記載の加工プログラムの分析装置。
【請求項5】
前記工具形状を有する工具は、ボールエンドミル、フラットエンドミル、ラジアスエンドミル、及びバレル工具のうちの一つである、請求項1から4のいずれか1項に記載の加工プログラムの分析装置。
【請求項6】
加工プログラムの分析装置としてのコンピュータに、
加工プログラム内の隣接する複数の工具経路と、工具形状と、加工面形状を入力し、前記複数の工具経路が交差する評価面と前記複数の工具経路との複数の交点を求める交点抽出機能と、
前記複数の交点の各交点から、前記加工面形状に対して前記工具形状が接する工具位置までの距離を求める距離演算機能と、
を実現させ
、
前記複数の交点は、前記評価面上で隣接している、分析用プログラム。
【請求項7】
前記コンピュータに、
前記距離演算機能により求められた
、隣接する前記複数の交点における前記距離から、前記隣接する工具経路の少なくとも段差を求める分析機能と、
前記分析機能による分析結果を出力する出力機能と、
を実現させるための、請求項6に記載の分析用プログラム。
【請求項8】
前記コンピュータに、
前記距離演算機能により求められた前記距離を補正量とする補正点を求め、該補正点を加えた工具経路を求める工具経路補正機能と、
前記補正点を加えた工具経路を出力する出力機能と、
を実現させるための請求項6に記載の分析用プログラム。
【請求項9】
前記交点抽出機能は、複数の評価面を設定し、
隣接する前記複数の交点を評価面ごとに求める、請求項6から8のいずれか1項に記載の分析用プログラム。
【請求項10】
前記工具形状を有する工具は、ボールエンドミル、フラットエンドミル、ラジアスエンドミル、及びバレル工具のうちの一つである、請求項6から9のいずれか1項に記載の分析用プログラム。
【請求項11】
請求項6から請求項10のいずれか1項に記載の分析用プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具経路の分析結果を得る、加工プログラムの分析装置と分析用プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
CAM(Computer Aided Manufacturing)から出力された自由曲面を含む加工プログラムにおいて、往復する工具経路などの隣接した工具経路に段差があると、加工面の傷又は筋目となることがある。
特許文献1には、モデルを生成することなく、安価にモデル表面の欠陥を認識することができる加工経路演算装置が記載されている。この加工経路演算装置は、主軸の位置を指示する複数の指令点に基づいて、ワークを加工する為の加工経路を演算する加工経路演算装置において、加工経路に交差する評価断面を設定する設定部と、設定部にて設定した評価断面及び加工経路の交点を演算する交点演算部と、交点演算部にて演算した交点に関し、加工後のワーク表面の凹凸度合を示す特徴量を演算する特徴量演算部と、特徴量演算部にて演算した特徴量に対応する画像データを生成する生成部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、隣接する工具経路(加工経路に対応する)の分析において、工具経路のみの入力では、目標の加工面形状を維持した工具経路の分析結果を得ることができない。
よって、隣接する工具経路の分析において、目標の加工面形状を維持した工具経路の分析結果を得ることができる加工プログラムの分析装置及び加工プログラムの分析方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 本開示の第1の態様は、加工プログラム内の隣接する複数の工具経路と、工具形状と、加工面形状とが入力され、前記複数の工具経路が交差する評価面と前記複数の工具経路との複数の交点を求める交点抽出部と、
前記複数の交点の各交点から、前記加工面形状に対して前記工具形状が接する工具位置までの距離を求める距離演算部と、
を備えた加工プログラムの分析装置である。
【0006】
(2) 本開示の第2の態様は、加工プログラムの分析装置としてのコンピュータに、
加工プログラム内の隣接する複数の工具経路と、工具形状と、加工面形状とが入力され、前記複数の工具経路が交差する評価面と前記複数の工具経路との複数の交点を求める交点抽出機能と、
前記複数の交点の各交点から、前記加工面形状に対して前記工具形状が接する工具位置までの距離を求める距離演算機能と、
を実現させるための、分析用プログラムである。
【0007】
(3) 本開示の第3の態様は、上記(2)の分析用プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の各態様によれば、隣接する工具経路の分析において、目標の加工面形状を維持した工具経路の分析結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1の実施形態の加工プログラムの分析装置を示すブロック図である。
【
図2】工具経路の指令点、及び工具経路と評価面との交点を示す図である。
【
図3】複数の交点の各交点から、加工面形状に対して工具形状が接する工具位置までの距離を求める方法を示す図である。
【
図4】3つの工具経路の3つの交点おける、距離と工具形状移動方向を説明するための図である。
【
図5】第1の実施形態における、加工プログラムの分析装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の第2の実施形態の加工プログラムの分析装置を示すブロック図である。
【
図7】工具経路の指令点、工具経路と評価面との交点及び補正点を繋ぐ曲線を示す図である。
【
図8】第2の実施形態における、加工プログラムの分析装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】工具として、ラジアスエンドミルを用いた場合に、複数の交点の各交点から、加工面形状に対して工具形状が接する工具位置までの距離を求める方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
本開示の第1の態様の実施形態の、加工プログラムの分析装置は、加工プログラム内の隣接する複数の工具経路と、工具形状と、加工面形状とが入力され、前記複数の工具経路が交差する評価面と前記複数の工具経路との複数の交点を求める交点抽出部と、前記複数の交点の各交点から、前記加工面形状に対して前記工具形状が接する工具位置までの距離を求める距離演算部と、を備える。
【0011】
本開示の第2の態様の実施形態の分析用プログラムは、加工プログラムの分析装置としてのコンピュータに、加工プログラム内の隣接する複数の工具経路と、工具形状と、加工面形状とが入力され、前記複数の工具経路が交差する評価面と前記複数の工具経路との複数の交点を求める交点抽出機能と、前記複数の交点の各交点から、前記加工面形状に対して前記工具形状が接する工具位置までの距離を求める距離演算機能と、を実現させる。
【0012】
本開示の第3の態様の実施形態のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本開示の第2の態様の実施形態の分析用プログラムを記録している。
【0013】
以下に説明する第1の実施形態の加工プログラムの分析装置では、一例として、加工プログラムの分析装置が交点抽出部と距離演算部に加えて、後述する分析部と出力部とを備えた例について説明する。また、第1の実施形態の分析用プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、一例として、分析用プログラムが交点抽出機能と距離演算機能に加えて、後述する分析機能と出力機能とを備えた例について説明する。
【0014】
また、以下に説明する第2の実施形態の加工プログラムの分析装置では、一例として、加工プログラムの分析装置が交点抽出部と距離演算部に加えて、後述する工具経路補正部と出力部とを備えた例について説明する。また、第2の実施形態の分析用プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、一例として、分析用プログラムが交点抽出機能と距離演算機能に加えて、後述する工具経路補正機能と出力機能とを備えた例について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は本開示の第1の実施形態の加工プログラムの分析装置を示すブロック図である。
図2は工具経路の指令点、及び工具経路と評価面との交点を示す図である。
図3は複数の交点の各交点から、加工面形状に対して工具形状が接する工具位置までの距離を求める方法を示す図である。
図4は、3つの工具経路の3つの交点おける、距離と工具形状移動方向を説明するための図である。
【0016】
加工プログラムの分析装置10は、
図1に示すように、交点抽出部11、距離演算部12、分析部13、及び出力部14を備えている。
交点抽出部11は、入力された工具経路における指令点CPを線分でつなぎ、工具経路の任意の点で、複数の工具経路が交差する評価面Sを設定し、この評価面Sと複数の工具経路との複数の交点INPを求めて、距離演算部12に出力する。複数の工具経路が交差する評価面Sは、ここでは複数の工具経路の進行方向に直交する平面となっているが、この平面に限定されず、複数の工具経路の進行方向に直交しない平面を用いてもよい。
図2では4つの工具経路と評価面Sとの4つの交点INPが示されている。
図2において、指令点CPは黒丸で示され、交点INPは三角で示されている。加工面形状PSは目標とする加工面形状である。
図2に示すように、工具経路は、工具形状100が往復して切削加工するように設定されている。工具形状100の工具は例えば、
図3に示すように、半径rのボールエンドミルが用いられる。
【0017】
交点抽出部11は、工具経路の複数の点にそれぞれ評価面Sを設定して、各評価面Sで複数の交点INPを求めて、距離演算部12に出力してもよい。
【0018】
距離演算部12は、入力された加工面形状と工具形状を用い、加工面形状に工具形状が接する理想的な工具位置を求め、交点抽出部11から出力される交点から理想的な工具位置までの距離を算出する。
図3を用いて説明すると、
図3に示すように、距離演算部12は、交点INPに工具形状100の先端がくるように配置する。距離演算部12は、工具形状100が加工面形状PSと交差(干渉)していない場合、工具形状100が加工面形状PSに接触するまで工具形状100を工具軸方向に少しずつ動かす。距離演算部12は、工具形状100が加工面形状PSに接触したら、元の交点INPの位置での工具形状100の先端から、工具形状100が加工面形状PSに接触したときの工具形状の先端(理想的な工具位置)IDPまでの距離Dと工具形状100の移動方向(ベクトル)を記憶する。
距離演算部12は、複数の工具経路の複数の交点INPの全てで、距離Dと工具形状100の移動方向を求めて記憶する。
図4においては、それぞれ3つの工具経路の交点INP1、交点INP2、交点INP3からの、距離D1(D=D1)と工具形状100の移動方向、距離D2(D=D2)と工具形状100の移動方向、距離D3(D=D3)と工具形状100の移動方向が示されている。
図3及び
図4において、交点INPを三角で示し、理想的な工具位置を丸で示している。
【0019】
分析部13は、複数の交点INPからの距離Dに基づいて工具経路間の段差を求めて分析する。例えば、
図4において、分析部13は、距離D1と距離D2との差を求めて工具経路間の段差を求め、距離D2と距離D3との和を求めて工具経路間の段差を求め、3つの工具経路における段差を分析する。
【0020】
出力部14は分析結果を出力する。出力部14は、例えば、液晶表示装置等の表示装置に分析結果を表示データとして出力したり、ハードディスク装置若しくはUSBメモリ等の記憶部にファイルとして記憶したり、又は通信部を介して分析結果のデータをネットワーク出力する。
【0021】
以上、加工プログラムの分析装置10に含まれる機能ブロックについて説明した。
これらの機能ブロックを実現するために、加工プログラムの分析装置10はコンピュータで構成でき、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を備える。また、加工プログラムの分析装置10としてのコンピュータは、アプリケーションソフトウェアやOS(Operating System)等の各種の制御用プログラムを格納したHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)といった主記憶装置も備える。
【0022】
そして、加工プログラムの分析装置10としてのコンピュータにおいて、演算処理装置が補助記憶装置からアプリケーションソフトウェアやOSを読み込み、読み込んだアプリケーションソフトウェアやOSを主記憶装置に展開させながら、これらのアプリケーションソフトウェアやOSに基づいた演算処理を行なう。また、この演算結果に基づいて、各装置が備える各種のハードウェアを制御する。これにより、本実施形態の機能ブロックは実現される。つまり、本実施形態は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
【0023】
次に、加工プログラムの分析装置10の動作についてフローチャートを用いて説明する。
図5は加工プログラムの分析装置の動作を示すフローチャートである。
図5に示す加工プログラムの分析装置の動作は、加工プログラムの分析装置10をコンピュータで構成した場合、分析用プログラムで実現できる。
【0024】
ステップS11において、交点抽出部11は、入力された工具経路の指令点CPを線分でつなぎ、工具経路の任意の点で、複数の工具経路が交差する評価面Sを設定し、この評価面Sと複数の工具経路との複数の交点INPを求める。
ステップS12において、距離演算部12は、入力された加工面形状と工具形状を用い、加工面形状に工具形状が接する理想的な工具位置を求め、交点抽出部11から出力される交点から理想的な工具位置までの距離と方向を算出する。
【0025】
ステップS13において、分析部13は、複数の交点INPからの距離Dに基づいて工具経路間の段差を求めて分析し、出力部14は分析結果を出力する。
【0026】
ステップS14において、交点抽出部11は、他の評価面を設定するどうかを判断する。交点抽出部11は、他の評価面を設定する場合はステップS11に戻り、他の評価面を設定しない場合は処理を終了する。
【0027】
以上説明した第1の実施形態によれば、加工プログラムの分析装置が、交点抽出部と距離演算部とを備えることで、隣接する工具経路の分析において、工具経路から目標の加工面形状までどの方向にどの程度離れているかを分析でき、隣接する工具経路の分析において、目標の加工面形状を維持した工具経路の分析結果が得られる。
また、加工プログラムの分析装置が、分析部と出力部とを備えることで、工具経路間の段差を求めて、出力することができる。
【0028】
(第2の実施形態)
図6は本開示の第2の実施形態の加工プログラムの分析装置を示すブロック図である。本実施形態の加工プログラムの分析装置10Aは、
図1に示す加工プログラムの分析装置10と比べ、分析部13の替わりに工具経路補正部15が設けられている。
図6に示す交点抽出部11、距離演算部12、及び出力部14の構成及び動作は
図1に示す交点抽出部11、距離演算部12、及び出力部14の構成及び動作と同じなので説明を省略する。
【0029】
工具経路補正部15は、距離演算部12から出力される距離を補正量とする補正点を求め、補正点を加えた工具経路を求める。
図4の例では、工具経路補正部15は、距離演算部12から、3つの工具経路の3つの交点INP1、INP2、INP3における、距離D1と工具形状100の移動方向、距離D2と工具形状100の移動方向、距離D3と工具形状100の移動方向を取得する。工具経路補正部15は、距離D1、D2及びD3を補正量とする補正点を求め、補正点を加えた工具経路を出力部14に出力する。補正点は、工具形状100が加工面形状PSに接触したときの工具形状の先端(理想的な工具位置)IDPとなる。
出力部14は補正点を加えた工具経路を出力する。
図7は、
図2に示した、工具経路と評価面との交点に加えて、交点を繋ぐ曲線及び補正点を繋ぐ曲線を加えた図である。
図7において、交点INPは三角で示し、補正点は丸で示し、破線は交点INPを繋ぐ曲線を示し、一点鎖線は補正点を繋ぐ線を示す。
【0030】
次に、加工プログラムの分析装置10Aの動作についてフローチャートを用いて説明する。
図8は加工プログラムの分析装置の動作を示すフローチャートである。
図8に示す加工プログラムの分析装置の動作は、加工プログラムの分析装置10Aをコンピュータで構成した場合、分析用プログラムで実現できる。
図8に示した動作は、
図5に示した動作と比べて、
図5のステップS13がステップS15に換わり、ステップS16が加えられている点が異なる。以下の説明ではステップS15及びステップS16の動作のみ説明する。
【0031】
ステップS15において、工具経路補正部15は、ステップS12において距離演算部12が求めた距離を補正量とする補正点を求め、補正点を加えた工具経路を求める。
【0032】
ステップS14において、交点抽出部11が、他の評価面を設定しない場合はステップS16に移る。
ステップS16において、出力部14は補正点を加えた工具経路を出力して、処理を終了する。
【0033】
以上説明した第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、加工プログラムの分析装置が、交点抽出部と距離演算部とを備えることで、隣接する工具経路の分析において、工具経路から目標の加工面形状までどの方向にどの程度離れているかを分析でき、隣接する工具経路の分析において、目標の加工面形状を維持した工具経路の分析結果が得られる。
また、加工プログラムの分析装置が、距離演算部から出力される距離を補正量とする補正点を求め、補正点を加えた工具経路を出力することができる。
【0034】
以上説明した、第1及び第2の実施形態において、加工プログラムの分析装置はCNC装置に直結することができ、またCNC装置内に設けることができる。また、加工プログラムの分析装置はCNC装置にネットワークを介して接続されるサーバとして構成することもできる。
【0035】
以上説明した、第1及び第2の実施形態において、工具形状の工具は、半径rのボールエンドミルとして説明したが、工具はフラットエンドミル、ラジアスエンドミル、バレル工具等を用いる場合にも本実施形態の加工プログラムの分析装置は適用可能である。
図9は、工具として、ラジアスエンドミルを用いた場合に、複数の交点の各交点から、加工面形状に対して工具形状が接する工具位置までの距離を求める方法を示す図である。
図9に示すように、
図3に示したボールエンドミルを用いた場合と同様にして、工具としてラジアスエンドミルを用いたときの工具形状110においても、複数の交点の各交点INPから、加工面形状に対して工具形状110が接する工具位置IDPまでの距離を求めることができる。
【0036】
以上、第1及び第2の実施形態について説明した。各実施形態の加工プログラムの分析装置に含まれる各構成部は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。また、上記の加工プログラムの分析装置に含まれる各構成部のそれぞれの協働により行なわれる分析方法は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0037】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0038】
上述した各実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0039】
本開示による加工プログラムの分析装置と分析用プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上述した実施形態を含め、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
(1) 加工プログラム内の隣接する複数の工具経路と、工具形状と、加工面形状とが入力され、前記複数の工具経路が交差する評価面と前記複数の工具経路との複数の交点を求める交点抽出部(例えば、交点抽出部11)と、
前記複数の交点の各交点から、前記加工面形状に対して前記工具形状が接する工具位置までの距離を求める距離演算部(例えば、距離演算部12)と、
を備えた加工プログラムの分析装置。
この加工プログラムの分析装置によれば、隣接する工具経路の分析において、目標の加工面形状を維持した工具経路の分析結果が得られる。
【0040】
(2) 前記距離演算部から出力される前記隣接する複数の交点における前記距離から、前記隣接する工具経路の少なくとも段差を求める分析部(例えば分析部13)と、
前記分析部の分析結果を出力する出力部(例えば出力部14)と、
を備えた上記(1)に記載の加工プログラムの分析装置。
この加工プログラムの分析装置によれば、工具経路間の段差を求めて、出力することができる。
【0041】
(3) 前記距離演算部から出力される前記距離を補正量とする補正点を求め、該補正点を加えた工具経路を求める工具経路補正部(例えば、工具経路補正部15)と、
前記補正点を加えた工具経路を出力する出力部(例えば出力部14)と、
を備えた上記(1)に記載の加工プログラムの分析装置。
この加工プログラムの分析装置によれば、補正点を加えた工具経路を出力することができる。
【0042】
(4) 前記交点抽出部は、複数の評価面を設定し、前記複数の交点を評価面ごとに求める、上記(1)から(3)のいずれかに記載の加工プログラムの分析装置。
【0043】
(5) 前記工具形状を有する工具は、ボールエンドミル、フラットエンドミル、ラジアスエンドミル、及びバレル工具のうちの一つである、上記(1)から(4)のいずれかに記載の加工プログラムの分析装置。
【0044】
(6) 加工プログラムの分析装置としてのコンピュータに、
加工プログラム内の隣接する複数の工具経路と、工具形状と、加工面形状とが入力され、前記複数の工具経路が交差する評価面と前記複数の工具経路との複数の交点を求める交点抽出機能と、
前記複数の交点の各交点から、前記加工面形状に対して前記工具形状が接する工具位置までの距離を求める距離演算機能と、
を実現させるための、分析用プログラム。
この分析用プログラムによれば、隣接する工具経路の分析において、目標の加工面形状を維持した工具経路の分析結果が得られる。
【0045】
(7) 前記コンピュータに、
前記距離演算機能により求められた前記隣接する複数の交点における前記距離から、前記隣接する工具経路の少なくとも段差を求める分析機能と、
前記分析機能による分析結果を出力する出力機能と、
を実現させるための、上記(6)に記載の分析用プログラム。
この分析用プログラムによれば、工具経路間の段差を求めて、出力することができる。
【0046】
(8) 前記コンピュータに、
前記距離演算機能により求められた前記距離を補正量とする補正点を求め、該補正点を加えた工具経路を求める工具経路補正機能と、
前記補正点を加えた工具経路を出力する出力機能と、
を実現させるための上記(6)に記載の分析用プログラム。
この分析用プログラムによれば、補正点を加えた工具経路を出力することができる。
【0047】
(9) 前記交点抽出機能は、複数の評価面を設定し、前記複数の交点を評価面ごとに求める、上記(6)から(8)のいずれかに記載の分析用プログラム。
【0048】
(9) 上記(6)から(9)のいずれかに記載の分析用プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
このコンピュータ読み取り可能な記録媒体によれば、隣接する工具経路の分析において、目標の加工面形状を維持した工具経路の分析結果が得られる。
【符号の説明】
【0049】
11 交点抽出部
12 距離演算部
13 分析部
14 出力部
15 工具経路補正部