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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
A61M25/00 600
A61M25/00 530
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020206686
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022093946
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 竜也
(72)【発明者】
【氏名】伏屋 友希弘
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/002299(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/123398(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/059122(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸方向に沿って螺旋状に延びるスリットが形成された中空シャフトを備え、
前記スリットを挟んで対向する面が、第1面および第2面であり、
前記第1面と前記第2面とは接離可能であり、
常時は前記第1面と前記第2面とが離間することで、前記第1面と前記第2面との間に隙間が形成され、
前記第1面と前記第2面とが接触したときには、前記中空シャフトは、前記第1面と前記第2面との接触部よりも径方向外側に位置しかつ径方向外側に向かって開口する凹部を有し、
前記スリットの螺旋方向に直交する方向における前記凹部の断面形状がV字状であるカテーテル。
【請求項2】
長軸方向に沿って螺旋状に延びるスリットが形成された中空シャフトを備え、
前記スリットを挟んで対向する面が、第1面および第2面であり、
前記第1面と前記第2面とは接離可能であり、
常時は前記第1面と前記第2面とが離間することで、前記第1面と前記第2面との間に隙間が形成され、
前記第1面と前記第2面とが接触したときには、前記中空シャフトは、前記第1面と前記第2面との接触部よりも径方向外側に位置しかつ径方向外側に向かって開口する凹部を有し、
前記凹部における前記第1面および記第2面のうちの接触しない面の一部には、径方向外側に向かって開口する更に凹んだ穴部および/または溝部が形成されているカテーテル。
【請求項3】
前記中空シャフトの径方向における前記凹部の深さの値は、前記スリットの螺旋方向に直交する方向における前記凹部の開口幅の値の1/2倍よりも大きい請求項1または請求項に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記中空シャフトの径方向における前記凹部の深さの値は、前記スリットの螺旋方向に直交する方向における前記凹部の開口幅よりも大きい請求項1または請求項に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血管内に形成された慢性完全閉塞(CTO:Chronic total occlusion)などの閉塞部を治療する際、硬い閉塞部を穿通することで血流を改善する医療器具が知られている。
【0003】
このような血管などの体腔内で用いられる医療器具には、湾曲する体腔内を円滑に進行できるような柔軟性を有し、かつ閉塞部を穿通する際には強力な推進力を発生できることが求められる。このような医療器具の一つとして、例えば、長軸方向に沿って長尺状シャフトの外周部にらせん状の切込みが形成されたカテーテルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記カテーテルによれば、らせん状に設けられた切込みが生体組織に噛み込むため、生体組織を手掛かりとすることができる。このため、例えば、閉塞部等を穿通する際、回転時のスクリュー作用による長尺状シャフトへの強力な推進力の付与を期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2011-506045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来のカテーテルにおいては、カテーテルの操作時にらせん状の切込みが閉じてしまうことがある。例えば、体腔内の抗力に対抗しながら長尺状シャフトを強く押し込んだり、長尺状シャフトが曲率半径の小さい湾曲した体腔を通過する際、らせん状の切込みの一部または全部が閉じてしまう傾向にある。このため、生体組織が閉じた切込みに噛み込まず、十分な推進力が得られない虞がある。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、たとえ中空シャフトを強く押し込んだり湾曲した体腔内を通過させる場合であっても、十分かつ確実に推進力を発生することが可能なカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のいくつかの態様は、
(1)長軸方向に沿って螺旋状に延びるスリットが形成された中空シャフトを備え、
前記スリットを挟んで対向する面が、第1面および第2面であり、
前記第1面と前記第2面とは接離可能であり、
前記第1面と前記第2面とが接触した状態において、前記中空シャフトは、前記第1面と前記第2面との接触部の径方向外側に位置しかつ径方向外側に向かって開口する凹部を有するカテーテル、
(2)前記凹部の表面は、平面を含んでいる前記(1)に記載のカテーテル、
(3)前記スリットの螺旋方向に直交する方向における前記凹部の幅は、径方向外側に向かって大きくなっている前記(1)または(2)に記載のカテーテル、
(4)前記スリットの螺旋方向に直交する方向における断面視で、前記凹部が階段状に形成されている前記(1)から(3)のいずれか1項に記載のカテーテル、
(5)前記凹部における前記第1面および/または前記第2面の一部には、外部に向かって開口する穴部および/または溝部が形成されている前記(1)から(4)のいずれか1項に記載のカテーテル、
(6)前記中空シャフトの径方向における前記凹部の深さの値は、前記スリットの螺旋方向に直交する方向における前記凹部の開口幅の値の1/2倍よりも大きい前記(1)から(5)のいずれか1項に記載のカテーテル、並びに
(7)前記中空シャフトの径方向における前記凹部の深さの値は、前記スリットの螺旋方向に直交する方向における前記凹部の開口幅よりも大きい前記(1)から(5)のいずれか1項に記載のカテーテル、である。
【0009】
なお、本明細書において、「第1面と第2面とは接離可能であり」とは、第1面と第2面とが接触している状態および離間している状態のいずれの状態も取り得ることを意味する。ただし、「第1面と第2面とが接触」とは、第1面の一部と第2面の一部との接触を指す。「穴部」とは、略円形(円形、楕円形、多角形等を含む)の開口を有しかつ当該穴部の周囲の表面に比べて窪んでいる有底の部位を意味する。「溝部」とは、長手形状の開口を有しかつ当該溝部の周囲の表面に比べて窪んでいる有底の部位(上記「穴部」を除く)を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、たとえ中空シャフトを強く押し込んだり湾曲した体腔内を通過させる場合であっても、十分かつ確実に推進力を発生することが可能なカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態を示す概略的側面図である。
図2図1の一点鎖線で囲んだ領域IIの概略的縦断面図であって、第1面と第2面とが離間している状態を示す図である。
図3図2の第1面と第2面とが接触している状態を示す一部拡大概略的断面図である。
図4A】凹部の一形態を示す一部拡大概略的断面図である。
図4B】凹部の一形態を示す一部拡大概略的断面図である。
図4C】凹部の一形態を示す一部拡大概略的断面図である。
図5】凹部の形状を示す一部拡大概略的断面図である。
図6】第2の実施形態の一部拡大概略的断面図である。
図7】第3の実施形態の一部拡大概略的断面図である。
図8】第4の実施形態の一部拡大概略的断面図である。
図9A】第1面および第2面の一形態を示す概略的平面図である。
図9B】第1面および第2面の一形態を示す概略的平面図である。
図10】変形例の概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示のカテーテルは、長軸方向に沿って螺旋状に延びるスリットが形成された中空シャフトを備え、上記スリットを挟んで対向する面が、第1面および第2面であり、上記第1面と上記第2面とは接離可能であり、上記第1面と上記第2面とが接触した状態において、上記中空シャフトは、上記第1面と上記第2面との接触部の径方向外側に位置しかつ径方向外側に向かって開口する凹部を有する。
【0013】
なお、本明細書において、「スリット部」とは、第1面と第2面とが接触しているか否か(スリットが存するか否か)にかかわらず、第1面と第2面とが対向している部位を指す。
【0014】
以下、第1~第4の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、以下の実施形態にのみ限定されるものではない。また、各図面に示したカテーテルの寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、実際の寸法に対応するものではない。また、各図面において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(近位側、手元側)である。図3図8は、スリット部におけるスリットが閉じた状態(第1面と第2面とが接触した状態)を示している。
【0015】
[第1の実施形態]
図1図2は、第1の実施形態を示す概略図である。当該カテーテル1は、図1図2に示すように、概略的に、中空シャフト11と、先端チップ21と、インナーチューブ31と、被覆部材41と、把持部材51とにより構成されている。
【0016】
中空シャフト11は、長軸方向に沿って螺旋状に延びるスリット11sが形成された中空形状のシャフトである。スリット11sは、中空シャフト11の径方向に沿って貫通するように切り欠かれている。
【0017】
スリット11sを挟んで対向する面は、それぞれ第1面111および第2面112である。これら第1面111と第2面112とは接離可能となるように配設されている。本実施形態では、第1面111のうちの部位111aおよび第2面112のうちの部位112aとが接離できるように構成されている。
【0018】
通常、第1面111(部位111a)と第2面112(部位112a)とは離間し、隙間11cが形成されている(図2参照)。他方、例えば、長軸方向に沿って中空シャフト11に圧縮する力が働いた場合や、中空シャフト11が湾曲した場合、中空シャフト11の変形により第1面111の一部(部位111a)と第2面112の一部(部位112a)とが接触する(図3参照の接触部11b参照)。接触部11bは、中空シャフト11の周方向における全周または一部に形成され得る。
【0019】
第1面111と第2面112とが接触した状態において、中空シャフト11は、第1面111と第2面112との接触部11bの径方向外側に位置しかつ径方向外側に向かって開口する凹部を有する。すなわち、部位111aと部位112aとが接触した状態において、接触部11bの径方向外側の中空シャフト11の外周面11dに、第1面111の接触部11b以外の部位111eと第2面112の接触部11b以外の部位112eとから構成される凹部m1が形成される(図3参照)。
【0020】
凹部m1の形状は、径方向外側に向かって開口していれば特に限定されない。凹部m1の形状は、例えば、スリット11sの螺旋方向に直交する方向における凹部m1の幅が、径方向外側に向かって大きくなるように構成してもよい。例えば、凹部m1は、スリット部11aの横断面がV字形状となるように、それぞれ一つの平面p11で構成されていてもよく(図3参照)、二以上の平面p12,p13で構成されていてもよい(図4A参照)。また、凹部m1は、スリット部11aの横断面が湾曲形状となるように、凸状の曲面p14で構成されていてもよく(図4B参照)、凹状の曲面p15で構成されていてもよい(図4C参照)。これにより、生体組織を凹部m1に確実に噛み込ませることができ、より確実に推進力を発生することができる。
【0021】
また、中空シャフト11の径方向における凹部m1の深さの値は、スリット11sの螺旋方向に直交する方向における凹部m1の開口幅の値の1/2倍よりも大きくなるように構成してもよい。すなわち、図5に示すように、第1面111と第2面112とが接触した状態において、中空シャフト11の径方向における凹部m1の深さの値を「A」、スリット11sの螺旋方向に直交する方向における凹部m1の開口幅の値を「B」としたとき、A>(B/2)であってもよい。これにより、径方向により鋭く生体組織が噛み込む分、長軸方向に沿ってより高い抗力(生体組織に対する長軸方向における中空シャフト11の移動抵抗)を得ることができ、中空シャフト11の推進力をより高めることができる。
【0022】
さらに、中空シャフト11の径方向における凹部m1の深さの値は、スリット11sの螺旋方向に直交する方向における凹部m1の開口幅よりも大きくなるように構成してもよい。すなわち、第1面111と第2面112とが接触した状態において、凹部m1の深さAは凹部m1の開口幅Bよりも大きくてもよい(A>B)。これにより、中空シャフト11の推進力をさらに高めることができる。
【0023】
なお、第1面111と第2面112とが接触した状態において、接触部11bは、第1面111と第2面112との面接触で構成されることが好ましい。これにより、接触部11bでの第1面111と第2面112との接触面積が大きい分、後述する把持部材51に回転を加えたときの回転力(トルク)をカテーテル1の先端側により確実に伝達することができ、スクリュー作用による中空シャフト11の推進力をさらに高めることができる。
【0024】
中空シャフト11を構成する材料としては、中空シャフト11が体腔内に挿通されることから、抗血栓性、可撓性および生体適合性を有していることが好ましい。上記材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS304,SUS304Lなど)、ニッケルチタン合金などの金属材料;ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、シリコーン、フッ素樹脂など樹脂材料等を採用することができる。
【0025】
先端チップ21は、中空シャフト11の先端から先端側に向かって延設された中空形状の部材である。先端チップ21は、例えば、中空シャフト11とは別体として設けられ、中空シャフト11の先端部に溶接等で接合することができる。先端チップ21は、例えば、先端側に向かって先細るように形成することができる。
【0026】
先端チップ21は、例えば、中空シャフト11を構成する材料よりも柔軟な材料で形成することができる。先端チップ21を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマーなどの樹脂材料等が挙げられる。これにより、生体組織への接触による負荷をより低減しながら体腔内においてカテーテル1を円滑に進行させることができる。
【0027】
インナーチューブ31は、中空形状の部材である。インナーチューブ31は、例えば、先端チップ21および中空シャフト11の内側に設けられ、先端チップ21の先端から中空シャフト21の基端に亘って配置することができる。インナーチューブ31は、先端の開口31aと、この開口31aから基端側に向かって貫通する内腔31hとを有している。内腔31hには、例えば、ガイドワイヤなどの医療デバイスが挿通されたり、薬液などの流体が流通される。
【0028】
インナーチューブ31は、例えば、円筒形状の部材、コイル体等で構成することができる。本実施形態では、円筒形状のインナーチューブが例示されている。なお、インナーチューブ31と中空シャフト11とは接触していてもよく、離間していてもよい。
【0029】
インナーチューブ31を構成する材料としては、インナーチューブ31が体腔内に挿通されることから、抗血栓性、可撓性および生体適合性を有していることが好ましい。上記材料としては、例えば、上述した中空シャフト11を構成する材料と同様の材料等を採用することができる。
【0030】
カテーテル1がインナーチューブ31を有することで、インナーチューブ31を軸芯として中空シャフト11を長軸方向廻りに円滑に回転させることができる。
【0031】
被覆部材41は、中空シャフト11の基端側の外周を覆う部材である。被覆部材41は、凹部m1への生体組織の噛み込みが不要または噛み込みを回避する部位に設けることができる。被覆部材41は、例えば、スリット部11aが形成された中空シャフト11の長軸方向の部位の外周面11dに密着するように形成(被覆)してもよい。
【0032】
被覆部材41を構成する材料としては、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0033】
被覆部材41は、熱収縮性の樹脂製チューブで形成されていてもよい。熱収縮性の樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン;FEP(フッ化エチレンプロピレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂;PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等が挙げられる。これにより、中空シャフト11の外周に容易に被覆部材41を形成することができる。
【0034】
把持部材51は、手技者がカテーテル1を把持する部材である。把持部材51は、例えば、中空シャフト11の基端部に接続され、内腔31hに連通する内腔51hを有している。内腔51hの基端部には開口51aが形成されている。なお、把持部材51の形状は、手技者が操作し易い形状など、適宜選択することができる。
【0035】
ここで、インナーチューブ31の内腔31hと、把持部材51の内腔51hとによりルーメンLが形成される。このルーメンLには、開口31a,51aを介してガイドワイヤなどの医療器具、薬液などの液体等が挿通される。
【0036】
次に、カテーテル1の使用態様について説明する。まず、カテーテル1の一つの使用態様として、血管内に形成された慢性完全閉塞(CTO)などの閉塞部を穿通した後、穿通部を介してカテーテル1を押し進める手技を例示する。
【0037】
まず、導入針(不図示)を用い、閉塞部を穿刺することで貫通孔を形成する。次いで、導入針の内腔にガイドワイヤ(不図示)を挿入した後、導入針を体外に抜去する。
【0038】
次に、ガイドワイヤの基端部をカテーテル1の開口31aに差し込み、ルーメンLを介してガイドワイヤの基端部を開口51aから引き出す。次いで、中空シャフト11を先端チップ21に続けて血管内に挿入し、カテーテル1を閉塞部まで押し進める。次いで、閉塞部の貫通孔入口に先端チップ21を挿入した後、把持部材51の操作により中空シャフト11を回転させながらカテーテル1を前進させる。なお、中空シャフト11を強く押し込んだり湾曲する血管内を通過したりする際にスリット11sが閉塞し第1面111と第2面112とが接触することがある。このような場合であっても、上記接触により形成された凹部m1に生体組織(例えば、閉塞部の内壁)が噛み込み、ネジ作用により中空シャフト11が前進する。次いで、ガイドワイヤを体外に抜去した後、カテーテル1を用いて所望の処置を行う。
【0039】
カテーテル1を用いた処置が終了した後、ガイドワイヤ(不図示)を開口51aを介してルーメンLに挿通し、カテーテル1、ガイドワイヤの順でこれらを体外に抜去することで手技が完了する。
【0040】
続いて、カテーテル1の他の使用態様として、結石除去などの際に十二指腸乳頭などの閉塞部を穿通した後、穿通部を介してカテーテル1を押し進める手技を例示する。
【0041】
まず、口から内視鏡(不図示)を挿入し、十二指腸まで前進させる。十二指腸乳頭部へ到達後、内視鏡の鉗子挿入口から内視鏡先端までガイドワイヤ(不図示)を挿通し、ガイドワイヤの先端を十二指腸乳頭へ挿入する。
【0042】
次に、ガイドワイヤ後端からカテーテル1を挿入し、穿通部までカテーテル1を前進させる。その後、カテーテル1に対して回転操作を行い、穿通部を拡張する。拡張完了後カテーテルを抜去し、(必要に応じてステントを留置後、ガイドワイヤを抜去するなど)所望の処置を行う。
【0043】
以上のように、当該カテーテル1は上記構成であるので、たとえ中空シャフト11を強く押し込んだり湾曲した体腔内を通過させる場合であっても、第1面111と第2面112との接触時に形成される凹部m1に生体組織を噛み込ますことができ、高い抗力により十分かつ確実に推進力を発生することができる。
【0044】
なお、当該カテーテル1は、上述したように十分かつ確実に推進力を発生することができるため、例えば、強力な推進力により閉塞部を拡張するダイレータ等に好適に適用することができる。
【0045】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態の一部拡大概略的断面図である。当該カテーテル2は、図6に示すように、概略的に、中空シャフト12と、図示していない先端チップ21、インナーチューブ31、被覆部材41および把持部材51とにより構成されている。カテーテル2は、中空シャフト12が第1の実施形態と異なっている。なお、先端チップ21、インナーチューブ31、被覆部材41および把持部材51は、第1の実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、以下に示す構成以外の中空シャフト12の構成およびカテーテル2の使用態様は、第1の実施形態のものと同様である。
【0046】
中空シャフト12は、長軸方向に沿って螺旋状に延びるスリットが形成された中空形状部材である。スリットを挟んで対向する面が、第1面および第2面であり、第1面と第2面とは接離可能であり、第1面と第2面とが接触した状態において、中空シャフトは、第1面と第2面との接触部の径方向外側に位置しかつ径方向外側に向かって開口する凹部を有する。
【0047】
本実施形態では、スリット部12aに形成される凹部m2の表面が平面p21を含むように構成されている。すなわち、凹部m2における第1面および/または第2面の一部または全部が平面形状に構成されている。スリット部12aは、具体的には、例えば、凹部の表面全体が一または二以上の平面で構成されているものの他(図3図4A参照)、凹部m2の表面の一部のみに平面p21を含み他の部位は曲面p22に形成されていてもよい(図6参照)。
【0048】
以上のように、当該カテーテル2は、上記構成であるので、生体組織を凹部m2により確実に噛み込ませることができ、中空シャフト12の推進力をより高めることができる。
【0049】
[第3の実施形態]
図7は、第3の実施形態の一部拡大概略的断面図である。当該カテーテル3は、図7に示すように、概略的に、中空シャフト13と、図示していない先端チップ21、インナーチューブ31、被覆部材41および把持部材51とにより構成されている。カテーテル3は、中空シャフト13が第1の実施形態と異なっている。なお、先端チップ21、インナーチューブ31、被覆部材41および把持部材51は、第1の実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、以下に示す構成以外の中空シャフト13の構成およびカテーテル3の使用態様は、第1の実施形態のものと同様である。
【0050】
中空シャフト13は、長軸方向に沿って螺旋状に延びるスリットが形成された中空形状部材である。スリットを挟んで対向する面が、第1面および第2面であり、第1面と第2面とは接離可能であり、第1面と第2面とが接触した状態において、中空シャフトは、第1面と第2面との接触部の径方向外側に位置しかつ径方向外側に向かって開口する凹部を有する。
【0051】
凹部における第1面および/または第2面の一部または全部が階段状の部位を含んでいてもよい。本実施形態では、スリットの螺旋方向に直交する方向における断面視で、凹部m3における第1面131および第2面132の全部が階段状に形成されている(図7参照)。
【0052】
以上のように、当該カテーテル3は、上記構成であるので、生体組織を凹部m3により確実に噛み込ませることができ、中空シャフト13の推進力をより高めることができる。
【0053】
[第4の実施形態]
図8は、第4の実施形態の一部拡大概略的断面図である。当該カテーテル4は、図8に示すように、概略的に、中空シャフト14と、図示していない先端チップ21、インナーチューブ31、被覆部材41および把持部材51とにより構成されている。カテーテル4は、中空シャフト14が第1の実施形態と異なっている。なお、先端チップ21、インナーチューブ31、被覆部材41および把持部材51は、第1の実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、以下に示す構成以外の中空シャフト14の構成およびカテーテル4の使用態様は、第1の実施形態のものと同様である。
【0054】
中空シャフト14は、長軸方向に沿って螺旋状に延びるスリットが形成された中空形状部材である。スリットを挟んで対向する面が、第1面および第2面であり、第1面と第2面とは接離可能であり、第1面と第2面とが接触した状態において、中空シャフトは、第1面と第2面との接触部の径方向外側に位置しかつ径方向外側に向かって開口する凹部を有する。
【0055】
凹部における第1面および/または第2面の一部に、外部に向かって開口する穴部および/または溝部が形成されていてもよい。本実施形態では、凹部m4における第1面141および第2面142の一部に穴部m41および溝部m42が形成されている(図8図9A図9B参照)。なお、図示していないが、穴部m41および溝部m42は一つの面に混在していてもよい。
【0056】
以上のように、当該カテーテル4は、上記構成であるので、生体組織が穴部m41や溝部m42に噛み込める分、生体組織を凹部m4により確実に噛み込ませることができ、中空シャフト14の推進力をより高めることができる。
【0057】
なお、本開示は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。上述した実施形態の構成のうちの一部を削除したり、他の構成に置換してもよく、上述した実施形態の構成に他の構成を追加等してもよい。
【0058】
例えば、上述した第1および第3の実施形態では、接触部11b,13bを挟んで幾何学的に対称な第1面と第2面とを有するカテーテル1,3を例示して説明した。しかしながら、第1面と第2面とが接触した状態において上述した凹部が形成される限り、第1面と第2面とは幾何学的に非対称であってもよい(例えば、図6図8の凹部m2,m4参照)。
【0059】
また、上述した第1の実施形態では、中空シャフト11が長軸方向全体に亘って同一外径であるカテーテル1を例示した。しかしながら、中空シャフトは、長軸方向に沿って互いに異なる外径の部位を有していてもよい。このようなカテーテルとしては、例えば、図10に示すように、スリット15sが形成されかつ基端側に向かって拡径するテーパ部15tを有する中空シャフト15を備えたダイレータ5等が挙げられる。
【0060】
また、上述した第1の実施形態では、中空シャフト11の長軸方向全体に亘って1本の連続したスリット11sが形成されたカテーテル1を例示した。しかしながら、スリットは、複数本であってもよく、中空シャフトの長軸方向に沿って断続的に設けられていてもよく、長軸方向の一部にのみ設けられていてもよい(不図示)。
【0061】
また、上述した実施形態では、先端チップ21、インナーチューブ31、被覆部材41、および把持部材51を備えたカテーテル1,2,3,4について説明した。しかしながら、先端チップ、インナーチューブ、被覆部材、および把持部材のうちの少なくともいずれかを備えていないカテーテルであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,2,3,4 カテーテル
5 ダイレータ(カテーテル)
11,12,13,14,15 中空シャフト
11s,15s スリット
111,121,131,141 第1面
112,122,132,142 第2面
11b,12b,13b,14b 接触部
m1,m2,m3,m4 凹部
m41 穴部
m42 溝部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10