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特許7575259ダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置及び評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置及び評価方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20241022BHJP
   B22C 9/00 20060101ALI20241022BHJP
   B22C 3/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B22D17/20 D
B22C9/00 E
B22C3/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020207351
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094455
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593078257
【氏名又は名称】株式会社メックインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】古川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】河原 佐和子
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲史
(72)【発明者】
【氏名】荒平 貴光
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-009971(JP,A)
【文献】特開2015-171722(JP,A)
【文献】特開2008-100237(JP,A)
【文献】特開2013-166176(JP,A)
【文献】特許第6749669(JP,B1)
【文献】特開2016-175086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/20
B22C 9/00
B22C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ブロックと、
筒状部と、
力測定部と、
温度測定部と、を備えるダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置において、
前記金属ブロックは、離型剤又は潤滑剤が塗布された離型面を有し、
前記筒状部は、前記金属ブロックの離型面に、前記筒状部の下端部を塞ぐように載置されており、
前記力測定部は、溶湯を前記筒状部の内側に注いで凝固させて、凝固片を形成した後、前記筒状部を、前記凝固片が前記金属ブロックの離型面から離れるまで、押し出した際の押し出し力又は引っ張った際の引っ張り力を測定し、
前記温度測定部は、前記凝固片が形成された時点から、前記筒状部が押し出され、又は引っ張られた時点までの1つの時点において、前記金属ブロックの下部の温度を測定し、
前記温度測定部は、前記金属ブロックの下部と接触する熱電素子と、前記熱電素子と接触する冷却ブロックとを、備える、
ダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置。
【請求項2】
前記金属ブロックと前記冷却ブロックとの温度差が50℃以上となるように、前記冷却ブロックが冷却されている、
ことを特徴とする請求項に記載のダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置。
【請求項3】
離型剤又は潤滑剤を金属ブロックの離型面に塗布し、筒状部を前記金属ブロックの離型面に、前記筒状部の下端部を塞ぐように載置し、溶湯を前記筒状部の内側に注いで凝固させて、凝固片を形成した後、前記筒状部を、前記凝固片が前記金属ブロックの離型面から離れるまで、押し出した際の押し出し力又は引っ張った際の引っ張り力を測定するステップと、
前記凝固片が形成された時点から、前記筒状部が押し出され、又は引っ張られた時点までの1つの時点において、前記金属ブロックの下部の温度を測定するステップと、を含
前記凝固片が形成された時点から、前記筒状部が押し出され、又は引っ張られた時点までの1つの時点において、前記金属ブロックの下部の温度を測定するステップにおいて、
熱電素子が前記金属ブロックの下部と接触し、冷却ブロックが前記熱電素子と接触したまま、前記金属ブロックの下部と前記冷却ブロックとの温度差が50℃以上となるように、前記冷却ブロックを冷却する、
ダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置の一例が、特許文献1に開示される。特許文献1に開示のダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置は、加熱した金属ブロックの平面部に離型剤又は潤滑剤を塗布し、筒状の金属ブロックの下端部を塞ぐように金属ブロックに載置する。アルミニウム溶湯を金属ブロックに注湯し、アルミニウム溶湯を実際に固化させてアルミニウム鋳物を成形する。アルミニウム溶湯が固化した後に、金属ブロックを引張り、金属ブロックおよびその内部のアルミニウム鋳物が、金属ブロックの平面部の上を動き始める時の引張力を測定する。引張力の測定値に基づいて、離型剤又は潤滑剤の離型性を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-009971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者等は、以下の課題を発見した。
離型剤又は潤滑剤は、離型性を除いて、例えば、離型剤又は潤滑剤から金型への熱伝達性を有する。このようなダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置では、離型剤又は潤滑剤から金型への熱伝達性を評価することができなかった。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑み、離型性及び金型への熱伝達性を評価することができるダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置及び評価方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置は、
金属ブロックと、
筒状部と、
力測定部と、
温度測定部と、を備えるダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置において、
前記金属ブロックは、離型剤又は潤滑剤が塗布された離型面を有し、
前記筒状部は、前記金属ブロックの離型面に、前記筒状部の下端部を塞ぐように載置されており、
前記力測定部は、溶湯を前記筒状部の内側に注いで凝固させて、凝固片を形成した後、前記筒状部を押し出し、又は引っ張った際の押し出し力又は引っ張り力を測定し、
前記温度測定部は、前記凝固片が形成された時点から、前記筒状部が押し出され、又は引っ張られた時点までの1つの時点において、前記金属ブロックの下部の温度を測定する。
【0007】
このような構成によれば、金属ブロックの下部の温度に基づいて、金型への熱伝達性を評価することができる。また、押し出し力又は引っ張り力に基づいて、ダイカスト離型剤又は潤滑剤の離型性を評価することができる。したがって、離型性及び金型への熱伝達性を評価することができる。
【0008】
また、前記温度測定部は、前記金属ブロックの下部と接触する熱電素子と、前記熱電素子と接触する冷却ブロックとを、備えたことを特徴としてもよい。
【0009】
このような構成によれば、金属ブロックの下部の所定の領域の温度を測定できる。そのため、良好な精度で金型への熱伝達性を評価することができる。
【0010】
また、前記金属ブロックと前記冷却ブロックとの温度差が50℃以上となるように、前記冷却ブロックが冷却されていることを特徴としてもよい。
【0011】
このような構成によれば、金属ブロックと冷却ブロックとの温度差が十分にあるため、熱電素子の発電による電力を高める。よって、金属ブロックの下部の温度を安定して測定できる。
【0012】
また、本発明に係るダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価方法は、
離型剤又は潤滑剤を金属ブロックの離型面に塗布し、筒状部を前記金属ブロックの離型面に、前記筒状部の下端部を塞ぐように載置し、溶湯を前記筒状部の内側に注いで凝固させて、凝固片を形成した後、前記筒状部を押し出し、又は引っ張った際の押し出し力又は引っ張り力を測定するステップと、
前記凝固片が形成された時点から、前記筒状部が押し出され、又は引っ張られた時点までの1つの時点において、前記金属ブロックの下部の温度を測定するステップと、を含む。
【0013】
このような構成によれば、金属ブロックの下部の温度に基づいて、金型への熱伝達性を評価することができる。また、押し出し力又は引っ張り力に基づいて、ダイカスト離型剤又は潤滑剤の離型性を評価することができる。したがって、離型性及び金型への熱伝達性を評価することができる。
【0014】
また、前記凝固片が形成された時点から、前記筒状部が押し出され、又は引っ張られた時点までの1つの時点において、前記金属ブロックの下部の温度を測定するステップにおいて、
熱電素子が前記金属ブロックの下部と接触し、冷却ブロックが前記熱電素子と接触したまま、前記金属ブロックの下部と前記冷却ブロックとの温度差が50℃以上となるように、前記冷却ブロックを冷却することを特徴としてもよい。
【0015】
このような構成によれば、金属ブロックと冷却ブロックとの温度差が十分にあるため、熱電素子の発電による電力を高める。よって、金属ブロックの下部の温度を安定して測定できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、離型性及び金型への熱伝達性を評価することができるダイカスト離型剤又は潤滑剤の評価装置及び評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1に係る評価装置を示す模式図である。
図2】実施の形態1に係る評価装置を用いた離型剤の評価方法を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1に係る評価装置の一具体例の要部を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係る評価装置の一具体例の要部を示す一部切取断面図である。
図5】実施の形態1に係る評価装置の他の一具体例の要部を示す一部切取断面図である。
図6】実施の形態1に係る評価装置の他の一具体例の要部を示す一部切取断面図である。
図7】発生電圧に対する引張力を示すグラフである。
図8】凝固片の一例の底面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0019】
(実施の形態1)
図1を参照して実施の形態1について説明する。なお、当然のことながら、図1及びその他の図面に示した右手系XYZ座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、Z軸プラス向きが鉛直上向き、XY平面が水平面であり、図面間で共通である。
【0020】
図1に示すように、評価装置10は、金属ブロック1と、筒状部2と、給湯ガイド3と、引張力測定装置4と、温度測定部5とを備える。
【0021】
金属ブロック1は、金属材料からなるブロック体である。このような金属材料として、例えば、離型剤の使用が想定されるダイカスト金型用材料を利用することができる。金属ブロック1は、主面1a、1bを有する。主面1aは、上方(ここでは、Z軸プラス側)を向いた平面であるとよい。主面1aは、離型面と称してもよい。主面1bは、下方(ここでは、Z軸マイナス側)を向いた平面であるとよい。
【0022】
筒状部2は、例えば、円筒体である。筒状部2の外周面には、アイボルト4aが締結されている。筒状部2は、アイボルト4aを介して、引張力測定装置4が機械的に接続されている。
【0023】
給湯ガイド3は、筒状体であり、入口3aと、出口3bとを備える。出口3bは、入口3aと比較して径が小さい。給湯ガイド3は、筒状部2の上方に配置可能に設けられている。
【0024】
引張力測定装置4は、例えば、図示しない駆動源と、力センサとを備える。当該力センサは、例えば、ロードセルである。当該駆動源が、力センサ及びアイボルト4aを介して、筒状部2を引っ張る。力センサが圧力を受けて、引っ張り力を示す信号を生成する。
【0025】
温度測定部5は、金属ブロック1の下側に設けられる。さらに、温度測定部5は、筒状部2の下方に位置すると、凝固片SL1に近い位置で金属ブロック1の部位の温度を測定することができてよい。温度測定部5は、温度又は温度差を示す信号を測定するものであればよく、例えば、熱電対、熱電素子等である。温度測定部5は、適宜、温度又は温度差を示す信号に増幅処理を行う処理装置を備えていてもよい。
【0026】
(評価方法)
次に、図2を参照して、離型剤の評価方法について説明する。図2は、図1に示す評価装置10を用いた離型剤の評価方法を示すフローチャートである。
【0027】
離型剤を金属ブロック1の主面1aを塗布する(離型剤塗布ステップST1)。金属ブロック1の主面1aには、離型剤による膜が形成される。塗布条件、たとえば、塗布方法、金属ブロック1の温度等は、ダイカスト鋳造において使用される離型剤や金型と同様の条件に設定されるとよい。例えば、スプレーを用いて離型剤を主面1aに塗布したり、金属ブロック1の温度を金型の温度と同じように調整したりしてもよい。また、本ステップ開始前から、金属ブロック1の下部の温度の測定を開始してもよい。金属ブロック1の下部は、金属ブロック1において、主面1aから下方に位置する部位であればよい。
【0028】
続いて、筒状部2を金属ブロック1の主面1aに載置する(筒状部載置ステップST2)。筒状部2の下端部と金属ブロック1の主面1aとの間は、塞がれている。
【0029】
続いて、溶湯を給湯ガイド3を通過させて筒状部2の内側に注ぐ(溶湯供給ステップST3)。溶湯は、ダイカスト鋳造において使用されるダイカスト鋳造用合金を溶融したものであるとよい。ダイカスト鋳造用合金は、例えば、アルミニウム合金やマグネシウム合金等である。筒状部2の下端部と金属ブロック1の主面1aとの間が塞がれているので、溶湯は筒状部2の内側に留まり、筒状部2の外側に殆ど出ない。
【0030】
続いて、溶湯を凝固させて、凝固片SL1を形成する(凝固片形成ステップST4)。金属ブロック1と筒状部2とが溶湯を冷却し、金属ブロック1と筒状部2との形状が凝固片SL1に転写される。金属ブロック1と筒状部2とがダイカスト金型に相当し、凝固片SL1がダイカスト鋳物に相当する。
【0031】
最後に、温度測定部5が金属ブロック1の下部の温度を測定しつつ、引張力測定装置4が引張力を測定する(温度及び引張力測定ステップST5)。具体的には、引張力測定装置4は凝固片SL1が主面1aから離れるまで引っ張り、その引っ張り力を測定するとよい。なお、凝固片SL1におもりを載せる等して、凝固片SL1に所定の荷重を負荷したまま、引張力測定装置4が引張力を測定するとよい。この凝固片SL1への荷重は、ダイカスト鋳造における溶湯圧力を考慮して設定してもよい。また、凝固片SL1が形成された時点から、筒状部2が引っ張られた時点までの少なくとも1つの時点において、金属ブロック1の下部の温度を測定すればよい。金属ブロック1の下部の温度の測定値に基づいて、離型剤から金型への熱伝達性を評価する。金属ブロック1の下部の温度の測定値として、凝固片SL1が形成された時点から、筒状部2が引っ張られた時点までの1つの時点における金属ブロック1の下部の温度の測定値を用いてもよい。
【0032】
以上より、温度測定部5が測定した金属ブロック1の下部の温度に基づいて、金型への熱伝達性を評価することができる。また、引張力測定装置4が測定した引っ張り力に基づいて、ダイカスト離型剤又は潤滑剤の離型性を評価することができる。したがって、離型性及び金型への熱伝達性を評価することができる。
【0033】
(各具体例)
次に、図3図6を参照して、評価装置10の各具体例について説明する。図3図6に示す評価装置10の各具体例は、温度測定部5を除いて、図1に示す各具体例と同じ構成を備える。
【0034】
(第1の具体例)
図3及び図4に示す評価装置10の一具体例は、温度測定部5の一具体例である、1本の熱電対5aを備える。1本の熱電対5aは、金属ブロック1の主面1bに設けられた1つの穴1cに挿入されている。このような構成によれば、図3及び図4に示す温度測定部5の一具体例は、金属ブロック1の下部、かつ、凝固片SL1の下方に位置する1つの部位の温度を測定して、金属ブロック1の下部の温度を測定することができる。
【0035】
(第2の具体例)
図5に示す評価装置10の一具体例は、温度測定部5の一具体例である、複数本の熱電対5bを備える。複数本の熱電対5bは、金属ブロック1の主面1bに設けられた複数の穴1dにそれぞれ挿入されている。このような構成によれば、図5に示す評価装置10の一具体例は、金属ブロック1の下部、かつ、凝固片SL1の下方に位置する複数の部位の温度を測定して、金属ブロック1の下部の温度を測定することができる。
【0036】
ところで、図8に示すように、凝固片SL1の一具体例である凝固片SL2がある。凝固片SL2は、アルミニウム合金からなる溶湯が凝固することによって形成されたものである。凝固片SL2の下面SL2aには、ガス溜まりSL2b、SL2b、SL2b、SL2b、SL2bが確認された。ガス溜まりSL2bは、いずれも、離型剤から発生したガスが、凝固片SL2の下面SL2aに溜まったものと推認される。ガス溜まりSL2bと金属ブロック1の主面1aに相当する部位とは、ガス溜まりSL2bによる空洞があるため、接触しない。
【0037】
図5に示す温度測定部5の一具体例は、図3及び図4に示す温度測定部5の一具体例と比較して、温度を測定する部位が多い。そのため、ガス溜まりが、凝固片SL2と同様に、凝固片の下面において大量に発生した場合、図5に示す温度測定部5の一具体例は、図3及び図4に示す温度測定部5の一具体例と比較して、金属ブロック1の下部の温度を良好な精度で測定することができる。
【0038】
(第3の具体例)
図6に示す評価装置10の一具体例は、温度測定部5の一具体例である熱電素子5cと、冷却ブロック6を備える。
【0039】
熱電素子5cは、例えば、ゼーベック素子である。熱電素子5cは、電圧計等を備える電気回路に接続される。
【0040】
冷却ブロック6は、本体6aと、流路6bとを備える。本体6aは、熱電素子5cと熱伝導可能なように設けられていればよい。本体6aは、例えば、熱電素子5cと密着するように設けられている。流路6bは、図示しない冷却装置に冷却媒体を供給、及び排出可能に接続されている。冷却装置が冷却媒体を冷却して、冷却媒体を流路6bに供給する。冷却媒体は流路6bにおいて本体6aから熱を奪った後、流路6bから排出されて冷却装置に戻る。これらを連続的に行うことによって、冷却ブロック6を冷却し、熱電素子5cを冷却することができる。
【0041】
熱電素子5cは、金属ブロック1と冷却ブロック6との温度差に応じて、電圧を発生する。金属ブロック1と冷却ブロック6との温度差は、50℃以上であると、熱電素子5cが十分な大きさの電圧を発生するため、好ましい。冷却ブロック6は、金属ブロック1の温度よりも50℃以下となるように、冷却されるとよい。電圧計等を用いて、熱電素子5cが発生した電圧を測定し、この測定した電圧に基づいて金属ブロック1の下部の温度を算出することができる。
【0042】
また、図6に示す評価装置10の一具体例は、凝固片SL1の下面における所定の領域の温度を測定することができる。よって、図6に示す評価装置10の一具体例は、図3~5に示す評価装置10の一具体例と比較して、凝固片SL1の下面における所定の領域そのものの温度を直接的に測定することができる。図6に示す評価装置10の一具体例は、金属ブロック1の下部に穴1c、1dを設ける必要が無いから、図3~5に示す評価装置10の一具体例と比較して、金属ブロック1における熱移動が安定する。これらによって、図6に示す評価装置10の一具体例は、図3~5に示す評価装置10の一具体例と比較して、金属ブロック1の下部の温度を良好な精度で測定することができる。
【0043】
(評価結果の一例)
次に、図7を参照して、上記した評価方法を用いた離型剤の評価結果の一例について説明する。
【0044】
上記した評価方法では、図6に示す評価装置10の一具体例を用いた。上記した評価方法では、計3種類の油性離型剤L1、L2、L3について評価した。離型剤の塗布条件、金属ブロックの温度条件等は、共通する。引張力と発生電圧とを測定し、その結果を図7に示した。この測定した引張力は、離型抵抗力に相当する。
【0045】
図7に示すように、油性離型剤L1の引張力の測定値と、油性離型剤L2の引張力の測定値とは、略同じ値である。従って、油性離型剤L2による膜は、油性離型剤L1による膜と同程度の離型性を有し、良好である。
【0046】
一方、図7に示すように、油性離型剤L2の発生電圧の測定値は、油性離型剤L1の発生電圧の測定値よりも高い。従って、油性離型剤L2による膜は、油性離型剤L1による膜と比較して、金型への熱伝達性が優れる。よって、油性離型剤L2による膜の厚みは、油性離型剤L1による膜の厚みと比較して、薄いと考えられる。以上より、油性離型剤L2は、油性離型剤L1と比較して、離型性が同程度でありつつも、金型への熱伝達性が優れることから、実鋳造に優れると推認される。
【0047】
図7に示すように、油性離型剤L3の引張力の測定値は、油性離型剤L1、L2の引張力の測定値と比較して高い。従って、油性離型剤L3による膜は、油性離型剤L1、L2による膜と比較し低い離型性を有し、不良である。
【0048】
また、図7に示すように、油性離型剤L3の発生電圧の測定値は、油性離型剤L1、L2の発生電圧の測定値よりも高い。従って、油性離型剤L3による膜の厚みは、油性離型剤L1、L2による膜の厚みと比較して、薄いと考えられる。
【0049】
ここで、離型性は、離型剤による膜自体の性能以外に、膜の厚みにも影響される。油性離型剤L3による膜の離型性が低かった一因として、油性離型剤L3による膜自体の性能ではなく、油性離型剤L3による膜の厚みが薄過ぎることが考えられる。油性離型剤L3による膜の厚みが薄過ぎる場合、油性離型剤L3は塗布性に大きな課題があると考えられる。よって、油性離型剤L3の塗布条件等を最適化することによって、油性離型剤L3による膜の厚みを増大させて、その結果として、油性離型剤L3による膜に十分な離型性を付与し得ることが考えられる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本発明は、上記実施の形態やその一例を適宜組み合わせて実施してもよい。例えば、上記した実施の形態1やその変形例では、離型剤を評価対象としたが、潤滑剤を評価対象としてもよい。また、上記した実施の形態1やその変形例では、評価装置10は引張力測定装置4を備えたが、上記した実施の形態1やその変形例では、評価装置10は、力測定部を備えるとよく、例えば、押出力測定装置を備えてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 評価装置
1 金属ブロック
1a 主面(離型面) 1b 主面
1c、1d 穴
2 筒状部
3 給湯ガイド
3a 入口 3b 出口
4 引張力測定装置
5 温度測定部
5a、5b 熱電対 5c 熱電素子
6 冷却ブロック
6a 本体 6b 流路
SL1、SL2 凝固片
ST1 離型剤塗布ステップ ST2 筒状部載置ステップ
ST3 溶湯供給ステップ ST4 凝固片形成ステップ
ST5 温度及び引張力測定ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8