(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】機構の設計
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20241022BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20241022BHJP
G06F 111/04 20200101ALN20241022BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/20
G06F111:04
(21)【出願番号】P 2020212612
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-12-05
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500102435
【氏名又は名称】ダッソー システムズ
【氏名又は名称原語表記】DASSAULT SYSTEMES
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ ラモー
(72)【発明者】
【氏名】ルイシエン ルノー
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-063592(JP,A)
【文献】特開平03-129476(JP,A)
【文献】特開2003-067427(JP,A)
【文献】米国特許第5835693(US,A)
【文献】中国特許出願公開第109176525(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛体および機械式継手を備える機構を設計するためのコンピュータ実施方法であって、前記機構は寸法パラメータと位置パラメータとを含むパラメータを有し、前記機構はパラメータ値を含む閉鎖方程式を有し、
入力状態における前記機構を表す入力パラメータ値を提供するステップであって、前記入力パラメータ値は、入力寸法値を含む、該ステップと、
出力状態における前記機構を表す出力パラメータ値を決定するステップであって、前記出力パラメータ値は、出力寸法値を含み、決定するステップは、拘束下において目的関数を最小化するステップを含み、前記目的関数は、前記出力寸法値と前記入力寸法値との間の距離にペナルティを課し、前記拘束は、前記出力パラメータ値によって前記閉鎖方程式の検証を表す第1の拘束と、前記出力状態における前記機構の可動性を表す第2の拘束とを含む、該ステップと
を含むことを特徴とするコンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記第2の拘束は、前記出力状態における前記機構の2次可動性を表す等式拘束であることを特徴とする請求項1記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記目的関数は、微分可能であり、前記最小化するステップは、ラグランジュ写像導関数のゼロを見つけるステップを含み、前記ラグランジュ写像導関数は、ラグランジュ乗数を有する前記目的関数への拘束の挿入に基づいていることを特徴とする請求項2記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記目的関数は、2回微分可能であり、前記見つけるステップは、前記入力状態に対応する点から開始して、ベクトル場に対応する微分方程式を積分するステップを含み、前記ベクトル場の各安定した平衡点は、ラグランジュ写像導関数のゼロであることを特徴とする請求項3記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記微分方程式は、タイプが
【数1】
であり、ここで、
Lは、ラグランジュ写像を表し、
xは、最小化の未知数を表し、
λは、ラグランジュ乗数を表す
ことを特徴とする請求項4記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記等式拘束は、タイプが
F(u,p)=0
F
p(u,p)v=0
F
p(u,p)vv+F
pp(u,p)w=0
||v||
2-1=0
〈v,w〉=0
であり、ここで、
・Fは、閉鎖方程式を表し、
・uは、機構の寸法値を表し、
・pは、機構の位置値を表し、
・vは、機構の軌道の接線を表し、
・wは、軌道の曲率を表す
ことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記拘束は、剛性継手非存在を表す、第3の拘束をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記第3の拘束は、タイプが
【数2】
であり、ここで
・βは、スカラを示し、
・v
iは、vの座標iを表し、
・u
iは、uの座標iを表す
ことを特徴とする請求項7に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記拘束は、前記出力状態における前記機構の非縮退を表す第4の拘束をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つに記載のコンピュータ実施方法を実行するための命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項10記載のコンピュータプログラムをその上に記録したことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
メモリおよびグラフィカルユーザインターフェースに結合されたプロセッサを備え、前記メモリは、その上に請求項10記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータプログラムおよびシステムの分野に関し、より詳細には、剛体および機械式継手を備える機構を設計するための方法、システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オブジェクトの設計、エンジニアリング、製造のために、数々のシステムおよびプログラムが、市場において提供されている。CADは、コンピュータ支援設計の頭字語であり、例えば、それは、オブジェクトを設計するためのソフトウェア解法(solution)に関連する。CAEは、コンピュータ支援エンジニアリングの頭字語であり、例えば、それは、将来の製品の物理的挙動をシミュレートするためのソフトウェア解法に関連する。CAMは、コンピュータ支援製造の頭字語であり、例えば、それは、製造プロセスおよび作業を定義するためのソフトウェア解法に関連する。そのようなコンピュータ支援設計システムにおいて、グラフィカルユーザインターフェースは、技法の効率に関して、重要な役割を果たす。これらの技法は、製品ライフサイクル管理(PLM)システム内に組み込まれることがある。PLMとは、会社が、拡大企業体という概念全体にわたる、構想からそれらの寿命の終わりまで、製品データを共有し、共通のプロセスを適用し、製品の開発のための企業知識を活用することを助ける、ビジネス戦略を指す。(商標CATIA、ENOVIA、およびDELMIAの下で)Dassault Systemesによって提供されるPLM解法は、製品エンジニアリング知識を組織するエンジニアリングハブと、製造エンジニアリング知識を管理するマニュファクチャリングハブと、企業体統合ならびにエンジニアリングハブおよびマニュファクチャリングハブ両方への接続を可能にするエンタープライズハブとを提供する。すべてが一緒になって、システムは、最適化された製品定義、製造準備、生産、およびサービスを推進する、ダイナミックな知識ベースの製品作成および意思決定支援を可能にする、製品、プロセス、リソースを結び付けるオープンオブジェクトモデルを実現する。
【0003】
剛体および機械式継手(mechanical joint)を備える機構の設計を可能にする、または助ける解法は、広範な重要性を獲得している。CADシステムを使用することによって可動機構を設計することは、実際に、ますます一般的になりつつある。いくつかのCADシステムは、特に、設計者が、設計の初期段階において、機構の仮想バージョンを取り扱うことを可能にする。
【0004】
本開示を通して、それは、先行技術文献中の文献を参照することがある。
【0005】
本開示全体を通して、「自由度」という表現は、DOFと書かれることがある。典型的な機構は、完全な機械式継手によって互いに接続された、剛体から作られる。典型的な1DOF機械式継手は、回転、ひねり、角柱である。典型的な2DOF機械式継手は、ピンを有する円柱、球である。典型的な3DOF機械式継手は、球、平面である。典型的な4DOF機械式継手は、ボール-円柱、円柱-平面である。典型的な5DOF機械式継手はボール-平面である。各機械式継手は、少なくとも1DOFであることを特徴とするにもかかわらず、機構の全体的な可動性または剛性は、本体(body)と継手(joint)が組織される方法に密接に関連する。対偶およびDOFは、当技術分野においてよく知られており、例えば、非特許文献13からよく知られる。
【0006】
最先端技術は、機構のDOFの数を計算するために、(「可動性インデックス」とも呼ばれる)クッツバッハ-グルーブラ基準を提供する。本体の数をnbで、継手の数をnjで表し、nが継手のDOFの合計であるとし、各継手が、独立に考察される。次に、クッツバッハ-グルーブラ基準は、機構のいわゆる可動性インデックスδを、δ=n-g(nj-nb+1)によって計算し、ここで、gは、無拘束の任意の本体のDOFの数である。平面または球機構については、g=3である。空間機構については、g=6である。可動性インデックスは、それぞれ剛体と関連付けられたnb個のノードと、それぞれ継手と関連付けられたnj個の弧とを含む、グラフを使用することによって、計算されてよい。各弧は、それぞれの継手のDOFを用いてラベル付けされ、つまり、nは、すべてのラベルの合計である。
【0007】
図1は、平面可動機構を、ラベル付けされた本体および継手のグラフと一緒に例示している。明らかに、n
b=n
j=4、g=3であり、各継手は、平面回転であり、1DOFであることを特徴とし、そのため、予想される通り、n=4、δ=n-g(n
j-n
b+1)=4-3(4-4+1)=1である。
【0008】
図2は、剛性組立体を、それのラベル付けされたグラフと一緒に例示している。ここで、n
b=5、n
j=6、g=3であり、各継手は、1DOFであることを特徴とし、そのため、予想される通り、n=6、δ=n-g(n
j-n
b+1)=6-3(6-5+1)=0である。
【0009】
残念ながら、クッツバッハ-グルーブラ基準は、多くの現実世界の状況、特に、本開示の文脈において、疑わしいことが知られている。難点が、
図3に例示されている。機構は、
図2における機構と同じ本体および継手の配置である(しかし、同じ寸法ではない)ことを特徴とし、そのため、それは可動であるにもかかわらず、δ=0である(例は、可動性が直感的に明らかであるように選択されている)。
【0010】
過剰拘束された可動機構の最新の定義は、以下の通りである。可動機構は、それの対応するクッツバッハ-グルーブラインデックスδが、非正である、すなわち、δ≦0である場合、過剰拘束されている。過剰拘束された機構の可動性は、特別な関係が実現されるとき、有効である。この関係は、本体の寸法を代数式に組み込み、「可動性条件」と呼ばれる。例えば、先の5つ棒の平面機構は、l2=l4=l5およびl1=l3の場合に限って、可動性がある。
【0011】
過剰拘束された可動空間機構の典型的なクラスは、回転継手によって接続された本体のループから作られる。各本体は、
図4に例示されるように、棒の長さlと、回転軸間の角度αとによって、寸法取りされる。
【0012】
これらの機構は、
図5に例示されるように、ループ内の本体の数に応じて、4R、5R、6R、7Rなどと名付けられる。文字「R」は、棒が回転継手を通して接続されることを意味する。
【0013】
2つまたは3つの本体から作られたループは、間違いなく剛性がある。逆に、4つ、5つ、または6つの本体から作られたループは、一般に、剛性があるが、何らかの特定の可動性条件が実現されたとき、可動であることができる。例えば、4R機構の可動性条件は、
l1=l3
l2=l4
α1=α3
α2=α4
l2sinα3+l3sinα2=0
であり、ここで、liおよびαi、i=1,...,4は、それぞれの本体の寸法である。最後に、少なくとも7つの本体から作られたループ、7R、8Rなどは、常に可動である。
【0014】
次の表は、これらの結果を集めたものである。
【0015】
【0016】
基本的な難点は、可動性条件が、一般には、達成できないことである。それは、機構理論のコミュニティ内における多年の研究の後、非常に特定的な過剰拘束された機構(Bennett 4R、Goldberg 5R、Bricard 6R)について知られている。しかし、非特許文献4に従うと、可動性条件は、効率的なアルゴリズムによって獲得されることができない。これは、過剰拘束された可動機構を作成することを不可能にし、CADシステムに適合する時間フレーム内で編集することを不可能にする。
【0017】
その結果、今日では、それらの設計が非常に難しいので、少数の過剰拘束された機構だけしか、産業に貢献していない。ほとんどの設計者は、過剰拘束された機構の存在およびその特性に気づいていない。ときには、エンジニアは、それが過剰拘束されていることを知らずに、機構に取り組むことがある。設計される過剰拘束された機構は、剛性構造のように振る舞うので、エンジニアは、少なくとも1つの機械本体および1つの機械式継手を追加することによって、適切な動作を取得する。これは、剛性機構から可動機構を設計するための、業界の経験に従った、最も簡単な方法である。しかしながら、この操作は、3つの難点をもたらす。第1の難点は、本体および継手の数に起因する、追加の製造コストである。第2の難点は、制御される追加のパラメータである。第3の難点は、本体の数に起因する、追加の出荷コストである。逆に、過剰拘束された可動機構は、より少ない本体およびより少ない継手を用いて、同じ機能を果たし、したがって、コストを削減する。
【0018】
例えば、
図6は、6Rの過剰拘束された可動機構に基づいた、プラットフォームを例示している。
図7に示される対応する等拘束されたプラットフォームは、6つのアクチュエータに基づく。6Rプラットフォームは、約6個の本体を含み、一方、アクチュエータプラットフォームは、約12個の本体を含む。過剰拘束された可動機構の別の産業用途は、
図8に例示されるような、空間的な6Rの過剰拘束された機構に基づいた、産業用シェーカ-ミキサーである。
【0019】
過剰拘束された可動機構が役立つ産業分野は、マニピュレータロボットと、平面機構のネットワークとを含む。実際、マニピュレータロボットは、制御された軸を必要とし、大きいDOFで動作し、高価な機械という結果となる。さらに、この柔軟性は、与えられたタスクのために、常に必要とは限らないことがある。平面機構のネットワークとして、平面機構ユニットは、単一の過剰拘束された機構と比較して、同じ動きを達成するために、より多くのリンクを必要とすることがある。したがって、これらの過剰拘束された機構が、簡単かつ迅速に作成される場合、より多くの産業用途が、同じ機能のために、より簡単な機構の恩恵を受けることができる。非特許文献8ないし13は、これらのトピックに言及している。
【0020】
この状況内において、剛体および機械式継手を備える機構を設計するための改善された解法の必要性が、依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【文献】Renaud R., Generation des conditions d’existence d’une classe de systemes de solides surcontraints avec les bases de Grobner (Generation of compatibility conditions for a family of over-constrained systems using Grobner bases), Ph.D thesis, LISMMA (EA2336), Ecole doctorale de Centrale Paris, (2014)
【文献】Liu, R., Serre, P., Rameau, J.-F., Clement, A., 2015. Generic Approach for the Generation of Symbolic Dimensional Variations Based on Grobner Basis for Over-constrained Mechanical Assemblies. Procedia CIRP 27, 223-229
【文献】Rameau, J.-F., Serre, P., 2016. Dimensional perturbation of rigidity and mobility. CAD Comput. Aided Des. 71, 1-14
【文献】A. Lieutier, J.F. Rameau, Mechanical linkage design and NP-hardness, Mechanism and Machine Theory 82 (2014) 97-114
【文献】Rameau, J.-F., Serre, P., Moinet, M., 2018. Clearance vs. tolerance for rigid overconstrained assemblies. CAD Comput. Aided Des. 97(2018), 27-40
【文献】Rameau, J.-F., Serre, P., 2015. Computing mobility condition using Groebner basis. Mechanism and Machine Theory 91 (2015) 21-38
【文献】Ruixian Liu, Philippe Serre, Jean-Francois Rameau, A tool to check mobility under parameter variations in over-constrained mechanisms, Mechanism and Machine Theory 69 (2013) 44-61
【文献】C. Mavroidis et al., Analysis and synthesis of over-constrained mechanisms, 1994
【文献】O. Selvi , Structural and Kinematic Synthesis of Over-constrained Mechanisms, 2012
【文献】C. Mavroidis et al., A spatial over-constrained mechanism that can be used in practical applications, 1995
【文献】X. Kong, Kinematic analysis of a 6R single-loop over-constrained spatial mechanism for circular translation, 2015
【文献】Wang et al., Three-face over-constrained scissor-type lifting mechanism, 2010
【文献】Y. Chen , Design of Structural Mechanisms, 2003
【文献】Q. Yin, T. Yang, Overconstrained analysis on spatial 6-link loops, Mechanism and Machine Theory 37 (2002) 267-278
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、剛体および機械式継手(mechanical joint)を備える機構を設計するためのコンピュータで実施される方法が、提案される。機構は、寸法パラメータと位置パラメータとを含む、パラメータを有する。機構は、パラメータ値を含む閉鎖方程式(closure equation)を有する。方法は、入力パラメータ値を提供するステップを含む。入力パラメータ値は、入力状態における機構を表す。入力パラメータ値は、入力寸法値を含む。方法は、出力パラメータ値を決定するステップも含む。出力パラメータ値は、出力状態における機構を表す。出力パラメータ値は、出力寸法値を含む。決定するステップは、拘束(constraints)下において目的関数を最小化するステップを含む。目的関数は、出力寸法値と入力寸法値との間の距離にペナルティを課す。拘束は、出力パラメータ値による閉鎖方程式の検証を表す、第1の拘束を含む。拘束は、出力状態における機構の可動性を表す、第2の拘束をさらに含む。
【0023】
方法は、以下のうちの1つまたは複数を含んでよく、すなわち、
- 第2の拘束は、出力状態における機構の2次可動性を表す、等式拘束であり、
- 目的関数は、微分可能であり、最小化するステップは、ラグランジュ写像導関数のゼロを見つけるステップを含み、ラグランジュ写像導関数は、ラグランジュ乗数を有する目的関数への拘束の挿入に基づき、
- 目的関数は、2回微分可能であり、見つけるステップは、入力状態に対応する点から開始して、ベクトル場に対応する微分方程式を積分するステップを含み、ベクトル場の各安定した平衡点は、ラグランジュ写像導関数のゼロであり、
- 微分方程式は、タイプが
【0024】
【0025】
であり、ここで、Lは、ラグランジュ写像を表し、x、は最小化の未知数を表し、λは、ラグランジュ乗数を表し、
- 等式拘束は、タイプが
F(u,p)=0
Fp(u,p)v=0
Fp(u,p)vv+Fpp(u,p)w=0
||v||2-1=0
〈v,w〉=0
であり、ここで、
・Fは、閉鎖方程式を表し、
・uは、機構の寸法値を表し、
・pは、機構の位置値を表し、
・vは、機構の軌道の接線を表し、
・wは、軌道の曲率を表し、
- 拘束は、剛性継手非存在を表す、第3の拘束をさらに含み、
- ここで、第3の拘束は、タイプが
【0026】
【0027】
であり、ここで
・βは、スカラを示し、
・viは、vの座標iを表し、
・uiは、uの座標iを表し、および/または
- 拘束は、出力状態における機構の非縮退を表す、第4の拘束をさらに含む。
【0028】
方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムが、さらに提供される。
【0029】
コンピュータプログラムをその上に記録したコンピュータ可読記憶媒体が、さらに提供される。
【0030】
メモリおよびグラフィカルユーザインターフェースに結合されたプロセッサを備えるシステムが、さらに提供され、メモリは、その上にコンピュータプログラムを記録する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の実施形態が、添付の図面を参照しながら、非限定的な例として、今から説明される。
【
図1】機構設計に関連する概念を例示する図である。
【
図2】機構設計に関連する概念を例示する図である。
【
図3】機構設計に関連する概念を例示する図である。
【
図4】機構設計に関連する概念を例示する図である。
【
図5】機構設計に関連する概念を例示する図である。
【
図9】システムのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
剛体および機械式継手を備える機構を設計するためのコンピュータで実施される方法が、提案される。機構は、寸法パラメータと位置パラメータとを含む、パラメータを有する。機構は、パラメータ値を含む、閉鎖方程式も有する。方法は、入力パラメータ値を提供するステップを含む。入力パラメータ値は、入力状態における機構を表す。入力パラメータ値は、入力寸法値を含む。方法は、出力パラメータ値を決定するステップも含む。出力パラメータ値は、出力状態における機構を表す。出力パラメータ値は、出力寸法値を含む。決定するステップは、拘束下において目的関数を最小化するステップを含む。目的関数は、出力寸法値と入力寸法値との間の距離にペナルティを課す。拘束は、出力パラメータ値による閉鎖方程式の検証を表す、第1の拘束を含む。拘束は、出力状態における機構の可動性を表す、第2の拘束をさらに含む。
【0033】
そのような方法は、剛体および機械式継手を備える機構を設計するための改善された解法を形成する。
【0034】
特に、方法は、入力パラメータ値から出力パラメータ値を決定する。したがって、方法は、入力状態から開始して、機構を出力状態にすることを可能にする。状態のこの変化は、機構の設計ステップを形成する。この設計ステップは、最適化プログラムによって、すなわち、拘束下における目的関数の最小化によって実行される。これは、方法の効率化を可能にする。
【0035】
今、第1の拘束は、最適化からもたらされるパラメータ値が、閉鎖方程式を検証することを保証する。結果として、方法によって設計された機構は、それが閉じられた、言い換えると、組み立てられた、出力状態にある。機構は、使用するために組み立てられることが意図されているので、第1の拘束は、産業的に適切な機構の設計に使われることを可能にする。
【0036】
加えて、第2の拘束は、最適化からもたらされるパラメータ値が、可動性を提示する機構を表すことを保証する。機構は、機能するために(剛性とは対照的に)可動であることが意図されているので、第2の拘束は、産業的に適切な機構の設計に使われることを可能にする。機構は、特に、出力状態における可動性条件を検証してよい。言い換えると、方法によって設計された機構は、可動機構であってよい。
【0037】
したがって、第1および第2の拘束は、一緒になって、機能する可動機構を獲得することを可能にしてよい。したがって、方法によって出力される設計は、シミュレーション目的で、および/または現実世界における対応する物理的機構を製造するために、使用されてよい。
【0038】
開示された方法全体にわたって、機構は、剛体の同じ組合せと、機械式継手の同じ組合せとを、すべて同じ配置で備えてよい(配置は、どの剛体が、機械式継手のうちのどの1つによって、一緒に接続されるかを指す)。機構のパラメータ値、言い換えると、機構の要素の寸法および/または位置だけが、変化してよい。言い換えると、入力状態から出力状態まで、機構を形成する剛体および機械式継手のタイプは、すべて、同じままであり、それらは、すべて、同じ配置に留まるが、出力パラメータ値のセットは、入力パラメータ値のセットと異なってよい。しかしながら、方法の後、機構は、任意の方式で、例えば、剛体を追加および/または交換することによって、さらに変更されてよい。そのような後処理変更は、本開示の範囲外にある。
【0039】
機構の「状態」によって、それは、本明細書においては、パラメータの異なる値を用いて、機構が取ることができる、異なる構成を指す。例えば、
図2および
図3は、同じ機構を示しているが、剛性棒の異なる寸法のせいで、異なる状態にある。対照的に、
図1の機構は、5つの代わりに、4つの棒しか有さないので、
図1は、
図2および
図3と異なる機構を示している。また、
図5は、左から右へ3つの異なる機構、すなわち、4R、5R、および6Rを表している。完全を期すために、本開示における「状態」という用語は、可動機構が取ることができる異なる位置を指すのではなく、むしろ、説明されたように、同じタイプ/クラスの可動機構の異なるインスタンスを指すことにここで留意されたい。
【0040】
したがって、方法は、特に機構の閉鎖方程式に基づいて、機構のパラメータ値だけを処理する。機構のパラメータ値は、実際、最小化の自由変数/未知数の中に含まれてよい。したがって、最小化は、機構を組み立てられた可動状態にするために、機構の寸法パラメータ値および/または位置パラメータ値を編集する。
【0041】
機構の閉鎖方程式は、定義によって、機構のすべてのパラメータを引数として取る方程式であり、それは、パラメータ値が方程式を検証したときに、機構が組み立てられ/閉じられるようなものである。閉鎖方程式は、任意の方法で提供されてよく、例えば、方法に対して事前決定されてよい。閉鎖方程式は、例えば、与えられたタイプの機構に対して各々が提供される、閉鎖方程式のライブラリから獲得されてよい。あるいは、閉鎖方程式は、任意の知られた方法で、方法の前に、ユーザによって確立されてよい。完全を期すために、任意の与えられた機構の閉鎖方程式を確立することを可能にする、数学それ自体が、知られていることにここで留意されたい(例示的な実施が、後で提供される)。
【0042】
機構は、先に提供された意味において、過剰拘束されていることがある。そのようなケースにおいては、ユーザ編集は、困難であるが、方法は、産業的および機能的な設計に到達する自動的な方法を提供する。
【0043】
(機構が、過剰拘束されていることも、または過剰拘束されていないこともある)方法の第1の適用においては、機構は、入力状態において、分解されている(すなわち、閉じていない、または開いている)ことがあり、方法は、寸法および/または位置パラメータを編集することによって、それを組み立てることを可能にする。入力パラメータ値は、閉鎖方程式を検証しないので、機構は、入力状態において、分解されていることがある。これは、入力パラメータ値が、ジオメトリとして、分解された状態にある機構を、入力寸法パラメータ値と一緒に表す、入力位置値を含むためであることがある。そのような状況は、入力寸法値が、機構の組み立てを物理的にまったく可能にしないために、または入力寸法値は、機構の組み立てを物理的に可能にするが、入力位置値が、そのような組み立てを達成しないために、生じることがある。あるいは、これは、入力パラメータ値が、パラメータのいくつかについて、値を欠いているために、例えば、それらが、入力位置値を含みさえしないためであることがある。
【0044】
(機構が、過剰拘束されていることも、または過剰拘束されていないこともある)方法の第2の適用においては、機構は、入力状態において、組み立てられているが、剛性があることがあり、方法は、寸法および/または位置パラメータを編集することによって、それを可動にすることを可能にする。機構は、組み立てられているが、入力寸法パラメータ値が、機構のいかなる可動性も可能にしないために、機構は、入力状態において、組み立てられているが、剛性があることがある。これは、例えば、可動状態にある同じ機構を示す
図3とは対照的に、剛性状態にある、
図2に示される機構の状況である。
【0045】
(機構が、過剰拘束されていることも、または過剰拘束されていないこともある)方法の第3の適用においては、機構は、入力状態において、分解されているが、単なる再配置によって、組み立てられることがあり、方法は、寸法および/または位置パラメータを編集することによって、それを組み立てることを可能にする。そのようなケースにおいては、入力寸法値は、単なる再配置が剛性組立体をもたらすようなものであってよく、方法は、機構を組み立てるばかりでなく、(寸法パラメータを含む)パラメータを編集することによって、それを可動にすることもさらに可能にする。
【0046】
上記の適用に取って代わる、または付け加えられる、方法の第4の適用においては、方法は、既存の機構の1つまたは複数のパラメータ値、例えば、1つまたは複数の寸法値を編集するために、使用されてよい。ユーザは、例えば、1つまたは複数の目標寸法パラメータ値を設定してよく、方法は、そのような目標を最適化問題に組み込んでよい(これは、単純に、最適化可能な未知数のセットからの関連付けられたパラメータ値を、最小化から、取り除くことによって、行われてよい)。機構は、特に、入力状態において、過剰拘束および/または可動であり、おそらくは組み立てられていてよい。そのようなケースにおいては、方法は、機構の可動性を維持しながら、パラメータ値を変更することを可能にする。そのような適用の実施においては、機構は、入力状態において、剛性であり、任意選択で目標寸法値と関連付けられてよく、または過剰拘束され、可動であり、強制的に目標寸法値と関連付けられてよい。そのような第4の適用においては、1つまたは複数の目標値は、1つの目標値、例えば、1つの目標寸法パラメータ値に制限されてよい。これは、(いくつかの目標寸法パラメータ値と比較して)非可動解法への収束のリスクを低減する。
【0047】
方法は、ユーザ-マシン対話に組み込まれてよい。ユーザ-マシン対話は、機構を構成する剛体および機械式継手の配置を提供することを含んでよい。
【0048】
これは、例えば、ユーザが、剛体および機械式継手のタイプを選択し、それらを設計においてインスタンス化することによって、実行されてよい。剛体および/または機械式継手のグラフィカル表現が、ユーザに表示されてよい。ユーザは、寸法パラメータ値および/または位置パラメータ値を定義してよい。位置パラメータ値は、例えば、(マウス、またはタッチデバイス、例えば、タッチパッドもしくはタッチスクリーンなどの)ハプティックデバイスを介した、例えば、ユーザのディスプレイとのグラフィカル対話を用いて、定義されてよい。グラフィカル対話は、剛体および/または機械式継手のグラフィカル表現を、ディスプレイのあるロケーションにドラッグアンドドロップすることを含んでよい。この方式においては、ユーザは、入力パラメータ値を最小化に提供する、機構の入力状態を定義してよい。このユーザ-マシン対話のせいで、特に、過剰拘束された機構を用いると、入力状態は、ほとんど必然的に、機構が分解されている状態、または組み立てられている/組み立てられることができるが剛性がある状態である。ユーザは、特に、機構を組み立ててよいが、例えば、グラフィカル対話と、それの不可避的な不正確さの結果として、近似的に組み立てるにすぎない。ユーザが、機構を組み立てようと努力したとしても、機構が、過剰拘束されている場合、ユーザが、パラメータ値を編集し、可動状態を見つけることは、一般に非常に困難である。方法は、ユーザがそれを行うのを支援し、それによって、可動機構設計のエルゴノミクスを改善する。
【0049】
これは、ユーザが、既存の可動機構を呼び出し、例えば、寸法パラメータ値を編集することによって、機構の変更を要求することによって、実行されてよい。機構の剛体および/または機械式継手のグラフィカル表現が、ユーザに表示されてよい。寸法パラメータの編集は、例えば、(マウス、またはタッチデバイス、例えば、タッチパッドもしくはタッチスクリーンなどの)ハプティックデバイスを介した、例えば、ユーザのディスプレイとのグラフィカル対話の使用を用いて、実行されてよい。グラフィカル対話は、剛体および/または機械式継手のグラフィカル表現の末端を、ディスプレイのあるロケーションにドラッグアンドドロップすることを含んでよい。方法は、機構の可動性を維持することを可能にする。
【0050】
すべてのケースにおいて、機構は、それについての可動性条件が、従来技術においては未知である機構であってよい。この可動性条件が、未知であるとき、それの自動計算は、妥当な時間フレーム内において達成できない。方法は、機構が過剰拘束されているとしても、可動性条件の知識なしに、可動性を保存しながら、可動性機構の寸法を変更することを可能にしてよい。あるいは、または加えて、方法は、可動性条件の知識なしに、剛性構造を過剰拘束された可動機構に変更することを可能にしてよい。
【0051】
実際には、入力パラメータ値は、入力寸法値に加えて、入力位置値を含んでよい。あるいは、または加えて、出力パラメータ値は、出力寸法値に加えて、出力位置値を含んでよい。
【0052】
実際には、入力パラメータ値は、各位置パラメータについてのそれぞれの入力位置値と、各寸法パラメータについてのそれぞれの入力寸法値とを含んでよく、および/または出力パラメータ値は、各位置パラメータについてのそれぞれの出力位置値と、各寸法パラメータについてのそれぞれの出力寸法値とを含んでよい。任意選択で、上で説明されたように、ただ1つの目標寸法値が、最小化にさらに入力されてよい。
【0053】
目的関数は、出力寸法値と入力寸法値の間の距離にペナルティを課す、任意のコストであってよい。方法の効率的な実施のため、目的関数は、微分可能であってよく、2回微分可能であってさえよい。目的関数は、例えば、距離の2乗に比例してよい。
【0054】
方法は、コンピュータで実施される。これは、方法のステップ(または実質的にすべてのステップ)が、少なくとも1つコンピュータによって、または同様に任意のシステムによって実行されることを意味する。したがって、方法のステップは、コンピュータによって、おそらくは完全に自動的に、または半自動的に実行される。例においては、方法の少なくともいくつかのステップのトリガは、ユーザ-コンピュータ対話を通して、実行されてよい。必要とされるユーザ-コンピュータ対話のレベルは、予測される自動化のレベルに依存し、ユーザの希望を実施するための必要とバランスを取ってよい。例においては、このレベルは、ユーザ定義および/または事前定義されてよい。
【0055】
方法のコンピュータ実施の典型的な例は、この目的に適合させられたシステムを用いて、方法を実行することである。システムは、メモリおよびグラフィカルユーザインターフェース(GUI)に結合されたプロセッサを備えてよく、メモリは、方法を実行するための命令を含む、コンピュータプログラムをその上に記録する。メモリは、データベースを記憶してもよい。メモリは、そのような記憶に適合させられた、おそらくはいくつかの物理的に異なる部分を備える(例えば、プログラム用に1つ、おそらくはデータベース用に1つ)、任意のハードウェアである。
【0056】
方法は、一般に、モデル化されたオブジェクトを操作する。モデル化されたオブジェクトは、例えば、データベース内に記憶されたデータによって定義される、任意のオブジェクトである。拡大解釈すると、「モデル化されたオブジェクト」という表現は、データ自体を指す。システムのタイプに従って、モデル化されたオブジェクトは、異なる種類のデータによって定義されてよい。システムは、実際、CADシステム、CAEシステム、CAMシステム、PDMシステム、および/またはPLMシステムの任意の組合せであってよい。それらの異なるシステムにおいて、モデル化されたオブジェクトは、対応するデータによって定義される。したがって、CADオブジェクト、PLMオブジェクト、PDMオブジェクト、CAEオブジェクト、CAMオブジェクト、CADデータ、PLMデータ、PDMデータ、CAMデータ、CAEデータについて話してよい。しかしながら、モデル化されたオブジェクトは、これらのシステムの任意の組合せに対応するデータによって、定義されてよいので、これらのシステムは、他のものに対して排他的なシステムではない。したがって、システムは、以下で提供されるそのようなシステムの定義から明らかなように、おそらくCADシステムおよびPLMシステムの両方であってよい。
【0057】
CADシステムによって、加えて、CATIAなど、モデル化されたオブジェクトのグラフィカル表現に基づいて、少なくともモデル化されたオブジェクトを設計するために適合させられた任意のシステムが、意味される。このケースにおいては、モデル化されたオブジェクトを定義するデータは、モデル化されたオブジェクトの表現を可能にするデータを含む。CADシステムは、例えば、エッジまたはラインを使用して、あるケースにおいては、フェイスまたはサーフェスを用いて、CADでモデル化されたオブジェクトの表現を提供してよい。ライン、エッジ、またはサーフェスは、様々な方式、例えば、非一様有理Bスプライン(NURBS)で表されてよい。具体的には、CADファイルは、それから幾何学形状が生成されてよく、ひいては、表現が生成されることを可能にする、仕様を含む。モデル化されたオブジェクトの仕様は、単一のCADファイルまたは複数のCADファイル内に記憶されてよい。CADシステムにおいてモデル化されたオブジェクトを表すファイルの典型的なサイズは、パーツごとに1メガバイトの範囲内にある。また、モデル化されたオブジェクトは、一般に、数千のパーツの組立体であってよい。
【0058】
CADの文脈においては、モデル化されたオブジェクトは、一般に、例えば、パーツもしくはパーツの組立体などの製品、またはおそらくは製品の組立体を表す、3Dモデル化されたオブジェクトであってよい。「3Dモデル化されたオブジェクト」によって、それの3D表現を可能にするデータによってモデル化された任意のオブジェクトが、意味される。3D表現は、すべての角度からパーツを見ることを可能にする。例えば、3Dモデル化されたオブジェクトは、3D表現されたとき、それの軸のいずれかの周りで、または表現がその上に表示された画面内のいずれかの軸の周りで、操作および回転されてよい。これは、特に、3Dモデル化されていない、2Dアイコンを除外する。3D表現の表示は、設計を容易化する(すなわち、統計的に、設計者が彼らのタスクを達成するスピードを高める)。製品の設計は、製造プロセスの一部であるため、これは、工業界における製造プロセスをスピードアップする。
【0059】
方法によって設計された3Dモデル化されたオブジェクトは、例えば、CADソフトウェア解法またはCADシステムを用いた仮想設計の完了後に、現実世界において製造される可動機構の幾何学形状を表してよい。
【0060】
可動機構は、航空宇宙、建築、建設、消費財、ハイテクデバイス、産業機器、輸送、海事、および/またはオフショア石油/ガス生産もしくは輸送を含む、様々な無制限の産業分野に属して(すなわち、使用されて)よい。
【0061】
可動機構は、完全な機械式継手によって一緒に接続された剛体から作られ、それは、任意のDOFであることを特徴としてよい。
【0062】
機械式継手は、以下のタイプの機械式継手のうちの、すなわち、
- 回転、ひねり、角柱を含む、1DOF機械式継手、
- ピンを有する円柱、球を含む、2DOF機械式継手、
- 球、平面を含む、3DOF機械式継手。4DOF機械式継手は、ボール-円柱、円柱-平面である、
- ボール-平面を含む、5DOF機械式継手
のうちのいずれか1つの間で選択されてよい。
【0063】
剛体は、(直線または非直線の)棒、またはセグメントによって表されてよい任意の剛体を含んでよい。知られているように、機構設計を可能にするCADシステムは、2つの機械式継手の間において定義されるセグメントとして、剛体を表す。
【0064】
可動機構は、過剰拘束されることがある。可動機構は、マニピュレータロボットの一部、平面機構のネットワーク、自動車機構、または本明細書において提示される(特に、背景技術セクションにおける、回転継手によって接続された本体の平面もしくは非平面ループを含む)他の任意のタイプの機構を形成してよく、またはそれらであってよい。
【0065】
図9は、システムのGUIの例を示しており、システムは、CADシステムである。
図9に示される3Dモデル化されたオブジェクトは、回転可動性(ディスク)および並進可動性(ブレーキパッド)を有する機構、すなわち、ディスクブレーキを表す。
【0066】
GUI2100は、標準的なメニューバー2110、2120、ならびに下部および側部ツールバー2140、2150を有する、典型的なCAD様のインターフェースであってよい。そのようなメニューおよびツールバーは、ユーザ選択可能なアイコンのセットを含み、各アイコンは、当技術分野において知られているような、1つまたは複数の操作または機能と関連付けられる。これらのアイコンのいくつかは、GUI2100内に表示される3Dモデル化されたオブジェクト2000を編集するために、および/またはその上で作業するために適合させられた、ソフトウェアツールと関連付けられる。ソフトウェアツールは、ワークベンチ内にグループ化されてよい。各ワークベンチは、ソフトウェアツールのサブセットを含む。特に、ワークベンチのうちの1つは、モデル化された製品2000の幾何学的特徴を編集するのに適した、編集ワークベンチである。操作中、設計者は、例えば、オブジェクト2000の一部を事前選択し、適切なアイコンを選択することによって、操作(例えば、寸法、色などの変更)を開始して、または幾何学的拘束を編集してよい。例えば、典型的なCAD操作は、画面上に表示された3Dモデル化されたオブジェクトの穴開けまたは折り畳みのモデリングである。GUIは、例えば、表示された製品2000に関連する、データ2500を表示してよい。図の例においては、「フィーチャツリー」として表示されるデータ2500、およびそれらの3D表現2000は、ブレーキキャリパおよびディスクを含む、ブレーキ組立体に関する。GUIは、例えば、オブジェクトの3D方向付けを容易化するための、編集された製品の動作のシミュレーションをトリガするための、または表示された製品2000の様々な属性をレンダリングするための、様々なタイプのグラフィックツール2130、2070、2080をさらに示してよい。カーソル2060は、ユーザがグラフィックツールと対話することを可能にするために、ハプティックデバイスによって制御されてよい。
【0067】
図10は、システムの例を示しており、システムは、クライアントコンピュータシステム、例えば、ユーザのワークステーションである。
【0068】
例のクライアントコンピュータは、内部通信バス1000に接続された中央処理ユニット(CPU)1010と、やはりバスに接続されたランダムアクセスメモリ(RAM)1070とを備える。クライアントコンピュータは、バスに接続されたビデオランダムアクセスメモリ1100と関連付けられた、グラフィカル処理ユニット(GPU)1110をさらに提供される。ビデオRAM1100は、当技術分野において、フレームバッファとしても知られている。大容量記憶デバイスコントローラ1020は、ハードドライブ1030など、大容量メモリデバイスへのアクセスを管理する。コンピュータプログラム命令およびデータを有形に具体化するのに適した、大容量メモリデバイスは、例として、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの、半導体メモリデバイス、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの、磁気ディスク、光磁気ディスク、ならびにCD-ROMディスク1040を含む、不揮発性メモリのすべての形態を含む。上記のいずれも、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)によって補助されて、またはそれに組み込まれてよい。ネットワークアダプタ1050は、ネットワーク1060へのアクセスを管理する。クライアントコンピュータは、カーソル制御デバイスまたはキーボードなどの、ハプティックデバイス1090も含んでよい。カーソル制御デバイスは、ユーザが、ディスプレイ1080上の任意の所望のロケーションにカーソルを選択的に位置付けることを可能にするために、クライアントコンピュータにおいて使用される。加えて、カーソル制御デバイスは、ユーザが、様々なコマンドを選択し、制御信号を入力することを可能にする。カーソル制御デバイスは、制御信号をシステムに入力するための、数々の信号生成デバイスを含む。一般に、カーソル制御デバイスは、マウスであってよく、信号を生成するために、マウスのボタンが、使用される。あるいは、または加えて、クライアントコンピュータシステムは、センシティブパッド、および/またはセンシティブスクリーンを備えてよい。
【0069】
コンピュータプログラムは、コンピュータによって実行可能な命令を含んでよく、命令は、上記のシステムに方法を実行させるための手段を含む。プログラムは、システムのメモリを含む、任意のデータ記憶媒体上に記録可能であってよい。プログラムは、例えば、デジタル電子回路で、またはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、もしくはそれらの組合せで、実施されてよい。プログラムは、装置として、例えば、プログラム可能なプロセッサによる実行のために、マシン可読記憶デバイス内に有形に具体化された製品として、実施されてよい。方法ステップは、入力データを操作し、出力を生成することによって、方法の機能を実行するために、命令からなるプログラムを実行する、プログラム可能なプロセッサよって実行されてよい。したがって、プロセッサは、プログラム可能であってよく、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスからデータおよび命令を受け取り、それらにデータおよび命令を送るように結合されてよい。アプリケーションプログラムは、高水準手続き型もしくはオブジェクト指向プログラミング言語で、または必要に応じて、アセンブリ言語もしくは機械語で、実施されてよい。いずれのケースにおいても、言語は、コンパイル型またはインタープリタ型言語であってよい。プログラムは、フルインストールプログラム、または更新プログラムであってよい。システム上におけるプログラムの適用は、いずれのケースにおいても、方法を実行するための命令という結果となる。
【0070】
「3Dモデル化されたオブジェクトの設計」は、3Dモデル化されたオブジェクトを精巧に作り上げるプロセスの少なくとも一部である、いずれかのアクションまたは一連のアクションを指す。したがって、方法は、3Dモデル化されたオブジェクトをゼロから作成するステップを含んでよい。あるいは、方法は、以前に作成された3Dモデル化されたオブジェクトを提供し、次に、3Dモデル化されたオブジェクトを変更するステップを含んでよい。
【0071】
方法は、方法を実行した後、モデル化されたオブジェクトに対応する物理的製品を製造することを含んでよい、製造プロセス内に含まれてよい。いずれのケースにおいても、方法によって設計されたモデル化されたオブジェクトは、製造オブジェクトを表してよい。したがって、モデル化されたオブジェクトは、モデル化されたソリッド(すなわち、ソリッドを表すモデル化されたオブジェクト)であってよい。製造オブジェクトは、パーツまたはパーツの組立体などの、製品であってよい。方法は、モデル化されたオブジェクトの設計を改善するので、方法は、製品の製造も改善し、したがって、製造プロセスの生産性を向上させる。
【0072】
方法の実施が、
図11ないし
図21を参照して、今から説明される。
【0073】
入力の過剰拘束された機構を与えると、方法の実施は、2次まで可動である類似の機構を計算する。原理は、入力された機構の寸法パラメータを、2次可動機構の寸法パラメータのセットに射影することである。剛性継手および寸法がゼロになることを回避するために、追加の方程式が、使用されてよい。射影問題は、非線形拘束と一緒に、2次最適化問題によってモデル化される。古典的なラグランジュ変換を通して、最適化問題は求根問題に変更され、それは、次に、常微分方程式に変更される。微分方程式の初期条件は、入力された機構である。未知の機構(2次において可動)は、微分方程式の安定した平衡点である。この平衡点は、初期条件からの、例えば、十分に大きい時間区間にわたる、微分方程式の数値積分を通して獲得される。解の真の可動性は、標準的なキネマティックソルバを使用することによって、チェックされてよい。これは、
図11に示されている。
【0074】
最先端の技術と比較して、方法の実施は、可動の過剰拘束された非縮退の機構を作成または変更することができる、実用的な解法である。これは、過剰拘束された機構の設計に、エンジニアがアクセス可能であるようにし、ひいては、先に説明されたような、新世代の有利な機構の分野を開く。
【0075】
方法の実施は、2種類の入力を可能にしてよい。第1の種類は、任意選択で目標寸法値と関連付けられた、剛性の過剰拘束された組立体である。第2の種類は、強制的に目標寸法値と関連付けられた、過剰拘束された可動機構である。すべてのケースにおいて、方法の実施のゴールは、それが与えられたときに、目標寸法値を特徴とする、可動機構を提供することである。
【0076】
機構方程式
数学的観点から、機構は、いわゆる閉包写像F:U×P→E、
【0077】
【0078】
によってモデル化され、ここで、Uは、寸法パラメータの空間であり、Pは、位置パラメータの空間であり、Eは、目標空間である。閉鎖方程式は、F(u,p)=0である。解u0、p0は、F(u0,p0)=0である場合、ならびにq(0)=p0、すべてのtについて、q’(t)≠0、およびすべてのtについて、F(u0,q(t))=0であるような、実パラメータtの位置パラメータの空間
【0079】
【0080】
において、滑らかな曲線が存在する場合、「真に可動」、または略して「可動」である。このレベルの抽象化は、方法の実施の状況においては十分である。
【0081】
詳細な閉鎖方程式
閉鎖方程式は、専用の数学的オブジェクトを通して、トポロジおよびジオメトリ情報を捕捉する。トポロジは、機械式継手を通した、剛体の論理接続を含む。ジオメトリは、それぞれの本体の寸法、および機械式継手の自由度を含む。次のセクションは、機構の閉鎖方程式を設定するための最も一般的な方法について説明する。特定の方法は、非特許文献15などの、特定の機構のために使用されることができる。方法の実施の状況において実行されるテストは、4Rおよび5R機構に容易に適合させることができる、非特許文献15の方程式に基づいている。
【0082】
機構のトポロジ
正式には、機構Qは、タプルQ=(H,B,q,J,D,C)によって定義されてよい。集合H={h1,h2,...}は、有限集合である。集合Hの要素は、リンクと呼ばれる。実際には、リンクは、軸システムとして解釈されることができ、ゴールは、リンク間の相対位置を定義することである。集合B={b1,b2,...}も、有限集合である。集合Bの要素は、本体と呼ばれる。写像q:H→Bは、本体は、いくつかのリンクを所有することができるが、各リンクは、一意的な本体と関連付けられるような方法で、各リンクを本体と関連付ける。表記q(h)=bは、リンクhが、本体bと関連付けられることを意味する。表記q-1(b)は、本体bと関連付けられたリンクの集合である。各本体bについて、1つの特定のリンクが、参照リンクと呼ばれ、h0(b)で表される。以下においては、参照リンクは、同じ本体の他のリンクを位置付けるために使用される。ここで、継手の集合Jは、異なる本体に属するリンクの対の部分集合であり、すなわち、J⊂{(hi,hk),i<k,q(hi)≠q(hk)}である。各継手は、異なる本体の2つのリンク間の論理接続を捕捉する。このステップにおいて、グラフGは、G=(B,J,s,e)、s:J→B、e:J→Bで定義されることができ、ここで、s(hi,hk)=q(hi)、e(hi,hk)=q(hk)である。グラフのノードは、本体であり、グラフの弧は、本体(のリンク)を接続する継手である。このステップにおいて、機構のトポロジが、完全に定義される。
【0083】
寸法パラメータ
ジオメトリは、今は、写像DおよびCによって定義される。ゴールは、(写像Dを通して)それぞれの本体の寸法を、(写像Cを通して)継手の自由度を定義するために、相対位置をリンクの対に関連付けることである。各本体の寸法取りは、本体内のリンクの対の集合を考察することによって行われる。
【0084】
【0085】
3次元の剛体運動のグループをSE(3)で表し、写像D:I→SE(3)は、各本体b、および本体bの各非参照リンクhについて、D(h0(b),h)∈SE(3)が、参照リンクh0(b)に関する、リンクhの相対位置であるようなものである。各相対位置は、角度および距離によってパラメータ化され、機構の寸法パラメータの集合Uは、これらの相対位置のすべてのパラメータによって定義される。
【0086】
位置パラメータ
本体の相対位置は、剛体運動D(hi,hk)を各継手(hi,hk)に関連付ける、写像C:J→SE(3)、
【0087】
【0088】
を使用することによって定義される。各剛体運動のパラメータは、各継手の自由度を定義し、機構の位置パラメータの集合Pは、これらの相対位置のすべてのパラメータによって定義される。明確にするために、D(hi,hk)およびC(hi,hk)は、それぞれ、Di,kおよびCi,kで表される。
【0089】
例
例えば、
図12における機構のトポロジは、5つの本体、12のリンク、および6つの継手によって定義され、すなわち、
B={b
1,b
2,...,b
5}
H={h
1,h
2,...,h
12}
である。
【0090】
本体とリンクの所有権は、写像q:H→Bによって定義される。
【0091】
q(h1)=q(h2)=q(h3)=b1
q(h4)=q(h5)=b2
q(h6)=q(h7)=q(h8)=b3
q(h9)=q(h10)=b4
q(h11)=q(h12)=b5
参照リンクは、以下の通りである。
【0092】
h0(b1)=h1
h0(b2)=h4
h0(b3)=h6
h0(b4)=h9
h0(b5)=h11
継手は、
J={(h1,h4),(h5,h6),(h7,h11),(h8,h9),(h2,h12),(h3,h10)}
である。
【0093】
図13は、トポロジを例示している。軸システムは、各参照リンクと関連付けられる。点線は、継手を例示している。
【0094】
相対位置は、寸法および位置パラメータが、引数内に明示的に発生するような方法で、表される。これは、閉鎖方程式を明確にするのに役立つ。例は、平面機構であるので、2次元の剛体運動の集合SE(2)が、使用される。そのような剛体運動は、古典的に
【0095】
【0096】
と書かれ、ここで、θは、回転角であり、
【0097】
【0098】
は、並進ベクトルである。本体b1の寸法は、平行移動
【0099】
【0100】
である、参照リンクh1に関するリンクh2の相対位置によって、および平行移動
【0101】
【0102】
である、参照リンクh1に関するリンクh3の相対位置によって定義される。本体b2の寸法は、平行移動
【0103】
【0104】
である、参照リンクh3に関するリンクh4の相対位置によって定義される。本体b3の寸法は、平行移動
【0105】
【0106】
である、参照リンクh6に関するリンクh7の相対位置によって、および平行移動
【0107】
【0108】
である、参照リンクh7に関するリンクh8の相対位置によって定義される。本体b4の寸法は、平行移動
【0109】
【0110】
である、参照リンクh9に関するリンクh10の相対位置によって定義される。本体b5の寸法は、平行移動
【0111】
【0112】
である、参照リンクh11に関するリンクh12の相対位置によって定義される。
【0113】
この例においては、各継手は、1DOFの回転であることを特徴とし、そのため、すべての剛体運動Ci、kは、回転
【0114】
【0115】
、
【0116】
【0117】
、
【0118】
【0119】
、
【0120】
【0121】
、
【0122】
【0123】
、および
【0124】
【0125】
である。
【0126】
【0127】
閉鎖方程式のために、すべての準備がととのった。それは、
図15に例示されるように、機構の2つのループを閉じるために、相対位置を組み合わせることによって書かれる。
【0128】
第1の方程式は、左端のループに従って、立てられ、第2の方程式は、右端のループに従って、立てられる。
【0129】
C1,4(θ1)D4,5(l2)C5,6(θ2)D6,7(l3)C7,11(θ3)D11,12(l5)C2,12(θ5)-1D1,2(l1)-1=I
C2,12(θ5)D11,12(l5)-1C7,11(θ3)-1D6,7(l3)-1D6,8(l3)C8,9(θ4)D9,10(l4)C3,10(θ6)-1D1,3(l1)-1D1,2(l1)=I
これは、6つの独立したスカラ方程式をもたらす。
【0130】
【0131】
明らかに、全体的な寸法パラメータは、u=(l1,...,l5)であり、位置パラメータは、p=(θ1,...,θ6)である。
【0132】
別の例は、nR機構に含まれる、典型的な棒の寸法である。これは、
図16に例示されるように、2つのリンクh
1およびh
2から作られる。
【0133】
参照リンクとしてh1を取ると、h1に関するh2の相対位置は、角度αによる回転と、回転軸に沿った長さlによる平行移動とを組み合わせた、剛体運動D1,2(α、l)である。
【0134】
【0135】
数学的準備:部分集合上への射影
このセクションは、方法の実施によって操作される、数学的概念を要約する。
【0136】
【0137】
を、与えられた点とする。Mを、暗黙的な方程式によって定義される
【0138】
【0139】
の部分集合
【0140】
【0141】
とし、ここで、
【0142】
【0143】
は、m<nの、滑らかで、おそらくは非線形の写像である。ゴールは、x0に可能な限り近い点である、x*∈Mを計算することである。
【0144】
最小化
古典的に、問題は、非線形拘束下における、2次最小化問題として定式化され、すなわち、
【0145】
【0146】
となる。
【0147】
多くの既存の数値アルゴリズムが、この問題に取り組むことができるが、標準的な方法は、可動性計算の状況において、効率的ではないことを、実験が示しているので、方法の実施は、専用の方法を設定する。第1のステップは、求根問題を定式化することである。
【0148】
求根
見て分かるように、この実施において使用される特定の目的関数は、微分可能である(同じ特性を特徴とする他の目的関数が、使用されることができる)。これは、方法が、それがラグランジュ写像導関数のゼロを見つけることを含むような、最小化を実行することを可能にする。ラグランジュ写像導関数は、ラグランジュ乗数を有する目的関数への拘束の挿入に基づく。この手法は、効率的な最小化を可能にする。
【0149】
ラグランジュ乗数
【0150】
【0151】
と、ラグランジュ写像を導入することにより、
【0152】
【0153】
である。
【0154】
最小化問題の解は、必然的にラグランジュ写像導関数のゼロであることがよく知られており、すなわち、
Lx(x、λ)=0
Lλ(x、λ)=0
であり、これは、写像
【0155】
【0156】
の零点を見つけることであり、求根問題とも呼ばれる。
【0157】
加えて、
【0158】
【0159】
が、線形写像
【0160】
【0161】
が最大階数ではないようなものである場合、線形写像
【0162】
【0163】
は、可逆ではないことが、証明されることができる。これは、根計算を問題のあるものにし、それが、以下で詳述される特異点の原因である。
【0164】
微分方程式
見て分かるように、この実施において使用される特定の目的関数は、実際には、2回微分可能である(同じ特性を特徴とする他の目的関数が、使用されることができる)。
これは、方法が、それが入力状態に対応する点から開始して(任意選択の目標寸法値に対応するパラメータ値を除去して)微分方程式を積分することを単に含むような方法で、発見を実行することを可能にする。この微分方程式は、ベクトル場に対応し、最終的に、2次可動性に向かう流れを表す。ベクトル場の各安定した平衡点が、ラグランジュ写像導関数のゼロである場合、積分は、拘束を検証する目的関数の最小値に向かって収束する。
【0165】
ここで再び、求根問題を解く既存の数値アルゴリズムは、可動性計算の状況において、効率的ではないことを、実験が示している。元の未知数xと、未知のラグランジュ乗数λを分離することは有用でないので、読み易さのために、求根問題の未知数(x、λ)は、単一の記号yを用いて表される。さらに、求根問題は、f(y)=0と表される。y*が、ベクトル場
【0166】
【0167】
の安定した平衡点である場合、それは、求根問題の解であり、つまり、f(y*)=0であることがよく知られている。そのため、常微分方程式を考察する。
【0168】
y’(t)=-f’(y(t))-1f(y(t))
y(0)=y0
これは、適切な初期化点y0を与えられた場合、軌道
【0169】
【0170】
が、y(0)=y0、t→+∞であるとき、y(t)→y*のようになることを意味する。この定式化は、「連続ニュートン法」として知られている。
【0171】
それにもかかわらず、以下で説明されるように、可動性計算の状況においては、y=y*において、逆f’(y)-1が存在しないため、この戦略は、適合させられてよい。解法は、逆線形写像f’(y)-1を転置線形写像f’(y)Tによって置き換えることであり、つまり、関心がある微分方程式は、
y’(t)=-f’(y(t))Tf(y(t))
y(0)=y0
となる。
【0172】
ここで再び、f(y*)=0である場合、y*も、ベクトル場
【0173】
【0174】
の安定した平衡点であることが、証明されることができる。これは、適切な初期設定y0の下において、軌道
【0175】
【0176】
が、y(0)=y0、t→+∞であるとき、y(t)→y*のようになることを意味する。
【0177】
技術的な理由は、以下の通りである。ベクトル場を、g(y)=-f’(y)Tf(y)で表すと、線形写像g’(y*)の固有値が負であるとき、y*は、ベクトル場g(・)の安定した平衡である。g’(y)=-f’’(y)Tf(y)-f’(y)Tf’(y)であるので、g’(y*)=-f’(y*)Tf’(y*)であり、これは、-ATAの形であることを特徴とし、A=f’(y*)である、行列-ATAのいずれの固有値μも、負であるが、それは、μと関連付けられた正規化された固有ベクトルをvで表すと、定義により、-ATAv=μvであるので、-〈ATAv、v〉=μ||v||2、-〈Av、Av〉=μであり、つまり、μ=-||Av||2≦0であるからである。
【0178】
図17は、初期点y
0から、y
0に最も近いMの点である解y
*まで、軌道
【0179】
【0180】
によって辿られる経路を例示している。
【0181】
ラグランジュ表記
【0182】
【0183】
および
【0184】
【0185】
に戻ると、微分方程式は、
【0186】
【0187】
である。
【0188】
また、予想通り、軌道は、x(t)→x*、
【0189】
【0190】
のようになり、ここで、Lx(x*、λ*)=0、Ly(x*、λ*)=0であり、
【0191】
【0192】
である。
【0193】
より単純な表記は、偏導関数
【0194】
【0195】
、
【0196】
【0197】
および
【0198】
【0199】
を詳述しない。
【0200】
ラグランジュ乗数の他の値は、開始点のために使用されてよいので、λ(0)=0だけが、(テストされた)効率的な例である。
【0201】
実際には、入力機構は、組み立てられた、またはほぼ組み立てられた(例えば、それがトポロジ的に最終的な意図された設計のように見えるように、ユーザが機構をほぼ組み立てた)入力状態において提供されてよい。これは、(x0部分についての)積分の適切な開始点を定義してよい。方法においては、入力パラメータ値が、各パラメータのためのそれぞれの入力値を含まないケースにおいて、これらのパラメータは、例えば、(それを可動にすることはないが)機構を組み立てる、またはほぼ組み立てる、ヒューリスティックを適用することによって、積分のための任意の方式で、初期化されてよい。
【0202】
解法
解法は、時間区間[0,tmax]にわたる、微分方程式y’=-f’(y)Tf(y)の数値積分であり、ここで、tmaxは、||f(y(tmax))||が、事前定義されたしきい値ε>0より小さくなるまで、増加する。微分方程式の価値は、解法が、初期条件y0によって定義されるベクトル場において、一意的な経路に従うことである。従来の数値法を用いると、発生することがあるような、反復アルゴリズム、ステップサイズ管理、または局所極小トラップなどは、発生しない。
【0203】
初期化点y0は、安定した平衡点の吸引領域にあることがある。
【0204】
【0205】
であるような、点
【0206】
【0207】
が、存在することがあり、つまり、
【0208】
【0209】
は、平衡点であるが、
【0210】
【0211】
であり、つまり、
【0212】
【0213】
は、求根問題の解ではない。後者は、逆に取って代わった転置によって、引き起こされる。実際には、テストは、方法が、これらの問題にうまく応答することを示している。
【0214】
真の可動性対微小な可動性
可動性を保証する第2の拘束が、今から説明される。
【0215】
方法のこの実施においては、それは、単に、出力状態における機構の2次可動性を表す、等式拘束である。この拘束は、実際には、機構の可動性を保証するのに十分であることが、識別されている。これは、最適化の実行可能性を可能にする。
【0216】
非特許文献4によって述べられるような、過剰拘束された機構の可動性を生成または保存することの本質的な困難に対処するために、微小な可動性の概念が、非特許文献6によって提案されている。原理は、写像
【0217】
【0218】
を考察することであり、ここで、
【0219】
【0220】
は、位置パラメータの空間内における曲線である。定義により、解(u,p)は、φ(0)=p、φ’(0)≠0であるような、またi=0,1,...,nについて、すべての連続する導関数
【0221】
【0222】
が、t=0において、ゼロになるような、弧
【0223】
【0224】
が、存在する場合、n次の微小な可動性を特徴とする。
【0225】
【0226】
すべての次数における微小な可動性は、真の可動性と等価であることが、非特許文献6において証明されている。微小な可動性は、捉えにくい概念である。例えば、
図18は、剛性のある平面組立体である。
図19は、可動性条件のおかげの、平面機構の真に可動なバージョンを例示している。
【0227】
図20および21は、それぞれ、1次では可動であるが、2次では可動ではない、組立体の2つのバージョンを例示している。その結果、それらは、真に可動ではなく、そのため、それらは、剛性がある。この例においては、1次可動性は、平行な向かい合ったロッドによって引き起こされる。
【0228】
調査およびテスト中に、発明者らは、2次で可動であるが、真に可動ではない、4R空間組立体のバージョンを発見した。
【0229】
2次可動性の定義
十分に多数の異なる位置に到達することができる組立体は、真に可動であることが、非特許文献7において証明されている。方法の実施は、提案された最適化の状況において、2次可動性は、ほとんど常に真の可動性を提供することを示す、プライベートな実験に基づいている。方程式のより良い調整のために、曲線φ(・)は、曲線横座標を用いてパラメータ化されることを、すなわち、すべてのtについて、||φ’(t)||2=1であることを仮定することが、(制限的ではないが)便利である。微分学の基本規則を使用すると、すべてのtについて、
【0230】
【0231】
である。
【0232】
また、
【0233】
【0234】
である。
【0235】
加えて、
【0236】
【0237】
である。
【0238】
これは、
F(u,p)=0
Fp(u,p)v=0
Fp(u,p)vv+Fpp(u,p)w=0
||v||2-1=0
〈v、w〉=0
であるような(これは、等式拘束、すなわち、提案された最適化プログラムの第2の拘束を定義してよい)、(u,p)∈U×P、v∈P、およびw∈Pが、存在する場合、2次可動性方程式をもたらす。
【0239】
そのとき、寸法パラメータuによって定義される機構は、2次において可動である。実際、設計によって、φ(0)=p、φ’(0)=v、およびφ’’(0)=wであるので、
【0240】
【0241】
を選択することによって、F(u、φ(0))=0、
【0242】
【0243】
、および
【0244】
【0245】
であることをチェックすることは、難しくない。
【0246】
方法の実施は、それが、実際には、十分であり、相対的に高速な最小化を可能にするので、2次可動性を利用するが、それは、任意のより高次の可動性に容易に拡張されることができる。
【0247】
剛性継手の回避
拘束は、剛性継手非存在を表す、第3の拘束を含んでよい。
【0248】
可動機構の動作中、この継手によって接続された2つのソリッドが、いかなる相対運動も特徴としない場合、継手は、剛性である。言い換えると、剛性結合によって接続された2つのソリッドは、単一の剛体と見なされることができる。そのような挙動は、何らかの可動性が、他の場所に存在する場合であっても、設計者の観点からは、むしろ回避されるべきである。各継手は、動作中、むしろ活動的であるべきである。ゴールは、今は、剛性継手を回避するための方程式を設定することである。可動性は、条件||v||2=1を満たす場合に生じ、ここで、vは、仮想的な軌道に対する接線ベクトルである。||v||がゼロにならないにもかかわらず、ベクトルvの(すべてではないが)いくつかの座標は、ゼロになることがあるので、この条件は、剛性継手を回避しない。ベクトルvの座標を、v=(v1,...,vn)で表し、新しいスカラ未知数βを導入すると、剛性継手を除去するための追加の条件は、
【0249】
【0250】
である。
【0251】
寸法がゼロになることの回避
加えて、拘束は、寸法がゼロになることがないことを表す、第4の拘束を含んでよい。
【0252】
方法の実施によって計算された出力機構は、むしろ、寸法がゼロになる縮退ソリッドを特徴とすべきではない。寸法パラメータuの座標を、u=(u1,...,um)で表すと、以前の非剛性継手条件が、非ゼロの寸法を埋め込むために、再使用される。
【0253】
【0254】
したがって、第4の拘束は、第3の拘束と(同じ)拘束内において捕捉されてよく、したがって、それは、出力状態における機構の非縮退をさらに表す。言い換えると、第3および第4の拘束は、共通の(例えば、等式)拘束として、提供される。あるいは、第4の拘束は、最適化プログラムにおいては、第3の拘束とは別個の拘束として、提供されてよい。
【0255】
非縮退2次可動性のためのモデル
明確にするために、単一の写像M(u,p,v,w,β)が、2次可動性、非剛性継手、および非ゼロ寸法条件を捕捉する。
【0256】
【0257】
このように、非縮退2次可動性は、M(u,p,v,w,β)=0と書かれる。寸法パラメータu0および位置パラメータp0によって定義される入力機構を与えられると、問題は、u0に可能な限り近い寸法パラメータuを見つけること、および
【0258】
【0259】
のようなパラメータp、v、w、βを見つけることである。
【0260】
先に説明されたように、解法は、最小化問題と関連付けられた微分方程式の数値積分である。ラグランジュ写像は、
【0261】
【0262】
である。
【0263】
数学のおかげで、2次可動性を特徴とする非縮退機構を定義する連立方程式は、
L’(u,p,v,w,β,λ)=0
である。
【0264】
定義により、次数n+1の可動性は、次数nの可動性方程式の導関数を含む。2次において可動な機構を考察する。この機構が、真に可動である場合、それは、すべての次数において、微小に可動であり、特に、それは、3次において、可動である。これは、2次可動性方程式を不良条件にするが、それは、それらの導関数も、ゼロになり、それが、最小化問題の拘束において矛盾を生じるからである。結果は、機構が、真に可動であるとき、ラグランジュの2次導関数が、可逆でないことである。
【0265】
数々の過剰拘束された機構において実行されたテストは、線形写像L’’(u,p,v,w,β,λ)が可逆ではないという事実を確認する。そのため、逆転をより適切な何かによって置き換えるために、何かが、行われてよい。最先端技術は、非可逆行列Aを扱うための3種類の方法を提供する。第1に、行数が、列数よりも大きいとき、行列Aのいわゆる疑似逆行列は、(ATA)-1ATによって定義される。第2に、行数が、列数よりも少ないとき、行列Aのいわゆる疑似逆行列は、AT(AAT)-1である。第3に、非可逆行列を扱う最も一般的な方法は、純粋に数値的な方法である、特異値分解(SVD)法である。これらの方法のどれもが、方法の実施のニーズに適合しない理由が、今から説明される。どちらの疑似逆行列法も、実質的な非縮退条件を必要とし、ATAまたはAATのどちらかが、むしろ可逆であるべきである。方法の実施の状況においては、この非縮退条件は、達成できない。加えて、SVDは、疑似逆行列の記号的な定義とは対照的に、純粋に数値的であり、時間のかかる方法である。それは、微分方程式の定義において、使用されることができない。方法の実施は、以下の理由のために、転置を利用する。それは、いかなる非縮退条件も必要としないが、それは、転置行列が、常に存在するからである。計算時間は、非常に小さい。数学的な導入において説明されたように、方程式L’=0のいずれの解もまた、ベクトル場-(L’’)TL’の安定した平衡である。
【0266】
その結果、微分方程式が、
【0267】
【0268】
となるように、逆転L’’(u,p,v,w,β,λ)-1は、転置L’’(u,p,v,w,β,λ)Tによって、有利に置き換えられる。
【0269】
初期条件の設定
初期条件u0、p0、v0、w0、β0、λ0を設定することは、ベクトル場における軌道の経路を決定する。パラメータu0およびp0は、入力機構によって与えられ、機構の組み立てられた状態、または実質的に組み立てられた状態に対応してよい。数値テストは、w0=0、λ0=0が、有効であることを示している。初期v0は、||v0||2=1であり、||Fp(u0、p0)v0||2が最小であるような方法で、計算される。この選択は、Fp(u,p)v=0、||v||2=1であるような、特に、u、p、vを見つけることである、目標に従って行われる。加えて、偶然、入力機構が、1次可動性を特徴とする場合、Fp(u0,p0)v0=0となるような、正規化されたv0が存在し、初期化プロセスは、当然、この特定のv0を計算する。列よりも行が多い行列Aを与えられると、||Ax||2を最小化する正規化されたベクトルxは、ATAx=μxであるような最小数μである、それの最小の固有値と関連付けられた、行列ATAの正規化された固有ベクトルであることが、最適化理論から、よく知られている。その結果、v0は、それの最小の固有値と関連付けられた、行列Fp(u0,p0)TFp(u0,p0)の固有ベクトルである。最後に、β0は、
【0270】
【0271】
ように計算される。
【0272】
目標寸法値の設定
先に説明されたように、いくつかの状況においては、目標寸法値は、ユーザによって設定されることができる。このセクションのゴールは、これがどのように実施されるかを説明することである。機構の寸法は、実際には、スカラ変数のリストu=(u1、u2,...,un)である、ベクトル変数uを通して捕捉され、ここで、各uiは、長さまたは角度である。目標寸法値を設定することは、
1.特定のスカラパラメータuk、k∈{1,...,n}を選択すること
2.特定の数値をスカラパラメータukに設定すること、
3.それが、
【0273】
【0274】
になるように、未知のベクトルuから、このパラメータを除去すること
である。
【0275】
ステップ1および2は、ユーザによって行われる。ステップ3は、システムによって行われる。そのため、目標寸法値が、設定されたとき、方法の実施は、1つ少ない未知数を特徴とする、縮小された未知数ベクトルuを扱う。これは、全体的なプロセスを変更せず、これは、読み易さのために、それが以前の表記において捕捉されない理由である。
【0276】
方法の実施の例が、
図22ないし
図29を参照して、今から説明される。これらの例は、テストされ、結果が、本明細書によって提供される。
【0277】
例1:剛性4R組立体を非縮退4R可動機構に変更する
4R機構の理論的な可動性条件が、知られているので、このテストケースは、方法の検証である。初期4R剛性組立体u0から開始して、方法の実施は、4R可動機構u1を以下のように計算した。
【0278】
【0279】
これらの入力状態および出力状態は、それぞれ、
図22ないし
図23に例示されている。
【0280】
2次可動性の大きさのオーダは、M(・・・)≒10-9であり、可動性条件の大きさのオーダは、10-8である。結果の機構の可動性は、CATIA組立体設計ソルバを使用することによって、確認される。
【0281】
例2:剛性5R組立体を非縮退5R可動機構に変更する
初期5R剛性組立体u0から開始して、方法の実施は、5R可動機構u1を以下のように計算した。
【0282】
【0283】
これらの入力状態および出力状態は、それぞれ、
図24ないし
図25に例示されている(左図が表す)。
【0284】
2次可動性の大きさのオーダは、M(・・・)≒10-16であり、可動性条件の大きさのオーダは、10-16である。結果の機構の可動性は、CATIA組立体設計ソルバを使用して確認される。
【0285】
例3:剛性6R組立体を非縮退6R可動機構に変更する
このテストケースは、可動性条件が未知でありながら、真の可動6Rを作成することである。初期6R剛性組立体u0から開始して、方法の実施は、6R可動機構u1を以下のように計算した。
【0286】
【0287】
これらの入力状態および出力状態は、それぞれ、
図26ないし
図27に例示されている。
【0288】
2次可動性の大きさのオーダは、M(・・・)≒10-16である。結果の機構の可動性は、CATIA組立体設計ソルバを使用して確認される。
【0289】
例4:剛性4R1C組立体を非縮退可動機構に変更する
この例は、4つの回転継手(4R)と、1つの円柱継手(1C)とを特徴とする。このテストケースは、可動性条件が未知でありながら、真の可動4R1Cを作成することである。初期4R1C剛性組立体u0から開始して、方法の実施は、4R1C可動機構u1を計算した。
【0290】
【0291】
これらの入力状態および出力状態は、それぞれ、
図28ないし
図29に例示されている。