IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トーヨーエイテック株式会社の特許一覧

特許7575267ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法
<>
  • 特許-ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法 図1
  • 特許-ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法 図2
  • 特許-ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法 図3
  • 特許-ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法 図4
  • 特許-ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法 図5
  • 特許-ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法 図6
  • 特許-ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法 図7
  • 特許-ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法 図8
  • 特許-ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法 図9
  • 特許-ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 33/02 20060101AFI20241022BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241022BHJP
   B24B 33/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B24B33/02
B24B41/06 K
B24B33/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020218499
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103707
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤井 健太
(72)【発明者】
【氏名】木邑 達男
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-040230(JP,A)
【文献】特開2020-131345(JP,A)
【文献】中国実用新案第210732117(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 33/02
B24B 41/06
B24B 33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの被加工穴の内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸と、該回転主軸の先端に着脱可能に装着されるホーニングツールと、上記ワークの上記被加工穴が上下方向に延びるように向いた状態で水平方向に浮動状態で該ワークを支持するワーク保持治具とを備えたホーニング加工機において、
上記ホーニングツールは、径方向に突出及び退入可能な1本のホーニング砥石を備え、
上記ワーク保持治具は、
治具ベースと、
上記治具ベースに対して第1水平軸を中心に回動可能に且つ該第1水平軸に沿って移動可能に支持される外側回動体と、
上記外側回動体に対して上記第1水平軸に垂直な方向に延びる第2水平軸を中心に回動可能に且つ該第2水平軸に沿って移動可能に支持される内側回動体と、
上記ワークを取り外し可能に位置決めして保持するワークホルダと、
チューブ側が上記ワークホルダに固定され、シリンダロッド先端が内側回動体に設けたシリンダ用貫通孔よりも外側へ延び該シリンダ用貫通孔よりも大きな外径の拡径部を有し、伸縮することにより、上記ワークホルダを上記内側回動体に締め付ける複数の支持シリンダと、
上記1本のホーニング砥石を上記回転主軸の周りに回転させながら、上記ワークの被加工穴の内径面の軸線方向に往復移動させて該内径面に押し付ける位置に合わせて上記支持シリンダを伸縮させる制御部とを備えている
ことを特徴とするホーニング加工機。
【請求項2】
請求項1に記載のホーニング加工機において、
上記複数の支持シリンダは、上記内側回動体の全周のうち上記第2水平軸のある部分を除く少なくとも一部の領域に、中心に対して対向する位置と対になったものが周方向に間隔を空けて設けられている
ことを特徴とするホーニング加工機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のホーニング加工機において、
上記複数の支持シリンダは、エアシリンダで構成されており、
各支持シリンダに連通するエアバルブの開閉時間及び各支持シリンダの圧力室容積による圧力応答を利用することにより、締付状態の上記支持シリンダから上記第1水平軸及び上記第2水平軸までの距離変化がなだらかになるように構成されている
ことを特徴とするホーニング加工機。
【請求項4】
ワークの被加工穴の内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸と、該回転主軸の先端に着脱可能に装着されるホーニングツールと、上記ワークの上記被加工穴が上下方向に延びるように向いた状態で水平方向に浮動状態で該ワークを支持するワーク保持治具とを備えたホーニング加工機を用いた加工方法において、
上記ホーニングツールに径方向に突出及び退入可能な1本のホーニング砥石を設け、上記ワーク保持治具に治具ベースと、該治具ベースに対して第1水平軸を中心に回動可能に且つ該第1水平軸に沿って移動可能に支持される外側回動体と、該外側回動体に対して上
記第1水平軸に垂直な方向に延びる第2水平軸を中心に回動可能に且つ該第2水平軸に沿って移動可能に支持される内側回動体と、上記ワークを取り外し可能に位置決めして保持するワークホルダと、チューブ側が該ワークホルダに固定され、シリンダロッド先端が上記内側回動体に設けたシリンダ用貫通孔よりも外側へ延び該シリンダ用貫通孔よりも大きな外径の拡径部を有し、伸縮することにより、上記ワークホルダを上記内側回動体に締め付ける複数の支持シリンダとを設ける準備工程と、
上記ワークホルダに上記ワークを取り付けるワーク取付工程と、
上記ホーニングツールを上記回転主軸の周りに回転させながら、上記ワークの被加工穴の内径面の軸線方向に往復移動させて上記1本のホーニング砥石を該内径面に押し付けると共に、該ホーニング砥石が該内径面に接する位置に合わせて上記支持シリンダを伸縮させて上記内側回動体を締め付ける研削工程とを含む
ことを特徴とするホーニング加工機を用いた加工方法。
【請求項5】
請求項に記載のホーニング加工機を用いた加工方法において、
上記準備工程において、エアシリンダで構成された複数の支持シリンダを準備し、
上記研削工程において、上記ホーニング砥石が上記ワークの被加工穴の内径面に接する位置に合わせて上記支持シリンダに連通するエアバルブを開閉させて該支持シリンダを伸縮させるときに、該エアバルブの開閉時間及び各支持シリンダの圧力室容積による圧力応答を利用することにより、締付状態の上記支持シリンダから上記第1水平軸及び上記第2水平軸までの距離変化がなだらかになるようにする
ことを特徴とするホーニング加工機を用いた加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーニング砥石を加工物の穴部内径面等に押し付けて内径面を研磨するホーニング加工機及びそれを用いた加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円柱状の主軸に取り付けた砥石を加工物の穴部内径面等に押し付け、一定の荷重を加えながら往復及び回転運動し、内径面を研磨するホーニング加工機は知られている。ホーニング加工機は、ツールとワークの芯出しをツール側又は治具側で行って前加工穴にならわせることで加工を行う。治具側で芯出しを行うものとして、例えばフローティング機構を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
またホーニング加工機として、例えば、特許文献2のようなホーニング砥石を備える小径のホーニングツールが知られている。このホーニングツールを工作物の小径(例えば直径20mm以内)の被加工穴内径面の軸線方向へ往復移動させるとともに、軸線周りに回転させながら、ホーニング砥石に一定の切込量をもって切込動作を与え、被加工穴内径面をホーニング加工することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2609989号公報
【文献】特開2006-346837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のような極めて小径のホーニングツールは、砥石拡張機構がツール先端の小径軸内に設けられるので、ホーニング砥石が円周方向の一部に1本のみ設けられる。1本砥石の場合、ストロークによる荷重変動はツール又はワークに傾きを発生させる。また、回転における荷重変動は、円周方向への動きを増し、真円形状を損なう動きの原因となる。さらに、傾きの発生にもつながり、安定した加工ができず、仕上がり精度を向上させることができない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、治具のフローティング機能を損なうことなく加工精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、フローティング機能を有する治具のワークホルダを砥石の回転に合わせて対応する支持シリンダを伸縮させて内側回動体に対して締め付けるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、ワークの被加工穴の内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸と、該回転主軸の先端に着脱可能に装着されるホーニングツールと、上記ワークの上記被加工穴が上下方向に延びるように向いた状態で水平方向に浮動状態で該ワークを支持するワーク保持治具とを備えたホーニング加工機を前提とする。
【0009】
そして、上記ホーニングツールは、径方向に突出及び退入可能な1本のホーニング砥石を備え、
上記ワーク保持治具は、
治具ベースと、
上記治具ベースに対して第1水平軸を中心に回動可能に且つ該第1水平軸に沿って移動可能に支持される外側回動体と、
上記外側回動体に対して上記第1水平軸に垂直な方向に延びる第2水平軸を中心に回動可能に且つ該第2水平軸に沿って移動可能に支持される内側回動体と、
上記ワークを取り外し可能に位置決めして保持するワークホルダと、
チューブ側が上記ワークホルダに固定され、シリンダロッド先端が内側回動体に設けたシリンダ用貫通孔よりも外側へ延び該シリンダ用貫通孔よりも大きな外径の拡径部を有し、伸縮することにより、上記ワークホルダを上記内側回動体に締め付ける複数の支持シリンダと、
上記1本のホーニング砥石を上記回転主軸の周りに回転させながら、上記ワークの被加工穴の内径面の軸線方向に往復移動させて該内径面に押し付ける位置に合わせて上記支持シリンダを伸縮させる制御部とを備えている。
【0010】
上記の構成によると、制御部が、1本のホーニング砥石を回転主軸の周りに回転させながら、ワークの被加工穴の内径面の軸線方向に往復移動させて内径面に押し付ける位置に合わせ、対応する支持シリンダを伸縮させて、ワークホルダを内側回動体に締め付ける。このため、内側回動体の揺動を適度に押さえることができ、ワーク保持治具のフローティング機能を生かして精密な加工が可能となる。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記制御部は、上記ホーニング砥石が上記ワークに当接する位置に合わせ、対応する上記支持シリンダのシリンダロッドを縮小させて上記拡径部を上記シリンダ用貫通孔の周縁に当接させて締め付けることで、上記第1水平軸及び上記第2水平軸までの伝達距離を同一に近付けるように構成されている。
【0012】
上記の構成によると、ワークの内径面に当接する1本砥石による一方向への力に対し、対応する支持シリンダを制御してそのシリンダロッドを縮小させて拡径部を貫通孔の周縁に当接させて締め付けて対応する方向への内側回動体の傾斜を規制することで、第1水平軸及び第2水平軸までの伝達距離を同一に近付けることができ、ワーク保持治具の揺動を適度に抑制することができる。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記複数の支持シリンダは、上記内側回動体の全周のうち上記第2水平軸のある部分を除く少なくとも一部の領域に、中心に対して対向する位置と対になったものが周方向に間隔を空けて設けられている。
【0014】
上記の構成によると、全周方向に複数の支持シリンダを設けることなく、最小限の支持シリンダによって内側回動体の揺動を規制できるので、質量増加及び製造コスト増加が避けられる。
【0015】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
上記複数の支持シリンダは、エアシリンダで構成されており、
各支持シリンダに連通するエアバルブの開閉時間及び各支持シリンダの圧力室容積による圧力応答を利用することにより、締付状態の上記支持シリンダから上記第1水平軸及び上記第2水平軸までの距離変化がなだらかになるように構成されている。
【0016】
上記の構成によると、エアバルブの切換は、オンオフ制御で行われるが、エアシリンダよりなる支持シリンダのエア圧の変化を利用することで、実際には、ホーニングツールに合わせた支持シリンダの締結力の移り変わりが滑らかに行われる。
【0017】
第5の発明では、ワークの被加工穴の内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸と、該回転主軸の先端に着脱可能に装着されるホーニングツールと、上記ワークの上記被加工穴が上下方向に延びるように向いた状態で水平方向に浮動状態で該ワークを支持するワーク保持治具とを備えたホーニング加工機を用いた加工方法を前提とし、
上記加工方法は、上記ホーニングツールに径方向に突出及び退入可能な1本のホーニング砥石を設け、上記ワーク保持治具に治具ベースと、該治具ベースに対して第1水平軸を中心に回動可能に且つ該第1水平軸に沿って移動可能に支持される外側回動体と、該外側回動体に対して上記第1水平軸に垂直な方向に延びる第2水平軸を中心に回動可能に且つ該第2水平軸に沿って移動可能に支持される内側回動体と、上記ワークを取り外し可能に位置決めして保持するワークホルダと、チューブ側が該ワークホルダに固定され、シリンダロッド先端が上記内側回動体に設けたシリンダ用貫通孔よりも外側へ延び該シリンダ用貫通孔よりも大きな外径の拡径部を有し、伸縮することにより、上記ワークホルダを上記内側回動体に締め付ける複数の支持シリンダとを設ける準備工程と、
上記ワークホルダに上記ワークを取り付けるワーク取付工程と、
上記ホーニングツールを上記回転主軸の周りに回転させながら、上記ワークの被加工穴の内径面の軸線方向に往復移動させて上記1本のホーニング砥石を該内径面に押し付けると共に、該ホーニング砥石が該内径面に接する位置に合わせて上記支持シリンダを伸縮させて上記内側回動体を締め付ける研削工程とを含む構成とする。
【0018】
上記の構成によると、1本のホーニング砥石を回転主軸の周りに回転させながら、ワークの被加工穴の内径面の軸線方向に往復移動させて内径面に押し付ける位置に合わせ、対応する支持シリンダを伸縮させて、ワークホルダを内側回動体に締め付ける。このため、内側回動体の揺動を適度に押さえることができ、ワーク保持治具のフローティング機能を生かして精密な加工が可能となる。
【0019】
第6の発明では、第5の発明において、
上記準備工程において、エアシリンダで構成された複数の支持シリンダを準備し、
上記研削工程において、上記ホーニング砥石が上記ワークの被加工穴の内径面に接する位置に合わせて上記支持シリンダに連通するエアバルブを開閉させて該支持シリンダを伸縮させるときに、該エアバルブの開閉時間及び各支持シリンダの圧力室容積による圧力応答を利用することにより、締付状態の上記支持シリンダから上記第1水平軸及び上記第2水平軸までの距離変化がなだらかになるようにする構成とする。
【0020】
上記の構成によると、エアバルブの切換は、オンオフ制御で行われるが、エアシリンダよりなる支持シリンダのエア圧の変化を利用することで、実際には、ホーニングツールに合わせた支持シリンダの締結力の移り変わりが滑らかに行われる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、1本のホーニング砥石を回転主軸の周りに回転させながら、ワークの被加工穴の内径面の軸線方向に往復移動させて内径面に押し付ける位置に合わせ、対応する支持シリンダを伸縮させて、ワークホルダを内側回動体に締め付けるようにしたことにより、治具のフローティング機能を損なうことなく加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図2のI-I線断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るホーニングツールでワークをホーニング加工している状態を示す斜視図である。
図3】ホーニングツール及びその周辺の構成を示す断面図である。
図4】実施例に係る支持シリンダの配置を示す平面図である。
図5】砥石位置と支持シリンダのオンオフ状況を示す表である。
図6】支持シリンダ動作のタイミングを示すグラフである。
図7】取付半径100mmのときの各砥石位置における各支持シリンダの各水平軸からの距離を示す表である。
図8】取付半径100mmのときの各砥石位置における各支持シリンダの各水平軸からの距離の合算距離を示す表である。
図9】取付半径100mmのときの水平軸到達距離を示すグラフである。
図10】支持シリンダの応答を考慮した取付半径100mmのときの、水平軸到達距離を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1図3は本発明の実施形態に係るホーニング加工機のホーニングツール1でワーク50をホーニング加工している状態を示す。例えば、このワーク50は、内径面を研削するものであれば、特に限定されない。また詳しくは図示しないが、このホーニング加工機自体は、公知の構造のものでよく、例えば、ホーニングツール1が取り付けられる回転可能且つ上下往復可能な回転主軸2と、この回転主軸2を回転及び上下往復させる駆動手段等を備えている。回転主軸2の回転速度、上下往復速度、切込量などは、マイコン、PCなどの制御部40により精密に制御可能となっている。
【0025】
図1に示すように、ホーニングツール1は、ワーク50の被加工穴51に軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能に挿入されるように構成されており、径方向に突出及び退入可能な1本のホーニング砥石6を備えている。具体的には、このホーニング砥石6は、先端側が細くなったツール本体3の先端4に内蔵され、内部の貫通孔5に挿通された砥石押圧ピン8を適切な高さに上下駆動することにより、その径方向の突出量が調整されるようになっている。例えば、このツール本体3の先端4は、直径20mm以内で、通常のものよりもかなり小径となっている。また、図3等に示すように、砥石位置検出用センサ7をホーニングツール1に設ける。この砥石位置検出用センサ7は、例えば近接スイッチよりなり、ホーニングツール1に設けた突起7aの有無からホーニングツール1の回転角度を検知し、制御部40に信号を送るように構成されている。
【0026】
ホーニング加工機は、ワーク50を支持するワーク保持治具10を備えている。このワーク保持治具10は、ワーク50が、その被加工穴51が上下方向に延びるように向いた状態で水平方向に浮動状態となるようにワーク50を支持可能に構成されている。このワーク保持治具10は、複数の金属部材で形成された治具ベース11を備えている。図1及び図2に示すように、治具ベース11は、例えば、下方開口11aを備えた底板11bと、この底板11bの左右両側の対向する位置に立設された一対の第1側板11cとを備えている。一対の第1側板11cは、それぞれ第2側板11dに連結されている。図1に示すように、この一対の第1側板11cの上側の対向する位置にそれぞれ設けた第1ブッシュ12aには、水平な第1水平軸12が同一直線状に回転可能に設けられている。この第1水平軸12を中心に円環状の外側回動体13が回動可能に支持されている。また、この外側回動体13の形状は特に限定されないが、円環状の本体の対向する位置に上記第1水平軸12が挿通される第1貫通孔13aがそれぞれ設けられている。この第1貫通孔13aに第1水平軸12の先端側が第1抜け止めピン13cで抜け止めされた状態で挿通され、この第1水平軸12に、外側回動体13が一対の第1側板11c間に隙間をもって支持されている。これにより、例えば、外側回動体13が第1水平軸12と共に移動することで、この隙間の分だけ第1水平軸12に沿って水平移動可能となり、且つ第1水平軸12を中心に回転可能となっている。
【0027】
また、外側回動体13における各第1貫通孔13aに対して円周方向に90°ずれた位置に第2貫通孔13bがそれぞれ設けられており、この第2貫通孔13bに設けた第2ブッシュ12bに第2水平軸14が回転可能且つ水平移動可能に挿通されている。すなわち、この第2水平軸14の軸線方向は、平面視で第1水平軸12の軸線方向に対して垂直となっている。第2水平軸14の先端側は、例えば円筒形状の内側回動体15の対向する位置に設けた内側貫通孔15aに第2抜け止めピン15bで抜け止めされた状態で挿通されている。これにより、一対の第2水平軸14を中心に、中央に開口のある円板状の内側回動体15が回動可能に且つ内側回動体15の外周面と外側回動体13の内周面との間の隙間の分だけ第2水平軸14に沿って水平移動可能に支持されている。
【0028】
そして、内側回動体15の下方には、ワーク50を取り外し可能に位置決めして保持するワークホルダ16が吊り下げられるように設けられている。これにより、ワーク50は、治具ベース11に対して2次元的に水平移動可能に且つ立体的に揺動可能に支持されている。ワークホルダ16は、治具ベース11内に収まる板状体よりなり、複数の支持シリンダ20a~20d及び20a’~20d’で内側回動体15に対して締め付け可能となっている。各支持シリンダは、円柱形状のシリンダロッド22を有し、その上端には、他の部分よりも外径の大きい拡径部23が形成されている。この拡径部23は、内側回動体15に形成した支持シリンダ用貫通孔15cの最小内径よりも大きな外径を有する。シリンダロッド22の外径は、この支持シリンダ用貫通孔15cの最小内径よりも小さいので、シリンダロッド22単体で内側回動体15の揺動を阻害しないようになっている。
【0029】
なお、本実施形態では、ワークホルダ16側の下側貫通孔16aの最小内径は、各支持シリンダの中間部分のシリンダロッド22の外径よりも小さくなっており、各支持シリンダが縮小操作されたときに、各支持シリンダが当接するようになっている。シリンダロッド22の外径は、この下側貫通孔16aの最小内径よりも小さいので、シリンダロッド22単体で内側回動体15の揺動を阻害しないようになっている。
【0030】
図1及び図2に示す実施形態では、複数の支持シリンダ20a~20d及び20a’~20d’は、第2水平軸14のある部分を除く部分に周方向に15度間隔を開けて4対設けられている。しかし、例えば、図4に示すように、周方向に15°間隔を開けて6対設けてもよい。図示しないが、例えば、周方向に15°間隔を空けて12対設けてもよいし、周方向15°ではなく、30°間隔を空けて3対又は6対設けてもよい。
【0031】
図1に示すように、各支持シリンダ20a~20d及び20a’~20d’の根元にはシリンダチューブ21が形成され、ピストン24が内蔵されている。各シリンダチューブ21には、伸長側ポート21aと縮小側ポート21bが設けられており、コンプレッサなどの高圧エア源42からエアバルブ41を介してピストン24の押出側と引込側に高圧エアが供給されるようになっている。流体としては、作動油なども考えられるが、高圧エアであれば、回収の必要もなくクリーンで制御もしやすい点でメリットがある。
【0032】
なお、外側回動体13は、第1側板11cの上面に一端側が固定された外側規制版17との間で外側規制板締付ボルト17aを調整することで、その最大の振れ量を規制することができるようになっている。また、外側回動体13を固定するときに、外側規制板締付ボルト17aが締め付けられる。
【0033】
-ホーニング加工機を用いた加工方法-
次に、本実施形態に係るホーニング加工機を用いた加工方法について説明する。
【0034】
まず、準備工程において、上記ホーニング加工機を準備し、回転主軸2の先端にホーニングツール1を取り付ける。このホーニングツール1には、径方向に突出及び退入可能な1本のホーニング砥石6を設けておく。また、高圧エア源42を用意し、エアバルブ41を介して各エアチューブを各伸長側ポート21a及び縮小側ポート21bに配管する。
【0035】
次いで又は前もって、計算工程において、ホーニングツール1によってワーク50を押し付ける位置に合わせてエアバルブ41を制御するタイミングをプログラミングしておく(詳細は後述する)。
【0036】
次いで、ワーク取付工程において、ワークホルダ16にワーク50を取り付ける。
【0037】
次いで、研削工程において、ホーニングツール1を回転主軸2の周りに回転させながら、ワーク50の被加工穴51の内径面の軸線方向に往復移動させて1本のホーニング砥石6を内径面に押し付けると共に、ホーニング砥石6が内径面に接する位置に合わせて支持シリンダを伸縮させて内側回動体15を締め付ける(具体的な手順は以下の実施例に示す)。
【0038】
-実施例-
次に上記実施形態で説明したホーニング加工機を用いた加工方法について実施例を用いて説明する。
【0039】
図4に示す実施例では、支持シリンダ20を1番から6番とそれに対向するもの、6対合計12本を設けている。各支持シリンダの間隔は15°である。6対の支持シリンダ20それぞれに対応するエアバルブ41を介して各エアチューブを各伸長側ポート21a及び縮小側ポート21bに配管する。
【0040】
砥石位置検出用センサ7によって砥石6の角度がリアルタイムに検出され、制御部40に送信される。
【0041】
次いで、具体的に支持シリンダ20の伸縮制御の方法について説明する。
【0042】
最初にホーニング砥石6の主軸砥石面に砥石位置検出用センサ7の始点θ0=0°を設定する。
【0043】
そして、図5に示すホーニング砥石6の位置と、各支持シリンダ20の縮小側ポート21bの高圧エアを送り込むタイミングとを制御部40に設定しておく。
【0044】
図6に、各支持シリンダ20の位置と経過時間の関係を示すように、回転主軸2の回転数36/分につき、0.069秒で移り変わるようにエアバルブ41の開閉制御を行う。図6のAの部分は、双方の支持シリンダ20が接触を開始する範囲を示す、この点での接触は、2本の支持シリンダが接触した状況にある。
【0045】
その後、下降する支持シリンダ20は、加圧されて適切な締結圧力となり、上昇する支持シリンダ20は、減圧されて開放の状況となる。これはピストン24のストロークで対応する。
【0046】
ワークホルダ16で発生した力は、支持シリンダ20を介し、内側回動体15へ伝搬される。この場合、ワークホルダ16と支持シリンダ20とは締結状態にあることで、力はそのまま伝搬される。内側回動体15に伝搬された力は、第1水平軸12及び第2水平軸14と直交で連結状態にあることから、この第1水平軸12及び第2水平軸14を回転させるための方向へ動かす力に分散することで作動すると定義できる。
【0047】
力の分散については、第1水平軸12及び第2水平軸14が直交に配置してあることから、回転を得るための方向へ分散させるには、治具中心から支持シリンダ20の向きに出ている押付力を直交軸に向けた分力により第1水平軸12及び第2水平軸14に回転力を与えることができる。この分力の距離が応答性(力の安定性)につながっていると判断され、第1水平軸12及び第2水平軸14に分散する距離の変化を抑えることが安定性を得る上で重要となる。
【0048】
分力に対する距離の変化率を抑え、合算距離の変化を少なくするためには、ホーニング砥石6の回転位置に対し支持が連動することが望まれる。この状態を支持シリンダ20の支持により、以下の方式を取り入れることで可能とするに至った。
【0049】
ホーニング砥石6の回転位置に合わせ、図4に示す15°間隔で配置した6本の支持シリンダ20が、図5に示す砥石位置によるON/OFF制御を順次行うことで、ホーニング砥石6の回転に対し、15°毎の距離変化をもった追従が行われる。この状態では、連動する距離の変化が15°毎であり、距離変化は、矩形変化となっている(例えば図9参照)。この矩形変化をさらに滑らかにするための措置が支持シリンダ20に入ってくるエア圧の変化を利用することで可能となる。これは、エアバルブ41の開閉の時間とシリンダ容積による圧力応答を用いることで可能となる。砥石位置が通過した支持シリンダ20でOFF、次の位置となる支持シリンダ20をONさせると、2つの支持シリンダ20の圧力は、1つは下降1つは上昇であり、この圧力を合算することで締結状態を移り変わらせることができるようになる。この変化が図6に示すサイン波で起こっており、なだらかな変化を作り上げている。
【0050】
本実施形態では、砥石位置に追従するために設置した支持シリンダ20は6本あり、シリンダ取付半径を100mmとした場合の、その距離の一例を図7に示す。
【0051】
90°~180°間においても支持シリンダ20を設置してもよいが、0°~90°に配置した支持シリンダ20を用いることで、ベクトル形態を同様にできることから、本実施形態では、90°~180°間の支持シリンダ20は省略している。
【0052】
図8及び図9に示すように、合算距離が総応答時間に等しく半径100mmで連結した場合、若干のばらつきはあるが、かなり小さく抑えられていることが分かる。この距離をさらに小さくすることは、支持シリンダ20の取付半径を変えることで可能となる。
【0053】
この状況にさらに支持シリンダ20の応答を加えると、図10に示すようななだらかな変動を加えることができる。なお、支持シリンダ20の取付半径を変更すると、図10で現れているばらつきを、さらに抑えることができる。
【0054】
-本実施形態の作用効果-
ワークホルダ16の支持方法としては、図示しないが、全周全域を支持するものもある。この場合、支持点との相関動作性は最もよいが、全域を連結させるため、加算される質量が大きく、質量増加の影響が大きい。全域の変動を伝搬するため、常に変動を捉えてしまい、安定することが困難な状況になり、変動を相殺するに至ることが難しい。また、袋状になるために作業性も悪くなる。
【0055】
一方、本実施形態のように、複数の支持シリンダ20を伸縮自在に設けて部分的に支持することで、軽量化が図られる。
【0056】
本実施形態では、予め図6のように各シリンダチューブ21に高圧エアを送り込むタイミングを設定しておき、1本のホーニング砥石6を回転主軸2の周りに回転させながら、ワーク50の被加工穴51の内径面の軸線方向に往復移動させて内径面に押し付ける位置に合わせ、対応する支持シリンダ20を縮小させて、ワークホルダ16を内側回動体15に締め付ける。このため、内側回動体15の揺動を適切に押さえることができ、ワーク保持治具のフローティング機能を生かして精密な加工が可能となる。
【0057】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0058】
すなわち、上記実施形態では、支持シリンダ20の本数が4本又は6本の場合について説明したが、この本数は特に限定されず、支持シリンダ20を全周に設けてもよい。また、支持シリンダ20の取付半径は、上述したように適宜変更するとよい。
【0059】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0060】
1 ホーニングツール
2 回転主軸
3 ツール本体
4 先端
5 貫通孔
6 ホーニング砥石
7 砥石位置検出用センサ
7a 突起
8 砥石押圧ピン
10 ワーク保持治具
11 治具ベース
11a 下方開口
11b 底板
11c 第1側板
11d 第2側板
12 第1水平軸
12a 第1ブッシュ
12b 第2ブッシュ
13 外側回動体
13a 第1貫通孔
13b 第2貫通孔
13c ピン
14 第2水平軸
15 内側回動体
15a 内側貫通孔
15b ピン
15c 支持シリンダ用貫通孔
16 ワークホルダ
16a 下側貫通孔
17 外側規制板
17a 外側規制板締付ボルト
20 支持シリンダ
20a~20d,20a’~20d’ 支持シリンダ
21 シリンダチューブ
21a 伸長側ポート
21b 縮小側ポート
22 シリンダロッド
23 拡径部
24 ピストン
40 制御部
41 エアバルブ
42 高圧エア源
50 ワーク
51 被加工穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10