(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ヒトニューレグリン-1(NRG-1)組換え型融合タンパク質組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241022BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241022BHJP
C07K 14/475 20060101ALI20241022BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241022BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241022BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241022BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241022BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241022BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241022BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241022BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20241022BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241022BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20241022BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241022BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241022BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241022BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241022BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C07K14/475
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/68
A61K47/65
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61K38/18
(21)【出願番号】P 2020556258
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 US2019026889
(87)【国際公開番号】W WO2019200033
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-11
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520391826
【氏名又は名称】サルブリス バイオセラピューティクス,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】520391837
【氏名又は名称】サルブリス (チョントゥー) バイオテック,カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ホア リャン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ポンイー
(72)【発明者】
【氏名】ワン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン リー
(72)【発明者】
【氏名】リー ションウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ティーシアン
(72)【発明者】
【氏名】ウー イーラン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ミン
(72)【発明者】
【氏名】シアオレイ チョアン
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-508031(JP,A)
【文献】特表2009-515819(JP,A)
【文献】特表2009-517055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0196911(US,A1)
【文献】特表2017-503784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体(mAb)骨格と融合した心臓保護タンパク質ニューレグリン-1(NRG-1)のフラグメントを含む、組換え型融合タンパク質であって、
前記mAbがErbB3(HER3)に対し単一特異的であり、かつ、
前記NRG-1フラグメントが配列番号4のアミノ酸配列を含む、組換え型融合タンパク質。
【請求項2】
前記mAbがErbB3(HER3)を介しNRG-1シグナル伝達を阻害する、請求項1に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項3】
前記NRG-1フラグメントが、リンカーを用いて、そのN末端側アミノ酸経由で前記抗体の重鎖のC末端と融合している、請求項1又は2に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項4】
前記リンカーが、配列番号5に記載のGly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Serリンカーの少なくとも1つのコピーを含む、又は、
前記抗体の重鎖のC末端が、前記抗体のFcドメインを含む、請求項3に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体がグリコシル化しており、かつ前記グリコシル化がN-グリコシル化又はO-グリコシル化である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項6】
前記mAbが
重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号2の配列
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項7】
前記
軽鎖が、配列番号3の配列
を含む、請求項
6に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項8】
成熟した前記mAbが
重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号2に対しアミノ酸234、239、又は434のうちの少なくとも1つの位置に少なくとも1つの置換変異を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項9】
前記組換え型融合タンパク質が配列番号3及び配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項10】
前記組換え型融合タンパク質が、組換え型NRG-1よりも腫瘍またはがん細胞の増殖を減弱させる、請求項1~9のいずれか1項に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項11】
前記組換え型融合タンパク質が、心筋細胞又は心臓組織の増殖、分化、及び生存を促進する、請求項1~10のいずれか1項に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項12】
前記組換え型融合タンパク質の抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する能力が低下している、請求項1~11のいずれか1項に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項13】
前記組換え型融合タンパク質が、組換え型NRG-1のシグナル伝達誘導能力と比較して、HER2/3シグナル伝達よりもHER2/4シグナル伝達を促進する、請求項1~12のいずれか1項に記載の組換え型融合タンパク質。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の組換え型融合タンパク質をコードする、組換え型核酸分子。
【請求項15】
前記mAbの重鎖は配列番号6又は配列番号7によってコードされる、
及び前記mAbの軽鎖配列は配列番号8によってコードされる、請求項14に記載の組換え型核酸分子。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の核酸分子を含む、組換え型ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載の組換え型ベクターを含む、組換え型細胞。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか1項に記載の組換え型融合タンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項19】
対象における心血管の疾患または状態を治療するための、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
対象における心血管の疾患または状態の発症を防止、抑制、阻害、または遅延するための、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
0.1μg/kg~5mg/kgの組換え型融合タンパク質が対象に投与されるように前記医薬組成物が投与される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物が対象における心血管の疾患または状態の徴候または症状を軽減する、請求項19~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
組換え型NRG-1よりも腫瘍又はがん細胞の増殖が減弱される、請求項19~22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
静脈内注入に適している、請求項19~23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記心血管の疾患または状態が、駆出率保持性心不全、慢性心不全/うっ血性心不全(CHF)、急性心不全/心筋梗塞(MI)、左室収縮機能障害、MIに関連する再灌流傷害、化学療法誘導性心毒性(成人性または小児性)、放射線誘発性心毒性、小児先天性心疾患における外科的介入に対する付属要素、又は対象ががん療法を受けたことに起因する心毒性である、請求項19~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記化学療法誘導性心毒性が、化学療法として使用されるアントラサイクリン、アルキル化剤、微小管阻害剤、又は代謝拮抗物質の投与を受ける対象から生じ、ここで前記がん療法がHER-2標的療法である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記HER-2標的療法が、トラスツズマブ、アドトラスツズマブ、エムタンシン、ラパチニブ、ネラチニブ、及びペルツズマブ、任意の抗HER2抗体、任意の抗HER2薬剤、またはこれらの組合せの使用を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
請求項1~13のいずれか1項に記載の組換え型タンパク質または請求項19に記載の医薬組成物の有効量を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月11日に出願された米国特許仮出願第62/656,246号の優先権及び恩典を主張し、当該出願の内容はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表の参照による組み込み
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表を含み、この配列表は、その全体が参照によって本明細書に援用される。前述のASCIIコピーは2019年3月16日に作成され、名称はSBTI-001-001WO_SeqList.txt、サイズは31,328バイトである。
【背景技術】
【0003】
ニューレグリン(NRG;ヘレグリン、HRG)はグリア成長因子(GGF)やneu(new)分化因子の別名でも知られ、分子量44KDの糖タンパク質の1タイプである。NRGタンパク質ファミリーには、4つのメンバー:NRG-1、NRG-2、NRG-3、及びNRG-4が存在する。NRG(NRG-1を含む)は、心臓の発達において特に重要な役割を担う。NRG-1は、ErbBファミリーのチロシンキナーゼ受容体のリガンドとして、膜結合型のErbB3またはErbB4に直接結合し、二量体化を誘導してErbB2/ErbB4、ErbB2/ErbB3、ErbB3/ErbB3、及びErbB4/ErbB4複合体を作成し、続いて細胞内シグナル伝達を行う。動物モデルにおいて、NRGの発現は、パラクラインシグナル伝達を誘導して心臓組織における成長及び分化を促進し、ErbB2、ErbB4、またはNRG-1のいずれかを除去すれば胚の致死につながる。さらに、ErbB2受容体シグナル伝達を遮断するがん療法には、顕著な心毒性の副作用があることが示されており、ヒトにおけるErbB2媒介性シグナル伝達が、健康な心臓組織の発達に必須であるだけではなく、その恒常性にも必須であることが実証されている。
【0004】
また、NRG-1シグナル伝達が、他の臓器系の発達及び機能や、ヒトの疾患(統合失調症及び頭頚部がんを含む)の病因で役割を担っているというエビデンスも示されている。NRG-1は多くの異性体を有する。遺伝子変異マウス(遺伝子ノックアウトマウス)における研究からは、異なるN末端側領域またはEGF様ドメインを有する異性体が異なるin vivo機能を有することが示されている。本発明は、NRG-1βa2アイソフォームに基づいている。
【0005】
内在性のNRG-1は、ErbB3(HER3)及びErbB4(HER4)の両方に結合し、これらを介してシグナル伝達を誘導する。多数の前臨床及び臨床試験からは、主に心筋細胞発現ErbB4(HER4)との相互作用を介しての、様々な心血管適応症におけるNRG-1の治療的潜在可能性が示されている。しかし、3つの主要な因子が、組換え型ヒトNRG-1(rhNRG-1)の臨床応用及び実用性を限定している。第1に、HER3を介したNRG-1のシグナル伝達は、がんの発生及び/または進行を促進する恐れがあり、慢性投与を要するか、または重大な心血管(CV)リスク因子を伴わない任意の適用に対する顕著な懸念が生じる。第2に、NRG-1によるHER3の過剰活性化は、胃腸管(GI)上皮の完全性及び恒常性を妨害して重篤なGI毒性をもたらし、それによってNRG-1の治療ウインドウを喪失する恐れがある。第3に、rhNRG-1の両方の臨床段階の活性タンパク質フラグメントが短い半減期を示しており、このことから、所望の治療レベルの曝露を達成するには、負担の大きい投薬及び投与のスケジュールが必要となり得ることが示されている。そのため、様々な心血管適応症において臨床的に意味のある治療的潜在可能性を保持し、ただし腫瘍形成またはがん進行促進のリスクがより低く、GI忍容性がより優れ、薬物動態(PK)プロファイルがより好ましいNRG-1ベース治療薬を提供する必要性が存在する。
【0006】
本発明は、rhNRG-1活性ドメインとHER3特異的アンタゴニスト抗体との融合物を含む組換え型タンパク質を提供することによって、これらの必要性に対処する。HER3シグナル伝達は、rhNRG-1の腫瘍形成リスク及びGI毒性を軽減するやり方で遮断され、同時に、抗体骨格形式によって、典型的なモノクローナル抗体の分子半減期がもたらされ、生成物をより好都合に投薬及び投与することが可能になる。
【発明の概要】
【0007】
1つの態様において、本発明は、関連モノクローナル抗体(mAb)骨格と融合した心臓保護タンパク質ニューレグリン-1(NRG-1)のフラグメントを含む、組換え型融合タンパク質に関する。関連する態様において、NRG-1フラグメントは、リンカー経由で抗体の重鎖のC末端と融合している。別の関連する態様において、NRG-1は、NRG-1のN末端上の第1のアミノ酸経由でリンカーに結合しており、1つの実施形態において、このアミノ酸はセリン(SまたはSer)アミノ酸である。関連する態様において、フラグメントは、NRG-1の活性ドメインを含む活性フラグメントである。別の関連する態様において、mAbは、ErbB3(HER3)に対し単一特異的である。別の関連する態様において、NRG-1は、NRG-1 β2aアイソフォームである。
【0008】
別の態様において、本発明は、抗HER3モノクローナル抗体骨格と融合した心臓保護タンパク質ニューレグリン-1(NRG-1)のフラグメントを含む組換え型融合タンパク質と、医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0009】
別の態様において、本発明は、その必要のある対象における疾患または状態を治療する方法であって、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、方法に関する。
【0010】
別の態様において、本発明は、対象における心血管の疾患または状態の発症を防止、阻害、抑制、または遅延する方法であって、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質の有効量を投与することを含む、方法に関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、その必要のある対象におけるCNS関連の疾患または状態を治療する方法であって、組換え型融合タンパク質の治療有効量を投与することを含む、方法に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、対象におけるCNS関連の疾患または状態の発症を防止、阻害、抑制、または遅延する方法であって、組換え型融合タンパク質の有効量を投与することを含む、方法に関する。
【0013】
別の関連する態様において、NRG-1はErbB4(HER4)に結合し、それを介してシグナル伝達を誘導する。別の関連する態様において、mAbは、ErbB3(HER3)を介しNRG-1シグナル伝達を阻害する。
【0014】
別の態様において、本発明は、本発明の組換え型融合タンパク質または本発明の組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の有効量を含む、キットに関する。
【0015】
本発明における他の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態の例及び図面から明らかとなる。ただし、本発明の趣旨及び範囲内の様々な変更及び改変は、当業者にとってはこの発明を実施するための形態から明らかとなるため、発明を実施するための形態及び特定の例は、本発明の実施形態を示しながら例示として与えられるものに過ぎないということが理解されるべきである。
【0016】
以下に説明する添付の図面と併せて、後述の発明を実施するための形態及び添付の請求項を参照することにより、本発明における様々な目的及び利点ならびにより完全な理解が明らかとなり、より容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質を発現させるための発現プラスミドの構築を示している。
【0018】
【
図2A-B】
図2A-Dは、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質の概略的構造を図示している。
図2Aは、本開示の抗HER3 mAb/NRG-1融合タンパク質の分子概略図を示している。
図2Bは、SDS-PAGE解析により生成された代表的なデータを示している。
【
図2C-D】
図2A-Dは、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質の概略的構造を図示している。
図2Cは、HER3/4結合ドメインを含むNRG-1(「NRG-1」(R&D Systems,Minneapolis,MN))の61アミノ酸活性フラグメントに対し特異的な一次抗体によって検出されたウェスタンブロット結果を示している。
図2Dは、IgGに対し特異的な一次抗体によって検出されたウェスタンブロット結果を示している。
【0019】
【
図3】
図3は結合解析を示しており、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質がHER3タンパク質に結合し(カーブ1、ステップ2)、同時に抗NRG-1抗体にも結合することができる(カーブ1、ステップ3)ことを示している。注意されたいのは、Fc変異を本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質に導入して、HER3特異的抗体をコードする親抗体配列のFcエフェクター機能をノックアウトしたことである。これにより、HER3受容体を発現する正常組織に対する望ましくない細胞傷害性が軽減され得る。
【0020】
【
図4A-B】
図4A-Dは、抗HER3 mAb/NRG-1融合タンパク質または対照で処置した異なるがん細胞系における平均相対成長率±SEM(n=3)を示す代表的なグラフを示している。
図4Aは、NCI-N87胃がん細胞系における平均相対成長率を示している。
図4Bは、MCF-7乳がん細胞系における平均相対成長率を示している。
【
図4C-D】
図4A-Dは、抗HER3 mAb/NRG-1融合タンパク質または対照で処置した異なるがん細胞系における平均相対成長率±SEM(n=3)を示す代表的なグラフを示している。
図4Cは、RT-112膀胱がん細胞系における平均相対成長率を示している。
図4Dは、T47D乳がん細胞系における平均相対成長率を示している。対照のNRG-1ペプチド及びGP120 mAb/NRG-1融合タンパク質と比較して、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質は、がん細胞増殖の促進において著明に低い活性を示している。
【0021】
【
図5】
図5A-Bは、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質が、がん細胞成長の潜在可能性低減にもかかわらず、心筋細胞内のPI3K/AKTシグナル伝達経路を誘導する能力を完全に保持することを示しており、これにより、組換え型NRG-1及びGP120 mAb/NRG-1融合タンパク質と同等の活性が実証される。
図5Aは、本開示の組換え型融合タンパク質及び対照で処置したヒト心筋細胞における、抗体濃度(nM)に対するホスホ-AKT(pAKT):総AKT(tAKT)の相対比を示すプロットである。
図5Bは、本開示の組換え型融合タンパク質及び対照で処置したヒト心筋細胞における、AKTリン酸化のウェスタンブロット解析である。
【0022】
【
図6A-B】
図6A-Cは、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質及び対照の存在下におけるHER2/4及びHER2/3の二量体化の直接的な比較を示している。
図6Aは、リガンド誘導性二量体化を検出するためのアッセイ原理を示している。Eurofins DiscoverX(Fremont,CA)が開発したPathHunter二量体化アッセイを使用して、受容体-二量体対の2つのサブユニットのリガンド誘導性二量体化を検出する。β-gal酵素が2つのフラグメント、ProLink(PK)及び酵素受容体(EA)に分割される。細胞は、酵素ドナーPKと融合した標的タンパク質1と、酵素アクセプターEAと融合した標的タンパク質2とを同時発現するように操作しておく。リガンドが一方の標的タンパク質と結合することによって他方の標的タンパク質と相互作用するように誘導され、2つの酵素フラグメントの相補性が強制され、その結果、化学発光シグナルを放出する酵素反応が生じ、このシグナルが相対蛍光単位またはRFUとして検出される。
図6Bは、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質が、NRG-1と同等の効力でHER2/HER4二量体化を誘導できることを示すプロットである。
【
図6C】
図6A-Cは、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質及び対照の存在下におけるHER2/4及びHER2/3の二量体化の直接的な比較を示している。
図6Cは、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質が、NRG-1よりも顕著に低い効力でHER2/HER3二量体化を誘導することを示すプロットである。これらの所見は、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質が、NRG-1の完全なHER2/4シグナル伝達能力を保持し、HER2/3シグナル伝達を顕著に低減することをさらに確証するものである。
【0023】
【
図7】
図7は、ヒト、サル、ラット、及びマウスを含めた異なる種における、本発明の抗HER3 mAb/NRG-1融合タンパク質のHER3抗原に対する結合親和性を示している。BIAcore解析によって定量される平衡解離速度(KD)は、それぞれ3.13×10
-10(ヒト)、3.97×10
-10(サル)、2.68×10
-9(ラット)、及び2.77×10
-9(マウス)である。これらのデータは、本発明の組換え型融合タンパク質が、ヒト及びサルHER3に類似する結合親和性を有し、一方げっ歯類(ラット及びマウス)HER3に対する親和性がおよそ1桁低いことを示している。
【0024】
【
図8】
図8は、冠動脈結紮によって誘導される心筋梗塞のラットモデルにおいて、組換え型融合タンパク質が駆出率(EF)に及ぼす効果を示すプロットである。
【0025】
【
図9】
図9A-Fは、冠動脈結紮によって誘導した収縮期心不全ラットモデルにおける心筋の病理組織学的変化を示す一連の6つの画像である。手術部位に隣接する心臓組織を収集し、4%ホルムアルデヒド中で固定し、次いでパラフィン切片を調製し、H&Eで染色した。
図9Aは、シャム手術対照ラットからの心臓組織を示している。
図9Bは、ビヒクル対照で処置した収縮期心不全モデルラットからの心臓組織を示している。
図9Cは、GP120 mAb/NRG-1(10mg/kg)で処置した収縮期心不全モデルラットからの心臓組織を示している。
図9Dは、抗HER3 mAb/NRG-1(1mg/kg)で処置した収縮期心不全モデルラットからの心臓組織を示している。
図9Eは、抗HER3 mAb/NRG-1(3mg/kg)で処置した収縮期心不全モデルラットからの心臓組織を示している。
図9Fは、抗HER3 mAb/NRG-1(10mg/kg)で処置した収縮期心不全モデルラットからの心臓組織を示している。
【0026】
【
図10】
図10は、NOD/SCIDマウスにおける皮下FaDuがん異種移植片モデルを用いたin vivo抗腫瘍活性の評価を示すグラフである。
【0027】
【
図11】
図11は、本開示の組換え型融合タンパク質及び対照で処置した担腫瘍マウスの体重変化を示すグラフである。
【0028】
【
図12】
図12は、カニクイザル(マカク属)における組換え型融合タンパク質の薬物動態プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、ニューレグリン-1タンパク質アイソフォームの活性フラグメントと融合したモノクローナル抗体の融合物を含む組換え型融合タンパク質を、様々な心血管及び中枢神経系(CNS)の適応症にわたって利用する。
定義
【0030】
別途定義されない限り、本明細書で使用する技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0031】
本発明を解釈する目的において、以下の定義が適用され、いかなる適切な場合にも単数形で使用された用語は複数形も含み、その逆も同様である。以下に記載される任意の定義が、参照によって本明細書に援用された任意の文書と矛盾する場合は、以下に記載される定義が優先されるものとする。
【0032】
「ニューレグリンまたはニューレグリン類似体」とは、ErbB2/ErbB4またはErbB2/ErbB3ヘテロ二量体タンパク質チロシンキナーゼを活性化することができる分子であり、例えば、全てのニューレグリンアイソフォーム、ニューレグリンEGFドメイン単体、ニューレグリン変異型、及び任意の種類のニューレグリン類似遺伝子産物も上記の受容体を活性化する。本発明で使用される好ましい「ニューレグリン」は、EGF様ドメイン及び受容体結合ドメインを含むヒトニューレグリン-1 β2アイソフォームのポリペプチドフラグメントである。1つの実施形態において、ニューレグリンフラグメントは活性フラグメントである。ニューレグリン-1(NRG-1)及びそのアイソフォームは、当技術分野ではニューレグリン1(NRG1)、グリア細胞成長因子(GGF)、ヘレグリン(HGL)、HRG、neu(new)分化因子(NDF)、ARIA、GGF2、HRG1、HRGA、SMDF、MST131、MSTP131、及びNRG1イントロン転写物2(NRG1-IT2)としても知られている。
【0033】
「ErbB3」、「ErbB3(HER3)」、「HER3」という用語は、同じタンパク質(または言及されている場合は同じ遺伝子)を意味し、本明細書では互換的に使用される。いくつかの実施形態において、組換え型融合タンパク質は、ErbB3に対し特異的なモノクローナル抗体部分を含む。ErbB3(erb-b2受容体チロシンキナーゼ3)は、当技術分野ではFERLK、LCCS2、ErbB-3、c-erbB3、erbB3-S、MDA-BF-1、c-erbB-3、p180-ErbB3、p45-sErbB3、及びp85-sErbB3としても知られている。
【0034】
1つの実施形態において、「ErbB4」、「ErbB4(HER4)」、「HER4」という用語は、同じタンパク質(または言及されている場合は同じ遺伝子)を意味し、本明細書では互換的に使用される。ErbB4(erb-b2受容体チロシンキナーゼ4)は、当技術分野ではALS19及びp180erbB4としても知られている。
【0035】
1つの実施形態において、「ErbB2」、「ErbB2(HER2)」、「HER2」という用語は、同じタンパク質(または言及されている場合は同じ遺伝子)を意味し、本明細書では互換的に使用される。ErbB2(erb-b2受容体チロシンキナーゼ2)は、当技術分野ではNEU、NGL、TKR1、CD340、HER-2、MLN 19、及びHER-2/neuとしても知られている。
【0036】
本明細書で使用する場合、「活性」という用語は、生物学的活性または生物学的機能を有するフラグメントを意味する。いくつかの実施形態において、活性は、野生型タンパク質の活性に等しいか、またはそれに近似する。
【0037】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、限定されるものではないが、哺乳類(例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル)、マウス、ブタ、ウシ、ヤギ、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター、ウマ、サル、ヒツジ、またはその他の非ヒト哺乳類を含む)、非哺乳類(例えば、鳥類(例えば、ニワトリもしくはアヒル)または魚類などの非哺乳類脊椎動物、及び非哺乳類無脊椎動物を含む)を含む。いくつかの実施形態において、本発明の方法及び組成物は、非ヒト動物の治療に(予防及び/または治療いずれにも)使用される。また、「対象」という用語は、患者、すなわち医療ケアを待っているまたは受けている個体も意味する。
【0038】
「医薬組成物」という用語は、本明細書では、動物またはヒトを含めた対象における医薬使用に適した組成物を意味する。医薬組成物は、概して、活性薬剤(例えば、本発明の組換え型融合タンパク質)の有効量と、医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤(例えば、緩衝剤、アジュバントなど)とを含む。
【0039】
「有効量」という用語は、所望の結果をもたらすのに十分な薬用量または量を意味する。所望の結果は、薬用量または量のレシピエントにおける客観的または主観的な改善(例えば、長期生存、腫瘍の数及び/またはサイズの減少、疾患状態の有効な防止など)を含むことができる。
【0040】
「予防的治療」とは、疾患、病態、もしくは医学的障害の徴候もしくは症状を示さない、または疾患、病態、もしくは障害の早期的徴候もしくは症状を示すに過ぎない対象に対し、その疾患、病態、または医学的障害が発生するリスクを減弱、防止、または減少する目的で投与される治療である。予防的治療は、疾患または障害に対し防止的治療として機能する。「予防的活性」とは、病態、疾患、もしくは障害の徴候もしくは症状を示さない(または病態、疾患、もしくは障害の早期的徴候もしくは症状を示すに過ぎない)対象に投与したときに、対象がその病態、疾患、または障害を発生するリスクを減弱する、防止する、または減少する薬剤(例えば、本発明の組換え型融合タンパク質またはその組成物)の活性である。「予防的に有用な」薬剤または化合物(例えば、本発明の組換え型融合タンパク質)とは、病態、疾患、または障害の発生の減弱、防止、治療、または減少に有用な薬剤または化合物を意味する。
【0041】
「療法的治療(therapeutic treatment)」とは、病態、疾患、または障害の症状または徴候を示す対象に投与される治療であり、この場合、治療は、病態、疾患、または障害のそのような徴候または症状を減弱または除去する目的で対象に投与される。「治療活性」とは、病態、疾患、または障害の徴候または症状を患う対象に投与したときに、このような徴候または症状を除去または減弱する、薬剤(例えば、本発明の組換え型融合タンパク質またはその組成物)の活性である。「治療的に有用な」薬剤または化合物(例えば、本発明の組換え型融合タンパク質)とは、薬剤または化合物が、病態、疾患、または障害のこのような徴候または症状の減弱、治療、または除去に有用であることを示す。
【0042】
本明細書で使用する場合、「がんを治療する」という用語は、別段の指示がない限り、対象における腫瘍成長、腫瘍転移、またはその他のがんを引き起こす細胞もしくは新生物性細胞を部分的または完全に回復、軽減、その進行を阻害、または防止することを意味する。本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、別段の指示がない限り、治療する行為を意味する。
【0043】
本明細書で使用する場合、「心血管疾患を治療する」という用語は、別段の指示がない限り、対象における心血管の疾患または状態の発症、あるいは対象における既存の心血管の疾患もしくは状態またはその症状の進行を、部分的または完全に防止、阻害、抑制、遅延、回復、または軽減することを意味する。本開示の方法によって治療することができる心血管疾患の非限定的な例としては、慢性心不全/うっ血性心不全(CHF)、急性心不全/心筋梗塞(MI)、左室収縮機能障害、MIに関連する再灌流傷害、化学療法誘導性心毒性(成人性または小児性)、放射線誘発性心毒性、小児先天性心疾患における外科的介入に対する付属要素が挙げられる。心血管疾患の症状の非限定的な例としては、息切れ、咳、急激な体重増加、下肢、足首、及び腹部の腫脹、めまい、疲労、脱力、胸痛、失神(卒倒)、頻脈、及び徐脈が挙げられる。心血管疾患の進行及び治療の有効性を判定する方法は、当業者には容易に明らかとなるであろう。例えば、様々な心血管疾患の進行は、駆出率、心電図(ECG)、ホルター心電図、心エコー図、ストレステスト、心臓カテーテル検査、心臓コンピューター断層撮影(CT)スキャン、及び心臓磁気共鳴画像(MRI)によって判定することができる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「中枢神経系(CNS)関連の疾患を治療する」という用語は、別段の指示がない限り、対象におけるCNS関連の疾患または状態の発症を部分的または完全に防止、阻害、抑制、遅延、回復、または軽減する方法を意味する。また、「CNS関連の疾患を治療する」という用語は、既存のCNS関連の疾患もしくは状態、またはその症状を回復、緩徐化、または別の方法で軽減することも意味する。本開示の方法で治療することができるCNS関連の疾患または状態の例示的な、ただし非限定的な例としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ベル麻痺、てんかん及び発作、ギラン・バレー症候群、卒中、外傷性脳損傷、多発性硬化症、または組合せが挙げられる。CNS関連疾患を治療することで、振戦、運動緩慢、筋硬直、平衡感覚喪失、姿勢障害、発話変化、運動制御喪失、嚥下障害、筋痙攣、発作、記憶の喪失及び錯乱などの症状を改善または防止することができる。
【0045】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、「同一」または「同一性パーセント」という用語は、比較し最大限一致するようにアラインメントしたときに、同じであるかまたは特定のパーセンテージの同じヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有する2つ以上の配列または部分配列を意味する。同一性パーセントを決定するには、配列を最適な比較の目的でアラインメントする(例えば、第1のアミノ酸配列または核酸配列にギャップを導入して第2のアミノ酸または核酸配列との最適なアラインメントを得ることができる)。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列内の位置を、同じアミノ酸残基またはヌクレオチドが第2の配列内の対応する位置として占有している場合、その位置の分子は同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、これらの配列が共有する同一な位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一な位置の数/位置(例えば、重複する位置)の総数×100)である。いくつかの実施形態において、2つの配列は同じ長さである。
【0046】
2つの核酸またはポリペプチドの文脈における「実質的に同一」という用語は、(例えば、後述の方法のうちの1つを用いた定量で)少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する2つ以上の配列または部分配列を意味する。
【0047】
本明細書で使用する場合、「~に結合する」、「~に特異的に結合する」、または「~に対し特異的な」という用語は、生体分子を含めた異質な分子集団の存在下で標的の存在を決定する、標的と抗体との間の結合のような、測定可能で再現可能な相互作用を意味する。例えば、ある標的(エピトープの場合もある)に特異的に結合する抗体は、他の標的に対するよりも大きな親和性、アビディティーで、より容易に、かつ/またはより長い持続期間で、この標的に結合する抗体である。1つの実施形態において、ある抗体が無関係な標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)による測定において、その抗体の標的に対する結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、標的に特異的に結合する抗体の解離定数(Kd)は、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、または<0.1nMである。
【0048】
ある特定の実施形態において、抗体は、異なる種からのタンパク質の間で保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態において、特異的結合は排他的結合を含み得るが、これを要件とはしない。
【0049】
本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「当該(the)」は、文脈による明確な別段の定めがない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「ニューレグリン」または「(1つの)ニューレグリンペプチド」への言及には、このようなニューレグリン、ニューレグリンアイソフォーム、及び/またはニューレグリン様ポリペプチドの混合物が含まれる。「当該製剤化」または「当該方法」への言及には、本明細書で説明されているかつ/または本開示を読めば当業者には明らかとなる1つ以上の製剤化、方法、及び/またはステップが含まれる。
【0050】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸の多量体及びその等価物を意味し、特定の長さの産物を意味しない。したがって、「ペプチド」及び「タンパク質」はポリペプチドの定義内に含まれる。また、同様にポリペプチドの定義内に含まれるものとして、本明細書で定義される「抗体」がある。「ポリペプチド領域」とはポリペプチドの一セグメントを意味し、そのセグメントは、例えば、1つ以上のドメインまたはモチーフを含む(例えば、抗体のポリペプチド領域は、例えば、1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含み得る)。「フラグメント」という用語は、好ましくはポリペプチドのうちの少なくとも20個連続した、または少なくとも50個連続したアミノ酸を有するポリペプチドの部分を意味する。
【0051】
文脈による別段の指示がない限り、「誘導体」とは、第2のポリペプチドに対し1つ以上の非保存的もしくは保存的なアミノ酸置換を有するポリペプチドもしくはそのフラグメント(「バリアント」とも呼ばれる)、または第2の分子の共有結合によって、例えば、異種のポリペプチドの結合によって、もしくはグリコシル化、アセチル化、リン酸化などによって、修飾されているポリペプチドもしくはそのフラグメントである。「誘導体」の定義内にさらに含まれるものとしては、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体を含むポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸など)、非置換の結合ならびに天然及び非天然の当技術分野で知られているその他の修飾を伴うポリペプチドがある。
【0052】
「単離」ポリペプチドとは、その自然環境の構成要素から同定された、分離された、及び/または回収されたポリペプチドである。その自然環境の混入構成要素とは、当該ポリペプチドの診断上または治療上の使用を妨げ得る物質であり、このような構成要素としては、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質溶質または非タンパク質溶質を挙げることができる。単離ポリペプチドには、単離抗体、またはそのフラグメントもしくは誘導体が含まれる。
【0053】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、定量的観点においてプラスマイナス5%を意味し、または別の実施形態ではプラスマイナス10%、または別の実施形態ではプラスマイナス15%、または別の実施形態ではプラスマイナス20%を意味する。
【0054】
別途定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験の際に、本明細書に記載の方法及び材料に類似したまたは同等の、任意の方法及び材料を使用することは可能であるが、ここでは好ましい方法及び材料について説明する。本明細書で言及される全ての刊行物は、参考文献が関連して引用された材料を開示及び説明する目的において、参照により本明細書に援用される。
【0055】
組換え型融合タンパク質-抗体
本発明は、ニューレグリン-1タンパク質アイソフォームのフラグメントと融合したモノクローナル抗体の融合物を含む組換え型融合タンパク質を、様々な心血管適応症及び神経性適応症にわたる使用のために利用する。典型的な実施形態において、抗体はERBB3(HER3)に対し特異的である。
【0056】
本明細書で使用する場合、「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって相当程度にまたは部分的にコードされた1つ以上のポリペプチドを含むタンパク質を意味する。認識されている免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、及びミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、これらはそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEの免疫グロブリンクラスを定義する。典型的な免疫グロブリン(例えば、抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖の対を含み、各対は1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50~70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100~110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこのような軽鎖及び重鎖を意味する。
【0057】
抗体は、インタクト免疫グロブリンとして存在するか、または、様々なペプチダーゼによる消化によって産生された、十分に特性が明らかな複数のフラグメントとして存在する。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域内のジスルフィド結合の下で抗体を消化して、それ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1に連結した軽鎖であるFabの二量体F(ab′)2を生成する。F(ab′)2は、穏やかな条件下で還元してヒンジ領域内のジスルフィド結合を切断することにより、F(ab′)2二量体をFab′単量体に変換することができる。Fab′単量体は、本質的にはヒンジ領域の一部を有するFabである(その他の抗体フラグメントについてのより詳細な説明は、Fundamental Immunology,W.E.Paul,ed.,Raven Press,New York(1999)を参照)。インタクト抗体の消化という観点で様々な抗体フラグメントが定義されているが、当業者であれば、このようなFab′フラグメント等は、化学的に、または組換えDNA方法論の利用によって、新規に合成できることを理解するであろう。したがって、本明細書で使用する場合、抗体という用語は、全抗体の修飾によって産生した、または組換えDNA方法論を用いて新規に合成した抗体フラグメントも含む。抗体には、1本鎖Fv(sFvまたはscFv)、1つの可変重鎖及び1つの可変軽鎖が(直接またはペプチドリンカーを介し)共に連結して連続したポリペプチドを形成する抗体を含めた、1本鎖抗体が含まれる。抗体には、抗原ドメインに選択的に結合可能な単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントを含む、単一ドメイン抗体が含まれる。例示的な単一ドメイン抗体としてはVHHフラグメントが挙げられ、これは元はラクダ科動物から単離されたものである。
【0058】
融合タンパク質の抗体ドメインは、任意選択で免疫グロブリン分子の全てまたは一部を含み、任意選択で免疫グロブリン可変領域(すなわち、疾患関連抗原に対する特異性を有する領域)の全てまたは一部を含み、任意選択でV遺伝子及び/またはD遺伝子及び/またはJ遺伝子によってコードされる領域を含む。
【0059】
上記で説明したように(上記の定義を参照)、本明細書で使用される抗体は、実施形態の特定の要件に応じて、任意選択でF(ab)2、F(ab′)2、Fab、Fab′、scFv、単一ドメイン抗体などを含む。いくつかの実施形態は、IgGドメインを含む融合タンパク質を利用する。しかし、他の実施形態はIgM、IgA、IgD、及びIgEなどの代替の免疫グロブリンを含む。さらに、様々な免疫グロブリンにおける全てのあり得るアイソタイプも現状の実施形態内に包含される。したがって、IgG1、IgG2、IgG3などは、本発明で使用される抗体-免疫賦活剤融合タンパク質の抗体ドメインにおける全てのあり得る分子である。本発明の種々の実施形態は、免疫グロブリンのタイプ及びアイソタイプの選択に加えて、様々なヒンジ領域(またはその機能的等価物)を含む。このようなヒンジ領域は、抗体-免疫賦活剤融合タンパク質の種々のドメイン間にフレキシビリティーをもたらす。例えば、Penichet,et al.2001“Antibody-cytokine fusion proteins for the therapy of cancer”J Immunol Methods 248:91-101を参照。
【0060】
いくつかの実施形態において、本発明の組換え型融合タンパク質に含まれるmAbは、ErbB3(HER3)に対し単一特異的である。
【0061】
ヒトHER3(ErbB-3、ERBB3、c-erbB-3、c-erbB3、受容体チロシンキナーゼerbB-3)は、受容体チロシンキナーゼの上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーのメンバーをコードし、これにはHER1(EGFRとしても知られる)、HER2、及びHER4も含まれる(Kraus,M.H.et al,PNAS 86(1989)9193-9197;Plowman,G.D.et al,PNAS 87(1990)4905-4909;Kraus,M.H.et al,PNAS 90(1993)2900-2904)。プロトタイプの上皮成長因子受容体と同様、膜貫通受容体HER3は、細胞外リガンド結合ドメイン(ECD)、ECD内の二量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内タンパク質チロシンキナーゼドメイン(TKD)、及びC末端側リン酸化ドメインからなる。この膜結合HER3タンパク質は、活性キナーゼドメイン内ではなく細胞外ドメイン内にヘレグリン(HRG)結合ドメインを有する。そのため、このリガンドに結合することはできるが、タンパク質リン酸化を介してシグナルを細胞内に伝達することはできない。ただし、キナーゼ活性を有する他のHERファミリーメンバーと共にヘテロ二量体を形成する。ヘテロ二量体化によって、受容体媒介性シグナル伝達経路が活性化し、その細胞内ドメインがトランスリン酸化する。HERファミリーメンバー間の二量体形成は、HER3のシグナル伝達潜在能力を拡大し、シグナル多様化だけでなくシグナル増幅の手段となる。例えば、HER2/HER3ヘテロ二量体は、HERファミリーメンバーの間でPI3K及びAKT経路経由で最も重要な分裂促進シグナルの1つを誘導する。(Sliwkowski M.X.,et al,J.Biol.Chem.269(1994)14661-14665;Alimandi M,et al,Oncogene.10(1995)1813-1821;Hellyer,N.J.,J.Biol.Chem.276(2001)42153-4261;Singer,E.,J.Biol.
【0062】
1つの実施形態において、ヒトERBB3タンパク質は、GenBank AAH02706.1に示され、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む。
【0063】
MRANDALQVLGLLFSLARGSEVGNSQAVCPGTLNGLSVTGDAENQYQTLYKLYERCEVVMGNLEIVLTGHNADLSFLQWIREVTGYVLVAMNEFSTLPLPNLRVVRGTQVYDGKFAIFVMLNYNTNSSHALRQLRLTQLTEILSGGVYIEKNDKLCHMDTIDWRDIVRDRDAEIVVKDNGRSCPPCHEVCKGRCWGPGSEDCQTLTKTICAPQCNGHCFGPNPNQCCHDECAGGCSGPQDTDCFACRHFNDSGACVPRCPQPLVYNKLTFQLEPNPHTKYQYGGVCVASCPHNFVVDQTSCVRACPPDKMEVDKNGLKMCEPCGGLCPKAF(配列番号1)。本発明の方法及び組成物の抗体が標的とするERBB3(HER3)配列は、配列番号1の異性体、相同体、またはバリアントの場合もあることを理解されたい。
【0064】
1つの実施形態において、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質のmAbは、ErbB3(HER3)を介してNRG-1シグナル伝達を阻害する抗Her3 mAbである。
【0065】
特定の実施形態において、本発明の組換え型融合タンパク質に含まれるmAbは、抗HER3 mAbを含む。このような抗HER3抗体としては、限定されるものではないが、以下:パトリツマブ、セリバンツマブ(完全ヒトmAb)、LJM716、KTN3379、AV-203、REGN1400、GSK2849330、またはMM-141を挙げることができる。また、このような抗体は、ヒトERBB3(HER3)に結合し、そこからのシグナル伝達を阻害する限りにおいて、キメラ型、二重特異性、非ヒト、完全ヒト、またはヒト化形態を含めた形態のいずれかから選択することもできる。いくつかの実施形態において、抗HER3抗体はヒト起源である。
【0066】
いくつかの実施形態において、「抗体」という用語は、限定されるものではないが、全抗体及び抗体フラグメントを含めた抗体構造の様々な形態を包含する。本発明に従う抗体は、特有の性質が保持される限りにおいて、好ましくは、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ型抗体、またはさらに遺伝子操作された抗体である。「抗体フラグメント」は全長抗体の部分を含み、好ましくはその可変ドメイン、または少なくともその抗原結合部位を含む。抗体フラグメントの例としては、ダイアボディ、1本鎖抗体分子、及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。scFv抗体については、例えば、Huston,J.S.,Methods in Enzymol.203(1991)46-88で説明されている。加えて、抗体フラグメントは、VHドメインの特性、すなわちVLドメインと共に集合可能な特性、またはVHドメインと共に集合可能な、それぞれの抗原に結合するVLドメインの特性を有して機能的な抗原結合部位となり、本発明に従う抗体の特性をもたらす1本鎖ポリペプチドを含む。本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一アミノ酸組成の抗体分子の調製物を意味する。
【0067】
いくつかの実施形態において、キメラ型抗体は、本明細書で提供される組成物及び方法で使用することができる。1つの実施形態において、「キメラ型抗体」という用語は、マウスからの可変領域、すなわち結合領域と、異なる供給源または種に由来する定常領域の少なくとも部分とを含み、通常は組換えDNA技法によって調製される、モノクローナル抗体を意味する。マウス可変領域とヒト定常領域とを含むキメラ型抗体が、特に好ましい。このようなラット/ヒトキメラ型抗体は、ラット免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメントと、ヒト免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントとを含む、発現した免疫グロブリン遺伝子の産物である。本発明に包含される「キメラ型抗体」の他の形態は、元の抗体のクラスまたはサブクラスから修飾または変更された形態である。このような「キメラ型」抗体は、「クラススイッチ型抗体」とも呼ばれる。キメラ型抗体を産生するための方法は、現在当技術分野で周知されている従来的な組換え型DNA及び遺伝子形質移入の技法を伴う。例えば、Morrison,S.L.,et al,Proc.Natl.Acad Sci.USA 81(1984)6851-6855;米国特許第5,202,238号、及び米国特許第5,204,244号を参照。
【0068】
1つの実施形態において、ヒト化型抗体は、本明細書で提供される組成物及び方法で使用することができる。いくつかの実施形態において、「ヒト化抗体」または「ヒト化バージョンの抗体」という用語は、フレームワークまたは「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンの特異性と比較して異なる特異性を備えた免疫グロブリンのCDRを含むように修飾された抗体を意味する。他の実施形態において、VH及びVLのCDRは、「ヒト化抗体」を調製するためにヒト抗体のフレームワーク領域に移植される。例えば、Riechmann,L.,et al,Nature 332(1988)323-327;及びNeuberger,M.S.,et al,Nature 314(1985)268-270を参照。重鎖及び軽鎖可変フレームワーク領域は、同じまたは異なるヒト抗体配列に由来することができる。ヒト抗体配列は、天然のヒト抗体の配列であり得る。ヒト重鎖及び軽鎖可変フレームワーク領域は、例えば、Lefranc,M.-P.,Current Protocols in Immunology(2000)-Appendix IP A.1P.1-A.1P.37に収載されており、またIMGT(international ImMunoGeneTics information system(登録商標))(http://imgt.cines.fr)またはhttp://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk経由でアクセスすることができる。任意選択で、フレームワーク領域は、さらなる変異によって修飾されてもよい。特に好ましいCDRは、キメラ型抗体について上記で示した抗原を認識する配列に相当するCDRに対応する。また、本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」という用語は、本発明に従う性質、特に、補体構成要素1q(Clq)結合及び/またはFc受容体(FcR)結合に関する性質を、例えば、「クラススイッチング」、すなわち、Fc部分の変更または変異(例えば、IgG1からIgG4へ及び/もしくはIgG1/IgG4の変異)によってもたらすように、定常領域が修飾されている抗体も含む。本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むように意図されている。ヒト抗体は、先端分野において周知されている(van Dijk,M.A.,and van de Winkel,J.G.,Curr.Opin.Chem.Biol.5(2001)368-374)。また、ヒト抗体は、免疫化により、内在的免疫グロブリン産生の不在下でヒト抗体の完全なレパートリーのまたは選択されたヒト抗体を産生可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)内で産生させることもできる。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイをこのような生殖細胞系列マウスに移行させることで、抗原チャレンジの際にヒト抗体が産生される(例えば、Jakobovits,A.,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993)2551-2555;Jakobovits,A.,et al,Nature 362(1993)255-258;Brueggemann,M.D.,et al.,Year Immunol.7(1993)33-40を参照)。また、ヒト抗体はファージディスプレイライブラリーで産生させることもできる(Hoogenboom,H.R.,and Winter,G.,J.Mol.Biol.227(1992)381-388;Marks,J.D.,et al,J.Mol.Biol.222(1991)581- 597)。Cole,A.,et al.及びBoerner,P.,et al.の技法もヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Cole,A.,et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Liss,A.L.,p.77(1985);及びBoerner,P.,et al,J.Immunol.147(1991)86-95)。本発明に従うヒト化抗体に関して既に言及されているように、本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、本発明に従う性質をもたらすように定常領域が修飾されている抗体も含む。
【0069】
本発明の特定の1つの実施形態において、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質に含まれるmAbは、Fcドメインまたは領域に少なくとも1つの変異を含む。
【0070】
本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、組換え手段によって調製、発現、作成、または単離される全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞(例えば、NS0もしくはCHO細胞)から単離された抗体、または宿主細胞に形質移入した組換え型発現ベクターを用いて発現したヒト免疫グロブリン遺伝子もしくは抗体のトランスジェニック動物(例えば、マウス)から単離された抗体を含むように意図されている。このような組換え型ヒト抗体は、再構成された形態で可変領域及び定常領域を有する。本発明に従う組換え型ヒト抗体は、in vivo体細胞超変異に供されている。したがって、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VH及びVL配列に由来し関連するが、天然にはin vivoのヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に存在しない可能性のある配列である。
【0071】
いくつかの実施形態において、「ヒトHER3に結合する~」、「ヒトHER3に特異的に結合する~」、または「抗HER3抗体」という用語は互換的であり、25℃において約4.81×-10mol/L以下のKD値でヒトHER3抗原に特異的に結合する抗体を意味する。結合親和性は、25℃における標準的な結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴技法(BIAcore(登録商標)(GE-Healthcare Uppsala,Sweden))によって定量される。したがって本明細書で使用する場合、「ヒトHER3に結合する抗体」とは、25℃においてKD 1.0×10-8mol/L~1.0×10-13mol/Lの範囲内の結合親和性で、好ましくは25℃において4.81×-10mol/L以下のKD値でヒトHER3抗原に結合する抗体またはその部分を意味する。
【0072】
別の態様において、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質に含まれる抗HER3抗体は、可変領域重(VH)鎖及び可変領域軽(VL)鎖を含む。1つの実施形態において、抗体は、配列番号2及び配列番号3のそれぞれVH及びVL配列を含み、以下の性質:腫瘍細胞内のHER3リン酸化の阻害、腫瘍細胞内のAKTリン酸化の阻害、ErbB3(HER3)を介したシグナル伝達の阻害、及び腫瘍細胞の増殖の阻害、のうちの1つ以上を有する。
【0073】
1つの実施形態において、本明細書で提供される抗HER3 mAbは、配列番号2に記載のVHアミノ酸配列を含む。
【0074】
重鎖:
QVQLQQWGAG LLKPSETLSL TCAVYGGSFS GYYWSWIRQP PGKGLEWIGE INHSGSTNYN PSLKSRVTIS VETSKNQFSL KLSSVTAADT AVYYCARDKW TWYFDLWGRG TLVTVSSAST KGPSVFPLAP SSKSTSGGTA ALGCLVKDYF PEPVTVSWNS GALTSGVHTF PAVLQSSGLY SLSSVVTVPS SSLGTQTYIC NVNHKPSNTK VDKRVEPKSC DKTHTCPPCP APEFLGGPAV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLTCLVK GFYPSDIAVE WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE ALHAHYTQKS LSLSPGK(配列番号2)
【0075】
1つの実施形態において、本明細書で提供される抗HER3 mAbは、配列番号3のVLアミノ酸配列を含む。
【0076】
軽鎖:
DIEMTQSPDS LAVSLGERAT INCRSSQSVL YSSSNRNYLA WYQQNPGQPP KLLIYWASTR ESGVPDRFSG SGSGTDFTLT ISSLQAEDVA VYYCQQYYST PRTFGQGTKV EIKRTVAAPS VFIFPPSDEQ LKSGTASVVC LLNNFYPREA KVQWKVDNAL QSGNSQESVT EQDSKDSTYS LSSTLTLSKA DYEKHKVYAC EVTHQGLSSP VTKSFNRGEC(配列番号3)
【0077】
1つの実施形態において、本発明の抗HER3抗体は、Fc領域内に少なくとも1つの変異を含む。別の実施形態において、本発明の成熟した抗HER3抗体(すなわちシグナルペプチドが欠如している)は、アミノ酸234、239、434において少なくとも1つの変異、またはこれらの組合せを含み、他の実施形態において、アミノ酸変異は、以下の置換変異:L234F、S239A、N434Aのうちの少なくとも1つ、またはこれらの組合せを含む。別の実施形態において、アミノ酸234及び/または239に対する変異は、抗HER3抗体のエフェクター機能をノックダウンする。別の実施形態において、アミノ酸434に対する変異は、対象における抗体の半減期を延長する。
【0078】
いくつかの実施形態において、Fc領域内の1つ以上の変異はエフェクター機能を低減する。いくつかの実施形態において、エフェクター機能の低減は、抗HER3抗体の1つ以上のFc受容体に対する親和性の低減を含む。FcRは、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa(158F)、FcγRIIIa(158V)、及びC1qとすることができる。いくつかの実施形態において、親和性の低減は、約1桁以上の解離定数の増加を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のFc変異の導入により、抗HER3抗体を含む融合タンパク質の抗HER抗体のFcγRIに対するKDは、2.81×10-9Mから1.03×10-8Mに増加する。いくつかの実施形態において、1つ以上のFc変異の導入により、抗HER3抗体を含む融合タンパク質の抗HER抗体のFcγRIIaに対するKDは、3.95×10-7Mから1.35×10-6Mに増加する。いくつかの実施形態においていくつかの実施形態において、1つ以上のFc変異の導入により、抗HER3抗体を含む融合タンパク質の抗HER抗体のFcγRIIbに対するKDは、1.03×10-7Mから1.52×10-6Mに増加する。1つ以上のFc変異の導入により、抗HER3抗体を含む融合タンパク質の抗HER抗体のFcγRIIIa(158F)に対するKDは、6.37×10-8Mから1.18×10-7Mに増加する。いくつかの実施形態において、1つ以上のFc変異の導入により、抗HER3抗体を含む融合タンパク質の抗HER抗体のFcγRIIIa(158V)に対するKDは、3.41×10-8Mから9.10×10-8Mに増加する。
【0079】
いくつかの実施形態において、抗HER3抗体またはそれを含む組換え型融合タンパク質は、1.03×10-8M以上の平衡解離定数(KD)でFcγRIに結合する。いくつかの実施形態において、抗HER3抗体またはそれを含む組換え型融合タンパク質は、1つ以上のFc変異を含み、1.35×10-6M以上のKDでFcγRIIaに結合する。いくつかの実施形態において、抗HER3抗体またはそれを含む組換え型融合タンパク質は、1つ以上のFc変異を含み、1.5×10-6M以上のKDでFcγRIIbに結合する。いくつかの実施形態において、抗HER3抗体またはそれを含む組換え型融合タンパク質は、1つ以上のFc変異を含み、1.18×10-7M以上のKDでFcγRIIIa(158F)に結合する。いくつかの実施形態において、抗HER3抗体またはそれを含む組換え型融合タンパク質は、1つ以上のFc変異を含み、9.10×10-8M以上のKDでFcγRIIIa(158V)に結合する。
【0080】
本明細書で使用する場合、「抗体エフェクター機能」という用語は、IgのFc領域がもたらす機能を意味する。このような機能は、例えば、食作用もしくは溶解活性を有する免疫細胞上のFc受容体に対するFcエフェクター領域の結合によって、または補体系の構成要素に対するFcエフェクター領域の結合によって影響を受け得る。
【0081】
1つの実施形態において、抗HER3抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導しない。「抗体依存性細胞傷害(ADCC)」という用語は、エフェクター細胞の存在下で本発明に従う抗体がヒト標的細胞を溶解することを意味する。
【0082】
本発明の1つの実施形態において、本発明に従う抗体はグリコシル化されている。いくつかの実施形態において、グリコシル化はN-グリコシル化である。他の実施形態において、グリコシル化はO-グリコシル化である。
【0083】
本明細書で提供され本発明に従う組換え型融合タンパク質の文脈において、組換え型融合タンパク質に含まれる抗体は、組換え手段を経由して産生させることができる。このような方法は、当技術分野で広く知られており、原核細胞及び真核細胞内でタンパク質を発現させることと、その後に抗体ポリペプチドを単離することと、通常は、医薬的に許容される純度まで精製することとを含む。タンパク質発現については、標準的な方法により、軽鎖及び重鎖またはそのフラグメントをコードする核酸を発現ベクター内に挿入する。発現は、適切な原核宿主細胞または真核宿主細胞内で、例えば、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、酵母、またはE.coli細胞内で実施し、抗体は、このような細胞から(上清からまたは細胞溶解後)回収される。抗体の組換え産生は、当技術分野で周知されており、例えば、Makrides,S.C.,Protein Expr.Purif.17(1999)183-202;Geisse,S.,et al,Protein Expr.Purif.8(1996)271-282;Kaufman,R.J.,Mol.Biotechnol.16(2000)151-161;Werner,R.G.,Drug Res.48(1998)870-880の総説で説明されている。抗体は、全細胞内、細胞ライセート内、または部分的に精製された形態もしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。精製は、他の細胞構成要素または他の混入物(例えば、他の細胞核酸またはタンパク質)を除去するために、カラムクロマトグラフィー及び当技術分野で周知されている他の技法を含めた標準的な技法によって実施される(Ausubel,F.,et al,ed.Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley Interscience,New York(1987)を参照)。NSO細胞内での発現については、例えば、Barnes,L.M.,et al,Cytotechnology 32(2000)109-123;Barnes,L.M.,et al,Biotech.Bioeng.73(2001)261-270で説明されている。一過性発現については、例えば、Durocher,Y.,et al,Nucl.Acids.Res.30(2002)E9で説明されている。可変ドメインのクローニングについては、Orlandi,R.,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)3833- 3837;Carter,P.,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(1992)4285-4289;Norderhaug,L.,et al,J.Immunol.Methods 204(1997)77-87で説明されている。好ましい一過性発現系(HEK293)については、Schlaeger,E.-J.and Christensen,K.(Cytotechnology 30(1999)71-83)及びSchlaeger,E.-J.(J.Immunol.Methods 194(1996)191-199)で説明されている。モノクローナル抗体は、従来的な免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーによって、培地から好適に分離される。モノクローナル抗体をコードするDNA及びRNAは、従来的な手順を用いて容易に単離及びシークエンシングされる。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNA及びRNAの供給源として機能することができる。DNAは、単離したら発現ベクターに挿入することができ、次に宿主細胞、例えば、HEK293細胞、CHO細胞、または他の方法で免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞に形質移入して、宿主細胞内で組換え型モノクローナル抗体を合成する。
【0084】
本発明に従う重鎖及び軽鎖可変ドメインを、プロモーター、翻訳開始、定常領域、3′非翻訳領域、ポリアデニル化、及び転写終結の配列と合わせて、発現ベクターコンストラクトを形成する。重鎖及び軽鎖発現コンストラクトは、単一のベクター内で合わせ、宿主細胞内に同時形質移入、連続的に形質移入、または別々に形質移入することができ、次に宿主細胞を融合して、両方の鎖を発現する単一の宿主細胞を形成する。
【0085】
抗体が治療有効量で対象に投与されるのは自明のことであり、治療有効量とは、研究者、獣医師、医師、またはその他の臨床医の探求対象となっている組織、システム、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発する主題化合物または組合せの量である。
【0086】
組換え型融合タンパク質-ニューレグリン
1つの実施形態において、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質は、NRG-1タンパク質のフラグメントを含む。NRGタンパク質は、心筋細胞の表面上のErbB4受容体に結合し、細胞内のPI3K/AKTシグナル経路を持続的に活性化し、心筋細胞の構造を変更することにより、心筋細胞の機能を改善することができる。
【0087】
本明細書で使用する場合、「ニューレグリン」または「NRG」とは、ErbB3、ErbB4、またはこれらのヘテロ二量体もしくはホモ二量体に結合することができるタンパク質またはペプチドを意味し、これにはニューレグリンアイソフォーム、ニューレグリンEGF様ドメイン、ニューレグリンEGF様ドメインを含むポリペプチド、ニューレグリン変異型または誘導体、及び上記の受容体を活性化することができる任意の種類のニューレグリン様遺伝子産物が含まれる。また、ニューレグリンには、NRG-1、NRG-2、NRG-3、及びNRG-4タンパク質、ペプチド、フラグメント、ならびにニューレグリンの機能を有する化合物も含まれる。好ましい実施形態において、ニューレグリンは、ErbB2/ErbB4またはErbB2/ErbB3ヘテロ二量体に結合しこれを活性化することができるタンパク質またはペプチドであり、例えば、制限を目的とするものではないが、本発明のペプチドは、NRG-1β2アイソフォームのフラグメントを含み、すなわち、これは、以下のアミノ酸配列:SHLVKCAEKEKTFCVNGGECFMVKDLSNPSRYLCKCPNEFTGDRCQNYVMASFYKAEELYQ(配列番号4)を有するEGF様ドメインを含む、177~237アミノ酸フラグメントである。本発明のNRGタンパク質は、上記の受容体を活性化し、それらの生物学的機能を調節することができ、例えば、骨格筋細胞内のアセチルコリン受容体の合成を刺激したり、心筋細胞の分化及び生存期間やDNA合成を促進したりすることができる。重要でない領域内の単一アミノ酸の変異が、概して、得られたタンパク質またはポリペプチドの生物学的活性を改変しないことは当業者に周知されている(例えば、Watson et al.,Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,The Bejacmin/Cummings Pub.co.,p.224を参照)。本発明のNRGタンパク質は、天然の供給源から単離することも、組換え技術、人工合成、またはその他の手段を介して修飾することもできる。
【0088】
本明細書で使用する場合、「上皮成長因子様ドメイン」または「EGF様ドメイン」とは、ニューレグリン遺伝子によってコードされ、ErbB3、ErbB4、またはこれらのヘテロ二量体もしくはホモ二量体(ErbB2とのヘテロ二量体を含む)に結合しこれを活性化するポリペプチドフラグメントを意味し、以下文献で説明されているようなEGF受容体結合領域と構造的に類似している:WO00/64400;Holmes et al.,Science,256:1205-1210(1992);米国特許第5,530,109号及び第5,716,930号;Hijazi et al.,Int.J.Oncol.,13:1061-1067(1998);Chang et al.,Nature,387:509-512(1997);Carraway et al.,Nature,387:512-516(1997);Higashiyama et al.,J.Biochem.,122:675-680(1997);及びWO 97/09425(これらの内容は全て参照により本明細書に援用される)。ある特定の実施形態において、EGF様ドメインは、ErbB2/ErbB4またはErbB2/ErbB3ヘテロ二量体に結合し、これを活性化する。ある特定の実施形態において、EGF様ドメインは、NRG-1の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、EGF様ドメインとは、NRG-1のアミノ酸残基177~226、177~237、または177~240を指す。ある特定の実施形態において、EGF様ドメインは、ニューレグリン-2(NRG-2、当技術分野ではDON1、HRG2、及びNTAKとしても知られている)の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、NRG-2のEGF様ドメインは、HARKCNETAKSYCVNGGVCYYIEGINQLSCKCPNGFFGQRCL(配列番号15)の配列を含む。ある特定の実施形態において、EGF様ドメインは、ニューレグリン3(NRG-3、当技術分野ではHRG3及びpro-NRG3としても知られている)の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、NRG-3のEGF様ドメインは、HFKPCRDKDLAYCLNDGECFVIETLTGSHKHCRCKEGYQGVRCD(配列番号16)の配列を含む。ある特定の実施形態において、EGF様ドメインは、ニューレグリン4(NRG-4、当技術分野ではHER4としても知られている)の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、NRG-4のEGF様ドメインは、HEEPCGPSHKSFCLNGGLCYVIPTIPSPFCRCVENYTGARCE(配列番号17)の配列を含む。ある特定の実施形態において、EGF様ドメインは、米国特許第5,834,229号で説明されているようなAla Glu Lys Glu Lys Thr Phe Cys Val Asn Gly Glu Cys Phe Met Val Lys Asp Leu Ser Asn Pro(配列番号18)のアミノ酸配列を含む。
【0089】
1つの実施形態において、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質で提供されるNRG-1タンパク質は、NRG-1 β2aアイソフォームである。
【0090】
いくつかの実施形態において、活性NRG-1フラグメントは、ERBB3/4結合ドメインを含む。別の関連する実施形態において、NRG-1はErbB4(HER4)に結合し、それを介してシグナル伝達を誘導する。他の実施形態において、mAbは、ErbB3(HER3)を介しNRG-1シグナル伝達を阻害する。いくつかの実施形態において、NRG-1の活性タンパク質フラグメントは、NRG-1の活性ドメインを含む。
【0091】
組換え型融合タンパク質-組成物
1つの実施形態において、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質において、NRG-1は、リンカーを用いて抗HER3抗体の重鎖のC末端と融合している。別の関連する態様において、NRG-1は、NRG-1のN末端上の第1のアミノ酸経由でリンカーに結合しており、1つの実施形態において、このアミノ酸はセリン(SまたはSer)アミノ酸である。本発明で利用される特定の組換え型融合タンパク質は、任意選択で、当技術分野で知られている任意の方法によって(市販の供給元からの購入を含めて)取得または作成することができる。例えば、適切な抗体フレームワークをコードする核酸配列は、任意選択で、適切なベクター(例えば原核または真核生物向けの、例えば発現ベクター)内でクローニング及びライゲーションされる。加えて、NRG-1 β2aアイソフォーム分子をコードする核酸配列は、任意選択で、適切な方向及び位置で同じベクター内にクローニングされ、ベクターからの発現によって抗体-NRG-1 β2aアイソフォーム融合タンパク質が産生されるようにする。いくつかの任意選択の実施形態は、発現後修飾(例えば、抗体サブユニットの集成)を必要とする。上記(及び同様の)操作に関する技法及び技術は、当業者に周知されている。関連の教示内容は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning-A Laboratory Manual(2nd Ed.),Vols.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989及びCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols(Greene Publishing Associates, Inc.とJohn Wiley & Sons,Inc.との共同事業)(1999まで補足)に見いだされる。いくつかの代替実施形態において、抗体ドメイン及びNRG-1 β2aアイソフォームは、例えば化学的手段を介して発現後に集成される。1つの実施形態において、本発明は、本発明の組換え型融合タンパク質を含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。
【0092】
1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質は、心筋細胞の増殖、分化、及び生存を促進する。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質は、心臓組織の増殖、分化、及び生存を促進する。1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質は、がん及び/または腫瘍の成長を促進することなく心筋細胞の増殖、分化、及び生存を促進する。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質は、がんまたは腫瘍の成長を促進することなく心臓組織の増殖、分化、及び生存を促進する。
【0093】
1つの実施形態において、がんは、副腎皮質がん、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、肛門直腸がん、肛門管がん、虫垂がん、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、基底細胞がん、皮膚がん(非黒色腫)、胆管がん、肝外胆管がん、肝内胆管がん、膀胱(bladder)がん、膀胱(urinary bladder)がん、骨・関節がん、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、脳がん、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路及び視床下部神経膠腫、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、胃腸管系神経系がん、神経系リンパ腫、中枢神経系がん、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、小児がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞性リンパ腫、リンパ性新生物、菌状息肉症、セザリー症候群、子宮内膜がん、食道がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢がん、胃(gastric)(胃(stomach))がん、胃腸管系カルチノイド腫瘍、胃腸管系間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍神経膠腫、頭頚部がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内がん、眼球がん、膵島細胞腫瘍(内分泌膵臓)、カポジ肉腫、腎臓(kidney)がん、腎臓(renal)がん、腎臓(kidney)がん、喉頭がん、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、口唇及び口腔がん、肝臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、髄芽腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫悪性腫瘍、中皮腫、転移性扁平上皮頸部がん、口腔がん、舌がん、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、鼻咽頭がん、神経芽腫、口腔(oral)がん、口腔(oral cavity)がん、中咽頭がん、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓がん、膵島細胞がん、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺がん、直腸がん、腎盂及び尿管移行上皮がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、類上皮肉腫、滑膜肉腫、子宮がん、子宮肉腫、皮膚がん(非黒色腫)、皮膚がん(黒色腫)、メルケル細胞皮膚がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮がん、胃(stomach)(胃(gastric))がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫、胸腺腫及び胸腺がん、甲状腺がん、腎盂及び尿管ならびにその他の泌尿器の移行上皮がん、妊娠性絨毛腫瘍、尿道がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、子宮体がん、膣がん、外陰がん、またはウィルムス腫瘍である。
【0094】
別の実施形態において、組換え型融合タンパク質は、中枢神経系(CNS)細胞の増殖、分化、及び生存を促進する。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質は、がん/または腫瘍の成長を促進することなく中枢神経系(CNS)細胞の増殖、分化、及び生存を促進する。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する能力が低下している。
【0095】
いくつかの実施形態において、組換え型融合タンパク質は、組換え型NRG-1のシグナル伝達誘導能力と比較して、HER2/3シグナル伝達を上回ってHER2/4シグナル伝達を促進する。
【0096】
本発明の特定の実施形態において、組換え型融合タンパク質は、配列番号4のNRG-1 β2aアイソフォームに対しGGGGSGGGGS(G4S)リンカー(配列番号5)経由で当該抗体の重鎖のC末端と融合または作用可能に結合した抗HER3 mAbを含む。いくつかの実施形態において、リンカーの1つ以上のコピーを使用することができる。他の実施形態において、本明細書では、G4Sリンカーの2、3、4、または5コピー、または本明細書で開示されている組成物に適したものとして当技術分野で知られている他の任意のリンカーを使用することができる。
【0097】
「リンカー」という用語は、当技術分野で認識されており、2つの化合物(例えば、2つのポリペプチド)を接続する分子(限定されるものではないが、修飾されていないまたは修飾された核酸またはアミノ酸を含む)または分子の群(例えば2つ以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100またはそれ以上)を意味する。リンカーは、単一の結合分子から構成される場合もあれば、1つの結合分子と、結合分子及び化合物を特定の距離だけ隔てることを意図した少なくとも1つのスペーサー分子とを含む場合もある。
【0098】
核酸配列は、別の核酸配列との機能的関係に置かれているときに「作用可能に結合」している。例えば、核酸プレ配列または分泌リーダーは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現する場合、ポリペプチドをコードする核酸に対し作用可能に結合しており、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に提供を及ぼす場合、コード配列に対し作用可能に結合しており、あるいは、リボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように位置付けられている場合、コード配列に対し作用可能に結合している。概して、「作用可能に結合」とは、結合している核酸配列が連続していることを意味し、分泌リーダーの場合には、連続し、かつリーディングフレームにあることを意味する。ただし、エンハンサーは任意選択で連続している。結合は、例えば、好都合な制限部位でのライゲーションによって遂行することができる。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター、リンカー、または当技術分野で知られている他の方法を使用することができる。別の実施形態において、「作用可能に結合」とは、本明細書で説明されている抗体とNRG-1フラグメントとの、これもまた本明細書で説明されているリンカー配列経由の対形成におけるような、異なるアミノ酸配列、ペプチド、またはタンパク質の機能的な対形成も意味する。
【0099】
別の実施形態において、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質に含まれる抗HER3 mAb重鎖は、配列番号6によってコードされる。
ATGGAGTTTGGGCTGAGCTGGGTTTTCCTTGTTGCTATAATAAAAGGTGTCCAGTGTCAGGTGCAGCTGCAGCAGTGGGGAGCTGGACTGCTGAAGCCAAGCGAGACCCTGTCTCTGACATGCGCCGTGTACGGAGGATCCTTCAGCGGATACTATTGGTCTTGGATCAGGCAGCCACCTGGCAAGGGACTGGAGTGGATCGGCGAGATCAACCACTCTGGCTCCACCAACTACAATCCCTCTCTGAAGTCCCGGGTGACCATCTCCGTGGAGACAAGCAAGAATCAGTTTTCCCTGAAGCTGTCCAGCGTGACCGCCGCTGACACAGCCGTGTACTATTGCGCTAGGGACAAGTGGACCTGGTATTTCGATCTGTGGGGAAGGGGCACCCTGGTGACAGTGTCTTCCGCCTCTACAAAGGGCCCCTCCGTGTTTCCTCTGGCTCCAAGCTCTAAGAGCACCTCTGGAGGAACAGCCGCTCTGGGATGTCTGGTGAAGGATTACTTCCCTGAGCCAGTGACCGTGAGCTGGAACTCTGGCGCCCTGACCTCCGGAGTGCATACATTTCCCGCTGTGCTGCAGTCCAGCGGCCTGTATAGCCTGTCTTCCGTGGTGACCGTGCCTAGCTCTTCCCTGGGCACCCAGACATACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCTCCAATACAAAGGTGGACAAGAGAGTGGAGCCTAAGAGCTGTGATAAGACCCATACATGCCCACCATGTCCAGCTCCTGAGCTGCTGGGAGGACCTTCCGTGTTCCTGTTTCCTCCAAAGCCAAAGGACACCCTGATGATCTCTCGCACCCCTGAGGTGACATGCGTGGTGGTGGACGTGTCCCACGAGGATCCAGAGGTGAAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCTAAGACCAAGCCTAGGGAGGAGCAGTACAACAGCACCTATCGGGTGGTGTCTGTGCTGACAGTGCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTGAGCAATAAGGCCCTGCCAGCTCCCATCGAGAAGACCATCTCTAAGGCCAAGGGCCAGCCCAGAGAGCCTCAGGTGTATACACTGCCCCCTAGCCGCGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTGTCTCTGACATGTCTGGTGAAGGGCTTCTACCCATCTGACATCGCTGTGGAGTGGGAGTCCAATGGCCAGCCCGAGAACAATTATAAGACCACACCACCCGTGCTGGACTCCGATGGCAGCTTCTTTCTGTACTCCAAGCTGACCGTGGATAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGCAACGTGTTTTCCTGCAGCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAATCATTATACACAGAAATCTCTGTCCCTGAGCCCAGGCAAGGGAGGAGGAGGAAGCGGAGGAGGAGGCAGCTCTCATCTGGTGAAGTGTGCTGAGAAGGAGAAGACCTTCTGCGTGAACGGCGGCGAGTGTTTTATGGTGAAGGACCTGTCTAATCCATCCAGATACCTGTGCAAGTGTCCCAACGAGTTCACAGGCGATCGCTGCCAGAATTACGTGATGGCCTCTTTTTATAAGGCTGAGGAGCTGTACCAGTAA(配列番号6)1つの実施形態において、配列番号6に記載の配列はFc変異を含まない。1つの実施形態において、配列番号6は「NPCF」とも呼ばれる。
【0100】
1つの実施形態において、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質は、抗HER3 mAbの重鎖を含む。別の実施形態において、抗HER3 mAb重鎖は配列番号7によってコードされる。
ATGGAGTTTGGGCTGAGCTGGGTTTTCCTTGTTGCTATAATAAAAGGTGTCCAGTGTCAGGTGCAGCTGCAGCAGTGGGGAGCTGGACTGCTGAAGCCAAGCGAGACCCTGTCTCTGACATGCGCCGTGTACGGAGGATCCTTCAGCGGATACTATTGGTCTTGGATCAGGCAGCCACCTGGCAAGGGACTGGAGTGGATCGGCGAGATCAACCACTCTGGCTCCACCAACTACAATCCCTCTCTGAAGTCCCGGGTGACCATCTCCGTGGAGACAAGCAAGAATCAGTTTTCCCTGAAGCTGTCCAGCGTGACCGCCGCTGACACAGCCGTGTACTATTGCGCTAGGGACAAGTGGACCTGGTATTTCGATCTGTGGGGAAGGGGCACCCTGGTGACAGTGTCTTCCGCCTCTACAAAGGGCCCCTCCGTGTTTCCTCTGGCTCCAAGCTCTAAGAGCACCTCTGGAGGAACAGCCGCTCTGGGATGTCTGGTGAAGGATTACTTCCCTGAGCCAGTGACCGTGAGCTGGAACTCTGGCGCCCTGACCTCTGGAGTGCATACATTTCCCGCTGTGCTGCAGTCCAGCGGCCTGTATAGCCTGTCTTCCGTGGTGACCGTGCCTAGCTCTTCCCTGGGCACCCAGACATACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCTCCAATACAAAGGTGGACAAGAGAGTGGAGCCTAAGAGCTGTGATAAGACCCATACATGCCCACCATGTCCAGCTCCTGAGTTCCTGGGAGGACCTGCCGTGTTCCTGTTTCCTCCAAAGCCAAAGGACACCCTGATGATCTCTCGCACCCCTGAGGTGACATGCGTGGTGGTGGACGTGTCCCACGAGGATCCAGAGGTGAAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCTAAGACCAAGCCTAGGGAGGAGCAGTACAACAGCACCTATCGGGTGGTGTCTGTGCTGACAGTGCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTGAGCAATAAGGCCCTGCCAGCTCCCATCGAGAAGACCATCTCTAAGGCCAAGGGCCAGCCCAGAGAGCCTCAGGTGTATACACTGCCCCCTAGCCGCGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTGTCTCTGACCTGTCTGGTGAAGGGCTTCTACCCATCTGACATCGCTGTGGAGTGGGAGTCCAATGGCCAGCCCGAGAACAATTATAAGACCACACCACCCGTGCTGGACTCCGATGGCAGCTTCTTTCTGTACTCCAAGCTGACCGTGGATAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGCAACGTGTTTTCCTGCAGCGTGATGCACGAGGCCCTGCACGCTCATTATACACAGAAATCTCTGTCCCTGAGCCCAGGCAAGGGAGGAGGAGGAAGCGGAGGAGGAGGCAGCTCTCATCTGGTGAAGTGTGCTGAGAAGGAGAAGACCTTCTGCGTGAACGGCGGCGAGTGTTTTATGGTGAAGGACCTGTCTAATCCATCCAGATACCTGTGCAAGTGTCCCAACGAGTTCACAGGCGATCGCTGCCAGAATTACGTGATGGCCTCTTTTTATAAGGCTGAGGAGCTGTACCAGTAA(配列番号7)1つの実施形態において、配列番号7は「NPCFA」とも呼ばれる。1つの実施形態において、配列番号7は、本明細書で提供される抗HER3 mAbの定常(Fc)領域内の1つ以上の変異をコードする1つ以上の変異を含む。1つの実施形態において、本発明の成熟した抗HER3抗体は、アミノ酸234、239、434における少なくとも1つの変異、またはこれらの組合せを含む。別の実施形態において、アミノ酸変異は、以下の置換変異:L234F、S239A、N434Aのうちの少なくとも1つ、またはこれらの組合せを含む。
【0101】
1つの実施形態において、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質は、抗HER3 mAbの軽鎖配列を含む。別の実施形態において、軽鎖配列は(配列番号8)によってコードされる。
ATGGTGTTGCAGACCCAGGTCTTCATTTCTCTGTTGCTCTGGATCTCTGGTGCCTACGGGGACATCGAGATGACCCAGTCTCCAGATTCCCTGGCCGTGAGCCTGGGAGAGAGGGCTACAATCAACTGCCGGTCCAGCCAGTCTGTGCTGTACTCTTCCAGCAACAGGAATTACCTGGCCTGGTATCAGCAGAATCCCGGCCAGCCCCCTAAGCTGCTGATCTATTGGGCTAGCACCAGAGAGTCTGGAGTGCCTGACCGCTTCTCTGGATCCGGAAGCGGCACAGACTTCACCCTGACAATCTCTTCCCTGCAGGCCGAGGACGTGGCCGTGTACTATTGCCAGCAGTATTACTCTACCCCTAGGACATTCGGCCAGGGCACCAAGGTGGAGATCAAGCGGACAGTGGCCGCTCCATCCGTGTTCATCTTTCCACCCTCCGACGAGCAGCTGAAGTCCGGAACCGCTAGCGTGGTGTGCCTGCTGAACAACTTCTACCCAAGAGAGGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGATAACGCTCTGCAGAGCGGCAATTCTCAGGAGTCCGTGACCGAGCAGGACAGCAAGGATTCTACATATTCCCTGAGCTCTACCCTGACACTGTCCAAGGCCGATTACGAGAAGCACAAGGTGTATGCTTGCGAGGTGACCCATCAGGGCCTGTCCAGCCCCGTGACAAAGAGCTTCAACCGCGGCGAGTGTTAA(配列番号8)1つの実施形態において、配列番号8は「PAL」とも呼ばれる。
【0102】
1つの実施形態において、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質に含まれる抗HER3抗体の重鎖は、以下のアミノ酸配列を含む。
【0103】
MEFGLSWVFLVAIIKGVQCQVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVYGGSFSGYYWSWIRQPPGKGLEWIGEINHSGSTNYNPSLKSRVTISVETSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARDKWTWYFDLWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSSHLVKCAEKEKTFCVNGGECFMVKDLSNPSRYLCKCPNEFTGDRCQNYVMASFYKAEELYQ(配列番号9)
【0104】
1つの実施形態において、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質に含まれる抗HER3抗体の重鎖は、以下のアミノ酸配列を含む。
MEFGLSWVFLVAIIKGVQCQVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVYGGSFSGYYWSWIRQPPGKGLEWIGEINHSGSTNYNPSLKSRVTISVETSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARDKWTWYFDLWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEFLGGPAVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHAHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSSHLVKCAEKEKTFCVNGGECFMVKDLSNPSRYLCKCPNEFTGDRCQNYVMASFYKAEELYQ(配列番号10)
【0105】
1つの実施形態において、抗HER3 mAb重鎖配列は、シグナルペプチド配列を含む。別の実施形態において、抗HER3 mAb重鎖シグナルペプチド配列は、MEFGLSWVFLVAIIKGVQC(配列番号11)のアミノ酸配列を含む。
【0106】
1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質に含まれる抗HER3抗体軽鎖は、以下のアミノ酸配列を含む。
【0107】
MVLQTQVFISLLLWISGAYGDIEMTQSPDSLAVSLGERATINCRSSQSVLYSSSNRNYLAWYQQNPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)
【0108】
1つの実施形態において、抗HER3 mAb軽鎖配列は、シグナルペプチド配列を含む。別の実施形態において、抗HER3 mAb軽鎖シグナルペプチド配列は、MVLQTQVFISLLLWISGAYG(配列番号13)のアミノ酸配列を含む。1つの実施形態において、本明細書で開示されている抗体重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のような成熟したポリペプチドは、シグナルペプチドが欠如している。
【0109】
1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列を含む。
【0110】
重鎖
【化1】
(配列番号14;配列中、太字のイタリック体はリンカーを示し、太字はNRG-1フラグメントを示す)
軽鎖
DIEMTQSPDSLAVSLGERATINCRSSQSVLYSSSNRNYLAWYQQNPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号3)
【0111】
1つの実施形態において、成熟した組換え型融合タンパク質における重鎖配列及び軽鎖配列の各々は、シグナルペプチドのアミノ酸配列が欠如している。
【0112】
本発明の特定の実施形態において、本明細書で提供される抗HER3抗体の重鎖は、C末端リンカー配列経由で、本明細書で提供されるNRG-1 β2aアイソフォームと融合している。別の実施形態において、抗体の重鎖のC末端は、抗体のFcドメインを含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、医薬担体と共に製剤化された本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物が提供される。
【0114】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明されている抗HER3抗体及びNRG-1フラグメントは、リンカー経由で組換え的または化学的に融合して/作用可能に結合して、融合タンパク質を形成する。「融合タンパク質」、「融合ポリペプチド」、「組換え型融合タンパク質」、または「組換え型ポリペプチド」とは、少なくとも2つの異なるポリペプチドからのポリペプチド部分を含むハイブリッドポリペプチドを意味する。本明細書で定義される「融合タンパク質」とは、例えば本発明のNRG-1 β2aアイソフォームを含む第1のアミノ酸配列(タンパク質)が、ERBB3(HER3)に特異的に結合する抗体の重鎖を含む第2のアミノ酸配列のC末端と、リンカー経由で連結した融合物である。
【0115】
1つの実施形態において、融合タンパク質は組換え的にコードされ産生される。いくつかの実施形態において、組換え型融合タンパク質は、本発明のNRG-1 β2aアイソフォームをコードする核酸配列と、リンカーをコードする核酸配列経由で作用可能に連結している、本発明の抗体をコードする核酸配列によってコードされる。
【0116】
1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号3と融合した配列番号14と相同である。「相同性」という用語は、組換え型融合タンパク質の配列に対する(例えば、配列番号1~18のいずれかに対する)70%より大きい同一性を意味し得る。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する72%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する75%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する78%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する80%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する82%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する83%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する85%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する87%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する88%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する90%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する92%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する93%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する95%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する96%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する97%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する98%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する99%より大きい同一性を意味する。別の実施形態において、「相同性」とは、配列番号1~18のいずれかに対する100%の同一性を意味する。
【0117】
2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて遂行することができる。2つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268(Karlin and Altschul,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877で修正)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403-410のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム(score=100、wordlength=12)で実施して、目的タンパク質をコードする核酸に相同のヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム(score=50、wordlength=3)で実施して、目的タンパク質に相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップありアラインメントを得るには、Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402で説明されているようなギャップありBLASTを利用することができる。代替的にPSI-Blastは、分子間の遠い関係を検出する反復検索を実施するために使用することができる(同上)。BLAST、ギャップありBLAST、及びPSI-BLASTプログラムを利用する際は、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる。配列比較に利用される数学的アルゴリズムのもう1つの非限定的な例は、Myers and Miller,CABIOS(1989)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれる。アミノ酸配列の比較でALIGNプログラムを利用する際は、PAM120加重残基表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティー12、及びギャップペナルティー4を使用することができる。配列解析におけるさらなるアルゴリズムは当技術分野で知られており、Torellis and Robotti,1994,Comput.Appl.Biosci.10:3-5で説明されているADVANCE及びADAM、ならびにPearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444-8で説明されているFASTAがこれに含まれる。FASTA内では、ktupが検索の感度及び速度を設定する制御オプションとなる。ktup=2の場合、アラインメントされた残基の対を参照することにより、比較された2つの配列内の類似の領域が見つかり、ktup=1の場合、単一のアラインメントされたアミノ酸が検証される。ktupは、タンパク質配列の場合は2または1に設定し、DNA配列の場合は1~6に設定する。ktupが指定されない場合のデフォルト値は、タンパク質の場合は2で、DNAの場合は6である。代替的に、タンパク質配列アラインメントはCLUSTAL Wアルゴリズムを用いて行ってもよく、当該アルゴリズムについては、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383-402で説明されている。
【0118】
いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、当業者に知られている手順及び方法を用いたPCR技法を用いて調製される。いくつかの実施形態において、この手順は、2つの異なるDNA配列のライゲーションを伴う(例えば、“Current Protocols in Molecular Biology”,eds.Ausubel et al.,John Wiley & Sons,1992を参照)。
【0119】
1つの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドを発現ベクター(すなわち、核酸コンストラクト)内に挿入して組換え型ポリペプチドの発現を可能にする。1つの実施形態において、本発明の発現ベクターは、このベクターを原核生物内での複製及び組込みに適したものとするさらなる配列を含む。1つの実施形態において、本発明の発現ベクターは、このベクターを真核生物内での複製及び組込みに適したものとするさらなる配列を含む。1つの実施形態において、本発明の発現ベクターは、このベクターを原核生物内でも真核生物内でも複製及び組込みに適したものとするシャトルベクターを含む。いくつかの実施形態において、クローニングベクターは、転写配列及び翻訳開始配列(例えば、プロモーター、エンハンサー)ならびに転写終結因子及び翻訳終結因子(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。
【0120】
1つの実施形態において、本発明のポリペプチドを発現させるための宿主発現系として、様々な原核細胞及び真核細胞を使用することができる。いくつかの実施形態において、このような細胞としては、限定されるものではないが、微生物、例えば、ポリペプチドコード配列を含む組換え型バクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換した細菌や、ポリペプチドコード配列を含む組換え型酵母発現ベクターを用いて形質転換した酵母が挙げられる。
【0121】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドを発現させるために非細菌発現系(例えば、CHO細胞などの哺乳類発現系)が使用される。1つの実施形態において、哺乳類細胞内で本発明のポリヌクレオチドを発現させるために使用される発現ベクターは、CMVプロモーターとネオマイシン耐性遺伝子とを含むpCI-DHFRベクターである。
【0122】
いくつかの実施形態において、本発明の細菌システムでは、発現させるポリペプチドについて意図された使用に応じて、複数の発現ベクターを有利に選択することができる。1つの実施形態において、大量のポリペプチドが所望される。1つの実施形態において、場合によっては、細菌のペリプラズム内またはタンパク質が容易に精製される培地内に発現産物を導く疎水性シグナル配列を有する融合物として、高レベルのタンパク質産物の発現を導くベクターが所望される。1つの実施形態において、ある特定の融合タンパク質は、ポリペプチドの回収を補助する特定の切断部位で操作される。1つの実施形態において、このような操作に適応可能なベクターとしては、限定されるものではないが、pET系列のE.coli発現ベクターが挙げられる[Studier et al.,Methods in Enzymol.185:60-89(1990)]。
【0123】
1つの実施形態において、酵母発現系が使用される。1つの実施形態において、米国特許第5,932,447号で開示されているように、酵母内で構成的または誘導的プロモーターを含む複数のベクターを使用することができる。別の実施形態において、外来DNA配列を酵母染色体内に組み込むのを促進するベクターが使用される。
【0124】
1つの実施形態において、本発明の発現ベクターはさらに、例えば、単一のmRNAからの複数のタンパク質の翻訳を可能にするさらなるポリヌクレオチド配列、例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)及びプロモーター-キメラ型ポリペプチドのゲノム統合のための配列を含むことができる。
【0125】
いくつかの実施形態において、本発明の発現ベクターは、本発明の組換え型融合タンパク質の発現を増加させるエレメントを含む。このような特徴としては、限定されるものではないが、プロモーター及びポリアデニル化の選択が挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリアデニル化配列は、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化配列である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、構成的活性プロモーターを含む。いくつかの実施形態において、サイトメガロウイルスプロモーター(pCMV)を含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、哺乳類発現ベクターとしては、限定されるものではないが、pcDNA3、pcDNA3.1(+/-)、pGL3、pZeoSV2(+/-)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81(Invitrogenから入手可能)、pCI(Promegaから入手可能)、pMbac、pPbac、pBK-RSV、及びpBK-CMV(Strategeneから入手可能)、pTRES(Clontechから入手可能)、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態において、レトロウイルスなどの真核生物ウイルスからの調節エレメントを含む発現ベクターが本発明で使用される。SV40ベクターとしては、pSVT7及びpMT2が挙げられる。いくつかの実施形態において、ウシパピローマウイルスに由来するベクターとしてはpBV-1MTHAが挙げられ、エプスタイン・バーウイルスに由来するベクターとしてはpHEBO及びp205が挙げられる。その他の例示的なベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、およびSV-40初期プロモーター、SV-40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳がんウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核細胞内での有効な発現が示されたその他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現を可能とする、その他の任意のベクターが挙げられる。
【0128】
いくつかの実施形態において、組換え型ウイルスベクターは、側方感染及び標的化特異性などの利点をもたらすため、本発明のポリペプチドのin vivo発現に有用である。1つの実施形態において、側方感染は、例えばレトロウイルスの生活環に固有のものであり、単一の感染細胞が多くの後代ビリオンを産生し、後代ビリオンが出芽し隣接細胞に感染するプロセスである。1つの実施形態において、当初大部分が元のウイルス粒子に感染していなかった広い領域が急速に感染するという結果になる。1つの実施形態において、側方に拡散することができないウイルスベクターが産生される。1つの実施形態において、所望の目的が指定された遺伝子を局在的な数の標的細胞のみに導入することである場合、この特性は有用であり得る。
【0129】
1つの実施形態において、本発明の組換え型融合タンパク質をコードする発現ベクターを細胞内に導入するために、様々な方法が使用され得る。このような方法については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(1989,1992);Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1989);Chang et al.,Somatic Gene Therapy,CRC Press,Ann Arbor,Mich.(1995);Vega et al.,Gene Targeting,CRC Press,Ann Arbor Mich.(1995);Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths,Boston Mass.(1988);及びGilboa et at.[Biotechniques 4(6):504-512,1986]で一般的に説明されており、このような方法としては、例えば、安定したまたは一過性の形質移入、リポフェクション、エレクトロポレーション、及び組換え型ウイルスベクターによる感染が挙げられる。加えて、ポジティブ-ネガティブ選択法については米国特許第5,464,764号及び第5,487,992号も参照。
【0130】
いくつかの実施形態において、ウイルス感染による核酸の導入は、ウイルスの感染性ゆえにより高い形質移入効率が得られるため、リポフェクション及びエレクトロポレーションなどの他の方法よりも優れたいくつかの利点をもたらす。
【0131】
1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、上記で説明された任意の好適な投与様式を用いて個体に投与される核酸コンストラクトから発現させてもよいことが理解されよう(すなわち、in vivo遺伝子療法)。1つの実施形態において、適切な遺伝子送達ビヒクル/方法(形質移入、形質導入、相同組換えなど)や必要に応じて発現系を介して核酸コンストラクトを好適な細胞内に導入し、次に、修飾された細胞を培養液中で増やし、個体に戻す(すなわち、ex vivo遺伝子療法)。
【0132】
本発明の発現コンストラクトは、(ポリペプチドをコードする)挿入されたコード配列の転写及び翻訳に必要なエレメントを含む他に、発現するポリペプチドの安定性、産生、精製、収率、または活性を最適化するように操作された配列を含んでもよいということが理解されよう。
【0133】
いくつかの実施形態において、形質転換した細胞を有効な条件下で培養し、これにより、組換え型融合タンパク質またはポリペプチドを大量に発現させることが可能になる。いくつかの実施形態において、有効な培養条件としては、限定されるものではないが、タンパク質産生を可能にする有効な培地、バイオリアクター、温度、pH、及び酸素条件が挙げられる。1つの実施形態において、有効な培地とは、本発明の組換え型ポリペプチドを産生するように細胞が培養される任意の培地を意味する。いくつかの実施形態において、培地は、典型的には、同化可能な炭素、窒素、及びリン酸の供給源、適切な塩、ミネラル、金属、ならびにその他の栄養素(例えば、ビタミン)を有する水性溶液を含む。いくつかの実施形態において、本発明の細胞は、従来的な発酵バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュ、及びペトリ皿で培養することができる。いくつかの実施形態において、培養は、組換え型細胞に適切な温度、pH、及び酸素含有率で行われる。いくつかの実施形態において、培養条件は、当業者の専門的技能の範囲内である。
【0134】
いくつかの実施形態において、産生に使用したベクター及び宿主系に応じて、得られた本発明のポリペプチドは、組換え型細胞内にとどまるか、発酵培地内に分泌されるか、2つの細胞膜の間の間隙(例えば、E.coliのペリプラズム間隙)内に分泌されるか、または細胞またはウイルスの膜の外表面上で保持される。
【0135】
1つの実施形態において、培養液中で所定の時間が経過した後、組換え型ポリペプチドの回収が行われる。
【0136】
1つの実施形態において、本明細書で使用する場合、「組換え型ポリペプチドの回収」という表現は、ポリペプチドを含む全発酵培地を回収することを意味し、分離または精製のさらなるステップを含意する必要はない。
【0137】
1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、例えば、限定されるものではないが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィーゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、及び差次的可溶化などの様々な標準的なタンパク質精製技法を用いて精製される。
【0138】
1つの実施形態において、回収を推進するため、発現したコード配列を、本発明のポリペプチド及び融合した切断可能部分をコードするように操作することができる。1つの実施形態において、アフィニティークロマトグラフィーにより、例えば、切断可能部分に特異的なカラム上に固定することにより、ポリペプチドを容易に単離することができるように融合タンパク質を設計することができる。1つの実施形態において、ポリペプチドと切断可能部分との間で切断部位を操作し、この部位で融合タンパク質を特異的に切断する適切な酵素または薬剤で処置することにより、クロマトグラフィーカラムからポリペプチドを放出することができる[例えば、Booth et al.,Immunol.Lett.19:65-70(1988);及びGardella et al.,J.Biol.Chem.265:15854-15859(1990)を参照]。
【0139】
1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、「実質的に純粋」な形態で回収される。
【0140】
1つの実施形態において、「実質的に純粋」という表現は、本明細書で説明されている用途でタンパク質を有効に使用することが可能な純度を意味する。
【0141】
1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、in vitro発現系を用いて合成することもできる。1つの実施形態において、in vitro合成法は当技術分野で周知されており、当該発現系の構成要素は市販されている。
【0142】
いくつかの実施形態において、組換え型ポリペプチドは合成及び精製され、その治療有効性はin vivoでもin vitroでもアッセイすることができる。
【0143】
1つの実施形態において、本発明の組換え型融合タンパク質を含む本明細書で提供される医薬組成物はさらに、医薬担体と共に製剤化される。本明細書で使用する場合、「医薬担体」には、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、及び生理的に適合性のものが含まれる。好ましくは、担体は、(例えば、注射または点滴による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または表皮投与に適している。
【0144】
治療方法
1つの実施形態において、本発明は、その必要のある対象における疾患または状態を治療する方法であって、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0145】
1つの実施形態において、本発明は、その必要のある対象における心血管の疾患または状態を治療する方法であって、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0146】
1つの実施形態において、本発明は、対象における心血管の疾患または状態の発症を防止、阻害、抑制、または遅延する方法であって、本明細書で説明されている組換え型融合タンパク質または医薬組成物の有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0147】
いくつかの実施形態において、心血管疾患は、慢性心不全/うっ血性心不全(CHF)、急性心不全/心筋梗塞(MI)、左室収縮機能障害、MIに関連する再灌流傷害、化学療法誘導性心毒性(成人性または小児性)、放射線誘発性心毒性、小児先天性心疾患における外科的介入に対する付属要素を含む。
【0148】
いくつかの実施形態において、化学療法誘導性心毒性は、化学療法として使用されるアントラサイクリン、アルキル化剤、微小管阻害剤、及び代謝拮抗物質の投与を受ける対象から生じる。
【0149】
いくつかの実施形態において、心血管状態は、対象ががん療法を受けることの結果としての心毒性である。他の実施形態において、がん療法はHER-2標的療法である。他の実施形態において、HER-2標的療法は、トラスツズマブ、アドトラスツズマブ、エムタンシン、ラパチニブ、ネラチニブ、及びペルツズマブ、任意の抗HER2抗体、任意の抗HER2薬剤、またはこれらの組合せの使用を含む。
【0150】
別の態様において、本発明は、筋細胞サルコメア及び細胞骨格構造のリモデリング、または細胞間接着を誘導する方法であって、細胞を本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質で治療することを含む、方法に関する。
【0151】
1つの実施形態において、治療方法は、哺乳類における心筋細胞間接着の解離及び/またはサルコメア構造の混乱から生じる心不全の治療を対象とする。
【0152】
別の態様において、本発明は、ヒトにおける駆出率保持性心不全を防止、治療、または遅延するための方法であって、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0153】
本明細書で使用する場合、「駆出率」という用語は、左室が収縮ごとに送り出す血液量についての、典型的にはパーセンテージで表現される測定値である駆出率(EF)を意味する。例えば、駆出率50パーセントとは、心拍ごとに左室内の総血液量の50パーセントが押し出されることを意味する。
【0154】
本発明は、心疾患及び関連の状態(例えば、心不全)を有するまたはそのリスクがある対象を治療する方法を対象とする。
【0155】
「心不全」という用語は、心臓が組織代謝の要件に必要とされる率で血液を送り出さない心機能の異常を意味する。心不全は、うっ血性心不全、心筋梗塞、頻拍性不整脈、家族性肥大型心筋症、虚血性心疾患、特発性拡張型心筋症、及び心筋炎などの広い範囲の疾患状態を含む。心不全は、虚血性、リウマチ性、または特発性形態を含めたあらゆる因子によって引き起こされ得る。慢性心肥大とは、うっ血性心不全及び心停止の前兆となる顕著に病的な状態である。
【0156】
1つの実施形態において、「治療」とは、療法的治療及び予防的または防止的措置のいずれも意味し、ここでの目的は、心肥大を防止または遅らせる(軽減する)ことである。治療が必要な者には、障害を既に有する者に加えて、障害を有する傾向にある者または障害を防止する必要のある者が含まれる。心肥大は、先天性、ウイルス性、特発性、心臓栄養性(cardiotrophic)、または筋栄養性(myotrophic)の原因を含めたレチノイン酸に応答する任意の原因によって生じる場合もあれば、虚血または心筋梗塞などの虚血性発作の結果として生じる場合もある。典型的には、治療は、特に心臓損傷(例えば、虚血による損傷)の発生後は、肥大の進行を停止するまたは遅らせるように実施される。好ましくは、心筋梗塞の治療において、本明細書で提供される医薬組成物は、肥大を防止または軽減するために心筋梗塞の直後に投与される。
【0157】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物で対象を治療することにより、治療される対象集団は、本開示の化合物ではない薬物、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、類似体、もしくは誘導体による単剤療法が投与される集団と比較して、平均生存時間が増加し得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、治療モダリティー、方法、組合せ、及び組成物を用いた治療の後、平均生存時間は30日超増加し、より好ましくは60日超、より好ましくは、90、120、365日超、より好ましくは365日超増加する。集団の平均生存時間の増加は、任意の再現可能な手段によって測定することができる。集団の平均生存時間の増加は、例えば、集団に対し、活性化合物による治療を開始した後の平均生存期間を計算することによって測定することができる。また、集団の平均生存時間の増加は、例えば、集団に対し、本明細書で開示されている医薬組成物による治療の第1ラウンドを完了した後の平均生存期間を計算することによって測定することができる。
【0158】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物で対象を治療することにより、治療される対象集団は、担体のみが投与される集団と比較して、死亡率が減少し得る。がんを治療することにより、治療される対象集団は、治療されない集団と比較して、死亡率が減少し得る。がんを治療することにより、治療される対象集団は、本開示の化合物ではない薬物、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、類似体、もしくは誘導体による単剤療法が投与される集団と比較して、死亡率が減少し得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、治療モダリティー、方法、組合せ、及び組成物を用いた治療の後、死亡率は2%超減少し、より好ましくは5%超、より好ましくは10%超、最も好ましくは25%超減少する。治療される対象集団の死亡率の減少は、任意の再現可能な手段によって測定することができる。集団の死亡率の減少は、例えば、集団に対し、活性化合物による治療を開始した後の単位時間当たりの疾患関連死平均件数を計算することによって測定することができる。また、集団の死亡率の減少は、例えば、集団に対し、本明細書で開示されている医薬組成物による治療の第1ラウンドを完了した後の単位時間当たりの疾患関連死平均件数を計算することによって測定することができる。
【0159】
1つの実施形態において、本発明は、その必要のある対象における中枢神経系(CNS)関連の疾患または状態を治療する方法であって、本明細書で説明されている組換え型融合タンパク質または医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0160】
1つの実施形態において、本発明は、対象におけるCNS関連の疾患または状態の発症を防止、阻害、抑制、または遅延する方法であって、本明細書で説明されている組換え型融合タンパク質または医薬組成物の有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0161】
いくつかの実施形態において、CNS関連の疾患または状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ベル麻痺、てんかん及び発作、ギラン・バレー症候群、卒中、外傷性脳損傷、多発性硬化症、または組合せである。
【0162】
投与、投薬
本発明の組成物は、その必要のある対象に非経口投与することができ、または当技術分野で知られている様々な方法によって投与することができる。当業者が理解するであろうように、投与の経路及び/または様式は、所望の結果に応じて変化する。本発明の化合物をある特定の投与経路によって投与するには、化合物をその不活性化を防止するための物質でコーティングするか、または化合物をその物質と共に同時投与することが必要になる場合がある。例えば、化合物は、適切な担体中で、例えば、リポソーム中または希釈剤中で対象に投与され得る。医薬的に許容される希釈剤としては、食塩水及び水性緩衝溶液が挙げられる。医薬担体としては、無菌水溶液または分散液、及び無菌注射溶液または分散液を即時調製するための無菌散剤が挙げられる。医薬活性物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は当技術分野で周知されている。
【0163】
典型的な実施形態において、対象への投与用の調製物は、無菌の水性または非水性の溶液、懸濁液、及び乳濁液を含む。いくつかの実施形態は、非水性溶媒、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)、及びその他の当業者に知られている溶媒を含む。生理的に許容される担体(または賦形剤)は、本発明のある特定の実施形態において任意選択で使用される。このようなものの例としては、例えば、食塩水、PBS、リンゲル液、乳酸リンゲル液などが挙げられる。さらに、安定性及び無菌性の確保の一助とするために任意選択で防腐剤及び添加物が添加される。例えば、抗生剤及びその他の殺細菌剤、抗酸化剤、キレート剤などは全て、任意選択で、本明細書の組成物の様々な実施形態に存在する。
【0164】
本明細書で使用する場合、「非経口投与」及び「非経口投与する」という表現は、経腸及び局所投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、これには、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び点滴が含まれる。
【0165】
選択された投与経路にかかわらず、好適な水和性形態で使用してもよい本発明の化合物、及び/または本発明の医薬組成物は、当業者に知られている従来的な方法により、医薬的に許容される剤形に製剤化される。
【0166】
組換え型融合タンパク質、または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、任意選択で、任意の適切な無菌の医薬担体中で(療法的または予防的な)治療を必要とする対象に投与される。このような医薬担体は、融合タンパク質の溶解性及び作用を維持するように働く。いくつかの実施形態において、融合タンパク質と共にさらなる構成要素を投与することが所望される場合がある。例えば、いくつかの治療レジームにおいて、化学療法剤、抗生剤、本発明の組換え型融合タンパク質を含むさらなる製剤、及び1つ以上の標準治療剤などは全て、任意選択で、本発明の組成物と共に含められる。
【0167】
本明細書で使用する場合、「組合せ治療」、「組合せ療法」、及び「併用療法」という用語は、互換的に使用され、概して、本明細書で提供される組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物と、さらなる治療剤とを特色とする治療モダリティーを意味する。典型的には、組合せ治療モダリティーは、治療剤の組合せによる同時発生的作用から有益な効果をもたらすように意図された特定の治療レジメンの一部である。組合せの有益な効果としては、限定されるものではないが、治療剤の組合せから生じる薬物動態的共働または薬力学的共働を挙げることができる。組合せによるこれらの治療剤の投与は、典型的には、規定の時間期間にわたって(通常は、選択された組合せに応じて分、時間、日、または週単位で)行われる。いくつかの実施形態において、組合せ治療は、各治療剤が異なる時間に投与される2つ以上の治療剤の順次投与と、これらの治療剤の、またはこれらのうち少なくとも2つの治療剤の実質的な同時投与とを含む。実質的な同時投与は、例えば、固定された比率の各治療剤を有する単一の剤形を対象に投与するか、または治療剤を複数の別々の剤形で投与することによって遂行することができる。各治療剤の順次または実質的な同時投与は、限定されるものではないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を介した直接吸収を含めた、任意の適切な経路によってもたらされ得る。治療剤は、同じ経路または異なる経路によって投与することができる。治療剤は、同じまたは異なる投与間隔に従って投与することができる。例えば、組合せのうちの第1の治療剤は静脈内注射によって投与し、組合せのうちの他の治療剤は経口投与することができる。代替的に、例えば、全ての治療剤を経口投与してもよく、全ての治療剤を静脈内注射によって投与してもよい。
【0168】
いくつかの実施形態において、組合せ療法は、他の生物学的活性成分及び非薬物療法(例えば、手術または放射線治療)とさらに組み合わせた上記の治療剤の投与も包含する。組合せ療法がさらに非薬物治療を含む場合、非薬物治療は、治療剤と非薬物治療との組合せの共働から有益な効果が達成される限りにおいて、任意の好適な時間に行うことができる。例えば、適切な場合には、非薬物治療が治療剤の投与から一時的に除去されても(場合によっては数日単位で、あるいは数週間単位であっても)、有益な効果は依然達成される。
【0169】
いくつかの実施形態において、さらなる治療剤は、化学療法剤(抗新生物剤もしくは抗増殖剤とも呼ばれる)、例えば、アルキル化剤;抗生剤:抗代謝剤;解毒剤:インターフェロン;ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体;EGFR阻害剤;HER2阻害剤;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;ホルモン;有糸分裂阻害剤;MTOR阻害剤;多標的キナーゼ阻害剤;セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤;VEGF/VEGFR阻害剤;タキサンもしくはタキサン誘導体、アロマターゼ阻害剤、アントラサイクリン、微小管標的薬、トポイソメラーゼ毒薬、分子標的もしくは酵素(例えば、キナーゼもしくはタンパク質メチルトランスフェラーゼ)の阻害剤、シチジン類似体薬もしくは任意の化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤、白金ベース抗新生物剤、CDK阻害剤、PARP阻害剤、または当業者に知られている任意の抗新生物剤もしくは抗増殖剤である。
【0170】
本明細書で提供される組合せ治療モダリティーに従う使用に適した例示的なアルキル化剤としては、限定されるものではないが、シクロホスファミド(Cytoxan;Neosar);クロラムブシル(Leukeran);メルファラン(Alkeran);カルムスチン(BiCNU);ブスルファン(Busulfex);ロムスチン(CeeNU);ダカルバジン(DTIC-Dome);オキサリプラチン(Eloxatin);カルムスチン(Gliadel);イホスファミド(Ifex);メクロレタミン(Mustargen);ブスルファン(Myleran);カルボプラチン(Paraplatin);シスプラチン(CDDP;Platinol);テモゾロミド(Temodar);チオテパ(Thioplex);ベンダムスチン(Treanda);またはストレプトゾシン(Zanosar)が挙げられる。
【0171】
例示的な好適なアントラサイクリンとしては、限定されるものではないが、ドキソルビシン(アドリアマイシン);ドキソルビシンリポソーム(Doxil);ミトキサントロン(Novantrone);ブレオマイシン(Blenoxane);ダウノルビシン(Cerubidine);ダウノルビシンリポソーム(DaunoXome);ダクチノマイシン(Cosmegen);エピルビシン(Ellence);イダルビシン(Idamycin);プリカマイシン(Mithracin);ミトマイシン(Mutamycin);ペントスタチン(Nipent);またはバルルビシン(Valstar)が挙げられる。
【0172】
例示的な抗代謝剤としては、限定されるものではないが、フルオロウラシル(Adrucil);カペシタビン(Xeloda);ヒドロキシウレア(Hydrea);メルカプトプリン(Purinethol);ペメトレキセド(Alimta);フルダラビン(Fludara);ネララビン(Arranon);クラドリビン(Cladribine Novaplus);クロファラビン(Clolar);シタラビン(Cytosar-U);デシタビン(Dacogen);シタラビンリポソーム(DepoCyt);ヒドロキシウレア(Droxia);プララトレキサート(Folotyn);フロクスウリジン(FUDR);ゲムシタビン(Gemzar);クラドリビン(Leustatin);フルダラビン(Oforta);メトトレキサート(MTX;Rheumatrex);メトトレキサート(Trexall);チオグアニン(Tabloid);TS-1またはシタラビン(Tarabine PFS)が挙げられる。
【0173】
例示的な解毒剤としては、限定されるものではないが、アミホスチン(Ethyol)またはメスナ(Mesnex)が挙げられる。
【0174】
例示的なインターフェロンとしては、限定されるものではないが、インターフェロンアルファ-2b(Intron A)またはインターフェロンアルファ-2a(Roferon-A)が挙げられる。
【0175】
例示的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体としては、限定されるものではないが、トラスツズマブ(Herceptin);オファツムマブ(Arzerra);ベバシズマブ(Avastin);リツキシマブ(Rituxan);セツキシマブ(Erbitux);パニツムマブ(Vectibix);トシツモマブ/ヨウ素-131トシツモマブ(Bexxar);アレムツズマブ(Campath);イブリツモマブ(Zevalin;In-111;Y-90 Zevalin);ゲムツズマブ(Mylotarg);エクリズマブ(Soliris)またはデノスマブが挙げられる。
【0176】
例示的なEGFR阻害剤としては、限定されるものではないが、ゲフィチニブ(Iressa);ラパチニブ(Tykerb);セツキシマブ(Erbitux);エルロチニブ(Tarceva);パニツムマブ(Vectibix);PKI-166;カネルチニブ(CI-1033);マツズマブ(EMD 72000)またはEKB-569が挙げられる。
【0177】
例示的なHER2阻害剤としては、限定されるものではないが、トラスツズマブ(Herceptin);ラパチニブ(Tykerb)またはAC-480が挙げられる。
【0178】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、ボリノスタット(Zolinza)が挙げられる。
【0179】
例示的なホルモンとしては、限定されるものではないが、タモキシフェン(Soltamox;Nolvadex);ラロキシフェン(Evista);メゲストロール(Megace);ロイプロリド(Lupron;Lupron Depot;Eligard;Viadur);フルベストラント(Faslodex);レトロゾール(Femara);トリプトレリン(Trelstar LA;Trelstar Depot);エキセメスタン(Aromasin);ゴセレリン(Zoladex);ビカルタミド(Casodex);アナストロゾール(Arimidex);フルオキシメステロン(Androxy;Halotestin);メドロキシプロゲステロン(Provera;Depo-Provera);エストラムスチン(Emcyt);フルタミド(Eulexin);トレミフェン(Fareston);デガレリクス(Firmagon);ニルタミド(Nilandron);アバレリックス(Plenaxis);またはテストラクトン(Teslac)が挙げられる。
【0180】
例示的な有糸分裂阻害剤としては、限定されるものではないが、パクリタキセル(Taxol;Onxol;Abraxane);ドセタキセル(Taxotere);ビンクリスチン(Oncovin;Vincasar PFS);ビンブラスチン(Velban);エトポシド(Toposar;Etopophos;VePesid);テニポシド(Vumon);イクサベピロン(Ixempra);ノコダゾール;エポチロン;ビノレルビン(Navelbine);カンプトテシン(CPT);イリノテカン(Camptosar);トポテカン(Hycamtin);アムサクリンまたはラメラリンD(LAM-D)が挙げられる。
【0181】
例示的なMTOR阻害剤としては、限定されるものではないが、エベロリムス(Afinitor)もしくはテムシロリムス(Torisel);ラパミューン、リダフォロリムス;またはAP23573が挙げられる。
【0182】
例示的な多標的キナーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、ソラフェニブ(Nexavar);スニチニブ(Sutent);BIBW 2992;E7080;Zd6474;PKC-412;モテサニブ;またはAP24534が挙げられる。
【0183】
例示的なセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、ルボキシスタウリン;エリル/ファスジル塩酸塩;フラボピリドール;セリシクリブ(CYC202;Roscovitine);SNS-032(BMS-387032);Pkc412;ブリオスタチン;KAI-9803;SF1126;VX-680;Azd1152;Arry-142886(AZD-6244);SCIO-469;GW681323;CC-401;CEP-1347またはPD 332991が挙げられる。
【0184】
例示的なチロシンキナーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、エルロチニブ(Tarceva);ゲフィチニブ(Iressa);イマチニブ(Gleevec);ソラフェニブ(Nexavar);スニチニブ(Sutent);トラスツズマブ(Herceptin);ベバシズマブ(Avastin);リツキシマブ(Rituxan);ラパチニブ(Tykerb);セツキシマブ(Erbitux);パニツムマブ(Vectibix);エベロリムス(Afinitor);アレムツズマブ(Campath);ゲムツズマブ(Mylotarg);テムシロリムス(Torisel);パゾパニブ(Votrient);ダサチニブ(Sprycel);ニロチニブ(Tasigna);バタラニブ(Ptk787;ZK222584);CEP-701;SU5614;MLN518;XL999;VX-322;Azd0530;BMS-354825;SKI-606 CP-690;AG-490;WHI-P154;WHI-P131;AC-220;またはAMG888が挙げられる。
【0185】
例示的なVEGF/VEGFR阻害剤としては、限定されるものではないが、ベバシズマブ(Avastin)、ソラフェニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent)、ラニビズマブ、ペガプタニブ、またはバンデチニブが挙げられる。
【0186】
例示的な微小管標的薬としては、限定されるものではないが、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン、及びナベルビンが挙げられる。
【0187】
例示的なトポイソメラーゼ毒薬としては、限定されるものではないが、テニポシド、エトポシド、アドリアマイシン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エピルビシン、及びイダルビシンが挙げられる。
【0188】
例示的なタキサンまたはタキサン誘導体としては、限定されるものではないが、パクリタキセル及びドセタキセル(docetaxol)が挙げられる。
【0189】
例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、プログラム細胞死1(PD-1)阻害剤、CD274分子(PD-L1)阻害剤、及び細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)阻害剤が挙げられる。例示的なPD-1阻害剤としては、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、及びセミプリマブが挙げられる。例示的なPD-L1阻害剤としては、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブが挙げられる。例示的なCLTA4阻害剤としては、イピリムマブが挙げられる。
【0190】
例示的な白金ベース抗新生物剤としては、シスプラチン及びカルボプラチンが挙げられる。
【0191】
例示的なサイクリン依存性キナーゼ阻害剤としては、アベマシクリブ、パルボシクリブ、及びリボシクリブが挙げられる。
【0192】
例示的なポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤としては、タラゾパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、及びベリパリブが挙げられる。
【0193】
例示的な一般の化学療法剤、抗新生物剤、抗増殖剤としては、限定されるものではないが、アルトレタミン(Hexalen);イソトレチノイン(Accutane;Amnesteem;Claravis;Sotret);トレチノイン(Vesanoid);アザシチジン(Vidaza);ボルテゾミブ(Velcade)アスパラギナーゼ(Elspar);レバミソール(Ergamisol);ミトタン(Lysodren);プロカルバジン(Matulane);ペガスパルガーゼ(Oncaspar);デニロイキンジフチトクス(Ontak);ポルフィマー(Photofrin);アルデスロイキン(Proleukin);レナリドマイド(Revlimid);ベキサロテン(Targretin);サリドマイド(Thalomid);テムシロリムス(Torisel);三酸化ヒ素(Trisenox);ベルテポルフィン(Visudyne);ミモシン(Leucenol);(1Mテガフール-0.4M 5-クロロ-2,4-ジヒドロキシピリミジン-1Mオキソン酸カリウム)、またはロバスタチンが挙げられる。
【0194】
いくつかの実施形態において、さらなる治療剤がサイトカイン(例えば、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子))である組合せ治療モダリティーが提供される。別の態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、放射線療法と組み合わせて投与することができる。また、放射線療法は、多剤療法の一部として、本明細書で提供される医薬組成物及び本明細書で提供される別の化学療法剤と組み合わせて投与することもできる。また別の態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、標準的な化学療法の組合せと、例えば、限定されるものではないが、CMF(シクロホスファミド、メトトレキサート、及び5-フルオロウラシル)、CAF(シクロホスファミド、アドリアマイシン、及び5-フルオロウラシル)、AC(アドリアマイシン及びシクロホスファミド)、FEC(5-フルオロウラシル、エピルビシン、及びシクロホスファミド)、ACTもしくはATC(アドリアマイシン、シクロホスファミド、及びパクリタキセル)、リツキシマブ、Xeloda(カペシタビン)、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、TS-1(1:0.4:1のモル比のテガフール、ギメスタット、及びオタスタットカリウム)、カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカンもしくはCamptosar(商標))、CHOP(シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコビン、及びプレドニゾンもしくはプレドニゾロン)、R-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコビン、プレドニゾンもしくはプレドニゾロン)、またはCMFP(シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びプレドニゾン)と組み合わせて投与することができる。
【0195】
いくつかの好ましい実施形態において、本明細書で提供される医薬組成物は、酵素(例えば、受容体型または非受容体型キナーゼ)の阻害剤と共に投与することができる。受容体型及び非受容体型キナーゼとは、例えば、チロシンキナーゼまたはセリン/トレオニンキナーゼである。本明細書で説明されているキナーゼ阻害剤は、小分子、ポリ核酸、ポリペプチド、または抗体である。
【0196】
例示的なキナーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、ベバシズマブ(VEGFを標的化)、BIBW 2992(EGFR及びErb2を標的化)、セツキシマブ/Erbitux(Erb1を標的化)、イマチニブ/Gleevec(Bcr-Ablを標的化)、トラスツズマブ(Erb2を標的化)、ゲフィチニブ/Iressa(EGFRを標的化)、ラニビズマブ(VEGFを標的化)、ペガプタニブ(VEGFを標的化)、エルロチニブ/Tarceva(Erb1を標的化)、ニロチニブ(Bcr-Ablを標的化)、ラパチニブ(Erb1及びErb2/Her2を標的化)、GW-572016/ラパチニブ二トシル酸塩(HER2/Erb2を標的化)、パニツムマブ/Vectibix(EGFRを標的化)、バンデチニブ(RET/VEGFRを標的化)、E7080(多標的化(RET及びVEGFRを含む)、Herceptin(HER2/Erb2を標的化)、PKI-166(EGFRを標的化)、カネルチニブ/CI-1033(EGFRを標的化)、スニチニブ/SU-11464/Sutent(EGFR及びFLT3を標的化)、マツズマブ/Emd7200(EGFRを標的化)、EKB-569(EGFRを標的化)、Zd6474(EGFR及びVEGFRを標的化)、PKC-412(VEGR及びFLT3を標的化)、バタラニブ/Ptk787/ZK222584(taGRを標的化)、CEP-701(FLT3を標的化)、SU5614(FLT3を標的化)、MLN518(FLT3を標的化)、XL999(FLT3を標的化)、VX-322(FLT3を標的化)、Azd0530(SRCを標的化)、BMS-354825(SRCを標的化)、SKI-606(SRCを標的化)、CP-690(JAKを標的化)、AG-490(JAKを標的化)、WHI-P154(JAKを標的化)、WHI-P131(JAKを標的化)、ソラフェニブ/Nexavar(RAFキナーゼ、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、PDGFR-β、KIT、FLT-3、及びRETを標的化)、ダサチニブ/Sprycel(BCR/ABL及びSrcを標的化)、AC-220(Flt3を標的化)、AC-480(全てのHERタンパク質(汎HER)を標的化)、モテサニブ二リン酸塩(VEGF1-3、PDGFR、及びc-kitを標的化)、デノスマブ(RANKLを標的化、SRCを阻害)、AMG888(HER3を標的化)、ならびにAP24534(Flt3を含む多標的化)が挙げられる。
【0197】
別の実施形態において、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質または同じポリペプチドを含む医薬組成物は、1日に1回対象に投与される。いくつかの実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、2日に1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、3日に1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、4日に1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、5日に1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または同じポリペプチドを含む医薬組成物は、6日に1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、週に1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、7~14日に1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、10~20日に1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、5~15日に1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、15~30日に1回対象に投与される。
【0198】
1つの実施形態において、本発明の組換え型融合タンパク質の用量は、注射用溶液中に0.005~0.1ミリグラム/kgを含む。別の実施形態において、用量は、0.005~0.5ミリグラム/kgの組換え型融合タンパク質を含む。別の実施形態において、用量は、0.05~0.1マイクログラムの組換え型融合タンパク質を含む。別の実施形態において、用量は、注射用溶液中に0.005~0.1ミリグラム/kgの組換え型融合タンパク質を含む。
【0199】
別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.0001mg~0.6mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.001mg~0.005mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.005mg~0.01mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.01mg~0.3mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.2mg~0.6mgの範囲の用量で対象に投与される。
【0200】
別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、1~100mcg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、10~80mcg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、20~60mcg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、10~50mcg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、40~80mcg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、10~30mcg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、30~60mcg/kgの範囲の用量で対象に投与される。
【0201】
別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.1mcg/kg~100mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.1mcg~50mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.1mcg~25mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.1mcg~10mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.1mcg~5mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.1mcg~1mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.1mcg~0.1mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、10mg/kg~60mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。
【0202】
別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、または約70mg/kgの用量で対象に投与される。
【0203】
別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、0.2mg~2mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、2mg~6mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、4mg~10mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、5mg~15mgの範囲の用量で対象に投与される。
【0204】
1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、10μg/kg~1000μg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、25μg/kg~600μg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、50μg/kg~400μg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、約25μg/kgの用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、約50μg/kgの用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、約100μg/kgの用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、約200μg/kgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、約300μg/kgの用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、約400μg/kgの用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、約500μg/kgの用量で対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物は、約600μg/kgの用量で対象に投与される。
【0205】
1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の単回用量が対象に投与される。別の実施形態において、合計で2回用量が対象に投与される。別の実施形態において、合計で2回以上の用量が対象に投与される。
【0206】
別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、1日に少なくとも1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、2日に少なくとも1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、2日以上に少なくとも1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、週に1回、2週間に1回、または3週間に1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、1週間に少なくとも1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、2週間に少なくとも1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、3週間に少なくとも1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、3週間以上の週ごとに少なくとも1回対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、1週間に2回以上対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、1ヵ月に2回以上対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、1年に2回以上対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、2年に2回以上対象に投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、2年以上の年ごとに2回以上対象に投与される。
【0207】
別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、36時間に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、48時間に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、60時間に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、72時間に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、84時間に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、96時間に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、5日に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、6日に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、7日に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、8~10日に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、10~12日に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、12~15日に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、15~25日に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、20~30日に少なくとも1回投与される。
【0208】
1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、1ヵ月に少なくとも1回対象に投与される。1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、2ヵ月に少なくとも1回投与される。1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、3ヵ月に少なくとも1回投与される。1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、4ヵ月に少なくとも1回投与される。1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、5ヵ月に少なくとも1回投与される。1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、6ヵ月に少なくとも1回投与される。1つの実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、6~12ヵ月に少なくとも1回投与される。別の実施形態において、組換え型融合タンパク質または組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の用量は、年に4回投与される。別の実施形態において、用量は、毎日、毎週、隔週、毎月、または毎年投与される。別の実施形態において、用量は、1日、1週間、1ヵ月、または1年に1回、2回、または2回以上投与される。別の実施形態において、用量は、2年ごと、3年ごと、4年ごと、または少なくとも5年ごとに投与される。
【0209】
1つの実施形態において、本発明の組成物の反復投与(用量)は、本明細書でさらに示されるような所望の効果を達成するために(例えば、心血管の疾患もしくは状態、またはCNS関連の疾患もしくは状態を防止または治療するために)、最初の治療過程の直後、または数日、数週間、または数年の間隔の後に行うことができる。
【0210】
1つの実施形態において、医薬組成物は、液体調製物の静脈内、動脈内、皮下、または筋肉内注射によって投与される。別の実施形態において、液体製剤は、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液、油などを含む。1つの実施形態において、医薬組成物は静脈内投与され、そのため静脈内投与に適した形態で製剤化される。別の実施形態において、医薬組成物は動脈内投与され、そのため動脈内投与に適した形態で製剤化される。
【0211】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されている方法で使用するための組成物は溶液または乳濁液を含み、これらはいくつかの実施形態では、静脈内投与または皮下投与が意図された、本明細書で開示されている化合物及び任意選択でその他の化合物の安全かつ有効な量を含む、水性の溶液または乳濁液である。
【0212】
いくつかの実施形態において、組成物の様々な構成物質は、予め測定されて、かつ/または予めパッケージングされて、かつ/またはさらなる測定なしですぐに使用可能な状態などで供される。また本発明は、任意選択で、本発明の方法及び/または組成物を行う/使用するためのキットも含む。詳細には、このようなキットは、任意選択で、例えば、適切な組換え型融合タンパク質(と、任意選択で、相乗的治療を実施するための複数のこのようなタンパク質(上記参照)の混合物と、さらに任意選択で、適切な疾患関連の抗原と)を含む。加えて、このようなキットは、本発明の療法的及び/または予防的治療を実施するための適切な賦形剤(例えば、医薬的に許容される賦形剤)も含むことができる。このようなキットは、任意選択で、本発明の組成物の集成及び/または使用のためのさらなる構成要素を含み、これには、限定されるものではないが、希釈剤などが含まれる。
【0213】
本明細書で説明されている組成物は、任意選択で、本発明の方法を実施するために、または本発明の組成物を使用するために必要な構成要素の全て(またはほぼ全て)(任意選択で、例えば、本発明の方法/組成物の使用説明書を含む)を含むようにパッケージングされる。例えば、キットは、任意選択で、例えば、緩衝液、試薬、血清タンパク質、抗体、基質などの構成要素を含むことができる。予めパッケージングされた試薬の場合には、キットは、任意選択で、測定せずに当該方法に組み込むことができる予め測定されたまたは予め投与された量、例えば、キットのエンドユーザーが容易に再構成することができる、予め測定された液体アリコート、または予め秤量もしくは測定された固体の試薬を含む。
【0214】
また、このようなキットは、典型的には、本発明の方法を実施及び/または本発明の組成物を使用するための、適切な説明書を含む。いくつかの実施形態において、キット/パッケージの構成要素は、長期保管中の劣化またはその他の損失(例えば、漏出による)を防止できるような安定化された形態で提供される。複数の安定化プロセス/薬剤(例えば、化学的安定剤(すなわち、酵素阻害剤、殺微生物剤/静菌剤、抗凝固剤)を含めることなど)が、保存すべき試薬などに広く使用されている。本発明の医薬組成物中における実際の活性成分の薬用量レベルは、特定の対象、組成物、及び投与経路において所望される治療応答を、対象に対する毒性を伴わずに達成するために有効な活性成分の量を得られるように変化させることができる。選択される薬用量レベルは、用いられている本発明の特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、用いられている特定の化合物の排出速度、治療期間、用いられている特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/もしくは材料、年齢、性別、体重、状態、治療を受ける対象の全体的健康状態及び病歴、ならびに医療分野で周知されている同様の因子を含めた様々な薬物動態学的因子に依存する。
【0215】
組成物は、シリンジで送達可能な程度に無菌かつ流動性でなければならない。担体は、水の他には、等張緩衝食塩水であることが好ましい。適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散させる場合に必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール、または塩化ナトリウムを含むのが好ましい。
【0216】
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の薬用量レベルは、特定の対象、組成物、及び投与様式において所望される治療応答を、対象に対する毒性を伴わずに達成するために有効な活性成分の量を得られるように変化させることができる。選択される薬用量レベルは、用いられている本発明の特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、用いられている特定の化合物の排出速度、治療期間、用いられている特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/もしくは材料、年齢、性別、体重、状態、治療を受ける対象の全体的健康状態及び病歴、ならびに医療分野で周知されている同様の因子を含めた様々な薬物動態学的因子に依存する。
【0217】
いくつかの本発明の実施形態を本明細書で説明及び例示してきたが、当業者は、本明細書に記載の機能を実施するための、及び/または結果及び/または利点のうちの1つ以上を得るための、様々な他の手段及び/または構造を容易に想定すると考えられ、このような変形形態及び/または変更形態は、本明細書で説明されている本発明の実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載の全てのパラメーター、寸法、材料、及び構成が例示的であるように意図されていること、ならびに実際のパラメーター、寸法、材料、及び/または構成が、本発明の教示内容(1つまたは複数)が使用される特定の応用先(1つまたは複数)に依存することを、容易に理解すると考えられる。当業者は、本明細書に記載されている特定の本発明の実施形態に対する多くの等価物を認識し、または単なる通例的実験を用いて多くの等価物を確認することができるであろう。そのため、前述の実施形態が単に例として提示されるものであること、ならびに本発明の実施形態が、添付の請求項及びそれに対する等価物の範囲内において、具体的に記載及び特許請求されるものとは別の形で実行され得ることを理解されたい。本開示における本発明の実施形態は、本明細書に記載のそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法を対象とする。加えて、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法の任意の組合せは、このような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法が相互に矛盾しない場合は、本開示の発明範囲内に含まれる。
【0218】
本明細書で定義され使用されている全ての定義は、辞書的な定義、参照により組み込まれている文献における定義、及び/または定義された用語の通常の意味に優先するものと理解すべきである。
【0219】
本明細書で開示されている全ての参考文献、特許、及び特許出願は、各々が引用されている主題に関し、参照によって本明細書に援用され、場合によってはそれが文書全体を包含することもある。
【0220】
本明細書において、明細書中及び請求項中の「1つの(a)」「1つの(an)」という不定冠詞は、反対のことが明確に示されない限り、「少なくとも1つの」を意味するものと理解すべきである。
【0221】
本明細書において、明細書中及び請求項中の「及び/または」という表現は、そのように接続された要素の「いずれかまたは両方」を意味するもの、すなわち、ある場合には接続的に存在し他の場合には分離的に存在する要素と理解すべきである。「及び/または」を用いて挙げられた複数の要素は、同じ様式で、すなわちそのように接続された要素の「1つ以上」と解釈すべきである。「及び/または」節により明確に特定された要素以外の他の要素は、この明確に特定された要素に関連するしないにかかわらず、任意選択で存在することができる。したがって、非限定的な例として、「含む(comprising)」などのオープンエンドな語と共に使用する場合の「A及び/またはB」への言及は、ある実施形態ではAのみ(任意選択でB以外の要素5を含む)を指し、別の実施形態ではBのみ(任意選択でA以外の要素を含む)を指し、また別の実施形態ではA及びBの両方(任意選択で他の要素を含む)を指す、などの可能性がある。
【0222】
本明細書において、明細書中及び請求項中の1つ以上の要素のリストに関する「少なくとも1つ」という表現は、要素のリスト内の任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解すべきであるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的に挙げられたあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、また要素のリスト内における要素の任意の組合せを排除しない。また、この定義は、「少なくとも1つ」という表現が意味する要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するしないにかかわらず、任意選択で存在し得ることも許容する。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(または同等のものとして「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同等のものとして「A及び/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態では少なくとも1つの(任意選択で2つ以上を含む)A、ただしBは存在しない(任意選択でB以外の要素を含む)ことを意味する場合もあれば、別の実施形態では少なくとも1つの(任意選択で2つ以上を含む)B、ただしAは存在しない(任意選択でA以外の要素を含む)ことを意味する場合もあれば、また別の実施形態では少なくとも1つの(任意選択で2つ以上を含む)A及び少なくとも1つの(任意選択で2つ以上を含む)B(任意選択で他の要素を含む)を意味する場合もあれば、その他の場合もある。
【0223】
本発明はさらに、ヒトにおける心血管の疾患または状態を防止、治療、または遅延するためのキットであって、心血管の疾患または状態を防止、治療、または遅延するために使用される本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の1回以上の用量と、医薬調製物または医薬組成物の使用方法についての説明書とを含む、キットを提供する。
【0224】
本発明はさらに、ヒトにおけるCNS関連の疾患または状態を防止、治療、または遅延するためのキットであって、心血管の疾患または状態を防止、治療、または遅延するために使用される本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の1回以上の用量と、医薬調製物または医薬組成物の使用方法についての説明書とを含む、キットを提供する。
【0225】
本発明はさらに、ヒトにおける駆出率保持性心不全を防止、治療、または遅延するためのキットであって、駆出率保持性心不全を防止、治療、または遅延するために使用される本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質を含む医薬組成物の1回以上の用量と、医薬調製物または医薬組成物の使用方法についての説明書とを含む、キットを提供する。
【0226】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより十分に例示するために提示される。ただしこの実施例は、決して、本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0227】
実施例1:発現プラスミドのクローニング及び構築
組換え型融合タンパク質の重鎖(Fc変異ありまたはなしの配列について、それぞれNPCFA及びNPCFと称される)及び軽鎖(PALと称される)をコードするDNA配列をGENEWIZ(Suzhou,China)によって合成した。発現ベクターpCHOGUNを、Horizon Discovery(Cambridge,UK)からライセンス契約に基づき入手した。
図1に概説されているように発現プラスミドの構築を行った。簡潔に述べると、pCHOGUNベクターを制限酵素BfuAIによって線状化し、NPCF、NPCFA、及びPALなどの遺伝子挿入フラグメントをNcoI及びAscIによる二重の制限酵素消化後に精製した。線状化したpCHOGUN/BfuAI及び精製した遺伝子挿入フラグメントを標準的なプロトコルに従ってライゲーションし、次いでE.coli DH5αコンピテント細胞を形質転換した。DH5α細胞を平板培養し、37℃で終夜インキュベートした。プラスミドpCHOGUN-NPCF、pCHOGUN-NPCFA、及びpCHOGUN-PALを単離し、制限酵素消化またはPCRによって確認した。重鎖挿入物(pCHOGUN-NPCFまたはpCHOGUN-NPCFA)を含むプラスミドは制限酵素BspEI及びPciIで消化させ、軽鎖挿入物(pCHOGUN-PAL)を含むプラスミドは制限酵素NgoMIV及びPciIで消化させた。制限酵素消化の後、重鎖または軽鎖挿入物を有するフラグメントを精製し、ライゲーションし、次いでDH5α細胞を形質転換した。重鎖及び軽鎖挿入物両方を含むプラスミドコンストラクト(pCHOGUN-NPCF+PALまたはpCHOGUN-NPCFA+PAL)を制限酵素消化及びDNAシークエンシングによって同定及び確認した。
【0228】
実施例2:抗体の産生、精製、及びキャラクタリゼーション
CHO K1細胞由来のグルタミンシンターゼ-ヌル(GS-/-)細胞系であるHD-BIOP3を、Horizon Discovery(Cambridge,UK)からライセンス契約に基づき入手した。プラスミドDNAは、市販のQiagenプラスミドキットを用いて単離する。Lonza製の市販エレクトロポレーションシステムを用いて、HD-BIOP3細胞内へのプラスミドDNAの形質移入を実施した。形質移入細胞を96ウェルプレートで平板培養し、標準的な手順を用いてプール選択に供した。選択プールからの細胞を125mL振とうフラスコ内で10~14日間培養し、抗体精製用に培地を採取した。抗体タンパク質をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、次にサイズ排除クロマトグラフィーによって精製し、次いでSDS-PAGE及びウェスタンブロットを用いて標準的なプロトコルに従って解析した。
【0229】
図2Aは、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質の概略的構造を図示している。
図2Bは、SDS-PAGE解析により生成された代表的なデータを示している。HER3/4結合ドメインを含むNRG-1(「NRG-1」(R&D Systems,Minneapolis,MN))またはIgGの61アミノ酸活性フラグメントに対し特異的な一次抗体によって検出されたウェスタンブロット結果は、それぞれ
図2C及び2Dに示されている。
【0230】
実施例3:SPRベース結合アッセイによって評価される分子完全性
HER3タンパク質及び抗NRG-1抗体に対する同時結合能力を評価することにより、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質の分子構造完全性を評価した。Hisタグ化されたHER3組換え型タンパク質(Sino Biological,Beijing,China)を、抗His抗体(Thermo Fisher,Waltham,MA)で固定化したセンサーチップ上に捕捉し(ステップ1)、次いで試料(本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質、Fc変異なしの本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質、抗HER3 mAb)を注入し(ステップ2)、抗NRG-1抗体(R&D Systems,Minneapolis,MN)を注入した(ステップ3)。センサーチップ上のHis-HER3の結合は、ステップ1における6つのチャネル全てのシグナル増加によって視覚化することができる。本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質及びFc変異なしの本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質の両方が、ステップ2ではHER3に結合することにより、またステップ3では注入した抗NRG-1抗体に結合することにより、顕著な応答をもたらしており(Ch1、3)、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質上にHER3結合エピトープ及びNRG-1が存在することが示された。これに対し、抗HER3 mAbはステップ2でHis-HER3のみに結合し、抗NRG-1抗体及び緩衝液には結合せず(ステップ3)(Ch4、5)、抗HER3 mAb分子におけるNRG-1結合活性の不在が確認された。緩衝液は、ブランク対照としてステップ2及び3で注入した。したがって、本発明の組換え型融合タンパク質にはHER3結合エピトープ及びNRG-1の両方が存在する。
【0231】
結合センサーグラム及び試料注入の順序は、
図3に示されている。
【0232】
実施例4:in vitroの腫瘍細胞系増殖に及ぼす効果
腫瘍細胞を96ウェルプレートに、各細胞系の成長動態に応じてウェル当たり2,500~20,000細胞で播種した。次いで細胞を、ステップワイズ1:4段階希釈系列の本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質、抗体、または対照タンパク質で5日間処置した。Dojindo Molecular Technologies(Kumamoto,Japan)製のCell Counting Kit-8を用いて細胞生存能を評価した。データをGraphPad Prismソフトウェアで解析した。このデータは、未処置対照に対する成長率として提示される。
【0233】
図4には、異なるがん細胞系:(A)NCI-N87(胃がん);(B)MCF-7(乳がん);(C)RT-112(膀胱がん);及び(D)T47D(乳がん)における平均相対成長率±SEM(n=3)を示す代表的なグラフが含まれている。対照のNRG-1及びGP120 mAb/NRG-1融合タンパク質と比較して、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質は、がん細胞増殖の促進において著明に低い活性を示している。
【0234】
実施例5:ヒト心筋細胞内でのPI3K/AKTシグナル伝達経路活性化
Cellular Dynamics(Madison,WI)から入手したヒト心筋細胞を0.1%ゼラチンコーティング96ウェルプレートに播種し、平板培養培地(Cellular Dynamics)中で4時間回復させた。次いで、細胞を維持培地(Cellular Dynamics)中で96時間培養してから実験に使用した。本発明の組換え型融合タンパク質における心筋細胞内でのHER2:HER4シグナル伝達経路活性化能力を調べるため、まず細胞を無血清培地中で4時間飢餓状態にし、次いでステップワイズ1:4段階希釈系列の組換え型融合タンパク質または対照薬剤(NRG-1、GP120 mAb/NRG-1、抗HER3 mAb、またはGP120 mAb)で15分間処置した。処置終了時に、細胞を溶解し、製造業者の指示に従って、AbcamのPhospho-AKT/Total AKT ELISA Kit (Cambridge,MA)を用いてAKTリン酸化について解析した。データをGraphPad Prismソフトウェアで解析した。このデータは、未処置対照に対するホスホ-AKT:総AKTの比として提示される。
【0235】
ウェスタンブロット解析については、細胞を6ウェルプレートに播種し、16nMの単一濃度の本発明の組換え型融合タンパク質または対照薬剤で処置した。処置終了時に、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を含むRIPA溶解緩衝液中で細胞を溶解した。SDS-PAGE及びウェスタンブロットを標準的なプロトコルに従って行った。総AKT及びホスホル-AKTは、それぞれAKTウサギ抗体及びp-AKT(S473)ウサギ抗体(Cell Signaling;Danvers,MA)でブロットした。
【0236】
図5は、ヒト心筋細胞における刺激に応答したAKTリン酸化を示している。結果からは、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質が、NRG-1と同等の効力で心筋細胞内のHER2:HER4シグナル伝達経路を活性化できることが示唆される。
【0237】
実施例6:HER2:HER3二量体化及びHER2:HER4二量体化の誘導
Eurofins DiscoverX(Fremont,CA)が開発したPathHunter二量体化アッセイは、受容体-二量体対の2つのサブユニットのリガンド誘導性二量体化を検出する。このアッセイ原理は、
図6Aに図示されている。β-gal酵素が2つのフラグメント、ProLink(PK)及び酵素受容体(EA)に分割される。細胞は、酵素ドナーPKと融合した標的タンパク質1と、酵素アクセプターEAと融合した標的タンパク質2とを同時発現するように操作しておく。リガンドが一方の標的タンパク質と結合することによって他方の標的タンパク質と相互作用するように誘導され、2つの酵素フラグメントの相補性が強制され、その結果、化学発光シグナルを放出する酵素反応が生じ、このシグナルが相対蛍光単位またはRFUとして検出される。
【0238】
PathHunter U2OS ErbB2/ErbB4二量体化細胞系及びErbB2/ErbB3二量体化細胞系をEurofins DiscoverXから入手した。細胞を4,000細胞/ウェルで384ウェルプレートに播種し、37℃/5% CO2で終夜インキュベートした。試験薬剤を28.8nMからのステップワイズ1:4段階希釈系列で調製し、次いで384ウェルプレート内の細胞に添加した。4時間のインキュベート後、製造業者の指示に従って、細胞の受容体二量体化をアッセイした。データはGraphPad Prismソフトウェアで解析し、平均RFU±SEM(n=3)として提示する。
【0239】
図6B及び6Cに示されているように、本明細書で開示されている組換え型融合タンパク質は、NRG-1と同等の効力でHER2/HER4二量体化を誘導することができ、一方、HER2/HER3二量体化を誘導する能力はNRG-1よりもはるかに低い。本試験の陰性対照としてのアイソタイプ対照抗体GP120 mAbも抗HER3 mAbも、受容体二量体化を誘導しなかった。
【0240】
添付の図面を参照しながら本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は詳細な実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項で定義されているような本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、当業者によって様々な変更及び修正がもたらされ得ることを理解されたい。
【0241】
実施例7:収縮期心不全ラットモデルにおける組換え型融合タンパク質のin vivo有効性
疾患モデルにおける組換え型融合タンパク質の心臓機能再生能力を評価するため、心筋梗塞及び収縮期心不全のスプレーグドーリーラットモデルを採用した。疾患モデルを確立するため、手術手順において、6-0絹縫合糸を使用して左心耳の3~4mm下方の左前下行枝(LAD)を結紮した。結紮から4週間後、Mモード心エコー(ECG)ドップラー超音波により駆出率(EF)を記録して、手術前のベースラインEFに対する心機能を測定した。次の試験に含める対象にEFの最小30%減少の閾値を使用した。シャム対照動物にLAD結紮なしで同一の手術を行った。
【0242】
疾患モデルの確立後、動物をそれぞれラット11頭からなる5つの群に分類し、さらなるシャム手術ラット10頭を第6の群に含めた。試験は、各群に対し、4週間の期間週2回の尾静脈注射または合計8回の注射を投与するように設計した。シャム手術群及びビヒクル陰性対照群の両方に食塩水を投与し、3つの群に1、3、または10mg/kgの組換え型融合タンパク質を投与し、最後の群にGP120 mAb/NRG-1融合タンパク質(10mg/kg)の陽性対照を投与した。
【0243】
試験中に体重減少が観察されたため、3mg/kg及び10mg/kgを投与した組換え型融合タンパク質群では8回注射の全シークエンスの前に処置を中止し、これらの群はそれぞれ6回及び3回のみの注射投与となった。他の全ての群は8回注射の全セットを投与した。
【0244】
第1の処置から4週間後、MモードECGによって再度EFを測定した。
図8に示されているように、ベースラインと比較して、組換え型融合タンパク質では3つの投与群全てのEFが有意に増加した。具体的には、1、3、及び10mg/kg群においてそれぞれ14.7%(P<0.001)、26.9%(P<0.001)、及び36.6%(P<0.001)の増加が観察された。GP120 mAb/NRG-1陽性対照では、一致する時点においてEFが28.8%(P<0.001)増加した。食塩水は、シャム対照群にもビヒクル対照群にも影響を示さなかった。
【0245】
処置後28日時のECG値を収集した後、マウスを安楽死させ、手術部位に隣接する心臓組織を収集し、4%ホルムアルデヒド中で固定し、パラフィンに包埋した。心臓組織の厚さ5μmのパラフィン切片をヘマトキシリン・エオシン色素で染色し、光学顕微鏡下で病理組織学的変化が観察された。
図9に示されているように、シャム手術群では心筋細胞が規則正しく並んでおり、細胞質及び心筋線維が均等に染色されていた。間質腔に炎症性の細胞浸潤は観察されず、心筋壊死は見られなかった。これに対し、ビヒクル対照群では、心筋梗塞境界域で心筋細胞間のギャップ拡大が示され、核は凝縮し粉砕され、心筋線維配列は秩序的構造が失われ、細胞サイズは拡大し、間質性浮腫が認められた。組換え型融合タンパク質による治療によって、壊死細胞の顕著な低減、心筋細胞間の間質腔の縮小、及び心筋線維配列の正常構造への回復を含めて、心筋梗塞域の病理学的変化が部分的に緩和された。
【0246】
実施例8:NOD/SCIDマウス皮下FaDuがん異種移植片モデルにおける組換え型融合タンパク質による腫瘍成長の減弱
腫瘍成長の促進における組換え型融合タンパク質の潜在的リスクを評価するため、FaDuがん異種移植片モデルにおけるin vivo試験を行った。NOD/SCIDマウス(Beijing AK Bio-Technology Co.Ltd.)を、CrownBio international R&D center(Beijing,China)のSPF施設内で施設ガイドラインに従って飼育した。全ての実験は、国際実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)の要件に従い、かつCrownBio IACUC委員会の許可を得て実施した。
【0247】
7~10週齢のメスNOD/SCIDマウスの右側腹部に、0.1mlのPBSに懸濁させたFaDu腫瘍細胞(3×106)を皮下接種した。腫瘍がおよそ150mm3に達したら、マウスをランダム化し、群当たり動物8頭の6つの試験群に分類した。試験試料を週2回で連続3週間尾静脈に静脈内投与し、合計6回の処置を行った。腫瘍成長をカリパス測定によってモニターした。本試験は、処置後21日目に終了した。
【0248】
異なる処置に応答した腫瘍成長は
図10に要約されている。10mg/kgの抗HER3 mAbは有意な抗腫瘍活性を示し、試験終了時の腫瘍成長阻害(TGI)は93.5%(ビヒクル群に対しp<0.001)であった。組換え型融合タンパク質も試験終了時に統計的に有意なTGIを示し、1mg/kg薬用量で19.2%(ビヒクル群に対しp=0.048)及び10mg/kg薬用量で56.2%(ビヒクル群に対しp<0.001)であった。対照分子のGP120 mAb/NRG-1融合タンパク質は、高用量でも低用量でも抗腫瘍活性を示さなかった。試験中に動物の死亡は発生しなかった。全ての試験薬剤において担腫瘍マウスの忍容性は良好だった。いずれの実験群でも顕著な体重減少は認められなかった(
図11)。これらのデータからは、in vivo活性腫瘍成長の条件下で、組換え型融合タンパク質が用量依存的に腫瘍成長阻害を示すことが示されており、組換え型融合タンパク質がin vivoで腫瘍成長を増大または促進するリスクはネイティブNRG-1タンパク質よりも低いことが示唆される。
【0249】
実施例9:組換え型融合タンパク質を投与したカニクイザルでは顕著な胃腸管系毒性は観察されず
対象にプラセボまたは単回用量のシマグレルミン(cimaglermin)(全長組換え型NRG-1β3)を投与した第1相臨床試験(NCT01258387)において、治療下で発現した有害事象として悪心及び下痢が2番目及び4番目に多く、高用量コホート総計のそれぞれ40%及び27%に発生したことが過去に報告されている(Lenihan et al.J Am Coll Cardiol Basic Trans Science.2016;1(7):576-86)。同様に、組換え型NRG-1ペプチドフラグメント(ニューカルディン(neucardin))第2相試験において、治療下で発現した有害事象として悪心が最も多く、試験対象の20%で見られた(Jabbour et al.European Journal of Heart Failure(2011)13: 83-92)。最後に、ニューカルディンの第2相試験(ChiCTR-TRC-00000414)において、公表された結果からは、観察された有害事象の48.4%が事実上胃腸管系のものであり、これが当該試験で最も頻繁に観察されたタイプの有害事象であり、用量レベルと相関することが示されている(Gao et al.J Am Coll Cardiol 2010;55:1907-14)。
【0250】
マカク属カニクイザル(Macaca fascicularis)において組換え型融合タンパク質の安全性及び忍容性を評価する2つの試験:単回用量非GLP(優良実験室規範)試験及び反復用量GLP試験を行った。胃腸管系毒性を綿密にモニターした。単回用量試験では、組換え型融合タンパク質の安全性及び忍容性は、ビヒクル対照との比較において、10、30、及び60mg/kgの用量レベルで評価し、各コホートに雄1頭及び雌1頭の動物を含めた。この単回用量試験では、2週間の処置後評価期間全体において、体重または質的食餌の評価に対する試験薬剤関連の効果は認められず、嘔吐または下痢の所見も認められなかった。反復用量GLP試験では、組換え型融合タンパク質の安全性及び忍容性は、ビヒクル対照との比較において、3、10、及び30mg/kgの用量レベルにおける4回連続の週1回投与の後に評価し、主な28日の試験期間の間は各コホートに雄3頭及び雌3頭を含め、次の28日の回復期間の後に、30mg/kg及びビヒクル対照コホートにおいてさらなる雄2頭及び雌2頭を評価した。この反復用量試験において、摂餌量に対する試験薬剤関連の効果は認められなかった。この反復用量試験では試験薬剤関連の嘔吐が観察されたが、嘔吐の臨床所見は点滴反応に関連したものに過ぎず、10mg/kgコホートの動物1頭(17%)及び30mg/kgコホートの動物2頭(20%)で観察されるにとどまり、これらは事実上一過性であった。下痢は、ビヒクル対照コホート及び30mg/kg組換え型融合タンパク質コホートでのみ、それぞれ動物1頭(10%)及び3頭(30%)で観察されるにとどまり、このタイプの手順では正常であり、組換え型融合タンパク質とは無関係と考えられた。最終的に、この反復用量試験では、平均体重がベースラインに対し>10%低減したのは10mg/kg及び30mg/kg用量レベルのみであり、10mg/kgコホートでは4回目の投与後、30mg/kgコホートでは3回目及び4回目の投与後に認められるにとどまった。要約すると、組換え型融合タンパク質による処置は、急性点滴反応の間以外では、食餌摂取、嘔吐、または下痢に関しいかなる臨床的に意味のある所見も認められず、胃腸管系の所見は、いずれの試験においても有害事象レベルなしとの判定に影響を及ぼすものではなかった。これらの結果は、組換え型融合タンパク質の設計が、NRG-1組換え型タンパク質の胃腸管への有害事象を軽減することを示すものである。
【0251】
60mg/kgの組換え型融合タンパク質の単回用量投与後の異なる時点でカニクイザルから血液試料(約1ml)を収集し、血清を抽出し試験まで-80℃で保管した。血清試料中の組換え型融合タンパク質濃度を、標準的な手順に従って捕捉ELISAによりアッセイした。簡潔に述べると、96ウェルプレートを組換え型ヒトHER3タンパク質(R&D System)でコーティングし、BSAでブロックし、試験試料と共にインキュベートした。複数回洗浄した後、プレートをHRP結合体化抗ヒトIgG Fc抗体と共にインキュベートし、次いでTMB基質で検出した。
図12は、組換え型融合タンパク質の薬物動態プロファイルがIgG抗体に類似していることを示している。
【0252】
実施例10:Fc受容体結合に対する動態定数の概要
非標識SPR技法を用いて、組換え型抗HER3 mAb/NRG-1融合タンパク質とFc受容体との間の結合親和性を測定した。FcγRI(Abcam)、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa(158F)、FcγRIIIa(158V)、及びC1q(Sino Biological)を含めた合計6つのFc受容体(各々がHisタグと融合している)を組換え型融合タンパク質、Fc変異なしの組換え型融合タンパク質、及び抗HER3抗体のそれぞれに対し解析した。全てのFc受容体及び試験試料をアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。全ての実験は、Biacore 8Kシステム(GE Healthcare)上でHBS-EP+(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、及び0.05% v/v Surfactant P20)をランニング緩衝液として用いて実施した。具体的には、抗His抗体を、CM5センサーチップの活性フローセル及び参照フローセルの両方においてアミンカップリング法によりカップリングした。精製したHisタグ化Fc受容体を、固定化した抗His抗体との結合により、各個別チャネルの活性フローセル上で捕捉した。各Fc受容体の捕捉レベルを80~120RUの間に維持した。動態解析のために、組換え型融合タンパク質及び他の全ての試料を段階希釈して、0.3nM~30nMの範囲の合計6つの濃度とし、段階希釈液を順次各チャネルの両方のフローセルに注入した。複数のチャネルに対し同時に試料を注入することにより、同じ作業中に複数の解析を完了した。
【0253】
Biacore 8K評価ソフトウェアを用いて、得られたセンサーグラムを2状態結合モデルに適合して動態定数を抽出した。全ての解析の平衡解離速度(KD)を下記の表1に要約する。組換え型融合タンパク質のFcγRI、FcγRIIa、及びFcγRIIbとの結合における動態的に導出されたKD値は、Fc変異なしの組換え型融合タンパク質及び抗HER3抗体の値よりも10倍超高く、このことから、組換え型融合タンパク質のFc領域内の指定された変異の結果、親和性がはるかに低くなったことが示されている。FcγRIIIa(158F)及びFcγRIIIa(158V)については、それぞれ、Fc変異によって、組換え型融合タンパク質の結合親和性が2~3倍低減した。C1qへの結合は非常に弱く、全ての試料において検出されなかった。
【0254】
組換え型融合タンパク質がFcエフェクター機能を限定したことを確認するため、Promega(Madison,WI)製のADCCレポーターバイオアッセイを用いて、抗体依存性細胞傷害(ADCC)について検証した。このアッセイは、エフェクター細胞として操作されたJurkat細胞系を使用し、この細胞はFcγRIIIa(V158)受容体と、ホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントとを安定的に発現した。アッセイの陽性対照としてのリツキシマブは、CD20陽性ラージ細胞に対し強力なADCC活性を示したが、組換え型融合タンパク質は、HER3陽性標的細胞(MCF7またはBT474)に対し検出可能なADCCを示さなかった(データは示されず)。
【0255】
【配列表】