(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】PH中性βラクトグロブリン飲料の調製物
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20241022BHJP
A23L 2/66 20060101ALI20241022BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20241022BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A23L2/00 F
A23L2/00 J
A23L2/66
A61K38/17 100
A61P3/02
(21)【出願番号】P 2020573268
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2019067039
(87)【国際公開番号】W WO2020002450
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-23
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/067299
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/067316
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/067280
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520507335
【氏名又は名称】アーラ フーズ エイエムビーエイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン、セレン バング
(72)【発明者】
【氏名】イエーガー、ターニャ クリスティーネ
(72)【発明者】
【氏名】ラウリドセン、カスペル ベーゲルンド
(72)【発明者】
【氏名】センデルガールド、コーレ
(72)【発明者】
【氏名】デ モーラ マシエル、ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】ベルテルセン、ハンス
(72)【発明者】
【氏名】パルジコラエイ、ベーナズ ラジ
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-238614(JP,A)
【文献】国際公開第2009/038746(WO,A1)
【文献】特表2013-521779(JP,A)
【文献】特表2009-531044(JP,A)
【文献】特表2013-532486(JP,A)
【文献】特開平06-292514(JP,A)
【文献】特表2008-525019(JP,A)
【文献】特開2008-029292(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103491791(CN,A)
【文献】北畠直文ほか,改質乳清タンパク質の特性とその利用,Milk Science,2001年,Vol.50, No.3,pp.107-112
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/
A23C
A23J 3/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、5.5~8.0の範囲のpHを有し、無菌であり包装された、熱処理された飲料調製物:
‐前記飲料の重量に対して
10~20%w/wの総量のタンパク質、ただし、該タンパク質の少なくとも85%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、
‐任意に、甘味料及び/又は香料、
ただし、該飲料調製物は、熱処理に付され、該熱処理は滅菌を包含する。
【請求項2】
飲料調製物のタンパク質画分が、CIELABカラースケールで-0.10~+0.51の範囲の色値デルタb
*を有し、
室温で測定した場合、デルタb
*=b
6.0w/w%タンパク質に標準化したサンプル
*-b
脱塩水
*である、請求項1に記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項3】
飲料調製物が、CIELABカラースケールで-0.10~+0.51の範囲の色値デルタb
*を有し、
室温で測定した場合、デルタb
*=b
6.0w/w%タンパク質に標準化したサンプル
*-b
脱塩水
*である、請求項1又は2に記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項4】
Na、K、Mg及びCaの量の合計が最大400mMである、請求項1~3のいずれかに記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項5】
飲料調製物が、最大100mgのリン(phosphor)/タンパク質100g及び最大700mgのカリウム/タンパク質100gを含む、請求項1~4のいずれかに記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項6】
pHが、6.5~7.5の範囲である、請求項1~5のいずれかに記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項7】
pHが、6.5~7.0の範囲である、請求項6に記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項8】
濁度が最大で200NTUである、請求項1~7のいずれかに記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項9】
200NTUを超える濁度を有する、請求項1~7のいずれかに記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項10】
100/秒の剪断速度で22℃で測定した場合、最大200cPセンチポアズの粘度を有する、請求項1~9のいずれかに記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項11】
総タンパク質に対して少なくとも50%w/wのタンパク質ナノゲルを含む、請求項1~10のいずれかに記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項12】
総タンパク質に対して少なくとも60%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物を含む、請求項1~10のいずれかに記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項13】
タンパク質の少なくとも90%w/wがβラクトグロブリン(BLG)であり、好ましくはタンパク質の少なくとも92%w/wがβラクトグロブリン(BLG)である請求項1~12のいずれかに記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項14】
タンパク質の少なくとも92%w/wがβラクトグロブリン(BLG)である請求項13に記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項15】
以下の工程を含む、5.5~8.0の範囲のpHを有する包装された、熱処理された飲料調製物を製造する方法:
a)‐
10~20重量%の総量のタンパク質、該タンパク質の少なくとも85w/w%はβラクトグロブリン(BLG)であり、
5.5~8.0の範囲のpHを有し、
‐任意に、甘味料及び/又は香料、
を含む液体溶液を提供する工程、
b)前記液体溶液を包装する工程、
工程a)の前記液体溶液及び/又は工程b)の前記包装された液体溶液が、少なくとも滅菌を含む熱処理に供される。
【請求項16】
滅菌が、120~150℃の範囲の温度で4~30秒間を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
タンパク質吸収不良に関連する疾患の治療方法で使用するための、請求項1~14のいずれかに記載の包装された、熱処理された飲料調製物。
【請求項18】
請求項1~14のいずれかに記載の包装された、熱処理された飲料調製物
を含む栄養補助食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5.5~8.0の範囲のpHを有する、新たな包装された熱処理飲料調製物に関する。本発明はさらに、包装された熱処理飲料調製物を製造する方法、及び包装された熱処理飲料調製物の種々の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ栄養のために開発された飲料は、アスリートにとって独自の栄養上の利点のため組み込まれているホエイタンパク質を含む可能性が特に高い。幾つかの医療用及び治療用栄養飲料には、タンパク質合成、消化性、及び健康上の利点に不可欠なアミノ酸が豊富に含まれていることから、ホエイタンパク質も含まれている。
【0003】
ホエイタンパク質は、乳清又はホエイから単離することができる。ホエイは典型的には、βラクトグロブリン(BLG)、アルファ-ラクトアルブミン(ALA)、血清アルブミン、及び免疫グロブリンの混合物を含み、BLGが最も優勢である。そのため、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)は、これらのタンパク質の混合物を含む。ホエイタンパク質単離物(WPI)は、WPCよりも脂肪及び乳糖が少ない。
ホエイ製品は黄色になる場合がある。したがって、ホエイ製品の黄色を除去又は低減するために、過去に多くの試みが行われた。
【0004】
ホエイを白くする/漂白する従来の方法は、過酸化水素(HP、H2O2)を使用してホエイを化学的に漂白することであり、これらの方法は味に悪影響を及ぼし、ホエイタンパク質のアンフォールディング及び凝集を促進する可能性がある(Kramer et al,2017.「Effect of Oxidation and Protein Unfolding on Cross-Linking of beta-Lactoglobulin and alfa-Lactalbumin」,J.Agric.Food Chem.2017,65,10258-10269。
【0005】
国際公開第2005/004616号公報A1は、乳製品にリポキシゲナーゼ(LOX)を添加することを含む、乳製品を漂白又は白くする方法を記載している。この方法をホエイ及び乳製品を白くするために使用することができる。
【0006】
ホエイを白くする他の方法としては、乳製品へのクロロフィルの添加又は二酸化チタン(TiO2)の使用が挙げられる。二酸化チタンは、チーズミルク、キャンディー、チューインガム、歯磨き粉等に使用される無機不活性白色顔料であり、食品グレードとしてFDAによって承認されている。
【0007】
国際公開第2018/115520号公報A1は、塩溶様式のBLGの結晶化に基づいて、食用の単離されたβラクトグロブリン組成物及び/又は結晶化βラクトグロブリンを含む組成物を製造する方法を開示している。その後、結晶化したBLGを、残りの母液から分離することができる。
【0008】
国際公開第2011/112695号公報A1は、栄養組成物、並びに該栄養組成物を作製及び使用する方法を開示している。栄養組成物は、ホエイタンパク質ミセル及びロイシンを含み、低粘度の流体マトリックス及び許容可能な官能特性を維持しながら、ヒトにおけるタンパク質合成を改善するのに十分な量のロイシンを提供する。
【0009】
国際公開第2011/051436号公報A1は、ヒト又は動物の消費を目的とした少なくとも部分的に透明な組成物を開示し、またかかる組成物の包装に関する。本発明の一実施形態は、少なくとも部分的に透明な水性非アルコール組成物を含む少なくとも部分的に透明な容器に関する。該容器は、組成物中に存在する液晶を可視化する少なくとも1つの偏光子を含む。
【0010】
国際公開第2004/049819号公報A2は、1つ以上の球状タンパク質の溶液を提供する工程であって、その溶液において、タンパク質(複数の場合がある)は、少なくとも部分的にフィブリルに凝集している工程、以下の工程:pHを上げること;塩濃度を上げること;溶液を濃縮すること;溶液の溶媒品質を変更すること、の1つ以上をランダムな順序で実行する工程を含む、球状タンパク質の機能特性を改善するための方法を開示する。好ましくは、1つ以上の球状タンパク質の溶液は、低pHでの加熱又は変性剤の添加によって提供される。このようにして得られたタンパク質添加物、食品及び非食品へのその使用、並びに該タンパク質添加物を含む食品及び非食品製品も開示されている。
【0011】
国際公開第2010/037736号公報A1は、ホエイタンパク質の単離、並びにホエイ製品及びホエイ単離物の調製を開示している。特に、本発明は、β-ラクトグロブリン生成物の単離、及び動物から得られたホエイからのαに富むホエイタンパク質単離物の単離に関する。本発明によって提供されるαに富むホエイタンパク質単離物は、β-ラクトグロブリンが低いことに加えて、アルファ-ラクトアルブミン及び免疫グロブリンGが高い。
【0012】
フランス国特許第2 296 428号は、任意の既知の分離プロセスによって得られた乳清タンパク質に基づく栄養学的及び治療的使用のためのタンパク質組成物を開示している。該組成物を、乳児及び成人の消化器障害(例えば、下痢)の治療又は予防、腸感染症に対する抵抗性の増加、及び特定の代謝障害(例えば、高フェニルアラニン血症)の治療に使用することができる。それらはまた、皮膚科学的又は美容的に使用することができ、低タンパク食の一部を形成することができる。
【発明の概要】
【0013】
本発明者らは、ホエイタンパク質を含む飲料が無彩色又は白色である程度が、ホエイタンパク質を含む飲料に対する消費者の認識に影響を与えることを観察した。黄色がかった透明な飲料又は黄色がかった乳白色の飲料は、消費者にとって魅力的ではない。
【0014】
本発明の目的は、従来のホエイ含有飲料よりも無彩色である、包装されたpH中性の熱処理飲料調製物を提供することである。
【0015】
もう1つの目的は、黄色を減らすためのより穏やかな方法を利用することである。更なる目的は、それが飲料の安定性に悪影響を与えてはならないということである。
【0016】
本発明者らは、かかる包装された熱処理飲料が、5.5~8.0の広い中性pH範囲内で、及び1~20重量%の広いタンパク質濃度内で、依然として低粘度を有し、安定であり、より無彩色で提供され得ることを発見した。本発明は、透明である飲料、及び他の実施形態では不透明である飲料の両方を提供する。
【0017】
そのため、本発明の一態様は、5.5~8.0の範囲のpHを有する、包装された熱処理飲料調製物であって、飲料が、
-飲料の重量に対して1~20%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85%w/wはβラクトグロブリン(BLG)であるタンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、
を含む飲料に関する。
【0018】
本発明の別の態様は、5.5~8.0の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物を製造する方法であって、以下の工程:
a)
-1~20重量%の総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85%がβラクトグロブリン(BLG)であるタンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含む液体溶液を提供する工程、
b)液体溶液を包装する工程、
を含み、
工程a)の液体溶液及び/又は工程b)の包装された液体溶液が、少なくとも低温殺菌を含む熱処理に供される、方法に関する。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、溶液の重量に対して1~20%w/wの総量のタンパク質を含むタンパク質溶液の使用に関し、5.5~8.0の範囲のpHを有する滅菌飲料調製物の白色度を制御するため、タンパク質の少なくとも85w/w%がβラクトグロブリン(BLG)である。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、タンパク質欠乏症に関連する疾患の治療方法で使用するための、本明細書で定義される包装された熱処理飲料調製物に関する。
【0021】
本発明の更なる態様は、本明細書で栄養補助食品として定義される、包装された熱処理飲料調製物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】pH6.0にて94℃で14分間加熱された乳白色のBLGサンプルの画像を示す。
【
図2】pH6.0にて94℃で14分間加熱されたゲル化WPIサンプルの画像を示す。
【
図3】例9、A(BLG 98.2w/w%)、B(BLG 95.9w/w%)及びC(WPI)の例示的なホエイタンパク質飲料における不溶性タンパク質物質、ネイティブホエイタンパク質、可溶性ホエイタンパク質凝集物及びタンパク質ナノゲルの量を示す。
【
図4】例示的な飲料A(BLG 98.2w/w%)、B(BLG 95.9w/w%)、及びC(WPI)のセミダイナミックin vitro消化を示す。
【
図5】次を示す:上部:サンプルのセミダイナミックin vitro消化中に、選択した時点(17.5~105分)で回収されたタンパク質アリコートのSDS-PAGE分析。下部:サンプルを分解している間のpHトレース。
【
図6】胃における酸性化のシミュレーションを示す。ゲル強度を、主に可溶性ホエイタンパク質凝集物(飲料A及びWPI)又はタンパク質ナノゲル(飲料B)のいずれかを含む3種類の飲料の酸性化の間に測定した。
【
図7】90℃で5分間熱処理した後の、10~16w/w%タンパク質の液体飲料を示す。
【
図8】10~16w/w%タンパク質において、90℃で5分間で熱処理した後の粘度測定を示す。
【
図9】10~16w/w%タンパク質の熱処理飲料の粒子径を示す。
【
図10】左からBLG粉末Aを使用したそれぞれpH6.0及びpH7.0の10w/w%飲料を示す。右にBLG粉末A(表9より)を使用したpH6.0の12w/w%飲料を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本発明の文脈では、「βラクトグロブリン」又は「BLG」という用語は、哺乳動物種に由来し、例えば、ネイティブの、折りたたまれていない及び/又はグリコシル化された形態であり、天然に存在する遺伝的変異体を含むβラクトグロブリンに関する。該用語はさらに、凝集性BLG、沈殿したBLG及び結晶性BLGを含む。BLGの量に言及する場合、凝集性BLGを含むBLGの総量が言及される。BLGの総量は、例1.31に従って決定される。「凝集性BLG」という用語は、少なくとも部分的に折りたたまれておらず、さらに、典型的には疎水性相互作用及び/又は共有結合によって、他の変性BLG分子及び/又は他の変性ホエイタンパク質と凝集しているBLGに関する。
【0024】
BLGは、ウシホエイ及び乳清で最も優勢なタンパク質であり、幾つかの遺伝的変異体で存在し、牛乳の主なものはA及びBと標識されている。BLGはリポカリンタンパク質であり、多くの疎水性分子に結合することができ、それらの輸送における役割を示唆している。BLGは、シデロホアを介して鉄に結合できることも示されており、病原体と戦う役割を果たしている可能性がある。BLGのホモログはヒトの母乳にはない。
【0025】
ウシBLGは、約162アミノ酸残基の比較的小さなタンパク質で、分子量は約18.3~18.4kDaである。生理学的条件下では、ウシBLGは主に二量体であるが、核磁気共鳴分光法を使用して決定されるように、そのネイティブ状態を保持しながら、約pH3未満で単量体に解離する。逆に、BLGはまた、様々な自然条件下で、四量体、八量体、及びその他の多量体の凝集形態でも生じる。
【0026】
本発明の文脈では、「非凝集性βラクトグロブリン」又は「非凝集性BLG」という用語はまた、哺乳動物種に由来し、例えば、ネイティブの、折りたたまれていない及び/又はグリコシル化された形態であり、天然に存在する遺伝的変異体を含むβラクトグロブリンに関する。しかしながら、該用語には、凝集性BLG、沈殿したBLG、又は結晶化BLGは含まれない。非凝集性BLGの量又は濃度は、例1.6に従って決定される。
【0027】
総BLGに対する非凝集性BLGのパーセンテージは、計算(m総BLG-m非凝集性BLG)/m総BLG
*100%によって決定される。m総BLGは、例1.31に従って決定されるBLGの濃度又は量であり、m非凝集性BLGは、例1.6に従って決定される非凝集性BLGの濃度又は量である。
【0028】
本発明の文脈では、「結晶」という用語は、その構成要素(原子、分子、又はイオン等)が高度に秩序化された微視的構造に配置され、全ての方向に延びる結晶格子を形成する固体材料に関する。
【0029】
本発明の文脈では、「BLG結晶」という用語は、高度に秩序化された微視的構造に配置され、全ての方向に延びる結晶格子を形成する、主に非凝集性の好ましくはネイティブのBLGを含むタンパク質結晶に関する。BLG結晶は、例えば、モノリシック又は多結晶であってもよく、例えば無傷の結晶、結晶のフラグメント、又はそれらの組み合わせであってもよい。結晶のフラグメントは、例えば、無傷の結晶が加工中に機械的剪断に供される場合に形成される。結晶のフラグメントはまた、結晶の高度に秩序化された微視的構造を有するが、無傷の結晶の均一な表面及び/又は均一な端若しくは角を欠いている場合がある。例えば、多くの無傷のBLG結晶の例についてはPCT出願番号PCT/EP2017/084553号の
図18、及びBLG結晶のフラグメントの例についてはPCT出願番号PCT/EP2017/084553号の
図13を参照されたい。いずれの場合も、BLG結晶又は結晶フラグメントは、光学顕微鏡を使用して、明確に定義されたコンパクトでコヒーレントな構造として視覚的に識別できる。BLG結晶又は結晶フラグメントは、多くの場合、少なくとも部分的に透明である。タンパク質結晶はさらに複屈折性であることが知られており、この光学特性を使用して、結晶構造を有する未知の粒子を識別することができる。一方、非結晶性BLG凝集物は、輪郭がはっきりしておらず、不透明であり、不規則なサイズの開口した又は多孔性の塊として現れることがよくある。
【0030】
本発明の文脈では、「結晶化」という用語は、タンパク質結晶の形成に関する。結晶化は、例えば、自発的に発生し得るか、又は結晶化シードの添加によって開始され得る。
【0031】
本発明の文脈では、「食用組成物」という用語は、ヒトの消費及び食品原料としての使用に安全であり、トルエン又は他の望ましくない有機溶媒等の問題のある量の有毒な成分を含まない組成物に関する。
【0032】
本発明の文脈では、「ALA」又は「アルファ-ラクトアルブミン」という用語は、哺乳動物種に由来し、例えば、ネイティブ及び/又はグリコシル化された形態であり、天然に存在する遺伝的変異体を含むアルファ-ラクトアルブミンに関する。該用語はさらに、凝集性ALA及び沈殿したBLGを含む。ALAの量に言及する場合、例えば、凝集性ALAを含むALAの総量が言及される。ALAの総量は、例1.31に従って決定される。「凝集性ALA」という用語は、典型的には少なくとも部分的に折りたたまれておらず、さらに、典型的には疎水性相互作用及び/又は共有結合によって、他の変性ALA分子及び/又は他の変性ホエイタンパク質と凝集しているALAに関する。
【0033】
アルファ-ラクトアルブミン(ALA)は、ほとんど全ての哺乳動物種の乳に存在するタンパク質である。ALAはラクトースシンターゼ(LS)ヘテロ二量体の調節サブユニットを形成し、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(β4Gal-T1)は触媒成分を形成する。一緒に、これらのタンパク質は、LSがガラクトース部分をグルコースに転移することによってラクトースを生成することを可能にする。βラクトグロブリンによる主な構造の違いの1つは、ALAには共有結合凝集反応の開始点としての役割を果たし得る任意の遊離チオール基がないことである。
【0034】
本発明の文脈では、「非凝集性ALA」という用語もまた、哺乳動物種に由来し、例えば、ネイティブの、折りたたまれていない及び/又はグリコシル化された形態であり、天然に存在する遺伝的変異体を含むALAに関する。しかしながら、該用語には、凝集性ALA又は沈殿したALAは含まれない。非凝集性BLGの量又は濃度は、例1.6に従って決定される。
【0035】
総ALAに対する非凝集性ALAのパーセンテージは、計算(m総ALA-m非凝集性ALA)/m総ALA
*100%によって決定される。m総ALAは、例1.31に従って決定されるALAの濃度又は量であり、m非凝集性ALAは、例1.6に従って決定される非凝集性ALAの濃度又は量である。
【0036】
本発明の文脈では、「カゼイノマクロペプチド」又は「CMP」という用語は、例えば、ネイティブ及び/又はグリコシル化された形態であり、アスパラギン酸プロテイナーゼによる天然に存在する遺伝的変異体、例えばキモシンを含む、哺乳動物種からの「κ-CN」又は「カッパーカゼイン」の加水分解に由来する親水性ペプチド、残基106~169に関する。
【0037】
本発明の文脈では、「BLG単離物」という用語は、総タンパク質に対して少なくとも85%w/wの量でBLGを含む組成物を意味する。BLG単離物は、好ましくは、全固形分に対して少なくとも30%w/w、好ましくは少なくとも80%w/wの総タンパク質含量を有する。
【0038】
本発明の文脈において、「BLG単離粉末」という用語は、粉末形態のBLG単離物、好ましくは自由流動性粉末に関する。
【0039】
本発明の文脈では、「BLG分離液」という用語は、液体形態、好ましくは水溶液のBLG単離物に関する。
【0040】
「ホエイ」という用語は、乳のカゼインが沈殿して除去された後に残る液相に関する。カゼインの沈殿は、例えば乳の酸性化及び/又はレンネット酵素の使用によって達成され得る。カゼインのレンネットベースの沈殿によって生成されるホエイ生成物である「スイートホエイ」、及びカゼインの酸ベースの沈殿によって生成されるホエイ生成物である「酸ホエイ」又は「サワーホエイ」等、幾つかのタイプのホエイが存在する。カゼインの酸ベースの沈殿は、例えば、食用酸の添加又は細菌培養によって達成され得る。
【0041】
「乳清」という用語は、例えば、精密濾過又は大孔径限外濾過によってカゼイン及び乳脂肪球が乳から除去されたときに残る液体に関する。乳清は、「理想的なホエイ」と称されることもある。
【0042】
「乳清タンパク質」又は「血清タンパク質」という用語は、乳清中に存在するタンパク質に関する。
【0043】
本発明の文脈では、「ホエイタンパク質」という用語は、ホエイ又は乳清中に見られるタンパク質に関する。ホエイタンパク質は、ホエイ若しくは乳清に見られるタンパク質種のサブセットである場合、またさらには単一のホエイタンパク質種の場合もあり、又はホエイ若しくは/及び乳清に見られるタンパク質種の完全なセットである場合がある。
【0044】
本発明の文脈では、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物の主な非BLGタンパク質は、ALA、CMP、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、オステオポンチン、ラクトフェリン、及びラクトペルオキシダーゼである。本発明の文脈では、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物の主な非BLGホエイタンパク質の重量パーセントは、以下のとおりである:
総タンパク質に対して18%w/wの量のALA、
総タンパク質に対して18%w/wの量のCMP、
総タンパク質に対して4%w/wの量のBSA、
総タンパク質に対して5%w/wの量のカゼイン種、
総タンパク質に対して6%w/wの量の免疫グロブリン、
総タンパク質に対して0.5%w/wの量のオステオポンチン、
総タンパク質に対して0.1%w/wの量のラクトフェリン、及び
総タンパク質に対して0.1%w/wの量のラクトペルオキシダーゼ。
【0045】
カゼインという用語は、乳に見られるカゼインタンパク質に関し、個々のカゼイン種である生乳に見られるネイティブミセルカゼインとカゼインの両方を包含する。
【0046】
本発明の文脈では、「母液」という用語は、BLGが結晶化され、BLG結晶が少なくとも部分的に除去された後に残るホエイタンパク質溶液に関する。母液にはまだ幾つかのBLG結晶が含まれている可能性があるが、通常は分離を免れた小さなBLG結晶のみが含まれている。
【0047】
本発明の文脈では、「過飽和」又は「BLGに関して過飽和」である液体は、所与の物理的及び化学的条件でその液体中の非凝集性BLGの飽和点を超える溶解した非凝集性BLGの濃度を含む。「過飽和」という用語は、結晶化の分野でよく知られており(例えば、Gerard Coquerela,「Crystallization of molecular systems from solution:phase diagrams,supersaturation and other basic concepts」,Chemical Society Reviews,p.2286-2300,Issue 7,2014を参照されたい)、過飽和は、様々な測定手法(例えば、分光法又は粒子径分析)によって決定され得る。本発明の文脈では、BLGに関する過飽和を、以下の手順によって決定する。
【0048】
特定の条件設定で液体がBLGに関して過飽和であるかどうかを試験する手順:
a)試験する液体のサンプル50mLを、高さ115mm、内径25mm、及び容量50mlの遠心管(VWRカタログ番号525-0402)に移す。工程a)~h)の間、サンプル及びその後続する画分を液体の元の物理的及び化学的条件に保つように注意する必要がある:
b)サンプルを直ちに3000gで3.0分間、最大30秒の加速及び最大30秒の減速で遠心分離する。
c)遠心分離の直後に、上清をできるだけ多く(ペレットが形成された場合にペレットを乱さずに)第2の遠心管(工程aと同じタイプ)に移す。
d)上清のサブサンプル0.05mL(サブサンプルA)を採取する。
e)粒子径が最大200ミクロンのBLG結晶10mg(全固形分に対して少なくとも98%の純粋な非凝集性BLG)を第2の遠心管に加え、混合物を攪拌する。
f)第2の遠心管を元の温度で60分間放置する。
)工程f)の直後に、第2の遠心管を500gで10分間遠心分離し、上清の別のサブサンプル(サブサンプルB)0.05mLを採取する。
h)工程g)の遠心分離ペレットを回収し、存在する場合は、milliQ水に再懸濁し、顕微鏡で見える結晶の存在について懸濁液を直ちに調べる。
i)例1.6に概説されている方法を使用して、サブサンプルA及びBの非凝集性BLGの濃度を決定する。結果を、サブサンプルの総重量に対する%BLGw/wとして表す。サブサンプルAの非凝集性BLGの濃度はCBLG,Aと称され、サブサンプルBの非凝集性BLGの濃度はCBLG,Bと称される。
j)工程a)のサンプルを採取した液体は、CBLG,BがCBLG,Aよりも低く、且つ工程i)で結晶が観察される場合、(特定の条件で)過飽和であった。
【0049】
本発明の文脈では、「液体」及び「溶液」という用語は、例えば、タンパク質結晶又は他のタンパク質粒子等の粒子状物質を含まない組成物と、液体並びに固体及び/又は半固体粒子の組み合わせを含む組成物の両方を包含する。したがって、「液体」又は「溶液」は、懸濁液であり得るか、さらにはスラリーであり得る。ただし、「液体」及び「溶液」は、好ましくはポンプ輸送可能である。
【0050】
本発明の文脈では、「ホエイタンパク質濃縮物」(WPC)及び「血清タンパク質濃縮物」(SPC)という用語は、全固形分に対して20~89%w/wの総量のタンパク質を含む乾燥又は水性組成物に関する。
【0051】
WPC又はSPCは、好ましくは以下を含む:
全固形分に対して20~89%w/wのタンパク質、
総タンパク質に対して15~70%w/wのBLG、
総タンパク質に対して8~50%w/wのALA、及び
タンパク質に対して0~40%w/wのCMP。
【0052】
或いは、しかしまた好ましいことに、WPC又はSPCは以下を含み得る:
全固形分に対して20~89%w/wのタンパク質、
総タンパク質に対して15~90%w/wのBLG、
総タンパク質に対して4~50%w/wのALA、及び
タンパク質に対して0~40%w/wのCMP。
【0053】
好ましくは、WPC又はSPCは以下を含む:
全固形分に対して20~89%w/wのタンパク質、
総タンパク質に対して15~80%w/wのBLG、
総タンパク質に対して4~50%w/wのALA、及び
タンパク質に対して0~40%w/wのCMP。
【0054】
より好ましくは、WPC又はSPCは以下を含む:
全固形分に対して70~89%w/wのタンパク質、
総タンパク質に対して30~90%w/wのBLG、
総タンパク質に対して4~35%w/wのALA、及び
タンパク質に対して0~25%w/wのCMP。
【0055】
SPCには典型的には、CMPが含まれていないか、微量のCMPのみが含まれている。
【0056】
「ホエイタンパク質単離物」(WPI)及び「血清タンパク質単離物」(SPI)という用語は、全固形分に対して90~100%w/wの総量のタンパク質を含む乾燥又は水性組成物に関する。
【0057】
WPI又はSPIは、好ましくは以下を含む:
全固形分に対して90~100%w/wのタンパク質、
総タンパク質に対して15~70%w/wのBLG、
総タンパク質に対して8~50%w/wのALA、及び
総タンパク質に対して0~40%w/wのCMP。
【0058】
或いは、しかしまた好ましいことに、WPI又はSPIは以下を含み得る:
全固形分に対して90~100%w/wのタンパク質、
総タンパク質に対して30~95%w/wのBLG、
総タンパク質に対して4~35%w/wのALA、及び
総タンパク質に対して0~25%w/wのCMP。
【0059】
より好ましくは、WPI又はSPIは以下を含み得る:
全固形分に対して90~100%w/wのタンパク質、
総タンパク質に対して30~90%w/wのBLG、
総タンパク質に対して4~35%w/wのALA、及び
総タンパク質に対して0~25%w/wのCMP。
【0060】
SPIには典型的には、CMPが含まれていないか、微量のCMPのみが含まれている。
【0061】
本発明の文脈では、「追加のタンパク質」という用語は、BLGではないタンパク質を意味する。ホエイタンパク質溶液に存在する追加のタンパク質は、典型的には、乳清又はホエイに見られる非BLGタンパク質の1つ以上を含む。かかるタンパク質の非限定的な例は、アルファ-ラクトアルブミン、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、カゼイノマクロペプチド(CMP)、オステオポンチン、ラクトフェリン、及び乳脂肪球膜タンパク質である。
【0062】
「から本質的になる」及び「から本質的になっている」という用語は、問題の請求項又は特徴が、特定の材料又は工程、並びに特許請求の範囲に記載された発明の基本的及び新規の特性(複数の場合がある)に実質的に影響を与えないものを包含することを意味する。
【0063】
本発明の文脈では、「Y及び/又はX」という句は、「Y」若しくは「X」又は「Y及びX」を意味する。同じ論理に沿って、「n1、n2、…、ni-1、及び/又はni」という句は、「n1」若しくは「n2」若しくは…若しくは「ni-1」若しくは「ni」、又は成分:n1、n2、…ni-1、及びniの任意の組み合わせを意味する。
【0064】
本発明の文脈では、「乾燥する」又は「乾燥した」という用語は、問題の組成物又は生成物が、最大10%w/wの水、好ましくは最大6%w/w、より好ましくはさらに少ない水を含むことを意味する。
【0065】
本発明の文脈では、「物理的微生物減少」という用語は、組成物の生存可能な微生物の総量の減少をもたらす組成物との物理的相互作用に関する。該用語は、結果として微生物を死滅させる化学物質の添加を包含しない。該用語はさらに、噴霧乾燥中に噴霧された液滴がさらされる熱曝露を含まないが、噴霧乾燥前の可能な予熱を含む。
【0066】
本発明の文脈では、粉末のpHは、90gの脱塩水に混合した10gの粉末のpHを指し、例1.16に従って測定される。
【0067】
本発明の文脈では、特定の組成物の成分、製品、又は材料の重量パーセント(%w/w)は、別の基準(例えば、全固形分又は総タンパク質)が具体的に言及されていない限り、特定の組成物、製品、又は材料の重量に対するその成分の重量パーセントを意味する。
【0068】
本発明の文脈では、プロセスの工程である「濃縮」及び動詞「濃縮する」は、タンパク質の濃度に関するものであり、全固形分ベースのタンパク質の濃度及び総重量ベースのタンパク質の濃度の両方を包含する。これは、例えばその濃度は、タンパク質の含有量が全固形分に対して増加する限り、組成物のタンパク質の絶対濃度w/wが増加することを必ずしも必要としない。
【0069】
本発明の文脈では、成分Xと成分Yとの間の「重量比」という用語は、計算mX/mYによって得られる値を意味し、式中、mXは、成分Xの量(重量)であり、mYは、成分Yの量(重量)である。
【0070】
本発明の文脈では、「少なくとも低温殺菌」という用語は、70℃で10秒間の熱処理以上の微生物死滅効果を有する熱処理に関する。殺菌効果を決定するための基準は、大腸菌(E.coli)O157:H7である。
【0071】
本発明の文脈では、「ホエイタンパク質フィード」という用語は、液体BLG単離物が由来するホエイタンパク質源に関する。ホエイタンパク質フィードは、液体BLG単離物よりも総タンパク質に対するBLGの含有量が少なく、典型的にはWPC、WPI、SPC、又はSPIである。
【0072】
本発明の文脈では、「BLGに富む組成物」という用語は、ホエイタンパク質フィードからBLGを単離することから生じるBLGに富む組成物に関する。BLGに富む組成物は、典型的には、ホエイタンパク質フィードと同じホエイタンパク質を含むが、ホエイタンパク質フィードよりも総タンパク質に対して著しく高い濃度でBLGが存在する。BLGに富む組成物は、例えば、クロマトグラフィー、タンパク質結晶化及び/又は膜ベースのタンパク質分画によってホエイタンパク質フィードから調製され得る。BLGに富む組成物は、総タンパク質に対して少なくとも85%w/w、好ましくは少なくとも90%w/wの量のBLGを含む。場合によっては、BLGに富む組成物を液体BLG単離物として直接使用することができる。ただし、BLGに富む組成物を液体BLG単離物に変換するには、多くの場合、追加の処理が必要である。
【0073】
本発明の文脈では、「ホエイタンパク質溶液」という用語は、塩溶様式でBLGに関して過飽和であり、BLG結晶を調製するのに有用である特殊な水性ホエイタンパク質組成物を説明するために使用される。
【0074】
本発明の文脈では、「滅菌」という用語は、問題の滅菌組成物、又は製品がいかなる生存可能な微生物も含まず、したがって、室温での貯蔵中に微生物の増殖がないことを意味する。滅菌された組成物は無菌である。
【0075】
飲料調製物等の液体を滅菌し、滅菌容器に無菌的に包装する場合、典型的には、室温で少なくとも6ヵ月の貯蔵寿命がある。滅菌処理は、液体の腐敗を引き起こす可能性のある胞子及び微生物を死滅させる。
【0076】
本発明の文脈では、「エネルギー含量」という用語は、食品に含まれるエネルギーの総含有量を意味する。エネルギー含量は、キロジュール(kJ)又はキロカロリー(kcal)で測定でき、食品の量あたりのカロリー、例えば、食品100グラムあたりのkcalと称される。一例は、350kcal/100グラムの飲料のエネルギー含量を有する飲料である。
食品の総エネルギー含量には、食品に存在する全ての多量栄養素からのエネルギー寄与、例えばタンパク質、脂質、及び炭水化物からのエネルギーが含まれる。食品中の多量栄養素からのエネルギーの分布は、食品中の多量栄養素の量、及び食品中の総エネルギー含量に対する多量栄養素の寄与に基づいて計算できる。エネルギー分布は、食品の総エネルギー含量のエネルギーパーセント(E%)として表すことができる。例えば、タンパク質20E%、炭水化物50E%、脂質30E%を含む飲料の場合、これは、総エネルギーの20%がタンパク質に由来し、総エネルギーの50%が炭水化物に由来し、総エネルギーの30%が脂肪(脂質)に由来することを意味する。
【0077】
「栄養的に完全な栄養補助食品」という用語は、タンパク質、脂質、及び炭水化物を含み、さらにビタミン、ミネラル、及び微量元素を含む食品を意味し、該食品は完全で健康的な食事に一致する栄養プロファイルを有する。
【0078】
本発明の文脈において、「栄養的に不完全な栄養補助食品」という用語は、1つ以上の多量栄養素を含み、任意に、さらにビタミン、ミネラル、及び微量元素を含む食品を意味する。栄養的に不完全な飲料は、唯一の栄養素としてタンパク質を含んでもよく、又は例えば、タンパク質及び炭水化物を含んでもよい。
【0079】
「特別な医療目的の食品(FSMP:food for special medical purposes)」又は「医療用食品」という用語は、経口摂取又は経管栄養用の食品であり、特有の栄養要求がある特定の医学的障害、疾患、又は状態に対して使用され、また医学的管理下で使用される。医療用食品は、栄養的に完全な栄養補助食品/飲料であってもよく、又は栄養的に不完全な栄養補助食品/飲料であってもよい。
【0080】
「栄養素」という用語は、生物が生き残り、成長し、繁殖するために使用する物質を意味する。栄養素は、多量栄養素又は微量栄養素のいずれであってもよい。多量栄養素は、消費されたときにエネルギーを提供する栄養素、例えば、タンパク質、脂質、及び炭水化物である。微量栄養素は、ビタミン、ミネラル、及び微量元素のような栄養素である。
【0081】
「栄養素」という用語は、生物が生き残り、成長し、繁殖するために使用する物質を意味する。栄養素は、多量栄養素又は微量栄養素のいずれであってもよい。多量栄養素は、消費されたときにエネルギーを提供する栄養素、例えば、タンパク質、脂質、及び炭水化物である。微量栄養素は、ビタミン、ミネラル、及び微量元素の栄養素である。
【0082】
「インスタント飲料粉末」又は「インスタント飲料粉末製品」という用語は、水等の液体の添加によって液体飲料に変換することができる粉末を意味する。
【0083】
本発明の文脈では、実質的なものとして使用される「飲料調製物」及び「調製物」という用語は、例えば、注ぐ、すする、又は経管栄養によって飲料として摂取することができる任意の水ベースの液体に関する。
【0084】
本発明の文脈では、「タンパク質画分」という用語は、問題の組成物のタンパク質、例えば、粉末又は飲料調製物のタンパク質に関する。
【0085】
本発明の文脈では、「渋味」という用語は、口当たりに関する。渋味は頬の筋肉の収縮のように感じ、唾液の産生を増加させる。したがって、渋味は、それ自体が味ではなく、物理的な口当たり及び口の中の時間依存性の感覚である。
【0086】
本発明の文脈では、「乾いた口当たり」という用語は、口の中の感触に関し、口及び歯が乾燥しているように感じ、唾液の産生が最小限に抑えられる。
そのため、乾いた口当たりは、それ自体は味ではないが、物理的な口当たり及び口の中の時間依存性の感覚である。
【0087】
本発明の文脈では、本明細書で使用される「ミネラル」という用語は、別段の指定がない限り、主要なミネラル、微量又は少数のミネラル、他のミネラル、及びそれらの組み合わせのいずれか1つを指す。主なミネラルとしては、カルシウム、リン、カリウム、硫黄、ナトリウム、塩素、マグネシウムが挙げられる。微量又は少数のミネラルとしては、鉄、コバルト、銅、亜鉛、モリブデン、ヨウ素、セレン、マンガンが挙げられ、その他のミネラルとしては、クロム、フッ素、ホウ素、リチウム、及びストロンチウムが挙げられる。
【0088】
本発明の文脈では、本明細書で使用される「脂質」、「脂肪」、及び「油」という用語は、別段の指定がない限り、植物若しくは動物に由来するか、又はそれらから加工される脂質材料を指すために同じ意味で使用される。これらの用語には、合成脂質材料がヒトの消費に適している限り、かかる合成脂質材料も含まれる。
【0089】
本発明の文脈では、「透明」という用語は、視覚的に清澄な外観を有し、光を通し、それを通して明瞭な画像が現れる飲料調製物を包含する。透明な飲料の濁度は最大200NTUである。
【0090】
本発明の文脈では、「不透明」という用語は、目に見えて不明瞭な外観を有する飲料調製物を包含し、それは200NTUを超える濁度を有する。
【0091】
本発明の一態様は、5.5~8.0の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、飲料が
-飲料の重量に対して1~20%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85%w/wがβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含む飲料に関する。
【0092】
本発明の利点は、中性のpH及び低粘度を有する飲用飲料を製造できることである。
【0093】
包装された熱処理飲料調製物のタンパク質の少なくとも85%w/wがBLGであることは、多くの理由で非常に有益である。
利点は、本発明による包装された熱処理飲料調製物が、同様のWPI飲料と比較して、より安定であり、着色が少ないことである。
【0094】
これは、本発明の包装された熱処理飲料調製物によって得られる。そのため、驚くべきことに、より黄色がかった色を有する熱処理されたpH中性のWPI飲料と比較して、高タンパク質濃度が適用された場合であっても、包装された熱処理飲料はより着色が少ないことがわかった。
【0095】
そのため、本発明の包装された熱処理飲料の本発明の組成物に起因して、黄色を除去又は低減するために漂白又は追加の白色化が必要とされないことが利点である。
【0096】
本発明の包装された熱処理飲料調製物の幾つかの好ましい実施形態では、タンパク質の少なくとも85%w/wがBLGである。好ましくは、タンパク質の少なくとも88%w/wがBLGであり、より好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは少なくとも91%w/w、最も好ましくは少なくとも92%w/wのタンパク質がBLGである。
【0097】
さらに高い相対量のBLGが実現可能かつ望ましいため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物のタンパク質の少なくとも94%w/wはBLGであり、より好ましくは、タンパク質の少なくとも96%w/wがBLGであり、さらにより好ましくは、タンパク質の少なくとも98%w/wがBLGであり、最も好ましくは、タンパク質のおよそ100%w/wがBLGである。
【0098】
例えば、包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは、総タンパク質に対して少なくとも97.5%w/wの量、好ましくは少なくとも98.0%w/w、より好ましくは少なくとも98.5%w/w、さらにより好ましくは少なくとも99.0%の量のBLG、最も好ましくは総タンパク質に対して少なくとも99.5%w/w、総タンパク質に対しておよそ100.0%w/w等の量のBLGを含む。
【0099】
包装された熱処理飲料調製物のタンパク質は、好ましくは哺乳動物の乳から、好ましくは反芻動物の乳、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、ラクダ、ラマ、ウマ及び/又はシカ由来の乳から調製される。ウシの乳由来のタンパク質が特に好ましい。したがって、包装された熱処理飲料調製物のタンパク質は、好ましくはウシの乳タンパク質である。
【0100】
包装された熱処理飲料調製物のタンパク質は、好ましくはホエイタンパク質又は乳清タンパク質であり、さらにより好ましくはウシのホエイタンパク質又は乳清タンパク質である。
【0101】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、少なくとも低温殺菌されている。
【0102】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、無菌である。
【0103】
飲料調製物の外観は、透明及び不透明の飲料の両方に関して消費者にとって重要である。特に、清澄で水のような飲料、又は白色で乳白色の飲料の場合、本発明者らは、飲料の色を制御できること、又はむしろ飲料の色の欠如を制御できることが有利であることを見出した。
【0104】
しかしながら、飲料の製造中に専用の着色剤が添加されたとしても、本発明者らは、飲料の望ましくない変動又は外観の変化を回避するために、追加の色源を回避できることが有利であることを見出した。本発明者らは、本明細書に記載の高いBLGタンパク質プロファイルが、従来のWPIよりも色が無彩色/無色であり、従来のWPIよりも少ない色の変化で寄与することを見出した。従来のWPIは黄色がかった外観をしており、これは、漂白剤等の酸化剤を添加することである程度減少する可能性がある。しかしながら、酸化剤の添加はしばしば望ましくなく、本発明ではそれはもはや必要でさえない。
【0105】
例1.9で説明されているCIELABカラースケールは、飲料の色を決定するために使用される。例として、正のデルタb*値は、脱塩水よりも黄色がかった色を示し、一方、負のデルタb*値は、脱塩水よりも青みがかった飲料を示す。したがって、消費者には、黄色でも青色でもない飲料を得るために、色デルタb*値を0に近づけることがしばしば好まれる。
【0106】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、特に調製物が最大200NTU、より好ましくは最大40NTUの濁度を有する場合、包装された熱処理飲料調製物は、CIELABカラースケールで-0.10~+0.51の範囲の色値デルタb*を有する。
【0107】
本発明の他の好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、CIELABカラースケールで0.0~0.40の範囲、好ましくは+0.10~+0.25の範囲の色値デルタb*を有する。
【0108】
例えば、200NTU超、好ましくは1000NTU超の濁度を有する不透明な飲料の調製の場合、包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは、CIELABカラースケールで-6~-1.7の範囲、好ましくは-5.0~-2.0の範囲の色値デルタb*を有する。
【0109】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、特に調製物が最大200NTU、より好ましくは最大40NTUの濁度を有する場合、包装された熱処理飲料調製物のタンパク質画分は、CIELABカラースケールで-0.10~+0.51の範囲の色値デルタb*を有する。
【0110】
これらの飲料は、デルタb*値が高く黄色が多いWPIを含む飲料と比較して、黄色が少なくなっている。
【0111】
本発明の幾つかの他の好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物のタンパク質画分は、CIELABカラースケールで0.0~0.40の範囲、好ましくは+0.10~+0.25の範囲の色値デルタb*を有する。
【0112】
a*値は緑及び赤の成分を表し、緑は負の方向、赤は正の方向である。赤でも緑でもない飲料を得るには、色デルタa*値をほぼゼロにすることがしばしば好ましい。
【0113】
典型的には、特に調製物が最大200NTU、より好ましくは最大40NTUの濁度を有する場合、包装された熱処理飲料調製物のタンパク質画分は、CIELABカラースケールで-0.2~0.2の範囲のデルタa*を有する。
好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、CIELABカラースケールで-0.15~0.15の範囲、好ましくは-0.10~0.10の範囲の色値デルタa*を有する。
【0114】
本発明者らは、包装された熱処理飲料調製物の所望の特性の幾つかに達するようにミネラル含量を制御することが有利となり得ることを見出した。
【0115】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書で定義されるBLG単離物を使用すると、粘度を損なうことなく、ゲル化を回避して、高ミネラル濃度を有する飲料調製物を製造できることを見出した(例2を参照されたい)。これにより、高いミネラル含量を有する包装された熱処理飲料調製物を製造できる可能性があり、栄養的に完全な栄養補助食品又は栄養的に不完全な栄養補助食品である飲料を製造できる可能性がある。
【0116】
本発明の幾つかの実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、複数のミネラルを含む。例示的な一実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、少なくとも4種類のミネラルを含む。一実施形態では、4種類のミネラルは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及びカルシウムである。
【0117】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、Na、K、Mg及びCaの量の合計は、包装された熱処理飲料調製物中に0~400mMの範囲内、好ましくは10~200mMの範囲内、又は好ましくは20~100mMの範囲内である。
【0118】
本発明の他の好ましい実施形態では、Na、K、Mg及びCaの量の合計は、包装された熱処理飲料調製物中に0~100mMの範囲であり、より好ましくは5~50mMの範囲であり、さらにより好ましくは10~35mMの範囲である。
【0119】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、Na、K、Mg及びCaの量の合計は、包装された熱処理飲料調製物中に最大400mMである。
【0120】
本発明の他の好ましい実施形態では、Na、K、Mg及びCaの量の合計は、包装された熱処理飲料調製物中に最大300mM、好ましくは最大200mM、好ましくは最大100mM、又は好ましくは最大80mM、又は好ましくは最大60mM、又は好ましくは最大40mM、又は好ましくは最大30mM、又は好ましくは最大20mM、又は好ましくは最大20mM、又は好ましくは最大10mM、又は好ましくは最大5mM、又は好ましくは最大1mMである。
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、Mg及びCaの量の合計は、包装された、熱処理飲料調製物中に最大75mM、より好ましくは包装された熱処理飲料調製物中に最大40mM、より好ましくは包装された熱処理飲料調製物中に最大20mMである。
【0121】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、Mg及びCaの量の合計は、包装された熱処理飲料調製物中に最大10mM、より好ましくは包装された熱処理飲料調製物中に最大8.0mM、より好ましくは包装された熱処理飲料調製物中に最大6.0mM、さらにより好ましくは包装された熱処理飲料調製物中に最大4.0mM、最も好ましくは包装された熱処理飲料調製物中に最大2.0mMである。
【0122】
本発明の別の例示的な実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、カルシウム、ヨウ素、亜鉛、銅、クロム、鉄、リン、マグネシウム、セレン、マンガン、モリブデン、ナトリウム、カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される複数のミネラルを含む。
【0123】
本発明の他の好ましい実施形態では、熱処理された飲料調製物は、低ミネラル飲料である。
【0124】
本発明の文脈において、「低ミネラル」という用語は、以下:
-全固形分に対して最大1.2%w/w透明の灰分、
-全固形分に対して最大0.3%w/wのカルシウム及びマグネシウムの総含有量、
-全固形分に対して最大0.10%w/wのナトリウム及びカリウムの総含有量、
-タンパク質100gあたり最大100mgのリンの総含有量、の少なくとも1つ、好ましくは2つ、さらにより好ましくは全てを有する組成物、例えば、液体、飲料、粉末又は別の食品に関する。
【0125】
好ましくは、低ミネラル組成物は、以下:
-全固形分に対して最大0.7%w/wの灰分、
-全固形分に対して最大0.2%w/wのカルシウム及びマグネシウムの総含有量、
-全固形分に対して最大0.08%w/wのナトリウム及びカリウムの総含有量、
-タンパク質100gあたり最大80mgのリンの総含有量、の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、さらにより好ましくは全てを有する。
【0126】
さらにより好ましくは、低ミネラル組成物は、以下:
-全固形分に対して最大0.5%w/wの灰分、
-全固形分に対して最大0.15%w/wのカルシウム及びマグネシウムの総含有量、
-全固形分に対して最大0.06%w/wのナトリウム及びカリウムの総含有量、
-タンパク質100gあたり最大50mgのリンの総含有量、の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、さらにより好ましくは全てを有する。
【0127】
低ミネラル組成物は、以下:
-全固形分に対して最大0.5%w/wの灰分、
-全固形分に対して最大0.15%w/wのカルシウム及びマグネシウムの総含有量、
-全固形分に対して最大0.06%w/wのナトリウム及びカリウムの総含有量、
-タンパク質100gあたり最大50mgのリンの総含有量、を有することが特に好ましい。
【0128】
本発明の別の例示的な実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、カルシウム、ヨウ素、亜鉛、銅、クロム、鉄、リン、マグネシウム、セレン、マンガン、モリブデン、ナトリウム、カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される複数のミネラルを含む。
【0129】
本発明者らは、本発明により、腎疾患を患っているか、そうでなければ腎機能が低下している患者に有利である、リン、及びカリウム等の他のミネラルの含有量が非常に少ない包装された熱処理飲料調製物を調製できることを見出した。
【0130】
包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは低リン飲料調製物である。
【0131】
包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは低カリウム飲料調製物である。
【0132】
包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは、低リン及び低カリウム飲料調製物である。
【0133】
本発明の文脈において、「低リン」という用語は、タンパク質100gあたり最大100mgのリンの総含有量を有する組成物、例えば、液体、粉末、又はその他の食品に関する。好ましくは、低リン組成物は、タンパク質100gあたり最大80mgのリンの総含有量を有する。より好ましくは、低リン組成物は、タンパク質100gあたり最大50mgのリンの総含有量を有し得る。さらにより好ましくは、低リン組成物は、タンパク質100gあたり最大20mgのリンのリン総含有量を有し得る。さらにより好ましくは、低リン組成物は、タンパク質100gあたり最大5mgのリンのリン総含有量を有し得る。本発明による低リン組成物を、腎機能が低下している患者群に対する食品を製造するための食品原料として使用することができる。
【0134】
そのため、本発明の幾つかの特に好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大80mgのリンを含む。好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大30mgのリンを含む。より好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大20mgのリンを含む。さらにより好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大10mgのリンを含む。最も好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大5mgのリンを含む。
【0135】
リンの含有量は、問題の組成物の元素リンの総量に関連し、例1.19に従って決定される。
【0136】
本発明の文脈において、「低カリウム」という用語は、タンパク質100gあたり最大700mgのカリウムの総含有量を有する組成物、例えば、液体、粉末、又はその他の食品に関する。好ましくは、低カリウム組成物は、タンパク質100gあたり最大600mgのカリウムの総含有量を有する。より好ましくは、低カリウム組成物は、タンパク質100gあたり最大500mgのカリウムの総含有量を有し得る。より好ましくは、低カリウム組成物は、タンパク質100gあたり最大400mgのカリウムのカリウム総含有量を有し得る。より好ましくは、低カリウム組成物は、タンパク質100gあたり最大300mgのカリウムのカリウム総含有量を有し得る。さらにより好ましくは、低カリウム組成物は、タンパク質100gあたり最大200mgのカリウムのカリウム総含有量を有し得る。さらにより好ましくは、低カリウム組成物は、タンパク質100gあたり最大100mgのカリウムのカリウム総含有量を有し得る。さらにより好ましくは、低カリウム組成物は、タンパク質100gあたり最大50mgのカリウムのカリウム総含有量を有し得て、さらにより好ましくは、低カリウム組成物は、タンパク質100gあたり最大10mgのカリウムのカリウム総含有量を有し得る。
【0137】
本発明による低カリウム組成物を、腎機能が低下している患者群に対する食品を製造するための食品原料として使用することができる。
【0138】
そのため、本発明の幾つかの特に好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大600mgのカリウムを含む。より好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大500mgのカリウムを含む。より好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大400mgのカリウムを含む。より好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大300mgのカリウムを含む。より好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大200mgのカリウムを含む。より好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大100mgのカリウムを含む。さらにより好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大50mgのカリウムを含み、さらにより好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質100gあたり最大10mgのカリウムを含む。
【0139】
カリウムの含有量は、問題の組成物の元素カリウムの総量に関連し、例1.19に従って決定される。
【0140】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、リン最大100mg/タンパク質100g及びカリウム最大700mg/タンパク質100g、好ましくはリン最大80mg/タンパク質100g及びカリウム最大600mg/タンパク質100g、より好ましくはリン最大60mg/タンパク質100g及びカリウム最大500mg/タンパク質100g、より好ましくはリン最大50mg/タンパク質100g及びカリウム最大400mg/タンパク質100g、又はより好ましくはリン最大20mg/タンパク質100g及びカリウム最大200mg/タンパク質100g、又はさらにより好ましくはリン最大10mg/タンパク質100g及びカリウム最大50mg/タンパク質100gを含む。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、リン最大100mg/タンパク質100g、及びカリウム最大340mg/タンパク質100gを含む。
【0141】
少量のリン及びカリウムを含む熱処理飲料調製は、有利には炭水化物及び脂質で補充することができ、熱処理飲料調製物は、好ましくは飲料の総エネルギー含量の30~60%の範囲、好ましくは35~50E%の範囲の炭水化物の総量、及び総エネルギー含量の20~60%の範囲、好ましくは、30~50E%の範囲の脂質の総量をさらに含む。
【0142】
本発明の一実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、複数のビタミンを含む。例示的な一実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、少なくとも10種類のビタミンを含む。例示的な一実施形態では、実質的に清澄な液体栄養組成物は、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンK、リボフラビン、パントテン酸、ビタミンE、チアミン、ナイアシン、葉酸、ビオチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される複数のビタミンを含む。
【0143】
本発明の一実施形態では、包装された熱処理飲料は、複数のビタミン及び複数のミネラルを含む。
本発明の幾つかの実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、安息香酸、酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、リン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の食用酸を含む。
【0144】
幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、任意に、甘味料、糖ポリマー、及び/又は香料を含む。
【0145】
本発明の一実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、塩、調味料、うまみ調味料及び/又は香辛料からなる群から選択される香料を含む。本発明の好ましい実施形態では、香料は、チョコレート、ココア、レモン、オレンジ、ライム、ストロベリー、バナナ、フォレストフルーツフレーバー又はそれらの組み合わせを含む。香料の選択は、製造する飲料によって異なり得る。
【0146】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、6.5~7.5の範囲のpHを有する。最も好ましくは、採用されるpHは、6.5~7.0のpH又は6.8~7.2のpHである。
【0147】
外観に関して、驚くべきことに、タンパク質の少なくとも85%w/wがBLGであるホエイタンパク質飲料の使用により、熱処理WPI飲料と比較した場合に視覚(色及び濁度)と粘度の両方を改善する可能性があることがわかった。
【0148】
包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは5.5~6.2の範囲のpHを有し、或いは包装された熱処理飲料調製物は6.2~8.0の範囲のpHを有する。
或いは、包装された熱処理飲料調製物は、6.8~8.0の範囲のpHを有し、より好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は6.2~8.0の範囲のpHを有する。
【0149】
本発明の包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは、清澄で透明であり、6.2~8.0の範囲のpH、好ましくはpH6.3~7.6、より好ましくは6.5~7.2のpHで低粘度を有することがわかった。
【0150】
本発明の包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは、pH5.5~8.0の範囲のpHで、好ましくは5.7~6.8、より好ましくは5.8~6.0のpHで低粘度及び乳白色の外観を有することがわかった。。
【0151】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、本発明の飲料調製物は、pH5.6~6.2の範囲のpH、好ましくは5.6~8.0のpHで熱処理され、任意に炭水化物、脂肪、ミネラル及びビタミンの供給源と混合され、6.2~8.0の好ましいpHに調整され、第2の熱処理(UHT)に供されることが好ましいとわかった。
【0152】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、最大200NTUの濁度を有する。
【0153】
包装された熱処理飲料調製物の外観が消費者に着目される。透明性は、消費者が製品を評価するために使用するパラメーターである。飲料調製物の透明度を決定する1つの方法は、例1.7に記載されているように飲料の濁度を測定することによるものである。
【0154】
包装された熱処理飲料調製物の幾つかの実施形態では、飲料調製物が透明であることが有益である。これは、例えば、飲料がスポーツ飲料として、又は「タンパク質水」で使用される場合に有利である可能性があり、その場合、飲料は外観が水に似ていることが有益である。
【0155】
本発明の好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、最大200NTUの濁度を有し、かかる飲料は、透明及び/又は透明である。
【0156】
驚くべきことに、本発明による熱処理された飲料調製物によって、最大200NTUの濁度を有する透明な熱処理された飲料調製物が得られたことが本発明者らによって見出された。
【0157】
これは、適用された熱処理が滅菌及び低温殺菌のいずれの場合でも認められた。
【0158】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、最大150NTUの濁度、又は好ましくは最大100NTUの濁度、又は好ましくは最大80NTUの濁度、又は好ましくは最大60NTUの濁度、又はより好ましくは最大40NTUの濁度、又は好ましくは最大30NTUの濁度、好ましくは最大20NTUの濁度、より好ましくは最大10NTUの濁度、より好ましくは最大5NTUの濁度を有し、さらにより好ましくは、最大2NTUの濁度を有する。
【0159】
本発明の好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、200NTUを超える濁度を有し、かかる飲料は不透明である。
【0160】
包装された熱処理飲料調製物の幾つかの実施形態では、飲料調製物が不透明であることが有益である。これは、例えば、飲料が乳に似ていて、乳白色の外観を有するべきである場合に有利である。栄養的に完全な栄養補助食品の外観は、典型的には、不透明である。
【0161】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、250NTUを超える濁度を有する。好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、300NTUを超える濁度を有し、より好ましくは、500NTUを超える濁度を有し、より好ましくは、1000を超える濁度、好ましくは1500NTUを超える濁度を有し、さらにより好ましくは、2000NTUを超える濁度を有する。
【0162】
熱処理された飲料調製物中の不溶性物質の量は、飲料の不安定性、及びどの程度まで沈殿物の沈降が経時的に起こるのかという尺度である。不溶性物質を多く含む飲料は、通常、不安定であると見なされる。
【0163】
本発明の文脈において、ホエイタンパク質飲料調製物は、加熱されたサンプル中の総タンパク質の最大15%が3000gで5分間の遠心分離で沈殿する場合、「安定」であると見なされる。例1.10の分析方法を参照されたい。
驚くべきことに、BLGが少なくとも85w/w%の量でタンパク質源として使用される場合、より低いBLG含量を有するWPIがタンパク質源として使用される場合と比較して、タンパク質画分は、3000gで5分間遠心分離した後に最大15%の不溶性物質を含むことがわかり、該飲料調製物が安定していることを実証した。
【0164】
したがって、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、熱処理飲料調製物のタンパク質画分は、最大15%の不溶性物質を含む。
【0165】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、最大15%の不溶性物質を含む。
【0166】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは最大12%の不溶性物質、より好ましくは最大10%の不溶性物質、さらにより好ましくは最大8%の不溶性物質、最も好ましくは最大6%の不溶性物質を含む。
【0167】
さらに低レベルの不溶性物質がしばしば好ましく、幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、最大4%の不溶性物質、好ましくは最大2%の不溶性物質、より好ましくは最大1%の不溶性物質を含み、最も好ましくは、検出可能な不溶性物質が全くない。
【0168】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、100/秒の剪断速度で22℃で測定した場合、最大200cPセンチポアズの粘度を有する。
【0169】
消費者は、熱処理された飲料がゲルではなく液体であることを好む。
【0170】
飲料調製物の粘度を決定する1つの方法は、例1.8に記載されているように飲料の粘度を測定することによるものである。
【0171】
包装された熱処理飲料調製物の幾つかの実施形態では、飲料調製物が低粘度であることが有益である。これは、飲料がスポーツ飲料として、又は幾つかの実施形態では栄養的に完全な飲料として使用される場合に有利である。
【0172】
驚くべきことに、本発明者らは、中性のpHを有し、低温殺菌等の熱処理に供され、さらには滅菌された飲料調製物が、22℃で100/秒の剪断速度で測定した場合、最大200センチポアズの粘度を有することを見出した。
したがって、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、最大200cPの粘度を有する。
【0173】
好ましくは、包装された熱処理飲料調製物の粘度は、最大150cP、好ましくは最大100cP、より好ましくは最大80cP、さらにより好ましくは最大50cP、最も好ましくは最大40cPである。
【0174】
さらに低い粘度がしばしば好ましいため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物の粘度は、最大20cP、好ましくは最大10cP、より好ましくは最大5cP、さらにより好ましくは最大3cP、さらにより好ましくは最大2cP、さらにより好ましくは最大1cPである。
【0175】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、飲料調製物の重量に対して2~18%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0176】
本発明の他の好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、飲料の重量に対して3~20%w/w、より好ましくは3~18%w/w、さらに好ましくは3~15%w/w、最も好ましくは3~10%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0177】
本発明の幾つかの実施形態では、包装された熱処理飲料調製物が、飲料の重量に対して1.0~10.0%w/wのタンパク質含量を有することが有利である。
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、飲料調製物の重量に対して1~10%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0178】
包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは飲料の重量に対して2.0~9.0%w/wの総量のタンパク質を含むか、又は包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは飲料の重量に対して3.0~8.0%w/wの総量のタンパク質を含むか、又包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは飲料の重量に対して5.0~7.5%w/wの総量のタンパク質を含むか、又は包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは飲料の重量に対して4.0~6.0%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0179】
最も好ましくは、包装された熱処理飲料調製物は、飲料の重量に対して4.0~6.0%w/wの総量のタンパク質を含む。このタンパク質の範囲は、熱処理された飲料調製物がスポーツ飲料である場合に特に関係がある。しかしながら、この範囲は、飲料の幾つかの医療用途にも関連している。
【0180】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、飲料調製物の重量に対して10~20%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0181】
本発明の幾つかの実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは、飲料の重量に対して10~18%w/wの総量のタンパク質を含むか、又は好ましくは、飲料の重量に対して12.0~16.0%w/wの総量のタンパク質を含むか、又は好ましくは、飲料の重量に対して13.0~15.0%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0182】
幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、飲料の重量に対して1.0~6.0%w/wの総量のタンパク質を含み、他の好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、飲料の重量に対して6.0~12.0%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0183】
又は、他の好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、飲料の重量に対して12.0~20.0%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0184】
飲料の全てのタンパク質は、好ましくはホエイタンパク質及び/又は乳清タンパク質である。
【0185】
本発明の包装された熱処理飲料調製物は、スポーツ飲料として特に有用であり、その場合、好ましくは、任意に限られた量の脂質のみ及び/又は任意に限られた量の炭水化物も含む。
【0186】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、調製物は、スポーツ飲料として特に有用であり、例えば、飲料の重量に対して1~20%w/w、好ましくは飲料の重量に対して2~15%w/w、又は好ましくは飲料の重量に対して2~10%w/w、最も好ましくは飲料の重量に対して2~6%w/wの範囲の総量のタンパク質を含む。
【0187】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、栄養的に不完全な栄養補助食品として特に有用であり、例えば、飲料の重量に対して2~20%w/w、又は好ましくは飲料の重量に対して3~10%w/wの範囲の総量のタンパク質を含む。
【0188】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、栄養的に完全な栄養補助食品として特に有用であり、例えば、飲料の重量に対して4~20%w/w、又は好ましくは飲料の重量に対して5~18%w/wの範囲の総量のタンパク質を含む。
【0189】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、腎疾患を患っている、又はそうでなければ腎機能が低下している患者にとって特に有利である。
【0190】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、例えば、飲料の重量に対して2~20%w/w、又は好ましくは飲料の重量に対して3~12%w/w、又は好ましくは飲料の重量に対して3~10%w/wの範囲の総量のタンパク質を含む。
【0191】
包装された熱処理飲料調製物は、例えば、好ましくは主要なタンパク質源として、そしてさらにはおそらく唯一のタンパク質源として、他のタンパク質源と組み合わせてBLG単離物を含むことが特に好ましい。
【0192】
タンパク質のネイティブ性の程度は、タンパク質の濃度、pH、温度、熱処理時間等の幾つかの要因に依存する。
【0193】
固有トリプトファン蛍光発光比(I330nm/I350nm)は、BLGのアンフォールディングの程度の尺度であり、本発明者らは、BLGのアンフォールディングが低いか全くないことと相関する高いBLGトリプトファン蛍光発光比では、固有トリプトファン蛍光発光比(I330nm/I350nm)は、例1.1に従って測定される。
【0194】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330nm/I350nm)を有する。
【0195】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも1.12、好ましくは少なくとも1.13、より好ましくは少なくとも1.15、さらにより好ましくは少なくとも1.17、最も好ましくは少なくとも1.19の固有トリプトファン蛍光発光比(I330nm/I350nm)を有する。
【0196】
BLG単離粉末にかなりの量の非タンパク質物質が含まれている場合は、固有トリプトファン蛍光発光比を測定する前にタンパク質画分を単離することが好ましい。そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末のタンパク質画分は、少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比を有する。
【0197】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末のタンパク質画分は、少なくとも1.12、好ましくは少なくとも1.13、より好ましくは少なくとも1.15、さらにより好ましくは少なくとも1.17、最も好ましくは少なくとも1.19の固有トリプトファン蛍光発光比(I330nm/I350nm)を有する。
【0198】
例えば、BLG単離粉末を脱塩水に溶解し、タンパク質を保持するフィルターを使用して溶液を透析又は限外濾過に基づくダイアフィルトレーションに供することにより、BLG単離粉末からタンパク質画分を分離することができる。
【0199】
タンパク質の変性は、Trp蛍光以外の分析方法でも説明できる。この方法は、例1.3で説明されている。この方法の原理は、変性ホエイタンパク質が、pH4.6未満又はpH4.6超のpH値よりもpH4.6での溶解度が低いことが知られているため、ホエイタンパク質組成物の変性度は、溶液中のタンパク質が安定しているpHでの総量のタンパク質に対するpH4.6での可溶性タンパク質の量を測定することによって決定されることである。
そのため、ホエイタンパク質組成物のタンパク質変性度、Dを次のとおり計算する:
D=((PpH7.0又は3.0-SpH4.6)/PpH7.0又は3.0)*100%
式中、(PpH7.0又は3.0)はpH7.0又は3.0での総タンパク質含量であり、(SpH4.6)はpH4.6での上清中の総タンパク質含量である。例1.3を参照されたい。
【0200】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大10%、好ましくは最大8%、より好ましくは最大6%、さらにより好ましくは最大3%、さらにより好ましくは最大1%、最も好ましくは最大0.2%のタンパク質変性度を有する。
【0201】
本発明の幾つかの実施形態では、タンパク質画分及び又は飲料調製物が、例えば、高温熱処理に供されると、タンパク質変性度は、10%超、好ましくは20%超、好ましくは30%超、好ましくは40%超、又は好ましくは50%超、又は好ましくは70%超、又は好ましくは80%超、又は好ましくは90%超、又は好ましくは95%超、又は好ましくは99%超である。
【0202】
本発明の包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質以外の多量栄養素を含み得る。本発明の幾つかの実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、炭水化物をさらに含む。本発明の熱処理飲料調製物中の総炭水化物含量は、熱処理飲料調製物の使用目的に依存する。
【0203】
本発明の幾つかの実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、少なくとも1つの炭水化物源をさらに含む。1つの例示的な実施形態では、少なくとも1つの炭水化物源は、スクロース、サッカロース、マルトース、デキストロース、ガラクトース、マルトデキストリン、コーンシロップ固形物、スクロマルト、グルコースポリマー、コーンシロップ、加工デンプン、難消化性デンプン、米由来の炭水化物、イソマルツロース、白糖、グルコース、フルクトース、ラクトース、高フルクトースコム(com)シロップ、ハチミツ、糖アルコール、フルクトオリゴ糖、ダイズ繊維、トウモロコシ繊維、グアーガム、コンニャク粉、ポリデキストロース、ファイバーソル(Fibersol)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の幾つかの実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、フルクタンのような非消化性糖を含み、フルクタンは、イヌリン又はフラクトオリゴ糖を含む。
【0204】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物及び液体溶液は、糖ポリマー、すなわちオリゴ糖及び/又は多糖を含む。
【0205】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、調製物の総エネルギー含量の0~95%、好ましくは調製物の総エネルギー含量の10~85%の範囲、好ましくは調製物の総エネルギー含量の20~75%の範囲、又は好ましくは調製物の総エネルギー含量の30~60%の範囲の炭水化物を含む。
【0206】
さらに低い炭水化物含量がしばしば好ましいため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、好ましくは調製物の総エネルギー含量の0~30%の範囲、より好ましくは調製物の総エネルギー含量の0~20%の範囲、さらにより好ましくは調製物の総エネルギー含量の0~10%の範囲である。
【0207】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物の炭水化物含量は、調製物の総エネルギー含量の最大3%、より好ましくは、調製物の総エネルギー含量の最大1%、さらにより好ましくは調製物の総エネルギー含量の最大0.1%である。
【0208】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、調製物は、スポーツ飲料として特に有用であり、例えば、飲料の総エネルギー含量(E)の最大75%、好ましくは最大40E%、好ましくは最大10E%、又は好ましくは最大5E%の炭水化物の総量を含む。
【0209】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、栄養的に不完全な栄養補助食品として特に有用であり、例えば、飲料の総エネルギー含量(E)の70~95%の範囲、好ましくは80~90E%の炭水化物の総量を含む。
【0210】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、栄養的に完全な栄養補助食品として特に有用であり、例えば、飲料の総エネルギー含量の30~60%の範囲、好ましくは35~50E%の範囲の炭水化物の総量を含む。
【0211】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、腎疾患を患っている、又はそうでなければ腎機能が低下している患者にとって特に有利である。
【0212】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、例えば、飲料の総エネルギー含量の30~60%の範囲、好ましくは35~50E%の範囲の炭水化物の総量を含む。
【0213】
本発明の一実施形態では、包装された熱処理飲料調製物はさらに、ビタミン、調味料、ミネラル、甘味料、抗酸化剤、食用酸、脂質、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、及び非ホエイタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つの追加の原料を含む。
【0214】
更なる原料は、包装された熱処理飲料調製物が、所望の栄養素、すなわち、タンパク質欠乏症に苦しむ患者又は筋肉を増強したい運動選手に特に適合した栄養素を含むことを確実にする。
【0215】
本発明の一実施形態では、液体溶液は、少なくとも1つの高甘味度甘味料をさらに含む。一実施形態では、少なくとも1つの高甘味度甘味料は、アスパルテーム、シクラメート、スクラロース、アセスルファム塩、ネオテーム、サッカリン、ステビア抽出物、例えばレバウジオシドA等のステビア配糖体、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の幾つかの実施形態では、甘味料は、1つ以上の高甘味度甘味料(HIS)を含むか、さらにはそれからなることが特に好ましい。
【0216】
HISは、天然甘味料及び人工甘味料の両方に含まれており、典型的には、スクロースの少なくとも10倍の甘味強度を持っている。
【0217】
使用する場合、HISの総量は典型的には0.01~2%w/wの範囲である。例えば、HISの総量は、0.05~1.5%w/wの範囲であり得る。或いは、HISの総量は、0.1~1.0%w/wの範囲であり得る。
【0218】
甘味料の選択は、製造される飲料に依存し得て、例えば、高甘味度甘味料(例えば、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース等)は、甘味料からのエネルギー寄与が望まれない飲料に使用され得るが、天然プロファイルを有する飲料には、天然甘味料(例えば、ステビオールグリコシド、ソルビトール、又はスクロース)が使用され得る。
【0219】
さらに、甘味料は、1つ以上のポリオール甘味料(複数の場合がある)を含むか、さらにはそれからなることが好ましい場合がある。有用なポリオール甘味料の非限定的な例は、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、ソルビトール、イノシトール、キシリトール、トレイトール、ガラクチトール又はそれらの組み合わせである。使用する場合、ポリオール甘味料の総量は、典型的には、1~20%w/wの範囲である。例えば、ポリオール甘味料の総量は、2~15%w/wの範囲であり得る。或いは、ポリオール甘味料の総量は、4~10%w/wの範囲であり得る。
【0220】
本発明の包装された熱処理飲料調製物は、タンパク質以外の多量栄養素を含み得る。本発明の幾つかの実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、さらに脂質を含む。本発明の熱処理飲料調製物中の総脂質含量は、熱処理飲料調製物の使用目的に依存する。
【0221】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、調製物の総エネルギー含量の0~50%、又は好ましくは調製物の総エネルギー含量の0~40%の範囲、又は好ましくは調製物の総エネルギー含量の0~30%の範囲、又は好ましくは調製物の総エネルギー含量の0~20%の範囲、又は好ましくは調製物の総エネルギー含量の0~10%の範囲、又は好ましくは調製物の総エネルギー含量の0~5%の範囲の脂質含量を有する。
【0222】
脂質の量は、ISO 1211:2010(脂肪含量の決定-Roese-Gottlieb重量分析法)に従って決定される。
【0223】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物の脂質含量は、調製物の総エネルギー含量の最大3%、より好ましくは、調製物の総エネルギー含量の最大1%、さらにより好ましくは調製物の総エネルギー含量の最大0.1%である。
【0224】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、調製物は、スポーツ飲料として特に有用であり、例えば、最大10E%、好ましくは最大最大1E%の脂質の総量を含む。
【0225】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、栄養的に不完全な栄養補助食品として特に有用であり、例えば、飲料の総エネルギー含量の最大10%、好ましくは最大最大1E%の脂質の総量を含む。
【0226】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、栄養的に完全な栄養補助食品として特に有用であり、例えば、総エネルギー含量の20~50%の範囲、好ましくは30~40E%の範囲、又はより好ましくは25~40E%の脂質の総量を含む。
【0227】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、腎疾患を患っている、又はそうでなければ腎機能が低下している患者にとって特に有利である。
【0228】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、例えば、総エネルギー含量の20~60%の範囲、好ましくは30~50E%の範囲の脂質の総量を含む。
【0229】
本発明の一実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、食品グレードの脂肪、例えばキャノーラ油及び/又はMCT(中鎖トリグリセリド)を、好ましくは2~10重量%の量で含む。好ましくは、これらの脂肪はかなりの割合、例えば、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%の不飽和脂肪酸、最も好ましくは多価不飽和脂肪酸を含む。最も好ましいのは、飲料は乳化された形態であり、脂質は、飲料調製物の水相に乳化された液滴として存在することが好ましい。
【0230】
飲料調製物は、典型的には、50~99%w/wの範囲、好ましくは45~97%w/wの範囲、より好ましくは40~95%w/w、さらにより好ましくは35~90%w/wの範囲、最も好ましくは30~85%w/wの範囲の水を総量含む。
【0231】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、飲料調製物は、55~90%w/wの範囲、好ましくは57~85%w/wの範囲、より好ましくは60~80%w/wの範囲、さらにより好ましくは62~75%w/wの範囲、最も好ましくは65~70%w/wの範囲の水の総量を含む。
【0232】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、飲料調製物は、90~99%w/wの範囲、好ましくは92~98.5%w/wの範囲、より好ましくは94~98%w/wの範囲、さらにより好ましくは95~98%w/wの範囲、最も好ましくは96~98%w/wの範囲の水の総量を含む。これらの実施形態は、例えば、透明で水のような飲料に有用である。
【0233】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、飲料調製物は、最大1.0%w/wのエタノール、より好ましくは最大0.5%w/w、さらにより好ましくは最大0.1%w/wを含み、最も好ましくは、検出可能なエタノールがないことを意味するノンアルコールである。
【0234】
飲料調製物は、典型的には、1~45%w/wの範囲、好ましくは5~40%w/wの範囲、より好ましくは10~35%w/wの範囲、さらにより好ましくは12~30%w/wの範囲、最も好ましくは16~25%w/wの範囲の全固形分量を含む。
【0235】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、飲料調製物は、10~45%w/wの範囲、好ましくは15~43%w/wの範囲、より好ましくは20~40%w/wの範囲、さらにより好ましくは25~38%w/wの範囲、最も好ましくは30~35%w/wの範囲の全固形分量を含む。
【0236】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、飲料調製物は、1~10%w/wの範囲、好ましくは1.5~8%w/wの範囲、より好ましくは2~6%w/wの範囲、さらにより好ましくは2~5%w/wの範囲、最も好ましくは2~4%w/wの範囲の全固形分量を含む。これらの実施形態は、例えば、透明で水のような飲料に有用である。
【0237】
固形物ではない飲料調製物の部分は、好ましくは水である。
【0238】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、アルファ-ラクトアルブミン(ALA)及びカゼイノマクロペプチド(CMP)の合計は、飲料の非BLGタンパク質の少なくとも40%w/w、好ましくは少なくとも60%w/w、さらにより好ましくは少なくとも70%w/w、最も好ましくは飲料の非BLGタンパク質の少なくとも90%w/wを構成する。
【0239】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ALAは、飲料調製物の非BLGタンパク質の最大80%w/w、好ましくは最大60%w/w、さらにより好ましくは最大40%w/w、最も好ましくは飲料調製物の非BLGタンパク質の最大30%w/wを構成する。
【0240】
さらに低いALAの含有量が好ましい場合があるため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ALAは、飲料調製物の非BLGタンパク質の最大20%w/w、好ましくは最大15%w/w、さらにより好ましくは最大10%w/w、最も好ましくは飲料調製物の非BLGタンパク質の最大5%w/wを構成する。
【0241】
本発明の他の好ましい実施形態では、各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージで最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。
【0242】
さらに低い濃度の主要な非BLGホエイタンパク質が望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージで最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0243】
本発明者らは、ラクトフェリン及び/又はラクトペルオキシダーゼの減少が、無彩色のホエイタンパク質生成物を得るのに特に有利であるという徴候を見た。
【0244】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトフェリンが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0245】
同様に、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトペルオキシダーゼが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0246】
ラクトフェリン及びラクトペルオキシダーゼは、例1.29に従って定量される。
【0247】
本発明の一実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、栄養的に完全な栄養補助食品である。
本発明の一実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、栄養的に不完全な栄養補助食品である。
本発明の一実施形態では、包装された熱処理飲料調製物はスポーツ飲料である。
本発明の一実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、腎疾患を患っている、又はそうでなければ腎機能が低下している患者に適した低リン及び低カリウム飲料である。
【0248】
本発明の包装された熱処理飲料調製物は、スポーツ飲料として特に有用であり、その場合、好ましくは、任意に限られた量の脂質のみ及び/又は任意に限られた量の炭水化物も含む。
【0249】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、調製物は、スポーツ飲料として特に有用であり、例えば、以下:
-飲料の重量に対して1~20%w/w、好ましくは飲料の重量に対して2~15%w/w、又は好ましくは飲料の重量に対して2~10%w/w、最も好ましくは飲料の重量に対して2~6%w/wの範囲の総量のタンパク質、
-飲料の総エネルギー含量(E)の最大75E%、好ましくは最大40E%、好ましくは最大10E%、又は好ましくは最大5E%の炭水化物の総量、及び
-最大10E%、好ましくは最大1E%の脂質の総量、を含む。
【0250】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、栄養的に不完全な栄養補助食品として特に有用であり、例えば、以下:
-飲料の重量に対して2~20%w/w、又は好ましくは飲料の重量に対して3~10%w/wの範囲の総量のタンパク質、
-飲料の総エネルギー含量(E)の70~95%、好ましくは80~90E%の範囲の炭水化物の総量、及び
-飲料の総エネルギー含量の最大10%、好ましくは最大1E%の脂質の総量、を含む。
【0251】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、栄養的に完全な栄養補助食品として特に有用であり、例えば、以下:
-飲料の重量に対して4~20%w/w、又は好ましくは飲料の重量に対して5~18%w/wの範囲の総量のタンパク質、
-飲料の総エネルギー含量の30~60%の範囲、好ましくは35~50E%の範囲の炭水化物の総量、及び
-飲料の総エネルギー含量の20~50%の範囲、好ましくは30~40E%の範囲、又は好ましくは25~45E%の脂質の総量、を含む。
【0252】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、腎疾患を患っている、又はそうでなければ腎機能が低下している患者にとって特に有利である。飲料調製物は、リンやカリウム等の他のミネラルの含有量が非常に少ない。
【0253】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、例えば、以下:
-飲料の重量に対して2~20%w/w、好ましくは飲料の重量に対して3~12%w/w、又は好ましくは飲料の重量に対して3~10%w/wの範囲の総量のタンパク質、
-飲料の総エネルギー含量の30~60%の範囲、好ましくは35~50E%の範囲の炭水化物の総量、及び
-総エネルギー含量の20~60%の範囲、好ましくは30~50E%の範囲の脂質の総量、を含む。
【0254】
本発明者らは、総タンパク質に比べてタンパク質ナノゲルの含有量が高い飲料は、かなりの量の可溶性ホエイタンパク質凝集物を含む飲料よりも、胃に到着した際に粘度が低くなるという徴候を見た(例9を参照されたい)。可溶性ホエイタンパク質凝集物は、従来のホエイタンパク質単離物を含む飲料を滅菌すると形成されることがよくある。胃における粘度の発生及び/又は構造に対する食品の能力は以前(Halford et al;Satiety-enhancing products for appetite control:science and regulation of functional foods for weight management;Proceedings of the Nutrition Society(2012),71,350-362)は満腹感に関連づけられており、本発明者らは、タンパク質ナノゲルの含有量が高い飲料は、可溶性ホエイタンパク質凝集物を含む同等の飲料よりも摂取時に満腹感が少ないという徴候を見た。これは、食欲がない又は食欲不振であるが、筋肉量又は他の身体機能の回復及び/又は維持のために高エネルギー栄養を必要とする人にとって非常に有利である。
【0255】
本発明の文脈において、「タンパク質のタンパク質ナノゲル」又は「タンパク質ナノゲル」という用語は、典型的には球形又はほぼ球形の、変性ホエイタンパク質のサブミクロンサイズの粒子に関する。タンパク質ナノゲルはまた、ホエイタンパク質ミセルとも称され、例えば、国際公開第2007/110421号A2で議論されているが、それらのミセルの性質は疑わしい。可溶性ホエイタンパク質凝集物の量は、例1.32に従って定量される。タンパク質ナノゲルは、懸濁すると不透明で乳白色の外観を示すため、不透明な飲料に非常に適している。
【0256】
本発明の文脈において、「可溶性ホエイタンパク質凝集物」という用語は、変性ホエイタンパク質の小さな凝集物に関し、その凝集物は、pH4.6への酸性化中に強いゲル(ネイティブホエイタンパク質よりもはるかに強い)を形成することができ、その凝集物は典型的には、線形、ワーム状(worm-like)、分岐鎖状又は鎖状の形状であり、典型的にはサブミクロンサイズである。可溶性ホエイタンパク質凝集物は当業者によく知られており、例えば、線形凝集物と称され、国際公開第2007/110421号公報A2に記載されている。可溶性ホエイタンパク質凝集物の量は、例1.32に従って定量される。可溶性ホエイタンパク質凝集物は、典型的には、水に溶解すると透明な溶液を形成するため、透明な飲料に非常に適している。
【0257】
pH、ミネラル含量(特にCa2+の含有量)、及びタンパク質溶液のタンパク質濃度を制御することにより、ゲル、大きなゲルフラグメント、タンパク質ナノゲル、又は可溶性ホエイタンパク質凝集物が形成されるかどうかを制御することができる。これは当業者にはよく知られている。タンパク質ナノゲルは、通常、約5.5~約6.5、好ましくは約5.8~6.2の範囲のpHを有するホエイタンパク質溶液を加熱することによって形成され、従来のホエイタンパク質濃縮物と比較してミネラル含量が少ないホエイタンパク質溶液によって支持される。可溶性ホエイタンパク質凝集物は、典型的には、約6.5~8.5、好ましくは約6.6~7.5の範囲のpHを有するホエイタンパク質溶液を加熱することによって形成され、より高い含有量のナトリウム等の一価カチオンによって支持される。かかる一価の陽イオンは、pHを上げるときにしばしば添加される。
【0258】
そのため、本発明の幾つかの特に好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、総タンパク質に対して少なくとも50%w/w、好ましくは少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも70%w/w、さらにより好ましくは少なくとも80%w/wのタンパク質ナノゲル、最も好ましくは総タンパク質に対して少なくとも90%w/wのタンパク質ナノゲルを含む。
【0259】
例えば、包装された熱処理飲料調製物は、以下:
-飲料の重量に対して5~20%w/w、好ましくは8~19%w/w、より好ましくは9~18%w/w、さらにより好ましくは10~17%w/w、最も好ましくは11~16%の総量のタンパク質、
-総タンパク質に対して少なくとも85%w/w、好ましくは少なくとも88%w/w、より好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、及び最も好ましくは少なくとも92%w/wのBLGの総量、
-総タンパク質に対して少なくとも50%w/w、好ましくは少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも70%w/w、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも80%w/wのタンパク質ナノゲルの総量、を含むことが好ましい。
【0260】
包装された熱処理飲料調製物は、以下:
-飲料の重量に対して10~20%w/w、好ましくは11~19%w/w、より好ましくは12~18%w/w、さらにより好ましくは13~17%w/w、最も好ましくは14~16%の総量のタンパク質、
-総タンパク質に対して少なくとも90%w/w、好ましくは少なくとも92%w/w、より好ましくは少なくとも94%w/w、最も好ましくは少なくとも96%w/wのBLGの総量、
-総タンパク質に対して少なくとも50%w/w、好ましくは少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも70%w/w、さらにより好ましくは総量総タンパク質に対して少なくとも80%w/wのタンパク質ナノゲルの総量、を含むことが特に好ましい。
【0261】
本発明者らはさらに、タンパク質ナノゲルは、ネイティブホエイタンパク質よりも粘度を発生しにくいため、タンパク質含量は高いが、飲みやすいようにするため十分に低い粘度を有する無菌のpH中性飲料を製造が可能なることを見出した。
【0262】
少なくとも85%w/wのBLGを含むホエイタンパク質の熱変性によって作られたタンパク質ナノゲルは、高タンパク質飲料に使用するのに特に有利なようであり、理論に拘束されることなく、高BLGタンパク質ナノゲルは通常のWPIに基づくタンパク質ナノゲルよりもコンパクトなタンパク質ナノゲル構造を提供し、この違いにより、飲用性に影響を与えることなく、より多くのタンパク質を飲料に含めることができると考えられる。
【0263】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、以下:
-総タンパク質に対して少なくとも50%w/wのタンパク質ナノゲル、
-総タンパク質に対して最大30%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物、
-最大5%w/wの不溶性タンパク質物質、を含む。
【0264】
本発明の幾つかのより好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、以下:
-総タンパク質に対して少なくとも60%w/wのタンパク質ナノゲル、
-総タンパク質に対して最大20%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物、
-最大5%w/wの不溶性タンパク質物質、を含む。
【0265】
本発明の幾つかのさらにより好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、以下:
-総タンパク質に対して少なくとも70%w/wのタンパク質ナノゲル、
-総タンパク質に対して最大15%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物、
-最大5%w/wの不溶性タンパク質物質、を含む。
【0266】
本発明者らは、総タンパク質に対して可溶性ホエイタンパク質凝集物の含有量が増加した飲料は、溶解性の低いホエイタンパク質凝集物を含む飲料よりも、胃のような環境に到達したときに粘度が高くなることを観察した(例9を参照されたい)。胃における粘度の発生及び/又は構造に対する食品製品の能力は、以前から満腹感に関連しているとされており、したがって、可溶性ホエイタンパク質凝集物の含有量が高い飲料は、摂取時に満腹感の増加を引き起こす。これは、体重を減らしたい人、特に肥満に苦しんでいる患者にとって非常に有利である。
【0267】
そのため、本発明の他の特に好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、総タンパク質に対して少なくとも60%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物、好ましくは少なくとも70%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも90%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物を含む。
【0268】
或いは、しかしまた好ましいことに、包装された熱処理飲料調製物は、以下:
-飲料の重量に対して5~12%w/w、好ましくは6~11%w/w、より好ましくは7~10%w/w、さらにより好ましくは8~10%w/w、最も好ましくは11~16%の総量のタンパク質、
-総タンパク質に対して少なくとも94%w/w、好ましくは総タンパク質に対して少なくとも96%w/w、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも98%w/wのBLGの総量、及び
-総タンパク質に対して少なくとも60%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物、好ましくは少なくとも70%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも90%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物、を含み、
当該包装された熱処理飲料調製物は、好ましくは以下:
-最大100NTU、好ましくは最大40NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの濁度、及び
-最大100cP、好ましくは最大50cP、より好ましくは最大20cP、より好ましくは最大10cPの22℃で100s-1の剪断速度での粘度、を有する。
【0269】
例えば、包装された熱処理飲料調製物は、以下:
-飲料の重量に対して5~20%w/w、好ましくは8~19%w/w、より好ましくは9~18%w/w、さらにより好ましくは10~17%w/w、最も好ましくは11~16%の総量のタンパク質、
-総タンパク質に対して少なくとも85%w/w、好ましくは総タンパク質に対して少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%w/w、最も好ましくは総タンパク質に対して少なくとも6%w/wのBLGの総量、及び
-総タンパク質に対して少なくとも60%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物、好ましくは少なくとも70%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも90%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物、を含むことが好ましい。
【0270】
少なくとも85%w/wのBLGを含むホエイタンパク質の熱変性から作られた可溶性ホエイタンパク質凝集物は、タンパク質飲料に使用するのに特に有利なようであり、理論に拘束されることなく、高BLG可溶性凝集物は、酸性化すると通常のWPIに基づく可溶性凝集物よりも強いゲルを提供すると考えられる。この違いにより、消化時に胃内でより多くのゲル/より高い粘度を形成し、それによって満腹感を促進する飲料を製造することが可能になる。
【0271】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、以下:
-総タンパク質に対して少なくとも最大60%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物、
-総タンパク質に対して最大20%w/wのタンパク質ナノゲル、
-最大2%w/wの不溶性タンパク質物質を含む。
【0272】
本発明の幾つかのより好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、以下:
-総タンパク質に対して少なくとも80%w/wの可溶性ホエイタンパク質凝集物、
-総タンパク質に対して最大5%w/wのタンパク質ナノゲル、
-最大2%w/wの不溶性タンパク質物質、を含む。
【0273】
本発明の一態様は、5.5~8.0の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物を製造する方法であって、以下の工程:
a)
-1~20重量%の総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%がβラクトグロブリン(BLG)であるタンパク質、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、
を含む液体溶液を提供する工程、
b)液体溶液を包装する工程、
を含み、
工程a)の液体溶液及び/又は工程b)の包装された液体溶液が、少なくとも低温殺菌を含む熱処理に供される、方法に関する。
【0274】
好ましくは、、5.5~8.0の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物を製造する方法は、
a)以下:
-1~20重量%の総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%がβラクトグロブリン(BLG)である、総量のタンパク質、
-任意に、甘味料、糖ポリマー及び/又は香料、を含む液体溶液を提供する工程、
b)液体溶液を包装する工程であって、工程a)の液体溶液及び/又は工程b)の包装された液体溶液が、少なくとも低温殺菌を含む熱処理に供される工程、を含む。
【0275】
工程a)の液体溶液は、好ましくは、熱処理が引き起こした変化を除いて、熱処理された飲料調製物と同じ組成を有する。したがって、熱処理飲料調製物の文脈で言及された特徴は、液体溶液が典型的には、主に熱処理飲料調製物よりも低いタンパク質変性度を有することを除いて、液体溶液に等しく適用される。
【0276】
本発明の液体溶液の幾つかの好ましい実施形態では、タンパク質の少なくとも85%w/wがBLGである。好ましくは、タンパク質の少なくとも88%w/wがBLGであり、より好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは少なくとも91%w/w、最も好ましくは少なくとも92%w/wのタンパク質がBLGである。
【0277】
さらに高い相対量のBLGが実現可能かつ望ましいため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液のタンパク質の少なくとも94%w/wがBLGであり、より好ましくはタンパク質の少なくとも96%w/wがBLGであり、さらにより好ましくはタンパク質の少なくとも98%w/wがBLGであり、最も好ましくはおよそ100%w/wである。
【0278】
例えば、液体溶液は、好ましくは、総タンパク質に対して少なくとも97.5%w/w、好ましくは少なくとも98.0%w/w、より好ましくは少なくとも98.5%w/w、さらにより好ましくは少なくとも99.0%の量のBLG、最も好ましくは総タンパク質に対して少なくとも99.5%w/w、およそ100.0%等の量のBLGを含む。
【0279】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、アルファ-ラクトアルブミン(ALA)及びカゼイノマクロペプチド(CMP)の合計は、液体溶液の非BLGタンパク質の少なくとも40%w/w、好ましくは少なくとも60%w/w、さらにより好ましくは70%w/w、最も好ましくは液体溶液の非BLGタンパク質の少なくとも90%w/wを構成する。
【0280】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ALAは、液体溶液の非BLGタンパク質の最大80%w/w、好ましくは最大60%w/w、さらにより好ましくは最大40%w/w、最も好ましくは液体溶液の非BLGタンパク質の最大30%w/wを構成する。
【0281】
さらに低いALAの含有量が好ましい場合があるため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ALAは、液体溶液の非BLGタンパク質の最大20%w/w、好ましくは最大15%w/w、さらにより好ましくは最大10%w/w、最も好ましくは液体溶液の非BLGタンパク質の最大5%w/wを構成する。
【0282】
本発明の他の好ましい実施形態では、各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージで最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。
【0283】
さらに低い濃度の主要な非BLGホエイタンパク質が望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージで最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0284】
本発明者らは、ラクトフェリン及び/又はラクトペルオキシダーゼの減少が、無彩色のホエイタンパク質生成物を得るのに特に有利であるという徴候を見た。
【0285】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトフェリンが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0286】
同様に、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトペルオキシダーゼが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0287】
液体溶液のタンパク質は、好ましくは哺乳動物の乳から、好ましくは反芻動物の乳、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、ラクダ、ラマ、ウマ及び/又はシカ由来の乳から調製される。ウシの乳由来のタンパク質が特に好ましい。したがって、液体溶液のタンパク質は、好ましくは牛乳タンパク質である。
【0288】
液体溶液のタンパク質は、好ましくはホエイタンパク質及び/又は乳清タンパク質であり、さらにより好ましくはウシのホエイタンパク質及び/又は乳清タンパク質である。
【0289】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、少なくとも1.11、より好ましくは少なくとも1.13、さらにより好ましくは少なくとも1.15、最も好ましくは少なくとも1.17の固有のトリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する。
【0290】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、最大20%、より好ましくは最大10%、さらにより好ましくは最大5%、最も好ましくは最大1%のタンパク質変性度を有する。
【0291】
タンパク質の変性度及び蛍光発光比が低いことはいずれも、タンパク質が主にネイティブ立体構造にある液体溶液に特徴的である。ネイティブタンパク質の立体構造は、透明な飲料を製造するために特に好ましい。
【0292】
工程b)の包装は、任意の適切な包装技術であり得て、任意の適切な容器が液体溶液を包装するために使用され得る。
【0293】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態では、工程b)の包装は無菌包装であり、すなわち、液体溶液は無菌条件下で包装される。例えば、無菌包装は、無菌充填システムを使用することによって実施することができ、好ましくは、液体溶液を1つ以上の無菌容器に充填することを含む。
【0294】
液体溶液が既に無菌であるか、又は充填前に微生物が非常に少ない場合、無菌充填及び密封が特に好ましい。
【0295】
有用な容器の例は、例えば、ボトル、カートン、ブリックパック(bricks)、及び/又はバッグである。
【0296】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、容器壁は、250~500nmの範囲の任意の波長で、最大10%、好ましくは最大1%、より好ましくは最大0.1%、さらにより好ましくは最大0.01%、最も好ましくは最大0.001%の光透過を有する。
【0297】
本発明の他の好ましい実施形態では、容器壁は、250~500nmの範囲で、最大10%、好ましくは最大1%、より好ましくは最大0.1%、さらにより好ましくは最大0.01%、最も好ましくは最大0.001%の光透過を有する。
【0298】
容器壁の光透過は、容器の壁の平面の一部を提供し、任意の関連する波長で容器壁を通る光透過を測定することによって測定される。測定は、標準的な分光光度計を使用し、容器壁の一部の平面が光路に対して垂直に配置されるようにして、容器壁の一部を光路に挿入することによって(例えば、キュベット又は同様の配置を使用して)行われる。波長iでの透過は、Ti=Ii,後/Ii,前
*100%として計算され、式中、Ii,前は、容器壁に到達する前の波長iでの光強度であり、Ii,後は、光路の光ビームが容器壁の一部を通過した後の波長iの強度である。
【0299】
平均光透過は、所与の波長範囲内で行われた全ての透過測定値Tiの合計を計算し、その合計を所与の波長範囲内の透過測定の回数で割ることによって計算される。
【0300】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、容器壁は、250~800nmの範囲の任意の波長で、最大10%、好ましくは最大1%、より好ましくは最大0.1%、さらにより好ましくは最大0.01%、最も好ましくは最大0.001%の光透過を有する。
【0301】
本発明の他の好ましい実施形態では、容器壁は、250~800nmの範囲で、最大10%、好ましくは最大1%、より好ましくは最大0.1%、さらにより好ましくは最大0.01%、最も好ましくは最大0.001%の光透過を有する。
【0302】
無光又は低光の透過容器は、例えば、着色された、吸収剤を含む若しくはコーティングされたポリマー、又は着色された若しくはコーティングされたガラスを使用して、又は代替的には、例えばアルミホイルの形態で容器の壁に金属層を組み込むことによって製造され得る。かかる無光又は低光の透過容器は、食品及び製薬業界で知られている。
【0303】
適切なポリマー材料の非限定的な例は、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)又はPET様ポリマーである。
【0304】
本発明の他の好ましい実施形態では、容器壁の少なくとも一部は透明であり、好ましくは、容器全体が透明である。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、容器壁の少なくとも一部、好ましくは容器壁全体が、400~700nmの範囲で少なくとも11%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも80%の平均光透過率を有する。
【0305】
本発明の方法の幾つかの好ましい実施形態では、工程a)の液体溶液は、少なくとも低温殺菌を含む熱処理に供され、次いで、工程b)で包装される。
【0306】
本発明の方法の別の実施形態では、工程b)の包装された液体溶液は、少なくとも低温殺菌を含む熱処理に供される。
【0307】
特定の実施形態では、熱処理は、飲料調製物を70~80℃の範囲の温度に加熱することを含む。
【0308】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、熱処理の温度は、70~80℃の範囲、好ましくは70~79℃の範囲、より好ましくは71~78℃の範囲、さらにより好ましくは72~77℃の範囲、最も好ましくは73~76℃の範囲、およそ75℃等である。
【0309】
好ましくは、熱処理の持続は、70~80の温度範囲で行われる場合、1秒~60分である。最長曝露時間は、温度範囲の最低温度に最適であり、その逆も同様である。
他の好ましい実施形態では、熱処理の温度は、70℃で少なくとも60分間、又は好ましくは75℃で少なくとも45分間、又は好ましくは80℃で少なくとも30分間、又は好ましくは85℃で少なくとも22分、又は好ましくは90℃で少なくとも10分間である。
【0310】
本発明の特に好ましい実施形態では、熱処理は、70~78℃で1秒~30分、より好ましくは71~77℃で1分~25分を提供し、さらにより好ましいことには72~76℃で2分~20分である。
【0311】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、方法は、熱処理が、85℃~95℃の温度に1~3分間加熱することを含む。
【0312】
幾つかの実施形態では、特にアンフォールディングする場合、より高い温度も好ましい場合があり、任意に、BLGの凝集も必要とされる。例えば、熱処理の温度は、少なくとも81℃、好ましくは少なくとも91℃、好ましくは少なくとも95℃、より好ましくは少なくとも100℃、さらにより好ましくは少なくとも120℃、最も好ましくは少なくとも140℃であり得る。
【0313】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、滅菌は、120~150℃の範囲の温度で4~30秒間を含む。
【0314】
熱処理は、例えば、90~130℃の範囲の温度及び5秒~10分の範囲の持続時間を含み得る。熱処理は、例えば、90~95℃の範囲の温度で1~10分間、例えばおよそ120℃でおよそ20秒加熱することを含む。或いは熱処理は、115~125℃の範囲の温度で5~30秒間、例えば、およそ120℃でおよそ20秒加熱することを含み得る。
【0315】
熱処理は、例えば、UHTタイプの処理であってもよく、これは、典型的には、135~144℃の範囲の温度及び2~10秒の範囲の持続時間を含む。
【0316】
或いは、しかしまた好ましいことに、熱処理は、145~180℃の範囲の温度及び0.01~2秒の範囲の持続時間を含み得て、より好ましくは、150~180℃の範囲の温度及び0.01~0.3秒の範囲の持続時間を含み得る。
【0317】
熱処理の実施は、プレート式若しくは管状熱交換器、かき取り表面熱交換器又はレトルトシステム等の機器の使用を含み得る。或いは、特に好ましくは、95℃を超える熱処理の場合、例えば、直接蒸気注入、直接蒸気インフュージョン、又はスプレークッキング(spray-cooking)を使用する、直接蒸気ベースの加熱を使用することができる。さらに、かかる直接蒸気ベースの加熱は、好ましくは、フラッシュ冷却と組み合わせて使用される。スプレークッキングの実施の適切な例は、国際公開第2009113858号公報A1に見られ、これらはあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。直接蒸気注入及び直接蒸気インフュージョンの実施の適切な例は、国際公開第2009113858号公報A1及び国際公開第2010/085957公報A3に見られ、これらはあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。高温処理の一般的な態様は、例えば、「Thermal technologies in food processing」 ISBN 185573558 Xに記載されており、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0318】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、低温殺菌は、物理的微生物減少と組み合わされる。
【0319】
物理的微生物減少の有用な例は、加熱、細菌濾過、UV照射、高圧処理、パルス電界処理、及び超音波の1つ以上を含む。
【0320】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、熱処理は、無菌の液体飲料調製物をもたらす滅菌である。かかる滅菌は、好ましくは、細菌濾過と低温殺菌を組み合わせることによって得ることができる。
【0321】
本発明の文脈において、「細菌濾過」という用語は、細菌及び胞子等の微生物を保持するのに十分な孔径であるが、ネイティブBLGを保持しない孔径で行われる濾過に関する。細菌濾過は、滅菌濾過と称されることもあり、問題の液体の精密濾過を含む。細菌濾過は、典型的には、最大1ミクロン、好ましくは最大0.8ミクロン、より好ましくは最大0.6ミクロン、さらにより好ましくは最大0.4ミクロン、最も好ましくは最大0.2ミクロンの孔径を有する膜を用いて行われる。
【0322】
細菌濾過は、例えば、0.02~1ミクロン、好ましくは0.03~0.8ミクロン、より好ましくは0.04~0.6ミクロン、さらにより好ましくは0.05~0.4ミクロン、最も好ましくは0.1~0.2ミクロンの孔径を有する膜を含み得る。
【0323】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、細菌濾過に供され、続いて、最大80℃、好ましくは最大75℃の温度を使用する熱処理に供される。この熱処理の温度及び持続時間の組み合わせは、好ましくは、無菌飲料調製物を提供するために選択される。
【0324】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体溶液は、細菌濾過に供され、続いて、最大0.2秒、好ましくは最大0.1秒の持続時間にわたって少なくとも150℃の温度を使用する熱処理に供される。この熱処理の温度と持続時間の組み合わせは、好ましくは、無菌飲料調製物を提供するために選択される。
【0325】
使用される熱処理温度に応じて、飲料調製物を冷却に供することが有益である。本発明のプロセスの好ましい態様によれば、熱処理に続いて、熱処理された飲料調製物は、好ましくは0~50℃、好ましくは0~25℃、又は好ましくは0~20°、又は好ましくは0~15℃、好ましくは0~10℃、又は好ましくは4~8℃、又は好ましくは2~5℃、又は好ましくは1~5℃に冷却される任意の工程にある。
【0326】
飲料調製物が低温殺菌されている場合、それは、好ましくは、熱処理後に0~15℃、より好ましくは1~5℃に冷却される。
【0327】
この方法の一実施形態によれば、一般に、任意の酸又は塩基が、液体溶液のpHを調整するために使用される。当業者は、pHを調整するための適切な手段を認識するであろう。炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム若しくは炭酸水素カリウム、又は水酸化アンモニウム等。好ましくは、KOH又はNaOH等の塩基を使用してpHを調整するが、NaOHを含む他の塩基を使用してpHを調整することもできる。
当業者は、pHを調整するのに適した他の手段を認識するであろう。適切な酸としては、例えば、クエン酸、塩酸、リンゴ酸、又は酒石酸、又はリン酸が挙げられ、最も好ましくはクエン酸及び/又はリン酸が挙げられる。
【0328】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、6.5~7.5の範囲のpHを有する。最も好ましくは、採用されるpHは、6.5~7.0のpH又は6.8~7.2のpHである。
【0329】
液体溶液は、好ましくは5.5~6.2の範囲のpHを有し、或いは液体溶液は6.2~8.0の範囲のpHを有する。
【0330】
或いは、液体溶液は、6.8~8.0の範囲のpHを有し得て、より好ましくは、液体溶液は、6.2~8.0の範囲のpHを有する。
本発明の液体溶液は、好ましくは、6.2~8.0のpH、好ましくはpH6.3~7.6、より好ましくは6.5~7.2のpHの範囲で粘度が低く、清澄で透明であることがわかった。
【0331】
本発明の液体溶液は、好ましくは、pH5.5~8.0pH、好ましくは5.7~6.8、より好ましくは5.8~6.0の範囲のpHで粘度が低く、乳白色の外観を有することがわかった。
【0332】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、本発明の液体溶液は、pH5.6~6.2の範囲のpH、好ましくは5.6~8.0のpHで熱処理され、任意に炭水化物、脂肪、ミネラル及びビタミンの供給源と混合され、6.2~8.0の好ましいpHに調整され、第2の熱処理(UHT)に供されることが好ましいとわかった。
【0333】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、飲料の重量に対して4.0~20%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0334】
本発明の幾つかの実施形態では、液体溶液が、溶液の重量に対して2.0~10.0%w/wのタンパク質含量を有することが有利である。
したがって、本発明の幾つかの実施形態では、液体溶液は、好ましくは、液体溶液の重量に対して2.0~10%w/wの総量のタンパク質、好ましくは液体溶液の重量に対して3.0~10%w/wの総量のタンパク質、好ましくは液体溶液の重量に対して5.0~9.0%w/wの総量のタンパク質、好ましくは液体溶液の重量に対して6.0~8.0%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0335】
本発明の幾つかの実施形態では、液体溶液のタンパク質含量が、液体溶液の重量に対して10.0~20%w/wのように高いことが有利である。
【0336】
したがって、本発明の幾つかの実施形態では、液体溶液は、好ましくは、液体溶液の重量に対して10.0~20%w/wの総量のタンパク質、好ましくは液体溶液の重量に対して12~19%w/wの総量のタンパク質、さらにより好ましくは液体溶液の重量に対して15~18%w/wの総量のタンパク質、最も好ましくは液体溶液の重量に対して16~17%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0337】
液体溶液は、例えば、好ましくは主要なタンパク質源として、そしてさらにはおそらく唯一のタンパク質源として、他のタンパク質源と組み合わせてBLG単離物を含むことが特に好ましい。
【0338】
BLG単離物は、好ましくは、BLG単離粉末であるか、又は液体BLG単離物は、水及びBLG単離粉末の固体を1~50%w/wの範囲の量で含む。
【0339】
βラクトグロブリン(BLG)単離粉末は、好ましくは噴霧乾燥によって調製され、i)2~4.9、ii)6.1~8.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、以下:
-少なくとも30%w/wの量の総タンパク質、
-総タンパク質に対して少なくとも85%w/wの量のBLG、及び
-最大10%w/wの量の水、を含む。
【0340】
BLG単離粉末は、好ましくは、以下:
-少なくとも0.2g/cm3のかさ密度、
-少なくとも1.11の固有のトリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-最大10%のタンパク質変性度、
-pH3.9で最大200NTUの熱安定性、及び
-最大1000コロニー形成単位/g、の1つ以上を有する。
【0341】
BLG単離粉末は、好ましくは食用組成物である。
【0342】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、2~4.9の範囲のpHを有する。かかる粉末は、酸性食品、特に酸性飲料に特に有用である。
【0343】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、6.1~8.5の範囲のpHを有する。
【0344】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも40%w/w、好ましくは少なくとも50%w/w、少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも70%w/w、さらにより好ましくは少なくとも80%w/wの量の総タンパク質を含む。
【0345】
さらに高いタンパク質含量を必要とする場合があり、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも85%w/w、好ましくは少なくとも90%w/w、少なくとも92%w/w、より好ましくは少なくとも94%w/w、さらにより好ましくは少なくとも95%w/wの量の総タンパク質を含む。
総タンパク質は、例1.5に従って測定される。
【0346】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、総タンパク質に対して少なくとも92%w/w、好ましくは少なくとも95%w/w、より好ましくは少なくとも97%w/w、より好ましくは少なくとも98%の量のBLG、最も好ましくは総タンパク質に対して少なくとも99.5%w/wの量のBLGを含む。
【0347】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、アルファ-ラクトアルブミン(ALA)及びカゼイノマクロペプチド(CMP)の合計は、粉末の非BLGタンパク質の少なくとも40%w/w、好ましくは少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも70%w/w、最も好ましくは粉末の非BLGタンパク質の少なくとも90%w/wを構成する。
【0348】
本発明の他の好ましい実施形態では、各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージで最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。
【0349】
さらに低い濃度の主要な非BLGホエイタンパク質が望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージで最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0350】
本発明者らは、ラクトフェリン及び/又はラクトペルオキシダーゼの減少が、無彩色のホエイタンパク質生成物を得るのに特に有利であるという徴候を見た。
【0351】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトフェリンが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0352】
同様に、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトペルオキシダーゼが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0353】
ラクトフェリン及びラクトペルオキシダーゼは、例1.29に従って定量される。
【0354】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大10%w/w、好ましくは最大7%w/w、より好ましくは最大6%w/w、さらにより好ましくは最大4%w/wの量の含水量を有し、最も好ましいのは最大2%w/wである。
【0355】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大60%w/w、好ましくは最大50%w/w、より好ましくは最大20%w/w、さらにより好ましくは最大10%w/w、さらにより好ましくは最大1%w/w、最も好ましくは最大0.1%の量の炭水化物を含む。例えば、BLG単離粉末は、例えば、ラクトース、オリゴ糖、及び/又はラクトースの加水分解生成物(すなわち、グルコース及びガラクトース)、スクロース、及び/又はマルトデキストリン等の炭水化物を含み得る。
【0356】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大10%w/w、好ましくは最大5%w/w、より好ましくは最大2%w/w、さらにより好ましくは最大0.1%w/wの量の脂質を含む。
【0357】
本発明者らは、BLG単離粉末の所望の特性の幾つかに達するようにミネラル含量を制御することが有利となり得ることを見出した。
【0358】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大10mmol/gタンパク質である。好ましくは、BLG単離粉末のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大6mmol/gタンパク質、より好ましくは最大4mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大2mmol/gタンパク質である。
【0359】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大1mmol/gタンパク質である。好ましくは、BLG単離粉末のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大0.6mmol/gタンパク質、より好ましくは最大0.4mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大0.2mmol/gタンパク質、最も好ましくは最大0.1mmol/gタンパク質である。
【0360】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末のMg及びCaの量の合計は、最大5mmol/gタンパク質である。好ましくは、BLG単離粉末のMg及びCaの量の合計は、最大3mmol/gタンパク質、より好ましくは最大1.0mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大0.5mmol/gタンパク質である。
【0361】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末Mg及びCaの量の合計は、最大0.3mmol/gタンパク質である。好ましくは、BLG単離粉末のMg及びCaの量の合計は、最大0.2mmol/gタンパク質、より好ましくは最大0.1mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大0.03mmol/gタンパク質、最も好ましくは最大0.01mmol/gタンパク質である。
【0362】
本発明者らは、腎疾患の患者に特に有用な低リン/低カリウム変種のBLG単離粉末を作製することが可能であることを見出した。かかる製品を製造するには、BLG単離粉末のリン及びカリウムの含有量が等しく低くなければならない。
【0363】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大100mgのリンの総リン含有量を有する。好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大80mgのリンの総含有量を有する。より好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大50mgのリンの総含有量を有する。さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大20mgのリンの総リン含有量を有する。BLG単離粉末のリンの総含有量は、タンパク質100gあたり最大5mgのリンである。
【0364】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大600mgのカリウムを含む。より好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大500mgのカリウムを含む。より好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大400mgのカリウムを含む。より好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大300mgのカリウムを含む。さらにより好ましくは、BLG単離粉末、タンパク質100gあたり最大200mgのカリウム。さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大100mgのカリウムを含む。さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大50mgのカリウムを含み、さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大10mgのカリウムを含む。
【0365】
リンの含有量は、問題の組成物の元素リンの総量に関連し、例1.19に従って決定される。同様に、カリウムの含有量は、問題の組成物の元素カリウムの総量に関連し、例1.19に従って決定される。
【0366】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、リン最大100mg/タンパク質100g及びカリウム最大700mg/タンパク質100g、好ましくはリン最大80mg/タンパク質100g及びカリウム最大600mg/タンパク質100g、より好ましくはリン最大60mg/タンパク質100g及びカリウム最大500mg/タンパク質100g、より好ましくはリン最大50mg/タンパク質100g及び最大400mgカリウム/タンパク質100g、又はより好ましくはリン最大20mg/タンパク質100g及びカリウム最大200mg/タンパク質100g、又はさらにより好ましくはリン最大10mg/タンパク質100g及びカリウム最大50mg/タンパク質100gを含む。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、リン最大100mg/タンパク質100g、及びカリウム最大340mg/タンパク質100gを含む。
【0367】
本発明による低リン及び/又は低カリウム組成物を、腎機能が低下している患者群に対する食品を製造するための食品原料として使用することができる。
【0368】
本発明の文脈では、透明な液体は、例1.7に従って測定され場合、最大200NTUの濁度を有する。
【0369】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、2~4.9の範囲のpHを有する。好ましくは、BLG単離粉末は、2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0、最も好ましくは3.4~3.9の範囲のpHを有する。或いは、しかしまた好ましいことに、BLG単離粉末は、3.6~4.3の範囲のpHを有し得る。
【0370】
本発明者らは、幾つかの用途について、例えば、pH中性の食品、特にpH中性の飲料では、pH中性のBLG単離粉末を使用することが特に有利であることを見出した。これは、高タンパク質で、透明又は不透明のpH中性飲料に特に当てはまる。
【0371】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、6.1~8.5の範囲のpHを有する。好ましくは、粉末は、6.1~8.5、より好ましくは6.2~8.0、さらにより好ましくは6.3~7.7、最も好ましくは6.5~7.5の範囲のpHを有する。
【0372】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、5.0~6.0の範囲のpHを有する。好ましくは、粉末は、5.1~5.9、より好ましくは5.2~5.8、さらにより好ましくは5.3~5.7、最も好ましくは5.4~5.6の範囲のpHを有する。
【0373】
有利には、本発明のBLG単離粉末は、少なくとも0.20g/cm3、好ましくは少なくとも0.30g/cm3、より好ましくは少なくとも0.40g/cm3、さらにより好ましくは少なくとも0.45g/cm3、さらにより好ましくは少なくとも0.50g/cm3、最も好ましくは少なくとも0.6g/cm3のかさ密度を有し得る。
【0374】
凍結乾燥したBLG単離物等の低密度粉末はふわふわしており、使用中に製造現場の空気中に容易に引き込まれる。これは、凍結乾燥粉末が他の食品に対する相互汚染のリスクを高め、ほこりの多い環境が衛生上の問題の原因であることが知られていることから、問題がある。極端な場合、ほこりの多い環境では粉塵爆発のリスクも高まる。
【0375】
本発明の高密度変種は、取り扱いがより容易であり、周囲の空気に流れ込みにくい。
【0376】
本発明の高密度変種の追加の利点は、それらが輸送中に占めるスペースが少なく、それにより、1つの体積単位で輸送することができるBLG単離粉末の重量を増加させることである。
【0377】
本発明の高密度変種の更なる利点は、それらが他の粉末食品の原料、例えば、粉砂糖(かさ密度およそ0.56g/cm3)、グラニュー糖(かさ密度およそ0.71g/cm3)、粉末クエン酸(かさ密度およそ0.77g/cm3)等との粉末混合物で使用される場合、分離しにくいことである。
【0378】
本発明のBLG単離粉末は、例えば、0.2~1.0g/cm3の範囲、好ましくは0.30~0.9g/cm3の範囲、より好ましくは0.40~0.8g/cm3の範囲、さらにより好ましくは0.45~0.75g/cm3、さらにより好ましくは0.50~0.75g/cm3の範囲、最も好ましくは0.6~0.75g/cm3の範囲のかさ密度を有し得る。
【0379】
粉末のかさ密度は、例1.17に従って測定される。
【0380】
本発明者らは、BLGのネイティブ立体構造を維持することが有利であることを見出し、BLGが酸性飲料に使用される場合、BLGのアンフォールディングの増加が乾いた口当たりのレベルの増加をもたらすという徴候を見た。
【0381】
固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)は、BLGのアンフォールディングの程度の尺度であり、本発明者らは、BLGのアンフォールディングが低いか全くないことと相関する高い固有トリプトファン蛍光発光比では、乾いた口当たりが少ないと観察されたことを見出した。固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)は、例1.1に従って測定される。
【0382】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する。
【0383】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも1.12、好ましくは少なくとも1.13、より好ましくは少なくとも1.15、さらにより好ましくは少なくとも1.17、最も好ましくは少なくとも1.19の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する。
【0384】
BLG単離粉末にかなりの量の非タンパク質物質が含まれている場合は、固有トリプトファン蛍光発光比を測定する前にタンパク質画分を単離することが好ましい。そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末のタンパク質画分は、少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比を有する。
【0385】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末のタンパク質画分は、少なくとも1.12、好ましくは少なくとも1.13、より好ましくは少なくとも1.15、さらにより好ましくは少なくとも1.17、最も好ましくは少なくとも1.19の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する。
【0386】
例えば、BLG単離粉末を脱塩水に溶解し、タンパク質を保持するフィルターを使用して溶液を透析又は限外濾過に基づくダイアフィルトレーションに供することにより、BLG単離粉末からタンパク質画分を分離することができる。BLG単離粉末が干渉レベルの脂質を含む場合、かかる脂質は、例えば、精密濾過によって除去される。精密濾過と限外濾過/ダイアフィルトレーションの工程を組み合わせて、タンパク質画分から脂質及び小分子の両方を除去することができる。
【0387】
BLG単離粉末のかなりの量のBLGが非凝集性BLGであることがしばしば好ましい。好ましくはBLGの少なくとも50%は、非凝集性BLGである。より好ましくは、BLGの少なくとも80%は、非凝集性BLGである。BLGの少なくとも90%が非凝集性BLGであることがさらに好ましい。BLGの少なくとも95%が非集約BLGであことが最も好ましい。BLG単離粉末のBLGのおよそ100%が非凝集性BLGであることがさらにより好ましい。
【0388】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大10%、好ましくは最大8%、より好ましくは最大6%、さらにより好ましくは最大3%、さらにより好ましくは最大1%、最も好ましくは最大0.2%のタンパク質変性度を有する。
【0389】
しかしながら、例えば、不透明な飲料が必要な場合、BLG単離粉末がかなりのレベルのタンパク質変性を有することもまた好ましい場合もある。したがって、本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも11%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%のタンパク質変性度を有する。
【0390】
BLG単離粉末がかなりのレベルのタンパク質変性を有する場合、低レベルの不溶性タンパク質物質、すなわち、貯蔵中に飲料に沈殿し得る沈殿タンパク質物質を維持することがしばしば好ましい。不溶性物質のレベルは、例1.10に従って測定される。
【0391】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大20%w/wの不溶性タンパク質物質、好ましくは最大10%w/wの不溶性タンパク質物質、より好ましくは最大5%w/wの不溶性タンパク質物質、さらに好ましくは最大3%w/wの不溶性タンパク質物質、最も好ましくは最大1%w/wの不溶性タンパク質物質を含む。BLG単離粉末が不溶性タンパク質物質を全く含まないことがさらに好ましい場合がある。
【0392】
本発明者らは、BLG単離粉末のpH3.9での熱安定性が、透明な高タンパク質飲料に対するその有用性の良好な指標であることを見出した。pH3.9での熱安定性は、例1.2に従って測定される。
【0393】
BLG単離粉末が、pH3.9で最大200NTU、好ましくは最大100NTU、より好ましくは最大60NTU、さらにより好ましい最大40NTUの熱安定性を有し、最も好ましいのは最大20NTUである。さらにより良好な熱安定性が可能であり、BLG単離粉末は、好ましくは、pH3.9で最大10NTU、好ましくは最大8NTU、より好ましくは最大4NTUの熱安定性を有し、さらにより好ましいのは最大2NTUである。
【0394】
BLG単離粉末の微生物の含有量は、好ましくは最小限に保たれる。しかしながら、微生物減少プロセスはタンパク質のアンフォールディング及び変性につながる傾向があるため、高度なタンパク質のネイティブ性及び低含有量の微生物の両方を得ることは困難である。本発明は、非常に低い微生物の含有量を得ると同時に、BLGの高レベルのネイティブ性を維持することを可能にする。
【0395】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大15000コロニー形成単位(CFU)/gを含む。好ましくは、BLG単離粉末は、最大10000CFU/gを含む。より好ましくは、BLG単離粉末は、最大5000CFU/gを含む。さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、最大1000CFU/gを含む。さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、最大300CFU/gを含む。最も好ましくは、BLG単離粉末は、最大100CFU/g、例えば、最大10CFU/g等を含む。特に好ましい実施形態では、粉末は無菌である。無菌のBLG単離粉末は、例えば、精密濾過及び酸性pHでの熱処理等、BLG単離粉末の製造中に幾つかの物理的微生物減少プロセスを組み合わせることによって調製される。
【0396】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)2~4.9、ii)6.1~8.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、以下:
-少なくとも30%w/w、好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/wの量の総タンパク質、
-総タンパク質に対して少なくとも85%w/w、好ましくは少なくとも90%w/wの量のβラクトグロブリン(BLG)、
-最大6%w/wの量の水、
-最大2%w/w、好ましくは最大0.5%w/wの量の脂質、を含み、
当該BLG単離粉末は、以下:
-少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
-最大10%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大200NTUの熱安定性、を有する。
【0397】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)2~4.9、又はii)6.1~8.5の範囲のpHを有し、以下:
-少なくとも30%w/w、好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/wの量の総タンパク質
-総タンパク質に対して少なくとも85%w/w、好ましくは少なくとも90%w/w、より好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%w/wの量のβラクトグロブリン(BLG)、
-最大6%w/wの量の水、
-最大2%w/w、好ましくは最大0.5%w/wの量の脂質、を含み、
当該BLG単離粉末は、以下:
-少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
-最大10%、好ましくは最大5%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大70NTU、好ましくは最大50NTU、さらにより好ましくは最大40NTUの熱安定性、を有する。
【0398】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)2~4.9、又はii)6.1~8.5の範囲のpHを有し、以下:
-少なくとも30%w/wの量の総タンパク質
-総タンパク質に対して少なくとも85%w/w、好ましくは少なくとも90%w/wの量のβラクトグロブリン(BLG)、
-最大6%w/wの量の水、
を含み、
当該BLG単離粉末は、以下:
-少なくとも0.2g/cm3のかさ密度、
-少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
-最大10%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大200NTUの熱安定性、を有する。
【0399】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、2~4.9の範囲のpHを有し、以下:
-少なくとも80%w/w、好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは少なくとも94%w/wの量の総タンパク質
-総タンパク質に対して少なくとも85%w/w、好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%w/wの量のβラクトグロブリン(BLG)、
-最大6%w/wの量の水、
-最大2%w/w、好ましくは最大0.5%w/wの量の脂質、を含み、
当該BLG単離粉末は、以下:
-少なくとも0.2g/cm3、好ましくは少なくとも0.3g/cm3、より好ましくは少なくとも0.4g/cm3のかさ密度、
-少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
-最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大50NTU、好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、を有する。
【0400】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、6.1~8.5の範囲のpHを有し、以下:
-少なくとも80%w/w、好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは少なくとも94%w/wの量の総タンパク質、
-総タンパク質に対して少なくとも85%w/w、好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%w/wの量のβラクトグロブリン(BLG)、
-最大6%w/wの量の水、
-最大2%w/w、好ましくは最大0.5%w/wの量の脂質、を含み、
当該BLG単離粉末は、以下:
-少なくとも0.2g/cm3、好ましくは少なくとも0.3g/cm3、より好ましくは少なくとも0.4g/cm3のかさ密度、
-最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大50NTU、好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、を有する。
【0401】
本発明の更なる他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、6.1~8.5の範囲のpHを有し、以下:
-少なくとも80%w/w、好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは少なくとも94%w/wの量の総タンパク質、
-総タンパク質に対して少なくとも85%w/w、好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%w/wの量のβラクトグロブリン(BLG)、
-最大6%w/wの量の水、
-最大2%w/w、好ましくは最大0.5%w/wの量の脂質、を含み、
当該BLG単離粉末は、以下:
-少なくとも0.2g/cm3、好ましくは少なくとも0.3g/cm3、より好ましくは少なくとも0.4g/cm3のかさ密度、
-最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大50NTU、好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、を有する。
【0402】
本発明の更なる他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、5.0~6.0の範囲のpHを有し、以下:
-少なくとも80%w/w、好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは少なくとも94%w/wの量の総タンパク質
-総タンパク質に対して少なくとも85%w/w、好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%w/wの量のβラクトグロブリン(BLG)、
-最大6%w/wの量の水、
-最大2%w/w、好ましくは最大0.5%w/wの量の脂質、を含み、
当該BLG単離粉末は、以下:
-少なくとも0.2g/cm3、好ましくは少なくとも0.3g/cm3、より好ましくは少なくとも0.4g/cm3のかさ密度、
-最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%のタンパク質変性度、
-pH3.9で最大50NTU、好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、及び
-好ましくは10%未満のBLG結晶化度、を有する。
【0403】
総タンパク質に対して少なくとも85%w/wの量のBLGを含むBLG単離粉末は、典型的には、以下:
a)i)2~4.9の範囲のpH、
ii)6.1~8.5の範囲のpH、又は
iii)5.0~6.0の範囲のpH、
を有する液体BLG単離物を提供する工程であって、
当該液体BLG分離物が総タンパク質に対して少なくとも85w/wの量のBLGを含む工程
b)任意に、液体BLG単離物を物理的微生物減少に供する工程、
c)液体BLG分離物を、好ましくは噴霧乾燥によって乾燥する工程、を含む方法によって提供される。
【0404】
液体BLG単離物は、好ましくは哺乳動物の乳から、好ましくは反芻動物の乳、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、ラクダ、ラマ、ウマ及び/又はシカ由来の乳から調製される。ウシの乳由来のタンパク質が特に好ましい。したがって、BLGは好ましくはウシBLGである。
【0405】
液体BLG単離物は、幾つかの異なる方法で提供され得る。
【0406】
典型的には、液体BLG単離物の提供は、以下の方法のうちの1つ以上によってBLGに富む組成物を提供するために、ホエイタンパク質フィードからBLGを分離することを含むか、さらにはそれからなる:
-塩溶によるBLGの結晶化又は沈殿、
-塩析によるBLGのBLGの結晶化又は沈殿、
-イオン交換クロマトグラフィー、及び
-限外濾過によるホエイタンパク質の分画。
【0407】
BLGに富む組成物を提供するための特に好ましい方法は、BLGの結晶化によるものであり、好ましくは塩溶によるか、或いは塩析によるものである。
【0408】
ホエイタンパク質フィードは、好ましくは、WPC、WPI、SPC、SPI、又はそれらの組み合わせである。
【0409】
「ホエイタンパク質フィード」という用語は、BLGに富む組成物及びその後の液体BLG単離物が由来する組成物に関する。
【0410】
本発明の幾つかの実施形態では、BLGに富む組成物の調製は、米国特許第2,790,790号公報A1によるpH範囲3.6~4.0での高塩BLG結晶化を含むか、さらにはそれからなる。
【0411】
本発明の他の実施形態では、BLGに富む組成物の調製は、de Jongh et al(Mild Isolation Procedure Discloses New Protein Structural Properties of β-Lactoglobulin,J Dairy Sci.,vol.84(3),2001,pages 562-571)、又はVyas et al(Scale-Up of Native β-Lactoglobulin Affinity Separation Process,J.Dairy Sci.85:1639-1645,2002)によって記載される方法を含むか、さらにはそれからなる。
【0412】
しかしながら、本発明の特に好ましい実施形態では、BLGに富む組成物は、全ての目的で参照により本明細書に組み込まれるPCT出願PCT/EP2017/084553号明細書に記載されている塩溶条件下でpH5~6での結晶化によって調製される。
【0413】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLGに富む組成物は、総タンパク質に対して少なくとも90%のBLGを含み、好ましくはBLG結晶を含む、PCT/EP2017/084553による食用BLG組成物である。
【0414】
液体BLG単離物として使用するために必要な特性をまだ持っていない場合、ホエイタンパク質フィードから分離されたBLGに富む組成物を、液体BLG単離物を提供する一環として、以下:
-脱塩、
-ミネラルの添加、
-希釈、
-濃縮、
-物理的微生物減少、及び
-pH調整、
の群から選択される1つ以上の工程に供することができる。
【0415】
脱塩の非限定的な例としては、例えば、透析、ゲル濾過、UF/ダイアフィルトレーション、NF/ダイアフィルトレーション、及びイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。
【0416】
ミネラル添加の非限定的な例としては、例えば、Na、K、Ca、及び/又はMgの塩等の可溶性の食品に許容可能な塩の添加が含まれる。かかる塩は、例えば、リン酸塩、塩化物塩、又は例えば、クエン酸塩若しくは乳酸塩等の食用酸の塩であり得る。ミネラルを、固体、懸濁、又は溶解した形態で添加することができる。
【0417】
希釈の非限定的な例としては、例えば、水、脱塩水、又はミネラル、酸若しくは塩基の水溶液等の液体希釈剤の添加が挙げられる。
【0418】
濃度の非限定的な例としては、例えば、蒸発、逆浸透、ナノ濾過、限外濾過及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0419】
濃縮が全固形分に対するタンパク質の濃度を増加させる必要がある場合は、限外濾過又は代わりに透析等の濃縮工程を使用することが好ましい。濃縮が全固形分に対するタンパク質の濃度を増加させる必要がない場合、例えば、蒸発、ナノ濾過及び/又は逆浸透等の方法が有用となる場合がある。
【0420】
物理的微生物減少の非限定的な例としては、例えば、熱処理、細菌濾過、UV照射、高圧処理、パルス電界処理、及び超音波が挙げられる。これらの方法は、当業者によく知られている。
【0421】
pH調整の非限定的な例としては、例えば、塩基及び/又は酸、好ましくは食品に許容可能な塩基及び/又は酸の添加が挙げられる。二価金属カチオンをキレート化することができる酸及び/又は塩基を用いることが特に好ましい。かかる酸及び/又は塩基の例は、クエン酸、クエン酸塩、EDTA、乳酸、乳酸塩、リン酸、リン酸塩、及びそれらの組み合わせである。
【0422】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、特に調製物が最大200NTU、より好ましくは最大40NTUの濁度を有する場合、液体溶液は、CIELABカラースケールで-0.10~+0.51の範囲の色値デルタb*を有する。
【0423】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体溶液は、CIELABカラースケールで0.0~0.40の範囲、好ましくは+0.10~+0.25の範囲の色値デルタb*を有する。
【0424】
本発明の液体溶液は、タンパク質以外の多量栄養素を含み得る。
【0425】
本発明の幾つかの実施形態では、液体溶液はさらに炭水化物を含む。本発明の液体溶液中の総炭水化物含量は、最終の熱処理飲料調製物の使用目的に依存する。
【0426】
本発明の幾つかの実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、少なくとも1つの炭水化物源をさらに含む。1つの例示的な実施形態では、少なくとも1つの炭水化物源は、スクロース、サッカロース、マルトース、デキストロース、ガラクトース、マルトデキストリン、コーンシロップ固形物、スクロマルト、グルコースポリマー、コーンシロップ、加工デンプン、難消化性デンプン、米由来の炭水化物、イソマルツロース、白糖、グルコース、フルクトース、ラクトース、高フルクトースコム(com)シロップ、ハチミツ、糖アルコール、フルクトオリゴ糖、ダイズ繊維、トウモロコシ繊維、グアーガム、コンニャク粉、ポリデキストロース、ファイバーソル(Fibersol)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の幾つかの実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、フルクタンのような非消化性糖を含み、フルクタンは、イヌリン又はフラクトオリゴ糖を含む。
【0427】
幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液はさらに、液体溶液の総エネルギー含量の0~95%の範囲、好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の10~85%の範囲、好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の20~75%の範囲、又は好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の30~60%の範囲の炭水化物を含む。
【0428】
さらに低い炭水化物含量がしばしば好ましいため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、好ましくは調製物の総エネルギー含量の0~30%の範囲、より好ましくは調製物の総エネルギー含量の0~20%の範囲、さらにより好ましくは調製物の総エネルギー含量の0~10%の範囲である。
【0429】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液の炭水化物含量は、液体溶液の総エネルギー含量の最大3%、より好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の最大1%、さらにより好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の最大0.1%である。
【0430】
本発明の一実施形態では、液体溶液はさらに、ビタミン、調味料、ミネラル、甘味料、抗酸化剤、食用酸、脂質、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、及び非ホエイタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つの追加の原料を含む。
更なる原料は、最終的に包装された熱処理飲料調製物が、所望の栄養素、すなわち、タンパク質欠乏症に苦しむ患者又は筋肉を増強したい運動選手に特に適合した栄養素を含むことを確実にする。
【0431】
本発明の一実施形態では、液体溶液は、少なくとも1つの高甘味度甘味料をさらに含む。一実施形態では、少なくとも1つの高甘味度甘味料は、アスパルテーム、シクラメート、スクラロース、アセスルファム塩、ネオテーム、サッカリン、ステビア抽出物、例えばレバウジオシドA等のステビア配糖体、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の幾つかの実施形態では、甘味料は、1つ以上の高甘味度甘味料(HIS)を含むか、さらにはそれからなることが特に好ましい。
【0432】
HISは、天然甘味料及び人工甘味料の両方に含まれており、典型的には、スクロースの少なくとも10倍の甘味強度を持っている。
【0433】
使用する場合、HISの総量は典型的には0.01~2%w/wの範囲である。例えば、HISの総量は、0.05~1.5%w/wの範囲であり得る。或いは、HISの総量は、0.1~1.0%w/wの範囲であり得る。
【0434】
甘味料の選択は、製造される飲料に依存し得て、例えば、高甘味度甘味料(例えば、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース等)は、甘味料からのエネルギー寄与が望まれない飲料に使用され得るが、天然プロファイルを有する飲料には、天然甘味料(例えば、ステビオールグリコシド、ソルビトール、又はスクロース)が使用され得る。
【0435】
代替的又は追加的に、炭水化物甘味料を使用することができる。
【0436】
さらに、甘味料は、1つ以上のポリオール甘味料(複数の場合がある)を含むか、さらにはそれからなることが好ましい場合がある。有用なポリオール甘味料の非限定的な例は、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、ソルビトール、イノシトール、キシリトール、トレイトール、ガラクチトール、又はそれらの組み合わせである。使用する場合、ポリオール甘味料の総量は、典型的には、1~20%w/wの範囲である。例えば、ポリオール甘味料の総量は、2~15%w/wの範囲であり得る。或いは、ポリオール甘味料の総量は、4~10%w/wの範囲であり得る。
【0437】
本発明の液体溶液は、タンパク質以外の多量栄養素を含み得る。本発明の幾つかの実施形態では、液体溶液はさらに脂質を含む。本発明の最終的な熱処理飲料調製物中の総脂質含量は、熱処理飲料調製物の使用目的に依存する。
【0438】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、液体溶液の総エネルギー含量の0~50%の範囲、又は好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の0~45%の範囲、又は好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の0~30%の範囲、又は好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の0~20%の範囲、又は好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の0~10%の範囲、又は好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の0~5%の範囲の脂質含量を有する。
【0439】
脂質の量は、ISO 1211:2010(脂肪含量の決定-Roese-Gottlieb重量分析法)に従って決定される。
【0440】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液の脂質含量は、液体溶液の総エネルギー含量の最大3%、より好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の最大1%、さらにより好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の最大0.1%である。
【0441】
液体溶液は、典型的には、50~99%w/wの範囲、好ましくは45~97%w/wの範囲、より好ましくは40~95%w/wの範囲、さらにより好ましくは35~90%w/wの範囲、最も好ましくは30~85%w/wの範囲の水の総量を含む。
【0442】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、55~90%w/wの範囲、好ましくは57~85%w/wの範囲、より好ましくは60~80%w/wの範囲、さらにより好ましくは62~75%w/wの範囲、最も好ましくは65~70%w/wの範囲の水の総量を含む。
【0443】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、90~99%w/wの範囲、好ましくは92~98.5%w/wの範囲、より好ましくは94~98%w/wの範囲、さらにより好ましくは95~98%w/wの範囲、最も好ましくは96~98%w/wの範囲の水の総量を含む。
【0444】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、最大1.0%w/wのエタノール、より好ましくは最大0.5%w/w、さらにより好ましくは最大0.1%w/wを含み、最も好ましくは、検出可能なエタノールがないことを意味するノンアルコールである。
【0445】
液体溶液は、典型的には、1~45%w/wの範囲、好ましくは5~40%w/wの範囲、より好ましくは10~35%w/wの範囲、さらにより好ましくは12~30%w/wの範囲、最も好ましくは16~25%w/wの範囲の全固形分量を含む。
【0446】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、10~45%w/wの範囲、好ましくは15~43%w/wの範囲、より好ましくは20~40%w/wの範囲、さらにより好ましくは25~38%w/wの範囲、最も好ましくは30~35%w/wの範囲の全固形分量を含む。
【0447】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、1~10%w/wの範囲、好ましくは1.5~8%w/wの範囲、より好ましくは2~6%w/wの範囲、さらにより好ましくは2~5%w/wの範囲、最も好ましくは2~4%w/wの範囲の全固形分量を含む。
【0448】
固体ではない液体溶液の部分は、好ましくは水である。
【0449】
本発明者らは、包装された熱処理飲料調製物の所望の特性の幾つかに達するようにミネラル含量を制御することが有利となり得ることを見出した。
【0450】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書、並びに例2及び3で定義されるようにBLG単離物を使用すると、、粘度を損なうことなく、ゲル化を回避して、熱処理飲料調製物を製造できることを見出した。これにより、高いミネラル含量を有する包装された熱処理飲料調製物を製造できる可能性があり、栄養的に完全な栄養補助食品又は栄養的に不完全な栄養補助食品である飲料を製造できる可能性がある。
【0451】
本発明の幾つかの実施形態では、液体溶液は、複数のミネラルを含む。例示的な一実施形態では、液体溶液は、少なくとも4種類のミネラルを含む。一実施形態では、4種類のミネラルは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及びカルシウムである。
【0452】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、Na、K、mg及びCaの量の合計は、液体溶液中に0~400mMの範囲内、好ましくは10~200mMの範囲内、又は好ましくは20~100mMの範囲内である。
【0453】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、Na、K、Mg及びCaの量の合計は、液体溶液中で最大400mMである。
【0454】
本発明の他の好ましい実施形態では、Na、K、Mg及びCaの量の合計は、液体溶液中で最大300mM、好ましくは最大200mM、好ましくは最大100mM、又は好ましくは最大80mM、又は好ましくは最大60mM、又は好ましくは最大40mM、又は好ましくは最大30mM、又は好ましくは最大20mM、又は好ましくは最大20mM、又は好ましくは最大10mM、又は好ましくは最大5mM又は好ましくは最大1mMである。
【0455】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、Mg及びCaの量の合計は、液体溶液中で最大75mM、より好ましくは液体溶液中で最大40mM、より好ましくは液体溶液中で最大20mMである。
【0456】
本発明の他の好ましい実施形態では、Mg及びCaの量の合計は、液体溶液中で最大10mM、より好ましくは液体溶液中で最大8.0mM、より好ましくは液体溶液中で最大6.0mM、さらにより好ましくは液体溶液中で最大4.0mMであり、最も好ましくは液体溶液中で最大2.0mMである。
【0457】
本発明の別の例示的な実施形態では、液体溶液は、カルシウム、ヨウ素、亜鉛、銅、クロム、鉄、リン、マグネシウム、セレン、マンガン、モリブデン、ナトリウム、カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される複数のミネラルを含む。
【0458】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体溶液は低ミネラル溶液である。
【0459】
本発明の文脈において、「低ミネラル」という用語は、以下:
-全固形分に対して最大1.2%w/w透明の灰分、
-全固形分に対して最大0.3%w/wのカルシウム及びマグネシウムの総含有量、
-全固形分に対して最大0.10%w/wのナトリウム及びカリウムの総含有量、
-タンパク質100gあたり最大100mgのリンの総含有量、の少なくとも1つ、好ましくは2つ、さらにより好ましくは全てを有する組成物、例えば、液体、飲料、粉末又は別の食品に関する。
【0460】
好ましくは、低ミネラル組成物は、以下:
-全固形分に対して最大0.7%w/wの灰分、
-全固形分に対して最大0.2%w/wのカルシウム及びマグネシウムの総含有量、
-全固形分に対して最大0.08%w/wのナトリウム及びカリウムの総含有量、
-タンパク質100gあたり最大80mgのリンの総含有量、の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、さらにより好ましくは全てを有する。
【0461】
さらにより好ましくは、低ミネラル組成物は、以下:
-全固形分に対して最大0.5%w/wの灰分、
-全固形分に対して最大0.15%w/wのカルシウム及びマグネシウムの総含有量、
-全固形分に対して最大0.06%w/wのナトリウム及びカリウムの総含有量、
-タンパク質100gあたり最大50mgのリンの総含有量、の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、さらにより好ましくは全てを有する。
【0462】
低ミネラル組成物は、以下:
-全固形分に対して最大0.5%w/wの灰分、
-全固形分に対して最大0.15%w/wのカルシウム及びマグネシウムの総含有量、
-全固形分に対して最大0.06%w/wのナトリウム及びカリウムの総含有量、
-タンパク質100gあたり最大50mgのリンの総含有量、を有することが特に好ましい。
【0463】
本発明の別の例示的な実施形態では、液体溶液は、カルシウム、ヨウ素、亜鉛、銅、クロム、鉄、リン、マグネシウム、セレン、マンガン、モリブデン、ナトリウム、カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される複数のミネラルを含む。
【0464】
本発明者らは、本発明により、腎疾患を患っているか、そうでなければ腎機能が低下している患者に有利である、リン、及びカリウム等の他のミネラルの含有量が非常に少ない包装された熱処理飲料調製物を調製できることを見出した。
【0465】
液体溶液は、好ましくは低リン飲料調製物である。
【0466】
液体溶液は、好ましくは低カリウム飲料調製物である。
【0467】
液体溶液は、好ましくは、低リン及び低カリウム飲料調製物である。
【0468】
本発明の文脈において、「低リン」という用語は、タンパク質100gあたり最大100mgのリンの総含有量を有する組成物、例えば、液体、粉末、又はその他の食品に関する。好ましくは、低リン組成物は、タンパク質100gあたり最大80mgのリンの総含有量を有する。より好ましくは、低リン組成物は、タンパク質100gあたり最大50mgのリンの総含有量を有し得る。さらにより好ましくは、低リン組成物は、タンパク質100gあたり最大20mgのリンのリン総含有量を有し得る。さらにより好ましくは、低リン組成物は、タンパク質100gあたり最大5mgのリンのリン総含有量を有し得る。本発明による低リン組成物を、腎機能が低下している患者群に対する食品を製造するための食品原料として使用することができる。
【0469】
リンの含有量は、問題の組成物の元素リンの総量に関連し、例1.19に従って決定される。
【0470】
カリウムの含有量は、問題の組成物の元素カリウムの総量に関連し、例1.19に従って決定される。
【0471】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、リン最大100mg/タンパク質100g及びカリウム最大700mg/タンパク質100g、好ましくはリン最大80mg/タンパク質100g及びカリウム最大600mg/タンパク質100g、より好ましくはリン最大60mg/タンパク質100g及びカリウム最大500mg/タンパク質100g、より好ましくはリン最大50mg/タンパク質100g及び最大400mgカリウム/タンパク質100g、又はより好ましくはリン最大20mg/タンパク質100g及びカリウム最大200mg/タンパク質100g、又はさらにより好ましくはリン最大10mg/タンパク質100g及びカリウム最大50mg/タンパク質100gを含む。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、包装された熱処理飲料調製物は、リン最大100mg/タンパク質100g、及びカリウム最大340mg/タンパク質100gを含む。
【0472】
少量のリン及びカリウムを含む液体溶液は、有利には炭水化物及び脂質で補充することができ、熱処理飲料調製物は、好ましくは液体溶液の総エネルギー含量の30~60%の範囲、好ましくは35~50E%の範囲の炭水化物の総量、及び総エネルギー含量の20~60%の範囲、好ましくは、30~50E%の範囲の脂質の総量をさらに含む。
【0473】
本発明の一実施形態では、液体溶液は、複数のビタミンを含む。一例示的な実施形態では、液体溶液は、少なくとも10種類のビタミンを含む。例示的な一実施形態では、液体溶液は、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンK、リボフラビン、パントテン酸、ビタミンE、チアミン、ナイアシン、葉酸、ビオチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される複数のビタミンを含む。
【0474】
本発明の一実施形態では、液体溶液は、複数のビタミン及び複数のミネラルを含む。
【0475】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、安息香酸、酪酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、リン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の食用酸を含む。
【0476】
本発明の一実施形態では、液体溶液は、塩、調味料、うまみ調味料及び/又は香辛料からなる群から選択される香料をさらに含む。本発明の好ましい実施形態では、香料は、チョコレート、ココア、レモン、オレンジ、ライム、ストロベリー、バナナ、フォレストフルーツフレーバー又はそれらの組み合わせを含む。香料の選択は、製造する飲料によって異なる。
【0477】
本発明者らは、本発明、特に総タンパク質に対して少なくとも85%w/wのBLGを含むタンパク質画分の使用が、以前は制御不能なゲル形成につながると考えられていた驚くほど高いタンパク質濃度で、タンパク質ナノゲルを形成することを可能にすることを発見した。これは、タンパク質ナノゲルを変性及び濃縮した後にタンパク質含量を濃縮する必要なしに、高タンパク質飲料を直接製造することを可能にするため有利である。
【0478】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液は、以下:
-5~20%w/wの範囲、好ましくは8~19%w/wの範囲、より好ましくは10~18%w/wの範囲、最も好ましくは12~16%w/wの総量のタンパク質、
-総タンパク質に対して少なくとも85%w/w、好ましくは少なくとも90%w/w、より好ましくは総タンパク質に対して少なくとも92%w/w、最も好ましくは総タンパク質に対して少なくとも96%w/wの量のBLG、を含み、
以下:
-最大30%、好ましくは最大20%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大5%のタンパク質変性度、及び
-5.6~6.5、好ましくは5.8~6.2、より好ましくは5.9~6.1の範囲のpHを有する。
【0479】
本発明の文脈において、「先の溶液」又は「液体溶液を調製するために使用される先の溶液」という用語は、液体溶液の調製に使用される水溶液に関し、典型的には、液体溶液と同じタンパク質含量を有するか、又はわずかに高いタンパク質含量を有する。タンパク質、特にネイティブBLGを、例えば、液体溶液を形成する前の熱変性によって修飾しなければならない場合、先の溶液の使用が好ましい。
【0480】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液は、10~20%w/wの範囲、好ましくは10~19%w/wの範囲、より好ましくは10~18%w/wの範囲、最も好ましくは10~16%w/wの総量のタンパク質を含む。
【0481】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液は、5~20%w/wの範囲、好ましくは8~19%w/wの範囲、より好ましくは10~18%w/wの範囲、最も好ましくは12~16%w/wの総量のタンパク質を含む。
-5.6~6.5、好ましくは5.8~6.2、より好ましくは5.9~6.1の範囲のpH。
【0482】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液は、最大30%、好ましくは最大20%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大5%のタンパク質変性度を有する。
【0483】
さらに低いタンパク質変性度が好ましい場合があるため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液は、最大4%、好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%、最も好ましくは最大0.2%のタンパク質変性度を有する。
【0484】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液は、最大5%w/w、より好ましくは最大2%w/w、さらにより好ましくは最大0.5%w/w、最も好ましくは最大0.1%w/wの脂質含量を有する。
【0485】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液は、最大12%w/w、より好ましくは最大6%w/w、さらにより好ましくは最大2%w/w、最も好ましくは最大0.1%w/wの炭水化物含量を有する。
【0486】
しかしながら、本発明の他の好ましい実施形態では、液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液は、2~25%w/w、より好ましくは4~20%w/w、さらにより好ましくは5~18%w/w、最も好ましくは6~15%w/wの炭水化物含量を有する。これらの実施形態は、例えば、最終的な飲料にかなりの含有量の炭水化物が含まれている必要がある場合に有用である。或いは、タンパク質ナノゲルが形成された後、炭水化物を熱処理された先の溶液に加えることができる。
【0487】
例えば、タンパク質ナノゲルの形成に有用である本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液は、5.6~6.5、好ましくは5.8~6.2、より好ましくは5.9~6.1の範囲のpHを有する。
【0488】
液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液は、好ましくは、70~145℃、好ましくは75~120℃、より好ましくは80~98℃、さらにより好ましくは82~96℃、最も好ましくは85~95℃の範囲の温度を使用する第1の熱処理に供される。
【0489】
タンパク質のナノゲル化を起こす第1の熱処理は、例えば、かき取り表面熱交換器又は同様の高剪断装置を使用して、高剪断条件下で行うことができ、驚くべきことに、例えば、包装された液体溶液を油浴に浸漬するか、又はプレート式熱交換器を使用することにより、低剪断又はさらには非剪断条件下で加熱することでタンパク質ナノゲルを形成することも可能である。
【0490】
第1の熱処理は、好ましくは、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%のタンパク質変性度を提供するのに十分な期間を有する。好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%のさらに高いタンパク質変性度を、第1の熱処理によって得ることができる。
【0491】
第1の熱処理は、例えば、0.1秒~2時間、好ましくは0.5分~1時間、より好ましくは2分~30分、最も好ましくは5~20分の範囲の持続時間を有し得る。
【0492】
幾つかの好ましい実施形態では、第1の熱処理は、包装された熱処理飲料調製物を製造する方法の唯一の熱処理である。この場合、第1の熱処理は、包装前又は包装後に液体溶液に適用される。
【0493】
他の好ましい実施形態では、第1の熱処理は、タンパク質ナノゲルを形成するために使用され、その後、好ましくは、液体溶液の最終的な低温殺菌又は滅菌の目的を果たす第2の熱処理が続く。この場合、第1の熱処理は、好ましくは、液体溶液を調製するために使用される先の溶液に適用される。次いで、本明細書で言及されている他の原料、例えば、炭水化物、脂肪、ミネラル、及び/又はビタミン等と混合して液体溶液を形成することにより、この先の溶液を処理することができる。かかる処理には、例えばpH調整、均質化、及び/又は乳化等の他の工程も含まれる場合がある。好ましくは、液体溶液は、先の溶液、及び任意に先の溶液と混合される追加の原料を含む。
【0494】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では:
-第1の熱処理は、液体溶液を調製するために使用される先の溶液に適用され、それによってタンパク質ナノゲルを形成する、
-任意に、加熱された先の溶液を、例えば混合することにより、他の原料と合わせる、
-液体溶液は、それ自体が加熱されている先の溶液の形態で、又は加熱された先の溶液と他の原料の組み合わせの形態で、適切な容器に包装される、及び
-包装された液体溶液は、少なくとも低温殺菌を含み、好ましくは無菌の飲料調製物を提供するのに十分である第2の熱処理に供される。
【0495】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、例えば、Ca、Mg、K及び/又はK等のミネラルを、ナノゲルを含み、熱処理された先の溶液に添加する。本発明者らは、ホエイタンパク質が先にナノゲルに変換された場合、高ミネラル含量の存在下での低温殺菌又はさらには滅菌熱処理に対して、ホエイタンパク質がより耐性であることを観察した。
【0496】
「飲料調製物」という用語は、少なくとも低温殺菌を含む熱処理に供された液体溶液を表す。
【0497】
液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液のCa及びMgの総量は、好ましくは0.001~0.1%w/w、より好ましくは0.005~0.06%w/wの範囲、最も好ましくは0.02~0.04%w/wの範囲である。
【0498】
液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液のNa及びKの総量は、好ましくは0.001~0.2%w/w、より好ましくは0.01~0.1%w/wの範囲、最も好ましくは0.04~0.06%w/wの範囲である。
【0499】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、例えば、Ca、Mg、K及び/又はK等のミネラルを、ナノゲルを含み、熱処理された先の溶液に添加する。本発明者らは、ホエイタンパク質が先にナノゲルに変換された場合、高ミネラル含量の存在下での低温殺菌又はさらには滅菌熱処理に対して、ホエイタンパク質がより耐性であることを観察した。
【0500】
そのため、ナノゲルを含み、熱処理された先の溶液は、少なくとも0.1%w/w、好ましくは少なくとも0.3%w/w、より好ましくは少なくとも0.5%w/wのCa及びMgの総量を含む液体溶液を提供するのに十分な量のミネラルを含む他の原料と混合されることがしばしば好ましい。
【0501】
ナノゲルを含む熱処理された先の溶液は、好ましくは、0.1~1.5%w/w、より好ましくは0.3~1.2%w/w、さらにより好ましくは0.5~1.0%w/wのCa及びMgの総量を含む液体溶液を提供するのに十分な量のミネラルを含む他の原料と混合される。
【0502】
加えて、ナノゲルを含み、熱処理された先の溶液は、少なくとも0.2%w/w、好ましくは少なくとも0.5%w/w、より好ましくは少なくとも0.7%w/wのNa及びKの総量を含む液体溶液を提供するのに十分な量のミネラルを含む他の原料と混合されることがしばしば好ましい。
【0503】
ナノゲルを含む熱処理された先の溶液は、好ましくは、0.2~1.5%w/w、より好ましくは0.5~1.2%w/w、さらにより好ましくは0.7~1.0%w/wのNa及びKの総量を含む液体溶液を提供するのに十分な量のミネラルを含む他の原料と混合される。
【0504】
液体溶液、又は液体溶液を調製するために使用される先の溶液は、好ましくは国際公開第2018/115520号公報A1に従って得られる本明細書に記載のBLG単離物を、好ましくは脱塩又はpH調整された水と混合することによって調製され、任意に所望のタンパク質含量及び5.6~6.4の範囲のpHを得るためにpHを調整することが特に好ましい。液体が透明になったらすぐにpH調整を停止することが好ましい。
【0505】
可溶性ホエイタンパク質凝集物は、好ましくは、6.6~8.0の範囲、より好ましくは6.7~7.5の範囲、さらにより好ましくは6.9~7.3の範囲のpHでの熱処理によって形成される。タンパク質ナノゲルの文脈で説明されている熱処理は、可溶性ホエイタンパク質凝集物の形成にも同様に有用である。しかしながら、液体溶液のタンパク質含量は、好ましくは1~12%w/wの範囲、より好ましくは3~11%w/wの範囲、さらにより好ましくは5~10%w/wの範囲、最も好ましくは6~9%w/wの範囲である。
【0506】
高タンパク質濃度を有する液体溶液を使用して可溶性ホエイタンパク質凝集物を調製するために、液体溶液のCa及びMgの総量は、好ましくは最大0.01%w/w、より好ましくは最大0.005%w/w、さらにより好ましくは最大0.001%w/wである。
【0507】
高タンパク質濃度を有する液体溶液を使用して可溶性ホエイタンパク質凝集物を調製するために、液体溶液のNa及びKの総量は、好ましくは最大0.05%w/w、より好ましくは最大0.01%w/w、最も好ましくは最大0.005%w/wである。
【0508】
本発明の一態様は、溶液の重量に対して1~20%w/wの総量のタンパク質を含むタンパク質溶液の使用に関し、5.5~8.0の範囲のpHを有する滅菌飲料調製物の白色度を制御するためタンパク質の少なくとも85w/w%がβラクトグロブリン(BLG)である。
【0509】
本発明の別の態様は、タンパク質欠乏症に関連する疾患の治療方法で使用するための、本明細書で定義される包装された熱処理飲料調製物に関する。
【0510】
本発明の別の態様は、本明細書で栄養補助食品として定義される、包装された熱処理飲料調製物の使用に関する。
【0511】
本発明の好ましい実施形態では、本明細書で定義される包装された熱処理飲料調製物は、栄養補助食品として使用され、運動前、運動中、又は運動後に摂取される。
【0512】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、5.8~8.0の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して1~20%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)であるタンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み該飲料調製物のタンパク質画分は、CIELABカラースケールで -0.10~+0.51の範囲の色値デルタb*を有し、
デルタb*=b6.0w/w%タンパク質に標準化したサンプル
* -b脱塩水
*であり、室温で測定される。
【0513】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、5.8~8.0の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して1~20%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み
該飲料調製物のタンパク質画分は、CIELABカラースケールで-0.10~+0.51の範囲の色値デルタb*を有し、
デルタb*=b6.0w/w%タンパク質に標準化したサンプル
*-b脱塩水
*であり、室温で測定され、
調製物の総エネルギー含量の最大5%の脂質含量を有する。
【0514】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、5.8~8.0の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して1~20%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)であるタンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み該飲料調製物のタンパク質画分は、CIELABカラースケールで-0.10~+0.51の範囲の色値デルタb*を有し、
デルタb*=b6.0w/w%タンパク質に標準化したサンプル
*-b脱塩水
*であり、室温で測定される。
また、調製物の総エネルギー含量の5%を超える、好ましくは20E%を超える脂質含量を有する。
【0515】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、5.8~8.00の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して1~20%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)であるタンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み、
200NTU超、好ましくは40NTU超の濁度を有する。
【0516】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、5.8~8.0の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して1~20%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み、
最大200NTU、好ましくは最大40NTUの濁度を有する。
【0517】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、5.8~8.0の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して3~20%w/w、より好ましくは3~18%w/w、さらにより好ましくは3~15%w/w、最も好ましくは3~10%w/wの総量のタンパク質であっで、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み、
200NTU超、好ましくは40NTU超の濁度を有する。
【0518】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、5.8~8.0の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して3~20%w/w、より好ましくは3~18%w/w、さらにより好ましくは3~15%w/w、最も好ましくは3~10%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み、
最大200NTU、好ましくは最大40NTUの濁度を有する。
【0519】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、6.2~8.0、好ましくは6.3~7.6、好ましくは6.5~7.2の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して1~20%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み、
最大200NTU、好ましくは最大40NTUの濁度を有する。
【0520】
より好ましくは、6.5~8.0、好ましくは6.7~7.6、好ましくは6.9~7.2の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料調製物は、
-飲料調製物の重量に対して5~12%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも90w/w%、好ましくは少なくとも94%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み、
該飲料調製物は、最大40NTU、好ましくは最大20NTUの濁度を有し、該飲料調製物は好ましくは無菌である。
【0521】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、6.2~8.0、好ましくは6.3~7.6、好ましくは6.5~7.2の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して3~20%w/w、より好ましくは3~18%w/w、さらにより好ましくは3~15%w/w、最も好ましくは3~10%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み、
最大200NTU、好ましくは最大40NTUの濁度を有する。
【0522】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、6.5~8.0、好ましくは6.7~7.6、好ましくは6.9~7.2の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料調製物は、
-飲料調製物の重量に対して3~20%w/w、より好ましくは3~18%w/w、さらにより好ましくは3~15%w/w、最も好ましくは3~10%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも90w/w%、好ましくは少なくとも94%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み、
該飲料調製物は、200NTU超、好ましくは400NTU超の濁度を有する。
【0523】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、5.5~6.2、好ましくは5.7~6.1、好ましくは5.8~6.0の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して1~20%w/wの総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み、
200NTU超、好ましくは400NTU超の濁度を有する。
【0524】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、5.8~8.0、好ましくは6.3~7.6、好ましくは6.5~7.2の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して2~10.0%w/wの総量のタンパク質、好ましくは飲料調製物に対して3.0~8.0%w/wの総量のタンパク質、好ましくは飲料調製物に対して5.0~7.5%w/w、より好ましくは4.0~6.0の総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含む。
【0525】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、5.8~8.0、好ましくは6.3~7.6、好ましくは6.5~7.2の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して2~10.0%w/w、好ましくは3.0~8.0、好ましくは5.0~7.5、より好ましくは4.0~6.0の総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み、
マグネシウム及びカルシウムの量の合計は最大10mMである。
【0526】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、5.8~8.0、好ましくは6.3~7.6、好ましくは6.5~7.2の範囲のpHを有する包装された熱処理飲料調製物であって、該飲料は、
-飲料調製物の重量に対して2~10.0%w/w、好ましくは3.0~8.0、好ましくは5.0~7.5、より好ましくは4.0~6.0の総量のタンパク質であって、タンパク質の少なくとも85w/w%、好ましくは少なくとも90%w/wはβラクトグロブリン(BLG)である、タンパク質と、
-任意に、甘味料及び/又は香料と、を含み、
リン最大100mg/タンパク質100g及びカリウム最大700mg/タンパク質100g、好ましくはリン最大50mg/タンパク質100g及びカリウム最大400mg/タンパク質100g、又は好ましくはリン最大10mg/タンパク質100g及びカリウム最大50mg/タンパク質100gを含む。
【0527】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載の1つ以上の方法によって得られる熱処理飲料調製物に関する。
【0528】
本発明の態様の1つの文脈で説明された実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも適用されることに留意されたい。
【0529】
本出願で引用された全ての特許及び非特許の言及は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0530】
次に、本発明を以下の非限定的な例でさらに詳細に説明する。
【0531】
例1:分析の方法
例1.1:内因性トリプトファン蛍光によるタンパク質のネイティブ性の決定
トリプトファン(Trp)蛍光分光法は、タンパク質のフォールディング及びアンフォールディングを監視するためのよく知られたツールである。ネイティブタンパク質内に埋め込まれたTrp残基は、典型的には、折りたたまれていないタンパク質等の溶媒に曝露される位置に存在する場合よりも、330nm付近で最も高い蛍光発光を示す。折りたたまれていないタンパク質では、Trp蛍光発光の波長は典型的には、より高い波長へとシフトし、350nm付近で測定されることがよくある。本発明者らは、ここで、この遷移を利用して、330nm及び350nmでの蛍光発光の比率を計算し、加熱温度の影響を調査することにより、熱的に誘発されたアンフォールディングを監視する。
【0532】
分析は以下の工程を含む:
・飲料組成物をMQ水で0.6mg/mLに希釈した。
・300μlのサンプルを、気泡を避けて白色96ウェルプレートに移すか、又は3mLを10mmの石英キュベットに移した。
・310~400nmのトリプトファン蛍光発光強度を、5nmスリットを使用して295で励起することにより上部から記録した。
・サンプルを、プレートリーダーアクセサリ(G9810A)又はシングルキュベットホルダーを備えたCary Eclipse蛍光分光光度計を使用して22℃で測定した
・330nmで測定された蛍光発光強度を350nmでの発光強度で割ること、すなわちR=I330/I350によって発光強度比を計算し、タンパク質のネイティブ率(nativity)の尺度として使用した。
o少なくとも1.11のRは、優勢なネイティブBLG立体構造を表し、
o1.11未満のRは、少なくとも部分的なアンフォールディング及び凝集を報告する。
【0533】
例1.2:PH 3.9での熱安定性
pH 3.9での熱安定性:
pH3.9での熱安定性は、pH3.9での長時間の低温殺菌時にタンパク質組成物が清澄な状態を維持する能力の尺度である。
【0534】
pH3.9での熱安定性は、pH3.9の水溶液を形成し、試験する粉末又は液体のサンプルを水と混合することにより6.0%w/wタンパク質を含め(又は、希薄な液体の場合、代替的には、低温蒸発によって濃縮する)、最小限の0.1M NaOH又は0.1M HClでpHを3.9に調整することによって決定される。
【0535】
pHを調整した混合物を30分間静置した後、25mLの混合物を30mLの薄壁ガラス試験管に移す。75.0℃の水浴に浸漬することで300秒間、75.0℃に加熱する。加熱後直ちにガラス試験管を氷浴に移して1~5℃に冷却し、熱処理されたサンプルの濁度を、例1.7に従って測定する。
【0536】
例1.3:ホエイタンパク質組成物のタンパク質変性度の決定
変性ホエイタンパク質は、pH4.6未満又はpH4.6超のpH値よりもpH4.6での溶解度が低いことが知られているため、ホエイタンパク質組成物の変性度は、溶液中のタンパク質が安定しているpHでの総量のタンパク質に対するpH4.6での可溶性タンパク質の量を測定することによって決定される。
【0537】
より具体的には、ホエイタンパク質の場合、分析されるホエイタンパク質組成物(例えば、粉末又は水溶液)は、以下に変換される:
-総タンパク質5.0%(w/w)を含み、pHが7.0又は3.0の第1の水溶液、及び
-総タンパク質5.0%(w/w)を含み、pHが4.6の第2の水溶液。
【0538】
pH調整を、3%(w/w)NaOH(水溶液)又は5%(w/w)HCl(水溶液)を使用して行う。
【0539】
第1の水溶液の総タンパク質含有量(PpH7.0又は3.0)を、例1.5に従って決定する。
第2の水溶液を室温で2時間保管し、続いて3000gで5分間遠心分離する。上清のサンプルを回収し、例1.5に従って分析して、上清中のタンパク質濃度(SpH4.6)を得る。
ホエイタンパク質組成物のタンパク質変性度、Dを次のとおり計算する:
D=((PpH7.0又は3.0-SpH4.6)/PpH7.0又は3.0)*100%
【0540】
例1.4逆相UPLC分析を使用したタンパク質変性の決定(PH 4.6酸沈殿を伴う)。
BLGサンプル(非加熱参照及び加熱BLG飲料組成物等)をMQ水で2%に希釈した。5mLのタンパク質溶液、10mLのMilli-Q、4mLの10%酢酸、及び6mLの1.0M NaOAcを混合し、20分間撹拌して、pH4.6付近で変性タンパク質を沈殿凝集させる。溶液を0.22μmフィルターで濾過し、凝集物及び非ネイティブタンパク質を除去する。
全てのサンプルを、研磨水(polished water)を加えることによって同じ程度の希釈に供した。
各サンプルについて、UPLCカラム(Protein BEH C4;300Å;1.7μm;150×2.1mm)を備えたUPLCシステムに同じ容量を充填し、214nmで検出した。
サンプルを、次の条件を使用して流した:
バッファーA:Milli-Q水、0.1%w/wTFA
バッファーB:HPLCグレードのアセトニトリル、0.1%w/wTFA
流量:0.4ml/分
勾配:0~6.00分 24~45%B;6.00~6.50分 45~90%B;6.50~7.00分 90%B;7.00~7.50分 90~24%B、及び7.50~10.00分 24%B。
タンパク質標準(Sigma L0130)に対するBLGピークの面積を使用して、サンプル中のネイティブBLGの濃度を決定した(5レベルの検量線)
サンプルをさらに希釈し、線形範囲外の場合は再注入した。
【0541】
例1.5:総タンパク質の決定
サンプルの総タンパク質含量(真のタンパク質)を、以下によって決定する:
1)ISO 8968-1/2|IDF 020-1/2-牛乳-窒素含量の決定-第1/2部:ケルダール法を使用した窒素含量の決定に準拠したサンプルの全窒素の決定。
2)ISO 8968-4|IDF 020-4-乳-窒素含量の決定-第4部:非タンパク質窒素含量の決定に準拠したサンプルの非タンパク質窒素の決定。
3)総量のタンパク質を(m総窒素-m非タンパク質-窒素)*6.38として計算する。
【0542】
例1.6:非凝集性BLG、ALA、及びCMPの決定
非凝集性アルファ-ラクトアルブミン(ALA)、βラクトグロブリン(BLG)、及びカゼイノマクロペプチド(CMP)の含有量を、それぞれ0.4mL/分のHPLC分析で分析した。25マイクロLの濾過サンプルを、溶離液(Milli-Q水465g、アセトニトリル417.3g及びトリフルオロ酢酸1mLからなる)で平衡化したプレカラムPWxl(6mm×4cm、Tosohass、日本)を取り付けて、連続して接続された2つのTSKgel3000PWxl(7.8mm 30cm、Tosohass、日本)カラムに注入し、210nmのUV検出器を使用した。
【0543】
ネイティブアルファ-ラクトアルブミン(Cアルファ)、βラクトグロブリン(Cβ)、及びカゼイノマクロペプチド(CCMP)の含有量の定量的決定を、対応する標準タンパク質で得られたピーク面積をサンプルのピーク面積と比較することによって行った。
【0544】
追加のタンパク質(非BLGタンパク質)の総量を、総タンパク質の量(例1.5に従って決定)からBLGの量を差し引くことによって決定した。
【0545】
例1.7:濁度の決定
濁度は、空気中の煙と同様に、一般に肉眼では見えない多数の粒子によって引き起こされる流体の曇り又はもやである。
濁度は比濁濁度単位(NTU)で測定される。
【0546】
20mLの飲料/サンプルをNTUガラスに添加し、Turbiquant(登録商標)3000 IR濁度計に入れた。安定化後にNTU値を測定し、2回繰り返した。
【0547】
例1.8:粘度の決定
飲料調製物の粘度を、レオメーター(Anton Paar,Physica MCR301)を使用して測定した。
3.8mLのサンプルをカップDG26.7に添加した。サンプルを22℃に平衡化した後、50s-1で30秒間事前に剪断し、その後30秒間の平衡時間、そして1s-1~200s-1及び1s-1の剪断速度スイープを実行した。
特に明記しない限り、粘度は100s-1剪断速度における単位センチポアズ(cP)で表される。測定されたcP値が高いほど、粘度が高くなる。
【0548】
或いは、GilsonによるViscomanを使用して粘度を推定し、約300s-1の剪断速度で報告した。
【0549】
例1.9:色の決定
色彩色差計(Konica Minolta、CR-400)を用いて色を測定した。気泡の形成を回避しながら、15gのサンプルを小さなペトリ皿(55×14.2mm、VWRカタログ番号391-0895)に加えた。サンプルのタンパク質含量を、6.0w/w%タンパク質以下に標準化した。
色彩色差計を白色の較正プレート(No.19033177)に較正した。光源をD65に設定し、オブザーバーを2度に設定した。色(CIELAB色空間、a*値、b*値、L*値)を、ペトリ皿の様々な場所での3つの個別の読み取り値の平均として、懸濁液を覆う蓋をして測定した。
脱塩水基準の値は次のとおりである。
L*39.97±0.3
a*0.00±0.06
b*-0.22±0.09
測定値を、脱塩水測定値に基づいてデルタ/差の値に変換した。
デルタL*=L6.0w/w%タンパク質に標準化したサンプル
*-L脱塩水
*、室温で測定。
デルタa*=a6.0w/w%タンパク質に標準化したサンプル
*-a脱塩水
*、室温で測定。
デルタb*=b6.0w/w%タンパク質に標準化したサンプル
*-b脱塩水
*、室温で測定。
【0550】
サンプルは6.0w/w%タンパク質以下に標準化されている。
L*a*b*色空間(CIELAB空間とも称される)は、1976年に国際照明委員会(CIE)によって定義された均一色空間の1つであり、明度及び色相を定量的に報告するために使用された(ISO 11664-4:2008(E)/CIE S 014-4/E:2007)。
この空間では、L*は明度(0~100の値)を示し、L*=0で最も暗い黒、L*=100で最も明るい白を示す。
カラーチャネルa*及びb*は、a*=0及びb*=0での真のニュートラルグレー値を表す。a*軸は緑及び赤の成分を表し、緑は負の方向、赤は正の方向である。b*軸は青及び黄色の成分を表し、負の方向が青、正の方向が黄色である。
【0551】
例1.10飲料安定性試験/不溶性タンパク質物質
3000gで5分間遠心分離した際に、加熱されたサンプル中の総タンパク質の15%未満が沈殿した場合、ホエイタンパク質飲料の組成は安定していると見なされた:
・およそ20gのサンプルを遠心管に加え、3000gで5分間遠心分離した。
・遠心分離前のタンパク質及び遠心分離後の上清のケルダール分析を使用して、タンパク質の回収率を定量した。例1.5を参照されたい。
【0552】
【0553】
このパラメーターは、不溶性タンパク質物質のレベルと称されることもあり、液体サンプルと粉末サンプルの両方の分析に使用できる。サンプルが粉末の場合、10gの粉末を90gの脱塩水に懸濁し、22℃で1時間穏やかに攪拌しながら水和させる。遠心管に対しておよそ20gのサンプル(例えば、液体サンプル又は懸濁粉末サンプル)を3000gで5分間遠心分離する。遠心分離前のタンパク質(Ptotal)及び遠心分離後の上清(P3000×g)のケルダール分析を使用して、例1.5に従ってタンパク質の回収率を定量した。
【0554】
【0555】
例1.11:酸性化の際のゲル強度の測定
酸性化の間の胃内の飲料の構造展開をシミュレートするため、レオメーター(Anton Paar,Physica MCR301)を使用した。飲料を2w/w%タンパク質に希釈し、42℃に30分間温めた。その後、1w/w%GDL(D-グルコン酸、Sigma Aldrich、重量49~53%)を溶液に加え、5分間撹拌した。溶液(19.6mL)をレオメーターのカップCC27-SSに添加した。レオメーターを42℃に平衡化し、G’(貯蔵弾性率、Pa)を0.1Hz及び0.5%歪みで60分間測定した。酸性化中のpHを、pHロガー(WTW、Multi 3410)を使用して追跡した。
【0556】
例1.12:イメージングによる透明度の決定
飲料調製物の写真を、「lorem ipsum」の文が書かれた紙片に触れている濁度NTU測定バイアルにサンプルを入れることによって行った。スマートフォンを使用してバイアルを撮影し、本発明者らは、バイアルを通して文がはっきりと観察できるかどうかを評価した。
【0557】
例1.13:灰分含量の決定
食品の灰分を、NMKL 173:2005「食品中の灰分重量計測式測定」に従って決定する。
【0558】
例1.14:導電率の決定
水溶液の「導電率」(「比導電率」と称されることもある)は、溶液が電気を伝導する能力の尺度である。導電率は、例えば、2つの電極間の溶液のAC抵抗を測定することによって決定され、結果は典型的には、1cmあたりのミリジーメンス(mS/cm)の単位で示される。導電率は、例えば、EPA(米国環境保護庁)の方法番号120.1に従って測定することができる。
本明細書に記載されている導電率の値は、別段の指定がない限り、25℃に正規化されている。
導電率は、導電率計(テトラコン325電極を備えたWTW Cond 3210)で測定される。
システムは、使用前にマニュアルに記載されているように較正されている。電極は、局所的な希釈を避けるために、測定が行われるのと同じタイプの媒質でよくすすいでおく。測定が行われる領域が完全に水没するように、電極を媒質に下げる。次いで、電極を攪拌して、電極に閉じ込められた空気を全て除去する。次いで、電極を、安定した値が表示から取得され、記録されるまで静止状態に保つ。
【0559】
例1.15:溶液の全固形分の決定
溶液の全固形分は、NMKL 110第2版、2005(全固形分(水)-乳及び乳製品の重量分析)に従って決定することができる。NMKLは、「ヨーロッパ標準分析法と食品分析に関する北欧委員会(Nordisk Metodikkomite for Naeringsmidler)」の略語である。
【0560】
溶液の含水量は、100%から相対的全固形分量(%w/w)を引いたものとして計算できる。
【0561】
例1.16:PHの決定
全てのpH値は、pHガラス電極を使用して測定され、25℃に正規化されている。
pHガラス電極(温度補償付き)は、使用前に注意深くすすぎ、使用前に較正する。
サンプルが液体溶液の場合、pHは25℃の溶液中で直接測定される。
サンプルが粉末の場合、10グラムの粉末を90mlの脱塩水に室温で激しく攪拌しながら溶解する。次いで、溶液のpHを25℃で測定する。
【0562】
例1.17:緩み密度及びかさ密度の決定
乾燥粉末の密度は、特定の条件下で特別なStampf体積計(メスシリンダー)を使用して分析される粉末の重量と体積の関係として定義される。密度は典型的には、g/ml又はkg/Lで表される。
【0563】
この方法では、乾燥粉末のサンプルをメスシリンダーに詰め込む。指定された回数のタッピングの後、製品の体積を読み取り、密度を計算する。
【0564】
この方法により、以下の3種類の密度を定義ですることができる:
・充填密度、これは、指定されたメスシリンダーに移された後の粉末の体積で割った質量である。
・緩み密度、この規格で指定された条件に従って、100回のタッピング後の粉末の体積で割った質量である。
・かさ密度、この規格で指定された条件に従って、625回のタッピング後の粉末の体積で割った質量である。
【0565】
この方法では、250mlで、0~250mlに目盛りを付けた、重量190±15g(J.Engelsmann A.G.67059 Ludwigshafen/Rh)の特殊なメスシリンダー、及び例えば、J.Engelsmann A.G.のStampf体積計を使用する。
【0566】
乾燥製品の緩み密度及びかさ密度を、以下の手順で決定する。
【0567】
前処理:
測定するサンプルを室温で保管する。
【0568】
次いで、容器を繰り返し回転及び転倒させてサンプルを完全に混合する(粒子の粉砕を避ける)。容器は2/3を超えて満たされていない。
【0569】
手順:
100.0±0.1グラムの粉末を量り、メスシリンダーに移す。容量V0をmlで読み取る。
【0570】
100gの粉末がシリンダーに収まらない場合は、量を50又は25グラムに減らす必要がある。
【0571】
メスシリンダーをStampf体積計に固定し、これを100回をタップする。スパチュラで表面を平らにし、容量V100をmlで読み取る。
【0572】
タブの数を625(100タップを含む)に変更する。軽くたたいた後、表面を水平にし、容量V625をmlで読み取る。
【0573】
密度の計算:
次の式に従って、g/mlで表される緩み密度及びかさ密度を計算する:
かさ密度=M/V
式中、Mは計量されたサンプルをグラムで示し、Vは625回のタッピング後の容量をmlで示す。
【0574】
例1.18:粉末の含水量の決定
食品の含水量は、ISO 5537:2004(粉乳-含水量の測定(基準法))に従って測定される。NMKLは、「ヨーロッパ標準分析法と食品分析に関する北欧委員会(Nordisk Metodikkomite for Naeringsmidler)」の略語である。
例1.19:カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リンの量の決定(ICP-MS法)
【0575】
カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、及びリンの総量は、サンプルを最初にマイクロ波分解を使用して分解し、次いでミネラル(複数の場合がある)の総量がICP装置を使用して決定される手順を使用して決定される。
【0576】
装置:
マイクロ波はAnton Paar製であり、ICPはPerkinElmer Inc製のOptima 2000DVである。
【0577】
材料:
1M HNO3
2%HNO3中のイットリウム
5%HNO3中のカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、及びリンの適切な標準
【0578】
前処理:
一定量の粉末を量り取り、その粉末をマイクロ波分解チューブに移す。5mLの1M HNO3を添加する。電子レンジの指示に従って、電子レンジでサンプルを分解する。分解されたチューブをドラフトチャンバーに入れ、蓋を外して揮発性のヒュームを蒸発させる。
【0579】
測定手順:
既知量のMilli-Q水を使用して、前処理したサンプルをDigiTUBEに移す。2%HNO3中のイットリウムの溶液を分解チューブに添加し(50mLの希釈サンプルあたり約0.25mL)、Milli-Q水を使用して既知の容量に希釈する。製造元が説明する手順を使用して、ICPでサンプルを分析する。
【0580】
ブラインドサンプルは、Milli-Q水を使用して、10mLの1M HNO3及び0.5mLのイットリウム2%HNO3溶液の混合物を最終容量100mLに希釈することによって調製される。
【0581】
予想されるサンプル濃度を挟む濃度を持つ少なくとも3つの標準サンプルを調製する。
液体サンプルの検出限界は、Ca、Na、K及びリン(Phosphor)の場合は0.005g/100gサンプルであり、Mgの場合は0.0005g/100gサンプルである。粉末サンプルの検出限界は、Ca、Na、K及びPhoでは0.025g/100gサンプルであり、Mgでは0.0005g/100gサンプルである。
リン(Phosphor)の検出限界以下の場合、検出限界の値を例で使用して、最悪のシナリオとして存在するPhoの最大量を示す。
【0582】
例1.20:フロシン値の決定:
フロシン値は、「Maillard Reaction Evaluation by Furosine Determination During Infant Cereal Processing」,Guerra-Hernandez et al,Journal of Cereal Science 29(1999)171-176に記載されるとおりに決定され、総量のタンパク質は例1.5に従って決定される。フロシン値は、タンパク質100gあたりmg単位のフロシンで報告される。
【0583】
例1.21:液体中のBLGの結晶化度の決定
以下の方法を使用して、pHが5~6の範囲の液体中のBLGの結晶化度を決定する。
【0584】
a)問題の液体のサンプル10mLを、孔径0.45ミクロンのCAメンブレンを備えたMaxi-Spinフィルターに移す。
b)遠心分離機を2℃に保って、直ちにフィルターを1500gで5分間回転させる。
c)スピンフィルターの被保持物側に2mLの冷Milli-Q水(2℃)を加え、直ちに、遠心分離機を2°Cに冷却したまま、フィルターを1500gで5分間スピンし、透過液(透過液A)を収集して、容量を測定し、例1.31に概説されている方法を使用してHPLCを介してBLG濃度を決定する。
d)フィルターの被保持物側に4mLの2M NaClを加え、すばやく攪拌し、混合物を25℃で15分間放置する。
e)直ちにフィルターを1500gで5分間回転させ、透過液を収集する(透過液B)
f)例1.31に概説されている方法を使用して、透過液A及び透過液BのBLGの総重量を決定し、その結果を重量パーセントではなくBLGの総重量に変換する。透過液A中のBLGの重量はm透過液Aと称され、透過液BのBLGの重量はm透過液Bと称される。
g)BLGに関する液体の結晶化度は、次のように決定される:
結晶化度=m透過液B/(m透過液A+m透過液B)*100%
【0585】
例1.22:乾燥粉末中のBLGの結晶化度の決定
この方法は、乾燥粉末中のBLGの結晶化度を決定するために使用される。
【0586】
a)5.0グラムの粉末サンプルを20.0グラムの冷Milli-Q水(2℃)と混合し、2℃で5分間放置する。
b)問題の液体のサンプルを0.45ミクロンのCAメンブレンを備えたMaxi-Spinフィルターに移す。
c)遠心分離機を2℃に保って、直ちに、フィルターを1500gで5分間回転させる。
d)スピンフィルターの被保持物側に2mLの冷Milli-Q水(2℃)を添加し、直ちにフィルターを1500gで5分間回転させ、透過液(透過液A)を収集し、容量を測定し、例1.31に概説されている方法を使用してHPLCを介してBLGを決定し、結果を重量パーセントではなくBLGの総重量に変換する。透過液AのBLGの重量は、m
透過液Aと称される。
e)次いで、粉末中のBLGの結晶化度を、次の式を使用して計算する:
【数3】
式中、m
BLG合計は、工程a)の粉末サンプル中のBLGの総量である。
【0587】
粉末サンプルのBLGの総量が不明な場合は、別の5gの粉末サンプル(同じ粉末供給源に由来する)を20.0グラムのMilli-Q水に懸濁し、NaOH水溶液を添加してpHを7.0に調整し、混合物を撹拌しながら25℃で1時間放置し、最後に例1.31を使用して粉末サンプルのBLGの総量を決定することにより、これを決定してもよい。
【0588】
例1.23:UF透過導電率の決定
15mLのサンプルを3kDaカットオフ(3000 NMWL)のAmicon Ultra-15遠心フィルターユニットに移し、4000gで20~30分間、又は導電率を測定するのに十分な容量のUF透過液がフィルターユニットの下部に蓄積するまで遠心分離する。遠心分離直後に導電率を測定する。サンプルの取り扱い及び遠心分離は、サンプルの供給源の温度で行われる。
【0589】
例1.24:粉末中の乾燥BLG結晶の検出
粉末中の乾燥BLG結晶の存在は、次の方法で識別され得る:
【0590】
分析する粉末のサンプルを再懸濁し、4℃の温度の脱塩水に1部の粉末に対して2部の水の重量比で穏やかに混合し、4℃で1時間再水和させる。
【0591】
再水和されたサンプルを、結晶の存在を識別するために顕微鏡検査によって調べ、好ましくは複屈折を検出するために平面偏光を使用する。
【0592】
結晶様物質を分離し、結晶構造の存在を確認するためX線結晶構造解析に供し、また、好ましくは結晶格子(空間群及び単位格子の寸法)がBLG結晶の結晶格子に対応していることも確認する。
【0593】
単離された結晶様物質の化学組成を分析して、その固体が主にBLGで構成されていることを確認する。
【0594】
例1.25:乳糖の総量の決定
乳糖の総量は、ISO 5765-2:2002(IDF 79-2:2002)「粉乳、乾燥アイスミックス、及びプロセスチーズ-乳糖含量の測定-第2部:乳糖のガラクトース部分を利用した酵素法」に従って測定される。
【0595】
例1.26:炭水化物の総量の決定:
炭水化物の量は、Sigma Aldrich Total Carbohydrate Assay Kit(Cat MAK104-1KT)を使用して決定され、このキットでは、炭水化物が加水分解され、フルフラール及びヒドロキシフルフラールに変換されて、これらが490nmで分光光度的にモニターされるクロマゲンに変換される。
【0596】
例1.27:脂質の総量の決定
脂質の量は、ISO 1211:2010(脂肪含量の決定-Roese-Gottlieb重量分析法)に従って決定される。
【0597】
例1.28:ブリックスの決定
ブリックス測定を、研磨水(逆浸透によって濾過された水で最大0.05mS/cmの導電率が得られる)に対して較正されたPAL-αデジタル手持ち屈折計(Atago)を使用して行った。
【0598】
およそ500μlのサンプルを装置のプリズム面に移し、測定を開始した。測定値を読み取り、記録した。
【0599】
ホエイタンパク質溶液のブリックスは、全固形分(TS)の含有量に比例し、TS(%w/w)はおよそのブリックス*0.85である。
【0600】
例1.29ラクトフェリン及びラクトペルオキシダーゼの決定
ラクトフェリンの濃度は、Soyeurt 2012(Soyeurt et al;Mid-infrared prediction of lactoferrin content in bovine milk:potential indicator of mastitis;Animal(2012),6:11,pp 1830-1838)で概説されているELISAイムノアッセイによって決定される。
ラクトペルオキシダーゼの濃度は、市販のウシラクトペルオキシダーゼキットを使用して決定される。
【0601】
例1.30:コロニー形成単位の数の決定
サンプル1グラムあたりのコロニー形成単位の数の決定は、ISO 4833-1:2013(E):食品及び動物の飼料原料の微生物学-微生物の列挙のための水平法-30℃でのコロニーカウント手法に従って行われる。
【0602】
例1.31:BLG、ALA、及びCMPの総量の決定
この手順は、組成物中のALA、BLG、及びCMP等のタンパク質、並びに任意に他のタンパク質種を定量分析するための液体クロマトグラフィー(HPLC)法である。例1.6の方法とは反対に、本方法はまた、凝集物中に存在するタンパク質を測定し、したがって、問題の組成物中のタンパク質種の総量の測定値を提供する。
【0603】
単離様式はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)であり、この方法ではサンプル溶媒及びHPLC移動相の両方として6MグアニジンHClバッファーを使用する。メルカプトエタノールは、タンパク質又はタンパク質凝集物のジスルフィド(S-S)を還元して、折りたたまれていない単量体構造を作り出す還元剤として使用される。
【0604】
サンプル調製は、移動相に10mg相当のタンパク質を溶解することで容易に達成される。
【0605】
2つのTSK-GEL G3000SWXL(7.7mm×30.0cm)カラム(GPCカラム)及びガードカラムを直列に配置して、原材料中の主要なタンパク質の適切な単離を達成する。
【0606】
溶出された分析対象物を、UV検出(280nm)によって検出及び定量する。
【0607】
機器/材料:
1.手動シールワッシャー付きHPLCポンプ515(Waters)
2.HPLCポンプコントローラーモジュールII(Waters)
3.オートサンプラー717(Waters)
4.デュアル吸光度検出器2487(Waters)
5.定量的レポートを生成できるコンピュータソフトウェア(Empower 3、Waters)
6.分析カラム:2つのTSK-GEL G3000SWXL(7.8×300mm、P/N:08541)。
ガードカラム:TSK-Guard Column SWxL(6.0×40mm、P/N:08543)。
7.超音波浴(Branson 5200)
0.2μm酢酸セルロースメンブレンを備えた8.25mmシリンジフィルター(514-0060、VWR)
【0608】
手順:
移動相:
A.ストック緩衝液。
1.1000mLのビーカーに56.6gのNa2HPO4、3.5gのNaH2PO4、及び2.9gのEDTAを量り入れる。
800mLの水に溶かす。
2.pHを測定し、必要に応じてHCl(pHを下げる)又はNaOH(pHを上げる)で7.5±0.1に調整する。
3.1000mLのメスフラスコに移し、水で希釈して容量を調整する。
【0609】
B.6MグアニジンHCl移動相。
1.2000mLのビーカーに1146gのグアニジンHClを量り取り、200mLのストック緩衝液(A)を加える。
2.マグネチックスターラー(50℃)で混合しながら、この溶液を水で約1600mLに希釈する。
3.NaOHでpHを7.5±0.1に調整する。
4.2000mLのメスフラスコに移し、水で希釈して容量を調整する。
5.0.22μmメンブレンフィルターを備えた溶媒濾過装置を使用して濾過する。
【0610】
較正標準。
定量する各タンパク質の較正標準を、以下の方法で調製する:
1.約25mgのタンパク質参照標準を正確に(0.01mgまで)計量し、
10mLのメスフラスコに入れ、10mLの水に溶かす。
これは、タンパク質のタンパク質ストック標準溶液(S1)である。
2.200μlのS1を20mlメスフラスコにピペットで入れ、移動相で希釈して容量を調整する。
これは、低希釈標準溶液WS1である。
3.500μLのS1を10mLメスフラスコにピペットで入れ、移動相で希釈して容量を調整する。
これは標準溶液WS2である。
4.500μLのS1を5mLメスフラスコにピペットで入れ、移動相で希釈して容量を調整する。
これは標準溶液WS3である。
5.750μLのS1を5mLメスフラスコにピペットで入れ、移動相で希釈して容量を調整する。
これは標準溶液WS4である。
6.1.0mLのS1を5mLメスフラスコにピペットで入れ、移動相で希釈して容量を調整する。
これは、高希釈標準溶液WS5である。
7.目盛り付き使い捨てピペットを使用して、1.5mLのWS1~5を別々のバイアルに移す。
各バイアルに10μLの2-メルカプトエタノールを加えてキャップを取り付ける。溶液を10秒間ボルテックスする。
標準液を周囲温度で約1時間置く。
8.0.22μmの酢酸セルロースシリンジフィルターを使用して標準液を濾過する。
【0611】
タンパク質の純度は、ケルダール(N×6.38)を使用して測定し、HPLCを使用して標準溶液WS5からの面積%を測定する。
タンパク質(mg)=「タンパク質標準重量」(mg)×P1×P2
P1=P%(ケルダール)
P2=タンパク質面積%(HPLC)
【0612】
サンプルの調製
1.元のサンプルのタンパク質25mgに相当する量を25mLメスフラスコに量り取る。
2.およそ20mLの移動相を加え、サンプルを約30分間溶解させる。
3.移動相を加えて容量を調整し、167μLの2-メルカプトエタノールを25mlのサンプル溶液に加える。
4.約30分間超音波処理し、その後、サンプルを周囲温度で約1時間半放置する。
5.溶液を混合し、0.22μlの酢酸セルロースシリンジフィルターを使用して濾過する。
【0613】
HPLCシステム/カラム
カラムの平衡化
1.GPCガードカラムと2つのGPC分析カラムとを直列に接続する。
新しいカラムは通常、リン酸塩緩衝液中で出荷される。
2.新しいカラムに30~60分間0.1~0.5mL/分で徐々に水を流す。
約1時間フラッシュを続ける。
3.流量を0.5mL/分から0.1mL/分に徐々に下げ、
リザーバーにおいて移動相で交換する。
4.圧力ショックを回避するために、ポンプの流量を30~60分間で0.1から0.5mL/分まで徐々に増やし、0.5mL/分のままにする。
5.10種類のサンプルを注入してカラムを飽和させ、ピークが溶出するのを待つ。
これは、カラムのコンディショニングに役立つ。
この工程は、次の注入の前に各注入が完了するのを待つ必要なく行われる。
6.移動相で少なくとも1時間平衡化する。
【0614】
結果の計算
定量されるタンパク質、例えばアルファ-ラクトアルブミン、βラクトグロブリン、及びカゼイノマクロペプチドの含有量の定量的決定を、対応する標準タンパク質で得られたピーク面積をサンプルのピーク面積と比較することによって行った。結果は、特定のタンパク質/100gの元のサンプル、又は元のサンプルの重量に対する特定のタンパク質の重量パーセントとして報告される。
【0615】
例1.32:マイクロゲル、タンパク質ナノゲル、可溶性ホエイタンパク質凝集物及び天然タンパク質の量の定量
飲料又は粉末サンプル中の不溶性タンパク質物質、タンパク質ナノゲル、可溶性ホエイタンパク質凝集物、及びネイティブタンパク質の量の定量を、以下の工程を使用して行う:
a)試験するサンプルを(脱塩水と混合すること又は濃縮により)20gの総タンパク質/Lを含む溶液に変換し(例えば、脱塩水で希釈すること又は濃縮により)、総タンパク質の濃度を、例1.5を使用して溶液のアリコート中の総タンパク質の測定によって確認し、caとして報告する。
b)a)の溶液の第1のアリコートを3.000×gで5分間遠心分離して不溶性タンパク質物質を沈殿させ、続いて工程a)で説明したように上清中のタンパク質濃度を測定し、上清の総量のタンパク質をcbとして報告する。不溶性タンパク質凝集物の含有量(総タンパク質に対するパーセント)は、(ca-cb)/ca
*100として計算される。
c)a)の溶液の第2のアリコートを50.000×gで1時間遠心分離して、不溶性タンパク質物質とタンパク質ナノゲルの両方を沈殿させ、上清中のタンパク質の濃度を工程a)で説明したように測定し、ccとして報告する。タンパク質ナノゲル画分は、(ca-cc)/ca
*100-(ca-cb)/ca
*100として計算される。
d)第3のアリコートをpH4.6に調整して、サンプル中の全ての変性及び/又は凝集タンパク質を沈殿させる。サンプルを室温で15分間放置した後、50.000×gで1時間遠心分離して、沈殿物を分離する。得られた上清の総タンパク質(主にネイティブタンパク質)の濃度を工程a)で説明したように測定し、cdとして報告する。
溶液中の可溶性ホエイタンパク質凝集物の画分を、次のように計算する。
(ca-cd)/ca
*100-(ca-cc)/ca
*100。
溶液中の天然タンパク質の割合は、cd/ca
*100として計算する。
【0616】
元のサンプルの不溶性タンパク質物質、タンパク質ナノゲル、可溶性ホエイタンパク質凝集物、及び/又はネイティブタンパク質の絶対濃度が必要な場合、これらは、工程a)の溶液を製造するために使用される元のサンプルの量に関する情報を使用して簡単に計算される。
【0617】
全ての遠心分離工程は、JA-30.50ローターを装備したBeckmann Coulter Avanti JXN-30遠心分離機を使用し、50mL Beckmann遠心管(29×103mm)で50mLサンプルを使用して25℃で行われる。
【0618】
例1.33:流体力学的径
タンパク質粒子の流体力学的直径(平均強度サイズ(d.nm))を、Nanosizer(Malvern)を使用する動的光散乱によって決定した。800μLの脱塩水及び5μLの熱処理タンパク質飲料を混合してUVキュベットに加えた。サイズ測定を室温(22℃)で行った。
【0619】
例2.噴霧乾燥された酸性BLG単離粉末の製造
ホエイタンパク質フィード
標準的なチーズ製造プロセスからのスイートホエイに由来するラクトース枯渇UF保持液は1.2ミクロンのフィルターで濾過されており、BLG結晶化プロセスのフィードとして使用される前にSynder FRメンブレンにより脂肪が減少されていた。フィードの化学組成を表1に示す。本発明者らは、この例で言及されているBLG、ALA等の特定のタンパク質の全ての重量パーセントが、総タンパク質に対する非凝集性タンパク質の重量パーセントに関するものであることを認識している。
【0620】
コンディショニング
スイートホエイフィードを、全固形分21%(TS)±5のフィード濃度まで、46ミルのスペーサー、フィード圧力1.5~3.0バールで、Koch HFK-328タイプのメンブレン(70m2メンブレン)を使用し、またダイアフィルトレーション媒質として研磨水(逆浸透によって濾過された水で、最大0.05mS/cmの導電率が得られる)を使用して、20℃の限外濾過セットアップ上でコンディショニングした。次いで、pHが約5.5になるようにHClを加えることによってpHを調整した。保持液の導電率の低下が20分間にわたって0.1mS/cmを下回るまで、ダイアフィルトレーションを続けた。次に、透過液フローが1.43L/時/m2を下回るまで、保持液を濃縮した。濃縮保持液の第1のサンプルを採取し、3000gで5分間遠心分離した。第1のサンプルの上清をBLG収量の測定に使用した。
【0621】
結晶化
濃縮された保持液を300Lの結晶化タンクに移し、そこで再水和され噴霧乾燥されたBLG結晶から作られた純粋なBLG結晶材料を用いてシードした。続いて、シードされたホエイタンパク質溶液を、20℃からおよそ6℃まで、およそ10時間かけて冷却し、BLG結晶を形成して成長させた。
【0622】
冷却後、結晶を含むホエイタンパク質溶液のサンプル(第2のサンプル)を採取し、3000gで5分間の遠心分離によってBLG結晶を単離した。第2のサンプルに由来する上清及び結晶ペレットを以下に説明するようにHPLC分析に供した。結晶化の収率を、以下に概説するように計算し、57%と決定した。
【0623】
【0624】
HPLCを使用したBLG収率の決定:
第1及び第2のサンプルの上清を研磨水を加えることによって同程度に希釈し、希釈した上清を0.22μmのフィルターで濾過した。濾過及び希釈した上清ごとに、同じ容量をPhenomenex Jupiter(登録商標)5μm C4 300Å、LCカラム250×4.6mm、Ea.を備えたHPLCシステムに充填し、214nmで検出した。
【0625】
サンプルを、次の条件を使用して流した:
バッファーA:MilliQ水、0.1%w/wTFA
バッファーB:HPLCグレードのアセトニトリル、0.085%w/wTFA
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
勾配:0~30分 82~55%A及び18~45%B;30~32分 55~10%A及び45~90%B;32.5~37.5分 10%A及び90%B;38~48分 10~82%A及び90~18%B。
【0626】
データ処理:
両方の上清を同じ方法で処理したため、BLGピークの面積を直接比較して、相対収量を計算することができる。結晶にはBLGのみが含まれており、サンプルは全て同じ方法で処理されているため、アルファ-ラクトアルブミン(ALA)の濃度、したがってALAの面積は全てのサンプルで同じはずである。したがって、結晶化前後のALAの面積は、相対収率を計算する際の補正係数(cf)として使用される。
【数4】
【0627】
【0628】
BLC結晶の酸溶解
結晶化タンクからの残りの材料を、デカンターを使用して、350g、2750RPM、64スペーサーにより150RPM差、及び75L/時のフィードフローで分離した後、フィードを研磨水と1:2で混合した。次いで、より薄いスラリーにするため、デカンターからのBLG結晶/固相を研磨水と混合した後、結晶を迅速に溶解させるためリン酸を加えてpHをおよそ3.0に下げた。
【0629】
BLG結晶を溶解した後、純粋なBLGタンパク質液を、結晶化のためのフィードを調製するのに使用したのと同じUFセットアップで15ブリックスに濃縮し、pHをおよそ3.8の最終pHに調整した。次いで、液体BLG単離物を75度に5分間加熱し、続いて10℃に冷却した。熱処理により、熱処理前の137.000CFU/gから熱処理後の1000CFU/g未満に微生物負荷が減少することがわかった。熱処理はいかなるタンパク質変性も引き起こさず、固有トリプトファン蛍光発光比(I330nm/I350nm)は1.20と決定され、BLG分子のネイティブ立体構造を示した。
【0630】
BLGを、180℃の入口温度及び75℃の出口温度を有するパイロットプラント噴霧乾燥機で乾燥した。出口でサンプリングして得られた粉末は、約4%w/wの含水量を有しており、粉末の化学組成は表2に示される。乾燥粉末のサンプルを溶解して、タンパク質変性度を1.5%と決定し、固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を1.20と測定した。
【0631】
【0632】
例3:噴霧乾燥したPH中性BLG単離粉末の製造
例2と同じプロトコル及び実験セットアップを使用する場合、表3に示されるラクトース減少ホエイタンパク質単離物をコンディションし、結晶化のためのフィードに使用した。結晶化の収率を68%と計算した。
本発明者らは、この例で言及されているBLG及びALA等の特定のタンパク質の全ての重量パーセントが、総タンパク質に対する非凝集性タンパク質の重量パーセントに関係していることを認識している。
【0633】
【0634】
結晶化タンクからの残りの材料を、デカンター上で、
350g、2750RPM、64スペーサーによる150RPM差、及び75L/時のフィードフローで分離した後、フィードを研磨水と1:2で混合した。次いで、より薄いスラリーにするため、デカンターからのBLG結晶/固相を研磨水と混合した後、結晶を迅速に溶解させるため0.1M水酸化カリウムを加えてpHをおよそ7に調整した。
【0635】
結晶を溶解した後、純粋なBLGタンパク質液を、結晶化のためのホエイタンパク質溶液を調製するのに使用したのと同じUFセットアップで15ブリックスに濃縮し、pHをおよそ7.0の最終pHに調整した。BLGを、180℃の入口温度及び75℃の出口温度を有するパイロットプラント噴霧乾燥機で乾燥した。出口でサンプリングして得られた粉末は、約4%w/wの含水量を有していた。粉末の組成を表4に示す。乾燥後、粉末の一部を脱塩水に溶解し、タンパク質変性度を9.0%と決定し、固有トリプトファン蛍光発光比(330nm/350nm)は1.16であった。
【0636】
【0637】
噴霧乾燥粉末のかさ密度(625タップ)は0.2~0.3g/cm3と推定された。
【0638】
例4:一般的なホエイタンパク質飲料の調製
タンパク質ベースで85%以上のBLGを含む乾燥BLG単離タンパク質粉末は、所望の最終タンパク質濃度に到達するのに必要な脱塩水の最大約95%で分散される。
pH中性のBLG単離粉末を、例3に概説されるように製造し、一方、pH5.5のBLG単離粉末を、PCT/EP 2017/084553明細書の例7に概説されるように製造する。
【0639】
任意に、ミネラル、甘味料、香料、安定剤、乳化剤、又は脂肪及び炭水化物の供給源を含む他の成分を加えることができる。
【0640】
pHを、10%NaOH又は10%リン酸(又は他の食品グレードの酸)を使用して最終pHに調整する。
残りの水を加えて所望のタンパク質濃度に到達させ、組成物を任意に均質化する。
比較のため、残りの工程を維持しながら、参照サンプルの作製において85%以上のBLG生成物をホエイタンパク質単離物で置き換える。
サンプルを20℃の暗所で保管した。
【0641】
例5:ホエイタンパク質組成物の熱処理
熱処理を、プレート式熱交換器又は管状熱交換器(製造元:OMVE HTST/UHTパイロットプラントHT320-20)を使用して、143℃で2~6秒間加熱(高温、短時間(HTST))することにより行った。
熱処理された飲料組成物を、10℃で100mLの滅菌ボトルに入れ、すぐに密封した。
他の実験では、ホエイタンパク質源を15~30mLのサンプルを含む薄壁のガラスバイアルに移すことによって熱処理を行った。バイアルを、86℃~95℃の範囲の目標温度で事前に平衡化した水浴に1~18分間浸漬した後、氷上で冷却する。
【0642】
例6:熱処理飲料調製物の製造
本例では、6%のタンパク質を含み、pH7.0を有するBLG飲料及びWPI飲料を調製した。
BLG飲料を、ダイアフィルトレーションされたpH7.0のBLG単離粉末を10℃の脱塩水に溶解することによって調製した。
比較のため、WPIサンプルをWPI-Aを使用して調製した。WPI-Aを10℃の脱塩水に溶解した。10%NaOHをゆっくりと溶液に加えた。最終pHをpH7.0に調整した。
【0643】
例5に記載のプレート式熱交換器を使用して、溶液を143℃/4秒間熱処理し、タップして、熱滅菌したホエイタンパク質飲料組成物を提供した。
【0644】
以下の表5に、飲料調製物の調製に使用されるBLG粉末の組成を示し、比較のため、WPIの組成も示す。
【0645】
【0646】
例7:85%超のBLGを含む無色透明のホエイタンパク質飲料
タンパク質の約92%w/wがBLGである飲料調製物を調製した。例4を参照されたい。
比較のため、約61%w/wBLGを含むWPI粉末に基づくホエイタンパク質サンプルを調製した。
サンプルのタンパク質含量は6%w/wであった。NaOHを使用してpHをpH7.0に調整した。
調製物を143℃で4秒間、熱で処理した。
濁度、粘度、色及び透明度を、例1.7、1.8、1.9に記載されている手順に従って測定した。
【0647】
結果を下記表6に示す。
【0648】
【表6】
デルタb
*の計算には、下記式を使用する:
デルタb
*=b
6.0w/w%タンパク質に標準化したサンプル
*-b
脱塩水
*、室温で測定。
デルタa
*の計算には、下記式を使用する:
デルタa
*=a
6.0w/w%タンパク質に標準化したサンプル
*-a
脱塩水
*、室温で測定。
デルタL
*の計算には、下記式を使用する:
デルタL
*=L
6.0w/w%タンパク質に標準化したサンプル
*-L
脱塩水
*、室温で測定。
【0649】
脱塩水の色値は次のとおりである:
L*=39.97、a*=0及びb*=-0.22。
【0650】
結果:
表6に示す結果は、少なくとも85w/w%のBLGを含むタンパク質画分を使用した場合、pH7.0で清澄で無色透明な飲料が製造されたことを示す。BLG飲料も低粘度であった。
これとは対照的に、タンパク質の約61重量%がBLGであるWPIを含むサンプルは黄色がかっており、より高いb*値を有していた。
【0651】
例8:乳白色ホエイタンパク質飲料、高温熱処理
BLGを含む不透明で乳白色の飲料を製造した。BLG粉末(pH 5.5)を水道水に溶解し、3%NaOHを使用してpH6.0に調整し、94℃で14分間熱処理する。BLG飲料は、タンパク質の約96%w/wをBLGとして含む。
pH6.0を有する10w/w%BLG飲料を調製した。
【0652】
以下のBLG及びWPIサンプルの組成を参照されたい:
【表6-2】
【0653】
濁度、粘度、色及び透明度を、例1.7、1.8、1.9に記載されている手順に従って測定し、また飲料の安定性を例1.12に記載されているように測定した。
【0654】
【0655】
【0656】
結果:
表7及び
図1に提示する結果は、少なくとも85w/w%のBLGを含む10w/w%のタンパク質を使用し、滅菌に対応する熱処理に供した場合に、乳白色/不透明の無色の飲料がpH6.0で製造されたことを示す。
これとは対照的に、WPIを含むサンプル(WPI-A及びWPI-B)はゲル化したため、飲料を製造することはできなかった(
図2を参照されたい)。
【0657】
例9:主にタンパク質ナノゲル又は可溶性ホエイタンパク質凝集物を含む例示的なBLG飲料の消化。
この例の目的は、胃消化のin vitroシミュレーションによって、様々なホエイタンパク質飲料の胃消化中の構造物の形成を調べることである。
3種類の熱処理された栄養組成物を調製した。組成物のうち2つは、85%以上のBLG(飲料A及びB)及び従来のWPI飲料(飲料C)を含む。
飲料を例4に従って製造し、例5に従って熱処理した。
例示的な飲料の調製に使用されるタンパク質粉末の組成は表8からわかる。
【0658】
【0659】
飲料A:98.2%のBLGを含むタンパク質粉末を溶解することにより、6w/w%のBLG溶液を調製した(表8)。10%NaOHを使用してpHをpH7.0に調整し、143℃で6秒間UHT処理して滅菌し、BLG飲料溶液Aを製造した。
飲料B:95.9%BLGを含む粉末を溶解することにより、6w/w%BLG溶液を調製した(表8)。10%NaOHを使用してpHをpH6.0に調整し、86℃で18分間熱処理して、BLG飲料溶液Bを製造した。
飲料C:61%BLGを含むタンパク質粉末「WPI」を溶解することにより、6w/w%WPI飲料を調製した(表8)。10%NaOHを使用してpHをpH7.0に調整し、143℃で6秒間熱処理した。飲料Cを参照として使用する。
【0660】
飲料A及びCは清澄であるが、飲料Bは不透明で乳白色である。
【0661】
飲料中に存在する不溶性タンパク質物質、可溶性凝集物、タンパク質ナノゲル、及びネイティブホエイタンパク質の種類及び量を、例1.32に記載されているように決定し、結果を
図3に示す。
【0662】
結果-可溶性凝集物、タンパク質ナノゲル、不溶性タンパク質物質、及びネイティブホエイタンパク質:
BLG飲料(B)の乳白色の外観とは対照的に、BLG飲料(A)及びWPI飲料(C)は清澄な飲料をもたらすことがわかった。凝集物の組成を、例1.32に記載されている方法で評価し、
図3に示す。
図3は、飲料A(BLG pH7.0)及びC(WPI参照、pH7.0)は主に可溶性ホエイタンパク質凝集物(それぞれ67%及び44%)を含み、飲料B(BLG pH 6.0)は主にタンパク質ナノゲル(74%)を含むことを示す。不溶性タンパク質物質の含有量は、3つの飲料でいずれも1%未満であった。
【0663】
BLG(A)飲料とWPI(C)飲料の両方で、約28~33%の残留ネイティブタンパク質が認められ、これは、不完全な凝集プロセスが原因である可能性があるが、一方で13%のネイティブタンパク質がBLGに残っていた(B)。そのため、飲料組成物は、それらの消化の違いにつながる可能性がある異なるタンパク質構造を含む。
【0664】
第4の飲料(飲料D)を、1容量の熱処理溶液Aと1容量の熱処理溶液Bとを混合することによって調製した。飲料Dには、45%のタンパク質ナノゲル、19%の可溶性ホエイタンパク質凝集物、及び37%のネイティブタンパク質が含まれることがわかった。
【0665】
シミュレートされた胃消化方法:
種々のホエイタンパク質飲料の胃消化中の構造物の形成を調査するため、本発明者らは、以下の胃消化のin vitroシミュレーションを行った。
【0666】
サンプルを、Mulet-Cabero,A.-I.,Mackie,A.R.,Wilde,P.J.,Fenelon,M.A.,&Brodkorb,A.(2019)に以前に記載されたプロトコルに従って、シミュレートされた経口及び胃消化に供した。in vitro胃消化の構造メカニズム及び動態は、牛乳のプロセス誘発性変化の影響を受ける。Food Hydrocolloids,86,172-183に以下に記載される少しの修正を加えた。
【0667】
消化を行う前に、実際の模擬分解中に後で使用する量及び濃度と同じ量及び濃度で、サンプル(30g)を37℃のバッファー塩からなる溶液と混合した。この混合物を、pHスタット(Metrohm 602 pHスタット)を使用して0.1M HClでpH2.0に滴定し、これは、食品の実際の緩衝能力を決定するために必要であり、実際の消化のために滴定装置をプログラムするために必要である。
実際の消化場合、サンプル(30)gを37℃のモデルヒト唾液(飲料にデンプンが存在しなかったため唾液アミラーゼを除く)と2分間混合し、サンプルの固形分(6%)によりモデル唾液(1.65g)の量を決定した。
サンプルを、胃消化プロセスのためサーモスタット付きの反応容器に移し、容器には、最初、合計10%の酸及び胃液の塩が含まれており、胃の絶食状態を模倣している。緩衝塩の残りの90%、0.1M HCl及び水を、計算された胃消化プロセスの期間である105分後に添加が完了するような速度で添加した。105分の消化が終わるまでに全てのペプシン溶液が添加されるように、ペプシンの溶液(0.5ml、254400U/ml)をシリンジポンプを使用して4.762μl/分で添加した。胃粘膜表面による分泌を模倣するため、溶液を容器の壁に接して加えた。混合物のpHを、サンプルの混合の穏やかな混合を可能にする、回転振動ミキサー(15rpm、水平から±5°)の中央に置いた消化容器内の垂直方向と中央に取り付けられた、PT100温度計一体型のMetrohm Unitrode(6.0258.010)を使用して監視した。直径4mmの開口部を備えたサンプリングピペットを使用して、消化の過程(17.5、35、52.5、70、87.5、及び105分)を通して消化容器の底から6種類のサンプルを採取した。
携帯電話(Samsung Galaxy S8+)を使用して、周囲光で4032×3024ピクセルの解像度、高さおよそ15cmで、黒い背景に対してガラスのペトリ皿でサンプルを撮影した。
SDS PAGEのサンプルは、製造業者のプロトコル(定電圧、200V、22分)を使用して、4~12%の勾配ゲル(Bolt Gel、Invitrogen)で還元条件下で分析した。サンプルレーンは標準(Invitrogen Mark 12)で囲まれている。ゲルを流した後、ゲルを酸性溶液(50%水、40%メタノール、10%酢酸)で2時間固定し、水で洗浄(5分を3回、1回の洗浄あたり100mlの水)してから一晩染色した(50ml Simply Blue、Invitrogen)。
ゲルを、Chemi Doc XRSシステム(Bio-Rad)を使用して撮像した。
【0668】
結果を
図4及び
図5に示す。
図4は飲料A、B、C(WPI)のセミダイナミックin vitro消化を示し、一方、
図5の上部は、サンプルのセミダイナミックin vitro消化中に、選択した時点(17.5~105分)で回収されたタンパク質アリコートのSDS-PAGE分析を示す。消化研究の様々な時点でのpHを下に示す。
【0669】
結果-シミュレーションされた胃消化:
驚いたことに、WPI飲料中のALA及びCMPの含有量が高いにもかかわらず、飲料A(pH7.0のBLG)及びC(pH7.0のWPI)の消化全体で非常に類似した視覚的タンパク質凝固挙動が観察された。いずれの飲料(A及びC)でも、タンパク質凝固物は17.5分で既に観察され、酸及び胃液の塩との最初の混合が原因である可能性が高く、凝固物の量が増加して35~52.5分で不透明な液体を形成した(
図4を参照されたい)。後者の時点は約5.6~4.2のpH範囲に対応し、最大70分で目に見えるタンパク質の凝固物/凝集物が認められる(
図5を参照されたい)。さらに、凝固/凝集は粘度の増加を伴うことがわかった。さらにペプシンと胃液の塩を加えてpHを効果的に下げると、消化物が透明になり、粘度が下がって、タンパク質凝固物が徐々になくなった。
【0670】
しかしながら、驚くべきことに、飲料B(pH6.0のBLG)は消化中ずっと不透明なままであり、35~52.5分では目に見えるタンパク質の凝固物が含まれていなかったことがわかり、また、消化のこの段階ではわずかに粘性が高いと評価された(
図4)。
図5は、消化の初期段階(17.5分)では、14~21kDaマーカー(BLGに対応)のタンパク質バンドが飲料Aで実際に優勢であるのに対し、WPI(飲料C)では複数のバンドが存在することを示す。
主要なBLGバンドを超えて、飲料Bには、BLG二量体に対応する可能性がある37kDaマーカーバンドの周りのバンドがさらに含まれている。消化時間が長くなると(胃液の塩及びペプシンの継続的な添加を伴う)、飲料A及びC(WPI)の両方にBLGよりも低分子量のタンパク質バンドが現れる。
【0671】
驚いたことに、飲料A及びC(WPI)飲料のこれらの低分子量タンパク質/ペプチドバンドの強度は、飲料Bでは大幅に低いことがわかった。これは、可溶性凝集物と比較して、タンパク質ナノゲル形態に主に存在するBLGの胃タンパク質分解に対する耐性の増加が原因である可能性がある。この知見により、飲料の製造元は、主に可溶性のホエイタンパク質凝集物又はタンパク質ナノゲルを含む飲料を使用するか、又は混合物を使用することにより、飲料中のどのタンパク質が胃腸管から腸に送達されるかを調整できる可能性がある。
【0672】
酸性化時のゲル強度:
飲料A、B及びCのゲル強度を、例1.11に記載されているように酸性化中に測定した。結果を
図6に示す。
【0673】
結果-酸性化時のゲル強度の測定:
図6は、胃における酸性化のシミュレーションを示す。ゲル強度を、主に可溶性凝集物(飲料A及びC)又はタンパク質ナノゲル(飲料B)を含む3種類の飲料の酸性化の間に測定した。WPI中の可溶性ホエイタンパク質凝集物の濃度は、BLGの含有量が少なく、CMP等の他のタンパク質の含有量が多いため、低くなると予想される(表8)。
【0674】
飲料A及びCの消化パターンは類似しているが(
図4及び5を参照されたい)、驚くべきことに、BLG飲料Aの粘度は、酸性化された場合にWPIサンプルと比較して劇的に増加することがわかった。これは、凝集物に組み込まれ、CMP及びALAが凝集しにくいWPIと比較してBLGにかなり多く存在する高純度のBLGが原因である可能性がある(表8を参照されたい)。
例10:BLG(タンパク質ナノゲル)を含む高タンパク質飲料
【0675】
BLG粉末A(表9に示される)から10w/w%、11w/w%、12w/w%、13w/w%、14w/w%、15w/w%、及び16w/w%のホエイタンパク質を含み、95.9%w/w以上がBLGである、栄養学的高タンパク質飲料を調製した。pHを、3%w/wNaOHでpH6.0に調整した。溶液を、例5に記載されるように、90℃の水浴中で5分間熱処理した。その後、例5に従って、サンプルを氷水中で冷却し、室温に温めた。
【0676】
【0677】
様々な飲料の粘度(例1.8)、画像による外観(例1.9)、サイズ(流体力学的径)、及び流体力学的径(例1.33)を分析した。
【0678】
結果:
結果を
図7、8、9に示す。下記表10は、90℃で5分間熱処理した16w/w%BLG飲料の化学組成を示す。
【0679】
本発明者らは、BLGサンプルの粘度が、10%w/wタンパク質から、さらに驚くべきことに少なくとも16w/w%タンパク質までの濃度で90℃で5分間の熱処理後でも驚くほど著しく低いままであることを見出した(
図7及び8を参照されたい)。これはまったく予想外であり、同等のWPIサンプルは10w/w%WPI pH6.0でゲル化する(例8及び
図2を参照されたい)。
熱凝集の間のかかる高タンパク質濃度にもかかわらず、飲料中に沈降又は粒子は観察されなかったため、栄養組成物は高タンパク質飲料用途に特に適している。
【0680】
タンパク質粒子の流体力学的径を測定し(例1.33)、
図9に示した。タンパク質粒子の流体力学的径は185~323nmと測定され、これは、高タンパク質飲料には、Phan-Xuan et al.,2014(Phan-Xuan,T.,Durand,D.,Nicolai,T.,Donato,L.,Schmitt,C.,&Bovetto,L.(2014).Heat induced formation of beta-lactoglobulin microgels driven by addition of calcium ions.Food Hydrocolloids,2012,34,227-235によって100~300nmの流体力学的径を有する粒子として記載されているタンパク質ナノゲル粒子が含まれていることを示している。
【0681】
【0682】
例11:中性PHの高タンパク質飲料
BLG粉末A(表9に示す)から6w/w%、10w/w%、及び12w/w%のホエイタンパク質を含み、95.9%w/wがBLGである栄養学的高タンパク質飲料を調製し、飲料の安定性及び濁度を評価した。3%w/wのNaOH又はHCLでpHをpH6.0及び7.0に調整した。溶液を、例5に記載されるように、90℃の水浴中で5分間熱処理した。その後、例5に従って、サンプルを氷水中で冷却し、室温に温めた。
様々なサンプルの粘度(例1.8)、濁度(例1.7)、色(例1.9)、及び不溶性タンパク質物質の量(例1.10)を分析した。
【0683】
【0684】
【0685】
結果:
清澄な飲料:
驚くべきことに、0.1455w/w%のカルシウムを含む粉末A(表9)を使用すると、10w/w%のタンパク質の高タンパク質濃度でもpH7.0で安定した無色透明の飲料を製造できることがわかった。本発明者らは、WPIベースの飲料が同様の条件下でゲルを形成し得ることを経験している。
【0686】
乳白色の飲料:
著しく低粘度(4.5cP)の乳白色飲料は、90℃で5分間の熱処理後、pH6.0で12w/w%タンパク質のタンパク質濃度でも、目に見える粒又は沈降の兆候なしに製造できることがわかった。
これとは対照的に、本発明者らは、例8に示すように、10w/w%タンパク質において、総タンパク質ゲルのうち57~61w/w%のみのBLGを含む対応するWPIサンプルを見出した。
【0687】
例12:総エネルギー含量の25%及び50%の脂質含量を有する中性PHの高タンパク質飲料
BLG粉末A(表9を参照されたい)から3w/w%、6w/w%、10w/w%、及び12w/w%のホエイタンパク質を含み、95.9%w/wがBLGである栄養学的高タンパク質飲料を調製した。脂肪の存在下でも栄養飲料を調製する機会を評価するために、総エネルギー含量の25%及び50%の脂質含量まで脂質を添加した。
水及び脂質を水浴中70℃で平衡化した。0.2%Grindsted Citrem LR10を加熱したオイルに溶解し、次いで予熱した水とゆっくりと混合した溶液を60℃に冷却し、粉末を加え、30~45分間撹拌して、飲料組成物を得た。
pHを、3%NaOH又はHClでpH6.0又はpH7.0に調整した。溶液を90℃の水浴中で5分間熱処理した。その後、例5に従って、サンプルを氷水中で冷却し、室温に温めた。
【0688】
均質なサンプルを得るために必要な場合、均質化工程を上記の工程にさらに含めてもよい。
【0689】
様々なサンプルの粘度(例1.8)、濁度(例1.7)、色(例1.9)、及び不溶性タンパク質物質の量(例1.10)を分析した。
【0690】
結果を下記表11に示す。
【0691】
【0692】
結果:
総エネルギー含量の25%及び50%の脂質含量を有し、なおも著しく低い粘度を有していても、安定した高タンパク質BLG飲料を製造することが可能であることがわかった。
pH7.0では、総エネルギー含量の50%が脂質である場合、非常に低い粘度(5.5cP)で10w/w%タンパク質の乳白色飲料(少なくとも85w/w%のBLGを含む)を製造することができた。
また、脂質含量が25%で総エネルギー含量の50%であるpH6.0の12w/w%飲料を製造できることもわかった。それらは白い乳白色の外観及び非常に低い粘度(7.8cP)を有していた。濁度は少なくとも11000NTUであった。飲料は安定しており、3000gで5分後に不溶性タンパク質物質は観察されなかった。
【0693】
例13:高PH飲料
BLGを含む栄養飲料を、高pHでの安定性及び外観を実証するために、pH8.0で製造した。
BLG粉末A及びB(表12に示す)から、3w/w%のホエイタンパク質を含み、少なくとも85重量%がBLGである、栄養学的高タンパク質飲料を調製した。
【0694】
【0695】
pHを、3%NaOHでpH8.0に調整した。溶液を90℃の水浴中で5分間熱処理した。その後、例5に従って、サンプルを氷水中で冷却し、室温に温めた。
結果を表13に示す。
【0696】
【0697】
結果:
結果は、pH8.0において清澄で安定した飲料が製造され得ることを示す。飲料は驚くほど無色透明であり、粉末A又は粉末Bのいずれを使用しても、pH8.0で粘度及び濁度が非常に低かった。