(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】トラックボール装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0354 20130101AFI20241022BHJP
【FI】
G06F3/0354 431
(21)【出願番号】P 2021010327
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000220491
【氏名又は名称】東京測定器材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】向井 直基
(72)【発明者】
【氏名】安藤 憲司
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-515764(JP,A)
【文献】特開2011-141834(JP,A)
【文献】特開2003-143285(JP,A)
【文献】特開平9-305307(JP,A)
【文献】特開平3-156520(JP,A)
【文献】特開2018-136912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/033 - 3/039
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側へ開放された凹状に形成された透明なインナケースと、
前記インナケースの内部に回転可能に収容された球状の球体と、
前記インナケース及び前記球体を収容すると共に、前記球体の一部を外部へ操作可能に露出させる露出部を有するハウジングと、
前記インナケースの外周部に設けられ、前記インナケースを介して前記球体の外表面に対向して配置され、前記球体の回転を検出するセンサと、
前記インナケースの底壁に形成され、前記インナケース内の塵埃を排出する排出孔と、
を備え、
前記排出孔の内周面には、傾斜面が形成されており、前記傾斜面によって前記インナケースの底壁の下側領域の視認を抑制するトラックボール装置。
【請求項2】
前記排出孔は、長孔状に形成され、
前記傾斜面は、前記排出孔の長手方向から見て、上下方向に対して傾斜した第1傾斜面と、前記第1傾斜面と平行に配置された第2傾斜面と、を含んで構成されている請求項1に記載のトラックボール装置。
【請求項3】
平面視で、前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面の全体が、前記排出孔の短手方向にずれて配置されている請求項2に記載のトラックボール装置。
【請求項4】
平面視で、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間には、微小隙間が形成されており、
前記排出孔の短手方向における前記微小隙間の距離が、前記排出孔の内側開口部における短手方向の長さの1/4以下に設定されている請求項3に記載のトラックボール装置。
【請求項5】
前記傾斜面によって、前記排出孔の内側開口の面積が、前記排出孔の外側開口部の面積よりも大きく設定されている請求項1に記載のトラックボール装置。
【請求項6】
複数の前記排出孔が、前記インナケースの底壁に形成されると共に、等間隔に配置されている請求項1~請求項5の何れか1項に記載のトラックボール装置。
【請求項7】
前記インナケースの下側には、回路基板が設けられ、前記センサが前記回路基板の上側に配置されて前記回路基板に接続されており、
前記回路基板には、前記インナケースの底部が挿通される挿通孔が形成されており、前記インナケースの底壁が、前記回路基板よりも下側に配置されている請求項1~請求項6の何れか1項に記載のトラックボール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックボール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のトラックボール装置では、トラックボール(球体)が基台(ハウジング)の凹部内に回転可能に設けられている。基台の内部には、レーザビーム生成器が設けられており、凹部の下側には、回路ボードが設けられている。そして、レーザビーム生成器によって発生したレーザが、トラックボールに向けて照射され、トラックボールの外表面によって下側へ反射する。これにより、回路ボードに設けられた光学検知素子によって、当該反射光を受光して、トラックボールの回転を検出する。
【0003】
ここで、基台の内部における凹部の下側領域は、収納空間として構成されており、凹部の下部には、凹部の内部と収容空間とを連通する開口部が形成されている。このため、例えば、凹部とトラックボールとの間に侵入した塵埃等の異物を、当該開口部から下側へ落下させることにより、検出性能の低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のトラックボール装置では、凹部の下部の略全体が開口部として開口されているため、当該開口部から基板ボードを視認することができる。このため、トラックボール装置の見栄えが低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、検出性能の低下を抑制しつつ、見栄えの低下を抑制できるトラックボール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、上側へ開放された凹状に形成された透明なインナケースと、前記インナケースの内部に回転可能に収容された球状の球体と、前記インナケース及び前記球体を収容すると共に、前記球体の一部を外部へ操作可能に露出させる露出部を有するハウジングと、前記インナケースの外周部に設けられ、前記インナケースを介して前記球体の外表面に対向して配置され、前記球体の回転を検出するセンサと、前記インナケースの底壁に形成され、前記インナケース内の塵埃を排出する排出孔と、を備え、前記排出孔の内周面には、傾斜面が形成されており、前記傾斜面によって前記インナケースの底壁の下側領域の視認を抑制するトラックボール装置である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記排出孔は、長孔状に形成され、前記傾斜面は、前記排出孔の長手方向から見て、上下方向に対して傾斜した第1傾斜面と、前記第1傾斜面と平行に配置された第2傾斜面と、を含んで構成されているトラックボール装置である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、平面視で、前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面の全体が、前記排出孔の短手方向にずれて配置されているトラックボール装置である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、平面視で、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間には、微小隙間が形成されており、前記排出孔の短手方向における前記微小隙間の距離が、前記排出孔の内側開口部における短手方向の長さの1/4以下に設定されているトラックボール装置である。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記傾斜面によって、前記排出孔の内側開口の面積が、前記排出孔の外側開口部の面積よりも大きく設定されているトラックボール装置である。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、複数の前記排出孔が、前記ケースの底壁に形成されると共に、等間隔に配置されているトラックボール装置である。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ケースの下側には、回路基板が設けられ、前記センサが前記回路基板の上側に配置されて前記回路基板に接続されており、前記回路基板には、前記ケースの底部が挿通される挿通孔が形成されており、前記ケースの底壁が、前記回路基板よりも下側に配置されているトラックボール装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、検出性能の低下を抑制しつつ、見栄えの低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態に係るトラックボール装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されるトラックボール装置を、ハウジングを取り除いた状態で且つセンサユニット及びセンサホルダをインナケースから分解した状態で示す分解斜視図である。
【
図3】
図1に示されるトラックボール装置の縦断面図(
図1の3-3線断面図)である。
【
図4】
図1に示されるトラックボール装置の縦断面図(
図1の4-4線断面図)である。
【
図5】
図1に示されるトラックボール装置の第1方向一方側部分を、ハウジングを取り除いた状態で示す直交方向一方側から見た斜視図である。
【
図6】
図3に示されるセンサユニットのインナケースへの取付状態を示す断面図(
図3の6-6線断面図)である。
【
図7】(A)は、
図2に示されるセンサホルダを示す直交方向他方側から見た斜視図であり、(B)は、(A)のセンサホルダの直交方向一方側から見た斜視図である。
【
図8】(A)は、
図4に示されるインナケースの排出孔の変形例を示す一部破断した斜視断面図であり、(B)は、(A)の排出孔の変形例の第2方向他方側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本実施の形態に係るトラックボール装置10について説明する。なお、図面に適宜示される矢印Aは、トラックボール装置10の上側を示しており、以下の説明において、上下の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、トラックボール装置10の上下方向を示すものとする。また、以下の説明では、上下方向に対して直交する方向を第1方向(
図1及び
図2の矢印B方向及び矢印C方向)とし、上下方向及び第1方向に対して直交する方向を第2方向(
図1及び
図2の矢印D方向及び矢印E方向)としている。
【0017】
図1~
図4に示されるように、トラックボール装置10は、ハウジング20と、インナケース30と、回路基板50と、センサとしての一対のセンサユニット60と、押付部材としての一対のセンサホルダ70と、を含んで構成されている。また、トラックボール装置10は、ハウジング20内に収容された球体40を有している。以下、トラックボール装置10の各構成について説明する。
【0018】
(ハウジング20について)
図1、
図3、及び
図4に示されるように、ハウジング20は、トラックボール装置10の外郭を構成している。ハウジング20は、全体として、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。ハウジング20は、ハウジング20の上部を構成する上側ハウジング部材22と、ハウジング20の下部を構成する下側ハウジング部材24と、を含んで構成されており、上側ハウジング部材22及び下側ハウジング部材24を互いに組付けることで、ハウジング20が構成されている。上側ハウジング部材22の直径は、下側ハウジング部材24の直径よりも小さく設定されており、ハウジング20が、略段付き円筒状に形成されている。上側ハウジング部材22の上端部には、径方向内側へ屈曲した屈曲部22Aが形成されており、屈曲部22Aは、上側ハウジング部材22の周方向全周に亘って形成されている。これにより、ハウジング20の上端部には、屈曲部22Aに対してハウジング20の径方向内側において、上下方向に貫通された露出部としての露出孔22Bが形成されている。
【0019】
(インナケース30について)
図2~
図6に示されるように、インナケース30は、透明な樹脂材によって構成されると共に、上側へ開放された凹状に形成されている。具体的には、インナケース30は、上側へ開放された略椀形状に形成されると共に、インナケース30の下端部を構成する底部31と、底部31から上側へ延出された側壁32と、を含んで構成されている。底部31は、上側へ開放された比較的底の浅い略有底円筒状に形成されており、底部31の底壁が、インナケース30の底壁を構成している。側壁32は、インナケース30の径方向外側から見た側断面視で、階段状に形成されている。具体的には、側壁32は、側壁32の上端部を構成する第1段差部32Aと、側壁32の上下方向中間部を構成する第2段差部32Bと、側壁32の下端部を構成するスロープ部32Cと、を含んで構成されている。スロープ部32Cは、側断面視で、下側へ向かうに従い径方向内側へ傾斜しており、スロープ部32Cの下端部が、底部31の上端部に接続されている。そして、インナケース30が、下側ハウジング部材24内に収容されて、下側ハウジング部材24に爪嵌合等によって取付けられている。これにより、インナケース30の底壁が、ハウジング20の露出孔22Bの下側に配置されている。
【0020】
インナケース30の底壁には、ハウジング20の露出孔22Bからインナケース30内に侵入した塵埃等の異物を排出するための複数(本実施の形態では、4箇所)の排出孔33(
図4及び
図5参照)が貫通形成されている。排出孔33は、第1方向に延在された長孔状に形成されて、第2方向に等間隔毎に並んでいる。また、排出孔33における第2方向一方側(
図4の矢印D方向側)の内周面は、傾斜面としての第1傾斜面33Aとして構成され、排出孔33における第2方向他方側(
図4の矢印E方向側)の内周面は、傾斜面としての第2傾斜面33Bとして構成されている。
【0021】
排出孔33の長手方向から見て、第1傾斜面33Aは、下側へ向かうに従い第2方向一方側へ傾斜している。第2傾斜面33Bは、第1傾斜面33Aと平行に配置されている。すなわち、排出孔33の長手方向から見て、排出孔33が上下方向に対して傾斜する方向に開口しており、排出孔33におけるインナケース30の内周側の内側開口部33C(
図4参照)の面積と、排出孔33におけるインナケース30の外周側の外側開口部33D(
図4参照)の面積と、が同じに設定されている。また、上側から見た平面視で、第1傾斜面33Aと第2傾斜面33Bとが重なっておらず、第1傾斜面33Aと第2傾斜面33Bとの間には、第2方向(排出孔33の短手方向)において、微小隙間Gが形成されている。すなわち、第1傾斜面33A及び第2傾斜面33Bが、上下方向において、互いにアンダーカット形状にならないように構成されている。さらに、微小隙間Gは、内側開口部33Cの第2方向の長さLの1/4以下に設定されている。
【0022】
図4に示されるように、インナケース30の第2段差部32Bには、複数(本実施の形態では、3箇所)の支持部34が形成されており、支持部34は、インナケース30の周方向に120度毎に配置されている(
図4では、1箇所の支持部34のみが図示されている)。支持部34は、第2段差部32Bの内周面に対して、径方向内側へ突出しており、支持部34の内周面は、側断面視で、上側へ向かうに従い径方向外側へ傾斜している。支持部34の内周面には、支持凹部34Aが形成されており、支持凹部34Aは、上側へ開放された略半球凹状に形成されている。支持凹部34A内には、支持ボール42が収容されており、支持ボール42は、球状に形成されると共に、支持凹部34Aに固定されている。
【0023】
そして、インナケース30の内部に、球状の球体40が収容されており、球体40は、支持ボール42の上側に設置されて、支持ボール42に回転可能に支持されている。また、球体40の上部は、インナケース30から上側へ突出している。具体的には、球体40の中心CPが、インナケース30よりも上側に配置されている。球体40の上端部は、ハウジング20の露出孔22Bから上側へ突出して、ハウジング20の外部に回転操作可能に露出している(
図1及び
図3参照)。
【0024】
インナケース30の第2段差部32Bには、支持部34に対応する位置において、後述する回路基板50を固定するための固定ボス35が形成されている。固定ボス35は、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されて、第2段差部32Bから下側へ突出している。
【0025】
図2~
図6に示されるように、インナケース30には、後述するセンサユニット60を取付けるための一対の取付機構部36が設けられており、一対の取付機構部36は、インナケース30における第1方向一方側(
図3の矢印B方向側)部分の外周部及び第2方向一方側部分の外周部に形成されている。以下、第1方向一方側部分に形成された取付機構部36を用いて、取付機構部36の構成について説明する。
【0026】
取付機構部36は、インナケース30の外周部に形成されたセンサ取付部37を有しており、センサ取付部37は、第2方向から見た断面視で、球体40の径方向外側へ開放された略矩形凹状に形成されている。センサ取付部37の底面は、取付面37Aとして構成されており、取付面37Aは、第2方向から見た断面視で、第1方向一方側へ向かうに従い下側へ傾斜している(
図3参照)。そして、取付面37Aに対して直交する方向を直交方向(
図3の矢印F方向及び矢印G方向)とすると、取付面37Aの中央部と球体40の中心CPとを通過する架空線LNが、直交方向に沿って延在するように、取付面37Aが第2方向から見て傾斜している。すなわち、取付面37Aが、球体40の中心CPよりも下側に配置されると共に、球体40の径方向に対して直交する面に沿って形成されている。
【0027】
取付機構部36は、一対の係止部38を有しており、係止部38は、センサ取付部37に対して、インナケース30の周方向一方側及び他方側にそれぞれ配置されている。係止部38は、上下方向に延在された略矩形柱状に形成されて、インナケース30の側壁32から第1方向一方側へ突出している。係止部38には、係止孔38Aが第2方向に貫通形成されており、係止孔38Aは、上下方向を長手方向とする長孔状に形成されている。係止孔38Aの下端部における第1方向一方側の面は、係止面38Bとして構成されており、係止面38Bは、第2方向から見て、下側へ向かうに従い第1方向他方側へ傾斜している。具体的には、係止面38Bが取付面37Aと平行に配置されている。
【0028】
係止部38の下端部には、第2方向内側へ突出したストッパ部38C(
図2参照)が形成されている。ストッパ部38Cは、第1方向に延在された略台形ブロック状に形成されており、ストッパ部38Cの第1方向他方側端部が、係止孔38Aの下側に隣接して配置されている。ストッパ部38Cの上面における第1方向一方側部分は、第2方向から見て、直交方向に沿うように傾斜している。
【0029】
(回路基板50について)
回路基板50は、上下方向を板厚方向とする略円板状に形成されると共に、インナケース30の下側に配置されている。回路基板50の中央部には、略円形状の挿通孔50Aが貫通形成されており、インナケース30の底部31が挿通孔50A内に配置されている。そして、インナケース30の底壁が、回路基板50よりも下側に配置されている。また、回路基板50には、インナケース30の固定ボス35に対応する位置において、固定孔50B(
図4参照)が貫通形成されており、固定ネジ52が、固定孔50B内に下側から挿入され、固定ボス35に螺合されることで、回路基板50がインナケース30に固定されている。
【0030】
回路基板50の外周部には、第1方向一方側部分及び第2方向一方側部分において、切欠部50Cが形成されており、切欠部50Cは、回路基板50の径方向外側へ開放された凹状に形成されている。また、回路基板50の外周部の上面には、第2方向他方側の部分において、コネクタ54が設けられており、コネクタ54によって、トラックボール装置10を外部機器に接続するように構成されている。
【0031】
(センサユニット60について)
一対のセンサユニット60は、後述するセンサホルダ70を用いて、インナケース30のセンサ取付部37に、それぞれ取付けられている。以下、インナケース30の第1方向一方側のセンサ取付部37に取付けられるセンサユニット60を用いて、センサユニット60の構成について説明する。
【0032】
センサユニット60は、光学式のセンサとして構成されて、球体40の回転量を検出するセンサとして構成されている。センサユニット60は、センサ基板62と、センサ本体64と、を含んで構成されている。センサ基板62は、直交方向を板厚方向とする略矩形板状に形成されて、センサ取付部37に対して直交方向一方側(
図3の矢印F方向側)に配置されている。センサ基板62の下端部は、回路基板50の切欠部50C内に挿入されて、センサ基板62と回路基板50とが第2方向に係合可能に構成されている。また、センサ基板62が、その下端部において、回路基板50に電気的に接続されている。さらに、センサ基板62の下部には、円形状の位置決め孔62Aが貫通形成されている。
【0033】
センサ本体64は、直交方向を厚み方向とする略直方体状に形成されると共に、センサ基板62に接続されて、センサ基板62から直交方向一方側及び他方側へ突出している。センサ本体64は、図示しない投光部及び受光部を有している。そして、投光部から光を球体40の中心CPへ向けて照射し、球体40の外表面によって反射された光を受光部によって受光して、センサ本体64が球体40の回転量を検出するようになっている。また、前述した架空線LNが、センサ本体64の中央部を通過するように、センサ本体64が配置されている。
【0034】
また、センサ本体64の直交方向他方側端部の外周部には、フランジ64Aが形成されており、フランジ64Aは、センサ本体64の周方向全周に亘って形成されている。そして、フランジ64Aが、インナケース30のセンサ取付部37内に嵌入されて、センサ本体64におけるインナケース30の周方向及び上側への移動が、センサ取付部37によって制限されている。また、センサ本体64の直交方向他方側の端面は、当接面64Bとして構成されて、当接面64Bは、取付面37Aに対して直交方向一方側に隣接して配置されている。
【0035】
(センサホルダ70について)
図2~
図7に示されるように、一対のセンサホルダ70は、インナケース30における取付機構部36の係止部38にそれぞれ取付けられ、センサユニット60を保持する部材として構成されている。以下、インナケース30の第1方向一方側の取付機構部36に取付けられるセンサホルダ70を用いて、センサホルダ70の構成について説明する。
【0036】
センサホルダ70は、本体部としてのホルダ本体部72と、一対のアーム部74と、を含んで構成されている。ホルダ本体部72は、直交方向を板厚方向とし、第2方向を幅方向とする略矩形板状に形成されている。ホルダ本体部72の上下方向中間部には、クランク状のクランク部72Aが形成されており、ホルダ本体部72の上部が、ホルダ本体部72の下部に対して直交方向一方側に配置されている。そして、ホルダ本体部72が、センサユニット60の直交方向一方側に隣接して配置されている。
【0037】
ホルダ本体部72の下部には、位置決めピン72Bが形成されており、位置決めピン72Bは、直交方向を軸方向とする略円柱状に形成されて、ホルダ本体部72から直交方向他方側へ突出している。そして、位置決めピン72Bがセンサ基板62の位置決め孔62A内に嵌入されて、センサユニット60に対するセンサホルダ70の相対位置が決定されている。また、ホルダ本体部72の幅方向中央部には、取手部72Cが形成されており、取手部72Cは、ホルダ本体部72の幅方向を板厚方向とするリブ状に形成されて、センサ本体64から直交方向一方側へ突出している。これにより、作業者が取手部72Cを把持して、センサホルダ70をインナケース30に取付けるように構成されている。取手部72Cの先端部の上部は、ハウジング20の内周面と所定の隙間を空けて第1方向に対向配置されている。
【0038】
一対のアーム部74は、直交方向を板厚方向とし第2方向を長手方向とする略長尺板状に形成されて、ホルダ本体部72の上部から第2方向一方側及び他方側へ延出している。アーム部74の先端側部分は、直交方向他方側へ屈曲しており、アーム部74の先端部が、インナケース30の係止部38の第2方向内側に隣接配置されている。アーム部74の先端部には、第2方向外側へ突出した係止フック74Aが形成されており、係止フック74Aが、インナケース30の係止孔38A内に挿入されて、係止孔38Aの係止面38Bに係止されている。これにより、センサホルダ70がインナケース30に取付けられている。
【0039】
また、アーム部74は、直交方向に弾性変形可能に構成されている。そして、センサホルダ70のインナケース30への取付状態では、アーム部74の先端部が直交方向他方側へ変位するように、アーム部74が弾性変形している。これにより、ホルダ本体部72がセンサユニット60を直交方向他方側(球体40側)へ押付けるように構成されている。すなわち、センサ本体64の当接面64Bがインナケース30の取付面37Aに当接した状態で、センサユニット60がインナケース30に取付けられている。また、アーム部74の先端部は、インナケース30のストッパ部38Cの上側に隣接配置されている。これにより、センサユニット60及びセンサホルダ70の下側への移動が制限されている。
【0040】
なお、センサホルダ70の材質については、特に規定していないが、センサホルダ70を樹脂材によって構成して、アーム部74を直交方向に弾性変形可能に構成してもよい。また、センサホルダ70をゴム等の弾性材によって構成して、センサホルダ70全体を弾性変形可能に構成してもよい。
【0041】
(作用効果)
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
上記のように構成されたトラックボール装置10では、透明なインナケース30内に球体40が回転可能に収容されており、球体40の上端部が、ハウジング20の露出孔22Bから回転操作可能に露出されている。また、インナケース30の外周部には、センサユニット60が設けられており、センサユニット60は、光学式のセンサとして構成されている。そして、センサ本体64の投光部から球体40に向けて光が照射されと、光が、透明なインナケース30を透過して、球体40によって反射される。球体40によって反射された光は、インナケース30を透過し、センサ本体64の受光部によって受光される。これにより、センサユニット60によって、球体40の回転量を検出することができる。
【0043】
ここで、インナケース30の底壁には、排出孔33が貫通形成されている。これにより、インナケース30内に侵入した塵埃等の異物を、排出孔33からインナケース30の外部に排出することができる。よって、塵埃等の異物によるトラックボール装置10の検出性能の低下を抑制できる。また、排出孔33は、第1方向に延在された長孔状に形成されており、排出孔33の内周面が、第1傾斜面33A及び第2傾斜面33Bを含んで構成されている。第1傾斜面33Aは、排出孔33の長手方向から見て、下側へ向かうに従い第2方向一方側へ傾斜しており、第2傾斜面33Bは、第1傾斜面33Aと平行に配置されている。これにより、排出孔33の長手方向から見て、仮に、第1傾斜面33A及び第2傾斜面33Bを上下方向に沿った面として構成する場合と比べて、インナケース30の底壁の下側領域が上側から視認されることを抑制できる。すなわち、第1傾斜面33A及び第2傾斜面33Bによって、排出孔33が形成されたインナケース30の底壁をブラインド構造にすることができる。その結果、例えば、第2方向一方側から見て、水平方向に対するインナケース30の底壁の下側領域を視認不能とする視認不能角度b(
図4参照)を、上記構成と比べて大きくすることができる。したがって、トラックボール装置10の見栄えの低下を抑制しつつ、インナケース30内に侵入した異物をインナケース30の外部へ排出することができる。
【0044】
また、排出孔33が、長孔状に形成されているため、回路基板50に対する保護性能を向上することができる。すなわち、例えば、ハウジング20の上側ハウジング部材22を下側ハウジング部材24から取外し且つ球体40を取り除いて、インナケース30に侵入された異物を取り除くときに、仮に、インナケース30の底壁全体を排出孔として構成した場合には、使用者が排出孔から回路基板50に容易に接触することができる。このため、回路基板50に対する保護性能が低下する可能性がある。これに対して、本実施の形態では、上述のように、排出孔33が、長孔状に形成されている。このため、例えば、上側ハウジング部材22を下側ハウジング部材24から取外し且つ球体40を取り除いて、インナケース30に侵入された異物を取り除く場合でも、使用者の排出孔33から回路基板50への接触を抑制できる。したがって、回路基板50に対する保護性能を向上することができる。
【0045】
また、排出孔33では、第1傾斜面33A及び第2傾斜面33Bが、平行に配置されている。すなわち、排出孔33における入口側の内側開口部33Cの面積と出口側の外側開口部33Dの面積とが、同じ面積に設定されている。これにより、インナケース30内に侵入した異物を、排出孔33によって効率よく排出することができる。
【0046】
また、排出孔33では、第1傾斜面33Aと第2傾斜面33Bとの全体が、平面視で、第2方向にずれて配置されている。すなわち、第1傾斜面33A及び第2傾斜面33Bが、平面視で重なっておらず、両者が互いにアンダーカット形状となっていない。これにより、例えば、インナケース30を成形するための金型が、アンダーカット構造になることを回避することができると共に、インナケース30のコストダウンに寄与することができる。
【0047】
また、平面視で、第1傾斜面33Aと第2傾斜面33Bとの間には、微小隙間Gが形成されており、第2方向における微小隙間Gの長さが、内側開口部33Cの第2方向(短手方向)の長さLの1/4以下に設定されている。これにより、上側から見たときに、微小隙間Gからインナケース30の底壁の下側領域が視認されることを極力抑制しつつ、第1傾斜面33Aと第2傾斜面33Bとがアンダーカット構造になることを回避できる。
【0048】
また、インナケース30の下側には、回路基板50が設けられ、センサユニット60が、回路基板50の上側に配置されて、回路基板50に接続されている。さらに、回路基板50には、インナケース30の底部31が挿通される挿通孔50Aが形成されており、インナケース30の底壁が、回路基板50よりも下側に配置されている。このため、排出孔33から排出される異物は、回路基板50よりも下側の領域に落下する。これにより、排出孔33から下側へ排出された異物が、センサ本体64の周辺に溜まることを抑制できる。したがって、センサユニット60に対する防塵性能を確保することができると共に、センサユニット60の検出精度を良好に維持することができる。
【0049】
また、インナケース30の底壁には、複数の排出孔33が形成されており、複数の排出孔33が、第2方向に等間隔に並んで配置されている。これにより、インナケース30内に侵入された異物を、インナケース30の下側に効率よく排出することができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、インナケース30の底壁に形成された排出孔33が長孔状に形成されているが、排出孔33の形状は、これに限らない。例えば、排出孔33を、上下方向に貫通された、円形状、多角形状の孔部として構成してもよい。この場合には、
図8(A)及び(B)に示されるように、排出孔33の内側開口部33Cの面積が、排出孔33の外側開口部33Dの面積よりも大きくなるように、排出孔33の内周面33Eを下側へ向かうに従い排出孔33の中心線側へ傾斜させるように構成してもよい。なお、
図8(A)及び(B)に示される例では、排出孔33が、円形の孔部として構成されている。そして、排出孔33の内周面33Eが、本発明の傾斜面に対応する。さらに、この場合においても、排出孔33の内周面が上下方向に沿った面として構成した場合と比べて、水平方向に対するインナケース30の底壁の下側領域を視認不能とする視認不能角度bを大きくすることができる。
【0051】
また、本実施の形態では、排出孔33の第1傾斜面33A及び第2傾斜面33Bが、排出孔33の長手方向から見て、直線状の傾斜面として構成されているが、第1傾斜面33A及び第2傾斜面33Bを排出孔33の長手方向から見て円弧状(曲線状)に形成してもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、平面視で、排出孔33の第1傾斜面33A及び第2傾斜面33Bが、重なっておらず、第1傾斜面33Aと第2傾斜面33Bとの間に微小隙間Gが形成されている。これに代えて、微小隙間Gがゼロとなるように、第2方向における第1傾斜面33A及び第2傾斜面33Bを設定してもよいし、平面視で、第1傾斜面33Aの一部と第2傾斜面33Bの一部とが重なるように、第2方向における第1傾斜面33A及び第2傾斜面33Bを設定してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 トラックボール装置
20 ハウジング
22B 露出孔(露出部)
30 インナケース
33 排出孔
33A 第1傾斜面(傾斜面)
33B 第2傾斜面(傾斜面)
33C 内側開口部
33D 外側開口部
50 回路基板
50A 挿通孔
60 センサユニット(センサ)
L 内側開口部の短手方向の長さ
G 微小隙間