(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】作業機械の診断支援システム、作業機械の故障診断システム、作業機械の診断支援方法および作業機械の故障診断方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20241022BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G05B23/02 301Y
E02F9/26 Z
(21)【出願番号】P 2021029536
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 慎一
【審査官】田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/047408(WO,A1)
【文献】特開2015-045145(JP,A)
【文献】特開2011-227706(JP,A)
【文献】特開2011-038273(JP,A)
【文献】特開平01-229593(JP,A)
【文献】国際公開第2010/082322(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 - 23/02
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の診断支援システムであって、
表示装置と、
前記作業機械における異常候補の候補情報に基づいて前記作業機械における診断箇所を特定し、前記診断箇所を診断する診断用センサの第1センサ接続位置を特定し、前記第1センサ接続位置の位置情報を表示するように前記表示装置を制御するコントローラと、
前記作業機械の第2センサ接続位置に接続された監視用センサと、を備え、
前記コントローラは、前記第1センサ接続位置が前記第2センサ接続位置と異なるか否かを判定し、前記第1センサ接続位置が前記第2センサ接続位置と異なると判定した場合に、前記第2センサ接続位置から前記第1センサ接続位置への前記監視用センサの繋ぎ替えが可能か否かを判定する、作業機械の診断支援システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記診断用センサを前記第1センサ接続位置に接続する作業手順の情報を表示するように前記表示装置を制御する、請求項1に記載の作業機械の診断支援システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第2センサ接続位置から前記第1センサ接続位置への前記監視用センサの繋ぎ替えが可能か否かを判定するに際し、前記第1センサ接続位置における第1配線ケーブルの種類と前記第2センサ接続位置における第2配線ケーブルの種類との一致を判定する、請求項
1に記載の作業機械の診断支援システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第2センサ接続位置から前記第1センサ接続位置への前記監視用センサの繋ぎ替えが可能と判定した場合に、前記第2センサ接続位置から前記第1センサ接続位置への前記監視用センサの繋ぎ替えを指示するように前記表示装置を制御する、請求項
1または請求項
3に記載の作業機械の診断支援システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第2センサ接続位置から前記第1センサ接続位置への前記監視用センサの繋ぎ替えが完了したとの信号に基づいて前記監視用センサを前記第1センサ接続位置に接続された前記診断用センサと認識する、請求項
4に記載の作業機械の診断支援システム。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の作業機械の診断支援システムと、
前記第1センサ接続位置に接続された前記診断用センサと、を備え、
前記コントローラは、前記診断用センサからの検知信号に基づいて前記作業機械の動作特性を分析する、作業機械の故障診断システム。
【請求項7】
表示装置を有する作業機械の診断支援方法であって、
前記作業機械における異常候補の候補情報に基づいて前記作業機械における診断箇所を特定するステップと、
前記診断箇所を診断する診断用センサの第1センサ接続位置を特定するステップと、
前記第1センサ接続位置の位置情報を表示するように前記表示装置を制御するステップと
、
前記第1センサ接続位置が、監視用センサが接続された第2センサ接続位置と異なるか否かを判定するステップと、
前記第1センサ接続位置が前記第2センサ接続位置と異なると判定した場合に、前記第2センサ接続位置から前記第1センサ接続位置への前記監視用センサの繋ぎ替えが可能か否かを判定するステップと、を備えた、作業機械の診断支援方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の作業機械の診断支援方法の後に、前記第1センサ接続位置に接続された前記診断用センサからの検知信号に基づいて前記作業機械の動作特性を分析するステップを備えた、作業機械の故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の診断支援システム、作業機械の故障診断システム、作業機械の診断支援方法および作業機械の故障診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の保守管理装置は、たとえば特開2006-350499号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1には、作業機械の構成部品の配置が示された画像データを保存するとともに、その画像データに保守情報に対応する部位が特定された画像を作成して表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでは、作業機械の動作特性に異常が感知・検知された場合、サービス員が現地に赴いて動作特性を計測する必要があった。しかし近年、通信環境の発達により非常に大容量のデータを送受信可能となった。これにより作業機械における様々な動作特性についての情報を遠隔地から入手できるようになった。
【0005】
しかし、たとえばトランスミッションなどの場合、動作特性としての油圧を測定したい多数のポイントが存在している。このため故障特定のために、油圧を測定したいすべてのポイントに診断用センサを設置することは部品点数の増加に繋がる。特に中小型の量産機種の場合には、多数の診断用センサを設置して、それぞれに通信機能を持たせることはコスト的に困難である。
【0006】
本開示の目的は、少ない部品点数で容易かつ正確な故障特定が可能な作業機械の診断支援システム、作業機械の故障診断システム、作業機械の診断支援方法および作業機械の故障診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の作業機械の診断支援システムは、表示装置と、コントローラとを備える。コントローラは、作業機械における異常候補の候補情報に基づいて作業機械における診断箇所を特定し、診断箇所を診断する診断用センサの第1センサ接続位置を特定し、第1センサ接続位置の位置情報を表示するように表示装置を制御する。
【0008】
本開示の作業機械の故障診断システムは、上記における作業機械の診断支援システムと、第1センサ接続位置に接続された診断用センサとを備える。コントローラは、診断用センサからの検知信号に基づいて作業機械の動作特性を分析する。
【0009】
本開示の作業機械の診断支援方法は、表示装置を有する作業機械の診断支援方法であって、以下のステップを有する。
【0010】
作業機械における異常候補の候補情報に基づいて作業機械における診断箇所が特定される。診断箇所を診断する診断用センサの第1センサ接続位置が特定される。第1センサ接続位置の位置情報を表示するように表示装置が制御される。
【0011】
本開示の作業機械の故障診断方法は、上記における作業機械の診断支援方法の後に、第1センサ接続位置に接続された診断用センサからの検知信号に基づいて作業機械の動作特性を分析するステップを備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、少ない部品点数で容易かつ正確な故障特定が可能な作業機械の診断支援システム、作業機械の故障診断システム、作業機械の診断支援方法および作業機械の故障診断方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態における作業機械の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す作業機械の構成を示す側面図である。
【
図3】本開示の故障診断における診断用センサのセンサ接続位置の一例を示す図であって、
図2に示す動力伝達装置の油圧回路を示す図である。
【
図4】本開示の故障診断における診断用センサのセンサ接続位置を示す図であって、トランスミッションとトルクコンバータとの構成を示す平面図である。
【
図5】
図1に示す作業機械の故障診断システムの構成の一例を示す図である。
【
図6】
図1に示す作業機械の診断支援システムおよび故障診断システムにおける機能ブロックの一例を示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態における作業機械の診断支援方法の一例を示すフロー図である。
【
図8】
図7におけるセンサ増設判定の工程を詳細に示すフロー図である。
【
図9】診断用センサ接続後の故障診断の工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について図に基づいて説明する。
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0015】
本開示は、モータグレーダ以外に、油圧ショベル、ホイールローダ、ブルドーザ、フォークリフトなどの作業機械に適用可能である。以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、
図1に示す運転室11内の運転席11Sに着座したユーザを基準とした方向である。
【0016】
<作業機械の構成>
まず本実施形態の作業機械の一例としてモータグレーダの構成を
図1および
図2を用いて説明する。
【0017】
図1および
図2のそれぞれは、本開示の一実施形態における作業機械の構成を概略的に示す斜視図および側面図である。
図1に示されるように、モータグレーダ100は、走行しながら、整地作業を行なったり、除雪作業を行なったりする作業機械である。
【0018】
モータグレーダ100は、フロントフレーム14と、リアフレーム15と、一対のアーティキュレートシリンダ28と、運転室(キャブ)11と、エンジンカバー13と、前輪16および後輪17と、作業機12とを有している。
【0019】
フロントフレーム14およびリアフレーム15は、モータグレーダ100の車体フレーム18を構成している。フロントフレーム14は、リアフレーム15の前方に配置されている。
【0020】
フロントフレーム14は、回動中心の軸線121上に設けられたセンターピン(不図示)により、リアフレーム15に回動可能に連結されている。回動中心の軸線121は、上下方向に沿って延びる軸である。
【0021】
一対のアーティキュレートシリンダ28は、フロントフレーム14を挟んで左右両側に設けられている。アーティキュレートシリンダ28は、油圧により伸縮駆動する油圧シリンダである。アーティキュレートシリンダ28の伸縮駆動により、フロントフレーム14は、リアフレーム15に対して回動中心の軸線121を中心に回動する。
【0022】
前輪16および後輪17は、走行輪である。前輪16は、フロントフレーム14に回転可能に取り付けられている。前輪16は、操向輪であり、フロントフレーム14に対して操向可能に取り付けられている。後輪17は、リアフレーム15に回転可能に取り付けられている。後輪17には、エンジンからの駆動力が伝達される。
【0023】
作業機12は、前後方向において、前輪16および後輪17の間に配置されている。作業機12は、フロントフレーム14により支持されている。作業機12は、ブレード21と、ドローバ22と、旋回サークル23と、一対のリフトシリンダ25とを有している。
【0024】
ドローバ22は、フロントフレーム14の下方に設けられている。ドローバ22の前端部は、フロントフレーム14の先端部に揺動可能に連結されている。一対のリフトシリンダ25は、フロントフレーム14を挟んだ左右両側に設けられている。ドローバ22の後端部は、一対のリフトシリンダ25を介して、フロントフレーム14により支持されている。
【0025】
一対のリフトシリンダ25の伸縮によって、ドローバ22の後端部がフロントフレーム14に対して上下に昇降可能である。一対のリフトシリンダ25がともに収縮駆動することにより、フロントフレーム14および前輪16に対するブレード21の高さは上方に調整される。一対のリフトシリンダ25がともに伸長駆動することにより、フロントフレーム14および前輪16に対するブレード21の高さは下方に調整される。
【0026】
ドローバ22は、一対のリフトシリンダ25の互いに異なる伸縮によって、前後方向に沿った軸を中心に上下に揺動可能である。
【0027】
旋回サークル23は、ドローバ22の下方に配置されている。旋回サークル23は、ドローバ22に旋回可能に連結されている。旋回サークル23は、上下方向に沿った軸を中心に、時計回りおよび反時計回りに旋回可能である。
【0028】
ブレード21は、旋回サークル23の下方に配置されている。ブレード21は、地面と対向して設けられている。ブレード21は、旋回サークル23により支持されている。ブレード21は、旋回サークル23の旋回運動に伴って、上面視において前後方向に対してブレード21がなす角度(ブレード推進角)が変化するように旋回する。ブレード21の旋回軸は、上下方向に沿って延びる軸である。
【0029】
図2に示されるように、運転室11は、たとえばリアフレーム15に載置されている。運転室11は、ユーザが搭乗するための室内空間を形成している。運転室11には、運転席11Sに加えて、入力装置32、表示装置33、複数の操作レバーなどが配置されている。なお運転室11は、フロントフレーム14に載置されてもよい。
【0030】
入力装置32は、たとえば故障診断におけるユーザによる各種の入力操作が可能なように構成されている。入力装置32は、たとえばスイッチ、ボタン、ダイヤル、レバー、ジョイスティックなどであってもよく、また時刻を入力できる装置であってもよい。
【0031】
表示装置33は表示部を有し、たとえば故障診断の作業手順などを表示部に表示する。表示部はたとえばタッチパネルであってもよい。この場合、ユーザがタッチパネルをタッチ操作することにより、入力装置32の操作によらずに、故障診断における各種の入力操作が可能であってもよい。この場合、表示装置33は入力装置32として機能し得る。
【0032】
エンジンカバー13は、エンジンルームを覆っており、リアフレーム15により支持されている。エンジンルームには、トランスミッション13a、トルクコンバータ13b、エンジン13c、排気処理構造体(図示せず)などが配置されている。トランスミッション13aとトルクコンバータ13bとは動力伝達装置を構成しており、エンジン13cからの動力を後輪17に伝達する。
【0033】
トランスミッション13aは、内部に油圧式のクラッチおよび変速ギアを有している。トランスミッション13aは、トルクコンバータ13bの出力側に接続する入力軸の回転速度およびトルクを変換する。変換された回転速度およびトルクは、トランスミッション13aの出力軸から最終減速機およびタンデム装置を介在して、最終的に後輪17に伝達される。
【0034】
<故障診断における診断用センサのセンサ接続位置の一例>
次に、
図1および
図2に示されるモータグレーダ100の故障診断における診断用センサのセンサ接続位置の一例について
図3および
図4を用いて説明する。
【0035】
図3は、本開示の故障診断における診断用センサのセンサ接続位置の一例を示す図であって、
図2に示す動力伝達装置の油圧回路を示す図である。
図4は、本開示の故障診断における診断用センサのセンサ接続位置を示す図であって、トランスミッションとトルクコンバータとの構成を示す平面図である。
【0036】
図3に示されるように、動力伝達装置の油圧回路には、トランスミッション13a、トルクコンバータ13bおよび接続力制御機構45が含まれている。
【0037】
油圧ポンプ51に接続された管路は、互いに分岐された一方の管路52aと他方の管路52bとを有している。一方の管路52aには、トルクコンバータ13bのロックアップ機構用油圧機器が接続されている。
【0038】
ロックアップ機構用油圧機器は、ロックアップバルブ53と、ロックアップソレノイドバルブ54と、ロックアップクラッチ機構55とを有している。ロックアップソレノイドバルブ54は、ロックアップバルブ53にパイロット圧を供給する。ロックアップクラッチ機構55は、ロックアップバルブ53とトルクコンバータ13bとの間に接続されている。
【0039】
他方の管路52bには、オイルフィルタ56と接続力制御機構45とを介在してトランスミッション13aが接続されている。トランスミッション13aは、方向切換クラッチ機構41と、速度切換クラッチ機構42とを有している。
【0040】
方向切換クラッチ機構41は、たとえば、前進低速(FL)クラッチ機構41Aと、前進高速(FH)クラッチ機構41Bと、後進(R)クラッチ機構41Cとを有している。これにより方向切換クラッチ機構41では、3段の方向切換が可能である。
【0041】
速度切換クラッチ機構42は、1速から4速の速度切換クラッチ機構42A、42B、42C、42Dを有している。これにより速度切換クラッチ機構42では、4段の速度切換が可能である。
【0042】
各方向切換クラッチ機構41A~41Cのいずれかと速度切換クラッチ機構42A~42Dのいずれかとを連結することで、たとえば前進8段、後進4段の速度段位置が得られる。
【0043】
接続力制御機構45は、複数の電子制御調整弁45A~45Gを有している。複数の電子制御調整弁45A~45Gは、トランスミッション13aの複数のクラッチ機構41A~41C、42A~42Dのそれぞれに接続されている。
【0044】
故障特定時においては、センサ接続位置P1~P9の各々に診断用センサとしての油圧センサを接続してセンサ接続位置P1~P9の各々の油圧を測定することが好ましい。具体的には、速度切換クラッチ機構42A~42Dのそれぞれの油圧が、センサ接続位置P1~P4に接続された油圧センサにより測定されることが好ましい。また方向切換クラッチ機構41A~41Cのそれぞれの油圧が、センサ接続位置P5~P7に接続された油圧センサにより測定されることが好ましい。またロックアップクラッチ機構55の油圧が、センサ接続位置P8に接続された油圧センサにより測定されることが好ましい。また他方の管路52bの油圧が、センサ接続位置P9に接続された油圧センサにより測定されることが好ましい。
【0045】
センサ接続位置P1~P9の各々に接続された油圧センサにより測定された油圧は電気信号としてコントローラ10へ入力される。なおセンサ接続位置P8およびP9においては、図の簡略化のため、コントローラ10に接続される線は省略されている。
【0046】
図4に示されるように、センサ接続位置P1~P8は、トランスミッション13aおよびトルクコンバータ13bの各々のたとえば上面に配置されている。これによりセンサ接続位置P1~P8への油圧センサの接続・非接続の作業が容易となる。
【0047】
<故障診断システムの構成>
次に、本実施形態における故障診断システムの構成について
図5を用いて説明する。
【0048】
図5は、
図1に示す作業機械の故障診断システムの構成を示す図である。
図5に示されるように、故障診断システムは、作業機械(たとえばモータグレーダ)100と、管理サーバ65と、ユーザ端末68と、サービス端末69と、通信網62とを有している。
【0049】
管理サーバ65は、作業機械100の情報を管理する。ユーザ端末68は、作業機械100のユーザが使用する端末である。サービス端末69は、作業機械100の保守点検を行うサービス員が使用する端末である。通信網62は、作業機械100、管理サーバ65、ユーザ端末68およびサービス端末69を通信可能に結んでいる。
【0050】
通信網62は、衛星無線通信網と、専用の地上通信網と、コンピュータ通信網とを含む。衛星無線通信網は、作業機械100と衛星地球局61とを通信衛星63を介して結ぶ。専用の地上通信網は、衛星地球局61と管理サーバ65とを結ぶ。コンピュータ通信網は、管理サーバ65とユーザ端末68またはサービス端末69とを結ぶイントラネットあるいはインターネットなどである。なお、符号64は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星である。
【0051】
衛星無線通信網は、作業機械100がどの場所にいても作業機械100と管理サーバ65との間の通信を可能にする目的で使用される。同様の目的を達成できるなら、衛星無線通信網に代えて、他の種類の移動体通信網、無線通信網などが用いられてもよい。
【0052】
ユーザ端末68およびサービス端末69としては、たとえば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、携帯情報端末(携帯電話、タブレット端末などを含む)などが用いられる。各端末68、69では、管理サーバ65と双方向通信するためのアプリケーションプログラムが実行可能である。
【0053】
作業機械100は、管理サーバ65と衛星無線通信網を介して双方向通信を行うことができる。作業機械100は、現在の稼動状態を示す稼動情報を継続的に内部で検出して収集し、収集した稼動情報を実質的にリアルタイムで管理サーバ65に送信する機能を持つ。作業機械100の稼動情報には、たとえば積算稼動時間(サービスメータ値)、エンジン回転数、バッテリ電圧、燃料量、エンジン冷却水温などが含まれる。
【0054】
管理サーバ65は、たとえば通信サーバ66と、メンテナンスサーバ67とを有している。通信サーバ66は、作業機械100、ユーザ端末68およびサービス端末69の相互間の通信を制御する。メンテナンスサーバ67は、作業機械100のための異常の管理情報を作成し管理する。
【0055】
作業機械100の内部で検出された異常情報は、通信網62を用いてユーザ端末68およびサービス端末69の各々に表示されてもよい。また作業機械100における故障診断に関する指令がユーザ端末68およびサービス端末69の各々から発せられてもよい。
【0056】
図1および
図2に示される表示装置33は、ユーザ端末68またはサービス端末69の表示部であってもよい。また
図3に示されるコントローラ10は、メンテナンスサーバ67、ユーザ端末68またはサービス端末69のいずれかであってもよい。また
図3に示されるコントローラ10は作業機械100に搭載されていてもよい。
【0057】
<診断支援システムおよび故障診断システムの機能ブロックの構成>
次に、本実施形態における診断支援システムおよび故障診断システムの機能ブロックの構成について
図6を用いて説明する。
【0058】
図6は、
図1に示す作業機械の診断支援システムおよび故障診断システムにおける機能ブロックの一例を示す図である。
図6に示されるように、モータグレーダ100の診断支援システムは、コントローラ10と、監視用センサ31と、入力装置32と、表示装置33とを有している。
【0059】
監視用センサ31は、モータグレーダ100の動作特性を検知する。監視用センサ31は、動作特性を常時監視するセンサであって、たとえば
図3に示されるセンサ接続位置P1~P9のいずれかに接続された油圧センサであってもよい。監視用センサ31は、油圧センサに限定されず、回転センサ、温度センサなどであってもよく、如何なる種類のセンサであってもよい。
【0060】
入力装置32には、ユーザが作業機械100の操作に異常を感知したタイミングに関するタイミング情報、またはユーザが異常を感知した箇所に関する箇所情報が入力される。具体的には、ユーザが異常を感知したタイミング(操作に違和感を感知したタイミング)で入力装置32を入力操作した場合、その入力操作のタイミングが異常発生タイミングのタイミング情報として入力装置32に入力される。また、ユーザが作業機械100の操作において異常を感知した時刻を入力装置32に入力することによって、その入力時刻が異常発生タイミングのタイミング情報として入力装置32に入力されてもよい。
【0061】
コントローラ10は、候補情報取得部1と、異常状態判定部2と、診断箇所特定部3と、センサ接続位置特定部4と、センサ増設判定部5と、表示装置制御部6と、記憶部7とを有している。
【0062】
記憶部7には、作業機械100の動作特性における各部の正常動作特性値が記憶されている。また記憶部7には、センサ検知位置と診断箇所との対応関係を示すテーブル(以下、「第1テーブル」と称する)、異常を感知した箇所と診断箇所との対応関係を示すテーブル(以下、「第2テーブル」と称する)、診断箇所とセンサ接続位置との対応関係を示すテーブル(以下、「第3テーブル」と称する)などが記憶されている。
【0063】
また記憶部7には、複数のセンサ接続位置のうち既設の監視用センサが接続されている箇所と接続されていない箇所とを示す接続位置情報(以下、「接続位置情報」と称する)が記憶されている。また記憶部7には、複数のセンサ接続位置の各々に接続できるセンサの種類の情報(以下、「センサ種類情報」と称する)が記憶されている。
【0064】
また記憶部7には、ユーザが作業機械100の操作時に異常を感知したタイミングで入力装置32を入力操作することにより、その入力操作を行ったタイミングでの作業機械100の各部の動作特性値が記憶されてもよい。また記憶部7には、作業機械100における各部の動作特性値が継続して記憶されてもよい。
【0065】
候補情報取得部1は、監視用センサ31の検知信号、または入力装置32の入力信号を取得する。候補情報取得部1は、取得した監視用センサ31の検知信号を異常候補の候補情報として異常状態判定部2へ出力する。また候補情報取得部1は、取得した入力装置32の入力信号を異常候補の候補情報として診断箇所特定部3へ出力する。
【0066】
異常状態判定部2は、取得した候補情報(監視用センサ31の検知信号)に基づいて、監視用センサ31により検知された動作特性が異常状態か否かを判定する。異常状態か否かの判定は、候補情報の特性値を記憶部7に記憶されている正常動作特性値と対比することにより行われる。たとえば監視用センサ31により検知された動作特性値が記憶部7に記憶された正常動作特性値の範囲内である場合には、その動作特性が正常状態であると異常状態判定部2は判定する。一方、監視用センサ31により検知された動作特性値が記憶部7に記憶された正常動作特性値の範囲外である場合には、その動作特性が異常状態であると異常状態判定部2は判定する。異常状態判定部2は、判定結果を示す信号を診断箇所特定部3へ出力する。
【0067】
また異常状態判定部2は、動作特性が異常状態であると判定した場合、判定結果を示す信号を表示装置制御部6へ出力する。表示装置制御部6は、取得した判定結果の信号に基づいて、異常が発生したことを表示するように表示装置33を制御する。これにより表示装置33は、異常が発生したことを表示する。
【0068】
診断箇所特定部3は、異常状態判定部2から取得した判定結果の信号または候補情報取得部1から取得した候補情報(入力装置32の入力信号)に基づいて、故障診断が必要な箇所を特定する。つまり診断箇所特定部3は、異常候補の候補情報に基づいて故障診断が必要な箇所を特定する。診断箇所特定部3は、特定した診断箇所を示す信号をセンサ接続位置特定部4へ出力する。
【0069】
センサ接続位置特定部4は、取得した診断箇所の信号に基づいて、診断用センサを接続するためのセンサ接続位置(第1センサ接続位置)を特定する。センサ接続位置特定部4は、記憶部7に記憶された第3テーブルを参照し、取得した診断箇所の信号に基づいて第1センサ接続位置を特定する。センサ接続位置特定部4は、特定した第1センサ接続位置を示す信号をセンサ増設判定部5へ出力する。
【0070】
センサ増設判定部5は、取得した第1センサ接続位置を示す信号に基づいてセンサを増設すべきか否かを判定する。具体的には、センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置に既設の監視用センサが接続されているか否かを判定する。センサ増設判定部5は、記憶部7に記憶された接続位置情報を参照し、取得した第1センサ接続位置に基づいて第1センサ接続位置に監視用センサが接続されているか否かを判定する。つまりセンサ増設判定部5は、診断用センサが接続されるべき第1センサ接続位置が、監視用センサ31が接続されたセンサ接続位置(第2センサ接続位置)と異なるか否かを判定する。
【0071】
センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置に既設の監視用センサがあると判定した場合(第1センサ接続位置が第2センサ接続位置と同じであると判定した場合)、センサ接続位置の故障診断を開始する旨の表示を表示装置制御部6に指示する。
【0072】
一方、センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置に既設の監視用センサがないと判定した場合(第1センサ接続位置が第2センサ接続位置と異なると判定した場合)、記憶部7に記憶されたセンサ種類情報を参照し、取得した第1センサ接続位置に基づいて第2センサ接続位置から第1センサ接続位置へ既設の監視用センサ31を繋ぎ替えて接続できるかを判定する。
【0073】
センサ増設判定部5は、第2センサ接続位置から第1センサ接続位置へ既設の監視用センサを繋ぎ替えることができないと判定した場合、診断用センサを追加で接続する第1センサ接続位置の位置情報を表示するよう表示装置制御部6に指示する。また、この場合、センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置への新たな診断用センサの追加接続を促す表示をするように表示装置制御部6に指示する。さらに第1センサ接続位置へ新たな診断用センサを追加接続するための作業手順を表示するよう表示装置制御部6に指示する。
【0074】
一方、センサ増設判定部5は、第2センサ接続位置から第1センサ接続位置へ既設の監視用センサを繋ぎ替えることができると判定した場合、監視用センサ31を繋ぎ替えて接続する第1センサ接続位置の位置情報を表示するよう表示装置制御部6に指示する。また、この場合、センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置への監視用センサ31の繋ぎ替えを促す表示をするように表示装置制御部6に指示する。さらに第1センサ接続位置へ監視用センサを繋ぎ替えるための作業手順を表示するよう表示装置制御部6に指示する。
【0075】
表示装置制御部6は、センサ増設判定部5から取得した指示信号に基づいて表示装置33を制御する。
【0076】
上記より、第1センサ接続位置に既設の監視用センサ31が接続されている場合には、表示装置33は、センサ接続位置の故障診断を開始する旨を表示する。
【0077】
また第1センサ接続位置に既設の監視用センサ31が接続されておらず、かつ第1センサ接続位置に監視用センサ31を繋ぎ替えることができない場合には、表示装置33は、診断用センサを追加で接続する第1センサ接続位置の位置情報を表示する。また、この場合、第1センサ接続位置への新たな診断用センサの追加接続を促す表示を表示装置33は表示する。さらに表示装置33は、第1センサ接続位置へ新たな診断用センサを追加接続するための作業手順を表示する。
【0078】
また第1センサ接続位置に既設の監視用センサ31が接続されておらず、かつ第1センサ接続位置に監視用センサ31を繋ぎ替えることができる場合には、表示装置33は、監視用センサ31を繋ぎ替えて接続する第1センサ接続位置の位置情報を表示する。また、この場合、第1センサ接続位置への監視用センサ31の繋ぎ替えを促す表示を表示装置33は表示する。さらに表示装置33は、第1センサ接続位置へ監視用センサを繋ぎ替えるための作業手順を表示する。
【0079】
上記の第1センサ接続位置の位置情報として、第1センサ接続位置を記したマニュアル、取扱説明書などの対応頁が表示装置33に表示されてもよい。また第1センサ接続位置の位置情報として、
図4に示されるようなセンサ接続位置P1~P8を示す画像が表示装置33に表示されてもよい。ユーザまたはサービス員は、表示装置33にて第1センサ接続位置の位置情報を確認することができる。これによりユーザまたはサービス員は診断用センサを接続すべき位置を容易に知ることができる。
【0080】
また本実施形態の故障診断システムは、上記の診断支援システムと、診断用センサ34と、コントローラ10の動作特性分析部8とを有している。診断用センサ34は、第1センサ接続位置に既設されたセンサであってもよく、第1センサ接続位置に繋ぎ替えられた監視用センサ31であってもよく、また第1センサ接続位置に新たに追加で接続されたセンサであってもよい。診断用センサ34は、診断のために作業機械100を動作させた際における作業機械100の動作特性を検知する。診断用センサ34は、検知した動作特性を検知信号としてコントローラ10の動作特性分析部8に出力する。動作特性分析部8は、診断用センサ34からの検知信号に基づいて作業機械100の動作特性を自動分析する。動作特性分析部8は、分析結果を示す信号を表示装置制御部6へ出力する。表示装置制御部6は、取得した分析結果の信号に基づいて、分析結果を表示するように表示装置33を制御する。これにより表示装置33は、分析結果を表示する。
【0081】
<診断支援方法>
次に、上記診断支援システムによる診断支援方法について説明する。
【0082】
図7は、本開示の一実施形態における作業機械の診断支援方法の一例を示すフロー図である。
図8は、
図7におけるセンサ増設判定の工程を詳細に示すフロー図である。
【0083】
図6および
図7に示されるように、コントローラ10の候補情報取得部1は、監視用センサ31の検知信号、または入力装置32の入力信号を異常候補の候補状態として取得する(ステップS1:
図7)。
【0084】
監視用センサ31の検知信号は、たとえば動力伝達装置の動作特性を監視する監視用センサ31の検知信号であってもよい。監視用センサ31は、
図3のセンサ接続位置P1~P9のいずれかに取り付けられたセンサであってもよい。
【0085】
入力装置32の入力信号は、たとえばユーザが変速操作時にショック(変速ショック)を感知した場合には、変速ショックを感知したユーザにより入力装置32に入力された信号である。たとえば、ユーザが変速ショックを感知したタイミングで入力装置32を入力操作した場合、入力装置32の入力信号は、その入力操作が実行されたタイミングを示す信号である。また、ユーザが変速ショックを感知した時刻を入力装置32に入力した場合、入力装置32の入力信号は、その入力時刻を示す信号である。また変速ショックを感知したユーザが異常が生じていると考える箇所を入力装置32に入力した場合、入力装置32の入力信号は、その箇所を示す信号である。
【0086】
候補情報取得部1は監視用センサ31の検知信号を取得した場合、取得した監視用センサ31の検知信号を候補情報として異常状態判定部2へ出力する。また候補情報取得部1は入力装置32の入力信号を取得した場合、取得した入力装置32の入力信号を診断箇所特定部3へ出力する。
【0087】
異常状態判定部2は、取得した候補情報に基づいて、監視用センサ31により検知された動作特性が異常状態か否かを判定する(ステップS2:
図7)。上記動作特性が異常状態ではないと異常状態判定部2が判定した場合、監視用センサ31の検知信号の取得(ステップS1)と異常状態の判定(ステップS2)とが繰り返される。また上記動作特性が異常状態であると異常状態判定部2が判定した場合、異常状態判定部2は、判定結果を示す信号を診断箇所特定部3へ出力する。
【0088】
また異常状態判定部2は、動作特性が異常状態であると判定した場合、判定結果を示す信号を表示装置制御部6へ出力する。表示装置制御部6は、取得した判定結果の信号に基づいて、異常が発生したことを表示するように表示装置33を制御する。これにより表示装置33は、異常が発生したことを表示する。これにより、たとえば変速ショックを感知したユーザは、表示装置33に表示された内容を確認して、動力伝達装置(たとえばクラッチ機構41A~41C、42A~42D)に異常が生じている可能性を認識する。
【0089】
診断箇所特定部3は、異常状態判定部2から取得した判定結果の信号または候補情報取得部1から取得した入力装置32の入力信号に基づいて、診断が必要な箇所(診断箇所)を特定する(ステップS3:
図7)。
【0090】
診断箇所特定部3は、異常であると判定された監視用センサ31の検知信号に基づいて作業機械100の診断箇所を特定する。この際、診断箇所特定部3は、記憶部7に記憶されている第1テーブルを参照して、診断箇所を特定する。
【0091】
また診断箇所特定部3は、異常発生タイミングとしてのタイミング情報または異常を感知した箇所に関する箇所情報に基づいて作業機械100の診断箇所を特定する。この際、ユーザが入力装置32を操作した場合には、入力装置32が操作されたタイミングにおける作業機械100の各部の動作特性値が記憶部7に記憶される。診断箇所特定部3は、記憶部7に記憶されている入力装置32が操作されたタイミングでの各部の動作特性値と記憶部7に記憶されている各部の正常動作特性値との対比に基づいて、診断箇所を特定する。この際、入力装置32が操作されたタイミングでの各部の動作特性値のうち各部の正常動作特性値から外れた動作特性値に基づいて診断箇所が特定される。
【0092】
またユーザが入力装置32に異常を感知した時刻を入力する場合、診断箇所特定部3は、記憶部7に継続して記憶されている動作特性値の中から入力時刻における各部の動作特性値と記憶部7に記憶されている各部の正常動作特性値との対比に基づいて、診断箇所を特定する。この際、入力時刻における各部の動作特性値のうち各部の正常動作特性値から外れた動作特性値に基づいて診断箇所が特定される。
【0093】
またユーザが異常を感知した箇所を入力する場合には、診断箇所特定部3は、記憶部7に記憶されている第2テーブルを参照して、診断箇所を特定する。
【0094】
診断箇所特定部3は、特定した診断箇所を示す信号をセンサ接続位置特定部4へ出力する。
【0095】
センサ接続位置特定部4は、取得した診断箇所の信号に基づいて、診断用センサを接続するためのセンサ接続位置(第1センサ接続位置)を特定する(ステップS4:
図7)。センサ接続位置特定部4は、1つの第1センサ接続位置を特定してもよく、また複数の第1センサ接続位置を特定してもよい。センサ接続位置特定部4は、たとえば
図3に示される複数のセンサ接続位置P1~P9を第1センサ接続位置として特定してもよい。
【0096】
センサ接続位置特定部4は、記憶部7に記憶された第3テーブルを参照して、取得した診断箇所の信号に基づいて第1センサ接続位置を特定する。センサ接続位置特定部4は、特定した第1センサ接続位置を示す信号をセンサ増設判定部5へ出力する。
【0097】
センサ増設判定部5は、取得した第1センサ接続位置を示す信号に基づいてセンサを増設すべきか否かを判定する(ステップS5:
図7)。センサ増設判定部5における判定のフローについて
図6および
図8を用いて説明する。
【0098】
図6および
図8に示されるように、センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置に既設の監視用センサが接続されているか否かを判定する(ステップS51:
図8)。センサ増設判定部5は、記憶部7に記憶された接続位置情報を参照して、取得した第1センサ接続位置に基づいて第1センサ接続位置に監視用センサが接続されているか否かを判定する。
【0099】
センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置に既設の監視用センサがあると判定した場合、第1センサ接続位置の診断を開始する旨の表示を表示装置制御部6に指示する(ステップS52:
図8)。
【0100】
一方、センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置に既設の監視用センサがないと判定した場合、第1センサ接続位置に既設の監視用センサを繋ぎ替えて接続できるか否かを判定する(ステップS53:
図8)。センサ増設判定部5は、記憶部7に記憶されたセンサ種類情報を参照して、取得した第1センサ接続位置に基づいて第1センサ接続位置に既設の監視用センサを繋ぎ替えて接続できるか否かを判定する。
【0101】
この際、センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置における第1配線ケーブルの種類と第2センサ接続位置における第2配線ケーブルの種類とが一致しているか否かを判定し、一致していると判定した場合には既設の監視用センサを第1センサ接続位置へ繋ぎ替えて接続できると判定する。またセンサ増設判定部5は、第1センサ接続位置に接続できるセンサの種類と既設の監視用センサの種類とが同じか否かを判定し、同じであると判定した場合に既設の監視用センサを第1センサ接続位置へ繋ぎ替えて診断に使用できると判定してもよい。またセンサ増設判定部5は、接続時のデータに基づいて第2配線ケーブルそのものが故障していると判定した場合には、既設の監視用センサを第1センサ接続位置へ繋ぎ替えて接続できないと判定してもよい。
【0102】
センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置に既設の監視用センサを繋ぎ替えて接続できないと判定した場合、診断用センサを追加で接続する第1センサ接続位置の位置情報を表示するよう表示装置制御部6に指示する(ステップS54:
図8)。また、この場合、センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置に診断用センサを追加で接続するための作業手順の情報を表示するよう表示装置制御部6に指示する。
【0103】
一方、センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置に既設の監視用センサを繋ぎ替えて接続できると判定した場合、監視用センサを繋ぎ替えて接続する第1センサ接続位置の位置情報を表示するよう表示装置制御部6に指示する(ステップS55:
図8)。また、この場合、センサ増設判定部5は、第1センサ接続位置に監視用センサを第2センサ接続位置から繋ぎ替えて接続するための作業手順の情報を表示するよう表示装置制御部6に指示する。
【0104】
以上のようにセンサ増設判定部5はセンサを増設すべきか否かを判定し、その判定結果に基づいて表示装置制御部6へ指示信号を出力する。
【0105】
図6および
図7に示されるように、表示装置制御部6は、センサ増設判定部5から取得した指示信号に基づいて表示装置33を制御する(ステップS6:
図7)。
【0106】
上記より、第1センサ接続位置に既設の監視用センサ31が接続されている場合には、表示装置33は、センサ接続位置の診断を開始する旨を表示する。
【0107】
また第1センサ接続位置に既設の監視用センサ31が接続されておらず、かつ第1センサ接続位置に監視用センサ31を繋ぎ替えることができない場合には、表示装置33は、診断用センサを追加で接続する第1センサ接続位置の位置情報を表示する。また、この場合、第1センサ接続位置への新たな診断用センサの追加接続を促す表示を表示装置33は表示する。さらに第1センサ接続位置へ新たな診断用センサを追加接続するための作業手順を表示装置33は表示する。
【0108】
また第1センサ接続位置に既設の監視用センサ31が接続されておらず、かつ第1センサ接続位置に監視用センサ31を繋ぎ替えることができる場合には、表示装置33は、監視用センサ31を繋ぎ替えて接続する第1センサ接続位置の位置情報を表示する。また、この場合、第2センサ接続位置から第1センサ接続位置への監視用センサ31の繋ぎ替えを促す表示を表示装置33は表示する。さらに第1センサ接続位置へ監視用センサを繋ぎ替えるための作業手順を表示装置33は表示する。
【0109】
上記の第1センサ接続位置の位置情報として、第1センサ接続位置を記したマニュアル、取扱説明書などの対応頁が表示装置33に表示されてもよい。また第1センサ接続位置の位置情報として、
図4に示されるようなセンサ接続位置P1~P8を示す画像が表示装置33に表示されてもよい。
【0110】
また診断用センサの接続(新たな診断用センサの追加接続または監視用センサの繋ぎ替え接続)における作業手順の情報として、作業手順を記したマニュアル、取扱説明書などの対応頁が表示装置33に表示されてもよい。また診断用センサの接続における作業手順の情報として、画像が表示装置33に表示されてもよい。
【0111】
ユーザまたはサービス員は、表示装置33にて第1センサ接続位置の位置情報および作業手順を確認することができる。これによりユーザまたはサービス員は診断用センサを接続すべき位置と診断用センサを接続するための作業手順とを容易に知ることができる。
【0112】
ユーザまたはサービス員は、表示装置33に表示された第1センサ接続位置の位置情報に基づいて診断に必要な第1センサ接続位置に、既設の監視用センサを診断用センサとして繋ぎ替えて接続するか、または新たな診断用センサを接続する。これにより診断が必要な第1センサ接続位置の診断を行うことが可能となる。
【0113】
<診断用センサ接続後における故障診断の工程>
次に、診断用センサ接続後における故障診断の工程について
図9を用いて説明する。
【0114】
図9は、診断用センサ接続後の故障診断の工程を示すフロー図である。
図9に示されるように、ユーザまたはサービス員によって、診断用センサ34(
図6)が診断に必要な第1センサ接続位置に接続される(ステップS11)。
【0115】
図3に示されるように、診断用センサ34が第1センサ接続位置(たとえばP1~P9のいずれか)に接続された場合、診断用センサ34が第1センサ接続位置に接続されたことを示す信号がコントローラ10に出力される。コントローラ10は、第2センサ接続位置から第1センサ接続位置へ監視用センサ31(
図6)が繋ぎ替えられた場合、監視用センサ31の繋ぎ替えが完了したとの信号に基づいて監視用センサ31を第1センサ接続位置に接続された診断用センサ34と認識する。またコントローラ10は、第1センサ接続位置に新たな診断用センサ34が接続された場合、新たな診断用センサ34が第1センサ接続位置に接続されたとの信号に基づいて新たな診断用センサ34を第1センサ接続位置に接続された診断用センサ34と認識する。
【0116】
既設の監視用センサ31が診断用センサ34として繋ぎ替えられた場合または新たな診断用センサ34が接続された場合には、診断モードに入り、自動で稼働前のチェックが行われる(ステップS12)。この稼働前のチェックとは、作業機械100が停止された状態で、診断用センサ34がセンサ接続位置に正しく取り付けられているか否か、診断用センサ34が正しく動作特性を検知できるか否かなどをチェックすることである。
【0117】
稼働前チェックの結果、指令と動作特性(たとえば油圧)とが著しく異なる場合には、ユーザまたはサービス員は、診断用センサ34の接続確認または付け替えをしたり、入力装置32を用いてコントローラ10に指示する。また稼働前チェックの結果、診断用センサ34に異常がなければ、コントローラ10は運転許可を表示するよう表示装置33を制御する。
【0118】
ユーザは、運転許可の表示を確認した後、作業機械100を操作することにより、異常を感知または検知した運転を再現する(ステップS13)。ユーザがたとえば変速操作時にショックを感知した場合には、ショックを感知した変速操作と同じ操作を再現する。
【0119】
その操作においてコントローラ10は、診断用センサ34からの検知信号に基づいて作業機械100の動作特性を自動分析する(ステップS14)。たとえば、コントローラ10は、変速操作におけるショックの原因となる回転数の変化または油圧の変化の信号を診断用センサから取得して自動分析を行う。具体的にはコントローラ10の動作特性分析部8(
図6)が上記自動分析を行なう。コントローラ10は、自動分析の結果を表示装置33に表示し、または通信網62を通じてユーザ端末68またはサービス端末69に送信する。これにより自動分析により例外事象が生じた場合には、サービス端末69を通じてその例外事象を品質保守部門、設計部門などで分析することができる。
【0120】
自動分析の結果、異常の原因が判明することにより診断は完了する(ステップS15)。自動分析の結果、異常の原因がたとえば油圧バルブに有るとコントローラ10が判定した場合、コントローラ10は油圧バルブの交換が必要であるとの判定結果を表示装置33に表示し、または通信網62を通じてユーザ端末68またはサービス端末69に送信する。
【0121】
この後、コントローラ10は、次のアクションをリコメンドする(ステップS16)。コントローラ10は、次のアクションとして、たとえば作業機械100を継続稼働するか、修理まで稼働停止とすべきかを表示装置33に表示し、または通信網62を通じてユーザ端末68またはサービス端末69に送信する。また次のアクションは、自動分析であってもよく、また交換消耗部品の指示であってもよい。
【0122】
作業機械100を再稼働させる場合、診断用センサとして用いた監視用センサが元のセンサ接続位置へ繋ぎ替えられる(ステップS17)。監視用センサの繋ぎ替えは、たとえばユーザまたはサービス員により行われる。
【0123】
以上により本実施形態の診断用センサ接続後における故障診断の作業は終了する(ステップS18)。
【0124】
<効果>
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0125】
図3および
図4に示されるように、たとえばトランスミッションなどを含む動力伝達装置の場合、動作特性としての油圧を測定したい多数のセンサ接続位置P1~P9が存在している。このため故障診断のために、油圧を測定したいすべてのセンサ接続位置P1~P9に診断用センサを設置することは部品点数の増加に繋がる。特に中小型の量産機種の場合には、多数の診断用センサを設置して、それぞれに通信機能を持たせることはコスト的に困難である。
【0126】
本実施形態では
図6に示されるように、コントローラ10は、診断用センサを接続すべき第1センサ接続位置(たとえばP1~P9)の位置情報を表示するように表示装置33を制御する。表示装置33には、たとえば第1センサ接続位置P1~P9を記したマニュアル、取扱説明書などの対応頁が表示されてもよく、また
図4に示されるような第1センサ接続位置P1~P8を示す画像が表示されてもよい。ユーザまたはサービス員は、表示装置33にて第1センサ接続位置P1~P9の位置情報を確認することにより、診断用センサを接続すべき位置を容易に知ることができる。これにより故障診断時における診断用センサの接続の労力が軽減される。このため動作特性を測定したいすべての第1センサ接続位置P1~P9に診断用センサを設置する必要はなくなり、故障診断時にのみ必要な位置に診断用センサが接続されればよい。よって、少ない部品点数で容易かつ正確な故障診断が可能となる。
【0127】
また本実施形態においては
図6に示されるように、コントローラ10は、診断用センサを第1センサ接続位置P1~P9に接続する作業手順の情報を表示するように表示装置33を制御する。これによりユーザまたはサービス員は、表示装置33で作業手順を確認することにより、容易かつ正確に故障診断を行うことができる。
【0128】
また本実施形態においては
図6に示されるように、コントローラ10は、第1センサ接続位置が第2センサ接続位置と異なるか否かを判定する。これにより第2センサ接続位置に接続された監視用センサを診断用センサとして第1センサ接続位置に繋ぎ替える必要があるか否かを知ることができる。
【0129】
また本実施形態においては
図6に示されるように、コントローラ10は、第1センサ接続位置が第2センサ接続位置と異なると判定した場合に、第2センサ接続位置から第1センサ接続位置への監視用センサの繋ぎ替えが可能か否かを判定する。これにより第1センサ接続位置へ接続する診断用センサとして監視用センサ以外の新たなセンサが追加で必要か否かを知ることができる。
【0130】
また本実施形態においては
図6に示されるように、コントローラ10は、第2センサ接続位置から第1センサ接続位置への監視用センサの繋ぎ替えが可能と判定した場合に、第2センサ接続位置から第1センサ接続位置への監視用センサの繋ぎ替えを指示するように表示装置33を制御する。これによりユーザまたはサービス員は第2センサ接続位置から第1センサ接続位置への監視用センサの繋ぎ替えが必要であることを知ることができる。また監視用センサを診断用センサとして用いることができるため、追加で診断用センサを準備する必要がなくなる。これにより少ないセンサの個数で故障診断を行うことが可能となる。
【0131】
たとえば
図3のセンサ接続位置P9(第2センサ接続位置)に監視用センサが接続されており、他のセンサ接続位置P1~P8には監視用センサが接続されていない場合を想定する。この場合、センサ接続位置P9に接続されていた監視用センサを、たとえばセンサ接続位置P1に繋ぎ替えて故障診断を行うことにより前進低速クラッチ機構41Aに故障があるか否かを診断することができる。このようにしてセンサ接続位置P9に接続されていた監視用センサを、センサ接続位置P1からセンサ接続位置P8まで順に繋ぎ替えて故障診断を行うことにより各クラッチ機構41A~41C、42A~42D、55に故障があるか否かを診断することができる。またセンサ接続位置P9に監視用センサを接続したままで故障診断を行うことにより、油圧ポンプ51、オイルフィルタ56などに故障があるか否かを診断することができる。
【0132】
また本実施形態においては
図9に示されるように、コントローラ10は、第2センサ接続位置から第1センサ接続位置への監視用センサの繋ぎ替えが完了したとの信号に基づいて監視用センサを第1センサ接続位置に接続された診断用センサと認識する。これにより監視用センサを診断用センサとして故障診断を行うことが可能となる。
【0133】
なお上記の実施形態において
図3および
図6の各々に示されるコントローラ10は、モータグレーダ100に搭載されていてもよく、モータグレーダ100から離れて配置されていてもよい。コントローラ10がモータグレーダ100から離れて配置されている場合、コントローラ10は、
図5に示される管理サーバ65(通信サーバ66、メンテナンスサーバ67)であってもよい。コントローラ10がモータグレーダ100から離れて配置されている場合、コントローラ10は、監視用センサ31、入力装置32、表示装置33などと無線により接続されていてもよい。コントローラ10は、たとえばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部7は、たとえばメモリであってもよい。
【0134】
また上記の実施形態において入力装置32、表示装置33は
図1に示されるように運転室11内に配置された場合について説明したが、運転室11の外に配置されていてもよい。また表示装置33は、モータグレーダ100から離れて配置されていてもよい。この場合、表示装置33は、ユーザ端末68、サービス端末69などであってもよく、タブレット端末などであってもよい。表示装置33がタブレット端末である場合、表示装置33は入力装置32を兼ねてもよい。
【0135】
またモータグレーダ100は遠隔操作されてもよい。この場合、モータグレーダ100の遠隔地に、表示装置33、操作装置などが配置される。モータグレーダ100は、遠隔地に配置された表示装置33、操作装置などから出力された操作指令を無線で受信することにより操作される。
【0136】
本明細書において異常とは、作業機械の動作特性が正常でないとオペレータが感知またはセンサが検知する状態のことである。この異常の情報に基づいて診断を行うことにより故障があるか否かの診断が行われる。また動作特性は、油圧以外の圧力であってもよく、また圧力以外の温度、速度(たとえば回転速度)などの特性であってもよい。
【0137】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0138】
1 候補情報取得部、2 異常状態判定部、3 診断箇所特定部、4 センサ接続位置特定部、5 センサ増設判定部、6 表示装置制御部、7 記憶部、8 動作特性分析部、10 コントローラ、11 運転室、11S 運転席、12 作業機、13 エンジンカバー、13a トランスミッション、13b トルクコンバータ、13c エンジン、14 フロントフレーム、15 リアフレーム、16 前輪、17 後輪、18 車体フレーム、21 ブレード、22 ドローバ、23 旋回サークル、25 リフトシリンダ、28 アーティキュレートシリンダ、31 監視用センサ、32 入力装置、33 表示装置、34 診断用センサ、41,41A~41C 方向切換クラッチ機構、42,42A~42D 速度切換クラッチ機構、45 接続力制御機構、45A~45G 電子制御調整弁、51 油圧ポンプ、52a,52b 管路、53 ロックアップバルブ、54 ロックアップソレノイドバルブ、55 ロックアップクラッチ機構、56 オイルフィルタ、61 衛星地球局、62 通信網、63 通信衛星、64 GPS衛星、65 管理サーバ、66 通信サーバ、67 メンテナンスサーバ、68 ユーザ端末、69 サービス端末、100 作業機械(モータグレーダ)、121 軸線、P1~P9 センサ接続位置。