(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】RFIDタグ及びRFIDタグの製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20241022BHJP
H01Q 13/10 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/077 224
H01Q13/10
G06K19/077 144
G06K19/077 280
(21)【出願番号】P 2021040664
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510204862
【氏名又は名称】大同産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】エリナ ビスタ
(72)【発明者】
【氏名】菅 武
(72)【発明者】
【氏名】中根 仁
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-056683(JP,A)
【文献】登録実用新案第3120051(JP,U)
【文献】特開2007-195153(JP,A)
【文献】特開2013-026860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
H01Q 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼付対象物に貼付されるRFIDタグであって、
識別情報が記録されるICチップと、前記ICチップに接続されるスロットアンテナと、を有するインレイと、
前記インレイの前記貼付対象物側に積層される磁性シートと、
を備え、
前記スロットアンテナは金属薄膜で形成され、
前記スロットアンテナには、前記金属薄膜の一部が細長く切り抜かれたスロットが設けられ、
前記磁性シートには、磁性特性を有する磁性層を区分するスリットが設けられ、
前記スリットは、前記磁性シートと前記インレイとが積層された状態で、前記インレイの前記スロットと重なる領域に配置される、
RFIDタグ。
【請求項2】
前記磁性シートの前記貼付対象物側にさらに積層される誘電層を備える、
請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記貼付対象物は金属である、
請求項1または2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記インレイの主面の中央に前記ICチップが配置され、
前記スロットアンテナの前記スロットは、前記ICチップを挟んで所定方向に平行に延在する一対の平行部を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記スロットは、前記一対の平行部と直交する方向に延在する垂直部を有する、
請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記スリットは、前記磁性シートと前記インレイとが積層された状態で、前記インレイの前記スロットの前記一対の平行部の全体が前記スリットの領域に含まれるように形成される、
請求項4または5に記載のRFIDタグ。
【請求項7】
使用周波数がUHF帯の周波数である請求項1~5のいずれか1項に記載のRFIDタグ。
【請求項8】
電波式の無線タグである請求項1~6のいずれか1項に記載のRFIDタグ。
【請求項9】
磁性特性を有する磁性層を区分するスリットが設けられた磁性シートを形成するステップと、
識別情報が記録されるICチップと、前記ICチップに接続されるスロットアンテナと、を有するインレイと、前記形成するステップにて形成された前記磁性シートを積層するステップと、
を含み、
前記スロットアンテナは金属薄膜で形成され、
前記スロットアンテナには、前記金属薄膜の一部が細長く切り抜かれたスロットが設けられ、
前記スリットは、前記磁性シートと前記インレイとが積層された状態で、前記インレイの前記スロットと重なる領域に配置される、
RFIDタグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RFIDタグ及びRFIDタグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物流管理や商品管理のため、貼付対象物に貼付されるRFID(Radio Frequency Identification)タグが普及している。RFIDタグは、ICチップとICチップに電気的に接続されるアンテナとを備える。RFIDタグは、無線タグ、ICタグ、RF-IDタグ、RFタグと呼ばれることもある。
【0003】
このようなRFIDタグが貼付される貼付対象物が金属製である場合、タグ内のアンテナによる通信ができず、識別情報の読み出しに支障をきたすことがある。これは、金属がRFIDタグの周辺にあると、データを送受信するリーダライタからRFIDタグに送られた電磁波が、金属部で渦電流として損失してしまうため、ICチップからデータを再びアンテナに打ち返すためのエネルギが効率的に得られないことが原因と推測される。
【0004】
これらの問題を解決する手段として、磁性シートの使用が有効であることが知られている。RFIDタグと、貼付対象物である金属との間に磁性シートを挟むことで、アンテナが受けた電磁波を磁性シート内部で循環させ、ICチップに供給するエネルギを効率的に伝送することができる(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】深瀬美紀子、武本聡、「UHF帯金属対応RFIDタグ用磁性シートの開発」、電気製鋼、第82巻1号、p.23~30、2011年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、RFIDタグの通信に用いられる周波数帯は、HF帯(13.56MHz、電磁誘導方式)と比較して長距離通信や複数の対象物の一括読み取りが可能となるUHF帯(電波方式)のニーズが高まっている。しかしながら、従来のRFIDタグと金属との間に磁性シートを挟む構成では、UHF帯で通信ができない虞がある。
【0007】
本開示は、通信性能を向上できるRFIDタグ及びRFIDタグの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態の一観点に係るRFIDタグは、貼付対象物に貼付されるRFIDタグであって、識別情報が記録されるICチップと、前記ICチップに接続されるスロットアンテナと、を有するインレイと、前記インレイの前記貼付対象物側に積層される磁性シートと、を備え、前記スロットアンテナは金属薄膜で形成され、前記スロットアンテナには、前記金属薄膜の一部が細長く切り抜かれたスロットが設けられ、前記磁性シートには、磁性特性を有する磁性層を区分するスリットが設けられ、前記スリットは、前記磁性シートと前記インレイとが積層された状態で、前記インレイの前記スロットと重なる領域に配置される。
【0009】
同様に、本発明の実施形態の一観点に係るRFIDタグの製造方法は、磁性特性を有する磁性層を区分するスリットが設けられる磁性シートを形成するステップと、識別情報が記録されるICチップと、前記ICチップに接続されるスロットアンテナと、を有するインレイと、前記形成するステップにて形成された前記磁性シートを積層するステップと、を含み、前記スロットアンテナは金属薄膜で形成され、前記スロットアンテナには、前記金属薄膜の一部が細長く切り抜かれたスロットが設けられ、前記スリットは、前記磁性シートと前記インレイとが積層された状態で、前記インレイの前記スロットと重なる領域に配置される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、通信性能を向上できるRFIDタグ及びRFIDタグの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】
図1に示すRFIDタグの上方から視た平面図
【
図4】スロットアンテナの他の形状のスロットの一例を示す平面図
【
図5】実施形態に係るRFIDタグの製造方法の一例を示すフローチャート
【
図6】実施例1で用いるスロットアンテナとスロットの各部の寸法を示す図
【
図7】実施例1~5及び比較例2のRFIDタグの周波数特性を示す図
【
図8】実施例6~9のRFIDタグの周波数特性を示す図
【
図9】実施例14で用いたスロットアンテナの形状を示す図
【
図10】実施例14のスロットアンテナのインピーダンス特性の計測結果を示す図
【
図11】実施例15で用いたスロットアンテナの形状を示す図
【
図12】実施例15のスロットアンテナのインピーダンス特性の計測結果を示す図
【
図13】実施例16で用いたスロットアンテナの形状を示す図
【
図14】実施例16のスロットアンテナのインピーダンス特性の計測結果を示す図
【
図15】実施例17で用いたスロットアンテナの形状を示す図
【
図16】実施例17のスロットアンテナのインピーダンス特性の計測結果を示す図
【
図17】実施例18で用いたスロットアンテナの形状を示す図
【
図18】実施例18のスロットアンテナのインピーダンス特性の計測結果を示す図
【
図19】実施例19で用いたスロットアンテナの形状を示す図
【
図20】実施例19のスロットアンテナのインピーダンス特性の計測結果を示す図
【
図22】実施形態に係るRFIDタグの各金属種に対する特性例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向はインレイ101や磁性シート102の長手方向であり、スロット21の平行部22及びスリット30の延在方向である。y方向は、インレイ101や磁性シート102の短手方向であり、スロット21の垂直部23の延在方向である。z方向は、インレイ101や磁性シート102などRFIDタグ100の各構成要素の積層方向である。また、以下では説明の便宜上、z正方向側を上側、z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0014】
図1は、実施形態に係るRFIDタグ100の積層断面図である。
図2は、
図1に示すRFIDタグ100の分解斜視図である。
図3は、
図1に示すRFIDタグ100の上方から視た平面図である。RFIDタグ100は、貼付対象物200に貼付される略平面状の装置である。
図1~
図3に示すように、RFIDタグは、インレイ101と、磁性シート102と、誘電層103とを備える。貼付対象物200は、例えば金属である。金属としては、鉄、アルミニウム、銅などの金属の他、鉄合金、アルミ合金、銅合金等の金属の合金を含む。なお、貼付対象物200には、金属以外の他の材料、例えばプラスチックス、紙、セラミックスなども含まれる。
【0015】
実施形態に係るRFIDタグ100の主な使用用途としては、ドラム缶、H鋼等の比較的大きな金属製品への貼り付けが対象であり、これらの金属製品個々の在庫管理等を含む流通経路上の追跡(トレサビリティ)に使用できる。その他に、金属製品以外にも、本件のタグを貼り付けて使用してもよい。
【0016】
さらに、本実施形態のRFIDタグは、可撓性を有しており、被着体の表面が湾曲していても貼り付け可能である。湾曲状に曲げられて状態においても、良好な通信性能を発揮でき、ドラム缶やスプレー缶などの曲面を有する物品の識別にも本実施形態のRFIDタグを使用することができ、用途の多様化を図ることができる。
【0017】
インレイ101は、RFIDタグ100の機能に関する要素を含む部分であり、
図2、
図3に示すように、識別情報が記録されるICチップ10と、ICチップ10に接続されるスロットアンテナ20と、を有する。スロットアンテナ20は金属薄膜で形成される。スロットアンテナ20には、金属薄膜の一部が細長く切り抜かれたスロット21が設けられる。インレイ101は、例えばPETフィルム上に、アルミシートをドライラミネートで貼り付けたスロットアンテナ20が形成され、規定の位置にICチップ10が実装されている。
【0018】
インレイ101の主面の中央にICチップ10が配置され、スロットアンテナ20のスロット21は、ICチップ10を挟んで所定方向(
図2、
図3の例ではx方向)に平行に延在する一対の平行部22と、これらの一対の平行部22と直交する方向(y方向)に延在する一対の垂直部23とを有する。一対の垂直部23は、ICチップ10を挟んでx方向に略等間隔の位置にそれぞれ配置される。
【0019】
なお、ICチップ10のインピーダンスの周波数特性は以下のとおりである。
・866MHz:15-j265(Ω)
・915MHz:14-j252(Ω)
・953MHz:13-j242(Ω)
【0020】
スロットアンテナ20のインピーダンスは、915~920MHzで上記のICチップ10のインピーダンスと整合するように設計されている。このようなインピーダンスの整合により、電流の損失が少なくなり、損失を少なくすることで通信可能距離が増大する。
【0021】
磁性シート102は、磁性材料を含有するシート材であり、インレイ101の貼付対象物200側に積層される。磁性シート102は、例えばステンレス系合金などの磁性粉末をゴム材や樹脂等に均一かつ配向して分散するように練り込んで形成される。
図2、
図3に示すように、磁性シート102には、磁性特性を有する磁性層を区分するスリット30が設けられる。スリット30は、磁性シート102とインレイ101とが積層された状態で、インレイ101のスロット21と重なる領域に配置される。
【0022】
スリット30は、例えば
図3に示すように、磁性シート102のy方向の中央の位置に、x方向に沿って延在するよう形成される。また、スロットアンテナ20のスロット21と、磁性シート102のスリット30との配置は、例えば
図3に示すように、スリット30の領域にスロット21のうち少なくとも一対の平行部22の全体が含まれるように配置される。
【0023】
磁性シート102には、UHF帯の電波に対して優れた磁気シールド特性を有するものを用いるのが好ましい。磁性シート102は、磁性フィラー、バインダー樹脂等の成分が含まれる磁性塗料を、支持体上に塗布して乾燥させることで得られる。磁性シート102をUHF帯の電波に対して優れた磁気シールド特性を有するものにするためには、乾燥後の磁性シート102の膜厚が、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下となるように、磁性塗料が塗布される。また、乾燥後の磁性シート102の膜厚が、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以下となるように、磁性塗料が塗布される。
【0024】
同様に、磁性シート102をUHF帯の電波に対して優れた磁気シールド特性を有するものにするためには、磁性シートの860~960MHzの周波数帯域における複素比透磁率の損失係数tanδ(μ´/μ´´)は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.28以下である。また、磁性シートの860~960MHzの周波数帯域における複素比透磁率の損失係数tanδ(μ´/μ´´)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上である。
【0025】
なお、本実施の形態におけるタグの厚さ(剥離紙を除く)は、200μm~1000μmであり、好ましくは300~400μmである。また、磁性シートとインレイを貼り合せた状態の厚さ(ラベル紙及び剥離紙は除く)は、150~250μmであり、好ましくは190~210μmであり、より好ましくは200μm程度である。ラベル紙の厚さは、粘着層を含め、50μm~300μmである。剥離紙の厚さは、50μm~300μmである。
【0026】
同様に、磁性シート102をUHF帯の電波に対して優れた磁気シールド特性を有するものにするためには、磁性シートの860~960MHzの周波数帯域における複素比透磁率の実数部μ´は、好ましくは5.0以上であり、より好ましくは5.2以上である。また、磁性シートの860~960MHzの周波数帯域における複素比透磁率の実数部μ´は、好ましくは7.0以下であり、より好ましくは6.0以下である。
【0027】
また、上記の複素比透磁率の条件を満たすためには、磁性塗料に含まれる磁性フィラーの材質は、Fe-Cr合金であるのが好ましい。また、磁性フィラーとバインダーの固形分の質量比(磁性フィラーの質量/バインダーの固形分の質量)が70/30以上であるのが好ましく、75/25以上であるのがより好ましく、80/20以上であるのがさらに好ましい。さらに、磁性フィラーとバインダーの固形分の質量比(磁性フィラーの質量/バインダーの固形分の質量)は、95/5以下であるのが好ましく、90/10以下であるのがより好ましく、85/15以下であるのがさらに好ましい。
【0028】
また、磁性塗料に含まれるバインダー樹脂は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、またはポリエステル樹脂から成る群より選ばれる1種類以上の樹脂であり、エポキシ樹脂が好ましい。
【0029】
誘電層103は、磁性シート102の貼付対象物200側にさらに積層され、磁性シート102と貼付対象物200との間に配置される。
図2では、誘電層103は磁性シート102の下方に一体的に図示されている。誘電層103は、例えば厚紙や合成樹脂等の繊維からなる織布や不織布、セラミックガラス等の無機材料のシートなどの絶縁体で形成されるのが好ましい。本実施形態では、誘電層103は、例えば発泡PETで形成される。誘電層103の材料は、比誘電率が1.2~3.0程度であるのものが好ましく、これによりRFIDタグ100の通信距離を増やすことができる。
【0030】
また、
図1に示すように、誘電層103は、インレイ101及び磁性シート102を、貼付対象物200からその厚み分だけ離間させた状態で配置させるスペーサとしても機能する。誘電層103は、外力に応じてインレイ101及び磁性シート102と共に任意に変形可能な材料で形成され、これにより貼付対象物200の貼付面が湾曲している場合でもRFIDタグ100を容易に貼付でき、汎用性を向上できるよう構成されるのが好ましい。
【0031】
また、RFIDタグ100では、例えば
図2に示すように、インレイ101と磁性シート102との間に粘着層104が配置される(
図1では図示を省略している)。粘着層104は、積層時には、磁性シート102のスリット30とその下方の誘電層103とによって形成される隙間に進入して、この隙間を埋めることができる。
【0032】
また、本実施形態のRFIDタグ100では、インレイ101の上方にさらにラベル紙(フィルム系タック紙)105が配置される。ラベル紙105は、z正方向側の表面に印刷可能である。ラベル紙の素材は適宜選択可能である。
【0033】
また、
図1に示すように、ラベル紙105のz負方向側の裏面には粘着剤106が塗布されている。ラベル紙105は、インレイ101、磁性シート102、及び誘電層103より大きく形成されており、
図2に示すように、インレイ101、磁性シート102、及び誘電層103の外形の全周をラベル紙105の外縁部分105Aが包囲するよう形成されている。これにより、
図1に示すように、RFIDタグ100が貼付対象物200に貼付されるときには、インレイ101、磁性シート102、及び誘電層103の外側がラベル紙105によって完全に覆われ、ラベル紙105の外縁部分105Aが貼付対象物200と接触する。つまり、ラベル紙105の外縁部分105Aの粘着剤106によって、RFIDタグ100の全体が貼付対象物200に貼付される。
【0034】
また、粘着剤106は、例えば長期間使用する使用環境においては接着剤を用いることができる。しかし、接着剤は硬化すると剥離が困難になる場合がある。これに対し、粘着剤は、通常、作業者の手作業等でRFIDタグを対象物品から剥離可能であり、さらに、粘着剤の種類によっては剥離後にRFIDタグを再度貼り付け可能でありRFIDタグとして再利用可能となる場合がある。
【0035】
なお、
図1に示す、ラベル紙105の粘着剤106によってRFIDタグ100を貼付する構成の場合には、誘電層103と貼付対象物200との間には粘着剤を塗布せずに、誘電層103を貼付対象物200に接着(粘着)しなくてよい。
【0036】
また、
図2に示すように、使用前のRFIDタグ100には、誘電層103より下方に剥離紙107が配置される。剥離紙107は、例えばラベル紙105と同一以上の大きさで形成され、ラベル紙105と剥離紙107とが、外縁部分の粘着剤106によって密着される。これにより、ラベル紙105の外縁部分105Aの粘着剤106が貼付対象物200への貼付に用いられる前に外部に露出することを防止でき、粘着力を保持できる。RFIDタグ100の使用時には、剥離紙107がRFIDタグ100から剥がされて、これにより露出したラベル紙105の粘着剤106によってRFIDタグ100が貼付対象物200に貼付される。
【0037】
また、剥離紙107は、
図2に例示するものよりも大きく形成され、一枚の剥離紙107の上に複数個のRFIDタグ100が配置される構成でもよい。これにより、製造効率や搬送効率を向上できる。
【0038】
なお、ラベル紙105の下面の粘着剤106に関して、RFIDタグ100の面積の50%以上の面積が剥離紙107に貼り合わせられることが好ましい。RFIDタグ100の製造工程では、一方向へ延びる剥離紙107上に複数のRFIDタグ100が配置されて、RIDFタグ100を含む剥離紙107がロール状とされる。印刷工程では、ロール状の剥離紙107が引き出されて個々のRFIDタグ100に対して印刷処理が施されて、印刷処理の終了後に再度ロール状とされて保管される。このような製造工程及び印刷工程において、ロール状とされる剥離紙107からのRFIDタグ100の離脱を防ぐためである。
【0039】
なお、RFIDタグ100の積層構造は
図1、
図2に示すものに限られない。
図21は、変形例に係るRFIDタグ100Aの積層断面図である。
図21に示すように、ラベル紙105が、インレイ101、磁性シート102、及び誘電層103と同じ大きさで形成される構成でもよい。この場合、ラベル紙105の外縁部分が貼付対象物200には接触できないので、貼付対象物200と対向する誘電層103の下面に粘着剤106が塗布されて、誘電層103が貼付対象物200に接着されることによって、RFIDタグ100Aの全体が貼付対象物200に貼付される。
【0040】
なお、
図2、
図3に示したスロットアンテナ20のスロット21の形状は一例であり、
図2、
図3に示した形状には限定されない。
図4は、スロットアンテナ20の他の形状のスロット21Aの一例を示す平面図である。
【0041】
スロットアンテナ20のスロットの形状は、例えば
図4に示すスロット21Aのように、一対の平行部22Aのみを有し、垂直部が無い形状でもよい。
図4の例では、平行部22Aは、
図3の垂直部23の延在方向に向けて、
図3の平行部22よりも開口面積が増えており、y方向の幅が大きくなっている。また、
図4の例では、スリット30の領域にスロット21Aの一対の平行部22Aが含まれるように、スリット30の幅が広く形成されている。
【0042】
図5は、実施形態に係るRFIDタグ100の製造方法の一例を示すフローチャートである。ステップS1では、磁性特性を有する磁性層を区分するスリット30が設けられた磁性シート102(スリット入り磁性シート)が形成される。
【0043】
このようなスリット入り磁性シート102は、例えば、ロール・トゥ・ロール方式により、ポリエステル系合成フィルム(東洋紡株式会社製、「クリスパーK1211 #38μ」)を速度3m/minで搬送しながら、該フィルム上に、コーターを用いて磁気シールド塗料によるストライプパターンを形成し、40℃から80℃まで温度を上げながら30mの硬化炉を通過させることで、形成できる。
【0044】
ステップS2では、ステップS1にて形成されたスリット入り磁性シート102と、インレイ101とが積層される。
【0045】
なお、ステップS1において磁性シート102に設けられるスリット30は、ステップS2にて磁性シート102とインレイ101とが積層された状態で、インレイ101のスロット21と重なる領域に配置されるよう形成される。
【0046】
ステップS3では、磁性シート102のインレイ101と反対側の面に誘電層103が積層される。なお、ステップS2とS3とを逆に行い、磁性シート102と誘電層103とを積層した後に、インレイ101と磁性シート102とを積層する手順でもよい。
【0047】
ステップS4では、インレイ101の磁性シート102とは反対側の面にフィルム系タック紙(ラベル紙)105が積層される。
【0048】
このように、本実施形態に係るRFIDタグ100は、識別情報が記録されるICチップ10と、ICチップ10に接続されるスロットアンテナ20と、を有するインレイ101と、インレイ101の貼付対象物200側に積層される磁性シート102と、を備える。スロットアンテナ20は金属薄膜で形成され、スロットアンテナ20には、金属薄膜の一部が細長く切り抜かれたスロット21が設けられる。磁性シート102には、磁性特性を有する磁性層を区分するスリット30が設けられる。このスリット30は、磁性シート102とインレイ101とが積層された状態で、インレイ101のスロット21と重なる領域に配置される。
【0049】
このように磁性シート102にスリット30を設けることにより、貼付対象物200の種類によらず、RFIDタグ100のUHF帯における通信可能距離を増やすことが可能となり、通信性能を向上できる(後述する
図22参照)。また、HF帯と比較して長距離通信や複数の対象物の一括読み取りが可能とUHF帯の通信可能距離を増やすことができるので、汎用性の高いRFIDタグ100を実現できる。
【0050】
また、貼付対象物200が金属製であると、従来のRFIDタグではタグ内のアンテナによる通信ができず、識別情報の読み出しに支障をきたすことがあるので、本実施形態に係るRFIDタグ100通信性能を向上できるという効果は、貼付対象物200が金属製であるときに特に顕著となる。
【0051】
また、磁性シートを用いない既存の金属用のRFIDタグにおいては、被着体としての金属の影響による通信性能低下を抑えるために、インレイと被着体との間に比較的大きな間隔が必要となり、その間隔を確保するためにRFIDタグの全体の厚みが3.5mm以上であり薄型化が困難であった。
【0052】
これに対して、本実施形態のRFIDタグの厚みは、1mm以下であり、磁性シートを使用しない従来のRFIDタグよりも薄くすることができる。例えば、ラベル紙及び剥離紙を含んだRFIDタグの厚さとして約350μmの厚さとすることができ、金属対応のRFIDタグとして著しく薄型化ができる。
【0053】
また、著しく薄型化が可能となることで、通常用いられている(汎用の)ラベルプリンターを用いて、ラベルの印刷とICチップへの情報の書き込みとを同時に行うことが可能で、製造効率を一層高めることができる。
【0054】
また、本実施形態に係るRFIDタグ100では、磁性シート102の貼付対象物200側にさらに積層される誘電層103を備えることにより、UHF帯における通信可能距離をさらに増やすことができるので、通信性能をさらに向上できる。
【0055】
実施形態に係るRFIDタグ100は、電磁誘導式の無線タグ、電波式の無線タグの何れにも適用可能である。特に、RFIDタグ100を、電波式の無線タグに適用した場合、リーダとの所定の無線通信距離を確保できる。所定の無線通信距離は、例えば0mから20mまでの範囲である。
【0056】
実施形態に係るRFIDタグ100は、UHF帯の電波だけでなく、VHF帯、SHF帯などの電波にも適用可能である。RFIDタグ100の使用周波数がUHF帯の周波数、例えば860~960MHz、915~925MHzなどである場合、UHF帯はVHF帯に比べて、周波数が高いため、波長が短くなり、アンテナの小型化に有利である。従って、RFIDタグ100をUHF帯の電波に好適な形状にすることで、ICチップ10の小型化を図ることができると共に、メモリ容量も小さく安価な無線タグを得ることができる。
【実施例】
【0057】
次に、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0058】
<スリット幅の影響>
下記のように実施例1~5、比較例1~2を設定し、磁性シート102のスリット30の幅の変化に応じた通信性能への影響を検証した。
【0059】
[実施例1]
インレイ101、厚さ100μmの磁性シート102、厚さ38μmの発泡PET製の誘電層103を積層して
図1に示すRFIDタグ100を作成した。インレイ101は、厚さ38μmのPETフィルム上に、10μmのアルミシートをドライラミネートで貼り付けたスロットアンテナ20を形成し、規定の位置にICチップ10を実装した。ただし、ラベル紙105は外した。スロットアンテナ20のスロット21のアンテナパターンは、
図2に示す形状とした。スロットアンテナ20とスロット21の各部の寸法を
図6に示す。
【0060】
磁性シート102は、次の手順で作成したものを用いた。まず磁性塗料は、磁性フィラーとしてFe-Cr合金(山陽特殊製鋼株式会社製、「FKTE231」)55.2質量部、バインダー樹脂としてポリエステル系ポリウレタン(荒川化学工業株式会社製、「ユリアーノ2456」、重量平均分子量30000)9.9質量部、有機溶剤としてトルエン22.6質量部、分散剤としてリン酸ポリエステル系分散剤(ビックケミージャパン株式会社製、「BYK-111」)0.4質量部、及び、消泡剤として非シリコーン系消泡剤(ビックケミージャパン株式会社製、「BYK-1752」)0.2質量部を混合して得た。次に、ロール・トゥ・ロール方式により、ポリエステル系合成フィルム(東洋紡株式会社製、「クリスパーK1211 #38μ」)を速度3m/minで搬送しながら、該フィルム上に、コーターを用いて磁気シールド塗料(上記で得られた磁性塗料)によるストライプパターンを形成し、40℃から80℃まで温度を上げながら30mの硬化炉を通過させた。これにより、スリット30入りの磁性シート102を作成した。
【0061】
磁性シート102のスリット30は、
図3に示したように磁性シート102のy方向の中央を幅方向の中心位置として、y方向の幅が2mmとなるように形成した。
【0062】
このように作成したRFIDタグ100を、SUS板の貼付対象物200に貼付した状態で、RFIDタグ性能検査装置(Tagformance Pro、Voyantic社製)を用いて、RFIDタグ100の周波数特性を計測した。計測時の無線通信用電波の測定周波数帯は700~1200MHzとし、EIRP(Equivalent Isotropically Radiated Power:等価等方輻射電力)は3.28Wとした。
【0063】
[実施例2]
磁性シート102のスリット30の幅を5mmとしたこと以外は、実施例1と同様にRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0064】
[実施例3]
磁性シート102のスリット30の幅を10mmとしたこと以外は、実施例1と同様にRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0065】
[実施例4]
磁性シート102のスリット30の幅を18mmとしたこと以外は、実施例1と同様にRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0066】
[実施例5]
磁性シート102のスリット30の幅を25mmとしたこと以外は、実施例1と同様にRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0067】
[比較例1]
磁性シート102にスリット30を設けないこと以外は、実施例1と同様にRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0068】
[比較例2]
磁性シート102を除外したこと以外は、実施例1と同様にRFIDタグ100を作成した。すなわち、インレイ101、厚さ38μmの誘電層103を積層してRFIDタグを作成した。また、作成したRFIDタグについて、実施例1と同様の手法で周波数特性を計測した。
【0069】
図7は、実施例1~5及び比較例2のRFIDタグの周波数特性を示す図である。
図7中の(A)は実施例1、(B)は実施例2、(C)は実施例3、(D)は実施例4、(E)は実施例5、(F)は比較例2の周波数特性を示す。各図の横軸は無線通信用電波の周波数を表し、縦軸はRFIDタグ100からリーダまでの通信可能距離を表す。
【0070】
図7で特性のグラフが図示されていない周波数帯では、RFIDタグ100とリーダとの間で無線通信を行うことができなかったことを表す。
図7(F)に示すように、磁性シート102が無い比較例2では、約870MHz以下の周波数帯では無線通信を行うことができなかった。なお、
図7には図示されていないが、磁性シート102にスリット30を設けない比較例1では、すべての周波数帯において無線通信を行うことができなかった。
【0071】
図7に示すように、UHF帯に含まれる所定の周波数920MHzのときの通信可能距離は、実施例1では約2.0m、実施例2では約3m、実施例3では約4.5m、実施例4では約4.5m、実施例5では約2.5m、比較例2では約1.5mであった。
【0072】
図7(A)~(D)に示すように、磁性シート102にスリット30を設ける実施例1~4の構成では、スリット30の幅が増えるにつれて通信可能距離も増大し、スリット幅が10~18mmで通信可能距離が最大の約4.5mとなる。また、周波数特性のピーク位置は、UHF帯の周波数である860~960MHzの範囲に含まれる。なお、
図7(E)に示す実施例5では、スリット幅をさらに増やすと、周波数特性のピーク位置が高周波側に移動し、UHF帯(例えば920MHzあたり)の通信可能距離が若干低下した。
【0073】
また、
図7(F)に示すように、磁性シート102が無い比較例2では、周波数特性のピーク位置が、
図7(E)に示す実施例5の場合よりもさらに高周波側に大きく移動していた。比較例2では、UHF帯で使用するためにはアンテナサイズを大きくする必要がある。
【0074】
図7に示した試験結果より、RFIDタグ100に磁性シート102を設け、さらに磁性シートにスリット30を設けることにより、通信可能距離を増やすことができ、特にUHF帯の通信可能距離を増やすことができることが示された。
【0075】
さらに、
図6に示した各部寸法のスロットアンテナ20に対しては、スリット30の幅を10~18mmとすると、通信可能距離を最大にできることが示された。つまり、スリット30の幅には最適な範囲があることが示された。この条件をスロットアンテナ20のスロット21との関係で表現すると、スリット30の範囲内にスロット21の平行部22が完全に包含される場合から、スリット30にスロット21の平行部22及び垂直部23の全体が完全に包含され、スリット30の幅が垂直部23の長さをほぼ一致する場合まで、とも表現できる。
【0076】
<磁性シートの磁性特性の影響>
下記のように実施例6~9を設定し、磁性シート102の磁性特性、具体的には磁性粉の割合の変化に応じた通信性能への影響を検証した。
【0077】
[実施例6]
磁性シート102の幅は、上記の実施例1~5のうち最適な範囲に含まれる18mmとした。磁性シート102の磁性層102Aは、磁性粉の割合が100%、誘電粉の割合が0%のものとした。その他の条件は上記の実施例1と同様としてRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0078】
[実施例7]
磁性シート102の磁性層102Aを、磁性粉の割合が70%、誘電粉の割合が30%のものとしたこと以外は、実施例6と同様にRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0079】
[実施例8]
磁性シート102の磁性層102Aを、磁性粉の割合が30%、誘電粉の割合が70%のものとしたこと以外は、実施例6と同様にRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0080】
[実施例9]
磁性シート102の磁性層102Aを、磁性粉の割合が0%、誘電粉の割合が100%のものとしたこと以外は、実施例6と同様にRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0081】
図8は、実施例6~9のRFIDタグの周波数特性を示す図である。
図8中の(A)は実施例6、(B)は実施例7、(C)は実施例8、(D)は実施例9の周波数特性を示す。各図の概要は、
図7と同様である。
【0082】
図8に示すように、UHF帯に含まれる所定の周波数920MHzのときの通信可能距離は、実施例6では約4.5m、実施例7では約3.5m、実施例8では約2.5m、実施例9では約1.8mであった。また、周波数特性のピークの位置は、実施例6では約900~960MHzであり、実施例7では約940~1025MHzであり、実施例8では約1010~1060MHzであり、実施例9では約1010MHz付近であった。
【0083】
図8に示した試験結果より、磁性シート102の磁性層102Aの組成において、磁性粉の割合が多いほど、共振周波数を低周波数側に移動させることができると考えられる。共振周波数を低周波数側に移動させることができるということは、アンテナの小型化が図れるということである。磁性シートの組成において磁性粉の割合を増やすことにより、より小さく、薄いRFIDタグ100を実現できると考えられる。また、
図8に示した試験結果より、磁性粉の割合を増やすほど、周波数特性のピークとUHF帯とが重なる範囲が増えるので、UHF帯における通信可能距離を改善でき、RFIDタグ100の通信性能を向上できることが示された。
【0084】
<誘電層の影響>
下記のように実施例10~13を設定し、誘電層103の有無に応じた通信性能への影響を検証した。
【0085】
[実施例10]
上記の実施例5と同様に、磁性シート102のスリット30の幅を25mmとし、磁性シート102の厚さを100μmとして、RFIDタグ100を作成した。作成したRFIDタグ100をスチール製ロッカーに貼付して、既製品のハンディリーダ(商品名:AsReaderGUN、アスタリスク社製、出力1W)を用い、通信可能距離を計測した。
【0086】
[実施例11]
誘電層103を除外したこと以外は、実施例10と同様にRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0087】
[実施例12]
磁性シート102の厚さを200μmとしたこと以外は、実施例10と同様にRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0088】
[実施例13]
誘電層103を除外したこと以外は、実施例12と同様にRFIDタグ100を作成して、周波数特性を計測した。
【0089】
表1に、実施例10~13のRFIDタグの通信距離の計測結果を示す。
【0090】
【0091】
表1に示すように、磁性シート102の厚さが100μmで共通する実施例10、11では、誘電層103を備える実施例10のほうが通信可能距離を増大できる。また、磁性シート102の厚さが200μmで共通する実施例12、13でも、誘電層103を備える実施例12のほうが通信可能距離を増大できる。以上より、磁性シート102の厚さの変化によらず、RFIDタグに誘電層103を設けるほうが通信性能を向上できることが示された。
【0092】
<スロットアンテナの形状の影響>
下記のように実施例14~19を設定し、スロットアンテナ20の形状の変化に応じた通信性能への影響を検証した。具体的には、スロットアンテナ20の形状をシミュレータで変化させて、インピーダンスの変化を確認した。
【0093】
[実施例14]
図9は、実施例14で用いたスロットアンテナ20-1の形状を示す図である。シミュレータ上で
図9に示す形状のスロットアンテナ20-1のモデルを作成した。なお、
図9に示すスロットアンテナ20-1の形状や各部寸法は、
図6に示した実施例1などで形成したスロットアンテナ20のものと同一である。このように作成したスロットアンテナ20-1のモデルを用いて、シミュレータ上でインピーダンスの計測を行った。
【0094】
図10は、実施例14のスロットアンテナ20-1のインピーダンス特性の計測結果を示す図である。
図10の縦軸は、インピーダンスの実数と虚数の値を示す。
図10の横軸は周波数[MHz]を示す。
図10に示す一点鎖線のグラフ(プロットが丸のグラフ)は各周波数に対応するインピーダンスの実数をプロットしたものである。
図10に示す実線のグラフ(プロットが四角のグラフ)は各周波数に対応するインピーダンスの虚数をプロットしたものである。
【0095】
[実施例15]
図11は、実施例15で用いたスロットアンテナ20-2の形状を示す図である。実施例15のスロットアンテナ20-2では、スロット21の平行部22の長さが実施例14のスロットアンテナ20-1のものより短くなるよう、スロット21が形成されている。このように作成したスロットアンテナ20-2のモデルを用いて、シミュレータ上でインピーダンスの計測を行った。
図12は、実施例15のスロットアンテナ20-2のインピーダンス特性の計測結果を示す図である。
図12の概要は
図10と同様である。
【0096】
[実施例16]
図13は、実施例16で用いたスロットアンテナ20-3の形状を示す図である。実施例16のスロットアンテナ20-3では、スロット21の平行部22の長さが実施例15のスロットアンテナ20-2のものよりさらに短くなるよう、スロット21が形成されている。このように作成したスロットアンテナ20-3のモデルを用いて、シミュレータ上でインピーダンスの計測を行った。
図14は、実施例16のスロットアンテナ20-3のインピーダンス特性の計測結果を示す図である。
図14の概要は
図10と同様である。
【0097】
[実施例17]
図15は、実施例17で用いたスロットアンテナ20-4の形状を示す図である。実施例17のスロットアンテナ20-4では、スロット21の垂直部23を無くし、平行部22のみとなるよう、スロット21が形成されている。スロット21の平行部22の長さは、実施例14のスロットアンテナ20-1のものと同一である。このように作成したスロットアンテナ20-4のモデルを用いて、シミュレータ上でインピーダンスの計測を行った。
図16は、実施例17のスロットアンテナ20-4のインピーダンス特性の計測結果を示す図である。
図16の概要は
図10と同様である。
【0098】
[実施例18]
図17は、実施例18で用いたスロットアンテナ20-5の形状を示す図である。実施例18のスロットアンテナ20-5では、スロット21の平行部22の幅が実施例17のスロットアンテナ20-4のものより大きくなるようスロット21が形成されている。このように作成したスロットアンテナ20-5のモデルを用いて、シミュレータ上でインピーダンスの計測を行った。
図18は、実施例18のスロットアンテナ20-5のインピーダンス特性の計測結果を示す図である。
図18の概要は
図10と同様である。
【0099】
[実施例19]
図19は、実施例19で用いたスロットアンテナ20-6の形状を示す図である。実施例19のスロットアンテナ20-6は、短手方向(y方向)の寸法が実施例14のスロットアンテナ20-1のものより短くなるよう形成されている。スロット21の形状は実施例14のスロットアンテナ20-1のものと同一である。このように作成したスロットアンテナ20-6モデルを用いて、シミュレータ上でインピーダンスの計測を行った。
図20は、実施例19のスロットアンテナ20-6のインピーダンス特性の計測結果を示す図である。
図20の概要は
図10と同様である。
【0100】
各実施例14~19の比較検証は、上記実施例1などで用いた実物のスロットアンテナ20の形状や各部寸法と同一である実施例14のスロットアンテナ20-1のインピーダンス特性を基準として行った。例えば、実施例14と同様のインピーダンス特性の実施例では、当該実施例の形状で実際にアンテナを製造したものでも、実施例1などの実物のスロットアンテナ20と同様の性能が得られると仮定した。
【0101】
実施例14~16を比較すると、
図10、
図12、
図14に示すように、スリット30の平行部22の長さ、つまりスリット30の長手方向(x方向)の長さを変更すると、スロットアンテナのインピーダンス特性が大きく変化していることがわかる。一方、実施例14と、実施例17、18とを比較すると、
図10、
図16、
図18に示すように、スリットの垂直部23を無くしたり、平行部22の幅を増やすなど、スリット30の短手方向(y方向)の長さを変更しても、シミュレーション上ではスロットアンテナのインピーダンス特性にはほとんど変化が見られなかった。同様に、実施例14と実施例19を比較すると、
図10、
図20に示すように、スリットアンテナの短手方向(y方向)の寸法を変更しても、スロットアンテナのインピーダンス特性にはほとんど変化が見られなかった。
【0102】
以上より、シミュレーション上で、スリット30の長手方向(x方向)の長さがスロットアンテナのアンテナ特性に重要であることが示された。
【0103】
図22は、上述した本実施の形態における、実施例1のRFIDタグについて、貼付対象物200としての各金属種への影響について評価した結果を示す図である。ただし、本評価に当たっては、ラベル紙105は使用せず、タブの両端を金属板に粘着テープで固定して、評価した。
【0104】
図22の評価結果から明らかなように、本実施の形態のRFIDタグは各金属種に対し良好な通信性能を発揮できる。
【0105】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0106】
100 RFIDタグ
101 インレイ
10 ICチップ
20 スロットアンテナ
21 スロット
22 一対の平行部
23 一対の垂直部
102 磁性シート
30 スリット
103 誘電層
200 貼付対象物