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特許7575310芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子及びその製造方法、発泡成形体、並びに自動車用部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子及びその製造方法、発泡成形体、並びに自動車用部材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20241022BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08J9/16 CFD
B29C44/00 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021044098
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143542
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼▲原▼ 佑輔
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0041086(US,A1)
【文献】特開2001-329101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0325472(US,A1)
【文献】特開2019-065272(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031769(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60、67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が1.5mm~4.5mmであり、表面の樹脂層の厚みが5μm~40μmである、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
前記粒子の中心部における平均気泡径(C)及び表層部における平均気泡径(D)がいずれも50μm~300μmであり、中心部における平均気泡径に対する表層部における平均気泡径の比(D/C)が0.75~0.98である、請求項1に記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記粒子の中心部における結晶化度(A)及び表層部における結晶化度(B)がいずれも10%以下であり、中心部における結晶化度に対する表層部における結晶化度の比(B/A)が0.90~1.5である、請求項1又は2に記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記粒子の中心部における結晶化度(A)及び表層部における結晶化度(B)がいずれも1~10%である、請求項1~3のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡成形体。
【請求項6】
密度が0.05g/cm~0.7g/cmである、請求項に記載の発泡成形体。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の発泡成形体を含有する自動車用部材。
【請求項8】
芳香族ポリエステル系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練する工程と、溶融混練された芳香族ポリエステル系樹脂を前記押出機の前端に取り付けたダイスから芳香族ポリエステル系樹脂押出物を冷却水中で押出発泡させながら切断して粒子状切断物を製造する工程と、前記粒子状切断物を冷却水で冷却する工程とを有し、前記ダイスの孔径が0.5mm~1.7mmであり、前記冷却水の温度が55℃~90℃である、請求項1~4のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型内発泡成形用の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子及びその製造方法、発泡成形体、並びに自動車用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリエステル系樹脂製の発泡粒子を発泡させて芳香族ポリエステル系樹脂発泡成形体を製造する方法として型内発泡成形が従来から汎用されている。型内発泡成形とは、樹脂発泡粒子を金型内に充填する工程と、熱水や水蒸気などの熱媒体によって金型内に充填された樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡させて、二次発泡粒子同士を熱融着一体化させて所望形状を有する型内発泡成形体を製造する工程とを有する成形方法である。
【0003】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、押出機内で溶融混練された後、金型から押出発泡され、次いで切断されて製造される。この際、ホットカット法、アンダーウォーターカット法(水中カット法)等が使用されている。近年のアンダーウォーターカット法に使用される造粒機は、溶融樹脂を押出すためのダイス孔が数多く備えられたダイスを有しており、該複数箇所から一度に溶融樹脂を水中に押出してカッターによる一度の切断で多数の発泡粒子を形成することが可能となっており、発泡粒子の生産効率がさらに向上されている。例えば、特許文献1では、アンダーウォーターカット法、つまり押出された溶融混練樹脂を水中で切断及び冷却する方法で芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第2564799号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、アンダーウォーターカット法では、発泡粒子の製造時には金型(ダイス)の前面(樹脂吐出面)を水に接触させておりダイス孔の出口を水中にて開口させた状態にして樹脂粒子を製造するため、冷却されて粘性が高くなった樹脂がダイス孔の流路の一部を塞いだり、完全に閉塞させたりする(目詰まりさせる)場合があり、閉塞されていないダイス孔からの溶融樹脂の吐出量を過度に増大させて粗大な発泡粒子を形成させるおそれを有する。そのため、ダイスの孔径が小さいと目詰まりにより不良品が頻発するため、孔径を小さくできなかった。そして、特許文献1では孔径は1.8mm~2.0mm及び冷却水温は20℃~90℃であり、得られた発泡粒子の粒子径は5mm以上と大きい。しかし、発泡粒子の粒子径が小さいと、成型用金型における発泡粒子の充填率を高くしやすいため、小さい粒子径の発泡粒子が望ましい。粒子径が大きいと、発泡力を高くできず、また、発泡粒子を成型用金型に充填した際に充填率を高くできず、その結果、得られる発泡成形体の機械的物性、例えば圧縮強度、圧縮弾性率等が高くなり難かった。
【0006】
本発明は、機械的物性に優れた芳香族ポリエステル系樹脂発泡成形体の提供を一つの目的とする。本発明は、当該発泡成形体を製造するための粒子径の小さな芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の提供を一つの目的とする。本発明は、当該発泡粒子の製造方法の提供を一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アンダーウォーターカット法において、冷却水の温度及びダイス孔径を所定範囲に調整することによって、ダイス孔径を小さくしても目詰まりが起こりにくくなって孔径の小さなダイスを使用しても閉塞しにくいこと、粒子径の小さい発泡粒子が得られること、この発泡粒子から得られる発泡成形体は、粒子径の大きな発泡粒子から得られる発泡成形体よりも機械的強度に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、代表的には以下の態様を包含する。
項1.
粒子径が1.5mm~4.5mmであり、表面の樹脂層の厚みが5μm~40μmである、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
項2.
前記粒子の中心部における平均気泡径(C)及び表層部における平均気泡径(D)がいずれも50μm~300μmであり、中心部における平均気泡径に対する表層部における平均気泡径の比(D/C)が0.75~0.98である、項1に記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
項3.
前記粒子の中心部における結晶化度(A)及び表層部における結晶化度(B)がいずれも10%以下であり、中心部における結晶化度に対する表層部における結晶化度の比(B/A)が0.90~1.5である、項1又は2に記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
項4.
前記粒子の中心部における結晶化度(A)及び表層部における結晶化度(B)がいずれも1~10%である、項1~3のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
項5.
項1~4のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡成形体。
項6.
密度が0.05g/cm~0.7g/cmである、項6に記載の発泡成形体。
項7.
項5又は6に記載の発泡成形体を含有する自動車用部材。
項8.
芳香族ポリエステル系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練する工程と、溶融混練された芳香族ポリエステル系樹脂を前記押出機の前端に取り付けたダイスから芳香族ポリエステル系樹脂押出物を冷却水中で押出発泡させながら切断して粒子状切断物を製造する工程と、前記粒子状切断物を冷却水で冷却する工程とを有し、前記ダイスの孔径が0.5mm~1.7mmであり、前記冷却水の温度が55℃~90℃である、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械的物性に優れた発泡成形体を製造できる芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子とその製造方法を提供できる。本発明によれば、機械的物性、例えば圧縮強度、圧縮弾性率等に優れた発泡成形体とこれを含有する自動車用部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に用いる水中カット式造粒機の概略構成図である。
図2】ダイバータバルブの様子を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0012】
(芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子)
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、芳香族ポリエステル系樹脂を主成分として含んでいる。ここで、「主成分」とは、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を構成している樹脂中、80~100質量%、好ましくは90~100質量%の芳香族ポリエステル系樹脂を含有していることを意味する。
【0013】
(芳香族ポリエステル系樹脂)
芳香族ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とを含むポリエステルであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。芳香族ポリエステル系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0014】
芳香族ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分及びジオール成分以外に、例えば、トリメリット酸などのトリカルボン酸、ピロメリット酸などのテトラカルボン酸などの三価以上の多価カルボン酸やその無水物、グリセリンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどの三価以上の多価アルコールなどを構成成分として含有していてもよい。
【0015】
芳香族ポリエステル系樹脂は、石油由来品だけでなく、植物由来品、使用済のペットボトルなどから回収、再生したリサイクル品を用いることもできる。
【0016】
芳香族ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、押出発泡性に優れると共に、得られる発泡粒子の二次発泡性に優れることから、0.7~1.1が好ましく、0.75~1.05がより好ましい。
【0017】
芳香族ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、JIS K7367-5(2000)に準拠して測定された値をいう。具体的には、芳香族ポリエステル系樹脂を133Paの真空度で40℃にて15時間に亘って乾燥させる。
【0018】
芳香族ポリエステル系樹脂から0.1000gを試料として取り出して20mLのメスフラスコに入れ、メスフラスコに混合溶媒(フェノール50重量%、1,1,2,2-テトラクロロエタン50重量%)約15mLを添加する。メスフラスコ内の試料をホットプレート上に載置して約130℃に加熱して溶融させる。試料を溶融させた後に室温まで冷却し、体積が20mLとなるように調製し試料溶液(試料濃度:0.500g/100mL)を作製する。
【0019】
試料溶液8mLをホールピペットで粘度計に供給し、25℃の水が入れられた水槽を用いて試料の温度を安定させた後、試料の流下時間を測定する。試料溶液の濃度変更は、順次、粘度計内に混合溶媒8mLを添加して混合し希釈して希釈試料溶液を作製する。そして、希釈試料溶液の流下時間を測定した。試料溶液とは別に上記混合溶媒の流下時間を測
定する。
【0020】
下記の計算式に基づいて芳香族ポリエステル系樹脂の固有粘度を算出する。混合溶媒の流下時間(t)と試料溶液の流下時間(t)から以下を算出した。
相対粘度(η) =t/t
比粘度 (ηsp)=(t-t)/t=η-1
還元粘度=ηsp/C
試料溶液の濃度C(g/100mL)を種々、変更した希釈試料溶液の測定結果から、縦軸を還元粘度とし横軸を試料溶液の濃度Cとしてグラフを作成し、得られた直線関係をC=0に外挿した縦軸切片から固有粘度[η]を求めた。
【0021】
【数1】
【0022】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を構成している芳香族ポリエステル系樹脂は、架橋剤によって架橋された改質芳香族ポリエステル系樹脂であってもよい。架橋剤としては、公知のものが用いられ、例えば、無水ピロメリット酸などの酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物などが挙げられる。なお、架橋剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0023】
芳香族ポリエステル系樹脂を架橋剤によって架橋して改質する場合には、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造時に、押出機に芳香族ポリエステル系樹脂と架橋剤とを供給し、押出機中において、芳香族ポリエステル系樹脂を架橋剤によって架橋すればよい。押出機に供給する架橋剤の量は、押出発泡を良好に実施する点から、芳香族ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.01質量部~5質量部が好ましく、0.1質量部~1質量部がより好ましい。
【0024】
本発明の発泡粒子を構成する芳香族ポリエステル系樹脂の質量平均分子量は、押出発泡性に優れると共に、得られる発泡粒子の二次発泡性に優れることから、4.5万~10万が好ましく、6万~9万がより好ましい。
発泡粒子を構成する芳香族ポリエステル系樹脂が改質芳香族ポリエステル系樹脂である場合、芳香族ポリエステル系樹脂の質量平均分子量は、改質芳香族ポリエステル系樹脂の質量平均分子量を意味する。
【0025】
本発明の発泡粒子を構成する芳香族ポリエステル系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定したポリスチレン(PS)換算質量平均分子量を意味する。
質量平均分子量は、具体的には、次のようにして測定する。試料5mgにヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)0.5mLと、クロロホルム0.5mLとをこの順で添加し溶解させ(浸漬時間:6.0±1.0hr(完全溶解))、試料溶液を得る。試料が溶液中に完全に溶解したことを確認した後、この試料溶液にクロロホルムを添加して体積が10mLとなるように希釈して振とう混合する。試料溶液を(株)島津ジーエルシー製非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過してろ液を得る。次の測定条件にてクロマトグラフを用いてろ液を測定する。質量平均分子量(Mw)は、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から求める。
使用装置=東ソー(株)製 「HLC-8320GPC EcoSEC」 ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)

(GPC測定条件)
カラム
サンプル側
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn HXL-H(6.0mm×4.0cm)×1本
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列
リファレンス側
抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列

カラム温度=40℃
移動相=クロロホルム
移動相流量
サンプル側ポンプ=1.0mL/min
リファレンス側ポンプ=0.5mL/min
検出器:UV検出器
波長:254nm
注入量:15μL
測定時間:10分-32min
ランタイム:20min
サンプリングピッチ:500msec

検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM-105」および「STANDARD SH-75」で質量平均分子量が5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いた。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)およびB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした後、Aを(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)秤量後クロロホルム30mLに溶解し、Bも(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)秤量後クロロホルム30mLに溶解する。標準ポリスチレン検量線は、作製した各AおよびB溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得る。その検量線を用いて質量平均分子量を算出する。
【0026】
(芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法)
本発明の発泡粒子は、例えば、芳香族ポリエステル系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練する工程と、溶融混練された芳香族ポリエステル系樹脂を前記押出機の前端に取り付けたダイスから芳香族ポリエステル系樹脂押出物を冷却水中で押出発泡させながら切断して粒子状切断物を製造する工程と、前記粒子状切断物を冷却水で冷却する工程とを有し、前記ダイスの孔径が0.5mm~1.7mmであり、前記冷却水の温度が55℃~90℃である、製造方法により製造することができる。このような製造方法もまた、本発明の1つである。なお、以下に本製造方法について説明をするが、本発明の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
【0027】
先ず、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造に用いられる製造装置の一例について説明する。図1に示した製造装置は、いわゆる水中カット式造粒装置Tであり、発泡粒子の製造の分野において一般的なものである。
前記造粒装置Tは、造粒用ダイス1が先端に取り付けられた押出機2と、図2に示した造粒用ダイス1のダイス孔15から吐出される溶融芳香族ポリエステル系樹脂20(発泡剤を含有した溶融状態の芳香族ポリエステル系樹脂)を切断するカッター3が収容されるとともに、造粒用ダイス1の前面となる樹脂吐出面10fに冷却水流を接触させるためのチャンバー4とを備えている。
前記チャンバー4には、循環する冷却水を流すための管路5が接続され、この管路5の一端(チャンバー4より上流側)が、送水ポンプ6を介して水槽7に接続されている。
また、管路5の他端(チャンバー4より下流側)には、冷却水から発泡性樹脂粒子を分離し、脱水・乾燥する脱水処理部8が設けられている。
この脱水処理部8で分離され、脱水及び乾燥された発泡性樹脂粒子は、容器9に送られるようになっており、冷却水は前記水槽7に返送されるようになっている。
そして、符号21はホッパー、22は発泡剤供給口、23は高圧ポンプである。
なお、造粒装置Tおよび造粒用ダイス1において、樹脂が吐出される側を「先方」、「先端」とし、その反対側を「後方」、「後端」として以下の説明では統一して用いる。
【0028】
図2に示すように、造粒用ダイス1は、ダイス本体10(ダイプレートとも呼称される)と、押出機2の先端側(図中右側)に固定されたダイホルダ11とからなり、前記ダイス本体10が、ダイホルダ11の先端側に複数のボルトによって固定されており、該ダイス本体10が固定されている前記ダイホルダ11の先端側の一部が可動式となってダイバータバルブ13として機能するようになっている。
【0029】
前記ダイホルダ11は、押出機2のシリンダに連通して設けられ、後端側から先端側に向けて後端側流路11a、先端側流路11bが順に形成されており、前記ダイバータバルブ13は後端側から先端側に貫通する第一流路11cと後端側からダイホルダ11の側面部へと抜ける第二の流路11dとを有し、後端側流路11aと先端側流路11bと前記第一流路11cで中継する。
【0030】
前記ダイス本体10は、後端面中央部において、後方側に突出してなる円錐状凸部10
aが形成され、ダイス本体10とダイホルダ11とが接続した状態で、ダイホルダ11の先端側流路11b内に、所定隙間をもって円錐状凸部10aが挿入されている。
すなわち、ダイホルダ11の後端側流路11aを通過した溶融芳香族ポリエステル系樹脂20は先端側流路11bにおいて円錐状凸部10aの周面に沿って流れ、複数の樹脂流路14を通ってダイス本体10の先端面に開口する複数のダイス孔15に連通する構成となっている。
【0031】
前記ダイス本体10は、その先端面で冷却水流に接触する樹脂吐出面10fと、押出機2から押出された溶融芳香族ポリエステル系樹脂20を樹脂吐出面10fに向けて移送するための複数の樹脂流路14と、複数の樹脂流路14の先端に設けられると共に樹脂吐出面10fに開口する複数のダイス孔15と、樹脂吐出面10fの中心位置に設けられた断熱材16と、樹脂吐出面10fよりも押出機2側の位置で樹脂吐出面10fや樹脂流路14を温めるためのカートリッジヒーター17、ダイス本体10を温めるための短ヒーター18とを備えて概略構成されている。
【0032】
ダイス本体10の樹脂吐出面10fは、中心部に円形断面の断熱材16を配置し、その断熱材16の径方向外側に複数のダイス孔15がその開口を周方向に沿って並べた状態で設けられている。
そして、断熱材16が配置され、複数のダイス孔15が開口されている樹脂吐出面10fの中央部分は、チャンバー4内部で冷却水と接触するようになっている。
【0033】
前記樹脂流路14は、円形断面をなし、樹脂吐出面10fに対して直交する方向に延在されるとともに、ダイス本体10の中心軸線を中心とした円周(樹脂吐出面10f上に描かれた円周)に沿って一定の間隔をもって配置されている。本実施の形態では、樹脂流路14は、8箇所設けられており、前記円周の周方向に隣り合う樹脂流路14どうしの中心角が45°になっている。
そして、前述したように各樹脂流路14は、ダイホルダ11の先端側流路11bに連通しており、前記ダイバータバルブ13の第一流路11cを通じて溶融ポリスチレン系樹脂20をダイス孔15まで流通させ得るように設けられている。
【0034】
前記ダイス孔15は、樹脂吐出面10f上に描かれた円周に沿って所定間隔をもって複数配置されており、前記断熱材16は、複数のダイス孔15を配置した円周の内側の樹脂吐出面10fに設けられ、チャンバー4内の冷却水にダイス本体10の熱が逃げないようにしてダイス本体10の温度低下を抑制すべく設けられている。
【0035】
カートリッジヒーター17および短ヒーター18は、それぞれ棒状ヒーターをなし、カートリッジヒーター17が短ヒーター18よりも造粒用ダイス1の先端後端方向で樹脂吐出面10f側に位置している。
カートリッジヒーター17は、樹脂流路14の前記円周の周方向両側に配置されるとともに、長手方向を円周の径方向に向けてその円周を横切った状態で配置され、樹脂吐出面10fの近傍において、該樹脂吐出面10f、ダイス孔15、及び樹脂流路14を加熱する機能を有している。
本実施の形態のカートリッジヒーター17は、それぞれが円周方向に所定の中心角(ここでは、45°の角度)をもって8本設けられている。
つまり、個々のダイス孔15は、2本のカートリッジヒーター17によって前記円周の周方向から挟み込まれるようにして配置されている。
【0036】
短ヒーター18は、各カートリッジヒーター17に対して所定間隔をもって後方側に配置され、カートリッジヒーター17の本数と同数(8本)が配置され、樹脂流路14の後端側を加熱する機能を有している。短ヒーター18の長さ寸法は、カートリッジヒーター17より短いものとなっている。
【0037】
また、造粒用ダイス1には、ダイス本体10の温度や溶融樹脂温度を測定するための測温体19A,19Bが設けられている。
第1の測温体19Aは、ダイス本体10の中央部の温度(ダイス本体の温度:ダイス保持温度)を測定する。
第2の測温体19Bは、ダイホルダ11内を流れる溶融芳香族ポリエステル系樹脂20の温度及び樹脂圧力を測定するためのものである。
【0038】
図1に示す造粒装置Tに用いる押出機2は、従来から汎用されている押出機であれば、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、複数の押出機を連結させたタンデム型の押出機を用いることができる。
また、カッター3を収容したチャンバー4も、ホットカット法において用いられている従来周知のものを用いることができる。
【0039】
本発明の製造方法においては、前記ダイス孔の孔径は0.5mm~1.7mmとし、好ましくは0.5mm~1.6mmである。
また、本発明の製造方法においては、冷却水の温度が55℃~90℃であり、好ましくは60℃~90℃である。
孔径と水温の範囲を前記の範囲とすることによって、孔が樹脂によって閉塞され難くなり、粒子径が1.5mm~4.5mmで表面の樹脂層の厚みが5μm~40μmである発泡粒子を製造できる。
【0040】
前記発泡剤としては、従来から汎用されているものが用いられる。前記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどの化学発泡剤、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素系発泡剤、ジメチルエーテルなどのエーテル系発泡剤、塩化メチル、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン系発泡剤、二酸化炭素、窒素などの無機系発泡剤などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素がより好ましく、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が特に好ましい。なお、発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0041】
押出機に供給される発泡剤量は、発泡粒子の発泡倍率を適切な範囲とし易い点から、芳香族ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.1質量部~5質量部が好ましく、0.2質量部~4質量部がより好ましく、0.5質量部~4質量部が特に好ましい。
【0042】
押出機には気泡調整剤が供給されることが好ましい。このような気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末、タルクなどが好ましい。
【0043】
押出機に供給される気泡調整剤の量は、発泡粒子の気泡径を適切な範囲とできる点から、芳香族ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.01質量部~5質量部が好ましく、0.05質量部~3質量部がより好ましく、0.1質量部~2質量部が特に好ましい。
【0044】
本発明の製造方法で得られる芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、粒子径が十分に小さく、そのため、成型用金型に充填する際の充填率を高くできる。また、本発明の製造方法で、発泡粒子の樹脂層の厚みを発泡に適した範囲、例えば5μm~40μmとできるため、発泡力が高い。このため、この発泡粒子から得られる型内発泡成形体は、機械的物性、例えば圧縮強度又は圧縮弾性率に優れたものとなる。
【0045】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度は、発泡力の向上及び二次発泡粒子の融着力の向上の点から、0.05g/cm~0.7g/cmが好ましく、0.07g/cm~0.6g/cmがより好ましく、0.08g/cm~0.5g/cmが特に好ましい。
【0046】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。詳細には実施例に記載された方法で決定される。
【0047】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、結晶化度が高いと発泡成形体の耐熱性が向上するものの、二次発泡粒子の融着力が大きくならず、その結果、発泡成形体の機械的強度が向上し辛い。このため、粒子中心部における結晶化度(A)及び粒子表層部における結晶化度(B)がいずれも10%以下であることが好ましく、1~10%であることがより好ましく、2~8%であることが特に好ましい。
【0048】
発泡粒子の中心部及び表層部は次のようにして決定される。
発泡粒子を剃刀刃を用いて中心で略二等分にし、露出した断面における粒子中心から発泡粒子半径方向の20%までの範囲における部分を中心部とし、露出した断面における粒子表面から発泡粒子半径方向の20%の範囲における部分を表層部とする。
【0049】
発泡粒子の結晶化度は、JIS K7122:1987、JIS K7122:2012に記載されている方法で決定され、詳細には実施例に記載された方法で決定される。
【0050】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の中心部における結晶化度(A)に対する表層部における結晶化度(B)の比(B/A)は、発泡力の向上又は二次発泡粒子の融着力の向上の点から、0.90~1.5であることが好ましく、0.95~1.4であることがより好ましく、0.95~1.3であることが特に好ましい。
【0051】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、発泡力の向上又は二次発泡粒子の融着力の向上の点から、その表面の樹脂層の厚みが5μm~40μmであることが好ましく、10μm~35μmであることがより好ましい。ここで、発泡粒子表面の樹脂層の厚みは、発泡粒子の中心で略二分割した断面の表層部を走査電子顕微鏡を用いて、500倍に拡大して撮影した画像から決定され、詳細には実施例に記載された方法で決定される。
【0052】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の粒子中心部における平均気泡径(C)及び粒子表層部における平均気泡径(D)がいずれも50μm~300μmであることが、発泡力の向上又は二次発泡粒子の融着力の向上の点から好ましい。
【0053】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、中心部の気泡径より表層部の気泡径がやや小さいと、発泡が良好となり、二次発泡粒子の融着力も高くなるため、好ましい。このため、発泡粒子の中心部における平均気泡径(C)に対する表層部における平均気泡径(D)の比(D/C)は、0.75~0.98であることが好ましく、0.77~0.96であることがより好ましく、0.79~0.95であることが特に好ましい。
【0054】
本発明の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を金型のキャビティ内に充填して加熱し、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を発泡させることによって、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を発泡させて得られた二次発泡粒子同士をそれらの発泡圧によって互いに熱融着一体化させることで、機械的物性に優れた所望形状を有する型内発泡成形体を得ることができる。金型内に充填した芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の加熱媒体としては、特に限定されず、水蒸気の他に、熱風、温水などが挙げられる。
【0055】
本発明の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡成形体も本発明の一つである。この発泡成形体は、本発明の発泡粒子を型内発泡成形して得られる。
【0056】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡成形体の密度は、軽量性と機械的強度の点から、0.05g/cm~0.7g/cmが好ましく、0.07g/cm~0.6g/cmがより好ましく、0.08g/cm~0.5g/cmが特に好ましい。
【0057】
更に、型内発泡成形直前に、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に更に不活性ガスを含浸させて、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡力を向上させてもよい。このように芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡力を向上させることにより、型内発泡成形時に芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子同士の熱融着性が向上し、得られる型内発泡成形体は更に優れた機械的強度を有する。なお、前記不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられ、二酸化炭素が好ましい。
【0058】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる方法としては、例えば、常圧以上の圧力を有する不活性ガス雰囲気下に芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を置くことによって芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子中に不活性ガスを含浸させる方法が挙げられる。このような場合、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を金型内に充填する前に不活性ガスを含浸させてもよいが、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を金型内に充填した後に金型ごと不活性ガス雰囲気下に置き、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させてもよい。
【0059】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時の温度は5℃~40℃が好ましく、10℃~30℃がより好ましい。
【0060】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時の圧力は0.2~2.0MPaが好ましく、0.25MPa~1.5MPaがより好ましい。不活性ガスが二酸化炭素である場合には、0.2MPa~1.5MPaが好ましく、0.25MPa~1.2MPaがより好ましい。
【0061】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時間は、10分~72時間が好ましく、15分~64時間がより好ましく、20分~48時間が特に好ましい。
【0062】
不活性ガスを含浸させた芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、例えば55℃~90℃に加熱されることによって発泡(予備発泡)し、予備発泡粒子が製造される。
【0063】
発泡成形体を芯材とし、発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させて複合構造部材とすることができる。発泡成形体と、発泡成形体の表面に積層一体化された表皮材とを含む複合構造部材も本発明の一つとできる。複合構造部材に芯材として用いられる発泡成形体の厚みは、強度、重量、耐衝撃性の点から、1mm~40mmが好ましい。
【0064】
表皮材としては特に限定されず、例えば、繊維強化合成樹脂シート、金属シート、合成樹脂シートなどが挙げられる。表皮材は、優れた機械的強度及び軽量性を有していることから、繊維強化合成樹脂が好ましい。
【0065】
繊維強化合成樹脂シートは、繊維をマトリックス樹脂によって互いに結着してなるシートである。繊維強化合成樹脂シートを構成している繊維としては特に限定されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維などが挙げられる。繊維は、優れた機械的強度及び耐熱性を有していることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。
【0066】
繊維強化合成樹脂を構成しているマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂がある。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABSや、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体などが挙げられる。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0067】
繊維強化合成樹脂シートの厚みは、強度、重量及び耐衝撃性の点から0.2mm~2.0mmが好ましい。
【0068】
複合構造部材の製造方法は、特に限定されず、例えば、芯材となる発泡成形体の表面に表皮材を接着剤を用いて積層一体化する方法、繊維強化合成樹脂シートの成形で一般
的に適用される方法が挙げられる。繊維強化合成樹脂シートの成形で用いられる方法としては、例えば、オートクレーブ法、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、PCM(Prepreg Compression Molding)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法などが挙げられる。
【0069】
このような複合構造部材は、自動車用部材、航空機用部材、鉄道車両用部材、建築資材などの用途に有用である。自動車用部材としては、例えば、ドアパネル、ドアインナー、バンパー、フェンダー、フェンダーサポート、エンジンカバー、ルーフパネル、トランクリッド、フロアパネル、センタートンネル、クラッシュボックスなどが挙げられる。例えば、従来、鋼板で作製されていたドアパネルに複合構造部材を用いると、鋼板製ドアパネルと略同一の剛性を有するドアパネルが大きく軽量化できるため、自動車の軽量化の高い効果が得られる。
【実施例
【0070】
以下、実施例等によって本発明の一実施態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例等における各種物性等の特定方法を下記する。
【0071】
(嵩密度)
嵩密度は、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定した。即ち、JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定した。
発泡粒子の嵩密度(g/cm)=〔試料を入れたメスシリンダーの質量(g)-メスシリンダーの質量(g)〕/〔メスシリンダーの容量(cm)〕
【0072】
(粒子径)
樹脂粒子の平均粒子径は以下の方法で測定した。始めに、JISに規定された異なる目開きを有する複数種類の篩(目開き6.70mm、目開き5.60mm、目開き4.75mm、目開き4.00mm、目開き3.35mm、目開き2.80mm、目開き2.36mm、目開き2.00mm、目開き1.70mm、目開き1.40mm、目開き1.18mm、目開き1.00mm、目開き0.850mm、目開き、0.710mm、目開き0.600mm、目開き0.500mm)を用意し、発泡粒子50gを、目開きが大きな篩から小さな篩となるように篩でふるう。すると、発泡粒子は、各粒子の粒径に応じて、目開きが所定大きさである篩上で通過することができなくなり、各篩上に残った状態となる。そして、各篩上に残った発泡粒子の平均粒子径を、その篩の目開きの大きさをもとにして次表に示した通りとし、例えば、目開きが1.70mmの篩上に残った発泡粒子の粒子径を1.85mmとする。
【表1】
【0073】
なお、各篩上に残った発泡粒子の平均粒子径は、この篩の目開きと該篩の次に大きな目開きを有する篩の目開きとの相加平均値とした。目開きが1.70mmの篩の場合には、この篩の次に大きな目開きを有するJISで規定されている篩の目開きが2.00mmであるので、この篩の目開き2.00mmとの相加平均値を採用した。
次に、篩上に残った発泡粒子の重量Wを各篩毎に測定し、篩上に残った発泡粒子の、総発泡粒子に対する重量比率R(重量%)を篩ごとに算出し、各篩毎の発泡粒子の粒子径Dに発泡粒子の重量比率Rを乗じた値を算出し、その値の総和を発泡粒子の平均粒子径(mm)とした。
平均粒子径=Σ(各篩上の発泡粒子の粒子径D×発泡粒子の重量比率R/100)
【0074】
(結晶化度)
結晶化度はJIS K7122:1987、JIS K7122:2012に記載されている方法で測定した。但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては以下のように行った。試料は発泡粒子表層と中心から採取した。表層部の試料は、発泡粒子の中心で剃刀刃を用いて略二等分にし、発泡粒子表面から発泡粒子半径方向の20%の範囲における部分で採取した。同様に、中心部の試料は二等分にした発泡粒子中心から発泡粒子半径方向の20%の範囲における部分で採取した。
5.5±0.5mgの試料をアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう充てん後、アルミニウム製の蓋をした。次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を実施した。窒素ガス流量20mL/分のもと以下のようなステップで試料を加熱しDSC曲線を得た。
(ステップ1)
30℃で2分間保持。
(ステップ2)
速度10℃/分で30℃から290℃まで昇温。その時の基準物質はアルミナを用いた。融解ピークの面積から求められる融解熱量(J/g)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(J/g)の差を求めた。この差をポリエチレンテレフタレート完全結晶の理論融解熱量140.1J/gで除して求められる割合を結晶化度とした。融解熱量及び結晶化熱量は装置付属の解析ソフトを用いて算出した。具体的には、融解熱量は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側のベースラインへ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分から算出した。結晶化熱量は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側へ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出した。つまり、結晶化度は次式より求めた。
結晶化度(%)=(融解熱量(J/g)-結晶化熱量(J/g))/140.1(J/g)×100
【0075】
(結晶化度比)
結晶化度比は次式により求めた。
結晶化度比=発泡粒子表層部の結晶化度(%)/発泡粒子中心部の結晶化度(%)
【0076】
(平均気泡径)
発泡粒子の中心部で略二分割した断面の表層部と中心部を、(株)日立ハイテクノロジーズ製「SU1510」走査電子顕微鏡を用いて、100倍に拡大して撮影した。発泡粒子表面から発泡粒子半径方向の20%の範囲における部分を表層部、同様に発泡粒子中心から発泡粒子半径方向の20%の範囲における部分を中心部とした。
撮影された顕微鏡画像は、横向きのA4用紙1枚に2画像並んだ状態になるように配置し、A4用紙に印刷した。
印刷された発泡粒子断面の画像1つにつき、タテ方向およびヨコ方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描いた。即ち、顕微鏡画像2つにつき、描いた任意の直線はタテ方向に6本、ヨコ方向に6本とした。なお、できる限り直線が気泡と接点でのみ接することのないように描いた。そしてこの直線が通過する気泡の数を数えた。気泡が直線と接点のみで接してしまう場合には、この気泡も数に加えた。タテ方向、ヨコ方向の各方向の6本の任意の直線について数えた気泡数を算術平均し、各方向の気泡数とした。気泡数を数えた画像の倍率とこの気泡数から気泡の平均弦長tを次式により算出した。
平均弦長 t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)

画像倍率は画像上のスケールバーを(株)ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」にて1/100mmまで計測し、次式により求めた。
画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)

そして次式によりタテ方向及びヨコ方向における気泡径を算出した。
タテ方向又はヨコ方向の気泡径D(mm)=t/0.616

さらにタテ方向の気泡径D及びヨコ方向の気泡径Dの積の2乗根を気泡径とした。
気泡径(μm)=1000×(Dタテ×Dヨコ)1/2

以上の作業を表層部、中心部でそれぞれN数10で行い、平均値を平均気泡径とした。
【0077】
(平均気泡径比)
平均気泡径比は次式により求めた。
平均気泡径比=発泡粒子表層部の平均気泡径(μm)/発泡粒子中心部の平均気泡径(μm)
【0078】
(表面樹脂の厚み)
発泡粒子の中心で略二分割した断面の表層部を、(株)日立ハイテクノロジーズ製「SU1510」走査電子顕微鏡を用いて、500倍に拡大して撮影した。顕微鏡画像の発泡粒子表面の任意の位置で、接線に直行する直線を発泡粒半径方向に5本描き、各直線ごとに表面から最初に接する気泡までの距離を測定した。即ち、一つの断面画像につき5つの当該距離を測定した。以上の作業をそれぞれN数10で行い、平均値を表面樹脂の厚み(μm)とした。
【0079】
(成形性評価)
成形性評価は以下の基準で行った。
○:発泡粒子同士が熱融着して強固に接着し、一体化していた
×:発泡粒子同士が接着しておらず、容易に発泡粒子が脱落する状態であった
【0080】
(発泡成形体の密度)
発泡成形体(成形後、55℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した直方体状の試験片(例;75mm×300mm×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm)を求めた。
【0081】
(圧縮試験:5%圧縮強度及び圧縮弾性率)
5%圧縮強度及び圧縮弾性率は、JIS K6767:1999に準拠し測定した。すなわち5%圧縮強度は、(株)島津製作所製「オートグラフ AG-X plus 100kN」万能試験機、及び(株)島津製作所製「TRAPEZIUM X」万能試験機データ処理ソフトを用いて測定した。試験片サイズは50mm×50mm×厚み25mmとし、試験片の数は3個とした。試験片は、JIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調節した後、同じ標準雰囲気下での測定に用いた。圧縮速度を2.5mm/分とした。得られたグラフより、傾きが最大となる荷重領域を設定し、前記万能試験機データ処理ソフトにて圧縮弾性率を求めた。この弾性率の直線とストロークの交点を伸びの原点とし、5%圧縮率における圧縮強度を自動算出した。
【0082】
(成形品の機械的物性の評価)
成形品の機械的物性評価は、下記の基準によって評価した。
○:5%圧縮強度が0.80MPa以上且つ圧縮弾性率が30MPa以上。
×:5%圧縮強度が0.80MPa未満又は圧縮弾性率が30MPa未満。
【0083】
(実施例1)
(発泡粒子製造工程)
図2に示したダイバータバルブを有し、ダイス孔(直径0.6mm、ランド長2.0mm)を38個備えたダイスを有し、前記ダイバータバルブの機外排出側の樹脂流路を通じて押出機からダイに供給される溶融樹脂を機外に排出させるようにダイバータバルブをセットした水中カット式造粒機を用いた。また、この造粒機に溶融樹脂を供給する押出機として、孔径65mmで且つL/D比が34の単軸押出機を使用した。
【0084】
まず、前記ダイスのダイス孔部分の温度が300℃となるようにヒーターによる温度調整を実施するとともに押出機の温度調整を実施した。具体的には、上流側の押出機を下流側の押出機に比べて高温にセットして発泡剤の溶解性を高めた状態にし、最終的に前記ダイスに290℃の樹脂温度で溶融樹脂が供給されるように押出機の温度設定を行った。
この押出機に、植物由来ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.80、密度:1400kg/m、融点:247.2℃、ガラス転移温度78.7℃、質量平均分子量7.4万、植物度:30%)100重量部、ポリエチレンテレフタレートにタルクを含有させてなるマスターバッチ(ポリエチレンテレフタレート含有量:60重量%、タルク含有量:40重量%、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度:0.82)1.8重量部及び無水ピロメリット酸0.22重量部を含むポリエチレンテレフタレート組成物を、30kg/hの割合で供給し、溶融混練した。
【0085】
続いて、この押出機の途中から、発泡剤としてイソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%からなるブタンをポリエチレンテレフタレート100質量部に対して3.0質量部となる量で溶融状態のポリエチレンテレフタレート組成物に圧入して、ポリエチレンテレフタレート中に均一に分散させた。
そして、溶融状態のポリエチレンテレフタレート組成物を前記ダイスに供給し、前記ダイバータバルブの樹脂流路を通じて機外に排出させた。
押出機の温度、発泡剤の圧力等が安定した段階で、ダイスの前方に装着させたチャンバー内でカッターを運転させ、前記ダイバータバルブによる溶融ポリエチレンテレフタレート組成物の流路を切り替えるとともに前記チャンバーに0.3MPaの水圧を有する90℃の冷却水を12m/hで循環させて造粒を開始した。
【0086】
冷却水中に発泡しながら押し出された溶融ポリエチレンテレフタレート押出物を回転刃で切断して発泡粒子を製造した。この粒子状切断物は冷却水中で発泡し、ポリエチレンテレフタレート発泡粒子が製造された。発泡粒子を含む冷却水は、チャンバーから脱水処理部に運ばれ、そこで発泡粒子から冷却水を除去した。
【0087】
(成形工程)
得られた発泡粒子を23℃、大気圧下にて30日間に亘って放置した。その後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.05MPaの水蒸気にて180秒間、0.10MPaの水蒸気にて30秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0088】
(実施例2)
直径0.8mm、ランド長2.0mmのダイス孔を22個備えたダイスを使用し、冷却水温度を80℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0089】
(実施例3)
直径1.2mm、ランド長2.0mmのダイス孔を10個備えたダイスを使用し、冷却水温度を70℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0090】
(実施例4)
直径1.5mm、ランド長2.0mmのダイス孔を7個備えたダイスを使用し、冷却水温度を70℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0091】
(比較例1)
直径2.0mm、ランド長2.0mmのダイス孔を5個備えたダイスを使用し、冷却水温度を80℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を実施例1と同様にして成形したが、発泡粒子同士が接着しておらず、容易に発泡粒子が脱落する状態となってしまい、発泡成形体が得られなかった。
【0092】
(比較例2)
直径1.5mm、ランド長2.0mmのダイス孔を7個備えたダイスを使用し、冷却水温度を50℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0093】
(比較例3)
直径1.5mm、ランド長2.0mmのダイス孔を7個備えたダイスを使用し、冷却水温度を95℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0094】
(比較例4)
直径1.5mm、ランド長2.0mmのダイス孔を7個備えたダイスを使用し、冷却水温度を25℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート発泡粒子の製造を行ったが、ダイス孔の閉塞が起こり、発泡粒子を得ることができなかった。
【0095】
上記実施例及び比較例で得られた発泡粒子及び発泡成形体について測定された物性を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
孔径を0.5mm~1.7mm程度とし、且つ冷却水温度を55℃~90℃程度とすることによって、粒子径が1.5mm~4.5mm程度で、粒子表面の樹脂層の厚みが5μm~40μm程度の発泡粒子が得られた。この発泡粒子を型内発泡成形して得られた発泡成形体は圧縮強度及び圧縮弾性率に優れていた。
図1
図2