(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】半導体集積回路及び受信装置
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20241022BHJP
H04L 25/03 20060101ALI20241022BHJP
H04B 3/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H04L7/00 580
H04L25/03 C
H04B3/06 A
(21)【出願番号】P 2021049619
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 文彦
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-033476(JP,A)
【文献】特開2020-155859(JP,A)
【文献】特開2016-213635(JP,A)
【文献】特開2015-177452(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0052488(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
H04L 25/03
H04B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号に基づいて、アナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータと、
センタータップの1つ後に設けられた第1のタップを含む複数のタップを有し、前記デジタル信号に基づいた信号が入力され、第1の信号を出力する第1のイコライザ回路と、
前記第1の信号に基づいてデータを判定し、判定したデータを第1データとして出力する第1のデータ判定回路と、
複数のタップを有し、前記デジタル信号に基づいた信号が入力され、第2の信号を出力する第2のイコライザ回路と、
前記第2の信号に基づいてデータを判定し、判定したデータを外部に出力する第2のデータ判定回路と、
前記第1の信号と前記第1データとに基づいて前記クロック信号の位相を調整し、調整したクロック信号を前記ADコンバータに入力する第1の制御回路と、
前記第1のイコライザ回路と前記第2のイコライザ回路とのそれぞれを制御し、タップ係数を含む制御パラメータの調整動作を実行する第2の制御回路と、を備え、
前記調整動作において、前記第2の制御回路は、前記第2のイコライザ回路の前記複数のタップのそれぞれのタップ係数を調整し、前記第2のイコライザ回路の調整結果に基づいて、前記第1のタップのタップ係数を調整する、
半導体集積回路。
【請求項2】
前記第2のイコライザ回路の前記複数のタップは、第2のタップを含み、
前記調整動作において、前記第2の制御回路は、定期的に前記第2のタップのタップ係数の値を、前記第1のタップの前記タップ係数に転写する、
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記第2のタップは、前記第2のイコライザ回路のセンタータップの1つ後に設けられたタップである、
請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記調整動作において、前記第2の制御回路は、前記第2のイコライザ回路の前記複数のタップに含まれた第3のタップの値の変化に基づいて、定期的に前記第1のタップの前記タップ係数の値を加算又は減算する、
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第3のタップは、前記第2のイコライザ回路のセンタータップである、
請求項4に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記第1のイコライザ回路は、前記デジタル信号に基づいて、前記第1信号と異なる第3の信号をさらに出力し、
前記第2のイコライザ回路は、前記第3の信号に基づいた信号を、前記第2の信号として出力する、
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記第2のイコライザ回路は、前記第1のイコライザ回路を介さずに入力された前記デジタル信号に基づいた信号を、前記第2の信号として出力する、
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記第2の制御回路は、前記第2のデータ判定回路によって判定されたデータと、前記第2の信号に基づく期待値との差分の絶対値のばらつきとに基づいて、前記第1のタップの前記タップ係数を調整する、
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の半導体集積回路と、
前記半導体集積回路から出力されたデータを利用するデータ処理回路と、
を備える、受信装置。
【請求項10】
クロック信号に基づいて、アナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータと、
前記デジタル信号に基づいた信号が入力され、第1の信号を出力する第1のイコライザ回路と、
前記デジタル信号に基づいた信号が入力され、第2の信号を出力する第2のイコライザ回路と、
前記第1の信号に基づいてデータを判定し、判定したデータを第1データとして出力する第1のデータ判定回路と、
前記第1の信号と前記第1データとに基づいて前記クロック信号の位相を調整して、調整したクロック信号を前記ADコンバータに入力し、前記クロック信号の位相を調整する調整動作を実行する制御回路と、
前記第2の信号に基づいてデータを判定し、判定したデータを外部に出力する第2のデータ判定回路と、を備え、
前記調整動作において、前記制御回路は、前記第1の信号のゲインが小さくなるように調整する、
半導体集積回路。
【請求項11】
前記第1のイコライザ回路は、複数のタップを有し、
前記複数のタップは、センタータップの1つ後に設けられたタップを有さない、
請求項10に記載の半導体集積回路。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の半導体集積回路と、
前記半導体集積回路から出力されたデータを利用するデータ処理回路と、
を備える、受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体集積回路及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信装置と受信装置とは伝送路を介して接続される。受信装置は、伝送路を通過した受信信号を受信する。受信装置は、受信信号に含まれる、伝送路の伝送特性による損失を補償するためのイコライザ回路を備える。イコライザ回路は、クロック信号を使用して、受信信号の等価処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-502916号公報
【文献】特開2019-169803号公報
【文献】特開2014-143672号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】M. C. Choi著「A 0.1-pJ/b/dB 28-Gb/s Maximum-Eye Tracking, Weight-Adjusting MM CDR and Adaptive DFE with Single Shared Error Sampler」2020 Symposia on VLSI Technology and Circuits、2020年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体集積回路及び受信装置において、クロック信号のタイミング調整の精度を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体集積回路は、ADコンバータと、第1のイコライザ回路と、第2のイコライザ回路と、第1のデータ判定回路と、第2のデータ判定回路と、第1の制御回路と、第2の制御回路と、を含む。ADコンバータは、クロック信号に基づいて、アナログ信号をデジタル信号に変換する。第1のイコライザ回路は、センタータップの1つ後に設けられた第1のタップを含む複数のタップを有する。第1のイコライザ回路は、デジタル信号に基づいた信号が入力され、第1の信号を出力する。第1のデータ判定回路は、第1の信号に基づいてデータを判定し、判定したデータを第1データとして出力する。第2のイコライザ回路は、複数のタップを有する。第2のイコライザ回路は、デジタル信号に基づいた信号が入力され、第2の信号を出力する。第2のデータ判定回路は、第2の信号に基づいてデータを判定し、判定したデータを外部に出力する。第1の制御回路は、第1の信号と第1データとに基づいてクロック信号の位相を調整する。第1の制御回路は、調整したクロック信号をADコンバータに入力する。第2の制御回路は、第1のイコライザ回路と第2のイコライザ回路とのそれぞれを制御する。第2の制御回路は、タップ係数を含む制御パラメータの調整動作を実行する。調整動作において、第2の制御回路は、第2のイコライザ回路の複数のタップのそれぞれのタップ係数を調整し、第2のイコライザ回路の調整結果に基づいて、第1のタップのタップ係数を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る受信装置を含む伝送システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る受信装置を含む伝送システムの具体例を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態に係る受信回路の構成の一例を示すブロック図。
【
図4】第1実施形態に係る受信回路のデジタル信号処理部の詳細な構成の一例を示すブロック図。
【
図5】第1実施形態に係る受信回路が備えるADコンバータ部の回路構成の一例を示すブロック図。
【
図6】第1実施形態に係る受信回路が備えるADコンバータ部の処理を説明するためのタイミングチャート。
【
図7】第1実施形態に係る受信回路が備える第1FFE部の構成の一例を示すダイアグラム。
【
図8】第1実施形態に係る受信回路が備える第1データ判定部の構成の一例を示すダイアグラム。
【
図9】第1実施形態に係る受信回路が備える第2FFE部の構成の一例を示すダイアグラム。
【
図10】第1実施形態に係る受信回路が備えるDFE部及び第2データ判定部の構成の一例を示すダイアグラム。
【
図11】第1実施形態に係る受信回路が備えるDFE部及び第2制御部の構成の一例を示すダイアグラム。
【
図12】第1実施形態に係る受信回路が備えるDFE部及び第2制御部の処理を説明するためのヒストグラム。
【
図13】第1実施形態に係る受信回路におけるクロック信号のタイミング調整方法の概要を説明するための模式図。
【
図14】第1実施形態に係る受信回路の第1パラメータ調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図15】第1実施形態に係る受信回路の第2パラメータ調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図16】第1実施形態に係る受信回路の第2パラメータ調整動作によるアイパターンの変化の一例を示す模式図。
【
図17】第1実施形態に係る受信回路の第2パラメータ調整動作によるデータ分布の変化の一例を示すヒストグラム。
【
図18】第1実施形態に係る受信回路のタイミング調整方法の効果を説明するための模式図。
【
図19】第2実施形態に係る受信回路の第2パラメータ調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図20】第2実施形態に係る受信回路の第1及び第2パラメータ調整動作のシミュレーション結果の一例を示す模式図。
【
図21】第3実施形態に係る受信回路のデジタル信号処理部の構成の一例を示すブロック図。
【
図22】第3実施形態に係る受信回路が備える第1FFE部の構成の一例を示すダイアグラム。
【
図23】第3実施形態に係る受信回路が備える第2FFE部の構成の一例を示すダイアグラム。
【
図24】第4実施形態に係る受信回路が備える第2制御部の構成の一例を示すダイアグラム。
【
図25】第4実施形態に係る受信回路が備える第2制御部の処理を説明するためのヒストグラム。
【
図26】第4実施形態に係る受信回路の第2パラメータ調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図27】第4実施形態に係る受信回路の第2パラメータ調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図28】第4実施形態に係る受信回路の第2パラメータ調整動作によるアイパターンの変化の一例を示す模式図。
【
図29】第4実施形態の変形例に係る受信回路が備える第1FFE部の構成の一例を示すダイアグラム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は、模式的又は概念的なものである。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。参照符号を構成する文字又は数字の後の数字等は、同じ文字又は数字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。同じ文字又は数字を含んだ参照符号で示される要素を相互に区別する必要がない場合、これらの要素はそれぞれ文字又は数字のみを含んだ参照符号により参照される。参照符号の後に付与された“ハイフン+数字”が同じであることは、同じグループに属することを示している。信号名の先頭に“/”が付された信号は、反転信号であることを示している。
【0009】
[1]第1実施形態
以下に、第1実施形態に係る受信装置及び受信回路について説明する。
【0010】
[1-1]構成
[1-1-1]伝送システム1の構成
図1は、第1実施形態に係る受信装置4を備える伝送システム1の構成の一例を示すブロック図である。伝送システム1は、高速シリアル通信により、データを一方の装置又は回路から他方の装置又は回路へ伝送することが可能な構成を有する。
図1に示すように、伝送システム1は、送信装置2、伝送路3、及び受信装置4を備えている。伝送システム1は、同じプリント基板上に設けられた複数の装置又は回路により構成されても良いし、互いに異なるプリント基板上に設けられた複数の装置又は回路により構成されても良い。
【0011】
送信装置2は、伝送路3を介して受信装置4に送信信号TR及び/TRを送信することが可能な構成を有する。送信信号TR及び/TRは、2つの信号を用いて1つの信号を伝送する差動信号である。送信信号TR及び/TRは、例えば、連続した複数の時刻(区分)の各々において“0”と“1”とが識別可能なデジタル値を有するパルス信号である。つまり、当該パルス信号によって符号化された情報が、送信装置2から伝送路3を介して受信装置4に伝達される。送信装置2は、送信する1つのパルス信号に、1ビットデータ(2値)を割り当てても良いし、複数ビットデータ(4値以上)を割り当てても良い。
【0012】
伝送路3は、送信信号TR及び/TRを受信装置4へ伝送するための物理的又は空間的な伝送媒体であり、例えば、送信装置2と受信装置4との間を接続する配線である。伝送路3は、伝送媒体の物理構造や材質に応じて、様々な伝送特性を有し得る。伝送路3の伝送特性は、例えば、特定の周波数帯域における利得の損失を伴う周波数特性を有する。送信装置2によって送信された送信信号TR及び/TRは、伝送路3を介することによって、伝送路3の伝送特性に応じた損失を受ける。
【0013】
受信装置4は、伝送路3を介して損失を受けた送信信号TR及び/TR(以下、受信信号RCV及び/RCVと呼ぶ)を受信する。受信信号RCV及び/RCVは、2つの信号を用いて1つの信号を伝送する差動信号である。そして、受信装置4は、受信信号RCV及び/RCVに基づいて、送信信号TR及び/TRに含まれる情報を復号する。受信装置4は、送信信号TR及び/TRに含まれる情報を正しく復号するための受信回路を有する。受信回路は、伝送路3の伝送特性によって、ある周波数帯域に生じた損失を補償するための機能構成を有する。受信回路は、イコライザ回路や、半導体集積回路等と呼ばれても良い。受信回路の詳細については後述する。
【0014】
(伝送システム1の具体例)
図2は、第1実施形態に係る伝送システム1の具体例を示すブロック図である。
図2に示された伝送システム1の一例では、受信装置4がメモリシステムであり、送信装置2がメモリシステムのホスト機器である。具体的には、メモリシステム(受信装置4)は、伝送路3を介してホスト機器(送信装置2)に接続可能に構成され、例えば、複数のメモリデバイスMD1~MD4と、メモリコントローラMCとを備えている。
【0015】
メモリデバイスMDの各々は、複数のメモリセルを備え、データを不揮発に記憶する。メモリデバイスMDは、例えば、NAND型フラッシュメモリである。メモリデバイスMD1~MD4は、互いに異なる半導体チップに形成される。メモリシステム(受信装置4)が備えるメモリデバイスMDの個数は、任意の個数に設計され得る。
【0016】
メモリコントローラMCは、各メモリデバイスMDの記憶空間を管理し、ホスト機器(送信装置2)からの命令に応答して各メモリデバイスMDに対して読み出し、書き込み、及び消去等を命令し得る。メモリコントローラMCは、例えば、ホストインターフェース(I/F)10、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、バッファメモリ13、及びデバイスインターフェ-ス(I/F)14を含む。
【0017】
ホストインターフェース10は、伝送路3を介してホスト装置(送信装置2)に接続され、メモリコントローラMCとホスト装置(送信装置2)との間の通信を司る。ホストインターフェース10は、ホスト装置(送信装置2)から受信した要求及びデータを、それぞれCPU11及びバッファメモリ13に転送する。ホストインターフェース10は、CPU11の命令に応答して、バッファメモリ13内のデータをホスト装置へ転送する。(以下では、ホストインターフェース10のことを、“受信回路10”とも呼ぶ。
【0018】
CPU11は、メモリコントローラMCの全体の動作を制御する。例えば、CPU11は、ホスト装置(送信装置2)から受信した書き込み要求に応答して、コマンド、アドレス等を含む書き込み命令を発行する。発行された書き込み命令は、メモリデバイスMDの何れかに転送され、当該メモリデバイスMDが、書き込み命令に基づいた書き込み動作を実行する。CPU11は、読み出し動作についても、書き込み動作と同様に実行し得る。
【0019】
RAM12は、CPU11の作業領域として使用される。RAM12は、複数のメモリデバイスMDを管理するためのファームウェアや、各種の管理テーブル等を保持する。RAM12としては、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)や、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリが使用される。
【0020】
バッファメモリ13は、メモリコントローラMCがメモリデバイスMDから受信した読み出しデータや、メモリコントローラMCがホスト装置(送信装置2)から受信した書き込みデータ等を一時的に保持する。バッファメモリ13は、メモリコントローラMCに外部接続されても良いし、RAM12と統合されてもよい。
【0021】
デバイスインターフェース14は、メモリコントローラMCと各メモリデバイスMDとの間の通信を司る。デバイスインターフェース14は、CPU11により発行された命令を、メモリデバイスMDの何れかに転送する。書き込み動作時に、デバイスインターフェース14は、バッファメモリ13に保持された書き込みデータを、メモリデバイスMDの何れかに転送する。読み出し動作時に、デバイスインターフェース14は、メモリデバイスMDの何れかから受信した読み出しデータを、バッファメモリ13に転送する。
【0022】
以上で説明されたメモリデバイスMDとメモリコントローラMCとは、それらの組み合わせにより1つの半導体記憶装置が構成され得る。このような半導体記憶装置としては、SDTMカードのようなメモリカードや、SSD(solid state drive)やUFS(Universal Flash Storage)デバイス等が挙げられる。伝送システム1に使用される装置は、メモリシステム以外であっても良い。以下では、第1実施形態に係る受信回路10の詳細な詳細について説明する。
【0023】
[1-1-2]受信回路10の構成
図3は、第1実施形態に係る受信回路10の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、受信回路10は、例えば、パッドP1及びP2、連続時間線形イコライザ(CTLE:Continuous Time Linear Equalizer)20、可変ゲインアンプ(VGA:Variable Gain Amplifier)30、AD(Analog to Digital)コンバータ部40、第1イコライザ部50、第2イコライザ部60、クロック制御部70、第1制御部80、並びに第2制御部90を備えている。
【0024】
パッドP1及びP2の各々は、伝送路3と接続可能に構成された端子であり、CTLE20に接続される。本例では、パッドP1に受信信号RCVが入力され、パッドP2に受信信号/RCVが入力される。
【0025】
CTLE20は、伝送路3の周波数特性を補償するような周波数特性を備えた増幅回路である。CTLE20は、パッドP1及びP2から入力された受信信号RCV及び/RCVを増幅するとともに補償する。そして、CTLE20は、増幅及び補償した受信信号RCV及び/RCV(以下、等化信号EQ1及び/EQ1と呼ぶ)を、VGA30に入力する。
【0026】
VGA30は、利得(ゲイン)を変更することが可能な増幅回路である。VGA30は、CTLE20から入力された等化信号EQ1及び/EQ1を増幅する。そして、VGA30は、増幅した等化信号EQ1及び/EQ1(以下、等化信号EQ2及び/EQ2と呼ぶ)を、ADコンバータ部40に入力する。
【0027】
ADコンバータ部40は、例えば、タイム・インターリーブ方式のADコンバータ(TI-ADC)である。ADコンバータ部40は、VGA30から入力された等化信号EQ2及び/EQ2(アナログ信号)を、クロック制御部70から入力された複数のクロック信号CKに基づいて、デジタル信号に変換する。そして、ADコンバータ部40は、変換したデジタル値D0を、第1イコライザ部50へ出力する。
【0028】
第1イコライザ部50及び第2イコライザ部60のそれぞれは、入力された信号を増幅するとともに補償する。第1実施形態では、第1イコライザ部50及び第2イコライザ部60のそれぞれを介して判定されたデータDOUTが、受信回路10から出力される。
【0029】
クロック制御部70は、第1イコライザ部50から出力された信号等に基づいてクロック信号CKのタイミングを調整する。そして、クロック制御部70は、調整したクロック信号CKを、ADコンバータ部40に入力する。
【0030】
第1制御部80及び第2制御部90は、それぞれ第1イコライザ部50及び第2イコライザ部60の制御パラメータを制御することが可能な制御回路である。第1制御部80及び第2制御部90は、それぞれ第1イコライザ部50及び第2イコライザ部60から出力された信号等に基づいて、より好ましい制御パラメータを演算することが出来る。また、第2制御部90は、第1制御部80に対して、演算結果の一部を渡すことが出来る。
【0031】
以下では、受信回路10が備えるADコンバータ部40、第1イコライザ部50、第2イコライザ部60、クロック制御部70、第1制御部80、並びに第2制御部90の組のことを、“デジタル信号処理部DSP”と呼ぶ。続けて、デジタル信号処理部DSPの詳細な構成について説明する。
【0032】
図4は、第1実施形態に係る受信回路10のデジタル信号処理部DSPの詳細な構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、第1イコライザ部50は、第1FFE部51、及び第1データ判定部52を含む。第2イコライザ部60は、第2FFE部61、DFE部62、及び第2データ判定部63を含む。クロック制御部70は、CDR(Clock and Data Recovery)回路71、ループフィルタ72、PI(Phase Interpolator)回路73、PLL(Phase Locked Loop)回路74、及びクロック生成回路75を含む。ADコンバータ部40からのデジタル値D0は、さらに第1制御部80、第2制御部90、及び第2FFE部61のそれぞれに入力される。
【0033】
第1FFE部51は、複数のFFE(Feed Forward Equalizer)を含む。第1FFE部51には、複数のデジタル値D0が、例えばADコンバータ部40によるアナログ-デジタル変換(AD変換)の周期毎に、並列に入力される。そして、第1FFE部51は、入力されたデジタル値D0毎に、前後の区分のデジタル値の幾つかを用いた補償処理を行い、補償方法の異なる第1信号S1及び第2信号S2を生成する。第1信号S1は、第2イコライザ部60に入力される。第2信号S2は、第1データ判定部52と、CDR回路71と、第1制御部80とのそれぞれに入力される。
【0034】
第1データ判定部52は、入力された第2信号S2に基づいて、第1データD1を生成する。そして、第1データ判定部52は、第1データD1を、CDR回路71と、第1制御部80とのそれぞれに入力する。
【0035】
第2FFE部61は、複数のFFE回路を含む。第2FFE部61には、複数の第1信号S1が、例えばADコンバータ部40によるAD変換の周期毎に、並列に入力される。そして、第2FFE部61は、入力された第1信号S1毎に、前後の区分の第1信号S1の幾つかを用いた補償処理を行い、第3信号S3を生成する。それから、第2FFE部61は、生成した複数の第3信号S3を、DFE部62と第2制御部90とのそれぞれに入力する。
【0036】
DFE部62は、複数のDFE(Decision Feedback Equalizer)を含む。DFE部62には、複数の第3信号が、例えばADコンバータ部40によるAD変換の周期毎に、並列に入力される。そして、DFE部62は、入力された第3信号S3毎に、前後の第3信号S3の幾つかを用いた補償処理を行い、第4信号S4を生成する。それから、DFE部62は、生成した第4信号S4を、第2データ判定部63と、第2制御部90とのそれぞれに入力する。
【0037】
第2データ判定部63は、DFE部62によって処理された信号に基づいて、第2データを生成する。そして、第2データ判定部63は、第2データをデータDOUTとして第2制御部90に入力し、外部の処理回路に出力する。この外部の処理回路としては、例えば、
図2に示されたメモリコントローラMCのCPU11、RAM12及びバッファメモリ13が挙げられる。受信回路10から出力されたデータDOUTは、当該データDOUTが含む情報の種類に応じて、出力先が変更され得る。
【0038】
CDR回路71は、第2信号S2と第1データD1とに基づいて、受信信号RCV及び/RCVに含まれたクロック信号のタイミングを抽出する回路である。CDR回路71は、第1イコライザ部50から第1信号S2及び第1データD1を受けると、これらの信号間の位相ずれを検出する。そして、CDR回路71は、検出した位相ずれに応じた値を、ループフィルタ72に出力する。
【0039】
ループフィルタ72は、回路の安定化と応答特性を決定するためのフィルタ回路である。ループフィルタ72は、CDR回路71から出力された信号をフィルタリングして、PI回路73に出力する。
【0040】
PI回路73は、PLL回路74から入力された基準クロック信号に基づいて、ループフィルタ72から入力された信号から多相のクロック信号を生成する。そして、PI回路73は、生成した多相のクロック信号を、クロック生成回路75に入力する。
【0041】
PLL回路74は、基準クロック信号を生成し、PI回路73に入力する。基準クロック信号は、PI回路73から出力されるクロック信号の周波数を一定に調整する。
【0042】
クロック生成回路75は、PI回路73から入力されたクロック信号に基づいて、複数のクロック信号CK1~CK4を生成する。クロック生成回路75は、複数のクロック信号CK1~CK4の生成に、例えば分周回路を使用する。そして、クロック生成回路75は、生成した複数のクロック信号CK1~CK4を、ADコンバータ部40に入力する。尚、クロック生成回路75が生成するクロック信号CKの数は、ADコンバータ部40の構成に応じて適宜変更され得る。
【0043】
第1制御部80は、例えば第1イコライザ部50から入力された第2信号S2及び第1データD1と、ADコンバータ部40から入力されたデジタル値D0とに基づいて、第1イコライザ部50で使用される複数のタップ係数a-2、a-1、a0、a1、及びa2を演算する。タップ係数a0は、第1イコライザ部50で使用されるセンタータップに関連付けられている。タップ係数a-2及びa-1は、センタータップを基準として、プリカーソルの方向に設定されたタップに関連付けられている。タップ係数a1及びa2は、センタータップを基準として、ポストカーソルの方向に設定されるタップに関連付けられている。タップ係数“a”に下付きで付与された数字は、その絶対値が大きくなるほど、センタータップから離れたカーソルに関連付けられていることを示している。第1制御部80は、演算によって更新されたタップ係数a-2、a-1、a1、及びa2を第1FFE部51に供給し、タップ係数a0を第1データ判定部52に供給する。
【0044】
第2制御部90は、例えば第2イコライザ部60から入力された第3信号S3及びデータDOUTと、ADコンバータ部40から入力されたデジタル値D0とに基づいて、第2イコライザ部60で使用される複数のタップ係数b-2、b-1、b0、b1、及びb2を演算する。タップ係数b0は、第2イコライザ部60で使用されるセンタータップに関連付けられている。タップ係数b-2及びb-1は、センタータップを基準として、プリカーソルの方向に設定されるタップに関連付けられている。タップ係数b1及びb2は、センタータップを基準として、ポストカーソルの方向に設定されるタップに関連付けられている。タップ係数“b”に下付きで付与された数字は、その絶対値が大きくなるほど、センタータップから離れたカーソルに関連付けられていることを示している。第2制御部90は、タップ係数b-2、b-1、及びb2を第2FFE部61に供給し、タップ係数b1をDFE部62に供給し、タップ係数b0を第2データ判定部63に供給する。また、第2制御部90は、第2イコライザ部60で更新されたタップ係数に基づいた第1イコライザ部50のタップ係数a1を第1制御部80に使用させることも出来る。また、第2制御部90は、第3信号S3又は第4信号S4を用いて、タップ係数の調整に使用されるパラメータを算出することが出来る。
【0045】
以上で説明された受信回路10において、クロック制御部70は、クロック信号の位相(タイミング)の調整の繰り返しによって、受信装置4が受信したデータ信号(RCV及び/RCV)とクロック信号CKとの位相を同期させ得る。以下では、クロック信号の位相の調整の繰り返しのことを、“CDRループ”と呼ぶ。受信装置4が受信したデータ信号とクロック信号CKとが同期した状態は、“CDR回路71がロックした状態”とも呼ばれる。CDR回路71は、ロックした場合に、ロックしたことを示す信号を例えば第1制御回路80及び第2制御回路90に送信し得る。
【0046】
尚、第2制御部90によって生成されたタップ係数a1は、第1制御部80を介して第1イコライザ部50の制御に使用されても良いし、第2制御部90によって第1イコライザ部50に供給されても良い。受信回路10が、タップ係数a1を制御する制御部をさらに備えていても良い。第1データ判定部52及び第2データ判定部63のそれぞれは、例えば少なくとも1つの参照電圧を基準として、入力された信号のデータを判定する。受信回路10は、ADコンバータ部40と第1イコライザ部50との間で、デジタル値D0をバッファする記憶部を備えていても良い。この場合、当該記憶部は、デジタル信号処理部DSPによって参照され得るデジタル値D0を、ADコンバータ部40によるAD変換の複数周期分保持し得る。
【0047】
[1-1-3]ADコンバータ部40の構成
図5は、第1実施形態に係る受信回路10が備えるADコンバータ部40の構成の一例を示すブロック図である。
図5は、ADコンバータ部40が4種類のクロック信号CK1~CK4に基づいて、4つのデジタル値D0を出力する構成を例示している。
図5に示すように、ADコンバータ部40は、例えば、互いに異なる位相に関連付けられた変換部410-1、410-2、410-3、及び410-4を含む。変換部410-1、410-2、410-3、及び410-4の各々は、例えば、ADコンバータ(ADC)411と、2つのフリップフロップ回路FFを含む。
【0048】
各ADC411には、等化信号EQ2及び/EQ2(アナログ信号)が入力され、等化信号EQ2及び/EQ2の差に基づいてAD変換を実行する。ADC411-1、411-2、411-3、及び411-4は、それぞれデジタル値D0[1]、D0[2]、D0[3]、及びD0[4]を出力する。“D0”に付加された括弧内の数字は、ADコンバータ部40によってAD変換処理される時刻の区分に対応している。ADC411-1、411-2、411-3、及び411-4は、それぞれクロック信号CK1、CK2、CK3、及びCK4に基づいて動作する。本例において、クロック信号CK1~CK4のそれぞれの位相は、90度ずつずれている。具体的には、クロック信号CK1、CK2、CK3、及びCK4の位相は、クロック信号CK1を基準として、それぞれ0度、90度、180度、及び270度である。
【0049】
変換部410-1のフリップフロップ回路FF11は、クロック信号CK3に基づいて動作し、ADC411-1から出力されたデジタル値D0[1]を一時的に記憶する。変換部410-1のフリップフロップ回路FF12は、クロック信号CK2に基づいて動作し、フリップフロップ回路FF11から出力されたデジタル値D0[1]を一時的に記憶する。フリップフロップ回路FF12の出力が、ADコンバータ部40から出力される。
【0050】
変換部410-2のフリップフロップ回路FF21は、クロック信号CK3に基づいて動作し、ADC411-2から出力されたデジタル値D0[2]を一時的に記憶する。変換部410-2のフリップフロップ回路FF22は、クロック信号CK2に基づいて動作し、フリップフロップ回路FF21から出力されたデジタル値D0[2]を一時的に記憶する。フリップフロップ回路FF22の出力が、ADコンバータ部40から出力される。
【0051】
変換部410-3のフリップフロップ回路FF31は、クロック信号CK1に基づいて動作し、ADC411-3から出力されたデジタル値D0[3]を一時的に記憶する。変換部410-3のフリップフロップ回路FF32は、クロック信号CK2に基づいて動作し、フリップフロップ回路FF31から出力されたデジタル値D0[3]を一時的に記憶する。フリップフロップ回路FF32の出力が、ADコンバータ部40から出力される。
【0052】
変換部410-4のフリップフロップ回路FF41は、クロック信号CK1に基づいて動作し、ADC411-4から出力されたデジタル値D0[4]を一時的に記憶する。変換部410-4のフリップフロップ回路FF42は、クロック信号CK2に基づいて動作し、フリップフロップ回路FF41から出力されたデジタル値D0[4]を一時的に記憶する。フリップフロップ回路FF42の出力が、ADコンバータ部40から出力される。
【0053】
図6は、第1実施形態に係る受信回路10が備えるADコンバータ部40の処理を説明するためのタイミングチャートである。
図6は、
図5に例示されたADコンバータ部40によるAD変換処理の流れを示している。入力信号DINは、受信信号RCV及び/RCVの差分信号に対応している。“A[t]”は、時刻tにおける入力信号DIN(アナログ信号)の大きさを示している。以下に、クロック信号CK1に基づいてAD変換を実行する変換部410-1の処理に注目して、ADコンバータ部40の処理について説明する。
【0054】
クロック信号CK1が立ち上がると、ADC411-1が、アナログ信号A[t]のAD変換を開始する(
図6(1))。それから、次にクロック信号CK1が立ち上がる迄の期間で、ADC411-1が、アナログ信号A[t]に基づいたデジタル値D0[t]を、フリップフロップ回路FF11に出力する(
図6(2))。その後にクロック信号CK3が立ち上がると、フリップフロップ回路FF11が、ADC411-1から入力されたデジタル値D0[t]を記憶し、フリップフロップ回路FF12に出力する(
図6(3))。その後にクロック信号CK2が立ち上がると、フリップフロップ回路FF12は、フリップフロップ回路FF11から入力されたデジタル値D0[t]を記憶し、外部の処理回路(例えば第1イコライザ部50)に出力する(
図6(4))。
【0055】
変換部410-2~410-4のそれぞれは、ADC411及び2つのフリップフロップ回路FFに入力されるクロック信号CKの組み合わせが異なることを除いて、変換部410-1と同様に動作する。これにより、本例では、変換部410-1~410-4のそれぞれのデータが、共通のクロック信号CK2に基づいたタイミングで、外部に出力される。その結果、変換部410-1~410-4は、並列に入力されるクロック信号CKに基づいて、それぞれデジタル値D0[t-4*i]、D0[t+1-4*i]、D0[t+2-4*i]、及びD0[t+3-4*i]を出力する(iは整数)。
【0056】
尚、ADコンバータ部40は、少なくとも2つ以上のADC411を備えていれば良い。例えば、ADコンバータ部40は、N個(Nは2以上の整数)のADC411を、位相が360/N度ずつずれたクロック信号CKで動作させる。これにより、ADコンバータ部40は、単体のADC411のN倍のサンプリング数で、アナログ-デジタル変換処理を実行することが出来る。
【0057】
第1実施形態に係る受信回路10の第1イコライザ部50及び第2イコライザ部60のそれぞれは、時刻tにカーソルが設定された場合に、前後2区分(t-2、t-1、t+1、t+2)のデジタル値D0を用いて信号を補償する。以下では、設定されたカーソルに対して2つ前の区分に適用されるタップのことを、“TAPpre2”と呼ぶ。設定されたカーソルに対して1つ前の区分に適用されるタップのことを、“TAPpre1”と呼ぶ。設定されたカーソルに対して1つ後の区分に適用されるタップのことを、“TAPpost1”と呼ぶ。設定されたカーソルに対して2つ後の区分に適用されるタップのことを、“TAPpost2”と呼ぶ。
【0058】
図示されたアナログ信号A[t+2]、A[t+1]、A[t-1]、及びA[t-2]は、それぞれTAPpre2、TAPpre1、TAPpost1、及びTAPpost2に関連付けられる。タップ係数a-2及びb-2のそれぞれは、TAPpre2で使用される。タップ係数a-1及びb-1のそれぞれは、TAPpre1で使用される。タップ係数a0及びb0のそれぞれは、センタータップで使用される。タップ係数a1及びb1のそれぞれは、TAPpost1で使用される。タップ係数a2及びb2のそれぞれは、TAPpost2で使用される。
【0059】
尚、第1イコライザ部50及び第2イコライザ部60のそれぞれは、少なくともTAPpost1を利用していれば良い。第1イコライザ部50及び第2イコライザ部60において使用されるタップの数は、1つ以上であれば良く、5個以上であっても良い。使用されるTAPpre及びTAPpostのそれぞれの個数は、同じであっても良いし、異なっていても良い。受信回路10は、デジタル値D0を利用するため、TAPpreも利用することが好ましい。
【0060】
[1-1-4]第1イコライザ部50の構成
(第1FFE部51の構成)
図7は、第1実施形態に係る受信回路10が備える第1FFE部51の構成の一例を示すダイアグラムである。
図7に示すように、第1実施形態の第1FFE部51は、FFE回路510-1、FFE回路510-2、及びFFE回路510-3を含む。FFE回路510-1、510-2、及び510-3のそれぞれは、積算器511、512、513、及び514と、加算器515及び516とを含む。
【0061】
各積算器511は、第1FFE部51におけるTAPpost2に対応している。各積算器511は、入力されたデジタル値D0とタップ係数a2とを積算して、積算結果を加算器515に入力する。
【0062】
各積算器512は、第1FFE部51におけるTAPpost1に対応している。各積算器512は、入力されたデジタル値D0とタップ係数a1とを積算して、積算結果を加算器516に入力する。
【0063】
各積算器513は、第1FFE部51におけるTAPpre1に対応している。各積算器513は、入力されたデジタル値D0とタップ係数a-1とを積算して、積算結果を加算器515に入力する。
【0064】
各積算器514は、第1FFE部51におけるTAPpre2に対応している。各積算器514は、入力されたデジタル値D0とタップ係数a-2とを積算して、積算結果を加算器515に入力する。
【0065】
各加算器515は、第1FFE部51におけるセンタータップに対応している。各加算器515は、関連付けられた積算器511、513、及び514からそれぞれ入力された複数の積算結果と、入力されたデジタル値D0とを加算して、加算結果を第1信号S1として出力する。
【0066】
各加算器516は、関連付けられた積算器512から入力された積算結果と、関連付けられた加算器515から出力された第1信号S1とを加算して、加算結果を第2信号S2として出力する。
【0067】
つまり、第1信号S1は、第1FFE部51が取り扱う複数のタップのうち、TAPpost1を除いたタップの出力の合計に対応している。第2信号S2は、第1FFE部51が取り扱う全てのタップの出力の合計に対応している。
【0068】
本例において、FFE回路510-1、510-2、及び510-3のそれぞれのセンタータップには、それぞれデジタル値D0[t]、D0[t+1]、及びD0[t+2]が入力される。この場合、FFE回路510-1の積算器511-1、512-1、513-1、及び514-1には、それぞれデジタル値D0[t-2]、D0[t-1]、D0[t+1]、及びD0[t+2]が入力される。FFE回路510-2の積算器511-2、512-2、513-2、及び514-2には、それぞれデジタル値D0[t-1]、D0[t]、D0[t+2]、及びD0[t+3]が入力される。FFE回路510-3の積算器511-3、512-3、513-3、及び514-3には、それぞれデジタル値D0[t]、D0[t+1]、D0[t+3]、及びD0[t+4]が入力される。以下同様に、第1FFE部51が含む複数のFFE回路510には、ADコンバータ部40によってAD変換処理される時刻の区分が、1区分ずつずれたデジタル値D0が入力される。
【0069】
これにより、第1実施形態の第1FFE部51では、FFE回路510-1は、第1信号S1[t]及び第2信号S2[t]を出力し、FFE回路510-2は、第1信号S1[t+1]及び第2信号S2[t+1]を出力し、FFE回路510-3は、第1信号S1[t+2]及び第2信号S2[t+2]を出力し、…、FFE回路510-Nは、第1信号S1[t+(N-1)]及び第2信号S2[t+(N-1)]を出力する。尚、第1イコライザ部50が備える第1FFE部51は、“CDR用のFFE”と呼ばれても良い。
【0070】
(第1データ判定部52の構成)
図8は、第1実施形態に係る受信回路10が備える第1データ判定部52の構成の一例を示すダイアグラムである。
図8は、第1データ判定部52においてFFE回路510-1~510-3に関連付けられた構成を表示している。
図8に示すように、第1データ判定部52は、データ判定器520-1、520-2、及び520-3を含む。
【0071】
データ判定器520-1、520-2、及び520-3は、それぞれFFE回路510-1、510-2、及び510-3から出力された第2信号S2に応じたデータを判定する。各データ判定器520がデータを判定するタイミングは、例えばデータ判定器520に別途入力されるクロック信号に基づいている。各データ判定器520は、データの判定に、REF(a0)を基準として用いる。REF(a0)は、例えば所定の値とタップ係数a0との積算値である。
【0072】
そして、データ判定器520-1は、判定結果を第1データD1[t]として出力する。データ判定器630-2は、判定結果を第1データD1[t+1]として出力する。データ判定器630-3は、判定結果を第1データD1[t+2]として出力する。以下同様に、第1データ判定部52が含むデータ判定器520は、関連付けられたFFE回路510から入力された第2信号S2のデータを判定し、第1データD1を出力する。
【0073】
[1-1-5]第2イコライザ部60の構成
(第2FFE部61の構成)
図9は、第1実施形態に係る受信回路10が備える第2FFE部61の構成の一例を示すダイアグラムである。
図9に示すように、第1実施形態の第2FFE部61は、FFE回路610-1、FFE回路610-2、及びFFE回路610-3を含む。FFE回路610-1、610-2、及び610-3のそれぞれは、積算器611、612、及び613と、加算器614とを含む。
【0074】
各積算器611は、第2FFE部61におけるTAPpost2に対応している。各積算器611は、入力されたデジタル値D0とタップ係数b2とを積算して、積算結果を加算器614に入力する。
【0075】
各積算器612は、第2FFE部61におけるTAPpre1に対応している。各積算器612は、入力されたデジタル値D0とタップ係数b-1とを積算して、積算結果を加算器614に入力する。
【0076】
各積算器613は、第2FFE部61におけるTAPpre2に対応している。各積算器613は、入力されたデジタル値D0とタップ係数b-2とを積算して、積算結果を加算器614に入力する。
【0077】
各加算器614は、第2FFE部61におけるセンタータップに対応している。各加算器614は、関連付けられた積算器611、612、及び613のそれぞれから入力された複数の積算結果と、入力された第1信号S1とを加算する。そして、各加算器614は、加算結果を第3信号S3として出力する。つまり、第3信号S3は、第2FFE部61が取り扱う複数のタップのうち、TAPpost1を除いたタップの出力の合計に対応している。
【0078】
本例において、FFE回路610-1、610-2、及び610-3のそれぞれのセンタータップには、それぞれ第1信号S1[t]、S1[t+1]、及びS1[t+2]が入力される。この場合、FFE回路610-1の積算器611-1、612-1、及び613-1には、それぞれデジタル値D0[t-2]、D0[t+1]、及びD0[t+2]が入力される。FFE回路610-2の積算器611-2、612-2、及び613-2には、それぞれデジタル値D0[t-1]、D0[t+2]、及びD0[t+3]が入力される。FFE回路610-3の積算器611-3、612-3、及び613-3には、それぞれデジタル値D0[t]、D0[t+3]、及びD0[t+4]が入力される。以下同様に、第2FFE部61が含む複数のFFE回路610には、ADコンバータ部40によってAD変換処理される時刻の区分が、1区分ずつずれた第1信号S1が入力される。
【0079】
これにより、第1実施形態の第2FFE部61では、FFE回路610-1は、第3信号S3[t]を出力し、FFE回路610-2は、第3信号S3[t+1]を出力し、FFE回路610-3は、第3信号S3[t+2]を出力し、…、FFE回路610-Nは、第3信号S3[t+(N-1)]を出力する。尚、第2イコライザ部60が備える第2FFE部61は、“データ用のFFE”と呼ばれても良い。
【0080】
(DFE部62及び第2データ判定部63の構成)
図10は、第1実施形態に係る受信回路10が備えるDFE部62及び第2データ判定部63の構成の一例を示すダイアグラムである。
図10は、DFE部62及び第2データ判定部63が、4種類の第3信号S3が入力されるUnroll DFEを構成する場合を例示している。
図10に示すように、DFE部62は、DFE回路620-1、620-2、620-3、及び620-4を含む。第2データ判定部63は、データ判定器630-1、630-2、630-3、及び630-4と、フリップフロップ回路631とを含む。DFE回路620-1、620-2、620-3、及び620-4は、それぞれデータ判定器630-1、630-2、630-3、及び630-4に関連付けられている。
【0081】
DFE回路620-1、620-2、620-3、及び620-4のそれぞれは、加算器621及び622と、マルチプレクサ623とを含む。各加算器621及び622には、当該DFE回路620に割り当てられた第3信号S3が入力される。各加算器621は、入力された第3信号S3とタップ係数b1に“+1”が積算された“+b1”とを加算して、加算結果をマルチプレクサ623に入力する。各加算器622は、入力された第3信号S3とタップ係数b1に“-1”が積算された“-b1”とを加算して、加算結果をマルチプレクサ623に入力する。マルチプレクサ623は、第2データ判定部63から入力されたデータに基づいて、入力された加算結果のいずれかを第4信号S4として出力する。
【0082】
データ判定器630-1、630-2、630-3、及び630-4は、それぞれDFE回路620-1、620-2、620-3、及び620-4から出力された第4信号S4に応じたデータを判定する。各データ判定器630がデータを判定するタイミングは、例えばデータ判定器630に別途入力されるクロック信号に基づいている。各データ判定器630は、データの判定に、参照値REF(b0)を基準として用いる。REF(b0)は、例えば所定の値とタップ係数b0との積算値である。
【0083】
そして、データ判定器630-1は、判定結果をデータDOUT[1]として、マルチプレクサ623-2に入力し、且つ外部に出力する。データ判定器630-2は、判定結果をデータDOUT[2]として、マルチプレクサ623-3に入力し、且つ外部に出力する。データ判定器630-3は、判定結果をデータDOUT[3]として、マルチプレクサ623-4に入力し、且つ外部に出力する。データ判定器630-4は、判定結果をデータDOUT[4]として、フリップフロップ回路631に入力し、且つ外部に出力する。フリップフロップ回路631は、前のサイクルで出力されたデータDOUT[4]を保持し、保持したデータDOUT[4]を、次のサイクルでマルチプレクサ623-1に入力する。
【0084】
つまり、本例において、DFE回路620-1は、前回の第4信号S4[4]の判定結果(データ)に基づいて、加算器621及び622のうちの何れかの加算器の出力を、第4信号S4[1]として出力する。DFE回路620-2は、前回の第4信号S4[1]の判定結果(データ)に基づいて、加算器621及び622のうちの何れかの加算器の出力を、第4信号S4[2]として出力する。DFE回路620-3は、前回の第4信号S4[2]の判定結果(データ)に基づいて、加算器621及び622のうちの何れかの加算器の出力を、第4信号S4[3]として出力する。DFE回路620-4は、前回の第4信号S4[3]の判定結果(データ)に基づいて、加算器621及び622のうちの何れかの加算器の出力を、第4信号S4[4]として出力する。
【0085】
以上で説明されたDFE部62及び第2データ判定部63は、その他の構成であっても良い。例えば、DFE部62及び第2データ判定部63は、5つ以上のDFE回路620及びデータ判定器630の組を有することによって、5入力以上の第3信号S3を処理しても良い。Unroll型のDFE部62が使用される場合、少なくとも、1番目に配置されたDFE回路620のマルチプレクサ623に、最後に配置されたDFE回路620の出力に基づいた判定結果が入力されていれば良い。受信回路10が受信する1つのパルス信号に複数ビットデータ(4値以上)が割り当てられる場合に、DFE回路620は、取り扱う値に応じた個数の加算器を有し得る。これらの加算器には、所定のタップ係数が割り当てられる。そして、マルチプレクサ623は、過去の4値のデータの入力に基づいて、複数の加算器のいずれかの出力を、第4信号S4として出力する。
【0086】
[1-1-6]DFE部62及び第2制御部90の構成
図11は、第1実施形態に係る受信回路10が備えるDFE部62及び第2制御部90の構成の一例を示すダイアグラムである。
図11に示すように、DFE部62は、例えば、積算器81及び加算器82をさらに含む。第2制御部90は、例えば、判定器83、積算器84、及び加算器85を含む。
【0087】
積算器81は、データNZOUT[t-1]とタップ係数b1とを積算して、積算結果を加算器82に入力する。データNZOUT[t-1]は、例えば第1イコライザ部50において、時刻t-1に関連付けられた判定結果であり、例えばデータDOUTに対応している。つまり、積算器81は、1つ前の時刻t-1におけるデータNZOUT[t-1]と、現在の時刻tにおけるタップ係数b1との積算結果を出力する。
【0088】
加算器82は、第1信号S3[t]と、積算器81から入力された加算結果とを加算して、判定器83と加算器85とのそれぞれに出力する。加算器82による加算結果は、当該第1信号S3[t]のイコライズ結果EQOUT[t]に対応している。
【0089】
判定器83は、入力されたイコライズ結果EQOUT[t]のデータを判定して、判定結果をデータNZOUT[t]として出力する。データNZOUT[t]は、積算器84に入力される。
【0090】
積算器84は、データNZOUT[t]と参照値REF(b0)とを積算して、積算結果を加算器85に入力する。
【0091】
加算器85は、イコライズ結果EQOUT[t]と、積算器84から入力された積算結果に(-1)を積算した値とを加算する。言い換えると、加算器85は、イコライズ結果EQOUT[t]から、積算器84から入力された積算結果を減算する。加算器85の加算結果は、差分ERR[t]として出力される。第2制御部90は、差分ERR[t]に基づいて、各パラメータを調整し得る。
【0092】
例えば、TAPpost1で使用されるタップ係数は、“b1[t+1]=b1[t]-LR*sign(NZOUT[t-1])*DIR”の演算によって更新される。“LR(Learning Rate)”は、1回のパラメータ調整シーケンスによるパラメータの調整量を示している。“LR”は、固定されても良いし、タップ係数の調整の過程で変更されても良いし、パラメータ毎に異なっていても良い。“sign”は、所定の符号であり、代入された数値に応じて値が変化する。“DIR”は、調整方向を示しており、“+1”又は“-1”の数値をとり得る。
【0093】
TAPpost2で使用されるタップ係数は、“b2[t+1]=b2[t]-LR*sign(D0[t-2])*sign(ERR)”の演算によって更新される。データの判定に使用される参照値REF(b0)は、“REF[t+1]=REF[t]-LR*sign(NZOUT[t])*sign(ERR)*(-1)”の演算によって更新される。その他のタップ係数についても、同様に算出され得る。このように、更新対象のパラメータに対する更新量は、補償後の値(EQOUT)と判定結果の期待値(NZOUT)との差分(ERR)と、更新対象のパラメータ(タップ係数、参照値REF等)に乗算される値とによって算出され得る。また、この演算処理は、符号(sign)を用いている。このように符号(sign)を用いた演算処理は、sign-signアルゴリズムと呼ばれる。
【0094】
図12は、第1実施形態に係る受信回路10が備えるDFE部62及び第2制御部90の処理を説明するためのヒストグラムである。
図12において、横軸は、2値の信号のある位相におけるイコライズ結果EQOUTの振幅を示し、縦軸は、当該位相で検出されたデータ数を示している。
図12に示すように、2値の信号における振幅値は、例えば、-1*REFの部分と、+1*REFの部分とのそれぞれの近傍に分布する。
【0095】
パラメータの調整方向(DIR)は、データNZOUT[t]が“-1”である場合に、関連付けられたイコライズ結果EQOUTが、-1*REFを超えているか(+)、又は超えていないか(-)に応じて決定される。また、調整方向(DIR)は、データNZOUT[t]が“+1”である場合に、関連付けられたイコライズ結果EQOUTが、+1*REFを超えているか(+)、又は超えていないか(-)に応じて決定される。つまり、第2制御部90は、差分ERR[t]が正であるか負であるかに応じて、パラメータの調整方向を決定する。
【0096】
以上の説明では、第2制御部90による第2イコライザ部60の各パラメータの調整方法の一例について説明したが、第1制御部80も、第2制御部90と同様に、第1イコライザ部50に関する各パラメータを調整(更新)することが出来る。つまり、第1制御部80は、第2制御部90と同様に、sign-signアルゴリズムを使用することが出来る。以下では、第1イコライザ部50及び第2イコライザ部60のそれぞれの各パラメータの調整及び更新を繰り返す処理のことを、“LMSループ”と呼ぶ。
【0097】
[1-2]動作
図13は、第1実施形態に係る受信回路10におけるクロック信号CKの位相の調整動作の概要を説明するための模式図であり、クロック信号CKの調整に関する1つのパルス信号に対応する部分を抽出して示している。h(0)は、センターカーソルを示し、センタータップに関連付けられている。h(-1)は、h(0)に対して1区分前のプリカーソルを示し、TAPpre1に関連付けられている。h(+1)は、h(0)に対して1区分後のポストカーソルを示し、TAPpost1に関連付けられている。
【0098】
ボーレートCDRは、例えばh(-1)とh(1)とが釣り合うポイントで、クロック信号CKをロックさせる。ボーレートCDRでは、例えば数式“Early値-(Late値=0”が満たされるように、位相が調整される。“Early値”は、h(-1)における信号の強度に対応している。“Late値”は、h(1)における信号の強度に対応している。例えば、CDRループによって、数式“Early値-Late値=0”が満たされると、クロック信号CKがロックされる。
【0099】
アナログの受信回路では、h(1)がDFE回路によって補償されると、ロック位置のずれが生じ得る。このため、アナログの受信回路では、Early/Late比を調整することによってロック位置を調整することや、Early値とLate値との差分にオフセットを加えることによって位相を調整することが考えられている(オフセット調整型のCDR)。また、Early/Late比の調整方法としては、UP/DN比を適切に設定することが考えられる。UP/DN比は、h(-1)及びh(1)のそれぞれの強度に適用される所定の割合である。UP/DN比が適切に調整されることによって、アイパターンの振幅が大きくなり得る。
【0100】
しかしながら、CDRループのFFEは、例えばh(-1)とh(1)とがゼロになるように調整する。このため、
図13に示すように、調整前の信号波形に対してクロック制御部70がEarly/Late比のバランスを崩して位相をずらそうとしても、調整後の信号波形のように、LMSループによってh(-1)とh(1)とがゼロに調整されてしまう。その結果、条件によっては、クロック信号CKの位相が動かないおそれがある。また、オフセット調整型のCDRは、信号波形が山谷を有していれば位相を調整することが出来るが、位相の調整範囲が山谷の範囲に留まるため狭い。
【0101】
また、CDRループに用いるFFE回路では、データ側のFFE回路及びDFE回路により補償されるため、TAPpost1が省略される場合がある。しかしながら、h(1)の部分は、符号間干渉(ISI:Inter Symbol Interfere)の原因となり得るため、調整されることが好ましい。ISIは、個別のデータを有し且つ隣接する区分の間で波形が重複することに対応する。ISIが抑制されることによって、受信回路10が受信信号RCV及び/RCVに含まれる情報を復号することの難易度を下げることが出来る。
【0102】
そこで、第1実施形態に係る受信回路10は、CDR用の第1FFE部51にTAPpost1を設ける。そして、受信回路10は、h(1)(すなわち第1FFE部51のTAPpost1)以外のLMSループを実行し、LMSループとは独立したタイミングでTAPpost1を更新する。以下に、第1実施形態に係る受信回路10におけるクロック信号のタイミング調整(位相調整)と、受信信号RCV及び/RCVの補償処理とに関連する第1パラメータ調整動作及び第2パラメータ調整動作について説明する。尚、以下で説明される動作は、受信回路10内のクロック制御部70、第1制御部80及び第2制御部90等によって制御される。第1パラメータ調整動作と第2パラメータ調整動作とは、並列に実行されても良い。
【0103】
[1-2-1]第1パラメータ調整動作
図14は、第1実施形態に係る受信回路10の第1パラメータ調整動作の一例を示すフローチャートである。第1パラメータ調整動作は、例えば、第1イコライザ部50で使用されるタップ係数a
-2、a
-1、a
0、及びa
2のそれぞれの調整に関する。以下に、
図14を参照して、第1パラメータ調整動作について説明する。
【0104】
受信回路10は、例えばCPU11からの指示に応じて、第1パラメータ調整動作を開始する(開始)。
【0105】
まず、受信回路10は、パラメータPを初期化する(ST10)。ST10におけるパラメータPは、例えば第1イコライザ部50で使用されるタップ係数a-2、a-1、a0、及びa2のそれぞれに対応している。つまり、ST10の処理では、タップ係数a-2、a-1、a0、及びa2のそれぞれが初期化される。
【0106】
次に、受信回路10は、入力Xに基づいて、出力Yを演算する(ST11)。ST11における入力Xは、例えば第1FFE部51に入力されるデジタル値D0に対応している。ST11における出力Yは、例えば第1FFE部51から出力される第1信号S1に対応している。具体的には、ST11の処理では、FFE回路510が、タップ係数a
-2、a
-1、a
0、a
1及びa
2を用いて、例えば
図7を参照して説明された処理を実行する。
【0107】
次に、受信回路10は、入力Xと、出力Yと、出力Yの期待値Yexpectに基づいて、パラメータPを更新する(ST12)。ST12における出力Yの期待値Yexpectは、第1データ判定部52から出力される第1データD1を利用して算出される値に対応している。ST12の処理は、例えば
図11及び
図12のそれぞれを参照して説明された処理と類似している。具体的には、受信回路10は、例えば積算器511-1がa
2*D0[t-2]の演算をしているため、“a
2[t+1]=a
2[t]-LR*sign(D0[t-2])*sign(Y-Yexpect)”の処理を実行する。他のタップについても同様に処理され得る。
【0108】
次に、受信回路10は、パラメータPの調整が完了したか否かを確認する(ST13)。パラメータPの調整が完了したか否かは、第1制御部80によって判定されても良いし、クロック制御部70のCDR回路71がロックしたことに基づいて判定されても良い。
【0109】
パラメータPの調整が完了していない場合(ST13、NO)、受信回路10は、ST11の処理に進む。すなわち、受信回路10は、ST11及びST12によるパラメータPの調整を再び実行する。
【0110】
パラメータPの調整が完了していた場合(ST13、YES)、受信回路10は、第1パラメータ調整動作を終了する(終了)。
【0111】
[1-2-2]第2パラメータ調整動作
図15は、第1実施形態に係る受信回路10の第2パラメータ調整動作の一例を示すフローチャートである。第2パラメータ調整動作は、第2イコライザ部60で使用されるタップ係数b
-2、b
-1、b
0、b
1、及びb
2のそれぞれの調整と、第1イコライザ部50で使用されるタップ係数a
1の調整とに関する。以下に、
図15を参照して、第1実施形態の第2パラメータ調整動作について説明する。
【0112】
受信回路10は、例えばCPU11からの指示に応じて、第2パラメータ調整動作を開始する(開始)。
【0113】
まず、受信回路10は、パラメータP及びタイマT_curを初期化する(ST20)。ST20におけるパラメータPは、例えば、第2イコライザ部60で使用されるタップ係数b-2、b-1、b0、b1、及びb2と、第1イコライザ部50で使用されるタップ係数a1とのそれぞれに対応している。つまり、ST20の処理では、タップ係数b-2、b-1、b0、b1、及びb2、a1のそれぞれが初期化される。タイマT_curは、例えば第2制御部90に含まれている。タイマT_curは、少なくとも受信装置4に含まれていれば良い。
【0114】
次に、受信回路10は、入力Xに基づいて、出力Yを演算する(ST21)。ST21における入力Xは、例えば、第2FFE部61に入力される第1信号S1と、DFE部62に入力される第3信号S3とに対応している。ST21における出力Yは、例えばDFE部62から出力される第4信号S4に対応している。具体的には、ST21の処理では、FFE回路610が、タップ係数b
-2、b
-1、b
0、及びb
2を用いて、例えば
図9を参照して説明された処理を実行し、DFE回路620が、タップ係数b
1を用いて、例えば
図10を参照して説明された処理を実行する。
【0115】
次に、受信回路10は、入力Xと、出力Yと、出力Yの期待値Yexpectに基づいて、パラメータPを更新する(ST22)。ST22における出力Yの期待値Yexpectは、例えば、第2データ判定部63から出力されるデータDOUTを利用して算出される値に対応している。ST22の処理は、例えば
図11及び
図12のそれぞれを参照して説明された処理に対応している。すなわち、受信回路10は、“P[t+1]=P[t]-LR*sign(X)*sign(Y-Yexpect)”の処理を実行する。具体的には、受信回路10は、例えば積算器81がb
1*NZOUT[t-1]の演算をしているため、“b
1[t+1]=b
1[t]-LR*sign(NZOUT[t-1])*sign(Y-Yexpect)”の処理を実行する。他のタップについても同様に処理され得る。
【0116】
次に、受信回路10は、“T_cur>=T_wait”が満たされているか否かを確認する(ST23)。T_waitは、後述されるST25の処理を実行する周期を決定する時間である。
【0117】
“T_cur>=T_wait”が満たされていない場合(ST23、NO)、受信回路10は、ST24の処理に進む。ST24の処理において、受信回路10は、“T_cur=T_cur+1”の処理を実行する。すなわち、受信回路10は、タイマT_curの数値を加算する。
【0118】
ST24の処理の次に、受信回路10は、ST21の処理に進む。すなわち、受信回路10は、ST21及びST22によるパラメータPの調整を再び実行する。
【0119】
“T_cur>=T_wait”が満たされている場合(ST23、YES)、受信回路10は、ST25の処理に進む。ST25の処理において、受信回路10は、“a1=b1”の処理を実行する(ST25)。すなわち、第2イコライザ部60で更新されたタップ係数b1の値が、第1イコライザ部50で使用されるタップ係数a1に転写される。
【0120】
ST25の処理の次に、受信回路10は、“T_cur=0”の処理を実行する(ST26)。すなわち、受信回路10は、タイマT_curをリセットする。ST25とST26の順は、逆でも並列的に実行されてもよい。
【0121】
ST26の処理の次に、受信回路10は、パラメータPの調整が完了したか否かを確認する(ST27)。パラメータPの調整が完了したか否かは、第2制御部90によって判定されても良いし、クロック制御部70のCDR回路71がロックしたことに基づいて判定されても良い。
【0122】
パラメータPの調整が完了していない場合(ST27、NO)、受信回路10は、ST21の処理に進む。すなわち、受信回路10は、ST21及びST22によるパラメータPの調整と、所定の周期におけるタップ係数a1のパラメータの更新とを再び実行する。
【0123】
パラメータPの調整が完了していた場合(ST27、YES)、受信回路10は、第2パラメータ調整動作を終了する(終了)。
【0124】
[1-2-3]シミュレーション結果
図16は、第1実施形態に係る受信回路10の第2パラメータ調整動作によるアイパターンの変化の一例を示す模式図であり、4値の信号のアイパターンを例示している。
図16において、各アイパターンの横軸は時間(位相)を示し、各アイパターンの縦軸は、信号の振幅を示している。
図16の(A)、(B)及び(C)は、第2パラメータ調整動作の進行に従った、タップ係数a
1の変化が時系列順に並んでいる。
【0125】
図16に示すように、調整後(a
1=-0.1)のアイパターンの開口高さH2と、調整後(a
1=-0.16)のアイパターンの開口高さH3とのそれぞれは、調整前(a
1=0)のアイパターンの開口高さH1よりも高い。また、調整後(a
1=-0.1)のアイパターンの開口幅W2と、調整後(a
1=-0.16)のアイパターンの開口幅W3とのそれぞれは、調整前(a
1=0)のアイパターンの開口幅W1よりも広い。すなわち、第2パラメータ調整動作の進行に伴いタップ係数a
1が調整されると、アイパターンの開口部分が大きくなっている。
【0126】
また、a1=0のアイパターンとa1=-0.1のアイパターンとを比較すると、アイパターンの開口部分の位相が変化していることが分かる。同様に、a1=-0.1のアイパターンとa1=-0.16のアイパターンとを比較すると、アイパターンの開口部分の位相が変化していることが分かる。このように、第2パラメータ調整動作は、TAPpost1のタップ係数a1を調整することと、CDRループのロック位置を調整することとを両立し得る。
【0127】
図17は、第1実施形態に係る受信回路10の第2パラメータ調整動作によるデータ分布の変化の一例を示すヒストグラムである。
図17において、各ヒストグラムの横軸は、4値の信号のある位相におけるイコライズ結果EQOUTの振幅を示し、各ヒストグラムの縦軸は、当該位相で検出されたデータ数を示している。
図17の(A)、(B)、及び(C)は、
図16に示された(A)、(B)、及び(C)の状態にそれぞれ対応している。
【0128】
図17に示すように、4値の信号における振幅値は、例えば“0”データの部分と、“1”データの部分と、“2”データの部分と、及び“3”データの部分とのそれぞれの近傍に分布する。そして、a
1=0のデータ分布とa
1=-0.1のデータ分布とを比較すると、各データにおける振幅のばらつきが抑制されていることが分かる。さらに、a
1=-0.1のデータ分布とa
1=-0.16のデータ分布とを比較すると、各データにおける振幅のばらつきがさらに抑制されていることが分かる。
【0129】
[1-3]第1実施形態の効果
以上で説明された第1実施形態に係る受信回路10に依れば、クロック信号CKのタイミング調整の精度を向上させることが出来る。以下に、第1実施形態の効果の詳細について説明する。
【0130】
例えば、メモリシステムにおいて、メモリコントローラMCとメモリデバイスMDとの間を接続する配線は、短く設けることが可能である。このため、メモリコントローラMCとメモリデバイスMDとの通信で使用される受信回路では、信号の損失が抑制されるため、イコライザ回路の補償能力に対する要求が抑えられる。一方で、伝送路3を介してホスト機器とメモリシステムとの間が接続される場合、伝送路3の長さは一律ではなく、信号の損失が大きくなる場合がある。このため、外部との通信に使用される受信回路では、イコライザ回路の補償能力に対する要求が高くなる。また、通信で取り扱われるデータレートが上昇していくと、アナログ信号を用いて信号の補償処理を行う受信回路(アナログの受信回路)では、対処できなくなるおそれがある。
【0131】
これに対して、第1実施形態に係る受信装置4は、デジタル信号を用いて信号の補償を行う受信回路10(デジタルの受信回路10)を備えている。デジタルの受信回路10は、アナログ信号をデジタル信号に変換した後に、デジタル信号を用いた補償処理を実行する。デジタル信号を用いた補償処理は、プリカーソルに対応するタップを利用することが可能であり、信号の補償能力を向上させることが出来る。
【0132】
また、第1実施形態に係る受信回路10は、第2パラメータ調整動作を実行し、第2イコライザ部60の複数のタップのそれぞれのタップ係数を調整し、第2イコライザ部60の調整結果に基づいて、第1イコライザ部50のTAPpost1のタップ係数a1を調整する。簡潔に述べると、第1実施形態に係る受信回路10は、第1FFE部51のTAPpost1を固定したままLMSループを実行し、LMSループが収束した段階でTAPpost1を調整する。
【0133】
図18は、第1実施形態に係る受信回路10のタイミング調整方法の効果を説明するためのヒストグラムである。第1実施形態に係る受信回路10では、h(1)の調整頻度が低く設定され、
図18に示すように、h(1)がボーレートCDRにおけるアンカーの役割をする。この場合、受信回路10は、h(-1)と固定されたh(1)との間で等号が成り立つ箇所でクロック信号CKをロックさせることが出来る。
【0134】
そして、第1実施形態に係る受信回路10は、第2イコライザ部60で算出されたタップ係数b1を用いて、第1イコライザ部50のタップ係数a1を調整する。言い換えると、第1実施形態に係る受信回路10は、第2パラメータ調整動作によって、データ用の第2イコライザ部60のパラメータ調整結果に基づいて、CDR用の第1イコライザ部50のTAPpost1のタップ係数a1を調整する。
【0135】
このように、第1実施形態に係る受信回路10は、CDRによるロック位置の調整機能を活かしつつ、h(1)を調整する。その結果、第1実施形態に係る受信回路10は、CDRループで扱われる信号のISIを改善させることが出来、且つクロック信号CKの調整範囲を広げることが出来る。従って、第1実施形態に係る受信回路10は、クロック信号CKのタイミング調整の精度を向上させることが出来る。
【0136】
尚、第1実施形態に係る受信回路10は、第1イコライザ部50によって補償された第1信号S1が第2イコライザ部60に入力される。つまり、ある程度補償されたデータが第2イコライザ部60に入力されるため、第2イコライザ部60において要求される補償能力が低くなり得る。その結果、第1実施形態に係る受信回路10では、第2イコライザ部60におけるタップ数が節約され、受信回路10のコストが抑制され得る。
【0137】
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る受信回路10は、第1実施形態に係る受信回路10と同様の構成を有する。そして、第2実施形態に係る受信回路10は、第1実施形態と異なる第2パラメータ調整動作によって、第1イコライザ部50のTAPpost1のタップ係数a1を調整する。以下に、第2実施形態に係る受信回路10について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0138】
[2-1]動作
[2-1-1]第2パラメータ調整動作
図19は、第2実施形態に係る受信回路10の第2パラメータ調整動作の一例を示すフローチャートである。以下に、
図19を参照して、第2実施形態の第2パラメータ調整動作について説明する。
【0139】
受信回路10は、例えばCPU11からの指示に応じて、第2パラメータ調整動作を開始する(開始)。
【0140】
まず、受信回路10は、パラメータP及びタイマT_cur等を初期化する(ST30)。ST30におけるパラメータP及びタイマT_curのそれぞれは、第1実施形態と同様である。ST30では、パラメータP及びタイマT_curの他に、例えばパラメータP_cur及びP_prevが初期化(例えばリセット)される。パラメータP_cur及びP_prevは、例えばタップ係数b0の変化をモニタするためのパラメータであり、後述される判定条件に使用される。
【0141】
次に、受信回路10は、第1実施形態と同様に、入力Xに基づいて、出力Yを演算する(ST21)。
【0142】
次に、受信回路10は、第1実施形態と同様に、入力Xと、出力Yと、出力Yの期待値Yexpectに基づいて、パラメータPを更新する(ST22)。
【0143】
次に、受信回路10は、“P_cur=P_cur+b0”の処理を実行する(ST31)。すなわち、ST31の処理では、パラメータP_curに、更新されたタップ係数b0が加算される。
【0144】
次に、受信回路10は、第1実施形態と同様に、“T_cur>=T_wait”が満たされているか否かを確認する(ST23)。
【0145】
“T_cur>=T_wait”が満たされていない場合(ST23、NO)、受信回路10は、ST24の処理に進む。ST24の処理において、受信回路10は、第1実施形態と同様に、“T_cur=T_cur+1”の処理を実行する。
【0146】
ST24の処理の次に、受信回路10は、ST21の処理に進む。すなわち、受信回路10は、ST21及びST22によるパラメータPの調整を再び実行する。
【0147】
“T_cur>=T_wait”が満たされている場合(ST23、YES)、受信回路10は、ST32の処理に進む。ST32の処理において、受信回路10は、“P_cur>=P_prev”が満たされているか否かを確認する。
【0148】
“P_cur>=P_prev”が満たされていない場合(ST32、YES)、受信回路10は、ST33の処理に進む。ST33の処理において、受信回路10は、“DIR=DIR*(-1)”の処理を実行する。すなわち、ST33の処理では、DIRの符号が反転される。受信回路10は、ST33の処理の後に、ST34の処理に進む。
【0149】
“P_cur>=P_prev”が満たされている場合(ST32、YES)、受信回路10は、ST34の処理に進む。
【0150】
ST34の処理において、受信回路10は、“a1=a1+LR*DIR”の処理を実行する。すなわち、ST34の処理では、タップ係数a1が、LRとDIRとに基づいて調整される。
【0151】
ST34の処理の次に、受信回路10は、“P_prev=P_cur”、“P_cur=0”、及び“T_cur=0”の処理を順に実行する(ST35)。すなわち、受信回路10は、P_prevにP_curを代入した後に、P_cur及びT_curをリセットする。
【0152】
ST35の処理の次に、受信回路10は、パラメータPの調整が完了したか否かを確認する(ST27)。パラメータPの調整が完了したか否かは、第2制御部90によって判定されても良いし、クロック制御部70のCDR回路71がロックしたことに基づいて判定されても良い。
【0153】
パラメータPの調整が完了していない場合(ST27、NO)、受信回路10は、ST21の処理に進む。すなわち、受信回路10は、ST21及びST22によるパラメータPの調整と、所定の周期におけるタップ係数a1のパラメータの更新等を再び実行する。
【0154】
パラメータPの調整が完了していた場合(ST27、YES)、受信回路10は、第2パラメータ調整動作を終了する(終了)。
【0155】
[2-1-2]シミュレーション結果
図20は、第2実施形態に係る受信回路10の第1及び第2パラメータ調整動作のシミュレーション結果の一例を示す模式図である。
図20において、各模式図の横軸は共通の時間を示し、各模式図の縦軸はタップ係数の値を示している。
図20の(A)及び(B)は、それぞれ第1イコライザ部50及び第2イコライザ部60で使用される一部のタップ係数の変化を示している。
【0156】
図20に示すように、第1及び第2パラメータ調整動作が開始すると、第1イコライザ部50のタップ係数a
-2、a
-1、a
1、及びa
2と、第2イコライザ部60のタップ係数b
0とのそれぞれが変化し始める。例えば、
図19のフローチャートに示されているように、タップ係数a
1は、“T_cur>=T_wait”が満たされている場合(ST23、YES)に、1度更新される(ST34)。一方で、他のタップ係数は、“T_cur>=T_wait”が満たされていない場合(ST23、NO)のサイクル毎に更新されている(ST22)。このため、
図20に示されているように、タップ係数a1の更新頻度は、他のタップ係数の更新頻度よりも低い。そして、例えばCDR回路71がロックすると、各タップ係数の更新が停止する。
【0157】
[2-2]第2実施形態の効果
以上で説明されたように、第2実施形態に係る受信回路10は、所定の判定基準に基づいてCDR用のFFE回路のパラメータを制御する。簡潔に述べると、受信回路10は、まず一度、CDRループで取り扱われる信号を補償するCDR用のFFE回路(第1イコライザ部50)と、データの判定に使用される信号を補償するデータ用のFFE回路及びDFE回路(第2イコライザ部60)とのそれぞれを調整する。そして、受信回路10は、例えば、一定間隔でb0をモニタし、前回モニタしたb0の値と、現在のb0の値との比較結果に基づいて、a1の値を上下させる。
【0158】
例えば、受信回路10は、“P_cur>P_prev”である場合、すなわちアイパターンの開口が広がっている場合に、前回の調整を継続する。一方で、受信回路10は、“P_cur>P_prev”でない場合に、前回と逆方向にa1を調整する。言い換えると、第2実施形態に係る受信回路10は、第2パラメータ調整動作において、第2イコライザ部60の複数のタップのいずれかのタップのタップ係数の値(すなわちゲイン)の変化に基づいて、定期的にTAPpost1のタップ係数a1の値を加算又は減算する。
【0159】
このように、第2実施形態に係る受信回路10は、第1実施形態と同様にCDRによるロック位置の調整機能を活かしつつ、h(1)に対応するタップ係数a1を第1実施形態よりも細かく調整する。その結果、第2実施形態に係る受信回路10は、第1実施形態よりもCDRループで取り扱われる信号のISIを改善させることが出来る。また、第2実施形態に係る受信回路10は、第1実施形態と同様に、クロック信号CKのタイミング調整の精度を向上させることが出来る。
【0160】
また、第2実施形態に係る受信回路10の第2パラメータ調整動作は、センタータップのゲインが小さくなるように、CDR回路71のパラメータを調整する。センタータップのゲインが大きいことは、元の信号の振幅が低いことに対応する。このため、センタータップのゲインが最小であることは、信号の振幅が最大となる位置にCDRがロックすることに対応する。このように、第2実施形態に係る受信回路10は、より好ましい条件でCDRをロックさせることが出来、クロック信号CKのタイミング調整の精度を向上させることが出来る。尚、センタータップのゲインが最小になるように補正することは、CDR用のFFE回路と、データ用のFFE回路とのいずれにも適用することが可能である。
【0161】
[3]第3実施形態
第3実施形態に係る受信回路10は、第1実施形態に係る受信回路10と異なる配置の第1イコライザ部50及び第2イコライザ部60によって、第1実施形態と同様の処理を実行する。以下に、第3実施形態に係る受信回路10について、第1及び第2実施形態と異なる点を説明する。
【0162】
[3-1]構成
[3-1-1]受信回路10の構成
図21は、第3実施形態に係る受信回路10のデジタル信号処理部DSPの構成の一例を示すブロック図である。
図21に示すように、第3実施形態のデジタル信号処理部DSPは、第1実施形態のデジタル信号処理部DSPに対して、ADコンバータ部40と、第1FFE部51A及び第2FFE部61Aとの接続関係が異なる。
【0163】
具体的には、第3実施形態の第1FFE部51Aは、入力されたデジタル値D0毎に、前後のデジタル値の幾つかを用いた補償処理を行い、第2信号S2を生成する。第3実施形態の第2FFE部61Aは、入力されたデジタル値D0毎に、前後の区分のデジタル値の幾つかを用いた補償処理を行い、第3信号S3を生成する。
【0164】
つまり、第3実施形態に係る受信回路10では、第1イコライザ部50と第2イコライザ部60とのそれぞれが、ADコンバータ部40から出力されたデジタル値D0を用いて補償処理を実行する。言い換えると、第3実施形態に係る受信回路10は、クロック信号のタイミング調整で使用される第1イコライザ部50の信号経路と、データDOUTの補償処理で使用される第2イコライザ部60の処理経路とが分離された構成を有する。第3実施形態のデジタル信号処理部DSPのその他の接続関係は、第1実施形態のデジタル信号処理部DSPと同様である。
【0165】
[3-1-2]第1FFE部51Aの構成
図22は、第3実施形態に係る受信回路10が備える第1FFE部51Aの構成の一例を示すダイアグラムである。
図22に示すように、第3実施形態の第1FFE部51Aは、FFE回路510A-1、FFE回路510A-2、及びFFE回路510A-3を含む。FFE回路510A-1、510A-2、及び510A-3のそれぞれは、積算器511、512、513、及び514と、加算器517とを含む。
【0166】
FFE回路510Aの各積算器511は、入力されたデジタル値D0とタップ係数a2とを積算して、積算結果を加算器517に入力する。FFE回路510Aの各積算器512は、入力されたデジタル値D0とタップ係数a1とを積算して、積算結果を加算器517に入力する。FFE回路510Aの各積算器513は、入力されたデジタル値D0とタップ係数a-1とを積算して、積算結果を加算器517に入力する。FFE回路510Aの各積算器514は、入力されたデジタル値D0とタップ係数a-2とを積算して、積算結果を加算器517に入力する。
【0167】
FFE回路510Aの各加算器517は、第3実施形態の第1FFE部51Aにおけるセンタータップに対応している。FFE回路510Aの各加算器517は、関連付けられた積算器511、512、513、及び514からそれぞれ入力された複数の積算結果と、入力されたデジタル値D0とを加算して、加算結果を第2信号S2として出力する。つまり、第3実施形態において、第2信号S2は、第1FFE部51Aが取り扱う全てのタップの出力の合計に対応している。
【0168】
本例において、FFE回路510A-1、510A-2、及び510A-3のそれぞれのセンタータップには、それぞれデジタル値D0[t]、D0[t+1]、及びD0[t+2]が入力される。この場合、FFE回路510A-1の積算器511-1、512-1、513-1、及び514-1には、それぞれデジタル値D0[t-2]、D0[t-1]、D0[t+1]、及びD0[t+2]が入力される。FFE回路510A-2の積算器511-2、512-2、513-2、及び514-2には、それぞれデジタル値D0[t-1]、D0[t]、D0[t+2]、及びD0[t+3]が入力される。FFE回路510A-3の積算器511-3、512-3、513-3、及び514-3には、それぞれデジタル値D0[t]、D0[t+1]、D0[t+3]、及びD0[t+4]が入力される。
【0169】
以下同様に、第1FFE部51Aが含む複数のFFE回路510Aには、ADコンバータ部40によってAD変換処理される時刻の区分が、1区分ずつずれたデジタル値D0が入力される。その結果、FFE回路510A-1、510A-2、510A-3、…、510A-Nは、それぞれ第2信号S2[t]、S2[t+1]、S2[t+2]、…、S2[t+(N-1)]を出力する。
【0170】
[3-1-3]第2FFE部61Aの構成
図23は、第3実施形態に係る受信回路10が備える第2FFE部61Aの構成の一例を示すダイアグラムである。
図23に示すように、第3実施形態の第2FFE部61Aは、FFE回路610A-1、FFE回路610A-2、及びFFE回路610A-3を含む。FFE回路610A-1、610A-2、及び610A-3のそれぞれは、第1実施形態と同様に、積算器611、612、及び613と、加算器614とを含む。
【0171】
第3実施形態において、FFE回路610A-1、610A-2、及び610A-3のそれぞれのセンタータップには、それぞれデジタル値D0[t]、D0[t+1]、及びD0[t+2]が入力される。以下同様に、第2FFE部61Aが含む複数のFFE回路610Aには、ADコンバータ部40によってAD変換処理される時刻の区分が、1区分ずつずれたデジタル値D0が入力される。その結果、FFE回路610A-1、610A-2、610A-3、…、610A-Nは、それぞれ第3信号S3[t]、S3[t+1]、S3[t+2]、…、S3[t+(N-1)]を出力する。第3実施形態に係る受信回路10のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0172】
[3-2]第3実施形態の効果
第3実施形態に係る受信回路10は、第1実施形態と第2実施形態とのいずれとも組み合わされ得る。例えば、第3実施形態に係る受信回路10は、第1実施形態の第2パラメータ調整動作を実行しても良いし、第2実施形態の第2パラメータ調整動作を実行しても良い。このような場合においても、第3実施形態に係る受信回路10は、第1実施形態又は第2実施形態と同様に、CDRループで取り扱われる信号のISIを改善させることが出来、クロック信号CKのタイミング調整の精度を向上させることが出来る。
【0173】
[4]第4実施形態
第4実施形態に係る受信回路10は、差分ERRのばらつきを考慮して、第2パラメータ調整動作を実行する。以下に、第4実施形態に係る受信回路10について、第1~第3実施形態と異なる点を説明する。
【0174】
[4-1]第2制御部90の構成
図24は、第4実施形態に係る受信回路10が備える第2制御部90の構成の一例を示すダイアグラムである。尚、以下で説明される第2制御部90の処理には、第2イコライザ部60内の構成が利用されても良い。
図24に示すように、第4実施形態の第2制御部90Aは、例えば、積算器91、加算器92、ABS回路93、及び平均化回路94を含む。
【0175】
積算器91は、第1実施形態で説明された積算器84と同様である。積算器84は、データDOUTと参照値REF(b0)とを積算して、積算結果を加算器92に入力する。
【0176】
加算器92は、第1実施形態で説明された加算器85と同様である。加算器92は、DFE回路620から出力された第4信号S4と、積算器91から入力された積算結果に(-1)を積算した値とを加算する。言い換えると、加算器92は、第4信号S4(イコライズ結果)から、積算器91から入力された積算結果を減算する。加算器92の加算結果は、差分ERRとして出力され、ABS回路93に入力される。
【0177】
ABS回路93は、加算器92から入力された差分ERRの絶対値を算出する。そして、ABS回路93は、算出結果をABS_OUTとして、平均化回路94に入力する。以下では、ABS回路93による演算処理のことをABS処理と呼ぶ。
【0178】
平均化回路94は、ABS回路93から入力されたABS_OUTを蓄積して、蓄積したABS_OUTの平均値を算出する。そして、平均化回路94は、ABS_OUTの平均値をVA_AVEとして出力する。第4実施形態に係る受信回路10のその他の構成は、第1実施形態に係る受信回路10と同様である。
【0179】
図25は、第4実施形態に係る受信回路10が備える第2制御部90Aの処理を説明するためのヒストグラムである。
図25の左側は、ABS処理が実行される前の第4信号S4の分布を示し、
図25の右側は、ABS処理が実行された後の信号ABS_OUTの分布を示している。
図25に示すように、ABS処理の前では、データDOUTに基づいて、DOUT=1又はDOUT=-1の近傍に第4信号S4(EQ_OUT)が分布する。そして、積算器91による演算により、DOUT=1及びDOUT=-1のそれぞれの信号の分布が統合され、加算器92による演算により、差分ERRが算出される。それからABS処理によって、差分ERRの絶対値(ABS_OUT)が算出され、
図25に示すように、分布の中央からの差分(ばらつき)を表す正の値の分布が形成される。その結果、平均化回路94は、ABS_OUTに基づいて、第4信号S4のばらつきの大きさを算出することが出来る。
【0180】
[4-2]第2パラメータ調整動作
図26は、第4実施形態に係る受信回路10の第2パラメータ調整動作の一例を示すフローチャートである。
図26に示すように、第4実施形態の第2パラメータ調整動作は、第2実施形態の第2パラメータ調整動作において、
図19に示したST31がST40に置き換えられた構成を有する。
【0181】
ST40の処理において、受信回路10は、“P_cur=P_cur+(b0-(β*VA_AVE))”の処理を実行する。すなわち、パラメータP_curに、更新されたタップ係数b0が加算され、VA_AVEに所定の係数βが積算された値が減算される。正規分布を仮定すると、“VA_AVE=σ√(2/π)”となる。例えば、ばらつきが3σまで考慮される場合、“β=3√(π/2)”が設定される。
【0182】
これにより、ST32の処理において、第4信号S4のばらつきが考慮された判定(“P_cur>=P_prev”)が実行される。第4実施形態に係る受信回路10のその他の動作は、第2実施形態に係る受信回路10と同様である。尚、ST40の処理は、第3実施形態の第2パラメータ調整動作においても実行され得る。つまり、第4実施形態と第3実施形態とが組み合わされても良い。
【0183】
[4-3]第4実施形態の効果
以上で説明されたように、第4実施形態に係る受信回路10は、例えば第2データ判定部63によって判定されたデータDOUTと、第4信号S4に基づく期待値との差分の絶対値(ABS_OUT)のばらつきを利用する。そして、第4実施形態に係る受信回路10は、ABS_OUTのばらつき(VA_AVE)を考慮して、且つセンタータップのゲインが小さくなるように、CDR回路71の制御パラメータ(“α”)を調整する。具体的には、受信回路10は、“b0-β*VA_AVE”が最大になるように、CDRループ及びLMSループを実行する。
【0184】
これにより、第4実施形態に係る受信回路10は、第2実施形態よりも高い精度でCDR回路71のパラメータを調整することが出来、より好ましい条件でCDRをロックさせることが出来る。その結果、第4実施形態に係る受信回路10は、第2実施形態よりもクロック信号CKのタイミング調整の精度を向上させることが出来る。尚、ばらつきを考慮してセンタータップのゲインが最小になるように補正することは、CDR用のFFE回路と、データ用のFFE回路とのいずれにも適用することが可能である。
【0185】
[5]第5実施形態
第5実施形態に係る受信回路10は、例えば第3実施形態と同様の構成を有する。第5実施形態のボーレートCDRでは、例えば数式“α*Early値-(1-α)*Late値=0(0.5<α<1)”が満たされるように、“α”が調整される。“Early値”は、h(-1)における信号の強度に対応している。“Late値”は、h(1)における信号の強度に対応している。例えば、CDRループによって、数式“α*Early値-(1-α)*Late値=0(0.5<α<1)”が満たされると、クロック信号CKがロックされる。そして、第5実施形態に係る受信回路10は、CDRループにおけるタップ係数a1の調整を省略する。以下に、第5実施形態に係る受信回路10について、第1~第4実施形態と異なる点を説明する。
【0186】
[5-1]動作
[5-1-1]第2パラメータ調整動作
図27は、第4実施形態に係る受信回路10の第2パラメータ調整動作の一例を示すフローチャートである。
図27に示すように、第5実施形態の第2パラメータ調整動作は、第2実施形態の第2パラメータ調整動作において、
図19に示したST34がST50に置き換えられた構成を有する。
【0187】
ST50の処理において、受信回路10は、“α=α+LR*DIR”の処理を実行する。すなわち、CDRループで使用される“α”が、所定の調整値(LR)と、調整方向(DIR)とに基づいて調整される。第5実施形態の第2パラメータ調整動作のその他の構成は、第2実施形態の第2パラメータ調整動作と同様である。
【0188】
尚、第5実施形態の第2パラメータ調整動作において、ST34の処理が実行されても良い。この場合、ST34の処理は、例えばST50とST35の間に挿入される。また、ST50の処理は、第1~第4実施形態のいずれの第2パラメータ調整動作においても実行され得る。この場合、タップ係数a1の調整に使用されるDIRと、“α”の調整に使用されるDIRとは、独立して管理される。
【0189】
[5-1-2]シミュレーション結果
図28は、第4実施形態に係る受信回路10の第2パラメータ調整動作によるアイパターンの変化の一例を示す模式図であり、2値の信号のアイパターンを例示している。
図28に示された各アイパターンの横軸は時間(位相)を示し、
図28に示された各アイパターンの縦軸は、信号の振幅を示している。
図28の(A)は、第1及び第2パラメータ調整動作が実行される前、すなわち調整前のアイパターンを示している。
図28の(B)は、第1及び第2パラメータ調整動作が実行された前、すなわち調整後のアイパターンを示している。
【0190】
図28に示すように、調整後のアイパターンの開口高さH5は、調整前のアイパターンの開口高さH4よりも高い。また、調整後のアイパターンの開口幅W5は、調整前のアイパターンの開口幅W4よりも広い。すなわち、第2パラメータ調整動作により“α”が調整されたことによって、アイパターンの開口部分が広くなっている。
【0191】
[5-2]第5実施形態の効果
第5実施形態に係る受信回路10は、第2実施形態の第2パラメータ調整動作からTAPpost1の調整が省略され、CDRループにおけるパラメータ“α”の補正を追加した動作を実行する。受信回路10は、第1FFE部51のゲインが小さくなるように調整することによって、信号の振幅が最大となる位置にCDRをロックさせることが出来る。その結果、第5実施形態に係る受信回路10は、より好ましい条件でCDRをロックさせることが出来、クロック信号CKのタイミング調整の精度を向上させることが出来る。
【0192】
[5-3]第5実施形態の変形例
図29は、第5実施形態の変形例に係る受信回路10が備える第1FFE部51Bの構成の一例を示すダイアグラムである。
図29に示すように、第5実施形態の変形例の第1FFE部51Bは、FFE回路510B-1、FFE回路510B-2、及びFFE回路510B-3を含む。第5実施形態の変形例の各FFE回路510Bは、第3実施形態のFFE回路510Aに対して、各積算器512が省略された構成を有する。第5実施形態の変形例に係る受信回路10のその他の構成は、第3実施形態に係る受信回路10と同様である。
【0193】
第5実施形態の変形例のように、受信回路10のCDRループにおいて、TAPpost1が省略されても良い。この場合、カーソルh(1)におけるISIが残存するが、受信回路10は、振幅が最大となる位置でCDRをロックさせることが出来る。第5実施形態の変形例は、CDR用のFFEとデータ用のFFEとのいずれにも適用され得る。
【0194】
[6]変形例等
上記実施形態では、受信回路10に差動信号が入力される場合について例示したが、これに限定されない。受信回路10には、単相信号が入力されても良い。受信回路10は、単相信号が入力される場合においても、デジタル信号処理部DSPが上記実施形態と同様に構成されることによって、上記実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
【0195】
上記実施形態で説明された各構成は、あくまで一例である。第1イコライザ部50及び第2イコライザ部で取り扱われるタップ数に応じて、積算器や加算器の数が適宜変更され得る。また、FFE回路、DFE回路、及びデータ判定器のそれぞれは、遅延回路を備えることによって、信号の処理タイミングを調整しても良い。
【0196】
上記実施形態で説明された各動作は、あくまで一例であり、上記実施形態で説明された内容と同様の結果が得られるのであれば、適宜変更され得る。例えば、各処理が実行される順番が可能な範囲で入れ替えられても良い。また、各STの処理が他の処理に置き換えられても良いし、一部の処理が省略されても良い。
【0197】
上記実施形態では、TAPpost1のタップ係数に、他のタップ係数と異なる調整方法を適用した場合について例示したが、これに限定されない。例えば、TAPpost1に適用された処理を、TAPpre1に適用しても良い。この場合、CDRループにおいて、h(-1)がアンカーの役割をする。つまり、TAPpost1に対する動作がTAPpre1に適用された受信回路10は、上記実施形態と同様にクロック信号CKをロックさせることが出来、上記実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
【0198】
本明細書において、“接続”とは、電気的に接続されている事を示し、例えば間に別の素子を介することを除外しない。“補償処理”は、例えば、イコライザ回路を用いて信号を増幅及び補償する処理のことを示し、“等化処理”と呼ばれても良い。“ADコンバータ”は、AD変換回路と呼ばれても良い。“ADコンバータから出力されるデジタル値”が、“信号”と呼ばれても良い。“クロック制御部”が、クロック制御回路と呼ばれても良い。“第1制御部”及び“第2制御部”は、ある制御回路に割り当てられた機能とみなされても良い。“TAPpre1”は、センタータップの1つ前のタップと呼ばれても良い。“TAPpost1”は、センタータップの1つ後のタップと呼ばれても良い。“センタータップのゲイン”は、例えば第1イコライザ部50においてタップ係数a0に対応し、第2イコライザ部60においてタップ係数b0に対応する。受信回路10によって受信されたデータを処理する装置のことを、“データ処理装置”と呼んでも良い。データ処理装置は、例えば、第1実施形態で説明されたメモリコントローラMSやメモリデバイスMDである。
【0199】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0200】
1…伝送システム、2…送信装置、3…伝送路、4…受信装置、10…ホストインターフェース,受信回路、11…CPU、12…RAM、13…バッファメモリ、14…デバイスインターフェース、40…ADコンバータ部、50…第1イコライザ部、51…第1FFE部、52…第1データ判定部、60…第2イコライザ部、61…第2FFE部、62…DFE部、63…第2データ判定部、70…クロック制御部、71…CDR回路、72…ループフィルタ、73…PI回路、74…PLL回路、75…クロック生成回路、80…第1制御部、81,84…積算器、82,85…加算器、83…判定器、90…第2制御部、91…積算器、92…加算器、93…ABS回路、94…平均化回路、410…変換部、411…ADコンバータ、510,510A,510B…FFE回路、511~514…積算器、515~517…加算器、520…データ判定器、610,610A…FFE回路、611~613…積算器、620…DFE回路、621,622…加算器、623…マルチプレクサ、630…データ判定器、CK…クロック信号、FF…フリップフロップ回路、MD…メモリデバイス、MC…メモリコントローラ、P1,P2…パッド、a-2,a-1,a0,a1,a2,b-2,b-1,b0,b1,b2…タップ係数