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特許7575323運用制御装置及び車両、並びに、車両制御装置の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】運用制御装置及び車両、並びに、車両制御装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/16 20200101AFI20241022BHJP
   B60R 22/48 20060101ALI20241022BHJP
   B60W 40/105 20120101ALI20241022BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20241022BHJP
【FI】
B60W50/16
B60R22/48 105
B60W40/105
B60W50/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021052008
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149732
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 賢二
(72)【発明者】
【氏名】小池 俊博
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-024074(JP,A)
【文献】特開2015-191429(JP,A)
【文献】特開2014-126593(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230545(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 50/16
B60R 22/48
B60W 40/105
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制御する車両制御装置であって、
目標速度と車速とを取得する取得手段と、
音楽を再生する再生手段と、
運転手座席のシートベルトを振動させる振動手段と、
記振動手段を制御する制御手段と
を有し、
前記制御手段は、
前記取得手段で取得した目標速度と車速との速度差に応じたオフセット量を決定し、
2値データであるテンポデータを、前記オフセット量に応じてシフトし、
シフト後のテンポデータを、前記振動手段への駆動信号として供給し、
前記制御手段は、
前記再生手段で再生中の音楽のサンプリングデータに対して、予め設定されたローパスフィルタを用いてフィルタリングを行い、
フィルタリング後のサンプリングデータと予め設定された閾値とを比較し、
比較によって得た2値データをシフト前の前記テンポデータとすることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記振動手段による振動は、前記シートベルトを捲回して収納するためのリトラクタのモータによる、当該シートベルトの所定量の引っ張りと、元に戻す処理を1セットとする処理の繰り返しである
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記テンポデータは、前記再生手段で再生中の音楽とは独立し、所定の記憶媒体に格納されており、
記制御手段は、前記再生手段で再生中の音楽に対応する前記テンポデータ利用する
ことを特徴とする請求項に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記車速が前記目標速度である場合には、前記オフセット量をゼロとして決定し、
前記車速が前記目標速度を下回る場合には、前記テンポデータの2値の出力タイミングを遅らせるように前記オフセット量決定し、
前記車速が前記目標速度を上回る場合には、前記テンポデータの2値の出力タイミングを早めるように前記オフセット量決定する
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記目標速度に対する前記車速との速度差の絶対値が大きいほど、前記オフセット量の絶対値を大きくする
ことを特徴とする請求項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前走車との距離を検出する検出手段を更に有し、
前記制御手段は、
前記検出手段で検出した前記距離が予め設定された車間距離の閾値以下であって、かつ前記車速が予め設定された低速の閾値以下の場合には、前記オフセット量をゼロに決定する
ことを特徴とする請求項又はに記載の車両制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両制御装置を備えた車両。
【請求項8】
運転手座席のシートベルトを振動させる振動手段を有し、車両を制御する車両制御装置の制御方法であって、
目標速度と車速とを取得する取得工程と、
音楽を再生する再生工程と、
記振動手段を制御する制御工程と
を有し、
前記制御工程では、
前記取得工程で取得した目標速度と車速との速度差に応じたオフセット量を決定し、
2値データであるテンポデータを、前記オフセット量に応じてシフトし、
シフト後のテンポデータを、前記振動手段への駆動信号として供給し、
前記制御工程では、
前記再生工程で再生中の音楽のサンプリングデータに対して、予め設定されたローパスフィルタを用いてフィルタリングを行い、
フィルタリング後のサンプリングデータと予め設定された閾値とを比較し、
比較によって得た2値データをシフト前の前記テンポデータとすることを特徴とする車両制御装置の制御方法。
【請求項9】
運転手座席のシートベルトを振動させる振動手段を有し、車両を制御する車両制御装置におけるプロセッサが読み込み実行するプログラムであって、
前記プロセッサに、
目標速度と車速とを取得する取得工程と、
音楽を再生する再生工程と、
記振動手段を制御する制御工程と
を実行させ
前記制御工程では、
前記取得工程で取得した目標速度と車速との速度差に応じたオフセット量を決定し、
2値データであるテンポデータを、前記オフセット量に応じてシフトし、
シフト後のテンポデータを、前記振動手段への駆動信号として供給し、
前記制御工程では、
前記再生工程で再生中の音楽のサンプリングデータに対して、予め設定されたローパスフィルタを用いてフィルタリングを行い、
フィルタリング後のサンプリングデータと予め設定された閾値とを比較し、
比較によって得た2値データをシフト前の前記テンポデータとするためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置及び車両、並びに、車両制御装置の制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路等を運転中、知らずに車速が低下し、渋滞の発生要因となることがある。所謂、サグ部で発生する渋滞がその典型である。そのために、サグ部の付近には、「速度低下注意!!」等の標識が配置されていることが多い。それでも渋滞が発生する理由としては、その標識の見逃しや、スピードメータのこまめなチェックを行っていない等が一要因と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-101336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車速が法定速度から逸脱したことをトリガに、警告を発生する技術が知られている(特許文献1)。しかしながら、法定速度からの逸脱に起因する突然の警告は、運転者は勿論、同乗者にも緊張感を与えるものである。少なくともサグ部等での速度低下の場合は、突然の警告ではなく、運転者にとっては穏やかな速度アップを促す程度の注意喚起で十分であり、なおかつ、同乗者には注意喚起も不要と言える。
【0005】
本発明の目的は、目標速度での走行時と目標速度から逸脱した速度での走行時とで、シートベルトの振動のタイミングを異なるようにすることで、速度の異変を穏やかに運転者に通知させ、サグ部等における渋滞発生を抑制する技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、例えば本発明の運転制御装置は以下の構成を備える。すなわち、
車両を制御する車両制御装置であって、
目標速度と車速とを取得する取得手段と、
音楽を再生する再生手段と、
運転手座席のシートベルトを振動させる振動手段と、
記振動手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記取得手段で取得した目標速度と車速との速度差に応じたオフセット量を決定し、
2値データであるテンポデータを、前記オフセット量に応じてシフトし、
シフト後のテンポデータを、前記振動手段への駆動信号として供給し、
前記制御手段は、
前記再生手段で再生中の音楽のサンプリングデータに対して、予め設定されたローパスフィルタを用いてフィルタリングを行い、
フィルタリング後のサンプリングデータと予め設定された閾値とを比較し、
比較によって得た2値データをシフト前の前記テンポデータとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転手に対し、目標速度に対して差が発生していることを、突発的な警告ではなく、振動のタイミングのずれを利用した穏やかに通知でき、目標速度での走行を促すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車両及び制御装置のブロック図。
図2】実施形態におけるシートベルトの振動タイミングを説明するための図。
図3】第1実施形態におけるシートベルトの振動に係る構成を示す図。
図4】音楽再生とシートベルト制御部との関係と構成を示す図。
図5】フラグデータの設定方法を説明するための図。
図6】第1実施形態におけるシートベルト制御部における処理内容を示すためのフローチャート。
図7】第2実施形態における音楽ファイルとリズムファイルの格納状態を示す図。
図8】第2実施形態におけるシートベルトの振動に係る構成を示す図。
図9】第2実施形態におけるシートベルト制御部における処理内容を示すためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る車両V及びその制御装置1のブロック図である。図1において、車両Vはその概略が平面図と側面図とで示されている。車両Vは一例としてセダンタイプの四輪の乗用車である。
【0011】
本実施形態の車両Vは、例えばパラレル方式のハイブリッド車両である。この場合、車両Vの駆動輪を回転させる駆動力を出力する走行駆動部であるパワープラント50は、内燃機関、モータおよび自動変速機を含むことができる。モータは車両Vを加速させる駆動源として利用可能であると共に減速時等において発電機としても利用可能である(回生制動)。
【0012】
<制御装置>
図1を参照して車両Vの車載装置である制御装置1の構成について説明する。制御装置1は、ECU群(制御ユニット群)2を含む。ECU群2は、互いに通信可能に構成された複数のECU20~28を含む。各ECUは、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶デバイスにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。各ECUはプロセッサ、記憶デバイスおよびインタフェース等を複数備えていてもよい。なお、ECUの数や、担当する機能については適宜設計可能であり、本実施形態で示すECUを更に細分化したり、あるいは、統合することが可能である。なお、図1においてはECU20~28の代表的な機能の名称を付している。例えば、ECU20には「運転制御ECU」と記載している。
【0013】
ECU20は、車両Vの自動運転を含む運転支援に関わる制御を実行する。自動運転においては車両Vの駆動(パワープラント50による車両Vの加速等)、操舵および制動を、運転者の操作を要せずに自動的に行う。また、ECU20は、手動運転において、例えば、衝突軽減ブレーキ、車線逸脱抑制等の走行支援制御を実行可能である。衝突軽減ブレーキは、前方の障害物との衝突可能性が高まった場合にブレーキ装置51の作動を指示して衝突回避を支援する。車線逸脱抑制は、車両Vが車線を逸脱する可能性が高まった場合に、電動パワーステアリング装置41の作動を指示して車線逸脱回避を支援する。また、ECU20は自動運転、手動運転のいずれにおいても車両Vを先行車に自動追従させる自動追従制御を実行可能である。自動運転の場合、車両Vの加速、減速及び操舵の全てを自動で行ってもよい。手動運転の場合、車両Vの加速と減速を自動で行ってもよい。
【0014】
ECU21は、車両Vの周囲状況を検知する検知ユニット31A、31B、32A、32Bの検知結果に基づいて、車両Vの走行環境を認識する環境認識ユニットである。本実施形態の場合、検知ユニット31A、31Bは、車両Vの前方を撮影するカメラであり(以下、カメラ31A、カメラ31Bと表記する場合がある。)、車両Vのルーフ前部でフロントウィンドウの車室内側に取り付けられる。カメラ31Aが撮影した画像の解析により、物標の輪郭抽出や、道路上の車線の区画線(白線等)を抽出可能である。
【0015】
本実施形態の場合、検知ユニット32Aは、ライダ(Light Detection and Ranging)であり(以下、ライダ32Aと表記する場合がある)、車両Vの周囲の物標を検知したり、物標との距離を測距する。本実施形態の場合、ライダ32Aは5つ設けられており、車両Vの前部の各隅部に1つずつ、後部中央に1つ、後部各側方に1つずつ設けられている。検知ユニット32Bは、ミリ波レーダであり(以下、レーダ32Bと表記する場合がある)、車両Vの周囲の物標を検知したり、物標との距離を測距する。本実施形態の場合、レーダ32Bは5つ設けられており、車両Vの前部中央に1つ、前部各隅部に1つずつ、後部各隅部に一つずつ設けられている。
【0016】
ECU22は、電動パワーステアリング装置41を制御する操舵制御ユニットである。電動パワーステアリング装置41は、ステアリングホイールSTに対する運転者の運転操作(操舵操作)に応じて前輪を操舵する機構を含む。電動パワーステアリング装置41は、操舵操作のアシストあるいは前輪を自動操舵するための駆動力(操舵アシストトルクと呼ぶ場合がある。)を発揮するモータを含む駆動ユニット41a、操舵角センサ41b、運転者が負担する操舵トルク(操舵負担トルクと呼び、操舵アシストトルクと区別する。)を検知するトルクセンサ41c等を含む。ECU22は、また、運転者がステアリングホイールSTを把持しているか否かを検知するセンサ36の検知結果を取得可能であり、運転者の把持状態を監視することができる。
【0017】
ステアリングホイールSTの近傍には、ウィンカレバー51、52が設けられている。ウィンカレバー51、52に対する乗員の操作により、対応する左右の方向指示器(不図示)を作動させることができる。また、本実施形態では、車両Vの自動進路変更を、ウィンカレバー51、52に対する操作により乗員が指示可能である。自動進路変更の指示として、例えば、乗員は、ウィンカレバー51に対する操作により左側の車線への車線変更を指示可能であり、また、ウィンカレバー52に対する操作により右側の車線への車線変更を指示可能である。乗員による進路変更の指示は、自動運転中或いは自動追従制御中に受け付け可能であってもよい。
【0018】
ECU23は、油圧装置42を制御する制動制御ユニットである。ブレーキペダルBPに対する運転者の制動操作はブレーキマスタシリンダBMにおいて液圧に変換されて油圧装置42に伝達される。油圧装置42は、ブレーキマスタシリンダBMから伝達された液圧に基づいて、四輪にそれぞれ設けられたブレーキ装置(例えばディスクブレーキ装置)51に供給する作動油の液圧を制御可能なアクチュエータであり、ECU23は油圧装置42が備える電磁弁等の駆動制御を行う。また、制動時にECU23はブレーキランプ43Bを点灯可能である。これにより後続車に対して車両Vへの注意力を高めることができる。
【0019】
ECU23および油圧装置42は電動サーボブレーキを構成することができる。ECU23は、例えば、4つのブレーキ装置51による制動力と、パワープラント50が備えるモータの回生制動による制動力との配分を制御することができる。ECU23は、また、四輪それぞれに設けられた車輪速センサ38、ヨーレートセンサ(不図示)、ブレーキマスタシリンダBM内の圧力を検知する圧力センサ35の検知結果に基づき、ABS機能、トラクションコントロールおよび車両Vの姿勢制御機能を実現することも可能である。
【0020】
ECU24は、後輪に設けられている電動パーキングブレーキ装置(例えばドラムブレーキ)52を制御する停止維持制御ユニットである。電動パーキングブレーキ装置52は後輪をロックする機構を備える。ECU24は電動パーキングブレーキ装置52による後輪のロックおよびロック解除を制御可能である。
【0021】
ECU25は、車内に情報を報知する情報出力装置43Aを制御する車内報知制御ユニットである。情報出力装置43Aは例えばヘッドアップディスプレイやインストルメントパネルに設けられる表示装置、或いは、音声出力装置を含む。更に、振動装置を含んでもよい。ECU25は、例えば、車速や外気温等の各種情報や、経路案内等の情報、車両Vの状態に関する情報を情報出力装置43Aに出力させる。この情報出力装置43Aは、各種情報を表示するための表示装置、DVD/CDドライブ、SDカード等の外部機器を接続するためのスロットやインタフェース(USB等)、並びに、音声や音楽等を再生するためのスピーカを有する。更に詳細は後述するが、ECU25は、音楽再生に連動した運転席のシートベルトを振動させるシートベルト制御部としても機能する。
【0022】
ECU26は、車間通信用の通信装置26aを備える。通信装置26aは、周辺の他車両と無線通信を行い、車両間での情報交換を行う。
【0023】
ECU27は、パワープラント50を制御する駆動制御ユニットである。本実施形態では、パワープラント50にECU27を一つ割り当てているが、内燃機関、モータおよび自動変速機のそれぞれにECUを一つずつ割り当ててもよい。ECU27は、例えば、アクセルペダルAPに設けた操作検知センサ34aやブレーキペダルBPに設けた操作検知センサ34bにより検知した運転者の運転操作や車速等に対応して、内燃機関やモータの出力を制御したり、自動変速機の変速段を切り替える。なお、自動変速機には車両Vの走行状態を検知するセンサとして、自動変速機の出力軸の回転数を検知する回転数センサ39が設けられている。車両Vの車速は、回転数センサ39の検知結果から演算可能である。
【0024】
ECU28は、車両Vの現在位置や進路を認識する位置認識ユニットである。ECU28は、ジャイロセンサ33、GPSセンサ28b、通信装置28cの制御、および、検知結果あるいは通信結果の情報処理を行う。ジャイロセンサ33は車両Vの回転運動を検知する。ジャイロセンサ33の検知結果等により車両Vの進路を判定することができる。GPSセンサ28bは、車両Vの現在位置を検知する。通信装置28cは、地図情報や交通情報を提供するサーバと無線通信を行い、これらの情報を取得する。データベース28aには、高精度の地図情報を格納することができ、ECU28はこの地図情報等に基づいて、車線上の車両Vの位置をより高精度に特定可能である。
【0025】
入力装置45は運転者が操作可能に車内に配置され、運転者からの指示や情報の入力を受け付ける。
【0026】
<制御例>
車両Vの運転制御モードには、乗員の操作により選択可能な自動運転モードと手動運転モードがある。そして、自動運転モードには、車両Vを、走行中の車線(レーン)を維持する車線維持支援モード(LKAS(Lane Keep Assist System)モード)、設定した速度を上限とし、前走車との車間距離を維持して追従走行する追従支援モード(ACC(Adaptive cruise control)モード)がある。本実施形態の主眼とするのは、少なくとも、後者のACCモードがOFFの場合の走行時の制御にある。そこで、以下では、このACCモードがOFFの場合(手動運転モードの場合を含む)について説明する。
【0027】
本実施形態で概要を説明すると次の通りである。
【0028】
一般に、高速道路においては、速度が指定されていればその速度、速度指定の無い区間の場合は100km/hが上限速度となる。そして、サグ部では、運転者が気づかず車速が低下し、その結果、渋滞が発生することがある。
【0029】
本実施形態では、高速道路走行中において、現在の車速が目標速度から逸脱した場合にシートベルトの振動を利用して、運転手のみに通知する。ただし、目標速度から逸脱したことをトリガにして、シートベルトの振動を開始すると、運転者には、それまでになかった振動を与えてしまうので、運転者は緊張してしまう。本実施形態では、目標速度からの逸脱を、穏やかに運転手に通知する。具体的には、目標速度から逸脱した場合、その事実を「シートベルトの振動のタイミング」を利用して通知する。つまり、速度逸脱が発生する前後で再生中の音楽に合わせた振動を提供しつつも、その振動のタイミングを制御することで、目標速度での走行中か逸脱した速度かを運転手に知覚させる。更に、実施形態では、目標速度に対する実際の車速との差の度合(速度不足、速度超過等も含む)をも、運転手に通知する例を説明する。
【0030】
シートベルトの振動方法としては、シートベルトを収納するリトラクタ内に設けられた、シートベルト捲回用のモータによる駆動を利用する。
【0031】
以下は、上記を実現する第1実施形態を説明する。
【0032】
本実施形態では、再生対象の音楽の発生源の種類は特に問わない。ただし、説明を単純化するため、音楽の発生源は、音響データの圧縮技術として知られている“MP3”形式の音楽ファイルを記憶している記録媒体(SDカードが代表例)とする。そして、この記憶媒体が、情報出力装置43Aに既に装着され、運転手による情報出力装置43Aの操作によって選択された音楽ファイルを再生するものとする。
【0033】
人間は、音楽を複数の楽器(音声を含む)の合成音として聞く。本願の発明者は、その際の音楽のテンポは、比較的周波数の低い音で、且つ、有る程度は大きめの音が発生する時間間隔とすれば良いと考えた。そこで、本実施形態では、音楽ファイルをデコード(復号)して得た、時系列のサンプリングデータに対し、低周波成分のみを通過するLPF(ローパスフィルタ)を用いたフィルタリング処理を行う。そして、強度(振幅)が閾値を超えるサンプリングデータの時間的な存在位置を検出し、その位置を、その音楽のリズムの代表位置とする「テンポ」として検出するようにした。なお、ローパスフィルタの典型は、連続するN個のサンプルデータの平均値を、その中央位置のフィルタリング後のサンプルデータとすれば良い。
【0034】
また、実施形態では、運転者がシートベルトを装着した初期の第1状態からシートベルトを予め設定された長さだけ捲回した(引っ張った)第2状態にする移行する処理、及び、この第2状態から第1状態に戻す処理とを1セット分の振動処理とする。そして、再生中の音楽のテンポに対して、現在の車速と目標速度との速度差に応じたオフセットを持つタイミングで、上記1セットの処理を行う。
【0035】
本実施形態における目標速度とは、目標上限速度VHと目標下限速度VLで規定される許容範囲を持つ速度とする。目標上限速度VHは、ECU21により速度標識を検出した場合はその標識で示された速度、もしくは、速度標識が未検出の場合は100km/hとする。また、目標下限速度VLは、目標上限速度VHから所定の相対速度(例えば-7km/h)だけ低い速度とする。ただし、運転手が、目標速度(目標上限速度VH、目標下限速度VL)を設定した場合には、その値に従うものとする。
【0036】
図2は、実施形態におけるシートベルトの振動タイミングを説明するための図である。図示の水平軸が時間軸であり、時間は左から右に流れるものとして示している。信号201は、再生中の音楽ファイルのサンプリングデータのLPF処理後の信号波形を示しており、垂直軸は信号の強さ(音の強さ)を示している。そして、時間的に、閾値202を超えるタイミングを、その音楽のテンポの位置とする。
【0037】
信号203~205は、シートベルトが振動するタイミングを示す2値の信号である。
【0038】
信号203は、走行中の車速Vcが目標速度走行状態の場合(VL≦Vc≦VHの場合)の、シートベルトに対する振動のタイミング(図示では3箇所)を示している。図示の通り、シートベルトを振動するタイミングは、再生中の音楽のテンポのそれと一致しているので、運転手に対して、心地よい振動として知覚させることができる。
【0039】
信号204は、車速Vcが目標速度に対して不足している場合(Vc<VLの場合)の、シートベルトに対する振動のタイミングを示している。図示の通り、シートベルトを振動するタイミングに対して、予め設定した時間αだけ遅れたタイミングでシートベルトが振動する。再生中の音楽のテンポよりも遅れたタイミングでシートベルトが振動することになるので、運転手にとっては視聴中の音楽に対して遅れたタイミングでシートベルトが振動する。この結果、運転手に対して、音楽に対するシートベルトの振動が違和感として伝えることができ、結果的に、運転手に対して「車速不足」を通知、もしくは「加速」を促すことができる。
【0040】
信号204は、車速Vcが目標速度に対して超過している場合(VH<Vcの場合)の、シートベルトに対する振動のタイミングを示している。図示の通り、シートベルトを振動するタイミングに対して、予め設定した時間αだけ前のタイミングでシートベルトが振動する。再生中の音楽のテンポよりも先んじたタイミングでシートベルトが振動することになるので、運転手にとっては視聴中の音楽に対して先んじたタイミングでシートベルトが振動することになり、「速度超過足」を通知、もしくは「減速」を促すことができる。
【0041】
図3は、第1実施形態における運転座席のシートベルトの振動駆動に係る構成を示す図である。
【0042】
図示の符号200がシートベルトを示している。また、符号210はシートベルトの一端を捲回収納するリトラクタであり、シートベルトの捲回(引っ張り)、解放(緩める)を行うモータ211を有する。ECU25は、情報出力装置43Aを制御したり、音楽ファイルを再生する機能、シートベルトの振動を行うことは既に説明している。説明を簡略化するため、ここでは、ECU25は、情報出力装置43Aが有するスピーカ220、並びに、リトラクタ210(のモータ211)との通信可能に接続されているものとしている。そして、このECU25が、その一部の機能として、シートベルト200の振動の制御を行うシートベルト制御部240を有する。また、このシートベルト制御部240は、他のECUと通信可能であり、例えば、車速VcはECU27との通信で取得でき、目標速度はECU21が検出した速度標識の認識結果から取得できるようになっている。
【0043】
上記構成において、ECU25は、ユーザが選択した音楽ファイルを再生する処理と平行して、シートベルト制御部240としての機能を果たすことになる。なお、シートベルトの振動制御を、音楽再生とは独立したECUで実現しても構わない。そして、シートベルト制御部240は、入力した車速Vc、目標速度(目標上限速度VH,目標下限速度VL)とに基づき、シートベルトの駆動タイミング信号を生成し、生成した信号に基づいてリトラクタ210のモータ211の駆動制御を行う。
【0044】
ここで、ECU25を含む、音楽再生に係る構成とシートベルト制御部240の、より詳しい構成とその関係を図4に示す。
【0045】
図示の参照符号401は、再生対象の音楽ファイル(実施形態ではMP3による圧縮音響データのファイル)を格納した記憶媒体を示している。デコーダ402は、再生対象の音楽ファイルから符号化データを読み出し、復号処理を行って時系列の音響のサンプリングデータを生成する。そして、デコーダ402は、生成したサンプリングデータをオーディオバッファ451への格納する。出力部403は、自身内に、或る程度の容量の内部バッファメモリ(図示せず)を有し、オーディオバッファ451に格納されたデータを順に内部バッファメモリに格納しては、内部バッファメモリの古い順にD/A変換、増幅処理を行い、スピーカ220にアナログの音響信号として供給することで、音楽ファイルを再生する。出力部403が、オーディオバッファ451内のサンプリングデータの最後のデータを内部バッファメモリへの読み込んだとき(内部バッファに未再生のデータが残っている)、デコーダ402は、再生中の音楽ファイルにおける、未再生の符号化データの読み込みと復号処理を行い、オーディオバッファ451にサンプリングデータを満たす処理を行う。
【0046】
なお、実施形態におけるオーディオバッファ451は、たとえば2秒分のサンプリングデータを格納可能としている。サンプリング周波数が44.1kHzであるとすると、オーディオバッファ451には、44100×2=88200個のサンプリングデータが格納可能となる。1サンプル当たり2バイトとすると、オーディオバッファ451は、88200×2≒約180kバイト程度あれば十分である。
【0047】
フラグバッファ453は、オーディオバッファ451と同数のデータを格納可能である。このフラグバッファ453は、解析部&設定部452によりデータが格納される直前に、全クリア(全て“0”)される。
【0048】
解析部&設定部452は、オーディオバッファ451に、サンプリングデータが満たされたタイミングで、その全サンプリングデータに対してLPFフィルタ処理を行う。そして、フィルタ処理後の全サンプリングデータにおいて閾値202を超える位置を“1”、それ以外を“0”とする2値(1ビット)信号で表される、計88200ビットのテンポデータを生成する。
【0049】
また、解析部&設定部452は、テンポデータを生成した際、そのときの車速Vcと目標速度(目標上限速度VH,目標下限速度VL)とを入力し、車両Vが、目標速度走行状態(VL≦Vc≦VH)、速度不足状態(Vc<VL)、速度超過状態(VH<Vc)のいずれであるかを判定する。
【0050】
目標速度走行状態であるとき、解析部&設定部452は、生成したテンポデータを加工せずにフラグデータとして、フラグバッファ453に格納する。
【0051】
また、速度不足状態であるとき、解析部・設定部452は、生成したテンポデータを、時間αに相当するビット数だけ左方向(時間的に遅れる方向)にシフトする加工処理を行い、その処理後のテンポデータをフラグデータとしてフラグバッファ453に格納する。図5を参照して、このときのオーディオバッファ451に基づく、フラグバッファ453のフラグデータの生成処理を説明する。図示の▼印が、再生中の音楽ファイルから検出したテンポ位置(LPF処理後のサンプリングデータにおける閾値200を超える位置)を示している。実施形態の解析部&設定部452は、速度不足状態にあるとき、テンポ位置(“▼”で示すタイミング)を示すテンポデータから、時間αだけ遅れた位置に“1”となるフラグデータを生成する。
【0052】
なお、サンプリング周波数が44.1kHzで、α=0.2秒とした場合、シフトするビット数は8820ビットとなる。
【0053】
一方、速度超過状態であるとき、解析部&設定部452は、生成したテンポデータを、時間αに相当するビット数だけ右方向(時間的に先んじる方向)にシフトする加工処理を行い、その処理後のテンポデータを、フラグデータとして、フラグバッファ453に格納する。速度超過状態における、フラグバッファ453へのフラグデータを格納する場合には、ビットシフトする方向が図5と逆になるだけであるので、図を用いた説明は省略する。
【0054】
駆動部454は、内部バッファメモリ(図示せず)を有する。この内部バッファメモリに格納できるフラグデータの個数は、出力部402が有する内部バッファが格納可能なサンプルデータの個数と同数である。この結果、オーディオバッファ451とフラグバッファ453における同じ位置のデータは、同じ出力タイミングとなる。
【0055】
そして、駆動部454は、フラグバッファ453に格納されたデータを順に内部バッファメモリに格納する。そして、駆動部454は、内部バッファの古い順にフラグを読み出し、その値が“0”の場合は何もせず、“1”の場合はリトラクタ210のモータ211に対する「1セット分」の駆動信号を出力する。
【0056】
上記の結果、目標速度走行状態である場合は、駆動部454は、リトラクタ210のモータ211に対して、図2の信号203に相当するタイミングのモータ駆動信号を出力することになり、音楽のテンポの一致した心地よいシートベルトの振動を運転者に与えることができる。また、速度不足状態である場合は、駆動部454は、図2の信号204に相当するタイミングのモータ駆動信号を出力する。これにより、再生中の音楽のテンポに対して不自然に遅れたタイミングのシートベルトの振動を運転者に与え、運転者に対して加速を促すことができる。そして、速度超過状態である場合は、駆動部454は、図2の信号203に相当するタイミングのモータ駆動信号を出力する。これにより、再生中の音楽のテンポに対して不自然に早いタイミングのシートベルトの振動を運転者に与え、運転者に対して減速を促すことができる。
【0057】
図6は、音楽ファイルの再生中における、シートベルト制御部240(ECU25)の処理を示すフローチャートである。以下同図を参照して、シートベルト制御部240の処理を説明する。なお、上記では時間αを、「遅らせる」、「先んじる」という表現を持ち用いて説明したが、以降では、技術的に明確にするため、“α”そのものは正の値であり、その直前に負の符号をつけた場合は遅れることを、正の符号をつけた場合は先んじることを表すものとして説明する。
【0058】
S601にて、シートベルト制御部240は、車速Vc、及び目標速度(目標上限速度VH,目標下限速度VL)を取得する。
【0059】
S602にて、シートベルト制御部240は、車速Vcと目標速度との関係が、目標速度走行状態(VL≦Vc≦VH)、速度不足状態(Vc<VL)、速度超過状態(VH<Vc)のいずれであるかを判定する。
【0060】
速度不足状態であると判定した場合、シートベルト制御部240は、S603にて、シートベルトの駆動タイミングのオフセットΔtに、「-α」を設定する。目標速度走行状態にある場合、シートベルト制御部240は、S604にて、シートベルトの駆動タイミングのオフセットΔtに、「0(ゼロ)」を設定する。そして、速度超過状態である場合、シートベルト制御部240は、S605にて、シートベルトの駆動タイミングのオフセットΔtに、「+α」を設定する。
【0061】
次に、S606にて、シートベルト制御部240は、再生中の音楽ファイルから符号化データを読み込み、デコード処理を行って、オーディオのサンプリングデータを生成し、オーディオバッファ451に格納する。
【0062】
S607にて、シートベルト制御部240は、オーディオバッファ451に格納されたサンプリングデータに対してLPF処理、閾値との比較処理を行って、テンポデータを作成する。
【0063】
S608にて、シートベルト制御部240は、作成したテンポデータを、オフセットΔtの符号が示す方向に、その絶対値に応じた分だけシフトすることで、フラグデータを生成し、フラグバッファ453に格納する。
【0064】
以降、出力部403による、オーディオバッファ451内の全サンプリングデータの読み出し完了の通知を受ける度に、シートベルト制御部240は、S601以降の処理を繰り返すことになる。
【0065】
以上説明したように本第1実施形態によれば、目標速度に対する現実の車速の速度差を、再生中の音楽のテンポに対するシートベルトの継続的な振動とそのタイミングで通知することで、運転手のみに、且つ、運転手に対して緊張感を与えずに、現状維持で問題ないこと、或いは、加速、減速のいずれかを促すことができる。
【0066】
また、上記実施形態では、再生対象の音楽が、MP3形式の音楽ファイルであるものとして説明したが、再生直前で、音響サンプリングデータを生成するものであれば、その種類は問わない。例えば、音楽CDであっても、そこに記録されたデータをデコードして再生するので、当然、CDであっても対象とすることができるし、他の形式のファイルにも適用できることは明らかである。
【0067】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、再生する音楽ファイルからサンプリングデータを生成し、そのサンプリングデータに対してLPF処理、閾値比較処理を行ってテンポデータを生成した。そして、車速度と目標速度との速度差に応じて、テンポデータのシフト方向とシフト量を決め、フラグデータを生成した。したがって、生成されるテンポデータは、実際の音楽における低周波成分に基づくものであるものの、例えばドラムスやその他のベース楽器の音に同期したものとなるとは限らない。そこで、本第2実施形態では、音楽データの製作者(もしくは、音楽データを視聴するユーザ)が、PC等を利用して、その音楽に特化したテンポデータを個別に作成し、そのテンポデータを利用する例を、第2実施形態として説明する。
【0068】
図7は、記憶媒体401のデータ格納状況を示している。図示の記憶媒体401の例では2つのフォルダが存在し、一方には、音楽データファイル701、702、703…が格納され、もう一方には、対応するリズムデータファイル711,712,713が格納されていることを示している。音楽データファイルは、MP3形式のファイルであるので、拡張子が“mp3”となっている。リズムデータファイルは、拡張子がリズム(テンポ)データであることを示す“bpm”(beat per minute)となっている。本第2実施形態におけるリズムデータファイルは、第1の実施形態のように、音響データの1サンプリングデータに対して1ビットの2値データのストルーム形式であり、この2値データのストリームが圧縮符号化されているものとする。圧縮の種類はデコーダ402がデコードできる限り、とくに問わない(例えばランレングス符号化)。音楽データファイルと、リズムデータファイルとの対応づけは、拡張子を除くファイル名を共通化させることで行う。
【0069】
図8は、本第2実施形態における、ECU25を含む、音楽再生に係る構成と、シートベルト制御部240とのより詳しい構成図である。第1実施形態の図4との違いは、デコーダ402は、音楽データファイルだけでなく、リズムデータファイルをもデコード対象とする点、デコードして得たリズムデータをテンポデータとして格納するためのフラグバッファ801が追加された点、解析&設定部452が解析する対象が、オーディオバッファ451ではなく、フラグバッファ801となった点である。そして、フラグバッファ801は、フラグバッファ453と同じ容量である。
【0070】
第1の実施形態と同様、解析&設定部452は車速と目標速度に基づいて車両Vの走行状態が、目標速度走行状態、速度不足状態、速度超過状態のいずれあるかを判定し、その判定に基づきオフセットΔtを決定する。
【0071】
本第2の実施形態の解析&設定部452は、フラグバッファ801に格納されたテンポデータを、オフセットΔtで示される方向とシフト量に従い、ビットシフトを行い、その結果をフラグバッファ453に格納する(このとき、シフトで空白領域が発生する場合は“0”で埋められるものとする)。つまり、第2の実施形態では、第1実施形態で行っていたLPF処理、閾値比較処理は不要となる。
【0072】
図9は、本第2実施形態における、シートベルト制御部240(ECU25)の処理を示すフローチャートである。以下、同図を参照して、第2実施形態におけるシートベルト制御部240の処理を説明する。
【0073】
S901乃至S906までは、図4のS601~S606と同じであるので、その説明は省略する。
【0074】
S907にて、シートベルト制御部240は、リズムデータファイルをデコードし、テンポデータとして生成し、そのテンポデータをフラグバッファ801に格納する。
【0075】
S908にて、シートベルト制御部240は、フラグバッファ801に格納されたテンポデータを、オフセットΔtで示される方向と、ビット数でシフトする。
【0076】
S909にて、シートベルト制御部240は、シフト処理後のテンポデータを、フラグバッファ453に格納する。
【0077】
以降、出力部403による、オーディオバッファ451内の全サンプリングデータの読み出し完了の通知を受ける度に、シートベルト制御部240は、S901以降の処理を繰り返すことになる。
【0078】
上記第2の実施形態によれば、音楽データファイルに特化したリズムデータファイルを利用して、運転者が装着したシートベルトの振動で、加速、現状維持、減速で促すことができる。
【0079】
[他の実施形態]
上記第1、第2実施形態では、目標速度に対する速度不足(又は速度超過)の場合、一律に決まった1つのオフセット量±αずらして、シートベルトを振動させた。しかしながら、目標速度に対する車速との速度差に応じて、予め用意した多段階のオフセット量の中の1つを選択するようにしても良い。例えば、速度不足の場合で、目標速度との差(絶対値)が小さい場合は-α、その差が大きい場合は-2α、更に大きい場合には-3α、…を選択する、という具体である。速度超過の場合も同様である。
【0080】
また、目標速度に対する速度不足(又は速度超過)の場合、目標速度に対する車速との差(の絶対値)が大きいほど、シートベルトの引っ張る量を増やすようにしても良い。また、引っ張る量と、オフセット量とを組み合わせても構わない。
【0081】
また、速度不足(対サブ部での速度低下)への対処だけで、速度超過時の処理を不要としても良い。この場合は、図6のS602、及び、図9のS902では、速度不足か否か(Vc<VLか否か)を判定するようにし、非速度不足の場合にはS604、又はS904に移行するようにする。そして、S605,S905を削除すればよい。
【0082】
速度不足(対サブ部での速度低下)への対処だけとするか、それに加えて速度超過時の処理も付加するかを、ユーザによる操作で選択可能としても良い。
【0083】
また、走行中に渋滞に巻き込まれると必然的に低速走行となる。その場合の「速度不足」は運転者とは無関係であるので、前走車との車間距離(ECU21からの情報を利用)が所定値以下となったという条件を満たす場合は、車速とは無関係に、シートベルトの振動のオフセット量αを“0”としても良い。
【0084】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は、少なくとも以下の実施形態を開示する。
【0085】
1.上記実施形態の車両制御装置(例えば1)は、
車両を制御する車両制御装置であって、
目標速度と車速とを取得する取得手段(S601)と、
音楽を再生する再生手段(図4)と、
運転手座席のシートベルトを振動させる振動手段(211)、
前記取得手段で取得した目標速度と車速との速度差に基づき、前記再生手段で再生中の音楽のテンポに対するオフセット量を求め、当該オフセット量に従って前記振動手段を制御する制御手段(240)とを有する。
【0086】
この実施形態によれば、音楽のテンポとシートベルトを振動させるタイミングとを、目標速度に対する車速の速度差に応じたものとできる。したがって、運転手に対しては、例えば速度不足の状態になった場合には、それ以前に対して違和感の有る振動として体感するだけであるので、その事実を穏やかに通知することができる。
【0087】
2.上記実施形態では、
前記振動手段による振動は、前記シートベルトを捲回して収納するためのリトラクタのモータによる、当該シートベルトの所定量の引っ張りと、元に戻す処理を1セットとする処理の繰り返しである(211)。
【0088】
この実施形態によれば、リトラクタが有するモータを振動に有効活用できる。
【0089】
3.上記実施形態では、
前記制御手段は、
前記速度差に応じたオフセット量を決定し、(S603乃至605)
前記再生手段で再生中の音楽のリズムを表す2値のテンポデータを、前記オフセット量に応じてシフトし、(S608)
シフト後のテンポデータを、前記駆動手段への駆動信号として供給する(454)。
【0090】
この実施形態によれば、再生中の音楽のリズムに表すテンポデータに対する、ビットシフトという単純な処理で、駆動手段への駆動信号を生成することができる。
【0091】
4.上記実施形態では、
前記制御手段は、
前記再生手段で再生中の音楽のサンプリングデータを展開するバッファメモリ(451)と、
前記バッファメモリに展開されたサンプリングデータに対して、予め設定されたローパスフィルタを用いてフィルタリングを行うフィルタリング手段(452)と、
該フィルタリング手段によるフィルタリング後のサンプリングデータと予め設定された閾値とを比較する比較手段(452、202)、とを有し、
前記比較手段にいる比較で得た2値データを、前記テンポデータとして利用する。
【0092】
この実施形態によれば、再生する音楽がサンプリングデータとして展開可能であれば、その種類は問わず、その音楽に合わせたテンポでの振動が可能になる。
【0093】
5.上記実施形態では、
前記テンポデータは、前記再生手段で再生中の音楽とは独立し、予め作成された2値のリズムデータのファイルとして所定の記憶媒体に格納されており、(711乃至713)
前記振動制御手段は、前記再生手段で再生中の音楽に対応する前記リズムファイルの前記リズムデータを、前記テンポデータとして利用する。
【0094】
この実施形態では、再生中の音楽に対する精度の高いテンポデータを利用できるので、目標速度での走行中では音楽に十分に同期し且つ心地よい振動を運転手に与えることができる。
【0095】
6.上記実施形態では、
前記制御手段は、
前記車速が前記目標速度である場合には、前記オフセット量をゼロとして決定し、(S604)
前記車速が前記目標速度を下回る場合には、前記テンポデータの出力タイミングを遅らせるため値を前記オフセット量として決定し(S603)、
前記車速が前記目標速度を上回る場合には、前記テンポデータの出力タイミングを早めるため値を前記オフセット量として決定する(S605)。
【0096】
この実施形態によれば、目標速度での走行状態、速度不足、速度超過を運転手に伝えることができる。
【0097】
7.上記実施形態では、
前記制御手段は、
前記目標速度に対する前記車速との速度差の絶対値が大きいほど、前記オフセット量の絶対値を大きくする。
【0098】
この実施形態によれば、速度不足や速度超過の程度を運転手に伝えることができる。
【0099】
8.上記実施形態によれば、
前走車との距離を検出する検出手段を更に有し、(21)
前記制御手段は、
前記検出手段で検出した前記距離が予め設定された閾値以下の場合には、前記目標速度、前記車速とは無関係に、前記オフセット量をゼロに決定する。
【0100】
この実施形態によれば、渋滞などの原因で速度不足となった場合には、速度不足は他の車両に起因するものであるので、再生中の音楽のリズムにあった振動を運転手に与えることができる。
【0101】
9.上記実施形態によれば、上記の構成を持つ車両用制御装置を備えた車両とすることで、その車両が上記のいずれかに記載の作用効果を奏することができる。
【0102】
10.上記実施形態によれば、
運転手座席のシートベルトを振動させる振動手段を有し、車両を制御する車両制御装置の制御方法であって、
目標速度と車速とを取得する取得工程と、
音楽を再生する再生工程と、
前記取得工程で取得した目標速度と車速との速度差に基づき、前記再生工程で再生中の音楽のテンポに対するオフセット量を求め、当該オフセット量に従って前記振動手段を制御する制御工程とを有する。
【0103】
この実施形態によれば、音楽のテンポとシートベルトを振動させるタイミングとを、目標速度に対する車速の速度差に応じたものとできる。したがって、運転手に対しては、例えば速度不足の状態になった場合には、それ以前に対して違和感の有る振動として体感するだけであるので、その事実を穏やかに通知することができる。
【0104】
11.上記実施形態によれば、
運転手座席のシートベルトを振動させる振動手段を有し、車両を制御する車両制御装置におけるプロセッサが読み込み実行するプログラムであって、
前記プロセッサに、
目標速度と車速とを取得する取得工程と、
音楽を再生する再生工程と、
前記取得工程で取得した目標速度と車速との速度差に基づき、前記再生工程で再生中の音楽のテンポに対するオフセット量を求め、当該オフセット量に従って前記振動手段を制御する制御工程とを実行させる。
【0105】
この実施形態によれば、これらの工程を行うプログラムを、車両制御装置のプロセッサ(ECU等)の実行対象とすることで、音楽のテンポとシートベルトを振動させるタイミングとを、目標速度に対する車速の速度差に応じたものとできる。したがって、運転手に対しては、例えば速度不足の状態になった場合には、それ以前に対して違和感の有る振動として体感するだけであるので、その事実を穏やかに通知することができる。
【0106】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0107】
V…車両、1…制御装置、20乃至27…ECU、240…シートベルト制御部、210…リトラクタ、211モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9