(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】分離装置及び分離槽内の内容物を引き抜く引抜量を決定する方法
(51)【国際特許分類】
B03B 13/04 20060101AFI20241022BHJP
B03B 5/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B03B13/04
B03B5/00 Z
(21)【出願番号】P 2021054342
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504182314
【氏名又は名称】トータルケア・システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
(72)【発明者】
【氏名】安村 宜之
(72)【発明者】
【氏名】長 武志
(72)【発明者】
【氏名】山田 陽三
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084569(JP,A)
【文献】特開2003-193383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 13/04
B03B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌機を備えた分離槽と、
前記分離槽内の固体と分散液からなる内容物から、一部の固体と分散液を引き抜く引抜部と、
前記引抜部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記分離槽内に残る固体残渣と分散液からなる残留物の流動性を維持するように、前記内容物を引き抜くことを特徴とする
、衛生用品の構成成分を分離する分離装置。
【請求項2】
前記残留物は、分散液中に固体が分散している状態であることを特徴とする、請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記残留物の液位は、前記分離槽の最大液位の5%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の分離装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記分離槽への前記分散液の供給を制御することを特徴とする、請求項1に記載の分離装置。
【請求項5】
攪拌機を備え
、衛生用品の構成成分を分離する分離槽において、前記攪拌機の電流値に基づいて、前記分離槽内の固体と分散液の混合物からなる内容物を引き抜く引抜量を決定する、ことを特徴とする引抜量を決定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌機を備えた分離槽内の内容物を引き抜く分離装置及び分離槽内の内容物を引き抜く引抜量を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み紙おむつ等の使用済み衛生用品の再利用において、使用済み紙おむつからプラスチック、パルプ及び吸水ポリマー(SAP)を分離、回収することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、攪拌分離槽で、ビニール、パルプ及びSAPを含む混合液(処理液体Q)の引き抜きと給水を繰り返して、ビニールと、パルプ及びSAPと、に分離する使用済み紙おむつの処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では、攪拌機を備えた分離槽内の分散液と固体とからなる内容物を分離槽の液位の下限値まで引き抜いた後、再度分散液を分離槽内に供給して最大液位の状態とする。そして、その状態で内容物を攪拌し、再度分離槽内の内容物を引き抜く作業を繰り返すことにより、分離槽内にプラスチックを残し、パルプ及びSAPが分散液と共に分離槽内から外部に引き抜くことが行われている。
しかし、このような引き抜き作業を行うにあたり、分離槽の液位の下限値まで内容物を引き抜くことから、分離槽内に残された固体が多くなり、引き抜かれた残留物の粘度が高くなる。よって、残留物の粘度が高い状態で攪拌機が動作した状態となることから、攪拌機の負荷が増加するという問題点がある。
そこで、本発明の課題は、攪拌機の負荷が過大となることを抑制する分離装置、及び、分離槽内の内容物を引き抜く引抜量を決定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、分離槽内から内容物を引き抜く作業を行う際に、分離槽内に残る固体残渣と分散液からなる残留物の流動性を維持するようにすることで、攪拌機の負荷が過大となることを抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の分離装置である。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の分離装置は、攪拌機を備えた分離槽と、分離槽内の固体と分散液からなる内容物から、一部の固体と分散液を引き抜く引抜部と、引抜部を制御する制御部と、を備え、制御部は、分離槽内に残る固体残渣と分散液からなる残留物の流動性を維持するように、内容物を引き抜くことを特徴とする。
【0008】
この分離装置によれば、残留物の流動性が確保されていることから、攪拌機の負荷が過大となることを抑制することができる効果がある。
【0009】
本発明の分離装置の一実施態様としては、残留物は、分散液中に固体が分散している状態であることを特徴とする。
この特徴によれば、残留物の粘度が低い状態となり、より攪拌機の負荷が過大となることを抑制することができる効果がある。
【0010】
本発明の分離装置の一実施態様としては、残留物の液位は、分離槽の最大液位の5%以上の液位であることを特徴とする。
この特徴によれば、一定量の分散液を確保できることから、残留物の粘度が低い状態にでき、より攪拌機の負荷が過大となることを抑制することができる効果がある。
【0011】
本発明の分離装置の一実施態様としては、制御部は、分離槽への分散液の供給を制御することを特徴とする。
この特徴によれば、分離槽内の内容物の引き抜きと分散液の供給を制御することができ、分離装置の運転が容易となる効果がある。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の引抜量を決定する方法は、撹拌機を備えた分離槽において、攪拌機の電流値に基づいて、分離槽内の固体と分散液の混合物からなる内容物を引き抜く引抜量を決定することを特徴とする。
本発明の引抜量を決定する方法によれば、分離槽からの引抜量を攪拌機の電流値に基づいて決定することから、電流値の変化を把握しつつ、引抜量を容易に決定できる効果がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、攪拌機の負荷が過大となることを抑制する分離装置、及び、分離槽内の内容物を引き抜く引抜量を決定する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の分離装置を含む衛生用品処理システムを示す概要図である。
【
図2】本発明の実施の態様1の分離装置の概略図である。
【
図3】本発明の引き抜き時の分離槽の液位変化と攪拌機の電流値変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る分離装置の実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する分離装置及び内容物を引き抜く引抜量を決定する方法については、本発明に係る分離装置及び内容物を引き抜く引抜量を決定する方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の分離装置は、2種以上の固体を含む被処理物に分散液を混合し、2種以上の固体を大きさや比重などにより分離するための分離装置である。例えば、使用済み紙おむつ等の使用済みの衛生用品を破砕した破砕物(被処理物)から、ビニール不織布素材等のプラスチックと、吸水ポリマー(SAP)やパルプを分離するための装置である。
より具体的には、衛生用品を破砕した破砕物(被処理物)と分散液を分離槽内で混合し、次に、SAPやパルプが分散したパルプ・SAP分離液を分離槽外に排出することにより、分離槽内に固体残渣として残るビニール不織布素材等のプラスチックとSAPやパルプを分離する分離装置である。さらに、本発明の分離装置は、パルプ・SAP分離液を分離槽外に排出する際に、分離槽の内部に残る固体残渣と分散液からなる残留物の流動性を維持するように、排出する分離装置である。
【0017】
まずは、
図1を参照し、本発明の分離装置(第1の分離装置4)を備えた衛生用品処理システム1の全体について説明する。
【0018】
[衛生用品処理システム]
衛生用品処理システム1は、使用済みの衛生用品2を構成する素材を分離回収するシステムである。衛生用品処理システム1は、破砕機3(破砕工程)と、第1の分離装置4(第1の分離工程)と、第2の分離装置5(第2の分離工程)と、プラスチック脱水機6(プラスチック脱水工程)と、パルプ洗浄槽・脱水機7(パルプ洗浄・脱水工程)とSAP洗浄槽・脱水機8(SAP洗浄・脱水工程)とを備える。
【0019】
〈破砕機(破砕工程)〉
破砕機3は、使用済み衛生用品2を裁断・破砕する装置である。破砕機3としては、衛生用品2を裁断・破砕できるものであれば特に限定されず、一軸型破砕機や二軸型破砕機とよばれる破砕機を使用することが可能である。なお、使用済み衛生用品2が袋に詰められて回収される場合においては、袋を破く破袋装置と呼ばれる装置により、袋から使用済み衛生用品が取り出された後に破砕機3で破砕される場合もある。
【0020】
〈第1の分離装置(第1の分離工程)〉
第1の分離装置4は、破砕機3により破砕された衛生用品2のプラスチックと、パルプ及びSAPと、を分離する装置である。
第1の分離装置4としては、破砕された衛生用品2を攪拌、分離できれば装置や処理工程は限定されないが、例えば、パルパーと呼ばれる装置が例示でき、破砕された衛生用品2と分散液とを投入して攪拌が行われ、プラスチック、パルプ、SAP及び分散液とが混合され、被処理液(内容物)とされる。混合後、パルパーに設けられたスクリーンのような分離手段により、分離手段を通過しない不織布のようなプラスチック残渣(固体残渣)と、分離手段を通過したパルプ及びSAPを含む分離液(パルプ・SAP分離液)と、に分離される。なお、パルパーによる混合前又は混合中にSAPを脱水し、分離しやすくするため、塩化カルシウム等の脱水剤が添加される。
【0021】
〈第2の分離装置(第2の分離工程)〉
第2の分離装置5は、第1の分離装置4((本発明の分離装置)で分離したパルプ・SAP分離液からパルプとSAPを分離する装置である。
第2の分離装置5としては、パルプとSAPとを分離することができれば、装置の種類や処理工程は特に限定されないが、例えば、サイクロン分離機やドラムスクリーンなどのスクリーン分離が行われて、パルプとSAPとに分離される。
なお、第2の分離装置5の分離では、第1の分離装置4で分離したパルプ・SAP分離液の粘度が高いため、そのままの状態では分離しにくい状態である。したがって、分離しやすい濃度に濃度調整槽で、分離液の濃度が調整された後、分離処理が行われてもよい。
【0022】
〈プラスチック脱水機(プラスチック脱水工程)〉
プラスチック脱水機6は、第1の分離装置4で分離されたプラスチック残渣を脱水し、プラスチック残渣を分離回収する。プラスチック残渣を脱水できるものであれば、装置の種類や処理工程は特に限定されない。分離されたプラスチック残渣は、回収プラスチックとなる。
【0023】
〈パルプ洗浄槽・脱水機(パルプ洗浄・脱水工程)〉
パルプ洗浄槽・脱水機7は、第2の分離装置5で分離されたパルプを洗浄、脱水してパルプを回収する。第2の分離装置5から分離されて排出されたパルプを洗浄、脱水できる装置であれば、装置の種類や処理工程は特に限定されない。洗浄脱水されたパルプは、回収パルプとなる。
【0024】
〈SAP洗浄槽・脱水機(SAP洗浄・脱水工程)〉
SAP洗浄槽・脱水機8は、第2の分離装置5で分離されたSAPを洗浄、脱水してSAPを回収する。第2の分離装置5から分離されて排出されたSAPを洗浄、脱水できる装置であれば、装置の種類や処理工程は特に限定されない。洗浄脱水されたSAPは、回収SAPとなる。
【0025】
[第1の実施態様]
〔分離装置〕
図2を参照し、本発明の第1の実施の態様の分離装置10について説明する。本発明の分離装置10は、固体(被処理物)と分散液の混合物からなる内容物を分離する装置である。固体は、おむつに使用されているプラスチックとパルプとSAPとが該当し、内容物17のうち、パルプ及びSAPと分散液とが引き抜かれて、プラスチックが分離装置10内に残る状態となる。
分離装置10は分離槽11と攪拌機12と引抜部13と給水部14と制御部15とを備える。
【0026】
<分離槽>
分離槽11は、破砕機(破砕工程)で破砕された使用済み紙おむつを、プラスチックとパルプと吸水ポリマー(SAP)と後述する給水部14から供給される分散液16とを貯留する。
使用済み紙おむつは、破砕機によってパルプ、SAP、テープや不織布や防水シート等のプラスチックが破砕された固体として、分離槽11の衛生用品投入部から投入される。さらに、分離槽11には、給水部14から分散液16が供給され、後述する攪拌機12により分離槽11内で攪拌され、破砕されたパルプ、SAPやプラスチックが分散液16に分散し、固体と分散液の混合物からなる内容物17となる。
【0027】
分離槽11は、内容物17を貯留することができるものであれば、大きさや材質は特に限定されない。分離槽11は、分離槽11内の内容物17からプラスチックを残し、固体であるパルプ及びSAPを含有する分散液を分離液18として、後述する引抜部13が引き抜くことができるように、スクリーンのような分離手段19が設けられる。
なお、分離手段19としては、多孔板を用いてプラスチックとパルプ及びSAPの大きさにより分離する手段を例示できる。また、比重により分離する手段や、遠心力を利用して分離する手段を用いてもよい。
また、分離槽11には、水位センサー21が設けられており、内容物17の液位を測定する。この液位の測定結果は、制御部15が制御する給水部14の制御に使用される。
【0028】
<攪拌機>
攪拌機12は、分離槽11内に設けられており、固体と分散液である内容物17を攪拌し、固定である、プラスチックとパルプとSAPとを分散液16中に分散させる。攪拌機12は、内容物17を攪拌できるものであれば特に限定されない。攪拌機12は、駆動部により攪拌翼を回転させ、内容物17の攪拌が分離槽11内で行われる。
【0029】
<引抜部>
引抜部13は、攪拌機12による攪拌が一定時間行われた後、分離槽11から分離液18を引き抜くことで内容物17からパルプとSAPと分散液とが分離される。引き抜かれた分離液18は次の処理へ送られる。
引抜部13はポンプのような引抜装置が用いられ、制御部15により、内容物17を引き抜いたり、引き抜きを停止したりする制御が行われる。
【0030】
<給水部>
給水部14は分離槽11内に分散液16を供給する。給水部14は、制御部15により分離槽11に分散液16を供給したり、分散液16の供給を停止したりする。これらの制御は、分離槽11に設けられた水位センサー21により、内容物17の液位を測定し、その結果に基づいて制御部15が分散液16の給水、止水を制御する。
【0031】
<制御部>
制御部15は引抜部13と給水部14を制御する。
制御部15には、引抜部13によって引き抜かれる分離液18の引抜量があらかじめ設定されている。制御部15は、引き抜き作業の開始の際に引抜部13を作動させ、あらかじめ定められた引抜量を引き抜く制御を行う。内容物17の一部が引き抜かれた残留物20は、流動性を維持した状態で、分離液18の引き抜きが停止する。
【0032】
なお、流動性を維持した状態とは、残留物20の粘度により、攪拌機12の負荷が過大とならない状態をいう。しかしながら、好ましくは、残留物20の分散液中に固体が分散している状態のことをいう。この状態であれば、残留物20の粘度が低い状態となり、より攪拌機12の負荷が過大となることを抑制することができる効果がある。
制御部15は、引抜部13のポンプを動作させたり停止させたりして分離液18を引き抜く作業を繰り返す制御を行う。また、制御部15は、何回目の引き抜き作業であるかも判断して制御する。複数回の引き抜き作業を行うにあたり、最後の引き抜き作業の場合は、分離槽11の液位の下限値(分離槽11から分散液16がなくなるまで)まで分離液18を引き抜く制御が行われて、引き抜き作業が完了する。
引抜量は、引抜部13のポンプの稼働時間としてもよく、分離液18を引き抜く量としてもよい。
【0033】
引抜部13の引抜量を決定する方法としては、攪拌機12の電流値に基づいて、分離槽11内の固体と分散液の混合物からなる内容物17を引き抜く引抜量を決定することができる。攪拌機12の電流値に基づくことで、電流値の変化を把握しつつ、引抜量を容易に決定できる効果がある。
【0034】
引抜部13の引抜量を決定する方法としては、例えば、攪拌機12に電流値を測定する手段を設け、引き抜き作業の際に電流値を即時測定し、あらかじめ定められた電流値に上昇するまで引き抜いた量を引抜量として決定し、引抜部13を制御することが挙げられる。
【0035】
また、攪拌機12に電流値を測定する手段を設け、引き抜き作業の際に電流値を即時測定し、その測定時の電流値と、その測定時から一定時間前であってかつ引き抜き作業開始後の電流値との差分値を求め、その差分値が、あらかじめ定められた値以上になった時までに引き抜かれた量を引抜量として決定し、引抜部13を制御することが挙げられる。
【0036】
これらの引抜量の決定方法としては、攪拌機12の電流値を即時測定して引抜量を決定する場合であっても、過去に行われた同様の衛生用品処理条件の攪拌機12の電流値のデータに基づいて引抜量を決定し、その決定した引抜量をあらかじめ制御部15に設定しておく場合であってもよい。
【0037】
即時測定して引抜量を決定する場合には、内容物17の状態に合わせた最適な引抜量とすることができる。
過去の同様の処置条件の攪拌機12の電流値から、引抜量を決定する場合には、制御部15への設定を容易にすることができる。
【0038】
また、引抜量は、1回目の引抜量と1回目以降の引抜量とが同じであっても、異なってもよい。
1回目の引抜量と1回目以降の引抜量が同じ場合は、引抜量の設定が簡単となる。
なお、1回目の引き抜き作業後の残留物20よりも2回目以降の引き抜き作業後の残留物20の方が、パルプ及びSAPの濃度が減少することから、1回目の引き抜き作業後の残留物20の液位と、2回目の引き抜き作業後の残留物20の液位が同じ場合、2回目の残留物20の方が、粘度が低くなる。引き抜き回数が多くなるほど、残留物20のパルプ及びSAPの濃度(粘度)は減少することから、1回目の引抜量を2回目以降の引抜量として設定しても、攪拌機12の電流値が1回目の引き抜き作業の電流値をこえることはない。
【0039】
また、1回目の引抜量と1回目以降の引抜量が異なる場合は、1回目の引抜量よりも1回目以降の引抜量を多く(残留物20の液位を低くなるように)することが望ましい。引き抜き回数が多くなるほど、パルプ及びSAPの濃度が減少し、粘度の低くなることから、残留物20の流動性を維持しながら多くの分離液18を引く抜く(引抜量を多くする)ことができ、パルプ及びSAPの分離効率が上昇する。
【0040】
また、分離槽11内の内容物17の流動性が維持された状態とするため、分離槽11の液位を基準としてもよく、分離槽11の最大液位の5%以上となるように引抜量を設定してもよい。
5%以上の液位が確保されていれば、分離槽11内の内容物17の流動性が維持された状態となりやすくなる効果がある。
なお、流動性の維持のしやすさの観点からすれば、例えば、分離槽11の最大液位の10%以上、20%以上又は30%以上となるように引抜量を設定してもよい。
また、パルプ及びSAPの分離効率の観点からすれば、例えば、分離槽11の最大液位の50%以下、40%以下又は30%以下となるように引抜量を設定してもよい。
以上のように液位を設定することでパルプ及びSAPが一定量以上の分散液16と常に攪拌されている状態となることから、プラスチックからパルプ及びSAPの分離を促進させることができる効果がある。
分離槽11の内容物17(残留物20)の液位により引抜量を決定する場合は、分離槽11内に設けられた水位センサー21により行うことができる。
【0041】
なお、引抜量は、分離装置10の構造や引抜部13のポンプの性能、衛生用品投入部から投入される被処理物の種類や量によっても異なるため、それらの条件に合わせて適宜設定される。
【0042】
また、制御部15は、分離槽11に設けられた水位センサー21の測定結果に基づいて給水部14を制御し、分離槽11の内部の液位を制御する。制御部15は引抜部13と給水部14の両方を制御することになることから、分離槽11内の内容物17の引き抜きと分散液の供給を制御することができ、分離装置10の運転が容易となる効果がある。
【0043】
給水部14は、破砕された使用済み紙おむつが、衛生用品投入部より分離槽11に投入された後又は投入される前に分散液16の供給を行う。また、内容物17が引き抜かれて液位が減少した際に分散液16を供給して、分離槽11内部の液位を上昇させる。水位センサー21が最大液位である給水停止の位置を測定した際に給水部14は制御部15により、給水が停止される。
【0044】
[分離装置の動作について]
次に本発明の分離装置10の動作について説明する。なお、下記の動作で説明する引き抜き作業は引抜量が、あらかじめ定められたポンプの稼働時間とし、1回目以降の引抜量(ポンプの稼働時間)が同じ時間である場合で説明する。また、引き抜き作業を8回行う場合とする。
【0045】
まず、固体である破砕された衛生用品が分離槽11の衛生用品投入部から一定量投入される。その後、給水部14から分散液16が最大液位まで供給され、攪拌機12が固体と分散液とを攪拌する。
分離槽11内で固体と分散液の混合物からなる内容物を、一定時間攪拌し、1回目目の引き抜き作業が制御部15の制御により開始される。
引き抜き作業は、制御部15にあらかじめ設定された引抜量に従って、制御部15が引抜部13のポンプの稼働時間を制御する。
【0046】
ポンプの稼働時間が経過して引抜部13が停止することで、1回目の引き抜き作業が完了する。
1回目の引き抜き作業が完了した時点において、制御部15は、分離槽11内の内容物17の一部が引抜かれた残留物20の流動性を維持するように、引抜部13を制御する。
よって、内容物17の一部が引抜かれた残留物20の流動性が確保されていることから、攪拌機12の負荷が過大となることを抑制できる。また、攪拌機12を停止させることなく、攪拌し続けることができる。
【0047】
次に、制御部15は給水部14を制御し、分離槽11への分散液16の供給を制御する。分散液16が分離槽11内に供給され、内容物17の液位が、最大液位となった際に、分散液16の供給を停止する制御を制御部15が行う。
【0048】
次に制御部15は、2回目目の引き抜き作業を開始する。2回目の引き抜き作業は、1回目の引き抜き作業と同様に、制御部15にあらかじめ設定された引抜量に従って引抜部13のポンプの稼働時間を制御する。
ポンプの稼働時間が経過して引抜部13が停止することで、2回目の引き抜き作業が完了する。
2回目の引き抜き作業が完了時において、残留物20の粘度は、1回目の引き抜き作業後の残留物20の粘度よりも低く、流動性が維持された状態であることから、攪拌機12の負荷が過大となることを抑制できる。
【0049】
次に、制御部15は給水部14を制御し、分離槽11への分散液16の供給を制御する。分散液16が分離槽11内に供給され、内容物17の液位が、最大液位となった際に、分散液16の供給を停止する制御を制御部15が行う。そして、3回目の引き抜き作業が行われる。
【0050】
以上のように、引抜部13と給水部14を制御部15が制御し、定められた回数の引き抜き作業が繰り返されて、プラスチックと、パルプ及びSAPを含む分離液18とが分離される。
【0051】
そして、定められた回数(8回目)の最後の引き抜き作業では、分離液18が液位の下限値まで引き抜かれかつ攪拌機12が停止されて引き抜き作業が完了する。そして、分離槽11内に残されたプラスチック残渣を除去する工程が行われ、破砕された衛生用品の分離装置10での分離作業が終了する。
【0052】
以上のように、引き抜き作業を繰り返すことで、
図3に示すように、攪拌機12の電流値が増大することを抑制し、引き抜き作業時の攪拌機12の負荷を従来よりも小さくすることができ、内容物17からプラスチックとパルプ及びSAPを分離することができる。
【0053】
本発明では、
図3の示す従来のように、最低液位まで内容物を引き抜き、給水を繰り返すよりも、本発明を適用し、残留物20の流動性を維持するように、分離槽11内に一定量の分散液16を残して給水と引き抜き作業を多く行った方が、パルプ及びSAPが一定量以上の分散液16と常に攪拌されている状態となることから、プラスチックからパルプ及びSAPの分離を促進させることができ、パルプ及びSAPの回収量向上の効果がある。また、分散液16の給水時間及び給水量の削減ができ、分離液18の量を少なくできることから、引き抜き作業の時間を短縮できる効果がある。
よって、本発明を適用し、従来と同じ時間となるように、引き抜き回数を増やして分離装置10を稼働させることにより、パルプ及びSAPの回収率を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る分離装置は、使用済み紙おむつに代表される使用済み衛生用品の構成成分を再利用するための処理装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…衛生用品処理システム、2…衛生用品、3…破砕機、4…第1の分離装置、5…第2の分離装置、6…プラスチック脱水機、7…パルプ洗浄槽・脱水機、8…SAP洗浄槽・脱水機、9…欠番、10…分離装置、11…分離槽、12…攪拌機、13…引抜部、14…給水部、15…制御部、16…分散液、17…内容物、18…分離液、19…分離手段、20…残留物、21…水位センサー。