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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】目的地点案内システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20241022BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G01C21/26 Z
G08G1/005
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021073423
(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公開番号】P2022167560
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 均
(72)【発明者】
【氏名】金子 実喜夫
(72)【発明者】
【氏名】広岡 浩一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 壮之
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-105640(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0074549(US,A1)
【文献】特許第4801232(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0231861(US,A1)
【文献】特開2014-020863(JP,A)
【文献】特開2001-194178(JP,A)
【文献】米国特許第06693586(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネル及びデータ入力部を有する携帯端末と、前記携帯端末に接続されたGNSSアンテナと、
前記GNSSアンテナから取得した情報に基づいて、前記携帯端末の現在地点の位置を算出する現在地点決定部と、
前記現在地点決定部によって算出された前記現在地点の位置と、前記携帯端末に入力された目的地点の位置に基づいて、前記現在地点から前記目的地点への経路を演算する経路演算部と、
前記表示パネルの背面に設けられ、前記携帯端末周囲の風景を撮像するイメージセンサと、前記イメージセンサの撮像データに基づいて風景映像の表示データを生成する映像処理部と、
前記携帯端末の仰角及び方位を検出する角度センサと、
前記角度センサによって検出された前記携帯端末の前記表示パネルの仰角と方向に基づいて、前記表示パネル上に、前記経路演算部が演算した前記経路を示すマーカーの表示データを生成するマーカー表示処理部と、
前記映像処理部が生成した風景映像の表示データと、前記マーカー表示処理部が生成した前記経路を示すマーカーの表示データを、前記表示パネルに重畳して表示させる表示メモリと、
前記携帯端末の現在位置と目的地点の距離が予め設定された閾値以下になった場合に、前記表示パネルに表示させる風景を垂直モードから水平モードに切り替えるか、使用者に対して垂直モードから水平モードへの切り替えを促すメッセージを出力するモード切替部と、
前記垂直モードは、前記表示パネルの仰角を地面と垂直もしくは垂直に近い角度として広範囲の風景映像を表示させ、
前記水平モードは、前記表示パネルの仰角を地面と平行もしくは平行に近い角度として、前記イメージセンサの1画素あたりの距離精度を前記垂直モードに比較して精細なものとする目的地点案内システム。
【請求項2】
表示座標演算部の出力側に、前記表示座標演算部によって算出された複数の目的地点について、本来の目的地点との乖離量を算出する乖離量演算部と、前記乖離量演算部に基づいて前記角度センサの誤差に対する補正量を算出する補正量演算部が設けられ、前記補正量演算部によって算出された補正量に基づいて前記角度センサの誤差を補正する請求項1に記載の目的地点案内システム。
【請求項3】
前記乖離量演算部は、
(1) 角度センサの誤差がθ度
(2) 目的地点と第1の現在地点からの距離Lm
(3) 目的地点と第2の現在地点からの距離C・Lm
(4) 第1の現在地点での表示誤差El
(5) 第1の現在地点での表示座標演算で取得した目的地点De
(6) 本来の目的地点D
(7) 第2の現在地点での表示座標演算で取得した目的地点CDe
(8) 第2の地点での乖離量CEl
とした場合に、
目的地点までLmの時とC・Lmの時のDeとCDeの距離を表示座標演算で取得することで乖離量CElを下記式により演算し、
CEl=d(De,CDe)×(L-C・L)/L

前記補正量演算部は、
前記乖離量CElが、
CEl=(L×tanθ-C・L×tanθ)×(L-C・L)/L
であることに基づいて、
センサ誤差θを、
(L-L・C)tanθ=d(De,CDe)
θ=Arctanθ=d(De,CDe)/(L-L・C)
を算出する請求項2に記載の目的地点案内システム。
【請求項4】
前記GNSSアンテナと前記携帯端末は、ヒンジ部によって接続されたアンテナ固定部と端末装着部を有するアンテナ台に設置されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の目的地点案内システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態の実施形態は、GNSS(Global Navigation Satellite System)とスマートフォンなどの携帯端末を利用した目的地点案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンなどの携帯端末を利用した目的地点案内システムは、車両用のナビゲーション装置や歩行者用の案内システムとして従来から使用されている。特に最近では、RTK-GNSS(Real Time Kinematic Global Navigation Satellite System)と呼ばれる高精細測位が可能なシステムも実用化されていることから、これらの測位システムとスマートフォンなどの携帯端末を利用することで、歩行者用のナビゲーションシステムを実現する試みがなされている。例えば、特許文献1~3に示す技術は、その一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-20863号公報
【文献】特開2016-151453号公報
【文献】特開2020-106282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの従来技術は、いずれも探索する目的地点が施設などのように比較的大きなものであり、目的地点が数cmから数10cmに及ぶような狭小な地点、施設などを対象としたものではなかった。例えば、農地や山林などにおいて地図上では予め座標が設定されている境界線や標識を探索したり、地中に埋設されているガス管や水道管などの設備、特に分岐部分やバルブ、マンホールなどを探索したりする場合、更には、雪で覆われた空港などにおいてマンホールや消火栓などの設備を探索したりする場合には、広大な探索対象範囲の中から非常に狭小な設備を発見する必要がある。
【0005】
従来技術の一つでは、オンラインで取得した地図データを携帯端末に表示させた状態で、携帯端末の現在位置の座標をGNSSなどで取得し、その座標と予め設定した目的地点の座標と比較することで、目的地点までの案内を行っていた。しかし、地図データは、その表示内容に制限があり、目的地点探索時における使用者や目的地点の状況を正確に表示することができず、狭小な目的地点を発見することが非常に困難であった。
【0006】
他の従来技術として、携帯端末が有するカメラ機能を利用して、カメラで撮影した静止画像にあらかじめ用意しておいた目標地点の画像を重畳するものも提案されている。しかし、この技術も目標地点の画像が判明していること、及びその画像をあらかじめ用意しておくことが前提であり、前述したような境界標識、地中の設備、雪で覆われた設備、更には設備そのものが存在しない特定座標の地点などが目的地点である場合には、採用することができなかった。
【0007】
本実施形態は、上記課題を解決するために提案されたものである。すなわち、本実施形態の目的は、目的地点の状態が不明な場合や、土や雪によって覆われていて外部からは目視や撮影できない場合においても、使用者を目的地点に案内することが可能な目的地点案内システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の目的地点案内システムは、次のような構成を備える。
(1)表示パネル及びデータ入力部を有する携帯端末と、前記携帯端末に接続されたGNSSアンテナ。
(2)前記GNSSアンテナから取得した情報に基づいて、前記携帯端末の現在地点の位置を算出する現在地点決定部。
(3)前記現在地点決定部によって算出された前記現在地点の位置と、前記携帯端末に入力された目的地点の位置に基づいて、前記現在地点から前記目的地点への経路を演算する経路演算部。
(4)前記表示パネルの背面に設けられ、前記携帯端末周囲の風景を撮像するイメージセンサと、前記イメージセンサの撮像データに基づいて風景映像の表示データを生成する映像処理部。
(5)前記携帯端末の仰角及び方位を検出する角度センサ。
(6)前記角度センサによって検出された前記携帯端末の前記表示パネルの仰角と方向に基づいて、前記表示パネル上に、前記経路演算部が演算した前記経路を示すマーカーの表示データを生成するマーカー表示処理部。
(7)前記映像処理部が生成した風景映像の表示データと、前記マーカー表示処理部が生成した前記経路を示すマーカーの表示データを、前記表示パネルに重畳して表示させる表示メモリ。
(8)前記携帯端末の現在位置と目的地点の距離が予め設定された閾値以下になった場合に、前記表示パネルに表示させる風景を垂直モードから水平モードに切り替えるか、使用者に対して垂直モードから水平モードへの切り替えを促すメッセージを出力するモード切替部。
(9)前記垂直モードは、前記表示パネルの仰角を地面と垂直もしくは垂直に近い角度として広範囲の風景映像を表示させ、前記水平モードは、前記表示パネルの仰角を地面と平行もしくは平行に近い角度として、前記イメージセンサの1画素あたりの距離精度を前記垂直モードに比較して精細なものとする。
【0009】
実施形態の目的地点案内システムは、更に次のような構成を備えてもよい。
(1)表示座標演算部の出力側に、前記表示座標演算部によって算出された複数の目的地点について、本来の目的地点との乖離量を算出する乖離量演算部と、前記乖離量演算部に基づいて前記角度センサの誤差に対する補正量を算出する補正量演算部が設けられ、前記補正量演算部によって算出された補正量に基づいて前記角度センサの誤差を補正する。
(2)前記乖離量演算部は、
(1) 角度センサの誤差がθ度
(2) 目的地点と第1の現在地点からの距離Lm
(3) 目的地点と第2の現在地点からの距離C・Lm
(4) 第1の現在地点での表示誤差El
(5) 第1の現在地点での表示座標演算で取得した目的地点De
(6) 本来の目的地点D
(7) 第2の現在地点での表示座標演算で取得した目的地点CDe
(8) 第2の地点での乖離量CEl
とした場合に、
目的地点までLmの時とC・Lmの時のDeとCDeの距離を表示座標演算で取得することで乖離量CElを下記式により演算し、
CEl=d(De,CDe)×(L-C・L)/L

前記補正量演算部は、
前記乖離量CElが、
CEl=(L×tanθ-C・L×tanθ)×(L-C・L)/L
であることに基づいて、
センサ誤差θを、
(L-L・C)tanθ=d(De,CDe)
θ=Arctanθ=d(De,CDe)/(L-L・C)
を算出する。
(3)前記GNSSアンテナと前記携帯端末は、ヒンジ部によって接続されたアンテナ固定部と端末装着部を有するアンテナ台に設置されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態におけるアンテナ台の斜視図である。
図2】第1実施形態における案内システムの機能ブロック図である。
図3】第1実施形態における画面表示例を示す図である。
図4】第1実施形態における垂直モードで発生する角度センサの誤差を示す平面図と側面図である。
図5】第1実施形態における水平モードで発生する角度センサの誤差を示す平面図である。
図6】第1実施形態における垂直モードで発生するイメージセンサの解像度に起因する誤差を示す側面図である。
図7】第1実施形態における水平モードで発生するイメージセンサの解像度に起因する誤差を示す側面図である。
図8】第2実施形態における案内システムの機能ブロック図である。
図9】第2実施形態における角度の誤差θを算出する手法を示す平面図である。
図10】第2実施形態の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
(1)アンテナ台
以下、第1実施形態の目的地点案内システムについて、説明する。第1実施形態の案内システムは、RTK-GNSSアンテナ(以下、アンテナと略称する)を接続した携帯端末を使用することにより、携帯端末の位置を高精度に特定したことを特徴とする。また、携帯端末を垂直モードで広範囲の風景映像を表示させて、目的地点を探索しやすくすると共に、目的地点に接近した場合には、携帯端末を水平モードに切り替えることで、イメージセンサを探索周辺領域だけをセンシングさせ、目的地点のマーキング位置の表示の精度を向上させたものである。
【0012】
そのため、第1実施形態においては、使用者が携帯端末を持つ角度が異なっても、アンテナが天頂方向を向くことができるように、角度調整機能を有するアンテナ台を使用する。図1は、角度調整機能を有するアンテナ台の一例と、それに取り付けたアンテナ及び携帯端末の使用状態を示す図である。
【0013】
図1に示すように、アンテナ台1は、板状のアンテナ固定部1aと、アンテナ固定部1aの一端にヒンジ部1bを介して回動自在に取り付けられた板状の端末装着部1cを備える。アンテナ固定部1aの表面には、アンテナ2がねじ止め、嵌合、接着等の手段で固定されている。端末装着部1cは、板状の部材の表面に、上面が開口した箱型のケース1dが接着、嵌合等の手段で固定され、このケース1dに対して携帯端末3が装着される。ケース1dとしては、上面開口型のものに限らず、ノート型或いはブックカバー型の側方から携帯端末3を収容するものなど、適宜のものが使用できる。また、端末装着部1cそのものをケースとして、その内部に携帯端末3を装着しても良い。
【0014】
このような構成のアンテナ台1を使用することで、使用者が携帯端末3を垂直に近い状態でもって目的地点を探索する垂直モードでも、携帯端末3を地面とほぼ平行に横向きに使用する水平モードであっても、ヒンジ部1bを中心として端末装着部1cとアンテナ固定部1aとの角度を調整することで、アンテナ固定部1aに固定されたアンテナ2を常に天頂方向に向けておくことが可能になる。その結果、衛星からの測位信号を高感度で常時受信することができる。
【0015】
アンテナ台1としては、例えば、ヒンジ部1bにモータが設けられ、アンテナ2と携帯端末3の角度を自動調整する機能を有するものを使用することができる。例えば、アンテナ2やアンテナ固定部1aに、アンテナ2の傾き度合を測定する傾きセンサを設けると共にヒンジ部1bにモータを設けて、傾きセンサからの指令に基づいてアンテナ2が天頂方向を向くようにモータを駆動することで、アンテナ固定部1aを端末装着部1cに対してヒンジ部1bを中心として回動させることができる。また、手動作業により、アンテナ固定部1aと端末装着部1cの角度を調整するものも使用できる。
【0016】
アンテナ台1に固定するアンテナとしては、アンテナにGNSS機能を有する本体部分を一体化したものを使用しても良いし、アンテナ単体をアンテナ台1に固定して、GNSS機能を有する本体部分は携帯端末3に内蔵したものを使用しても良い。アンテナやGNSSの本体部分の電源は、携帯端末3から供給するものでも良いし、別途用意したモバイルバッテリーなどの電源からアンテナやGNSS本体、更には携帯端末3に電源を供給しても良い。
【0017】
(2)案内システム
次に、携帯端末3に内蔵された本実施形態の案内システムの構成について、図2を参照して、説明する。
【0018】
携帯端末3は、風景画像などの撮像データを取得するイメージセンサ4を有する。イメージセンサ4としては、例えば、携帯端末3がスマートフォンの場合には、その動画撮影用のカメラであり、表示パネルとは反対側の面に設けられている。イメージセンサ4は、映像処理部5及び表示メモリ6を介して表示パネル7に接続され、イメージセンサ4で取得された撮像データが、表示パネル7において画像として表示される。
【0019】
イメージセンサ4からは、後述する表示座標演算部15に対して、イメージセンサ4が表示パネル7に表示する画像の範囲に関するデータも送られる。すなわち、イメージセンサ4に使用されるレンズの広角度や解像度など、表示パネル7に映し出されるイメージセンサ4からの画像をXY座標として表現するために必要なデータが、イメージセンサ4から表示座標演算部15に出力される。
【0020】
携帯端末3は、キーボードなどのデータ入力部8を備える。データ入力部8としては、携帯端末3と一体に設けられた機械的キーボード、USBやBluetooth(登録商標)などで接続された外部キーボードなども使用できるが、表示パネル7に表示されるソフトウェアキーボードの使用が一般的である。データ入力部8からは、目的地点情報(目的地点の座標など)や使用するRTK-GNSSに関する情報、使用者の識別情報などが入力されるが、探察システムとしては、少なくとも、目的地点情報(例えば、緯度、経度、高度)の入力が必要である。
【0021】
データ入力部8の出力側には、入力された目的地点情報に基づいて目的地点を決定し、探索終了時点まで保存する目的地点決定部9が接続される。携帯端末3を持った使用者が探索に従って移動して現在地点が変更されると、その都度新たな経路探索が必要となるが、この目的地点決定部9によって保存された目的地点に関する情報が、経路探索を再実行する度に新たな現在地点情報と共に経路演算部10に入力される。
【0022】
携帯端末3は、角度及び地磁気センサ11を有する。角度及び地磁気センサ11としては、スマートフォンなどの携帯端末を利用に内蔵されている重力角度センサ、3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサ、地磁気センサを組み合わせて使用することができる。この角度及び地磁気センサ11の出力側は、表示角度演算部12に接続されている。表示角度演算部12は、使用者が持っている携帯端末3の表示パネル7の地表面に対する角度、及び携帯端末3から見た目的地点の方向(水平方向及び垂直方向の角度)を算出する。表示角度演算部12で得られた携帯端末3の角度や方位は、経路演算部10に入力される。
【0023】
携帯端末3は、現在地点情報入力部13を有する。現在地点情報入力部13は、携帯端末3が内蔵するGPSチップが測位した位置情報のほか、携帯電話基地局やWi-Fiアクセスポイント経由で入手したデータなどに基づいて、携帯端末3の位置情報を取得するものである。特に、本実施形態では、現在地点情報入力部13として、アンテナ2から取得した現在地点の位置情報を入力するものを使用する。現在地点情報入力部13に出力側は、現在地点決定部14に接続され、現在地点決定部14において、現在地点情報入力部13から得られた情報に基づいて、現在地点の緯度、経度及び高度が算出される。現在地点決定部14によって算出された現在地点の緯度、経度及び高度は、経路演算部10に入力される。
【0024】
すなわち、経路演算部10は、
(1) 目的地点決定部9によって得られた目的地点の緯度、経度及び高度
(2) 現在地点決定部14によって得られた現在地点の緯度、経度及び高度
に基づいて、現在地点から見た目的地点の方向もしくは方位、仰角、直線距離を含む案内経路を演算する。
【0025】
経路演算部10の出力側には、表示座標演算部15が接続されている。表示座標演算部15は、表示パネル7をXY座標として表現した場合に、どの座標位置に目的地点決定部9が決定した目的地点や案内用のマーカーを表示させるかを、演算する。表示座標演算部15には、次のデータが入力される。
(1) 経路演算部10によって得られた現在地点から目的地点までの案内経路
(2) イメージセンサ4から表示パネル7に映し出されている風景影像の範囲
(3) 表示角度演算部12によって得られた表示パネル7の仰角及び方位
【0026】
経路演算部10の出力側には、モード切替部16が接続されている。モード切替部16は、経路演算部10によって得られた携帯端末3の現在位置と、目的地点の距離が予め設定された閾値以下になった場合に、表示パネル7に表示させる風景を、垂直モードから水平モードに切り替える。垂直モードは、イメージセンサ4の光軸を地面と平行もしくは平行に近い角度として広範囲の風景映像を表示させる。水平モードは、イメージセンサ4の光軸を地面と垂直もしくは垂直に近い角度として、イメージセンサ4の1画素あたりのセンシング距離精度を垂直モードに比較して精細なものとする。
【0027】
モード切替部16におけるモードの切替の基準となる閾値は、主としてイメージセンサ4のレンズの画角によって定まる。例えば、使用者が表示パネル7と地面と平行になるように携帯端末3を持っている状態、すなわちレンズの光軸が垂直もしくは垂直に近い状態において、表示パネル7に映し出される風景影像の外縁の地点と目的地点との距離よりも、携帯端末3が目的地点に近づいた場合に、モード切替部16は垂直モードから水平モードへの切り替えを行う。
【0028】
モード切替部16の出力側には、携帯端末3に設けられたスピーカやイヤホンなどの音声出力部17が接続される。この音声出力部17は、モード切替部16の指令に基づき、使用者にモード切替のために携帯端末3の角度調整を実行させるメッセージを出力する。例えば、アンテナ台1のヒンジ部1bにモータが設けられ、アンテナ2と携帯端末3の角度を自動調整する機能を有するものの場合には、モード切替部16からの指令によりモータを駆動して、携帯端末3の角度を垂直モードから水平モードに自動的に切り替えると同時に、音声出力部17から使用者にモード切換を実行する旨のメッセージが出力される。一方、手動操作により、携帯端末3の角度を調整するアンテナ台1を使用する場合には、モード切替部16からの指令に基づき、音声出力部17から使用者に対して携帯端末3の角度を垂直から水平モードに変更することを促すメッセージが出力される。
【0029】
表示座標演算部15の出力側には、表示座標演算部15によって決定された座標位置に目的地点や案内用のマーカーを表示させるマーカー表示処理部18が設けられている。このマーカー表示処理部18の入力側には、表示パネル7に表示する現在地点や目的地点用のマーカー、及び案内用のマーカーに関するデータ(例えば、形状、色彩、寸法、静止画又は動画)を記憶したマーカー形状記憶部19が接続されている。すなわち、マーカー表示処理部18は、表示座標演算部15からの座標位置に対して、マーカー形状記憶部19から読み出した目的地点や経路案内用のマーカーを配置する。
【0030】
マーカー表示処理部18には、モード切替部16の出力側が接続されており、モード切替部16によるモード切替指令に伴って、マーカー表示処理部18がマーカー形状記憶部19から読み込む目的地点や経路案内用のマーカーの種類が変更される。マーカー形状記憶部19には、異なる形状、色彩、寸法などを有するマーカーを保存されている。マーカー表示処理部18は、経路演算部10及び表示座標演算部15を経由して入力された現在地点と目的地点間の距離、携帯端末3に内蔵された各種センサから得られた現在地点の移動速度などに基づいて、経路案内の各状況に応じて異なるマーカーを、マーカー形状記憶部19から選択して呼び出す。
【0031】
マーカー表示処理部18の出力側は、表示メモリ6に接続されている。表示メモリ6においては、映像処理部5によって得られた風景画像とマーカー表示処理部18によって得られた各マーカーの画像とが重畳され、重畳された画像データが表示パネル7に映し出される。
【0032】
マーカー形状記憶部19に記憶されるマーカーとしては、例えば次のようなものがある。
(1) マーキング表示は現在地点及び目的地点を俯瞰的に見つけられやすい形状や色で構成する。例えば、目的地点を緑円、現在地点を茶星というように、色彩と形状を異ならせる。水平モードでは現在地点も併せてマーキング表示させる。
(2) モード切替部16からの指令により、垂直モードと水平モードでは、目的地点と現在地点のマーキング表示の形状や色を自動的に切り替え、使用者がどのモードで探索を実行しているかの判定や、表示パネル7に示された風景の解像度の精度が容易に判定できるようにする。例えば、目的地点に充分に近づくとマーカ-クッションが赤から緑に変わって、水平グリップで表示できることを知らせるように、目的地点用に複数のマーカーを記憶しておく。
(3) 2次元の表示パネル7に、奥行き情報を含めた3次元の表示が求められるため、奥行を矢印の数で表現させる。
(4) 誘導する人間の歩くスピードに合わせて、矢印をアニメーションで表示させて、奥行きがあることの認識効果をより高める。そのために必要な形状、大きさ、色彩の矢印の静止画データ及び動画データを記憶しておく。
【0033】
[1-2.作用]
前記のような構成を有する第1実施形態の案内システムの作用について、垂直モードと水平モードに分けて説明する。
【0034】
(1)垂直モード
垂直モードは、現在地点と目的地点がある程度離れている状態、例えば、水平モードが現在地点の周囲1~2m程度にある目的地点の探索を対象としている場合は、現在地点と目的地点がそれ以上離れている場合に使用される。垂直モードにおいては、アンテナ2が天頂方向を向いた状態において、携帯端末3の表示パネル7が地面に対して垂直もしくは垂直に近い範囲となるように、アンテナ台1のヒンジ部1bを調整する。このようにすると、携帯端末において表示パネル7の背面側に設けられたイメージセンサ4の光軸は、地面と平行もしくは平行に近い角度に設定される。
【0035】
目的地点の探索を行うにあたり、使用者は、まず、目的地点の緯度、経度、高度に関するデータをデータ入力部8から携帯端末3に入力する。携帯端末3はデータ入力部8に入力された各データに基づいて、目的地点決定部9に経路探索に使用する目的地点の情報を保存する。目的地点に関するデータの入力と同時に、又は使用者が探索開始指令を携帯端末3に入力すると、携帯端末3の現在地点情報入力部13にアンテナ2からのGNSS信号が入力され、その入力信号に基づいて、現在地点決定部14において現在地点の緯度、経度及び高度が決定される。
【0036】
目的地点決定部9に保存された目的地点の緯度、経度及び高度と、現在地点決定部14で得られた現在地点の緯度、経度及び高度は経路演算部10に送られる。経路演算部10では、現在地点の情報と目的地点の情報に基づいて、両地点間の距離、現在地点から見た目的地点の方向(方位と仰角)が計算され、両地点を結ぶ経路が算出される。
【0037】
経路演算部10によって得られた経路は、表示座標演算部15に送られる。表示座標演算部15は、携帯端末3の表示パネル7の表示角度及びイメージセンサ4からの広角度や解像度に従って、表示パネル7の画像表示面をXY座標として定義する。この場合、表示パネル7の表示角度は、角度及び地磁気センサ11からのデータに従って、表示角度演算部12が表示パネル7の方位や仰角が算出され、その結果が表示座標演算部15に入力される。表示座標演算部15は、経路演算部10が算出した現在地点、探索経路及び目的地点を、表示パネル7のどの座標に表示するかを演算する。
【0038】
表示パネル7の向きによって演算した探索経路や目的地点が表示パネル7上に表示できない場合、すなわち、表示パネル7の向いている方位と、探索経路や目的地点の方位が異なっている場合には、表示座標演算部15は、使用者に対して、音声出力部17から表示パネル7の向きを変えるためのメッセージを出力することができる。もちろん、表示パネル7に探索経路や目的地点を示すマーカーが表示されていないことを使用者が判別して、表示パネル7の向きを変更しても良い。
【0039】
表示座標演算部15によって算出された現在地点、探索経路及び目的地点の座標は、マーカー表示処理部18に送られる。マーカー表示処理部18では、現在地点、探索経路及び目的地点のそれぞれについて、表示パネル7に表示すべきマーカーをマーカー形状記憶部19から読み出し、各マーカーを表示座標演算部15によって算出した座標に配置する。この際、現在地点や目的地点については、垂直モードに対応したマーカーを用意しておき、それを選択することが好ましい。また、経路演算部10によって演算した探索経路の距離(現在地点と目的地点間の距離)に応じて、探索経路を示す矢印状のマーカーの色や形状、表示数を異ならせることが好ましい。例えば、目的地点が現在位置から離れている場合には、その距離が使用者に直感的に分かるように矢印の数を変更したり、遠方の目的地点ほど小さな矢印を表示させると良い。このようにすると、2次元の表示パネル7に、奥行き情報を含めた3次元の表示が可能となる。更に、誘導する人間の歩くスピードに合わせて、矢印をアニメーションで表示させて、奥行きがあることの認識効果をより高めることも可能である。
【0040】
マーカー表示処理部18によって得られたマーカー表示用のデータは表示メモリ6に送られる。表示メモリ6においては、映像処理部5によって得られた風景画像とマーカー表示処理部18によって得られた各マーカーの画像とが重畳され、重畳された画像データが表示パネル7に映し出される。図3は、表示パネル7に映し出された風景画像とマーカーの表示例である。目的地点を入力した状態では、図3(a)のように、目的地点のみをマーカーM1が風景画像Sに重ねあわされた状態で示されている。経路探索が実行されると、図3(b)のように、目的地点のマーカーM1、案内経路を示す複数の矢印状のマーカーM2及び案内経路が目的地点からどの程度離れているかを示す円弧状のマーカーM3が、風景画像Sと重ね合わされた状態で表示パネル7に表示される。距離を示す円弧状のマーカーM3は、例えば、目的地点から1m及び10mの位置に同心円状に、かつ距離を示す数値と共に表示することが好ましい。
【0041】
垂直モードにおいて、使用者が案内経路に沿って移動すると、アンテナ2からの測位データが変化し、それに基づいて現在地点決定部14により新たな現在地点が決定される。経路演算部10は、新たな現在地点に基づいて、新たな経路を演算し、その結果、表示パネル7には移動によって得られたイメージセンサ4からの新たな風景と、新たな目的地点や経路を示すマーカーが重畳表示される。このとき、現在地点と目的地点との距離が閾値以下となった場合に、その距離に応じて、案内経路を示す矢印形のマーカーの形状、色、大きさ、数などを変化させることで、目的地点までどの程度近付いたかを使用者に知らせることもできる。
【0042】
このように、垂直モードにおいては、表示パネル7が垂直もしくは垂直に近い角度となるように使用者が携帯端末3を持って目的地点の方向を向くことによって、現在地点から離れた位置にある目的地点とその方向を、イメージセンサ4が撮影した風景画像上で確認することができる。特に、垂直モードでは、イメージセンサ4は、遠方の風景全体を映し出すことが可能であることから、使用者は離れた位置にある目的地点の方向と、その経路を表示パネル7上で容易に確認することができ、目的地点に向かって歩みを進めることが可能となる。
【0043】
(2)水平モード
垂直モードで経路案内が行われ、使用者が目的地点に一定距離、例えば1~2m程度に近づいたことを経路演算部10が検出した場合、その検出信号を受信してモード切替部16は垂直モードから水平モードへの切替を実施する。この切替作業は、モード切替部16が音声出力部17を通じて使用者に表示パネル7の角度変更を促すものでも良いし、アンテナ台1がモータなどを利用して自動で角度調整を行うようなものの場合には、自動的に角度変更を行うものであっても良い。水平モードでは、表示パネル7の表示面が地面に対して水平もしくは水平に近い角度に設定される。そのため、表示パネル7の背面に設けられたイメージセンサ4のレンズの光軸は、地面と垂直になる。また、イメージセンサ4と地面との距離は使用者の手の位置、すなわち携帯端末3と地面との距離となるので、イメージセンサ4はカメラの広角度にもよるが、概ね1~2mの範囲の風景を映し出すことになる。
【0044】
水平モードでは、例えば、マーカーとして現在地点が茶色の星印、目的地点が緑色の円印であるとすると、表示パネル7には目的地周囲の地面の風景が映し出されると共に、風景に重畳して現在地点の茶色の星印と目的地点の緑色の円印が表示される。その状態で、携帯端末3を動かして星印が円印に重なった時に、目的地点に到達したと直感的に判る。
【0045】
このような水平モードと、前記垂直モードにおける目的地点の検出精度を比較する。まず、目的地点の検出精度は、地磁気センサと重力角度センサが検出する表示パネル7の方位方向の角度と、表示パネル7の仰角の精度によって左右される。スマートフォンのような一般的な端末に内蔵された地磁気センサの誤差は±5度、重力角度センサの誤差が±1度程度である。また、イメージセンサ4の解像度、すなわち、イメージセンサ4の1画素数当たりの表示パネル7に映し出される風景の範囲も、目的地点の検出精度に影響する。イメージセンサ4が広い範囲の風景を撮影している場合に、その1画素の表示範囲が広いと計測誤差が発生する。以下、これらの誤差について説明する。
【0046】
(3)方位方向と仰角に関するセンサの誤差
図4(a)は、垂直モードにおける目的地点の方位方向の誤差eを示す平面図である。使用者が位置する現在地点と目的地点の距離を30mとすると、地磁気センサが±5度の誤差を持つとすると、方位方向についての最大誤差eは、次の通りとなる。
e=tan5×30m≒5.2m
また、図4(b)の側面図に示すように、使用者が携帯端末3を地上1mの高さに持って30m先の目的地点を探索した場合、重力角度センサの誤差を±1度とすると、目的地点の手前方向の誤差efと、奥側方向の誤差ebは、次の通りとなる。
ef=30-(tan((tan-130/1)-1))≒10m
eb=30+(tan((tan-130/1)+1))≒33m
【0047】
このように垂直モードにおいては、携帯端末に内蔵された地磁気センサ及び重力角度センサの誤差が、表示パネル7上に目的地点を表示する場合に影響を与えることが分かる。しかし、垂直モードは目的地点から離れた現在地点において目的地点を探索し、案内するものであることから、各センサにこの程度の誤差があっても、使用者を目的地点近傍にまで案内することが可能である。ところが、目的地点に近づいた状態においても、垂直モードにおけるこのようなセンサの誤差が存在すると、目的地点を高精度で特定することが不可能となる。特に、測量の境界地点、埋設された水道管やガス管、雪や土で覆われたマンホールやバルブなどを探索する場合、地表面などに目的地点を示す目標物が見えていないことが多い。そのため、数cmの誤差があると、目的地点を正確に発見することができない。
【0048】
一方、本実施形態における水平モードは、図5に示すように、イメージセンサ4の視野角(イメージセンサ4に使用されるレンズの広角度)によって定まる狭い範囲の風景のみを表示パネル7に映し出す。その場合、イメージセンサ4の視野角を例えば77度とし、水平に持った携帯端末の高さを1mとすると、表示パネル7には半径1.6mの映像が映し出される。その状態で、重力角度センサの誤差が±1度とすると、目的地点の最大表示誤差evは、次の通りとなる。
ev=tan1=0.017m
このように、水平モードでは、半径1.6mの範囲内で、わずか1.7cmの誤差で目的地点を検出することができる。その結果、土地の境界や水道管、マンホール、バルブなどの小型で小面積の目的地点であっても、その位置を高精度で特定することができる。
【0049】
(4)イメージセンサ4の解像度による誤差
図6は、垂直モードにおけるイメージセンサ4の解像度に起因する誤差を示している。一例として、イメージセンサ4は視野角77度、目的地点方向の撮像画角77度×3/4、センサ画素数1200万、表示パネル7の地面からの高さを1mとする。その場合、イメージセンサ4の目的地点方向の撮像範囲は30m×30m×1/2となる。ここで1/2を乗じるのは、携帯端末3を垂直モードで支持した場合、表示パネル7に映し出される風景のうち上半分は空の方向が表示されるため、下半分の風景のみが探索に必要なためである。このような条件に従えば、1画素当たりの撮像範囲は、
(30m×30m×1/2)/1200万画素=50mm
となる。
【0050】
このように、垂直モードでは、1画素当たりの撮像範囲が広いことから高精度な探索が困難である。特に、スマートフォンのような小型の携帯端末では、表示パネル7自体の解像度も限界があることから、イメージセンサ4のすべての画素がそのまま表示パネル7に表示される訳ではないため、表示パネル7に表示される目的地点の精度はより低いものとなる。
【0051】
更に、垂直モードにおいては、前記のように仰角を検出する重力角度センサなどの誤差もあることから、1画素当たりの撮像範囲が広いと目的地点の検出精度はより低下する。仮に、重力角度センサに比較して精度の高いジャイロセンサを使用しても、1画素当たりの撮像範囲の広さに起因する誤差は解消できない。
【0052】
図7は、水平モードにおける1画素当たりの撮像範囲を示す側面図であって、携帯端末3が地面から1mの高さに支持されている場合、撮像範囲は1.6m×1.6mであるから、1画素当たりの撮像範囲は、
(1.6m×1.6m)/1200万画素=0.2mm
となる。このように、水平モードは垂直モードに比較して、1画素当たりの撮像範囲が100倍以上も高精度となることから、その誤差は殆ど無視できる程度と考えられる。また、近距離で真下方向のため、角度センサの誤差も目的地点の特定に殆ど影響を与えないと考えられる。
【0053】
[1-3.効果]
本実施形態の効果は、以下の通りである。
(1)携帯端末3にGNSSを使った現在位置認識機能と、イメージセンサ4と角度及び地磁気センサ11で画面の風景映像の任意の地点にマーカーを重畳できる表示機能を搭載させ、現在位置認識機能を使って予め設定した目的地点を地面にマーキング表示をさせる。そのため、使用者に周囲の風景と案内用のマーカーを同時に認識させることか可能となり、目的地点の探索が直感的に分かりやすく実行できる。
【0054】
(2)携帯端末3を使用して目的地点を探索し、かつその地点への到達を案内するシステムにおいて、携帯端末3を垂直にして探索する垂直モードと水平にして探索する水平モードを併せ持ち、垂直モードでは広範囲を探索し、水平モードではより高精度で探索できる仕組みを持たせた。これにより、垂直モードと水平モードを連携させて効率よく高精度に地点を探索することが可能になった。
【0055】
(3)特に、垂直モードで広範囲の風景映像を表示させ、マーキング表示は目的地点を俯瞰的に見つけられやすい形状や色で構成することで、目的地点を探索しやすくする。目的地点に近づいた場合は、水平モードに切り替えることで、イメージセンサ4を探索周辺領域だけをセンシングさせることができ、センサの1画素あたりのセンシング距離精度を精細にでき、目的地点のマーキング位置の表示の精度を上げることができる。また水平モードでは現在地点も併せてマーキング表示させる。このモード切替で目的地点と現在地点のマーキング表示を自動的に、ユーザが精度が判定できる形状や色に変更する。目的地点のマーキング表示に、現在地点が重なるように移動すれば、案内が完了する。
【0056】
(4)2次元の表示パネル7に、奥行き情報を含めた3次元の表示が求められる。本実施形態では、奥行を矢印の数で表現させ、更に、誘導する人間の歩くスピードに合わせて、矢印をアニメーションで表示させて、奥行きがあることの認識効果をより高めることができる。
【0057】
(5)例えば、目的地点の方向(奥行方向)を矢印で表示して、目的地点までの距離が一定値以下、例えば30mになった時に連続矢印で表示する。これにより、矢印の数で距離を表現することが可能になり、目的地点を直観的に理解できる。この場合、矢印の数を適宜設定することで、距離の増減を表示することもできる。また、本実施形態では、地図出たを使用することなく、イメージセンサ4からの風景にマーカーを重畳させているので、現在地点と目的地点との間に障害物があっても、連続矢印を表示することにより実際は障害物の奥に目的地点があると容易に推測でき、トンネルなども抜けることができる表示が可能である。
【0058】
[2.第2実施形態]
第2実施形態を図8乃至図10を参照して、説明する。第2実施形態は、第1実施形態の構成に加えて、目的地点に近づく前と近づいた後の目的地点の座標の差分=空間距離を使って、左右方向の角度センサの誤差θを推定して、それ以後の角度センサの誤差を自動で補正する機能を持たせる。角度センサとしては、重力角度センサや地磁気センサ、ジャイロセンサなどが対象となる。
【0059】
第2実施形態では、図8のブロック図に示すように、表示座標演算部15の出力側に、表示座標演算部15によって算出された複数の目的地点について、本来の目的地点との乖離量を算出する乖離量演算部20と、この乖離量演算部20に基づいて角度センサの誤差に対する補正量を算出する補正量演算部21が設けられている。補正量演算部21の出力側は、表示パネル7の角度を算出する表示角度演算部12に接続されている。
【0060】
乖離量演算部20は、図9の演算原理図に示すような手法で、探索途中における2か所の現在地点について、それぞれ本来の目的地点と、表示座標演算部15によって算出された誤差を含んだ計算上の目的地点の距離が、どの程度乖離しているかを演算する。図9における各値は次の通りである。なお、図9は、目的地点と第2の現在地点からの距離C・Lmを1/2Lm、第2の現在地点での表示座標演算で取得した目的地点CDeを1/2De、第2の地点での乖離量CElを1/2Elとしたものである。
(1) 角度センサの誤差がθ度
(2) 目的地点と第1の現在地点からの距離Lm
(3) 目的地点と第2の現在地点からの距離C・Lm
(4) 第1の現在地点での表示誤差El
(5) 第1の現在地点での表示座標演算で取得した目的地点De
(6) 本来の目的地点D
(7) 第2の現在地点での表示座標演算で取得した目的地点CDe
(8) 第2の地点での乖離量CEl
【0061】
乖離量演算部20は、目的地点までLmの時と1/2Lmの時のDeとD1/2eの距離を検出する。すると、次の式が成り立つ
1/2El=1/2L×tanθ=d(De,D1/2e)
tanθ=2/L×d(De,D1/2e)
【0062】
次に、補正量演算部21は、上記の式に基づいて、下記式を計算して、角度センサの誤差θを求める
θ=Arctanθ=(2/L×d(De,D1/2e))
誤差θが求められた後は、補正量演算部21は、その値を表示角度演算部12に出力し、表示角度演算部12は角度センサの出力に誤差θを補正した値を、表示パネル7の角度として経路演算部10を介して表示座標演算部15に出力する。このようにすると、誤差θが補正された表示パネル7の角度が表示座標演算に使用されることになり、角度センサの誤差に起因する表示制度の低下が解消される。
【0063】
図10は、第2実施形態の動作の一例を示すフローチャートである。経路探索を開始すると、まず、角度センサの誤差θの推定ができているか、否かを確認する(S1)。確認ができている場合には(S1のYes)、角度センサの出力にθを補正した数値A-θ=補正した角度センサの出力Acとし、以後の角度センサの出力は数値Acを使用する(S2)。確認ができていない場合には(S1のNo)、探索を続けながら目的地点に向かって進み(S3)、目的地点までLmになったか否か、すなわち誤差θ検出のための第1の現在地点に達したか否かを確認する(S4)。第1の現在地点に達していない場合には(S4のNo)、更に目的地点に向かって進み(S3)、第1の現在地点に達したか否かを確認する(S4)。第1の現在地点に達した場合には(S4のYes)、角度センサの出力Aを使って目的地点Deの表示座標を取得する(S5)。
【0064】
第1の現在地点に達して(S4のYes)、目的地点Deの表示座標を取得した後は(S5)、再び目的地点に向かって進み(S6)、目的地点まで1/2Lmになったか否かを確認する(S7)。目的地点まで1/2Lmに達していない場合には(S7のNo)、更に目的地点に向かって進み(S6)、目的地点まで1/2Lmに達したか否かの確認を繰り返す。目的地点まで1/2Lmに達した場合には(S7のYes)、角度センサの出力Aを使って目的地点D1/2eの表示座標を取得する。先に取得した目的地点Deの座標との空間距離d(De,1/2e)を算出する(S8)。誤差θは右図の関係となり、
θ=Arctanθ=(2/L×d(De,D1/2e))
と推定する(S8)。誤差θが得られた後は、角度センサの出力にθを補正した数値A-θ=補正した角度センサの出力Acとし、以後の角度センサの出力は数値Acを使用する(S2)。
【0065】
第2実施形態では、探索の途中の2か所で、第1と第2の現在地点における表示座標上の目的地点と、本来の目的地点との乖離量に基づいて、角度センサの誤差θを求めることができる。その結果、角度センサの誤差を補正することで、より精度の高い目的地点の探索を行うことが可能となる。
【0066】
[3.他の実施形態]
本明細書においては、本実施形態に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0067】
(1)マーカーに加えて、候補となる目的地点の写真情報をAR表示して、正しく選択できることを助ける。写真情報等をユーザの目を介すことで選択している目的地点であることの確認を助けることができる。ユーザにとっては選択の安心感にもつながる。
【0068】
(2)案内用のマーカーに限らず、アンテナの電波受信強度、目的地点までの距離、表示パネル7の傾斜角度など、経路案内や携帯端末3に関する情報を数値やマーカー音声によって使用者に知らせることもできる。
【符号の説明】
【0069】
1…アンテナ台
1a…アンテナ固定部
1b…ヒンジ部
1c…端末装着部
1d…ケース
2…アンテナ
3…携帯端末
4…イメージセンサ
5…映像処理部
6…表示メモリ
7…表示パネル
8…データ入力部
9…目的地点決定部
10…経路演算部
11…角度及び地磁気センサ
12…表示角度演算部
13…現在地点情報入力部
14…現在地点決定部
15…表示座標演算部
16…モード切替部
17…音声出力部
18…マーカー表示処理部
19…マーカー形状記憶部
20…乖離量演算部
21…補正量演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10