(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電動シリンダ及び作業機械
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20241022BHJP
E02F 3/38 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F16H57/04 D
F16H57/04 E
E02F3/38 A
(21)【出願番号】P 2021079546
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯谷 英史
(72)【発明者】
【氏名】赤崎 翔太
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-035255(JP,A)
【文献】特開2012-007684(JP,A)
【文献】特開2020-204172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
E02F 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源であるモータと、
前記モータの駆動により回転する出力軸と、
前記出力軸に連結され、前記出力軸の回転により回転する第一回転体と、
前記第一回転体に隣接し、前記第一回転体の回転により回転する第二回転体と、を備え、
前記第一回転体は、潤滑剤を収容可能に開口する中空部を有
し、
前記第一回転体の回転により前記中空部内の前記潤滑剤が前記第一回転体の径方向外側に向けて流れるよう構成されている
電動シリンダ。
【請求項2】
前記出力軸は、前記モータの軸方向端面から軸方向外方に突出し、
前記第一回転体は、前記出力軸と同軸の筒状に形成され、
前記中空部は、前記第一回転体の前記軸方向外方に開口している
請求項1に記載の電動シリンダ。
【請求項3】
前記モータの駆動力をピストンに伝達する遊星歯車機構を更に備え、
前記遊星歯車機構は、
前記第一回転体としてのサンギヤと、
前記第二回転体としての複数のプラネタリギヤと、
前記複数のプラネタリギヤの中心軸を回転可能に支持するキャリアと、
前記複数のプラネタリギヤを囲むリングギヤと、を備える
請求項2に記載の電動シリンダ。
【請求項4】
前記キャリアは、前記サンギヤの外周に臨む位置から前記プラネタリギヤの中心軸に向けて延び、前記潤滑剤を流通可能に窪むガイド溝を有する
請求項3に記載の電動シリンダ。
【請求項5】
前記モータの軸方向端面と前記キャリアとの間に配置されたスペーサを更に備え、
前記スペーサは、前記サンギヤの外周と隙間をあけて前記モータの軸方向に開口する貫通孔を有する
請求項3又は4に記載の電動シリンダ。
【請求項6】
前記キャリアの回転力を前記ピストンに伝達するトランスファギヤと、
前記サンギヤの軸方向外端に臨む位置から前記軸方向外方に延びるトランスファシャフトと、を更に備え、
前記キャリアは、前記トランスファシャフトの軸方向一端部側とスプラインにより結合され、
前記トランスファギヤは、前記トランスファシャフトの軸方向他端部側とスプラインにより結合されている
請求項3から5の何れか一項に記載の電動シリンダ。
【請求項7】
前記トランスファシャフトの軸方向他端部側に対して外部から前記潤滑剤を供給可能に開口する供給孔を有するカバー部材と、
前記カバー部材に設けられ、かつ、前記供給孔に対して外部から前記潤滑剤を供給可能に開閉可能なグリスニップルと、を更に備える
請求項6に記載の電動シリンダ。
【請求項8】
車両本体と、
前記車両本体に連結された作業機と、を備え、
前記作業機は、請求項1から7の何れか一項に記載の電動シリンダを備える
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動シリンダ及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業機械の一例として電動ショベルが開示されている。電動ショベルは、車両本体と、車両本体に対して回動可能に設けられたブームと、電動シリンダと、を備える。ブームは、電動シリンダによって駆動される。
特許文献2には、電動シリンダとして、上下方向に延びるねじ軸を収納する内筒と、内筒を出没可能に収納する外筒と、を備えた構成が開示されている。内筒は、ねじ軸と螺合するナットに固定されている。内筒内の下半部には、流通孔を介して外筒内と流通する潤滑剤が封入されている。内筒内の上半部には、内筒の上端部に形成された大気連通孔を有する空気室が形成されている。
特許文献3には、軸線方向に沿って長尺なボディと、ボディの内部に設けられた変位機構と、を備えた構成が開示されている。変位機構は、ボディの内部に収容されるねじ軸と、ねじ軸に螺合される変位ナットと、変位ナットの外周側に装着されるピストンと、ピストンに連結されるピストンロッドと、を備える。ねじ軸の一端部は、コネクタに連結されている。コネクタは、軸受によって回転自在に支持されている。ねじ軸の他端部は、ホルダに連結されている。ホルダの外周面には、支持リングが設けられている。支持リングの外周面は、複数の支持部を有して凹凸状に形成されている。支持部は、ピストンロッドの内周面に摺接し、ピストンロッドを軸線方向に沿って変位自在に支持している。支持リングの外周面には、潤滑剤を案内する攪拌溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-204172号公報
【文献】実公平3-4962号公報
【文献】特開2009-275914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、電動シリンダの駆動によりブームが回動する。特許文献1では、電動シリンダの駆動源であるモータの発熱により問題が生じることを防ぐため、モータからの熱を外部へ効率的に逃がすことが要求される。
特許文献2の場合、内筒内及び外筒内に潤滑剤が封入される。
特許文献3の場合、支持リングの攪拌溝により潤滑剤が攪拌される。
これら特許文献2及び3では、ねじ軸と平行配置されたモータを備える。モータの発熱により問題が生じることを防ぐため、モータからの熱を外部へ効率的に逃がす上で改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、モータからの熱を外部へ効率的に逃がすことができる電動シリンダ及び作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電動シリンダは、駆動源であるモータと、前記モータの駆動により回転する出力軸と、前記出力軸に連結され、前記出力軸の回転により回転する第一回転体と、前記第一回転体に隣接し、前記第一回転体の回転により回転する第二回転体と、を備え、前記第一回転体は、潤滑剤を収容可能に開口する中空部を有する。電動シリンダは、前記第一回転体の回転により前記中空部内の前記潤滑剤が前記第一回転体の径方向外側に向けて流れるよう構成されている。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、モータからの熱を外部へ効率的に逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態に係る作業機の側面図であって、ブーム及びアームの内部を透過して示す図。
【
図3】実施形態に係るブームの斜視図であって、ブームの内部を透過して示す図。
【
図4】実施形態に係るアームの斜視図であって、アームの内部を透過して示す図。
【
図6】実施形態に係る電動シリンダを軸方向の一方側から見た図。
【
図7】実施形態に係る電動シリンダを軸方向の他方側から見た図。
【
図13】実施形態に係る潤滑剤の流れの一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態においては、作業機械(作業車両)の一例としてショベルを挙げて説明する。
【0010】
<ショベル(作業機械)>
図1に示すように、作業機械としてのショベル1は、車両本体2と、車両本体2に連結された作業機3と、を備える。以下、ショベル1の前進方向、後進方向及び車両幅方向を「車両前方(車両前後方向一方側)」、「車両後方(車両前後方向他方側)」及び「車両幅方向」と称する。車両幅方向は、「左側(車両幅方向一方側)」又は「右側(車両幅方向他方側)」と称する場合もある。ショベル1が前進する方向に対して右手を右側、ショベル1が前進する方向に対して左手を左側と称する。ショベル1が水平面に配置された状態の上下方向、上方及び下方を単に「上下方向」、「上方」及び「下方」と称する。
【0011】
<車両本体>
車両本体2は、自走可能な下部走行体5と、下部走行体5上に旋回自在に設けられた上部旋回体6と、を備える。
【0012】
下部走行体5は、左右一対の履帯7を有している。下部走行体5は、履帯7を駆動する電動モータ(不図示)を備える。下部走行体5は、電動モータによって履帯7が駆動されることで走行する。なお、下部走行体5は、電動モータに代えて油圧モータを備えていてもよい。
【0013】
下部走行体5の前部には、下部走行体5の車両幅方向に延びる排土板としてのブレード8が設けられている。下部走行体5は、ブレード8を駆動する電動アクチュエータ(不図示)を備える。ブレード8の高さ位置は、電動アクチュエータの駆動により調整可能とされている。
【0014】
上部旋回体6は下部走行体5の上部に設けられている。上部旋回体6には、下部走行体5の駆動源である走行用電動モータ、作業機3の駆動源である電動シリンダのモータ、各モータの動力源となるバッテリ及びインバータ等(不図示)が設けられている。上部旋回体6は、下部走行体5に対して上下方向に延びる軸線回りに旋回可能とされている。
【0015】
上部旋回体6には、キャノピー10が設けられている。キャノピー10は、運転者を収容可能な運転スペース11を有する。キャノピー10は、運転スペース11の天井部を形成するフード12と、フード12の後部の車両幅方向両側に設けられてフード12から下方に延びる後部支柱13と、フード12の前部の車両幅方向両側に設けられてフード12から下方に延びる前部支柱14と、を備える。
【0016】
上部旋回体6の前部には、ブーム20を支持するブラケット15が設けられている。
図2に示すように、ブラケット15は、上部旋回体6の車両幅方向に開口する第一孔15a及び第二孔15bを有する。第一孔15aは、ブラケット15の上端部近傍に配置されている。第二孔15bは、第一孔15aよりも下方でかつ前方に配置されている。
【0017】
<作業機>
図1に示すように、作業機3は、上部旋回体6に対して屈曲起伏自在に動作可能に設けられている。作業機3は、ブーム20と、アーム30と、バケット40(作業具)と、複数(例えば本実施形態では3つ)の電動シリンダ100A~100Cと、を備える。3つの電動シリンダ100A~100Cは、ブーム20を動作させる第一電動シリンダ100Aと、アーム30を動作させる第二電動シリンダ100Bと、バケット40を動作させる第三電動シリンダ100Cと、である。ブーム20の基端部は、上部旋回体6に対して回転可能に連結されている。ブーム20の先端部は、アーム30の基端部に対して回転可能に連結されている。アーム30の先端部は、バケット40に対して回転可能に連結されている。
【0018】
<ブーム>
ブーム20は、
図1の姿勢では、上部旋回体6の車両幅方向から見て、ブラケット15から上方に延びた後に屈曲して前上方に向かって延びている。以下、上部旋回体6の車両幅方向から見て、ブーム20が延びる方向を「ブーム延在方向」、ブーム延在方向と直交する方向を「ブーム板幅方向」とする。ブーム延在方向においてブーム20の一端部(ブラケット15側の端部)を「ブーム基端部」とする。ブーム延在方向においてブーム20の他端部(ブーム基端部とは反対側の端部)を「ブーム先端部」とする。ブーム板幅方向の寸法は、ブーム基端部からブーム延在方向の中央近傍に向かうに従って徐々に大きくなった後に、ブーム先端部に向かうに従って徐々に小さくなっている。
【0019】
図3に示すように、ブーム20は、上部旋回体6の車両幅方向に離間して配置された一対のブーム側板21と、上部旋回体6の車両幅方向に延びて一対のブーム側板21同士を接続するブーム底板22と、ブーム底板22のブーム基端部側に接続されたブーム基端側接続板23と、ブーム底板22のブーム先端部側に接続されたブーム先端側接続板24と、ブーム延在方向の中央近傍で一対のブーム側板21により挟まれた空間を仕切るブーム仕切部材25と、ブーム基端部を上部旋回体6に支持させるブーム基端支持部材26と、アーム30を支持するアーム支持板27と、を備える。
【0020】
ブーム側板21は、上部旋回体6の車両幅方向に開口する第一シリンダ基端側孔21a及び第二シリンダ基端側孔21bを有する。
図2に示すように、第一シリンダ基端側孔21aは、上部旋回体6の車両幅方向から見て、ブーム延在方向の中央近傍下側であって第一電動シリンダ100Aの一部(
図2の上端部近傍)と重なる部分に配置されている。第二シリンダ基端側孔21bは、上部旋回体6の車両幅方向から見て、ブーム延在方向の中央近傍上側であって第二電動シリンダ100Bの一部(
図2の下端部近傍)と重なる部分に配置されている。
【0021】
図3に示すように、ブーム底板22は、ブーム側板21のブーム板幅方向において上部旋回体6とは反対側の縁部に設けられている。ブーム底板22、ブーム延在方向に沿って延びている。ブーム底板22は、ブーム延在方向の中央近傍で第一シリンダ基端側孔21aと第二シリンダ基端側孔21bとの間に向かって湾曲している。
【0022】
ブーム基端側接続板23は、ブーム基端部側で上部旋回体6の車両幅方向に延びて一対のブーム側板21同士を接続している。ブーム基端側接続板23は、ブーム底板22との接続部からブーム板幅方向に遠ざかるに従ってブーム基端部に近づくように延びた後に屈曲してブーム基端部に向けて延びている。
【0023】
ブーム先端側接続板24は、ブーム先端部側で上部旋回体6の車両幅方向に延びて一対のブーム側板21同士を接続している。ブーム先端側接続板24は、ブーム底板22との接続部からブーム板幅方向に遠ざかるに従ってブーム先端部に近づくように延びた後に屈曲してブーム先端部に向けて延びている。ブーム先端側接続板24は、一方のブーム側板21に隣接する位置でブーム延在方向に開口する開口部24aを有する。
【0024】
ブーム仕切部材25は、ブーム延在方向の中央近傍で上部旋回体6の車両幅方向に延びて一対のブーム側板21同士を接続している。ブーム仕切部材25は、ブーム板幅方向に沿って延びている。ブーム仕切部材25は、第一シリンダ基端側孔21aと第二シリンダ基端側孔21bとの間に配置されている。ブーム仕切部材25は、ブーム底板22に対してブーム板幅方向に離間している。
【0025】
ブーム基端支持部材26は、ブーム基端部側に設けられている。ブーム基端支持部材26は、上部旋回体6の車両幅方向に開口する第一貫通孔26aを有する。第一貫通孔26aには、上部旋回体6の車両幅方向に延びる第一ピン28(
図2参照)が挿通される。ブーム20は、ブーム基端支持部材26の第一貫通孔26a及びブラケット15の第二孔15bに第一ピン28が挿通されることで、第一ピン28の中心軸O1回りに回動可能に支持される。
【0026】
アーム支持板27は、ブーム先端部側に設けられている。アーム支持部16は、一対のブーム側板21を上部旋回体6の車両幅方向外側から挟み込むように、ブーム側板21の外面に設けられている。アーム支持板27は、ブーム側板21よりもブーム延在方向の外方に突出している。アーム支持板27は、上部旋回体6の車両幅方向に開口する第二貫通孔27aを有する。第二貫通孔27aは、アーム支持板27においてブーム側板21よりもブーム延在方向の外方に突出する部分に設けられている。第二貫通孔27aには、上部旋回体6の車両幅方向に延びる第二ピン29(
図2参照)が挿通される。
【0027】
<アーム>
アーム30は、
図1の姿勢では、上部旋回体6の車両幅方向から見て、第二電動シリンダ100Bの一部(
図1の上端部近傍)と重なる部分から前下方に向かって延びている。以下、上部旋回体6の車両幅方向から見て、アーム30が延びる方向を「アーム延在方向」、アーム延在方向と直交する方向を「アーム板幅方向」とする。アーム延在方向においてアーム30の一端部(第二電動シリンダ100B側の端部)を「アーム基端部」とする。アーム延在方向においてアーム30の他端部(アーム基端部とは反対側の端部)を「アーム先端部」とする。アーム板幅方向の寸法は、アーム基端部からアーム延在方向におけるブーム接続部近傍に向かうに従って徐々に大きくなった後に、アーム先端部に向かうに従って徐々に小さくなっている。
【0028】
図4に示すように、アーム30は、上部旋回体6の車両幅方向に離間して配置された一対のアーム側板31と、上部旋回体6の車両幅方向に延びて一対のアーム側板31同士を接続するアーム底板32と、アーム底板32に接続されたアーム側接続板33と、アーム基端部近傍で一対のアーム側板31により挟まれた空間を仕切るアーム仕切部材34と、ブーム先端部に接続されるブーム先端接続部材35と、バケット40(
図2参照)を支持するバケット支持部材36と、第一リンク部材41(
図2参照)の一端部を支持するリンク支持部材37と、を備える。
【0029】
アーム側板31は、上部旋回体6の車両幅方向に開口する第二シリンダ先端側孔31a及び第三シリンダ基端側孔31bを有する。
図2に示すように、第二シリンダ先端側孔31aは、上部旋回体6の車両幅方向から見て、アーム基端部近傍であって第二電動シリンダ100Bの一部(
図2の上端部近傍)と重なる部分に配置されている。第三シリンダ基端側孔31bは、上部旋回体6の車両幅方向から見て、アーム板幅方向においてブーム先端部と重なる部分とは反対側であって第三電動シリンダ100Cの一部(
図2の上端部近傍)と重なる部分に配置されている。
【0030】
アーム底板32は、
図2の姿勢では、アーム側板31のアーム板幅方向において上部旋回体6側(ブーム20側)の縁部に設けられている。アーム底板32は、アーム延在方向に沿って延びている。
図4に示すように、アーム底板32は、アーム延在方向においてブーム先端接続部材35とバケット支持部材36との間にわたって延びている。
【0031】
アーム側接続板33は、アーム先端部側で上部旋回体6の車両幅方向に延びて一対のアーム側板31同士を接続している。アーム側接続板33は、アーム底板32との接続部からアーム板幅方向に遠ざかるに従ってアーム先端部に近づくように延びた後に屈曲してアーム先端部に向けて延びている。
【0032】
アーム仕切部材34は、アーム基端部近傍で上部旋回体6の車両幅方向に延びて一対のアーム側板31同士を接続している。アーム仕切部材34は、第二シリンダ先端側孔31aと第三シリンダ基端側孔31bとの間に配置されている。アーム仕切部材34は、ブーム先端接続部材35とは離間して配置されている。アーム仕切部材34は、上部旋回体6の車両幅方向から見て、ブーム先端接続部材35近傍からアーム先端部側に向かって延びた後に屈曲して第二シリンダ先端側孔31aと第三シリンダ基端側孔31bとの間を横切るように延びている。
【0033】
ブーム先端接続部材35は、上部旋回体6の車両幅方向に延びる筒状に形成されている。ブーム先端接続部材35は、上部旋回体6の車両幅方向に開口するブーム接続孔35aを有する。
図2に示すように、ブーム接続孔35aは、上部旋回体6の車両幅方向から見て、アーム支持板27の第二貫通孔27aと重なる。アーム30は、アーム支持板27の第二貫通孔27a及びブーム先端接続部材35のブーム接続孔35aに第二ピン29が挿通されることで、第二ピン29の中心軸O2(
図4参照)回りに回動可能に支持される。
【0034】
図4に示すように、バケット支持部材36は、アーム先端部に設けられている。バケット支持部材36は、上部旋回体6の車両幅方向に延びる筒状に形成されている。バケット支持部材36は、上部旋回体6の車両幅方向に開口する第三貫通孔36aを有する。第三貫通孔36aには、上部旋回体6の車両幅方向に延びる第三ピン38(
図2参照)が挿通される。
【0035】
図4に示すように、リンク支持部材37は、アーム底板32とアーム側接続板33との間に配置されている。リンク支持部材37は、バケット支持部材36の近傍に配置されている。リンク支持部材37は、上部旋回体6の車両幅方向に延びる筒状に形成されている。リンク支持部材37は、一対のアーム側板31よりも上部旋回体6の車両幅方向の外方に突出している。リンク支持部材37は、上部旋回体6の車両幅方向に開口する第一リンク接続孔37aを有する。
【0036】
<バケット>
バケット40は、
図2の姿勢では、アーム先端部からブーム延在方向中央近傍に向かって傾いている。バケット40は、上部旋回体6の車両幅方向に開口するバケット接続孔40a及び第二リンク接続孔40bを有する。
【0037】
バケット接続孔40aは、上部旋回体6の車両幅方向から見て、バケット支持部材36の第三貫通孔36aと重なる。バケット40は、バケット支持部材36の第三貫通孔36a及びバケット40のバケット接続孔40aに第三ピン38が挿通されることで、第三ピン38の中心軸O3(
図4参照)回りに回動可能に支持される。
第二リンク接続孔40bは、
図2の姿勢では、バケット接続孔40aよりも下方かつ後方に離れた位置に配置されている。
【0038】
<第一電動シリンダ>
図2に示すように、第一電動シリンダ100Aは、ブーム仕切部材25よりもブーム基端部側に配置されている。第一電動シリンダ100Aは、ブーム延在方向に沿って伸縮可能に構成された第一シリンダ本体103Aと、駆動源である第一モータ101Aと、第一モータ101Aの駆動力を第一シリンダ本体103Aに伝達する第一動力伝達ユニット102Aと、を備える。
【0039】
第一シリンダ本体103A及び第一モータ101Aは、互いに平行に延びている。第一シリンダ本体103Aの第一端部は、ブラケット15の第一孔15aに挿通されたピン51に接続されている。第一電動シリンダ100Aは、上部旋回体6の幅方向に延びるピン51の中心軸回りに回動可能に、ブラケット15を介して上部旋回体6に支持されている。
【0040】
第一シリンダ本体103Aの第二端部は、ブーム20の第一シリンダ基端側孔21aに挿通されたピン52に接続されている。第一電動シリンダ100Aは、上部旋回体6の幅方向に延びるピン52の中心軸回りに回動可能に、ブーム20に支持されている。
【0041】
第一モータ101Aは、第一シリンダ本体103Aの第二端部側に配置されている。第一モータ101Aは、第一シリンダ本体103Aよりもブーム板幅方向の内側に配置されている。第一モータ101Aは、上部旋回体6に設けられたバッテリ(不図示)を動力源として第一シリンダ本体103Aを動作させる。ブーム20は、第一モータ101Aの駆動により第一シリンダ本体103Aが伸縮することで、上部旋回体6に対して第一ピン28の中心軸O1(
図3参照)回りに回動する。
【0042】
第一モータ101Aからは第一配線61が延びている。第一配線61は、ブーム基端側接続板23に沿って延び、ブラケット15内に通じている。第一配線61は、ブラケット15内を通じて不図示のバッテリに接続されている。
【0043】
<第二電動シリンダ>
第二電動シリンダ100Bは、ブーム仕切部材25よりもブーム先端部側に配置されている。第二電動シリンダ100Bは、ブーム延在方向に沿って伸縮可能に構成された第二シリンダ本体103Bと、駆動源である第二モータ101Bと、第二モータ101Bの駆動力を第二シリンダ本体103Bに伝達する第二動力伝達ユニット102Bと、を備える。
【0044】
第二シリンダ本体103B及び第二モータ101Bは、互いに平行に延びている。第二シリンダ本体103Bの第一端部は、ブーム20の第二シリンダ基端側孔21bに挿通されたピン53に接続されている。第二電動シリンダ100Bは、ブーム20に対して上部旋回体6の幅方向に延びるピン53の中心軸回りに回動可能に、ブーム20に支持されている。
【0045】
第二シリンダ本体103Bの第二端部は、アーム30の第二シリンダ先端側孔31aに挿通されたピン54に接続されている。第二電動シリンダ100Bは、アーム30に対して上部旋回体6の幅方向に延びるピン54の中心軸回りに回動可能に、アーム30に支持されている。
【0046】
第二モータ101Bは、第二シリンダ本体103Bの第一端部側に配置されている。第二モータ101Bは、第二シリンダ本体103Bよりもブーム板幅方向の内側に配置されている。第二モータ101Bは、上部旋回体6に設けられたバッテリ(不図示)を動力源として第二シリンダ本体103Bを動作させる。アーム30は、第二モータ101Bの駆動により第二シリンダ本体103Bが伸縮することで、ブーム20に対して第二ピン29の中心軸O2(
図3参照)回りに回動する。
【0047】
第二モータ101Bからは第二配線62が延びている。第二配線62は、第一モータ101Aに向かって延びた後、第一配線61と共にブーム基端側接続板23に沿って延び、ブラケット15内に通じている。第二配線62は、ブラケット15内を通じて不図示のバッテリに接続されている。
【0048】
<第三電動シリンダ>
第三電動シリンダ100Cは、アーム仕切部材34よりもアーム先端部側に配置されている。第三電動シリンダ100Cは、アーム延在方向に沿って伸縮可能に構成された第三シリンダ本体103Cと、駆動源である第三モータ101Cと、第三モータ101Cの駆動力を第三シリンダ本体103Cに伝達する第三動力伝達ユニット102Cと、を備える。
【0049】
第三シリンダ本体103C及び第三モータ101Cは、互いに平行に延びている。第三シリンダ本体103Cの第一端部は、アーム30の第三シリンダ基端側孔31bに挿通されたピン55に接続されている。第三電動シリンダ100Cは、アーム30に対して上部旋回体6の幅方向に延びるピン55の中心軸回りに回動可能に、アーム30に支持されている。
【0050】
第三シリンダ本体103Cの第二端部は、第一リンク部材41の第一端部に接続されている。第一リンク部材41の第一端部は、上部旋回体6の幅方向に開口する第一リンク孔41aを有する。第三シリンダ本体103Cの第二端部は、第一リンク孔41aに挿通されたピン56に接続されている。第三電動シリンダ100Cは、第一リンク部材41に対して上部旋回体6の幅方向に延びるピン56の中心軸回りに回動可能に、第一リンク部材41を支持している。
【0051】
第一リンク部材41の第二端部は、上部旋回体6の幅方向に開口する第二リンク孔41bを有する。第二リンク孔41bには、アーム30の第一リンク接続孔37aと共にピン57が挿通されている。第一リンク部材41は、アーム30に対して上部旋回体6の幅方向に延びるピン57の中心軸回りに回動可能に、アーム30に支持されている。
【0052】
第三シリンダ本体103Cの第二端部は、第二リンク部材42の第一端部に接続されている。第二リンク部材42の第一端部は、上部旋回体6の幅方向に開口する第三リンク孔42aを有する。第三シリンダ本体103Cの第二端部は、第一リンク孔41aと共に第三リンク孔42aに挿通されたピン56に接続されている。第二リンク部材42は、第三シリンダ本体103Cの第二端部及び第一リンク部材41の第一端部に対して上部旋回体6の幅方向に延びるピン56の中心軸回りに、回動可能に設けられている。
【0053】
第二リンク部材42の第二端部は、上部旋回体6の幅方向に貫通する第四リンク孔42bを有する。第四リンク孔42bには、バケット40の第二リンク接続孔40bと共にピン58が挿通されている。第二リンク部材42は、バケット40に対して上部旋回体6の幅方向に延びるピン58の中心軸回りに、回動可能に設けられている。
【0054】
第三モータ101Cは、第三シリンダ本体103Cの第一端部側に配置されている。第三モータ101Cは、第三シリンダ本体103Cよりもアーム板幅方向の内側に配置されている。第三モータ101Cは、上部旋回体6に設けられたバッテリ(不図示)を動力源として第三シリンダ本体103Cを動作させる。バケット40は、第三モータ101Cの駆動により第三シリンダ本体103Cが伸縮することで、アーム30に対して第三ピン38の中心軸O3(
図4参照)回りに回動する。
【0055】
第三モータ101Cからは第三配線63が延びている。第三配線63は、ブーム20に向かって延びた後、ブーム先端側接続板24の開口部24a(
図3参照)を通過している。その後、第三配線63は、第一モータ101Aに向かって延びた後、第一配線61及び第二配線62と共にブーム基端側接続板23に沿って延び、ブラケット15内に通じている。第三配線63は、ブラケット15内を通じて不図示のバッテリに接続されている。
【0056】
<電動シリンダ>
図1に示すように、第一電動シリンダ100A、第二電動シリンダ100B及び第三電動シリンダ100Cは、互いに共通の電動シリンダ100である。
図5に示すように、電動シリンダ100は、モータ101、動力伝達ユニット102及びシリンダ本体103を備える。
【0057】
モータ101は、電動シリンダ100の駆動源である。例えば、モータ101は、サーボモータである。
図8に示すように、モータ101及びシリンダ本体103は、互いに平行に延びている。モータ101及びシリンダ本体103は、互いに間隔をあけて並んでいる。
【0058】
電動シリンダ100は、モータ101の駆動により回転する出力軸105を有する。出力軸105は、モータ101の中心軸と同軸上に設けられている。出力軸105は、モータ101の軸方向端面101fから軸方向外方に突出している。図中符号C1は、モータ101の中心軸に沿うモータ軸線を示す。
【0059】
動力伝達ユニット102は、モータ101の駆動力をピストン182に伝達する。動力伝達ユニット102は、出力軸105の駆動力を変速(例えば減速)する遊星歯車機構110と、遊星歯車機構110により変速された駆動力をピストン182に伝達する伝達歯車機構120と、を備える。
【0060】
<遊星歯車機構>
図9に示すように、遊星歯車機構110は、出力軸105に連結されたサンギヤ111(第一回転体)と、サンギヤ111に隣接して配置された複数のプラネタリギヤ112(第二回転体)と、複数のプラネタリギヤ112の中心軸113(以下「プラネタリ軸113」ともいう。)を回転可能に支持するキャリア114,115と、複数のプラネタリギヤ112を囲むリングギヤ116と、を備える。遊星歯車機構110は、モータ101の軸方向端面101fに隣接して配置された筒状のケース106により覆われている。
【0061】
<サンギヤ>
サンギヤ111は、出力軸105の回転により回転する。サンギヤ111は、出力軸105と同軸の筒状に形成されている。サンギヤ111の軸方向の長さは、出力軸105がモータ101の軸方向端面101fから突出する長さよりも長い。サンギヤ111の軸方向基端部(モータ101側の端部)は、モータ101の軸方向端面101fから離間している。サンギヤ111の軸方向基端部は、サンギヤ111の軸方向先端部(モータ101とは反対側の端部)よりも拡径している。
【0062】
サンギヤ111は、潤滑剤を収容可能に開口する中空部111aを有する。中空部111aは、軸方向外方に開口している。中空部111aは、出力軸105の軸方向先端部とサンギヤ111の内周面とによって囲まれた空間である。中空部111aは、出力軸105の軸方向先端部とサンギヤ111の軸方向先端部との間にわたって設けられている。
【0063】
<プラネタリギヤ>
プラネタリギヤ112は、サンギヤ111の回転により回転する。
図10に示すように、複数(例えば本実施形態では3つ)のプラネタリギヤ112は、サンギヤ111の周方向に沿って互いに等間隔で離間して配置されている。プラネタリギヤ112の外周に設けられた外歯は、サンギヤ111の外周に設けられた外歯と噛み合っている。プラネタリギヤ112は、サンギヤ111と噛み合うことにより、サンギヤ111を中心として自転及び公転する。プラネタリギヤ112は、出力軸105と平行に延びるプラネタリ軸113回りに回転可能とされている。
【0064】
<キャリア>
図9に示すように、キャリア114,115は、出力軸105と同軸上に設けられている。キャリア114,115は、プラネタリ軸113の軸方向両端部を支持している。キャリア114,115は、サンギヤ111の外周に臨む位置からプラネタリ軸113に向けて延び、潤滑剤を流通可能に窪むガイド溝143a,151aを有する。
【0065】
キャリア114,115は、出力軸105の軸方向先端部側に配置された第一キャリア114と、出力軸105の軸方向中央側に配置された第二キャリア115と、である。
図10に示すように、第一キャリア114及び第二キャリア115は、複数(例えば本実施形態では6本)のボルト145により互いに連結されている。
【0066】
<第一キャリア>
図11に示すように、第一キャリア114は、プラネタリ軸113を挿通可能に開口する第一軸孔114aと、ボルト145(
図10参照)を挿通可能に開口する第一ボルト孔114bと、を有する。第一キャリア114は、環状の第一キャリア基部140と、第一キャリア基部140から軸方向外方に突出する筒状のキャリア先端筒体141(
図9参照)と、第一キャリア基部140から軸方向内方(キャリア先端筒体141が突出する方向とは反対方向)に延びる複数のキャリア壁部142と、周方向に隣り合う2つのキャリア壁部142の間に設けられた第一溝形成部143と、を備える。第一キャリア基部140、キャリア先端筒体141、キャリア壁部142及び第一溝形成部143は、同一の部材で一体に形成されている。
【0067】
図9に示すように、第一キャリア基部140の外径は、キャリア先端筒体141の外径よりも大きい。第一キャリア基部140の外周縁は、ケース106の内周面よりも径方向内側に離間している。
【0068】
図11に示すように、第一キャリア基部140は、出力軸105の軸方向先端部と対向する位置に配置される環状溝140aと、環状溝140aに繋がる複数の中継溝140bと、を有する。環状溝140aは、第一キャリア基部140の内周に沿う環状に形成されている。中継溝140bは、環状溝140aの外周縁から径方向外方に向かって湾曲している。
【0069】
複数(例えば本実施形態では3つ)のキャリア壁部142は、第一キャリア基部140の周方向に沿って互いに等間隔で離間して配置されている。キャリア壁部142は、環状溝140aの外周縁と第一キャリア基部140の外周縁との間にわたって設けられている。キャリア壁部142は、軸方向から見て、第一キャリア基部140の径方向外側に向かうに従って第一キャリア基部140の周方向に膨出する外形を有する。第一キャリア基部140の周方向におけるキャリア壁部142の側面は、第一溝形成部143の外形に沿って弧状に湾曲している。第一ボルト孔114bは、各キャリア壁部142に2つずつ設けられている。
【0070】
複数(例えば本実施形態では3つ)の第一溝形成部143は、第一キャリア基部140の周方向に沿って互いに等間隔で離間して配置されている。第一溝形成部143は、周方向に隣り合う2つのキャリア壁部142の側面に対して互いに等間隔で離間している。第一溝形成部143は、軸方向から見てプラネタリギヤ112と重なる位置に設けられている。
【0071】
第一溝形成部143は、潤滑剤を流通可能に窪む第一ガイド溝143aを有する。第一ガイド溝143aは、軸方向から見て、キャリア先端筒体141の軸心と第一軸孔114aの軸心とを結ぶ仮想線上に形成されている。
図9に示すように、第一ガイド溝143aは、サンギヤ111の軸方向先端部に臨む位置から第一軸孔114aに向けて延びている。
図11に示すように、第一ガイド溝143aは、第一軸孔114aと中継溝140bとの間に配置されている。第一ガイド溝143aの深さは、第一軸孔114a側から中継溝140bに向かうに従って徐々に深くなっている。
【0072】
第一溝形成部143は、プラネタリギヤ112の軸方向外端面を受ける第一受け面143bを有する。第一受け面143bは、軸方向から見て、第一ガイド溝143aの部分で開口するC字状に形成されている。第一受け面143bは、第一ガイド溝143a以外の部分でプラネタリギヤ112の軸方向外端面と接触可能に構成されている。第一受け面143bの内周縁は、第一軸孔114aの外周縁よりも径方向外側に離間している。
【0073】
<第二キャリア>
図12に示すように、第二キャリア115は、プラネタリ軸113を挿通可能に開口する第二軸孔115aと、ボルト145(
図10参照)を挿通可能に開口する第二ボルト孔115bと、を有する。第二キャリア115は、環状の第二キャリア基部150と、第一溝形成部143(
図11参照)と軸方向で対向する位置に設けられた第二溝形成部151と、を備える。第二キャリア基部150及び第二溝形成部151は、同一の部材で一体に形成されている。
【0074】
図9に示すように、第二キャリア基部150の外径は、第一キャリア基部140の外径と略同じである。第二キャリア基部150の外周縁は、ケース106の内周面よりも径方向内側に離間している。
【0075】
第二キャリア基部150は、出力軸105を挿通可能に開口する開口部150aを有する。第二キャリア基部150は、第一キャリア114のキャリア壁部142を受ける壁受け部150bを有する。
【0076】
壁受け部150bは、軸方向から見てキャリア壁部142と重なる位置に設けられている。
図12に示すように、壁受け部150bは、キャリア壁部142に対応して複数(例えば本実施形態では3つ)設けられている。第二ボルト孔115bは、各壁受け部150bに2つずつ設けられている。
【0077】
複数(例えば本実施形態では3つ)の第二溝形成部151は、第二キャリア基部150の周方向に沿って互いに等間隔で離間して配置されている。第二溝形成部151は、軸方向から見てプラネタリギヤ112と重なる位置に設けられている。
【0078】
第二溝形成部151は、潤滑剤を流通可能に窪む第二ガイド溝151aを有する。第二ガイド溝151aは、軸方向から見て、開口部150aの中心と第二軸孔115aの軸心とを結ぶ仮想線上に形成されている。
図9に示すように、第二ガイド溝151aは、サンギヤ111の外周に臨む位置から第二軸孔115aに向けて延びている。
図12に示すように、第二ガイド溝151aは、第二軸孔115aと開口部150aとの間に配置されている。第二ガイド溝151aの深さは、第二軸孔115a側から開口部150aに向かうに従って徐々に深くなっている。
【0079】
第二溝形成部151は、プラネタリギヤ112の軸方向内端面を受ける第二受け面151bを有する。第二受け面151bは、軸方向から見て、第二ガイド溝151aの部分で開口するC字状に形成されている。第二受け面151bは、第二ガイド溝151a以外の部分でプラネタリギヤ112の軸方向内端面と接触可能に構成されている。第二受け面151bの内周縁は、第二軸孔115aの外周縁よりも径方向外側に離間している。
【0080】
<リングギヤ>
図10に示すように、リングギヤ116の内周に設けられた内歯は、各プラネタリギヤ112の外周に設けられた外歯と噛み合っている。リングギヤ116の外周面には、回り止めピン117が入り込む複数のギヤ側凹部116aが設けられている。複数(例えば本実施形態では4つ)のギヤ側凹部116aは、周方向に互いに等間隔で離間している。
【0081】
ケース106の内周面には、回り止めピン117が入り込む複数のケース側凹部106aが設けられている。複数(例えば本実施形態では4つ)のケース側凹部106aは、周方向に互いに等間隔で離間している。例えば、ギヤ側凹部116a及びケース側凹部106aの周方向位置を互いに揃えた状態で各凹部106a,116a内に回り止めピン117を挿通することで、リングギヤ116の回り止め(リングギヤ116がケース106に対して周方向に移動することを制限すること)ができる。
【0082】
<スペーサ>
図9に示すように、電動シリンダ100は、モータ101の軸方向端面101fとキャリア114,115との間に配置されたスペーサ118を備える。スペーサ118は、サンギヤ111の外周縁(径方向外端縁)と隙間をあけてモータ101の軸方向に開口する貫通孔118aを有する。貫通孔118aの隙間は、潤滑剤を流通可能な大きさに形成されている。スペーサ118は、モータ101の軸方向端面101fに臨む位置で軸方向内方に開口する内側凹部118bと、第二キャリア115を収容可能に軸方向外方に開口する外側凹部118cと、を有する。
【0083】
貫通孔118aは、内側凹部118b及び外側凹部118cの径方向中央部(サンギヤ111側の部分)を軸方向で互いに通じさせている。貫通孔118aの軸方向内端部は、内側凹部118bの径方向中央部に連なっている。貫通孔118aの軸方向外端部は、外側凹部118cの径方向中央部に連なっている。内側凹部118bの外径は、外側凹部118cの外径よりも大きい。外側凹部118cの外周縁は、第二キャリア115の外周縁よりも径方向外側に離間している。
【0084】
スペーサ118は、外側凹部118cの内周縁からリングギヤ116の軸方向内端部に向けて延び、潤滑剤を流通可能に窪むスペーサ側溝118dを有する。スペーサ側溝118dの深さは、外側凹部118cの内周縁側からリングギヤ116の軸方向内端部に向かうに従って徐々に深くなっている。
【0085】
<伝達歯車機構>
図8に示すように、伝達歯車機構120は、キャリア114,115の回転力をピストン182に伝達するトランスファギヤ121と、サンギヤ111の軸方向外端に臨む位置から軸方向外方に延びるトランスファシャフト122と、トランスファギヤ121に隣接して配置されたアイドラギヤ123と、アイドラギヤ123を挟んでトランスファギヤ121とは反対側に配置されたドリブンギヤ124と、を備える。伝達歯車機構120は、ケース106に隣接して配置されたカバーユニット160により覆われている。
【0086】
図9に示すように、トランスファギヤ121は、出力軸105と同軸上に設けられている。トランスファギヤ121は、トランスファシャフト122を挿通可能に開口する筒状に形成されている。トランスファギヤ121は、アイドラギヤ123と噛み合う外歯を有する筒状のギヤ本体121aと、ギヤ本体121aから軸方向内方に突出する内側筒体121bと、ギヤ本体121aから軸方向外方に突出する外側筒体121cと、を備える。ギヤ本体121a、内側筒体121b及び外側筒体121cは、同一の部材で一体に形成されている。トランスファギヤ121は、内側筒体121bの外周に設けられた内側軸受130と、外側筒体121cの外周に設けられた外側軸受131とにより、カバーユニット160に対してモータ軸線C1回りに回転可能に支持されている。
【0087】
トランスファシャフト122は、出力軸105と同軸上に設けられている。キャリア先端筒体141は、トランスファシャフト122の軸方向一端部側とスプラインにより結合されている。キャリア先端筒体141の内周には、キャリア先端筒体141の軸方向に平行な歯面を有する内歯が設けられている。トランスファシャフト122の軸方向一端部側の外周には、トランスファシャフト122の軸方向に平行な歯面を有し、キャリア先端筒体141の内歯に噛み合う外歯が設けられている。トランスファシャフト122の軸方向一端部側の外歯とキャリア先端筒体141の内歯との間には、潤滑剤を流通可能な隙間が形成されている。
【0088】
トランスファギヤ121のギヤ本体121aは、トランスファシャフト122の軸方向他端部側とスプラインにより結合されている。ギヤ本体121aの内周には、トランスファギヤ121の軸方向に平行な歯面を有する内歯が設けられている。トランスファシャフト122の軸方向他端部側の外周には、トランスファシャフト122の軸方向に平行な歯面を有し、ギヤ本体121aの内歯に噛み合う外歯が設けられている。トランスファシャフト122の軸方向他端部側の外歯とギヤ本体121aの内歯との間には、潤滑剤を流通可能な隙間が形成されている。
【0089】
内側筒体121bの軸方向内端部は、Oリング132を介してキャリア先端筒体141の先端部と接続されている。内側筒体121bの内周とトランスファシャフト122の軸方向中央部の外周との間には、軸受133が設けられている。例えば、軸受133は、一対の半円弧状のリング(いわゆる半割リング)により構成されている。トランスファシャフト122の軸方向中央部と軸受133との間には、潤滑剤を流通可能な隙間が形成されている。
【0090】
外側筒体121cには、カバー部材135が着脱可能に取り付けられている。カバー部材135は、トランスファシャフト122の軸方向他端部側に対して外部から潤滑剤を供給可能に開口する供給孔135aを有する。供給孔135aは、モータ軸線C1上に形成されている。トランスファシャフト122の軸方向外端部とカバー部材135との間には、潤滑剤を流通可能な隙間が形成されている。
【0091】
カバー部材135には、供給孔135aに対して外部から潤滑剤を供給可能に開閉可能なグリスニップル136が設けられている。グリスニップル136は、モータ軸線C1上に設けられている。グリスニップル136は、カバー部材135よりも軸方向外方に延びている。グリスニップル136は、供給孔135aに通じる潤滑剤の注入口(不図示)を有する。グリスニップル136は、注入口に対して内部からスプリングにより玉が押し付けられた逆止弁を有する。例えば、グリスニップル136に対してグリスガン等を接続して圧力をかけることにより、グリスニップル136を開き、注入口を通じて供給孔135aに潤滑剤を供給することができる。
【0092】
アイドラギヤ123は、トランスファギヤ121の回転により回転する。アイドラリギヤは、トランスファシャフト122と平行に延びるアイドラ軸123a回りに回転可能とされている。アイドラギヤ123は、アイドラ軸123aを挿通可能に開口する筒状に形成されている。アイドラギヤ123の内周とアイドラ軸123aの外周との間には、軸受123bが設けられている。
【0093】
図8に示すように、ドリブンギヤ124は、アイドラギヤ123に隣接して配置されている。ドリブンギヤ124は、アイドラギヤ123の回転により回転する。ドリブンギヤ124は、シリンダ本体103の内部に収容されたシリンダシャフト180と同軸上に設けられている。図中符号C2は、シリンダシャフト180に沿うシリンダ軸線を示す。
【0094】
ドリブンギヤ124は、シリンダシャフト180の第一端部を挿通可能に開口する筒状に形成されている。ドリブンギヤ124は、アイドラギヤ123と噛み合う外歯を有する筒状のギヤ本体124aと、ギヤ本体124aから軸方向内方に突出する内側筒体124bと、ギヤ本体124aから軸方向外方に突出する外側筒体124cと、を備える。ギヤ本体124a、内側筒体124b及び外側筒体124cは、同一の部材で一体に形成されている。
【0095】
ドリブンギヤ124は、内側筒体124bの外周に設けられた内側軸受155と、外側筒体124cの外周に設けられた外側軸受156とにより、カバーユニット160に対してシリンダ軸線C2回りに回転可能に支持されている。
図中において、符号137は外側筒体124cに対して着脱可能に設けられたカバー部材、符号138はカバー部材137に設けられ且つカバー部材137の供給孔に対して外部から潤滑剤を供給可能に開閉可能なグリスニップルをそれぞれ示す。
【0096】
<カバーユニット>
カバーユニット160は、トランスファギヤ121を軸方向外方から覆う第一カバー161と、ドリブンギヤ124を軸方向外方から覆う第二カバー162と、トランスファギヤ121、アイドラギヤ123及びドリブンギヤ124を各ギヤの径方向外方から覆う第三カバー163と、を備える。
【0097】
図7に示すように、第一カバー161は、軸方向から見て矩形状を有する。
図9に示すように、第一カバー161は、トランスファシャフト122の軸方向他端部側に対して外部から潤滑剤を供給可能に開口する第一供給開口161aを有する。第一供給開口161aは、モータ軸線C1上に形成されている。トランスファギヤ121の軸方向外端部と第一カバー161との間には、潤滑剤を流通可能な隙間が形成されている。第一カバー161には、第一供給開口161aを開閉可能に第一蓋部材165が着脱可能に取り付けられている。
【0098】
図8に示すように、第二カバー162は、シリンダシャフト180の第一端部側に対して外部から潤滑剤を供給可能に開口する第二供給開口162aを有する。第二供給開口162aは、シリンダ軸線C2上に形成されている。トリブンギヤ124の軸方向外端部と第二カバー162との間には、潤滑剤を流通可能な隙間が形成されている。第二カバー162には、第二供給開口162aを開閉可能に第二蓋部材166が着脱可能に取り付けられている。
【0099】
図7に示すように、第二カバー162は、軸方向から見て、アイドラギヤ123と重なる位置に設けられたアイドラカバー部162bと、ドリブンギヤ124と重なる位置に設けられたドリブンカバー部162cと、を備える。アイドラカバー部162b及びドリブンカバー部162cは、同一の部材で一体に形成されている。
図9に示すように、アイドラカバー部162bは、ボルト170によりアイドラ軸123aを固定している。
【0100】
図5に示すように、第三カバー163は、ケース106と第一カバー161との間に設けられたケース側カバー部163aと、シリンダ本体103と第二カバー162との間に設けられたねじ側カバー部163bと、を備える。
【0101】
図9に示すように、ケース側カバー部163aは、モータ軸線C1と同軸上に開口している。図中において、符号167はケース側カバー部163aの軸方向内側部の内周面と内側軸受130との間に設けられた内側スペーサ、符号168はケース側カバー部163aの軸方向外側部の内周面と外側軸受131との間に設けられた外側スペーサをそれぞれ示す。
【0102】
図5に示すように、第一カバー161は、複数(例えば本実施形態では4本)のボルト171によりケース側カバー部163aを介してケース106に共締めされている。ケース側カバー部163aの軸方向内端部は、ケース106の軸方向外端部に対してボルト171の共締めにより結合されている。
【0103】
ドリブンカバー部162cは、複数(例えば本実施形態では8本)のボルト172によりねじ側カバー部163bに固定されている。ねじ側カバー部163bは、複数(例えば本実施形態では4本)のボルト173によりシリンダ本体103に固定されている。
【0104】
<シリンダ本体>
図8に示すように、シリンダ本体103は、シリンダシャフト180と、シリンダシャフト180のねじ軸180aに螺合されるナット181と、ナット181の外周に設けられたピストン182と、ピストン182に連結された筒状のピストンロッド183と、ピストンロッド183の先端部に設けられたジョイント部材184と、ピストンロッド183を収容する筒状のシリンダチューブ185と、シリンダチューブ185の第一端部とねじ側カバー部163bとの間に設けられたホルダ186と、シリンダチューブ185の第二端部に設けられたロッドカバー187と、を備える。
【0105】
ねじ軸180aとナット181との間には、不図示のボールが介在している。ねじ軸180a及びナット181は、モータ101の回転運動を直線運動に変換するボールねじを構成している。ナット181は、複数のボルトによりピストン182に連結されている。ピストン182は、ナット181と一体にねじ軸180a上を移動可能に構成されている。ピストンロッド183は、ピストン182と一体にシリンダ軸線C2に沿って移動可能に構成されている。
【0106】
図6に示すように、ジョイント部材184は、ロッドカバー187の外周縁よりも外方に突出している。
図8に示すように、ジョイント部材184は、シリンダ軸線C2と直交する方向に開口する接続孔184aを有する。シリンダチューブ185の内周面とピストン182の外周面との間には、軸受188が設けられている。
【0107】
図5に示すように、ホルダ186は、筒状のホルダ本体190と、ホルダ本体190から径方向外方に突出するトラニオン部191と、を備える。
図8に示すように、ホルダ本体190は、シリンダ軸線C2と同軸上に開口している。ホルダ本体190の内周面とねじ軸180aとの間には複数の軸受189が設けられている。
図5に示すように、トラニオン部191は、シリンダ軸線C2と直交する方向に開口する接続孔191aを有する。トラニオン部191の接続孔191aは、ジョイント部材184の接続孔184aと平行に開口している。
【0108】
<電動シリンダの動作>
以下、電動シリンダ100の動作の一例を説明する。
図8に示すように、モータ101からの駆動力は、動力伝達ユニット102を通じて減速され、シリンダシャフト180に伝達される。具体的に、モータ101からの駆動力は、モータ軸線C1回りの回転力とされ、出力軸105、サンギヤ111、複数のプラネタリギヤ112、キャリア114,115により減速される。キャリア114,115により減速された回転力は、トランスファシャフト122を通じてトランスファギヤ121に伝達される。トランスファギヤ121に伝達された回転力は、アイドラギヤ123、ドリブンギヤ124を通じてシリンダシャフト180に伝達される。
【0109】
例えば、モータ101を正回転した場合、シリンダシャフト180は、シリンダ軸線C2回りの一方向に回転する。シリンダシャフト180の一方向への回転により、シリンダシャフト180のねじ軸180aに螺合されるナット181がシリンダ軸線C2上を矢印M1方向に移動する。ナット181の矢印M1方向への移動により、ピストン182、ピストンロッド183及びジョイント部材184が矢印M1方向に一体に移動する。これにより、シリンダ本体103が伸びる。
【0110】
一方、シリンダ本体103が伸びた状態からモータ101を逆回転すると、シリンダシャフト180は、シリンダ軸線C2回りの他方向に回転する。シリンダシャフト180の他方向への回転により、シリンダシャフト180のねじ軸180aに螺合されるナット181がシリンダ軸線C2上を矢印M1方向とは反対方向に移動する。ナット181の矢印M1方向とは反対方向への移動により、ピストン182、ピストンロッド183及びジョイント部材184が矢印M1方向とは反対方向に一体に移動する。これにより、シリンダ本体103が縮む。
このように電動シリンダ100は、モータ101の正逆回転により、シリンダ本体103が伸縮するように構成されている。
【0111】
<潤滑剤の流れ>
以下、潤滑剤の流れの一例を説明する。
図13に示すように、先ず、カバーユニット160から第一蓋部材165を外し、第一供給開口161aを開口させる。すると、第一供給開口161aを通じてグリスニップル136が露出する。次に、グリスニップル136に対して例えばグリスガン等を接続して圧力をかけることによりグリスニップル136を開き、供給孔135aを通じて、トランスファギヤ121の内周側(隙間)へ潤滑剤を供給する(図の矢印L1方向)。すると、潤滑剤は、トランスファシャフト122の外周(スプラインの隙間)を伝ってキャリア114,115の内周側(隙間)へ入る(図の矢印L2方向)。その後、潤滑剤は、サンギヤ111の中空部111aに入る(図の矢印L3方向)。これにより、潤滑剤を中空部111aに溜めることができる。
【0112】
モータ101の駆動により出力軸105を回転させると、サンギヤ111が回転する。すると、サンギヤ111の中空部111a内の潤滑剤は、遠心力により、サンギヤ111の軸方向先端部から径方向外側に向けて流れる。すると、サンギヤ111の軸方向先端部から出た潤滑剤の一部は、第一キャリア114の第一ガイド溝143aを伝って矢印L4方向へ流れ、プラネタリギヤ112の内周側(隙間)及びプラネタリギヤ112の側面側(隙間)へ入る。その後、潤滑剤は、リングギヤ116の内周側(隙間)へ入る。これにより、サンギヤ111、プラネタリギヤ112及びリングギヤ116を潤滑することができる。
【0113】
一方、サンギヤ111の軸方向先端部から出た潤滑剤の他の一部は、サンギヤ111の外周を伝って矢印L5方向へ流れ、スペーサ118の内側凹部118bに入る。これにより、潤滑剤をスペーサ118の内側凹部118bに溜めることができる。
【0114】
サンギヤ111の外周を伝って流れる潤滑剤の一部は、第二キャリア115の第二ガイド溝151aを伝って矢印L6方向に流れ、プラネタリギヤ112の内周側(隙間)及びプラネタリギヤ112の側面側(隙間)へ入る。その後、潤滑剤は、リングギヤ116の内周側(隙間)へ入る。これにより、サンギヤ111、プラネタリギヤ112及びリングギヤ116を潤滑することができる。
【0115】
上述のように例えばグリスガン等によりグリスニップル136を開き、供給孔135aを通じて潤滑剤を供給し、モータ101を駆動することにより、潤滑剤は、サンギヤ111の中空部111a、各ギヤの噛み合い部、モータ101とスペーサ118との間の隙間等に介在する。これにより、モータ101が発する熱及び各部の摩擦により生じる熱を、潤滑剤が介在する部分を経路として外部に放出することができる。したがって、モータ101及び遊星歯車機構110の冷却を促進することができる。
【0116】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の電動シリンダ100は、駆動源であるモータ101と、モータ101の駆動により回転する出力軸105と、出力軸105に連結され、出力軸105の回転により回転するサンギヤ111と、サンギヤ111に隣接し、サンギヤ111の回転により回転するプラネタリギヤ112と、を備える。サンギヤ111は、潤滑剤を収容可能に開口する中空部111aを有する。
この構成によれば、サンギヤ111の中空部111a内に潤滑剤を溜めることができる。加えて、モータ101の駆動により出力軸105を回転させると、サンギヤ111が回転する。すると、サンギヤ111の中空部111a内の潤滑剤は、遠心力により、サンギヤ111の中空部111aから径方向外側に向けて流れる。すると、サンギヤ111の中空部111aから出た潤滑剤の一部は、プラネタリギヤ112に伝わる。これにより、潤滑剤は、サンギヤ111の中空部111a、サンギヤ111とプラネタリギヤ112との噛み合い部等に介在する。そのため、モータ101が発する熱が出力軸105からサンギヤ111に伝わった場合、潤滑剤が介在する部分を経由して外部に放熱することができる。したがって、モータ101からの熱を外部へ効率的に逃がすことができる。
【0117】
本実施形態では、出力軸105は、モータ101の軸方向端面101fから軸方向外方に突出している。第一回転体は、出力軸105と同軸の筒状に形成されている。中空部111aは、サンギヤ111の軸方向外方に開口している。
この構成によれば、遠心力によりサンギヤ111の中空部111aから出た潤滑剤の一部は、サンギヤ111の外周を伝ってモータ101の軸方向端面101fに向けて流れる。これにより、潤滑剤は、モータ101の軸方向端面101fに臨む部分に介在する。そのため、モータ101が発する熱を、モータ101の軸方向端面101f、潤滑剤が介在する部分を経由して外部に放熱することができる。したがって、モータ101からの熱を外部へ更に効率的に逃がすことができる。
【0118】
本実施形態では、電動シリンダ100は、モータ101の駆動力をピストン182に伝達する遊星歯車機構110を備える。遊星歯車機構110は、サンギヤ111と、複数のプラネタリギヤ112と、複数のプラネタリギヤ112の中心軸113を回転可能に支持するキャリア114,115と、複数のプラネタリギヤ112を囲むリングギヤ116と、を備える。
この構成によれば、遠心力によりサンギヤ111の中空部111aから出た潤滑剤の一部は、各プラネタリギヤ112の内周へ入る。その後、潤滑剤は、リングギヤ116の内周へ入る。これにより、潤滑剤は、遊星歯車機構110を構成する各ギヤの噛み合い部等に介在する。そのため、モータ101が発する熱を、遊星歯車機構110において潤滑剤が介在する部分を経由して外部に放熱することができる。したがって、モータ101及び遊星歯車機構110の冷却を促進することができる。
【0119】
本実施形態では、キャリア114,115は、サンギヤ111の外周に臨む位置からプラネタリギヤ112の中心軸に向けて延び、潤滑剤を流通可能に窪むガイド溝143a,151aを有する。
この構成によれば、遠心力によりサンギヤ111の中空部111aから出た潤滑剤の一部は、キャリア114,115のガイド溝143a,151aを伝って、プラネタリギヤ112の中心軸113に向けて流れる。これにより、潤滑剤は、ガイド溝143a,151a、プラネタリギヤ112の中心軸113に沿う部分等に介在する。そのため、モータ101が発する熱を、ガイド溝143a,151aを通じて潤滑剤が介在する部分を経由して外部に放熱することができる。したがって、モータ101及び遊星歯車機構110の冷却を更に促進することができる。
【0120】
本実施形態では、電動シリンダ100は、モータ101の軸方向端面101fとキャリア114,115との間に配置されたスペーサ118を備える。スペーサ118は、サンギヤ111の外周と隙間をあけてモータ101の軸方向に開口する貫通孔118aを有する。
この構成によれば、サンギヤ111の外周を伝って流れる潤滑部の一部は、スペーサ118の貫通孔118aに入り、モータ101の軸方向端面101fに向けて流れる。これにより、潤滑剤は、スペーサ118の貫通孔118a、モータ101の軸方向端面101fに臨む部分に介在する。そのため、モータ101が発する熱を、モータ101の軸方向端面101fからスペーサ118の貫通孔118aを通じて潤滑剤が介在する部分を経由して外部に放熱することができる。したがって、モータ101からの熱を外部へ更に効率的に逃がすことができる。
【0121】
本実施形態では、電動シリンダ100は、キャリア114,115の回転力をピストン182に伝達するトランスファギヤ121と、サンギヤ111の軸方向外端に臨む位置から軸方向外方に延びるトランスファシャフト122と、を備える。キャリア114は、トランスファシャフト122の軸方向一端部側とスプラインにより結合されている。トランスファギヤ121は、トランスファシャフト122の軸方向他端部側とスプラインにより結合されている。
この構成によれば、潤滑剤は、サンギヤ111の軸方向外端に臨む部分、トランスファシャフト122に沿う部分(スプラインの隙間)等に介在する。そのため、モータ101が発する熱を、トランスファシャフト122に沿って潤滑剤が介在する部分を経由して外部に放熱することができる。したがって、モータ101及び遊星歯車機構110の冷却を更に促進することができる。
【0122】
本実施形態では、電動シリンダ100は、トランスファシャフト122の軸方向他端部側に対して外部から潤滑剤を供給可能に開口する供給孔135aを有するカバー部材135と、カバー部材135に設けられ、かつ、供給孔135aに対して外部から潤滑剤を供給可能に開閉可能なグリスニップル136と、を備える。
この構成によれば、電動シリンダ100の組み立て後に、グリスニップル136を開き、供給孔135aを通じて外部から各ギヤの噛み合い部、サンギヤ111の中空部111aに潤滑剤を供給することができる。
例えば、潤滑剤の供給は、以下の手順により行うことができる。先ず、グリスニップル136を外部に露出させる。次に、グリスニップル136に対して例えばグリスガン等を接続して圧力をかけることによりグリスニップル136を開き、供給孔135aを通じて、トランスファギヤ121の内周側(隙間)へ潤滑剤を供給する。すると、潤滑剤は、トランスファシャフト122の外周(スプラインの隙間)を伝ってキャリア114,115の内周側(隙間)へ入る。その後、潤滑剤は、サンギヤ111の中空部111aに入る。これにより、供給孔135aを通じて外部から各ギヤの噛み合い部、サンギヤ111の中空部111aに潤滑剤を供給することができる。
【0123】
本実施形態では、ショベル1は、車両本体2と、車両本体2に連結された作業機3と、を備える。作業機3は、上記の電動シリンダ100を備える。
そのため、モータ101からの熱を外部へ効率的に逃がすことができるショベル1を提供することができる。
【0124】
本実施形態では、作業機3は、第一電動シリンダ100A、第二電動シリンダ100B及び第三電動シリンダ100Cとして共通の電動シリンダ100を備える。
そのため、第一電動シリンダ100A、第二電動シリンダ100B及び第三電動シリンダ100Cとして互いに異なる電動シリンダを備える場合と比較して、部品点数を削減し低コスト化することができる。
【0125】
<その他の実施形態>
上述した実施形態では、中空部は、サンギヤの軸方向外方に開口している例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、中空部は、サンギヤの径方向外方に開口していてもよい。例えば、中空部の開口態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0126】
上述した実施形態では、電動シリンダは、モータの駆動力をピストンに伝達する遊星歯車機構を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、電動シリンダは、遊星歯車機構を備えていなくてもよい。例えば、電動シリンダは、ベルトプーリ機構、ラックアンドピニオン機構等の遊星歯車機構以外の動力伝達機構を備えていてもよい。例えば、動力伝達機構の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0127】
上述した実施形態では、電動シリンダは、出力軸の回転により回転するサンギヤと、サンギヤに隣接し、サンギヤの回転により回転するプラネタリギヤと、を備え、サンギヤが潤滑剤を収容可能に開口する中空部を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、電動シリンダは、出力軸の回転により回転するプーリと、プーリの回転により回転するベルトと、を備え、プーリが潤滑剤を収容可能に開口する中空部を有していてもよい。例えば、電動シリンダは、出力軸の回転により回転するピニオンと、ピニオンの回転により移動するベルトと、ベルトの移動により回転するギヤと、を備え、ピニオンが潤滑剤を収容可能に開口する中空部を有していてもよい。例えば、中空部を有する回転体の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。例えば、電動シリンダは、駆動源であるモータと、モータの駆動により回転する出力軸と、出力軸に連結され、出力軸の回転により回転する第一回転体と、第一回転体に隣接し、第一回転体の回転により回転する第二回転体と、を備え、第一回転体は、潤滑剤を収容可能に開口する中空部を有していればよい。
【0128】
上述した実施形態では、キャリアは、サンギヤの外周に臨む位置からプラネタリギヤの中心軸に向けて延び、潤滑剤を流通可能に窪むガイド溝を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ガイド溝は、キャリアの外周に沿って軸方向に延びていてもよい。例えば、キャリアは、ガイド溝を有していなくてもよい。例えば、キャリアの態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0129】
上述した実施形態では、電動シリンダは、モータの軸方向端面とキャリアとの間に配置されたスペーサを備え、スペーサは、サンギヤの外周と隙間をあけてモータの軸方向に開口する貫通孔を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、スペーサは、モータの軸方向端面とキャリアとの間に配置されていなくてもよい。例えば、キャリアは、モータの軸方向端面に臨み、キャリアは、サンギヤの外周と隙間をあけてモータの軸方向に開口する貫通孔を有していてもよい。例えば、スペーサの設置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0130】
上述した実施形態では、電動シリンダは、キャリアの回転力をピストンに伝達するトランスファギヤと、サンギヤの軸方向外端に臨む位置から軸方向外方に延びるトランスファシャフトと、を備え、キャリアは、トランスファシャフトの軸方向一端部側とスプラインにより結合され、トランスファギヤは、トランスファシャフトの軸方向他端部側とスプラインにより結合されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、キャリアは、トランスファシャフトの軸方向一端部側と圧入等のスプライン以外の態様により結合されていてもよい。例えば、トランスファギヤは、トランスファシャフトの軸方向他端部側と圧入等のスプライン以外の態様により結合されていてもよい。例えば、トランスファシャフトの結合態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0131】
上述した実施形態では、電動シリンダは、トランスファシャフトの軸方向他端部側に対して外部から潤滑剤を供給可能に開口する供給孔を有するカバー部材と、カバー部材に設けられ、かつ、供給孔に対して外部から潤滑剤を供給可能に開閉可能なグリスニップルと、を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、電動シリンダは、カバー部材及びグリスニップルを備えていなくてもよい。例えば、トランスファシャフトの軸方向他端部側は、トランスファギヤにより覆われていてもよい。例えば、供給孔は、トランスファギヤ等のカバー部材以外の部材に設けられていてもよい。例えば、グリスニップルは、トランスファギヤ等のカバー部材以外の部材に設けられていてもよい。例えば、供給孔の設置態様及びグリスニップルの設置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0132】
上述した実施形態では、作業機は、第一電動シリンダ、第二電動シリンダ及び第三電動シリンダとして共通の電動シリンダを備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、作業機は、第一電動シリンダ、第二電動シリンダ及び第三電動シリンダとして互いに異なる電動シリンダを備えていてもよい。例えば、電動シリンダの設置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0133】
上述した実施形態では、作業機械(作業車両)の一例として、ショベルを挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ダンプトラックやブルドーザ、ホイールローダ等の他の作業車両に本発明を適用してもよい。
【0134】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0135】
1…ショベル(作業機械)、2…車両本体、3…作業機、100…電動シリンダ、100A…第一電動シリンダ(電動シリンダ)、100B…第二電動シリンダ(電動シリンダ)、100C…第三電動シリンダ(電動シリンダ)、101…モータ、101f…モータの軸方向端面、101A…第一モータ(モータ)、101B…第二モータ(モータ)、101C…第三モータ(モータ)、105…出力軸、110…遊星歯車機構、111…サンギヤ(第一回転体)、111a…中空部、112…プラネタリギヤ(第二回転体)、113…プラネタリ軸(プラネタリギヤの中心軸)、114…第一キャリア(キャリア)、115…第二キャリア(キャリア)、116…リングギヤ、118…スペーサ、118a…貫通孔、121…トランスファギヤ、122…トランスファシャフト、135…カバー部材、135a…供給孔、136…グリスニップル、143a…第一ガイド溝(ガイド溝)、151a…第二ガイド溝(ガイド溝)、182…ピストン