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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】回路基板
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/06 20060101AFI20241022BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20241022BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20241022BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20241022BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01F27/06 103
H01F27/29 G
H05K1/18 F
H05K3/34 501D
H05K1/02 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021089780
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182298
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】吉野 花子
(72)【発明者】
【氏名】東田 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】渡部 汰一
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208468(JP,A)
【文献】特開2005-101521(JP,A)
【文献】特開2002-261430(JP,A)
【文献】特開2020-120087(JP,A)
【文献】特開2018-125482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42
H05K 1/00- 1/02
H05K 1/18
H05K 3/32- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に表面実装されたチップ型のコイル部品と、を備え、
前記基板は、第1及び第2の信号ラインと、前記第1及び第2の信号ラインにそれぞれ接続された第1及び第2のランドパターンと、いずれも他のパターンに接続されない独立したパターンであり、フローティング状態である第1及び第2のダミーランドパターンと、前記第1及び第2のランドパターン、並びに、前記第1及び第2のダミーランドパターンと重なるグランドパターンとを含み、
前記コイル部品は、第1の鍔部、第2の鍔部及び前記第1の鍔部と前記第2の鍔部の間に位置する巻芯部を含むドラム型コアと、前記第1の鍔部に設けられた第1の信号端子及び第1のダミー端子と、前記第2の鍔部に設けられた第2の信号端子及び第2のダミー端子と、前記巻芯部に巻回され、一端が前記第1の信号端子に接続され、他端が前記第2の信号端子に接続されたワイヤとを含み、
前記コイル部品は、前記第1及び第2の信号端子がそれぞれ前記第1及び第2のランドパターンに接続され、前記第1及び第2のダミー端子がそれぞれ前記第1及び第2のダミーランドパターンに接続されるよう、前記基板に搭載されており、
前記第1及び第2のダミー端子にはいかなるワイヤも継線されておらず、これにより、それぞれ前記第1及び第2のダミー端子に接続された前記第1及び第2のダミーランドパターンがフローティング状態となることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記第1及び第2のランドパターンは、前記第1及び第2のダミーランドパターンよりも有効面積が小さいことを特徴とする請求項に記載の回路基板。
【請求項3】
前記第1及び第2のランドパターンの外形サイズは、前記第1及び第2のダミーランドパターンの外形サイズと同じであり、前記第1及び第2のランドパターンに設けられた切り欠きによって有効面積が縮小されていることを特徴とする請求項に記載の回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路基板に関し、特に、基板上にチップ型のコイル部品が表面実装された構造を有する回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板に実装されたコイル部品の一対の端子電極を信号ラインに接続し、別の一対の端子電極をグランドパターンに接続した構造が開示されている。かかる構造により、コイル部品がLC複合型部品として機能し、挿入損失が低減するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-140903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された実装構造では、信号ラインとグランドの間のキャパシタンスが増加することから、高周波領域におけるインピーダンスが低下するという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、基板上にチップ型のコイル部品が表面実装された構造を有する回路基板において、高周波領域におけるインピーダンスの低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による回路基板は、基板と、基板に表面実装されたチップ型のコイル部品とを備え、基板は、第1及び第2の信号ラインと、第1及び第2の信号ラインにそれぞれ接続された第1及び第2のランドパターンと、フローティング状態である第1及び第2のダミーランドパターンとを含み、コイル部品は、第1の鍔部、第2の鍔部及び第1の鍔部と第2の鍔部の間に位置する巻芯部を含むドラム型コアと、第1の鍔部に設けられた第1の信号端子及び第1のダミー端子と、第2の鍔部に設けられた第2の信号端子及び第2のダミー端子と、巻芯部に巻回され、一端が第1の信号端子に接続され、他端が第2の信号端子に接続されたワイヤとを含み、コイル部品は、第1及び第2の信号端子がそれぞれ第1及び第2のランドパターンに接続され、第1及び第2のダミー端子がそれぞれ第1及び第2のダミーランドパターンに接続されるよう、基板に搭載されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ダミーランドパターンがフローティング状態とされていることから、ランドパターンとダミーランドパターンを短絡した場合と比べ、ランドパターンとグランドの間のキャパシタンスが低減する。これにより、高周波領域におけるインピーダンスの低下を抑制することが可能となる。しかも、ダミーランドパターンはダミー端子に接続されていることから、基板に対するコイル部品の実装強度も確保される。
【0008】
本発明において、第1及び第2のダミーランドパターンは、いずれも他のパターンに接続されない独立したパターンであっても構わない。これによれば、ダミーランドパターンに起因するノイズの発生を防止することができる。
【0009】
本発明において、第1及び第2のランドパターンは、第1及び第2のダミーランドパターンよりも有効面積が小さくても構わない。これによれば、ランドパターンとグランドの間のキャパシタンスをより低減することが可能となる。この場合、第1及び第2のランドパターンの外形サイズは、第1及び第2のダミーランドパターンの外形サイズと同じであり、第1及び第2のランドパターンに設けられた切り欠きによって有効面積が縮小されていても構わない。これによれば、ハンダによるランドパターンと信号端子の接続強度を十分に確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、基板上にチップ型のコイル部品が表面実装された構造を有する回路基板において、高周波領域におけるインピーダンスの低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態による回路基板1の外観を示す略分解斜視図である。
図2図2は、コイル部品20の外観を示す略斜視図である。
図3図3は、回路基板1の略断面図である。
図4図4は、基板10に実装された状態におけるコイル部品20の等価回路である。
図5図5は、実施形態の効果を説明するためのグラフであり、実線は基板10に実装された状態におけるコイル部品20の特性を示し、破線はランドパターンP1とダミーランドパターンDP1を一体化し、ランドパターンP2とダミーランドパターンDP2を一体化した場合の特性を示している。
図6図6は、第1の変形例による基板10上のパターン形状を示す略平面図である。
図7図7は、第2の変形例による基板10上のパターン形状を示す略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の好ましい実施形態による回路基板1の外観を示す略分解斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態による回路基板1は、基板10と、基板10に設けられた部品搭載領域Aに表面実装されたチップ型のコイル部品20とを備えている。基板10の表面には、信号ラインS1,S2と、信号ラインS1,S2にそれぞれ接続されたランドパターンP1,P2と、ダミーランドパターンDP1,DP2が設けられている。ランドパターンP1,P2及びダミーランドパターンDP1,DP2は、いずれも部品搭載領域Aに位置する。ダミーランドパターンDP1,DP2は、いずれも他のパターンに接続されない独立したパターンであり、電気的にフローティング状態である。図1に示す例では、ランドパターンP1とダミーランドパターンDP2が互いに向かい合う位置に配置され、ランドパターンP2とダミーランドパターンDP1が互いに向かい合う位置に配置されている。換言すれば、ランドパターンP1,P2が互いに対角の位置に配置され、ダミーランドパターンDP1,DP2が互いに対角の位置に配置されている。
【0015】
図2は、コイル部品20の外観を示す略斜視図である。
【0016】
図2に示すように、コイル部品20は、鍔部31,32及び巻芯部33を有するドラム型コア30と、鍔部31,32に固定された板状コア40と、鍔部31に設けられた信号端子E1及びダミー端子DE1と、鍔部32に設けられた信号端子E2及びダミー端子DE2と、巻芯部33に巻回されたワイヤWとを有している。ワイヤWは、銅などの良導体を芯材とする被覆導線である。
【0017】
ドラム型コア30は、フェライトなどの高透磁率材料からなるドラム型のブロックであり、鍔部31,32とこれらの間に設けられた巻芯部33が一体化された構造を有している。板状コア40もフェライトなどの高透磁率材料からなる板状のブロックである。ドラム型コア30と板状コア40は、接着剤などを介して互いに固定されている。そして、ワイヤWの一端は信号端子E1に継線され、ワイヤWの他端は信号端子E2に継線される。ダミー端子DE1,DE2にはいかなるワイヤも継線されない。信号端子E1,E2及びダミー端子DE1,DE2は、ドラム型コア30に焼き付けられた銀ペーストなどからなるものであっても構わないし、ドラム型コア30に接着された端子金具からなるものであっても構わない。
【0018】
そして、コイル部品20は、信号端子E1,E2がそれぞれランドパターンP1,P2に接続され、ダミー端子DE1,DE2がそれぞれダミーランドパターンDP1,DP2に接続されるよう、基板10に搭載される。信号端子E1,E2及びダミー端子DE1,DE2とランドパターンP1,P2及びダミーランドパターンDP1,DP2の接続は、断面図である図3に示すようにハンダ50を介して行われる。
【0019】
図3に示すように、基板10の内部には、ランドパターンP1,P2及びダミーランドパターンDP1,DP2と重なる位置にグランドパターンGが存在している。このため、ランドパターンP1,P2及びダミーランドパターンDP1,DP2とグランドパターンGとの間には、浮遊容量が生じることになる。
【0020】
図4は、基板10に実装された状態におけるコイル部品20の等価回路である。
【0021】
図4に示すように、コイル部品20は、インダクタンス成分Ls、キャパシタンス成分Cp及び抵抗成分Rpが並列接続された等価回路によって表すことができる。これに加え、コイル部品20が基板10に実装された状態においては、ランドパターンP1,P2とグランドパターンGとの間に生じる浮遊容量成分Cpadが追加される。しかしながら、ランドパターンP1とダミーランドパターンDP1は分離しており、ランドパターンP2とダミーランドパターンDP2は分離していることから、ダミーランドパターンDP1,DP2に生じる浮遊容量は浮遊容量成分Cpadに含まれることがない。これにより、浮遊容量成分Cpadが低減されることから、高周波領域におけるインピーダンスの低下が抑制される。一方、ダミー端子DE1,DE2とダミーランドパターンDP1,DP2は、ハンダ50を介して接続されていることから、コイル部品20の実装強度も十分に確保される。
【0022】
図5は、本実施形態の効果を説明するためのグラフであり、実線は基板10に実装された状態におけるコイル部品20の特性を示し、破線はランドパターンP1とダミーランドパターンDP1を一体化し、ランドパターンP2とダミーランドパターンDP2を一体化した場合の特性を示している。図5に示すように、低周波領域においては、本実施形態による回路基板1と比較例による回路基板のインピーダンスにほとんど差は無いが、高周波領域では本実施形態による回路基板1の方が高いインピーダンスが得られていることが分かる。
【0023】
図6は、第1の変形例による基板10上のパターン形状を示す略平面図である。
【0024】
図6に示す第1の変形例では、ランドパターンP1とランドパターンP2が互いに向かい合う位置に配置され、ダミーランドパターンDP1とダミーランドパターンDP2が互いに向かい合う位置に配置されている点において、上記実施形態におけるパターン形状と相違している。この場合、基板10に実装するコイル部品20についても、ワイヤWの継線位置を変更する必要がある。具体的には、信号端子E1とダミー端子DE1の位置を図2とは逆に配置すればよい。第1の変形例が例示するように、ランドパターンP1,P2及びダミーランドパターンDP1,DP2のレイアウトについては特に限定されるものではない。
【0025】
図7は、第2の変形例による基板10上のパターン形状を示す略平面図である。
【0026】
図7に示す第2の変形例では、ランドパターンP1,P2にスリット状の切り欠きが複数設けられている。外形サイズについては、ランドパターンP1,P2とダミーランドパターンDP1,DP2は同じであるが、ランドパターンP1,P2にスリット状の切り欠きが設けられていることから、これによってダミーランドパターンDP1,DP2よりも有効面積が縮小されている。ここで、有効面積とは導体パターンが存在する部分の面積を意味する。このように、ランドパターンP1,P2の有効面積を縮小することにより、グランドパターンGとの間に生じる浮遊容量成分Cpadがより低減することから、高周波領域におけるインピーダンスがより改善する。しかも、外形サイズについては維持されていることから、ハンダ50による接続強度が確保される。
【0027】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0028】
1 回路基板
10 基板
20 コイル部品
30 ドラム型コア
31,32 鍔部
33 巻芯部
40 板状コア
50 ハンダ
A 部品搭載領域
DE1,DE2 ダミー端子
DP1,DP2 ダミーランドパターン
E1,E2 信号端子
G グランドパターン
P1,P2 ランドパターン
S1,S2 信号ライン
W ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7