(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】床タイルの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/16 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
E04F15/16 G
(21)【出願番号】P 2021149407
(22)【出願日】2021-09-14
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 伸一
(72)【発明者】
【氏名】明石 和也
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-100379(JP,A)
【文献】特開昭60-233266(JP,A)
【文献】タイルカーペットの貼り方・敷き方![これで完璧]きれいに仕上げる4つのコツと注意点 - ラグ・カーペット通販[びっくりカーペット],[online],2020年10月13日,[2024年9月30日検索],<https://bicklycarpet.co.jp/column/carpet/20201005-20/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
A47G 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視略矩形状の床タイルを接着剤を用いることなく床面の敷設場所に敷設する施工方法であって、
横方向に延びる横目印線と、前記横目印線に直交し且つ縦方向に延びる縦目印線と、を前記敷設場所に表示することにより、前記横目印線及び縦目印線によって前記敷設場所を第1領域乃至第4領域に区画する工程、
前記第1領域を区画する前記横目印線及び縦目印線に、横辺及び縦辺をそれぞれ沿わせて1つの床タイルを前記第1領域に敷設し、これを基準タイルとする工程、
前記横目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの横方向に隣接させながら床タイルを少なくとも前記第1領域に順に敷設することにより、横方向に並んだ複数の床タイルからなる基準行を形成する工程、
前記縦目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを少なくとも前記第1領域に順に敷設することにより、縦方向に並んだ複数の床タイルからなる基準列を形成する工程、
前記基準行及び基準列を形成した後、前記基準行を形成する床タイル及び前記基準列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記基準行の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第1敷設行を形成する第1敷設工程、
前記第1敷設行を形成する床タイル及び前記基準列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記第1敷設行の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第2敷設行を形成する第2敷設工程、
以後同様にして前記第2敷設工程を繰り返す工程、を有する床タイルの施工方法。
【請求項2】
平面視略矩形状の床タイルを接着剤を用いることなく床面の敷設場所に敷設する施工方法であって、
横方向に延びる横目印線と、前記横目印線に直交し且つ縦方向に延びる縦目印線と、を前記敷設場所に表示することにより、前記横目印線及び縦目印線によって前記敷設場所を第1領域乃至第4領域に区画する工程、
前記第1領域を区画する前記横目印線及び縦目印線に、横辺及び縦辺をそれぞれ沿わせて1つの床タイルを前記第1領域に敷設し、これを基準タイルとする工程、
前記横目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの横方向に隣接させながら床タイルを少なくとも前記第1領域に順に敷設することにより、横方向に並んだ複数の床タイルからなる基準行を形成する工程、
前記縦目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを少なくとも前記第1領域に順に敷設することにより、縦方向に並んだ複数の床タイルからなる基準列を形成する工程、
前記基準行及び基準列を形成した後、前記基準行を形成する床タイル及び前記基準列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記基準行の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第1敷設行を形成する第1敷設工程、
前記第1敷設行を形成する床タイル及び前記基準列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記基準列の床タイルに隣接し且つ縦方向に並んだ複数の床タイルからなる第2敷設列を形成する第2敷設工程、
前記第1敷設行を形成する床タイル及び前記第2敷設列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記第1敷設行の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第3敷設行を形成する第3敷設工程、
前記第3敷設行を形成する床タイル及び前記第2敷設列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記第2敷設列の床タイルに隣接し且つ縦方向に並んだ複数の床タイルからなる第4敷設列を形成する第4敷設工程、
以後同様にして、前記第3敷設工程と第4敷設工程を繰り返す工程、を有する床タイルの施工方法。
【請求項3】
前記第1敷設工程を途中まで行なった後に、前記第2敷設工程を並行して行う、請求項1または2に記載の床タイルの施工方法。
【請求項4】
前記床タイルの裏面に、吸着部が設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の床タイルの施工方法。
【請求項5】
前記基準行を形成する工程において、前記横目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの横方向に隣接させながら床タイルを前記第1領域及び第2領域に順に敷設し、且つ、前記基準列を形成する工程において、前記縦目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを前記第1領域及び第4領域に順に敷設することにより、
前記敷設場所に、平面視で十字状を成す基準行及び基準列を形成する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の床タイルの施工方法。
【請求項6】
前記十字状の基準行及び基準列を形成した後、前記第1領域乃至第4領域から任意に2つ以上の領域を選び、それらの領域の未敷設部に、同時並行的に前記床タイルを敷設する、請求項5に記載の床タイルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ施設の床面などに敷設される床タイルの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体育館、フィットネスジムなどの屋内スポーツ施設、屋外テニスコート、屋外フットサルコートなどの屋外スポーツ施設などの各種のスポーツ施設;会議室、ホテルなどのロビ、各種建物のエントランスなどのスポーツ施設以外の屋内外の施設;などの床面に、床材が設けられている。
前記床材としては、接着剤などで床面に固着する常設タイプが一般に知られている。また、接着剤を用いないで粘着テープなどを用いて床面に着脱可能に敷設する仮設タイプの床材も知られている。
例えば、スポーツ施設においては、様々なスポーツに適した床構造とするため、既設の床面の上に別途の床材を敷設して仮設コートとして利用する場合がある。このような場合に、仮設タイプの床材は好適である。例えば、体育館の木質系床材などの床面の上に、着脱可能な樹脂製の床材を敷設し、バレーボールなどの競技を行った後、その床材を剥離し、元の床面に戻す。
このような樹脂製の床材としては、クリヤマ株式会社の長尺床シート(商品名「タラフレックス」)が知られている(非特許文献1)。
【0003】
前記長尺床シートは、ロール状に巻き取られており、そのロールを床面に転がすことにより、長尺床シートを床面に敷設できる。仮設タイプの場合、長尺床シートは、粘着テープなどを用いて床面に固定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】クリヤマ株式会社 SPORTS FLOOR CATALOG(2019年2月発行 第12刷)の29頁乃至42頁
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、前記長尺床シートのロールは重量物であるため、複数人によって運搬しなければならない。また、敷設後に撤去する際も、長尺床シートを床面から剥離する作業に労力を要する。
これらを考慮して、本発明者らは、平面視略矩形状である枚葉状の床シート(以下、枚葉状の床シートを「床タイル」という)を用いることを提案した。この平面視略矩形状の床タイルは、1枚辺りの重量が前記床シートのロールよりも随分と軽くなるので、取り扱い易くなる。
このような床タイルを床面に敷設する際には、1つの床タイルを敷設し、この床タイルに隣接させて次の床タイルを敷設することを繰り返すが、徐々に貼りズレが生じ、ある程度の枚数を敷設すると、全体として大きなズレを生じ易いという問題点がある。特に、敷設場所が比較的大面積である場合、前記ズレの発生頻度及びズレの大きさが顕著になることが分かってきた。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、平面視略矩形状の床タイルを接着剤を用いることなく床面の敷設場所に敷設する際に、複数の床タイルの貼りズレを生じさせ難い施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の床タイルの施工方法は、平面視略矩形状の床タイルを接着剤を用いることなく床面の敷設場所に敷設する施工方法であって、横方向に延びる横目印線と、前記横目印線に直交し且つ縦方向に延びる縦目印線と、を前記敷設場所に表示することにより、前記横目印線及び縦目印線によって前記敷設場所を第1領域乃至第4領域に区画する工程、前記第1領域を区画する前記横目印線及び縦目印線に、横辺及び縦辺をそれぞれ沿わせて1つの床タイルを前記第1領域に敷設し、これを基準タイルとする工程、前記横目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの横方向に隣接させながら床タイルを少なくとも前記第1領域に順に敷設することにより、横方向に並んだ複数の床タイルからなる基準行を形成する工程、前記縦目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを少なくとも前記第1領域に順に敷設することにより、縦方向に並んだ複数の床タイルからなる基準列を形成する工程、前記基準行及び基準列を形成した後、前記基準行を形成する床タイル及び前記基準列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記基準行の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第1敷設行を形成する第1敷設工程、前記第1敷設行を形成する床タイル及び前記基準列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記第1敷設行の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第2敷設行を形成する第2敷設工程、以後同様にして前記第2敷設工程を繰り返す工程、を有する。
本発明の第2の床タイルの施工方法は、平面視略矩形状の床タイルを接着剤を用いることなく床面の敷設場所に敷設する施工方法であって、横方向に延びる横目印線と、前記横目印線に直交し且つ縦方向に延びる縦目印線と、を前記敷設場所に表示することにより、前記横目印線及び縦目印線によって前記敷設場所を第1領域乃至第4領域に区画する工程、前記第1領域を区画する前記横目印線及び縦目印線に、横辺及び縦辺をそれぞれ沿わせて1つの床タイルを前記第1領域に敷設し、これを基準タイルとする工程、前記横目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの横方向に隣接させながら床タイルを少なくとも前記第1領域に順に敷設することにより、横方向に並んだ複数の床タイルからなる基準行を形成する工程、前記縦目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを少なくとも前記第1領域に順に敷設することにより、縦方向に並んだ複数の床タイルからなる基準列を形成する工程、前記基準行及び基準列を形成した後、前記基準行を形成する床タイル及び前記基準列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記基準行の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第1敷設行を形成する第1敷設工程、前記第1敷設行を形成する床タイル及び前記基準列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記基準列の床タイルに隣接し且つ縦方向に並んだ複数の床タイルからなる第2敷設列を形成する第2敷設工程、前記第1敷設行を形成する床タイル及び前記第2敷設列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記第1敷設行の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第3敷設行を形成する第3敷設工程、前記第3敷設行を形成する床タイル及び前記第2敷設列を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記第2敷設列の床タイルに隣接し且つ縦方向に並んだ複数の床タイルからなる第4敷設列を形成する第4敷設工程、以後同様にして、前記第3敷設工程と第4敷設工程を繰り返す工程、を有する。
【0008】
本発明の好ましい施工方法は、前記第1敷設工程を途中まで行なった後に、前記第2敷設工程を並行して行う。
本発明の好ましい施工方法は、前記床タイルの裏面に、吸着部が設けられている。
本発明の好ましい施工方法は、前記基準行を形成する工程において、前記横目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの横方向に隣接させながら床タイルを前記第1領域及び第2領域に順に敷設し、且つ、前記基準列を形成する工程において、前記縦目印線に沿わせ且つ前記基準タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを前記第1領域及び第4領域に順に敷設することにより、前記敷設場所に、平面視で十字状を成す基準行及び基準列を形成する。
本発明の好ましい施工方法は、前記十字状の基準行及び基準列を形成した後、前記第1領域乃至第4領域から任意に2つ以上の領域を選び、それらの領域の未敷設部に、同時並行的に前記床タイルを敷設する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の床タイルの施工方法によれば、貼りズレが生じ難く、複数の床タイルを敷設場所に比較的短時間で且つ綺麗に敷設できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図2のIII-III線で切断した概略拡大断面図。
【
図4】第1例の層構成からなるタイル本体を有する床タイルの拡大断面図(
図2のIII-III線と同様な箇所で切断)。
【
図5】第2例の層構成からなるタイル本体を有する床タイルの拡大断面図(
図2のIII-III線と同様な箇所で切断)。
【
図6】第3例の層構成からなるタイル本体を有する床タイルの拡大断面図(
図2のIII-III線と同様な箇所で切断)。
【
図7】第4例の層構成からなるタイル本体を有する床タイルの拡大断面図(
図2のIII-III線と同様な箇所で切断)。
【
図8】第5例の層構成からなるタイル本体を有する床タイルの拡大断面図(
図2のIII-III線と同様な箇所で切断)。
【
図9】周縁部が面取りされた1つの形態に係る床タイルの一部を省略した更なる拡大断面図。
【
図10】周縁部の面取り形態が異なる床タイルの一部を省略した更なる拡大断面図。
【
図11】床面の敷設場所に横目印線及び縦目印線を表示した状態を示す参考平面図。
【
図12】横目印線及び縦目印線を表示した敷設場所に、基準となる床タイル(基準タイル)を敷設した状態を示す参考平面図。
【
図13】基準タイルを敷設した後に、複数の床タイルを敷設して基準行及び基準列を形成した状態を示す参考平面図。
【
図14】第1の施工方法において、基準行及び基準列を形成した後に、複数の床タイルを敷設して第1敷設行を形成した状態を示す参考平面図。
【
図15】第1の施工方法において、第1敷設行を形成した後に、複数の床タイルを敷設して第2敷設行を形成した状態を示す参考平面図。
【
図16】第1の施工方法において、第1領域の略全体に床材を敷設した状態を示す参考平面図。
【
図17】第2の施工方法において、第1敷設行を形成した後に、複数の床タイルを敷設して第2敷設列を形成した状態を示す参考平面図。
【
図18】第2の施工方法において、第2敷設列を形成した後に、複数の床タイルを敷設して第3敷設行を形成した状態を示す参考平面図。
【
図19】第2の施工方法において、第3敷設行を形成した後に、複数の床タイルを敷設して第4敷設列を形成した状態を示す参考平面図。
【
図20】床タイルの垂下量の測定方法を示す参考側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、ある層又は部材の「表面」は、床タイルを敷設する床面から遠い側の面を指し、「裏面」は、その反対側(床タイルを敷設する床面に近い側)の面を指す。平面視は、床面又は床タイルの表面若しくは裏面に対して鉛直な方向から見ることをいう。
本明細書において、「横方向」又は「横」及び「縦方向」又は「縦」は、平面視において直交する方向をいう。すなわち、平面視で「横方向」又は「横」は「縦方向」又は「縦」に対して直交しているという方向性のみを意味し、両者は、いずれかが長い又は長さ同じなどの寸法的な相違、向きなどの順序、優劣などの特別な意味を有さない。つまり、「横方向」又は「横」は、平面視の面内の1つの方向という意味であり、「縦方向」又は「縦」は、平面視の面内で前記1つの方向に直交する方向を意味する。なお、図面に表した場合、便宜上、紙面左右方向を横方向とし、紙面上下方向を縦方向とする。
本明細書において、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
また、各図における、厚み及び大きさなどの寸法は、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
【0014】
[床タイルの概要]
図1は、床タイルAの平面図であり、
図2は、同床タイルAの背面図である。平面図は、床タイルAの表面側から見たものであり、背面図は、その裏面側から見たものである。
図3は、床タイルAを厚み方向に切断した概略拡大断面図である。なお、
図3において、タイル本体1の層構成は不図示である。
床タイルAは、平面視略矩形状に形成されている。前記略矩形状は、略正方形状又は略長方形状のいずれかを意味する。例えば、床タイルAは、平面視略正方形状であって枚葉状に形成されている(
図1)。もっとも、枚葉状の床タイルAは、平面視略長方形状に形成されていてもよい(図示せず)。前記平面視略矩形状の床タイルAの具体的な寸法としては、例えば、横辺の長さ×縦辺の長さ=300mm~1000mm×300mm~1000mm、好ましくは、横辺の長さ×縦辺の長さ=500mm~950mm×500mm~950mm、より好ましくは、横辺の長さ×縦辺の長さ=700mm~900mm×700mm~900mmなどが例示される。横辺の長さ及び縦辺の長さが前記下限値以上であると、競技者が床タイル上を擦りながら移動した場合でも、敷設箇所から位置ズレし難い床タイルAを提供できる。また、前記上限値以下であれば、1枚の床タイルの重量が比較的軽く、取り扱い性の良い床タイルAを提供できる。
【0015】
好ましくは、床タイルAは、平面視略正方形状、すなわち横辺の長さと縦辺の長さが等しい。床タイルAを平面視略正方形状に形成することにより、長辺と短辺を区別する必要がなく、床タイルAを床面の敷設場所に連続的に並べ易くなる。特に、平面視略正方形状の床タイルAは、例えばスポーツ競技時の激しい動きに対してズレ難く、特に、バレーボールのような動きの激しい競技を行う場合でもズレ難い。さらに、平面視略正方形状の床タイルAは、後述するように、市松貼り又は流し貼りを自由に選択して敷設できる。
【0016】
本発明の床タイルAは、柔軟性を有する。床タイルAの柔軟性の程度としては、例えば、床タイルAの裏面側を巻き芯に向けて、直径10cmの巻き芯の周囲にロール状に巻き付け可能である。このような柔軟性を有する床タイルAは、適度に撓るので、その辺を既に敷設されている床タイルの辺に隣接させて敷設し易く、貼りズレを抑制できる。例えば、床タイルAの垂下量は、23℃環境下で、0.5mm~10.0mmであり、好ましくは、1.0mm~7.0mmである。垂下量が前記範囲内の床タイルAは、敷設後、床タイルAの縁部の浮きが抑制され、且つ、敷設及び剥離に適する。
ただし、床タイルAの垂下量は、次のようにして測定できる。
・床タイルAの垂下量の測定方法
図20(a)に示すように、測定器具として、測定用の左右の台座と物差しを準備する。台座は、高さ20cmで、サンプル片よりも十分に大きな面積を有する直方体からなり、左右一対で構成される。右台座は、左台座に対して接離可能である。
床タイルAを横:5cm、縦:30cmに裁断してサンプル片を得、それを23℃、湿度50%RHの恒温室内に入れて24時間放置する。
24時間放置後のサンプル片を、23℃下でその表面側を上にした状態で、縦10cm分のサンプル片の左側を左台座に且つ縦20cm分のサンプル片の右側を右台座に跨がって載置する(同図(b)参照)。同図(c)に示すように、サンプル片の左側の表面に固定用の重りを載せ、右台座を左台座から離反させて取り外した後、30秒後、サンプル片の右側の垂下量を物差しで計測する。垂下量は、左台座の表面とサンプル片の右下角部との間の直線長さとする。このようにして計測された垂下量が、前記床タイルAの垂下量である。
【0017】
図示例のような枚葉状の床タイルAは、その複数を重ね合わせた状態で、又は、個々にロール状に巻いた状態で保管・運搬される。
床タイルAの全体の厚みは、特に限定されず、例えば、1mm~10mmであり、好ましくは、1.5mm~8mmである。床タイルAの厚みが小さすぎると軟らかく、厚みが大きすぎると硬くなる傾向にあるが、前記範囲であれば、適度なクッション性を有し且つ敷設及び剥離に適した硬さの床タイルAとなる。また、床タイルAの厚みが上限値以下であれば、床タイルAの1枚当たりの重量が重くなり過ぎず、取り扱い性が向上し、1人でも容易に敷設することができる。このような適度な厚みを有する床タイルAは、その辺を既に敷設されている床タイルの辺に隣接させて敷設し易く、貼りズレを抑制できる。
【0018】
床タイルAの重量は、1kg/枚~4kg/枚が好ましく、1.5kg/枚~3kg/枚がさらに好ましい。重量が前記上限値以下であれば、搬入、敷設及び撤去を1人で容易に行うことができるので取り扱い性が向上し、床タイルAの位置決めを含む敷設作業を容易に行うことができる。重量が下限値以上であれば、床タイルAを敷設場所に敷設した状態において、タイル全体の自重により、裏面の吸着部が床面に強固に固定されるので、スポーツなどの激しい運動をしても床タイルAが敷設箇所からズレたり、或いは、縁部が浮いたりすることを防止できる。
【0019】
本発明の床タイルAは、
図2及び
図3に示すように、タイル本体1と、吸着部2と、を有する。
吸着部2は、タイル本体1の裏面に設けられている。吸着部2は、床タイルAを床面に対して吸着固定するために設けられている。
タイル本体1の周縁部1aは、
図3に示すように、面取りされていることが好ましい。
【0020】
[タイル本体]
タイル本体1は、床タイルAを構成する主要な部材であり、床タイルAと同様な柔軟性を有する。
タイル本体1の表面は、例えば、単一の色彩を呈する。このタイル本体1の表面が単一の色彩を呈するとは、視覚正常者がタイル本体1を平面視で見たときに、1種の色彩を認識することをいう。また、タイル本体1の表面が2色以上の色彩を呈するものでもよい。
前記色彩の種類は、特に限定されず、オレンジ色、緑色、青色、灰色、赤色、黄色、茶色などの任意の一色が挙げられ、中でも、オレンジ色、緑色、青色、灰色、赤色のいずれかが好ましい。前記タイル本体1の表面のL値は、特に限定されないが、例えば、30~80である。前記範囲のL値を有することにより、汗看取り性に優れた床タイルAを提供できる。中でも、汗看取り性に優れ且つ意匠的に綺麗に見えることから、表面がL値30~80の範囲のオレンジ色の単一の色彩を呈するようにタイル本体1が構成されていることがより好ましい。
前記L値は、色の明度を表す指標であり、L*a*b*表色系でのL値をいう。L値が小さいほど、暗く且つ黒っぽい色となり、L値が大きいほど、明るく且つ白っぽい色となる。明度は、色の明るさの度合いをいう。
前記L値は、床タイルAの表面の3点を選び、各点について分光測色計(コニカミノルタ社製の製品名「分光測色計CМ―600A」)を用いてL値をそれぞれ測定し、その平均値を前記床タイルAのL値として採用できる。
【0021】
また、タイル本体1の表面の光沢度は、特に限定されないが、例えば、1~10である。好ましくは、タイル本体1の表面の光沢度は、3~9であり、より好ましくは、4~8である。前記範囲の光沢度を有することにより、表面に汗が付着した際に、それが光って目立ち易くなり、汗看取り性に優れた床タイルAを提供できる。
前記光沢度は、60°の光沢度をいう。光沢度は、例えば、日本工業規格(JIS)Z8741:1997「鏡面光沢度-測定方法」に従って測定できる。前記光沢度は、タイル本体1の表面に対して60°の入射角で光を入射させ、その反射角の方向に設置した光検出器の測定結果に基づいて算出できる。このような鏡面光沢度の測定装置としては、例えば、コニカミノルタ株式会社製の商品名「MultiGloss268」、日本電色工業株式会社製の商品名「GlossMeter型番VGP5000」などが挙げられる。
【0022】
前記タイル本体1の表面粗さRzは、特に限定されないが、例えば、30μm~100μmである。前記表面粗さRzを有することにより、競技中に競技者の足裏が滑り難く、さらに、滑り込みなどによって競技者の膝や肘などの身体の一部が床タイルAの表面上を擦りながら移動する場合であっても、適度な摺動性を有する床タイルAを提供できる。また、前記表面粗さRzを有することにより、床タイルAの表面の光沢度を比較的低くすることができ、汗看取り性を高めることもできる。好ましくは、タイル本体1の表面粗さRaは、1μm~10μmである。
前記表面粗さRzは、JIS B 0601(2001年)に規定される最大高さ粗さをいう。前記表面粗さRaは、JIS B 0601(2001年)に規定される算術平均粗さをいう。
【0023】
タイル本体1の表面を前記範囲の光沢度及び表面粗さとするために、タイル本体1の表面には、微細な凹凸、すなわち凸部及び凹部が形成されている。タイル本体1の表面に形成された凹凸を図面に明示するために、
図1に、便宜上、タイル本体1の表面にドットを付している。
前記凸部及び凹部は、相対的な部分であり、凹部を基準にした場合、それよりも突出した部分が凸部であり、或いは、凸部を基準にした場合、それよりも凹んでいる部分が凹部である。前記凸部及び凹部は、定形的でもよいが、不定形的であることが好ましい。表面に不定形的な凹凸を形成することにより、凹凸に方向性が無くなるので、競技者の身体の一部が床タイルAの表面上を擦りながら移動する場合であっても、その摺動性の方向依存度を可及的に小さくできる。また、表面に不定形的な凹凸を形成することにより、表面粗さ及び光沢度を前記範囲に設定し易くなる。
定形的とは、平面視で、同形同大の複数の凸部が規則的に並んでいること、又は、平面視で、凸部によって木目柄などの特定の柄が表されていることを目視で確認できることをいう。不定形的とは、平面視で、異形異大、異形同大、同形異大などの不定形の複数の凸部がランダムに配置されていること、又は、平面視で、凸部によって特定の柄が表されていることを目視で確認できないことを含む。
【0024】
[タイル本体の層構成]
タイル本体1の層構成は、特に限定されず、1層構造でもよく、或いは、2層以上が積層された複層構造であってもよい。床タイルAに良好なクッション性を付与するため、タイル本体1は発泡樹脂層を有することが好ましい。
【0025】
図4乃至
図8に示すように、タイル本体1は、裏面側から表面側へ順に、裏層3、中間基材層4、及び表層5を有する。
裏層3は、中間基材層4を基準にして、それよりも裏面側に配置される層であり、表層5は、中間基材層4を基準にして、それよりも表面側に配置される層である。
裏層3としては、裏側樹脂層32、裏側基材層31などが挙げられ、これらは1つ又は2つ以上選択して積層される。好ましくは、裏層3は、裏面側から表面側へ順に、裏側基材層31と裏側樹脂層32が積層されたものからなる。
表層5は、合成樹脂からなる層である。表層5としては、例えば、合成樹脂製の傷付き防止層53、合成樹脂製の保護層52、化合成樹脂製の化粧層51、表側樹脂層54などが挙げられ、これらは1つ又は2つ以上選択して積層される。好ましくは、表層5は、裏面側から表面側へ順に、合成樹脂製の化粧層51と傷付き防止層53又は保護層52とが積層されたものからなる。
表層5の最表面は、タイル本体1の表面を構成し、タイル本体1の表面、すなわち表層5の最表面は、パイルなどの繊維層を有さず、合成樹脂製の層の表面からなる。
【0026】
前記裏側樹脂層32及び表側樹脂層54(樹脂層)は、それぞれ独立して、主成分樹脂として軟質合成樹脂を含むことが好ましい。特に、タイル本体1は、軟質合成樹脂を主成分樹脂として含む裏側樹脂層32及び表側樹脂層54の少なくとも一方の樹脂層を主体として構成される。前記樹脂層を主体とするとは、タイル本体1の全重量中で、樹脂層の重量割合が大きいことを意味する。
なお、本明細書において、軟質合成樹脂及び硬質合成樹脂は、JIS K6900(1994)のプラスチック-用語に記載の軟質プラスチック及び硬質プラスチックを意味する。
【0027】
図4乃至
図8は、様々な層構成のタイル本体1を有する床タイルAの拡大断面図である。なお、これらの床タイルAの平面図及び背面図は、
図1及び
図2と同様なので省略している。また、
図4乃至
図8は、タイル本体1の周縁部が面取りされておらず、角張った形状の場合を図示している。
図4における第1例のタイル本体1は、裏面側から表面側へ順に、裏側基材層31と、裏側樹脂層32と、中間基材層4と、化粧層51と、保護層52と、傷付き防止層53と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。
図4に示す例において、必要に応じて、保護層52又は傷付き防止層53のいずれかを省略してもよい。
図4に示す例において、必要に応じて、裏側基材層31を省略してもよい。
【0028】
図5における第2例のタイル本体1は、裏面側から表面側へ順に、裏側基材層31と、第1の裏側樹脂層321と、第2の裏側樹脂層322と、中間基材層4と、化粧層51と、保護層52と、傷付き防止層53と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。
図5に示す例において、必要に応じて、保護層52又は傷付き防止層53のいずれかを省略してもよい。
図5に示す例において、必要に応じて、裏側基材層31を省略してもよい。
【0029】
図6における第3例のタイル本体1は、裏面側から表面側へ順に、第1の裏側樹脂層321と、裏側基材層31と、第2の裏側樹脂層322と、中間基材層4と、化粧層51と、保護層52と、傷付き防止層53と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。
図6に示す例において、必要に応じて、保護層52又は傷付き防止層53のいずれかを省略してもよい。
【0030】
図7における第4例のタイル本体1は、裏面側から表面側へ順に、裏側基材層31と、裏側樹脂層32と、中間基材層4と、表側樹脂層54と、化粧層51と、保護層52と、傷付き防止層53と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。
図7に示す例において、必要に応じて、保護層52又は傷付き防止層53のいずれかを省略してもよい。
図7に示す例において、必要に応じて、裏側基材層31を省略してもよい。
図7に示す例において、必要に応じて、表側樹脂層54を省略してもよい。
【0031】
図8における第5例のタイル本体1は、裏面側から表面側へ順に、裏側基材層31と、裏側樹脂層32と、中間基材層4と、意匠性を有する表側樹脂層54と、保護層52と、傷付き防止層53と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。
図8に示す例において、必要に応じて、保護層52又は傷付き防止層53のいずれかを省略してもよい。
図8に示す例において、必要に応じて、裏側基材層31を省略してもよい。
【0032】
<裏側基材層>
裏側基材層31は、主としてタイル本体1の最裏面を構成する層である。ただし、
図6に示すように、裏側基材層31がタイル本体1の最裏面を構成しない場合もある。タイル本体1の最裏面に裏側基材層31を設けることにより、床タイルAの端部が上向きに反ることなどを防止できる。また、裏側基材層31の裏面がタイル本体1の最裏面を構成することにより、吸着部2の形成材料が裏側基材層31に含浸し、タイル本体1に強固に接着した吸着部2を形成できる。
前記裏側基材層31としては、特に限定されないが、例えば、フェルト、不織布、織布、紙などの繊維含有層が挙げられる。フェルトを構成する繊維の材質としては、特に限定されず、羊などの動物の毛;ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;などが挙げられる。不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。不陸吸収性、クッション性、吸音性及び加工性などに優れる点で、裏側基材層31としてフェルトを用いることが好ましい。
前記裏側基材層31の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1mm~1mmであり、好ましくは0.2mm~0.6mmである。また、裏側基材層31の目付量は、特に限定されず、例えば、30g/m
2~200g/m
2である。裏側基材層31の厚み又は目付量が小さすぎると、上反りを十分に抑制できないおそれがあり、一方、大きすぎると、裏側基材層31に吸着部2の形成材料が十分に含浸しないおそれがある。
【0033】
<裏側樹脂層及び表側樹脂層>
裏側樹脂層32及び表側樹脂層54は、タイル本体1の強度及び重量を構成する主たる樹脂層である。前記裏側樹脂層32には第1の裏側樹脂層321及び第2の裏側樹脂層322が含まれる。
前記裏側樹脂層32及び表側樹脂層54は、それぞれ独立して、発泡されている発泡体でもよく、或いは、発泡されていない非発泡体でもよい。裏側樹脂層32及び表側樹脂層54を有する場合、床タイルAに良好なクッション性を付与する観点から、少なくとも何れか一方が、発泡体であることが好ましい。特に、表側樹脂層54の剛性度が裏側樹脂層32よりも剛性度が大きくなることから、裏側樹脂層32が発泡体で且つ表側樹脂層54が非発泡体であることが好ましい。
【0034】
なお、
図5及び
図6に示すように、裏側樹脂層32が複数の樹脂層、例えば第1及び第2の裏側樹脂層321,322から構成される場合、その全てが非発泡体で構成されていてもよいが、好ましくはその複数のうちの少なくとも1つの樹脂層が発泡体で構成される。
前記裏側樹脂層32及び表側樹脂層54が発泡体である場合、その発泡倍率は特に限定されないが、例えば、1.1倍~4倍であり、好ましくは、1.1倍~2倍である。発泡倍率が余りに低いと、床タイルAに実質的にクッション性を付与できず、一方、発泡倍率が余りに高いと、床タイルAが厚み方向に変形し過ぎるようになる。前記範囲の発泡倍率を有する床タイルAは、その敷設時に押し付けることによって、隣接する床タイルA間の隙間を無くすことができ、汗が床タイルAの裏面側に回り込むことを防止できる。
【0035】
裏側樹脂層32及び表側樹脂層54の樹脂成分としては、特に限定されず、それぞれ独立して、従来公知のものを用いることができ、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられ、さらに、軟質の熱可塑性樹脂が用いられる。
前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ウレタン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。安価で且つ優れた可撓性及び耐久性を有し、さらに、後述する接合樹脂と接合し易く、加工性及び耐久性に優れる点から、裏側樹脂層32及び表側樹脂層54は、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする樹脂層であることが好ましい。
【0036】
なお、本明細書において、主成分樹脂は、重量比で、その層を構成する樹脂成分の中で最も多い成分をいう。ただし、前記樹脂成分には添加剤が除かれる。主成分樹脂の量は、その層を構成する樹脂成分全体を100重量%とした場合、50重量%を超え、好ましくは、70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上である。主成分樹脂の量の上限は、100重量%である。主成分樹脂の量が100重量%未満である場合において、その層に含まれる主成分樹脂以外の樹脂は、特に限定されず、公知の樹脂成分を用いることができる。
【0037】
前記塩化ビニル系樹脂としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものを用いることができる。加工し易く且つ取り扱い易いことから、乳化重合法、又は、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂が好ましい。これらの塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
好ましくは、裏側樹脂層32は、主成分樹脂としてサスペンション塩化ビニル系樹脂を含む。裏側樹脂層32をサスペンション塩化ビニル系樹脂で形成することにより、床タイルAの強度を確保しつつ比較的厚みの小さい床タイルAを構成できる。また、表側樹脂層54も、同様に、サスペンション塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含むものが好ましい。
【0038】
ペースト塩化ビニル系樹脂は、例えば、乳化重合法で得られるペースト状の塩化ビニル系樹脂であり、可塑剤により、適宜粘度を調整できる。ペースト塩化ビニル系樹脂は、多数の微粒子集合体からなる粒子径が0.1~10μm(好ましくは1~3μm)の微細粉末であり、好ましくは、前記微細粉末の表面に界面活性剤がコーティングされている。ペースト塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1000~2000程度が好ましい。
サスペンション塩化ビニル系樹脂は、例えば、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂である。サスペンション塩化ビニル系樹脂は、粒子径が好ましくは20μm~100μmの微細粉末である。サスペンション塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、700~1500程度が好ましく、700~1100程度がより好ましく、700~1000程度がさらに好ましい。
ただし、前記粒子径は、体積基準の粒度分布におけるメディアン径(D50)である。
【0039】
前記各塩化ビニル系樹脂は、K値60~95程度のものが好ましく、K値65~80程度のものがより好ましい。
前記裏側樹脂層32及び表側樹脂層54は、通常、上記樹脂成分以外に各種添加剤が含まれる。添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、吸湿剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤、防黴剤などが挙げられる。
裏側樹脂層32の厚みは、特に限定されず、適宜設定でき、例えば、0.5mm~5mmであり、好ましくは0.7mm~2mmである。なお、前記裏側樹脂層32の厚みは、裏側樹脂層32が複数の樹脂層から構成される場合には、その複数の樹脂層の合計厚みに相当する。
表側樹脂層54の厚みは、特に限定されないが、裏側樹脂層32の厚みよりも小さいことが好ましい。表側樹脂層54の厚みは、例えば、0.1mm~2mmであり、好ましくは0.2mm~1mmである。なお、前記表側樹脂層54が複数の樹脂層から構成される場合には、前記表側樹脂層54の厚みは、その複数の樹脂層の合計厚みに相当する。
【0040】
<中間基材層>
中間基材層4は、タイル本体1の厚み方向中間部に介在する層である。
中間基材層4を設けることにより、寸法安定性に優れた床タイルAを構成できる。
前記中間基材層4としては、特に限定されないが、例えば、不織布、織布などの繊維含有層が挙げられる。不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。特に、温度による寸法変化が小さいことから、中間基材層4としては、ガラス繊維を含むガラスシートを用いることが好ましい。寸法変化の小さい床タイルAは、経時的に床タイルA間に隙間が生じたり、床タイルAの縁部が隣接する床タイルAの縁部に乗り上げたりすることを防止できる。このため、敷設した床タイルAが捲れたり、縁部乗り上げに起因するつまずきなどを防止できる。
【0041】
前記ガラスシートとしては、複数のガラス繊維を含むガラス不織布又はガラス織布が挙げられる。
ガラスシートの一例であるガラス不織布は、ガラス繊維が無秩序に重なり合って層を成したものであり、例えば、ニードルパンチ法、水流絡合法、スパンボンド法、ケミカルボンド法などの各種の方法にて製造されたものを用いることができる。
ガラスシートの一例であるガラス織布は、複数のガラス繊維が縦横に規則性を以て織り込まれて層を成しているもの、或いは、複数のガラス繊維が縦横に規則性を以て上下方向に重なり且つそれらが接着剤などのバインダーにてバインドされて層を成しているものである。
【0042】
中間基材層4である前記ガラスシートを基準にして、その裏面及び表面に隣接する層を強固に接合するため、ガラスシートに接合樹脂が付着されていることが好ましい。
前記接合樹脂は、ガラス繊維の表面全体に付着されてもよく、或いは、多くのガラス繊維の表面全体に付着され且つ残るガラス繊維の表面の一部分に付着されていてもよい。また、接合樹脂は、ガラス繊維の表面に均一に付着されていてもよく、或いは、不均一に付着されていてもよい。
ガラスシートに対する接合樹脂の目付量は、特に限定されないが、例えば、5g/m2~105g/m2であり、好ましくは10g/m2~80g/m2、より好ましくは15g/m2~60g/m2である。
また、接合樹脂の付いたガラスシートの目付量は、特に限定されないが、例えば、15g/m2~205g/m2であり、好ましくは20g/m2~180g/m2、より好ましくは35g/m2~160g/m2である。前記接合樹脂の付いたガラスシートの目付量は、ガラスシートと接合樹脂の各目付量の和をいう。
【0043】
前記接合樹脂は、裏側樹脂層32などをガラスシートに接合させるためのバインダー樹脂として機能する。
接合樹脂としては、従来公知の樹脂を用いることができ、例えば、裏側樹脂層32で例示したような熱可塑性樹脂が挙げられる。
塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする裏側樹脂層32などに対する接合性に優れていることから、接合樹脂は、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂を含むことが好ましく、主成分樹脂としてペースト塩化ビニル系樹脂を含むことが好ましい。
【0044】
<化粧層>
化粧層51は、床タイルAに色彩を付与する層である。
前記化粧層51は、着色された合成樹脂層、印刷シート、転写シートなどが挙げられる。
着色された合成樹脂層は、その層そのものが色彩を呈する層である。前記合成樹脂層は、(1)樹脂そのものの色彩からなる樹脂層、(2)着色剤が混合され、その着色剤によって着色された樹脂層、(3)着色された樹脂チップが混合されてシート状に成形された樹脂層、などが挙げられる。着色された合成樹脂層からなる化粧層51は、中間基材層4の表面又は表側樹脂層54の表面などに、その合成樹脂層を積層接合することによって形成される。
印刷シートは、塩化ビニル製樹脂シートなどの合成樹脂シートに単一の色彩又は2色以上の色彩が印刷されたものであり、好ましくは、単一の色彩が施されたものである。転写シートは、印刷インキを剥離紙などの基材上に印刷して固化させた後に、固化した印刷インキを剥離することによって得られる。前記転写シートからなる化粧層51は、保護層52の裏面などに転写することによって形成される。
前記化粧層51の厚みは特に限定されないが、例えば、0.5μm~1mmであり、好ましくは0.01mm~0.8mmである。化粧層51が着色された合成樹脂層からなる場合、その厚みは、例えば、0.3mm~1mmであり、化粧層51が印刷シート又は転写シートからなる場合、その厚みは、0.5μm~0.5mmである。
【0045】
<保護層>
保護層52は、床タイルAに吸着した汚れを容易に除去できるようにするために設けられた層である。保護層52は、必要に応じて設けられる。保護層52は、保護層52の下側に設けられた化粧層51の色彩を視認できるようにするため、透明であり、好ましくは無色透明である。
保護層52は、樹脂材料で形成される。特に、保護層52は、非発泡体で且つ比較的密度が高いものが好ましい。保護層52の樹脂材料としては、上述の<裏側樹脂層及び表側樹脂層>の欄で例示したようなものが挙げられ、化粧層51又は表側樹脂層54と強固に接合することから、塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂が好ましい。
保護層52の厚みは、特に限定されず、例えば、0.03mm~1mmである。
【0046】
<傷付き防止層>
傷付き防止層53は、床タイルAの表面に耐摩耗性、耐傷付き性及び防汚性を付与するために設けられる層である。傷付き防止層53は、必要に応じて設けられる。傷付き防止層53は、保護層52と同様の理由から、透明であり、好ましくは無色透明である。
傷付き防止層53を形成する樹脂材料は、特に限定されないが、比較的硬い樹脂層から形成されていることが好ましい。このような傷付き防止層53は、主成分樹脂として硬質合成樹脂を含むものが挙げられる。前記硬質合成樹脂としては、特に限定されないが、加工性の良さから硬化性樹脂を用いることが好ましく、さらに、傷付き防止層53の積層される保護層52など層に熱損傷を与え難いことから、電離放射線硬化性樹脂を用いることがより好ましく、汎用的であることから、紫外線硬化性樹脂を用いることがさらに好ましい。前記硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂以外に、熱硬化性樹脂、非電離放射線により硬化する樹脂などが挙げられる。
傷付き防止層53の厚みは、特に限定されないが、例えば、1μm~100μmであり、好ましくは5μm~70μmであり、より好ましくは10μm~50μmである。
【0047】
前記傷付き防止層53は、上記樹脂材料と、シリカなどの艶消し剤と、を含むことが好ましい。傷付き防止層53が艶消し剤を含むことにより、表面の光沢度を低くでき、汗看取り性を向上できる。
前記シリカの含有量は、傷付き防止層53の全体を100重量%としたときに、例えば、3重量%~9重量%であり、好ましくは、5重量%~7重量%である。
シリカの平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.01μm~20μmであり、好ましくは、0.1μm~15μmである。この範囲内のシリカを用いることにより、適切な光沢度に調整できる。シリカの平面視形状及び立体形状は、不定形でもよく、或いは、円形及び球形などの定形でもよいが、平面視形状及び立体形状が不定形のシリカを用いることが好ましい。
前記シリカの平均粒子径は、SEM画像から次のように計測できる。
傷付き防止層53の表面の任意の箇所を、1000倍に拡大して撮像したSEM写真を得て、そのSEM画像の中の任意の100平方μmの中に表出しているシリカの中から、任意の10個を抽出し、それらのシリカの粒径を計測する。シリカが不定形の場合、最大幅と最小幅の平均値を粒子径とする。10個のシリカの粒子径の平均を算出して、前記シリカの平均粒子径とする。シリカの含有率や平均粒子径を前記範囲とすることにより、汗看取り性に優れた床タイルAを構成できる。
【0048】
[タイル本体の周縁部]
タイル本体1の周縁部1aは、角張っていてもよいが、好ましくは面取りされている。
図9及び
図10は、周縁部1aが面取りされている床タイルAの拡大断面図である。
図9において、タイル本体1の周縁部1aは、外側に膨らむ円弧面状に形成されている。
図10において、タイル本体1の周縁部1aは、傾斜面状に形成されている。
面取りの深さHは、例えば、0.05mm~1.0mmであり、好ましくは、0.10mm~0.50mmである。この範囲内であれば、仮に、床タイルAの縁部が上方に僅かに浮き上がり、隣接する床タイルAの隙間である目地に僅かな段差が生じた場合であっても、縁部1aが面取りされているので、競技者が床に滑り込んだりしたときに引っ掛かり難くなる。
なお、面取りの深さHは、
図9及び
図10に示す箇所の上下方向長さをいう。詳しくは、面取りの深さHは、タイル本体1の表面側において傾斜開始点と、タイル本体1の厚み面側において傾斜終了点と、の間の上下方向長さをいう。
【0049】
タイル本体1の周縁部1aが面取りされていることによって、床タイルAを敷設する際、面取りに沿って床タイルAを上方から下方へ押し込むことで、隣接する床タイルAの厚み面が十分に密着し、隣接する床タイルAの隙間を実質的に無くすことができる。隣接する床タイルA間を隙間無く敷設することにより、汗が床タイルA間から床タイルAの裏面側に回り込むことを防止できる。
【0050】
図9及び
図10のタイル本体1は、裏面側から表面側へ順に、裏側基材層31、裏側樹脂層32、中間基材層4、化粧層51、保護層52及び傷付き防止層53を有する。なお、周縁部1aが面取されているタイル本体1の層構成は、
図9及び
図10に示す構成に限られず、上記
図4乃至
図8などの層構成を適宜採用できる。
図9に示すタイル本体1は、例えば、傷付き防止層53を形成する前に、周縁部を押圧して凹ました後、その凹ました周縁部を含む表面全体に傷付き防止層53を形成することによって得られる。
図10に示すタイル本体1は、例えば、傷付き防止層53を形成する前に、周縁部を削り取って傾斜面状とした後、その傾斜面状にした周縁部を含む表面全体に傷付き防止層53を形成することによって得られる。
【0051】
[吸着部]
タイル本体1の裏面には、各図に示すように、吸着部2が設けられている。吸着部2の裏面は、床タイルAの最裏面を構成している。吸着部2が床面に剥離可能な状態で密着することにより、床タイルAが床面に対してズレ難く、また、床タイルAを床面から取り外すことができる。また、吸着部2を有する床タイルAは、敷設時の位置決めが容易であり、仮置きした際にズレが生じた場合でも、そのズレを貼り直しで容易に修正できる。なお、保管・運搬時に、前記吸着部2を保護するなどの目的で、床タイルAの裏面、すなわち吸着部2の裏面に、離型シート(図示せず)が仮添付されていてもよい。
吸着部2は、タイル本体1の裏面にベタ状に設けられていてもよい(図示せず)。図示例では、吸着部2は、タイル本体1の裏面の全体に設けられておらず、タイル本体1の裏面に部分的に設けられている。つまり、床タイルAの裏面は、タイル本体1の裏面が部分的に露出している。部分的に設けられる吸着部2は、後述するように平面視で細長状を成すように設けられていてもよく、或いは、平面視で規則的又は不規則的な無数の点状を成すように設けられていてもよく(図示せず)、或いは、平面視でその他の形状を成すように設けられていてもよい。
なお、吸着部2の形成範囲を判りやすく図示するため、
図2において、便宜上、吸着部2に網掛けを付加している。
図示例では、吸着部2は、タイル本体1の裏面から突設された複数の凸部からなり、例えば、タイル本体1の裏面から鉛直に突出された、平面視細長状の複数の凸部からなる。細長状の各吸着部2は、いずれもタイル本体1の第1方向に延びており、複数の吸着部2が、タイル本体1の第2方向に略平行に並設されている。例えば、前記第1方向は横方向であり、第2方向は縦方向であり、両者は互いに直交する方向である。なお、前記凸部が存在しない部分は、タイル本体1の裏面露出部分である。前記凸部は、吸着部2である。
略平行は、本発明の属する技術分野において許容される誤差範囲を含む意味であり、例えば、厳密な平行±10度の範囲内であることを意味し、好ましくは、±5度の範囲内である。
【0052】
前記凸部の高さは、特に限定されないが、余りに小さいと、床タイルAのズレ防止効果を得られないおそれがあるので、例えば、0.05mm~1mmであり、好ましくは、0.1mm~0.5mmである。なお、凸部の高さは、凸部の基部から凸部の頂点までの鉛直長さである。
前記細長状の凸部の幅は、特に限定されないが、床タイルAの位置ズレを効果的に防止でき、敷設した床タイルAを床面の敷設場所から取り外し易くする観点から、1mm~20mmが好ましく、1.5mm~5mmがより好ましい。なお、前記凸部の平面視形状が帯状で且つその幅が一様でない場合には、前記凸部の幅は、最も大きい箇所における幅に該当する。
隣り合う凸部の間隔は、特に限定されないが、床タイルAの位置ズレを効果的に防止でき、敷設した床タイルAを床面の敷設場所から取り外し易くする観点から、1mm~5mmが好ましく、1mm~3mmがより好ましい。各凸部の間隔は、それぞれ異なっていてもよいし、同一でもよい。均等に床面に対して密着することから、各凸部の間隔は、同じであることが好ましい。
【0053】
細長状の吸着部2が設けられている床タイルAを床面の敷設場所に敷設する際、隣接する床タイルAにおいて各細長状の吸着部2の延びる方向が平行となるように敷設してもよい。或いは、隣接する床タイルAにおいて各細長状の吸着部2の延びる方向が直交するように敷設してもよい。或いは、吸着部2の延びる方向の向きを特に考慮することなく、ランダムに床タイルAを敷設してもよい。
中でも、隣接する床タイルAにおいて各細長状の吸着部2の延びる方向が直交するように敷設することが好ましい。このように敷設して得られた床構造は、平面視で、縦方向に隣接する床タイル間にあっては、互いの細長状の吸着部2が直交方向となっており、横方向に隣接する床タイルAにあっても、互いの細長状の吸着部2が直交方向となっている。このように隣接する床タイル間の吸着部2が直交するように敷設することにより、競技者があらゆる方向に激しい動きをした場合であっても、床タイルが位置ずれし難い床構造を構成できる。
【0054】
吸着部2は、床タイルAの位置ズレを防止できる程度の十分な密着力で床面に吸着しうるものであれば、その形成材料は、特に限定されない。吸着部2の形成材料としては、床面に対して吸着する又は粘着によって吸着するようなものが挙げられる。吸着による吸着部2は、敷設した床タイルAに荷重が加わっているときには床面に対して強く密着するので、床タイルAのズレを防止でき、他方、前記荷重が加わっていないときには床面に対して弱く密着するので、床タイルAを比較的容易に取り外すことができる。前記粘着によって吸着する吸着部2の形成材料としては、ピールアップ性粘着剤などが挙げられる。
床タイルAを取り外した後に、床面の敷設場所に吸着部2の形成材料が残存し難いことから、吸着による吸着部2が好ましい。
前記吸着による吸着部2の形成材料としては、柔軟性を有する発泡樹脂、軟質ゴムなどが挙げられる。
柔軟性を有する発泡樹脂は、その裏面に複数の微細孔を有する多孔質構造である。前記発泡樹脂は、連続気泡構造又は独立気泡構造の何れでもよいが、吸盤機能を十分に有し、高い吸着力を発揮することから、連続気泡構造が好ましい。前記発泡樹脂の材質は特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、アクリル酸エステル、ポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。密着性に優れることから、吸着部2の形成材料として、アクリル樹脂を発泡させた発泡アクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0055】
さらに、前記吸着部2を構成する発泡樹脂は、引き剥がし易さを調整するためにシリコーン樹脂を含むことがあるが、本発明の床タイルAでは、シリコーン樹脂を実質的に含まない発泡樹脂を用いることが好ましい。シリコーン樹脂を実質的に含まない発泡樹脂からなる吸着部2は、特に床面から容易に取り外した後、床面にシリコーン樹脂などの発泡樹脂形成材料が残存し難くなり、床面の敷設場所を確実に原状復帰することができる。すなわち、吸着部2の形成材料としてシリコーン樹脂を実質的に含まない発泡樹脂を用いることによって、敷設時には床面の敷設場所に強固に固定している一方で剥離後に床面の敷設場所を確実に原状復帰することができる、床タイルAを提供できる。
前記実質的にシリコーン樹脂を含まないとは、吸着部2の製造時に不用意に又は不可避的にシリコーン樹脂が混入する場合を許容する意味である。この実質的に含まない場合のシリコーン樹脂の含有量は、吸着部2の全体を100重量%とした場合、3重量%以下であり、好ましくは、1重量%以下である。
発泡樹脂の発泡倍率は、特に限定されないが、床面に対して十分に密着し且つ材料破壊を生じ難くする観点から、1.1倍~6倍が好ましく、1.6倍~2倍がより好ましく、さらに、1.6倍以上2倍未満が特に好ましい。
【0056】
タイル本体1の表面がL値30~80の単一の色彩を呈し且つその光沢度が1~10である上記床タイルAは、汗看取り性に優れている。かかる床タイルAの表面は、その表面に付着した汗を見分け易く、競技中などに床タイルAの表面に付着した汗を確実に拭き取ることができる。
さらに、タイル本体1の表面粗さRzが30μm以上である上記床タイルAは、競技者の足裏が滑り難く、競技に支障を来さない。また、タイル本体1の表面粗さRzが100μm以下である場合には、例えば、バレーボールなどを競技しているときに競技者が床タイルAの表面上に滑り込んだ場合でも、競技者の身体や衣服に過度な摩擦が加わらず、スムーズな滑り込みを期待できる。なお、この表面粗さRzは、表面に照射される光を適度に分散させる効果があるので、タイル本体1(床タイルA)の表面の光沢度を小さくし、汗看取り性を向上させる。
また、上記床タイルAは、周縁部1aが面取りされているので、例えば、競技者の滑り込みなどによって周縁部1aが若干浮き上がった場合であっても、競技者の足裏が引っ掛かることがなく、また、競技者が滑り込んだ際にも擦り傷が生じ難くなる。特に、
図9に示すような円弧面状に周縁部1aが形成されている場合に効果的である。
【0057】
[床タイルの製造方法]
次に、本発明の床タイルAの製造方法について簡単に説明する。
例えば、
図9に示す床タイルAを製造する場合を例に採って説明する。
中間基材層に接合樹脂を付着させることにより、樹脂付き中間基材層を作製する。中間基材層としては、例えばガラスシートを用いることができ、特に、上記のようなガラス不織布又はガラス織布(好ましくはガラス不織布)が用いられる。
また、保護層、化粧層及び裏側樹脂層を準備する。前記保護層、化粧層及び裏側樹脂層の形成方法は、特に限定されず、それらを形成する材料に応じて適宜選択でき、例えば、カレンダー法、溶融押出法、溶液流延法などが挙げられる。
【0058】
一方で、裏側基材層に吸着部を形成し、吸着部付き裏側基材層を作製する。裏側基材層としては、例えばフェルトを用いることができる。
具体的には、例えば、樹脂成分としてアクリル酸エステル共重合体エマルジョンを含み且つ実質的にシリコーン樹脂を含まないエマルジョン溶液に、架橋剤、充填剤、発泡剤、増粘剤、撥水剤などの助剤を適量配合することにより、吸着部の形成材料を調製する。これを、発泡機にて空気を吹き込みながら撹拌して泡立たせることによって発泡させる。得られた発泡形成材料は、気泡を含み、粘性及び粘着性を有し、乾燥後にも微小気泡を有する。このようにして得られた発泡形成材料を、ロータリー式スクリーンコーティング機などを用いて、裏側基材層に塗工する。例えば、コーティング機の下流側に、複数の切欠き部が形成されたドクターブレードを裏側基材層の裏面に当てておく。コーティング機によって発泡形成材料がベタ状に塗工された裏側樹脂層を、所定速度で下流側に搬送し、それが前記ドクターブレードを通過する際に、前記切欠き部以外の箇所に対応する発泡形成材料が掻き取られる。このため、搬送方向に細長く延びる発泡形成材料の凸部が、幅方向に複数列並んだものが裏側基材層に形成される。その後、発泡形成材料を、乾燥機に通し、120℃~200℃で数分程度乾燥させた後、冷却することにより、
図2に示すような吸着部付き裏側基材層が得られる。
【0059】
前述のように準備した、保護層、化粧層、樹脂付き中間基材層、裏側樹脂層及び吸着部付き裏側基材層を表面側からこの順で積層し、それを一対のロール間に通して加熱加圧することにより、各層を一体化して積層体を形成する。
加熱加圧による各層の接合方法は、例えば、ラミネート加工法、カレンダー成形法、連続プレス法などが挙げられる。例えば、ラミネート加工法の場合、加熱温度は、160℃~200℃であり、ロール間の圧力は、20kgf/cm
2~100kgf/cm
2である。
前記積層体の表面に、エンボスローラなどを用いてエンボス加工を行なうことにより、微細な凹凸を形成する。エンボスは、平面視で方向性の無いものが好ましく、例えば、梨地エンボス、石目エンボス、艶消しエンボスが挙げられる。このような方向性の無いエンボスは方向依存性がないため、木目エンボスや流れ模様エンボスなどの方向性のあるエンボスに比べて、競技者がいずれの方向に動いたとしても滑り難く、安定して競技をすることができる。また、微細で方向性の無いエンボスは、その凹凸により照射される光を方向性が無く乱反射させるので、方向依存性のない汗看取り性を有する床タイルAを構成できる。
前記エンボス加工を施した積層体の表面に、ロールコーターなどを用いて、例えば、傷付き防止層の形成材料である電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーを塗工し、電離放射線を照射することにより、最表面に傷付き防止層が形成される。このようにして、
図9に示すように、表面側から順に、傷付き防止層53/保護層52/化粧層51/中間基材層4/裏側樹脂層32/裏側基材層31/吸着部2を有する床タイルが得られる。この時点での床タイルは、床タイルAが連続的に繋がった長尺物である。
この長尺物を、枚葉状に切断し、縁部を面取り加工することにより、所定の平面視形状の本発明の床タイルAが得られる。
【0060】
[床タイルの施工方法]
本発明の床タイルAは、屋内外のスポーツ施設の床面、スポーツ施設以外の屋内外の施設の床面などに敷設して使用される。
スポーツ施設としては、体育館、フィットネスジム、球技場などが挙げられ、特に、雨が当たらない屋内又は屋根付きの体育館、フィットネスジム、球技場などが挙げられる。スポーツ施設以外の施設としては、会議場、博覧会場、展示会場などが挙げられる。また、床タイルAが吸着部2を有する構成の場合、土砂などによって吸着力が低下する可能性があるので、屋内の施設が好ましい。
床タイルAを敷設する床面の種類は、特に限定されず、木質床材面、硬質タイル床材面、樹脂床材面、コンクリート面などが挙げられ、表面を平滑化するために、ニスやプライマーなどが表面にコーティングされている床面が好ましい。特に、床面が平滑性に優れている材質からなる場合、吸着部2によって床タイルAを床面に強固に固定できるので、床面は、木質床材面、硬質タイル床材面、樹脂床材面が好ましい。また、床タイルAは、周囲が壁面部や境界線などで囲われている床面に敷設してもよく、或いは、周囲が実質的に開放されている床面に敷設してもよい。また、前記床タイルAを敷設する床面の平面視形状は、特に限定されず、平面視略矩形状のほか、平面視略台形状などの略四角形状や略六角形状などの平面視略多角形状、平面視略円形状、平面視略楕円形状などの任意の形状が挙げられる。
【0061】
本発明の床タイルの施工方法は、上記平面視略矩形状の床タイルを接着剤を用いることなく床面に敷設する際の、床タイルの敷設手順に関する。前記接着剤を用いることなく床タイルを床面に敷設するとは、吸着、磁力などによって床タイルを床面に固定することが挙げられる。本明細書において、吸着は、粘着をも含む概念である。
通常、床タイルを敷設する際には、決まった特定の施工手順が存在せず、施工熟練者が床タイルを床面の敷設場所の略中心から外方に向けて貼りズレを調整しながら敷き詰めていくことが多い。しかし、敷き詰めていく途中で、床タイルの貼りズレが重畳していき、比較的大きな貼りズレが生じた場合がある。貼りズレが大きくなり過ぎると、所定範囲に床タイルを敷設できなくなるので、そのズレ相当分を所定範囲に収まるように切断して当該床タイルを敷設していた。
この点、本発明の方法は、横目印線及び縦目印線に沿って基準タイル並びに基準行及び基準列を形成するので、貼りズレの重畳を抑制できる。横目印線及び縦目印線に沿って床タイルを敷設すること、つまり、基準行及び基準列を形成することは、施工熟練者でない素人でも貼りズレを最小限にして簡単に実施できる。前記基準行又は/及び基準列を最初に形成することにより、この基準行又は/及び基準列に沿って、敷設場所の未敷設部に1行又は1列ずつ床タイルを直線状に敷設でき、これが、連続して次の行又は列を敷設する際の明瞭な基準となる。このため、床タイルの貼りズレが生じ難く、床タイルを所定範囲に収まるように切断して調整する必要がなく、床タイルを綺麗に敷設できる。このように、本発明の方法実施後に得られる床構造は、各床タイルの目地が横方向及び縦方向に直線状に延び、外観も良好である。従って、かかる本発明の方法によれば、施工熟練者でなくても複数の床タイルを床面の敷設場所に比較的短時間で且つ綺麗に敷設できる。なお、本明細書の施工熟練者とは、プラスチック床施工職人(いわゆる床施工職人)をいう。
加えて、本発明の接着剤を用いない方法によれば、スポーツ競技などのイベントが終了した後、床タイルを引き剥がして再利用できる。特に、床タイルをカットすることなく敷設できるので、引き剥がした床タイルの全てを再利用して他の敷設場所等に敷設することが可能となる。従って、施工時の利便性が高いのみならず、経済的にも、資源保護や環境保護の観点でも優れている。
なお、「行」は、横方向に一直線状に並んだ複数の床タイルからなる集合を指し、「列」は、縦方向に一直線状に並んだ複数の床タイルからなる集合を指す。
床タイルの敷設は、作業者1人で行なってもよく、複数人で行なってもよい。本発明の施工方法によれば、複数人で施工しても床タイルの貼りズレを防止できるので、複数人で施工することにより、短時間で且つ綺麗に床タイルを床面の敷設場所に敷設できる。
【0062】
本発明の施工方法は、施工対象である床面の敷設場所を、平面視で十字状に延在する横目印線及び縦目印線によって第1領域乃至第4領域に区画する区画工程、前記横目印線及び縦目印線に沿う1つの床タイルを敷設する基準タイル敷設工程(この最初に敷設する床タイルを「基準タイル」という)、前記横目印線及び縦目印線に沿い且つ前記基準タイルの横方向及び縦方向に順に床タイルを敷設し、横方向に並んだ複数の床タイルからなる行(この行を「基準行」という)及び縦方向に並んだ複数の床タイルからなる列(この列を「基準列」という)を形成する基準行形成工程及び基準列形成工程、を有する。
基準行及び基準列を形成した後、次に敷設予定の床タイルを未敷設部に敷設する。未敷設部は、敷設場所のうち、基準行及び基準列で囲われた範囲であって床タイルを未だ敷設していない残部をいう。次に敷設予定の床タイルの1つの角を挟んだ横辺及び縦辺を、既に敷設した床タイルの集合物の横辺及び縦辺に隣接させながら、前記未敷設部に次の床タイルを順に敷設していく。好ましくは、前記床タイルの1つの角を挟んだ横辺及び縦辺を既に敷設した床タイルの集合物の横辺及び縦辺に隣接させながら、前記床タイルを横方向に又は縦方向に直線状に順次敷設し、これを連続的に行なっていく。
本発明の1つの手順(以下、第1方法という場合がある)は、前記基準行形成工程及び基準列形成工程の後、横方向に床タイルを複数敷設していくことを特徴とし、もう1つの手順(以下、第2方法という場合がある)は、前記基準行形成工程及び基準列形成工程の後、横方向に床タイルを複数敷設し、次に、縦方向に床タイルを複数敷設し、これを交互に繰り返すことを特徴とする。
以下、具体的に説明する。
【0063】
[第1の施工方法]
<区画工程>
区画工程は、横方向に延びる横目印線と、前記横目印線に直交し且つ縦方向に延びる縦目印線と、を床面の敷設場所に表示する工程である。前記横目印線及び縦目印線によって、前記床面の敷設場所が第1領域乃至第4領域に区画される。
横目印線及び縦目印線は、いずれも直線であり、互いに直交する。横目印線及び縦目印線は、作業者の視覚により識別できるように表示すればよい。横目印線及び縦目印線は、それぞれ独立して、チョーク、墨、インキなどを用いて床面の敷設場所に直線を引くこと、色付きテープを直線状に床面の敷設場所に貼り付けることなどによって形成できる。前記墨及びインキは、床面から除去可能なものが好ましく、空気、湿気又は水で消えるものがより好ましい。前記横目印線8Y及び縦目印線8Tは、例えば、チョークリール(チョークライン)、墨壺などを線引き具を用いることにより、容易に且つ確実に直線状に表示できる。
図11は、横目印線8Y及び縦目印線8Tを床面の敷設場所9に表した状態を示す平面図である。
敷設場所9と床面は、同一である場合もあれば、敷設場所9が床面の一部である場合もある。つまり、敷設場所9は、床面のうち、本発明の床タイルを敷設しようとする予定場所であり、各種施設などの床面の全体又はその床面の一部である。例えば、バレーボールコートの場合、敷設場所は、サイドラインとエンドラインに囲まれたコート、或いは、前記コート及びコート外側のフリーゾーン、或いは、前記コート、フリーゾーン及びその他の領域を含む場所などが挙げられる。
施工方法に示す各図では、便宜上、敷設場所9を4つの直線9a,9b,9c,9dで囲っており、従って、概念上、前記4つの直線9a,9b,9c,9dは、敷設場所の外縁を表していると言える。なお、敷設場所9は、4つの直線で囲われた平面視略矩形状に限られず、例えば、平面視略円形状、略楕円形状、その他任意の平面視形状であってもよい。
上述のように敷設場所9は、床面の全体又はそのうちの一部の所望の範囲であるので、実際に施工する床面に、敷設場所9の外縁を表す目印的なものが存在する場合もあれば存在しない場合もある。前記敷設場所9の外縁を表す目印的なものとしては、屋内外施設の壁面部、仕切り柵、境界線などが挙げられる。
【0064】
横目印線8Yと縦目印線8Tとは、交点Oにおいて90度で交差し、敷設場所9の外縁9a,9b,9c,9d又はその外縁近傍にまで直線状に延在されている。横目印線8Y及び縦目印線8Tは、それぞれ独立して、実線でもよく、破線でもよく、一点鎖線などであってもよい。図示例では、便宜上、横目印線8Y及び縦目印線8Tを破線で表している。
また、図示例の敷設場所9は、平面視略矩形状であり、便宜上、敷設場所の外縁9a,9b,9c,9dに斜線を付している。
【0065】
横目印線8Yと縦目印線8Tは、敷設場所9内において十字を成すように表示されていればよい。図示例では、横目印線8Yは、敷設場所9の縦方向の概ね中点付近において横方向に延びて表示され、縦目印線8Tも同様に、敷設場所9の横方向の概ね中点付近において横方向に延びて表示されている。なお、横目印線8Y及び縦目印線8Tを敷設場所9の概ね中点付近に表示すると、交点Oは、敷設場所9の略中心、例えば敷設場所9の平面視形状の重心に位置する。敷設場所9の寸法平面図を持っている場合には、それを参考にして1つの外縁、例えば外縁9bから一定長さを計測して少なくとも2点を決め、その2点を通る直線を横方向に引くことにより、横目印線8Yを表示でき、同様に、もう1つの外縁、例えば外縁9aから一定長さを計測して少なくとも2点を決め、その2点を通る直線を縦方向に引くことにより、縦目印線8Tを表示できる。また、寸法平面図が存在しない場合には、敷設場所9の縦横の長さをそれぞれ実測し、それを参考にしつつ前記と同様にして横目印線8Y及び縦目印線8Tを表示できる。敷設場所9の縦横の長さを実測しないで、目測で概ね中点を定めて横目印線8Y及び縦目印線8Tを表示してもよい。なお、敷設場所9が平面視略矩形状でない場合には、前述の目測で概ね中点を定めて横目印線8Y及び縦目印線8Tを表示すればよい。なお、横目印線8Y及び縦目印線8Tは、敷設場所9の横方向の中点又はその付近及び縦目印線8Tの中点又はその付近に表示しなければならないわけではない。第1領域乃至第4領域91,92,93,94へ施工する際に、各領域に略均等枚数の床タイルを敷設すればよいことから、横目印線8Y及び縦目印線8Tは、敷設場所9の横方向の中点又はその付近及び縦目印線8Tの中点又はその付近に表示することが好ましい。
【0066】
横目印線8Y及び縦目印線8Tを表示することにより、その目印線8Y,8Tにて敷設場所9が4つの領域である第1領域乃至第4領域91,92,93,94に区画される。
なお、第1領域乃至第4領域の「第1、第2、第3、第4」は、前記4つの領域を用語上区別するために付したものであり、領域の順序、優劣などの特別な意味を持たない。
【0067】
<基準タイル敷設工程>
基準タイル敷設工程は、第1領域91を区画する横目印線8Y及び縦目印線8Tに、横辺及び縦辺をそれぞれ沿わせて1つの床タイルを敷設場所9に敷設する工程である。この最初に敷設した1つの床タイルが、基準タイルBとなる。
基準タイルBは、全ての床タイルを敷設する際の基準になるので、正確な位置に敷設する必要がある。
具体的には、十字状にクロスして延びる横目印線8Y及び縦目印線8Tに関して、横目印線8Yはその交点Oを基準に一方側及び反対側(紙面左側及び紙面右側)に延び、縦目印線8Tはその交点Oを基準に一方側及び反対側(紙面上側及び紙面下側)に延びる(
図11参照)。第1領域91を区画する横目印線8Y及び縦目印線8Tは、交点Oを基準にすると、その交点Oよりも一方側の横目印線8Y及び一方側の縦目印線8Tである。
図12を参照して、1つの床タイルの横辺を前記一方側の横目印線8Yに沿わせ且つ前記床タイルの縦辺を前記一方側の縦目印線8Tに沿わせて、床タイルを敷設場所の第1領域91に敷設する。なお、横目印線8Y及び縦目印線8Tに沿わせるとは、床タイルの辺をその線上に重ねること又は床タイルの辺をその線の近傍であってその線と平行に配置することをいう。床タイルの横辺及び縦辺を横目印線8Y及び縦目印線8Tに同時に沿わせると、前記床タイルの1つの角が交点Oに一致するようになる。また、床タイルの裏面には吸着部2が設けられているので、敷設し終わった床タイルは、前記吸着部2を介して敷設場所9に固定される。
このようにして最初の1つの床タイルである基準タイルBを敷設場所9の第1領域91に敷設する。
【0068】
<基準行形成工程及び基準列形成工程>
基準行形成工程は、前記横目印線8Yに沿わせ且つ前記基準タイルBの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、横方向に並んだ複数の床タイルからなる基準行を形成する工程である。
基準列形成工程は、前記縦目印線8Tに沿わせ且つ前記基準タイルBの縦方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、縦方向に並んだ複数の床タイルからなる基準列を形成する工程である。
基準行形成工程及び基準列形成工程は、いずれか一方を先に行ない且つ他方を後で行なってもよく、複数人で作業する場合には同時進行的に行なってもよい。
【0069】
図12を参照して、前記基準タイルBを敷設すると、基準タイルBの縦辺と横目印線8Yによって直角線が表われている。
基準行形成工程に関して、
図13を参照して、基準行GSを形成するための1番目の床タイルGS-1の横辺を前記横目印線8Yに沿わせ且つその床タイルGS-1の縦辺を基準タイルBの縦辺に隣接させ、当該床タイルGS-1を前記基準タイルBの横方向に敷設する。つまり、1番目の床タイルの角を挟んだ横辺及び縦辺を前記直角線に沿わせて敷設場所の第1領域91に床タイルGS-1を敷設する。なお、本明細書において「隣接」は、床タイルの辺同士を、重ねることなく密着させることをいう。続いて、基準行GSを形成するための2番目の床タイルGS-2の横辺を前記横目印線8Yに沿わせ且つその床タイルGS-2の縦辺を敷設済みの床タイルGS-1の縦辺に隣接させ、当該床タイルGS-2を敷設済みの床タイルGS-1の横方向に敷設する。以後同様にして、基準行GSを形成するための3番目以降の床タイルGS-3を直前に敷設済みの床タイルGS-2の横方向に順に敷設していくことにより、基準タイルBの横方向に並んだ複数の床タイルからなる基準行GSが形成される。かかる基準行GSは、横目印線8Yと平行に延在する。
施工方法の説明において、基準行GSを形成する床タイルに符号「GS-数字」を付しており、前記ハイフォンの右側の数字は、その行を形成する際の床タイルの敷設順序を表している。
【0070】
基準行GSは、第1領域91を区画する横目印線8Y、すなわち交点Oを基準にして一方側に延びる横目印線8Y)のみに沿って形成してもよく、横目印線8Yの略全体、すなわち交点Oを基準にして一方側及び反対側に延びる横目印線8Yに沿って形成してもよい。
図13では、横目印線8Yの略全体に沿って床タイルを順に敷設した場合を例示している。従って、横目印線8Yの略全体に亘って横方向に並んだ複数の床タイルからなる基準行GSが形成されている。この場合、上述のような手順で第1領域91に基準行GSを形成した後、第2領域92に同様にして床タイルGS-7、次に床タイルGS-8と順に敷設していくことにより、第2領域92において基準タイルBの横方向に並んだ複数の床タイルからなる基準行GSが形成される。なお、第1領域91及び第2領域92のそれぞれに基準行GSを形成する場合、第1領域91の基準行の形成と第2領域92の基準行の形成を同時進行的に行なってもよい。これによって、全体の敷設作業を短時間化することができる。
【0071】
基準列形成工程に関して、
図13を参照して、基準列RSを形成するための1番目の床タイルRS-1の縦辺を前記縦目印線8Tに沿わせ且つその床タイルRS-1の横辺を基準タイルBの横辺に隣接させ、当該床タイルRS-1を前記基準タイルBの縦方向に敷設する。続いて、基準列RSを形成するための2番目の床タイルRS-2の縦辺を前記縦目印線8Tに沿わせ且つその床タイルRS-2の横辺を前記敷設済みの1番目の床タイルRS-1の横辺に隣接させ、当該床タイルRS-2を前記敷設済みの床タイルRS-1の縦方向に敷設する。以後同様にして、基準列RSを形成するための3番目以降の床タイルRS-3を直前に敷設済みの床タイルRS-2の縦方向に順に敷設していくことにより、基準タイルBの縦方向に並んだ複数の床タイルからなる基準列RSが形成される。形成された基準列RSは、縦目印線8Tと平行に延在する。
上記と同様に、基準列RSを形成する床タイルに符号「RS-数字」を付し、数字は、敷設順序を表している。
【0072】
基準列RSは、第1領域91を区画する縦目印線8T、すなわち交点Oを基準にして一方側に延びる縦目印線8Tのみに沿って形成してもよく、縦目印線8Tの略全体、すなわち交点Oを基準にして一方側及び反対側に延びる縦目印線8Tに沿って形成してもよい。
図13では、縦目印線8Tの略全体に沿って床タイルを順に敷設した場合を例示している。従って、縦目印線8Tの略全体に亘って縦方向に並んだ複数の床タイルからなる基準列RSが形成されている。この場合、上述のような手順で第1領域91に基準列RSを形成した後、第4領域94に同様にして床タイルRS-6、次に床タイルRS-7と順に敷設していくことにより、第4領域94において基準タイルBの縦方向に並んだ複数の床タイルからなる基準列RSが形成される。なお、第1領域91及び第4領域94のそれぞれに基準列RSを形成する場合、第1領域91の基準列の形成と第4領域94の基準列の形成を同時進行的に行なってもよい。
基準行GS及び基準列RSを形成する床タイルも、吸着部2を介して敷設場所9に固定される。
基準行GSは、横目印線8Yに沿って並んでいるので、基準行GSを形成する各床タイルの横辺を結んだ線は、横目印線8Yと平行な直線となる。同様に、基準列RSを形成する各床タイルの縦辺を結んだ線は、縦目印線8Tと平行な直線となる。つまり、横目印線8Y及び縦目印線8Tに沿って順に床タイルを敷設していくことにより、隣接する床タイルが横又は縦に位置ズレすることなく、直進性を有した基準行GS及び基準列RSを形成できる。
そして、上記のように横目印線8Y及び縦目印線8Tの略全体に亘って床タイルを敷設した場合には、
図13に示すように、前記敷設場所に、平面視で十字状を成す基準行GS及び基準列RSが形成される。
【0073】
<第1方法の第1敷設工程>
第1方法における第1敷設工程は、前記基準行GS及び基準列RSを形成した後、前記基準行GSを形成する床タイル及び前記基準列RSを形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記基準行GSの床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第1敷設行を形成する工程である。
第1敷設工程により、基準行GSに隣接した最初の行を形成できる。
図14を参照して、第1敷設行G1を形成するための1番目の床タイルG1-1の横辺を基準行GSを形成する床タイルGS-1の横辺に隣接させ且つその床タイルG1-1の縦辺を基準列RSを形成する床タイルRS-1の縦辺に隣接させて第1領域91の未敷設部に敷設する。つまり、1番目の床タイルG1-1の角を挟んだ横辺及び縦辺を、基準行GSの横辺と基準列RSの縦辺によって形成される直角線に沿わせて床タイルG1-1を第1領域91の未敷設部に敷設する。続いて、第1敷設行G1を形成するための2番目の床タイルG1-2の横辺を基準行GSを形成する床タイルGS-2の横辺に隣接させ且つその床タイルG1-2の縦辺を前記敷設済みの床タイルG1-1の縦辺に隣接させ、当該床タイルG1-2を前記敷設済みの床タイルG1-1の横方向に敷設する。以後同様にして、第1敷設行G1を形成するための3番目以降の床タイルG1-3を直前に敷設済みの床タイルG1-2の横方向に順に敷設していくことにより、前記基準行GSの床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第1敷設行G1が形成される。形成された第1敷設行G1は、基準行GSと平行に延在する。
上記と同様に、第1敷設行G1を形成する床タイルに符号「G1-数字」を付し、数字は、敷設順序を表している。
【0074】
<第1方法の第2敷設工程>
第1方法における第2敷設工程は、前記第1敷設行G1を形成する床タイル及び前記基準列RSを形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記第1敷設行G1の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第2敷設行を形成する工程である。
図15を参照して、第2敷設行G2を形成するための1番目の床タイルG2-1の横辺を第1敷設行G1を形成する床タイルG1-1の横辺に隣接させ且つその床タイルG2-1の縦辺を基準列RSを形成する床タイルRS-2の縦辺に隣接させて第1領域91の未敷設部に敷設する。続いて、第2敷設行G2を形成するための2番目の床タイルG2-2の横辺を第1敷設行G1を形成する床タイルG1-2の横辺に隣接させ且つその床タイルG2-2の縦辺を前記敷設済みの床タイルG2-1の縦辺に隣接させ、当該床タイルG2-2を前記敷設済みの床タイルG2-1の横方向に敷設する。以後同様にして、第2敷設行G2を形成するための3番目以降の床タイルG2-3を直前に敷設済みの床タイルG2-2の横方向に順に敷設していくことにより、前記第1敷設行G1の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第2敷設行G2が形成される。形成された第2敷設行G2は、第1敷設行G1と平行に延在する。
上記と同様に、第2敷設行G2を形成する床タイルに符号「G2-数字」を付し、数字は、敷設順序を表している。
【0075】
<第1方法の繰り返し工程>
第1方法における繰り返し工程は、前記第2敷設工程と同様にして、横方向に床タイルを敷設していく工程である。
図16を参照して、第2敷設工程に準じて、床タイルG3-1乃至G3-6を順に横方向に敷設していくことにより、前記第2敷設行G2の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第3敷設行G3が形成される。以後、同様にして横方向に床タイルを敷設し、第4敷設行G4、第5敷設行G5、…を形成していくことにより、第1領域91の全体に床タイルを敷設できる。
上記と同様に、第3敷設行G3、第4敷設行G4、…を形成する床タイルに符号「G3,G4,…-数字」を付し、数字は、それぞれの敷設順序を表している。
【0076】
なお、
図16に示すように、敷設場所9の外縁9a,9bに至る床タイルGS-6,G1-6,G2-6,G3-6,G4-6,G5-1乃至6については、その縦辺又は横辺が外縁9a,9bにピッタリと一致する場合もあれば、外縁9a,9bを越える場合もある(図示せず)。外縁付近に敷設する床タイルが敷設場所9の外縁を越える場合には、それらの床タイルを敷設しない、或いは、外縁を越えてそれらの床タイルを敷設してもよく、或いは、外縁にピッタリと一致するようにそれらの床タイルを裁断してもよい。床面を再利用できることから、床タイルは裁断しないことが好ましい。例えば、敷設場所9が壁面部で囲われている敷設場所9、例えば施設の壁面部が敷設場所9の外縁を構成している場合などについては、壁面部を越える床タイルは敷設しない又は壁面部を越える床タイルは壁面部に立て掛けておけばよい。
【0077】
また、上記第1敷設工程を完了した後に第2敷設工程を行なってもよく、或いは、複数人で作業する場合には第1敷設工程を途中まで行なった後に第2敷設工程を開始してもよい。例えば、第1敷設工程において、第1敷設行G1を形成するための床タイルG1-1,…を2枚以上、好ましくは3枚以上、横方向に敷設することにより、複数の床タイルからなる第1敷設行G1をある程度まで形成した時点で、第2敷設工程を開始してもよい。繰り返し工程についても同様に、先行する敷設工程が完了した後に次の敷設工程を行なってもよく、或いは、複数人で作業する場合には先行する敷設工程を途中まで行なった後に次の敷設工程を開始してもよい。複数人で各敷設工程を行なうことにより、短時間で且つ綺麗に床タイルを敷設場所9に敷設できる。
本発明の第1方法における各敷設工程の各敷設行は、横方向に並んだ複数、すなわち2以上の床タイルからなるものであり、敷設場所9の外縁に至るまで床タイルが並んだものに限定されるわけではない。
【0078】
<残る領域の敷設工程>
第2領域乃至第4領域92,93,94についても、上記第1敷設工程、第2敷設工程及び繰り返し工程を行なうことにより、敷設場所9の略全体に床タイルを敷き詰めることができる。
上述のように、基準行GS及び基準列RSを横目印線8Yの略全体及び縦目印線8Tの略全体に沿って形成している場合には、基準行及び基準列形成工程を省略して、第2領域乃至第4領域92,93,94に上記第1敷設工程、第2敷設工程及び繰り返し工程を行なえばよい。基準行GS及び基準列RSを第1領域91を区画する横目印線8Y及び縦目印線8Tのみに形成している場合には、第2領域92に基準行GSを形成し且つ第4領域94に基準列RSを形成した後に、第2領域乃至第4領域92,93,94に上記第1敷設工程などを行なう。第2領域乃至第4領域92,93,94の施工順序は特に限定されず、どの領域から行なってもよく、或いは、第1領域91の施工と同時進行的に第2領域乃至第4領域92,93,94から選ばれる少なくとも1つの領域の施工を行なってもよい。
なお、第2領域乃至第4領域92,93,94の施工に際して、各図の紙面左右方向を横方向として上記第1敷設工程、第2敷設工程及び繰り返し工程を行なってもよく、或いは、各図の紙面上下方向を横方向として上記第1敷設工程、第2敷設工程及び繰り返し工程を行なってもよい。上述のように、本明細書において、「横方向」は、1つの方向で、「縦方向」は、その方向に直交する方向である。
【0079】
第1方法は、床タイルを横方向又は縦方向に直線状に敷設するので、敷設作業がシンプルである。よって、熟練者のみならず、素人の作業者であっても貼りズレすることなく容易に床タイルを綺麗に敷設できる。また、第1方法はシンプルであるため、複数人の作業者によって敷設作業を行なう際も、その作業管理が容易である。
【0080】
[第2の施工方法]
第2方法においても、区画工程、基準タイル敷設工程、基準行形成工程及び基準列形成工程を行なう。これらの工程は、上記第1方法と同様であり、上述の[第1の施工方法]の<区画工程>、<基準タイル敷設工程>、<基準行形成工程及び基準列形成工程>の欄を参照するものとする。
【0081】
<第2方法の第1敷設工程>
第2方法における第1敷設工程は、前記基準行GSを形成する床タイル及び前記基準列RSを形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記基準行GSに沿わせ且つ前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記基準行GSに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第1敷設行を形成する工程である。
第2の施工方法における第1敷設工程は、上記第1の施工方法の第1敷設工程と同様であり、上述の[第1の施工方法]<第1方法の第1敷設工程>の欄を参照するものとする。
【0082】
<第2方法の第2敷設工程>
第2方法における第2敷設工程は、前記第1敷設行G1を形成する床タイル及び前記基準列RSを形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記基準列RSの床タイルに隣接し且つ縦方向に並んだ複数の床タイルからなる第2敷設列R2を形成する工程である。
第2敷設工程により、基準列RSに隣接した最初の列を形成できる。
図17を参照して、第2敷設列R2を形成するための1番目の床タイルR2-1の横辺を第1敷設行G1を形成する床タイルの横辺に隣接させ且つその床タイルR2-1の縦辺を基準列RSを形成する床タイルRS-2の縦辺に隣接させて敷設場所の第1領域に敷設する。つまり、1番目の床タイルR2-1の角を挟んだ横辺及び縦辺を、第1敷設行G1の横辺と基準列RSの縦辺によって形成される直角線に沿わせて床タイルR2-1を敷設場所の第1領域に敷設する。続いて、第2敷設列R2を形成するための2番目の床タイルR2-2の横辺を前記敷設済みの床タイルR2-1の横辺に隣接させ且つその床タイルR2-2の縦辺を前記基準列RSを形成する床タイルRS-3の縦辺に隣接させ、当該床タイルR2-2を前記敷設済みの床タイルR2-1の縦方向に敷設する。以後同様にして、第2敷設列R2を形成するための3番目以降の床タイルR2-3を直前に敷設済みの床タイルR2-2の縦方向に順に敷設していくことにより、前記基準列RSの床タイルに隣接し且つ縦方向に並んだ複数の床タイルからなる第2敷設列R2が形成される。形成された第2敷設列R2は、基準列RSと平行に延在する。
第2敷設列R2を形成する床タイルに符号「R2-数字」を付し、数字は、敷設順序を表している。
【0083】
<第2方法の第3敷設工程>
第2方法における第3敷設工程は、前記第1敷設行G1を形成する床タイル及び前記第2敷設列R2を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの横方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記第1敷設行G1の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第3敷設行を形成する工程である。
図18を参照して、第3敷設行G3を形成するための1番目の床タイルG3-1の横辺を第1敷設行G1を形成する床タイルG1-2の横辺に隣接させ且つその床タイルG3-1の縦辺を第2敷設列R2を形成する床タイルR2-1の縦辺に隣接させて第1領域に敷設する。続いて、第3敷設行G3を形成するための2番目の床タイルG3-2の横辺を第1敷設行G1を形成する床タイルG1-3の横辺に隣接させ且つその床タイルの縦辺を前記敷設済みの床タイルG3-1の縦辺に隣接させ、当該床タイルG3-2を前記1番目の床タイルの横方向に敷設する。以後同様にして、第3敷設行G3を形成するための3番目以降G3-3の床タイルを直前に敷設済みの床タイルG3-2の横方向に順に敷設していくことにより、前記第1敷設行G1の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第3敷設行G3が形成される。形成された第3敷設行G3は、第1敷設行G1と平行に延在する。
第3敷設行G3を形成する床タイルに符号「G3-数字」を付し、数字は、敷設順序を表している。
【0084】
<第2方法の第4敷設工程>
第2方法における第4敷設工程は、前記第3敷設行G3を形成する床タイル及び前記第2敷設列R2を形成する床タイルの何れにも隣接させて1番目の床タイルを敷設した後、前記1番目の床タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを順に敷設することにより、前記第2敷設列R2の床タイルに隣接し且つ縦方向に並んだ複数の床タイルからなる第4敷設列を形成する工程である。
図19を参照して、第4敷設列R4を形成するための1番目の床タイルR4-1の横辺を第3敷設行G3を形成する床タイルG3-1の横辺に隣接させ且つその床タイルR4-1の縦辺を第2敷設列R2を形成する床タイルR2-2の縦辺に隣接させて第1領域に敷設する。続いて、第4敷設列R4を形成するための2番目の床タイルR4-2の横辺を前記敷設済みの床タイルR4-1の横辺に隣接させ且つその床タイルR4-2の縦辺を前記第2敷設列R2を形成する床タイルR2-3の縦辺に隣接させ、当該床タイルR4-2を敷設済みの床タイルR4-1の縦方向に敷設する。以後同様にして、第4敷設列R4を形成するための3番目以降の床タイルR4-3を直前に敷設済みの床タイルR4-2の縦方向に順に敷設していくことにより、前記第2基準列RSの床タイルに隣接し且つ縦方向に並んだ複数の床タイルからなる第4敷設列R4が形成される。形成された第4敷設列R4は、第2敷設列R2と平行に延在する。
第4敷設列R4を形成する床タイルに符号「R4-数字」を付し、数字は、敷設順序を表している。
【0085】
<第2方法の繰り返し工程>
第2方法における繰り返し工程は、前記第3敷設工程と第4敷設工程を繰り返す工程である。
第3敷設工程に準じて、床タイルを順に横方向に敷設していくことにより、前記第3敷設行G3の床タイルに隣接し且つ横方向に並んだ複数の床タイルからなる第5敷設行が形成される。次に、第4敷設工程に準じて、床タイルを順に縦方向に敷設していくことにより、前記第4敷設列R4の床タイルに隣接し且つ縦方向に並んだ複数の床タイルからなる第6敷設列が形成される。以後、同様にして横方向に床タイルを敷設し且つ次に縦方向に床タイルを敷設することを交互に繰り返し、第7敷設行、第8敷設列、第9敷設行、第10敷設列…を順に形成していくことにより、第1領域に床タイルを敷設できる。
【0086】
なお、第2方法において、外縁9a,9bに至る床タイルについては、第1方法と同様に、外縁9a,9bにピッタリと一致する場合もあり、また、外縁9a,9bを越える場合もある。後者の場合には、第1方法と同様に、それらの床タイルを敷設しない、或いは、外縁を越えてそれらの床タイルを敷設してもよく、或いは、外縁にピッタリと一致するようにそれらの床タイルを裁断してもよい。
【0087】
また、第2方法においても、第1方法と同様に、上記第1敷設工程を完了した後に第2敷設工程を行なってもよく、或いは、複数人で作業する場合には第1敷設工程を途中まで行なった後に第2敷設工程を開始してもよい。第2方法の繰り返し工程についても同様に、先行する敷設工程が完了した後に次の敷設工程を行なってもよく、或いは、複数人で作業する場合には先行する敷設工程を途中まで行なった後に次の敷設工程を開始してもよい。複数人で各敷設工程を行なうことにより、短時間で且つ綺麗に床タイルを床面の敷設場所に敷設できる。
本発明の第2方法における各敷設工程の各敷設行及び各敷設列は、横方向及び縦方向に並んだ複数、すなわち2以上の床タイルからなるものであり、敷設場所9の外縁にまで床タイルが並んだものに限定されるわけではない。
【0088】
<残る領域の敷設工程>
第2領域乃至第4領域についても、上記第1乃至第4敷設工程及び繰り返し工程を行なうことにより、敷設場所の略全体に床タイルを敷き詰めることができる。
第1方法で説明したように、基準行GS及び基準列RSを横目印線の略全体及び縦目印線の略全体に沿って形成している場合には、基準行GS及び基準列RS形成工程を省略し、そうでない場合には第2領域92に基準行GSを形成し且つ第4領域94に基準列RSを形成した後に、第2領域乃至第4領域の施工を行なう。また、第2領域乃至第4領域の施工に際して、各図の紙面左右方向を横方向として上記第1乃至第4敷設工程及び繰り返し工程を行なってもよく、或いは、各図の紙面上下方向を横方向として上記第1乃至第4敷設工程及び繰り返し工程を行なってもよい。
【0089】
第2方法は、床タイルを横方向に直線状に敷設し、次に縦方向に直線状に敷設するので、複数人で作業することも可能である。例えば、少なくとも1人が横方向に床タイルを敷設し、その横方向敷設作業の途中から少なくとももう1人が縦方向に床タイルを敷設することも可能である。これによって、より短時間で1つの領域の敷設作業を完了させることができる。
【0090】
[その他の施工方法]
基準行形成工程及び基準列形成工程において、
図13に示すような平面視で十字状を成す基準行GS及び基準列RSを形成した場合には、2つ以上の領域の未敷設部に同時進行的に床タイルを敷設することもできる。
具体的には、敷設場所9に十字状の基準行GS及び基準列RSを形成した後、第1領域乃至第4領域91乃至94から任意に2つ以上の領域を選び、それらの領域の未敷設部に、同時並行的に床タイルを敷設する。この場合、4つの領域91乃至94を選択してもよい。例えば、第1領域91と第2領域92を選択した場合、第1領域91の未敷設部に、床タイルの1つの角を挟んだ横辺及び縦辺を既に敷設した床タイルの集合物の横辺及び縦辺に隣接させながら、前記床タイルを横方向に又は縦方向に直線状に順次敷設し、これと同時進行的に、第2領域92の未敷設部に、床タイルの1つの角を挟んだ横辺及び縦辺を既に敷設した床タイルの集合物の横辺及び縦辺に隣接させながら、前記床タイルを横方向に又は縦方向に直線状に順次敷設する。
例えば、選択した複数の領域の未敷設部に、上記第1方法又は第2方法のいずれかで同時進行的に床タイルを敷設する。この場合、選択した全ての領域の未敷設部に対する床タイルの敷設を同じ方法、例えば第1方法で実施してもよく、或いは、選択した領域のうち1つ又は2つ以上の領域に対する床タイルの敷設を第1方法で実施し且つ選択した領域のうち残部の領域に対する床タイルの敷設を第2方法で実施してもよい。
このように2つ以上の領域に対する床タイルの敷設を同時進行的に実施することにより、より短時間で敷設作業を完了できる。特に、敷設場所が比較的大面積である場合でも、施工熟練者及びそうでない素人の作業者であっても、より短時間で敷設作業を完了できる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0092】
[実施例]
図4に示すような層構成であってタイル本体の裏面に吸着部が設けられている柔軟な床タイルを多数枚準備した。前記吸着部は、柔軟なアクリル系発泡樹脂からなる。この床タイルの平面視形状は、縦辺×横辺=900mm×900mmの正方形状で、その厚みは、2mmで、1枚当たりの重量は、約1.9kgであった。
床タイルを敷設する床面は、既設の体育館の木質床材面(いわゆるフローリング)であり、敷設場所は、前記体育館の中の縦×横=19.8m×32.4mの平面視長方形状の範囲とした。
3名の素人の作業者が、
図21に示すように、敷設場所の略中心に交点が一致するように、敷設場所の縦方向中点及び横方向中点に横目印線及び縦目印線を引き、敷設場所を第1乃至第4領域に区画する十字状の目印線を表示した。素人は施工熟練者でない一般人であった。なお、横目印線及び縦目印線は、チョークリールを用いて敷設場所に表した。
次に、同素人の作業者が、第1領域の未敷設部に、交点を含む横目印線及び縦目印線に横辺及び縦辺を沿わせて最初の床タイルを敷設し、これを基準タイルとした(
図22参照)。横目印線に沿わせ且つ基準タイルの横方向に隣接させながら床タイルを第1領域及び第2領域に順に直線状に敷設することによって基準行を形成し、縦目印線に沿わせ且つ基準タイルの縦方向に隣接させながら床タイルを第1領域及び第4領域に順に直線状に敷設することによって基準列を形成した。このようにして平面視で十字状を成した基準行と基準列を形成した。
図22において、敷設された基準タイルに網掛けを付し、横目印線及び縦目印線を形成する床タイルにドットを付している。なお、基準タイルは、基準行及び基準列をそれぞれ形成する床タイルでもある。
【0093】
20名の素人の作業者を集め、第1乃至第4領域にそれぞれ5名を配置し、各領域の未敷設部に床タイルを敷設する作業を同時に開始した。それぞれの領域の未敷設部における床タイルの敷設手順は、上記第2方法にて行なった。
図22の各領域に表した矢印は、各行及び各列において床タイルを順に敷設する方向を表し、各領域の数字は、各敷設行及び各敷設列を形成する順番を表す。
作業開始から終了まで、すなわち、目印線の表示から計792枚の床タイルを全て敷設し終わるまでの時間は、約120分であった。
仕上がった床構造を立視点の目視で確認したところ、敷設場所の外縁に敷設された床タイルのうち、7枚の床タイルにごく僅かなズレが見られたが、そのズレも最大で約2mmであった。敷設場所の外縁に敷設された床タイルのうち、これら以外の床タイルは、貼りズレを全く確認できなかった。
【0094】
本発明の敷設方法は、各作業者が床タイルを直線状に敷設していくだけなので、簡単にズレなく敷設できたものと考えられる。また、仮にズレが生じても、最終的なズレが外縁に現れるので、ズレが原因で床タイルをカットしなければ床タイルを敷設できないという事態も生じなかった。
また、全ての床タイルをカットすることなく敷設できたので、敷設後に全ての床タイルを引き剥がし、全て再利用することができた。
【符号の説明】
【0095】
A,GS-1乃至13,RS-1乃至11,G1-1乃至6,G2-1乃至6,G3-1乃至6,G4-1乃至6,G5-1乃至6,R2-1乃至4,R4-1乃至3 床タイル
B 基準タイル
GS 基準行
RS 基準列
G1 第1敷設行
G2 第2敷設行
G3 第3敷設行
R2 第2敷設列
R4 第4敷設列
8Y 横目印線
8T 縦目印線
9 敷設場所
91 第1領域
92 第2領域
93 第3領域
94 第4領域