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特許7575370車両の操作者が共有交通空間を伴う交通状況を判断するのを支援するための方法、システム、および車両
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  • 特許-車両の操作者が共有交通空間を伴う交通状況を判断するのを支援するための方法、システム、および車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】車両の操作者が共有交通空間を伴う交通状況を判断するのを支援するための方法、システム、および車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241022BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20241022BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20241022BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241022BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G16Y20/20
G16Y40/30
G16Y10/40
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021200414
(22)【出願日】2021-12-09
(65)【公開番号】P2022114437
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】17/159,126
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503113186
【氏名又は名称】ホンダ リサーチ インスティテュート ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Honda Research Institute Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェル,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】プロプスト,マルテ
(72)【発明者】
【氏名】プファル,ティム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイスヴァンゲ,トーマス
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-175354(JP,A)
【文献】特開2006-113687(JP,A)
【文献】特開2009-059082(JP,A)
【文献】特開2019-153276(JP,A)
【文献】特開2019-053388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
G16Y 20/20
G16Y 40/30
G16Y 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共有交通空間(STS)を伴う交通状況で自車両の動作を支援するための方法であって、
前記自車両の今後の経路(P1)および他の交通関係者の今後の経路(P2)を決定する(S2)ステップ、
各々の決定された今後の経路(P1、P2)に対して割り当てられた、関連する経路コリドーを決定する(S3)ステップであって、前記関連する経路コリドーが対応する他の交通関係者の幅を示すステップ、
前記経路コリドー(P1、P2)同士の重なりとして共有交通空間(STS)を決定する(S4)ステップ、
前記自車両と前記共有交通空間(STS)との間、および前記他の交通関係者と前記共有交通空間(STS)との間の個々の距離尺度を計算する(S5)ステップ、
前記個々の距離尺度を評価して非対称性を決定する(S6)ステップ、
前記非対称性に基づいて、意図される通過順序を決定する(S7)ステップ、
前記意図される通過順序に基づいて前記自車両の今後の軌道を決定し(S8)、前記決定された今後の軌道に従って自動化されたまたは部分的に自動化された運転を実行するための制御信号を生成するステップ、および
前記自車両を前記決定された今後の軌道に従って運転するように、前記生成された制御信号に基づいて制御するステップと、
をプロセッサが実行し、
前記決定された(S6)状況の非対称性が、共有交通空間(STS)に対して記憶され、
前記プロセッサは、
前記記憶された非対称性の時間に伴う変化を分析し、
前記意図される通過順序に対する相互の合意の程度を前記記憶された非対称性の前記時間に伴う変化に基づいて判定し、
前記相互の合意の程度に基づいて前記今後の軌道の決定(S8)を適合する、
方法。
【請求項2】
前記個々の距離尺度は、前記自車両と前記共有交通空間(STS)への前記自車両の進入点との間の距離、および前記他の交通関係者と前記共有交通空間(STS)への前記他の交通関係者の進入点との間の距離として計算される(S5)、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非対称性の前記決定(S6)が常に繰り返される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記共有交通空間(STS)の前記決定(S4)が、前記自車両の環境を感知することによって得られる(S1)情報に基づく、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記環境の前記感知が、車両-車両間または車両-インフラストラクチャ間通信によって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも、前記決定された意図される通過順序またはそれぞれ意図される挙動が、前記自車両によって前記他の交通関係者に報知される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
共有交通空間(STS)を伴う交通状況で自車両の動作を支援するためのシステムであって、プロセッサ(2)を備え、前記プロセッサ(2)が、
前記自車両の今後の経路(P1)および他の交通関係者の今後の経路(P2)を決定し、
各々の決定された今後の経路(P1、P2)に対して割り当てられた、関連する経路コリドーを決定し、前記関連する経路コリドーが、対応する他の交通関係者の幅を示し、
前記経路コリドー同士の重なりとして共有交通空間(STS)を決定し、
前記自車両と前記共有交通空間(STS)との間、および前記他の交通関係者と前記共有交通空間(STS)との間の個々の距離尺度を計算し、
前記個々の距離尺度を評価して非対称性を決定し、
前記非対称性に基づいて意図される通過順序を決定し、
前記意図される通過順序に基づいて前記自車両の今後の軌道を決定し、前記決定された今後の軌道に従って自動化されたまたは部分的に自動化された運転を実行するための制御信号を生成する、
ように構成され、
前記システムが、
少なくとも、前記生成された制御信号に基づいて、前記自車両を前記決定された今後の軌道に従って運転するように制御するためのアクチュエータ(13)と、
メモリ(15)と、
をさらに備え、
前記プロセッサ(2)が、
前記決定された状況の非対称性を共有交通空間(STS)に対して記憶し、
記憶されたすべての前記非対称性の時間に伴う変化を分析し、
前記意図される通過順序に対する相互の合意の程度を前記記憶された非対称性からの前記時間に伴う変化に基づいて判定し、
前記相互の合意の程度に基づいて前記今後の軌道の決定を適合する、システム。
【請求項8】
前記プロセッサ(2)が、前記自車両と前記共有交通空間(STS)への前記自車両の進入点との間の距離、および前記他の交通関係者と前記共有交通空間(STS)への前記他の交通関係者の進入点との間の距離として、個々の距離尺度を計算するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサ(2)が、前記非対称性の前記決定を常に繰り返すように構成される、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムが、前記自車両の環境を感知するためのセンサ(3)を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサ(3)が、車両-車両間または車両-インフラストラクチャ間通信を行うための通信インターフェースを備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか一項に記載のシステム(1)を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の支援運転の分野であり、特に、共有交通空間を通過する交通関係者の運転の順序が決定される必要がある状況における、少なくとも部分的に自動運転する車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の発展により、車両運転者が車両を運転するのを支援することが、すでにかなりの程度改良されている。これには、他の車両または交通関係者の挙動を予測することを可能にする状況分析に基づく、部分的または完全に自動化された車両の運転が含まれる。自車両の環境の認知に基づいて、運転作業を遂行するためにどのように自車両を制御するかが決定される。しかし、曖昧な状況を招き得る多くの状況が存在する。1つの例は、一度に1台の車しか通れない可能性のある道路の狭い通路である。そのような状況では、その狭い通路に接近しつつある各車両がこの共有交通空間を通過し得る順序を決定する必要がある。この問題を解決するために適用できる交通規則が全くない場合、人間が協調的な対話によってこの状況を解決する。
【0003】
自律車両は、最も可能性の高い他の車両の動きの予測に基づいて決定を行う。1台の車両しか通過できない可能性のある道路の通路に2台の車両が接近する場合、状況分析は曖昧になり得る。他方の交通関係者が、待機することによって自車両が共有空間を通過することを許すことも、または自身が先に運転することもあり得る。自動化されたまたは部分的に自動化された運転のための高度な運転支援システムを自車両が備えている場合、そのために、自身の挙動を決定することが難しい。危険な状況を回避するために、自律車両内の知られているシステムは、慎重なデフォルトの挙動に従って動作するように構成されており、これは、そのような車両が完全に停止し、常に他の車両を通過させることすら意味する。この結果、不必要な待ち時間が生じ、またそのような慎重な挙動は運転者自身の予想と矛盾するため、他車の人間の運転者を混乱させることすらある。代替として、自律車両は、他の車両の挙動について仮定を行うこともある。しかし、これは、車両が一旦共有空間に入ると挙動を修正する単純な選択肢がないため、危険な状況、またはいわゆる「行き詰まり(deadlock)」につながり得る。
【0004】
これらの問題は、関与する交通関係者(自車両の支援システムおよび少なくとも1つの他の1人の交通関係者)が、現在経験されている状況について共通の理解をどの程度有しているかを知るために他の車両の動きを解釈することを可能し、それに基づいて相互の解決を達成し得る、関与する交通関係者間の対話のモデルが欠如していることによって生じる。
【0005】
上述の問題を克服するシステムが米国特許第8,810,431(B2)号に開示されている。同システムによれば、車両が、自車両の位置および進行経路ならびに他車両の位置および経路を決定するプロセッサを備える。関与する車両の今後の経路の予測に基づいて、交差する時間が決定される。危機的な状況を回避するために、システムは他の交通関係者と交渉するように構成され、そのような関与する車両間の能動的な交渉の結果に基づいて、合流操作が実行される。しかし、このシステムは、関与するすべての交通関係者がそのような交渉を実行可能なシステムを備えていることを必要とする。すべてのまたは少なくとも大半の車両がそのような交渉可能なシステムを備えるまで、同システムは、安全および快適性に対して些少な効果しか有さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、車両が共有交通空間を通過する適切な順序を見つけることを可能にし、同じまたは同様のシステム間の車両-車両間通信を必要としない、車両における方法およびシステムに対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る方法、第2の態様に係るシステム、および同システムを搭載した第3の態様に係る車両が、それらの課題に対処する。
【0008】
本発明の第1の態様に係る、共有交通空間を伴う交通状況で自車両の動作を支援するための方法は、自車両の今後の経路および他の交通関係者の今後の経路を決定するステップ、各々の決定された今後の経路に対して、関連する経路コリドーを決定するステップ、経路コリドー同士の重なりを決定して共有交通空間を定めるステップ、自車両と共有交通空間との間、および他の交通関係者と共有交通空間との間の個々の距離尺度を計算するステップ、個々の距離尺度を評価して非対称性を決定するステップ、非対称性に基づいて、意図される通過順序を決定するステップ、および、意図される通過順序に基づいて自車両の今後の軌道を決定し、決定された軌道に従って自動化されたまたは部分的に自動化された運転を実行するための制御信号を生成するステップ、または、意図される通過順序に関する情報を自車両の運転者に提供するステップ、を含む。
【0009】
本発明の第2の態様に係るシステムは、上述の方法ステップを実行するように構成されたプロセッサを備え、さらに、決定された今後の軌道を、プロセッサによって生成された制御信号に基づいて実行できるように、アクチュエータを備える。代替として、システムは、意図される通過順序に関する情報を自車両の運転者及び、または他の交通関係者に提供するために、ディスプレイ、クラクション、または車両ランプのような報知手段を使用してもよい。
【0010】
本発明の第3の態様に係る車両は、自動化された運転、部分的に自動化された運転のために、または少なくとも共有交通空間を通過する際の提案される順序を運転者に通知するために、上述のシステムを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るシステム全体の概要としてのブロック図である。
図2】車両の今後の経路に基づいて共有交通空間を決定する例を示す図である。
図3】決定される意図される通過順序に対する非対称性の影響を説明する図である。
図4】本発明から利益を得る交通状況の複数の例を示す図である。
図5】交通の流れに対して達成される利点を説明する図である。
図6】本発明に係る主要な方法ステップを説明する簡略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図中、同じ参照符号は、同じまたは対応する要素を表す。異なる図において同じ参照符号を有する要素の繰り返しの説明は、適当と考えられる場合、簡潔さを向上させるために回避される。
【0013】
従来技術と比較して、本発明は、運転の順序を決定するために車両-車両間通信を介した関与する交通関係者間の対話が必要でないという大きな利点を有する。よって、複数の交通関係者が同じエリア(共有交通空間)を通過しなければならないという近づきつつある状況が、提案される方法を実行するシステムおよびそのようなシステムを備えた車両によって快適に解消される。システムは、認識された状況および特定された共有交通空間について、関与する交通関係者が共有交通空間を通過し得る順序を、環境および状況の自身の認知のみに基づいて決定することができる。分析の結果が意図される通過順序を提供し、次いでそれを使用して、自車両のさらなる挙動および対応する軌道の計画を決定するので、単に状況が時間と共に自然に解消するまで待機することによってリスクを避けるのではなく、そのような状況に対する解決が実現される。
【0014】
車両/交通関係者と共有交通空間への各自の進入点との間の距離として、個々の距離尺度が計算されることが特に好適である。このことは、自車両と他の交通関係者とが、共有交通空間への異なる進入点を有し得ることを意味する。共有交通空間は、一つの車両/交通関係者の位置付けが、第2の車両/交通関係者がそのエリアを通過する能力を制限するエリアである。このエリアは、運転可能なエリアに関する情報と、関与する交通関係者(自車両および少なくとも1つの他の交通関係者)の経路情報とに基づいて決定される。共有交通空間の決定については、後に図2を参照して詳細に説明する。
【0015】
ある状況に対する非対称性の決定の評価、したがって決定は、システム1のメモリ15に記憶されてよい。以前に決定された非対称性を記憶することは、履歴を分析し、よって、非対称性の進展から、決定された意図される通過順序に対する相互の合意の程度を推量することを可能にする。非対称性は、共有交通空間への各自の進入点までの自車両および他の交通関係者の個々の距離尺度を考慮に入れるので、再計算された非対称性の変化から、他の交通関係者の理解が自車両の理解に対応していない場合にその旨が明らかになる。非対称性を再計算することにより、そのような合意の欠如に応答することが可能となる。これは、挙動を適合することによる、または全く異なる挙動を選択することによる、今後の軌道の決定の適合につながり得る。
【0016】
共有交通空間は、好適には、自車両の環境を感知することによって得られる情報に基づいて決定される。そのような感知は、例えばRADAR、LIDAR、カメラ等のような任意のセンサを使用することを含み得るが、車両-車両通信または車両-インフラストラクチャ通信も含んでよい。よって、システムは、システムが同様の通信ユニットを備える他の車両または交通インフラストラクチャと通信することを可能にする、少なくとも1つの通信ユニットを備え得る。他の知られているシステムと対照的に、本発明で使用されるそのような車両-車両間システムは、車両状態情報、例えば、位置や速度等、を他のシステムに提供することを制限される場合もあることに留意すべきである。
【0017】
さらに、決定された非対称性と、その結果得られる決定された意図される通過順序とを、その情報を内部でさらに処理することだけでなく、意図される通過順序を他の関与する交通関係者に報知することにより、利用することが可能である。これは、他の交通関係者が車両に同等のシステムを搭載していない任意の交通状況においてこのシステムを適用できるため、特に好適である。よって、報知によって提供される自車両によって行われた分析および決定の結果が、他の交通関係者に対して状況の理解を好適に確認することができ、または、自車両と他の交通関係者とが現在の状況について異なる理解を有する場合に、他の交通関係者に直ちに警告し得る。
【0018】
次いで本発明について、図1を参照して詳細に説明する。ブロック図として示されるシステム1は、自車両の運転者を支援するために自車両に搭載され得る。自車両の運転者の支援は、自車両の運転者と通信すること、部分的に自動化された運転を実行すること、または完全に自動化された運転を実行することのいずれかによって行われ得る。システム1は処理手段を備えてよく、この処理手段は、単一のプロセッサ2として実現され得るが、個々の計算を行うために互いと接続された複数のプロセッサによっても実現されてもよい。システム1は、1つまたは複数のセンサ3、例えば、カメラ、RADAR、LIDARおよびGNSS、を備える。さらに、センサ3は、自車両の環境に関する情報を得るために車両-車両間および/または車両-インフラストラクチャ間通信を行うための通信ユニットまたはインターフェースを含むことができる。また、センサ3は、車両の運転者を監視する、または眼/頭部追跡を行う、内部センサのような内部の車両センサを含むことができる。
【0019】
出力されるセンサ信号から、認知モジュール4が、環境についての意味情報を導出する。そのような意味情報は、車、車線区分線の検出および追跡、現在の位置における地図経路の抽出等であってよい。センサ3をそのように使用して情報を得、その情報に基づいて、認知モジュール4が、現在経験されている交通状況を分析することができる。認知モジュール4によって入力信号から抽出された情報は、自経路決定モジュール5で今後の自軌道を決定することを可能にする。今後の自軌道は、事前に定められた地図位置、現在のもしくは以前の軌道計画ステップ、過去の車両軌道の外挿から決定するか、または自車両の運転者の現在および以前の行動から推定することができる。そのような現在および以前の行動は、操舵操作、アクセル/ブレーキペダルの使用、ベースパターン等を含む。本発明には、自車両の1つまたは複数の今後の経路を決定(推定)することを可能にする任意の方法が使用されてよいことに留意すべきである。複数の今後の自経路が自経路決定ユニット5で決定される場合、それら異なる経路選択肢は、確率に関連付けられ得る。
【0020】
また、認知モジュール4によって提供される情報は、自軌道を予測するために自軌道予測ユニット6に供給される。予測は、固定された一定の今後の時間をカバーすることができ、または代替として、予測の継続時間が調整され得る。調整は、天候、自車両の速度、現在行われている操作(例えば車線変更、車両追従)、自車両の自律状態(例えば、完全に運転者により制御されている、横/縦方向の制御のみ、完全に自動化された運転等)、または交通量などの運転条件に応じて行われ得る。さらに、この予測の不確定性が、予測継続時間を定める際に考慮に入れられてもよい。
【0021】
自経路決定ユニット5および自軌道予測ユニット6によって出力される情報は、例えば、自己位置センサの不確定性や車線検出の不確定性を反映したそれぞれの不確定性、自軌道/経路の予測方法、人間による運転入力または自車両位置の履歴、現在の時刻からの予測距離、目標軌道に追従する車両制御の精度等を含み得る。
【0022】
1つまたは複数の交通関係者の今後の経路、および他の交通関係者についての軌道予測の同様の決定が、それぞれ交通関係者経路決定ユニット7および交通関係者軌道予測ユニット8で行われる。他の交通関係者の軌道予測は、過去の車両軌道(弾道、モデルに基づく、または組み合わせ)の外挿、および/または、方向指示灯の起動などの機能、もしくは例えばより低速の車両への接近などのシーンの文脈を使用した、車線変更/維持の挙動の予測を利用し得る。
【0023】
上記で今後の自経路および今後の自軌道予測に関してすでに説明したように、複数の経路および軌道が予想されてよく、各々に実現の確率が割り当てられる。
【0024】
他の交通関係者に関する予測は、認知モジュール4で識別される任意の交通対象に対して行われてよい。しかし、予測を自車両の近傍にいる関連する車両に制限することが好適である。この制限は、具体的には、一定の最大距離または時間に関係する尺度と共に、左隣、右隣、および現在の自車線、ならびに自車両の前方、隣、および後方の両方にいる交通関係者に対する予測を可能にし得る。時間に関係する尺度は、接触までの時間TTC(time to contact)であり得る。能動的なまたは予測される自車線変更の場合、これは、自車両の目標車線の隣の車線にいる車両または他の交通関係者まで拡大され得る。
【0025】
上記で与えられた、自車両の環境を分析することにより自車両の近傍にある対象およびそれらの状態を決定すること、軌道予測等に関する態様の詳細については、従来技術に解決法が存在するが、本発明は、共有交通空間の新規な検出を使用する。以下の説明は、単一の今後の自経路および単一の交通関係者の今後の経路に関して与えられる。複数の経路選択肢に基づいて、共有交通空間の同様の計算および決定が行われてよいことは明白である。制止する経路選択肢の一部を除外するために、経路の実現の確率が使用されてよい。
【0026】
共有交通空間の決定について、次いで図2を参照して説明する。第1の経路がP1と表され、これは自車両の今後の経路である。第2の経路がP2と表され、これは他の交通関係者の今後の経路である。経路P1、P2の各々に、それぞれの交通関係者、例えば自車両、の例えば幅を示すコリドーが割り当てられる。コリドーは、図面で、経路P1、P2に平行な経路の輪郭線によって示されている。真ん中の区間では、自車両と他の交通関係者とがうまく互いとすれ違う可能性があるが、例えば駐車している車などの何らかの状況のために、双方の交通関係者が同じ運転可能エリアを使用せざるを得ない可能性のあるエリアが2つある。共有交通空間は、図面で見て取れるように、他方の交通関係者のコリドーと少なくとも部分的に重なり合う、自車両または他の交通関係者の経路のコリドーの区間である。図面では、共有交通空間は一方の車両に関して図示されており、その車両は、図面の左側部分で直進運転しており、図面の右側部分で回避操作を行うことに留意すべきである。他の車両は対応する共有交通空間を有するものの、経路P2上の印から、他の車両の進入点および退出点が異なることが見て取れる。
【0027】
車両が運転する方向に応じて、車両は最初に共有交通空間への進入点に接近し、各自の退出点で共有交通空間を出る。自車両と他の交通関係者がそれぞれ異なる運転方向を有する状況では、一方の車両の進入点が他方の車両の進入点と一致しないことが明白である。この例では、進入点および退出点は、十字および三角で示されている。共有交通空間は、共有交通空間検出モジュール9における自経路決定ユニット5および他の交通対象経路決定ユニット7の出力に基づいて決定される。
【0028】
関与する車両(自車両および他の交通関係者)が共有交通空間を通過するための意図される通過順序を決定できるようにするために、現在経験されている交通状況の非対称性が、非対称性算出モジュール10で決定される。非対称性算出モジュール10には、共有交通空間検出モジュール9および自軌道予測ユニット6ならびに交通対象予測ユニット8の出力が提供される。非対称性a算出モジュール10において、距離尺度が計算され、これは、自車両または他の交通関係者が共有交通空間への自身の進入点にどれほど近いかの尺度である。用語「距離尺度」は、空間距離に限定されず、タイミングの態様も含むことに留意すべきである。距離尺度は、共有交通空間への進入点に対する車両状態に基づいて決定される。距離尺度は、例えば、位置、空間距離、速度ベクトル、加速度ベクトルに基づいて決定され、車両-車両間通信または車両-インフラストラクチャ間通信のような通信装置による受信信号を含んでよい。そのような距離尺度の例は、一定速度の予測を使用した進入までの時間TTE(time to entrance)、または低速シナリオにおける進入までのユークリッド距離である。
【0029】
自車両および他の交通関係者の距離尺度を算出した後、計算された距離尺度同士の比較(差)から、非対称性aが計算され得る。
【0030】
【数1】
ここで
【0031】
【数2】
【0032】
【数3】
【0033】
上記で与えられた式において、TTEegoおよびTTEotherは、自車両または他の車両の共有交通空間への進入点までの時間を表し、ΔTTEは、TTEegoとTTEotherとの間の差を表し、degoおよびdotherは、上述の距離尺度を表す。
【0034】
上記の式から直接見て取れるように、非対称性aは、両方の関与車両の距離尺度が等しいとき、ゼロである。これは、共有交通空間の各自の進入点が自車両および他の交通関係者によって到達されるまでの残り時間が等しいことを意味する。一方、車両のうち一方の距離尺度が他方の車両よりも著しく高い場合は、非対称性aが増すことになる。そのような非常に非対称な状況では、当該状況を解消することがより容易である。そのような場合は、基礎となる感知または意思決定プロセスの正確な手段に関係なく、共有交通空間を通過する最も可能性の高い今後の順序が、双方の関与する交通関係者にとって明白である。対して、非常に対称な状況では、最も可能性の高い今後の順序が、関与する交通関係者にとってそれほど明確ではなく、さらには完全に不明確である。
【0035】
計算された非対称性aに基づいて、共有交通空間を通過するための意図される通過順序が決定される。TTEegoがTTEotherを超える場合、決定された意図される通過順序は、他の交通車両が自車両より前に共有交通空間を通過するというものである。TTEotherがTTEegoを超える場合は、自車両が他の交通車両より前に共有交通空間を通過することになる。達成される解決は、TTEegoとTTEotherとの間の差が大きいほど良好になる。これが図3に示される。
【0036】
非対称性aが非対称性算出モジュール10で計算されると、非対称性aは、挙動選択・評価モジュール11に転送される。自車両が先に共有交通空間を通過すべきことが非対称性aから導出できる場合、実行されるべき挙動は、他の交通関係者が自車両を通過させてくれることを仮定して決定され得る。よって、すでに開始された挙動は、自車両によって継続されてよい。対して、意図される通関順序が、他の交通関係者を先に共有交通空間を通過させるように決定される場合、挙動選択・評価モジュール11で選択される挙動は、自車両を停止させる、または速度を落とすように変更される。決定された非対称性aに基づいて、他の交通関係者の予想される予測が変更される。
【0037】
挙動が選択され、選択された挙動に基づいて自車両の今後の軌道が決定されると、よって、最後に、決定された意図される通関順序に対して、決定された軌道に従って自車両を自動的にまたは部分的に自動的に運転するために、アクチュエータ13(例えば操舵、スロットル、ブレーキ)によって実行されるためのさらなる制御信号が生成される。支援システム1が、自車両の操作者に情報を提供することだけを意図される場合、情報は、人間機械インターフェース、例えばディスプレイ、によって出力されてよい。
【0038】
最初に決定される意図される通過順序が小さい値の非対称性aに基づく状況に限っては、非対称性aが常に再計算されることが有用である。当該状況に対して以前に計算された非対称性aは、メモリ15に記憶されている。よって、状況が進展すれば、非対称性aの絶対値が減少すること、または非対称性aの絶対値が増大することが認識され得る。後者の場合、選択された挙動は、状況についての他の交通関係者の理解との相互の合意の点で正しかったことになる。対して、非対称性aの絶対値が減少する場合(またはさらには非対称性aが一定である場合)は、他の交通関係者と自車両とが、共有交通空間を通過するために異なる順序を選定したようであると結論付けられる。計算される非対称性aの変化を監視することは、よって、選択された挙動の適合につながり得る。
【0039】
図4は、挙動を選択し、自車両の今後の軌道を決定する際に交通状況の非対称性aを考慮に入れることから利益を得るいくつかの例を示す。図4a)は、狭い通路を示し、2台の車両がそれぞれ反対方向からこの狭い通路に接近しつつある。この状況は、図3の解決の質を示すために使用されたものに相当する。
【0040】
図4b)は、2つの隣り合う車線の一方が終端し、そのために斜線を付された車両が車線を変更する必要がある状況を示す。図4c)は、駐車された車によって道路の狭い通路が生じる状況を示す。最後に、図4d)は、規制されていない交差点を示す。これら4つの例示的な状況が明らかにするように、関与する車両は、それぞれ異なる位置で共有交通空間に入り、共有交通空間へのこれら各自の進入点が、自車両および他の交通関係者の距離尺度を決定するために使用される。図示される例では、共有交通空間は、疑問符を含む長方形によって示される。
【0041】
交通状況の非対称性aを考慮に入れることの効果は、図5に描かれるグラフで示すことができる。左側において、グラフは、時間に伴う自車両および他の交通関係者の速度を示している。知られているシステムは、自動的に共有交通空間に接近し、リスクを回避するために車両の速度を落とす。そのため、状況が解消されて車両の一方が共有交通空間を通過するために加速し、それによりいずれかの時点で共有交通空間を開放して、他方の車も加速して通過できるようになるまでに、多くの時間を要する。図5の図示は、関与する両方の車両が本発明のシステム1を備えている状況を示す。しかし、このシステムの解決法は人間の予想に近いため、システムは、人間が関与する大半の状況で利益をもたらす。同様に、このシステムが、異なるシステムに遭遇した場合、本発明のシステム1によって提供される明示的な解決法は、当該他のシステムが、本発明のシステム1と同じ結果を見いだすことを助け、よって説明される利益をもたらし得る。
【0042】
対して、本発明では、車両Aが共有交通空間を先に通過するように決定されるので、非対称性aは、車両Aがほとんど減速することなく共有交通空間を通過することを許す。よって、共有交通空間を開放するまでの時間が、システムを用いない場合よりも著しく少なくなる。これは、結果としてより早期に加速し得る他の車両の運転者によって、容易に認識することができる。したがって、両車両が共有交通空間を通過し終わるまでの全体時間が著しく短縮され、そのことが改善された交通の流れにつながる。
【0043】
図1を参照して説明されたユニットおよびモジュールは、好適にはソフトウェアとして実施され得ることに留意すべきである。
【0044】
上記で詳細に説明された主要な方法ステップを、次いで図6の簡略フローチャートと共に要約する。
【0045】
初めに、ステップS1で、システム1は、システム1の環境に関する情報を得る。次いで、得られた情報に基づいて、自車両の今後の経路および他の交通関係者の今後の経路が、ステップS2で決定される。決定された経路に対して、自車両または交通関係者が自身の決定された経路に追従するのに必要とされる経路の周りの幅を示すコリドーが計算される。
【0046】
経路コリドー同士の重なりがステップS4で計算されて、共有交通空間を定める。重なりは、部分的な重なりであることも、完全な重なりであることもある。自車両と共有交通空間へのその進入点との間、および他の交通関係者と共有交通空間へのその進入点との間の個々の距離尺度が、ステップS5で計算される。ステップS6で、個々の距離尺度を評価して非対称性aを決定し、その後、非対称性aに基づいて、意図される通過順序がステップS7で決定される。
【0047】
一方の交通関係者が他方よりも前に共有交通空間を通過する優先権を表す非対称性が決定された後、ステップS8で、意図される通過順序に基づく自車両の今後の軌道が決定され、決定された軌道に従って自動化されたまたは部分的に自動化された運転を実行するための制御信号が生成される。代替または追加として、決定された意図される通過順序に関する情報が、ステップS9で自車両の運転者に提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6