IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

特許7575375関節リウマチ自己抗体レパートリーのプロファイリング及びそのためのペプチド分類子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】関節リウマチ自己抗体レパートリーのプロファイリング及びそのためのペプチド分類子
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20241022BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
G01N33/53 N ZNA
A61K45/00
A61P19/02
A61P29/00 101
C12N15/13
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021521350
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019078568
(87)【国際公開番号】W WO2020083834
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】62/748,523
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/796,711
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/887,483
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】リ ハンイン
(72)【発明者】
【氏名】ロ ケン
(72)【発明者】
【氏名】パテル ジガル
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/065300(WO,A1)
【文献】特表2017-504795(JP,A)
【文献】LO KEN et al.,Comprehensive Antibody Profiling Using High Density Prptid Arrays Reveals Novel Citrullinated Protein Targets in Rheumatoid Arthritis Serum Samples,ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY,2018年08月31日,Vol.70,No.Suppl.9,abstract nummber:16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分子を含む組成物であって、各分子が、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含み、
前記複数の分子が、少なくとも3つの異なる分子を含み、関節リウマチについての分類子を規定し、かつ、配列番号1~8から選択される配列からなるペプチドを含む、前記組成物。
【請求項2】
前記分類子が、第1の集団に由来する試料と第2の集団に由来する試料とを区別する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の集団が、第1の病態に関連する少なくとも1つのマーカーを有する対象によって規定され、前記第2の集団が、前記第1の病態に関連する前記少なくとも1つのマーカーを欠いている対象によって規定される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の病態が関節リウマチである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
第1の病態に関連する前記マーカーが、抗体及び血清マーカーのうちの1つである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記分類子が、第1の集団に由来する試料と第2の集団に由来する試料とを区別し、
前記第1の集団に由来する前記試料が、第1の病態に関連する少なくとも1つのマーカーを含み、前記第2の集団に由来する試料が、前記第1の病態に関連する前記少なくとも1つのマーカーを欠いている、
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記マーカーが、抗シトルリン化ペプチド抗体、及び抗ホモシトルリン化ペプチド抗体、自己抗体、抗環式シトルリン化ペプチド抗体、及び抗環式ホモシトルリン化ペプチド抗体のうちの1つである、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記分類子が、第1の病態によって規定される第1の群に由来する試料と第2の病態によって規定される第2の群に由来する試料とを識別する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の群が、関節リウマチについて陽性の診断を有する対象によって規定される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記分類子が、診断分類子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
試料における関節リウマチを示す抗体の存在を特定するための方法であって、以下を含む、前記方法:
対象に由来する試料を請求項1に記載の組成物に接触させること、
前記試料に存在する抗体を前記複数の分子のうちの少なくとも1つに結合させ、それによって抗体‐ペプチドコンジュゲートを形成すること、及び
前記抗体‐ペプチドコンジュゲートを検出し、それによって、前記試料における前記抗体の存在を特定すること。
【請求項12】
試料における関節リウマチを示す抗体の存在を特定するためのキットであって、
固体支持体に結合された複数の分子を有する前記固体支持体、及び、ヒト抗体に対する検出可能な抗体を含み、
ここで、各分子が、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含み、前記複数の分子が、少なくとも3つの異なる分子を含み、関節リウマチについての分類子を規定し、かつ、配列番号1~8から選択される配列からなるペプチドを含む、前記キット。
【請求項13】
前記ヒト抗体が、抗シトルリン化ペプチド抗体、及び抗ホモシトルリン化ペプチド抗体、自己抗体、及び抗環式シトルリン化ペプチド抗体のうちの1つである、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
試料における関節リウマチを示す抗体の存在を特定するための装置であって、
固体支持体又はフローセルに結合された複数の分子を有する、前記固体支持体又はフローセルを含み、
ここで、各分子が、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含み、前記複数の分子が、少なくとも3つの異なる分子を含み、関節リウマチについての分類子を規定し、かつ、配列番号1~8から選択される配列からなるペプチドを含み、
前記固体支持体又はフローセルが、前記複数の分子の位置において、対象に由来する試料を受け取ることができる、前記装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、バイオマーカーを調べるためのペプチドの設計及び選択に関し、より詳細には、診断的及び予想的適用のための1つ以上のバリアントペプチドを含む分類子を特定し、実施するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は、関節軟骨及び骨組織の炎症及び進行性びらんを特徴とする進行性自己免疫疾患である。Schellekensら(J Clin Invest.1998;101(1):273-81)(非特許文献1)及びShiら(Proc Natl Acad Sci USA.2011;108:17372-7)(非特許文献2)の影響力の強い研究によって、翻訳後修飾タンパク質がRA滑膜から単離され、続く研究では、シトルリン化及びホモシトルリン化タンパク質の両方に対する抗体がRA病理発生に関与していることが実証された。抗シトルリン化タンパク質抗体(ACPA)血液試験が結果として発展し、いまや、RAの診断において、米国リウマチ学会(ACR)及び欧州リウマチ学会(EULAR)の2010年基準の一部になっている(Arthritis Rheum.2010;62:pp.2569-2581(非特許文献3))。RA患者のACPA陽性サブセットは、一般的に、より進行性の疾病経過(Arthritis Res Ther 2005;7:R949-58(非特許文献4))をたどり(Arthritis Res Ther 2005;7:R949-58(非特許文献4))、したがって、RA患者の関節のびらんを最小限に抑え、その後の関節運動性を維持するための早期介入に向けた早期診断が重要となる。
【0003】
タンパク質又はペプチドアレイの何れかを使用した血清プロファイリングが徐々に一般的になってきている。注目すべき例として、全身性エリテマトーデス、感染疾患及び癌が挙げられる(Lupus、27(10)、1670-1678(非特許文献5)、Theranostics 2017;7(16):3814-3823(非特許文献6)、及びJ Proteome Res.2017;16:204-216(非特許文献7)を参照されたい)。タンパク質アレイは、未変性の3次元構造を維持する利点を有し得るが、それぞれ、組換えタンパク質におけるアルギニンのシトルリンへの完全な酵素変換、及びリジンのホモシトルリンへの完全な酵素変換は課題として残っている。一方、ペプチドアレイは、ペプチド合成過程の間に必要なモノマーを組み込むことによって、これらの問題を回避することができる。マスクレスアレイ合成(MAS)を使用して合成されたペプチドアレイの場合、光防護されたシトルリン及びホモシトルリンが合成過程の間使用される基準のアミノ酸のカタログに加えられた。それぞれ、アルギニンのシトルリンへの置換及びリジンのホモシトルリンへの置換は、アレイ設計過程の間に達成され、カップリング反応の効率によってしか組み込み効率は制限されない。したがって、ペプチドアレイに検出されるシトルリン特異的抗体反応性は、酵素変換の場合におけるアルギニンのシトルリンへの不完全な転換によって合成されない。
【0004】
その同族の抗原に結合する抗体は、抗原によって取り入れられた構造に対する抗体の相補性決定領域(CDR)間の非共有結合性相互作用によって達成される。構造的研究はインターフェースにおける重要な残基の重要性を示したが、特にRAにおいて、ヒト抗体レパートリーの何割が連続するアミノ酸(直鎖状エピトープ)及び不連続アミノ酸ストレッチ(構造エピトープ、PLoS ONE 10:e0121673(非特許文献8)及びBiomed Res Int 2014、12(非特許文献9)を参照されたい)によって取り入れられた構造に由来するエピトープを認識するのかは不明である。発明者らの知る限りにおいて、シトルリノーム(citrullinome)及びホモシトルリノーム(homocitrullinome)を含む全ヒトプロテオームに対するRA血清試料における血清抗体の不偏かつ包括的なプロファイリングは、この技術分野において報告されていない。
【0005】
したがって、診断的、予後的適用の両方について、新規の分類子を開発するための改善されたプロセス及びシステムが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Schellekensら(J Clin Invest.1998;101(1):273-81)
【文献】Shiら(Proc Natl Acad Sci USA.2011;108:17372-7)
【文献】Arthritis Rheum.2010;62:pp.2569-2581
【文献】Arthritis Res Ther 2005;7:R949-58
【文献】Lupus、27(10)、1670-1678
【文献】Theranostics 2017;7(16):3814-3823
【文献】J Proteome Res.2017;16:204-216
【文献】PLoS ONE 10:e0121673
【文献】Biomed Res Int 2014、12
【発明の概要】
【0007】
概要
本発明は、関節リウマチのための分類子を特定するためのシステム及び方法を提供することによって、前述の欠点を克服する。RA血清試料からの自己抗体のエピトープレベルの特徴化は、未変性及びシトルリン化/ホモシトルリン化ペプチドの両方を含むペプチドライブラリを使用して実行した。この特徴化は、シトルリノーム及びホモシトルリノームを含む全ヒトプロテオームに対するRA血清試料における血清抗体の、最初の不偏かつ包括的なプロファイリングを提供すると考えられる。この結果は、RAに関連することが以前には知られていなかったペプチド特性を含む、RAについての分類子の構築に有用であるいくつかのペプチド特性を明らかにした。本開示は、得られた一式のペプチド特性(配列番号1~8861)が、現在市販されているゴールドスタンダード試験のそれを満足する又は上回る、実際の又は予想される特性(すなわち、感受性及び特異性)を有する複数のペプチド分類子の調製にどの程度寄与し得るのかを説明する。
【0008】
本開示の一実施形態によると、組成物は複数の分子を含み、各分子は、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含む。複数の分子は、関節リウマチについての分類子を規定する。
【0009】
一態様において、分類子は、第1の集団に由来する試料と第2の集団に由来する試料とを区別する。別の態様において、第1の集団は、第1の病態に関連する少なくとも1つのマーカーを有する対象によって規定され、第2の集団は、第1の病態に関連するその少なくとも1つのマーカーを欠いている対象によって規定される。別の態様において、第1の病態は関節リウマチである。別の態様において、第1の病態に関連するマーカーは抗体である。別の態様において、第1の病態に関連するマーカーは血清マーカーである。
【0010】
別の態様において、第1の集団に由来する試料は、血清試料である。
【0011】
別の態様において、第2の集団に由来する試料は、血清試料である。
【0012】
別の態様において、分類子は、第1の集団に由来する試料と第2の集団に由来する試料とを区別する。第1の集団に由来する試料は、第1の病態に関連する少なくとも1つのマーカーを含み、第2の集団に由来する試料は、第1の病態に関連するその少なくとも1つのマーカーを欠いている。
【0013】
別の態様において、分類子は、第1の集団に由来する試料と第2の集団に由来する試料とを区別する。第1の病態に関連する少なくとも1つのマーカーは、第1の集団に由来する試料に存在し、この少なくとも1つのマーカーは、第2の集団に由来する試料に存在しない。
【0014】
別の態様において、第1の病態は関節リウマチである。
【0015】
別の態様において、マーカーは、抗シトルリン化ペプチド抗体、及び抗ホモシトルリン化ペプチド抗体、自己抗体、抗環式シトルリン化ペプチド抗体、及び抗環式ホモシトルリン化ペプチド抗体のうちの1つである。
【0016】
別の態様において、分類子は、少なくとも0.90の特異性及び少なくとも0.70の感受性を有する。
【0017】
別の態様において、複数の分子は、第1の病態に関連するマーカーに結合するように構成される。
【0018】
別の態様において、複数の分子は、少なくとも3つの異なる分子を含む。
【0019】
別の態様において、複数の分子は、少なくとも4つの異なる分子を含む。
【0020】
別の態様において、複数の分子は、少なくとも5つの異なる分子を含む。
【0021】
別の態様において、複数の分子は、少なくとも6つの異なる分子を含む。
【0022】
別の態様において、分類子は、少なくとも0.95の特異性及び少なくとも0.70の感受性を有する。
【0023】
別の態様において、分類子は、少なくとも0.95の特異性及び少なくとも0.73の感受性を有する。
【0024】
別の態様において、分類子は、少なくとも0.95の特異性及び少なくとも0.77の感受性を有する。
【0025】
別の態様において、分類子は、少なくとも0.95の特異性及び少なくとも0.83の感受性を有する。
【0026】
別の態様において、分類子は、少なくとも0.95の特異性及び少なくとも0.89の感受性を有する。
【0027】
別の態様において、分類子は、少なくとも0.95の特異性及び少なくとも0.94の感受性を有する。
【0028】
別の態様において、分類子は、第1の病態によって規定される第1の群に由来する試料と第2の病態によって規定される第2の群に由来する試料とを識別する。
【0029】
別の態様において、第1の群は、関節リウマチについて陽性の診断を有する対象によって規定される。
【0030】
別の態様において、分類子は、第1の群と、少なくとも0.95の感受性及び少なくとも0.77の特異性を有する第2の群とを識別する。
【0031】
別の態様において、合成分類子は、診断分類子及び予後分類子のうちの1つである。
【0032】
本開示の別の実施形態によると、ペプチド分類子は複数の分子を含み、各分子は、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含み、前記複数の分子は、配列番号1~8861から選択される少なくとも4つの異なる配列を示す。
【0033】
別の態様において、複数の分子は、固体支持体に固定される。
【0034】
別の態様において、固体支持体は、マイクロタイタープレート、膜、フローセル、ビーズ、チップ、スライド、ガラス面、及びプラスチック面のうちの1つである。
【0035】
別の実施形態によって、本開示は、試料における関節リウマチを示す抗体の存在を特定するための方法を提供する。この方法は、対象に由来する試料を本開示による組成物と接触させること、試料に存在する抗体を複数の分子の少なくとも1つに結合させ、それによって、抗体‐ペプチドコンジュゲートを形成すること、及び抗体‐ペプチドコンジュゲートを検出し、それによって試料における抗体の存在を特定することを含む。
【0036】
別の実施形態によって、本開示は、試料における関節リウマチを示す抗体の存在を特定するためのキットを提供する。このキットは、そこに結合される複数の分子を有する固体支持体を含み、各分子は、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチド、及びヒト抗体に対する検出可能な抗体を含む。
【0037】
一態様において、ヒト抗体は、抗シトルリン化ペプチド抗体、及び抗ホモシトルリン化ペプチド抗体、自己抗体、抗環式シトルリン化ペプチド抗体のうちの1つである。
【0038】
別の実施形態によって、本開示は、試料における関節リウマチを示す抗体の存在を特定するための装置を提供する。この装置は、そこに結合される複数の分子を有する固体支持体を含み、各分子は、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含み、固体支持体は、複数の分子の位置において、対象に由来する試料を受け取ることができる。
【0039】
一態様において、キットは、基材、停止液、洗浄緩衝液、試料希釈液、抗CCPキャリブレータ、抗CCP参照対照及び使用説明書のうちの少なくとも1つを含む。一態様において、基材は、Mg2+、フェノールフタレインモノホスファート(PMP)及び緩衝液を含む。別の態様において、停止液は、水酸化ナトリウム、EDTA、炭酸塩緩衝液(pH>10)を含む。別の態様において、洗浄緩衝液は、ホウ酸塩緩衝液、0.4%(w/v)のアジ化ナトリウムを含む。別の態様において、試料希釈液は、リン酸緩衝液、タンパク質安定剤、0.5%(w/v)のアジ化ナトリウムを含む。別の態様において、抗CCPキャリブレータは、ヒト血漿、緩衝液、0.1%(w/v)未満のアジ化ナトリウム(変動するU/mL)を含む。別の態様において、抗CCP参照対照は、ヒト血漿、緩衝液、0.1%(w/v)未満のアジ化ナトリウム(変動するU/mL)を含む。別の態様において、陽性及び陰性対照は、ヒト血漿、緩衝液、0.1%(w/v)未満のアジ化ナトリウム(変動するU/mL)を含む。
【0040】
別の実施形態によって、本開示は、試料における関節リウマチを示す抗体の存在を特定するためのキットを提供する。このキットは、そこに結合される複数の分子を有するフローセルを含み、各分子は、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含み、フローセルは、複数の分子の位置において、対象に由来する試料を受け取ることができる。キットは、ランニングバッファ及びその使用説明書を含む。
【0041】
一態様において、検出可能な抗体は、抗ヒトIgG抗体に結合されるペルオキシダーゼを含む。
【0042】
別の態様において、複数の分子は、第1のリストから選択される配列を有するペプチドを含み、第1のリストは、表1の配列からなる。
【0043】
別の態様において、複数の分子は、第1のリストからの配列のそれぞれを有するペプチドを含む。
【0044】
[本発明1001]
複数の分子を含む組成物であって、各分子が、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含み、前記複数の分子が、関節リウマチについての分類子を規定する、前記組成物。
[本発明1002]
前記分類子が、第1の集団に由来する試料と第2の集団に由来する試料とを区別する、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
前記第1の集団が、第1の病態に関連する少なくとも1つのマーカーを有する対象によって規定され、前記第2の集団が、前記第1の病態に関連する前記少なくとも1つのマーカーを欠いている対象によって規定される、本発明1002の組成物。
[本発明1004]
前記第1の病態が関節リウマチである、本発明1003の組成物。
[本発明1005]
第1の病態に関連する前記マーカーが、抗体及び血清マーカーのうちの1つである、本発明1003の組成物。
[本発明1006]
前記分類子が、第1の集団に由来する試料と第2の集団に由来する試料とを区別し、
前記第1の集団に由来する前記試料が、第1の病態に関連する少なくとも1つのマーカーを含み、前記第2の集団に由来する試料が、前記第1の病態に関連する前記少なくとも1つのマーカーを欠いている、
本発明1001の組成物。
[本発明1007]
前記分類子が、第1の集団に由来する試料と第2の集団に由来する試料とを区別し、
第1の病態に関連する少なくとも1つのマーカーが、前記第1の集団に由来する前記試料に存在し、前記少なくとも1つのマーカーが、前記第2の集団に由来する前記試料に存在しない、
本発明1001の組成物。
[本発明1008]
前記マーカーが、抗シトルリン化ペプチド抗体、及び抗ホモシトルリン化ペプチド抗体、自己抗体、抗環式シトルリン化ペプチド抗体、及び抗環式ホモシトルリン化ペプチド抗体のうちの1つである、本発明1003の組成物。
[本発明1009]
前記複数の分子が、少なくとも3つの異なる分子を含む、本発明1001の組成物。
[本発明1010]
前記分類子が、第1の病態によって規定される第1の群に由来する試料と第2の病態によって規定される第2の群に由来する試料とを識別する、本発明1001の組成物。
[本発明1011]
前記第1の群が、関節リウマチについて陽性の診断を有する対象によって規定される、本発明1010の組成物。
[本発明1012]
合成分類子が、診断分類子及び予後分類子のうちの1つである、本発明1001の分類子。
[本発明1013]
前記複数の分子が、第1のリストから選択される配列を有するペプチドを含み、前記第1のリストが、表1に挙げられる配列(配列番号1~8)からなる、本発明1001の組成物。
[本発明1014]
複数の分子を含むペプチド分類子であって、各分子が、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含み、前記複数の分子が、配列番号1~8861から選択される少なくとも3つの異なる配列を示す、前記ペプチド分類子。
[本発明1015]
試料における関節リウマチを示す抗体の存在を特定するための方法であって、以下を含む、前記方法:
対象に由来する試料を組成物に接触させることであって、前記組成物が複数の分子を含み、各分子が、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含み、前記複数の分子が、配列番号1~8861から選択される少なくとも3つの異なる配列を示す、前記接触させること、
前記試料に存在する抗体を前記複数の分子のうちの少なくとも1つに結合させ、それによって抗体‐ペプチドコンジュゲートを形成すること、及び
前記抗体‐ペプチドコンジュゲートを検出し、それによって、前記試料における前記抗体の存在を特定すること。
[本発明1016]
試料における関節リウマチを示す抗体の存在を特定するためのキットであって、以下を含む、前記キット:
固体支持体に結合された複数の分子を有する前記固体支持体であって、各分子が、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含み、前記複数の分子が、配列番号1~8861から選択される少なくとも3つの異なる配列を示す、前記固体支持体、及び
ヒト抗体に対する検出可能な抗体。
[本発明1017]
前記ヒト抗体が、抗シトルリン化ペプチド抗体、及び抗ホモシトルリン化ペプチド抗体、自己抗体、及び抗環式シトルリン化ペプチド抗体のうちの1つである、本発明1024のキット。
[本発明1018]
試料における関節リウマチを示す抗体の存在を特定するための装置であって、以下を含む装置:
固体支持体又はフローセルに結合された複数の分子を有する前記固体支持体又はフローセルであって、各分子が、配列番号1~8861から選択される配列を有するペプチドを含み、前記複数の分子が、配列番号1~8861から選択される少なくとも3つの異なる配列を示し、前記固体支持体又はフローセルが、前記複数の分子の位置において、対象に由来する試料を受け取ることができる、前記固体支持体又はフローセル。
本発明の前述の態様及び他の態様及び利点は、以下の記述から明らかになるだろう。この記述において、その一部を形成する添付の図面を参照し、そこには図示することによって本発明の好ましい実施形態を示す。このような実施形態は、本発明の全ての範囲を示しているとは限らないが、本発明の範囲を解釈するために、請求項及び本明細書を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、本開示によるペプチド分類子を特定する方法の一例である。
図2図2は、1アミノ酸分解能又は4アミノ酸分解能の何れかでタイルされた16マーペプチドの模式図であり、1アミノ酸分解能でタイルされた一連の10マーペプチドで示された一例としてのタンパク質配列Z(X...)の一部のタイリングを説明する表を含み、各Xは例としてのタンパク質配列Zにおける1つのアミノ酸を示す。
図3-1】図3A~3Fは、未変性ペプチド(図3A及び3B)、並びにRA試料(図3A、3C及び3E)及び対照試料(図3B、3D及び3F)についてのシトルリン化ペプチド(図3C及び3D)及びホモシトルリン化ペプチド(図3E及び3F)についてのRA Abinomeのマップである。ペプチドは、染色体上の位置によって組織化され、バーの高さは、ペプチドアレイにおいて検出される重要な抗体反応性を含む試料の割合を示す。
図3-2】図3-1の説明を参照のこと。
図3-3】図3-1の説明を参照のこと。
図4図4は、アレイに由来する対数変換されたアレイのシグナルのヒートマップである。ペプチドは、列に組織化され、血清試料は行に組織化される。試料の条件はデンドログラム(黒‐対照及び白‐RA)下に示され、CCP2の状態は、この試料の条件に重ねられる(+/-はCCP2の状態を示す)。ヒートマップは、また、未変性ペプチド(未変性)‐左、シトルリン化ペプチド(シトルリン化)‐中央、及びホモシトルリン化ペプチド(ホモシトルリン化)‐右によっても格子にされる。
図5A図5A及び5Bは、タンパク質PATE4について、8つの代表的な血清試料(対照4つ及びRA4つ)について、アレイに由来する蛍光シグナル(図5A)と、ナノリットルスケールのイムノアッセイを使用して得られるシグナルヒストグラム(図5B)との間で対照比較を示す。図5Aにおいて、未変性ペプチド(未変性)に由来するシグナルを第1及び第3の行に示し、シトルリン化ペプチド(シトルリン化)に由来するシグナルは、第2及び第4の行に示す。個々の血清試料は、列にまとめられ、左の2つの行は、対照の血清試料のデータを示し、右の2つの行はRA血清試料のデータを示す。検証研究がなされたエピトープは、30位の中心に濃淡によって示され、配列CNTCIYTEGWKCMAG-R/cit-GTCIAKENELCS(配列番号1)を有し、R/citは、示された位置のアルギニン(R)又はシトルリン(cit)の何れかの使用を示す。図5Bは、アレイシグナルのそれと同じように組織化されたナノリットルスケールのイムノアッセイシステムを使用して生成されたシグナルヒストグラムを示す。x-y-z座標システム(左下)を参照して、x軸はμm(0~900の範囲)の半径を示し、y軸はμm(100~600の範囲)の角度を示し、z軸は相対単位(0~1の範囲)の強度を示す。
図5B図5Aの説明を参照のこと。
図6A図6A及び図6Bは、ナノリットルスケールのイムノアッセイシステムにおける8エピトープRA診断分類子の性能を示す(表1も参照されたい)。エピトープ(V1、V3、V5、V17、V19、V27、V28及びV29)は、列にまとめられ、試料は行にまとめられている。塗りつぶした四角は、特定のエピトープについて、陽性を示し、塗りつぶしていない四角は陰性を示す。試料の条件はプロットの上に示す(対照対RA)。血清試料のCCP2の状態は+/-によって示される。図6Aは、92名の患者(29名の対照及び63名のRA)の最初に拡張されたコホートを示す。図6Bは、181名の患者(54名の対照及び127名のRA)の独立検証コホートを示す。
図6B図6Aの説明を参照のこと。
図7図7は、置換カテゴリ(すなわち、未変性、シトルリン化及びホモシトルリン化)によって組織された条件(CCP2陰性[-]RA、CCP2陽性[+]RA、及び対照)によって、重要な反応性を有するプローブの割合を示すプロットである。各ポイントは特定の試料を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
I.定義
本出願において、文脈から明確な断りの無い限り、(i)用語「a」は、「少なくとも1つ」を意味することを理解することができ、(ii)用語「又は」は、「及び/又は」を意味することを理解することができ、(iii)用語「含む」(comprising及びincluding)は、それ自体によって、又は1つ以上の追加の要素若しくは工程と一緒に示されようと、箇条書きされた要素又は工程を含むことを理解することができ、(iv)用語「約」及び「およそ」は、当業者によって理解されるような標準的な変差を許容することを理解することができ、(v)範囲が提供される場合、終点が含まれる。
【0047】
Abinome:本明細書に使用する場合、「Abinome」は、注釈の付いたプロテオーム又は抗体reactomeに対して観察される抗体レパートリーを指す。
【0048】
およそ:本明細書に使用する場合、目的の1つ以上の値に適用される用語「およそ」又は「約」は、記載の参照値と同様の値を指す。特定の実施形態において、用語「およそ」又は「約」は、他に断りの無い限り、又は文脈から明白に他に示されない限り(このような数が可能な値の100%を上回る場合を除いて)記載の参照値の何れかの方向(超又は未満)の、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又はそれ以下にある値の範囲を指す。
【0049】
~に関連する:2つの事象又は属性が互いに「関連する」は、あるものの存在、レベル及び/又は形態がもう一方のもののそれと相関する場合、この用語は、本明細書で使用される。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド、遺伝子サイン、代謝物等)は、その存在、レベル及び/又は形態が疾患、障害又は病態(例えば、適切な母集団にわたって)の発症率及び/又は罹患率と相関する場合、特定の疾患、障害又は病態に関連すると考えられる。いくつかの実施形態において、2つ以上の属性が直接的又は間接的に相互作用して、互いに物理的近似性がある及び/又は保持する場合、それらは互いに物理的に「関連している」。いくつかの実施形態において、互いに物理的に関連する2つ以上の属性が互いに共有結合し、いくつかの実施形態において、互いに物理的に関連する2つ以上の属性が互いに共有結合しないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性及びその組み合わせによって、非共有結合的に関連する。
【0050】
生体試料:本明細書で使用する場合、用語「生体試料」は、通常、本明細書に記載される目的の生体源(例えば、組織又は生物又は細胞培養)から得られる又は由来する試料を指す。いくつかの実施形態において、目的の源は、動物又はヒト等の生物を含む、又はからなる。いくつかの実施形態において、生体試料は、生物組織又は生体液を含む、又はからなる。いくつかの実施形態において、生体試料は、骨髄、血液、血液細胞、腹水、組織又は微細針生検試料、細胞含有体液、浮動性核酸、痰、唾液、尿、脳脊髄液、腹水、胸水、糞、リンパ球、婦人科流体、皮膚スワブ、膣スワブ、口腔スワブ、鼻腔スワブ、乳管洗浄細胞診又は気管支肺胞洗浄等の洗浄(washing)又は洗浄(lavage)、吸引液、剥離物、骨髄検体、組織生検、外科手術検体、その他の体液、分泌物、及び/又は排泄物、及び/又はそこから生じる細胞等を含んでもよい。いくつかの実施形態において、生体試料は、個体から得られる細胞を含む、又はからなる。いくつかの実施形態において、得られる細胞は、試料が得られる個体からの細胞である、又は含む。いくつかの実施形態において、試料は、任意の適切な方法によって目的の源から直接的に得られる「一次試料」である。例えば、いくつかの実施形態において、一次生体試料は、生検(例えば、穿刺吸引又は組織生検)、外科手術、体液の採取(例えば、血液、リンパ球、糞等)からなる群から選択される方法によって得られる。いくつかの実施形態において、文脈から明らかなように、用語「試料」は、一次試料を加工することによって(例えば、1つ以上の成分を取り除くことによって、及び/又は1つ以上の薬剤を加えることによって)得られる調製物を指す。例えば、ろ過は半透膜を使用する。このような「加工試料」は、例えば、試料から抽出される、又はmRNAの増幅若しくは逆転写、特定の成分等の単離及び/又は精製等の技術に一次試料を供することによって得られる核酸又はタンパク質を含んでもよい。
【0051】
シトルリン化:本明細書で使用する場合、用語「シトルリン化」は、各アルギニン残基がシトルリン残基に置換されるペプチド又はタンパク質を指す。
【0052】
シトルリノーム:本明細書で使用する場合、用語「シトルリノーム」は、注釈の付いたプロテオームからのシトルリン化ペプチドに対して観察された抗体レパートリーを指し、アルギニンはシトルリンに置換される。
【0053】
分類子:本明細書で使用する場合、用語「分類子」は、1つ以上の試料の同一性を識別し、特定された試料を1つ以上のカテゴリに割り当てるためのツールを指す。より一般的には、分類子は、カテゴリのメンバが知っている観察(又は例)を含むデータのトレーニングセットに基づいて、新しい観察物が属するカテゴリのセット(副集団)を特定するのに有用である。したがって、分類子は、新しい観察物をカテゴリに分けることができる予測モデル、アルゴリズム、チャート、ルックアップテーブル等を含むことができる。分類子は、はい/いいえ、健康/疾患あり、存在/不在等の二分法的カテゴリに観察物を割り当てることができる。あるいは(又はさらに)、分類子を異なる種類(タイプ1、タイプ2、タイプ3…タイプi)等のより広いカテゴリセット、異なる病態のセット(健康、疾患A、疾患B、…、疾患Z)、異なる治療選択についての奏功予測のセット(ノンレスポンダー、オプションAレスポンダー、オプションBレスポンダー、…、オプションZレスポンダー)、治療選択についてのセット(治療なし、治療A、治療B、…、治療Z)等、及びその組み合わせ等に割り当てることができる。
【0054】
~を含む:1つ以上の記載の要素又は工程を「含む」本明細書に記載の組成物又は方法は、オープンエンドであり、記載の要素又は工程は必須であるが、その他の要素又は工程もこの組成物又は方法の範囲に加えることができる。1つ以上の記載の要素又は工程を「含む」ものとして記載される組成物又は方法は、その記載の要素又は工程「から本質的になる」対応の、より限定された組成物又は方法も記載し、この組成物又は方法は、記載の必須の要素又は工程を含み、組成物又は方法の基本的、新規特徴(複数可)に実質的に影響しない追加の要素又は工程も含んでもよいことを意味することが理解される。1つ以上の記載の要素又は工程を「含む」又は「から本質的になる」ものとして記載される任意の組成物又は方法は、任意のその他の記載されていない要素又は工程を除外して、記載の要素又は工程「からなる」対応の、より限定された、クローズドエンドの組成物又は方法も記載することも理解される。本明細書に開示される任意の組成物又は方法において、その要素又は工程を任意の記載の必須の要素又は要素の周知又は開示の等価物に置き換えてもよい。
【0055】
設計される:本明細書で使用する場合、用語「設計される」は、(i)その構造が人間の手によって選択される若しくは選択された、(ii)人間の手を必要とする方法によって製造される、及び/又は(iii)天然の物質及びその他の周知の薬剤とは異なる薬剤を指す。
【0056】
決定する:当業者は本明細書を読み、「決定すること」は、例えば、本明細書に明示的に示される特定の技術を含む当業者に利用可能な様々な技術の何れかを使用することによって、利用することができ、又は達成することができることを認識するだろう。いくつかの実施形態において、決定することは、物理的試料を操作することを伴う。いくつかの実施形態において、決定することは、例えば、関連の分析を実施するように適応させたコンピュータ又はその他の処理ユニットを利用して、データ又は情報の考察すること及び/又は操作することを伴う。いくつかの実施形態において、決定することは、源から関連の情報及び/又は材料を受け取ることを伴う。いくつかの実施形態において、決定することは、試料又は実体の1つ以上の特性を比較可能な参照と比較することを伴う。
【0057】
特性:本明細書で使用する場合、用語「特性」は、1つ以上の試料の同一性を識別し、試料を1つ以上のカテゴリに割り当てる予測モデル(例えば、分類子)の要素を指す。用語「特性」は、統計モデルの文脈において、用語「予測因子」と同義に使用してもよい。
【0058】
ホモシトルリン化:本明細書で使用する場合、用語「ホモシトルリン化」は、各リジン残基がホモシトルリン残基に置換されるペプチド又はタンパク質を指す。
【0059】
ホモシトルリノーム:本明細書で使用する場合、用語「ホモシトルリノーム」は、注釈の付いたプロテオームからのホモシトルリン化ペプチドに対して観察された抗体レパートリーを指し、リジンはホモシトルリンに置換される。
【0060】
同一性:本明細書で使用する場合、用語「同一性」は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子間(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)並びに/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。いくつかの実施形態において、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%同一である場合、互いに「実質的に同一」であると考えられる。2つの核酸又はポリペプチド配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較目的のために、2つの配列を整列することによって実行することができる(例えば、最適な整列のために、第1の配列及び第2の配列の1つ又は両方にギャップを導入することができ、比較の目的のために、同一ではない配列は無視することができる)。特定の実施形態において、比較の目的のために整列された配列は、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は実質的に100%である。対応する位置のヌクレオチドをその後比較する。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置と同じ残基(例えば、ヌクレオチド又はアミノ酸)によって占有される場合、分子はその位置では同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、配列によって共有する同一の位置の数の関数であり、ギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮し、2つの配列の最適な整列のために導入される必要がある。配列の比較及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。例えば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、Meyers and Miller(CABIOS、1989、4:11-17)のアルゴリズムを使用して決定することができ、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。いくつかの例示的な実施形態において、ALIGNプログラムで作製される核酸配列の比較は、PAM120質量残基テーブル、12のギャップ長ペナルティ及び4のギャップペナルティを使用する。あるいは、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用するGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して決定することができる。
【0061】
試料:本明細書で使用する場合、用語「試料」は、定性的及び/又は定量的評価のために目的の組成物である又は含む物質を指す。いくつかの実施形態において、試料は、生体試料である(すなわち、生物由来である(例えば、細胞又は生物))。いくつかの実施形態において、試料は、地質学、水生の、天文学、又は農学の源に由来する。いくつかの実施形態において、目的の源は、動物又はヒト等の生物を含む、又はからなる。いくつかの実施形態において、法医学的分析のための試料は、生体組織、生体体液、例えば、衣服、土、プラスチック、水等の有機又は無機物質である、又は含む。いくつかの実施形態において、農学的試料は、葉、花弁、樹皮、木、種子、植物、果実等の有機物質を含む、又はからなる。
【0062】
実質的に:本明細書で使用する場合、用語「実質的に」は、目的の特徴又は特性の全範囲はほぼ全範囲又は程度を示す定量的条件を指す。生物学の当業者は、生物学的及び化学的現象は、めったに完全に向かうことはなく、及び/又は完全性に進むことはめったになく、又は絶対の結果を達成する若しくは回避することもめったになく、たとえあったとしてもきわめてまれであることを理解しているだろう。用語「実質的に」は、したがって、多くの生物学的及び化学的現象に備わっている完全性の潜在的な欠如を捕らえるために使用する。
【0063】
合成の:本明細書で使用する場合、用語「合成の」は、人間の手によって、したがって自然に存在しない形態で製造されていることを意味し、なぜならばそれは自然に存在しない構造を有しているため、または自然とは関わりの無い1つ以上のその他の要素に関連しているか、又は自然に関連する1つ以上のその他の要素に関連していないかの何れかであるためである。
【0064】
合成ペプチド:本明細書で使用する場合、用語「合成ペプチド」は、1つ以上のアミノ酸位置において自然起源のペプチドとは異なるペプチドを指す。一態様において、合成ペプチドは野生型ペプチド及び変異体又はその他の自然起源のペプチドの両方と区別することができる。例えば、野生型ペプチドは、野生型タンパク質配列の少なくとも一部分を規定するペプチド配列からなる可能性がある。いくつかの場合において、野生型タンパク質は変異体形態に自然に発生することが知られていてる可能性がある。例えば、特定の自己免疫疾患において、選択されるタンパク質が、アルギニン残基の代わりに1つ以上のシトルリン残基を含むことが観察されている。注目すべきことに、シトルリン化は自然発生することが知られている。この場合、変異ペプチドは、シトルリン化タンパク質配列の少なくとも一部分を規定するペプチド配列からなる可能性がある。しかしながら、1つ以上のシトルリン残基を含む変異ペプチドは、自然起源のペプチドであると依然として考えることができる。対照的に、合成ペプチドは、野生型ペプチド、変異ペプチド、又は自然起源のタンパク質配列の少なくとも一部分を規定する別の自然起源のペプチド配列とは異なる。一例において、合成ペプチドは1つ以上のアミノ酸置換、欠失、挿入、他の同様の修飾、又はその組み合わせを含み得、前述の修飾は、ペプチドが対応するタンパク質配列の自然起源の形態には観察されない。例えば、合成ペプチドは、アルギニン残基の代わりに1つ以上のシトルリン残基を含み得、シトルリン化アルギニンは、野生型又は変異ペプチドの何れかとして自然に存在することは観察されない。
【0065】
バリアント:本明細書で使用する場合、用語「バリアント」は、参照実体との重要な構造的同一性を示す属性を指すが、参照実体と比較する場合、1つ以上の化学部分の存在又はレベルにおいて、参照実体と構造的に異なる。多くの実施形態において、バリアントはその参照実体と機能的にも異なる。概して、特定の実体が参照実体の「バリアント」と適切に考えられるかどうかは、参照実体との構造的同一性の程度に基づく。当業者によって解釈されるように、任意の生物学又は化学参照実体は、特定の特徴的な構造要素を有する。バリアントは、定義によって、1つ以上のこのような特徴的な構造的要素を共有する固有の化学実体である。いくつかの例を提供するために、小分子は、特徴的な核となる構造的要素(例えば、大環状コア)及び/又は1つ以上の特徴的なペンダント部分を有してもよく、この小分子のバリアントは、核となる構造的要素及び特徴的なペンダント部分を共有するものであるが、その他のペンダント部分及び/又はコアの内部に存在する結合の種類(単結合対二重結合、E対Z等)の点で異なり、ポリペプチドは、線形又は3次元空間において互いに示された位置を有し、及び/又は特定の生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸からなる特徴的な配列要素を有してもよく、核酸は、線形又は3次元空間において互いに示された位置を有する複数のヌクレオチド残基からなる特徴的な配列要素を有してもよい。例えば、バリアントポリペプチドは、アミノ酸配列に1つ以上の差異及び/又はポリペプチド骨格に共有結合される化学部分(例えば、炭水化物、脂質等)の1つ以上の差異の結果として、参照ポリペプチドと異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドと、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%又は99%の全体的な配列同一性を示す。あるいは、又はさらに、いくつかの実施形態において、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドと少なくとも1つの特徴的な配列要素を共有しない。いくつかの実施形態において、参照ポリペプチドは、1つ以上の生物活性を有する。いくつかの実施形態において、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドの生物活性の1つ以上を共有する。いくつかの実施形態において、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドの生物活性の1つ以上を欠いている。いくつかの実施形態において、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドに比べて、1つ以上の生物活性の減少したレベルを示す。多くの実施形態において、目的のポリペプチドは、親のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するが、特定の位置において、少数の配列変化がある場合、親の「バリアント」又は参照ポリペプチドであると考えられる。一般的に、親に比べて、バリアントでは20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%より少ない残基が置換される。いくつかの実施形態において、バリアントは親に比べて10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個の置換された残基を有する。多くの場合、バリアントは、非常に少数(例えば、5、4、3、2又は1個より少ない)の置換された官能残基(すなわち、特定の生物活性に関係する残基)を有する。さらに、バリアントは、一般的に5、4、3、2又は1個以下の追加又は削除を有し、親に比べて、追加又は削除を有しないことが多い。さらに、任意の追加又は削除は、通常、約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約10、約9、約8、約7、約6個未満であり、一般的には約5、約4、約3又は約2個未満の残基である。いくつかの実施形態において、バリアントは、1つ以上の機能的欠損も有してもよく、及び/又はさもなければ「変異体(mutant)」と考えられてもよい。いくつかの実施形態において、親又は参照ポリペプチドは自然に見つけられる。当業者によって理解されるように、目的の特定のポリペプチドの複数のバリアントは、特に感染病原体ポリペプチドである場合、一般的に自然に見つけることができる。
【0066】
II.特定の実施形態の詳細な説明
前述のように、様々な状況において、特定の病態、疾患等について対象を精確に診断する方法を提供することは有用であり得る。診断の性質に依存して、方法又は試験は初期の検出を可能にすることができ、潜在的に、治療等の計画を立てるための改善された機会をもたらす。しかしながら、検出可能な症状がより容易に検出できる方法で顕在化することができなかった分子レベルでの変化(例えば、ゲノム突然変異、タンパク質凝集、核酸又はタンパク質の発現レベルの変化等)に限られる場合、所与の苦悩を特に初期に、精確に診断することが困難になる場合がある。例えば、アルツハイマー病(AD)は、記憶喪失、混乱、及び減少した若しくは判断の欠乏のような外に現れる症状を含む可能性がある慢性神経変性疾患である。しかしながら、ADの原因は、ほとんど解明されておらず、タンパク質の誤った折り畳みを含む生化学的変化が疾患の進行の原因であると仮定されている。したがって、現在、脳組織の検査がより限定的な診断に必要とされている。すなわち、AD等の疾患の診断は、病態の進行の初期に検出するには主観的又は困難な可能性がある行動的特徴又はその他の外に現れる症状に対して、ペプチド、タンパク質又は核酸等の特徴に焦点をおいた診断から利益を受け得る。
【0067】
別の例において、疾患のありそうな経過を精確に予測し、又は対象が所与の治療経過に反応を示し得るかどうかを決定する(すなわち、予後的又は予測的方法)方法を提供することが有用になり得る。複数の治療方法が使用可能であることも多いが、どの治療が効果的であるかを示す予測試験を使用できない場合、単独又は併用の複数の異なる治療を試して、どの治療が効果的であるかを決定する試行錯誤に頼る必要がある場合がある。究極的には、診断的及び予後的方法又は試験の何れか又は両方とも存在しない場合、対象の診断及び治療にいくつかの課題が生じ得る。
【0068】
ペプチド分類子を設計及び実行するシステム及び方法で、これらの及びその他の課題を克服することができる。一態様において、分類子は、対象の集団内において、対象を分類する問題を解決するために実行することができる。例えば、分類子は、集団における1つ以上の異なる対象(又は観察)について情報を含むデータのトレーニングセットに基づいて、特定のカテゴリ又は副集団に対象(又は対象に関する観察)を割り当てることができる。一例として、対象の観察された特徴によって決定されるように、所与の対象に診断を割り当てることが考えられる。
【0069】
本開示は、少なくとも部分的に、非自然起源の周知のペプチド配列のバリアントを含む1つ以上のペプチドのセットを使用して、対象の群の観察又は態様を分類するための診断的分類子及び予後的分類子の1つ又は両方を調製することができるという驚くべき発見に基づいている。例えば、ペプチドと対象から回収された血清試料との相互作用についての観察を使用して、所与の病態について対象を診断し、対象にとってどの治療及びその組み合わせが効果的に成り得るかを予測することができる。
【0070】
前述の方法を適用する場合、発明者は、以前にはRAと結びつきのなかったいくつかのペプチドの特性を含むRAに関連するバイオマーカーを特定するのに有用な複数のペプチド特性を発見した。したがって、本開示は、RAの診断に有用な新規分類子を提供する。さらに、本開示は、ペプチド特性の開示されたリスト(配列番号1~8861)からRAの診断に有用な分類子を調製する一般的方法を提供する。
【0071】
一態様において、本開示によるペプチド分類子は、野生型、又は変異体、又はバイオマーカーを検索するために従来からある分類子と区別することができる合成ペプチドを含み得る。バイオマーカーは、対象の血液、血清、尿又は別の流体中に検出され得る、自然に存在する生体要素(例えば、核酸、タンパク質、小分子、抗体等)として規定することができる。一態様において、バイオマーカーは、対象の外来性の(非自然)又は変異体(自然の)要素によって(例えば、腫瘍、ウイルス、寄生虫等)、又は自然若しくは非自然の要素の存在に反応して、製造することができる。概して、バイオマーカーの検索は、病態の初期の検出、診断の確定、転帰の予測又は予後の判断、治療奏功のモニタリング等を可能にすることができる。いくつかの分類子は、正常又は変異ペプチド又はタンパク質等のバイオマーカーを検索するために1つ以上の要素を含むことができるが、本開示の合成ペプチドは、これらの正常又は変異ペプチド又はタンパク質と適切に同等とすることはできない。一態様において、本開示の合成ペプチドは、所与の対象に存在し得る、又は所与の病態に関連し得るペプチドまたはタンパク質の正常(野生型)又は変異体バージョンのバリアントであってもよい。未変性ペプチド(野生型又は変異体)は、本質的にそれらのバイオマーカーと相互作用することを観察することができるため、バイオマーカーの検索に有用であると予想することができるが、本開示の合成ペプチドは、非自然起源であり、精選されたプロテオームに存在しない設計された配列である。しかしながら、合成ペプチドは、これらの同バイオマーカーを検索するために、より感受性の高い、及び/又は特異的な分類子に寄与することができる。任意の特定の理論に縛られないが、本開示の合成ペプチドは、自然起源のペプチド配列に比べて、血清抗体又は別のバイオマーカーの部分と相互作用する、又はそれらによって結合するのにより適した構造を採用することができると仮定される。重要なこととして、本開示の合成ペプチドは、診断又は予後/予測的合成分類子の基本として、対象に由来する1つ以上のバイオマーカーを検出することができる、さもなければそれと相互作用することができる。
【0072】
一態様において、本開示は、自然起源のバイオマーカーを区別するための分類子として使用することができる非自然起源のペプチドを見つけることを必ずしも予想しないが、合成又はバリアントペプチド配列を使用して分類子を提供することができるという驚くべき発見に影響を与える。この結果に照らして、本開示は、予測的、予後的、診断的、薬物動態的、及び/又は有効性反応の適用のうちの1つ以上に有用となり得るバイオマーカーを検出するために、ペプチドベースのプローブを設計するシステム及び方法を提供する。本明細書にさらに規定するように、バイオマーカーは生物において測定可能な物質であり、その存在は、疾患、感染又は環境的暴露等のいくつかの現象を示す。1つ以上のバイオマーカーを検出する本開示による方法として、i)周知のペプチド標的の系統的スクリーニング、及びii)複数の合成バリアントペプチドを提供するために、自然及び非自然アミノ酸の両方、ペプチド及びその変異体対応物の環化、又はその組み合わせを含む前述のペプチドの誘導体化が挙げられる。誘導体化は、疾患領域におけるバイオマーカー集団(例えば、薬剤反応者対非反応者、又は疾患集団対対照/健康集団)のサブグループ間を識別する能力に基づいている。
【0073】
一態様において、本開示は、ペプチドの候補を特定するためのスクリーニング、及びバイオマーカーを検索するためのプローブとして、ペプチドの候補を使用することだけに依存しなければいけないという課題を克服する。既存の解決策は、自然アミノ酸の置換のためにファージ又はmRNA表示等の方法に依存している。シトルリン及びホモシトルリン等の非自然アミノ酸について、遺伝暗号拡張又は遺伝暗号リプログラミングを介して、非自然アミノ酸を様々な表示技術(例えば、mRNA表示、ファージ表示等)に組み込むという課題を克服する作業が進行中である。対照的に、本開示の実施形態は、これらのペプチドの候補を系統的に変異させて、バイオマーカー検索のためのプローブとしてのオリジナルの、自然起源の候補ペプチドよりも良く実行するバリアントペプチド配列(すなわち、合成ペプチド)を見つけることを伴う。これらのバリアントペプチド配列は、ヒトプロテオームに見つけられる見込みはなく(自然対非自然)、少なくともそれらが由来するタンパク質の部分の少なくとも知られていない(すなわち非自然起源の)バリアントである。一態様において、本開示のペプチドは、所与の病態を有する対象を精確に診断するための、及びどの治療が所与の対象にとって効果的であるかを知らせるための検出スキームにおいて実行することができる。
【0074】
図1に戻ると、ペプチド分類子を特定する方法100の実施形態は、第1の複数のペプチドを特定し、合成する工程102を含む。第1の複数のペプチドの少なくとも一部分は、少なくとも1つの自然起源のアミノ酸配列を規定することができる。例えば、ペプチドは、完全に部分的な又は全長の目的のタンパク質配列の長さに沿って、所与のアミノ酸分解能でタイルすることができる(図2を参照されたい)。いくつかの実施形態において、ペプチドは、全体のヒトプロテオーム又は別の目的のプロテオームを集約的に表すアミノ酸配列を有することができる。さらに、ペプチドは、全体のヒトプロテオーム又は別の目的のプロテオームの少なくとも一部分の修飾された又はバリアントバージョンを集約的に表すアミノ酸配列を有することができる。例えば、ペプチドは、自然の又は野生型の配列に比べて、部分的又は完全にシトルリン化及び/又はホモシトルリン化することができる。
【0075】
方法100の次の工程104は、少なくとも第1の試料及び第2の試料を第1の複数のペプチドに接触させることを含む。第1の試料は、コホートの第1の群に由来し、第2の試料は、コホートの第2の群に由来する。第1の群は第2の群と異なる。このコホートは、概して、一般的に規定する特徴を有する対象の群である。例えば、コホートは、対象の群であってもよく、対象の一部は、特定の病態又は疾患を有するものと診断されている(又はその疑いがある)。より詳細には、コホート内の第1の群は、健康な(対照)対象の群であってもよく、コホート内の第2の群は、特定の病態、疾患、診断等を有することが知られている又はその疑いがある対象の群であってもよい。
【0076】
注目すべきことに、試料はコホート内の2つ以上の群に由来してもよい。以下の実施例に記載されるように、いくつかの実施形態において、コホートは3つ以上の群を含むことができる。例としての群は、少なくとも1つの対照又は健康な対象群、特定の治療が奏功した特定の病態に診断された対象群、及び特定の治療が奏功しなかった同特定の病態に診断された対象群を含むことができる。例としての群は、さらに、第1の病態と診断された対象の第1の群及び第1の病態と異なる第2の病態と診断された対象の第2の群を含むことができる。一態様において、第1及び第2の病態は、関連の異なる種類の関節炎(例えば、RA及び骨関節炎)又は異なる種類の癌等であってもよい。したがって、方法100は、第1の病態及び第2の病態に関連する試料間を識別するためのペプチド分類子を特定するために使用することができる。さらに、コホート内の各群からの1つ以上の試料を試験してもよい。例えば、コホート内の各群について、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、50、100、1,000、10,000個以上の試料を得ることができる。コホートの選択された群からの各試料は、以下に記載するように、1つ以上のペプチドと個別に又は組み合わせて接触させることができる。一態様において、試料は、血液試料、血清試料、頬側スワブ、尿試料、大便試料、組織試料等又はその組み合わせであってもよい。1つの試料は、概して、個別の対象から回収される。しかしながら、いくつかの実施形態において、1つの、合わせられた試料を提供するために、1つ以上の試料をプールすることが有用となり得る。
【0077】
方法100の次の工程106は、第1の複数のペプチドからペプチドの第1のサブセットを選択することを含む。ペプチドの第1のサブセットは、第1及び第2の群から第1及び第2の試料を少なくとも部分的に分類することができる候補のペプチドであってもよい。工程106の複数のペプチドを特定し、方法100は、第1の複数のペプチドから特定されたペプチドでペプチド分類子を規定する工程114に進んでもよい。あるいは、又はさらに、方法100の次の工程108は、第2の複数のペプチドを特定し、合成することを含む。第2の複数のペプチドの少なくとも一部分は、ペプチドの第1のサブセット及びペプチドの第1のサブセットの複数のバリアントペプチドの配列を規定することができる。例えば、複数のバリアントペプチドは、ペプチドの第1のサブセットのそれぞれについて、置換、削除、挿入、伸長及び修飾のうちの少なくとも1つを有するバリアントペプチドを含むことができる。一態様において、複数のバリアントペプチドは、本明細書に規定される1つ以上の合成ペプチドを含むことができる。
【0078】
方法100の次の工程110は、少なくとも第1の試料及び第2の試料(又はそれに相当する試料)を第2の複数のペプチドに接触させることを含むことができる。その後、方法100の次の工程112は、第2の複数のペプチドからペプチドの第2のサブセットを特定し、又はさもなければ選択することを含むことができる。ペプチドの第2のサブセットは、複数のバリアントペプチドの少なくとも1つを含むことができる。方法100の次の工程114において、ペプチド分類子は、ペプチドの第2のサブセットの少なくとも1つを含んで規定することができる。ペプチド分類子は、第1の群に由来する試料と第2の群に由来する試料とを識別することができる。さらに、ペプチド分類子は、方法100によって特定された1つ以上の合成ペプチドを含むことができ、それによって合成分類子を規定する。
【0079】
注目すべきことに、本開示による方法100の実施形態は、1つ以上の追加の工程を含み、又は方法100の説明した工程の1つ以上を省略することを含むことができる。例えば、ペプチドのサブセットを特定することができ、複数のバリアントペプチドを方法100の最初の工程を実行することなく調製することができる。すなわち、第1の複数のペプチドを特定し、合成する工程を省略し、第1の複数のペプチドを対象の試料に接触させ、特定し及び接触させる方法100の第1及び第2の説明した工程の結果に基づいて、ペプチドの第1のサブセットを選択することが可能となり得る。したがって、方法100は、第2の複数のペプチドを特定し、合成する工程から始めることができる。概して、方法100は、得られる分類子が合成であろうとなかろうと、分類子を規定する結果を提示することが依然として可能な任意の適切な方法で修正することができる。しかし、本開示の範囲にある方法100のその他のバリエーションは、追加の例及び本明細書に含まれる記述から明らかである。
【0080】
発明者は、本開示の態様がRAについてのペプチド分類子の特定に適用することができることを発見した。シトルリン化タンパク質に対する自己抗体は、88~99%の特異性で、RA患者の64~89%に見つけられる。シトルリン化ビメチン、フィブリン及びヒストンは自己抗体反応性の標的として関連しており、テネイシン-C等の新規の標的が明らかになってきている。このために、RA血清試料からの自己抗体のエピトープレベルの特徴化は、未変性及び修飾ペプチドの両方を含むペプチドライブラリを使用して実施した。特に、本開示は、部分的に、シトルリノーム及びホモシトルリノームを含む全ヒトプロテオームに対するRA血清試料における第1の血清抗体の不偏かつ包括的なプロファイリングを提供する。
【0081】
RAについてペプチド分類子を特定する場合、UniProtデータベースから全体的な注釈の付いたヒトプロテオームを示す460万超のペプチドを含むペプチドライブラリを作製した。合計で20,246個のタンパク質が、4アミノ酸のタイリング分解能を伴う重複する16マーのペプチドとして示された(図2を参照されたい)。自己抗体プロファイリングについての未変性ペプチドの他に、シトルリン化及びホモシトルリン化ペプチドもアレイに含められ、それぞれ、各アルギニン及び各リジンに置換し、全ての可能なエピトープに対して包括的なスクリーンを提供する。注目すべきことに、ペプチドライブラリは、例えば、ペプチド配列が2つ以上のアルギニン位置を含んだ場合において、シトルリン化及び非シトルリン化アルギニン位置の組み合わせを有するペプチドも含んだ。26個の血清試料(8つの対照及び18個のRA試料)について、免疫グロブリンG(IgG)抗体もプロファイルした。包括的な抗体プロファイリングは、結果として、以前にはRAに関連すると報告されていなかった多くのシトルリン化ペプチド及びタンパク質の驚くべき発見になった。
【0082】
ペプチドアレイ研究から生じた情報を使用して、8‐エピトープRA診断分類子を構築し、続いてナノリットルスケールのイムノアッセイシステム(GYRO LAB XPLORE)を使用して検証した。92個の試料のコホート(29個の対照及び63個のRA試料)をその後、RA診断分類子でナノリットルスケールのイムノアッセイシステムで評価し、性能において96%の特異性及び92%の感受性を得た。分類子を181個の血清試料(54個の対照及び127個のRA試料)の独立コホートでさらに検証し、性能において95%の特異性及び85%の感受性を得た。
【0083】
本開示は、RAについて、本明細書では、「RA Abinome」として規定される、第1の不偏性プロテオームレベル抗体プロファイルを提供すると考えられる。以前に特徴づけられているように、シトルリン化エピトープに対する抗体は、RA血清試料及びACPA陽性RA患者に容易に見られる。本開示のデータは、シトルリン化プロテオームに対する広範な抗体反応性がどのようにしてプロテオーム全体に生じている、また生じているように見えるのかを示す。ACPA反応性に比べて、ホモシトルリン化エピトープ(抗-CarP)に対する抗体反応性は、このコホートにおいてそれほど多く見られず、このことは、Shiら(Proc Natl Acad Sci USA.2011;108:17372-7)による影響力の強い報告と一致している。興味深いことに、抗-CarP抗体は、試験対象の18個のRA血清試料のうち4個に観察され、これらの個体は、ACPA反応性も示し、RA患者の抗-CarP陽性及びACPA陰性サブグループを構成しなかった。このことは、Peccaniら(Arthritis Res Ther.2016;18:276)にも一致し、抗CarP陽性患者の大部分がACPA陽性でもあった。
【0084】
RAと対照群の両方についての重要な反応性に関して、ジーンオントロジー(GO)タームエンリッチメント分析を実施した。自己抗体反応性について、対照を上回るRA群にユニークな特異的なGOタームエンリッチメントはなかった(表1)。抗CarP反応性について、たった1つの分子機能GOターム「アクチンフィラメント結合」が濃縮されていることが分かった。一方で、ACPA反応性は、33個の生物学的工程、50個の細胞成分及び0.05のp値で修正されたBenjamini-Hochbergで濃縮された51個の分子機能GOタームを有した。50個の細胞成分GOタームが濃縮されたが、多くの頂上の統計学的ヒットは、細胞質及びサイトゾルのような細胞内であった。これは、スチューデントt検定(p値=0.75)によって、細胞外ペプチドについて観察可能な優先がRA Abinomeに見られないという事実と相まって、RA滑膜内のペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によるシトルリン化のために、壊死組織が抗原の重要な源である(Arthritis Res Ther.2016;18:239).という考えに一致している。
【0085】
(表1)
【0086】
Cit/Rは、固有のペプチドがシトルリン(Cit)及びアルギニン(R)のそれぞれについて調製されたペプチド配列位置を示し、hc/Kは、ホモシトルリン(hc)及びリジン(K)のそれぞれについて、固有のペプチドが調製されたペプチド配列位置を示す。
【0087】
ペプチドアレイライブラリとナノリットルスケールのイムノアッセイシステムとの間の全体のシグナルは、2つのプラットフォーム間の表面化学の差異によって差異が予想されたとしても比較可能であった。ペプチドアレイシグナルは、より高い動的範囲を示し、強力なペプチドアレイシグナルを有するエピトープによるナノリットルスケールのイムノアッセイシステムに、検証に使用した全てのエピトープにおいて1未満の回帰係数と相まって、飽和効果が観察された。2つのプラットフォーム間のシトルリン化及びホモシトルリン化ペプチド対未変性ペプチドのシグナル対数比を比較する場合、決定の回帰係数は、エピトープに依存して、0.32~0.78に変化した。
【0088】
表面特徴がエピトープ構造及び続く提示及び同族パートナーに対する抗体の結合に影響を与え得るため、イムノアッセイ間の発見を翻訳することが困難になる可能性がある(J.R.Soc.、Interface 2012、9、2688-2695)。本開示により、アレイシグナルは、前述の課題を克服するために、定量的に処理した。2つのプラットフォーム間の定量的要求を比較すると、全体の一致率は全てのデータを合わせた場合、86.4%であった。
【0089】
直鎖状エピトープの全プロテオームスクリーニングは1つの特定の欠点を有し、すなわち、短直鎖状ペプチドは未変性タンパク質構造を取り入れることができる保証はない。発明者は、以前に、直鎖状ペプチドがタンパク質結合を発生させるのに必要とされる重要な構造を取り入れることができることを示した(Scientific Reports.7.10.1038/S41598-017-12440-1)。ヒト抗体結合直鎖状エピトープ対構造的/不連続エピトープの相対的な割合について多く議論されているが(PLoS ONE 10:e0121673;Biomed Res Int 2014、12)、本開示は、RA診断に潜在的に有益になり得る直鎖状エピトープの包括的な全プロテオームスクリーンを提供する。ペプチドアレイからRA Abinomeデータを発掘することによって、候補のエピトープを従来の方法で合成されたペプチドと共に、ナノリットルスケールのイムノアッセイシステムを使用してスクリーニングして、ペプチドアレイ特異的な仮性の発見を潜在的に回避した。8つのエピトープを合わせることによって、本開示の分類子の全体的な診断性能は、我々の最初の92個の試料コホートにおいて、95%特異的、92%感受性であった。ACPA陽性のRA試料の割合について背景を提供するために、92個の試料コホートにおいて、CCP2アッセイを実行した。全体的に、試験対象のRA試料は、CCP2アッセイによって、68.3%陽性であり、これに対し対照は3.4%陽性であり、96.6%の特異性及び68.3%の感受性を得た。注目すべきことに、本開示による8エピトープ分類子は、特異性について比較可能であるが、感受性についてRA診断血液試験(すなわちCCP2アッセイ)の現在のゴールドスタンダードより優れている。最後に、本開示の8エピトープ分類子の堅牢性を評価するために、181名の患者の独立した、市販のコホートで診断性能をさらに検証した。検証性能は、95%特異的、85%感受性であった。
【0090】
本開示の8エピトープ診断マーカーによって示されるように、直鎖状エピトープの全プロテオームプロファイリングが、疾患の予後及びRAの診断について新規の洞察を明らかにした点において、潜在的な有用性を有することを明らかにする。したがって、前述の8エピトープ分類子(表1)は、本明細書に記載のペプチドライブラリで特定されるペプチドの特徴から構築することができる多くの可能性としてのペプチド分類子のうちの1つに過ぎないことが理解される。特に、表2は、機械学習アルゴリズムによって予測されるRAについての分類子を規定するために、配列番号1~8861から選択することができる異なる特性のセットの数を示す。このアルゴリズムは、シード特性から始まり、貪欲に特異性の低下を最小にしながら、感受性を最大限に増加させる特性を反復的に探す。(a)感受性が完璧である、(b)有用な追加の特性が見つからない、又は(c)最大数の特性に到達したかの何れかになると、アルゴリズムは停止する。特定の感受性及び特異性閾値をパスした全ての分類子は、ユーザーに戻される。各分類子を構築するのに使用される特性の数は、1~6であり、各分類子の感受性は、0.78~1.00であり、各分類子の特異性は1.00で一定であった。表2の残りの行は、ユニークな特性の数を増加させるために、機械学習アルゴリズムを使用して、それぞれの感受性/特異性の組み合わせで特定された得られる分類子の数を列挙している。
【0091】
(表2)
【0092】
例として、機械学習アルゴリズムによって配列番号1~8861から選択された3つのユニークな特性の群について、0.78の感受性で分類子は構築されず、0.83の感受性で31個の分類子が構築され、0.89の感受性で167個の分類子が構築され、0.94の感受性で38個の分類子が構築され、1.0の感受性で分類子は構築されなかった。前述のように、予測された3つの特性を持つそれぞれの分類子は1.00の特異性を有した。注目すべきことに、機械学習アルゴリズムは、1.00の予測される感受性及び特異性を有した6個以下のユニークな特性からなる合計236個の異なる分類子を特定した。表2に示されていないが、1.00の予測される感受性及び特異性を有する機械学習アルゴリズムによって、7つ以上の特性を含むさらなる分類子を特定することができると考えられる。
【実施例
【0093】
以下の実施例は、例示となることを目的とし、いかなる場合も限定することを意図しない。
【0094】
実施例1:
RAについてのペプチド分類子を特定するために、2013年4月12日にダウンロードした Universal Protein Resource(UniProt)から得た20,246個のタンパク質配列に基づくアレイフォーマットを使用して全プロテオームペプチドライブラリを設計した(クエリー:分類学:「ホモサピエンス(ヒト)[9606]」キーワード:「完全プロテオーム[KW-0181]」ANDレビュー:yes)。配列は、4つのアミノ酸のタイリング間隔で、重複する16マーの直鎖状ペプチドとしてタイルした(図2を参照されたい)。ペプチドアレイの設計は、その後、得られた16マーの直鎖状ペプチド配列をアレイ表面全体にランダムに分布させることによって作成した。自己抗体プロファイリングについての未変性ペプチドの他に、シトルリン化及びホモシトルリン化ペプチドもアレイに含められ、それぞれ、アルギニン及びリジンに置換した。全プロテオームアレイ設計に存在するペプチドプローブの合計数は、合計4,678,668個のペプチドプローブについて、2,014,531個の未変性ペプチド、1,363,951個の少なくとも部分的にシトルリン化したペプチド、及び1,300,186個の少なくとも部分的にホモシトルリン化したペプチドであった。
【0095】
マイクロアレイは、6-アミノヘキサン酸リンカーに結合されたアミノ官能化プラスチック支持体及び感光性の2-(2-ニトロフェニル)プロピルオキシカルボニル(NPPOC)保護基を有するアミノ酸誘導体を使用して、光誘導固相ペプチド合成によってMASで合成した。アミノ酸(最終濃度20mM)は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に、活性剤としてのN,N,N’,N’‐テトラメチル‐O‐(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウラニウム-ヘキサフルオロホスファート(HBTU;最終濃度20mM)、ラセミ化を抑制する6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(6-Cl-HOBt;最終濃度20mM)、及び基剤としてのN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA;最終濃度31mM)と5分間、予混合した。活性化したアミノ酸をその後、3分間、アレイ表面に結合した。各カップリング工程の後、マイクロアレイをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)で洗浄し、365nmの波長光を投影するデジタルマイクロ‐ミラー装置(HD1080p解像度)によって作製された画像を照射することによって、NPPOC保護基の部位特異的切断を達成した。カップリング周期を繰り返して、完全にインシリコで生成されたペプチドライブラリを合成した。試料を結合する前に、側鎖保護基の最終的な除去は、95%のトリフルオロ酢酸(TFA)、0.5%のトリイスプロピルシラン(TIPS)において30分間実行した。MASを使用したペプチドアレイの合成は、米国特許出願第10,161,938号、Patelらにさらに記載されている。
【0096】
ペプチドアレイを処理及び分析するために、アレイをメタノールに30秒間、2回インキュベートし、試薬グレードの水で4回洗浄した。アレイをTBST(1倍のTBS、0.05%Tween-20)に1分間洗浄し、TBSに1分間、2回洗浄し、試薬グレードの水に30秒間、最後の洗浄に暴露した。スライドは、その後、マイクロアレイドライヤーに遠心脱水した。
【0097】
結合緩衝液(0.01Mのトリス-Cl、pH7.4、1%のアルカリ可溶性カゼイン、0.05%のTween-20)に1:100で試料を希釈し、4℃で一晩アレイに結合した。試料を結合した後、アレイを洗浄緩衝液(1倍のTBS、0.05%のTween-20)に3回洗浄し、1回の洗浄に10分要した。二次結合緩衝液(1倍のTBS、1%のアルカリ可溶性カゼイン、0.05%のTween-20)に、1:10,000(最終濃度0.1ng/μl)に希釈したALEXA FLUOR647コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG二次抗体を介して、一次試料の結合を検出した。アレイを室温で3時間二次抗体とインキュベートし、その後洗浄緩衝液(1回の洗浄に10分)に3回、試薬グレードの水に30秒間洗浄し、遠心脱水した。マイクロアレイスキャナーを使用して、2μmの解像度及び15%のPMTゲインで、635nmでスキャンすることによって、二次抗体の蛍光シグナルを検出した。
【0098】
カスタムに開発したRパッケージを使用して、R統計学プログラミング環境バージョン3.2.3で、アレイのデータ分析を実行した。2-D loess smoother(Sの統計学モデル、2017、T.J.Hastieによって編集)を介して生アレイシグナル強度を空間的に修正し、逆重畳積分によってバックグラウンドを修正した(Bolstad 2004.Low Level Analysis of High-Density Oligonucleotide Array Data:Background、Normalization and Summarization)。片側コルモゴロフ-スミルノフ検定を使用して、特異的プローブの中心にある8マーのスライドウィンドウ内のシグナルが、サンプルしたバックグラウンドを上回っているかどうかを評価した(Methods in Enzymology、411、270-282)。0.05のスライドウィンドウ有意性を有する212を超える(又は4096個の蛍光ユニット)シグナル強度を使用して、重要な抗体反応性をカテゴリに分けた。重要な反応性を有する2つ以上の連続(オーバーラップを含む)プローブとしてエピトープを規定した。
【0099】
Rパッケージ「hclust」を使用して、全プロテオームアレイにプロファイルされた26個の血清試料の3つ以上の試料において、重要なエピトープに属するペプチドプローブ強度を使用して、対数変換されたアレイシグナル強度で、階層的クラスタリングを実行した。シトルリン化、ホモシトルリン化及び未変性ペプチドプローブについて個別に階層的クラスタリングを実行した。
【0100】
シトルリン化、ホモシトルリン化又は未変性ペプチドプローブの何れかにおける少なくとも1つの重要なエピトープを有するタンパク質を、DAVID Bioinformatics Resource6.8を介して、GOエンリッチメント分析のために提出した。「分子機能」、「細胞分画物」及び「結合タンパク質」における特定のGOタームのエンリッチメントを、全ての注釈の付いたヒトタンパク質に対して超幾何分布検定を介して実施した。P値をBenjamini-Hochberg法を使用して修正し、0.05未満のP値を有する及びGOタームを補足データに列挙する(Nature Protoc.2009;4(l):44-57;Nucleic Acids Res.2009;37(l):1-13)。全てのデータのグラフィックは、Rパッケージ「ggplot2」を使用して作製し、任意の追加の統計学的分析を、Rにおいて実施した。
【0101】
ナノリットルスケールのイムノアッセイシステムによるペプチドのさらなる分析のために、Fmoc及びBoc化学による従来の固相合成及び固体支持樹脂を使用して、ペプチドを調製した。C末端リジンの側鎖を介して、C末端アミド化及びビオチニル化でペプチドをさらに合成した。ペプチドを、その後、ナノリットルスケールのイムノアッセイプラットフォーム(GYROLAB XPLORE)を使用して分析した。このプラットフォームは、高感度のレーザー誘起蛍光(LIF)検出を使用して、同一のマイクロ流体チャネルに精細に制御されたイムノアッセイを自動化した。3ステップアッセイは、製造者の説明書にしたがって実行した。3ステップアッセイの捕獲相(capture phase)の間、1倍のリン酸緩衝食塩水+Tween(PBST)中の1μMのペプチドを使用した。血清試料を1倍のHNmax緩衝液に10%に希釈した。ALEXA FLUOR 647コンジュゲートヤギ抗ヒトFc二次抗体(1mg/mLのストック)を1倍のRexxip F緩衝液に3.6μg/mLに希釈した。シグナル強度の定量化は、5%のPMTスキャン設定のシグナルを使用して、GYROLAB EVALUATORソフトウェアによって得た。
【0102】
シグナルを抽出した後、各シトルリン化又はホモシトルリン化ペプチドに特異的なシグナルを、「信号対雑音」比と呼ばれる対応する未変性ペプチドに対する比に変換した。シトルリン化、ホモシトルリン化又は未変性ペプチドに特異的ではないシグナルを有するペプチドプローブについて、ペプチドなし対照からのシグナルを使用した。
【0103】
CCP2アッセイを実施するために、CCP2 IgG ELISAキットを製造メーカー(ABNOVA)から購入した。製造者の説明書にしたがってCCP2アッセイを実施したが、ただし、発色基質溶液を加えて5分後に反応を停止させた。得られる比色強度は、マイクロプレートリーダーを使用して450nmで測定した。
【0104】
未変性、シトルリン化及びホモシトルリン化直鎖状ペプチドプローブに対する抗体反応性の包括的ヒトプロテオームプロファイリングは、本明細書においてRA Abinomeと呼ばれるRA血清抗体レパートリーの第1の不偏性ポートレートを提示する。シトルリン化ペプチドプローブに対する抗体反応性は、RA群対対照群間を比較する場合、プロテオームの至る所にあるバーの全体の高さによって証明されるように、18個のRA血清試料のコホートにおいて、本明細書に記載されるように、高頻度で検出した(図3A~3F)。合計8,981個のシトルリン化ペプチドプローブ(合計のシトルリン化プローブの0.66%)が18個のRA試料のうちの10個以上の頻度で存在する有意な反応性を有し、現在のCCP2に基づく診断試験と同等の、診断分類子に使用するための要素を潜在的に提示する(Arthritis Res Ther 2017;19:115)。これは、実質的により低い頻度で観察した未変性及びホモシトルリン化ペプチドプローブに対する抗体反応性と対照的である。たった4つの未変性ペプチドプローブ
及び2つのホモシトルリン化ペプチドプローブ
が18個のRA試料(配列番号1~8861)のうちの10個以上の頻度で有意な反応性を示した。プロファイルも行った8つの対照血清試料に比べて、群間の反応性を有するペプチドプローブの平均数は、未変性及びホモシトルリン化ペプチドプローブについて、統計学的差はなかった(それぞれ、0.997及び0.997のp値)。一方、シトルリン化ペプチドプローブについて差異が検出された(p値0.020、図7及び表3)。
【0105】
(表3)
【0106】
表3は、置換カテゴリ及び標準偏差によって組織化された条件によって検出された重要なプローブの平均数を示す。RA(CCP陽性とCCP陰性の両方)と対照とを比較する場合、反応性を有するペプチドプローブの群間の平均数は、シトルリン化ペプチドプローブについて有意であり(等分散性t検定によるp値0.020)、未変性及びホモシトルリン化ペプチドプローブにおいて有意ではなかった(p値0.997及び0.997)。
【0107】
興味深いことに、対照試料について未変性ペプチドプローブに対する抗体反応性を観察し、これはNageleら(PLoS One 20l3;8:e60726)による報告と一致している。驚くべきことに、対照試料について、シトルリン化及びホモシトルリン化ペプチドプローブに対する反応性も観察し、特定の個体に制限されなかった。実際には、特定のシトルリン化及びホモシトルリン化ペプチドプローブは、最大50%の対照の個体に反応性を示していたが、RA個体には存在しなかった。
【0108】
フィラグリン及びフィブリン等の以前に報告された抗原におけるシトルリン化ペプチドプローブに対する抗体反応性を検出する他に、シトルリン化プロテオームに対してRA血清試料に検出された抗体反応性の多くは、RAに関連することを以前には報告されていなかった(表4)。340個のタンパク質内部のUniProt識別子(UniProt)によって列挙されるように、シトルリン化ペプチドプローブは、このコホートにおけるRA試料の18個のうちの10個以上の頻度(#)で抗体反応性を有した(表5)。このRAコホートの最も高い頻度の反応性を有する上位25個のタンパク質を表6に示す。
【0109】
(表4)広く知られている抗原に対する反応性の頻度
AA:自己抗体(未変性):C:シトルリン化: H:ホモシトルリン化
【0110】
(表5)
【0111】
(表6)RAに関連する25個の最も高頻度のシトルリン化タンパク質
【0112】
RA Abinomeにおいて、階層的クラスタリング分析は、18個のRA試料のうちの12個がシトルリン化ペプチドプローブに対して一貫したペプチドレベルの反応性を有し、対照からRA患者の固有の群を容易に形成した(図4、中央)。対照的に、未変性ペプチドプローブに対する抗体反応性(自己抗体)は、RAと対照試料とを識別する任意の能力を示さなかった(図4、左)。興味深いことに、4つのRA試料にホモシトルリン化ペプチドプローブに対する強い反応性が見られ、しかしながらこれらの個体は、シトルリン化ペプチドプローブに対して反応性も示し、ホモシトルリン陽性、シトルリン陰性サブグループを構成しなかった(図4、右)。
【0113】
ナノリットルスケールのイムノアッセイプラットフォームを使用して、RA血清におけるペプチドアレイの所見を検証した。直鎖状ペプチドアレイの重なる性質によって、直鎖状エピトープに対する抗体反応性は、複数の連続ペプチドプローブからのシグナルによって提示されることが予想される。これらのエピトープは、RA予後/診断に潜在的な意味を有し得、現在の診断検査の基礎になっているため、RA試料に観察される頻繁に発生するシトルリン化エピトープを表7に要約する。表6と一致して、頻繁に発生するエピトープを有するタンパク質の多くは、以前にはRAに関連していなかった。RA特異的エピトープをまとめることは、より制約のある視点を提示するが、それでも50%超の頻度のRA特異的抗体反応性がこのコホートに観察された。シトルリン化ペプチドプローブに対するこれらの頻繁に発生するエピトープは、大きさで、20個のアミノ酸(2つの連続するペプチド)から44個のアミノ酸(7個の連続するペプチド)であり、平均して26.7のアミノ酸である。50%の頻度で頻繁に発生するエピトープは、RA血清試料において、もっぱら、ホモシトルリン化及び未変性ペプチドに対して見られず、対照試料にも観察されなかった。
【0114】
(表7)RAに関連する25個の最も高頻度のシトルリン化エピトープ。開始及び終了位置は、エピトープに見られるペプチドの最初及び最後の位置を指す。
【0115】
頻繁に発生するエピトープについて抗体反応性の所見を検証するために、ナノリットルスケールのイムノアッセイシステムを使用した。ナノリットルスケールのイムノアッセイシステムは、マイクロフルイディクスを使用して、自動微小ELISA分析を実施する。図5A及び5Bに例示的な例を示し、ペプチド配列CNTCIYTEGWKCMAG-R/cit-GTCIAKENELCS(配列番号1)(位置30の周りの中央の影付きの領域)は、タンパク質PATE4(P0CRF1)の位置29~56に対応し、4つの連続するペプチドプローブをアレイに含み、末端リジン残基を介して、C末端ビオチニル化で、1つのエピトープとして、商業的に合成した。図5A及び5Bに示される8つの全ての試料(4つの対照及び4つのRA試料)において、アレイの未変性ペプチドについて、検出可能な抗体反応性は観察されなかった。これは、ナノリットルスケールのイムノアッセイシステムから得られる統合されたシグナルと一致している。対照的に、4つのRA試料のうちの3つは、このエピトープ、及びナノリットルスケールのイムノアッセイシステムにおいて、シトルリン化ペプチドについて、アレイに強い反応性を示した(図5B、右端の行)。ナノリットルスケールのイムノアッセイシステムから生成したシグナルと本開示のペプチドアレイとの間の全体的な一致は高く、ペプチドアレイの表面とナノリットルスケールのイムノアッセイシステムのストレプトアビジン被覆されたビーズとの間の表面特性の差によって、2つの技術間のシグナルは、完璧に定量的に(すなわち回帰係数及びR値によって)再現することはできない。しかしながら、検証実験において20以上のエピトープについて、アレイシグナルとナノリットルスケールのイムノアッセイシステムのアウトプットとを比較する定性的評価は、86.4%の一致を示した。
【0116】
表7に示される多くの数の頻繁に発生するシトルリン化エピトープがある場合、ナノリットルスケールのイムノアッセイシステムを使用してペプチドアレイに由来するエピトープデータに基づいて、新規のRA診断分類子を構築する可能性を探した。図6A及び6Bに示されるように、8つのエピトープ分類子(表1に示される配列)の全体的な診断性能を92個の試料(29個の対照及び63個のRA試料)のコホートにおいて最初に評価し、96%の特異性及び92%の感受性を得た。比較として、市販のCCP2アッセイを使用して、本発明のRA試料を試験し、96.6%の特異性及び68.3%の感受性を得た。これらの対照の試料のそれぞれをまとめて陽性RAと陽性特定したエピトープを選択することによって、8エピトープ分類子の選択が達成されたが、対照試料(すなわちRA陰性)試料は特定されなかったことを確実にした。例えば、RA陽性試料50~60だけを考慮すると、エピトープV1は、RA試料50~53及び55~60について陽性と特定し、対照試料の識別に成功した(すなわち、対照試料はRA陽性であると特定されなかった)。したがって、RA陽性試料54を特定するために、少なくともエピトープV3、V5、V17及びV27を含むエピトープと組み合わせて使用するために、いくつかのエピトープを選択することができた。注目すべきことに、エピトープV3、V5、V17及びV27のそれぞれは、さらに、図6Aに示されるように、その他のRA陽性試料の冗長な(ユニークな)又は非冗長な(ユニークではない)特定を提供した。
【0117】
ペプチド分類子として使用するために、エピトープの組みあわせを選択する様々な方法を考えられ得ることを理解されたい。対照試料の識別にも成功しながら、試料のセットから1つ以上のRA陽性試料を特定するエピトープの能力について、定性的又は定量的情報が知られている場合、手動で、又は試料のセットの少なくとも大半をまとめて正しく特定する自動化方法によって、エピトープの組みあわせを選択することができる。自動化方法として、本明細書に記載の機械学習アルゴリズム、当業者に理解されるエピトープの組みあわせを構築するその他の自動化方法が挙げられる。特定の状況において、エピトープのセットの感受性及び特異性を測定し、又は計算することによって、ペプチド分類子として使用されるエピトープのセットの有効性を計測することは有用となり得る。現在、主なCCP2アッセイは、約0.95の特異性及び約0.70の感受性を提供することができる。したがって、少なくとも0.95の特異性及び少なくとも0.70の感受性を有するペプチド分類子を選択することは有用となり得る。
【0118】
本開示の8つのエピトープ分類子(表1)の診断性能をさらに検証するために、181個の血清試料(54個の対照及び127個のRA試料)の独立コホートを市販されている源から得て、ナノリットルスケールのイムノアッセイシステムで試験を行った(図6B)。検証コホートにおける全体的な診断性能は、95%の特異性及び85%の感受性であった。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
【配列表】
0007575375000001.app