(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】熱硬化性反応性化合物としてモノメリックMDIを含むアスファルト組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 95/00 20060101AFI20241022BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20241022BHJP
C08G 18/64 20060101ALI20241022BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08L95/00
C08K5/29
C08G18/64 076
C08G18/79 070
(21)【出願番号】P 2021534361
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019084132
(87)【国際公開番号】W WO2020126585
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・フレイシェル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・プラウ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルデマール・シャッツ
(72)【発明者】
【氏名】バーニー・ルイス・マロンソン
(72)【発明者】
【氏名】イラン・オテロ・マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】ダグ・ヴィーベルハウス
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-017845(JP,A)
【文献】特開2014-227527(JP,A)
【文献】特開昭61-126125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0226343(US,A1)
【文献】特公昭45-013960(JP,B1)
【文献】特公昭45-013959(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08G 18/00- 18/87;71/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総質量に基づいて0.1~10.0質量%のモノメリックMDIを含むアスファルト組成物
であって、
モノメリックMDIがカルボジイミド変性されており、
カルボジイミド変性モノメリックMDI中の4,4'-MDIの質量パーセント割合が65~85%の範囲であり、且つカルボジイミドの質量パーセント割合がカルボジイミド変性モノメリックMDI中15~35%の範囲であり、かつ
カルボジイミド変性モノメリックMDIが2.1~2.5の範囲の官能性を有する、アスファルト組成物(但し、ポリウレタンポリマーを含む及び/又はモノメリックMDIとポリウレタンポリマーを形成することができるヒドロキシル基を有するポリマーを含むアスファルト組成物を除く)。
【請求項2】
組成物の総質量に基づいて少なくとも18重量%が、ホワイトスピリット溶媒中で5000Svedより大きな沈降係数を有する粒子である、請求項
1に記載のアスファルト組成物。
【請求項3】
組成物の総質量に基づいて20質量%より多くが、ホワイトスピリット溶媒中で10000~1000000Svedの範囲の沈降係数を有する粒子である、請求項
1又は2に記載のアスファルト組成物。
【請求項4】
カルボジイミド変性モノメリックMDIが、25℃において20~100mPa・sの範囲の粘度を有する、請求項
1~3のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
【請求項5】
カルボジイミド変性モノメリックMDIの量が、組成物の総質量に基づいて0.5~5.0質量%である、請求項
1~4のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
【請求項6】
カルボジイミド変性モノメリックMDIの量が、組成物の総質量に基づいて0.8~3.0質量%である、請求項
1~5のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
【請求項7】
カルボジイミド変性モノメリックMDIが、1~80ppmの範囲の鉄含有量を有する、請求項
1~6のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
【請求項8】
以下のステップ:
a)原料アスファルトを110~190℃の温度に加熱するステップ、
b)撹拌下で、所望する量のモノメリックMDI又はカルボジイミド変性モノメリックMDIを添加するステップ、
c)ステップb)の後、反応混合物を110~190℃の範囲の温度において、少なくとも2.5時間撹拌するステップ、
を含み、ここで前記の反応を酸素雰囲気下で行う、請求項
1~7のいずれか一項に記載のアスファルト組成物の製造方法。
【請求項9】
ステップa)及びステップc)の温度が同じであり、かつ110~150℃の範囲である、請求項
8に記載の製造方法。
【請求項10】
反応混合物を添加ステップb)の後、少なくとも4時間撹拌する、請求項
8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
反応の終了をIR分光法によって決定する、請求項
8~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
アスファルト混合組成物を調製するための、請求項
1~7のいずれか一項に記載のアスファルト組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的に、熱硬化性反応性化合物としてモノメリックMDIを含むアスファルト組成物に関する。
本発明はまた、アスファルト組成物の製造方法に関する。
本発明のアスファルト組成物は、機能温度範囲の拡大、高温でのより良好な貯蔵安定性、及びアスファルトの改善された変形抵抗特性、例えばアスファルトの有用な温度範囲、大きくなった弾性、及びより低い変形の可能性を示す。
【背景技術】
【0002】
一般に、アスファルトは、アスファルテン及びマルテンに分類されるさまざまな分子種を含むコロイド状物質である。粘弾性かつ熱可塑性であるアスファルトは、極度の低温から極度の高温までの温度範囲にわたって特性が変化する。アスファルトは、暑い気候では柔らかくなり、非常に冷たい場合にはひび割れる傾向がある。低温ではアスファルトはもろくなり、ひび割れが発生しやすくなる一方で、高温では柔らかくなり、物理的特性を失う。
【0003】
それぞれバインダーとして、より一般的な用語では改質剤として、熱硬化性反応性成分を添加することは、アスファルトの物理的特性をある範囲の温度にわたってより一定に保ち、及び/又はアスファルトが曝される温度範囲にわたって物理的特性を改善することを可能にする。
【0004】
それぞれ添加されたバインダーによって改質されているそのようなアスファルトは、当技術分野において何年もの間知られている。しかし、アスファルト工業においては、改善されたアスファルトに対するニーズが依然として存在する。一部には、これは、現在知られているポリマー改質アスファルトが、いくつかの欠点を有しているためである。それらには、例えば、永久変形(わだち掘れ)、曲げ疲労、湿気、低温使用時における弾性の低下を受けやすいことが含まれる。
【0005】
国際公開第01/30911A1は、組成物の総質量に基づき、質量で約1~8%のポリメリックMDIを含むアスファルト組成物を開示しており、そのポリメリックMDIは少なくとも2.5の官能性を有する。それはまた、2時間未満の反応時間を用いて、前記のアスファルト組成物を調製するためのプロセスにも関する。生成物であるMDI-アスファルトの形成は、生成物の粘度の上昇によって、あるいはより好ましくは動的機械分析(DMA)によって測定される。
【0006】
国際公開第01/30912A1は、アスファルト及び水のほかに、乳化可能なポリイソシアネートを含む水性アスファルトエマルジョンを開示している。それはまた、前記のエマルジョンを含む凝集体組成物、及び前記の組成物を調製するためのプロセスに関する。
【0007】
国際公開第01/30913A1は、組成物の総質量に基づき、質量で約1~5%のポリメリックMDIに基づくプレポリマーを含むアスファルト組成物を開示しており、そのポリメリックMDIは少なくとも2.5の官能性を有する。それはまた、前記のアスファルト組成物を調製するためのプロセスにも関する。
【0008】
欧州特許第0537638B1明細書は、100質量部のビチューメンに対して、0.5~10質量部の官能化されたポリオクテナマーを含み、任意選択により場合によっては架橋剤を含んでもよいポリマー改質ビチューメン組成物を開示しており、そのポリオクテナマーが主にトランスポリオクテナマーであり、且つカルボキシル基並びにカルボキシル基から、例えばマレイン酸誘導される基を含むことを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第01/30911号
【文献】国際公開第01/30912号
【文献】国際公開第01/30913号
【文献】欧州特許第0537638号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
結果として、従来技術に関連する全ての不利な点、例えば、限られた有用な温度範囲、限られた弾性応答、及び低い軟化点を回避できるアスファルト組成物及び関連する調製プロセスを手にいれることが非常に望ましいであろう。
【0011】
本発明の目的の1つは、ある範囲の温度にわたってより一定であり、且つ高温でより良好な貯蔵安定性を有するという点で改善された物理的特性を示すアスファルト組成物を提供することであった。さらに、有用な温度範囲(useful temperature interval, UTI)の拡大を示し、非回復クリープコンプライアンス(Jnr)を低下させ、増大した弾性応答を有し、増大した定格荷重を有し、増加した交通量でそれぞれ低下した速度の状況において永久アスファルト変形の低下した可能性を有するアスファルト組成物が求められた。
【0012】
さらに、それぞれのアスファルト組成物の調製プロセスが提供されるべきであった。
【0013】
アスファルト組成物の様々な物理的特性は、当技術分野で知られており、かつ実験の節で詳細に説明されている様々な試験によって測定される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
弾性応答及び非回復クリープコンプライアンス(Jnr)はマルチ・ストレス・クリープ回復(Multiple Stress Creep Recovery, MSCR)試験で計算され、この試験ではアスファルトに一定時間、一定の荷重をかける。特定の期間の総変形は%で示され、バインダーの弾性の尺度になる。さらに、位相角を測定することができ、これは改質されたバインダーの改善された弾性応答(低下した位相角)を例証する。
【0015】
したがって、組成物の総質量に基づいて、0.1~10.0質量%のモノメリックMDIを含むアスファルト組成物を見出した。
【0016】
本発明のさらなる態様によれば、アスファルト組成物を調製するための方法が提供され、その方法は以下のステップ:
a)原料アスファルトを110~190℃の温度に加熱するステップ、
b)撹拌下で、熱硬化性反応性化合物として、所望の量のモノメリックMDIを添加するステップ、
c)ステップb)の後、その反応混合物を110~190℃の範囲の温度で少なくとも2.5時間撹拌するステップ、
を含み、
ここで、上記の反応は酸素雰囲気下で行われ、
この方法は、本発明の目的を達成する。さらに、アスファルト混合組成物の調製のためのアスファルト組成物の使用が提供される。
【0017】
驚くべきことに、本発明によるアスファルト組成物は、拡大した有用な温度範囲、増大した弾性応答、良好な接着、及び増大した定格荷重、並びに永久的なアスファルト変形の可能性の低下を示していることが発見された。
【0018】
この理論に拘束されることなく、現在、結果として生じる性能を得るために、コロイド構造の特定のモルフォロジーが必要であると考えられている。熱硬化性反応性化合物は、アスファルト成分からのフェノール、カルボン酸、チオール、無水物、及び/又はピロリック基、又は任意の反応性基と反応して、アスファルテンを一緒に結合し、結果として生じるアスファルト組成物中により大きな粒子をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい実施形態は、特許請求の範囲及び明細書で説明されている。好ましい実施形態の組み合わせは、本発明の範囲内であることが理解される。
【0020】
本発明によれば、アスファルト組成物は、熱硬化性反応性化合物としてモノメリックMDIを含む。
【0021】
一般に、本発明において使用されるアスファルトは、公知の任意のアスファルトであることができ、それは一般に任意の瀝青化合物(ビチューメン)を包含する。それは、ビチューメン又はアスファルトとよばれる材料のいずれかであることができる。
【0022】
たとえば、留出物、吹き込み、高真空、及びカットバックビチューメン、並びにたとえばアスファルトコンクリート、キャストアスファルト、アスファルトマスチック、及び天然アスファルト。例えば、直接蒸留されたアスファルトを用いることができ、それは、例えば、80/100又は180/220の針入度を有する。たとえば、アスファルトはフライアッシュを含まないものであることができる。
【0023】
好ましくは、アスファルトは、20~30、30~45、35~50、40~60、50~70、70~100、100~150、160~220、250~330の針入度、又は52-16、52-22、52-28、52-34、52-40、58-16、58-22、58-28、58-34、58-40、64-16、64-22、64-28、64-34、64-40、70-16、70-22、70-28、70-34、70-40、76-16、76-22、76-28、76-34、76-40の性能等級(performance grade)を有し、より好ましくは、アスファルトは、30~45、35~50、40~60、50~70、70~100、100~150、160~220の針入度、あるいは52-16、52-22、52-28、52-34、52-40、58-16、58-22、58-28、58-34、58-40、64-16、64-22、64-28、64-34、70-16、70-22、70-28、76-16、76-22の性能等級を有し、最も好ましくは、アスファルトは、40~60、50~70、70~100、100~150の針入度、あるいは52-16、52-22、52-28、52-34、52-40、58-16、58-22、58-28、58-34、64-16、64-22、64-28、70-16、70-22、76-16、76-22の性能等級を有する。
【0024】
一般に、熱硬化反応性化合物は、それぞれのアスファルトのアスファルテン及びマルテンに分類される様々な分子種と化学的に反応しうる化合物であり、アスファルトの物理的特性が広範囲の温度にわたってより一定でとどまっていることをもたらすコロイド構造の特定のモルフォロジーを生成するのに役立ち、及び/又はアスファルトが置かれる温度範囲にわたって物理的特性を向上させるのに役立つ。
【0025】
本発明による熱硬化性反応性化合物は、モノメリックMDIである。
【0026】
一般に、モノメリックMDI(mMDI)は当技術分野で知られており、メチレンジフェニルジイソシアネートとして知られている。それは、例えば、4,4’-、2,2’-、及び2,4’-異性体のような様々な異性体の形で生じうる。本発明によれば、アスファルトと相容性があることを条件として、mMDIの公知の異性体又は様々な異性体の混合物のいずれかを使用することができる。好ましくは、それは純粋な4,4’-MDI、2,4’-MDIと4,4’-MDIの混合物、低減された2,2’-MDI含有量を有する2,4’-MDI及び4,4’-MDIの混合物であり、より好ましくはそれは純粋な4,4’-MDI、2,4’-MDIと4,4’-MDIの混合物、最も好ましくはそれは純粋な4,4’-MDI(ピュア4,4’-MDI)である。好ましくは、4,4'-MDI異性体の量は、40~99.5%の範囲、より好ましくは、44%~99%の範囲、最も好ましくは、46%~98.5%の範囲である。
【0027】
熱硬化性反応性化合物はまた、カルボジイミド、ウレトンイミン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ウレア、又はビウレット基を含む変性された変異体を含むことができる。好ましくは、本発明による変性された変異体は、カルボジイミド変性されたモノメリックMDIである。より好ましくは、カルボジイミド変性モノメリックMDIは、4,4'-MDI及びカルボジイミド変性モノメリックMDIの混合物である。好ましくは、カルボジイミド変性モノメリックMDI中の4,4'-MDIの質量パーセント割合は、65~85%の範囲であり、カルボジイミドの質量パーセントは、カルボジイミド変性モノメリックMDI中、15~35%の範囲である。より好ましくは、カルボジイミド変性モノメリックMDI中の4,4'-MDIの質量パーセントは、70~80%の範囲であり、カルボジイミドの質量パーセントは、カルボジイミド変性モノメリックMDI中、20~30%の範囲である。好ましくは、本発明に従って使用されるmMDIは、少なくとも2.0、より好ましくは少なくとも2.1、最も好ましくは少なくとも2.15、例えば、2.2、2.3、又は2.4の平均イソシアネート官能基数を有する。これは全て、以下においてモノメリックMDI又はmMDIと称する。
【0028】
それぞれのMDIの物理的特性を調整するために、さらにその他のイソシアネート、ポリメリックイソシアネート、及び/又はプレポリマーを添加することもできる。
【0029】
本発明によれば、アスファルト組成物中の熱硬化性反応性化合物としてのモノメリックMDIの量は、アスファルト組成物の総質量に基づいて10.0質量%以下である。アスファルト組成物の総質量に基づいて、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、最も好ましくは3.0質量%以下である。本発明によれば、アスファルト組成物中の熱硬化性反応性化合物としてのモノメリックMDIの量は、アスファルト組成物の総質量に基づいて、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%、より好ましくは少なくとも0.7質量%、最も好ましくは少なくとも0.9質量%である。例えば、アスファルト組成物中の熱硬化性反応性化合物としてのモノメリックMDIの量は、0.5質量~1.8質量%の範囲、0.8質量%~1.7質量%の範囲、1.0質量%~1.9質量%の範囲、1.1質量%~2.0質量%の範囲、1.8質量%~3.2質量%の範囲、2.1質量%~3.7質量%の範囲、又は0.5質量%~2.5質量%の範囲であることができる。
【0030】
一般に、熱硬化性反応性化合物としてのモノメリックMDIの量は、それぞれのアスファルトの組成に左右されうる。85未満の針入度を有する硬質アスファルトに対しては、熱硬化性反応性化合物として、より少ない量のモノメリックMDIしか必要でなく、85を超える針入度を有する軟質アスファルトに対しては、熱硬化性反応性化合物としてのより多い量のそれぞれのモノメリックMDIが必要になりうる。この理論に拘束されることはないが、熱硬化性反応性化合物としてのそれぞれのモノメリックMDIの量は、様々なアスファルト中のn-ヘプタン不溶物ともよばれる極性成分(これはアスファルテンを含む)の濃度が異なることに起因して、再調整する必要があると現在考えている。85を超える針入度に対応する軟質アスファルトにおいては、アスファルテンが希釈され、それゆえ、より濃度が低く、このことは、より良好な性能を達成するために、熱硬化性反応性化合物としてより多い量のそれぞれのモノメリックMDI、及びより多くの酸化(これはアスファルト組成物の製造工程の酸素雰囲気によって供給されうる)を必要とする。
【0031】
一般に、少なくとも64の高温限界を有する性能グレードに対応する85未満の針入度を有するアスファルトについては、アスファルト組成物中の熱硬化性反応性化合物としてのそれぞれのモノメリックMDIの量は、0.1~3.0質量%の範囲であることができ、好ましくは熱硬化性反応性化合物としてのモノメリックMDIの量は2.5質量%以下、最も好ましくは2.3質量%以下、特に2.0質量%以下であり、熱硬化性反応化合物としてのモノメリックMDIの量はアスファルト組成物の総質量に基づいて、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%、より好ましくは少なくとも0.7質量%、最も好ましくは少なくとも1.0質量%である。
【0032】
一般に、64以下の高温限界を有する性能グレードに対応する85を超える針入度を有するアスファルトについては、アスファルト組成物の総質量に基づいて、アスファルト組成物中の熱硬化性反応性化合物としてのモノメリックMDIの量は、2.0質量%~10.0質量%の範囲であることができ、好ましくは、熱硬化性反応性化合物としてのモノメリックMDIの量は、5.0質量%以下、最も好ましくは4.5質量%以下、特に4.0質量%以下であり、熱硬化性反応性化合物としてのモノメリックMDIの量は、少なくとも2.0質量%、好ましくは少なくとも2.5質量%、より好ましくは少なくとも2.7質量%、最も好ましくは少なくとも3.0質量%である。
【0033】
一般に、アスファルトを改質することにより、様々な物理的特性に関する性能を改善することができ、例えば、増大した弾性応答を達成することができる。
【0034】
本発明によるアスファルト組成物を使用することにより、あるグレードから別のグレードへのシフトを達成することができる。たとえば、アスファルトpen(アスファルト針入度)50/70の改質は、熱硬化性反応性化合物として2質量%のモノメリックMDIを使用して、ポリマー改質アスファルト25/55-55Aを、あるいは熱硬化性反応性化合物としてのそれぞれのモノメリックMDIの量に応じて、針入度(pen)20/30又は30/45のようなより硬いグレードをもたらす。同じことは、熱硬化性反応性化合物として2質量%のモノメリックMDIを用いて針入度(pen)70-100をもつアスファルトを針入度50-70に変換すること、あるいは熱硬化性反応性化合物として3質量%のモノメリックMDIを用いてPmB25/55-55Aに変換することに適用される。また、性能グレードについては、より高いグレードへのシフトが達成可能であり、例えば、PG64-22は、熱硬化性反応性化合物として2質量%のそれぞれのモノメリックMDI、例えば、カルボジイミド変性モノメリックMDI、例えば、4,4’-MDI及びカルボジイミド変性モノメリックMDIの混合物を用いた改質の後、PG70-22をもたらす。
【0035】
本発明によるアスファルト組成物のそれぞれの特性、例えば、広がった有用な温度範囲、増大した弾性応答、良好な接着、及び増大した定格荷重、並びに永久的なアスファルト変形の低下した可能性は、特定の沈降係数をもつ粒子の濃度に左右され、沈降係数は、対応する組成物の粒子径に直接相関する。
【0036】
本発明によれば、アスファルト組成物は、ホワイトスピリット溶媒中で5000Svedより大きな沈降係数をもつ粒子を、組成物の総質量に基づいて少なくとも18質量%で有する。より好ましくは、ホワイトスピリット溶媒中で5000より大きな沈降係数をもつ粒子を組成物の総質量に基づいて20質量%、最も好ましくは、ホワイトスピリット溶媒中で5000Svedを超える沈降係数をもつ粒子を組成物の総質量に基づいて少なくとも23質量%であり、ホワイトスピリット溶媒中で5000Svedより大きな沈降係数をもつ粒子は、組成物の総質量に基づいて100質量%以下であることができ、好ましくは、ホワイトスピリット溶媒中で5000Svedを超える沈降係数をもつ粒子の量は、組成物の総質量に基づいて95質量%以下、より好ましくは組成物の総質量に基づいて90質量%以下、最も好ましくは組成物の総質量に基づいて80質量%以下である。例えば、ホワイトスピリット溶媒中で15000~170000Svedの範囲の沈降係数をもつ粒子は組成物の総質量に基づいて18質量%~75質量%、例えば、ホワイトスピリット溶媒中で25000~140000Svedの範囲の沈降係数をもつ粒子は組成物の総質量に基づいて23質量%~65質量%、あるいは、例えば、ホワイトスピリット溶媒中で22000~95000Svedの範囲の沈降係数をもつ粒子は組成物の総質量に基づいて30質量%~52質量%である。
【0037】
本発明との関連で、ホワイトスピリット溶媒とは、18%の芳香族ベース及び180~220℃の沸点を有する、CAS-Nr.:64742-82-1をもつホワイトスピリット高沸点石油を意味する。
【0038】
沈降係数は、光吸収デバイスと組み合わされた超遠心分離によって検出した。各成分の沈降と濃度は、350nmの波長で測定した。この方法は当技術分野で公知であり、実験の節において詳細に説明されている。
【0039】
本発明のアスファルト組成物は、従来技術の任意の古典的なアスファルト組成物として使用することができる。本発明のアスファルト組成物は、以下のものの製造に特に有用であり得る。
- 塗料及びコーティング、特に防水用のもの、
- 接合部(ジョイント)を充填し、亀裂を封止するためのマスチック、
- 道路、飛行場、運動場などの表面仕上げ用のグラウト材及び熱間注入面材、
- 骨材(アスファルト組成物の約5~20%を構成する)を提供するための石との混合物(例:アスファルト混合物)
- 上記のように表面処理するためのホットコーティング材
- 上記のように表面処理するための表面コーティング材
- ウォームミックスアスファルト(WMA)
- ホットミックスアスファルト(HMA)。
【0040】
さらに、本発明は、本発明によるアスファルト組成物の調製プロセス(調製方法)に関し、その方法は以下のステップ:
a)原料アスファルトを、110~190℃の温度に加熱するステップ、
b)撹拌下で、熱硬化性反応性化合物として所望の量のモノメリックMDIを添加するステップ、
c)ステップb)の後、反応混合物を110~190℃の範囲の温度において少なくとも2.5時間撹拌するステップ、
を含み、ここで、反応は酸素雰囲気下で行われる。
【0041】
例えば、本発明のプロセスは、ステップa)及び/又はステップc)において、110~190℃の温度で実施することができる。好ましくは、温度は、110~180℃の範囲内、より好ましくは、115~170℃の範囲内、最も好ましくは、120~155℃の範囲内であり、例えば、温度は、121~152℃の範囲内である。
【0042】
一般に、ステップa)、b)、及びステップc)の温度は、110~190℃の範囲であり、ステップごとに異なっていてもよい。好ましくは、3つのステップのすべてにおいて温度は同じであり且つ110~190℃の範囲内、より好ましくは同じであり且つ110℃~170℃の範囲内、最も好ましくは同じであり且つ110℃~160℃の範囲内である。
【0043】
本発明によれば、アスファルト組成物の調製方法のステップb)において、熱硬化性反応性化合物としての所望の量のそれぞれのモノメリックMDIは、撹拌下で添加される。その所望の量は、組成物の総質量に基づいて、0.1~10質量%の範囲であることができる。
【0044】
一般に、その量は電位差滴定によっても決定することができ、その場合、アスファルト中の反応性基の量が決定され、熱硬化性化合物としてのそれぞれのモノメリックMDIの反応性基の当量重量と関連付けられる。滴定法は当技術分野で公知であり、実験の節で詳細に説明されている。
【0045】
一般に、異なる供給業者からのアスファルトは、原油がどの貯留槽からのものであるか、並びに製油所での蒸留プロセスに応じて、組成の点で異なる。しかしながら、反応性基の累積総量は、3.1~4.5mgKOH/gの範囲でありえる。
【0046】
たとえば、50~70又は70~100の針入度を有するアスファルトは、mMDIの化学量論量は0.8~1.2質量%になる。アスファルト組成物の調製時の昇温した温度下でのアスファルト成分の酸化に対する感受性によって新たに形成された官能基と反応するために、さらに過剰のmMDIが使用されることになる。
【0047】
本発明によれば、プロセスのステップc)は、ステップb)の後に実施される。反応混合物は、110~190℃の範囲の温度において少なくとも2.5時間撹拌され、好ましくは混合時間は少なくとも3時間、より好ましくは混合時間は少なくとも3.5時間、最も好ましくは混合時間は少なくとも4時間である。混合時間は最長20時間であることができ、好ましくは混合時間は15時間以下であり、より好ましくは混合時間は12時間以下であり、最も好ましくは混合時間は9時間以下である。例えば、熱硬化性反応性化合物としてそれぞれのmMDIを1~1.5質量%添加した後、混合時間は、2.5時間~4時間の範囲内、例えば、3時間または3.5時間であってよい。例えば、熱硬化性反応性化合物としてそれぞれのmMDIを1.5~5.0質量%添加した後、混合時間は、4時間~6時間の範囲内、例えば、4.5時間、5時間、又は5.5時間であってよい。例えば、熱硬化性反応性化合物としてそれぞれのmMDIを5~10.0質量%添加した後、混合時間は、6時間~15時間の範囲内、例えば、7時間、7.5時間、8時間、8.5時間、9時間、9.5時間、10時間、10.5時間、11時間、11.5時間、12時間、12.5時間、13時間、13.5時間、14時間、又は14.5時間であってよい。
【0048】
本発明によれば、アスファルト組成物を調製するためのプロセスは、酸素雰囲気下で実施されなければならない。好ましくは、酸素雰囲気中の酸素濃度は1~21体積%の範囲内であり、より好ましくは、酸素雰囲気中の酸素濃度は5~21体積%の範囲内であり、最も好ましくは、酸素雰囲気中の酸素濃度は10~21体積%の範囲であり、例えば、本発明のこのプロセスは、空気下又は酸素の飽和雰囲気下で実施される。
【0049】
本発明によれば、アスファルト組成物の調製のためのプロセスは、それぞれのアスファルトとそれぞれの熱硬化性化合物の激しい撹拌を可能にするため、及び酸素との接触を最大にするために、撹拌下で行われる。好ましくは、撹拌エネルギーは、1~14W/lの範囲内であり、より好ましくは撹拌エネルギーは2~12W/lの範囲内であり、最も好ましくは撹拌エネルギーは4.0~10.0W/lの範囲内である。
【0050】
一般に、このプロセスは、1つの反応容器、例えば貯蔵容器(コンテナ)中で実施される場合に限定されない。それぞれのアスファルトは、上述した条件下、例えば、酸素下で温度110℃~190℃で、例えば1時間、熱硬化性反応性化合物としてのmMDIと反応させることができる。次に、アスファルトを冷却し、別の反応容器に移送し、移送に続いて酸素下での総反応時間が少なくとも2.5時間になるように加熱することができる。この理論に拘束されないが、現在、ステップa)及びb)(最初のステップ)は、混合物を均質化し、アスファルトの反応性基と熱硬化性反応性化合物としてのそれぞれのmMDIの反応性基との反応を誘発させるためであると考えられている。熱硬化性反応性化合物は、アスファルテン表面に投入してもよい。ステップc)としてまとめられる第2の又は追加の加熱ステップは、酸化による架橋反応を補助するためである。
【0051】
<本発明によるアスファルト組成物の例>
【0052】
Z1:組成物の総質量に基づいて1.0~1.8質量%のモノメリックMDI。ここで、組成物の総質量に基づいて18質量%~65質量%は、ホワイトスピリット溶媒中で8000~200000スヴェドベリ(Svedbergs)の範囲内の沈降係数をもつ粒子である。
【0053】
Z2:組成物の総質量に基づいて1.8~3.2質量%の4,4’-MDI。ここで、組成物の総重量に基づいて22~70質量%は、ホワイトスピリット溶媒中で20000~140000スヴェドベリ(Svedbergs)の範囲内の沈降係数をもつ粒子である。
【0054】
Z3:組成物の総質量に基づいて1.2~2.2質量%のカルボジイミド変性モメリックMDI。ここで、組成物の総質量基づいて33~68質量%は、ホワイトスピリット溶媒中で28000~1000000スヴェドベリ(Svedbergs)の範囲内の沈降係数をもつ粒子である。
【0055】
Z4:組成物の総質量に基づいて1.2~1.6質量%のmMDI。ここで、組成物の総質量に基づいて33質量%~85質量%は、ホワイトスピリット溶媒中で25000~150000スヴェドベリ(Svedbergs)の範囲内の沈降係数をもつ粒子である。
【0056】
Z5:組成物の総質量に基づいて1.5~2.0質量%のモノメリックMDI。ここで、組成物の総質量に基づいて22質量%~58質量%は、ホワイトスピリット溶媒中で20000~250000スヴェドベリ(Svedbergs)の範囲内の沈降係数をもつ粒子である。
【0057】
Z6:組成物の総質量に基づいて2.3~2.9質量%のモノメリックMDI。ここで、組成物の総質量に基づいて27質量%~82質量%は、ホワイトスピリット溶媒中で12000~370000スヴェドベリ(Svedbergs)の範囲内の沈降係数をもつ粒子である。
【0058】
Z7:組成物の総質量に基づいて3.0~3.6質量%のモノメリックMDI。ここで、組成物の総質量に基づいて19質量%~62質量%は、ホワイトスピリット溶媒中で15000~135000スヴェドベリ(Svedbergs)の範囲内の沈降係数をもつ粒子である。
【0059】
Z8:組成物の総質量に基づいて1.6~3.5質量%のカルボジイミド変性モノメリックMDI(このカルボジイミド変性モノメリックMDI中の4,4’-MDIが、カルボジイミド変性モノメリックMDI中の70~80%、カルボジイミド変性モノメリックMDI中のカルボジイミドが、カルボジイミド変性モノメリックMDI中の20~30%であり、総質量に基づいて21質量%~50質量%が、ホワイトスピリット溶媒中で17000~500000スヴェドベリ(Sved)の範囲内の沈降係数をもつ粒子である。
【実施例】
【0060】
<実施例及び比較例>
[アスファルト組成物の調製のための一般的な手順]
【0061】
表1に従い、各グレードのアスファルト2.5kgを酸素雰囲気下で140℃まで加熱し、オイルバス(150℃までの温度に設定)中、400rpmで撹拌した。内部温度が100℃に達したら、表1に従いそれぞれの熱硬化性反応性化合物50gを溶融したアスファルトに添加した。撹拌エネルギーは5.6から12W/lまで変化した。反応物をさらに140℃で420分間処理した後、室温で冷却する。サンプルを、さらなる試験のために缶に入れ、室温で保管した。
【0062】
比較例1(#1)、4(#4)、及び6(#6)については、表1に従ってそれぞれのグレードのアスファルト2.5kgを酸素雰囲気下で140℃まで加熱し、オイルバス中(150℃までの温度に設定)、420分まで、400rpmで撹拌し、その後、室温で冷却した。サンプルを、さらなる試験のために缶に入れ、室温で保管した。
【0063】
例5(#5)については、3000gのアスファルト64-22を、オーブン中150℃において2時間、密閉容器内で加熱した。カバーを外したとき、予熱されたサンプルは150℃の温度を有していた。その後、それは酸素雰囲気下で加熱マントル内にひもで縛っておいた。20%のミキサー速度で、アスファルトに入れた温度コントローラーを使用した電気加熱マントルでアスファルトをさらに加熱して、温度を150℃±2℃に保持した。内部温度が150℃に達したら、2.2の官能性を有するmMDI(CDI13)を60g、溶融アスファルトに添加した。反応物をさらに150℃において150分間処理する。
【0064】
比較例2(#2)については、2.5kgのアスファルト50-70を酸素雰囲気下で140℃まで加熱し、オイルバス(温度を150℃に設定)中、400rpmで撹拌した。内部温度が100℃に達したときに、50gのAS20(2.0質量%)を溶融したアスファルトに添加した。反応物をさらに140℃において420分間撹拌し、その後、室温で冷却した。次に、そのサンプルを用いて、分析用超遠心分離機を使用してアスファルト組成物の粒子のパーセント割合を決定した。表2中の結果を参照されたい。
【0065】
例3(#3)については、2.5kgのアスファルト50-70を酸素雰囲気下で140℃まで加熱し、オイルバス(温度を150℃に設定)中、400rpmで撹拌した。内部温度が100℃に達したときに、50gのmMDI CDI13(2.0質量%)を、溶融したアスファルトに添加した。反応物をさらに140℃において420分間撹拌し、その後、室温で冷却した。次に、そのサンプルを用いて、分析用超遠心分離機を使用してそのアスファルト組成物の粒子のパーセント割合を決定した。表2中の結果を参照されたい。
【0066】
例7(#7)については、2.5kgのアスファルト70-100を酸素雰囲気下で140℃まで加熱し、オイルバス(温度を150℃に設定)中で、400rpmで撹拌した。内部温度が100℃に達したときに、50gのmMDI CDI13(2.0質量%)を溶融したアスファルトに添加した。反応物をさらに140℃において420分間処理した後、室温にて冷却する。次に、そのサンプルを用いて、分析用超遠心分離機を使用してアスファルト組成物の粒子のパーセント割合を決定した。表2中の結果を参照されたい。
【0067】
<実施例で使用した熱硬化性反応性化合物>
2.2の官能基数、29.5%のNCO含有量、及び25℃において40mPa・sの粘度を有する、CDI13の名称のmMDI、及び2.7の官能基数、31.5%のNCO含有量、及び25℃において210mPa.sの粘度を有する、As20の名称のpMDIを用いた。
それぞれの官能基数をもつmMDI及びpMDIは、例えば次の会社によって市販されている:Covestro、BASF SE、Huntsmannなど。
【0068】
<アスファルト又はアスファルト組成物あるいはアスファルト混合物の物理的特性を検出する方法>
例(実施例及び比較例)の値は、それぞれのDIN規格に準拠して決定される。
【0069】
<使用した方法の詳細な説明>
【0070】
[アスファルト試験]
【0071】
[軟化点 DIN EN 1427]
肩付きの真ちゅう製のリング中にキャストされた2つのビチューメンの水平なディスクを液体浴中で制御された速度で加熱し、その間、それぞれは鋼球を支えている。軟化点は、ビチューメンに包まれた各ボールが(25±0.4)[mm]の距離を落下するのに十分なまでに2つのディスクが軟化する温度の平均値として報告される。
【0072】
[ローリング薄膜オーブンテスト DIN EN 12607-1]
ビチューメンをボトル中、オーブン内で163[℃]において85[分]加熱する。そのボトルを15[rpm]で回転させ、加熱された空気を4000[mL/分]で、最低移動点において各ボトルに吹き込む。熱及び空気の影響は、オーブン処理の前及び後に測定した物理試験の値の変化から決定する。
【0073】
[動的せん断レオメーター(DSR)DIN EN 14770-ASTM D7175]
動的せん断レオメーター試験システムは、平行板、試験片の温度を制御するための手段、ローディング装置、並びに制御及びデータ取得システムから構成されている。
【0074】
[多重応力クリープ回復試験 DIN EN 16659-ASTM D7405]
この試験方法を使用して、2つの応力レベル(0.1及び3.2[kPa])及び特定の温度(50[℃])における剪断クリープ及び回復下でのアスファルトバインダー中の弾性応答の存在を決定した。この試験は、DSRを使用し、一定の応力において1[s]のあいだ、25[mm]の負荷をかけ、次に9[s]のあいだ回復させる。0.100[kPa]のクリープ応力において10回のクリープ及び回復のサイクルを行い、次に3.200[kPa]のクリープ応力において10サイクルを行う。
【0075】
<アスファルト中の反応性基を決定するための電位差滴定法>
【0076】
[酸価]
約0.5~1gのサンプルを50mlのトルエン中に溶かし、0.1モル/lの水酸化テトラブチルアンモニウム溶液を用いて電位差滴定を行った。数滴の水を滴定溶液に添加して、十分な電導度を確保することができる。ブランク値も同様に決定した。
【0077】
[塩基価]
約0.5~1gのサンプルを50mlのトルエン中に溶かし、0.1モル/lのトリフルオロメタンスルホン酸溶液を用いて電位差滴定を行った。数滴の水を滴定溶液に添加して、十分な電導度を確保することができる。ブランク値も同様に決定した。
【0078】
[分析用超遠心分離機(AUC)を使用したアスファルト組成物の粒子部分の測定]
アスファルト組成物の粒子部分を測定するために、分析用超遠心分離を使用した分別試験を行った。Beckman Optima XL-I(Beckman Instruments,パロアルト,米国)を使用して沈降速度試験を実施した。統合された走査型UV/VIS吸光度光学システムを使用した。350nmの波長を選択した。サンプルは、ホワイトスピリット溶媒(CAS-Nr.:64742-82-1)で希釈した後、約0.2g/Lの濃度で測定した。可溶部分と不溶部分を検出するために、遠心分離速度を1000rpm~55,000rpmの間で様々に変えた。
sとs+dsのあいだの沈降係数をもつものの重量分率として定義される沈降係数の分布、及び1つの沈降画分の濃度は、標準分析ソフトウェア(SEDFIT)を使用して決定した。経時の全半径方向の濃度プロファイルの変化を記録し、沈降係数gの分布に変換した。沈降係数は、Sved(1Sved=10~13秒)単位である。アスファルト組成物の粒子部分は、使用した波長における速い沈降画分及び遅い沈降画分の光吸収を定量化することによって決定した。
【0079】
【0080】
【0081】