(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ集合線及びカーボンナノチューブ集合線バンドル
(51)【国際特許分類】
C01B 32/168 20170101AFI20241022BHJP
D01F 9/12 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C01B32/168
D01F9/12
(21)【出願番号】P 2021543736
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032598
(87)【国際公開番号】W WO2021044964
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2019160768
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日方 威
(72)【発明者】
【氏名】藤森 利彦
(72)【発明者】
【氏名】大久保 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 順
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳一
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-213590(JP,A)
【文献】特開2015-093807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0243124(US,A1)
【文献】国際公開第2018/143466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/168
D01F 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ集合線であって、
前記カーボンナノチューブ集合線の
波長532nmを用いたラマン分光分析で得られたラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm
-1以上210cm
-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm
-1超280cm
-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IAが
0.5以上1.6以下であり、
前記積分強度IAは、前記カーボンナノチューブ集合線を構成する前記カーボンナノチューブのうち、その径が1.2nm超2.1nm以下の前記カーボンナノチューブに由来し、
前記積分強度IBは、前記カーボンナノチューブ集合線を構成する前記カーボンナノチューブのうち、その径が0.9nm以上1.2nm以下の前記カーボンナノチューブに由来し、
前記カーボンナノチューブ集合線の径が0.1μm以上100μm以下であり、
前記カーボンナノチューブ集合線の長さが100μm以上である、カーボンナノチューブ集合線。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ集合線の破断強度は、6.8GPa以上である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合線。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ集合線において、前記複数のカーボンナノチューブは0.9以上1以下の配向度で配向している、請求項1又は請求項2に記載のカーボンナノチューブ集合線。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線を複数備えるカーボンナノチューブ集合線バンドルであって、
前記カーボンナノチューブ集合線バンドルの
波長532nmを用いたラマン分光分析で得られたラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm
-1以上210cm
-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm
-1超280cm
-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IAが
0.5以上1.6以下であり、
前記積分強度IAは、前記カーボンナノチューブ集合線バンドルを構成する前記カーボンナノチューブのうち、その径が1.2nm超2.1nm以下の前記カーボンナノチューブに由来し、
前記積分強度IBは、前記カーボンナノチューブ集合線バンドルを構成する前記カーボンナノチューブのうち、その径が0.9nm以上1.2nm以下の前記カーボンナノチューブに由来し、
前記カーボンナノチューブ集合線において、前記カーボンナノチューブが0.9以上1以下の配向度で配向し、
前記カーボンナノチューブ集合線バンドルにおいて、前記カーボンナノチューブ集合線は0.8以上1以下の配向度で配向している、カーボンナノチューブ集合線バンドル。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ集合線バンドルの撚り角度は0°以上5°以下である、請求項4に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドル。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブ集合線バンドルの破断強度は、3.2GPa以上である、請求項4または請求項5に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カーボンナノチューブ集合線及びカーボンナノチューブ集合線バンドルに関する。本出願は、2019年9月3日に出願した日本特許出願である特願2019-160768号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
炭素原子が六角形に結合したグラフェンシートを円筒状にした構造のカーボンナノチューブ(以下、CNTとも記す。)は、銅の1/5の軽さで鋼鉄の20倍の強度、金属的な導電性という優れた特性を持つ素材である。このため、カーボンナノチューブを用いた電線は、特に自動車用モータの軽量化、小型化及び耐食性の向上に貢献する素材として期待されている。
【0003】
カーボンナノチューブは、例えば、特許文献1(特開2005-330175号公報)に示されるように、鉄などの微細触媒を加熱しつつ、炭素を含む原料ガスを供給することで触媒からカーボンナノチューブを成長させる気相成長法により得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Agnieszka Lekawa-Raus et al.“Electrical Properties of Carbon Nanotube Based Fibers and Their Future Use in Electrical Wiring”,Advanced Functional Materials,Vo.24,p.p.3661-3682(2014).DOI:10.1002/adfm.201303716
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線は、
複数のカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ集合線であって、
前記カーボンナノチューブ集合線のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm-1以上210cm-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm-1超280cm-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IAが0.1以上である、カーボンナノチューブ集合線である。
【0007】
本開示の他の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルは、
上記のカーボンナノチューブ集合線を複数備えるカーボンナノチューブ集合線バンドルであって、
前記カーボンナノチューブ集合線バンドルのラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm-1以上210cm-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm-1超280cm-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IAが0.1以上であり、
前記カーボンナノチューブ集合線において、前記カーボンナノチューブが0.9以上1以下の配向度で配向し、
前記カーボンナノチューブ集合線バンドルにおいて、前記カーボンナノチューブ集合線は0.8以上1以下の配向度で配向している、カーボンナノチューブ集合線バンドルである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線の代表的な構成例を説明する図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態で用いられるカーボンナノチューブの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルの代表的な構成例を説明する図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルのラマンスペクトルを示す図である。
【
図5】
図5は、実施例の試料1のカーボンナノチューブ集合線バンドルの光学顕微鏡写真である。
【
図6】
図6は、試料1のラマンスペクトルの領域Aにおけるラマンマッピング像を示す図である。
【
図7】
図7は、試料1のラマンスペクトルの領域Bにおけるラマンマッピング像を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例の試料2のカーボンナノチューブ集合線バンドルの光学顕微鏡写真である。
【
図9】
図9は、試料2のラマンスペクトルの領域Aにおけるラマンマッピング像を示す図である。
【
図10】
図10は、試料2のラマンスペクトルの領域Bにおけるラマンマッピング像を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線製造装置の代表的な構成例を説明する図である。
【
図12】
図12は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置の代表的な構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
現在のカーボンナノチューブの作製技術で得られるカーボンナノチューブは、その径が約0.4nm~20nm、かつ、長さが最大55cmである。カーボンナノチューブを高強度材として用いるためには、より長いカーボンナノチューブが必要であり、カーボンナノチューブを長尺化できる技術が検討されている。
【0010】
カーボンナノチューブを長尺化する方法として、複数のカーボンナノチューブを長手方向に配向させて集め、集合線とする方法が考えられる。
【0011】
そのような方法の一つとして、無配向の複数のCNTを分散剤(界面活性剤やポリマー等)と混合し、繊維状に射出成形することにより、CNT集合線を得る方法が検討されている(非特許文献1)。この方法では、CTN集合線作製後に分散剤を除去する工程を行う。しかし、分散剤の一部は、CNT集合線中に残留する。このため、CNTが有する機械的強度が低下する傾向があった。
【0012】
そこで、本開示は、優れた機械的強度を有するCNT集合線及びCNT集合線バンドルを提供することを目的とする。
【0013】
[本開示の効果]
上記態様によれば、優れた機械的強度を有するCNT集合線及びCNT集合線バンドルを提供することが可能となる。
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0015】
(1)本開示の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線は、
複数のカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ集合線であって、
前記カーボンナノチューブ集合線のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm-1以上210cm-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm-1超280cm-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IAが0.1以上である、カーボンナノチューブ集合線である。
【0016】
上記態様によれば、優れた機械的強度を有するCNT集合線を提供することが可能となる。
【0017】
(2)前記比IB/IAが0.1以上10以下であることが好ましい。
これによると、CNT集合線は更に優れた機械的強度を有することができる。
【0018】
(3)前記カーボンナノチューブ集合線において、前記複数のカーボンナノチューブは0.9以上1以下の配向度で配向していることが好ましい。
これによると、CNT集合線は更に優れた機械的強度を有することができる。
【0019】
(4)本開示の他の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルは、
上記のカーボンナノチューブ集合線を複数備えるカーボンナノチューブ集合線バンドルであって、
前記カーボンナノチューブ集合線バンドルのラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm-1以上210cm-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm-1超280cm-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IAが0.1以上であり、
前記カーボンナノチューブ集合線において、前記カーボンナノチューブが0.9以上1以下の配向度で配向し、
前記カーボンナノチューブ集合線バンドルにおいて、前記カーボンナノチューブ集合線は0.8以上1以下の配向度で配向している、カーボンナノチューブ集合線バンドルである。
【0020】
上記態様によれば、優れた機械的強度を有するカーボンナノチューブ集合線バンドルを提供することができる。
【0021】
(5)前記カーボンナノチューブ集合線バンドルの撚り角度は0°以上5°以下であることが好ましい。
これによると、CNT集合線バンドルは更に優れた機械的強度を有することができる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態にかかるカーボンナノチューブ集合線及びカーボンナノチューブ集合線バンドルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0023】
本開示の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、必ずしも実際の寸法関係を表すものではない。
【0024】
本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。また、範囲の上限値がCであるとは、範囲の上限がC以下であることを意味し、範囲の下限値がDであるとは、範囲の下限がD以上であることを意味する。
【0025】
[実施の形態1:カーボンナノチューブ集合線]
<カーボンナノチューブ集合線>
図1は本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線(以下、「CNT集合線」とも記す。)の代表的な構成例を説明する図である。
図1に示されるように、本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線1は、複数のカーボンナノチューブ2を含むカーボンナノチューブ集合線1であって、カーボンナノチューブ集合線1のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm
-1以上210cm
-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm
-1超280cm
-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IAが0.1以上である。
【0026】
(CNT集合線のラマンスペクトル)
本開示の一実施形態におけるCNT集合線は、そのラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm-1以上210cm-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm-1超280cm-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IA(以下、「積分強度比IB/IA」とも記す。)が0.1以上である。
【0027】
ラマンシフト120cm-1以上210cm-1以下の範囲における積分強度IAは、CNT集合線を構成するCNTのうち、その径が1.2nm超2.1nm以下のCNTに由来する。ラマンシフト210cm-1超280cm-1以下の範囲における積分強度IBは、CNT集合線を構成するCNTのうち、その径が0.9nm以上1.2nm以下のCNTに由来する。従って、積分強度比IB/IAが大きいほど、CNT集合線において、径が1.2nm超2.1nm以下のCNTに対する、径が0.9nm以上1.2nm以下のCNTの割合が大きいことを示す。
【0028】
本発明者らが鋭意検討した結果、積分強度比IB/IAが0.1以上であると、CNT集合線は優れた破断強度を有することが新たに見出された。この理由は、細径CNTがCNT集合線の間隙に充填されることで密度が向上し、隣接するCNTの間で生ずるすべりが抑制されるためと推察される。
【0029】
積分強度比IB/IAの下限は0.1であり、0.5が好ましく、1.0がより好ましい。積分強度比IB/IAの上限は特に限定されないが、例えば10とすることができる。積分強度比IB/IAは、0.1以上であり、0.1以上10以下が好ましく、0.5以上10以下がより好ましく、1.0以上10以下が更に好ましい。
【0030】
本明細書におけるCNT集合線のラマンスペクトルの測定及び評価方法について、下記(A1)~(A3)に説明する。
【0031】
(A1)ラマンスペクトルの測定
下記の装置及び測定条件を用いて、CNT集合線のラマンスペクトルを得る。
【0032】
〔ラマン分光分析の測定条件〕
ラマン分光装置:Renishaw社製「inVia Raman microscope」(商標)
波長:532nm
レーザー強度:0.3mW
対物レンズ倍率:50倍
スポット径:1μm
(A2)積分強度の測定
上記の測定条件において、1本のCNT集合線表面を走査して、測定点300ポイント以上におけるラマンスペクトルを得る。各測定点におけるラマンスペクトルをローレンツ関数でフィッティングし、シグナル強度、位置、半値幅(FWHM)を求める。これらの値を用いて、各測定点のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm-1以上210cm-1以下の範囲における積分強度Ia、及び、ラマンシフト210cm-1超280cm-1以下の範囲における積分強度Ibを求める。
【0033】
(A3)積分強度比IB/IAの算出
上記(A2)で得られた300ポイント以上の各測定点の積分強度Ia及びIbに基づき、各測定点の積分強度比Ib/Iaを算出する。300ポイント以上の各測定点の積分強度比Ib/Iaの平均値を算出する。該平均値が、積分強度比IB/IAに該当する。
【0034】
(カーボンナノチューブの形状)
カーボンナノチューブとしては、公知の構造のCNTを用いることができる。例えば、炭素の層(グラフェン)が1層だけ筒状になっている単層カーボンナノチューブや、炭素の層が複数層積層した状態で筒状になっている二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブ、底が抜けた紙コップの形をしたグラフェンが積層をした構造を有するカップスタック型ナノチューブ等を用いることができる。
【0035】
カーボンナノチューブの形状はとくに限定されず、先端が閉じているものまたは先端が開孔しているもののいずれも用いることができる。また、
図2に示されるように、カーボンナノチューブ2のチューブ部Tの一方又は両方の端部に、カーボンナノチューブの作製時に用いた触媒Pが付着していてもよい。又、カーボンナノチューブ2のチューブ部Tの一方又は両方の端部には円錐状のグラフェンからなるコーン部Cが形成されていてもよい。
【0036】
カーボンナノチューブの長さは、用途によって適宜選択することができる。カーボンナノチューブの長さは、例えば、10μm以上が好ましく、100μm以上が更に好ましい。特に、カーボンナノチューブの長さが100μm以上であると、CNT集合線の作製の観点から好適である。カーボンナノチューブの長さの上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、600mm以下が好ましい。CNTの長さは10μm以上600mm以下が好ましく、100μm以上600mm以下が更に好ましい。CNTの長さは、走査型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
【0037】
カーボンナノチューブの径の下限は、0.6nmが好ましく、0.7nmがより好ましく、0.8nmが更に好ましい。CNTの径の上限は20nmが好ましく、10nmがより好ましく、5nmが更に好ましい。CNTの径は0.6nm以上20nm以下が好ましく、0.7nm以上10nm以下がより好ましく、0.8nm以上5nm以下が更に好ましい。特に、カーボンナノチューブの径が0.8nm以上5nm以下であると、CNT集合線の高密度化による破断強度向上の観点から好適である。
【0038】
本明細書においてカーボンナノチューブの径とは、一のCNTの平均外径を意味する。CNTの平均外径は、CNTの任意の2カ所における断面を透過型電子顕微鏡により直接観察し、該断面において、CNTの外周上の最も離れた2点間の距離である外径を測定し、得られた外径の平均値を算出することにより得られる。CNTが一方又は両方の端部にコーン部を含む場合は、コーン部を除く場所において径を測定する。
【0039】
(カーボンナノチューブ集合線の形状)
本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線1は、複数のカーボンナノチューブ2を含む。カーボンナノチューブ集合線は、複数のカーボンナノチューブがそれらの長手方向に配向して集合した糸形状であることが好ましい。
【0040】
カーボンナノチューブ集合線の長さは特に限定されず、用途によって適宜調節することができる。CNT集合線の長さは、例えば、100μm以上が好ましく、1000μm以上がより好ましく、10cm以上が更に好ましい。CNT集合線の長さの上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、1m以下が好ましい。CNT集合線の長さは、100μm以上1m以下、1000μm以上1m以下、10cm以上1m以下とすることができる。CNT集合線の長さは、走査型電子顕微鏡、光学顕微鏡又は目視で観察することにより測定することができる。
【0041】
カーボンナノチューブ集合線の径の大きさは特に限定されず、用途によって適宜調節することができる。CNT集合線の径は、例えば、0.1μm以上が好ましく、1μm以上が更に好ましい。CNT集合線の径の上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、100μm以下が好ましい。CNT集合線の径は、0.1μm以上100μm以下、1μm以上100μm以下とすることができる。本実施形態において、CNT集合線の径の大きさは、CNT集合線の長さよりも小さい。すなわち、CNT集合線の長さ方向が長手方向に該当する。
【0042】
本明細書においてカーボンナノチューブ集合線の径とは、一のCNT集合線の平均外径を意味する。一のCNT集合線の平均外径は、一のCNT集合線の任意の2箇所における断面を透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察し、該断面においてCNT集合線の外周上の最も離れた2点間の距離である外径を測定し、得られた外径の平均値を算出することにより得られる。
【0043】
(配向度)
本開示の一実施形態におけるCNT集合線において、複数のカーボンナノチューブは0.9以上1以下の配向度で配向していることが好ましい。
【0044】
本明細書において、CNTの配向度とは下記(a1)~(a6)の手順により算出される値である。
【0045】
(a1)CNT集合線の撮像
下記の機器を用いて、下記の条件で、CNT集合線を撮像する。
【0046】
透過型電子顕微鏡(TEM):JEOL社製「JEM2100」(商標)
撮像条件:倍率5万倍~120万倍、加速電圧60kV~200kV。
【0047】
なお、出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいて、後述する配向度の測定結果を測定視野の選択個所を変更して複数回算出しても、測定結果のばらつきはほとんどないことが確認された。
【0048】
(a2)撮像された画像の二値化処理
上記(a1)で撮像された画像に対して、下記の画像処理プログラムを用いて、下記の手順に従い二値化処理を施す。
【0049】
画像処理プログラム:非破壊による紙の表面繊維配向解析プログラム「FiberOri8single03」(http://www.enomae.com/FiberOri/index.htm)
処理手順:
1.ヒストグラム平均輝度補正
2.バックグラウンド除去
3.単一閾値による二値化
4.輝度反転
【0050】
(a3)二値化処理された画像のフーリエ変換
上記(a2)で得られた画像に対して、上記と同一の画像処理プログラム(非破壊による紙の表面繊維配向解析プログラム「FiberOri8single03」(http://www.enomae.com/FiberOri/index.htm)を用いてフーリエ変換を行う。
【0051】
(a4)配向角度と配向強度の計算
フーリエ変換画像で、X軸正方向を0°として、反時計回りの角度(θ°)に対する平均振幅を計算する。
【0052】
フーリエ変換画像から、配向角度と配向強度との関係を示すグラフを得る。
(a5)半値幅の測定
上記のグラフに基づき、半値全幅(FWHM:full width at half maximum)を測定する。
【0053】
(a6)配向度の算出
上記の半値全幅に基づき、下記式(1)により、配向度を算出する。
【0054】
配向度=(180°-半値全幅)/180° (1)
配向度が0の場合は、完全無配向を意味する。配向度が1の場合は完全配向を意味する。
【0055】
本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線において、複数のカーボンナノチューブが0.9以上1.0以下の配向度で配向している。これは、本実施形態のCNT集合線において、複数のCNTの配向性が高いことを意味する。これにより、本実施形態に係るCNT集合線はCNTが有する電気伝導度や機械的強度の特性を維持したまま、長尺化することができる。
【0056】
CNT集合線におけるCNTの配向度が0.9未満であると、電気伝導度や機械的強度が低下する傾向がある。配向度の下限値は、0.93が好ましく、0.94がより好ましく、0.95が更に好ましい。配向度の上限値は、0.99が好ましく、1がより好ましい。CNT集合線におけるCNTの配向度は0.93以上0.99以下、0.94以上0.99以下、0.95以上0.99以下、0.93以上1以下、0.94以上1以下、0.95以上1以下とすることができる。
【0057】
(カーボンナノチューブのD/G比)
カーボンナノチューブは、波長532nmのラマン分光分析におけるGバンドのピーク強度とDバンドのピーク強度との比であるD/G比が0.1以下であることが好ましい。
【0058】
Gバンドとは、ラマン分光分析法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1590cm-1付近に見られるCNTに由来するピークである。Dバンドとは、ラマン分光分析法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1350cm-1付近に見られるアモルファスカーボンや、グラファイト、CNTの欠陥に由来するピークである。従って、D/G比の値が小さいほど、カーボンナノチューブの結晶性が高く、カーボンナノチューブに含まれるアモルファスカーボンや欠陥を有するグラファイトの量が少ないことを示す。
【0059】
CNTのD/G比が0.1以下であると、アモルファスカーボンやグラファイトの欠陥が少なく、結晶性が高い。よって該CNTは、高い引張強度と、高い電気導電率を有することができる。CNTのD/G比が0.1を超えると、CNTが十分な引張強度と高い電気導電率を有することができない場合がある。D/G比は0.1以下が好ましく、0.01以下がより好ましい。D/G比の下限値は特に制限されないが、例えば、0以上とすることができる。CNTのD/G比は、0以上0.1以下、0以上0.01以下とすることができる。
【0060】
本明細書中、カーボンナノチューブ集合線中のカーボンナノチューブのD/G比は、下記の方法により測定される値である。
【0061】
カーボンナノチューブ集合線について、下記の条件でラマン分光分析を行い、ラマンスペクトル(以下、CNT集合線のラマンスペクトルとも記す。)を得る。該CNT集合線のラマンスペクトルにおいて、Gバンドのピーク強度とDバンドのピーク強度とからD/G比を算出する。該CNT集合線のD/G比を、カーボンナノチューブ集合線中のカーボンナノチューブのD/G比と見做す。
【0062】
〔ラマン分光分析の測定条件〕
ラマン分光装置:Renishaw社製「inVia Raman microscope」(商標)
波長:532nm
レーザー強度:17mW
露光時間:1秒
平均回数:3回
対物レンズ倍率:50倍
本実施形態に係るCNT集合線中のCNTのD/G比を、CNT集合線のD/G比と同一と見做す理由は下記の通りである。
【0063】
本発明者らは、集合線化される前の複数のカーボンナノチューブについてラマン分光分析を上記と同一の条件で行い、ラマンスペクトル(以下、CNTラマンスペクトルとも記す。)を得た。得られた複数のCNTラマンスペクトルのそれぞれにおいて、Gバンドのピーク強度とDバンドのピーク強度とからD/G比を算出した。
【0064】
次に、該カーボンナノチューブを集合線化させて、CNT集合線を準備した。該CNT集合線について、上記の条件でラマン分光分析を行い、ラマンスペクトル(以下、CNT集合線ラマンスペクトルとも記す。)を得た。該CNT集合線ラマンスペクトルにおいて、Gバンドのピーク強度とDバンドのピーク強度とからD/G比を算出した。
【0065】
上記で算出された集合線化される前の複数のカーボンナノチューブのD/G比のデータを平均化した値と、CNT集合線のD/G比の値とはほぼ同一であることが確認された。これは、集合線化される前のカーボンナノチューブのD/G比が、CNT集合線中のCNTにおいて維持されていることを示す。従って、本明細書中、CNT集合線中のカーボンナノチューブのD/G比は、集合線化される前のCNTのD/G比と同一と見做すことができる。
【0066】
(触媒由来元素)
カーボンナノチューブ集合線は、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、金、銀、銅、イットリウム、クロム、パラジウム、白金及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、該金属元素は、前記カーボンナノチューブ集合線の長手方向に分散していることが好ましい。ここで、金属元素がCNT集合線の長手方向に分散しているとは、金属元素がCNT集合線の長手方向において偏在していないことを意味する。
【0067】
これらの金属元素は、CNT集合線の製造時に触媒(フェロセン(Fe(C5H5)2)、ニッケロセン(Ni(C5H5)2)、コバルトセン(Co(C5H5)2等)を使用した場合における、これらの触媒に由来するものである。CNT集合線において、これらの金属元素がCNT集合線の長手方向に分散して存在していると、金属元素がCNTの有する電気伝導度の特性に影響を与えることなく、CNT集合線は本来有する電気伝導度を維持したまま、長尺化することができる。
【0068】
CNT集合線に含まれる金属元素の種類、及び、その含有量は、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry、EDX)により確認及び測定することができる。CNT集合線における金属元素の合計含有量は原子数基準で0.1%以上50%以下が好ましく、1%以上40%以下がより好ましく、5%以上20%以下が更に好ましい。
【0069】
CNT集合線に含まれる金属元素がカーボンナノチューブ集合線の長手方向に分散していることは、SEMやTEM等の電子顕微鏡と同時計測可能なEDXや、電子エネルギー損失分光分析(Electron energy loss spectrometry、EELS)により確認することができる。
【0070】
カーボンナノチューブ集合線は、硫黄元素を含み、該硫黄元素は、前記カーボンナノチューブ集合線の長手方向に分散していることが好ましい。ここで、硫黄元素がCNT集合線の長手方向に分散しているとは、硫黄元素がCNT集合線の長手方向において偏在していないことを意味する。
【0071】
硫黄元素は、CNT集合線の製造時に補助触媒(CS2)を使用した場合における、該補助触媒に由来するものである。CNT集合線において、硫黄元素がCNT集合線の長手方向に分散して存在していると、硫黄元素がCNTの有する電気伝導度や機械的強度等の特性に影響を与えることなく、CNT集合線はこれらの特性を維持したまま、長尺化することができる。
【0072】
CNT集合線が硫黄元素を含むこと、及び、CNT集合線中の硫黄元素の含有量は、EDX、熱重量分析、X線光電子分光法により確認及び測定することができる。CNT集合線における硫黄元素の含有量は、原子数基準で0.1%以上20%以下が好ましく、1%以上15%以下がより好ましく、2%以上10%以下が更に好ましい。
【0073】
CNT集合線に含まれる硫黄元素がカーボンナノチューブ集合線の長手方向に分散していることは、SEMやTEM等の電子顕微鏡と同時計測可能なEDXや、EELSにより確認することができる。
【0074】
(CNT集合線の製造方法)
本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線は、例えば、
図11に示されるカーボンナノチューブ集合線製造装置20を用いて、下記の方法で製造することができる。
【0075】
カーボンナノチューブ集合線製造装置20は、管状のカーボンナノチューブ成長部(以下、CNT成長部とも記す)21と、CNT成長部21の中にCNT成長部21の一方の端部(
図11において右側の端部)から炭素含有ガスを供給するガス供給部22と、CNT成長部21内に触媒粒子Pを供給する触媒供給部23と、CNT成長部21の他方の端部側(
図11において左側の端部)に配置され、CNT成長部21で得られた複数のカーボンナノチューブを炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させるカーボンナノチューブ集合部24(以下、CNT集合部とも記す)とを備えることができる。
【0076】
触媒供給部はヒータ25により加熱される。カーボンナノチューブ成長部21は、電気炉28内に配置され、ヒータ(図示せず)によって加熱される。カーボンナノチューブ集合部24には、ハニカム構造体29が設けられている。ハニカム構造体29は多数の細い筒状の貫通孔291を有する多孔体であり、各貫通孔の断面積は0.01mm2以上4mm2以下、各貫通孔の長さは10mm以上200mm以下とするこができる。
【0077】
ガス供給部22から触媒供給部23内にアルゴンガスを供給しつつ、電気炉内の温度を1000℃まで昇温する。次に、アルゴンガスに加えて、メタンガス、及び、二硫化炭素(CS2)ガスを供給する。
【0078】
上記のアルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素ガスの供給により、触媒保持具26上に配置された触媒27が崩壊して触媒粒子がCNT成長部21内に放出される。ガス供給部22から触媒供給部23を通じてCNT成長部21内触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、触媒粒子Pから、カーボンナノチューブ2が成長する。
【0079】
カーボンナノチューブ2は、CNT集合部24に設けられたハニカム構造体29の貫通孔291を通過する。このとき、CNT2の端部に引張力が作用することで、触媒粒子Pから延びるCNTが引っ張られ、塑性変形して縮径しつつ長手方向に伸長される。なお、引張力は、炭素含有ガスの流速の変化に由来する。
【0080】
また、複数のCNT2は、ハニカム構造体29の貫通孔を通過する際に、炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合し、カーボンナノチューブ集合線が形成される。
【0081】
[実施の形態2:カーボンナノチューブ集合線バンドル]
図3は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドル(以下、「CNT集合線バンドル」とも記す。)の代表的な構成例を説明する図である。
図3に示されるように、本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドル3は、複数のカーボンナノチューブ集合線1を備え、該カーボンナノチューブ集合線バンドルのラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm
-1以上210cm
-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm
-1超280cm
-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IAが0.1以上であり、該カーボンナノチューブ集合線1において、カーボンナノチューブ2が0.9以上1以下の配向度で配向し、該カーボンナノチューブ集合線バンドル3において、カーボンナノチューブ集合線1が0.8以上1以下の配向度で配向している。
【0082】
(カーボンナノチューブ集合線バンドルの構成)
カーボンナノチューブ集合線バンドル3を構成するカーボンナノチューブ集合線1としては、実施の形態1のCNT集合線を用いることができる。また、該CNT集合線1を構成するカーボンナノチューブ2としては、実施の形態1に記載したカーボンナノチューブと同一のものを用いることができる。
【0083】
(ラマンスペクトル)
本開示の一実施形態におけるCNT集合線バンドルは、そのラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm-1以上210cm-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm-1超280cm-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IA(以下、「積分強度比IB/IA」とも記す。)が0.1以上である。
【0084】
ラマンシフト120cm-1以上210cm-1以下の範囲における積分強度IAは、CNT集合線バンドルを構成するCNTのうち、その径が1.2nm超2.1nm以下のCNTに由来する。ラマンシフト210cm-1超280cm-1以下の範囲における積分強度IBは、CNT集合線バンドルを構成するCNTのうち、その径が0.9nm以上1.2nm以下のCNTに由来する。従って、積分強度比IB/IAが大きいほど、CNT集合線バンドルにおいて、径が1.2nm超2.1nm以下のCNTに対する、径が0.9nm以上1.2nm以下のCNTの割合が大きいことを示す。
【0085】
本発明者らが鋭意検討した結果、積分強度比IB/IAが0.1以上であると、CNT集合線バンドルは優れた破断強度を有することが新たに見出された。この理由は、細径CNTがCNT集合線の間隙に充填されることで密度が向上し、隣接するCNTの間で生ずるすべりが抑制されるためと推察される。
【0086】
積分強度比IB/IAの下限は0.1であり、0.5が好ましく、1.0がより好ましい。積分強度比IB/IAの上限は特に限定されないが、例えば10とすることができる。積分強度比IB/IAは、0.1以上であり、0.1以上10以下が好ましく、0.5以上10以下がより好ましく、1.0以上10以下が更に好ましい。
【0087】
本明細書におけるCNT集合線バンドルのラマンスペクトルの測定及び評価方法は、測定対象をCNT集合線バンドルとする以外は、実施の形態1に記載のCNT集合線のラマンスペクトルの測定及び評価方法と同一であるため、その説明は繰り返さない。
【0088】
後述の実施例で作製されたCNT集合線バンドルのラマンスペクトルを
図4に示す。
図4において、試料2及び試料3が実施例であり、本実施形態のCNT集合線バンドルに該当する。
図4において、ラマンシフト120cm
-1以上210cm
-1以下の範囲は領域Aと示され、ラマンシフト210cm
-1超280cm
-1以下の範囲は領域Bと示される。試料2及び試料3では、それぞれ3つのピークが観察された。
【0089】
なお、出願人がCNT集合線バンドルにおける積分強度比IB/IAと、該CNT集合線バンドルを構成するCNT集合線における積分強度比IB/IAとを比較したところ、両者はほぼ同一の値を示すことが確認された。従って、本明細書において、CNT集合線バンドルにおける積分強度比IB/IAは、該CNT集合線バンドルを構成するCNT集合線における積分強度比IB/IAとも見做すことができる。
【0090】
(配向度)
本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルにおいては、カーボンナノチューブ集合線において、カーボンナノチューブが0.9以上1以下の配向度で配向し、該カーボンナノチューブ集合線バンドルにおいて、カーボンナノチューブ集合線1が0.8以上1以下の配向度で配向している。これは、本実施形態のCNT集合線バンドルにおいて、CNT及びCNT集合線の配向性が高いことを意味する。これにより、本実施形態に係るCNT集合線バンドルはCNTが有する電気伝導度や機械的強度の特性を維持したまま、長尺化することができる。
【0091】
CNT集合線におけるCNTの配向度が0.9未満であると、電気伝導度や機械的強度が低下する傾向がある。配向度の下限値は0.9であり、0.93が好ましく、0.94がより好ましく、0.95が更に好ましい。配向度の上限値は、0.99が好ましく、1がより好ましい。CNT集合線におけるCNTの配向度は0.93以上0.99以下、0.94以上0.99以下、0.95以上0.99以下、0.93以上1以下、0.94以上1以下、0.95以上1以下とすることができる。
【0092】
CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度が0.8未満であると、電気伝導度や機械的強度が低下する傾向がある。配向度の下限値は0.8であり、0.83が好ましく、0.85がより好ましい。配向度の上限値は0.95が好ましく、1がより好ましい。CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度は0.8以上0.95以下、0.83以上0.95以下、0.85以上0.95以下、0.8以上1以下、0.83以上1以下、0.85以上1以下とすることができる。
【0093】
カーボンナノチューブ集合線におけるCNTの配向度は、実施の形態1に記載したカーボンナノチューブ集合線におけるカーボンナノチューブの配向度の算出方法と同様の方法で算出される値であるため、その説明は繰り返さない。
【0094】
カーボンナノチューブ集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度は、基本的には実施の形態1の配向度の算出方法に記載された(a1)~(a6)の手順と同様の手順で算出される値である。異なる点は、(a1)の手順において、下記の機器を用いて、下記の条件で、CNT集合線バンドルを撮像する点である。
【0095】
走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy):テクネックス工房社製「Cry-10」(商標)
撮像条件:倍率40倍~10万倍、加速電圧1kV~17kV
【0096】
上記以外の工程は、実施の形態1の配向度の算出方法に記載された方法と同一であるため、その説明は繰り返さない。
【0097】
(形状)
カーボンナノチューブ集合線バンドルの形状は、複数のカーボンナノチューブ集合線がそれらの長手方向に配向して集合した紐形状である。CNT集合線バンドルが、複数のカーボンナノチューブ集合線がそれらの長手方向に配向して集合した紐形状であることは、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。
【0098】
カーボンナノチューブ集合線バンドルの長さは特に限定されず、用途によって適宜調節することができる。CNT集合線バンドルの長さは、例えば、100μm以上が好ましく、1000μm以上がより好ましく、10cm以上が更に好ましい。CNT集合線バンドルの長さの上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、1m以下が好ましい。CNT集合線バンドルの長さは、100μm以上1m以下、1000μm以上1m以下、10cm以上1m以下が好ましい。CNT集合線バンドルの長さは、光学顕微鏡又は目視で観察することにより測定することができる。
【0099】
カーボンナノチューブ集合線バンドルの径の大きさは特に限定されず、用途によって適宜調節することができる。CNT集合線バンドルの径は、例えば、1μm以上が好ましく、10μm以上が更に好ましい。CNT集合線バンドルの径の上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、1000μm以下が好ましい。CNT集合線バンドルの径は、1μm以上1000μm以下が好ましく、10μm以上1000μm以下が更に好ましい。本実施形態において、CNT集合線バンドルの径の大きさは、CNT集合線バンドルの長さよりも小さい。
【0100】
本明細書においてカーボンナノチューブ集合線バンドルの径とは、一のCNT集合線バンドルの平均外径を意味する。一のCNT集合線バンドルの平均外径は、一のCNT集合線バンドルの任意の2箇所における断面を光学顕微鏡で観察し、該断面においてCNT集合線バンドルの外周上の最も離れた2点間の距離である外径を測定し、得られた外径の平均値を算出することにより得られる。
【0101】
(撚り角度)
カーボンナノチューブ集合線バンドルの撚り角度は0°以上5°以下であることが好ましい。これによると、CNT集合線バンドルは更に優れた機械的強度を有することができる。ここでカーボンナノチューブ集合線バンドルの撚り角度とは、カーボンナノチューブ集合線バンドル3の長手方向に対する、カーボンナノチューブ集合線1の角度を意味する。なお、撚り角度は光学顕微鏡を用いて測定し、測定の際は、CNT集合線バンドルの長手方向が一直線となるように配置して測定する。
【0102】
カーボンナノチューブ集合線バンドルの撚り角度は0°以上4°以下がより好ましく、0°以上3°以下が更に好ましい。
【0103】
(カーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法)
本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルは、例えば、
図12に示されるカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置500を用いて製造することができる。
【0104】
カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置500、実施の形態1に記載のカーボンナノチューブ集合線製造装置20と、カーボンナノチューブ集合線製造装置により得られた複数のカーボンナノチューブ集合線を複数のカーボンナノチューブ集合線の長手方向に沿う方向に配向して束ねてカーボンナノチューブ集合線バンドルを得るバンドル部50とを備えることができる。
【0105】
バンドル部50は、カーボンナノチューブ集合線1に揮発性液体53を付着させる液体付着装置51と、液体付着装置51の下流に配置される絞り55と、複数のカーボンナノチューブ集合線に張力を加えながら、複数のカーボンナノチューブ集合線をその長手方向に沿う方向に配向して束ねて巻き取る巻取装置52を備えることができる。揮発性液体としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、キシレン、アニソール、トルエン、クレゾール、ピロリドン、カルビトール、カルビトールアセテート、水、エポキシモノマー、アクリルモノマーを用いることができる。揮発性液体にはモノマーあるいは樹脂が含まれる。
【0106】
まず、実施の形態1のCNT集合線の製造方法と同一の方法で複数のCNT集合線1を得る。該複数のCNT集合線1に揮発性液体53を付着させる。カーボンナノチューブ集合線1に揮発性液体53を付着させる方法としては、例えば、揮発性液体53を霧化して蒸気54とし、該蒸気54をカーボンナノチューブ集合線に噴霧することが挙げられる。なお、揮発性液体はその後蒸発する。
【0107】
次に、複数のカーボンナノチューブ集合線1を、巻取装置52で張力を加えながら絞り55に通過させることにより、それらを長手方向に配向して集合させる。これにより、CNT集合線バンドル3が形成される。
【0108】
[付記1]
本開示のカーボンナノチューブ集合線のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm-1以上210cm-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm-1超280cm-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IAは、0.1以上10以下が好ましい。
上記比IB/IAは、0.5以上10以下が好ましい。
上記比IB/IAは、1.0以上10以下が好ましい。
【0109】
[付記2]
本開示のカーボンナノチューブ集合線において、カーボンナノチューブの長さは、10μm以上600mm以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブの長さは、100μm以上600mm以下が好ましい。
【0110】
[付記3]
本開示のカーボンナノチューブ集合線において、カーボンナノチューブの径は、0.6nm以上20nm以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブの径は、0.7nm以上10nm以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブの径は、0.8nm以上5nm以下が好ましい。
【0111】
[付記4]
本開示のカーボンナノチューブ集合線の長さは、100μm以上1m以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線の長さは、1000μm以上1m以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線の長さは、10cm以上1m以下が好ましい。
【0112】
[付記5]
本開示のカーボンナノチューブ集合線の径は、0.1μm以上100μm以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線の径は、1μm以上100μm以下が好ましい。
【0113】
[付記6]
本開示のCNT集合線において、カーボンナノチューブが0.93以上0.99以下の配向度で配向していることが好ましい。
上記配向度は、0.94以上0.99以下が好ましい。
上記配向度は、0.95以上0.99以下が好ましい。
上記配向度は、0.93以上1以下が好ましい。
上記配向度は、0.94以上1以下が好ましい。
上記配向度は、0.95以上1以下が好ましい。
【0114】
[付記6]
本開示のカーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1590±20cm-1におけるピーク強度Gと、ラマンシフト1350±20cm-1におけるピーク強度Dとの比D/Gは、0以上0.1以下が好ましい。
上記比D/Gは、0以上0.01以下が好ましい。
【0115】
[付記7]
本開示のカーボンナノチューブ集合線バンドルのラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト120cm-1以上210cm-1以下の範囲における積分強度IAと、ラマンシフト210cm-1超280cm-1以下の範囲における積分強度IBとの比IB/IAは、0.1以上10以下が好ましい。
上記比IB/IAは、0.5以上10以下が好ましい。
上記比IB/IAは、1.0以上10以下が好ましい。
【0116】
[付記8]
本開示のカーボンナノチューブ集合線バンドル中のカーボンナノチューブ集合線において、カーボンナノチューブが0.93以上0.99以下の配向度で配向していることが好ましい。
上記カーボンナノチューブの配向度は、0.94以上0.99以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブの配向度は、0.95以上0.99以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブの配向度は、0.93以上1以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブの配向度は、0.94以上1以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブの配向度は、0.95以上1以下が好ましい。
【0117】
[付記9]
本開示のカーボンナノチューブ集合線バンドルにおいて、カーボンナノチューブ集合線の配向度は0.8以上0.95以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線の配向度は、0.83以上0.95以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線の配向度は、0.85以上0.95以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線の配向度は、0.8以上1以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線の配向度は、0.83以上1以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線の配向度は、0.85以上1以下が好ましい。
【0118】
[付記10]
本開示のカーボンナノチューブ集合線バンドルの長さは、100μm以上1m以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線バンドルの長さは、1000μm以上1m以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線バンドルの長さは、10cm以上1m以下が好ましい。
【0119】
[付記11]
本開示のカーボンナノチューブ集合線バンドルの径は、1μm以上1000μm以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線バンドルの径は、10μm以上1000μm以下が好ましい。
【0120】
[付記12]
本開示のカーボンナノチューブ集合線バンドルの撚り角度は0°以上4°以下が好ましい。
上記カーボンナノチューブ集合線バンドルの撚り角度は0°以上3°以下が好ましい。
【実施例】
【0121】
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
【0122】
<カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置の準備>
(装置1)
装置1として、その概要を
図12に示したカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置と同様の構成を有するカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置を準備した。具体的には、電気炉28内にカーボンナノチューブ成長部21及びカーボンナノチューブ集合部24を配置する。CNT成長部は、内径20mm、長さ800mmの石英管からなる。カーボンナノチューブ集合部24としては、セラミックスからなるハニカム構造体がCNT成長部と連続する石英管内に配置されている。ハニカム構造体は、200個/inch(200cpsi)の貫通孔を有し、一の貫通孔の断面積は1.96mm
2である。
【0123】
CNT成長部21のCNT集合部24と連続する側と反対側に触媒供給部23を配置する。触媒供給部23は内径20mm、長さ200mmの石英管からなり、CNT成長部と連続して配置されている。触媒供給部23内の触媒保持具26上に、触媒としてフェロセンが配置されている。触媒供給部23はヒータ25により加熱される。
【0124】
触媒供給部23のCNT成長部21と接続している側と反対側に、ガス供給部22が配置されている。
【0125】
CNT集合部24の下流側には、揮発性液体53を付着させる液体付着装置51と、絞り55と、巻取装置52が配置されている。液体付着装置51内には、揮発性液体53としてエタノールが封入されている。
【0126】
(装置2)
装置2として、基本的に装置1と同様の構成を有する装置を準備した。装置2では、ハニカム構造体は、400個/inch(400cpsi)の貫通孔を有し、一の貫通孔の断面積は1.21mm2である。
【0127】
(装置3)
装置3として、基本的に装置1と同様の構成を有する装置を準備した。装置3では、ハニカム構造体は、600個/inch(600cpsi)の貫通孔を有し、一の貫通孔の断面積は0.81mm2である。
【0128】
<カーボンナノチューブ集合線及びカーボンナノチューブ集合線バンドルの作製>
装置1~装置3の製造装置を用いて、それぞれ試料1~試料3のカーボンナノチューブ集合線バンドルを作製した。まず、装置1~装置3のそれぞれにおいて、ガス供給部からCNT成長部内にアルゴンガス濃度が100体積%のアルゴンガスを1000cc/minの流量(流速3.4cm/sec)で50分間供給しつつ、電気炉内の温度を1000℃まで昇温した。次に、アルゴンガスに加えて、メタンガスを50cc/minの流量(流速0.17cm/sec)、及び、二硫化炭素(CS2)ガスを1cc/minの流量(流速0.003cm/sec)で120分間供給した。アルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素を含む混合ガス(炭素含有ガス)全体の流速は、3.6cm/secである。
【0129】
上記のアルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素ガスの供給により、触媒が崩壊して触媒粒子がCNT成長部内に放出された。その後、CNT成長部内でCNTが成長した。
【0130】
その後、CNT集合部内でCNTが伸長するとともに集合し、CNT集合線が形成された。複数のCNT集合線を巻取装置で巻き取りながら、CNT集合線に揮発性液体(エタノール)を付着させ、その後揮発性液体を蒸発させて、試料1~試料3のCNT集合線バンドルを得た。
【0131】
また、装置2及び装置3では、CNT集合部から放出されたCNT集合線(試料2及び試料3のCNT集合線)も採取した。
【0132】
<カーボンナノチューブ集合線の測定>
(配向度)
試料2及び試料3のカーボンナノチューブ集合線について、配向度を測定した。配向度の算出方法は、実施の形態1に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。
【0133】
試料2のCNT集合線の配向度は0.93であった。
試料3のCNT集合線の配向度は0.91であった。
【0134】
(破断強度)
試料2及び試料3のCNT集合線について、破断強度を測定した。破断強度の測定方法は下記の通りである。
【0135】
長さ約3cmのCNT集合線を準備し、その両端を引っ張り治具板に接着剤で固定した。接着剤で固定されていない部分の長さ1cmのCNT集合線が破断するまでの引っ張り応力をロードセル(測定機器:(株)イマダ製「ZTS-5N」)を用いて計測した。
【0136】
試料2のCNT集合線の破断強度は6.8GPaであった。試料3のCNT集合線の破断強度は7.2GPaであった。これらは、従来の炭素繊維と同等の破断強度である。すなわち、試料2及び試料3のCNT集合線は優れた破断強度を有することが確認された。
【0137】
<カーボンナノチューブ集合線バンドルの測定>
(配向度)
試料1~試料3のカーボンナノチューブ集合線バンドルについて、配向度を測定した。CNT集合線におけるCNTの配向度の算出方法は、実施の形態1に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度の算出方法は、実施の形態2に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。結果を表1の「CNT配向度」及び「CNT集合線配向度」に示す。
【0138】
(ラマンスペクトル)
試料1~試料3のカーボンナノチューブ集合線バンドルについて、ラマンスペクトルを測定した。試料1~試料3のラマンスペクトルを
図4に示す。
図4において、ラマンシフト120cm
-1以上210cm
-1以下の範囲は領域Aと示され、ラマンシフト210cm
-1超280cm
-1以下の範囲は領域Bと示される。ラマンシフト120cm
-1以上280cm
-1以下の範囲において、試料1では2つのピークが観察され、試料2及び試料3では、それぞれ3つのピークが観察された。
【0139】
領域A及び領域Bにおいて、各ピークのピーク位置と、該ピーク位置におけるピーク強度、FWHM及び積分強度、並びに、積分強度比IB/IAを測定した。具体的な測定方法は実施の形態1及び実施の形態2に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。結果を表1の「ピーク位置」、「ピーク強度」、「FWHM」及び「積分強度」欄に示す。
【0140】
【0141】
(ラマンマッピング)
試料1及び試料2のCNT集合線バンドルについて、300ポイントの各測定点における積分強度をプロットし、ラマンマッピングを作成した。結果を
図5~
図10を用いて説明する。なお、後述の
図6、
図7、
図9及び
図10のラマンマッピング像では、積分強度の大きい程、色が薄くなっている。
【0142】
図5は、試料1のCNT集合線バンドルの光学顕微鏡写真を示す図である。
図5において、矩形で囲まれた領域は、ラマンマッピングが行われた領域に該当する。
図6は、試料1のCNT集合線バンドルのラマンスペクトルの領域Aにおけるラマンマッピング像を示す図である。
図7は、試料1のCNT集合線バンドルのラマンスペクトルの領域Bにおけるラマンマッピング像を示す図である。
図6及び
図7において矩形で囲まれた領域が、ラマンマッピングが行われた領域である。
【0143】
図6及び
図7より、試料1では、領域Aの積分強度が、領域Bの積分強度よりも大きいことが確認された。
【0144】
図8は、試料2のCNT集合線バンドルの光学顕微鏡写真を示す図である。
図8において、矩形で囲まれた領域は、ラマンマッピングが行われた領域に該当する。
図9は、試料2のCNT集合線バンドルのラマンスペクトルの領域Aにおけるラマンマッピング像を示す図である。
図10は、試料2のCNT集合線バンドルのラマンスペクトルの領域Bにおけるラマンマッピング像を示す図である。
図9及び
図10において矩形で囲まれた領域が、ラマンマッピングが行われた領域である。
【0145】
図9及び
図10より、試料2では、領域Bの積分強度が、領域Aの積分強度よりも大きいことが確認された。
【0146】
(撚り角度)
試料1~試料3のCNT集合線バンドルの撚り角度を、光学顕微鏡で観察することにより測定した。結果を表1の「撚り角度」欄に示す。
【0147】
(破断強度)
試料1~試料3のCNT集合線バンドルの破断強度を測定した。破断強度の測定方法は、上記のCNT集合線の破断強度の測定方法と同一であるため、その説明は繰り返さない。結果を表1の「破断強度」に示す。
【0148】
<評価>
試料1のCNT集合線バンドルは積分強度比IB/IAが0.1未満であり、比較例に該当する。試料2及び試料3は、積分強度比IB/IAが0.1以上であり、実施例に該当する。試料2及び試料3の破断強度は試料1の破断強度よりも優れていることが確認された。
【0149】
以上のように本開示の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
【0150】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0151】
1 カーボンナノチューブ集合線、2 カーボンナノチューブ、3 カーボンナノチューブ集合線バンドル、20 CNT集合線製造装置、21 CNT成長部、22 ガス供給部、23 触媒供給部、24 カーボンナノチューブ集合部、25 ヒータ、26 触媒保持具、27 触媒、28 電気炉、29 ハニカム構造体、291 貫通孔、50 バンドル部、51 液体付着装置、52 巻取装置、53 揮発性液体、54 蒸気、55 絞り、500 カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置、T チューブ部、C コーン部、P 触媒粒子