(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】方向性電磁鋼のコーティング用水性組成物
(51)【国際特許分類】
C23C 22/00 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
C23C22/00 B
(21)【出願番号】P 2021545995
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2020052666
(87)【国際公開番号】W WO2020161094
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-12
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523269111
【氏名又は名称】カンサイ ヘリオス オーストリア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】マフノ,マレク
(72)【発明者】
【氏名】シェレンベルク,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ティペルト,ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ラメットシュタイナー,カール
(72)【発明者】
【氏名】ブライトヴィーザー,クリスティアン
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-086647(JP,A)
【文献】特開昭56-075579(JP,A)
【文献】特開2004-143564(JP,A)
【文献】特開2014-095129(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158325(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079845(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0060465(US,A1)
【文献】Motoyoshi Kobayashi, et al.,Aggregation and Charging of Colloidal Silica Particles: Effect of Particle Size,Langmuir,2005年,Vol.21,p.5761-5769,pubs.acs.org/doi/full/10.1021/la04829z
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00 - 22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向性電磁鋼をコーティングするための水性組成物であって、
- アルミニウムカチオン、
- マンガンカチオン、
- リン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオン、
- コロイド状シリカ、および
- 任意選択で、鉄カチオン
を含み、前記組成物中に存在する、Al
2O
3として表されるアルミニウムカチオン、MnOとして表されるマンガンカチオン、P
2O
5として表されるリン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオン、SiO
2として表されるコロイド状シリカ、および任意選択で、FeOとして表される鉄カチオンが、(Al
2O
3)
2(MnO)
1.8-2.4(FeO)
0-0.2(P
2O
5)
5-7(SiO
2)≧
30という化学式を与える、水性組成物。
【請求項2】
前記化学式におけるSiO
2の数が30から10
0である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
前記化学式におけるSiO
2
の数が30から80である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項4】
前記化学式におけるSiO
2
の数が30から70である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項5】
前記化学式におけるP
2O
5の数が、5.4から6.
8である、請求項1
~4のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項6】
前記化学式におけるP
2
O
5
の数が、5.6から6.6である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項7】
前記化学式におけるP
2
O
5
の数が、5.8から6.4である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項8】
水酸化アルミニウムおよび/またはリン酸アルミニウムを含む、請求項1
~7のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項9】
酸化マンガン(II)、シュウ酸マンガン(II)および/または水酸化マンガン(II)を含む、請求項1
~8のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項10】
酸化鉄、酸化鉄(II)および/またはシュウ酸鉄(III)を含む、請求項1
~9のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項11】
前記コロイド状シリカが表面電荷を有しない、請求項1
~10のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項12】
前記コロイド状シリカが、5~80nmの
間のサイズのシリカ粒
子を含む、請求項1
~11のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項13】
前記コロイド状シリカが、5~60nmの間のサイズのシリカ粒子を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項14】
前記コロイド状シリカが、5~40nmの間のサイズのシリカ粒子を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項15】
シリカ粒子が球形シリカ粒子である、請求項12~14のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項16】
前記組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、1:6.5から1:26.
5である、請求項1
~15のいずれか
一項に記載の水性組成物。
【請求項17】
前記組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、1:6.8から1:20である、請求項1~15のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項18】
前記組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、1:7.5から1:18である、請求項1~15のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項19】
前記組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、1:8から1:16である、請求項1~15のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項20】
表面が、1.5μm未
満の層厚さを有する前記水性組成物でコーティングされるならば、組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が
、1:9から1:1
3である、請求項1
~19のいずれか
一項に記載の水性組成物。
【請求項21】
表面が、1.5μm未満の層厚さを有する前記水性組成物でコーティングされるならば、組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、1:10から1:12である、請求項1~19のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項22】
表面が、1μm未満の層厚さを有する前記水性組成物でコーティングされるならば、組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、1:9から1:13である、請求項1~19のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項23】
表面が、1μm未満の層厚さを有する前記水性組成物でコーティングされるならば、組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、1:10から1:12である、請求項1~19のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項24】
表面が、2から10μ
mの層厚さを有する前記水性組成物でコーティングされるならば、組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が
、1:10から1:1
4である、請求項1
~23のいずれか
一項に記載の水性組成物。
【請求項25】
表面が、2から10μmの層厚さを有する前記水性組成物でコーティングされるならば、組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、1:11から1:13である、請求項1~23のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項26】
表面が、2から5μmの層厚さを有する前記水性組成物でコーティングされるならば、組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、1:10から1:14である、請求項1~23のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項27】
表面が、2から5μmの層厚さを有する前記水性組成物でコーティングされるならば、組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、1:11から1:13である、請求項1~23のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項28】
請求項1
~27のいずれか
一項に記載の水性組成物の塗装を含む、方向性電磁鋼をコーティングする方法。
【請求項29】
前記方向性電磁鋼がフォルステライトで下地コーティングされている、請求項
28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば変圧器で使用される方向性電磁鋼(「GO)鋼)をコーティングするために適当な水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術には、方向性電磁鋼板を製造するための多数の方法が記載されている(すなわち、US5,288,736、US3,159,511、US5,643,370、JP2002-2112639、JP56-158816、DE1226129、DE1252220、DE19745445、DE60219158、EP0484904、EP1752548、EP2022874、EP2264220を参照されたい)。方向性電磁鋼板は、要求される軟磁性の性質を確実にするために、変圧器、発電機および高性能発電機で使用される。
【0003】
方向性電磁鋼は、本質的に、低炭素鋼(約0.01%から約0.1%の炭素含有率)であり、それは約2.5%から約7.0%の高ケイ素含有率を有する。結晶粒方位は、選択された圧延、焼きなましおよび焼戻しステップを通して達成される。この鋼板は、最終的に圧延方向に配向された双極子であり、磁性化されていることもある。そのような鋼板は、しばしば約0.2から約0.4mmの厚さを有する鋼帯として製造される。加工処理(輸送、板抜きなど)するまでの腐食に対して、これらを保護するために、板には通常、工場においてすでに、すなわち製造した後直ちに、ケイ酸Mg(「フォルステライト」)の約1から2μmの層が提供される。これは、MgOでコーティングすることにより実現され、MgOは焼きなましプロセス(「バッチ焼きなまし」)中に鋼からの表面のケイ素と反応してケイ酸塩になる。このコーティングは、以下「下地コーティング」と称する。
【0004】
「下地コーティング」の塗装方法は、例として、DE19816200、DE60219158およびDE2743859に記載され、本質的に以下のステップを含む:
- 約10%の水性MgO分散液を塗装するステップ、
- 100℃で乾燥しきるステップ、
- 水素ガス雰囲気中1000~1350℃で焼きなましするステップ、
- 冷却するステップ、および
- 過剰なMgOをブラシで落として清浄化するステップ。
【0005】
下地コーティングは、腐食に対する一時的に十分な保護を提供し、本質的に電気的に絶縁性である。
【0006】
コーティングのタイプに基づいて、これは、下地コーティングに不規則性、特に最も微細な細孔を生じ得て、そのことは、初期には気付かれずに、遅れて腐食を生じさせる。
【0007】
US4,120,702では、ケイ酸塩保護層を有する鋼板を、それらの表面を、リン酸塩イオン、シリカ粒子、鉄および/またはマンガンイオンおよび陰性イオンを含有する水性溶液で最初にコーティングすることにより、コーティングする方法が開示されている。コーティング方法の過程では、次に鋼板は、400℃と1100℃の間の温度に約4分から10分の間加熱されて、それにより保護リン酸塩層を形成する。
【0008】
方向性電磁鋼の耐食性を改善してそれらの表面を電気的に絶縁することを可能にする方法および手段を提供することが本発明の課題である。それに加えて、これらの手段は、方向性電磁鋼のための現在多くのコーティング手段に存在するクロムなどの環境に有害な金属を含むべきでない。
【0009】
使用者の便宜を確実にするために、数種類の成分を混合することなくそのまま使用することができて、それに加えて、品質に制限されずに長期間貯蔵することができる方向性電磁鋼をコーティングするための組成物を提供することが本発明のさらなる課題である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、
- アルミニウムカチオン、
- マンガンカチオン、
- リン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオン、
- コロイド状シリカおよび
- 任意選択で鉄カチオン
を含み、ここで、アルミニウムカチオンは、Al2O3として表され、マンガンカチオンは、MnOとして表され、リン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオンは、P2O5として表され、コロイド状シリカはSiO2として表され、および任意選択で鉄カチオンは、FeOとして表され、それらは(Al2O3)2(MnO)1.8-2.4(FeO)0-0.2(P2O5)5-7(SiO2)≧30という総和式で表される組成物で存在する、方向性電磁鋼をコーティングするための水性組成物に関する。
【0011】
驚くべきことに、最初に論じた課題は、本発明による水溶液を用いて解決し得ることが示された。本発明の貯蔵に安定な組成物は、方向性電磁鋼を耐食性にして保護し、およびそれを電気的に絶縁することを可能にして、該組成物はクロムなどの環境に有害な如何なる金属も含まない。それにより、本発明の組成物は、鋼の上にまたはフォルステライトでコーティングされた下地鋼の上に直接塗装することができる。
【0012】
本発明のさらなる態様は、方向性電磁鋼をコーティングするための水性組成物を製造する方法に関し、本特許出願で規定される(請求項1を参照されたい)、アルミニウムカチオンを遊離する化合物、マンガンカチオンを遊離する化合物、リン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオンを遊離する化合物、コロイド状シリカおよび任意選択で鉄カチオンを遊離する化合物を混合するステップを含む。
【0013】
本発明の組成物を製造するために、個々の化合物が、上記のように水に溶解される。そのような化合物を水と混合する方法は、先行技術に十分に記載されている。これらの成分を混合することにより、貯蔵安定な組成物を製造することが可能である。
【0014】
本発明の別の態様は、本発明による水性組成物または本発明による方法に従って製造することができる水性組成物を塗装することを含む、方向性電磁鋼をコーティングする方法に関する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、本発明によるコーティング方法により得ることができる方向性電磁鋼、好ましくは方向性電磁鋼板に関する。
【0016】
本発明の別のさらなる態様は、本発明による水性組成物または本発明による方法に従って製造することができる水性組成物を塗装することにより得ることができるコーティングを含む方向性電磁鋼、好ましくは方向性電磁鋼板に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による水性組成物は、水のほかに、アルミニウムカチオン、マンガンカチオン、リン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオン、コロイド状シリカおよび任意選択で鉄カチオンを、互いに特定のモル比で含む。この比は、化学式(Al2O3)2(MnO)1.8-2.4(FeO)0-0.2(P2O5)5-7(SiO2)≧30で表され、ここで、組成物に含有されるアルミニウムカチオンはAl2O3として表され、マンガンカチオンはMnOとして表され、リン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオンはP2O5として表され、コロイド状シリカはSiO2として表され、任意選択の鉄カチオンはFeOとして表される。金属カチオンは、好ましくは、金属水酸化物、金属酸化物または金属塩として水性組成物に添加される。リン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオンは、リン酸としてまたはリン酸塩としてのいずれかで組成物に混合し得る。
【0018】
本発明の好ましい実施形態により、上記の成分は、本発明の水性組成物に、化学式(Al2O3)2(MnO)1.8-2.4(FeO)0-0.2(P2O5)5-7(SiO2)30-100、好ましくは(Al2O3)2(MnO)1.8-2.4(FeO)0-0.2(P2O5)5-7(SiO2)30-80、より好ましくは(Al2O3)2(MnO)1.8-2.4(FeO)0-0.2(P2O5)5-7(SiO2)30-70が与えられるような量で、添加される。
【0019】
本発明による水性組成物は、鉄カチオンのほかに、またはその代わりに、他の金属カチオン(アルミニウムおよびマンガンカチオンを別にして)も含むことがある。組成物中における、これらの金属カチオンの、酸化物として表した、他の成分に対するモル比は、鉄カチオンの合計に対応する(このことについては請求項1を参照されたい)。
【0020】
この水性組成物は、方向性電磁鋼、特に方向性電磁鋼板をコーティングするために使用し得る。方向性電磁鋼板は、その製造後、腐食されやすいので、下地コーティング(一般的に、水性MgO分散液)でコーティングされる。この下地コーティングは、コーティング中の微細な細孔およびマクロ孔のために、鋼板を腐食に対して通常不十分にしか保護することができないので、下地コーティング鋼板に、さらなるコーティングを提供することが必要である。この(追加の)コーティングは、本発明による水性組成物によって得ることができる。
【0021】
下地コーティングにおける孔は、例えば、希釈された過マンガン酸塩溶液を適用することにより検出し得る。空孔率の程度に依存して、そのような溶液は、Mn VIIIイオンの選択的に露出された鋼表面への接近およびそれらの酸化生成物(Mn VIIのMn II/IIIへの還元と同時に生じる)により誘発されて、時間および濃度依存性で退色するであろう。そのような空孔率がそのような試験で決定されれば、この欠陥も、本発明によるコーティングまたは組成物それぞれによって、補修し得る。それにより、孔は最初のコーティングで閉鎖されて、同時に、腐食に対する持続可能な保護が確立され、その保護は優れた電気絶縁にも基づいて明らかに認められる。
【0022】
本発明の水性組成物は、ケイ酸塩およびリン酸塩の緻密な層に基づいて、腐食に対して高度に有効な保護を形成する。このコーティングは、以下の特性をさらに有する:耐加水分解性、1000℃までの耐焼きなまし性、電気絶縁性、下地コーティング(フォルステライト層)へのまたは直接鋼表面への、それぞれ良好な接着性、加工処理条件下における非粘着性、その後の塗装作業における磁性制限振動(変圧器における、「変圧器ノイズ」)により惹起される音波の減弱。先行技術に記載されているコーティング手段は、大抵それらの使用直前に混合されて、即時使用できる組成物として利用できないが、これらは、本発明によるコーティングと比較して、上記の特性に関して顕著に劣る品質を生ずるとしても、匹敵し得る特性のために優れている。これに関する例として、そのようなコーティング手段が開示されているDE2247269に言及すべきである。これらが、使用されるケイ酸塩/リン酸塩マトリックスの所望の腐食防止特性を確実にするために、クロムを含むことが、それに記載された組成物の特定の特徴である。しかしながら、Cr VI化合物は、ヒトの健康および環境に対するそれらの有害な効果のために、益々、法的にも望ましくない。
【0023】
それ故、言及した有利な性質に不利に影響せずに、クロムを含まない組成物を提供することが必要である。しかしながら、スズ、バナジウム、チタネート、ジルコニウム錯体をクロムの代用とする自明な変種は、そのような化合物もまた毒性である、組成物の不十分な安定性を必然的に伴う、または低コストでより大量に入手できない、のいずれかであるので不成功であった。特にそのような組成物の不完全な安定性は、個々の成分として特に不利であり、したがって、別々に貯蔵しなければならず、それらの使用の直前に混合し得るにすぎない。
【0024】
本発明の水性組成物は、クロムを含まず、貯蔵に安定であり(22℃の室温で少なくとも3カ月)、1種の成分だけで構成されること、およびそれらで製造し得るコーティングが上掲の必要な物理的性質を有することを特徴とする。
【0025】
Al2O3:MnOの比を1:0.9未満に低下させた場合、そのときは組成物の安定性は著しく低下して、1:0.75ではより低下するかまたは消失することが示されている。対照的に、1:1.2を超える比は、液体調製物における安定性の問題(濁度、排出物)を大きくして、その結果として、硬化されたコーティングの最終の状態において、介在物、濁度、望ましくない色効果および孔を生じさせることになる。本発明の特に好ましい実施形態により、Al2O3:MnOの比は、1:1から1:1.2、より好ましくは1:1.1から1:1.2である。
【0026】
SiO2:P2O5の比は、好ましくは4.3を超えるべきである。しかしながら、本発明の好ましい実施形態により、この比は、4.3を超えて16.7未満、より好ましくは4.3を超えて13.3未満である。SiO2:P2O5の比が4.3未満であれば、その場合には、このことが本発明による組成物で生じ得るコーティングの加水分解および/または耐食性と関わる問題をもたらし得る。
【0027】
Al2O3:P2O5の比は、十分なSiO2コロイド抵抗性を確保するために、好ましくは1:2.5を超えるべきである。さらなるカチオン、特にマンガンの濃度に依存して、P2O5の部分が化学量論的に調節されるべきである。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、下地コーティング(フォルステライト、上記を参照されたい)中で孔が検出されたら、マンガン部分の一部が、第2のコーティング(本発明の組成物により製造し得る)で、酸化鉄によりまたはそれを用いて置き換えられるかまたは補完されてもよい。
【0029】
先行技術によれば、MnFe混合リン酸塩は可溶性に乏しく、したがって、下地コーティングの均質性(孔の閉鎖)ならびに第2のコーティングの安定性(耐加水分解性)に対して有利に貢献する。驚くべきことに、このことは、約600℃を超える温度で還元的に熱分解することが知られているシュウ酸鉄IIの使用により、最適に起こることができ、したがって、下地コーティング中の不純物を酸化鉄または鉄リン酸塩でそれぞれ補充するだけでなく、すでに酸化され始めている(anoxidized)鋼表面を還元する。
【0030】
本発明の好ましい実施形態により、請求項1に記載の化学式におけるSiO2の数は、30から100、好ましくは30から80、より好ましくは30から70である。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施形態により、化学式におけるP2O5の数は、5.4から6.8、好ましくは5.6から6.6、より好ましくは5.8から6.4である。
【0032】
本発明による組成物中に存在する、アルミニウムカチオン、マンガンカチオン、リン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオンおよび任意選択の鉄カチオンは、異なる塩、水酸化物、酸化物および/または水との塩を混合することにより、それらに導入し得る。それ故、本発明の好ましい実施形態により、本発明による組成物は、水酸化アルミニウムおよび/またはリン酸アルミニウムを含む。
【0033】
マンガンカチオンは、本発明による水性組成物に、好ましくは、酸化マンガン(II)、シュウ酸マンガン(II)および/または水酸化マンガン(II)として添加される。
【0034】
本発明の好ましい実施形態により、鉄カチオンは、本発明による水性組成物に、酸化鉄(II)および/またはシュウ酸鉄(II)として添加され、シュウ酸鉄(II)が特に好ましい。
【0035】
鉄カチオンの代わりにまたはそれに加えて、本発明の組成物は、貧溶性のリン酸塩またはピロリン酸塩をそれぞれ形成することができる、他のまたはさらなるそれぞれの金属カチオンをさらに含んでもよい。本発明による組成物中で、金属酸化物として表される金属カチオンは、アルミニウムおよびマンガンカチオンを差し引いて、酸化鉄として表される鉄カチオンに対して互いに請求項1に記載の化学式で示された同じ化学量論比で、存在する。
【0036】
水溶液中に含有されるコロイド状シリカは電荷を有しないことが特に有利であることが、本発明により示された。すなわち、荷電金属イオンを含むコロイド状シリカまたは同様のものは、それぞれ、あまり好ましくないかまたは望まれない。この理由で、本発明による水性組成物におけるコロイド状シリカは、表面電荷を本質的に有しない。
【0037】
本発明の好ましい実施形態により、コロイド状シリカは、5~80nm、好ましくは5~60nmの間、より好ましくは5~40nmの間のサイズのシリカ粒子、好ましくは球形シリカ粒子を含む。
【0038】
本発明による組成物におけるシリカ粒子は、5nmのサイズで400から450m2/gの比表面積、15nmのサイズで180から200m2/gの比表面積、20nmのサイズで130から150m2/gの比表面積、25nmのサイズで100から120m2/gの比表面積、30nmのサイズで90から110m2/gの比表面積、35nmのサイズで60から70m2/gの比表面積、40nmのサイズで40から50m2/gの比表面積を有する。
【0039】
表面に存在し、したがって、反応および縮合に自由に利用できるコロイド状シリカのヒドロキシル基のみが、形成されるマトリックスの密集状態のために利用できるので、球のサイズ、それらの比表面積ならびにヒドロキシル基が自由に利用可能なこと(例えば、ナトリウムイオンの「安定化」により封鎖されていない)が、液体調製物の耐久性のために、ならびに組成物から製造し得る最終コーティングの要求品質のために重要である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態により、コロイド状シリカの粒子の比表面積の合計の全金属酸化物の合計モル数に対する比は、1:10000から1:200000、好ましくは1:20000から1:150000、より好ましくは1:25000から1:100000、さらにより好ましくは1:30000から1:80000である。
【0041】
本発明のさらに好ましい実施形態により、組成物中における酸化物として表される金属イオンの合計、特にAl2O3として表されるアルミニウムカチオン、およびMnOとして表されるマンガンカチオンの合計の、シリカに対するモル比は、1:6.5から1:26.5、好ましくは1:6.8から1:20、より好ましくは1:7.5から1:18、より好ましくは1:8から1:16である。
【0042】
本発明の特に好ましい実施形態により、表面が1.5μm未満、好ましくは1μm未満の層厚さを有する水性組成物でコーティングされるならば、組成物中における、酸化物として表される金属イオンの合計、特にAl2O3として表されるアルミニウムカチオン、およびMnOとして表されるマンガンカチオンの合計の、シリカに対するモル比は、好ましくは1:9から1:13、より好ましくは1:10から1:12である。
【0043】
本発明の特に好ましい実施形態により、表面が2から10μm、好ましくは2から5μmの層厚さを有する水性組成物でコーティングされるならば、組成物中における、酸化物として表される金属イオンの合計、特にAl2O3として表されるアルミニウムカチオン、およびMnOとして表されるマンガンカチオンの合計の、シリカに対するモル比は、好ましくは1:10から1:14、より好ましくは1:11から1:13である。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態により、本発明による水性組成物は、10%と70%の間、好ましくは20%から60%、より好ましくは25%から40%の固体含有率を有する。
【0045】
本発明のさらなる態様は、方向性電磁鋼をコーティングするための水性組成物を製造する方法に関し、上で規定された、アルミニウムカチオンを遊離する化合物、マンガンカチオンを遊離する化合物、リン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオンを遊離する化合物、コロイド状シリカを遊離する化合物および任意選択で鉄カチオンを混合するステップを含む。
【0046】
イオンを遊離する化合物は、水中でイオン(例えば、アルミニウムのような金属イオン)を遊離することができる化合物である。イオンを遊離する化合物は、塩、酸化物、シュウ酸塩または水酸化物であってもよい。
【0047】
本発明の別のさらなる態様は、本発明による水性組成物または本発明による方法により製造し得る水性組成物を塗装することを含む、方向性電磁鋼をコーティングするための方法に関する。
【0048】
本発明の別の好ましい実施形態により、方向性電磁鋼はフォルステライトで下地コーティングされる。
【0049】
最初に言及したように、コーティングすべき方向性電磁鋼は、製造後の急速な腐食に対して保護するために、下地コーティングを含むことができる。下地コーティングは、好ましくはフォルステライトを含む。
【0050】
本発明の別の好ましい実施形態により、方向性電磁鋼は、鋼板の形態を有する。そのような鋼板は、例えば、変圧器を製造するために使用してもよい。
【0051】
本発明の特に好ましい実施形態により、水性組成物は、方向性電磁鋼の上に、1から50g/m2、好ましくは2から40g/m2、より好ましくは3から30g/m2、より好ましくは4から20g/m2の量で塗装される。
【0052】
水性組成物は、好ましくは、方向性電磁鋼の上に、浸漬法、ローリング法または噴霧法により塗装される。
【0053】
本発明の好ましい実施形態により、水性組成物でコーティングされた方向性電磁鋼は、500℃から900℃、好ましくは600℃から850℃の温度で処理される。
【0054】
本発明の別の好ましい実施形態により、水性組成物は、方向性電磁鋼の上に100nmから20μm、好ましくは200nmから10μmの層厚さで塗装される。
【0055】
本発明のさらなる態様は、本発明による方法により得ることができる方向性電磁鋼、好ましくは方向性電磁鋼板に関する。
【0056】
本発明の別のさらなる態様は、本発明による水性組成物または本発明による方法に従って製造し得る水性組成物を塗装することにより得ることができるコーティングを含む方向性電磁鋼、好ましくは方向性電磁鋼板に関する。
【0057】
本発明は、とりわけ以下の実施形態に関する。
1.方向性電磁鋼にコーティングするための水性組成物であって
- アルミニウムカチオン、
- マンガンカチオン、
- リン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオン、
- コロイド状シリカおよび
- 任意選択で鉄カチオン、
を含み、組成物中に存在する、Al2O3として表されるアルミニウムカチオン、MnOとして表されるマンガンカチオン、P2O5として表されるリン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオン、SiO2として表されるコロイド状シリカ、および任意選択で、FeOとして表される鉄カチオンが、まとめて(Al2O3)2(MnO)1.8-2.4(FeO)0-0.2(P2O5)5-7(SiO2)≧30という式を与える、水性組成物。
【0058】
2.化学式中のSiO2の数が、30から100、好ましくは30から80、より好ましくは30から70である、実施形態1による水性組成物。
【0059】
3.化学式中のP2O5の数が、5.4から6.8、好ましくは5.6から6.6、より好ましくは5.8から6.4である、実施形態1または2による水性組成物。
【0060】
4.水酸化アルミニウムおよび/またはリン酸アルミニウムを含む、実施形態1から3のいずれかによる水性組成物。
【0061】
5.酸化マンガン(II)、シュウ酸マンガン(II)および/または水酸化マンガン(II)を含む、実施形態1から4のいずれかによる水性組成物。
【0062】
6.酸化鉄、酸化鉄(II)および/またはシュウ酸鉄(II)を含む、実施形態1から5のいずれかによる水性組成物。
【0063】
7.コロイド状シリカが表面電荷を有しない、実施形態1から6のいずれかによる水性組成物。
【0064】
8.コロイド状シリカが、5nmと80nmの間、好ましくは5nmと60nmの間、より好ましくは5nmと40nmの間のサイズのシリカ粒子、好ましくは球形シリカ粒子を含む、実施形態1から7のいずれかによる水性組成物。
【0065】
9.コロイド状シリカの比表面積が、組成物に含有される全金属酸化物の合計モル数に対して1:25000から1:100000、好ましくは1:30000から1:80000の比を有する、実施形態1から8のいずれかによる水性組成物。
【0066】
10.本発明による組成物中のシリカ粒子が、5nmのサイズで400から450m2/gの比表面積、15nmのサイズで180から200m2/gの比表面積、20nmのサイズで130から150m2/gの比表面積、25nmのサイズで100から120m2/gの比表面積、30nmのサイズで90から110m2/gの比表面積、35nmのサイズで60から70m2/gの比表面積、40nmのサイズで40から50m2/gの比表面積を有する、実施形態8または9による水性組成物。
【0067】
11.コロイド状シリカの粒子の比表面積の合計の全金属酸化物の合計モル数に対する比が、1:10000から1:200000、好ましくは1:20000から1:150000、より好ましくは1:25000から1:100000、さらにより好ましくは1:30000から1:80000である、実施形態1から10のいずれかによる水性組成物。
【0068】
12.組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、1:6.5から1:26.5、好ましくは1:6.8から1:20、より好ましくは1:7.5から1:18、より好ましくは1:8から1:16である、実施形態1から11のいずれかによる水性組成物。
【0069】
13.表面が1.5μm未満、好ましくは1μm未満の層厚さを有する水性組成物でコーティングされるならば、組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計の、シリカに対するモル比が、好ましくは1:9から1:13、より好ましくは1:10から1:12である、実施形態1から12のいずれかによる水性組成物。
【0070】
14.表面が、2から10μm、好ましくは2から5μmの層厚さを有する水性組成物でコーティングされるならば、組成物中において、酸化物として表される金属イオンの合計のシリカに対するモル比が、好ましくは1:10から1:14、より好ましくは1:11から1:13である、実施形態1から13のいずれかによる水性組成物。
【0071】
15.10%と70%の間、好ましくは20%から60%、より好ましくは25%から40%の固体含有率を有する、実施形態1から14のいずれかによる水性組成物。
【0072】
16.アルミニウムカチオンを遊離する化合物、マンガンカチオンを遊離する化合物、リン酸二水素、リン酸水素および/またはリン酸アニオンを遊離する化合物、コロイド状シリカを遊離する化合物および任意選択で鉄カチオンを混合するステップを含む、方向性電磁鋼をコーティングするための、実施形態1から15の1つで規定された水性組成物の製造方法。
【0073】
17.実施形態1から15のいずれかによる水性組成物または実施形態16による方法に従って製造することができる水性組成物を塗装することを含む、方向性電磁鋼をコーティングする方法。
【0074】
18.方向性電磁鋼がフォルステライトで下地コーティングされる、実施形態17による方法。
【0075】
19.方向性電磁鋼が板の形態を有する、実施形態17または18による方法。
【0076】
20.水性組成物が、方向性電磁鋼の上に、1から50g/m2、好ましくは2から40g/m2、より好ましくは3から30g/m2、より好ましくは4から20g/m2の量で塗装される、実施形態17から19のいずれかによる方法。
【0077】
21.水性組成物が、方向性電磁鋼の上に、浸漬法、ローリング法または噴霧法により塗装される、実施形態17から20の1つによる方法。
【0078】
22.水性組成物でコーティングされた方向性電磁鋼が、500℃から900℃、好ましくは600℃から850℃の温度で処理される、実施形態17から20のいずれかによる方法。
【0079】
23.水性組成物が、方向性電磁鋼の上に100nmから20μm、好ましくは200nmから10μmの層厚さで塗装される、実施形態17から22のいずれかによる方法。
【0080】
24.実施形態17から23のいずれかによる方法により得ることができる、方向性電磁鋼、好ましくは方向性電磁鋼板。
【0081】
25.実施形態1から15のいずれかによる水性組成物または実施形態16による方法に従って製造し得る水性組成物を塗装することにより得ることができるコーティングを含む、方向性電磁鋼、好ましくは方向性電磁鋼板。
【実施例】
【0082】
[実施例1]
方向性電磁鋼をコーティングするための水性組成物の製造
400gの75%リン酸および135mlの水、78gの水酸化アルミニウムの混合物に、続いて40gの酸化マンガン(II)および7gのシュウ酸鉄(II)を溶解して、透明、粘稠なリン酸塩含有溶液にした。生じた溶液は、合計660gの重量を有した。リン酸塩含有溶液の200gに、800gの電荷を含まない固体含有率が30%のシリカゾル(コロイド状シリカ)(平均で35nmの直径を有するSiO2球)を加えて透明均一な調製物とした。計算組成は(Al2O3)2(MnO)2.2(FeO)0.2(SiO2)53(P2O5)6.3であった(組成物1)。
【0083】
下地コーティングされたGO鋼板(すなわち、フォルステライトでコーティングされた方向性電磁鋼板)上に5g/m2の量で塗装した後、次にこれを空気中で簡単に乾燥して、その層を820℃で60秒間硬化させた。
【0084】
上記の成分の化学量論比を調節することにより、以下のさらなる組成物(組成物2から9)を製造することが可能であった:
組成物2
(Al2O3)2(MnO)2.1(FeO)0.18(SiO2)75(P2O5)6.2
組成物3
(Al2O3)2(MnO)2.2(FeO)0.18(SiO2)49(P2O5)6.3
組成物4
(Al2O3)2(MnO)2.0(FeO)0.2(SiO2)32(P2O5)6.5
組成物5(酸化鉄を含まず)
(Al2O3)2(MnO)2.2(SiO2)55(P2O5)6.1
組成物6
(Al2O3)2(MnO)1.75(FeO)0.15(SiO2)55(P2O5)6.2
組成物7(リン酸塩含有溶液中においてシュウ酸鉄の代わりに酸化鉄)
(Al2O3)2(MnO)2.2(FeO)0.2(SiO2)53(P2O5)7
【0085】
組成物2から7も下地コーティングされているGO鋼板上に5g/m2の量で塗装して、空気中で簡単に乾燥して、次に820℃で60秒間硬化させた。
【0086】
【0087】
[実施例2]
比較の組成物:
先行技術による他の組成物に優る本発明による組成物の利点を例示するために、比較の組成物を使用してそれぞれの試験を実施した。
比較の組成物1(WO2014/180610の実施例B1(Al、Mn))
(Al2O3)8(MnO)2(SiO2)20(P2O5)27
比較の組成物2(EP2264220Alの実施例1(KMnO4))
(Al2O3)5(MnO2)(K2O)0.5(SiO2)29(P2O5)5.5
比較の組成物3(DE2247269の実施例3(Al、Cr))
(Al2O3)2(CrO3)2.4(SiO2)12(P2O5)6
比較の組成物4(WO2014/180610の例B3(Al、Mn、Zn、Mg))
(Al2O3)1.6(MnO)0.6(ZnO)0.2(MgO)2(SiO2)16(P2O5)5
【0088】
次に、比較の組成物1から4を、実施例1に記載されたように、下地コーティングされたGO鋼板上に5g/m2の量で塗装して、空気中で簡単に乾燥して、次に820℃で60秒間硬化させた。
【0089】
【0090】
[実施例3]
実施例1および2の組成物およびコーティングの検査
実施例1および2による組成物の品質および方向性電磁鋼をコーティングするためのそれらの適合性を、それぞれ決定または評価するために、数通りの試験を実施した。
【0091】
組成物の安定性
十分な使用者への便宜を確保するために、貯蔵に安定な水性組成物を提供することが本発明の目標である。この理由で、水性組成物の安定性を評価した。このことに関して、水性組成物が撹拌可能であり続けるかどうか、および粒子が堆積するかどうかを長期間にわたって観察した。両方の特性は、組成物の貯蔵安定性にとって重要である。
【0092】
鋼表面の視覚的外見(腐食の出現/耐加水分解性)
方向性電磁鋼をコーティングするために使用される組成物の決定的な品質基準は、コーティングされた鋼を腐食に対して保護するその能力である。この主張のために、コーティングされた鋼板試料の中心部分を水で濡らして、ケイ酸Mg(フォルステライト)を含むそれらの下地コーティングを、実施例1および2による組成物でコーティングして、耐水性および耐蒸気性フィルム中に密にパックして加熱ボックス中に90℃で8時間貯蔵した。その後、コーティングされた鋼板の表面を光学的に評価した。
【0093】
硬化されたコーティングの色
組成物をGO鋼板上に塗装し、それに続いて加熱して(上記を参照されたい)、次に色を視覚で評価した。
【0094】
コーティング介在物(固体)
最終のコーティング中の介在物も、本発明による組成物の品質について関係する基準を表すことができる。いかなる介在物も視覚で決定して評価した。
【0095】
孔および気泡の形成
鋼板上の最終コーティング中における気泡の形成は、気泡がその後の腐食の出現の前駆体であるから、一般的に望ましくない。気泡の形成は視覚で評価し得る。
【0096】
結果
上の試験の結果を以下の表に示す。
【0097】
【0098】
結果は、本発明による組成物(組成物1から5および7)が、3カ月を超える高い貯蔵安定性を有し、したがって、それらで製造されたコーティングは、高い耐加水分解性および極端に低い腐食され易さを有することを印象的に示す。先行技術からの比較の組成物は、即時使用混合物で低い貯蔵安定性を有する。それらで製造されたコーティングの加水分解安定性も最適ではない。組成物6は、それに加えて、組成物におけるAl2O3とMnOの間の低モル比(2:1.75)は、より低い貯蔵安定性を生じるであろうということを示す。