(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】切削工具組立体
(51)【国際特許分類】
B23C 5/06 20060101AFI20241022BHJP
B23C 5/20 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B23C5/06 A
B23C5/20
(21)【出願番号】P 2021551774
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(86)【国際出願番号】 KR2020005648
(87)【国際公開番号】W WO2020231047
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0056919
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0105059
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508151781
【氏名又は名称】デグテック エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャンギュ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ソングク
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】仏国実用新案証公開第02894497(FR,A3)
【文献】特開2004-223630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面から垂直方向に延長し、回転軸を有する円筒部を含むカッターボディー;
前記カッターボディーの前記底面及び前記円筒部に周方向に沿って離隔されて配置され、窪むように形成される複数のインサートポケット;
前記複数のインサートポケット
に一つ置きに装着され、最外側半径方向に配置される複数の固定切削インサート;及び
前記複数のインサートポケット内に装着され、それぞれが前記複数の固定切削インサートのうち隣接する2つの固定切削インサートの間に配置される複数のステップ切削インサートを含み、
前記複数の固定切削インサートのそれぞれは、前記回転軸からの長さが同一であり、前記底面からの長さが同一になるように配置され、
前記複数のステップ切削インサートのうち少なくとも1つのステップ切削インサートは、前記複数のステップ切削インサートのうち残りのステップ切削インサートに比較して前記回転軸からの長さが異なり、前記底面からの長さが異なるように配置され、
前記複数の固定切削インサートの回転軸からの長さが、前記複数のステップ切削インサートの前記回転軸からの長さ以上に設定されたものであり、前記複数の固定切削インサートの前記底面からの長さが、前記複数のステップ切削インサートの前記底面からの長さ以下に設定されたものである、切削工具組立体。
【請求項2】
前記複数のステップ切削インサートのそれぞれは、前記回転軸からの長さが互いに異なり、前記底面からの長さが互いに異なるように配置される、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項3】
前記複数のステップ切削インサートは、前記回転軸からの長さが周方向に沿いながら徐々に長くなるか短くなるように配置される、請求項1または2に記載の切削工具組立体。
【請求項4】
前記複数のステップ切削インサートのうち
前記固定切削インサートを挟んで隣接する2つのステップ切削インサートは、前記回転軸からの長さが一定の間隔を有するように配置される、請求項3に記載の切削工具組立体。
【請求項5】
前記複数のステップ切削インサートは、前記底面からの長さが周方向に沿いながら徐々に短くなるか長くなるように配置される、請求項1または2に記載の切削工具組立体。
【請求項6】
前記複数のステップ切削インサートのうち
前記固定切削インサートを挟んで隣接する2つのステップ切削インサートは、前記底面からの長さが一定の間隔を有するように配置される、請求項5に記載の切削工具組立体。
【請求項7】
前記複数のステップ切削インサートのうち
前記固定切削インサートを挟んで隣接する2つのステップ切削インサートは、前記回転軸からの長さの差が前記底面からの長さの差より大きくなるように配置される、請求項1または2に記載の切削工具組立体。
【請求項8】
前記複数の固定切削インサート及び前記複数のステップ切削インサートの総数は6個~20個である、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項9】
前記複数の固定切削インサートのそれぞれは、前記複数のステップ切削インサートのそれぞれと同一の形状を有する、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項10】
前記複数の固定切削インサートのそれぞれは、複数の第1主切削エッジ及び複数の第1副切削エッジを含み、
前記複数のステップ切削インサートのそれぞれは、複数の第2主切削エッジ及び複数の第2副切削エッジを含む、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項11】
前記複数の固定切削インサートのそれぞれには前記インサートポケットに装着するための第1インサートボアが形成され、
前記複数のステップ切削インサートのそれぞれには前記インサートポケットに装着するための第2インサートボアが形成される、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項12】
前記複数の固定切削インサートのそれぞれは、前記第1インサートボアの中心軸を中心に回転対称であり、
前記複数のステップ切削インサートのそれぞれは、前記第2インサートボアの中心軸を中心に回転対称である、請求項11に記載の切削工具組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はフェースミーリング(face milling)用の切削工具組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェースミーリング用の切削工具組立体は、切削工具組立体の軸に垂直な平面を加工する時に用いられるものであって、フェースミーリングカッター(face milling cutter)またはフェースカッター(face cutter)ともいう。フェースミーリング用の切削工具組立体は、カッターボディーとカッターボディーの外周と正面に装着される複数の切削インサートを含む。複数の切削インサートはカッターボディーの周方向に沿って互いに離隔されるようにカッターボディーに配置される。複数の切削インサートは被削材を段階的に切削するようにカッターボディーに装着される。例えば、カッターボディーの周方向において、複数の切削インサートは、カッターボディーの外周から順次突出するように配置され、カッターボディーの軸方向端部から順次突出するように配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のフェースミーリング用の切削工具組立体において、複数の切削インサートがカッターボディーの外周から周方向に沿って順次突出するように配置され、カッターボディーの軸方向端部から周方向に沿って順次突出するように配置される場合には、カッターボディーの周方向において最初に配置される切削インサートと、最後に配置される切削インサートとの間には外周から突出する長さ及び軸方向端部から突出する長さの差が大きくなる。この場合、最初に配置される切削インサートは厚いチップを形成し、切削インサートに無理な切削力が加えられ得、その結果、切削工具組立体の寿命が短縮され得る。また、切削工具組立体には振動が発生し、被削材の切削された加工面の表面粗さが低下し得る。
【0004】
本開示の実施例は、従来のフェースミーリング用の切削工具組立体の少なくとも一部の問題点を改善または解決する。このために、複数の実施例は、複数の固定切削インサートと複数のステップ切削インサートを有する切削工具組立体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面による実施例は、切削工具組立体に関する。例示的な実施例による切削工具組立体は、底面から垂直方向に延長し、回転軸を有する円筒部を含むカッターボディー、カッターボディーの底面及び円筒部に周方向に沿って離隔されて配置され、窪むように形成される複数のインサートポケット、複数のインサートポケット内に装着され、最外側半径方向に配置される複数の固定切削インサート、及び複数のインサートポケット内に装着され、それぞれが複数の固定切削インサートのうち隣接する2つの固定切削インサートの間に配置される複数のステップ切削インサートを含む。複数の固定切削インサートのそれぞれは、回転軸からの長さが同一であり、底面からの長さが同一になるように配置される。複数のステップ切削インサートのうち少なくとも1つのステップ切削インサートは、複数のステップ切削インサートのうち残りのステップ切削インサートに比較して回転軸からの長さが異なり、底面からの長さが異なるように配置される。
【0006】
一実施例において、複数のステップ切削インサートのそれぞれは、回転軸からの長さが互いに異なり、底面からの長さが互いに異なるように配置されてもよい。
【0007】
一実施例において、複数のステップ切削インサートは、回転軸からの長さが周方向に沿いながら徐々に長くなるか短くなるように配置されてもよい。
【0008】
一実施例において、複数のステップ切削インサートのうち隣接する2つのステップ切削インサートは、回転軸からの長さが一定の間隔を有するように配置されてもよい。
【0009】
一実施例において、複数のステップ切削インサートは、底面からの長さが周方向に沿いながら徐々に短くなるか長くなるように配置されてもよい。
【0010】
一実施例において、複数のステップ切削インサートのうち隣接する2つのステップ切削インサートは、底面からの長さが一定の間隔を有するように配置されてもよい。
【0011】
一実施例において、複数のステップ切削インサートのうち隣接する2つのステップ切削インサートは、回転軸からの長さの差が底面からの長さの差より大きくなるように配置されてもよい。
【0012】
一実施例において、複数の固定切削インサートの回転軸からの長さは、複数のステップ切削インサートの回転軸からの長さ以上に設定されてもよい。
【0013】
一実施例において、複数の固定切削インサートの底面からの長さは、複数のステップ切削インサートの底面からの長さ以下に設定されてもよい。
【0014】
一実施例において、複数の固定切削インサート及び複数のステップ切削インサートの総数は6個~20個であってもよい。
【0015】
一実施例において、複数の固定切削インサートのそれぞれは、複数のステップ切削インサートのそれぞれと同一の形状を有してもよい。
【0016】
一実施例において、複数の固定切削インサートのそれぞれは、複数の第1主切削エッジ及び複数の第1副切削エッジを含み、複数のステップ切削インサートのそれぞれは、複数の第2主切削エッジ及び複数の第2副切削エッジを含むんでもよい。
【0017】
一実施例において、複数の固定切削インサートのそれぞれにはインサートポケットに装着するための第1インサートボアが形成され、複数のステップ切削インサートのそれぞれにはインサートポケットに装着するための第2インサートボアが形成されてもよい。
【0018】
一実施例において、複数の固定切削インサートのそれぞれは、第1インサートボアの中心軸を中心に回転対称であり、複数のステップ切削インサートのそれぞれは、第2インサートボアの中心軸を中心に回転対称であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
一実施例による切削工具組立体によれば、複数の固定切削インサートは、カッターボディーの底面からの長さが同一であり、カッターボディーの回転軸からの長さが同一に配置される一方、複数のステップ切削インサートのうち少なくとも1つのステップ切削インサートが複数のステップ切削インサートのうち残りのステップ切削インサートに比較して底面からの長さが異なり、回転軸からの長さが異なるように配置され得る。
【0020】
例えば、複数の固定切削インサートと複数のステップ切削インサートがカッターボディーの周方向に沿ってジグザグパターンで配置されることによって、複数の固定切削インサートと複数のステップ切削インサートとの間の突出長さの差を最小化することができる。このような構成を有することによって、特定の切削インサートに無理な切削力が加えられることを抑制または防止することができ、その結果、切削工具組立体の寿命を向上させることができる。また、切削工具組立体で発生する振動を抑制または防止して、被削材の切削された加工面の表面粗さを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の一実施例による切削工具組立体を示す斜視図である。
【
図2】本開示の一実施例により
図1に示されたカッターボディーを示す底面図である。
【
図3】本開示の一実施例により
図1に示された切削工具組立体を示す底面図である。
【
図4】本開示の一実施例により
図1に示された複数の切削インサートを示す平面図である。
【
図5】本開示の一実施例により
図1に示された複数の切削インサートの配列を示す図面である。
【
図6】本開示の他の実施例による複数の切削インサートの配列を示す図面である。
【
図7】本開示の一実施例により
図5に示された切削インサートを示す斜視図である。
【
図8】本開示の一実施例により
図1に示された切削工具組立体を示す分解斜視図である。
【
図9】本開示の一実施例により
図7に示された切削インサートの上面を示す平面図である。
【
図10】本開示の一実施例により
図7に示された切削インサートの側面を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の実施例は、本開示の技術的思想を説明する目的で例示されたものである。本開示による権利範囲が、以下に提示される実施例やこれら実施例に関する具体的説明に限定されるわけではない。
【0023】
本開示に用いられる全ての技術的用語及び科学的用語は、特に定義されない限り、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者に一般に理解される意味を有する。本開示に用いられる全ての用語は、本開示を更に明確に説明する目的で選択されたものであり、本開示による権利範囲を制限するために選択されたものではない。
【0024】
本開示で用いられる「含む」、「備える」、「有する」等のような表現は、当該表現が含まれる語句または文章で特に言及されない限り、他の実施例を含む可能性を内包する開放型用語(open-ended terms)と理解されるべきである。
【0025】
本開示で記述された単数形の表現は、特に言及しない限り、複数形の意味を含み得、これは請求の範囲に記載された単数形の表現にも同様に適用される。
【0026】
本開示で用いられる「第1」、「第2」等の表現は、複数の構成要素を相互に区分するために用いられ、当該構成要素の順序または重要度を限定するわけではない。
【0027】
本開示において、「半径方向RD」は、切削工具組立体のカッターボディーの回転軸RA(rotational axis)から遠くなるか、回転軸RAに向かう方向を意味するものと定義され得、「周方向CD」は、回転軸RAを中心に取り囲む方向を意味するものと定義され得る。
【0028】
以下、添付した図面を参照して、本開示の実施例を説明する。添付の図面において、同一または対応する構成要素には同一の参照符号が付与されている。また、以下の実施例の説明において、同一または対応する構成要素を重複して記述することが省略され得る。しかし、構成要素に関する記述が省略されても、そのような構成要素がある実施例に含まれないものと意図されるわけではない。
【0029】
図1は、本開示の一実施例による切削工具組立体を示す斜視図である。
【0030】
図1に示された通り、本開示の一実施例による切削工具組立体100は、カッターボディー110、複数のインサートポケット120、複数の固定切削インサート130、及び複数のステップ切削インサート140を含む。切削工具組立体100は、フェースミーリングに用いられ得、フェースミーリングカッター(face milling cutter)またはフェースカッター(face cutter)とも呼ばれる。
【0031】
カッターボディー110は、底面111と円筒部112を含み得る。底面111は、カッターボディー110の回転軸RAに対して概ね垂直をなし、被削材の加工面に対して概ね平行に配置される。円筒部112は、底面111から垂直方向に延長する。一実施例において、底面111は被削材の加工面側に位置し、カッターボディー110の回転軸RAに沿った底面111の反対側である上側には切削工具の回転駆動部が配置される。回転駆動部は、カッターボディー110の上側に直接結合されることもでき、他の部材を介して間接的に結合されることもできる。
【0032】
図2は、
図1に示されたカッターボディーを示す底面図である。
【0033】
図2に示された通り、複数のインサートポケット120は、周方向CDに沿って離隔されて配置され、窪むように形成される。複数のインサートポケット120は、底面111と円筒部112にわたって窪むように陥没して形成される。複数のインサートポケット120のそれぞれは、被削材から切削されたチップ(chip)が円滑に排出され得るように複数の固定切削インサート130及び複数のステップ切削インサート140より大きく形成される。複数のインサートポケット120のそれぞれは、複数の固定切削インサート130及び複数のステップ切削インサート140の配置位置に対応するように形成され得る。一例として、複数のインサートポケット120は、周方向CDに沿って互いに等間隔で離隔されて配置されることもできる。他の例として、複数のインサートポケット120は、互いに異なる間隔で離隔されて配置されることもできる。
【0034】
図3は、
図1に示された切削工具組立体を示す底面図である。
【0035】
図3に示された通り、複数の固定切削インサート130は、複数のインサートポケット120内に装着され、半径方向RDにおいてカッターボディー110の最外側に配置される。複数の固定切削インサート130のそれぞれは、回転軸RAからの長さまたは円筒部112から突出する長さが同一になるように配置される。複数の固定切削インサート130において回転軸RAからの長さは、被削材の切削加工時に切り込まれる固定切込半径Rfと理解され得る。即ち、複数の固定切削インサート130は、カッターボディー110の回転軸RAから同一の固定切込半径Rfを有するように配置される。複数の固定切削インサート130のそれぞれは、底面111からの長さまたは底面111から突出する長さが同一に配置される。複数の固定切削インサート130において底面111からの長さは、被削材の切削加工時に切り込まれる固定切込深さDfと理解され得る。即ち、複数の固定切削インサート130は、同一の固定切込深さDfを有するように配置される。
【0036】
複数のステップ切削インサート140は、複数のインサートポケット120内に装着される。一実施例において、複数のステップ切削インサート140は、第1ステップ切削インサート141、第2ステップ切削インサート142、第3ステップ切削インサート143、及び第4ステップ切削インサート144を含み得る。複数のステップ切削インサート140のそれぞれは、複数の固定切削インサート130のうち隣接する2つの固定切削インサート130の間に配置される。即ち、固定切削インサート130とステップ切削インサート140は、互いに交互に(互い違いに)配列される。複数のステップ切削インサート140のうち少なくとも1つの切削インサートは、他の切削インサートに比較して回転軸RAからの長さが異なるように配置される。複数のステップ切削インサート140において回転軸RAからの長さは、被削材の切削加工時に切り込まれるステップ切込半径Rsと理解され得る。即ち、複数のステップ切削インサート140のうち少なくとも1つのステップ切削インサートは、複数のステップ切削インサート140のうち残りの切削インサートに比較して異なるステップ切込半径Rsを有するように配置される。複数のステップ切削インサート140のうち少なくとも1つのステップ切削インサートは、複数のステップ切削インサート140のうち残りの切削インサートに比較して底面111からの長さが異なるように配置される。複数のステップ切削インサート140において底面111からの長さは、被削材の切削加工時に切り込まれるステップ切込深さDsと理解され得る。即ち、複数のステップ切削インサート140のうち少なくとも1つのステップ切削インサートは、複数のステップ切削インサート140のうち残りの切削インサートに比較して異なるステップ切込深さDsを有するように配置される。
【0037】
互いに同一の固定切込半径Rf及び互いに同一の固定切込深さDfを有する複数の固定切削インサート130と、少なくとも1つの異なるステップ切込半径Rs及び少なくとも1つの異なるステップ切込深さDsを有する複数のステップ切削インサート140が互いに交互に配列される。従って、切削工具組立体100が被削材を加工するとき、切込半径または切込深さが急激に変わることを抑制または防止することができる。従って、切込半径及び切込深さの急激な変化による固定切削インサート130またはステップ切削インサート140の損傷や破損を最小化することができる。その結果、固定切削インサート130またはステップ切削インサート140の寿命が延びる。
【0038】
一実施例において、複数のステップ切削インサート140のそれぞれは、回転軸RAからの長さ(即ち、ステップ切込半径Rs)が互いに異なり、底面111からの長さ(即ち、ステップ切込深さDs)が互いに異なるように配置され得る。
【0039】
図4は、
図1に示された複数の切削インサートを示す平面図である。
【0040】
一実施例において、複数のステップ切削インサート140は、回転軸RAからの長さが周方向CDに沿って徐々に長くなるか短くなるように配置され得る。即ち、
図4に示された通り、ステップ切削インサート140のそれぞれのステップ切込半径Rsは、周方向CDに沿って徐々に長くなるか短くなるように設定され得る。例えば、複数のステップ切削インサート140のうち隣接する2つのステップ切削インサートは、回転軸RAからの長さが一定の間隔を有するように配置され得る。即ち、隣接する2つのステップ切削インサートにおいて、ステップ切込半径Rsの変化量(ΔRs1、ΔRs2、ΔRs3等)(
図5参照)が一定に設定される。複数のステップ切削インサート140のうち隣接する2つのステップ切削インサートの各ステップ切込半径Rsは、同一の間隔を有するように長くなるか短くなり得る。ここで、周方向CDは、カッターボディー110が回転する方向に沿った周方向と理解され得る。周方向CDに沿って徐々に長くなるか短くなるステップ切込半径Rsを有する複数のステップ切削インサート140が互いに同一の固定切込半径Rfを有する複数の固定切削インサート130のうち2つの隣接した固定切削インサートの間に配置される。従って、各固定切削インサート130と各ステップ切削インサート140の間の切込半径だけでなく、複数のステップ切削インサート140の間の切込半径が急激に変わることを更に効果的に抑制または防止することができる。
【0041】
一実施例において、複数のステップ切削インサート140は、底面111からの長さが周方向CDに沿いながら徐々に短くなるか長くなるように配置され得る。即ち、ステップ切削インサート140のそれぞれのステップ切込深さDsは、周方向CDに沿って徐々に薄くなるか深くなるように設定され得る。例えば、複数のステップ切削インサート140のうち隣接する2つのステップ切削インサートは、底面111からの長さが一定の間隔を有するように配置され得る。即ち、隣接する2つのステップ切削インサートにおいて、ステップ切込深さDsの変化量(ΔDs1、ΔDs2、ΔDs3等)(
図5参照)が一定に設定される。複数のステップ切削インサート140のうち隣接する2つのステップ切削インサートの各ステップ切込深さDsは、互いに同一の間隔を有するように薄くなるか深くなり得る。周方向CDに沿って徐々に深くなるか薄くなるステップ切込深さDsを有する複数のステップ切削インサート140が互いに同一の固定切込深さDfを有する複数の固定切削インサート130のうち2つの隣接した固定切削インサートの間に配置される。従って、各固定切削インサート130と各ステップ切削インサート140の間の切込深さだけでなく、複数のステップ切削インサート140の間の切込深さが急激に変わることを更に効果的に抑制または防止することができる。
【0042】
一実施例において、複数のステップ切削インサート140のうち隣接する2つのステップ切削インサートは、回転軸RAからの長さの差が底面111からの長さの差より大きくなるように配置され得る。即ち、ステップ切込半径Rsの変化量がステップ切込深さDsの変化量より大きく設定される。従って、被削材の加工面のうち底面111に垂直な面の表面粗さより底面111に平行な面の表面粗さが優れている。例えば、隣接する2つのステップ切削インサートにおいて、回転軸RAからの長さの差は1mmであり得、底面111からの長さの差は0.05mmであり得る。
【0043】
図5は、
図1に示された複数の切削インサートの配列を示す図面である。具体的には、
図5は、カッターボディー110が回転軸RAを中心に回転するに伴い、複数の固定切削インサート130及び複数のステップ切削インサート140が予め定められた地点で配列される状態を示す。固定切込半径Rf及びステップ切込半径Rsは、通常、カッターボディー110の回転軸RAから測定されるが、
図5では図示の便宜上、一部のみを示した。
【0044】
図5に示された通り、カッターボディー110が回転するに伴い、予め定められた地点において、固定切削インサート130、第1ステップ切削インサート141、固定切削インサート130、第2ステップ切削インサート142、固定切削インサート130、第3ステップ切削インサート143、固定切削インサート130、及び第4ステップ切削インサート144が順次位置することになる。第1~第4ステップ切削インサートの順序は、
図5に示されたものと反対に設定されることもできる。
【0045】
第1ステップ切削インサート141は第1ステップ切込半径Rs1を有し、第2ステップ切削インサート142は第2ステップ切込半径Rs2を有し、第3ステップ切削インサート143は第3ステップ切込半径Rs3を有し、第4ステップ切削インサート144は第4ステップ切込半径Rs4を有する。第1~第4ステップ切込半径Rs1、Rs2、Rs3、Rs4は、徐々に長くなるように設定され得る。同一の固定切込半径Rfを有する複数の固定切削インサート130と徐々に長くなる第1~第4ステップ切込半径Rs1、Rs2、Rs3、Rs4を有する複数のステップ切削インサート140が交互に順次位置して被削材を切削する。従って、切込半径の急激な変化による固定切削インサート130またはステップ切削インサート140の損傷や破損を更に最小化することができる。その結果、固定切削インサート130またはステップ切削インサート140の寿命が更に延びる。第1~第4ステップ切削インサート141、142、143、144の順序は、
図5に示されたものと反対に設定される場合には、第1~第4ステップ切込半径が徐々に短くなるものと理解され得る。
【0046】
第1ステップ切削インサート141は第1ステップ切込深さDs1を有し、第2ステップ切削インサート142は第2ステップ切込深さDs2を有し、第3ステップ切削インサート143は第3ステップ切込深さDs3を有し、第4ステップ切削インサート144は第4ステップ切込深さDs4を有する。第1~第4ステップ切込深さDs1、Ds2、Ds3、Ds4は徐々に薄くなるように設定され得る。同一の固定切込深さDfを有する複数の固定切削インサート130と、徐々に薄くなる第1~第4ステップ切込深さDs1、Ds2、Ds3、Ds4を有する複数のステップ切削インサート140が交互に順次位置して被削材を切削する。従って、切込深さの急激な変化による固定切削インサート130またはステップ切削インサート140の損傷や破損を更に最小化することができる。その結果、固定切削インサート130またはステップ切削インサート140の寿命が更に延びる。第1~第4ステップ切削インサート141、142、143、144の順序は、
図5に示されたものと反対に設定される場合には、第1~第4ステップ切込深さが徐々に深くなるものと理解され得る。
【0047】
図5に示された通り、一実施例において、複数の固定切削インサート130の回転軸RAからの長さ(即ち、固定切込半径Rf)は、複数のステップ切削インサート140の回転軸RAからの長さ(即ち、ステップ切込半径Rs)以上に設定され得る。例えば、複数の固定切削インサート130の固定切込半径Rfが第1~第4ステップ切削インサート141、142、143、144の第1~第4ステップ切込半径Rs1、Rs2、Rs3、Rs4と同一であるか、第1~第4ステップ切込半径Rs1、Rs2、Rs3、Rs4より長く設定され得る。このように、固定切込半径Rfがステップ切込半径Rsと同一であるか、ステップ切込半径Rsより長く設定される場合には、複数の固定切削インサート130が同一の固定切込半径Rfを有するように切削を行い、複数のステップ切削インサート140が固定切込半径Rfと同一であるか、固定切込半径Rfより半径方向RDに沿った内側で固定切込半径Rfと異なるステップ切込半径Rsを有するように切削を行うことになる。従って、複数の固定切削インサート130には切削力が分散して作用し、複数のステップ切削インサート140に作用する切削力が小さくなり得る。その結果、複数のステップ切削インサート140が破損したり損傷したりすることを抑制または防止することができる。また、複数のステップ切削インサート140が被削材から切削されるチップの厚さが一定になり、被削材の加工面の表面粗さが向上する。
【0048】
一実施例において、複数の固定切削インサート130の底面111からの長さ(即ち、固定切込深さDf)は、複数のステップ切削インサート140の底面111からの長さ(即ち、ステップ切込深さDs)以下に設定され得る。このように、固定切込深さDfがステップ切込深さDsと同一であるか、ステップ切込深さDsより浅く設定される場合には、複数の固定切削インサート130が同一の固定切込深さDfを有するように切削を行い、複数のステップ切削インサート140が固定切込深さDfと同一であるか、固定切込深さDfより浅く互いに異なるステップ切込半径Rsを有するように切削を行うことになる。従って、複数の固定切削インサート130の切込深さDfと、複数のステップ切削インサート140の切込深さDsが急激に変わることを抑制または防止することができる。
【0049】
一実施例において、複数の固定切削インサート130及び複数のステップ切削インサート140の総数は6個~20個であり得る。複数のステップ切削インサート140による上述の効果を達成するためには、切削インサートの総数は6個以上に設定され得る。また、カッターボディー110の直径が大きい大型カッターにも適用され得るように、切削インサートの総数は20個以下に設定され得る。また、複数の固定切削インサート130及び複数のステップ切削インサート140の総数は、偶数に設定され得る。
【0050】
図6は、他の実施例による複数の切削インサートの配列を示す図面である。
【0051】
図6に示された通り、第1~第4ステップ切削インサート141、142、143、144の第1~第4ステップ切込半径Rs1、Rs2、Rs3、Rs4が徐々に長くなり、第1~第4ステップ切削インサート141、142、143、144の第1~第4ステップ切込深さDs1、Ds2、Ds3、Ds4が徐々に深くなるように設定され得る。同一の固定切込深さDfを有する複数の固定切削インサート130と、徐々に深くなる第1~第4ステップ切込深さDs1、Ds2、Ds3、Ds4を有する複数のステップ切削インサート140が交互に順次位置して被削材を切削する。従って、切込深さの急激な変化による固定切削インサート130またはステップ切削インサート140の損傷や破損を更に最小化することができる。その結果、固定切削インサート130またはステップ切削インサート140の寿命が更に延びる。第1~第4ステップ切削インサート141、142、143、144の順序は、
図6に示されたものと反対に設定される場合には、第1~第4ステップ切込深さが徐々に深くなるものと理解され得る。
【0052】
一実施例において、複数の固定切削インサート130のそれぞれは、複数のステップ切削インサート140のそれぞれと同一の形状を有し得る。このように、複数の固定切削インサート130及び複数のステップ切削インサート140が同一の形状を有するので、一種類の切削インサートを用いて固定切削インサート130またはステップ切削インサート140として用いられることができる。また、いずれか1つの切削インサートの交換が必要な場合にも固定切削インサート130とステップ切削インサート140の区分なしに用いられることができる。従って、切削工具組立体のメンテナンスが簡便になる。
【0053】
一実施例において、複数の固定切削インサート130のそれぞれは、複数の第1主切削エッジ130a及び複数の第1副切削エッジ130bを含み、複数のステップ切削インサート140のそれぞれは、複数の第2主切削エッジ及び複数の第2副切削エッジを含み得る。複数の固定切削インサート130のそれぞれが複数のステップ切削インサート140のそれぞれと同一の形状を有する場合、第1主切削エッジ130a及び第1副切削エッジ130bも第2主切削エッジ及び第2副切削エッジとそれぞれ同一の形状を有し得る。従って、以下では、第1主切削エッジ130a及び第1副切削エッジ130bを有する1つの固定切削インサート130を中心に説明する。
【0054】
図7は、
図5に示された切削インサートを示す斜視図である。
【0055】
図7に示された通り、固定切削インサート130は、上面131、下面132、及び上面131のコーナーで会う第1及び第2側面133、134を含み得る。第1主切削エッジ130aは、第1側面133と上面131が会う角に形成され、第1副切削エッジ130bは、第2側面134と上面131が会う角に形成される。第1主切削エッジ130a及び第1副切削エッジ130bは、上面131より突出して形成される。第1主切削エッジ130aは、被削材の表面(即ち、カッターボディー110の回転軸RAに垂直な面)を切削するのに用いられ、第1副切削エッジ130bは、被削材の側面(即ち、カッターボディー110の回転軸RAに平行な面)を切削するのに用いられる。
【0056】
図8は、
図1に示された切削工具組立体を示す分解斜視図である。
【0057】
一実施例において、
図8に示された通り、複数の固定切削インサート130のそれぞれにはインサートポケット120に装着するための第1インサートボア135が形成され、複数のステップ切削インサート140のそれぞれにはインサートポケットに装着するための第2インサートボアが形成され得る。複数の固定切削インサート130のそれぞれが複数のステップ切削インサート140のそれぞれと同一の形状を有する場合、第1インサートボア135が第2インサートボアと同一の形状を有し得る。従って、以下では、第1インサートボア135を中心に説明する。第1インサートボア135は、上面131と下面132を貫いて形成される。第1インサートボア135は、上面131と下面132に対して垂直であり、第1及び第2側面133、134に平行に形成される。セットスクリュー150は、第1インサートボア135を貫いてカッターボディー110のインサートポケット120に締結される。
【0058】
図9は、
図7に示された切削インサートの上面を示す平面図である。
【0059】
一実施例において、
図9に示された通り、複数の固定切削インサート130のそれぞれは、第1インサートボア135の中心軸135aを中心に回転対称であり、複数のステップ切削インサート140のそれぞれは、第2インサートボアの中心軸を中心に回転対称であり得る。従って、固定切削インサート130には第1主切削エッジ130aと第1副切削エッジ130bから第1インサートボア135を中心に180度回転した位置にもう1つの第1主切削エッジと第1副切削エッジが形成される。1つの第1主切削エッジ130a及び第1副切削エッジ130bが損傷したり破損したりすれば、もう1つの第1主切削エッジと、もう1つの第1副切削エッジが被削材の切削加工に用いられることができる。
【0060】
図10は、
図7に示された切削インサートの側面を示す側面図である。
【0061】
一実施例において、
図10に示された通り、固定切削インサート130は、上面131と下面132の中央に位置する仮想の中間面131aが第1インサートボア135の中心軸135aを通り、中間面131aに垂直な垂直面132aと会う軸136を中心に回転対称であり得る。従って、下面132と第1側面133が会う角に更に他の第1主切削エッジが形成され、下面132と第2側面134が会う角に更に他の第1副切削エッジが形成され得る。固定切削インサート130の上面131側の第1主切削エッジと第1副切削エッジがいずれも損傷したり破損したりすれば、下面132側の第1主切削エッジと第1副切削エッジが被削材の切削加工に用いられることができる。例えば、1つの固定切削インサートは、4対の第1主切削エッジと第1副切削エッジを備え得る。
【0062】
以上、一部実施例と添付の図面に示す例により本開示の技術的思想を説明したものの、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者が理解できる本開示の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲で多様な置換、変形及び変更がなされ得るという点を知るべきであろう。また、そのような置換、変形及び変更は、添付の請求の範囲内に属するものと考えられるべきである。