(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】フッ素化アルコールを調製する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/64 20060101AFI20241022BHJP
C07C 31/38 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C07C29/64
C07C31/38
(21)【出願番号】P 2021556446
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 GB2020050701
(87)【国際公開番号】W WO2020188274
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-27
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516030797
【氏名又は名称】メキシケム フロー エセ・ア・デ・セ・ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・シャラット
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・グランディ
(72)【発明者】
【氏名】アイラ・サクセナ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080133(JP,A)
【文献】国際公開第92/010545(WO,A1)
【文献】特開平03-152547(JP,A)
【文献】特表2012-505296(JP,A)
【文献】特開昭62-013481(JP,A)
【文献】特公昭48-021925(JP,B1)
【文献】国際公開第92/010454(WO,A1)
【文献】特開2010-146965(JP,A)
【文献】特開2006-111610(JP,A)
【文献】Zhurnal Organicheskoi Khimii,1981年,17(4),728-736
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的にフッ素化されたアルコールを調製するための方法であって、エポキシド、
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4が、H、F、Cl、Br、I、CF
3、アルキル、フルオロアルキル、ハロアルキルを含む群から独立して選択される)をフッ素化剤と反応させることを含み、前記フッ素化剤が、HF、およびHFと窒素含有種との複合体から選択され、
R
1~R
4のうちの1つが、-CF
3であり、R
1~R
4のうちの1つが、-Fであり、R
1~R
4のうちの2つが、-Hである、または
R
1~R
4のうちの2つが、-CF
3であり、R
1~R
4のうちの2つが、-Hであ
る、方法。
【請求項2】
HFと窒素含有種との複合体が、オラー試薬(HF:ピリジン複合体)、尿素複合体、または三級アミン複合体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HFと窒素含有種との複合体がオラー試薬であり、HF対ピリジンの比が、重量で7:3である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
R
1~R
4のうちの1つが、-CF
3であり、R
1~R
4のうちの1つが、-Fであり、R
1~R
4のうちの2つが、-Hであり、R
1が、-Fであり、R
3が、-CF
3であり、R
2およびR
4が、-Hである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
R
1~R
4のうちの1つが、-CF
3であり、R
1~R
4のうちの1つが、-Fであり、R
1~R
4のうちの2つが、-Hであり、R
1が、-Fであり、R
2が、-CF
3であり、R
3およびR
4が、-Hである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
R
1~R
4のうちの2つが、-CF
3であり、R
1~R
4のうちの2つが、-Hであり、R
1が、-CF
3であり、R
3が、-CF
3であり、R
2が、-Hであり、R
4が、-Hである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化エポキシドから部分的にフッ素化されたアルコール(フルオロヒドリン)を調製する方法、およびフルオロヒドリンからフッ素化炭酸エステルを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロヒドリンは、溶媒として、ならびにエステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、および酸などの様々な種を調製することができる合成構築ブロックとして有用である。特に興味深いのは、フッ素化炭酸エステルの調製におけるそれらの有用性であり、これは、顕著な商業的価値を有する重要な部類の材料である。フッ素化炭酸エステルは、一般的に、合成中間体として、および電池(例えば、リチウムイオン電池)などの電子デバイス内で溶媒として、また潤滑剤、シーラント、およびコーティングなどの製品を製造するために、改変することなく使用される。
【0003】
エポキシドからのフルオロヒドリンの生成は当技術分野で既知である。例えば、Olahは、フッ化物の求核性供給源を用いてエポキシドを開環することによってフルオロヒドリンを調製するための一般的な方法について記載している(G.A.Olah et al,Israel Jr.Chem.,17(1978),148-149)。しかしながら、Olahは、この作業をフッ素化エポキシドからのフルオロヒドリンの調製にまで拡げることはなかった。
【0004】
フルオロヒドリンを形成するための様々な求核剤を用いたフッ素化エポキシド、2,3-エポキシ1,1,1-トリフルオロプロパン(TFPO)の開環は、Uneyama in Jr.Fluorine Chem.,105(2000)285-293によるTFPOの化学反応の考察に概説された。しかしながら、この考察は、Olahによって教示された求核性フッ素化剤を用いたTFPOまたは実際に任意の他のフッ素化エポキシドの開環の試みの可能性または可能性のある結果については触れなかった。
【0005】
アルコールおよびカルボキシル化剤から炭酸エステルを生成するための一般的な方法は、当技術分野で既知であり、例えば、“March’s Advanced Organic Chemistry”、M.B.Smith and J.March,6th edition,page 1276を参照されたい。しかしながら、そのような反応の生成物としての、フルオロヒドリンおよびカルボキシル化剤からのフッ素化炭酸エステルの生成は、知られていない。
【発明の開示】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、部分的にフッ素化されたアルコールを調製するための方法であって、フッ素化エポキシド、
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4が、H、F、Cl、Br、I、CF
3、アルキル、フルオロアルキル、ハロアルキルを含む群から独立して選択される)をフッ素化剤と反応させることを含む、方法が提供される。
【0007】
好ましくは、R1~R4のうちの少なくとも1つは、F、CF3、またはフルオロアルキルを含む。
【0008】
好ましくは、フッ素化剤は、求核性フッ素化剤を含む。フッ素化剤の好ましい例としては、HF、およびオラー試薬(HF:ピリジン複合体)などのHFと窒素含有種との複合体、HFと尿素との複合体、またはHFと三級アミンとの複合体が挙げられる。
【0009】
方法は、3,3,3-トリフルオロプロペン(1243zf)のエポキシドをHFおよび/またはオラー試薬と反応させて、CF
3CH(OH)CH
2Fを形成することを含み得る。
【化2】
【0010】
方法は、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234ze)のエポキシドをHFおよび/またはオラー試薬と反応させて、CF
3CH(OH)CHF
2を形成することを含み得る。
【化3】
【0011】
方法は、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(1336mzz)のエポキシドをHFおよび/またはオラー試薬と反応させて、CF
3CH(OH)CHF(CF
3)を形成することを含み得る。
【化4】
【0012】
方法は、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225zc)のエポキシドをHFおよび/またはオラー試薬と反応させて、CF
3CH(OH)CF
3を形成することを含み得る。
【化5】
【0013】
本発明の化合物および組成物
本発明の第2の態様によれば、構造
【化6】
(式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4が、H、F、Cl、Br、I、CF
3、アルキル、フルオロアルキル、ハロアルキルを含む群から独立して選択される)を有する化合物であって、化合物が、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン-2-オールではないことを条件とする、化合物が提供される。
【0014】
本発明の第2の態様の化合物は、炭酸エステルの調製に使用され得る。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、以下の構造を有する部分的にフッ素化された炭酸エステルを調製するための方法であって、
【化7】
フルオロヒドリン
【化8】
(式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4が、H、F、Cl、Br、I、CF
3、アルキル、フルオロアルキル、ハロアルキルを含む群から独立して選択される)を、COX
2(式中、Xが、-F、-Cl、-OCH
3、-OCCl
3、イミダゾール、スクシンイミジルを含む群から選択される)と反応させることを含む、方法が提供される。
【0016】
好ましくは、(モルベースで)1当量のCOX2当たり2当量のフルオロヒドリンが使用される。
【0017】
あるいは、1当量の本発明のフルオロヒドリンを1当量のアルコール種(分岐または線状一価/多価アルコール)と共に使用して、不斉炭酸エステルを調製することができる。
【0018】
本発明の第3の態様による方法で生成された化合物は、本発明の第4の態様によって網羅される。本発明の第4の態様によれば、構造
【化9】
(式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4が、H、F、Cl、Br、I、CF
3、アルキル、フルオロアルキル、ハロアルキルを含む群から独立して選択される)を有する化合物が提供される。
【0019】
本発明の第4の態様の化合物はまた、(例えば、リチウムイオン電池内の)電池溶媒構成要素として使用され得る。本明細書の化合物は、それらの物理的特性、電気化学的安定性、炭素およびケイ素を含む電極、リチウム含有電解質塩、セパレータ、バインダ、集電装置を含む電池電極(陰極および陽極)などの電池構成要素との適合性、ならびに低い可燃性の結果として有益であることが見出されている。
【0020】
本発明の第4の態様の化合物はまた、他の線状および環状炭酸エステルなどの、他の溶媒および添加剤と共に使用され得る。
【0021】
好ましくは、溶媒として使用される場合、組成物は電解質塩を含む。電解質塩の好ましい例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、リチウムトリフレート(LiSO3CF3)、リチリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Li(FSO2)2N)、およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CF3SO2)2N)を含む群から選択されるものなどのリチウム形電解質が挙げられる。
【0022】
本発明の第2の態様の化合物は、(より高度に)フッ素化された誘導体の調製に使用され得る。R基のうちの1つ以上をフッ素で置換してもよい。このプロセスでフッ素化によって改変されるR基は、好ましくは、H、Cl、Br、Iを含む群から選択される。
【0023】
フッ素化誘導体のための調製プロセスは、改変されるR基の性質に応じて、多段階プロセス、好ましくは2段階プロセスを含み得る。好ましい2段階プロセスでは、第1の段階は、標的のR基を(異なる)ハロゲン基、好ましくは(塩素などの好適な塩素化剤を用いて)塩素基に改変することであり、第2段階では、塩素基を(HFなどの好適なフッ素化剤、またはNaF、KFなどの金属フッ素塩を用いて)フッ素基に改変する。標的のR基がすでにフッ素以外のハロゲンを含む場合、ハロゲンを塩素で置換する2段階プロセスは必要ではない場合があることが理解されるであろう。
【0024】
したがって、化合物
【化10】
(式中、R
1~R
4のうちの少なくとも2つが、H、Cl、Br、Iを独立して含む)は、(より高度に)フッ素化された誘導体に変換され得る。
【0025】
フッ素化誘導体におけるR1~R4のうちの好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つは、F、CF3、またはフルオロアルキルを独立して含む。好ましくは、R1~R4のうちの少なくとも1つ、より好ましくはR1~R4のうちの1つは、Hを独立して含む。最も好ましくは、R1~R4のうちの1つは、CF3を含み、R1~R4のうちの2つは、Fを含み、R1~R4のうちの1つは、Hを含む。最も好ましくは、フッ素化誘導体は、ヘキシフルオロイソプロパノール(hexfluroroisopropanol)を含む。
【0026】
化合物
【化11】
(好ましい代替案では
・R
1が、-CF
3であり、R
2が、Hであり、R
3およびR
4の両方が、Hである。
・R
1が、-CF
3であり、R
2が、Hであり、R
3およびR
4のうちの1つが、Hであり、R
3およびR
4のうちの1つが、Fである)に好ましい反応経路が生じる。
【0027】
この好ましい経路を、以下に示す。
【化12】
Xは、FまたはClのいずれかである。
【0028】
本発明の第1の態様で有用なエポキシドは、フッ素化アルケンから調製することができる。本発明の第5の態様によれば、部分的にフッ素化されたエポキシドを調製するための方法であって、フッ素化アルケン、
【化13】
(式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4が、H、F、Cl、Br、I、CF
3、アルキル、フルオロアルキル、ハロアルキルを含む群から独立して選択される)を酸化剤と反応させることを含む、方法が提供される。
【0029】
好ましくは、R1~R4のうちの少なくとも1つは、F、CF3、またはフルオロアルキルを含む。
【0030】
酸化剤の好ましい例としては、空気、酸素、および過酸化物などの酸素含有化合物、過酸基塩、および次亜ハロゲン酸塩などの酸素と他の元素との化合物が挙げられる。好ましくは、酸化剤は、クロライトなどの次亜ハロゲン酸塩を含む。
【0031】
好ましくは、酸化剤と反応させる化合物は、テトラフルオロプロペンである。最も好ましくは、R1およびR2のうちの1つは、-CF3であり、R3およびR4のうちの1つは、-Fである。したがって、テトラフルオロプロペンは、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234 ze)または2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234yf)である。
【0032】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第5および第1の態様を含むフルオロヒドリンを調製するための方法が提供される。
【0033】
本発明の第7の態様によれば、以下の構造を有する部分的にフッ素化されたエーテルを調製するための方法であって、
【化14】
構造
【化15】
(式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4が、H、F、Cl、Br、I、CF
3、アルキル、フルオロアルキル、ハロアルキルを含む群から独立して選択される)を有するフルオロヒドリンを反応させることを含む、方法が提供される。
【0034】
本発明の第8の態様によれば、構造
【化16】
(式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4が、H、F、Cl、Br、I、CF
3、アルキル、フルオロアルキル、ハロアルキルを含む群から独立して選択される)を有する化合物が提供される。
【0035】
本発明の第9の態様によれば、本発明の第8の態様の化合物を含む組成物が提供される。
【0036】
本発明の第8の態様の化合物または本発明の第9の態様による組成物は、例えば、電池用途において、溶媒として使用され得る。
【0037】
本発明の第8の態様の化合物または本発明の第9の態様による組成物は、冷却液、例えば、浸漬型冷却液として使用され得る。
【0038】
また提供されるのは、以下の構造を有する部分的にフッ素化されたエーテルを調製するための方法であって、
【化17】
構造
【化18】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4が、H、F、Cl、Br、I、CF
3、アルキル、フルオロアルキル、ハロアルキルを含む群から独立して選択され、R
5が、群CF
3、アルキル、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、ハロアルキルパーフルオロハロアルキルから独立して選択される)を有するフルオロヒドリンを反応させることを含む、方法である。
【0039】
好ましくは、エーテル合成は、フルオロヒドリンの酸触媒脱水を介して生じる。
【0040】
あるいは、エーテル合成は、次の技法のうちの1つ以上を介して生じる。
i.アルコキシ脱ハロゲン化-好ましくは塩基性条件下でのハロゲン化アルキルとフルオロヒドリンとの反応、
ii.アルコキシ脱スルホニルオキシ置換-硫酸フルオロヒドリンとアルコキシドもしくはフルオロヒドリンアルコキシドとの反応、
iii.ヒドロ、アルコキシ脱ジアゾ二置換-フルオロヒドリンとジアゾ化合物との反応、
iv.アルコキシ脱ヒドロキシル化-2つのアルコールを脱水して、例えば濃硫酸を用いてエーテルを得る、
v.ヒドロキシもしくはアルコキシ脱アルコキシル化-(フルオロヒドリン)エーテルとアルコールもしくはフルオロヒドリンとのエステル交換、および/または
vi.アルコキシ脱ヒドロキシル化-アルコールまたはフルオロヒドリンとオキソニウム化合物との反応。
【0041】
加えて提供されるのは、以下の構造を有する化合物である。
【化19】
【0042】
さらに提供されるのは、以下の構造を有する化合物を含む組成物である。
【化20】
化合物または組成物は、例えば、電池用途において、溶媒として使用され得る。
【0043】
化合物または組成物は、冷却液、例えば、浸漬型冷却液として使用され得る。
【0044】
次に、本発明について、以下の非限定的な実施例を参照して説明される。
【実施例】
【0045】
実施例1-オラー試薬を用いたエポキシドの開環
以下の手順に従った。
・反応器にオラー試薬(70%HF:ピリジン、5ml)を充填し、撹拌しながら氷バッチで冷却した。
・次いで、2,3-エポキシ1,1,1-トリフルオロプロパン(TFPO)(3.4g)を滴加した。
・添加の最後に、反応混合物を室温に温め、撹拌を48時間続けた。
・48時間後、反応混合物を氷でクエンチした。
・塩を添加し、生成物をジエチルエーテルで抽出した(3×5ml)。ジエチルエーテル抽出物を合わせ、飽和重炭酸カリウム溶液および水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ジエチルエーテルを真空中で除去して、所望の生成物を透明無色の液体沸点91~93℃として得た。この生成物の素性を、NMR分光法によって確認した。
【0046】
実施例2-オラー試薬を用いた2,3-エポキシ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンの開環
【化21】
以下手順を使用して、2,3-エポキシ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンを開環させた。
・100mlのHastalloy C圧力反応器にオラー試薬(70%HF:ピリジン、25g)を充填した。
・密閉後、反応器の内容物を撹拌しながら20℃に冷却した。
・次いで、2,3-エポキシ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(11g)を添加した。
・この添加が完了した後、反応混合物を50℃に加熱し、168時間撹拌した。
・168時間後、反応混合物を氷でクエンチし、飽和塩化ナトリウム溶液(22ml)を添加した。
・ジエチルエーテルを用いて、この混合物から生成物を抽出した。
・ジエチルエーテル抽出物を合わせ、飽和重炭酸カリウム溶液および次いで水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。生成物の素性を、NMR分光法によって確認した。
【0047】
実施例2a-オラー試薬を用いた2,3-エポキシ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンの開環
【化22】
以下手順を使用して、2,3-エポキシ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンを開環させた。
・100mlのHastalloy C圧力反応器にオラー試薬(70%HF:ピリジン、25g)を充填した。
・密閉後、反応器の内容物を撹拌しながら20℃に冷却した。
・次いで、2,3-エポキシ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(10.6g)を添加した。
・この添加が完了した後、反応混合物を80℃に加熱し、43時間撹拌した。
・43時間後、反応混合物の試料をGCMSによって分析し、すべての供給物エポキシドが反応したことを見出した。
・冷却後、反応混合物を氷でクエンチし、飽和塩化ナトリウム溶液(22ml)を添加した。
・ジエチルエーテルを用いて、この混合物から生成物を抽出した。
・ジエチルエーテル抽出物を合わせ、飽和重炭酸カリウム溶液および次いで水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。生成物の素性を、NMR分光法によって確認した。
【0048】
実施例3-オラー試薬を用いた2,3-エポキシ-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパンの開環
【化23】
以下手順を使用して、2,3-エポキシ-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパンを開環させた。
・100mlのHastalloy C圧力反応器にオラー試薬(70%HF:ピリジン、16.5g)を充填した。
・密閉後、反応器の内容物を撹拌しながら20℃に冷却した。
・次いで、2,3-エポキシ-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン(10g)を添加した。
・この添加が完了した後、反応混合物を50℃に加熱し、160時間撹拌した。
・160時間後、反応混合物を氷でクエンチし、飽和塩化ナトリウム溶液(22ml)を添加した。
・ジエチルエーテルを用いて、この混合物から生成物を抽出した。
・ジエチルエーテル抽出物を合わせ、飽和重炭酸カリウム溶液および次いで水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。生成物の素性を、NMR分光法によって確認した。
【0049】
実施例4-ホスゲンを用いたジ-(1,1,1,3-テトラフルオロプロピル)カーボネートの調製
ジ-(1,1,1,3-テトラフルオロプロピル)カーボネートを、以下の手順を使用して合成した。
・不活性雰囲気下で、三口丸底フラスコを0℃に冷却した。
・ホスゲン溶液(トルエン中15重量%、50mLの溶液)を添加し、撹拌した。
・1,1,1,3-テトラフルオロプロパン-2-オール(18.42g)およびピリジン(11.02g)の混合物を溶液に滴加し、溶液の温度が確実に10℃を超えて上昇しないように監視した。
・溶液を室温に温め、48時間撹拌した。
・生成物を濾過してピリジニウム塩を除去し、溶媒を真空中で除去して粗生成物を得た。
・粗生成物を大気圧下で蒸留して、ジ-(1,1,1,3-テトラフルオロプロピル)カーボネートを黄色の油として得た(7.08g、35%収率)。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図は、実施例からの反応生成物のうちのいくつかに対して実行した様々な分光分析技法の結果を示している。
【0051】
【
図1】2,3-エポキシ1,1,1-トリフルオロプロパン(TFPO)とオラー試薬との反応生成物の
19F NMRスペクトルを示す。
【
図2】オラー試薬を用いて開環した2,3-エポキシ-1,1,1,3-トリフルオロプロパンの反応生成物の
19F NMRスペクトルを示す。
【
図2a-1】オラー試薬を用いて開環した2,3-エポキシ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンの反応生成物のプロトンカップリング
19F NMRスペクトルを示す。
【
図2a-2】オラー試薬を用いて開環した2,3-エポキシ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンの反応生成物のプロトンデカップリング
19F NMRスペクトルを示す。
【
図3】オラー試薬を用いて開環した2,3-エポキシ-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン)の反応生成物の
19F NMRスペクトルを示す。
【
図4】生成物ジ-(1,1,1,3-テトラフルオロプロピル)カーボネートのスペクトルと一致する、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン-2-オールとホスゲンとの反応生成物の
19F NMRスペクトルを示す。