(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】バイオマーカーに基づく遠隔患者管理の処方
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20241022BHJP
G01N 33/70 20060101ALI20241022BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241022BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241022BHJP
C07K 14/58 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/70
A61B5/00 G
G01N33/53 B
C07K14/58
(21)【出願番号】P 2021556866
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2020058700
(87)【国際公開番号】W WO2020201078
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-27
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508093584
【氏名又は名称】ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】スチューベ トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ウィーマー ヤン
(72)【発明者】
【氏名】クンデ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリヒ シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー フリードリヒ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】KOEHLER FRIEDRICH et al.,Telemedicine in heart failure: Pre-specified and exploratory subgroup analyses from the TIM-HF trial,Int. J. cardiol.,2012年,Vol.161,No.3,P.143-150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心血管疾患と診断された患者のための遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングのための方法であって、
前記心血管疾患が心不全であり、前記方法が、
-前記患者の少なくとも1つの試料を提供することと、
-前記少なくとも1つの試料中の、プロアドレノメデュリン(proADM)、プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(proBNP)及び/又はプロ心房性ナトリウム利尿ペプチド(proANP)からなる群から選択される、少なくとも1つのバイオマーカー又はその1以上のフラグメントのレベルを決定することと、
-前記少なくとも1つのバイオマーカー又はその一以上のフラグメントの前記レベルを1つ以上の参照値と比較することと、
を含み、
前記少なくとも1つのバイオマーカー又はその一以上のフラグメントの前記レベルが、前記患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないことを示す、前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのバイオマーカー又はその一以上のフラグメントの低ベネフィットレベルが、遠隔患者管理を処方しないことを示し、及び/又は少なくとも1つのバイオマーカー又はその一以上のフラグメントの高ベネフィットレベルが、遠隔患者管理を処方することを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのバイオマーカー又はその一以上のフラグメントの前記低ベネフィットレベルが、少なくとも10日間の期間にわたって、遠隔患者管理を処方しないことを示し、及び/又は少なくとも1つのバイオマーカー又はその一以上のフラグメントの高ベネフィットレベルが、少なくとも10日間の期間にわたって、遠隔患者管理を処方することを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
proADM又はその一以上のフラグメントの前記低ベネフィットレベルが、参照値±20%以下であり、及び/又はproADM又はその一以上のフラグメントの前記高ベネフィットレベルが、参照値±20%以上であり、前記参照値が、0.75nmol/L~1.07nmol/Lの値の範囲から選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
proBNP又はその一以上のフラグメントの前記低ベネフィットレベルが、参照値±20%以下であり、及び/又はproBNP又はその一以上のフラグメントの前記高ベネフィットレベルが、参照値±20%以上であり、前記参照値が、237.6pg/mL~1595.8pg/mLの値の範囲から選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
proANP又はその一以上のフラグメントの前記低ベネフィットレベルが、参照値±20%以下であり、及び/又はproANP又はその一以上のフラグメントの前記高ベネフィットレベルが、参照値±20%以上であり、前記参照値が、106.9pmol/L~248.3pmol/Lの値の範囲から選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が心不全の結果として過去12ヶ月以内に入院した、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記
心不全が、有害転帰のリスクが高い心不全である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
proADM又はその一以上のフラグメントのレベルを決定することが、MRproADMのレベルを決定することを含み、proBNP又はその一以上のフラグメントのレベルを決定することが、前記試料中のNTproBNPのレベルを決定することを含み、及び/又はproANP又はその一以上のフラグメントのレベルを決定することが、MRproANPのレベルを決定することを含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の心血管疾患と診断された患者のための遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化、及び/又はモニタリングのための方法であって、前記方法が、追加的に、
-少なくとも1つの臨床パラメータを決定することを含み、
-前記少なくとも1つの臨床パラメータ及び前記少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメントの前記レベルが、前記患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないことを示す、前記方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの臨床パラメータが、年齢、体重、肥満度指数、性別、民族的背景、血中クレアチニン、左心室駆出率(LVEF)、右心室駆出率(LVEF)、NYHA分類、医学的処置の状態、血圧(収縮期/拡張期)、心拍数、心電図(ECG)による心リズム、末梢血中酸素量(SpO
2)、自己評価による健康状態(スケール)、又は腎機能を示すパラメータである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの臨床パラメータが、腎機能を示すパラメータである、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの臨床パラメータが、クレアチニンクリアランス率及び/又はGFRを示すパラメータである、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
第1の試料が、第1の時点で前記患者から単離され、第2の試料が、第2の時点で前記患者から単離され、前記少なくとも1つのバイオマーカー又はその一以上のフラグメントの前記レベルの、前記第1及び第2の時点に関する絶対差、比率、及び/又は変化率が、前記患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないことを示す、請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記試料が、血液試料、唾液試料及び/又は尿試料からなる群から選択される、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか一項に記載の方法を実行するためのキットであって、
-患者からの試料中のproADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカー又はその一以上のフラグメントを決定するための検出試薬と、
-前記少なくとも1つのバイオマーカーのレベルが、遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないことを示すかどうかを決定するための参照値を含む参照データであって、
前記参照データが、コンピュータ可読媒体に保存されているか、又は
前記参照データが、少なくとも1つのバイオマーカーの決定されたレベルを前記参照値と比較するように構成された、コンピュータ可読媒体に保存されているコンピュータ実行可能コードの形態で使用される、参照データと、
を含む、キット。
【請求項17】
さらに、患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーもしくはその一以上のフラグメントのレベルを決定するための検出試薬及び/又は少なくとも1つの臨床パラメータを決定するための手段と、
前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーもしくはその一以上のフラグメントのレベル及び/又は前記少なくとも1つの臨床パラメータが、遠隔患者管理を処方するか又は処方しないことを示すかどうかを決定するための参照値を含む参照データであって、
前記参照データが、コンピュータ可読媒体に保存されているか、又は、
前記参照データが、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーもしくはその一以上のフラグメントの前記決定されたレベル及び/又は前記少なくとも1つの臨床パラメータを前記参照値と比較するように構成された、コンピュータ可読媒体に保存されているコンピュータ実行可能コードの形態である、前記参照データと、
を含む、請求項
16に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、医学的診断の分野、特に分子バイオマーカーに基づく予後及び療法ガイダンスに関する。
【0002】
本発明は、心血管疾患と診断された対象が遠隔患者管理を処方するべきかどうかを決定するための方法に関し、この方法は、該患者からの試料中の特定のバイオマーカーを測定することを含む。したがって、本発明は、心血管疾患と診断された患者に対する遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングのための方法に関し、この方法は、患者の少なくとも1つの試料を提供することと、proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のレベルを決定することと、少なくとも1つのバイオマーカーの該レベルを1つ以上の参照値と比較することと、を含み、該レベルは、該患者の遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないことを示す。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーの低ベネフィットレベルは、遠隔患者管理を処方しないことを示し、一方、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーの高ベネフィットレベルは、遠隔患者管理を処方することを示す。いくつかの実施形態では、心血管疾患は心不全、特に過去12ヶ月以内に入院をもたらした慢性心不全である。
【背景技術】
【0003】
遠隔医療としても知られる遠隔患者管理は、医療提供者が、対面訪問の代替として、又は対面訪問と並行して、電気通信を使用して患者を遠隔診断及び治療することを可能にし(Cowie et al.2016)、したがって、距離に依存しない適応のために、患者のケアへのアクセスを増やす。これにより、疾患を有するか、又は流行する疾患に関連する合併症を引き起こすリスクがある外来患者の健康管理へのアクセスの不足の格差を埋める。遠隔医療は、同じ技法を通じて介護者間のリアルタイムの相談を合理化及び可能にし、慢性疾患の診断を受けた患者に対するタイムリーで質の高い個人的なケアの提供を促進する可能性を秘めている。遠隔患者管理には、外来診療の場での薬剤の適切な用量漸増(up titration)、患者教育、及び流行する疾患又は併存疾患の管理、ならびに重大なイベントの早期発見を含む幅広い介入が含まれる。このアプローチは、通常、臨床的悪化の早期発見に伝統的に焦点を合わせている遠隔監視アプローチよりもさらなる介入を含み得る。相互作用とリアルタイムのデータ交換の緊密な可能性は、全体的な患者の転帰を改善し、健康管理システムについての(再)入院、死亡率、及びコストの削減につながる重大な健康状態を回避できる(Andres et al.2018)。
【0004】
心不全は慢性障害であり、その管理は遠隔患者管理アプローチから利益を得る可能性がある(Cowie et al.2014、van Riet EE et al.2016、Chioncel et al.2017、Ponikowski et al.2016)。特に、遠隔患者管理は、心代償不全の初期の徴候及び症状を検出するのに役立つ可能性があり、したがって、心不全(代償不全)の完全な症状発現の前に、適切な治療及びケアを迅速に開始することができる。
【0005】
心不全は成人によく見られる疾患であり、世界中でかなりの罹患率及び死亡率を占めている。先進国の人口の1~2%が心不全を有すると推定されており、この有病率は70歳以上の人口で10%まで増加している。ヨーロッパでは、1,000万人が心室機能不全を伴う心不全を有しており、さらに1,000万人が駆出率が保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction)(HFPEF)を有すると推定されている(Hunt et al.2009、McMurray et al.2012)。
【0006】
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬、及び鉱質コルチコイド受容体拮抗薬、ならび先進デバイス療法など、駆出率が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction)を有する患者に対する多くの治療法の有効性にもかかわらず、人口の高齢化及び急性心血管イベントの治療の改善により、心不全の有病率は増加している(Marco et al.2017)。
【0007】
慢性心不全は、平均余命の不良、生活の質の悪化、反復入院をもたらし、社会のかなりの経済的負担を表している。過去数年にわたって、人口の高齢化と医療費の高騰との組み合わせにより、これらの患者のための代替的ケア戦略の必要性が増幅されてきた。
【0008】
疾患の有病率及び治療アプローチの複雑さを考えると、心不全患者の管理における最も困難な問題の1つは、心不全悪化の入院率と再入院率を減らことである(Cowie et al.2014)。
【0009】
現代の心不全ケアプログラムは、心不全による反復入院のリスクを減らすための外来心不全ケアの改善に焦点を合わせている。心不全による入院の翌年の再入院率は約50%であり、1年死亡率は15~20%である(Cowie et al.2014、Van Riet et al.2016)。非代償性心不全による入院の費用は、心不全の治療による総支出の約60%に達している(Gheorghiade et al.2005)。現在の遠隔医療心不全の概念は、遠隔監視ならびに遠隔医療介入、ガイドラインに基づく外来治療、及びグループ分けし、遠隔患者管理として知られている構造化された患者教育を含む全体論的なプログラムである(Anker et al.2011、Andres et al.2018)。
【0010】
多くの無作為化比較試験は、BEAT-HF(Ong et al.2016)、CardioBBEAT(Hofmann et al.2015)、TIM-HF(Koehler et al.2011、Koehler et al.2012a)、REM-HF(Morgan et al.2017)、OptiLink HF(Bohm et al.2016)、IN-TIME(Hindricks et al.2014)及びCHAMPION(Abraham et al.2011)を含む、心不全患者の遠隔患者管理が様々な臨床転帰に与える影響を調査している。
【0011】
これらの試験の結果は、罹患率及び死亡率に関して完全に一致しているわけではない。これは、使用された遠隔介入の違いと、試験に含まれる不均一な患者集団の性質によって説明され得る。試験デザインと使用された遠隔患者管理介入(侵襲的又は非侵襲的遠隔監視を含む)との違いにもかかわらず、1つの一般的な指標は、遠隔患者管理を開始する前に、最近(すなわち≦12ヶ月)心不全で入院した不安定な心不全の患者が、その後の心不全による再入院率が低く、死亡率が低下し、生活の質が向上しているように見えるということである。
【0012】
最近のメタ分析は、訪問介護及び疾病管理診療所が、最近の心不全による入院後の全死因死亡率及び再入院を減らことができることを示唆している(Van Spall et al.2017)。
【0013】
2016年に、欧州心臓病学会(European Society of Cardiology)(ESC)は、急性及び慢性心不全の治療に関するガイドラインにおいて、侵襲性遠隔医療デバイスを使用した遠隔監視に分類IIbを推奨した(Ponikowski et al.2016)。心不全患者の血行動態誘導ケアを評価する完了した臨床試験からのデータのメタ分析は、恒久的に埋め込まれたセンサーと充満圧の頻繁な評価を使用した血行動態誘導心不全管理が、症状が続く患者の入院のリスクを減らという点で従来の臨床管理戦略よりも優れていると結論付けた(Adamson et al.2017)。
【0014】
最近、前向き無作為化、比較、オープン(unmasked)多施設治験であるTelemedical Interventional Management in Heart Failure II(TIM-HF2)が完了し、構造化された遠隔患者管理介入を明確に定義された心不全集団で使用すると、計画外の心血管疾患による入院及び全死因死亡率のための喪失日数の割合を低減させることができることを実証した(Koehler et al.2018a、Koehler et al.2018b)。
【0015】
したがって、先行技術は、遠隔患者管理が、心不全を患っている患者の生活の質及び寿命を改善するのに有益であることを実証している。
【0016】
しかしながら、効果的な遠隔患者管理は、実質的な技術的装置、個人的な努力、したがって経済的負担に関連しており、遠隔監視と遠隔専門知識及び遠隔医療相談とを組み合わせている。現代社会における心不全などの心血管疾患の有病率を考慮に入れると、心血管疾患を患っているありとあらゆる患者に遠隔患者管理を割り当てるだけで、医療提供者にかなりの経済的負担及び技術的課題を課す可能性がある。
【0017】
どの患者にとって遠隔患者管理が有益であるかを決定するための基準を論じている先行技術文書はごくわずかである。
【0018】
Koehler et al.2012bは、心不全を患っている患者の部分母集団が、遠隔の患者管理とは異なる利益を得る可能性があることを示唆している。特に、左心室駆出率の中央値(LVEF)、PHQ-9うつ病スコア、及び以前のHF代償不全は、遠隔患者管理の処方を導くのに役立つ臨床スコアとして提案されている。
【0019】
Xiang et al.2013は、心不全患者に対する遠隔患者管理の利点に関するメタ研究であり、NYHAスコアが高くかつ低年齢の患者でより高い有効性を示唆している。
【0020】
Melilo et al.2014は、遠隔患者管理の恩恵を受ける心不全患者の標的群を選択するためのモデルを提案している。NYHAが2又は3、駆出率(EF)が<40、及び年齢が>68の場合に効果が報告されている
【0021】
現在、このように知られている基準はごくわずかであり、遠隔患者管理の処方を導くのに役立つ可能性がある。
【0022】
先行技術に照らして、心血管疾患を患っているどの対象に対して遠隔患者管理が有益であり、処方されるべきであるかを決定するための、また遠隔患者管理が有意な改善をもたらさない場合に、安全に除外され得る、追加の強力なガイダンスを提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
先行技術における困難に照らして、本発明の根底にある技術的問題は、心血管疾患を有する患者の遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化、及び/又はモニタリングのための改善された又は代替の手段を提供することである。本発明の他の目的は、患者が遠隔患者管理から利益を得るかどうかに向けたガイダンスを提供するための手段を提供すること、及び/又はそのような患者に遠隔患者管理を処方するかどうかに向けたガイダンスを提供することに関連し得る。
【0024】
したがって、本発明は、遠隔患者管理を処方することが心不全を患っている患者にとって有益であるかどうかに関する指示を含む、遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングのための方法、キット、及びさらなる手段を提供しようとするものである。
【0025】
本発明の1つの目的は、心血管疾患を有する患者が遠隔患者管理を受けるべきか否かに関する決定を導くためのバイオマーカー又はバイオマーカーの組み合わせの使用である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の技術的問題の解決策は、独立請求項に提供されている。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に提供されている。
【0027】
本発明は、心血管疾患と診断された患者のための遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングのための方法に関し、本方法は、
-該患者の少なくとも1つの試料を提供することと、
-該少なくとも1つの試料中の、プロアドレノメデュリン(proADM)、プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(proBNP)及び/又はプロ心房性ナトリウム利尿ペプチド(proANP)からなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のレベルを決定することと、
-少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)の該レベルを1つ以上の参照値と比較することと、を含み、少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)の該レベルが、該患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないことを示す。
【0028】
本発明の方法の患者は、試料を採取する時点で、心不全などの心血管疾患と診断されている。原則として、この患者群は遠隔患者管理から利益を得ることができる。バイオマーカーproADM、proBNP、及び/又はproANPのレベルを決定すると、遠隔患者管理の治療上の利益を評価することができ、それによって遠隔患者管理を処方することが適切か否かに関する決定を導くことができる。
【0029】
本方法は、心血管疾患を患っている患者の大規模な療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングに非常に有用かつ有益であり得る。バイオマーカーのレベルを決定することにより、信頼できる治療法の決定を可能にする強力な手段が提供される。
【0030】
以下のデータが示すように、バイオマーカーproADM、proBNP、及び/又はproANPは、統計的信頼性が高く、遠隔患者管理が治療上推奨されるかどうか、又は必要かつ有益な治療アプローチを患者から差し控えることなく安全に除外できるかどうかを示している。
【0031】
proADM、proBNP及びproANPの群から選択された少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)を決定する単一の測定によって、患者が遠隔患者管理から恩恵を受ける可能性が高いかどうか、又は遠隔患者管理が、有意な治療上の利益をもたらすことなく、追加費用だけが発生するかどうかに関して正確で信頼できる結論を下すことができることは驚くべき発見であった。proADM、proBNP及び/又はproANPのこの予後能力は、遠隔患者管理を処方するか否かを決定するという観点から、本発明者らが知る限りにおいて、新規かつ驚くべきものである。
【0032】
医療制度への負担を軽減し、真に必要としている人々に医療資源を確実に割り当てることへの有利な効果は、以下に詳述するデータから生じる実施例によって説明することができる。
【0033】
バイオマーカーproADM、proBNP、及び/又はproANPの適切な参照値を使用すると、心不全を患っている患者の約3分の1が、遠隔患者管理を受けることから安全に除外することができる。これらの患者の場合、バイオマーカーproADM、proBNP、及び/又はproANPのレベルは、遠隔患者管理が有意な治療上の利益をもたらさないことを確実に予測する。遠隔患者管理を処方するか、遠隔患者管理なしで通常のケアを採用するかに関係なく、患者は、慢性心不全の急性代償不全又は何らかの原因による死亡を含む統計的に同数の有害事象を有する。また、遠隔患者管理の恩恵を受けないとしてバイオマーカーのレベルによって早期に特定された患者の入院日数は短縮されない。したがって、患者のこの3分の1は、疾患の進行又は生活の質のいずれの点でも利益を上げていない。したがって、追加で採用された遠隔患者管理に関連する費用及び労力は、患者に不利益をもたらリスクを冒すことなく安全に除外することができる。
【0034】
例えば、TIM-HF2試験では、平均して、遠隔患者管理を受けている患者は、年間143分間医療専門家に電話で連絡する。1000人の患者の場合、患者のほぼ30%を不要な遠隔患者管理から安全に除外することで、年間700時間以上の電話の労力を節約できる。これは、実際に必要な患者を効率的に支援及びケアするために使用できる時間を表す。さらに、遠隔患者管理用のデバイスの提供、該デバイスの保守、ならびにデータを送信及び分析するためのインフラストラクチャに関連するコストを大幅に削減し、最も利益を得る個人への医療資源(resources)を合理化することができる。
【0035】
本発明者らの知る限り、遠隔患者管理を処方するか否かに関する決定を行うための、proADM、proBNP及びproANPの群から選択されたバイオマーカーの使用は、先行技術の研究及びアプローチによって開示も示唆もされていない。
【0036】
この点で、バイオマーカーproADM、proBNP、及びproANPが、心不全などの心血管疾患と診断された患者の療法ガイダンス、層別化又は遠隔患者管理のモニタリングのためのマーカーと同様の可能性を示すことは、さらに驚くべき発見である。
【0037】
52個のアミノ酸を含むペプチドアドレノメデュリン(ADM)は、もともとヒトの褐色細胞腫から単離された(Kitamura K et al.1993)。ADMは、血圧低下作用、免疫調節作用、代謝作用、血管作用があることが示されている。それは強力な血管拡張剤であり、組織でのその広範な産生は、個々の臓器への血液供給を維持するのに役立つ。ADMは微小循環を安定させ、内皮透過性とその結果としての臓器不全から保護し、特に敗血症(Andaluz-Ojeda et al.2015)又は下気道感染症(Hartmann et al.2012、Albrich et al.2013)、高血圧、慢性腎疾患(Jougasaki et al.2000)、肝硬変(Kojima et al.1998)、癌、特に心不全(Pousset et al.2000、Albrecht et al.2009)などの他の疾患の分野においてかなり有望であることを示している。
【0038】
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、T.Sudoh及び共同研究者らによってブタの脳から最初に単離されたポリペプチドである(Nature 1988;332:78-81)。ペプチドをコードするCDNAのクローニング及び配列分析(T.Sudoh et al.1989)の後、ヒトBNPがヒトの心臓で産生されることが示された。心室は、機械的負荷と壁の伸長の増加に応答して、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を産生する。BNPは、ナトリウム排泄と利尿とを増加させ、血管平滑筋を弛緩させ、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系を阻害することによって、また心肥大と線維症を相殺することにより、過負荷の悪影響から心臓を保護する。BNPは、ヒト心筋細胞によって108個のアミノ酸のプロホルモン(proBNP)として合成され、proBNPの32残基のBNPとproBNPの76残基のN末端フラグメント(NTproBNP)に切断される。
【0039】
心不全につながる心臓疾患を患っている患者では、BNP血漿濃度が上昇する。心臓単球は別の因子、すなわち心房性ナトリウム利尿因子(ANF)を分泌するが、心不全又は初期心不全に対する分泌反応は、ANFシステムと比較してBNPシステムではるかに大きいようである(Mukoyama et al,J Clin Invest 1991;87:1402-12)。今日、BNPは、新機能不全、特に左心室機能不全の多用途のバイオマーカーとして、及び心筋梗塞又は心不全の予測因子として認められている(Vuolteenaho et al.2005)。
【0040】
心房性ナトリウム利尿ポリペプチド(ANP)は、主に健康な成人の心房及び左心室機能不全の患者の左心室から分泌される。ANPの臨床応用は、半減期が短いために制限されるが、その前駆体であるNTproANPは血漿中でより安定しており、より長い半減期を有する。最近、ナトリウム利尿ペプチドの中間体であり、より安定であるpro-A型ナトリウム利尿ペプチドの中央領域配列(MRproANP)が、急性心不全又は冠動脈疾患などの心血管疾患の予後及び診断のバイオマーカーとして臨床で首尾よく使用された(Wild et al.2011、Tzikas et al.2013、Francis et al.2016)。
【0041】
したがって、バイオマーカーproADM、proBNP、及びproANPは、心血管系に関して共通の生物学的機能を示し、心不全時にアップレギュレートされる。理論に束縛されることを意図するものではないが、データに示されている患者についての遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングのためのproADM、proBNP、及びproANPの共通の可能性の驚くべき発見は、それらの共通の機能を心血管疾患、特に心不全に関連するバイオマーカーとして関連付けることができる。
【0042】
また、この方法は、有害事象のリスクの予測因子として、及び心血管疾患、好ましくは心不全と診断された患者の遠隔患者管理を導く上で有用であり得る。バイオマーカーproADM、proBNP、及びproANPのレベルが有害事象の可能性の上昇を示している場合、遠隔患者管理を処方することができ、好ましくは遠隔患者管理の種類及び/又は強度を調整することができる。有害事象の予後に応じて、特殊な診断ツールを遠隔患者管理に使用することができ、患者の健康状態に関するデータの評価検討をより頻繁に行うことができる。
【0043】
この点で、本方法はリスク評価又は層別化に特に有用であり、患者を、より頻繁なモニタリングもしくは追加の診断を必要とするリスクグループ、又はそれらの分類に応じて特定の異なる治療的措置を受ける治療グループなどの異なるグループにグループ分け又は分類することができる。
【0044】
したがって、本明細書に記載のバイオマーカーの可能性は、患者の転帰を改善するための適切な療法ガイダンスを可能にするだけでなく、医療資源効率の高い戦略を採用するのにも役立つ。
【0045】
一実施形態では、本方法は、少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)の該レベルが、該患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないことを示すかどうかを決定するために、少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)の該レベルを1つ以上の参照値と比較することを含む。
【0046】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、遠隔患者管理を処方しないことを示している。
【0047】
本明細書で使用される場合、「低ベネフィットレベル」は、好ましくは、遠隔患者管理が治療上有効ではなく、患者に有意な改善をもたらさないことを示す、proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のレベルを指す。
【0048】
以下のデータに詳述されているように、本明細書に記載されているバイオマーカーについては、遠隔患者管理を処方しているときに、心不全による代償不全又は何らかの原因による死亡などの有害事象の数が大幅に減少しないことを示している、低ベネフィットレベルを確実に確立することができる。同様に、バイオマーカーの低ベネフィットレベルが決定された患者の場合、病院で過ごす日数、したがって入院率は大幅に低下しない。
【0049】
したがって、本明細書に記載のバイオマーカーの低ベネフィットレベルは、このような治療的アプローチから利益を得ない、遠隔の患者管理の処方からの患者の安全な除外を可能にする。したがって、低ベネフィットレベルが決定された患者の遠隔患者管理に関連する時間及び労力は、実際に必要としている患者により効率的に分配することができる。
【0050】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、遠隔患者管理を処方することを示している。
【0051】
本明細書で使用される場合、「高ベネフィットレベル」は、好ましくは、遠隔患者管理が治療上有効であり、実際に患者の改善された転機をもたらすことを示す、proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のレベルを指す。
【0052】
以下のデータに詳述されているように、本明細書に記載されているバイオマーカーについては、遠隔患者管理を処方しているときに、心不全による代償不全又は何らかの原因による死亡などの有害事象の数が有意に減少することを示している、高ベネフィットレベルを確実に確立することができる。同様に、バイオマーカーの高ベネフィットレベルが決定された患者の場合、病院で過ごす日数、したがって入院率は低下する。
【0053】
したがって、本明細書に記載のバイオマーカーの高ベネフィットレベルは、治療アプローチが効果的であり、患者にとって最良の治療結果を保証する患者に遠隔患者管理を処方することを可能にする。
【0054】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、少なくとも10日間、好ましくは少なくとも30日間、60日間、90日間、150日間、180日間、270日間又は365日間の期間にわたって遠隔患者管理を処方しないことを示す。
【0055】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、少なくとも10日間、好ましくは少なくとも30日間、60日間、90日間、150日間、180日間、270日間又は365日間の期間にわたって遠隔患者管理を処方しないことを示す。
【0056】
本明細書に記載のバイオマーカーの測定に基づいて、心血管疾患を患っている患者が遠隔患者管理から利益を得ることができるか否かに関して正確かつ信頼できる結論を下すことができ、それによって、遠隔患者管理を処方するか否かについての十分に根拠のある決定を可能にすることは全く驚くべきことである。特定の設定における-特に、本明細書に記載の少なくとも10日間、好ましくは少なくとも30日間、60日間、90日間、150日間、180日間、270日間又は365日間の期間にわたってproADM、proBNP及び/又はproANPのこの予後能力は、斬新かつ驚くべきものであり、心血管疾患を患っている患者の臨床転帰を改善するための新たな治療アプローチとして、遠隔患者管理の医療資源効率的な療法ガイダンスを可能にする。
【0057】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)の低及び/又は高ベネフィットレベルは、少なくとも10日間、好ましくは少なくとも30日間、60日間、90日間、150日間、180日間、270日間又は365日間の期間にわたって、遠隔患者管理を処方しないことを示し、遠隔患者管理を割り当てることが適切かどうかを再評価するために、バイオマーカーのレベルを最初に決定した後、10日間、好ましくは30日間、60日間、90日間、150日間、180日間、270日間又は365日間の期間の後に、本明細書に記載のバイオマーカーのレベルの第2の試料が決定されることが好ましい。
【0058】
いくつかの実施形態では、患者が自分の健康状態が悪化していることに気付いた場合、遠隔患者管理を処方するか否かの決定を再評価するために患者が医療関係者に相談することが好ましい。
【0059】
本発明によれば、「遠隔患者管理を処方することを示す」及び「遠隔患者管理を処方しないことを示す」の文脈における「示す」という用語は、可能性の尺度として意図されている。好ましくは、「兆候」は、例えば有害事象の回避に関連して、治療効果の存在又は不在の可能性に関するものであり、典型的には、例えば、遠隔患者管理を処方するか、又は処方しない場合の有害事象を確実に回避することに関して、治療効果の絶対的な存在又は不在を明確に指すように限定的に解釈されるべきではない。
【0060】
上記を念頭に置いて、本明細書に開示される参照値を使用することにより、遠隔患者管理を処方するか否かに応じて、遠隔患者管理の信頼できる療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリング、ならびに有害事象の発生に関するリスクの推定が可能になり、医療専門家による適切な行動を可能にする。
【0061】
本発明の実施形態では、以下の開示された可能な参照値からの偏差、例えば、±20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%の偏差、ならびに正確な参照値も開示されかつ特許請求される。
【0062】
本明細書に開示される参照値は、好ましくは、サーモサイエンティフィック(Thermoscientific)B.R.A.H.M.S KRYPTORアッセイ又は自動システムに好適なアッセイによって患者から得られた血漿試料中のproADM、proBNP及び/又はproANP又はそのフラグメントのタンパク質レベルの測定値を指す。したがって、本明細書に開示される値は、用いられる検出/測定方法に応じてある程度変動し得、本明細書に開示される特定の値は、他の方法によって決定される対応する値を読み取ることも意図している。
【0063】
proADM、proBNP又はproANPなどのマーカー又はバイオマーカーのレベルに関する本明細書に開示される全ての参照値は、ある特定の参照値「以上」、又はある特定の参照値「以下」として理解されるべきである。例えば、0.75nmol/Lを上回るproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベルに関する実施形態は、0.75nmol/L以上のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベルに関するものと理解されるべきである。
【0064】
proADMの決定に関連する実施形態
一実施形態では、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、参照値±20%以下であり、参照値は、0.75nmol/L~1.07nmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06又は1.07nmol/Lである。特に好ましい参照値は、0.86nmol/L±20%、好ましくは0.75nmol/L±20%である。
【0065】
好ましい実施形態では、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、1.07nmol/L±20%以下、好ましくは0.98nmol/L±20%以下、0.91nmol/L±20%以下、0.86nmol/L±20%以下、又は0.75nmol/L±20%以下である。
【0066】
一実施形態では、proADM又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、参照値±20%以上であり、参照値は、0.75nmol/L~1.07nmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06又は1.07nmol/Lである。特に好ましい参照値は、0.86nmol/L±20%、好ましくは0.75nmol/L±20%である。
【0067】
好ましい実施形態では、proADM又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、1.07nmol/L±20%以上、0.98nmol/L±20%以上、好ましくは0.91nmol/L±20%以上、0.86nmol/L±20%以上、又は0.75nmol/L±20%以上である。
【0068】
以下のデータに詳述されているように、proADMの低ベネフィットレベル及び高ベネフィットレベルは、遠隔患者管理が適切であるか、すなわち治療的に有効であり、したがって処方されるべきか、又は遠隔患者管理を安全に除外することができ、処方されないかどうかの正確な決定を可能にする。心不全又は何らかの原因による死亡による急性の代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、好ましくは試料提供後少なくとも10日間、30日間、最も好ましくは少なくとも90日間の期間にわたる、上記の0.75nmol/l~1.07nmol/Lの参照値の範囲は、100%~80%の範囲の最大感度を保証し、proADM又はフラグメント(複数可)についての0.75nmol/Lの好ましい参照値は、100%の感度を示し、一方proADM又はそのフラグメント(複数可)についての0.86nmol/Lの好ましい参照値は、少なくとも95%の感度を示し、一方proADM又はそのフラグメント(複数可)についての0.91nmol/Lの参照値は、少なくとも91%の感度を示し、一方、proADM又はそのフラグメント(複数可)の0.98nmol/Lについての参照値は、少なくとも86%の感度を示す。1.07nmol/lの参照値の場合、少なくとも80%の感度が確立される。
【0069】
100~80%の感度でこれらのカットオフを下回る患者は、遠隔患者管理の処方不要(除外)に推奨される。将来の別の時点での通常のケア状況の中で、proADMを使用した評価を繰り返す必要がある。評価されたリスクに応じて、患者は新たに非遠隔患者管理群又は遠隔患者管理群に段階分けされる。
【0070】
感度が80%未満で、これらのカットオフを超える患者は、遠隔患者管理を処方することを推奨される(組み入れ(rule in))。将来の別の時点での通常のケア状況の中で、proADMを使用した評価を繰り返す必要がある。評価されたリスクに応じて、患者は新たに遠隔患者管理群又は非遠隔患者管理群に段階分けされる。
【0071】
好ましい参照値ならびに関連する高ベネフィットレベル及び低ベネフィットレベルは、レベルproADMが遠隔患者管理を処方するか又は処方しないことを示すものとなる期間に依存し得ることに留意されたい。一般に、遠隔患者管理を受けることから患者を除外することは、低ベネフィットレベルの上界としてより低い参照値を必要とすることになる。いくつかの実施形態では、好ましい低ベネフィットレベルの上界は、心血管疾患、好ましくは心不全を診断するための既知の閾値と同じくらい低くてもよい。
【0072】
上記の参照値、ならびに高ベネフィットレベル及び低ベネフィットレベルは、少なくとも10日間、好ましくは少なくとも30日間、60日間、又は少なくとも90日間の期間にわたって遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかを示すものとして特に好ましい場合があるかなり長い期間、例えば少なくとも150日間、180日間、270日間、又は365日間にわたって、より低い参照値が好ましい場合がある。
【0073】
いくつかの実施形態では、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、参照値±20%以下であり、参照値は、0.60nmol/L~0.75nmol/L、好ましくは0.63nmol/L~0.75nmol/L、又は0.69nmol/L~0.75nmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74又は0.75nmol/Lである。特に好ましい参照値は、0.75nmol/L±20%、好ましくは0.72nmol/L±20%、0.69nmol/L又は0.63nmol/L±20%である。
【0074】
好ましい実施形態では、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、0.75nmol/L±20%以下、好ましくは0.72nmol/L±20%以下、0.69nmol/L±20%以下、又は0.63nmol/L±20%以下である。
【0075】
いくつかの実施形態では、proADM又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、参照値±20%以上であり、参照値は、0.60nmol/L~0.75nmol/L、好ましくは0.63nmol/L~0.75nmol/L、又は0.69nmol/L~0.75nmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74又は0.75nmol/Lである。特に好ましい参照値は、0.75nmol/L±20%、好ましくは0.72nmol/L±20%、0.69nmol/L±20%又は0.63nmol/L±20%である。
【0076】
好ましい実施形態では、proADM又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、0.75nmol/L±20%以上、好ましくは0.72nmol/L±20%以上、0.69nmol/L±20%以上、又は0.63nmol/L±20%以上である。
【0077】
該参照値は、少なくとも150日間、180日間、270日間、最も好ましくは少なくとも365日間の期間にわたって、遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないことを示すものとして特に好ましい場合がある。
【0078】
心不全又は何らかの原因による死亡による急性の代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、好ましくは試料提供後少なくとも150日間、180日間、270日間、最も好ましくは少なくとも365日間の期間にわたって、上記の0.69nmol/l~0.75nmol/Lの参照値の範囲は、100%~95%の範囲の最大感度を保証し、一方proADM又はそのフラグメント(複数可)についての0.63nmol/L又は0.69nmol/Lの好ましい参照値は、100%の感度を示し、一方proADM又はそのフラグメント(複数可)についての0.72nmol/Lの好ましい参照値は、少なくとも98%の感度を示し、一方、proADM又はそのフラグメント(複数可)についての0.75nmol/Lの参照値は、少なくとも95%の感度を示す。
【0079】
実施例で詳述されているように、感度と参照値との間の関係は、有害事象の考慮、すなわち、例えば年間の喪失日数又は何らかの原因による死亡に関する選択シナリオのエンドポイントにも依存し得る(表15を参照)。
【0080】
proBNPの決定に関連する実施形態
一実施形態では、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、参照値±20%以下であり、参照値は、237.6pg/ml~1595.8pg/mlの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1107.9、1110、1125、1150、1175、1200、1225、1250、1275、1300、1325、1350、1375、1400、1402,95,1403、1425、1450、1475、1500、1525、1550又は1575pg/mlである。特に好ましい参照値は、1595.8pg/ml、好ましくは1402.95pg/mol、1107.9pg/mol、609.4pg/ml、237.6pg/mlである。
【0081】
好ましい実施形態では、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、1595.8pg/ml±20%以下、1402.95pg/mol±20%以下、1107.9pg/mol±20%以下、609.4pg/ml±20%以下、237.6pg/ml±20%以下である。
【0082】
一実施形態では、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、参照値±20%以上であり、参照値は、237.6pg/ml~1595.8pg/mlの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1107.9、1110、1125、1150、1175、1200、1225、1250、1275、1300、1325、1350、1375、1400、1402,95,1403、1425、1450、1475、1500、1525、1550又は1575pg/mlである。特に好ましい参照値は、1595.8pg/ml、好ましくは1402.95pg/mol、1107.9pg/mol、609.4pg/ml、237.6pg/mlである。
【0083】
好ましい実施形態では、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、1595.8pg/ml±20%以上、1402.95pg/mol±20%以上、1107.9pg/mol±20%以上、609.4pg/ml±20%以上、237.6pg/ml±20%以上である。
【0084】
以下のデータに詳述されているように、proBNPの低ベネフィットレベル及び高ベネフィットレベルは、遠隔患者管理が適切であるか、すなわち治療的に有効であり、処方されるべきか、又は遠隔患者管理を安全に除外することができ、処方されないかどうかの正確な決定を可能にする。心不全又は何らかの原因による死亡による急性の代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、好ましくは試料提供後少なくとも10日間、30日間、最も好ましくは少なくとも90日間の期間に、上記の237.6pg/ml~1595.8pg/mlの参照値の範囲は、100%~80%の範囲の最大感度を保証し、proBNPについての237.6pg/mlの好ましい参照値は、100%の感度を示し、一方proBNPについての609.4pg/mlの好ましい参照値は、95%の感度を示す。1595.8pg/mlの参照値の場合、80%の感度が確立される。
【0085】
100~80%の感度でこれらのカットオフを下回る患者は、遠隔患者管理の処方不要(除外)に推奨される。将来の別の時点での通常のケア状況の中で、proBNPを使用した評価を繰り返す必要がある。評価されたリスクに応じて、患者は新たに非遠隔患者管理群又は遠隔患者管理群に段階分けされる。
【0086】
感度が80%未満で、これらのカットオフを超える患者は、遠隔患者管理を処方することを推奨される(受け入れ)。将来の別の時点での通常のケア状況の中で、proBNPを使用した評価を繰り返す必要がある。評価されたリスクに応じて、患者は新たに遠隔患者管理群又は非遠隔患者管理群に段階分けされる。
【0087】
好ましい参照値ならびに関連する高ベネフィットレベル及び低ベネフィットレベルは、レベルproBNPが遠隔患者管理を処方するか又は処方しないことを示すものとなる期間に依存し得ることに留意されたい。一般に、遠隔患者管理を受けることから患者を除外することは、低ベネフィットレベルの上界としてより低い参照値を必要とすることになる。いくつかの実施形態では、好ましい低ベネフィットレベルの上界は、心血管疾患、好ましくは心不全を診断するための既知の閾値と同じくらい低くてもよい(BNPについては、例えば、2016 ESC Guidelines,Ponikowski et al.2016によると125pg/molである)。
【0088】
上記の参照値、ならびに高ベネフィットレベル及び低ベネフィットレベルは、少なくとも10日間、好ましくは少なくとも30日間、60日間、又は少なくとも90日間の期間に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかを示すものとして特に好ましい場合があるかなり長い期間、例えば少なくとも150日間、180日間、270日間、又は365日間にわたって、より低い参照値が好ましい場合がある。
【0089】
いくつかの実施形態では、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、参照値±20%以下であり、参照値は、125pg/ml~383.3pg/ml又は125pg/ml~413.7pg/mlの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、125、125.1、135、145、155、165、175、185、195、205、215、225、235、245、255、265、275、285、295、305、315、325、335、345、355、365、375、380、383.3、385、390、395、400、405、410又は413.7pg/mlである。特に好ましい参照値は、413.7pg/ml±20%、好ましくは383.3pg/ml±20%、145.4pg/ml±20%又は125.1pg/mL±20%である。
【0090】
好ましい実施形態では、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、413.7pg/ml±20%以下、好ましくは383.3pg/ml±20%以下、145.4pg/ml±20%以下又は125.1pg/mL±20%以下である。
【0091】
いくつかの実施形態では、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、参照値±20%以上であり、参照値は、125pg/ml~237.6pg/ml、125.1pg/ml~383.3pg/ml又は125.1pg/ml~413.7pg/mlの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、125、125.1、135、145、155、165、175、185、195、205、215、225、235、245、255、265、275、285、295、305、315、325、335、345、355、365、375、380、383.3、385、390、395、400、405、410又は413.7pg/ml pg/mlである。特に好ましい参照値は、413.7pg/ml±20%、383.3pg/ml±20%、好ましくは145.4pg/ml±20%又は125.1pg/mL±20%である。
【0092】
好ましい実施形態では、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、413.7pg/ml±20%以上、383.3pg/ml±20%以上、好ましくは145.4pg/ml±20%以上又は125.1pg/mL±20%以上である。
【0093】
該参照値は、少なくとも150日間、180日間、270日間、最も好ましくは少なくとも365日間の期間にわたって、遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないことを示すものとして特に好ましい場合がある。
【0094】
心不全又は何らかの原因による死亡による急性の代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、好ましくは試料提供後少なくとも150日間、180日間、270日間、最も好ましくは少なくとも365日間の期間にわたって、上記の125.1pg/ml~383.3pg/mL又は125.1pg/ml~413.7pg/mlの参照値の範囲は、100%~95%の範囲の最大感度を保証し、一方proBNP又はフラグメント(複数可)についての125.1pg/mLの好ましい参照値は、100%の感度を示し、一方proBNP又はそのフラグメント(複数可)についての145.4pg/mLの好ましい参照値は、少なくとも98%の感度を示し、一方proBNP又はそのフラグメント(複数可)についての383.3pg/ml又は413.7pg/mlの参照値は、少なくとも95%の感度を示す。
【0095】
実施例で詳述されているように、感度と参照値との間の関係は、有害事象の考慮、すなわち、例えば年間の喪失日数又は何らかの原因による死亡に関する選択シナリオのエンドポイントにも依存し得る(表15を参照)。
【0096】
proANPの決定に関連する実施形態
一実施形態では、proANP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、参照値±20%以下であり、参照値は、106.9pmol/L~248.3pmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、186.2、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、235.6、240、245、250pmol/Lである。特に好ましい参照値は、158.5pmol/L、好ましくは106.9pmol/Lである。
【0097】
好ましい実施形態では、proANP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、158.5pmol/L±20%以下、好ましくは106.9pmol/L±20%以下である。
【0098】
一実施形態では、proANP又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、参照値±20%以上であり、参照値は、106.9pmol/L~248.3pmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250pmol/Lである。特に好ましい参照値は、248.3pmol/L、好ましくは235.6pmol/L、186.2pmol/L、158.5pmol/L、又は106.9pmol/Lである。
【0099】
好ましい実施形態では、proANP又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、248.3pmol/L±20%以上、好ましくは235.6pmol/L±20%以上、186.2pmol/L±20%以上、158.5pmol/L以上、106.9pmol/L±20%以上である。
【0100】
以下のデータに詳述されているように、proANPの低ベネフィットレベル及び高ベネフィットレベルは、遠隔患者管理が適切であるか、すなわち治療的に有効であり、したがって処方されるべきか、又は遠隔患者管理を安全に除外することができ、処方されないかどうかの正確な決定を可能にする。心不全又は何らかの原因による死亡による急性の代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、好ましくは試料提供後少なくとも10日間、30日間、最も好ましくは少なくとも90日間の期間にわたって、上記の106.9pmol/L~248.3pmol/Lの参照値の範囲は、100%~80%の範囲の最大感度を保証し、一方proANPについての106.9pmol/Lの好ましい参照値は、100%の感度を示し、一方proANPについての158.5pmol/Lの好ましい参照値は、95%の感度を示し、一方186.2pmol/Lの参照値は、90%の感度を示し、235.6pmol/Lの参照値は、85%の感度を示す。248.3pmol/Lの参照値の場合、80%の感度が確立される。
【0101】
100~80%の感度でこれらのカットオフを下回る患者は、遠隔患者管理の処方不要(除外)に推奨される。将来の別の時点での通常のケア状況の中で、proANPを使用した評価を繰り返す必要がある。評価されたリスクに応じて、患者は新たに非遠隔患者管理群又は遠隔患者管理群に段階分けされる。
【0102】
感度が80%未満で、これらのカットオフを超える患者は、遠隔患者管理を処方することを推奨される(受け入れ)。将来の別の時点での通常のケア状況の中で、proANPを使用した評価を繰り返す必要がある。評価されたリスクに応じて、患者は新たに遠隔患者管理群又は非遠隔患者管理群に段階分けされる。
【0103】
好ましい参照値ならびに関連する高ベネフィットレベル及び低ベネフィットレベルは、レベルproANPが遠隔患者管理を処方するか又は処方しないことを示すものとなる期間に依存し得ることに留意されたい。一般に、遠隔患者管理を受けることから患者を除外することは、低ベネフィットレベルの上界としてより低い参照値を必要とすることになる。いくつかの実施形態では、好ましい低ベネフィットレベルの上界は、心血管疾患、好ましくは心不全を診断するための既知の閾値と同じくらい低くてもよい。
【0104】
上記の参照値、ならびに高ベネフィットレベル及び低ベネフィットレベルは、少なくとも10日間、好ましくは少なくとも30日間、60日間、又は少なくとも90日間の期間にわたって遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかを示すものとして特に好ましい場合があるかなり長い期間、例えば少なくとも150日間、180日間、270日間、又は365日間にわたって、より低い参照値が好ましい場合がある。
【0105】
いくつかの実施形態では、proANP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、参照値±20%以下であり、参照値は、80pmol/L~106.9pmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、80、85、90、95、100、105又は106.9pmol/Lである。
【0106】
いくつかの実施形態では、proANP又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、参照値±20%以上であり、参照値は、80pmol/L~106.9pmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、80、85、90、95、100、105又は106.9pmol/Lである。
【0107】
同じ参照値を使用して、proADM、proBNP、及び/又はproANPの低ベネフィットレベルならびに高ベネフィットレベルを定義できることは、さらに驚くべき発見である。本明細書において、低ベネフィットレベルは、特定された参照値より下のレベルに対応し、一方、高ベネフィットレベルは、同じ特定された参照値より上のレベルに対応する。低ベネフィットレベル及び高ベネフィットレベルを定義するための閾値として同一の参照値を使用すると、決定過程が簡素化され、あいまいなグレーゾーンが排除される。
【0108】
いくつかの実施形態では、proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの高ベネフィットレベルは、開示された好ましい参照値を上回るが、上限閾値を下回り、上限閾値は、入院が適切であり得る患者の高リスク状態への移行を示す。
【0109】
一実施形態では、心血管疾患は心不全である。
【0110】
一実施形態では、心血管疾患は心不全であり、患者は心不全を患っている結果として過去12ヶ月以内に入院している。
【0111】
入院という用語は、好ましくは、患者が救急室、病棟、集中治療室、又は病院もしくは診療所の他の領域にいるかどうかにかかわらず、病院内での患者の病状の制御の維持及び/又は評価を指す。
【0112】
一実施形態では、心血管疾患は慢性心不全である。
【0113】
一実施形態では、患者は心血管疾患と診断され、試料を提供する前に少なくとも3ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間、9ヶ月間又は12ヶ月間、心血管の有害転帰で入院している。
【0114】
一実施形態では、心血管疾患はうっ血性心不全である。
【0115】
一実施形態では、心血管疾患は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)の心不全分類システムによる分類II度又は分類III度の心不全である。
【0116】
一実施形態では、心血管疾患は、駆出率が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction)
(HFrEF)及び/又は駆出率が保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction)(HFpEF)である。
【0117】
一実施形態では、心血管疾患は、有害転帰のリスクが高い心不全であり、好ましくは、急性代償不全及び/又は死亡からなる群から選択される。
【0118】
一実施形態では、心血管疾患は、心血管イベントによる計画外の入院、好ましくは、非代償性心不全、冠状動脈疾患、脳卒中もしくは一過性脳虚血発作(TIA)、不整脈、肺塞栓症、心内膜炎又はその他の心血管イベントによる計画外の入院を含む有害転帰のリスクが高い心不全である。
【0119】
本発明の好ましい実施形態では、試料は、全血試料、血清試料又は血漿試料などの血液試料、唾液試料及び尿試料からなる群から選択される。
【0120】
一実施形態では、proADM又はそのフラグメント(複数可)のレベルを決定することは、試料中のMRproADMのレベルを決定することを含む。以下の実施例に示されるように、好ましくはB.R.A.H.M.S GmbH(Hennigsdorf,Germany)の確立されたイムノアッセイ製品を使用して決定されたMRproADMは、本明細書に記載の方法により信頼性が高く効果的な予後を示す。前駆体又はフラグメントを含む、PAMP又は成熟アドレノメデュリン(生物学的に活性な形態を含み、バイオADMとしても知られている)などの代替のADM分子も使用することができる。
【0121】
一実施形態では、proBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルを決定することは、試料中のNTproBNPのレベルを決定することを含む。以下の実施例に示されるように、好ましくはB.R.A.H.M.S GmbH(Hennigsdorf,Germany)の確立されたイムノアッセイ製品を使用して決定されたNTproBNPは、本明細書に記載の方法により信頼性が高く効果的な予後を示す。前駆体又はフラグメントを含む成熟BNPなどの代替BNP分子も使用することができる。
【0122】
一実施形態では、proANP又はそのフラグメント(複数可)のレベルを決定することは、試料中のMRproANPのレベルを決定することを含む。以下の実施例に示されるように、好ましくはB.R.A.H.M.S GmbH(Hennigsdorf,Germany)の確立されたイムノアッセイ製品を使用して決定されたMRproANPは、本明細書に記載の方法により信頼性が高く効果的な予後を示す。前駆体又はフラグメントを含むNTproANPなどの代替ANP分子も使用することができる。
【0123】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点で患者から単離され、第2の試料は、第2の時点で患者から単離される。
【0124】
本発明との関係においては、第1の試料と比較して低レベルの、第2の試料中のマーカーを決定することは、観察期間にわたる患者におけるそれぞれのマーカーのレベルの減少を示し得る。逆に、第1の試料と比較して第2の試料のレベルの上昇は、観察期間にわたるマーカーのレベルの増加を示し得る。
【0125】
第1の時点から第2の時点までに、少なくとも1日間、1週間、2週間、1ヶ月、又は3ヶ月が経過していることが好ましい場合がある。また、2つの試料単離の間の好ましい期間が、例えば、1週間~3ヶ月、1ヶ月~3ヶ月、1週間~1ヶ月、又は上記の好ましい期間の任意の他の組み合わせであるように、12ヶ月以下、6ヶ月、3ヶ月が経過したことが好ましい場合がある。
【0126】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点で患者から単離され、第2の試料は、第2の時点で患者から単離され、proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)の、第1及び第2の時点に関する絶対差、比率、及び/又はレベルの変化率は、該患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないことを示す。
【0127】
バイオマーカーレベル(複数可)の該第1及び第2の時点に関する変化率は、好ましくは、該第1の時点と第2の時点との間の時間差に対するバイオマーカー(複数可)のレベルの絶対差を指す。しかしながら、変化率はまた、バイオマーカー(複数可)のレベルの相対的な差、例えば、該第1の時点と第2の時点との間の時間差に対する増加率及び/又は減少率に関連し得る。
【0128】
第1及び第2の時点に関して、試料を単離するための本明細書に開示された時点の任意の組み合わせが好ましい場合があることを理解されたい。
【0129】
さらに、いくつかの実施形態では、バイオマーカーのレベルの、異なる時点に関する絶対差、比率、及び/又は変化率を、遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかの決定に使用するために、対応する第3、第4などの時点で、第3の試料、第4の試料などのさらなる試料を単離することが好ましい場合がある。
【0130】
一実施形態では、そのproADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーのレベルは、遠隔患者管理の種類を処方することを示し、好ましくは、繰り返し収集される患者の健康状態、医療関係者又は自動医療システムによるデータのレビューの頻度、投薬量の改訂の頻度、及び/又は遠隔患者の診察の頻度に関するデータの範囲又はタイプを示す。
【0131】
本明細書に開示されるように、バイオマーカーの高ベネフィットレベルは、治療効果を示しており、遠隔患者管理の処方を正当化する。いくつかの実施形態では、バイオマーカーのレベルは、遠隔患者管理を処方することを示すだけでなく、遠隔患者管理の種類及び/又はタイプをさらに指定することを可能にする。
【0132】
高ベネフィットレベルの下限にあるバイオマーカーのレベルは、好ましくは、患者の健康状態に関するより少ないデータの収集、医療関係者又は自動医療システムによるデータをレビューする頻度の減少、ならびに高ベネフィットレベルの上限にあるバイオマーカーのレベルと比較して、投薬量の改訂又は遠隔患者の診察の頻度の減少によって特徴付けられ得る、より強度の低い遠隔患者管理を示す。
【0133】
したがって、このような実施形態は、遠隔患者管理をさらに合理化して、適切な努力で各患者に最適なサポートを提供することを可能にし、これは、処方された遠隔患者管理の遠隔監視及び/又は遠隔医療介入からの患者の起こり得る利益を反映する。
【0134】
一実施形態では、proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される2つもしくは3つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のレベルが決定され、該レベルが、該患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかを示すかどうかを決定するために、1つ以上の参照値と比較される。
【0135】
一実施形態では、proADM及びproBNPのレベルが決定され、該レベルが、該患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかを示すかどうかを決定するために、1つ以上の参照値と比較される。
【0136】
一実施形態では、proADM及びproANPのレベルが決定され、該レベルが、該患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかを示すかどうかを決定するために、1つ以上の参照値と比較される。
【0137】
一実施形態では、proBNP及びproANPのレベルが決定され、該レベルが、該患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかを示すかどうかを決定するために、1つ以上の参照値と比較される。
【0138】
一実施形態では、proADM、proBNP及びproANPのレベルが決定され、該レベルが、該患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかを示すかどうかを決定するために、1つ以上の参照値と比較される。
【0139】
いくつかの実施形態では、proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択されるバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のうちの2つのレベルが決定され、決定されたバイオマーカーの両方の低ベネフィットレベルは、該患者に遠隔患者管理を処方しないことを示す。
【0140】
いくつかの実施形態では、proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択されるバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のうちの2つのレベルが決定され、決定されたバイオマーカーの両方の高ベネフィットレベルは、該患者に遠隔患者管理を処方することを示す。
【0141】
いくつかの実施形態では、proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択されるバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のうちの2つ又は3つのレベルが決定され、決定されたバイオマーカーのうちの少なくとも1つの低ベネフィットレベルは、該患者に遠隔患者管理を処方することを示す。
【0142】
proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択されるバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のうちの2つ又は3つを決定することにより、遠隔患者管理の統計的に特定の信頼できる療法ガイダンス、層別化、及びモニタリングが可能になり、このことが、遠隔患者管理から利益を得る可能性がある最大数の患者が治療を受けるが、利益が得られるない最大数の患者が、医療資源を節約するために安全に除外され得ることを保証する。
【0143】
proADM及びproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルを決定する際に、遠隔患者管理の特に信頼のおける療法ガイダンスを達成することができる。
【0144】
proADM及びproBNPの決定に関する実施形態
一実施形態では、proADM及びproBNPのレベルが患者において決定され、該レベルが、該患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかを示すかどうかを決定するために、1つ以上の参照値と比較される。
【0145】
一実施形態では、参照値が、0.63nmol/L~0.75nmol/Lの値の範囲から選択される、参照値±20%以下のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値が、125pg/ml~413.7pg/mlの値の範囲から選択される、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の参照値±20%以下のレベルは、遠隔患者管理を処方しないことを示す。
【0146】
proADM又はフラグメント(複数可)のレベルについては、この範囲内の任意の値が適切な閾値と見なすことができる。例えば、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74又は0.75nmol/Lである。特に好ましい参照値は、0.63nmol/L±20%、好ましくは0.69nmol/L±20%、0.72nmol/L±20%又は0.75nmol/L±20%である。
【0147】
proBNP又はフラグメント(複数可)のレベルについては、この範囲内の任意の値が適切な閾値と見なすことができる。例えば、125、125.1、135、145、145.4、155、165、175、185、195、205、215、225、235、245、255、265、275、285、295、305、315、325、335、345、355、365、375、380、383.3、385、390、395、400、405、410又は413.7pg/mlである。特に好ましい参照値は、413.7pg/ml±20%、383.3pg/ml±20%、好ましくは145.4pg/ml±20%又は125.1pg/mL±20%である。
【0148】
したがって、proADM及びproBNPの決定に基づいて、患者が遠隔患者管理に推奨されるべきではない選択のカットオフは、望ましい安全性(感度100%、98%、95%)及び患者選択基準(計画外のCV入院又はあらゆる原因による死亡;あらゆる原因による死亡のために少なくとも30日間/年の喪失日数)に応じて、NTproBNPでは125.1及び413.7pg/ml、MRproADMでは0.63及び0.75nmol/Lのレベルを示すことができる。一般に、望ましい感度が低いほど、重要なバイオマーカーのカットオフが高くなり、遠隔患者管理に推奨されない患者の比率が高くなる(表15を参照)。
【0149】
一実施形態では、参照値0.63nmol/L±20%以下のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値125.1±20%以下のproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルは、遠隔患者管理を処方しないことを示す。
【0150】
一実施形態では、参照値0.69nmol/L±20%以下のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値125.1±20%以下のproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルは、遠隔患者管理を処方しないことを示す。
【0151】
一実施形態では、参照値0.72nmol/L±20%以下のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値145.4±20%以下のproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルは、遠隔患者管理を処方しないことを示す。
【0152】
一実施形態では、参照値0.75nmol/L±20%以下のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値383.3±20%以下のproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルは、遠隔患者管理を処方しないことを示す。
【0153】
一実施形態では、参照値0.75nmol/L±20%以下のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値413.7±20%以下のproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルは、遠隔患者管理を処方しないことを示す。
【0154】
心不全による急性代償不全、何らかの原因による死亡、又は計画外の入院もしくは死亡による日数喪失などの有害な出現又はリスクに関して、上記のproADM及びproBNPのレベルの組み合わせは、100%~95%範囲の最大感度を保証する(表15を参照)。
【0155】
単一のバイオマーカーと比較して、proADMとproBNPとの組み合わせを使用すると、遠隔患者管理が有益である患者の数をさらに安全に減らすことができる。
【0156】
proBNPとproADMとの併用によるRPMに推奨される集団の減少により、proBNPのレベルがかなり高いにもかかわらず、proADMのレベルがかなり低く、逆もまた同様の無発症の患者を除外することができ、リスク層別化のためのバイオマーカーのうちの1つのみの使用に基づいて処方されることになる。
【0157】
例えば、以下の実施例で詳説されているように、最大感度100%の場合、proBNPのみのレベルに基づく療法ガイダンスは、遠隔患者管理を使用する集団を3.4%減らすことができる(あらゆる原因による死亡に関して)。proBNPとproADMとの組み合わせを使用すると、推奨されるRPMを有する集団は、13.9%(あらゆる原因による死亡に関して)安全に減らことができる。したがって、この場合のバイオマーカーの組み合わせは、患者の安全を損なうことなく、医療資源を3分の1に減らすことを可能にする。
【0158】
さらに、proBNPとproADMとの組み合わせを使用した療法ガイダンスの開示された参照値は、同様に、遠隔患者管理を受けるべき患者の安全な組み入れを可能にする。
【0159】
一実施形態では、参照値が、0.63nmol/L~0.75nmol/Lの値の範囲から選択される、参照値±20%以上のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値が、125pg/ml~413.7pg/mlの値の範囲から選択される、参照値±20%以上のproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルは、遠隔患者管理を処方することを示す。
【0160】
proADM又はフラグメント(複数可)のレベルについては、この範囲内の任意の値が適切な閾値と見なすことができる。例えば、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74又は0.75nmol/Lである。特に好ましい参照値は、0.63nmol/L±20%、好ましくは0.69nmol/L±20%、0.72nmol/L±20%又は0.75nmol/L±20%である。
【0161】
proBNP又はフラグメント(複数可)のレベルについては、この範囲内の任意の値が適切な閾値と見なすことができる。例えば、125、125.1、135、145、145.4、155、165、175、185、195、205、215、225、235、245、255、265、275、285、295、305、315、325、335、345、355、365、375、380、383.3、385、390、395、400、405、410又は413.7pg/mlである。特に好ましい参照値は、413.7pg/ml±20%、383.3pg/ml±20%、好ましくは145.4pg/ml±20%又は125.1pg/mL±20%である。
【0162】
一実施形態では、参照値0.63nmol/L±20%以上のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値125.1±20%以上のproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルは、遠隔患者管理を処方することを示す。
【0163】
一実施形態では、参照値0.69nmol/L±20%以上のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値125.1±20%以上のproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルは、遠隔患者管理を処方することを示す。
【0164】
一実施形態では、参照値0.72nmol/L±20%以上のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値145.4±20%以上のproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルは、遠隔患者管理を処方することを示す。
【0165】
一実施形態では、参照値0.75nmol/L±20%以上のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値383.3±20%以上のproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルは、遠隔患者管理を処方することを示す。
【0166】
一実施形態では、参照値0.75nmol/L±20%以上のproADM又はそのフラグメント(複数可)のレベル、及び参照値413.7±20%以上のproBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルは、遠隔患者管理を処方することを示す。
【0167】
さらなる実施形態では、心血管疾患と診断された患者のための遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングのための方法は、追加的に、
-少なくとも1つのさらなるバイオマーカー、好ましくはトロポニン、C反応性タンパク質(CRP)、プロエンドセリン-1、プロバソプレシンもしくはそのフラグメントなどの心血管バイオマーカー、及び/又はクレアチニン、尿素、尿酸、シスタチンC、β-トレースタンパク質(BTB)もしくはイヌリンなどの腎機能マーカーのレベルを決定することを含み、
-少なくとも1つのさらなるバイオマーカー、好ましくは心血管バイオマーカー及び/又は腎機能マーカーのレベル、及びproADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)レベルが、1つ以上の参照値と比較され、該レベルは、該患者に遠隔患者管理を処方するか又は処方しないことを示す。
【0168】
一実施形態では、心血管疾患と診断された患者のための遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングのための方法は、追加的に、
-少なくとも1つの臨床パラメータを決定することを含み、少なくとも1つの臨床パラメータは、好ましくは、年齢、体重、肥満度指数、性別、民族的背景、血中クレアチニン、左心室駆出率(LVEF)、右心室
駆出率(LVEF)、NYHA分類、MAGGIC心不全リスクスコア、医学的処置の状態、血圧(収縮期/拡張期)、心拍数、心電図(ECG)による心リズム、末梢血中酸素量(SpO2)、自己評価による健康状態(スケール)又は腎機能を示すパラメータ、好ましくはクレアチニンクリアランス率及び/又は糸球体濾過量(GFR)であり、
-少なくとも1つの臨床パラメータ及び少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメントのレベルが、1つ以上の参照値と比較され、少なくとも1つの臨床パラメータ及び少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のレベルが、該患者に遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないことを示す。
【0169】
一実施形態では、少なくとも1つのさらなるバイオマーカー及び/又は少なくとも1つのさらなる臨床パラメータは、該試料提供前、2週間以内、好ましくは1週間以内、該試料提供の1日前かつ2週間以内に決定され、好ましくは該試料提供後、1週間以内、該試料提供の1日後に決定される。最も好ましくは、少なくとも1つのさらなるバイオマーカー及び/又は少なくとも1つのさらなる臨床パラメータは、proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択されるバイオマーカーと同時に決定される。例えば、さらなるマーカーに関して、同じ試料を使用することができ、及び/又は異なる試料を同時に提供することができる。
【0170】
さらなるバイオマーカーのレベル及び/又はさらなる臨床パラメータを決定することは、遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及びモニタリングの統計的信頼性をさらに高め、前向きな患者転帰を保証しながら、特に治療的措置の医療資源効率の割り当てに関して、本明細書に記載の利点を改善することができる。
【0171】
一実施形態では、心血管疾患と診断された患者のための遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングのための方法は、追加的に、
-腎機能、好ましくは、クレアチニンクリアランス率及び/又は糸球体濾過量(GFR)を示す少なくとも1つのパラメータを決定することを含み、
-腎機能、好ましくはクレアチニンクリアランス率及び/又は糸球体濾過量を示す少なくとも1つのパラメータ、及び少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメントのレベルが、少なくとも1つのパラメータが腎機能、好ましくはクレアチニンクリアランス率及び/又は糸球体濾過量を示すかどうか、及び少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のレベルが、該患者に遠隔患者管理を処方するか又は処方しないことを示すかどうかを決定するために、1つ以上の参照値と比較される。
【0172】
本発明者らは、本明細書に記載のバイオマーカーを決定することに加えて、クレアチニンクリアランス率及び/又は糸球体濾過量などの腎機能を示すマーカー又はパラメータを決定することにより、本明細書に記載の療法ガイダンスを最適化できることを認識した。
【0173】
以下のデータが示すように、腎機能が低下した場合、proADM、proBNP、及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーのレベルの上昇は、心血管疾患に合わせた遠隔患者管理を導く際のバイオマーカー予後能力とは独立して、腎臓の機能傷害に部分的に起因している可能性がある。
【0174】
したがって、クレアチニンクリアランス率及び/又は糸球体濾過量などの決定されたパラメータが、腎臓が適切に機能していないことを示す場合、遠隔患者管理を処方するか否かを決定するためのバイオマーカーの参照値及び関連する低利益又は高ベネフィットレベルは、好ましくは適応される。
【0175】
腎臓が適切に機能していない場合、低ベネフィットレベルを拡大して、バイオマーカーのより大きな決定されたレベルを含めるように参照値を上昇させることが好ましい該適応は、好ましくは、本明細書に記載のバイオマーカーのレベルの上昇が、心不全関連プロセスではなく腎機能障害に部分的に割り当てられ得るという上記の発見を説明し得る。
例えば、以下のデータに詳述されているように、proADM又はそのフラグメント(複数可)の好ましい低ベネフィットレベルが、確認された腎機能低下がない患者では、低ベネフィットレベルが0.86nmol/l±20%未満であるものと比較して、腎機能が損なわれている場合、95%の感度を1.06nmol/±20%未満のバイオマーカーのレベルに拡張することができることを表している。
【0176】
低ベネフィットレベルを拡大することにより、より多くの患者が遠隔患者管理を受けることから安全に除外され、それによって実際に必要としている患者への医療資源割り当てをさらに最適化することができる。
【0177】
proADM及びGFRの決定に関する実施形態
一実施形態では、追加的に決定される少なくとも1つの臨床パラメータは、GFR、好ましくはCKD-EPIに基づくGFRであり、GFRが50を下回る場合、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは参照値±20%以下であり、ここで参照値は、0.98nmol/L~1.06nmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05又は1.06nmol/Lである。心不全又は何らかの原因による死亡による急性代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、50を下回るCKD-EPIに基づくGFRの場合の、0.98nmol/l~1.06nmol/LのproADMの上記の参照値の範囲は、100%~95%の範囲の最大感度を保証し、ここで、0.98nmol/Lの好ましい参照値は100%の感度を示し、一方1.06nmol/Lの好ましい参照値は少なくとも95%の感度をもたらす(表10を参照)。
【0178】
好ましい実施形態では、GFR、好ましくはCKD-EPIに基づくGFRは、50を下回り、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、0.98nmol/L±20%以下、好ましくは1.06nmol/L±20%以下である。
【0179】
一実施形態では、追加的に決定される少なくとも1つの臨床パラメータは、GFR、好ましくはCKD-EPIに基づくGFRであり、GFRが60を下回る場合、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは参照値±20%以下であり、ここで参照値は、0.97nmol/L~1.05nmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04又は1.05nmol/Lである。心不全又は何らかの原因による死亡による急性代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、60を下回るCKD-EPIに基づくGFRの場合の、0.97nmol/l~1.05nmol/LのproADMの上記の参照値の範囲は、100%~95%の範囲の最大感度を保証し、ここで、0.97nmol/Lの好ましい参照値は100%の感度を示し、一方1.05nmol/Lの好ましい参照値は少なくとも95%の感度をもたらす。
【0180】
好ましい実施形態では、GFR、好ましくはCKD-EPIに基づくGFRは、60を下回り、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、0.97nmol/L±20%以下、好ましくは1.05nmol/L±20%以下である(表10を参照)。
【0181】
一実施形態では、追加的に決定される少なくとも1つの臨床パラメータは、GFR、好ましくはCockroft-Gaultに基づくGFRであり、GFRが50を下回る場合、proADM又はフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは参照値±20%以下であり、ここで参照値は、0.84nmol/L~1.05nmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04又は1.05nmol/Lである。心不全又は何らかの原因による死亡による急性代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、50を下回るCockroft-Gaultに基づくGFRの場合の、0.62nmol/l~1.05nmol/LのproADMの上記の参照値の範囲は、100%~95%の範囲の最大感度を保証し、ここで、0.84nmol/Lの好ましい参照値は99%の感度を示し、一方1.05nmol/Lの好ましい参照値は少なくとも95%の感度をもたらす。
【0182】
好ましい実施形態では、GFR、好ましくはCKD-EPIに基づくGFRは、50を下回り、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、0.84nmol/L±20%以下、好ましくは1.05nmol/L±20%以下である。
【0183】
一実施形態では、追加的に決定される少なくとも1つの臨床パラメータは、GFR、好ましくはCockroft-Gaultに基づくGFRであり、GFRが60を下回る場合、proADM又はフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは参照値±20%以下であり、ここで参照値は、0.75nmol/L~0.92nmol/Lの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91又は0.92nmol/Lである。
【0184】
好ましい実施形態では、GFR、好ましくはCockroft-Gaultに基づくGFRは、60を下回り、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、0.75nmol/L±20%以下、好ましくは0.92nmol/L±20%以下である。心不全又は何らかの原因による死亡による急性代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、60を下回るCockroft-Gaultに基づくGFRの場合の、0.62nmol/l~0.92nmol/LのproADMの上記の参照値の範囲は、100%~95%の範囲の最大感度を保証し、ここで、0.75nmol/Lの好ましい参照値は99%の感度を示し、一方0.92nmol/Lの好ましい参照値は少なくとも95%の感度をもたらす(表11を参照)。
【0185】
好ましい実施形態では、GFR、好ましくはCockroft-Gaultに基づくGFRは、30を下回り、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、1.14nmol/L±20%以下である。
【0186】
好ましい実施形態では、クレアチニンクリアランス率及び/又は糸球体濾過量などのパラメータは、腎機能障害を示し、proADM又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、0.84nmol/L±20%以下であり、好ましくは、0.98nmol/L±20%以下、1.05nmol/L±20%以下、1.06nmol/L±20%以下、又は1.14nmol/L±20%以下である。
【0187】
proADM又はそのフラグメント(複数可)の好ましい低ベネフィットレベルの開示された適応は、同様に、proADM又はそのフラグメント(複数可)の好ましい高ベネフィットレベルに適用されることに留意されたい。
【0188】
例えば、好ましい実施形態では、クレアチニンクリアランス率及び/又は糸球体濾過量などのパラメータは、腎機能障害を示し、proADM又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、0.84nmol/L±20%以上であり、好ましくは、0.98nmol/L±20%以上、1.05nmol/L±20%以上、1.06nmol/L±20%以上、又は1.14nmol/L±20%以上である。
【0189】
proBNP及びGFRの決定に関する実施形態
一実施形態では、追加的に決定される少なくとも1つの臨床パラメータは、GFR、好ましくはCKD-EPIに基づくGFRであり、GFRが50を下回る場合、proBNP又はフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは参照値±20%以下であり、ここで参照値は、237.6pg/ml~273.7pg/mlの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、240、250、260又は270pg/mlである。
【0190】
好ましい実施形態では、GFR、好ましくはCKD-EPIに基づくGFRは、50を下回り、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、237.6pg/ml±20%以下、好ましくは273.7pg/ml±20%以下である。
【0191】
一実施形態では、追加的に決定される少なくとも1つの臨床パラメータは、GFR、好ましくはCKD-EPIに基づくGFRであり、GFRが60を下回る場合、proBNP又はフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは参照値±20%以下であり、ここで参照値は、237.6pg/ml~402.6pg/mlの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390又は400pg/mlである。心不全又は何らかの原因による死亡による急性代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、60を下回るCKD-EPIに基づくGFRの場合の、237.6pg/ml~402.6pg/mlのproBNPの上記の参照値の範囲は、100%~95%の範囲の最大感度を保証し、ここで、237.6pg/mlの好ましい参照値は100%の感度を示し、一方402.6pg/mlの好ましい参照値は少なくとも95%の感度をもたらす。
【0192】
好ましい実施形態では、GFR、好ましくはCKD-EPIに基づくGFRは、60を下回り、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、237.6pg/ml±20%以下、好ましくは402.6pg/ml±20%以下である。
【0193】
一実施形態では、追加的に決定される少なくとも1つの臨床パラメータは、GFR、好ましくはCockroft-Gaultに基づくGFRであり、GFRが50を下回る場合、proBNP又はフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは参照値±20%以下であり、ここで参照値は、237.6pg/ml~454.4pg/mlの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450pg/mlである。心不全又は何らかの原因による死亡による急性代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、50を下回るCockroft-Gaultに基づくGFRの場合の、237.6pg/ml~454.4pg/mlのproBNPの上記の参照値の範囲は、100%~95%の範囲の最大感度を保証し、ここで、237.6pg/mlの好ましい参照値は100%の感度を示し、一方454.4.6pg/mlの好ましい参照値は少なくとも95%の感度をもたらす。
【0194】
好ましい実施形態では、GFR、好ましくはCockroft-Gaultに基づくGFRは、50を下回り、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、237.6pg/ml±20%以下、好ましくは454.4pg/ml±20%以下である。
【0195】
一実施形態では、追加的に決定される少なくとも1つの臨床パラメータは、GFR、好ましくはCockroft-Gaultに基づくGFRであり、GFRが60を下回る場合、proBNP又はフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは参照値±20%以下であり、ここで参照値は、137.7pg/ml~402.6pg/mlの値の範囲から選択される。この範囲内の任意の値は、適切な閾値と見なすことができる。例えば、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400pg/mlである。心不全又は何らかの原因による死亡による急性代償不全などの有害な出現又はリスクに関して、60を下回るCockroft-Gaultに基づくGFRの場合の、137.7pg/ml~402.6pg/mlのproBNPの上記の参照値の範囲は、100%~95%の範囲の最大感度を保証し、ここで、137.7pg/mlの好ましい参照値は100%の感度を示し、一方402.6pg/mlの好ましい参照値は少なくとも95%の感度をもたらす。
【0196】
好ましい実施形態では、GFR、好ましくはCockroft-Gaultに基づくGFRは、60を下回り、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、137.7pg/ml±20%以下であり、好ましくは203.9pg/ml±20%以下であり、より好ましくは402.6pg/ml±20%以下である。
【0197】
好ましい実施形態では、GFR、好ましくはCockroft-Gaultに基づくGFRは、30を下回り、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、237.6pg/ml±20%以下である。
【0198】
好ましい実施形態では、クレアチニンクリアランス率及び/又は糸球体濾過量などのパラメータは、腎機能障害を示し、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の低ベネフィットレベルは、203.9pg/ml±20%以下であり、好ましくは、237.6pg/ml±20%以下、273.7pg/ml±20%以下、402.6pg/ml以下、又は454.4pg/ml±20%以下である。
【0199】
以下のデータで詳述されているように、バイオマーカーのいずれか1つだけをGFRの測定と組み合わせると、この方法の予測力を増強させることができる。しかしながら、バイオマーカーの2つ以上を、例えば、proBNP及びproADMを使用して、GFRなどの腎機能を示すパラメータと組み合わせると、この方法の予測力の特定の高い増強が達成される。表10及び11(6列及び9列)ならびに表13に示すように、proADM及びproBNPをGFRと組み合わせることによって、proBNPのみをGFRと組み合わせて使用する場合と比較して、2倍又は3倍を超える患者数が、遠隔患者管理を受けることから安全に除外することができる。したがって、この実施形態は、遠隔患者管理の恩恵を受けるそれらの患者への医療資源の特定の効率的な割り当てを可能にする。
【0200】
proBNP又はそのフラグメント(複数可)の好ましい低ベネフィットレベルの開示された適応は、同様に、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の好ましい高ベネフィットレベルに適用されることに留意されたい。
【0201】
例えば、好ましい実施形態では、クレアチニンクリアランス率及び/又は糸球体濾過量などのパラメータは、腎機能障害を示し、proBNP又はそのフラグメント(複数可)の高ベネフィットレベルは、203.9pg/ml±20%以上であり、好ましくは、237.6pg/ml±20%以上、273.7pg/ml±20%以上、402.6pg/ml以上、又は454.4pg/ml±20%以上である。
【0202】
さらなる態様では、本発明は、本発明の方法を実行するためのキットであって、キットが、
-患者からの試料中のproADM、proBNP及びpro proANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメントを決定するための検出試薬、及び
-proADM、proBNP、及びpro proANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーのレベルが、遠隔患者管理を処方するか又は処方しないことを示すかどうかを決定するための参照値などの参照データ、特に少なくとも1つのバイオマーカーの低ベネフィットレベルについての及び少なくとも1つのバイオマーカーの高ベネフィットレベルについての参照データであって、該参照データが、好ましくは、コンピュータ可読媒体に保存され、及び/又は決定された少なくとも1つのバイオマーカーを参照値と比較するように構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で使用される、参照データと、
-任意に、患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のレベルを決定するための検出試薬及び/又は少なくとも1つの臨床パラメータ、好ましくは年齢、体重、肥満度指数、性別、民族的背景、血中クレアチニン、左心室駆出率(LVEF)、右心室駆出率(LVEF)、NYHA分類、MAGGIC心不全リスクスコア、医学的処置の状態、血圧(収縮期/拡張期)、心拍数、心電図(ECG)による心リズム、末梢血中酸素量(SpO2)、自己評価による健康状態(スケール)、又は糸球体濾過量(GFR)を決定するための手段と、少なくとも1つの追加のバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)のレベル及び/又は少なくとも1つの臨床パラメータが、遠隔患者管理を処方するか又は処方しないことを示すかどうかを決定するための参照値などの参照データであって、該参照データが、好ましくは、コンピュータ可読媒体に保存され、及び/又は該少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)及び/又は該少なくとも1つの臨床パラメータの決定されたレベルを参照値と比較するように構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で使用される、参照データと、を含む。
(図面)
以下の図面を参照することにより本発明をさらに説明する。これらの図面は、本発明をさらに説明するために提示された、非限定的かつ潜在的に好ましい実施形態を例示している。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【
図3】あらゆる原因による死亡のカプランマイヤー累積イベント曲線である。
【
図4-1】計画外の心血管入院及びあらゆる原因による死亡により喪失された日数の割合に関する亜群分析のフォレストプロットである。
【
図4-2】計画外の心血管入院及びあらゆる原因による死亡により喪失された日数の割合に関する亜群分析のフォレストプロットである。
【
図5】初回測定後90日以内の死亡又は急性代償不全に対するproADMのROC曲線(通常のケア患者)である。
【
図6】初回測定後90日以内の死亡又は急性代償不全に対するproBNPのROC曲線(通常のケア患者)である。
【
図7】初回測定後90日以内の死亡又は急性代償不全に対するproANPのROC曲線(通常のケア患者)である。
【
図8】90日間での曲線の分割及びRPM群の有意な利点を示すRPM及び通常のケア群のカプランマイヤー分析(ログランク検定:0.017)である。
【
図9】あらゆる原因による死亡又は計画外のCV入院により、患者が1試験年のうち少なくとも1ヶ月(すなわち、365日の試験二数のうち少なくとも30日)を失ったか(赤、星型の記号)、又はそうでないか(青、長方形の記号)に基づいて、RPMに推奨される患者のバイオマーカーベースの選択アルゴリズムの説明である。影付きの緑色の区域の患者は、バイオマーカーガイダンスに基づいてRPMを推奨される。(A)NTproBNPを使用することは、特定の望ましい安全性(95%の感度)では、RPMに推奨される患者数を減少させることができる。(B)NTproBNPとMRproADMとの両方に基づくRPMの推奨により、同じ望ましい安全性に対してのこの設定で、さらに正確かつ効率的な患者の選択が可能となる。
【
図10】(A)緊急事態の発生率と、(B)提示されたバイオマーカーガイダンスシナリオに基づいてRPMに推奨されたであろう群(すなわち、NTproBNP≧413.7及びMRproADM≧0.75を有する患者のみ)の群と、RPMに推奨されなかった群(カットオフを下回るもの)との間の遠隔医療センターが費やした医療努力と、の比較である。
【
図11】バイオマーカーガイダンスシナリオによって減少したTIM-HF2の部分母集団(すなわち、NTproBNP≧413.7及びMRproADM≧0.75nmol/Lを有する患者のみが考慮される)において、RPMの時間に対する影響をあらゆる原因による死亡に対するRPMの影響を比較するためのカプランマイヤー曲線及びログランク検定である。
【
図12】主要TIM-HF2試験エンドポイントの喪失された日数とバイオマーカー(A)NTproBNP及び(B)MRproADMとの関係に関する生データである。RPM推奨の患者を選択するためのバイオマーカーカットオフの仕様では、イベントは、1年間の経過観察期間中に少なくとも1ヶ月が喪失された、すなわち、少なくとも8.2%の喪失された日数(破線)の割合に対応する少なくとも30日間/年が喪失されたと定義された。
【
図13-1】主要エンドポイントの喪失日数%(1年間の経過観察期間中に1ヶ月の喪失に分類される、上部パネルの行)及び二次エンドポイントのあらゆる原因による死亡(下部パネルの列)に関連するNTproBNPと比較され及びそれに加えて、バイオマーカーMRproADM、LVEF及びMAGGICスコアの予後の可能性を特徴付ける全てのTIM-HF2患者のROC分析である。比較可能性を促進するために、パネルA~Fに示されている全てのROC分析に、必要な全ての変数の完全なデータを有する患者の同じセットが使用された(N=1522)。
【
図13-2】主要エンドポイントの喪失日数%(1年間の経過観察期間中に1ヶ月の喪失に分類される、上部パネルの行)及び二次エンドポイントのあらゆる原因による死亡(下部パネルの列)に関連するNTproBNPと比較され及びそれに加えて、バイオマーカーMRproADM、LVEF及びMAGGICスコアの予後の可能性を特徴付ける全てのTIM-HF2患者のROC分析である。比較可能性を促進するために、パネルA~Fに示されている全てのROC分析に、必要な全ての変数の完全なデータを有する患者の同じセットが使用された(N=1522)。
【
図13-3】主要エンドポイントの喪失日数%(1年間の経過観察期間中に1ヶ月の喪失に分類される、上部パネルの行)及び二次エンドポイントのあらゆる原因による死亡(下部パネルの列)に関連するNTproBNPと比較され及びそれに加えて、バイオマーカーMRproADM、LVEF及びMAGGICスコアの予後の可能性を特徴付ける全てのTIM-HF2患者のROC分析である。比較可能性を促進するために、パネルA~Fに示されている全てのROC分析に、必要な全ての変数の完全なデータを有する患者の同じセットが使用された(N=1522)。
【
図14-1】主要エンドポイントの喪失日数%(1年間の経過観察期間中に1ヶ月の喪失に分類される、上部パネルの行)及び二次エンドポイントのあらゆる原因による死亡(下部パネルの列)に関連するNTproBNPと比較され及びそれに加えて、バイオマーカーMRproADM、LVEF及びMAGGICスコアの予後の可能性を特徴付けるSOC患者のROC分析である。比較可能性を促進するために、パネルA~Fに示されている全てのROC分析に、必要な全ての変数の完全なデータを有するSOC患者の同じ集団が使用された(N=767)。
【
図14-2】主要エンドポイントの喪失日数%(1年間の経過観察期間中に1ヶ月の喪失に分類される、上部パネルの行)及び二次エンドポイントのあらゆる原因による死亡(下部パネルの列)に関連するNTproBNPと比較され及びそれに加えて、バイオマーカーMRproADM、LVEF及びMAGGICスコアの予後の可能性を特徴付けるSOC患者のROC分析である。比較可能性を促進するために、パネルA~Fに示されている全てのROC分析に、必要な全ての変数の完全なデータを有するSOC患者の同じ集団が使用された(N=767)。
【
図14-3】主要エンドポイントの喪失日数%(1年間の経過観察期間中に1ヶ月の喪失に分類される、上部パネルの行)及び二次エンドポイントのあらゆる原因による死亡(下部パネルの列)に関連するNTproBNPと比較され及びそれに加えて、バイオマーカーMRproADM、LVEF及びMAGGICスコアの予後の可能性を特徴付けるSOC患者のROC分析である。比較可能性を促進するために、パネルA~Fに示されている全てのROC分析に、必要な全ての変数の完全なデータを有するSOC患者の同じ集団が使用された(N=767)。
【
図15-1】TIM-HF2試験における2つの試験アームRPM及びSOCの(A)NTproBNP及び(B)MRproADMの四半期ごとのバイオマーカー分布の箱ひげ図による視覚化である。パネル番号「00」から「12」は、試験来院の月を示している。縦軸は対数スケールである。
【
図15-2】TIM-HF2試験における2つの試験アームRPM及びSOCの(A)NTproBNP及び(B)MRproADMの四半期ごとのバイオマーカー分布の箱ひげ図による視覚化である。パネル番号「00」から「12」は、試験来院の月を示している。縦軸は対数スケールである。
【発明を実施するための形態】
【0204】
一実施形態では、心血管疾患と診断された患者のための遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングのための方法に関する。本明細書に提示されるデータから明らかなように、心血管疾患を患う患者に遠隔患者管理を処方することの潜在的利益は、proADM、proBNP及び/又はproANPもしくはそのフラグメント(複数可)のレベルに基づいて予測することができ、したがって、療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングに関する貴重な情報を提供する。
【0205】
本発明は、従来の方法を超える以下の:本発明の方法及びキットが、遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングのために、迅速、客観的、使いやすく、信頼性が高く、正確であるという利点を有する。ここで説明する方法及びキットを採用することで、恩恵を受ける可能性が高い患者に遠隔患者管理を処方する際の効率的な医療資源割り当てが可能になる。遠隔患者管理の恩恵を受けない可能性が高いと早期に特定されたバイオマーカーに基づく個人に遠隔患者管理を処方しないことにより、実質的な医療努力及び費用を節約することができる。
【0206】
本発明の方法及びキットは、日常的に得られた血液試料又は対象から得られたさらなる体液もしくは生体試料においてproADM、proBNP及びproANPのレベルを決定することができるので、病院又は同様な臨床現場において日常的に容易に測定可能なマーカーに関するものである。したがって、本明細書に記載の方法及びキットは、心血管疾患と診断された患者の遠隔患者管理を導くために日常的な設定で使用することができる。
【0207】
本明細書で使用される場合、「患者」又は「対象」は、脊椎動物であり得る。本発明の文脈において、「対象」又は「患者」という用語は、ヒトと動物の両方、特に哺乳動物、及び他の生物を含む。
【0208】
本明細書で使用される「心血管疾患」は、心筋、又は心臓、脳、及び他の重要な器官に供給する血管系の機能傷害によって特徴付けられる。「心血管疾患」という用語は、動脈硬化症、冠状動脈疾患、心臓弁疾患、不整脈、心不全、高血圧症、起立性低血圧症、ショック、心内膜炎、大動脈及びその分枝部の疾患、末梢血管系の障害、先天性心疾患又は脳卒中を含む幅広い障害を網羅している。
【0209】
本発明の文脈において、患者は、好ましくは、バイオマーカーのレベルを決定する前に、好ましくは心血管と診断されている。この目的のために、心血管疾患を診断するための当技術分野で知られている任意の手段を使用することができる。本発明を採用することは、心血管疾患の事前診断のタイプに依存しない。
【0210】
いくつかの実施形態では、心血管疾患イベントを診断することは、異常な心電図(ECG)又は電位図(electrogram)を検出することを含み得る。
【0211】
「心電図」という用語は、心臓の電気的活動(脱分極及び再分極)を示す位置に配置された1つ以上の皮膚表面電極(複数可)からの心臓の電気信号であると定義されている。心電図セグメントとは、10秒などの特定の時間、又は10拍などの特定の心拍数のいずれかについての心電図データの記録を指す。患者の心電図のPQセグメントは、通常、R波の直前に発生する心電図の拍動の平坦なセグメントである。
【0212】
「電位図」という用語は、心臓の電気的活動(脱分極及び再分極)を示す位置に配置された1つ以上の埋め込まれた電極(複数可)からの心臓の電気信号であると定義されている。電位図セグメントとは、10秒などの特定の時間、又は10拍などの特定の心拍数のいずれかについて電位図データの記録を指す。患者の電位図のPQセグメントは、通常、R波の直前に発生する電位図の平坦なセグメントである。拍動は、好ましくは、正確に1つのR波を含む心電図又は電位図セグメントのサブセグメントである。
【0213】
心臓信号パラメータは、電位図データの1つ以上の拍動の処理中に作成された測定値又は計算値に関連し、心血管イベントが発生したかどうかを判断するために使用することができる。心臓信号パラメータとしては、PQセグメント平均値、STセグメント平均値、R波ピーク値、ST偏差、STシフト、平均信号強度、T波ピーク高さ、T波平均値、T波偏差、心拍数、及びR-R間隔が挙げられる。
【0214】
本明細書で使用される「心不全」という用語は、当業者に知られているように、心不全の明白な徴候を伴う心臓の収縮機能及び/又は拡張機能の障害に関するものである。好ましくは、本明細書で言及される心不全はまた、「慢性心不全」であり、これは、したがって、突然現れることはないが、長期間にわたって現れる状態を指す。
【0215】
本発明による心不全は、顕性及び/又は進行性心不全を含む。顕性心不全では、対象は、当業者に知られているような心不全の症状を示す。
【0216】
心不全という用語は、米国心臓病学会(American College of Cardiology)/米国心臓協会(American Heart Association)の実践ガイドラインに関するタスクフォース(Yancy et al.2013:心不全の管理のためのACCF/AHAガイドライン)の報告に記載されている、米国心臓病学会及び米国心臓協会によって定義されたようなうっ血性心不全及び/又は慢性心不全を包含する。
【0217】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される心不全という用語は、ACC/AHA分類のステージC及びDを指し、これらのステージでは、対象は心不全の典型的な症状を示し、すなわち、対象は明らかに健康ではない。心不全を患い、ステージC又はDに分類される対象は、彼の心筋に永続的で不可逆的な構造的及び/又は機能的変化を受けており、これらの変化の結果として、完全な健康回復は不可能である。
【0218】
ACC/AHA分類のステージC又はさらにはDに到達した対象は、通常、ステージB又はさらにはAに戻ることはできない。
【0219】
心不全は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)に従って機能分類システムに分類することもできる。NYHA分類I度の患者には、心血管疾患の明らかな症状はないが、機能障害の客観的な証拠がすでにある。身体活動は制限されておらず、通常の身体活動は、過度の倦怠感、動悸、又は呼吸困難(息切れ)を引き起こさない。NYHA分類II度の患者は、身体活動にわずかな制限を有する。彼らは安静時に快適であるが、通常の身体活動は、倦怠感、動悸、又は呼吸困難をもたらす。NYHA分類III度の患者は、身体活動の著しい制限を示す。彼らは安静時には快適であるが、通常の活動よりも少ない活動でも、倦怠感、動悸、又は呼吸困難を引き起こす。NYHA分類IV度の患者は、不快感を伴わずに身体活動を行うことができない。彼らは安静時に心不全の症状を示す。NYHA分類システムの詳細については、“The Criteria Committee of the New York Heart Association.(1994).Nomenclature and Criteria for Diagnosis of Diseases of the Heart and Great Vessels(9th ed.).Boston:Little,Brown &Co.pp.253-256”を参照されたい。
【0220】
心臓の収縮機能及び/又は拡張機能の障害としての心不全は、例えば、心エコー法、血管造影法、シンチグラフィー、又は磁気共鳴イメージングによっても決定することができる。この機能障害は、上で概説したように心不全の症状を伴う場合がある(NYHA分類II~IV度)が、一部の患者は重大な症状を伴わずに現れる場合がある(NYHA I)。さらに、心不全は、左心室駆出率(LVEF)の低下によっても明らかである。より好ましくは、本明細書で使用される心不全は、60%未満、好ましくは45%未満の左心室駆出率(LVEF)を伴う。
【0221】
心不全に典型的な心筋への永続的な構造的又は機能的損傷は当業者に知られており、間質性線維症、炎症、浸潤、瘢痕形成、アポトーシス又は壊死などの様々な分子心臓リモデリングプロセスが含まれる。
【0222】
間質性線維症による心室壁の硬直は、拡張機能障害における心室の不十分な流入を引き起こす。心筋への永続的な構造的又は機能的損傷は、心筋細胞の機能不全又は破壊によって引き起こされる。筋細胞及びその構成要素は、炎症又は浸潤によって損傷を受ける可能性がある。毒素及び薬物(エタノール、コカイン、アンフェタミンなど)は、細胞内の損傷及び酸化的ストレスを引き起こす。損傷の一般的なメカニズムは、梗塞及び瘢痕形成を引き起こす虚血である。心筋梗塞後、死んだ筋細胞は瘢痕組織に置き換わり、心筋の機能に悪影響を及ぼす。心エコー図では、これは異常な又は壁運動の不在によって明らかになる。
【0223】
心不全の発現(症状)は、呼吸困難、倦怠感、及び体液貯留であり、肺うっ血及び末梢浮腫を引き起こす場合があり、身体検査の典型的な徴候は、浮腫及びラ音(rales)である。心不全は主に注意深い病歴聴取及び身体検査に基づく臨床診断であるため、単一の診断試験はない。心不全の臨床症候群は、心膜、心筋、心内膜、又は大血管の障害から生じ得るが、心不全の患者の大多数は、左心室(LV)心筋機能の障害に苦しんでいる。
【0224】
心不全は、例えば、正常なLVサイズ及び駆出率(EF)の維持から、重度の拡張及び/又は著しく低下したEFに至るまで、広範囲のLV機能異常と関連し得る。ほとんどの患者では、収縮機能障害と拡張機能障害の異常が共存している。EFが正常な患者は、自然歴が異なり、EFが低下した患者とは異なる治療戦略が必要になる場合がある。
【0225】
LVHで見られる収縮及び拡張機能の様々な変化は、明らかにうっ血性心不全(CHF)に進行し得る。
【0226】
収縮期心不全及び拡張期心不全は、当業者に知られている方法、好ましくは心エコー法、特に組織ドップラー心エコー法(TD)によって診断することができる。
【0227】
一般に、収縮期心不全は、左心室駆出率(LVEF)の低下によって明らかになる。本発明の一実施形態では、本明細書で使用される心不全は、60%未満、好ましくは45%未満の左心室駆出率(LVEF)を伴う。
【0228】
拡張期心不全(DHF)は、全ての心不全患者の50%超を占めると考えられており、正常なLVEF駆出率(HFNEF)を伴う心不全とも称される。HFNEFの診断には、以下の条件を満たす必要がある:(i)心不全の徴候又は症状;(ii)正常又は軽度に異常な収縮期LV機能;(iii)拡張期LV機能不全の証拠。正常又は軽度の異常な収縮期LV機能は、LVEF>50%とLV拡張終末期容積係数(LVEDVI)<97mL/m2との両方を意味する。拡張期LV機能不全は、組織ドップラー(TD)によって診断されることが好ましく、ここで、比率EIE’>15は、拡張期LV機能傷害の診断的証拠と見なされ(Eは初期僧帽弁血流速度であり、E’は初期TD進展速度である)、TDが拡張期LV機能障害を示唆するE/E’比(15>EIE’>8)をもたらす場合、拡張期LV機能障害の診断証拠には追加の非侵襲的調査が必要である(例えば、外側僧帽弁輪のドップラー、僧帽弁又は肺静脈のドップラー、LV心筋重量係数もしくは左心房容積係数のエコー測定、心房細動の心電図の証拠)。
【0229】
拡張期LV機能障害の詳細については、欧州心臓病学会の心不全及び心エコー検査協会(the Heart Failure and Echocardiography Associations of the European Society of Cardiology)のEuropean Heart Journal 2007,28,2359-2550による正常な左心室駆出率を伴う心不全の診断に関する合意声明(Consensus statement)を参照されたい。
【0230】
「急性非代償性心不全」とも称される「急性心不全(AHF)」は、異常な心機能に続発する症状及び徴候の急速な発症として定義される。これは、以前の心臓病の有無にかかわらず発生する可能性がある。心機能障害は、収縮期又は拡張期の機能障害、心リズムの異常、又は前負荷と後負荷との不整合に関連し得る。AHFは、急性のデノボ(以前に知られている心機能障害のない患者におけるAHFの新たな発症)又は慢性心不全の急性代償不全として現れ得る(Nieminen et al.2005.Eur Heart J 26:384-416;Dickstein et al.2008.Eur Hear J 29:2388-442)。
【0231】
心機能障害は、収縮期又は拡張期の機能障害、心リズムの異常、又は前負荷と後負荷との不整合に関連し得る。それはしばしば生命を脅かし、緊急の治療を必要とする。確立された分類によると、AHFには、患者に表れるいくつかの異なる臨床状態:(I)急性非代償性うっ血性心不全、(II)高血圧/高血圧性発症を伴うAHF、(III)肺水腫を伴うAHF、(IVa)心原性ショック/低拍出量症候群、(IVb)重度の心原性ショック、(V)高拍出量心不全、及び(VI)急性右側心不全が含まれる。AHFの詳細な臨床的説明、分類、ならびに診断、及びKillip分類、Forrester分類、及び「臨床的重症度」分類を含むさらなるAHF分類システムの概要については、とりわけNieminen et al.2005((「Executive summary of the guidelines on the diagnosis and treatment of acute heart failure:the Task Force on Acute Heart Failure of the European Society of Cardiology」.Eur Heart J 26:384-416)及びその中の参考文献を参照されたい。
【0232】
好ましくは、該心機能障害は収縮期機能障害であり、より好ましくは、左心室駆出率(LVEF)の減少であって、好ましくは、該LVEFが55%未満又は50%未満又は45%未満であるLVEFの減少により、及び/又は心臓充満圧の増加により特徴付けられる。
【0233】
本明細書で使用される「収縮期機能障害」という用語は、その技術的に確立された意味を有する。さらなるガイダンスによって、「収縮期機能障害」という用語は、「収縮期心室機能障害もしくは不全」又は「収縮期心機能障害もしくは不全」などの当業者に知られている同義語と互換的に使用することができる。本質的に、「収縮期機能障害」とは、心室の収縮性の低下による心臓のポンプ機能の障害を指す。
【0234】
本明細書で使用される「拡張期機能障害」という用語は、その技術的に確立された意味を有する。さらなるガイダンスによって、「拡張期機能障害」という用語は、「拡張期心室機能障害もしくは不全」又は「拡張期心機能障害もしくは不全」などの当業者に知られている同義語と互換的に使用することができる。本質的に、「拡張期機能障害」とは、心室充満の血管による心臓のポンプ機能の障害を指す。
【0235】
本明細書で使用される場合、「(左)心室駆出率」という用語は、収縮期の(左)心室の拍出量を意味し、各心拍で(左)心室から送り出される血液の割合を表す。定義上、収縮直前の心室内の血液の量は、拡張終末期容積として知られている。同様に、収縮の終わりに心室に残される血液の量は、収縮終末期容積である。拡張終末期容積と収縮終末期容積との間の差異は、一回拍出量、つまり各拍動で駆出される血液の量である。駆出率(EF)は、各拍動で駆出される拡張終末期容積の割合であり、つまり、一回拍出量(SV)を拡張終末期容積(EDV)で割ったものである:EF=SV/EDV=(EDV-ESV)/EDV。
【0236】
駆出率が減少した心不全(HFrEF)」とは、好ましくは、50%未満、好ましくは45%未満、より好ましくは40%未満の駆出率の心不全を指す。
【0237】
「駆出率が保たれた心不全(HFpEF)」とは、好ましくは、50%以上駆出率の心不全を指す。
【0238】
駆出率(EF)は、好ましくは、左心室駆出率(LVEF)を指す。
【0239】
本発明の方法はまた、モニタリング、療法モニタリング、療法ガイダンス及び/又は療法制御のために使用され得る。「モニタリング」は、例えば、治癒過程の進行又は患者の健康状態に対する特定の治療又は療法の影響を分析するために、患者及び潜在的に発生する合併症を追跡することに関する。
【0240】
本発明の文脈における「療法モニタリング」又は「療法制御」という用語は、例えば、療法の有効性に対するフィードバックを得ることによる、当該患者の療法的処置のモニタリング及び/又は調節を指す。本明細書で使用される場合、「療法ガイダンス」という用語は、1つ以上のバイオマーカーの値/レベル及び/又は臨床パラメータ及び/又は臨床スコアに基づく特定の療法、療法的行為、又は医療的介入の適用を指す。これには、治療を処方するか又は処方しないかどうかの決定、治療の調整、又は治療の中止が含まれる。本発明の文脈において、心不全患者における「療法モニタリング」は、バイオマーカーを使用することによって患者が有害転帰を得るという所定のリスクに応じて、遠隔患者管理を使用することによって、又は遠隔患者管理なしの通常のケアによって実現することができる。
【0241】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法はまた、心血管疾患と診断された患者の健康における有害事象の診断、予後、リスク評価、及び/又はリスク層別化に関連し得る。
【0242】
本発明の文脈において、「有害事象」は、心血管疾患と診断された患者の合併症又は健康状態の悪化を示す事象に関するものである。このような有害事象としては、心イベント、心血管イベント、急性心不全、急性代償障害、又は患者の一般的な臨床徴候もしくは症状の悪化、例えば、低血圧もしくは高血圧、頻脈もしくは徐脈又は患者の死亡が挙げられるが、これらに限定されない。
【0243】
有害事象には、心血管イベントによる計画外の入院、つまり、特に非代償性心不全、冠状動脈疾患、脳卒中もしくは一過性脳虚血発作(TIA)、不整脈、肺塞栓症、心内膜炎又は他の心血管イベントによる計画外の入院がさらに含まれ得る。
【0244】
「心血管イベント」は、本明細書では「心臓イベント」という用語と互換的に使用され、心臓突然死、限定されないが、プラーク破裂、心筋梗塞、不安定狭心症などの急性冠動脈症候群、ならびに脚の血栓、動脈瘤、脳卒中などの非心臓急性動脈血管イベント、及び動脈血管の血流及び酸素付加が中断されるその他の心血管虚血イベントを指すことができる。心血管イベントは、心拍数の上昇、徐脈、頻脈、又は心房細動、心房粗動、心室細動、及び心室性期外収縮もしくは心房性期外収縮(PVC又はPAC)などの不整脈を指す場合もある。好ましくは、心血管イベントは、急性心不全(AHF)又は急性急性非代償性心不全(ADHF)である。
【0245】
本明細書において、「致命的でない心停止」は、好ましくは、心リズムの不在、又は基本的もしくは高度な心臓生命維持の任意の構成要素を必要とする無秩序なリズムの存在を指す。「急性心筋梗塞」は、好ましくは、以下の:虚血性症状、ECGでの異常なQ波、STセグメントの上昇又は下降、冠状動脈インターベンション(冠状動脈形成術)、又は患者の手術後のピーク時に検出されたトロポニンレベルの上昇の非定型的な減少、のうちの少なくとも1つを伴う心筋壊死のマーカーとしてのクレアチンキナーゼアイソザイムの場合、トロポニンレベルの増加及び漸減、又はより速い増加及び減少を指す。「うっ血性心不全」は、好ましくは、呼吸困難又は倦怠感、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、頸静脈圧の上昇、身体検査における肺のラ音、心臓肥大又は肺血管うっ血の新しい院内徴候又は症状を指す。「新しい心不整脈」は、好ましくは、心電図によって証明される可能性のある、心房粗動、心房細動、又は第2度もしくは第3度の房室伝導ブロックを指す。「狭心症」は、好ましくは、身体運動又は感情によって引き起こされ、休息又はニトログリセリンによって軽減される鈍いびまん性胸骨下胸部の不快感を指す。
【0246】
本明細書で使用される場合、本発明の文脈における「診断」は、臨床状態の認識及び(早期)検出に関する。重症度の評価もまた、「診断」という用語によって包含され得る。
【0247】
「予後」は、対象の転帰又はリスクの予測に関するものである。これはまた、前述の対象についての回復の見込み又は有害な転帰の見込みの推定を含み得る。
【0248】
有害事象の診断又は予後の観点から、この方法はリスク評価又は層別化に特に適している。これは、本発明の方法が、合併症を(さらに)患う可能性がより高いか、あるいは将来的に状態がより重篤になるであろう高リスク患者を、健康状態が安定しているか、又は改善さえもしているため、彼らが特定の治療的措置を必要とし得る特定の有害事象を患っていること、あるいは有害事象を患うであろうことが予想されない低リスクの患者から区別することができることを意味している。好ましくは、リスクは、急性非代償性心不全による死亡又は入院に関連し得る。
【0249】
本発明において、「リスク評価」及び「リスク層別化」という用語は、さらなる予後に従って対象を異なるリスクグループに分類することに関する。リスク評価はまた、予防的及び/又は治療的措置を適用するための層別化にも関する。「療法層別化」という用語は、特に、患者を、それらの分類に応じてある特定の異なる治療措置を受けるリスク群又は療法群などの、異なる群にグループ分け又は分類することに関する。「療法層別化」という用語はまた、患者を、特定の治療的措置を受ける必要があるか、又は必要がない群にグループ分け又は分類することにも関する。
【0250】
本明細書に記載の方法は、proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーのレベルの決定に基づく、心血管疾患と診断された患者の遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化、及び/又はモニタリングに関する。
【0251】
特に、この方法は、バイオマーカーのレベルが遠隔患者管理を患者に処方するか又は処方しないかを示すかどうかを決定するために、バイオマーカーのレベルを1つ以上の参照値(閾値又はカットオフ値及び/又は母集団平均値など)と比較することを含む。
【0252】
本明細書で使用される場合、「遠隔患者管理」という用語は、好ましくは、心血管疾患を有する患者を遠隔で管理するための治療アプローチを指し、この中で、患者の健康状態に関するデータが患者(すなわち外来患者)のいる現地で繰り返し収集され、データが遠隔の(地理的に離れている)医療関係者又は自動システムに送信され、医療関係者又は自動システムは、患者に連絡したり、患者にアドバイスを与えたり、併用治療を開始又は変更したり、又は患者の健康状態を改善及び/又は安定させるための任意の他の医学的介入を行ったりするために、該データに基づいて行動する場合もあり、又は行動しない場合もある。
【0253】
遠隔患者管理は、好ましくは、患者の健康状態に関する遠隔監視、ならびに遠隔医療介入、ガイドラインに基づく外来治療、及び/又は構造化された患者教育を包含する。
【0254】
遠隔監視は、好ましくは、患者のいる現地で繰り返されるデータ収集と、医療関係者又は自動化医療システムによるレビューを可能にする監視システム又はデバイスへのその遠隔送信と、を指す。
【0255】
本明細書で使用される「医療関係者」は、医師、看護師、又は救急医療従事者を含む、医療専門家又は医療専門家のチームに関連し得るが、これらに限定されない。「自動化医療システム」は、好ましくは、医療データの自動処理及びそれに応じた出力の生成を可能にするコンピュータベースのシステムを意味し、例えば、遠隔管理された患者に対する警告メッセージ又はアドバイスを生成する。自動化医療システムは、好ましくは、出力を生成するために医療データにアクセスすることができる人工知能及び/又は人工ニューラルネットワークに基づくコンピュータで実現される方法を採用し得る。
【0256】
好ましい実施形態では、患者のいる現地でのデータ収集は、通常の自宅環境で行われ、したがって、患者の日常業務への干渉を最小限に抑える。
【0257】
遠隔送信とは、データが、患者のいる現地にはない遠隔の医療関係者又は自動化医療システム(すなわち、地理的に離れている担当者又はシステム)に送信されることを意味する。例えば、典型的な設定では、データは様々な患者から収集されるが、これらの患者は自宅、職場、又は彼らが通う他の場所(例えば、外来患者)にいる間に、該データは監視及び/又は遠隔で送信されるデータを監視及び/又は処理する機能を備えた中央医療センターに送信される。
【0258】
好ましい実施形態では、患者のいる現地と医療関係者又はデータが遠隔送信される自動医療システムとの間の距離は、少なくとも100m、少なくとも1km、少なくとも5km、又はそれ以上である。
【0259】
いくつかの実施形態では、データが収集されるとき、患者はまた、外来治療を受けているか、又は入院している場合もある。これらの場合もまた、データは医療関係者又は自動化医療システムに遠隔で送信される。例えば、患者は外来治療を受けているか、心不全などの心血管疾患の治療に特化していない施設に入院している場合があり、データは医療センターに送信され、医療センターでは、特別に訓練された医療関係者又は自動化医療関係者がデータに応対し、適切な医学的介入を開始することができる。
【0260】
健康状態に関するデータとは、好ましくは、心血管疾患、最も好ましくは心不全の状態又は進行に関して、患者の健康状態を監視するのに適した任意のデータを指す。
【0261】
一実施形態では、患者の健康状態に関するデータは、体温、血圧、脈拍(心拍数)、呼吸数(breathing rate)(呼吸回数(respiratory rate))、酸素飽和度又は血糖値からなる群から選択されるバイタルサイン又はパラメータを含む。
【0262】
好ましい実施形態では、患者の健康状態に関するデータは、血圧を含む。
【0263】
好ましい実施形態では、患者の健康状態に関するデータは、心電図(ECG)を含む。
【0264】
好ましい実施形態では、患者の健康状態に関するデータは、末梢血中酸素飽和度(SpO2)を含む。
【0265】
好ましい実施形態では、患者の健康状態に関するデータは、体重を含む。
【0266】
好ましい実施形態では、患者の健康状態に関するデータは、自己評価された健康状態を含む。自己評価された健康状態は、例えば、良好な健康状態から不良な健康状態、すなわち、異なる中等級での「非常に良い」から「非常に悪い」の主観的評価を網羅する等級付けシステム又はスケールに関連し得る。等級の典型的な数は、3~10であり、好ましくは5であり得る。
【0267】
好ましい実施形態では、患者の健康状態に関するデータは、痛み(aching)、息切れ、灼熱感、けいれん、不快感、膨満感、疼き、消化不良、立ちくらみ、吐き気、しびれ、うずき、痛み(pain)、圧迫(pressure)、息切れ、発汗、めまい、圧迫(squeezing)、緊張、嘔吐、不規則な心拍、動悸、胸のドキドキ、倦怠感、脱力感、末梢浮腫の存在及び/又はその他の適切な症状が含まれる、心血管疾患、好ましくは心不全の進行に関連した典型的な症状の自己評価された兆候を含む。
【0268】
好ましい実施形態では、患者の健康状態に関するデータは、血圧、ECG、SpO2、体重、自己評価された健康状態、及び/又は心血管疾患の進行に関連する症状からなる群から選択される、2つ以上、好ましくは3つ、4つ、5つ以上のデータ型を含む。
【0269】
一実施形態では、患者の健康状態に関するデータが収集され、遠隔の医療関係者又は自動化された医療システムに定期的に送信される。データ収集間の時間間隔は、収集されるデータの様々な種類によって大幅に異なる場合がある。例えば、モバイルパルソメータで心拍数を監視する場合、データの収集と送信とはほぼリアルタイムで行われ、状態は毎秒更新されるが、例えば体重が測定され、毎日のペースでのみ遠隔送信される。
【0270】
データを収集するために、任意の適切なデバイス又はシステムを使用することができる。時計、患者の皮膚に配置又は埋め込まれた電子プローブなど、患者が携帯する、患者の自宅に配置されるスタンドアロンユニット又はモバイルユニットであるシステムを含む。
【0271】
心血管モニタリングデバイスとしては、心臓ループレコーダー(例えば、心リズムを記録するため)、心拍数モニター、血圧モニター、血行動態モニター、生体信号検出器デバイス(例えば、電気眼球図記録法、筋電図検査、心電図検査、電気皮膚反応、脳磁図など)、体重計(例えば、スマート体重計)、及び/又は心血管活動を監視するための他の適切なデバイスのうちの1つ以上を挙げることができる。変形例では、モバイルコンピューティングデバイスは、心血管デバイスの機能を実行することができる(例えば、心拍数監視機能を含むスマートウォッチ)。
【0272】
先行技術では、特に心血管疾患に関連するパラメータに関して、患者の健康状態に関するデータを遠隔監視するための様々な監視デバイスならびにデータ送信デバイスが知られている。
【0273】
例えば、米国特許第3,943,918号でLewisにより、及び米国特許第4,121,573号でCrovellaらにより説明されているタイプの初期の遠隔測定システムは、遠隔測定技術を使用して、RFを介して患者の胸に取り付けられたセンサーデバイスからラジオテレメトリ受信機にデータを送信し、必要に応じて表示及び/又は記録する。S.S.Ngは、「Microprocesor-based Telemetry System for ECG Monitoring」というタイトルの記事で、ECGモニタリング用のさらに別のテレメトリシステムについて説明した(IEEE/Ninth Annual Conference of the Engineering in Medicine and Biology Society,CH2513-0,pages 1492-93(1987))。その中でNgは、無線リンクを介してPC ATによって継続的なECGモニタリング及び分析を提供するためのシステムを説明している。Ngシステムでは、患者は、患者のECG信号を感知し、無線リンクを介して中央基地局に送信するために、患者によって運ばれる送信機を必要とする。基地局では、受信機が数人の患者からの元のECG信号を同時に復元して表示する。
【0274】
Bornnらは、米国特許第4,784,162号、同第4,827,943号、同第5,214,939号、同第5,348,008号、同第5,353,793号、及び同第5,564,429号において、小型の生理学的データモニタリング/警告システムを記載しており、この中で、生命を脅かす可能性のあるイベントを検出し、無線モデムリンクを使用したラジオテレメトリを介して中央基地局を自動的に呼び出すマイクロプロセッサを含むセンサーハーネスを1人以上の患者が装着する。ホームサイト又は代替サイトの構成では、基地局とリモートユニット間の通信は商用電話回線を介して行われる。通常、ECGモニターで異常が検出されると、システムは自動的に「911」又は同様の緊急対応サービスを呼び出す。
【0275】
Segalowitzは、米国特許第4,981,141号、同第5,168,874号、同第5,307,818号、及び同第5,511,553号において、無線周波数及びハードウェア記録装置及びディスプレイモニターへの単線によって、データを遠隔測定するための多層可撓性構造を含む前胸部ストリップパッチを含む無線バイタルサインモニタリングシステムを開示している。マイクロセンサーと導電性接触要素(CCE)がストリップパッチに取り付けられ、これにより、無線周波数伝送の単一波長を介した12誘導ECG、心拍出量、呼吸数、末梢血オキシメトリ、患者の体温、及びECG胎児心臓モニタリングの同時かつ継続的な検出、処理、及び送信を可能にする。
【0276】
Plattらはまた、米国特許第5,634,468号において、患者の無線生理学的モニタリングのためのセンサーパッチを開示している。Plattらは、病院以外の場所にいる患者から遠隔でECG信号を監視するためのセンサーとシステムについて説明している。このシステムでは、感知電極、信号処理回路、及び無線又は赤外線送信回路を含むセンサーパッチが患者の体に取り付けられ、好ましくは、少なくとも1週間装着され、その後電源が使い果たされてセンサーパッチが廃棄される。患者の近くのプライマリサイトの受信機は、センサーパッチによって送信されたデータを受信し、検知されたデータを保存する。患者が不快感もしくは懸念を感じた場合、又は携帯型ユニットがアラームを鳴らした場合、患者はモニタリングステーションに電話をかけ、標準の音声通信ネットワークを介して携帯型ユニットから保存されたデータをダウンロードする。次いで、ダウンロードされたECGデータは、モニタリングステーションで監視及び分析される。患者の近くにある受信機は、患者によって持ち運ばれる携帯型ユニットであり得、携帯型ユニットは、受信機、受信データを処理して異常を特定するためのプロセッサ、感知されたデータを保存するためのメモリ、及び電話回線にインターフェースし、ECGデータ信号をモニタリングステーションに送信するための回路を含む。モニタリングステーションは、受信したECG信号をデコードし、ECGデータの分類のために拍動及びリズムの分析を実行する。異常が発見された場合は、患者の近くの医療関係者に連絡する。
【0277】
米国特許第5,522,396号において、Langerらは、患者の心臓を監視するための遠隔測定システムを開示しており、この中で、患者ステーションは、電話回線によってモニタリングステーションに接続されたテレリンクユニットに患者電極の出力を送信するための遠隔測定装置を含む。Plattらのシステムと同様に、LangerらはECGデータを中央の場所に送信する。しかしながら、Plattらのシステムとは異なり、Langerらのシステムは、ECOデータで所定のイベントをチェックし、このようなイベントが検出されると自動的にモニタリングステーションを呼び出す。同様の遠隔測定システムは、イベントが検出されたときに患者から中央監視場所への携帯電話リンクを開始する、米国特許第5,544,661号のDavisらによって説明されている。
【0278】
米国特許第6,416,471B1号は、バイタルサインを監視し、ラジオテレメトリ技術を使用して患者から遠隔でデータを取り込むシステムを開示している。このシステムは、全波形ECG、全波形呼吸、皮膚温度、及び動きを測定するためのセンサーを備えたコードレスの使い捨てセンサーバンドと、患者のバイタルサインデータを検出及び送信するための送信回路とを使用する。患者が例えば、彼又は彼女のベルトなどに装着するか、近くに配置できる信号転送ユニットは、センサーバンドからデータを受信し、それを、例えば無線送信によって、収集したデータを医療関係者のレビューのために遠隔モニタリングステーションに転送するための従来の電話回線に接続するように設計された基地局に転送する。基地局は、血圧などの追加の臨床データを取り込むこともできる。
【0279】
概念実証研究で、Spethmannらは、モニタリングステーションへの遠隔送信のためにマラソンランナーで携帯電話を介して心電図を記録、転送、分析すること(心電図ストリーミング)の実現可能性を実証した(Spethmann et al 2014)。
【0280】
上記の遠隔監視システム、ならびにそこに引用されている参考文献は、限定することを意図することなく、本明細書に記載の方法の目的で遠隔患者管理に使用できる例示的なデバイス及びシステムを例示するものとする。
【0281】
本明細書で使用される遠隔患者管理は、先行技術で知られている適切な手段を用いた本明細書で記載されるデータの収集、及び遠隔医療関係者又は自動医療システムへのそれらの送信に依存する。これらの手段を達成するための異なる技術的手段は、当業者に知られており、したがって、本明細書では詳細に説明しないものとする。
【0282】
特定の好ましい実施形態では、遠隔患者管理用のデバイスは、患者の自宅からのバイタルの測定値を医療センターのモニタリングステーションに送信するための中心構造要素として、デジタルタブレット(Physio-Gate(登録商標)PG1000、GETEMED Medizin-und Informationstechnik AG)を備えたブルートゥース(登録商標)システムに基づいて使用される。好ましくは、異なる測定デバイス、好ましくは特定の期間、例えば2分、又はストリーミングECG測定を収集するための3チャネルECGデバイス(PhysioMem(登録商標)PM1000 GETEMED Medizin-und Informationstechnik AG)、末梢毛細血管酸素飽和度を収集するデバイス(SpO2;Masimo Signal Extraction Technology(SET(登録商標))及び血圧を収集するシステム(UA767PBT,A&D Ltd.)及び体重計(Seca 861,seca GmbH &Co KG)を含む。各デバイスには、ブルートゥース(登録商標)チップが装備され、デジタルタブレットに接続されていることが好ましい。遠隔医療センターのモニタリングステーションのソフトウェアとして、「Fontane」(eHealth Connect 2.0,T-Systems International GmbH)があり、これは、TIM-HF2研究で使用するために特別に開発され、Koehler et al.2018によって記載された。
【0283】
好ましい実施形態では、患者の健康状態に関するデータは、医療関係者又は医療自動化システムのレビューのためにモニタリングステーションに送信される。モニタリングステーションは、送信されたデータを処理するための手段、好ましくは医療関係者のレビューを警告及び/又は先導するための手段を備えることが特に好ましい。
【0284】
好ましい実施形態では、送信されたデータの各型に対して、警告ゾーンを割り当てることができる。例えば、モニタリングステーションは、送信されたデータを積極的に処理し、所与の送信されたデータ型又はデータ型の組み合わせが疾患の悪化又は有害事象のリスクの上昇を示す警告ゾーンに入るとすぐに警告を発することができる。結果として、モニタリングステーションは、医療関係者のモバイル電気通信デバイスに直接警告を表示、音声で伝え、又は送信することができる。
【0285】
好ましい実施形態では、遠隔患者管理は遠隔医療介入を含み、これは好ましくは、遠隔医療関係者又は自動化された医療システムによって開始された患者との任意の接触に関連するものである。好ましい実施形態では、連絡は、電話、ビデオ通話、電子メール、チャットプログラム、SMS、又は他の電子メッセージ通信手段による他のものを介して開始される。
【0286】
いくつかの実施形態では、遠隔患者管理は、健康状態に関するデータが警告ゾーンに入った場合に備えて、電話又はビデオ通話の形での遠隔医療介入を含む。
【0287】
いくつかの実施形態では、遠隔患者管理は、定期的に、医療関係者と患者との間の、好ましくは電話を介した構造化された相談を含む。構造化された相談の間、医療関係者は、遠隔送信されたデータに基づいて患者と疾患状態について話し合い、うつ病又は他の病気の症状を評価し、処方箋などの現在の治療について話し合い、現行の治療の開始又は変更に関するアドバイスを行うことが好ましい。
【0288】
好ましい実施形態では、構造化された相談は、連絡の間に1日~3ヶ月、好ましくは1週間~1ヶ月、最も好ましくは月に1回の期間で定期的に行われる。
【0289】
いくつかの実施形態では、構造化された相談は、医療関係者又は自動化された医療システムによって適切であると見なされたとき、例えば、遠隔送信されたデータが明らかな技術的問題の場合に疾患状態の変化を示したときに、バイタルサイン測定又は患者の健康状態に関する他のデータを検証するためにさらに開始される。
【0290】
いくつかの実施形態では、遠隔患者管理は、医療関係者による遠隔管理された患者のレビューに優先順位を付けるためのアルゴリズムを使用する。この目的のために、例えば、徐脈心拍数、頻脈心拍数、SpO2、体重、血圧、又は自己評価された健康状態などの送信されたデータから導出可能なパラメータに対してカットオフ値を定義することができる。
【0291】
優先順位付けに基づいて、遠隔患者管理の作業負担及び作業の一連の流れを最適化して、特に必要な患者に迅速に対応できるようにすることができる。
【0292】
好ましい実施形態では、送信されたデータのレビューは、好ましくは1週間未満、好ましくは3日間未満、1日間未満又は12時間未満のレビューの間の期間で、定期的な間隔で医療関係者によって行われる。いくつかの実施形態では、送信されたデータのレビューは、医療関係者又は医療自動化システムによってリアルタイムで行われる。医療関係者による遠隔管理患者のレビューに優先順位を付けるためのアルゴリズムを使用する場合、これらの期間はそれに応じて選択され、優先順位の高い患者はより頻繁に、例えば1日2回レビューされ、優先順位のない患者は1日1回又は1日間おきにレビューされる。
【0293】
いくつかの実施形態では、遠隔患者管理は、遠隔管理された患者の投薬又は医学的処置に関する相談、助言又は指示を含む。
【0294】
本発明の文脈において、「投薬」は、心血管疾患、好ましくは心不全に関して、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、アルドステロン拮抗薬、ベータ遮断薬、利尿薬及び/又はカルシウム拮抗薬を含むが、これらに限定されない様々な治療及び治療戦略を含み得る。
【0295】
遠隔患者管理は、好ましくは、心不全などの心血管疾患の治療に関して、相談、入院の開始、患者ケアの増加の開始、投薬の種類、頻度、及び/又は投与量に関するアドバイスもしくは指示を含み得る。
【0296】
いくつかの実施形態では、送信されたデータの各型又は組み合わせについて、安全ゾーン又は改善ゾーンを割り当てることができる。例えば、心血管疾患を患っている患者に関する医療データに基づいて、患者が彼の病状にもかかわらず最適に気分が良いゾーン及び/又は病状の改善が期待されるゾーンを定義することができる。急性及び有害事象を予防するためだけに遠隔患者管理システムを使用するのとは対照的に、このような遠隔患者管理は、疾患又は症状の進行を修正し、臨床転帰に有意なプラスの影響をもたらことを可能にする。
【0297】
例えば、心不全を患っている患者の安全ゾーン又は改善ゾーンの場合、次の目標の1つ以上又は全てを定義することができる:洞リズムの患者には、心拍数<75b.p.m.、血圧制御:収縮期<140mmHg及び拡張期<90mmHg、新たに発症した心房細動の患者には、長期治療としての抗凝固剤療法及び抗不整脈薬療法の使用、NYHA分類II~IV度の患者では、可能な場合は鉱質コルチコイド受容体拮抗薬の使用を促す。
【0298】
Koehler et al.2018に示されているように、本明細書で記載する単なる遠隔監視に加えて遠隔医療介入の実装は、適切なデータ処理及び/又は改善ゾーンもしくは安全ゾーンの促進によって優先される可能性があり、患者の生活の質及び寿命の改善で特に良い結果をもたらす。本明細書に記載の方法の驚くべき追加の洞察は、初期のバイオマーカーが個々の患者の治療上の利益を評価し、遠隔患者管理を処方するか否かを決定するために使用できるという発見に関連している。
【0299】
本明細書に記載の方法は、proADM、proBNP、及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーのレベルの決定に基づく、患者の遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化、及び/又はモニタリングに関する。
【0300】
「proADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカー」という表現、ならびに「proADM、proBNP及び/又はproANP」という表現は、好ましくは、該3つのバイオマーカー、すなわちproADM、proBNP又はproANPのうちの正確に1つだけの決定、ならびに該バイオマーカーのうちの正確に2つ、すなわち、proADMとproBNP、proADMとproBNP、又はproBNPとproANPの組み合わせの決定、又は3つ全てのバイオマーカーproADM、proBNP、及びproANPの決定を含む全ての可能な組み合わせを包含すると理解されたい。
【0301】
該表現は、さらなるバイオマーカー又はパラメータの追加の決定を排除しないことをさらに理解されたい。
【0302】
本発明の文脈において、「proADM又はそのフラグメント(複数可)のレベルを決定する」などは、proADM又はそのフラグメントを決定する任意の手段を指すことが理解される。フラグメントがproADM又はそのフラグメントのレベルの明白な決定を可能にする限り、フラグメントは任意の長さ、例えば少なくとも約5、10、20、30、40、50、又は100個のアミノ酸を有し得る。本発明の特に好ましい態様において、「proADMのレベルを決定すること」は、中間領域のプロアドレノメデュリン(MRproADM)のレベルを決定することを指す。MRproADMは、proADMのフラグメント及び/又は領域である。
【0303】
「プロアドレノメデュリン」(「ProADM」)は、シグナル配列(アミノ酸1~21)を含まないプレproADMを指し、すなわちプレproADMのアミノ酸残基22~285を指す。「中間領域プロアドレノメデュリン」(「MRproADM」)は、プレproADMのアミノ酸42~95を指す。
【0304】
MRproADMのアミノ酸配列は、配列番号4に示されている。プレproADM又はMRproADMのペプチド及びそのフラグメントを本明細書に記載の方法に使用できることも本明細書では想定されている。例えば、ペプチド及びそのフラグメントは、プレproADMのアミノ酸22~41(PAMPペプチド)、又はプレproADMのアミノ酸95~146(成熟アドレノメデュリン)を含み得る。proADMのC末端フラグメント(プレproADMのアミノ酸153~185)は、アドレノテンシンと呼ばれる。proADMペプチド又はMRproADMのフラグメントは、例えば5つ以上のアミノ酸を含む。proADMペプチドのフラグメント又はMRproADMのフラグメントは、例えば、少なくとも約5、10、20、30個以上のアミノ酸を含み得る。したがって、proADMのフラグメントは、例えば、MRproADM、PAMP、アドレノテンシン及び成熟アドレノメデュリンからなる群から選択することができ、好ましくは本明細書ではフラグメントはMRproADMである。
【0305】
さらに、中間領域pro-アドレノメデュリン(MRproADM)は、診断目的で、EP1488209B1に開示されている(Struck J,Tao C,Morgenthaler NG,Bergmann A.Identification of an Adrenomedullin precursor fragment in plasma of sepsis patients.Peptides 2004;25:1369-72;Morgenthaler NG,Struck J,Alonso C,Bergmann A.Measurement of mid-regional pro-adrenomedullin in plasma with an immunoluminometric assay.Clin Chem 2005;51:1823-9;Christ-Crain M,Morgenthaler NG,Stolz D,Muller C,Bingisser R,Harbarth S,et al.Pro-adrenomedullin to predict severity and outcome in community-acquired pneumonia[ISRCTN04176397].Crit Care 2006;10:R96;Christ-Crain M,Morgenthaler NG,Struck J,Harbarth S,Bergmann A,Muller B.Mid-regional pro-adrenomedullin as a prognostic marker in sepsis:an observational study.Crit Care 2005;9:R816-24)。
【0306】
ペプチド「アドレノメデュリン(ADM)」は、ヒト褐色細胞腫から単離された52個のアミノ酸を含む新規降圧ペプチドとして、1993年に最初に記載された(Kitamura et al.(1993),Biochem.Biophys.Res.Commun.192:553-560)。同じ年に、185個のアミノ酸を含む前駆体ペプチド及びこの前駆体ペプチドの完全なアミノ酸配列をコードするcDNAも記載された(Kitamura et al.(1993),Biochem.Biophys.Res.Commun.194:720-725)。とりわけ、N末端に21個のアミノ酸のシグナル配列を含む前駆体ペプチドは、「プレpro-アドレノメデュリン」(プレproADM)と呼ばれる。ADMペプチドはプレproADMのアミノ酸95から146までを含み、プレproADMからタンパク質分解切断によって形成される。プレproADMの切断で形成されたもののいくつかのペプチドフラグメント、特に生理学的に活性なペプチドアドレノメデュリン(ADM)及び「PAMP」、すなわち、プレProADM中のシグナルペプチドの21個のアミノ酸に続く20個のアミノ酸(22~41)を含むペプチドが詳細に特性化されている。未知の機能及び高いエクスビボ安定性の別のフラグメントは、中間領域プロアドレノメデュリン(MRproADM)であり(Struck et al.(2004),Peptides 25(8):1369-72)、これについては信頼できる定量化方法が開発されている(Morgenthaler et al.(2005),Clin.Chem.51(10):1823-9)。ADMは、有効な血管拡張薬である。降圧効果は、特にADMのC末端部分のペプチド部分に関連している。
【0307】
一方、ADMのN末端のペプチド配列は高血圧作用を示す(Kitamura et al.(2001),Peptides 22,1713-1718)。PAMPなどの診断用の(プレ)プロアドレノメデュリンのN末端フラグメントは、EP0622458B1にも記載されている(Hashida S,Kitamura K,Nagatomo Y,Shibata Y,Imamura T,Yamada K,et al.Development of an ultra-sensitive enzyme immunoassay for human pro-adrenomedullin Nterminal peptide and direct measurement of two molecular forms of PAMP in plasma from healthy subjects and patients with cardiovascular disease.Clin Biochem 2004;37:14-21)。
【0308】
診断用の(プレ)プロアドレノメデュリンのC末端フラグメントもEP2111552B1に記載されており、すなわちCTproADM(アドレノテンシン)である。
【0309】
さらに、先行技術は、診断においてプロアドレノメデュリン(proADM)及びアドレノメデュリンを決定する方法を記載し(EP0622458B1、Lewis LK,Smith MW,Yandle TG,Richards AM,Nicholls MG.Adrenomedullin(1-52)measured in human plasma by radioimmunoassay:plasma concentration,adsorption,and storage.Clin Chem 1998;44:571-7;Ueda S,Nishio K,Minamino N,Kubo A,Akai Y,Kangawa K,et al.Increased plasma levels of adrenomedullin in patients with systemic inflammatory response syndrome.Am J Respir Crit Care Med 1999;160:132-6;Kobayashi K,Kitamura K,Etoh T,Nagatomo Y,Takenaga M,Ishikawa T,et al.Increased plasma adrenomedullin levels in chronic congestive heart failure.Am Heart J 1996;131:994-8;Kobayashi K,Kitamura K,Hirayama N,Date H,Kashiwagi T,Ikushima I,et al.Increased plasma adrenomedullin in acute myocardial infarction.Am Heart J 1996;131:676-80.)、特に敗血症を診断する目的で記載している(EP1121600B1)。
配列番号1:プレproADMのアミノ酸配列、185AS:
MKLVSVALMY LGSLAFLGAD TARLDVASEF RKKWNKWALS RGKRELRMSSSYPTGLADVK AGPAQTLIRP QDMKGASRSP EDSSPDAARI RVKRYRQSMNNFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGYGRRRRRSLPEAGPG RTLVSSKPQA HGAPAPPSGS APHFL
配列番号2:proADMのアミノ酸配列(プレproADMのAS22~185):
ARLDVASEF RKKWNKWALS RGKRELRMSSSYPTGLADVK AGPAQTLIRP QDMKGASRSP EDSSPDAARI RVKRYRQSMNNFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGYGRRRRRSLPEAGPG RTLVSSKPQA HGAPAPPSGS APHFL
配列番号3:PAMPのアミノ酸配列(プレproADMのAS22~41):
ARLDVASEFRKKWNKWALSR
配列番号4:MRproADMのアミノ酸配列(プレproADMのAS45~92):ELRMSSSYPTGLADVKAGPAQTLIRPQDMKGASRSPEDSSPDAARIRV
配列番号5:成熟ADMのアミノ酸配列(プレproADMのAS95~146):
YRQSMNNFQGLRSFGCRFGTCTVQKLAHQIYQFTDKDKDNVAPRSKISPQGY
配列番号6:アドレノテンシン又はC末端ADMフラグメントのアミノ酸配列(プレproADMのAS148~185):
RRRRRSLPEAGPGRTLVSSKPQAHGAPAPPSGSAPHFL(アドレノメデュリンUniprot番号:P353118)
【0310】
プレproADM又はMRproADMのペプチド及びそのフラグメントを本明細書に記載の方法に使用できることも本明細書では想定されている。例えば、ペプチド又はそのフラグメントは、プレproADMのアミノ酸22~41(PAMPペプチド)、又はプレproADMのアミノ酸95~146(bio-ADMとしても知られている生物学的に活性な形態を含む、成熟アドレノメデュリン)を含み得る。proADMのC末端フラグメント(プレproADMのアミノ酸153~185)はアドレノテンシンと呼ばれる。proADMペプチドのフラグメント又はMRproADMのフラグメントは、例えば、少なくとも約5、10、20、30個以上のアミノ酸を含み得る。したがって、proADMのフラグメントは、例えば、MRproADM、PAMP、アドレノテンシン及び成熟アドレノメデュリンからなる群から選択することができ、好ましくは本明細書ではフラグメントはMRproADMである。
【0311】
これらの様々な形態のADM又はproADM及びそれらフラグメントの決定は、例えば、分子の特定の部分に指向された抗体又は他の親和性試薬を用いることによって、あるいは質量分析を使用してタンパク質の一部分を測定することによる分子の存在及び/又は量を決定することによって、これらの分子の特定のサブ領域を測定及び/又は検出することも包含する。本明細書に記載の「ADMペプチド又はフラグメント」のうちの任意の1つ以上を本発明で用いることができる。
【0312】
対象の試料中のproADMのレベルは、本明細書に記載されるようにイムノアッセイによって決定することができる。本明細書で使用される場合、「プロアドレノメデュリン」又は「proADM」をコードするリボ核酸又はデオキシリボ核酸のレベルも決定することができる。proADM及びそのフラグメント(複数可)を決定するための方法は、当業者に既知であり、例えば、Thermo Fisher Scientific/B・R・A・H・M・S GmbHから得られた製品を使用することによる。
【0313】
本発明の文脈において、「proBNP又はそのフラグメント(複数可)のレベルを決定する」などは、proBNP又はそのフラグメントを決定する任意の手段を指すことが理解される。フラグメントがproBNP又はそのフラグメントのレベルの明白な決定を可能にする限り、フラグメントは任意の長さ、例えば少なくとも約5、10、20、30、40、50、又は100個のアミノ酸を有し得る。本発明の特に好ましい態様では、「proBNPのレベルを決定すること」は、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)のレベルを決定することを指す。NTproBNPは、proBNPのフラグメント及び/又は領域である。
【0314】
「B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)」は、心不全の定量的マーカーである。B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)とそのアミノ末端フラグメントであるN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)を使用すると、EDの診断精度が大幅に向上し[Januzzi,J.L.,Jr.,et al.,Am J Cardiol,2005.95(8):p.948-54;Maisel,A.S.,et al.,N Engl J Med,2002.347(3):p.161-7]、それによって患者の評価及び治療を改善する[Moe,G.W.,et al.,Circulation,2007.115(24):p.3103-10;Mueller,C.,et al.,N Engl J Med,2004.350(7):p.647-54]。循環中の心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の濃度は、BNPよりも約50~100倍高い[Pandey,K.N.,Peptides,2005.26(6):p.901-32]。したがって、増加したANPによって反映される生物学的シグナルは、病理生理学的に、したがって診断的にBNPのシグナルよりもさらに重要である可能性がある。それにもかかわらず、ANPとその前駆体の診断性能についてはほとんど知られていない [Cowie,M.R.,et al.,Lancet,1997.350(9088):p.1349-53]。成熟ANPは、前駆体N末端proANP(NTproANP)から誘導され、これは、成熟ペプチドよりも循環系で著しく安定しているため、より信頼性の高い分析物であると考えられている[Vesely,D.L.,IUBMB Life,2002.53(3):p.153-[Pandey,K.N.,Peptides,2005.26(6):p.901-32]。それにもかかわらず、NTproANPはさらなるフラグメント化の影響を受ける可能性があるという事実のために[Cappellin,E.,et al.,Clin Chim Acta,2001.310(1):p.49-52]、中間領域proANP(MRproANP)の測定のためのイムノアッセイには利点があり得る[Morgenthaler,N.G.,et al.,2004.50(1):p.234-6]。
【0315】
脳性ナトリウム利尿ペプチド(プレproBNP)の134アミノ酸前駆体ペプチドの配列は、配列番号7に示されている。proBNPは、pro-proBNPのアミノ酸残基27~134に関連している。proBNPの配列は、配列番号8に示されている。proBNPは、N末端proBNP(NTproBNP)と成熟BNPに切断される。NTproBNPは、アミノ酸残基27~102を含み、その配列は配列番号9に示されている。配列番号10は、プレproBNPペプチドのアミノ酸残基103~134を含むBNPの配列を示す。
配列番号7:プレproBNPのアミノ酸配列番号):
MDPQTAPSRA LLLLLFLHLA FLGGRSHPLG SPGSASDLET SGLQEQRNHL QGKLSELQVE QTSLEPLQES PRPTGVWKSR EVATEGIRGH RKMVLYTLRA PRSPKMVQGS GCFGRKMDRI SSSSGLGCKV LRRH
配列番号8:(proBNPのアミノ酸配列):
HPLGSPGSAS DLETSGLQEQ RNHLQGKLSE LQVEQTSLEP LQESPRPTGV WKSREVATEG IRGHRKMVLY TLRAPRSPKM VQGSGCFGRK MDRISSSSGL GCKVLRRH
配列番号9:( NTproBNPのアミノ酸配列):
HPLGSPGSAS DLETSGLQEQ RNHLQGKLSE LQVEQTSLEP LQESPRPTGV WKSREVATEG IRGHRKMVLY TLRAPR
配列番号10:(BNPのアミノ酸配列):
SPKMVQGSGC FGRKMDRISS SSGLGCKVLR RH
(BNP Uniprot番号:P16860)
【0316】
特に好ましい実施形態では、NTproBNPは、proBNPのレベルを決定するために測定される。したがって、proBNPフラグメントの長さは、好ましくは少なくとも12個のアミノ酸、好ましくは20個のアミノ酸より多く、より好ましくは40個アミノ酸より多い。
【0317】
これらの様々な形態のproBNP及びそれらフラグメントの決定は、例えば、分子の特定の部分に指向された抗体又は他の親和性試薬を用いることによって、あるいは質量分析を使用してタンパク質の一部分を測定することによる分子の存在及び/又は量を決定することによって、これらの分子の特定のサブ領域を測定及び/又は検出することも包含する。本明細書に記載の「proBNPペプチド又はフラグメント」のうちの任意の1つ以上を本発明で用いることができる。
【0318】
対象の試料中のproBNPのレベルは、本明細書に記載されるようにイムノアッセイによって決定することができる。本明細書で使用される場合、「B型ナトリウム利尿ペプチド」又は「proBNP」をコードするリボ核酸又はデオキシリボ核酸のレベルも決定することができる。proBNP及びそのフラグメント(複数可)を決定するための方法は、当業者に既知であり、例えば、Thermo Fisher Scientific/B・R・A・H・M・S GmbHから得られた製品を使用することによる。
【0319】
本発明の文脈において、「proANP又はそのフラグメント(複数可)のレベルを決定する」などは、proANP又はそのフラグメントを決定する任意の手段を指すことが理解される。フラグメントがproANP又はそのフラグメントのレベルの明白な決定を可能にする限り、フラグメントは任意の長さ、例えば少なくとも約5、10、20、30、40、50、又は100個のアミノ酸を有し得る。本発明の特に好ましい態様では、「proANPのレベルを決定すること」は、中間領域proANP(MRproANP)のレベルを決定することを指す。MRproANPは、proANPのフラグメント及び/又は領域である。
【0320】
「心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)」のアミノ酸配列は、配列番号13に示されている。プレproANPの153アミノ酸の配列は、配列番号11に示されている。N末端シグナルペプチド(25個のアミノ酸)及び2つのC末端アミノ酸(127/128)が切断されると、proANP(配列番号12)が放出される。ANPは、前駆体プロホルモンproANPのC末端からの残基99~126を含む。このプロホルモンは、ANP(1~28)又はα-ANPとしても知られる成熟28アミノ酸ペプチドANP、及びアミノ末端フラグメントANP(1~98)(NTproANP、配列番号14)に切断される。中間領域proANP(MRproANP)は、proANPの少なくともアミノ酸残基53~90を含むNTproANP又はその任意のフラグメント(配列番号15)として定義される。C末端の2つのアルギニン残基(プレproANPの152位と153位、配列番号11)は、プレproANPをコードする遺伝子の別の対立遺伝子には存在しないため、プレproANPは残基1~151のみを含み得る。もちろん、これはプレproANPのそれぞれのフラグメント、特にproANPにも当てはまる。
【0321】
「心房性ナトリウム利尿ペプチド」又は「proANP」は、128個のアミノ酸を含むプロホルモンを指す。本明細書で使用される場合、128アミノ酸を含むプロホルモン(proANP)のC末端部分の28個のアミノ酸(99~126)を含むペプチドは、実際のホルモンANPと呼ばれる。そのプロホルモンproANPからANPが放出されると、等モル量のproANPの残りのより大きな部分ペプチドである98個のアミノ酸からなるN末端proANP(NTproANP、proANP(1~98))が循環系に放出される。NTproANPは非常に長い半減期と安定性を備えているため、NTproANPは、診断、経過観察、及び治療管理のための検査パラメータとして使用でき、例えば、Lothar Thomas (Editor),Labor und Diagnose,5th expanded ed.,sub-chapter 2.14 of chapter 2,Kardiale Diagnostik,pages 116-118、及びWO2008/135571を参照されたい。proANPのレベルは、好ましくは、対象の血漿又は血清中で測定される。
【0322】
ナトリウム利尿ペプチドファミリーのメンバーである「心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)」は、利尿及びナトリウム利尿、ならびに動脈血圧(BP)の低下を含むいくつかの生理学的パラメータを調節する。それは主に心臓の心房で産生され、循環中のナトリウム利尿ペプチドの98%を構成する(Vesely DL.Life 2002;53:153-159)。ANPは、その前駆体である前駆体のプロホルモンの切断から誘導され、プロホルモンは、成熟ペプチドよりも循環系で著しく安定している中間領域proANP(MRproANP)と呼ばれる前駆体ホルモンの中間領域フラグメント(NTproANPのアミノ酸53~90)は、以前のイムノアッセイで使用されたproANPのN末端又はC末端のエピトープとは異なり、エキソプロテアーゼによる分解に対して比較的耐性があり得る(Morgenthaler NG et al.Clin Chem 2004;50:234-236;Gerszten RE et al.2008.Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol)。
配列番号11(プレproANPのアミノ酸配列、153AS):
MSSFSTTTVS FLLLLAFQLL GQTRANPMYN AVSNADLMDF KNLLDHLEEK MPLEDEVVPP QVLSEPNEEA GAALSPLPEV PPWTGEVSPA QRDGGALGRG PWDSSDRSAL LKSKLRALLT APRSLRRSSC FGGRMDRIGA QSGLGCNSFR YRR
配列番号12:(proANPのアミノ酸配列):
NPMYNAVSNA DLMDFKNLLD HLEEKMPLED EVVPPQVLSE PNEEAGAALS PLPEVPPWTG EVSPAQRDGG ALGRGPWDSS DRSALLKSKL RALLTAPRSL RRSSCFGGRM DRIGAQSGLG CNSFRY
配列番号13:(ANPのアミノ酸配列、プレproANPのAS124~151):
SLRRSSCFGG RMDRIGAQSG LGCNSFRY
配列番号14:(NTproANPのアミノ酸配列、プレproANPのAS26~123):
NPMYNAVSNA DLMDFKNLLD HLEEKMPLED EVVPPQVLSE PNEEAGAALS PLPEVPPWTG EVSPAQRDGG ALGRGPWDSS DRSALLKSKL RALLTAPR
配列番号15:(MRproANPのアミノ酸配列、proANPのAS53~90):
PEVPPWT GEVSPAQRDG GALGRGPWDS SDRSALLKSK L
(心房性ナトリウム利尿ペプチドUniprot番号:P01160)
【0323】
これらの様々な形態のproANP及びそのフラグメントの決定は、例えば、分子の特定の部分に指向された抗体又は他の親和性試薬を用いることによって、あるいは質量分析を使用してタンパク質の一部分を測定することによる分子の存在及び/又は量を決定することによって、これらの分子の特定のサブ領域を測定及び/又は検出することも包含する。本明細書に記載の「proANPペプチド又はフラグメント」のうちの任意の1つ以上を本発明で用いることができる。
【0324】
対象の試料中のproANPのレベルは、本明細書に記載されるようにイムノアッセイによって決定することができる。本明細書で使用される場合、「心房性ナトリウム利尿ペプチド」又は「proANP」をコードするリボ核酸又はデオキシリボ核酸のレベルも決定することができる。proANP及びそのフラグメント(複数可)を決定するための方法は、当業者に既知であり、例えば、Thermo Fisher Scientific/B・R・A・H・M・S GmbHから得られた製品を使用することによる。
【0325】
「フラグメント」という用語は、より大きなタンパク質又はペプチドから誘導可能なより小さなタンパク質又はペプチドを指し、したがって、より大きなタンパク質又はペプチドの部分配列を含む。該フラグメントは、より大きなタンパク質又はペプチドからの1つ以上のアミノ酸の欠失によって、より大きなタンパク質又はペプチドから誘導可能である。本明細書に記載のバイオマーカーの「フラグメント」は、好ましくは、長さが少なくとも6個のアミノ酸、最も好ましくは、長さが少なくとも12個のアミノ酸残基のフラグメントに関する。このようなフラグメントは、好ましくは、本明細書に記載されるような免疫学的アッセイで検出可能である。
【0326】
したがって、本発明の方法及びキットはまた、proADM、proBNP及び/又はproANPに加えて、少なくとも1つのさらなるバイオマーカー、マーカー、臨床スコア、及び/又はパラメータを決定することも含み得る。
【0327】
本明細書で使用される場合、パラメータは、特定のシステムを定義するのを助けることができる特性、特徴、又は測定可能な要因である。パラメータは、疾患/障害/臨床状態リスク、好ましくは臓器機能障害(複数可)などの健康及び生理学に関する評価、有害事象のリスク評価、又は遠隔患者管理の必要性もしくは拡張性にとって、重要な要素である。さらに、パラメータは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、又は治療的介入に対する薬理学的反応又は疾患もしくは健康状態、特に心血管疾患を患っている患者の疾患もしくは健康状態の指標として客観的に測定及び評価される特性として定義される。
【0328】
例示的なパラメータは、年齢、体重、性別、体重指数、性別、喫煙、白血球数、ナトリウム、カリウム、温度、民族的背景、血中クレアチニン、左心室駆出率(LVEF)、右心室駆出率(LVEF)、NYHA分類、MAGGIC心不全リスクスコア、ACC/AHA分類、心不全についてのリスクスコア(例えば、CHARMリスクスコア、CORONAリスクソコア、I-Preserveスコア、ADHERE分類及び回帰ツリー(CART)モデル、EFFECTリスクスコア)、医学的処置の種類、医学的処置の頻度、血圧(収縮期/拡張期)、心拍数、ECGによる心リズム、酸素分圧、末梢血中酸素量(SpO2)、頸静脈圧、末梢浮腫又はオルソプネアの存在、右心室隆起の存在、自己評価された健康状態(スケール)、心血管疾患進行の自己評価された症状(痛み、息切れ、灼熱感、けいれん、不快感、膨満感、疼き、消化不良、立ちくらみ、吐き気、しびれ、うずき、痛み、圧迫、息切れ、発汗、めまい、圧迫、緊張、嘔吐、不規則な心拍、動悸、胸のドキドキ、倦怠感、脱力感、末梢浮腫の存在を含む)、腎機能を示すパラメータ、好ましくはクレアチニンクリアランス率、糸球体濾過量(GFR)、又はクレアチニンと尿素のうちの少なくとも1つの老廃物のレベル、又は肝機能を示すパラメータからなる群から選択することができる。
【0329】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの臨床パラメータは、好ましくは、年齢、体重、肥満度指数、性別、民族的背景、血中クレアチニン、左心室駆出率(LVEF)、NYHA分類MAGGIC心不全リスクスコア、医学的処置の状態、血圧(収縮期/拡張期)、心拍数、ECGによる心リズム、SpO2、自己評価による健康状態(スケール)、心血管疾患進行の自己評価された症状又は糸球体濾過量(GFR)である。
【0330】
本明細書で使用される場合、「年齢」は、個人が何年も生きてきた時間の長さを指す。
【0331】
本明細書で使用される場合、「肥満度指数(BMI)」は、対象の質量(体重)及び身長から導出される値である。BMIは、対象の体重、すなわち、体重を被験者の身長の2乗で割ったものとして定義され、キログラム単位の体重とメートル単位の身長から得られるkg/m2の単位で普遍的に表される。BMIは、異なるBMIカテゴリの輪郭線又は色を使用して質量と高さの関数としてBMIを表示する表又はチャート(参照値)を使用して決定してもよく、2つの異なる測定単位を使用してもよい。BMIは、個人の組織量(筋肉、脂肪、及び骨)を定量化し、その値に基づいてその人を低体重、正常体重、体重過多、又は肥満に分類する試みである。一般的に受け入れられているBMIの範囲は、低体重:18.5未満、通常の体重:18.5~25、体重過多:25~30、肥満:30を超える。
【0332】
本明細書で使用される場合、「体重」は、kg単位の対象の質量を指す。本発明の文脈において、正常体重は、Devin式又はHamwi法に従って理論的に計算することができる。Hamwi法によると、男性の理想的な体重は、1.5mを超えると2.54cmごとに48kg+2.7kgである。女性の場合、1.5mを超えると2.54cmごとに45kg+2.3kgである。これらの正常値より下又は上の値は、重要な主題となるリスクを高め、及び/又は疾患の進行を示す。
【0333】
本明細書で使用される場合、「糸球体濾過量(GFR)」という用語は、腎臓が血液を濾過し、過剰な老廃物及び体液を除去する速度を指し、残りの腎機能を測定するための計算を提供する。通常、GFRはヒトで直接測定されるのではなく、クリアランス測定又は濾過マーカーの血清レベル、主に糸球体濾過によって除去される外因性又は内因性溶質から評価される。GFRは、例えば、人のサイズ、年齢、性別、及び/又は人種を血清クレアチニンレベルと比較することによって、当技術分野において周知の数式を使用して計算することができる。
【0334】
いくつかの実施形態では、GFRは、Cockroft et al.1976に公開されている推定クレアチニンクリアランス率(eCCr)の式を使用して計算される。
【数1】
【0335】
ここで、wtはキログラム(kg)で表した重量を指し、Scrはmg/100mlで表した血清クレアチニンレベルを指す。患者が女性の場合、結果の値に0.85の定数を掛けることが好ましい。
【0336】
血清クレアチニンをμmol/Lで測定する場合、式は次のように適合させることが好ましい。
【数2】
【0337】
ここで、wtはキログラム(kg)で表した重量を指し、Scrはμmol/Lで表した血清クレアチニンレベルを指す。結果として得られる値には、患者が男性の場合は定数1.23を掛け、患者が女性の場合は定数1.04を掛けることが好ましい。該実施形態は、好ましくは、コッククロフト・ゴールト(Cockroft-Gault)に基づくGFRと呼ばれる。
【0338】
いくつかの実施形態では、GFRは、Levey、ASら(2009)表2を参照されたい)に公開されている慢性腎臓病疫学コラボレーション(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)(CKD-EPI)方程式と呼ばれる式を使用して計算される。
【表1】
【0339】
該実施形態は、好ましくは、CKD-EPIに基づくGFRと呼ばれる。
【0340】
本明細書で使用される場合、糸球体濾過量(GFR)という用語は、上記の推定に限定されず、例えば、Levey et al.2017及びそこに引用されている参考文献に記載されている任意の推定又は測定技術を等しく使用できることを理解されたい。
【0341】
特定の実施形態では、少量の血液試料を使用して腎機能を監視する。本明細書で使用される場合、「腎機能」という用語は、本明細書に記載の試験もしくはアッセイによって決定されるか、又は当技術分野において周知である、排泄機能を含む患者の腎臓の健康状態を説明するために使用される。腎機能は、いくつかの実施形態では、糸球体濾過量を決定することによって、クレアチニンクリアランス率を決定することによって、又はクレアチニン及び尿素のうちの少なくとも1つの老廃物のレベルを決定することによって監視され得る。
【0342】
いくつかの実施形態では、腎機能は、標準的な方法を使用して試料中のクレアチニン、血中尿素窒素(BUN)、又はその両方のレベルを決定することによって監視される(例えば、Alfawassermann ACE Clinical Chemistry System Operator’s Manual,August 2005 revisionを参照)。腎機能が正常である場合、血中クレアチニンレベルは、男性では約0.6~約1.2mg/dL又は約53~約106μmol/Lの範囲内であり、女性では、約0.5~約1.1mg/dL又は約44~約97μmol/Lの範囲内であり、10代では、約0.5~約1.0mg/dLの範囲内であり、小児では、約0.3~約0.7mg/dLの範囲内であり、新生児では、約0.3~約1.2mg/dLの範囲内である。腎機能が正常である場合、BUNとクレアチニンとの比率は、生後12ヶ月以上の患者では約10:1~約20:1であり、生後12ヶ月未満の患者では最大約30:1である。
【0343】
いくつかの実施形態では、60未満、好ましくは50未満、より好ましくは30未満のGFRは、腎機能障害、すなわち腎臓が適切に機能していないことを示す。
【0344】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のバイオマーカーのレベルを決定することに加えて、MAGGIC心不全リスクスコアを使用して、遠隔患者管理を処方するか否かを決定する。
【0345】
MAGGIC心不全リスクスコアは、Pocock et al.2013によって導入され、13の独立した臨床パラメータ(年齢、性別、糖尿病、COPD併存疾患、過去18ヶ月以内の心不全の診断、喫煙状態、NYHA分類、ベータ遮断薬、ACEi/ARB投薬、BMI、収縮期血圧、クレアチニン及び駆出率)を考慮に入れる。慢性心不全におけるメタ分析グローバルグループ(Meta-Analysis Global Group in Chronic(MAGGIC)heart failure)リスクスコアは、心不全に罹患した患者の死亡率などの有害事象の予後を支援するために記載されている。しかしながら、MAGGIC心不全は、本明細書に記載されているバイオマーカー測定と組み合わせると、遠隔患者管理の処方に関する療法決定の信頼性を高めるのにさらに役立つ可能性がある。一般に、MAGGIC心不全リスクスコアのスコアが低いと、患者が遠隔患者管理から安全に除外され得るバイオマーカーの低ベネフィットレベルが拡大する可能性がある。
【0346】
本明細書で使用される場合、「マーカー」、「代替」、「予後マーカー」、「因子」、「バイオマーカー」又は「生物学的マーカー」などの用語は互換的に使用され、疾患/障害/臨床状態のリスクなどの健康関連ならびに生理学的関連評価のための指標として機能する。測定可能かつ定量可能な生物学的マーカー(例えば、特定の酵素又はそのフラグメントの濃度、特定のホルモン又はそのフラグメントの濃度、集団における特定の遺伝子表現型の分布、生物学的物質又はそのフラグメントの存在)に関するものである。さらに、バイオマーカーは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、又は治療的介入に対する薬理学的反応の指標として客観的に測定及び評価される特性として定義される。バイオマーカーは、生体試料(血液、尿、組織検査など)で測定することもあり、人から取得した記録(血圧、ECG、ホルター)のこともあり、又は画像検査(心エコー図、CTスキャン)のこともある (Vasan et al.2006,Circulation 113:2335-2362)。バイオマーカーは、環境要因への曝露のレベル又はタイプ、遺伝的感受性、曝露に対する遺伝的反応、無症候性又は臨床的疾患のバイオマーカー、又は療法への応答の指標を含む、様々な健康又は疾患の特性を示すことができる。したがって、バイオマーカーを考える簡単な方法は、疾患の特徴(危険因子もしくはリスクバイオマーカー)、病状(前臨床もしくは臨床)、又は疾患率(進行)の指標としてである。したがって、バイオマーカーは、先行バイオマーカー(病気を発症するリスクを特定する)、スクリーニングバイオマーカー(無症候性疾患のスクリーニング)、診断バイオマーカー(顕性疾患を認識する)、病期分類バイオマーカー(疾患の重症度を分類する)、又は予後バイオマーカー(将来的な再発及び療法への応答、及び療法の有効性のモニタリングを含む、将来の疾患経過を予測する)。バイオマーカーは、代替エンドポイントとしても機能し得る。代替エンドポイントは、関心のある真の結果を測定する代わりに、療法の安全性及び有効性を評価するための臨床試験の結果として使用できるエンドポイントである。根底にある原理は、代替エンドポイントの変更は、関心のある転帰の変更と密接に関連しているということである。代替エンドポイントには、評価のために大規模な臨床試験を必要とする罹患率及び死亡率などのエンドポイントよりも短い時間枠で、かつより少ない費用で収集できるという利点を有する。代替エンドポイントの追加の値には、それらが着目した曝露/介入に近く、より遠い臨床イベントよりも因果関係を関連付けるのが簡単であり得るという事実を含む。代替エンドポイントの重要な欠点は、着目した臨床転帰が(代替エンドポイントに加えて)多くの要因の影響を受ける場合、残余交絡(residual confounding)が代替エンドポイントの有効性を低下させ得るということである。着目した転帰に対する曝露又は介入の影響の少なくとも50%を説明できる場合、代替エンドポイントの有効性はより高いことが示唆されている。バイオマーカーの定量化は、それぞれのリボ核酸、デオキシリボ核酸、タンパク質、ペプチド又はそのフラグメントを測定することによって実行することができる。
【0347】
当該対象の少なくとも1つのさらなるバイオマーカー及び/又はパラメータは、該試料中の乳酸塩のレベル、クレアチンのレベル、ヘモグロビンのレベル、ヘマトクリットのレベル、白血球のレベル、血小板のレベル、ナトリウムのレベル、カリウムのレベル、可溶型fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)、ヒストンH2A、ヒストンH2B、ヒストンH3、ヒストンH4、アルギニンバソプレシン(AVP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、ミオグロビン、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)、トロポニン、心筋トロポニンT(cnTNT)、C反応性タンパク質(CRP)、膵石タンパク質(PSP)、骨髄細胞に発現するトリガー受容体1(TREM1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-1、インターロイキン-24(IL-24)、インターロイキン-22(IL-22)、インターロイキン(IL-20)、他のIL、プレセプシン(sCD14-ST)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、アルファ-1-アンチトリプシン、マトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP2)、メタロプロテイナーゼ2(MMP8)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、マトリックスメタロプロテイナーゼ7(MMP7、胎盤増殖因子(PlGF)、クロモグラニンA、S100Aタンパク質、S100Bタンパク質及び腫瘍壊死因子α(TNFα)、ネオプテリン、アルファ-1-アンチトリプシン、プロアルギニンバソプレシン(AVP、proAVP、又はコペプチン)、エンドセリン-1、プロカルシトニン(PCT)、CCL1/TCA3、CCL11、CCL12/MCP-5、CCL13/MCP-4、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17/TARC、CCL18、CCL19、CCL2/MCP-1、CCL20、CCL21、CCL22/MDC、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L3、CCL4、CCL4L1/LAG-1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CX3CL1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CXCL2/MIP-2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7/Ppbp、CXCL9、IL8/CXCL8、XCL1、XCL2、FAM19A1、FAM19A2、FAM19A3、FAM19A4、FAM19A5、CLCF1、CNTF、IL11、IL31、IL6、レプチン、LIF、OSM、IFNA1、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA2、IFNA4、IFNA7、IFNB1、IFNE、IFNG、IFNZ、IFNA8、IFNA5/IFNaG、IFNω/IFNW1、BAFF、4-1BBL、TNFSF8、CD40LG、CD70、CD95L/CD178、EDA-A1、TNFSF14、LTA/TNFB、LTB、TNFa、TNFSF10、TNFSF11、TNFSF12、TNFSF13、TNFSF15、TNFSF4、IL18、IL18BP、IL1A、IL1B、IL1F10、IL1F3/IL1RA、IL1F5、IL1F6、IL1F7、IL1F8、IL1RL2、IL1F9、IL33、又はこれらフラグメントからなる群から選択され得る。
【0348】
好ましい実施形態では、さらなるバイオマーカーは、ミオグロビン、トロポニンT(cTnT)及びI(cTnI)、クレアチニンキナーゼMB(CK-MB)、FABP、GDF-15、ST-2、プロカルシトニン(PCT)、プロエンドセリン-1を含むC反応性タンパク質(CRP)、及びC末端プロエンドセリン-1(CTproET-1)を含むそのフラグメント、ビッグエンドセリン-1、エンドセリン-1、NT-プロエンドセリン-1、proANP及び中間領域の心房性ナトリウム利尿ペプチド(MRproANP)、N末端proANP(NTproANP)、ANP、プロバソプレッシン及びC末端プロ-アルギニンバソプレッシンペプチド(CTproAVP)、バソプレッシン、ニューロフィジンII、proBNP、及びBNPとN末端proBNP(NTproBNP)を含むそのフラグメントなどの心血管疾患の診断及び/又は予後に関連する、「心臓血管マーカー」である。
【0349】
好ましい実施形態では、追加のバイオマーカーは「腎機能マーカー」であり、これは、腎機能、又は急性腎障害(AKI)又はクレアチニンなどの慢性腎疾患(CKD)を含む腎疾患の診断及び/又は予後に関連するものであり、クレアチニン、血清クレアチニン、尿素、尿酸、シスタチンC、β-トレースタンパク質(BTB)、イヌリン、イオヘキソール、放射性マーカー、タンパク尿、尿アルブミン、腎障害マーカー-1(KIM-1)、好中球ゲラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、インターロイキン-18、肝臓型脂肪酸結合タンパク質(L-FABP)、非対称ジメチルアルギニン(ADMA)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、グルタチオン-Sトランスフェラーゼ(GST)、N-アセチル-β-グルコサミニダーゼ(NAG)、アラニンアミノペプチダーゼ(AAP)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、メタロプロテイナーゼ-2の組織阻害剤(TIMP-2)及び/又はインスリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBPT)が挙げられる。
【0350】
腎機能に関連する好ましいバイオマーカーに関するさらなるレビューについては、当業者はまた、Krstic et al.2016又はGowda et al.2010などの公開されたレビューに依拠することができる。
【0351】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、患者又は対象から得られるかあるいは単離される、生物学的試料である。本明細書で使用される「試料」は、例えば、患者などの関心対象の診断、予後診断、療法ガイダンス、層別化、モニタリング、又は制御もしくは評価の目的で得られた体液又は組織の試料を指すことがある。好ましくは、試料は、本明細書では、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰、胸水、細胞、細胞抽出物、組織試料、組織生検、便試料などの体液の試料である。特に、試料は、血液、血漿、血清、又は尿である。
【0352】
本発明の実施形態は、第1の試料の単離及び第2の試料、任意に「第3の試料」、「第4の試料」などの単離を指す。本発明の方法の文脈において、「第1の「試料」及び「第2の試料」、ならびに可能な「第3の試料」又は「第4の試料」などは、本発明の方法で使用される試料の単離の時間的順序の相対的決定に関連する。本方法を特定する際に第1の試料及び第2の試料という用語が使用されるとき、これらの試料は、採取された試料の数の絶対的な決定としてみなされるものではない。したがって、第1及び/又は第2の試料の単離前、最中又は後に、又は第1もしくは第2の試料間で、患者から追加の試料を単離してもよく、これらの追加の試料は、本発明の方法で使用されてもされなくてもよい。したがって、第1の試料は、以前に得た任意の試料と見なしてもよい。第2の試料は、任意のさらなる試料又はその後の試料と見なしてもよい。
【0353】
本発明の文脈における「血漿」は、遠心分離後に得られる抗凝固剤を含有する血液の実質的に無細胞の上清である。抗凝血剤の例には、EDTA又はクエン酸塩などのカルシウムイオン結合化合物、及びヘパリン酸塩又はヒルジンなどのトロンビン阻害剤が含まれる。無細胞血漿は、抗凝固処理された血液(例えば、クエン酸塩処理された、EDTA又はヘパリン処理された血液)を、例えば、2000~3000gで少なくとも15分間遠心分離することによって得ることができる。
【0354】
本発明の文脈における「血清」は、血液を凝固させた後に収集される全血の液体画分である。凝固した血液(血餅)が遠心分離されると、血清が上清として得られ得る。
【0355】
本明細書で使用される場合、「尿」は、排尿(又は排尿)と呼ばれる過程を通して腎臓によって分泌され、尿道を通して排泄される体の液体生成物である。
【0356】
本発明によれば、proADM、proBNP及び/又はproANP及び/又は任意に他のマーカーもしくは臨床スコアが、心血管疾患と診断された患者の療法ガイダンス、療法層別化及び/又は療法制御のためのマーカーとして、ならびに任意に、心血管疾患、好ましくは心不全と診断された患者の健康における有害事象の予後、診断、リスク評価及びリスク層別化のためのマーカーとして使用される。
【0357】
当業者は、上記のproADM、proBNP及び/又はproANP分子、もしくはそのフラグメントもしくは変異型のうちのいずれか1つ、ならびに標準分子の生物学的実践に従った本発明の他のマーカーの識別、測定、決定、及び/又は定量化のための手段を得るかあるいは開発することが可能である。
【0358】
proADM又はそのフラグメントのレベル、ならびに本発明の他のマーカーのレベルは、マーカーの濃度を信頼して決定する任意のアッセイによって決定することができる。特に、質量分析(MS)及び/又はイムノアッセイを添付の実施例に例示されているように用いることができる。本明細書で使用される場合、イムノアッセイは、抗体もしくは抗体結合フラグメントもしくは免疫グロブリンの使用を通して溶液中の巨大分子/ポリペプチドの存在又は濃度を測定する生化学的試験である。
【0359】
本発明の文脈において使用されるproADM、proBNP及び/又はproANP又は他のマーカーを決定する方法が、本発明において意図される。例として、質量分析法(MS)、発光イムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光及び蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、発光ベースのビーズアレイ、磁気ビーズベースのアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、即時免疫クロマトグラフィーストリップ試験などの迅速試験フォーマット、希土類クリプテートアッセイ、ならびに自動化されたシステム/分析器からなる群から選択される方法を用いることができる。
【0360】
抗体認識に基づいたproADM、proBNP及び/又はproANPならびに任意の他のマーカーの決定は、本発明の好ましい実施形態である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を指す。本発明によると、抗体は、モノクローナル抗体ならびにポリクローナル抗体であってもよい。特に、少なくともproADM、proBNP及び/又はproANPもしくはそのフラグメントに特異的に結合する抗体が使用される。
【0361】
目的の分子、例えばproADM、proBNP及び/又はproANP、もしくはそのフラグメントに対するその親和性が、目的の分子を含有する試料中に含まれる他の分子に対するよりも、少なくとも50倍高い、好ましくは100倍高い、最も好ましくは少なくとも1000倍高い場合、抗体は特異的であると見なされる。所与の特異性を有する抗体をどのように開発しそして選択するかは、当該技術分野において周知である。本発明の文脈において、モノクローナル抗体が好ましい。抗体又は抗体結合フラグメントは、本明細書に定義されたマーカー又はそのフラグメントに特異的に結合する。特に、抗体又は抗体結合フラグメントは、proADM、proBNP及び/又はproANPの本明細書で定義されたペプチドに結合する。したがって、本明細書に定義されたペプチドはまた、抗体が特異的に結合するエピトープであり得る。さらに、ADM又はproADMに、特にMRproADMに、proBNPに、特にNTproBNPに、及び/又はproANPに、特にMRproANPに特異的に結合する抗体又は抗体結合フラグメントが使用される。
【0362】
さらに、本発明の方法及びキットでは、proADMに、proBNPに、及び/又はproANPに、もしくはそのフラグメントに、及び任意に本発明の他のマーカーに特異的に結合する抗体又は抗体結合フラグメントが使用される。例示的なイムノアッセイは、発光イムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光及び蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、発光ベースのビーズアレイ、磁気ビーズベースのアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、迅速試験フォーマット、希土類クリプテートアッセイであってもよい。さらに、ポイントオブケア試験及び例えば免疫クロマトグラフィーストリップ試験などの迅速試験形式に好適なアッセイを用いることができる。KRYPTORアッセイなどの自動化されたイムノアッセイも、意図される。
【0363】
あるいは、抗体の代わりに、proADMに、proBNPに、及び/又はproANPを特異的及び/又は選択的に認識する他の捕捉分子又は分子足場が、本発明の範囲に包含され得る。本明細書では、「捕捉分子」又は「分子足場」という用語は、試料からの標的分子又は目的の分子、すなわち分析物(例えば、proADM、proADM、MRproADM、proBNP、NTproBNP、proANP、及び/又はMRproANP)に結合するために使用され得る分子を含む。したがって、捕捉分子は、空間的にも、表面電荷、疎水性、親水性、ルイス供与体及び/又は受容体の存在又は非存在などの表面の特徴に関しても適切に成形され、標的分子又は目的の分子に特異的に結合する必要がある。これにより、結合は、例えば、イオン、ファンデルワールス力、パイ-パイ、シグマ-パイ、疎水性もしくは水素結合相互作用、又は捕捉分子もしくは分子足場と標的分子もしくは目的の分子との間の先述の相互作用又は共有結合性相互作用のうちの2つ以上の組み合わせによって媒介され得る。本発明の文脈において、捕捉分子又は分子足場は、例えば、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、ペプチド、及び糖タンパク質からなる群から選択され得る。捕捉分子又は分子足場は、例えば、アプタマー、DARピン(Designed Ankyrin Repeat Protein)を含む。アフィマーなどが含まれる。
【0364】
本発明のある特定の態様では、方法は、以下の工程:
a)試料を
i.proADM、proBNP及び/又はproANPの第1のエピトープに特異的な第1の抗体又はその抗原結合フラグメントもしくは誘導体と、
ii.proADM、proBNP及び/又はproANPの第2のエピトープに特異的な第2の抗体又はその抗原結合フラグメントもしくは誘導体と、に接触させる工程と、
b)2つの抗体又はその抗原結合フラグメントもしくは誘導体の、proADM、proBNP及び/又はproANPへの結合を検出する工程と、を含むイムノアッセイを含む。
【0365】
好ましくは、一方の抗体を標識し、他方の抗体を固相に結合させるか、又は固相に選択的に結合させることができる。アッセイの特に好ましい態様では、抗体のうちの一方が標識される一方で、他方の抗体は、固相に結合されるか、又は固相に選択的に結合され得るかのいずれかである。第1の抗体及び第2の抗体は、液体反応混合物中に分散して存在することができ、蛍光又は化学発光消光又は増幅に基づく標識系の一部である第1の標識成分が、第1の抗体に結合し、該標識系の第2の標識成分が、第2の抗体に結合し、これにより、検出される両方の抗体のproADM、proBNP及び/又はproANPもしくはそのフラグメントへの結合後、測定溶液中の得られたサンドイッチ複合体の検出を可能にする測定可能なシグナルが発生する。標識系は、希土類クリプテート又はキレートを、特にシアニンタイプの蛍光又は化学発光染料と組み合わせて含むことができる。
【0366】
好ましい実施形態では、この方法は異種サンドイッチイムノアッセイとして実施され、ここで抗体のうちの1つは任意に選択された固相、例えば、被覆試験管(例えば、ポリスチロール試験管;被覆管;CT)の壁上、又は例えば、ポリスチロールから構成されたマイクロタイタープレート上に、又は例えば磁性粒子などの粒子に固定化され、これにより、他の抗体は、検出可能な標識に似ているか又は標識への選択的結合を可能にする基を有し、かつ形成されたサンドイッチ構造の検出に役立つ。適切な固相を用いた一時的な遅延又はその後の固定化も可能である。
【0367】
本発明による方法は、均質な方法としてさらに具体化することができ、検出される抗体/複数の抗体と、マーカー、proADM、proBNP及び/又はproANPもしくはそのフラグメントと、によって形成されているサンドイッチ複合体が、液相中で懸濁されたままで検出される。この場合、2つの抗体が使用されるとき、両方の抗体が検出系の一部で標識され、それが、両方の抗体が単一のサンドイッチに統合される場合にシグナルの発生又はシグナルの誘発をもたらすことが好ましい。そのような技術は、特に蛍光増強又は蛍光消光検出方法として具体化されるべきである。特に好ましい態様は、例えば、US4882733、EP0180492、又はEP0539477、及びそれらで引用された先行技術に記載のものなど、対で使用される検出試薬の使用に関する。このようにして、反応混合物中の単一の免疫複合体中に直接両方の標識成分を含む反応生成物のみが検出される測定が可能になる。例えば、そのような技術は、上記で引用された出願の教示を実装する、商標名TRACE(登録商標)(Time Resolved Amplified Cryptate Emission)、又はKRYPTOR(登録商標)の下で提供されている。したがって、特に好ましい態様では、本明細書で提供される方法を実行するために診断デバイスが使用される。例えば、proADM、proBNP及び/又はproANPもしくはそのフラグメントのレベル、及び/又は本明細書で提供される方法の任意のさらなるマーカーのレベルが決定される。特に好ましい態様では、診断デバイスは、KRYPTOR(登録商標)又は関連する自動化システムである。
【0368】
本発明のマーカー、例えばproADM、proBNP及び/又はproANPもしくはそのフラグメント、又は他のマーカーのレベルは、質量分析(MS)に基づく方法によっても決定することができる。このような方法は、該生体試料又は例えば該試料からのタンパク質消化物(例えば、トリプシン消化物)中の例えばproADM、proBNP及び/又はproANPのうちの1つ以上の修飾又は未修飾フラグメントペプチドの存在、量又は濃度を検出することと、任意にクロマトグラフィー方法を用いて試料を分離し、調製され任意に分離された試料にMS分析を施すことと、含んでもよい。例えば、特にproADM、proBNP及び/又はproANPもしくはそのフラグメントの量を決定するために、選択反応モニタリング(SRM)、多重反応モニタリング(MRM)又は並列反応モニタリング(PRM)質量分析をMS分析に使用することができる。
【0369】
本明細書において、「質量分析」又は「MS」という用語は、化合物をそれらの質量によって同定するための分析技術を指す。質量分析の質量分解及び質量決定能力を向上するために、試料は、MS分析前に処理され得る。したがって、本発明は、免疫濃縮技術と組み合わせることができるMS検出方法、試料調製に関する方法及び/又はクロマトグラフィー方法、好ましくは液体クロマトグラフィー(LC)、より好ましくは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又は超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)に関する。試料調製方法は、溶解、分画、ペプチドへの試料の消化、枯渇、濃縮、透析、脱塩、アルキル化、及び/又はペプチド還元のための技術を含む。ただし、これらのステップは任意選択的である。分析物イオンの選択的検出は、タンデム質量分析(MS/MS)を用いて行うことができる。タンデム質量分析は、質量選択ステップ(本明細書で使用される場合、「質量選択」という用語は、特定のm/z又は狭い範囲のm/zを有するイオンの単離を意味する)、続いて選択されたイオンのフラグメント化、及び得られた生成物(フラグメント)イオンの質量分析によって特徴付けられる。
【0370】
当業者は、質量分析法によって試料中のマーカーのレベルをどのように定量化するかを知っている。例えば、相対定量化「rSRM」又は絶対定量化を上記のように用いることができる。
【0371】
さらに、レベル(参照レベルを含む)は、相対的定量を決定する方法又は目的のタンパク質もしくはそのフラグメントの絶対定量を決定する方法などの質量分析に基づく方法によって決定することができる。
【0372】
相対定量化「rSRM」は、以下によって達成され得る。
1.試料中で検出された所与の標的フラグメントペプチドからのSRM(選択反応モニタリング)シグネチャーピーク面積を、少なくとも第2、第3、第4、又はそれ以上の生体試料中の標的フラグメントペプチドの同じSRMシグネチャーピーク面積と比較することによって、標的タンパク質の増加又は減少した存在を決定する。
【0373】
2.試料中に検出された所与の標的ペプチドからのSRMシグネチャーピーク面積と、異なる別々の生物学的供給源に由来する他の試料中の他のタンパク質からのフラグメントペプチドから生じたSRMシグネチャーピーク面積とを比較することによって、標的タンパク質の存在の増減を決定し、ペプチドフラグメントについての2つの試料間のSRMサインピーク面積比較は、例えば各試料中で分析されたタンパク質の量に対して正規化される。
【0374】
3.ヒストンタンパク質のレベルの、様々な細胞条件下でそれらの発現レベルを変化させない他のタンパク質のレベルへの変化を正規化するために、所与の標的ペプチドについてのSRMシグネチャーピーク面積を、同じ生体試料内の異なるタンパク質に由来する他のフラグメントペプチドからのSRMシグネチャーピーク面積と比較することによって、標的タンパク質の増加又は減少した存在を決定する。
【0375】
4.これらのアッセイは、非修飾フラグメントペプチド及び標的タンパク質の修飾フラグメントペプチドの両方に適用することができ、修飾には、リン酸化及び/又はグリコシル化、アセチル化、メチル化(モノ、ジ、トリ)、シトルリン化、ユビキチン化が含まれる。修飾ペプチドの相対レベルは、未修飾ペプチドの相対量を決定するのと同じ方法で決定される。
【0376】
所与のペプチドの絶対定量化は、以下によって達成され得る。
1.個々の生体試料中の標的タンパク質からの所与のフラグメントペプチドについてのSRM/MRMシグネチャーピーク面積を、生体試料からタンパク質溶解物中にスパイクされた内部フラグメントペプチド標準のSRM/MRMシグネチャーピーク面積と比較する。内部標準は、調べられている標的タンパク質からのフラグメントペプチドの標識合成バージョン又は標識された組換えタンパク質であり得る。この標準は、消化前(組換えタンパク質にとって必須)又は後に既知量で試料中にスパイクされ、生体試料中の内部フラグメントペプチド標準及び天然フラグメントペプチドの両方について別個にSRM/MRMシグネチャーピーク面積が決定され得、両方のピーク面積の比較が後に続く。これは未修飾フラグメントペプチド及び修飾フラグメントペプチドに適用することができ、ここで修飾はリン酸化及び/又はグリコシル化、アセチル化、メチル化(例えばモノ、ジ、又はトリメチル化)、シトルリン化、ユビキチン化、ここで、修飾ペプチドの絶対レベルは、未修飾ペプチドの絶対レベルを決定するのと同じ方法で決定することができる。
【0377】
2.ペプチドはまた、外部較正曲線を使用して定量化され得る。正規曲線アプローチは、内部標準として一定量の重いペプチド、及び試料中にスパイクされた様々な量の軽い合成ペプチドを使用する。マトリックス効果を説明するための標準曲線を構築するために、試験試料のものと同様の代表的なマトリックスが使用される必要がある。その上、逆曲線法は、マトリックス中の内因性分析物の問題を回避し、一定量の軽いペプチドは、内因性分析物の上にスパイクされて内部標準を作り出し、様々な量の重いペプチドは、スパイクされて一組の濃度標準を作り出す。正規曲線又は逆曲線のいずれかと比較される試験試料は、較正曲線を作り出すために使用されるマトリックス中にスパイクされた内部標準と同じ量の標準ペプチドでスパイクされる。
【0378】
本発明はさらに、キット、キットの使用、及びそのようなキットが使用される方法に関する。本発明は、本明細書の上記及び下記に提供される方法を実施するためのキットに関する。本明細書に提供される定義、例えば方法に関して提供される定義はまた、本発明のキットにも適用される。特に、本発明は、心血管疾患と診断された患者のための遠隔患者管理の療法ガイダンス、層別化及び/又はモニタリングのためのキットに関し、キットは、
-患者からの試料中のproADM、proBNP及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)を決定するための検出試薬と、
-proADM、proBNP、及びproANPからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーのレベルが、遠隔患者管理を処方するか又は処方しないことを示すかどうかを決定するための参照値などの参照データ、特に少なくとも1つのバイオマーカーの低ベネフィットレベルについての及び少なくとも1つのバイオマーカーの高ベネフィットレベルについての参照データであって、該参照データが、好ましくは、コンピュータ可読媒体に保存され、及び/又は決定された少なくとも1つのバイオマーカーを参照値と比較するように構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で使用される、参照データと、
-任意に、患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカー又はそのフラグメントのレベルを決定するための検出試薬及び/又は少なくとも1つの臨床パラメータ、好ましくは年齢、体重、肥満度指数、性別、民族的背景、血中クレアチニン、左心室駆出率(LVEF)、右心室駆出率(LVEF)、NYHA分類、MAGGIC心不全リスクスコア、医学的処置の状態、血圧(収縮期/拡張期)、心拍数、心電図(ECG)による心リズム、末梢血中酸素量(SpO2)、自己評価による健康状態(スケール)、又は腎機能、好ましくはクレアチニンクリアランス率及び/又は糸球体濾過量(GFR)を示すパラメータを決定するための手段と、少なくとも1つの追加のバイオマーカー又はそのフラグメントのレベル及び/又は少なくとも1つの臨床パラメータが、遠隔患者管理を処方するか又は処方しないことを示すかどうかを決定するための参照値などの参照データであって、該参照データが、好ましくは、コンピュータ可読媒体に保存され、及び/又は該少なくとも1つのバイオマーカー又はそのフラグメント(複数可)及び/又は該少なくとも1つの臨床パラメータの決定されたレベルを参照値と比較するように構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で使用される、参照データと、を含む。
【0379】
本明細書で使用される場合、「参照データ」は、proADM、proBNP及び/又はproANPの参照レベル(複数可)、ならびに任意に本明細書に記載されるさらなるマーカーを含む。対象の試料中のproADM、proBNP及び/又はproANPのレベルは、キットの参照データに含まれる参照レベルと比較することができる。参照レベルは本明細書において上記に記載されており、添付の実施例においても例示されている。参照データはまた、proADM、proBNP及び/又はproANPならびに任意にさらなるマーカーのレベルが比較される参照試料を含み得る。参照データはまた、本発明のキットの使用方法の取扱説明書を含み得る。
【0380】
加えて、キットは、血液試料などの試料を得るのに有用な物品を含んでもよく、例えば、キットは、容器を含んでもよく、当該容器は、当該容器をカニューレ又はシリンジに取り付けるための、例えば、所定量の試料を当該容器に引き込むのに好適であるように大気圧未満の内圧を呈する、血液単離に好適なシリンジであるデバイスを含み、かつ/あるいは加えて、洗剤、カオトロピック塩、リボヌクレアーゼ阻害剤、グアニジニウムイソチオシアネート、グアニジニウム塩酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのキレート剤、RNAse阻害タンパク質、及びそれらの混合物、ならびに/又はニトロセルロース、シリカマトリックス、強磁性球体、受皿(cup retrieve spill over)、トレハロース、フルクトース、ラクトース、マンノース、ポリ-エチレン-グリコール、グリセロール、EDTA、TRIS、リモネン、キシレン、ベンゾイル、フェノール、鉱油、アニリン、ピロール、クエン酸塩、及びそれらの混合物を収容する濾過システムを含む。
【0381】
本明細書で使用される場合、「検出試薬」などは、本明細書に記載のマーカー(複数可)、例えば、proADM、proBNP及び/又はproANPを決定するのに好適な試薬である。このような例示的な検出試薬は、例えば、本明細書に記載のマーカーのペプチド又はエピトープに特異的に結合するリガンド、例えば抗体又はそのフラグメントである。そのようなリガンドは、上記のようにイムノアッセイに使用することができる。マーカー(複数可)のレベルを決定するためにイムノアッセイで用いられるさらなる試薬もキットに含まれ得、本明細書において検出試薬と見なされる。検出試薬はまた、MSに基づく方法によってマーカー又はそのフラグメントを検出するために用いられる試薬にも関係し得る。したがって、そのような検出試薬はまた、MS分析のために試料を調製するために使用される試薬、例えば酵素、化学物質、緩衝剤などであり得る。質量分析計も検出試薬と見なすことができる。本発明による検出試薬はまた、例えば、マーカー(複数可)のレベルを決定及び比較するために用いられ得る較正溶液(複数可)であり得る。
【0382】
「カットオフ値」、「参照値」又は「閾値」という用語は交換可能に使用することができ、本明細書に記載の特定の値は、これらが本発明で使用されるアッセイシステムとは異なって「較正」されている場合、他のアッセイでは異なる可能性がある。したがって、カットオフ値又は参照値は、較正の違いを考慮して、それに応じてこのような異なって較正されたアッセイに適用されるものとしする。較正の違いを定量化する1つの可能性は、試料中のそれぞれのバイオマーカー(例えば、バイオマーカーx)を測定することによる、本発明で使用されるそれぞれのバイオマーカーアッセイ(例えば、アッセイ名x)との問題のアッセイ(例えば、バイオマーカーxアッセイ)の療法の方法を使用する方法比較分析(相関)である。別の可能性は、このテストが十分な分析感度、代表的な正常母集団の中央値バイオマーカーレベルを有していることを前提として、問題のアッセイで決定し、結果を文献に記載されている(例えば、正常母集団の引用)中央値バイオマーカーレベルと比較し、この比較によって得られた差に基づいて、較正を再計算することである。
【0383】
診断試験及び/又は予後試験の感度及び特異性は、試験の分析の「品質」だけに依存するのではなく、それらはまた、異常な結果を構成するものの定義にも依存する。実際には、受信者動作特性曲線(ROC曲線)は、典型的には、「正常」集団(すなわち、感染を有さない明らかに健康な個人)、及び「疾患」集団、例えば感染を有する対象における、その相対頻度に対する変数の値をプロットすることによって計算される。いずれかの特定のマーカー(proADM、proBNP及び/又はproANPのような)について、疾患/状態のあるなしにかかわらず対象についてのマーカーレベルの分布はおそらく重複するであろう。そのような条件下では、試験は、正常と疾患を100%の正確性で完全に区別することはなく、重複の領域は、試験が正常と疾患を区別できない場所を示している可能性がある。閾値が、それより下では試験が異常であると見なされ、それより上では試験が正常であると見なされ、又はそれを下回るかあるいは上回ると試験が特定の条件、例えば感染又は心血管もしくは脳血管イベントを示すように選択される。ROC曲線の下の面積は、知覚された測定値が状態の正しい識別を可能にするであろう確率の尺度である。試験結果が必ずしも正確な数を与えない場合でも、ROC曲線を使用することができる。結果をランク付けできる限り、ROC曲線を作成することができる。例えば、「疾患」試料に関する試験の結果は、程度に応じてランク付けされ得る(例えば、1=低い、2=正常、及び3=高い)。このランク付けは、「正常な」集団の結果と相関し得、ROC曲線が作成され得る。これらの方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、Hanley et al.1982.Radiology 143:29-36を参照されたい。 好ましくは、閾値は、約0.5より大きい、より好ましくは約0.7より大きい、さらにより好ましくは約0.8より大きい、さらにより好ましくは約0.85より大きい、最も好ましくは約0.9より大きいROC曲線面積を提供するように選択される。この文脈における「約」という用語は、所与の測定値の+/-5%を指す。
【0384】
ROC曲線の横軸は(1-特異性)を表し、これは偽陽性の割合とともに増加する。曲線の縦軸は、感度を表し、これは真陽性率とともに増加する。したがって、選択された特定のカットオフについて、(1-特異性)の値が決定され得、そして対応する感度が得られ得る。ROC曲線下面積は、測定されたマーカーレベルが疾患又は状態の正確な識別を可能にするであろう確率の尺度である。したがって、ROC曲線下面積は試験の有効性を決定するために使用することができる。
【0385】
組み入れ(ruling-in)は、実際に疾患、障害、又は有害事象を発症する対象の最小限の比率を特定し、この真の陽性群が十分に大きな比率の対象が陽性となることを保証する。このようなテストは、最大の特異度と最大の陽性予測値(PPV)に達する必要がある。本明細書では、組み入れは、好ましくは、遠隔の患者管理が有益であり、処方されるべきであることを示すことを指す。
【0386】
除外(ruling-out)は、確実に疾患、障害、又は有害事象を発症しない対象の最小の比率を特定し、陰性と判定された被験者のうち、疾患を発症する対象が十分に少ないこと(偽陰性)を確実にする。したがって、このようなテストは、最大感度と最大の陰性予測値(NPV)に達する必要がある。本明細書において、除外は、好ましくは、遠隔患者管理が有益ではなく、処方されるべきではないことを示すことを指す。
【0387】
本発明の方法は、部分的にコンピュータで実行され得る。例えば、検出されたマーカー、例えばproADM、proBNP及び/又はproANPもしくはそのフラグメントのレベルを参照レベルと比較する工程は、コンピュータシステムで実施することができる。コンピュータシステムでは、診断、予後診断、リスク評価、及び/又はリスク層別化のために示されるスコアを計算するために、マーカー(複数可)の決定されたレベルを、対象の他のマーカーレベル及び/又はパラメータと組み合わせることができる。例えば、決定された値は、コンピュータシステムに入力されてもよい(医療従事者によって手動で、又はそれぞれのマーカーレベル(複数可)が決定されたデバイス(複数可)から自動で、のいずれかで)。コンピュータシステムは、ポイントオブケア(例えば、初期診療(primary care)、ICU、又はED)に直接あってもよく、又はコンピュータネットワークを介して(例えばインターネット、又は任意に病院情報システム(HIS)などの他のITシステムもしくはプラットホームと組み合わせた特化された医療クラウドシステムを介して)接続される遠隔地にあってもよい。典型的には、コンピュータシステムは、値(例えば、マーカーレベル、もしくは年齢、血圧、体重、性別などのパラメータ、又はSOFA、qSOFA、BMIなどの臨床スコアシステム)をコンピュータ可読媒体に記憶し、事前に定義及び/又は事前に記憶された参照レベル又は参照値に基づきスコアを計算するであろう。得られたスコアは、ユーザ(通常は医師などの医療従事者)のために表示及び/又は印刷される。あるいは、又は加えて、関連する予後診断、診断、評価、療法ガイダンス、患者管理ガイダンス又は層別化は、ユーザ(典型的には医師などの医療従事者)のために表示及び/又は印刷されるであろう。
【0388】
本発明の一実施形態では、好ましくは電子健康記録(EHR)からのデータを使用して、機械学習アルゴリズムが敗血症、重症敗血症及び敗血症性ショックのリスクがある入院患者を識別することが明らかであるソフトウェアシステムを用いることができる。機械学習アプローチは、患者からのEHRデータ(ラボ、バイオマーカーの発現、バイタル、人口統計など)を使用して、ランダムフォレスト分類器でトレーニングすることができる。機械学習は、単純なルールに基づくシステムとは異なり、明示的にプログラムされなくても、コンピュータにデータの複雑なパターンを学習する能力を提供する一種の人工知能である。以前の研究では、電子健康記録データを使用して警告を誘発して、一般的な臨床的悪化を検出していた。本発明の一実施形態では、proADM、proBNP及び/又はproANPレベルの処理は、既存のデータセットとの比較のために適切なソフトウェアに組み込むことができ、例えば、proADM、proBNP及び/又はproANPレベルはまた、有害事象の発生の診断又は予後を支援するか、又は遠隔患者管理を処方するか否かの決定を支援する機械学習ソフトウェアで処理することができる。
【0389】
本明細書で使用される場合、「備える」及び「含む」という用語又はその文法的変化形は、述べられた特徴、整数、ステップ、又は構成要素を特定するものとして解釈されるべきであるが、1つの以上の追加の特徴、整数、ステップ、構成要素、又はその群の追加を除外するものではない。この用語に、「からなる」及び「から本質的になる」という用語を包含する。
【0390】
したがって、「含む」/「含む」/「有する」という用語は、任意のさらなる構成要素(又は同様に特徴、整数、ステップなど)が存在し得ることを意味する。「からなる」という用語は、さらなる構成要素(又は同様の特徴、整数、ステップなど)が存在しないことを意味する。
【0391】
「から本質的になる」という用語又はその文法的変化形は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、又は構成要素を特定するものと解釈されるべきであるが、1つ以上の追加の特徴、整数、ステップ、構成要素、又はその群の追加を除外しないが、それらの追加の特徴、整数、ステップ、構成要素、又はその群が、特許請求されている組成物、デバイス、又は方法の基本的で新規な特徴を実質的に変化させない場合のみである。
【0392】
したがって、「から本質的になる」という用語は、特定のさらなる成分(又は同様に特徴、整数、ステップなど)が存在し得ること、すなわち組成物、デバイス又は方法の本質的な特徴に実質的に影響を及ぼさないものを意味する。言い換えれば、「から本質的になる」という用語(本明細書では「実質的に含む」という用語と互換的に使用することができる)は、必須の構成要素(又は同様の特徴)に加えて組成物、デバイス又は方法における他の構成要素の存在を可能にする。ただし、デバイス又は方法の本質的な特徴は他の構成要素の存在によって実質的に影響されない。
【0393】
「方法」という用語は、所与のタスクを達成するための方法、手段、技術及び手順を指し、これらに限定されないが、化学、生物学及び生物物理学的分野の専門家に知られているこれらの方法、手段、技術及び技法を含むか、又は既知の方法、手段、化学、生物学及び生物物理学的分野の専門家による技術及び手順から容易に開発されたこれらの方法、手段、技法及び手順を含む。
【0394】
以下の非限定的な実施例を参照することにより本発明をさらに説明する。実施例は、本発明のさらなる説明のために提示された、非限定的かつ実用的な実施形態を説明している。
【実施例】
【0395】
方法の実施例:
試験デザイン及び被験者:
本試験は、心不全IIにおける遠隔医療介入管理II(TIM-HF2)の一部であり、計画外の心血管入院及び心不全の死亡率に対する遠隔医療の影響を調査するランダム化比較試験である。試験の方法の詳細及び結果の一部は、Koehler et al.2018a及びKoehler et al.2018bに公開されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0396】
TIM-HF2試験は、データ収集のために導入された実用的な要素を使用した、前向き、無作為化、対照、並行群間、マスクなし(ランダム化隠蔵で)の多施設共同試験であった(ClinicalTrials.gov識別子:NCT01878630)。試験はドイツで行われ、患者は200の大学、地方、及び地域の病院、心臓専門医及び一般開業医(GP)の診療所から募集された。合計で、20万人を超える住民がいる14の大都市圏及び/又は医科大学(すなわち、ベルリン、ドレスデン、ハンブルク、シュトゥットガルト、フランクフルトアムマイン、ライプツィヒ、ハノーバー)、及びドイツの11の農村地域(すなわち、ブランデンブルク、バイエルン、トゥリンギア、ザクセン、ザクセンアンハルト、ヘッセン、バーデンヴュルテンベルク、ニーダーザクセン、メクレンブルク-西ポメラニア、ノルトラインヴェストファーレン、ザールランド)に位置する113の試験現場が含まれていた。43の試験現場は病院であり、10の試験現場は大学病院であり、60の試験現場は地元の心臓専門医の診療所であった。さらに、87人の一般開業医(GP)が、患者のスクリーニング及び経過観察によって試験に協力した。
【0397】
患者は、無作為化前の12ヶ月以内に心不全の悪化のために病院に入院し、ニューヨーク心臓協会の心機能分類II度又はIII度に属し、左心室駆出率が45%以下(又は45%を超える場合、経口利尿薬で治療されていた)。大うつ病(すなわち、PHQ-9スコア>9)を有する患者、血液透析中である患者、又は無作為化前の7日間以内に何らかの理由で入院した患者は除外された。加えて、左心補助装置を有する患者、又は無作為化前の28日間以内に冠状動脈血管再生又は心臓再同期療法の移植を受けた患者は除外され、及び同様に、無作為化の3ヶ月後に、冠状動脈血管再生、経カテーテル大動脈弁移植、僧帽クリップ移植、又は心臓再同期療法の移植を計画している患者も除外された。組み入れ基準及び除外基準を表1に要約する。
【0398】
TIM-HF2試験は、独立した運営委員会によって設計、実施、監督された。この報告書は、運営委員会による発行のために作成及び提出された。独立したデータ安全監視委員会が継続的に安全データをレビューした。試験群の割り当てにマスクされた臨床エンドポイント委員会は、臨床エンドポイント委員会の憲章で前向きに定義された基準を使用して、全ての死亡及び入院を裁定した。裁定されたデータは、入院と死亡に関する転帰に使用された。19 この試験は、ヘルシンキ宣言とドイツで適用される法規制に準拠した優れた臨床慣行に準拠していた。適切な倫理委員会からの書面による承認が得られた。
【0399】
患者は書面によるインフォームドコンセントを提供し、遠隔医療センターが健康保険会社に連絡して、調査員によって報告された入院と健康保険記録に記録されている入院を照合する許可を与えた。このプロセスは、ドイツ連邦社会保険局によって承認され、両方の試験群の患者に対して行われた。
【0400】
無作為化及びマスキング
適格となる可能性のある患者をスクリーニングし、参加に同意し、書面によるインフォームドコンセントを提供した患者をスクリーニングし、ベースラインの測定及び評価を行った。適格かつ意欲的な患者は、安全なウェブベースのシステムを使用して、遠隔患者管理に加えて通常ケアを行う(遠隔患者管理群)又は通常ケアのみ(通常ケア群)のいずれかに無作為に割り当てられた(1:1)。2つの試験群間の重要な臨床共変量のバランスを確保するために、10%の残差ランダム性を備えたPocockの最小化アルゴリズムを使用した。無作為化は隠蔵されたが、この公開試験では参加者も治験担当医も群割り当てにマスクされていなかった。
【0401】
手順及び遠隔患者管理
遠隔患者管理介入は、以下から構成された:体重、収縮期及び拡張期血圧、心拍数、心リズムの分析、末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)、及び自己評価された健康状態(スケール範囲1~5)の遠隔医療センターへの毎日送信、ベースライン及び経過観察来院バイオマーカーデータを毎日送信されるデータと組み合わせて使用する、患者のリスクカテゴリの定義、患者教育、及び遠隔医療センターと患者のGP及び心臓専門医との間の協力。
【0402】
家庭用遠隔監視システム
無作為化後7日間以内に患者の自宅に設置された遠隔監視システムは、多成分システムであった。
【0403】
使用されるシステムは、デジタルタブレット(Physio-Gate(登録商標)PG1000、GETEMED Medizin- und Informationstechnik AG)を中心的な構造要素として使用するブルートゥース(登録商標)システムに基づいており、患者の自宅からシャリテーベルリン医科大学(Charite - Universitatsmedizin Berlin.)のTMCにバイタルの測定値を送信する。4つの測定デバイスは、システムの一部であり:2分、又はストリーミングECG測定を収集するための3チャネルECGデバイス(PhysioMem(登録商標)PM1000 GETEMED Medizin-und Informationstechnik AG)、末梢毛細血管酸素飽和度を収集するデバイス(SpO2;Masimo Signal Extraction Technology(SET(登録商標))、血圧を収集するシステム(UA767PBT,A&D Ltd.)及び体重計(Seca 861,seca GmbH&Co KG)。各デバイスにはブルートゥース(登録商標)チップが搭載されており、デジタルタブレットに接続されている。使用されているTMCソフトウェアは、TIM-HF2試験で使用するために特別に開発された「Fontane」(eHealth Connect 2.0,T-Systems International GmbH)である。Fontaneの主要な革新は、次の3つの主要構成要素で構成される新しい自己適応型TMCミドルウェアである。
・送信された患者データが重要な値又は欠測値を識別するためのアルゴリズムであり、これにより、即時の(医療)注意が必要な患者の即時の識別が可能になり、
・TMCスタッフ、患者、GP、地元の心臓専門医の間で直接通信するための電気通信ソフトウェア、ならびに
・関連する全ての医療情報(例えば:投薬計画、
以前の入院についての報告、実験データ)の電子健康記録。
【0404】
患者には、緊急時に遠隔医療センターに直接連絡するために使用する携帯電話も提供された。携帯電話(DORO Easy 510/Doro HandlePlus 334gsm,Doro AB)は、緊急時にTMCに直接電話をかけることを可能にした。このような状況では、ECGデバイスを使用してライブECGストリームを開始することも可能である。タブレットはモバイルネットワークを使用して、プロジェクトパートナーのDeutsche Telekom AGが提供するベルリンのTMCの中央サーバーに、暗号化された方法(VPNトンネルを介したGSM暗号化)で患者データを自動的に送信する。測定値と個別の情報コードを使用した個人データの組み合わせは、シャリテーベルリン医科大学(Charite - Universitatsmedizin Berlin.)のサーバーでのみ実行される。患者の安全を確保するために、TMCにデータを取得するための平均送信時間は<90秒である必要がある。モバイルネットワーク接続の可用性は、プロバイダーDeutsche Telekom AGによって提供される。完全なデータ収集プロセス、送信、及び処理は、関連するデータ保護責任者によって合意及び認定された最先端の機密性及び技術基準に厳密に準拠して行われる。個々の測定値を認証するために、全てのデータ送信に固有のデバイス識別情報が組み込まれている。テクニカルプロバイダーとのサービスレベル契約は、第1のレベルと第2のレベルのサポート、及び対応するサービスとエスカレーションの概念について締結されている。
【0405】
遠隔患者管理
遠隔監視システムの設置プロセス中に、認定看護師がシステムに関する患者トレーニングを提供し、心不全患者教育プログラムを開始し、後者は、患者への構造化された電話インタビューによって毎月続けられた。毎月の電話インタビューは、遠隔患者管理介入の不可欠な部分であった。遠隔医療センターへの毎日のデータ送信と組み合わせて、患者と遠隔医療センターの看護師との間で話し合われた遠隔患者管理介入及びその他の社会的ならびに技術的問題の遵守に加えて、患者の臨床的及び症候的状態及び併用薬が評価された。デジタルタブレットを備えたワイヤレスシステムを使用して、患者のデータが自宅からセンターに送信された。これは、携帯電話ネットワーク(仮想プライベートネットワークトンネルを介して保護されている)を使用して行われ、患者データの送信は毎日決まった時間に設定された。
【0406】
遠隔医療センターは、CEマークの遠隔医療分析ソフトウェアであるFontaneシステム(T-Systems International GmbH,Frankfurt,Germany)を使用して、試験期間全体にわたって、月曜日から日曜日まで24時間体制で医師主導の医療サポート及び患者管理を提供した。アルゴリズムがプログラムされ、このシステムに実装されて、患者管理をガイドし、遠隔医療センターの医師が迅速に行動し(例えば、併用薬の変更、在宅医師による外来評価の開始、又は患者の入院)、高リスクの患者に優先順位を付けた。
【0407】
患者は、中間領域プロアドレノメデュリン(MRproADM)値及び患者が送信したデータの組み合わせを使用して、低リスク又は高リスクに分類された。
【0408】
ベースラインの来院時及び各経過観察来院時に、バイオマーカーが取得され、独立した実験室によって分析される。結果は、CTC及びTMCに送信される。中間領域プロアドレノメデュリン(MRproADM)の定義されたカットオフ値によると、患者は次のようにリスク分類される:低リスク患者(MRproADM≦1.2nmol/L)及び高リスク患者(MRproADM>1.2nmol/L)。高リスクの患者は主にTMCの医師(「ドクターケア」)が続き、低リスクの患者は登録されたTMC看護師(「ナースケア」)が続いた。リスク分類は、各経過観察来院で得られたMRproADM結果を使用して3ヶ月ごとに再評価された。
【0409】
送信データに関する優先順位付けは、以下に示す基準に従って管理され、医師及び看護師は、データのカットオフ制限のいずれかを提示する患者が優先順位を付けて管理されるように、作業負担及び作業の一連の流れに優先順位を付けた。
o徐脈、心拍数<50b.p.m.
o頻脈、心拍数>100b.p.m.
o心室性頻脈
o新たに発症した心房細動
oPQ間隔>200ミリ秒
oQRS持続時間≧120ミリ秒
oQTc間隔>460ミリ秒
o SpO2<94%
o体重(1日の体重増加>1kg、3日間で>2kg
、8日間で>2.5kg)
o収縮期血圧:<90又は>140mmHg、拡張期<40又は>90mmHg
o自己評価された健康状態(1-非常に良いから5-非常に悪いまでの等級):1から始まる約2等級、又は4また5等級の悪化)
【0410】
Fontaneシステムはまた、遠隔医療センターのスタッフと患者、及び患者のGPと地元の心臓専門医の間の直接通信を可能にしました。これらは全て患者の管理に関与していました。Fontaneシステムを介して、遠隔医療センターは試験固有の電子患者ファイルを作成し、このファイルには、遠隔医療センターのスタッフと患者のケア提供者との両方がアクセス可能であった。
【0411】
両方の試験群の患者は、無作為化後少なくとも365日間から最大393日間経過観察された。全ての患者は、スクリーニングとベースラインの来院時、及び最終試験の来院時に、治療を行う心臓専門医に診察され、後者は、無作為化後365日目(28日間の時間枠)に行われた。その間に、患者の診察は3、6、及び9ヶ月に予定され、患者のGP又は地元の心臓専門医によって行われた。全ての来院時に、バイタルサイン及び体重を含むデータが症例報告書に収集され、患者は最後の試験接触以降の入院の発生について質問された。試験フローを
図1に示す。各来院時に実行された評価を表2に示す。
【0412】
連絡先情報とデータ収集の偏りを回避するために、遠隔患者管理群の患者との毎日の接触を考慮して、遠隔患者管理と通常のケアを行う群と通常のケアの群との両方で入院の正確かつ完全な報告を確実にする品質管理システムが導入された。このプロセスには、患者、治験担当医、及び患者のそれぞれの健康保険会社の協力が必要であった。入院に関するデータの正確性は、健康保険会社からのデータを使用して確認され、調査員によって報告された入院との情報照合が行われた。
【0413】
したがって、RPM介入は、特に次の要素で構成されていた。
・体重、血圧(収縮期/拡張期)、心拍数、2分間の3チャンネル心電図(ECG)から得られる心リズムの分析、末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)、及び自己評価による健康状態(スケール範囲1~5)の毎日の送信
・ベースラインと経過観察来院時のバイオマーカー値を使用した患者のリスク分類の特定
・患者教育、及び遠隔医療センター(TMC)と患者の
GPと心臓専門医との間の協力(「医師間遠隔医療シナリオ」)。
【0414】
UC群に無作為化された患者は、治療を行う医師の裁量で、現在の基準(すなわち、HF管理のためのESCガイドライン)に従って追跡された(Ponikowski et al.2016)。
【0415】
加えて、RPM群に割り当てられた患者は、送信されたデータに基づいて、併用薬の構造化されたレビューを毎日受ける。試験現場の医師の同意を得て、TMCの医師は、以下の目標を達成するために、必要に応じて併用治療を最適化することになる。
・洞調律の患者の心拍数<75b.p.m.。
・血圧制御:収縮期<140mmHg及び拡張期<90mmHg。
・新たに発症した心房細動の患者:長期治療及び抗不整脈療法としての抗凝固剤療法の使用。
・NYHA分類II度~IV度の患者:可能な場合は鉱質コルチコイド受容体拮抗薬の使用を促す。目的は、これらの目標を達成するために患者に最大許容用量を処方し、さらに、体重増加及び症状の悪化に備えて利尿薬の用量を適応させることである。
【0416】
遠隔医療チームは、毎月の電話連絡、救急医との連絡、又は測定された遠隔医療の重要なパラメータの結果として患者の治療に行われた介入からの新しいイベント又は重要な臨床所見について、電話、ファックス、又は電子メールで患者のGP又は医療提供医師に通知する。TMCは、患者の主治医にのみアドバイスすることが望ましく、これは、主治医が、患者の医療管理を推進する全体的な責任を負っているためである。
【0417】
試験転帰
一次転帰は、個々の患者の経過観察期間中の遠隔患者管理に加えて通常のケアを行う患者を、通常のケアのみの患者と比較した、計画外の心血管入院又は何らかの原因による死亡のために喪失された日数の割合であった。主な二次転帰は、個々の患者の経過観察期間に加えて、最後の試験の来院から28日間後、最大393日間までのあらゆる原因による死亡率と心血管系の死亡率であって、計画外の心血管入院により喪失された日数の割合、及び計画外の心不全入院により喪失された日数の割合、ミネソタ州心不全質問票(Minnesota Living with Heart Failure Questionnaire)(MLHFQ)グローバルスコアの変化、及び無作為化と最終試験の来院時と間のN末端プロホルモン脳性ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)とMRproADMとの間の変化であった。
【0418】
RPMを通常のケアと比較した主な二次転帰は次のとおりである:
a)個々の患者の経過観察期間中のあらゆる原因による死亡率(最終来院から+ 28日間から最大393日間)
b)個々の患者の経過観察期間中のあらゆる原因による死亡率(最終来院から+ 28日間から最大393日間)
c)個々の患者の経過観察期間中に計画外の心血管入院のために喪失された日数の割合
d)個々の患者の経過観察期間中に計画外のHF入院により喪失された日数の割合
e)ベースラインから365日間までのMLHFQ-質問票グローバルスコアの変化
f)ベースラインと365日間の間のNTproBNP及びMRproADMのレベルの変化
【0419】
次の再発イベント分析が実行された。
a)計画外の心血管系入院及び心血管系死亡率。
b)計画外の心血管系入院及びあらゆる原因による死亡率。
c)計画外のHF入院及び心血管系脂肪率
d)計画外のHF入院及びあらゆる原因による死亡率
【0420】
以下の亜群にわたる介入効果の一貫性を評価するために、一次転帰について亜群分析が実行される:
・大都市圏対地方の医療ケア。
・男性対女性。
・年齢中央値以上/以下。
・LVEF≦45%対LVEF>45%。
・NYHA心機能分類I/II度対III/IV度。
・ベースラインでの心臓再同期療法(CRT)があったか、はい/いいえ。
・ベースラインでの植込み型除細動器(ICD)があったか、はい/いいえ。
・ベースラインでのMRproADM≦1.2nmol/L対1.2nmol/L。
【0421】
統計分析
TIM-HF試験の特定の亜群のデータを試料サイズの計算に使用した。TIM-HF2試験に含めることを意図した母集団を反映した患者亜群では、通常のケア群では12ヶ月であらゆる原因による死亡又は計画外の心血管入院により19日間が喪失され、遠隔お暗じゃ管理群では、12日間が喪失され、これは38%の削減に相当する。推定プールSDが48の場合、80%の検出力と5%の両側αでこの差を検出するには、各群で750人の患者が必要であると計算された。
【0422】
分析にはR(バージョン3.4.4)及びStata(バージョン14.2)を使用した。一次及び二次有効性分析は、治療意図分析(intention-to-treat)の原則に従って、完全な分析分析対象集団で実施された。最大の分析対象集団は、同意を与え、割り当てられたケアを開始した全ての無作為化された患者で構成されていた。
【0423】
ベースライン特性は、カテゴリ変数の場合は患者数(%)として、連続変数の場合は平均(SD)として要約され、全てのベースライン事件室内試験では、中央値及びIQRが使用された。
【0424】
あらゆる原因による死亡又は計画外の心血管入院により喪失された日数の割合の一次分析では、死亡又は計画外の心血管入院により喪失された経過観察時間の割合を、喪失された日数を意図された毛か観察で割ったものとして定義した。死亡した患者については、死亡日と、意図された経過観察の日数に加えて、心血管系の理由で入院した日数との間の喪失された日数を数えた。計画通りに試験を完了した患者、又は経過観察から早期に撤退した患者の場合、経過観察時間の割合は、(心血管系入院のために)喪失された日数を実現された経過観察時間(すなわち、試験打ち切り日時)で割ったものとして定義された。一次転帰として、並べ替え検定を使用して、2つの群間で喪失された日間の割合の重み付け平均を比較した。両側並び替え検定のp値を、等式の場合に中間p補正を適用したときに、少なくとも観測された検定統計量と同じ大きさの検定統計量の絶対値を持つ順列の割合として計算した。この分析では、2000個のランダムに描かれた順列を使用した。
【0425】
信頼区間(CI)を、Garthwaite(Garthwaite PH)によって記述された方法を使用して計算した。無作為化検定からの信頼区間。Biometrics 1996;52:1387-93)、これはロビン-モンロー(Robbins-Monro)法に基づいている。要するに、この方法は、ステップの大きさが元の検定統計量と並べ替えられたデータの検定統計量の間の距離、及びステップ数によって支配される推定値を順次更新することにより、CIの各エンドポイントを個別に検索する。経過観察時間は重み付け算術平均を使用して重み付けされ、年平均が表示される。
【0426】
要するに、この方法は、ステップの大きさが元の検定統計量と並べ替えられたデータの検定統計量の間の距離、及びステップ数によって支配される推定値を順次更新することにより、CIの各エンドポイントを個別に検索する。経過観察時間は重み付け算術平均を使用して重み付けされ、年平均が表示される。
【0427】
全ての生存分析は、最初のイベントまでの時間に基づいて行われた。あらゆる原因による死亡率の累積発生率曲線を、カプランマイヤー法に従って構築し、曲線間の差異を、ログランク統計によって調べた。心血管死亡率については、以前に別の致命的なイベントが発生したために着目したイベントが発生しなかったことを考慮して、競合するリスク分析を使用した。コックス比例ハザード回帰モデルを使用して、(原因別の)ハザード比(HR)を推定した。イベント率は、経過観察データの打ち切りを考慮した、1年の経過観察で100人の患者当たりのイベント数として表される。
【0428】
死亡率の転帰の感度分析では、統計分析計画で定義されているように、無作為化後393日間目に打ち切られた全ての患者の最大の分析対象集団を使用して結果の堅牢性を調べた。負の二項モデルによって入院イベントの数のデータを分析した。MLHFQグローバルスコアなどの連続変数については、12ヶ月での両方の試験群の群平均の変化が、ベースライン値を調整するANCOVAモデルによって比較された。バイオマーカーテストの結果を、対数目盛とANCOVAモデルを使用して分析した。
【0429】
遠隔医療センターへの毎日のデータ送信の遵守は、最初のデータ送信が遠隔医療センターに送信された日から患者の個別の経過観察が終了するまでの日数から、患者が何らかの理由で入院した日間を差し引いた日数として定義された。相互作用の統計的検定を行って、一次転帰に対する遠隔患者管理の効果が事前に指定された亜群間で一貫しているかどうかを評価した。亜群分析の交互作用の検定は、対応するモデルに交互作用項を追加することによって行われた。
【0430】
実施例1:HFを患う患者に対する遠隔患者管理の利益
2013年8月13日から2017年5月12日までの間に、1571人の患者が無作為に割り当てられた(796人が遠隔患者管理に加えて通常ケアに、775人が通常ケアのみに割り当てられ、そのうち765人が遠隔患者管理群であり、773人が通常ケア群であり、最大の分析対象集団に含まれていた;
図2)。ベースラインの臨床及び実験室特性ならびに心血管薬の使用は、2つの群間で類似していた(表3を参照)。
【0431】
全患者の平均年齢は70歳(SD 10)で、70%が男性であった。
【0432】
遠隔患者管理を受けるように無作為に割り当てられた患者の場合、743(97%)は、遠隔医療センターへのデータの毎日の転送に少なくとも70%準拠していた。さらに、全ての患者は、欠測データ送信から24時間以内に連絡を受けた。各患者の最長で経過観察まで(すなわち、無作為化後393日目まで)、全ての患者の生存状態がわかっていた。
【0433】
遠隔患者管理群の765人の患者のうち265人(35%)と通常のケア群の773人のうち290人(38%)が、計画外の心血管系の理由で入院したか、死亡した。計画外の心血管入院又はあらゆる原因による死亡により喪失された日数の割合は、遠隔患者管理に割り当てられた患者において(4.88%、95%CI 4.55~5.23)、通常のケア(6.64%、95%CI 6.19~7.13、比0.80、95%CI 0.65~1.00、p=0.0460、表2)と比較して統計的に減少した。遠隔患者管理に割り当てられた患者は、この転帰について、通常のケアに割り当てられた患者の年間24.2日間と比較して、年間平均17.8日間の重み付け平均を喪失した
【0434】
あらゆる原因による死亡率は、遠隔患者管理群では、1年の経過観察で100人当たり7.9人であり、通常のケア群では1年の経過観察で100人当たり11.3人であった(HR 0.70、95%CI 0.50~0.96、p=0.0280、表4、
図3)。心血管系の原因による死亡に関して、遠隔患者管理と通常のケア群との間の差は統計的に有意ではなかった(HR 0.67、95%CI 0.45~1.01、p=0.0560)。
【0435】
遠隔患者管理に割り当てられた患者は、心不全の悪化による計画外の入院について、通常のケア群よりも少ない日数を喪失した(それぞれ、平均年間3.8日[95%CI 3.5~4.1]対年間5.6日[5.2~6.0])。遠隔患者管理群及び通常のケア群のこの転帰について喪失された日数の割合は、それぞれ1.04%(95%CI.0.96~1.11)及び1.53%(1.43~1.64)であった(比率0.80、95%CI 0.67~0.95、p=0.0070)。遠隔患者管理を通常のケア群と比較すると、あらゆる原因による死亡率について行われた感度分析で同様の結果が得られた(比率0.74、95%CI 0.54-1.02;p=0.0633)。
【0436】
計画外の心血管入院により喪失された日数の割合は、遠隔患者管理群で1.71%(95%CI 1.59-1.83)、通常ケア群で2.29%(2.13-2.45)であった(比率0.89、95%CI 0.74-1.07;p=0.208)。
【0437】
ミネソタ心不全質問票(MLHFQ)のグローバルスコアにおける12ヶ月でのベースラインからの変化は、遠隔患者管理と通常のケア群との間で統計的に差はなかった(表5)。
【0438】
図3は、一次転帰についての亜群分析の結果を示している。一次転帰の治療群間の差異に対する事前に指定された亜群の影響は認められなかった。
【0439】
2251人の計画外の入院が報告され、臨床エンドポイント委員会によって分類された(付録p4)。これらの入院のうち、262人(遠隔患者管理群で14人、通常のケア群で248人)が、健康保険記録とのクロスチェック検証手順中に特定された。1026078個のバイタルパラメータが遠隔医療センターに送信され(患者当たり1421の中央値[範囲6~3962])、表6に、送信されたデータと講じられた措置の要約を示す。
【0440】
実施例2:遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかについてのバイオマーカー決定の予後能力
上記及びKoehler et al.2018aならびにKoehler et al.2018bに記載された試験母集団及びTIM-HF II試験から収集されたデータについて、バイオマーカーproADM、proBNP、及び/又はproANPの、遠隔患者管理を処方するか、又は処方しない利益を予測する予後能力を評価するためにさらなる分析が行われた。
【0441】
バイオマーカー分析の方法
上記のように、TIM-HF II試験では、合計1538人の患者(年齢中央値:73、IQR:64~78;70%が男性)を、RPM(N=765)又はSOC(N=773)のいずれかに無作為に割り当てた。用語SOC(標準治療)と通常のケア群(UC)は、本明細書では互換的に使用される。患者は、1年間の経過観察期間にわたって90日間ごとに試験来院した。バイオマーカーの分析のために、ベースライン時及び全ての来院時に採血した。
【0442】
NTproBNP、MR-ANP、及びMRproADMを、(i)計画外の心血管入院又はあらゆる原因による死亡による元の試験の喪失した日数の%の主要エンドポイントとのそれらの関連性、(ii)RPM患者の選択に決定的であると考えられる心不全の特定のエンドポイントのあらゆる原因による死亡又は再入院とのそれらの関連性、及び(iii)次の90日間(あらゆる原因による死亡又は心不全による再入院はない)にRPMから安全に除外できる患者の特定に組み合わせて使用した場合のそれらの予測性能について評価した。
【0443】
後者については、バイオマーカーの全ての繰り返し観察とその後のSOC下の全ての患者の90日間の経過観察をプールすることにより、統計的検出力を獲得した(予想通り、繰り返し測定値を超える傾向は観察されなかった)。腎不全と、eGFR(CKD-EPI式)又はコッククロフト-ゴールト(Cockroft-Gault)に基づくGFRによる層別化によるバイオマーカーレベルとの関連を考慮した後、安全な除外(100%、99%、95%感度)のバイオマーカーカットオフ、及び節約されたRPM努力(RPMから除外された患者の割合)に関する、ならびに組み入れられた患者に対するRPMの有効性(イベントのリスク、治療が必要なNNTの数の低減)に関するそれらの仮想的性能を計算した。RPM患者に利用できる独自のデータセットにより、緊急事態、電話、及び投薬に関する詳細なデータを使用して、除外アルゴリズムをさらに評価できる。
【0444】
ベースラインから90日間以内のMRproADM、proBNP又はproANPのバイオマーカー分析の結果
「ベースラインから90日以内の急性非代償性によるあらゆる原因による死亡又は計画外のCV入院」のエンドポイントについて、UC緩徐におけるROC分析及び性能バイオマーカーカットオフの分析を、ベンチマークとして実施した。
【0445】
図5~7は、最初の測定から(通常のケアの患者の)90日間以内の死亡又は急性代償不全のROC曲線を示している。MRproADMの曲線下面積(AUC)は0.755、NTproBNPの曲線下面積は0.736、MRproANPの曲線下面積は0.69である。したがって、全てのバイオマーカーは、高い予後の可能性を示し、これは、本明細書に記載されるように、遠隔患者管理の療法ガイダンス、モニタリング、又は層別化に利用され得る。
【0446】
TIM-HF2のベースライン来院時に、NTproBNP又はMRproADMのレベルが高い患者は、喪失日間数の割合が高く、試験年度中に有害事象を発症する可能性が高くなった。これは、RPMの割り当ての可能性を示している。
【0447】
表7~9は、バイオマーカーproADM、proBNP、及びproANPのカットオフ分析をまとめたものである。特に、処方するか、又は処方しないかについての低利益及び高ベネフィットレベルを確立するための好ましいカットオフは、100%又は95%の感度に達するカットオフに関連するものである。
【0448】
表7に示すように、MRproADMでは、0.75nmol/Lのカットオフ値は100%の感度をもたらし、0.86nmol/Lは95%の感度をもたらす。
【0449】
表8に示すように、NTproBNPについては、237.6pg/mLのカットオフ値は100%の感度をもたらし、609.4pg/mLは95%の感度をもたらす。
【0450】
表9に示すように、MRproANPについては、106.9pmol/Lのカットオフ値は100%の感度をもたらし、158.5pmol/Lは95%の感度をもたらす。
【0451】
ベースラインから90日以内のGFRの決定と組み合わせる場合のバイオマーカー分析の結果
特に、NTproBNP及びMRproADMをGFRなどの腎機能を示すパラメータを決定することと組み合わせて使用すると、良好な結果が得られた。
【0452】
eGFR<60及びeGFR>=60によって層別化されたNTproBNP及びMRproADMベースのアルゴリズムは、すでにSOC下で90日間イベントを発症しないままであった患者の注目すべき部分を特定できるが、一方で、イベントを伴う重要なSOC患者を、完全又はほぼ完全な感度で特定できる。100%(99%、95%)の感度では、SOC患者の9%(15%、25%)が仮想的にRPMから除外される可能性がある。比較のために、100%の感度で、NTproBNPを単独で、又はeGFRと組み合わせて使用すると、それぞれ患者の0.8%又は2.7%のみが安全に除外される。
【0453】
感度が100%の除外アルゴリズムの場合、SOC患者で90日間以内にイベントに罹患するリスクは、RPMに仮想的に割り当てられた患者で11%、SOCで維持された患者で0%であった。試験群間でこれらの部分母集団を比較することにより(ここでも、バイオマーカーの全ての観察とその後の90日間間の経過観察をプールし、繰り返し測定値を超えるバイオマーカーの傾向は観察されなかった)、RPMが11%から8%までの仮想的に組み入れられた患者の間のイベントに罹患するリスクを有意に減少させることができることが示された。さらに、NNTは42(全ての患者)から34(仮想的に組み入れられた患者)に低下した。最後に、提示されたアルゴリズムによってRPMから除外されたであろう真のRPM患者は、緊急事態に苦しむ可能性が大幅に低く、投薬の変更が少なく、RPM医師とのコミュニケーションが組み入れられた患者よりも少なかった。これはさらに、バイオマーカーによる特性評価に基づいて、特定された低リスク患者は特定された高リスク患者よりもRPMを必要としないことを示唆した。
【0454】
表10は、CKD-EPIに基づくGFRによるバイオマーカーカットオフの層別化の結果及び有益な影響をまとめたものである。
【0455】
表11及び13は、コッククロフト-ゴールト(Cockroft-Gault)に基づくGFRによるバイオマーカーカットオフの層別化の結果及び有益な影響をまとめたものである。
【0456】
proADM、proBNP、GFRを組み合わせて使用すると、特に良好な結果が得られる。両方の表の6列目及び9列目に見られるように、このような場合、遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないためにproADMなしでproBNPとGFRのみを使用する場合と比較して、2倍又は3倍多い患者を遠隔管理から安全に除外することができる。
【0457】
ベースラインから1年以内のバイオマーカー分析の結果
さらに、バイオマーカーの予測力を、無作為化及び試料分離後1年以内の有害事象に関して評価した。NTproBNP及びMRproADMを、ベースラインで使用した。主要エンドポイントは、あらゆる原因よる死亡又はCV入院のために喪失した二っすであり、副次的エンドポイントは、無作為化後1年以内のあらゆる原因よる死亡であった。
【0458】
主要エンドポイントの予測に関する2つのバイオマーカーの五分位数の一次分析は、SOC群の発生率が1.4%の喪失日数(MRproADM≦0.75nmol/L、最低の五分位数)から細孔の五分位数の17.6%に増加したことが示している。RPM群では、値は最低五分位数(1.4%)で類似しており、最高五分位数で12.1%であった(SOCに対してp=0.21)。治療効果(RPM対SOCの喪失日数の比率)は0.98から0.69に増加した(相互作用についてのpは0.29である)。NTproBNPは同様の予後能力を有しており、治療効果は最低の0.87から最高の五分位数で0.63の範囲であった(相互作用についてのpは0.33である)。副次的エンドポイント(あらゆる原因による死亡)の所見も同様であった。したがって、喪失された日間数の割合と死亡のリスクが低くなる傾向が見られ、バイオマーカーレベルが低い患者ではRPMのメリットが小さくなりました。この観察に基づいて、RPMに推奨される患者の割合を減らことを目的として、バイオマーカーベースのRPM患者選択アルゴリズムが検討された。
【0459】
バイオマーカーを組み合わせて、イベントがなく(あらゆる原因による死亡)、したがってRPMから利益を得ることができなかった患者を特定すると、MRproADM<0.69nmol/L又はNTproBNP<125.1ng・Lを有する患者の13.7%がSOC群から除外されることができた。<2.5%又は<5%のミス率が受け入れられた場合、除外された患者の相対的分配率はそれぞれ16.9%又は25.3%に上昇した。3つのシナリオの全てにおいて、RPMの有益な治療効果のハザード比は0.71有意(p<0.05)のままであり、一次試験と相互に同じであった(HR=0.70)。
【0460】
したがって、患者のバイオマーカーベースの選択を使用することにより、1人の死亡を防ぐために治療するために必要な人数を28人から26人(感度100%、イベントを見逃さない)に、最小で最小23人(感度95.5%、MRproADM<0.75nmol/L、NTproBNP<383.3ng/L)まで低下させることができる。
【0461】
表12は結果を要約しており、
図8は、バイオマーカーベースの修正患者コホート(100%の感度で上記のバイオマーカーカットオフに基づいて除外されたイベントのない患者)のカプランマイヤー曲線を示す。
【0462】
結論として、MRproADM及びNTproBNPを単独で、又は組み合わせて使用することが、心不全患者の遠隔患者管理への安全で、より正確で、効果的な、したがってコスト削減の割り当てを可能にする。1人の命を救うためにRPMで治療するために必要な人数は、バイオマーカーアプローチを使用して元の研試験の28人から23人に減らことができる。
【0463】
実施例3:遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないためのproBNPとADMとの組み合わせの予後能力
上記及びKoehler et al.2018aならびにKoehler et al.2018bに記載された試験母集団及びTIM-HF II試験から収集されたデータについて、さらなる統計分析を、proADM及び/又はproBNPを使用して、遠隔患者管理を処方するか、又は処方しないかの利益を予測するための特に有益なシナリオを決定するために実行した。
【0464】
転帰及びバイオマーカー分析
簡単に言えば、転帰として、主要試験エンドポイントは、「計画外の心臓血管(CV)入院による、又は個々の経過観察期間中の全ての死因による死亡のために喪失された日間数の割合」であった。定期的な個別の経過観察期間は、全ての患者の無作為化後365日間と、365日間後4週間以内に行われるべき最終試験来院までの様々な時間をカバーした。副次的エンドポイントには、あらゆる原因による死亡率(a)、CV死亡率(b)、計画外のCV入院による喪失日数%(c)、及び心不全の悪化を伴う入院による喪失日数(d)が含まれる。
【0465】
バイオマーカー分析の目的で、ベースラインでのNTproBNP及びMRproADMのレベルを使用した。全血は、試験来院中に静脈穿刺によって収集された。NTproBNPは、化学発光イムノアッセイRoche NTproBNP(Roche Diagnostics GmbH,Mannheim,Germany)を使用して測定し、これは、5~35.000 pg/mlの測定範囲及び50pg/mlの機能アッセイの感度を有する(添付文書でのメーカー情報)。MRproADMは、免疫蛍光アッセイB・R・A・H・M・S MRproADM KRYPTOR (B・R・A・H・M・S GmbH,Hennigsdorf,Germany)を用いて測定した。MRproADMアッセイは、0.25nmol/Lの機能アッセイ感度で、0.05~100nmol/Lの測定範囲を有する。
【0466】
統計
NTproBNP及びMRproADMのエンドポイントとの関連付け
線形ハザード回帰及びコックス比例ハザード回帰を使用して、計画外のCV入院による喪失日数の%と、あらゆる原因による死亡までの時間の両方のバイオマーカーとの関連をそれぞれテストした。モデリングのために、バイオマーカーレベルは対数変換された。また、0.0%の喪失日数があった患者に0.1%の値を代入した後、喪失日数の%を、対数変換し、これは以前の分析と一致している。両方のバイオマーカーを含むモデルを、予測変数としてNTproBNPのみを含むモデルと比較して、MRproADMを追加することの有意性を評価した(それぞれ、F検定及び尤度比検定による)。
【0467】
補足として、計画外のCV入院による平均喪失日数の%(試験の以前の分析に沿った個々の経過観察時間によって重み付けされた平均を使用)、ならびに両方のバイオマーカーのすべての五分位数について、SOC及びRPM群のと両方のあらゆる原因による死亡の割合を計算した。各五分位数について、これらのエンドポイントに対するRPM対SOCの効果のp値を、並べ替え検定(計画外のCV入院による喪失日数の%)及びコックス比例ハザード回帰(あらゆる原因による死亡)を使用して計算した。また、五分位数とRPMとの相互作用についてのp値を計算して、RPMの効果がバイオマーカーの五分位数間で異なるという証拠がどれほど強いかを調査した。
【0468】
RPMに推奨される患者の選択シナリオ
追加のバイオマーカー評価に基づいてRPMが推奨され得る元の母集団の亜群の基準を特定するために、SOC試験アームに割り当てられた患者のみが使用された。したがって、これらは、バイオマーカーガイダンスの導出及び評価のためのベンチマーク母集団として機能した。その理由は、この群でのみ、RPMによっていかなる臨床エンドポイントも妨げられていないと想定できるためである。
【0469】
主要エンドポイントの場合、イベントは、365日間の経過観察のうちの少なくとも30日間の喪失日数を有するものとして、すなわち、少なくとも8.2%の喪失日数の割合を有するものとして定義された。この実施例の以下の説明では、このシナリオは「≧30日の喪失日数/年」と称される。このアプローチでは、死亡した患者の大多数(SOC群の89人のうち82人)だけでなく、計画外のCV入院のために1年以内に病院で1ヶ月以上過ごした全ての患者も含まれる。この2値測定では、ベースラインのバイオマーカー測定から比較的時間的に離れた(1年間経過観察された患者では少なくとも11か月)死亡のみがイベントなしとして分類された。
図12は、このイベント定義をさらに示している。副次的エンドポイントは、あらゆる原因による死亡として事前に指定されていた。
【0470】
RPMに推奨される患者のバイオマーカーベースの選択シナリオは、高い安全性のためにさらに最適化された。様々なシナリオを、100%、98%及び95%の望ましい感度を用いて両方のエンドポイントについて検討し、つまり、定義されたバイオマーカーのカットオフは、経過観察期間中にイベントが発生した患者の0%、2%、又は5%を超えて見逃してはならないことを意味する。両方のバイオマーカーによって運ばれる情報を利用するために、患者が少なくとも特定のレベルのNTproBNPと、同時に少なくとも特定のレベルのMRproADMを有している場合、患者はRPMを推奨された。
【0471】
理論的には、<100%の感度での全てのシナリオで、望ましい感度を実現するバイオマーカーカットオフの可能な組み合わせが複数あることに留意されたい。現在の実施例の分析は、両方のバイオマーカーがそれ自体で同一の感度を達成した場合に限定されたままであった。これは、患者の選択のために両方のバイオマーカーを共同で使用する際に等しく重み付けされる必要があると仮定するのと同じである(MRproADMのレベルよりも高レベルのNTproBNPの方がより許容されると仮定するか、又は逆も同様に仮定する代わりに)。
図9は、NTproBNPとMRproADMの併用に関してバイオマーカーガイダンスがどのように評価されたかを示している。比較のために、NTproBNPを単独で使用した場合にRPMが推奨された母集団から除外できる患者の割合も計算した。
【0472】
RPMの有効性に関するシナリオの評価
RPMのバイオマーカーガイダンスの基本的な目的は、RPMから最も利益を得る介入に患者を割り当てることであり、そうでない患者を除外することである。結果として、6つのシナリオ全て(2つのエンドポイント(計画外のCV入院による喪失日数の%、あらゆる原因による死亡)と3つの望ましい感度)にとって、TIM-HF2のエンドポイント、したがって心不全におけるRPMの有効性が、元の母集団をバイオマーカーを介してRPMに推奨される亜母集団に遡及的に減らすことによってどのように影響されるかを示すことが重要であった。効果の推定値及びp値を、以前の出版物(Koehler et al.2018a)の元の試験母集団の全ての統計手順に従って、推奨基準を満たした(すなわち、NTproBNP及びMRproADMがそれぞれの閾値を超えた)部分母集団について計算した。
【0473】
簡単に言えば、治療(主要エンドポイントと副次的エンドポイントc及びd)間の喪失日数の%の比率について、RPM群の喪失日数の%の幾何平均を、SOC群の喪失日数の%幾何平均で割った。これに先立って、0.0%の喪失日間数があった患者に0.1%の喪失日数の値を代入した。対応するp値を、2000の順列と検定統計量としての平均の差を使用した並び替え検定によって計算した。あらゆる原因による死亡(副次的エンドポイントa)及びCV死亡(副次的エンドポイントb)のイベントまでの時間分析では、コックス比例ハザード回帰を使用して、ハザード比、信頼区間、及びp値を推定した。結果の解釈については、p値の上方変化は少なくともある程度機械的であり、これは、減少した部分母集団では、統計的検定が同じ有意水準で効果を検出する能力が低いためであることに留意されたい。後者のエンドポイントでは、CV以外の死亡は通常の打ち切りイベントとして扱われた(経過観察の終了)。さらに、カプランマイヤー曲線とログランク検定が、患者選択シナリオの1つのエンドポイントのあらゆる原因による死亡に対して提供された。
【0474】
最も効率的なシナリオのさらなる分析:患者背景及びRPM介入
≧30日の喪失日数/年に関して95%の感度を有するものである、(RPMに推奨される集団を最も低減する)二重バイオマーカーガイダンスの評価されたシナリオの中で最も効率的であるために、ベースラインでの患者背景をRPMが推奨された群と、RPMが推奨されなかった群との間で比較した。また、ベースラインでの患者背景を、SOC群とRPM群との間で、RPMが推奨される患者について比較した(すなわち、前のサブセクションで説明したエンドポイント計算の基礎となった群について)。
【0475】
元のRPM群に属していた患者の独自の電子健康記録データと相互検証された緊急データの可用性により、さらなる比較が可能になった。TMCは、遠隔医療の過程で様々な介入を採用し、RPM患者の緊急事態の発生を登録した。したがって、これらのRPMデータにより、(i)緊急事態の発生率、(ii)試験において彼らの元の無作為群割り当てに沿って、遡及的シナリオでRPMを推奨された患者と、このシナリオでRPMを奨励されなかった患者との間のTMC医師が費やした平均医療努力を、試験の元の群割り当てに対して比較することを可能にする。時間内の努力の計算のために、電子患者記録に記録されたTMCによる全ての介入は、医療及び非医療関連の行動に分類された。各行動の平均持続時間を、経験値と電子患者記録からの値を介して計算した。Allen et al.(2019)に従って、緊急事態及び医療努力を視覚化した。
【0476】
さらに、遡及的シナリオではRPMに推奨されなかったが、元の試験ではRPMに割り当てられた全ての患者の医療及び非医療努力の時間を合計することにより、調査されたバイオマーカーガイダンスを大まかに見積もることができる。
【0477】
全ての統計分析は、データ処理、統計計算及びグラフィックスの言語と環境であるRバージョン3.5.1(R.Core Team 2018)を使用したスクリプトによって実施され、文書化された。コックス比例ハザードモデルは、パッケージサバイバル2.42.3で計算された(Terry et al.2000)。
【0478】
遠隔患者管理の処方にproBNPとADMとの組み合わせの使用に関する結果
NTproBNP及びMRproADMのエンドポイントとの関連付け
線形及びコックス比例ハザード回帰モデルは、NTproBNP及びMRproADMの両方が、計画外のCV入院による喪失日数の%及びあらゆる原因による死亡までの時間と有意に関連していることを示した(全てp<0.001)。モデルの比較では、両方のバイオマーカーを含む線形及びコックス比例ハザードモデルは、予測子としてNTproBNPのみを含むモデルよりも大幅に優れた性能を示した(全てp<0.001)。バイオマーカーと主要エンドポイントとの関連に関する生データを
図12に示す。
【0479】
これと一致して、2つのバイオマーカーの五分位数の一次分析及び主要エンドポイントのイベント率との関連は、MRproADMの場合、SOC群の喪失日数の%が、五分位数全体にわたって、1.4%から(MRproADM≦0.75nmol/L、最低五分位数、表14A)17.6%まで(MRproADM最大7.8nmol/L、最高五分位数)増加したことを示した。RPM群では、この傾向は同様であった(1.4%から12.1%)。NTproBNP(表14A)、ならびにエンドポイントのあらゆる原因による死亡(表14B)でも、バイオマーカーレベルが高いイベントに苦しむリスクが高くなるという同じ傾向が見られる。
【0480】
さらに、RPMがこれら2つのエンドポイントに与える影響は、五分位数全体で増加する傾向があった。例えば、NTproBNPは、最も低い五分位数(≦487.9pg/ml)の患者がSOCよりもRPMでわずかに多くの喪失日数の%を有していたため、喪失日数の%に対するRPMの治療効果の予後診断力を有していたが、それらの患者では最も高い五分位数(3701.2-35000pg/mlを有する)では、SOC群で喪失された日数の%が著しく減少した。MRproADMについても、エンドポイントのあらゆる原因による死亡でも同じ傾向が見られた。
【0481】
RPMに推奨される患者の選択シナリオ
患者がRPMに推奨されるべきではない選択のカットオフは、表15に示すように、望ましい安全性(感度100%、98%、95%)及び患者選択基準(計画外のCV入院又はあらゆる原因による死亡;あらゆる原因による死亡のために少なくとも30日間/年の喪失日数)に応じて、NTproBNPでは125.1~413.7pg/ml、MRproADMでは0.63~0.75nmol/Lの範囲であった。
【0482】
望ましい感度が低いほど、重要なバイオマーカーのカットオフが高くなり、RPMに推奨されない患者の比率が高くなった。また、望ましい感度が低いほど、バイオマーカーガイダンスの陽性予測値(PPV)は高くなった。例えば、365日間のうち30日間以上の喪失に苦しんでいる患者の5%がRPM(95%感度)を受けないことを許可した場合、バイオマーカーの組み合わせによってRPMを推奨される患者の21.5%がイベントを経験することになる。比較のために、元の試験母集団の全SOC群におけるこのイベントの割合は16.4%であった。このPPVの増加は、RPMに推奨された母集団の27.0%の減少と関連していた。
【0483】
バイオマーカーガイダンスのこのシナリオは、
図9のパネルBに示されている。したがって、バイオマーカーは、重要な母集団をより正確かつ効率的に定義することを可能にした。特に、RPMを推奨される患者の比率は、95%の感度で両方のシナリオで約4分の1に減少する可能性がある。NTproBNPとMRproADMとを併用した100%の感度でも、RPMから10.8%及び13.9%を除外することができた(表15)。
【0484】
NTproBNPとMRproADMとの併用によるRPMに推奨される母集団の減少により、NTproBNPのレベルがかなり高いにもかかわらず、MRproADMのレベルがかなり低い(
図9Bの4分割された右下部分)イベントのない患者を除外することができた。これらは、リスク層別化のためのNTproBNPの単独使用に基づくRPMに組み入れられていた(
図9、パネルA)。
【0485】
単一のバイオマーカーと調査された二重のバイオマーカーのガイダンスを比較すると、2つのバイオマーカーを使用することの優位性は、安全性が高いことで特に明白であり、365日のうちの30日以上の喪失日数(それぞれ、あらゆる原因による死亡)に関して100%の感度では、NTproBNPだけでも、RPMを推奨される母集団は患者の3.4%(3.4%)を減らし、4.0%(3.9%)の特異度に達する。これは、NTproBNPとMRproADMとの組み合わせを使用した場合、3倍以上高くなり、RPMが推奨される集団は患者の10.8%(13.9%)を減らし、12.9%(15.7%)の特異性に達する。
【0486】
365日のうち30日以上の喪失日数に関する95%の感度の場合、NTproBNPだけで、RPMが推奨される集団は患者の23.4%を減らし(
図9、パネルA)、27.1%の特異度に達する。これもまた、MRproADMを追加で使用すると増加し、RPMが推奨される集団は患者の27.0%を減らし、31.4%の特異性に達することができた(
図9、パネルB)。
【0487】
<100%の全ての感度について、これらの数値は、両方のバイオマーカーの情報を統合するために使用される正確な組み合わせアルゴリズムに依存することに留意されたい。例えば、両方のバイオマーカーの重量が等しい例で検討したアプローチ(方法を参照)に従って、あらゆる原因による死亡に対する感度が95%のシナリオでは、NTproBNPだけで、RPMに推奨される母集団が32.3%減少し(カットオフ≧383.3pg/ml)、一方このシナリオの二重バイオマーカーガイダンスでは、25.6%の減少のみが見られた(表15)。選択手順でMRproADM(単一マーカー感度100%)を追加で使用することにより、除外率をさらに36.0%に上げることができる。
【0488】
RPMの有効性に関するシナリオの評価
表15は、主要エンドポイント及び全ての副次的エンドポイントに関して、無作為化された群のバイオマーカーベースの削減の効果を示している。エンドポイントへの影響は、特に最も効率的なシナリオとエンドポイントのあらゆる原因による死亡率について、主に有意なままであった。さらに注目すべきことに、p値は試料のバイオマーカーベースの減少によって影響を受けるため、効果の推定値は元の試験の結果と非常に類似したままであり、ほとんどのエンドポイントに対するRPMの有効性を示している。これは、後者のシナリオのカプランマイヤー曲線とエンドポイントのあらゆる原因による死亡によっても強調された(
図11を参照)。あらゆる原因による死亡の治療必要数(NNT)は、患者を除外することで低下し得る。≧30日の喪失日数/年(あらゆる原因による死亡)に関する95%の感度のシナリオでは、NNTは元の母集団の28からバイオマーカーを介して選択された減少した部分母集団の23(21)に低下した。
【0489】
95%シナリオのさらなる分析:患者背景及びRPM介入
≧30日の喪失日数/年のエンドポイントに関して95%の感度でのバイオマーカーガイダンスシナリオ(すなわち、≧8.2%の喪失日数)では、特定された亜群の患者背景が説明されている。このシナリオのバイオマーカーカットオフは次のとおりであった:≧413.7pg/mlのNTproBNPのレベル及び≧0.75nmol/LのMRproADMのレベルの両方を有する患者のみがRPMに推奨された(表16を参照)。
【0490】
これにより、主要エンドポイントに関連して、95%の感度で、n=1098/1538(71.4%)の患者がバイオマーカーで選択されたデータセットに残った。表16aは、無作為化治療群ごとのこれらの患者の背景を示し、表16bは、選択された患者と選択されていない患者との背景を示している。表16aのデータは、バイオマーカーに基づく選択にもかかわらず、両方の無作為化治療群が有意差なしに同等のままであることを確認している。表16bは、選択された患者のバイオマーカーが、LVEFが低く、NYHA分類が高いほどリスクが高いことを示している。
【0491】
試験中にRPM群に属していた患者が利用できた独自の電子健康記録データに基づいて、さらなる結果が得られた。現在の実施例で検討したシナリオでは、RPMから除外された患者の緊急事態の発生率は、RPMに推奨された患者よりも大幅に低かった(中央値0、IQR 0~1対中央値1、IQR 0~2、ウィルコクソン順位和検定、p<0.001、
図10A)。したがって、この結果は、有害事象を経験するリスクがあるためにRPMをより必要としている患者を特定するという目的と一致している。さらに、予想されるように、調査されたバイオマーカーガイダンスシナリオを考慮してRPMに推奨されなかった患者にTMCスタッフが費やした医療努力は、RPMに推奨された患者に費やされた努力よりも大幅に低かった(平均305分、SD 88分対平均355分、SD141分;t検定、p<0.001、
図10B)。
【0492】
最初の試験でRPMに割り当てられた個々の患者の電子健康記録から推定できる努力データに基づくと、このバイオマーカーガイダンスシナリオではかなりのスタッフ時間を節約できたはずである。TMCが試験のRPM群の患者に費やした医療努力の合計推定時間は、4332時間(約患者当たり5.7時間)であった。TMCが費やした非医療的努力の時間は、356時間(約患者当たり0.5時間)であった。このうち、ここで調査したバイオマーカーのカットオフを下回っている患者にRPMが推奨されていなかった場合、1170時間の医療努力と99時間の非医療努力を節約できたはずである(患者の個の部分母商談の詳細な説明については、表16a、bを参照されたい)。これらの結果は、他の望ましい感度又は他のエンドポイント(あらゆる原因による死亡)に基づく他のバイオマーカーガイダンスシナリオと質的に類似していることに留意されたい。
【0493】
さらなる結果は、エンドポイントのあらゆる原因による死亡率に関して95%の感度で選択された患者に関連している。
図11は、バイオマーカーベースの個別化されたコホートにおける2つの治療群のカプランマイヤー曲線を示している。
【0494】
要約すると、TIM-HF2のバイオマーカーサブスタディの現在の実施例では、NTproBNP(カットオフ<383.3pg/ml)とMRproADM(カットオフ<0.75nmol/L)との組み合わせで72.5%の元のコホートと同じ利益を有し、元々無作為化された患者を選択することができる。したがって、ベースラインでこれら2つのバイオマーカーを簡単に測定することにより、RPM指標をよりリスクの高いコホートに個別化することができる。注目すべきことに、バイオマーカーテストはどの介護者からも簡単に受けることができ、他の分析前の手順を必要としない。血液試料は、主要な研究で証明されているように、標準的な郵便サービスによって非常に費用対効果の高い中央検査室に送ることができる(Koehler et al 2018a)。
【0495】
実施例3は、主に、NTproBNP及びMRproADMの予後効果を分析し、これらは両方とも転帰と有意に関連している。2つの無作為化された群を比較すると、治療の効果は両方のマーカーによって有意には予測されていない。したがって、これらのマーカーを使用するアプローチは、RPMから利益を得ていない患者を特定するために主として採用された。これは、イベントのないSOC群のバイオマーカーを分析することによって行われた。このアプローチによって特定されたカットオフは、無作為化されたコホートに適用され、選択された集団を有効性について比較した。
【0496】
実施例3は、RPMの効果が主に同じままであることを示している。このアプローチは、RPMの推奨を個別化することができ、この実施例では、適格なコホートを全母集団の71.4%に減らし、したがって効率的に不要なコストのかかる治療を回避することを可能にした。
【0497】
【0498】
【0499】
【0500】
【0501】
【0502】
【0503】
【0504】
【0505】
【0506】
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