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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ハンドヘルドセッティングツール
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/06 20060101AFI20241022BHJP
   B25C 1/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B25C1/06
B25C1/04
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021577400
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2020053023
(87)【国際公開番号】W WO2020259870
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】102019004422.3
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019005599.3
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019005792.9
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019006714.2
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521565257
【氏名又は名称】レフォア・ゲーベーエル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルノ・メクレンブルク
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-526274(JP,A)
【文献】国際公開第2018/104406(WO,A1)
【文献】特開2018-153876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/04 - 1/06
B25D 11/00 - 13/00
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地中に釘またはボルトを打込むためのハンドヘルドセッティングツールであって、
前記下地中に前記釘または前記ボルトを打込む役割を果たすアクチュエータ(11)を駆動するドライブ
前記釘または前記ボルトを打込むために、前記ドライブにより駆動される前記アクチュエータ(11)内における第1の可動パーツまたは第1の可動ピストン(11)の第1の移動プロセスを、前記アクチュエータ(11)内における第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン(11)の第2の移動プロセスから少なくとも部分的に切り離すデカップリングデバイスと、を備え、
前記ドライブは、電動ドライブであり、前記電動ドライブは、少なくとも第1のコイル(711)および第2のコイル(721)を備え、前記第1のコイル(711)は、磁束コンセントレータ(710)の上および/または中に形成され、前記第2のコイル(721)は、前記アクチュエータ(11)内における前記第1の可動パーツまたは前記第1の可動ピストン(11 )の前記移動プロセスを実現する可動要素(720)の中または上に形成された可動コイルである、ハンドヘルドセッティングツール。
【請求項2】
前記デカップリングデバイスは、前記第1の可動パーツまたは前記第1の可動ピストン(11)の運動エネルギーが、前記第2の可動パーツまたは前記第2の可動ピストン(11)に対して伝達され、前記第2の可動パーツまたは前記第2の可動ピストン(11)の運動エネルギーが、前記釘または前記ボルトを打込むために使用されるように構成される、請求項1に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項3】
前記第1の可動パーツまたは前記第1の可動ピストン(11)は、前記第2の可動パーツまたは前記第2の可動ピストン(11)に対して堅固に連結されない、請求項1または2に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項4】
圧縮性流体が、前記第1の可動パーツまたは前記第1の可動ピストン(11)と前記第2の可動パーツまたは前記第2の可動ピストン(11)との間に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項5】
前記第1の可動パーツまたは前記第1の可動ピストン(11)は、第1の行程長を有し、前記第2の可動パーツまたは前記第2の可動ピストン(11)は、第2の行程長を有し、前記第1の行程長および前記第2の行程長は、切り離される、請求項1から4のいずれか一項に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項6】
前記アクチュエータ(11)は、シリンダをさらに備え、前記第1の可動ピストン(11)および前記第2の可動ピストン(11)は、前記シリンダ内において互いに対向して配設され、少なくとも1つのピストンシールが、前記シリンダ内に形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項7】
前記ピストンシールは、
- 1つ以上のピストンリング、および/または
スダイナミックシール
を少なくとも備える、請求項6に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項8】
リセッティングデバイスが、前記第2の可動パーツまたは前記第2の可動ピストン(11)のために構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項9】
前記第1の可動パーツもしくは前記第1の可動ピストン(11)、前記第2の可動パーツもしくは前記第2の可動ピストン(11)、および/またはシリンダ滑走表面は、硬質クロムめっきされる、請求項1から8のいずれか一項に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項10】
前記ドライブ内にさらなるアクチュエータ(10)をさらに備え、前記さらなるアクチュエータ(10)は、前記アクチュエータ(11)内の前記第1の移動プロセスを実現する、請求項1から9のいずれか一項に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項11】
前記アクチュエータ(11)内における前記第2の可動パーツまたは前記第2の可動ピストン(11)のセッティング行程が、前記さらなるアクチュエータ(10)の移動とは無関係である、請求項10に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項12】
セッティング動作中に前記第1のコイル(711)中の電流が、前記第2のコイル(721)中の電流とは逆方向に少なくとも一時的に流れ、それにより前記第1のコイルと前記第2のコイルとが相互に反発する、請求項1に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項13】
セッティングピストン(610)としての前記第2の可動パーツまたは前記第2の可動ピストン(11)は、前記ドライブ(600)の質量の最大で1/4を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項14】
前記ドライブ(600)は、前記ハンドヘルドセッティングツール内に軸方向に可動に配設される、請求項1から13のいずれか一項に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項15】
1つ以上の行程開始位置に前記ドライブを固定するように構成された開閉可能ロック(620)と、
ョックアブソーバ(64)と、
セッティングデバイスであって、行程終了位置範囲から行程開始位置へと前記ハンドヘルドセッティングツールに対して前記ドライブを移動させて戻すように構成されたリセッティングデバイスと、
をさらに備え、
セッティング動作の過程で、前記開閉可能ロック(620)は、前記ドライブ(600)が被る反動の結果として行程開始位置(A)から前記行程終了位置範囲に向かって移動することが可能となるように開くまたは開かれることが可能であり、前記ドライブ(600)の復帰移動は、前記ショックアブソーバ(640)により制動されることが可能である請求項1から14のいずれか一項に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項16】
前記ハンドヘルドセッティングツールの基準システムにおいて、前記第2の可動パーツまたは前記第2の可動ピストン(11、610)の重心(S1)の延長経路が、可動ドライブの延長移動経路に対して平行である、請求項1から15のいずれか一項に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項17】
少なくとも前記釘または前記ボルトの前記打込みの間に、前記第2の可動パーツまたは前記第2の可動ピストン(11、610)の前記重心(S1)の前記延長経路は、前記ドライブの重心(S2)の可能な限り近くを通過し、前記ドライブの前記重心(S2)からの前記延長経路(S1)の最小距離が、セッティング動作中における前記ハンドヘルドセッティングツール全体の重心からの前記延長経路の最小距離の常に少なくとも1/5の短さである、請求項16に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【請求項18】
前記ハンドヘルドセッティングツールは、少なくとも1つのハンドル(630)を備え、前記ハンドル(630)は、前記ハンドヘルドセッティングツールのパーツに対して回転可能に取り付けられ、軸方向に可動なドライブが、前記ハンドヘルドセッティングツールの中または上に配設され、少なくとも1つの機械ダンパー(641)が、前記ハンドル(630)と前記ハンドルが上に回転可能に取り付けられた前記パーツとの間の回転動作をダンピングするために設けられ、少なくとも1つのデバイス(621)が、セッティング動作が行われない間に前記回転動作を阻止するように設けられることが可能である、請求項1から17のいずれか一項に記載のハンドヘルドセッティングツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釘またはボルトを打込むまたはセッティングするためのハンドヘルドセッティングツールに関する。
【背景技術】
【0002】
事前に張力印加されたガススプリングにおけるセッティング動作に必要なエネルギーを保存するセッティングツールまたは釘セッティングツールは、例えば特許文献1から一般的に知られており、「Fusion Technology」という商標名でSenco(登録商標)より市販されている。これと同じ原理で作動するツールは、HITACHI(登録商標)からも提供されており、120Jの打込みエネルギーまたはセッティングエネルギーを達成すると言われている。
【0003】
かかる釘打ち機または釘セッティングツール(「空気圧式セッティングツール」)は、木材に釘を打込むまたはセッティングすることに非常に適するが、燃焼動力式セッティングツールに比べて複数の欠点を有し、適用範囲が非常に限定される。
【0004】
例えば、空気圧式セッティングツールは、一方においては打込みエネルギーまたはセッティングエネルギーの低さにより、および他方においては場合によって生じる反動により、鋼またはコンクリートなどの硬い下地中へのボルトの打込みまたはセッティングに非常に適するとは思われない。この後者の反動は、以下のエッジケースにより示すことができる。すなわち、長さsの釘が下地に打込まれるべきであるが、下地および釘がまったく降伏しないケースである。このケースでは、下地は、弛緩したガススプリングに対してカウンターベアリングを形成する。次いで、セッティング動作中にガススプリングの弛緩により距離sにわたり空気圧ガンが加速されると、力Fを有するガススプリングはw=∫(F*ds)の仕事を実施する。コンクリートおよび鋼中への打込み/セッティングに必要なエネルギーなどの打込み/セッティングエネルギーを用いた場合に、これは、ユーザに対して悲惨な結果をもたらす可能性のある反動エネルギーを即座に引き起こす可能性がある。また、反動は、電動式セッティングツールの場合も問題となり得る。
【0005】
既知の空気圧式セッティングツールのもう1つの欠点は、同一の打込みエネルギーを有する燃焼動力式セッティングツールに比べて、比較的低い打込みエネルギーならびに比較的高い重量および容積を有する点である。この欠点は、これらのデバイスの比較的低い動作圧力に本質的に起因する。特許文献1が、100psig~120psigの間の低い動作圧力を、すなわち空気圧アクチュエータの通常の動作圧力に相当する圧力を明確に推奨するのももっともなことである。すなわち、多数の要件が空気圧式セッティングツール中のピストンリングに対して課せられる。空気圧式セッティングツールは、作動ガスリザーバすなわちガススプリングにおける漏れに起因する圧力損失を、セッティングツールの全耐用寿命の間にわたり無視できるレベルに維持しなければならず、しかしながらセッティング動作中に空気圧系の極めて高い摺動速度に耐えなければならず、また摺動の間に最小限の摩擦を生じさせなければならない。例えば120psigではなく1.2kpsigの圧力が用いられた場合には、シールに対して印加される接触圧力は、封止を実現するためにさらに数十倍高い圧力でなければならず、空気圧用途において通常使用されるあらゆるピストンシールのPV値は、約30m/sの中程度のピストン速度(セッティングツールの場合)であってもはるかに上回られてしまうことになる。したがって、特許文献1が120psigをはるかに上回る動作圧力に対して明確に警告を発していることは理解できる。
【0006】
特許文献2では、ローリングダイヤフラムによりこの封止の問題を解消することがHILTI(登録商標)社により示唆されているが、かようなダイヤフラムの耐用寿命は、このダイヤフラムがセッティングツールにおいてさらされる甚大な動的応力を所与条件とした場合には疑わしいものとなるように思われる。
【0007】
既知の空気圧式セッティングツールのさらなる欠点は、駆動エネルギーの調節が困難な点であるが、これは、例えば燃焼動力式ツールなどでは容易に実現できる。例えば、発火性ガス-空気混合物の燃焼により駆動されるセッティングツールでは、噴射される燃料の量は変更可能である。パウダー作動式ツールでは、カートリッジが用途に適合化された推進装薬を装填され得る。
【0008】
最後に、ピストンドライブを有する既知のセッティングツールのもう1つの欠点は、これらのセッティングツールにおいてマズルフリップおよび反動が顕著である点であり、これらはセッティングクオリティを低下させ、ユーザに対して肉体的負荷をかける恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2009/046076号
【文献】独国特許第102007000219号明細書
【文献】独国特許出願公開第102009031665号明細書
【文献】国際公開第2019/121016号
【文献】国際公開第2012/079572号
【文献】国際公開第2014/056487号
【文献】国際公開第2018/104406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記で参照した問題を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの問題は、請求項1に記載の特徴を有するハンドヘルドセッティングツールにより解消される。好ましい実施形態が従属請求項に定義される。
【0012】
本発明のさらなる利点およびさらなる実施形態は、以降の詳細な説明および特許請求の範囲全体から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態によるハンドヘルドセッティングツールを示す図である。
図2】一実施形態によるアクチュエータを示す図である。
図3】一実施形態によるアクチュエータを示す図である。
図4a】テンショニングデバイスの実施形態を示す図である。
図4b】テンショニングデバイスの実施形態を示す図である。
図4c】テンショニングデバイスの実施形態を示す図である。
図5】一実施形態によるアクチュエータを示す図である。
図6】一実施形態によるハンドヘルドセッティングツールを示す図である。
図7】一実施形態によるハンドヘルドセッティングツールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、既知の空気圧式セッティングツールおよび電動式セッティングツールを始めとして、さらなる実施形態および例に基づき本発明を説明する。これらの例は、本発明のより良好な理解を促す役割を有するものであり、したがって限定的なものとして理解されるべきではない。以降の説明では、同一の参照番号が同一のまたは対応する要素に対して使用され、それにより説明の繰り返しを大幅に回避する。
【0015】
一実施形態による下地(例えば鋼またはコンクリート)中に釘またはボルトを打込むまたはセッティングするためのハンドヘルドセッティングツールは、好ましくはガススプリングドライブまたは電動ドライブである、ドライブまたはピストンドライブを備え、このドライブは、アクチュエータ11を駆動する。駆動されるアクチュエータ11は、下地中に釘またはボルトを打込む役割を果たす。ハンドヘルドセッティングツールは、デカップリングデバイスをさらに備え、このデカップリングデバイスは、釘またはボルトを打込むまたはセッティングするために、ドライブにより駆動されるアクチュエータ11内の第1の可動パーツまたは第1のピストン11の第1の移動プロセスを、アクチュエータ11内の第2の可動パーツまたは第2のピストン11の第2の移動プロセスから少なくとも一部においてまたは部分的に切り離す(理解を促すために、本明細書の参照番号は、ガススプリングドライブを有するセッティングツールを示す図1の特徴を例としてのみ参照する。しかし、デカップリングデバイスのコンセプトは、他のドライブ、特に電動ドライブに対しても使用することができる)。
【0016】
有利には、デカップリングデバイスは、第1の可動パーツまたは第1の可動ピストン11の(ドライブにより引き起こされた)運動エネルギーまたは並進エネルギーが、第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン11に対して伝達され、第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン11の運動エネルギーまたは並進エネルギーが、釘またはボルトを打込むために使用されるように設計され得る。
【0017】
したがって、ドライブ(以降で詳細に説明されるようなガススプリングドライブまたは電動ドライブ)は、アクチュエータ11を、換言すれば行程制御要素を駆動する役割を果たし、このアクチュエータ11は、この場合には空気圧アクチュエータとして構成され得る。
【0018】
本明細書では、デカップリングデバイスは、ドライブにより実現される第1の可動パーツ(例えばアーマチュア)または第1の可動ピストン11の移動プロセス(例えばシリンダ内の可動パーツ/可動ピストンの並進移動)を、第2の可動パーツ(例えばセッティング要素)または第2の可動ピストン11(例えばセッティングピストン)の移動プロセスから切り離す。
【0019】
これらの移動プロセスの部分的な切離しは、例えば第1のピストンの並進移動が第2のピストンの並進移動を直接的、同期的、または同時にもたらさない、およびその逆であることを確保することにより実現され得る。換言すれば、好ましくは、第1のピストンの移動プロセスは、ある一定の遅延時間の後にのみ第2のピストンの移動をもたらす。したがって、(即時的な)反動は、第1のピストンに対して直接的には伝達されず、したがってドライブに対して直接的には伝達されない。
【0020】
有利な実施形態では、デカップリングデバイスは、第1の可動パーツまたは第1の可動ピストン11が第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン11に対して堅固に連結されない、あるいは第1の可動パーツまたは第1の可動ピストン11と第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン11との間が直接的には接触しないように形成され得る。この実施形態では、第1のピストンの並進移動が第2のピストンの並進移動を直接的にはまたは同期的にはもたらさないことが、当業者には理解されよう。
【0021】
有利な他の実施形態では、デカップリングデバイスは、第1の可動パーツまたは第1の可動ピストン11と第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン11との間に例えば空気などの圧縮性流体を有することにより形成され得る。例えば潤滑剤などの非圧縮性流体に起因して第1のピストンの並進移動が第2のピストンの並進移動を直接的にまたは同期的にもたらす非圧縮性流体と比較した場合に、圧縮性流体は、第1のピストンおよび第2のピストンの移動プロセス同士を少なくとも部分的に切り離し得る。例えば、圧縮性流体の圧縮と組み合わせて、第1のピストンと第2のピストンとの間の距離を幾分かより短くするだけで、第2の可動パーツまたは第2の可動ピストンの慣性モーメントは克服され、それにより第2の可動パーツまたは第2の可動ピストンがセッティング動作のために移動されることが可能となることが、当業者には理解されよう。
【0022】
有利には、第1の可動パーツまたは第1の可動ピストン11の行程長(第1の死点と第2の死点との間の距離)は、第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン11の行程長とは無関係である。これにより、ドライブの釘打込みエネルギー(釘セッティングエネルギー)が、第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン11のセッティング行程とは無関係に設定されることが可能となる。
【0023】
有利な他の実施形態では、アクチュエータ11がシリンダをさらに備えてもよく、第1のピストン11および第2のピストン11は、シリンダ内において互いに対向して配設され、少なくとも1つのピストンシールが、シリンダ内に形成される。これらのピストンシールは、1つ以上のピストンリングおよび/またはガスダイナミックシールであってもよい。ガスダイナミックシールは、(以降でさらに説明されるように)好ましくはラビリンスピストンシールタイプのものである。
【0024】
有利な他の実施形態では、アクチュエータ11は、リセッティングデバイス(例えば圧縮コイルばね)が、第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン11に対して形成されるようにさらに設計されてもよい。したがって、釘またはボルトの打込み(セッティング)後に、第2の可動パーツまたは第2の可動ピストンは、アクチュエータ11の第1の可動パーツまたは第1の可動ピストンとはほぼ無関係に、初期位置へと戻されることが可能となる。
【0025】
有利な他の実施形態では、ドライブはさらなるアクチュエータ10を備え得る。このアクチュエータ10は、(以降でさらに説明されるように)例えばガススプリングの一部であり、駆動されたこのさらなるアクチュエータ10がアクチュエータ11における第1の移動プロセスをもたらすように、第1の可動パーツまたは第1のピストン11に対して結合される。この実施形態では、アクチュエータ11内の第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン11のセッティング行程は、さらなるアクチュエータ10の移動とは無関係であり、そのため、釘打込みエネルギー(釘セッティングエネルギー)は、釘またはボルトを打込むセッティング行程とは無関係に設定されることが可能となる。
【0026】
図1は、他の実施形態によるセッティングツールの設計を概略的に示す。最初に、このセッティングツールの機能を、以下の構成要素および/またはアセンブリに基づき説明する。
- 第1のピストン11および第2のピストン11を有するアクチュエータ11
- ピストンロッド01および第3のピストン10を有する空気圧アクチュエータ10
- 作動ガスリザーバ20
- 電気化学エネルギー貯蔵部90
- モータコントローラ80
- モータ70
- 減速ギア60
- テンショニングデバイス50
- ロック40
【0027】
図1に示すハンドヘルドセッティングツールは、ガススプリングドライブを有するセッティングツールであり、このガススプリングドライブは、他の有利な実施形態では、作動ガスを有する少なくとも1つの作動ガスリザーバ20を有し、アクチュエータ10は、空気圧アクチュエータである。空気圧アクチュエータ10は、ピストンロッド01に対して連結された第3のピストン10を有する。第3のピストン10は、作動ガスリザーバ20と流体連通状態にあり、作動ガスリザーバ20と共にガススプリングを形成する。
【0028】
空気圧アクチュエータ10は、ガススプリングが最大張力下にある行程開始位置範囲と、ガススプリングが少なくとも部分的に弛緩された行程終了位置範囲との間で可動である。空気圧アクチュエータ10のこの駆動による移動によってアクチュエータ11内における可動パーツまたは可動ピストン11の移動が引き起こされるが、この移動は第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン11の移動(第2の移動プロセス)からは少なくとも部分的に切り離される点が、当業者には理解されよう。
【0029】
換言すれば、空気圧アクチュエータ10(第1のアクチュエータ)は、作動ガスリザーバ20と共に、事前に張力印加されたガススプリングおよびしたがってガススプリングドライブを形成する。ガススプリングに張力印加するためには、モータ70に、モータコントローラ80を介してエネルギー貯蔵部90(例えば充電式バッテリまたは燃料電池)から電気を供給される。モータ70は、減速ギア60を駆動する。減速ギア60は、テンショニングデバイス50を駆動する。テンショニングデバイス50は、減速ギア60の回転動作を並進移動へと変換し、空気圧アクチュエータ10のピストンロッド01に対して作用し、空気圧アクチュエータ10からの作動ガスを作動ガスリザーバ20内へと搬送するように、すなわちガススプリングに張力印加するようにこのピストンを移動させる。ロック40は、ガススプリングを張力印加状態にロックすることが可能である。釘またはボルト140を打込むために、ロック40は、例えば電磁アクチュエータ41により解除される。ガススプリングが張力印加された場合に空気圧アクチュエータ10のピストンにより変位される容積は、行程容積と呼ばれる。
【0030】
次に、図1によるセッティングツールの他のオプションの構成要素を説明する。
【0031】
参照番号30は、作動ガスリザーバ20および空気圧アクチュエータ10を相互に対して連結し得る弁を示す。この弁30は、作動ガスリザーバ20からアクチュエータ10内へガスパルスを伝導し、釘打ちプロセスの完了前にこの弁30を再び閉じるように、例えば特許文献3に記載の高速電磁アクチュエータ31およびばねにより能動的に制御されることが可能であり、この弁は、好ましくはアクチュエータ10の変位チャンバ内の圧力が、作動ガスリザーバ20内の圧力を上回る特定の数値を超過した場合に自動的に開く。硬い下地中に打込む場合にツールの反動がこのように軽減され得る点、および弁開口時間を選択することによりユーザが釘打込みエネルギーを変更し得る点が、当業者には理解されよう。しかし、これはツールの電気効率を犠牲にする。また、好ましくは、弁30は、アクチュエータ10のピストンにより形成され、この場合に、このピストンは遮断要素として機能しまたはかかる要素を有し、アクチュエータ10のシリンダは弁座を組み込むように設計され、ロック40からの力を利用することにより封止が実現され、このロック40は、力を生成するために例えばばねを有するか、または弾性設計を有することが可能である(この変形例は、図2を参照として以降で説明される)。
【0032】
参照番号120は、作動ガスリザーバ20内の温度を計測するために使用され得る熱電対を示す。参照番号100は、マノメータを示し、特に電気マノメータまたは電子マノメータを示す。このマノメータにより、作動ガスリザーバ20内の静圧を測定することができる。参照番号21は、第2の作動ガスリザーバを示し、この第2の作動ガスリザーバは、作動ガスリザーバ20に対して過圧状態に通常おかれ、第2の作動ガスリザーバの静圧は、例えばマノメータ101により計測され得る。作動ガスリザーバ21の目的は、作動ガスリザーバ20における漏れ損失を補償することである。これは、減圧弁32により実現され得る。温度補償のために、作動ガスリザーバ20内の作動ガスは、例えばペルチエ素子110により加熱または冷却されることが可能であり(ペルチエ素子110の代わりに例えばヒートポンプを使用することも可能である)、さらにこのペルチエ素子110は、作動ガスリザーバ20内の作動ガスと冷却要素または加熱要素111および112を有する環境との間において熱連結をもたらす。さらに、参照番号130は弁を示し、この弁を介して、作動ガスリザーバ21すなわち「トップアップリザーバ」が、外部から作動ガスで充填されることが可能となる。
【0033】
特に有利な実施形態では、ピストンロッド01を有するアクチュエータ10のピストンは、釘またはボルト140を打込むためにそれ自体において釘またはボルト140に対して(直接的には)作用しない。代わりに、アクチュエータ10は、そのピストンロッド01により打撃機構に対して作用し、それにより(ピストンロッド01に対して機械的に連結されたパーツを含む)アクチュエータ10の運動エネルギーが、第1のピストン(例えば図1のピストン11)から例えば第2のピストン(例えば図1のピストン11)などの可動パーツへ伝達され得る。釘またはボルト140は、完全にまたは大部分においてこの可動パーツの運動エネルギーにより打込まれ、第1のピストン11および可動パーツまたは第2のピストン11は、相互に対して堅固に連結されない(「デカップリングデバイス」)。
【0034】
例えば、第1のピストン11は、さらなる空気圧アクチュエータ11(「打撃機構」、第2のアクチュエータ)内のピストンロッド01を介してアクチュエータ10(第1のアクチュエータ)の補助により駆動される。このさらなる空気圧アクチュエータ11は、例えば空気(周囲圧力)で充填され得る。図1に示すように、第1のピストン11に加えて、空気圧アクチュエータ11は第2のピストン11を有する。説明されるように、第1のピストン11は、アクチュエータ10により駆動されることが可能であり、例えば単動式である。デカップリングデバイスにより第1のピストン11から少なくとも部分的に切り離されたアクチュエータ11の第2のピストン11は、好ましくは複動式であり、本明細書では例えば圧縮コイルばねの形態で示されるリセッティングデバイスを備える。
【0035】
封止を実現するために、アクチュエータ11の第1のピストンおよび第2のピストンは、ラビリンスピストン圧縮機のピストンの様式で設計されることが可能であり、それにより必須の一時的封止が気体力学的に実現され得る。
【0036】
釘またはボルト140を打込むためには、ロック40を解除することにより、ピストンロッド01およびしたがってアクチュエータ10のピストンと、ピストンロッド01に対して連結されるアクチュエータ11の第1のピストン11とが、事前に張力印加されたガススプリングによって加速され得る。これは、アクチュエータ11の第1のピストンと第2のピストンとの間の圧力をほぼ指数関数的に上昇させる。すなわち、運動量および運動エネルギーが、アクチュエータ11の第1のピストンと第2のピストンとの間に形成されたガスバッファにより、セッティングツールの直接的にガススプリング駆動されるパーツ(アクチュエータ10のピストン10、ピストンロッド01、アクチュエータ11の第1のピストン11)から、アクチュエータ11の第2のピストン11へ、ならびに結果としてさらにはそのピストンロッドおよび付属パーツ(例えば戻しばね)へ伝達される。これは、あらゆる質量減少を考慮して、移動質量同士が相互に専門的に合致されることを必要とする。したがって、釘またはボルト140は、最終的にアクチュエータ11の第2のピストン11のピストンロッドを介して打込まれる。アクチュエータ11のこの第2のピストン11が複動式である場合には、すなわち釘に対面するアクチュエータ11のシリンダの側部が十分な強度で閉じられる場合には、(図1に示すように)第2のピストンを戻すための第2の流体またはガスクッションは、釘に対面する第2のピストン11の側部におけるアクチュエータ11のシリンダのセッティング動作中に構成され得る。これは、釘またはボルト140に対するアクチュエータ11の第2のピストン11の激しい打撃を防止する。
【0037】
加速および結果的な釘の打込みが開始される前に、アクチュエータ11の第1のピストンから第2のピストンへの十分な(好ましくは少なくとも50%の)運動量移行を可能にするために、釘またはボルト140を打込むアクチュエータ11の第2のピストン11のピストンロッドと釘140自体との間には隙間が存在すべきである。すなわち、好ましくは、打込みエネルギーは、アクチュエータ11の(ピストンロッド等を含む)第2のピストンの運動エネルギーにほぼ由来する。
【0038】
短い全長を有するアクチュエータ11を実現するために、および/またはピストンロッドと釘との間に小さい隙間のみを必要とするようにするために、アクチュエータ11の第1のピストンから第2のピストンへのエネルギー伝達は、可能な限り急激なものであるべきであり、これは、少なくとも2つの実施方法で実現され得る。すなわち、(i)第一に、1つ以上の通気開口がシリンダ中に配設され得る。これにより、第1のピストンは、この(これらの)開口を経由して例えばツールハウジング内へのガスまたは空気の移動および移送を開始することが可能となり、それにより、最初は第1のピストンの移動は、第1のピストンと第2のピストンとの間の空間内の圧力に著しい上昇をもたらさない。ピストンドライブまたはそのアクチュエータ10により加速されたアクチュエータ11内の第1のピストン11がこの通気開口を通過する場合にのみ、これらの開口は大部分において閉じられ、その結果として、通気開口が存在しない場合よりもはるかにより高い、特により急激な圧力上昇が、アクチュエータ11のこれらの2つのピストン間の空間において生じ得る。(ii)第二に、アクチュエータ11の第2のピストン11が、ある特定の分離力の超過後にのみ動作を開始し得るような機構によって阻止され得る。かかる機構は、形状嵌めまたは圧力嵌めの様式で動作することが可能であり、例えばいわゆるフォースリミッタまたは銃の遊底などから知られる。両変形例は、相互に組み合わせることが可能である。
【0039】
アクチュエータ11は、セッティング行程と、(アクチュエータ10および作動ガスリザーバ20により形成された)事前に張力印加されたガススプリングが張力印加される移動距離とを、相互に大部分において無関係なものにする。これにより、可変打込みエネルギーを実現することがより容易になり、すなわちガススプリングが張力印加される移動距離およびしたがって行程容積を相応に調節することのみが必要となる。これは、アクチュエータ11により決定されるセッティング行程を変更しない。
【0040】
次に、本発明によるセッティングツールの構成要素の設計特徴に関する実施形態のさらなる態様を説明する。
【0041】
図2は、ガススプリングのための図1の空気圧アクチュエータ10(第1のアクチュエータ)の可能な他の実施形態を示す。
【0042】
以降において詳細に説明されるように、第3のピストン10aは、複数のピストンリング15aを備え、空洞部16aが、軸方向にすなわち第3のピストン10aの移動方向に沿ってピストンリング15a同士の間に配置されるか、またはピストンが、かかる空洞部を有するように構成され、これらの空洞部16aは、非圧縮性流体で好ましくは完全にではないが部分的に充填される。
【0043】
図2では、ピストンロッド11aを有するピストン10aが、シリンダ12a内に配設される。シリンダ12aは、高圧端部p1に向かって、すなわち作動ガスリザーバに向かって弁座13aを組み込むように構成される。ピストン10aは、関連する遮断要素として構成される。図1のテンショニングデバイス50が、好ましくはばねによりピストン10aに対して十分な接触圧力を印加してロック状態にすることが可能であるならば、作動ガスリザーバは、(既述のようにピストンおよびシリンダにより形成された)弁によってロックされた張力印加(発射可能)状態でさらに封止される。したがって、ここでの弁の役割は、図1の弁30の役割と同一である。図2のピストンロッド11aは、図1のピストンロッド01と同一である。
【0044】
図2では、ピストン10aは、例えば2つのピストンガイドリング14aを有する。しかし、図2による好ましいピストンの特徴は、ピストン10aが複数のピストンリング15aをさらに有し、これらのピストンリング15aの接触圧力が例えばOリングによって、しかしさらにはあらゆる他の既知の方法および手段によって印加され得る点である。図2は、4つのピストンリング15aを示すが、より多数のまたはより少数のピストンリング15aを設けることが可能である。各ピストンリング15aの間において、ピストン10aは複数の空洞部16aを有するようにさらに構成される。好ましくは、これらの空洞部は液体潤滑剤で完全にではないが部分的に充填される。
【0045】
また、カスケードの形態の複数の空洞部(すなわち各空洞部の効果が前の空洞部から得られ、後の空洞部に対して作用するように、空洞部同士が連続する)と、信頼性の高い潤滑を用意することと、により、封止されている圧力が様々なシールにわたり均等に分散し得る。シールあたりの接触圧力は相応に減圧されることが可能となり、したがって各シールのp*v応力は、相応に軽減され得る。図2に示す初期行程位置では、シリンダ12aおよびピストン10aにより形成された弁が閉じられる。したがって、この位置では、作動ガスは、圧力p1で低圧側p0へと作動ガスリザーバから逃げるためには、最初に弁を通過し、次いで潤滑化されたピストンリングおよび空洞部の全カスケードを通過しなければならない。カスケード状の「バッファされた」潤滑化されたピストンリング(機械的シール)により決定される漏れは、ピストン10aが行程開始位置へと後に完全に復帰するまでのセッティング動作中のみとなる。
【0046】
ピストン10aおよびシリンダ12aは、十分に頑丈な、硬質の、特に耐摩耗性が高く被研磨性が高い鋼から作製されることが提案される。非常に適した材料としては、1.4108などのすなわち冷間加工鋼および非常に微細なマルテンサイト構造を有する特に加圧窒化鋼などの鋼が挙げられ、これは粗粒の炭化物または炭窒化物が存在しないことをさらに特徴とする。ここで、「粗粒」は、線形析出した炭化物の場合を含み、20μm超の、および好ましくは10μm超の一方向における最大延在を意味するものとして理解される。
【0047】
好ましくは、鋼1.4108(材料番号)をピストン10aおよびシリンダ12aに対して使用した場合に、適切な焼き戻し処理により、ピストン10aよりもシリンダ12aに対して若干より高いロックウェル硬さが設定される(例えばピストンは56HRC~58HRC、シリンダまたはその滑走表面は58HRC~60HRC)。
【0048】
さらに上述の冷間加工鋼に加えて、積層造形法(例えばレーザ焼結法)を利用してほぼネットシェイプに加工され得るより新しい材料が、ピストンおよび/またはシリンダに対して特に適する。特に、十分な頑丈さを有する非常に硬い粉末冶金鋼(例えばVibenite(登録商標)290)、および第4族元素に基づく金属ガラスをここでは挙げておく。
【0049】
非常に好ましくは、ピストン10aおよびシリンダ12aの滑走表面は、硬質の材料層またはトライボロジカル層で被覆され得る。CVD堆積された、主として四面体配位された炭素(ta-C)が、シリンダ12aまたはその滑走表面を被覆するのに特に適する。ピストン10aに適したコーティングもまたta-Cであるが、a-C/WC、TiN、(固相溶液またはMoN/TiN「超格子」として)TiMoN、TiN-MoS2、ならびにCr、Ti、Zr、Hfの窒化物、炭化物、および炭窒化物、およびさらにはアモルファス形態のまたはナノ結晶コランダムもしくはマイクロ結晶コランダムの酸化アルミニウム(および/またはアルミニウム酸窒化物)もまた、ピストン10aに適したコーティングである。ピストンリングに特に適した材料が、具体的には、好ましくはPTFEおよび/またはグラファイトおよび/または六方晶窒化ホウ素(hBN)および/またはMoS2などの固体潤滑剤で充填された、ならびに所要に応じて特にガラス繊維、炭素短繊維、焼成シリカで(特にセラミック)強化された、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)および/またはポリイミド(PI)のグループの耐温度性かつ耐アブレーション性のプラスチックが、および/または超高分子重量ポリエチレン(UHMWPE)、および/または液晶ポリエチレンテレフタレートが、専門的に選択される。さらに好ましくは、ピストンリング材料も、摩擦対象すなわちシリンダ12aの滑走表面との摺動摩擦係数が低くなり、好ましくはこの滑走表面との間に著しい固着を形成しないように、およびさらには比較的高い熱伝導性および低い熱膨張係数を有するように選択される。例えばアンチモン含浸されたグラファイトなどの炭素ベース材料が、ガイドリングに特に適する。
【0050】
図2に示すような(図1の)アクチュエータ10の熟練を要する実装により、作動ガスリザーバ20の不透過性を損なうことなく、非常に高い圧力(例えば少なくとも10バール、より好ましくは少なくとも20バール、より好ましくは少なくとも40バール、より好ましくは少なくとも60バール、より好ましくは少なくとも80バール、より好ましくは少なくとも100バール、およびより好ましくは少なくとも120バール)と、非常に高いピストン速度(例えば少なくとも30m/s、好ましくは50m/s超)での動作とが、容易に可能になる。
【0051】
図3は、図1の空気圧アクチュエータ10(第1のアクチュエータ)の可能な他の実施形態を示す。
【0052】
以降において詳細に説明されるように、空気圧アクチュエータ10は、この第3のピストン11bに加えて第4のピストン10bを備え、リザーバ13bが、第3のピストン11bと第4のピストン10bとの間に形成され、このリザーバ13bは、好ましくは以降において示唆される特性を有し以降で説明されるような作動ガスに対して適合化された非圧縮性流体で充填される。
【0053】
したがって、図3のこの実施形態は、ガススプリングのシールを実現する完全に異なるおよび新規の方法を示す。(図1の)アクチュエータ10のピストンロッド01に対して連結されたまたはさらにはこのピストンロッド01と同等のピストン10は、図3では参照符号11bである。さらに、第4のピストン10bが存在し、この第4のピストン10bは、例えば2つのガイドリング14bおよび例えばピストンリング15bを有する。これらの2つのピストン10bおよび11bは、相互に対して堅固に連結されない。12bは、空気圧アクチュエータ(第1のアクチュエータ10)のシリンダを示す。リザーバ13bが、シリンダ12b内のこれらの2つのピストン間にさらに配設され、シリンダ12bは、流体(非圧縮性流体)で充填される。好ましくは、この流体は、ポリマーもしくはオリゴマーが溶解された、および/またはMoS2および/またはhBNおよび/またはグラファイトなどの固体潤滑剤が分散された液体潤滑剤であり、この流体が顕著なせん断減粘性を有し場合によってはさらに揺変性を示す(リザーバ13b内の流体の揺変性は、ロック解除中にロック40を機械的に解除し得る)ように場合によっては安定剤が追加される。参照番号16bは、例えばいわゆる外装された炭素リングなどの封止リングを示す。任意のコーティングを含む、ピストンおよびシリンダに関する材料選択については、図2に関連して上記に示したものと同じことが該当する。このシールは、ピストン10bおよび11bが非圧縮性流体により切り離されず、相互に同期的に移動するため、(上記で説明したような)デカップリングデバイスではないという点が、当業者には理解されよう。ピストン10bの移動は、ピストン11bの移動を直接的にもたらし、またその逆も真となる。
【0054】
図4a~図4cは、図1の参照番号50を有するテンショニングデバイスの可能な実施形態を示す。このテンショニングデバイスは、ピストン10を移動させる(図1)。図4aでは、10cは、図1のピストンロッド01を示し、11cは、ピストンロッドのリフト部材を示し、20cおよび30cは、構成要素21c~23cおよび31c~33cのそれぞれから構成されるフリーホイールデバイスをその上に有する、2つの相互に噛合した歯車を示す(図4bおよび図4cの参照番号は、添え字dおよびeを伴うが同様である)。
【0055】
これらの歯車は、減速ギア60を介して図1で参照番号70を有する電気モータにより回転されることが可能であり、減速ギア60は、これら2つの相互に噛合した歯車の一方を駆動すれば十分である。特に適切な変速装置60は、遊星変速装置、好ましくは(すべての段が2シャフト動作である)多段変速装置である。ピストンロッド内のフリーホイールデバイスに係合することにより、変速装置60およびしたがってさらには歯車の回転動作が、線形動作に変換され得る。これらの3つの図は、テンショニングデバイスのそれぞれ異なる動作状態を象徴的に示す。
【0056】
図4aは、ピストンロッドが空気圧アクチュエータ10(図1)内の作動ガス(過)圧力p1に対抗して移動される張力印加プロセスを示す。ここで、ピストンの移動距離およびしたがってガススプリング内に保存されるエネルギーを選択することができる。すなわち、所望のピストン位置への到達後に、ピストンロッドは、ロッキングユニット40(図1)によりガススプリングの力に対抗してロックされる。ラチェットフリーホイールを有する歯車20cが、(図1のギア60を介してモータ70により)第1の回転方向に駆動され、歯車20cと噛合した歯車30cは、これにより歯車20cと共に移動されるが、さらに歯車20cと同一の方式でモータにより駆動されることが可能となる。力が、ラチェットフリーホイール21c/22c/23cまたは31c/32c/33cを介してピストンロッド10cに対して伝達される。両側に示される力伝達により、ピストンおよび/またはピストンロッド10cの上の関連する軸受および/またはシールに対する横荷重が、回避され得るまたは軽減され得る。しかし、原則的に、例えば歯車20cのみを介した一方の側の駆動のみで十分である。
【0057】
図4bは、フリーホイールの駆動部材がピストンロッドのリフト部材と噛合しないためピストンロッドが駆動されない、逆の回転方向を示す。したがって、図4bに示す中間位置により電気モータ70を逆方向に動作することによって、ピストンロッド10eと歯車20e/30e上のフリーホイール21e~23e/31e~33eとの間の接触が回避される、図4cに示すような位置に到達し得る。したがって、セッティング動作中に、すなわちピストンロッド10eの矢印の方向への急激な軸方向移動の間に、駆動部材とリフト部材との間の接触が防止される。図4cの歯車位置は、例えばドライブ(図1の高い速度伝達比を有する変速装置60を有するモータ70)の自動ロック効果などにより確保することができ、追加のロックデバイスは不要である。
【0058】
ラチェットフリーホイールは、駆動部材21cを備え、これらの駆動部材21cは、回転可能に取り付けられ、ストッパまたは何らかの形態の戻り止めを有する。駆動部材21cとピストンのリフト部材11cとが相互に噛合すると、歯車20cの一回転方向において、ピストンロッド10cはこの歯車20cと共に移動される。しかし、歯車20cの逆回転方向において、駆動部材21cは、リフト部材を通過させることを可能にするのに十分なだけこの駆動部材をその回転軸を中心として移動させることによって、大部分において抵抗を伴わずにリフト部材11cを越えて移動することが可能となる。この条件は図4bで示され、駆動部材21dはリフト部材11dの移動を妨げない。
【0059】
好ましくは、駆動部材は、ラチェットフリーホイールのラチェットとして形成され、ピストンロッド上の対応するリフト部材(例えば「歯」)に合致するように構成され得る。これにより、駆動部材とリフト部材との間の線圧が可能な限り回避し、(ヘルツ応力ではなくストライベック圧力である)表面への荷重を目標とする。
【0060】
これらの駆動部材およびストッパ/戻り止めデバイスを伴うそれらの回転可能な取付けに加えて、フリーホイールは、(21dおよび11dの相関位置に基づき図4bに示すような)非妨害位置から(図4aに示すような)駆動位置へ駆動部材を復帰させるための手段も備える。かかる手段は、例えばカウンターベアリング23cを有するばね22cであることが可能である。可能な実施形態は、例えば駆動部材の回転可能取付け部と同軸状のねじりばね(レッグばね)であり、1つのばねレッグが、駆動部材に対して永久的に連結され、第2のレッグが、歯車20cに対して連結される。
【0061】
図1のアクチュエータ11(第2のアクチュエータ)により、単にガススプリングが事前に張力印加される移動距離およびしたがって行程容積によって、セッティング行程とは無関係に駆動エネルギーを調節することが可能となる。好ましくは、ピストンロッド01が、リフト部材に対して垂直な剛直化手段を有し、テンショニングデバイス50の駆動部材が、この剛直化手段と相互に噛合するまたは係合する。この剛直化手段は、ピストンロッド01が安全に耐え得る座屈力を高める役割を果たす。同時に、この剛直化手段は、ロック40が係合し得るラッチ要素を有するように構成され得る。追加の剛直化手段として、ピストンロッドは剛直化リングを有するように構成されることが可能である。
【0062】
図5は、アクチュエータのさらなる代替的な実施形態を、具体的には図2に記載の、図1のアクチュエータ10(第1のアクチュエータ)の容易に実装可能な変形例を示す。
【0063】
以降において詳細に説明されるように、空気圧アクチュエータ10は、ここではシリンダ12fを備え、このシリンダ12fは、弁座13fを組み込むように構成され、第3のピストン10fが、この弁座のための遮断要素として機能するように、または対応する遮断要素を組み込むように構成され、それにより第3のピストン10fおよびシリンダ12fが共に、弁を形成する。この弁は、シリンダ12fにより形成されたまたはシリンダ12fに対して装着された弁座13fに対して、第3のピストン10fおよびしたがって遮断要素を十分な外力で押圧することによって閉じられ得る。
【0064】
したがって、図5では、13fは、ピストン10fおよびシリンダ12fにより形成された弁を示し、14fおよび17fは、(例えばアンチモン含浸グラファイトから作製された)ガイドリングであり、15fは、例えば図2に関連して上記で論じた封止材料などから作製されたピストンリングである。参照番号16fは、U字プロファイルまたはダブルU字プロファイルを有するリングを示し、これらのリングは、図2に関連して上記で説明した空洞部を、好ましくは潤滑剤で部分的に充填された空洞部を形成する。これらのリングは、言わばピストンロッド11fを介してピストン上に螺着される。次いで、封止を行うために必要な圧力が、事前に張力印加された(ディスク)スプリングパック18fおよびナット19fの力を利用して印加され得る。好ましくは、ナット19fのねじ山中にねじ緩み止め剤が存在し、それは、金属粉末で充填されてもよい。
【0065】
次に、当業者が本発明を実施することを可能にするのに特に有効な本発明の実施形態に関連するさらなる態様を説明する。
【0066】
モータ70については、好ましくは軸方向磁束タイプのモータであるいわゆるブラシレスDCモータが特に適する。これらのモータは、高い電気効率で最高の電力密度を実現し、永久磁石によるこれらのモータの分極により、ギア60による減速後に十分なコギングトルクによって図4a~図4cのテンショニングデバイス50が図4cに示す状態にしっかりと保持される。すなわち、当業者は、ギア60の固有の摩擦による自動ロックに依存する必要はなく、テンショニングデバイス50に対して(ロック40以外の)追加のロックを用意する必要もない。有利には、モータ70は、ガススプリングが張力印加される(すなわち例えばフリーホイールデバイスがピストンロッド01に係合する)回転方向において定格軸出力でより高い電気効率を有するように非対称的に構成され得る。モータ70およびモータコントローラ80は、空気で能動的にまたは受動的に冷却され得る。特に高い駆動周波数および/または駆動エネルギーを伴う特に要求の厳しい用途の場合には、気化冷却が両アセンブリを冷却するために使用されることも可能である。
【0067】
好ましくは、作動ガスリザーバ20は容積Vaを囲む。図1のアクチュエータ10の最大行程容積Vhに関して、以下の内容がこの容積Vaに該当する。すなわち、好ましくは、Va>=Vh、より好ましくはVa>=2*Vh、より好ましくはVa>=3*Vh、およびより好ましくはVa>=4*Vhである。完全加圧状態にある作動ガスリザーバ20内の動作圧力は、好ましくは少なくとも10バールであり、より好ましくは少なくとも20バールであり、より好ましくは少なくとも40バールであり、より好ましくは少なくとも60バールであり、より好ましくは少なくとも80バールであり、より好ましくは少なくとも100バールであり、より好ましくは少なくとも120バールである。マルエージング鋼は、作動ガスリザーバ用の材料として特に適する。これらの鋼の中でも耐腐食性(口語的には「ステンレス」)タイプのものが特に好ましく、または適切な防食が他の手段により施されなければならない。代替的には、繊維強化プラスチックが鋼の代替として使用され得る。これらの繊維強化プラスチックは、拡散損失を防ぐために1つ以上の拡散バリア層を備えることも可能である。アルミニウム7068などの熱処理可能な鍛造アルミニウム合金およびTi-6Al-V4などのチタン合金もまた、作動ガスリザーバに適した材料である。
【0068】
可能な限り乾燥した窒素が作動ガスとして適する(ここで「可能な限り乾燥した」とは、全動作範囲にわたり結露が確実に排除され得ることを意味するものとして理解されたい)。窒素ではなく、軽ガス(ヘリウムを事実上意味する。なぜならば水素はその反応性[可燃性、また場合によっては水素脆性の危険性]により到底オプションにはならないためである)の使用は、その高音速に起因してこの気体力学が比較的非常に高いピストン速度であっても副次的な役割を果たすという利点をもたらす。すなわち、重ガスおよび高ピストン速度を用いた場合に、ピストン移動の結果として得られる打込みプロセス中に、ピストンヘッド(アクチュエータ10の作動ピストン)により感知される作動ガス圧力の軽微ではない低下が最初に生じ、その後に続いてピストンが急激に減速する間に圧力が上昇する(「オーバーシュート」)。このプロセスは、不可逆性を伴い、したがって効率を低下させ、またガススプリングの移動にわたり不都合に力を分散させる。
【0069】
他方において、多原子ガスおよび特にCF4などの3原子以上のガスが、より低い等エントロピー指数を有するという利点をもたらす。これは、同一の初期条件および同一の圧縮比を所与とした場合に、単原子ガスの場合に比べて圧縮中(すなわちガススプリングの張力印加中)における作動ガスのより低い温度上昇をもたらし、およびしたがってより低い熱損失と、結果としてより低い不可逆性と、をもたらす。また、ガス混合物も考慮すべきである。例えば、CO2が窒素に追加されることによりガス混合物の等エントロピー指数を上昇させることが可能である。また、作動ガス(作動媒体)としてCO2を使用することにより、漏れ損失を補償するためにトップアップリザーバ(図1の参照番号21)内に非常に高い密度で作動媒体を貯蔵することが可能となるという利点がもたらされる。本発明による高い動作圧力の観点において、このガススプリングの設計では、好ましくは、それぞれの作動ガスが理想的なガスであると見なすことができないことを斟酌すべきである。すなわち、凝集圧およびコボリウムが消滅しない。いずれの場合においても、(純ガスまたは混合ガスのいずれかにかかわらず)作動ガスをピストンリングおよび潤滑剤に適合させることが好ましい。すなわち、最低限の漏れ率を実現するために、作動ガスは、潤滑剤中に可能な限り少なく溶解すべきであり、最小限の拡散性を有するべきである。ここで、漏れ率は、セッティングツールがあらゆる通常の雰囲気条件下で少なくとも10,000回のセッティング動作をもたらし、作動ガスを補充する必要性を伴わずに少なくとも5年間にわたる保管が可能である場合には、最低であると見なされる。
【0070】
シリンダおよび作動ガスリザーバは、ピストンドライブとして理解することが可能であり、セッティングピストンを有するセッティングツールを考慮する場合に根本的な問題を被り得る。すなわち、ピストン質量の急激な移動により、セッティング動作中に、具体的には釘またはボルトが打込まれている間に、セッティングツールの著しいマズルフリップが引き起こされる恐れがあり、このことがセッティングクオリティを低下させ得る。
【0071】
打ちつけクオリティに関して、この問題は、一般的にも知られており、以前に対応されている。例えば特許文献4を参照されたい。
【0072】
また、強力なマズルフリップおよび反動はオペレータに対して高い肉体的負荷を与える。一方において、マズルフリップの原因は、ピストンの重心の延長移動経路がセッティングツールの重心と通常合致しない点である。他方において、ピストンの重心の移動経路に対してやはり隣接して位置するハンドルにおいてセッティングツールを握ることにより、枢支点D1(拘束条件)が与えられる。セッティング動作中におよびさらには打込みの間に、このセッティングツールが酷く跳ね上がり反発する結果となることが知られている。本発明は、この問題を免れない。
【0073】
しかし、既述の問題は、例として以降に示すように少なくとも大幅に緩和されることが可能となる。ここでもかかる例は、限定的なものとして理解されるべきではない。
【0074】
図6は、本発明によるハンドヘルド釘セッティングツールの他の好ましい実施形態を示す。
【0075】
セッティングピストン610(例えばデカップリングデバイスを使用する場合、第2の可動パーツまたは第2の可動ピストン11図1))は、ここではドライブ600の質量の最大で1/4を有する。特に有利には、ドライブ600は、例えばガイド690上などにおいてセッティングツール内を軸方向に可動になるように配設される。
【0076】
したがって、ピストンドライブ600(例えばガススプリングドライブ、電動ドライブ、または同様のもの)が、一方ではピストン610自体よりも実質的に高い質量を有し、好ましくは少なくとも4倍の質量および特に好ましくは10倍超の質量を有するように、ここでは構成される。
【0077】
ピストンドライブ600(ここではこれは例えば(図1を参照)モータ70、減速ギア60、テンショニングデバイス50、ロック40、場合によっては弁30を有するアクチュエータ10のピストン、および作動ガスリザーバ20などを備え得る)は、例えば以上のレールまたは他のガイド690を利用して、ピストン610の移動軸に沿ってセッティングツールの中または上に可動に配設される。好ましくは、ピストンの重心S1の延長移動経路は、設計の点でおよび製造精度の限度範囲内で可能である限りにおいて、ピストンドライブ600の重心S2を通過し、ピストンドライブ600は、少なくとも1つの行程開始位置Aおよび行程終了位置範囲Bを有する。セッティング動作が行われない場合には、追加のロック620が、セッティングツールの他のパーツに対しておよび特にそのハンドル630に対してピストンドライブを行程開始位置Aに固定する。セッティング動作中に、ロック620が、能動的に(例えばアクチュエータを利用して)または受動的に(例えば反動自体により)のいずれかによって解除され、その結果としてピストンアクチュエータ600は、セッティング動作中に最初にイネーブルにされてある特定の移動距離s’だけ復帰する。この移動距離s’は、特に好ましくは、この移動が「尽きる」前に、すなわちピストンドライブ600が移動距離s’だけ後方へ移動される前に、釘またはボルトの打込みが完了するように寸法設定される。次いで、ショックアブソーバ640(例えばエラストマーストッパ650および戻しばね660を有する油圧ダンパー)が、効力を発し、ピストンドライブ600(例えば可撓性撚線を介して図1のモータコントローラ80に対して接続され得る)をダンピング距離s’’にわたり制動し始める。好ましくは、ショックアブソーバ640は、非周期限度で動作される。既述の構成は、セッティング動作後にリセッティングデバイスが行程開始位置へとピストンドライブ600を移動させて戻し、ロック620を利用してピストンドライブ600をこの位置に留めることを必要とする。これを実現する最も簡単な方法は、ばね、特に自動装填式小火器のいわゆる発射ばねに類似した圧縮コイルばねまたは波形ばねによるものである。推進装薬を有するセッティングツールの場合に、復帰エネルギーは、「弾薬運搬」(カートリッジ、釘)で知られた様式で部分的に利用されることも可能である。ピストンドライブ600の復帰行程をダンピングする間に、ユーザは、セッティングツールのハンドル630においてトルクを被り、とりわけこのトルクは手首に対して肉体的負荷を与える。同様に、このトルクは、例えばジョイント570などにより、ピストンドライブ600が内部に可動に配設されたセッティングツールのハウジング680に対して回転可能に連結されるようにセッティングツールのハンドル630を構成することによって、オペレータに有利になるように軽減され得る。次いで、この回転動作はダンピングおよびリセットされ得る。これは、ポリマーダンパーの利用により、およびリセッティングばねを有する1つ以上の油圧ショックアブソーバ641の利用により可能である。ロック620と同様のロック621が、可能であり有利となり得る。好ましくは、このロックが存在する場合には、このロックは依然として復帰しつつあるピストンドライブ600が制動される直前に、および特にセッティング動作が完了した後にロック解除される。例えば第2のダンパー641のばねを介してなど行程開始位置へと復帰した後に、ロック621は閉じる。
【0078】
最新技術とは対照的に、既述の方法は、釘打込みクオリティを改善するだけではなく、特にセッティング動作中に発生する力ピークに関連して、オペレータに対する生体力学的負荷を大幅に軽減する。これは、疲労および傷害を防ぎ得る。
【0079】
本方法の実現に必要な構成要素に起因して、上記の方法を利用してダンピングされるセッティングツールは、ダンピングされないセッティングツールと比較して当然ながら高重量となる。しかし、この追加重量は、典型的なセッティングツールの3%~10%の範囲内となる可能性が高い。本願の主要請求項にしたがって設計されたセッティングツールは、高い釘打込みエネルギー密度を特徴とし、いずれの場合においても例えば従来の空気圧式セッティングツールよりも軽量に構成することが可能である。燃焼動力式のおよび特にパウダー作動式のセッティングツールのピストンドライブ、ならびに電動ドライブに基づくピストンドライブ(例えばトムソンコイル)は、ピストンにおいて非常に高い釘打込みエネルギー重量密度および/または非常に高い力上昇速度を有することが可能であり、そのため、上述のダンピング方法は、やはり疲労および傷害からオペレータを守るためにかかるデバイスの場合に特に有効であると思われる。この後者のダンピング方法は、さらに厳格化される職業上の健康および安全に関する要件により、将来的にさらにより有意義なものとなるであろう。
【0080】
摩擦により、および該当する場合には例えば戻しばね660の力により、ハンドル630を握ることおよびジョイント670に位置する結果的な回転中心D1に起因するある若干のマズルフリップが依然として生じる。これをさらに軽減するために、ピストン610の重心S1の延長経路を、ピストンドライブ600の重心を正確に通過するように案内することは不可能であるが、ピストンの移動方向に対して平行に回転中心D1の方向へと若干シフトすることは可能である。
【0081】
また、ガススプリングを有するもの以外の他のセッティングツールを、図1のアクチュエータ11の補助により形成されたものなどのデカップリングデバイスを用いて実現することが可能である。例えば、可動の相互に反発し合うコイルを有する極めて強力な電動ドライブが、例えば特許文献5および特許文献6などから知られている。例えば、ガススプリングまたはガススプリングドライブの代わりに、特許文献5の図2に示されるような電動ドライブが使用されるセッティングツールを実現することが可能であり、この可動アーマチュアは、その励磁コイルAと共に可動「ピストン」としての役割を果たす。しかし、前記電動ドライブは、以下の理由によりセッティングツール用のドライブとして理想的には適さない。
(A)釘セッティングツールのセッティング行程に対応する行程を用いた場合に、ドライブが法外に高い質量を有することになる。
(B)セッティングツールに必要なピストン速度により、ドライブに対して電気を供給する可撓性撚線に対して高い動的応力がかかる。
(C)粉末複合材料(SMC)が、特に高い電気効率を可能にするアーマチュア(「ピストン」)に対して使用される場合に、アーマチュアの非制御減速時(例えば硬い下地中への打込み時、または誤セッティングが生じた場合)にアーマチュアが破壊するリスクが存在する。
【0082】
この背景に対抗して、ハンドヘルドセッティングツールの他の実施形態は、好ましくは例えば特許文献7(例えば特許文献7の図1を参照)などに記載のトムソンコイルアクチュエータを有する電磁ドライブを、すなわち第1の励磁コイル、軟磁性フレーム、ならびに軸に沿って可動に取り付けられたかご形回転子およびかご形巻線を有する電動ドライブを備える。軟磁性フレームは、少なくとも1.0Tの飽和磁束密度および/または最大で10S/mの実効比導電率を有する。この電磁ドライブでは、フレームは、「磁束コンセントレータ」として設計され、第1の励磁コイルは、フレーム上に直接的にまたは間接的に支持され、例えば繊維強化された平角線などから形成される。この実施形態では、ハンドヘルドセッティングツールは、上記で説明したデカップリングデバイスをさらに備え、可動に取り付けられたかご形回転子または可動に取り付けられたかご形巻線が、(例えば摺動的に取り付けられた)可動要素(ピストン、アーマチュア)内に形成され、この可動要素は、アクチュエータ内の第1の可動パーツまたは第1のピストンの移動プロセスを実現する(「打撃機構」)。上記で説明したように、可動かご形回転子により実現または駆動される第1の可動パーツまたは第1の可動ピストンの移動プロセスは、釘またはボルトを打込むためのアクチュエータ内の第2の可動パーツまたは第2の可動ピストンの移動から少なくとも部分的に切り離されて、硬い下地中への打込み時に反動の軽減をもたらす。
【0083】
ハンドヘルドセッティングツールの他の代替的な実施形態は、(以降においてさらに説明されるような)例えば特許文献5または特許文献6などに記載の電磁ドライブを、すなわち少なくとも第1のコイルおよび第2のコイルを備える電磁ドライブを備える。第1のコイルは、磁束コンセントレータの上または中に形成され、第2のコイルは、可動コイルである。この実施形態では、可動コイルは、可動要素(ピストン、アーマチュア)の中または上に形成され、この可動要素は、アクチュエータ内の第1の可動パーツまたは第1のピストンの移動プロセスを実現する(「打撃機構」)。上記で説明したように、可動コイルにより実現または駆動される第1の可動パーツまたは第1の可動ピストンの移動プロセスは、釘またはボルトを打込むためのアクチュエータ内の第2の可動パーツまたは第2の可動ピストンの移動から少なくとも部分的に切り離されて、反動の軽減を結果としてもたらす。
【0084】
これらの実施形態により、問題(A)がデカップリングデバイスによって解消される。
【0085】
また、可動コイルを有する電動ドライブに関する問題(B)もデカップリングデバイスにより解消することが可能である。なぜならば、(セッティング行程に比べて)電気ドライブが短く限定された行程を有するため、撚線がはるかにより短いことが可能になり、したがって動作中により低い慣性力にさらされるからである。さらに、可動コイルに対する電気の供給は、摺動接点により所要に応じて解消することが可能である。
【0086】
また、問題(C)もデカップリングデバイスにより解消することが可能である。なぜならば、アーマチュア(「ピストン」)の減速が規定された様式で行われるからである。すなわち、セッティング動作中にアクチュエータ11の2つのピストン間に形成されるガスクッションにより、電気アクチュエータの「アーマチュア」またはピストンが、例えばハードストップに衝突しない。
【0087】
可動コイルを有する電動ドライブの他の実施形態では、ドライブのリセットが単純な様式で実現可能である。すなわち、釘を打込むためには、これらのコイルが、(特に好ましくはコンデンサ放電を利用して)逆方向へと少なくとも一時的に通電され、それにより斥力がこれらのコイル間に作用する。また、好ましくは、逆方向の電流により、結果的に得られる電磁遠方場の相互補償がもたらされ、それによりセッティングツールのハウジングの遮蔽特性に対する要求がより低くなる。他方では、このドライブをリセットするためには、これらのコイルが同一方向に通電されることが可能であり、それにより引力(ローレンツ力)がこれらのコイル間に作用する。
【0088】
図7は、例えば図1のアクチュエータ11などのデカップリングデバイスと組み合わされた可動コイルを有する電動ピストンドライブを備えるさらなる実施形態を示す。これは、電動ドライブの特に有効な変形例であり、少なくとも1つの可動コイルを利用して主に非金属の作動ピストンを非常に効率的に加速することが可能であり、最新技術に比べて同一の釘打込みエネルギーに対するより高い電気効率およびより低いツール質量を特徴とする。以下の実施形態もまた、限定的なものとして理解されるべきではない。図7は、「発射可能」位置にあるセッティングツールを概略的に示す。
【0089】
図7の各参照番号が示すものは以下の通りである。
700:電源ケーブル(高可撓性撚線)。
710:磁気回路(または「磁束コンセントレータ」)、すなわち軟磁性材料から作製された本体。非常に好ましくは、磁気回路は、少なくとも1T、好ましくは少なくとも1.5T、およびより好ましくは少なくとも1.9Tの飽和磁束密度を、ならびに具体的には最大で10S/m、より好ましくは最大で10S/m、およびより好ましくは最大で10S/mの実効導電率を有する。複数の軟磁性複合材料がこれらの要件を満たす。軟磁性複合材料は、その脆性により、磁気回路710に対して使用される場合には、磁気回路710のクラッキングを回避するために適宜専門的にセグメント化されなければならない。したがって、このセグメント化の目的は、セッティング動作中に軟磁性複合材料の引張強度(および好ましくはさらには降伏強度)が局所的に超過してしまうことを防ぐことである。
711:磁気回路に対して装着された第1の平面コイル(「支持コイル」)。
720:好ましくはプラスチック、特にガラス繊維充填された液晶ポリマーから完全にまたは主に形成されたドライブピストン。このドライブピストンは、少なくとも1つのガイド軸を有するように構成され得る。
721:ドライブピストンに対して装着されたもしくはドライブピストンへと成型された、またはドライブピストンの材料と共にオーバーモールドされた、第2の可動平面コイル(「スラストコイル」)。
730:ピストンロッドを有するセッティングピストン。駆動エネルギーが、セッティングピストン730のピストンロッドを介して釘に対して伝達される。
740:軟磁性固体材料、特にフェライト鋼から作製されたベースプレート。これは、遮蔽(EMC、EMCE)およびヒートシンクとしての役割を果たす。
750:CERPから作製されたチューブ。これは、特に磁気回路710の応力逃がしと、磁気回路710およびシリンダ780のセンタリングとを行う役割を果たす。
760:アルミニウム合金から作製されたチューブ。これは、好ましくは可能な限り最高の導電率を有し、またここでは交流電磁場を遮蔽する役割を果たす。
761:特にフェライト鋼である、高い飽和磁束密度を有するチューブ状軟磁性材料。これは、直流電磁場を遮蔽する役割を果たす。この図に隣接するのは、周方向に沿って分散した離散空気間隙762を有するチューブ761の平面図である。これらの離散空気間隙762は、ここでは渦電流を低下させるためのスロットとしての役割を果たし得る。
770:ツールケーシング。
780:例えば高強度の容易に研磨可能な鋼から作製されたシリンダ。
790:セッティングピストン730のピストンロッドのための外装された炭素リングまたは他のガイドリング。
【0090】
図7に概略的に示す構成を用いて下地中に釘またはボルトを打込むためには、コンデンサC1が、最初にスイッチング電源SMPSを介して(当然ながらバッテリ動作式セッティングツールの場合には、充電式バッテリBATからの電気エネルギーを用いて)充電される。コンデンサC1は、可能な限り最高のエネルギー密度、可能な限り最低の直列電気抵抗、および特に高い短絡抵抗を有するべきである。かかるコンデンサは、特にパルス印加用のフィルムコンデンサとして市販されている。
【0091】
コンデンサC1を介して所望の充電電圧に到達した後に、サイリスタSCRは、釘を打込むために始動され得る。この時点で、電流は電源ケーブル700を経由して(平面)コイル中へ流れる。好ましくは、セッティング動作中に両コイル中の電流が逆方向に流れるように、すなわち相互に反発するように、両コイルが直列接続される。最小限の電気抵抗で可能な限り最大の曲線因子を達成するためには、平角銅線がこれらのコイルに特に適する。
【0092】
電源ケーブル700は、ピストン720またはその(後方)「ガイド軸」を介して直接的に案内され得る。非常に好ましくは、電源ケーブルは、特に細い高可撓性撚線の形態でアルミニウム合金または銅から構成され、例えば炭素繊維または炭素繊維布などを利用してピストン720の外部で張力逃がしされる。すなわち、電源ケーブルと平行に機械的に連結された張力逃がしが、十分な引張強度の材料から作製される、すなわち所与条件下で破断せず、逃がす対象となる電源ケーブル自体よりも高い引張弾性率を有する点が、決定的な点となる。好ましくは、張力逃がしは、導電体の降伏点またはさらには導電体の引張強度を超過する引張応力(セッティング動作中のまたはセッティング動作の結果としての)から導電体を保護するように設計される。さらに好ましくは、張力逃がしの材料は、高い比強度を有するべきである。炭素繊維および炭素繊維布は、これらの要件を満たすことができる。ドライブピストン720(第1のピストン)は、セッティングピストン730(第2のピストン)およびシリンダ780を有するアクチュエータ11を、すなわち上記で説明したような(例えば図1の)デカップリングデバイスを形成するように構成される。
【0093】
ラビリンスピストン圧縮機のピストンの様式で設計された好ましいガスダイナミックシールは、図7には図示されず、また必要なガイド要素および同様の詳細も図示されない。これらのピストンをリセットするためのデバイスもまた図示されない。
【0094】
本発明は、以下の通りに実際に実装され得る。回路図を含む図はFEMモデルへ変換されており、そのジオメトリがパラメータ化される。対応する(材料)特性は、参照リストに記載された個別の構成要素に対して割り当てられる。実特性は、これらの電気構成要素に対して推定されるものであり、したがってこの回路図は、対応する均等な回路図を有するモデルにマッピングされる。ガスコンパートメントに関しては、少なくともファンデルワールス方程式が適用され、それらの表面上における対応するガス力を概算するために解かれる。該当する場合には、気体力学がさらに考慮され得る。第1の平面コイル711および第2の可動平面コイル721は、好ましくは同一個数の巻線を有し、それによりこれらのコイルの直列接続の結果として(ほぼ)均等な起磁力を常に発生させる。次いで、例えば最小壁厚、表現可能な(平面)線太さ等の製造関連要件などの構造要件を考慮して、パラメトリック最適化が実行される(「パラメトリックスイープ」)。あるいは、さらにパーツ、構成要素、および材料の価格ならびに認可要件(EMC、EMCE等)をさらに考慮して、(すべての)ジオメトリックパラメータおよび巻線数が変更され、パレート最適が求められる。このようにして導かれた最適条件から出発し、次いで機械工学設計を生み出すことが可能となる。この設計は、組立ておよび製造の問題により初期の単純なFEMモデルから逸脱することにより、さらに複雑になり、考慮すべきさらなる構成要素を備え得る。次いで、新規のパラメトリックFEM最適化が、この設計に基づき実行される。専門的に実行されるこのプロセスは、ごく小数回の繰り返しを経て結果として極めて効率的なセッティングツールをもたらす。例えば、ほんのd=60mmの直径を有する磁気回路を有するドライブが、50%領域内の効率で500J超の駆動エネルギーを容易に達成することができる。これまで、このエネルギー範囲は、燃焼動力式セッティングツール、特にパウダー作動式ツールの場合に限られていた。
【0095】
他の実施形態は、以下の通りである。
【0096】
E1.下地中に釘またはボルトを打込むためのハンドヘルドセッティングツールであって、
- 例えば充電式バッテリまたは燃料電池などの、少なくとも1つの電気化学エネルギー貯蔵部90と、
- 好ましくはインバータを備える、少なくとも1つのモータコントローラ80と、
- 好ましくはブラシレスDCモータであり、さらに好ましくは軸方向磁束タイプのモータである、少なくとも1つの電気モータ70と、
- 好ましくは多段遊星変速装置である、少なくとも1つの減速ギア60と、
- 好ましくはラチェットフリーホイールを備える、少なくとも1つのテンショニングデバイス50と、
- 少なくとも1つのロック40と、
- 種々の純ガスの混合物であることも可能な作動ガスを収容する、少なくとも1つの作動ガスリザーバ20と、
少なくとも1つの空気圧アクチュエータ10と、
を備え、
空気圧アクチュエータ10が、ピストンロッド01を有する少なくとも1つのピストンを備え、作動ガスリザーバ20と流体連通状態にあり、作動ガスリザーバ20と共にガススプリングを形成し、
ガススプリングが最大張力下におかれた行程開始位置と、ガススプリングがより低い張力下におかれた行程終了位置範囲と、を有するアクチュエータ10は、ガススプリングが最大張力下におかれた状態において、作動ガスリザーバ20が10バール超の、より好ましくは20バール超の、より好ましくは40バール超の、より好ましくは60バール超の、より好ましくは80バール超の、より好ましくは100バール超の、および特に好ましくは120バール超の作動ガス圧力を被り、作動ガスリザーバ20の容積が、空気圧アクチュエータ10の最大行程容積と少なくとも同一の大きさであり、好ましくは空気圧アクチュエータ10の最大行程容積の2倍超の大きさであり、より好ましくは空気圧アクチュエータ10の最大行程容積の3倍超の大きさであり、およびより好ましくは空気圧アクチュエータ10の最大行程容積の4倍超の大きさであり、釘の打込みのために、ガススプリングが、最初にモータコントローラ80を利用してエネルギー貯蔵部90からの電気を電気モータ70に供給することによって張力印加され、減速ギア60を介してテンショニングデバイス50を駆動するために制御され、次いでテンショニングデバイス50が、作動ガスの圧力に対抗してアクチュエータ10のピストンを変位するための力へと減速ギア60のトルクを変換することが可能となり、アクチュエータ10が、所望のピストン位置に到達した後にロック40によりロックされ、したがってアクチュエータ10のガススプリングおよび作動ガスリザーバ20が、より高い張力状態に保持され、釘の打込みのために、ロック40が、ガススプリングが弛緩するように解除され、したがってアクチュエータ10が、移動を開始し、ピストンを備えるアクチュエータ10の可動パーツの運動エネルギーが、次いで直接的にまたは追加の打撃機構11を利用してのいずれかによって釘を打込むために使用されることを特徴とする、ハンドヘルドセッティングツール。
【0097】
E2.E1に記載のセッティングツールであって、このセッティングツールは、セッティング動作中に、アクチュエータ10のピストンに対して永久的に装着されたすべてのパーツを明確に含む、アクチュエータ10の可動パーツの最大運動エネルギーが、最終的に釘に対して作用する打込みエネルギーの少なくとも半分に到達するように寸法設定されることを特徴とする、セッティングツール。
【0098】
E3.空気圧アクチュエータおよび特にガススプリングのためのピストンであって、このピストンが、複数のピストンリングを備えることと、軸方向にすなわちピストンの移動方向に沿ってピストンリング同士の間に空同部が配設されることか、またはピストンが好ましくは潤滑剤で完全にではないが部分的に充填されるかかる空洞部を有するように構成されることか、のいずれかと、を特徴とする、ピストン。
【0099】
E4.空気圧アクチュエータおよび特にガススプリングのためのピストンであって、相互に対して堅固に連結されない複数のピストンを、例えば2つのピストンを備え、これらのピストンの間に流体が存在することを特徴とする、ピストン。
【0100】
E5.E4に記載の空気圧アクチュエータのためのピストンであって、流体が液体潤滑剤であることを特徴とする、ピストン。
【0101】
E6.E5に記載の空気圧アクチュエータのためのピストンであって、流体が、非ニュートン流体であり、特にせん断減粘性流体であり、このせん断減粘性流体が、好ましくはさらに揺変性を有することを特徴とする、ピストン。
【0102】
E7.E6に記載の空気圧アクチュエータのためのピストンであって、非ニュートン流体および特に構造的粘性流体、好ましくはさらに揺変性を有する構造粘性流体は、液体潤滑剤中に、例えばhBNおよび/またはグラファイトおよび/またはMoS2などの1つ以上の固体潤滑剤を分散させる、ならびに/または1つ以上のオリゴマーまたはポリマーを溶解させることによって生成されることを特徴とする、ピストン。
【0103】
E8.シリンダと、E3からE7に記載のピストンのうちの1つ以上によるピストンと、を備える空気圧アクチュエータであって、シリンダが、弁座を組み込むように構成されることと、ピストンが、この弁座のための遮断要素として機能するように構成されるか、または対応する遮断要素を組み込み、それによりピストンおよびシリンダが共に弁を形成し、この弁が、十分な外力によりピストンおよびしたがって遮断要素をシリンダにより形成されたもしくはシリンダに対して装着された弁座に対して押圧することによって閉じられ得ることと、を特徴とする、空気圧アクチュエータ。
【0104】
E9.セッティングツールのための打撃機構であって、この打撃機構が、ピストンドライブの第1のピストンの運動エネルギーを例えば第2のピストンである可動パーツに対して伝達し、釘またはボルトが、完全にまたは主としてこの可動パーツの運動エネルギーにより打込まれ、第1のピストンおよび可動パーツが、相互に対して堅固に連結されず、第1のピストンおよび可動パーツが、それらの行程長に関して切り離されることを特徴とする、打撃機構。
【0105】
E10.セッティングツールのための打撃機構であって、少なくとも第1のピストンおよび第2のピストンとシリンダとを備え、これらのピストンが、シリンダ内において互いに対向して配設され、すなわち対向ピストン機関におけるように配設され、例えばラビリンスシールなどのガスダイナミックシールが、好ましくはピストンリングの代わりに封止手段として設けられることが可能であり、第1のピストンが、ピストン同士の間に配置されたガスによりおよび例えばピストンロッドなどを介して、第2のピストンに対して運動量を移行するように駆動され、第2のピストンの運動エネルギーが、釘および/またはボルトの打込みのためにまたはハンマードリル穿孔のために使用され得る、打撃機構。
【0106】
E11.E10に記載の打撃機構であって、リセッティングデバイスが第2のピストンのために設けられることを特徴とする、打撃機構。
【0107】
E12.E10またはE11に記載の打撃機構であって、ピストンおよび/またはシリンダの滑走表面が硬質クロムめっきされることを特徴とする、打撃機構。
【0108】
E13.ハンドヘルドセッティングツールであって、
- 1つ以上の行程開始位置および行程終了位置範囲を有するセッティングツールの中または上に取り付けられた軸方向に可動なピストンドライブと、
- ピストンドライブにより駆動可能であり、好ましくはピストンドライブの質量の最大でも1/4の質量を有するピストンと、
- 1つ以上の行程開始位置にピストンドライブを固定することが可能な開閉可能ロックと、
- 例えば油圧ショックアブソーバである、ショックアブソーバと、
- 例えば戻しばねである、リセッティングデバイスであって、行程終了位置範囲から行程開始位置へピストンドライブをセッティングツールに対して移動して戻すことが可能である、リセッティングデバイスにおいて、セッティング動作の過程で、ピストンドライブが被る反動の結果としてピストンドライブが行程開始位置から行程終了位置範囲に向かって移動し得るように、ロックが開くまたは開かれることが可能であり、ピストンドライブのこの復帰移動がショックアブソーバにより制動され得るものであり、好ましくはピストンドライブが、ある特定の復帰移動距離の復帰移動後にのみショックアブソーバにより制動され、この復帰移動距離が、ショックアブソーバが有効となりピストンドライブの復帰移動を制動する前に釘またはボルトが大部分においてまたは好ましくは完全に打込まれるような距離であることを特徴とする、リセッティングデバイスと、
を備える、ハンドヘルドセッティングツール。
【0109】
E14.E13に記載のハンドヘルドセッティングツールであって、セッティングツールの基準システムにおいて、ピストンの重心の延長経路が、可動ピストンドライブの延長移動経路に対して平行であることを特徴とする、ハンドヘルドセッティングツール。
【0110】
E15.E13またはE14に記載のハンドヘルドセッティングツールであって、ピストンの重心の延長経路が、少なくとも釘またはボルトの打込みの間にピストンドライブの重心を通過し、本例においてこれは、セッティング動作中に、ピストンドライブの重心からの前記延長経路の最小距離が、セッティングツール全体の重心からの延長経路の最小距離の常に少なくとも1/5の短さであるが、好ましくは1/10よりも短いことを意味するものとして理解されるべきである点を特徴とする、ハンドヘルドセッティングツール。
【0111】
E16.E13からE15の1つ以上に記載のハンドヘルドセッティングツールであって、セッティングツールが、少なくとも1つのハンドルを備えることと、このハンドルが、ピストンドライブが中または上に軸方向に可動に配設されるセッティングツールのパーツに対して回転可能に取り付けられ、例えば油圧ショックアブソーバまたはポリマーダンパーなどの少なくとも1つの機械ダンパーが、ハンドルとハンドルが上に回転可能に取り付けられるパーツとの間の回転動作をダンピングするように設けられ、ロックが、セッティング動作が行われない間にかかる回転動作を阻止するように設けられ得ることと、を特徴とする、ハンドヘルドセッティングツール。
【0112】
E17.E9からE13の1つ以上に記載の打撃機構を備えるセッティングツールであって、ピストンドライブが電動ドライブであり、ピストンドライブにより加速される質量が、ピストンとして理解されるべきであり、またはE9に記載の打撃機構の第1の可動パーツの質量を含む、セッティングツール。
【0113】
E18.E17に記載のセッティングツールであって、電動ドライブが、少なくとも1つの励磁コイルと、少なくとも1つの可動の第2のコイルまたは可動のかご形巻線と、を備え、これらの少なくとも1つの励磁コイルと、少なくとも1つの可動の第2のコイルまたは可動のかご形巻線とは、好ましくは移動軸に沿って可動に配設された軟磁性材料から作製されたパーツの上に配設されることが可能であり、前記軟磁性材料は、好ましくは少なくとも1.5Tの飽和磁束密度を、およびさらに好ましくは最大で10S/mの実効比導電率を有することを特徴とする、セッティングツール。
【0114】
E19.下地中に釘またはボルトを打込むためのハンドヘルドセッティングツールであって、好ましくはガススプリングドライブまたは電動ドライブであるドライブ600と、下地中に釘またはボルトを打込む役割を果たすセッティングピストン610と、を備えるセッティングツールにおいて、セッティングピストン610が、ドライブ600の質量の最大でも1/4を有することを特徴とする、ハンドヘルドセッティングツール。
【0115】
E20.E19に記載のハンドヘルドセッティングツールであって、ドライブ600が、セッティングツール内に、好ましくはガイド要素690上に、軸方向に可動に配設される、ハンドヘルドセッティングツール。
【0116】
E21.E20に記載のハンドヘルドセッティングツールであって、1つ以上の行程開始位置にピストンドライブを固定するように構成された開閉可能ロック620と、例えば油圧ショックアブソーバなどのショックアブソーバ640と、例えば戻しばねなどのリセッティングデバイスであって、ドライブの行程終了位置範囲から行程開始位置へとセッティングツールに対してドライブを移動させて戻すように構成されたリセッティングデバイスと、を備え、セッティング動作の過程で、ドライブが被る反動の結果としてドライブ600が行程開始位置Aから行程終了位置範囲に向かって移動し得るように、ロック620が開くまたは開かれることが可能であり、ドライブ600のこの復帰移動がショックアブソーバ640により制動され得るものであり、好ましくはドライブ600が、ある特定の復帰移動距離の復帰移動後にのみショックアブソーバ640により制動され、この復帰移動距離が、ショックアブソーバ640が有効となりドライブの復帰移動を制動する前に釘またはボルトが大部分においてまたは好ましくは完全に打込まれるような距離である、ハンドヘルドセッティングツール。
【符号の説明】
【0117】
01 ピストンロッド
10 アクチュエータ、空気圧アクチュエータ
10 ピストン
10a ピストン
10b ピストン
10c ピストンロッド
10e ピストンロッド
10f ピストン
11 アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、打撃機構
11 可動パーツ、可動ピストン、ピストン
11 可動パーツ、可動ピストン、ピストン
11a ピストンロッド
11b ピストン
11c リフト部材
11d リフト部材
11f ピストンロッド
12a シリンダ
12b シリンダ
12f シリンダ
13a 弁座
13b リザーバ
13f 弁座
15a ピストンリング
15b ピストンリング
15f ピストンリング
16a 空洞部
16b 封止リング
16f リング
18f スプリングパック
19f ナット
20 作動ガスリザーバ
20c 歯車
20e 歯車
21 作動ガスリザーバ
21c ラチェットフリーホイール、駆動部材
21d 駆動部材
21e フリーホイール
22 アクチュエータ
22c ラチェットフリーホイール、ばね
23c ラチェットフリーホイール、カウンターベアリング
30 弁
30c 歯車
30e 歯車
31 高速電磁アクチュエータ
31c ラチェットフリーホイール
32 減圧弁
32c ラチェットフリーホイール
33c ラチェットフリーホイール
40 ロック、ロッキングユニット
41 電磁アクチュエータ
50 テンショニングデバイス
60 減速ギア、変速装置
70 モータ、電気モータ
80 モータコントローラ
90 電気化学エネルギー貯蔵部
100 マノメータ
101 マノメータ
110 ペルチエ素子
111 加熱要素
112 加熱要素
120 熱電対
130 弁
140 釘、ボルト
570 ジョイント
600 ドライブ、ピストンドライブ、ピストンアクチュエータ
610 セッティングピストン
620 ロック、開閉可能ロック
621 ロック
630 ハンドル
640 ショックアブソーバ
641 油圧ショックアブソーバ、ダンパー
650 エラストマーストッパ
660 戻しばね
670 ジョイント
680 ハウジング
690 ガイド、ガイド要素
700 電源ケーブル
710 磁気回路
711 平面コイル
720 ドライブピストン
720 ドライブピストン
721 可動平面コイル
730 セッティングピストン
740 ベースプレート
750 チューブ
760 チューブ
761 チューブ状軟磁性材料、チューブ
762 離散空気間隙
770 ツールケーシング
780 シリンダ
790 ガイドリング
C1 コンデンサ
D1 枢支点、回転中心
S1 重心
S2 重心
p0 低圧側
p1 高圧端部、圧力、作動ガス(過)圧力
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7