(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】排ガス焼却炉の制御
(51)【国際特許分類】
F23N 5/00 20060101AFI20241022BHJP
F23G 5/02 20060101ALI20241022BHJP
C07C 255/08 20060101ALI20241022BHJP
C07C 253/26 20060101ALI20241022BHJP
F23G 7/06 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
F23N5/00 J
F23N5/00 G
F23G5/02 E
C07C255/08
C07C253/26
F23G7/06 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022090042
(22)【出願日】2022-06-02
(62)【分割の表示】P 2020207698の分割
【原出願日】2017-05-04
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】201610346931.6
(32)【優先日】2016-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513099153
【氏名又は名称】イネオス ユーロープ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ショウチェ マノジ シュリカント
(72)【発明者】
【氏名】マクドネル ティモシー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】カウチ ジェイ ロバート
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-222309(JP,A)
【文献】特開2004-148297(JP,A)
【文献】特開平08-206643(JP,A)
【文献】特開平2-233653(JP,A)
【文献】特表2019-518927(JP,A)
【文献】特開2021-060189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/54
B01D 53/72
B01D 53/74
B01J 8/18
C07C 255/08
C07C 253/26
F23G 5/02
F23G 5/50
F23G 7/06
F23N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収器排ガスの焼却炉を制御する方法であって、
(1)プロパン、プロピレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される炭化水素
を含む反応物流と、(2)アンモニアと、(3)酸素含有ガスとを
、アンモ酸化反応器に導入するステップ;
前記アンモ酸化反応器へ導入される前記反応物流における炭化水素の量を測定し、前記アンモ酸化反応器への前記反応物流の供給速度を測定するステップ;
ここで、前記炭化水素がアンモニア及び酸素と反応して、アクリロニトリルが生成し、炭化水素変換率は95%~100%未満であり;
前記アンモ酸化反応器からの反応器蒸気性排出物を、クエンチ容器へ運び、クエンチ流を提供するステップ;
前記クエンチ流を吸収器に運ぶステップであって、ここでアクリロニトリルは前記クエンチ流から水溶液と共に吸収される、ステップ;
前記吸収器からの吸収器排ガスを、吸収器排ガスの焼却炉に供給するステップであって、ここで前記吸収器排ガスは5質量%以下の水を含む、ステップ;
燃料ガスおよび空気を、前記吸収器排ガスの焼却炉に供給するステップ;ならびに
モデル予測制御システムを用いて、前記アンモ酸化反応器へ導入される前記反応物流中の炭化水素の量および前記アンモ酸化反応器への前記反応物流の供給速度
に基づいて、前記吸収器排ガスの焼却炉への前記燃料ガスの流量および前記吸収器排ガスの焼却炉への前記空気の流量を
調整し、前記吸収器排ガスの焼却炉
内の温度を吸収器排ガスの焼却炉の温度設定値の10°F(5.56°C)以内に維持しかつ前記吸収器排ガスの焼却炉の煙道ガスにおいて5体積%以下の酸素をもたらす
ように前記吸収器排ガスの焼却炉内の温度と前記吸収器排ガスの焼却炉の煙道ガス中の酸素を制御するステップ;
を含み、
前記吸収器排ガスの焼却炉の煙道ガスにおいて、生成したアクリロニトリル1トン当たり6kg以下のNO
xを維持する、前記方法。
【請求項2】
前記吸収器排ガスの焼却炉内の温度が、前記吸収器排ガスの焼却炉の温度設定値の5°F(2.78℃)以内に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭化水素がプロピレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
65℃から85℃の温度を有する前記クエンチ流が前記吸収器に運ばれる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
排ガス焼却炉を制御するための方法が提供される。より具体的には、この方法は、吸収器の排ガス焼却炉に利用される燃料ガスの量を最小化するステップ、および焼却炉からの排出を制御するステップを含む。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリルは、アンモ酸化プロセスにより製造され、このプロセスでは、空気、アンモニアおよびプロピレンが、流動床において触媒の存在下において反応して、反応器の蒸気性排出物が形成される。反応器の蒸気性排出物は、次いで、クエンチ系を通過し、反応器の排出物は、そこで水性クエンチ液、通常は水と直接接触する。このクエンチにより、未反応のアンモニアおよび重ポリマーが除去される。クエンチしたガスは、次いで吸収カラムに進められる。吸収器では、ガスは、吸収液、通常はやはり水と直接接触する。水、アクリロニトリル、アセトニトリル、HCNおよび付随する不純物は、吸収器の下部から水溶液として放出される。ガスは、吸収器の上部から除去される。吸収器の上部から除去されたガスは、吸収器の排ガス焼却炉(AOGI)に送られる。
【0003】
吸収器の排ガス焼却炉(AOGI)は、未反応の炭化水素および少量のアクリロニトリルを含有する吸収されていないガス流を燃焼する、アクリロニトリル法に使用される。AOGIは、アクリロニトリル法の他の要素として使用される高圧蒸気を生成する熱回収セクションを含む。AOGIでは、空気および燃料ガスは、吸収器の排ガスを高温にて燃焼させるために使用される。AOGIにおいて制御される重要な変数は、焼却炉の温度および煙道のO2である。こうした2つの変数をより厳格に制御することが、排出制御の観点から望ましい。この制御目標は、通常の操作中だけではなく、速度の変化中も、また、プロピレン純度が変化する際も望ましい。
モデル予測制御(MPC)は、高度プロセス制御(APC)としても公知であり、プロセスモデルを使用して、将来のプロセス挙動を予測し、次いで最適化した制御動作を実行に移して、望ましい目標からのプロセス偏差を無効にする。プロセスの制御と共に、MPCは、重要なプロセス変数を変動させて、プロセスを最も「経済的な」状態にしようとする。
【発明の概要】
【0004】
方法は、吸収器の排ガス焼却炉に利用される燃料ガスの量を最小化するステップ、および排出をより良好に制御することを提供する。この方法は、吸収器の排ガス焼却炉の火室における温度偏差を少なくすること、および吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおける酸素の量における偏差を少なくすることを提供する。吸収器の排ガス焼却炉の火室温度、および吸収器の排ガス焼却炉の煙道の酸素における標準偏差の低下により、燃料ガス使用量は抑制され、環境変数はより厳格に制御される。こうした制御目標は、通常の操作中、速度の変化中、また、プロピレン純度が変化する際に達成される。この方法により、反応器供給流における炭化水素の量、および反応器供給流の供給速度を判定することにより、AOGI温度およびAOGI煙道ガスにおけるO2が想定外にも制御される。
この方法は、アンモ酸化反応器の供給速度、および、反応器中における炭化水素供給物の純度を測定するステップを含む。この方法によれば、反応器の供給速度および炭化水素の純度は、排ガス焼却炉への燃料ガス流および空気流の量に影響を与える。ある重要な態様では、操作者は、公知の反応器の供給速度および炭化水素の純度に基づいて、排ガス焼却炉の性能を予測でき、次いで、制御を実行に移して、AOGI温度、および、排ガス焼却炉の煙道ガスにおける酸素の偏差を最小化できる。
排ガス焼却炉を操作する(稼働させる)ための方法は、反応物流の流れをアンモ酸化反応器に導入するステップ;反応物流における炭化水素の量を判定し、反応物流の供給速度を判定するステップ;反応器の排出物を、アンモ酸化反応器から吸収器に運ぶステップ;吸収器の排ガスを、吸収器から吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップ;ならびに燃料ガスおよび空気を、吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップを含む。吸収器の排ガス、燃料ガスおよび空気が、吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおいて、プラントで生成されたAN1トン当たり約6kg以下のNOxを維持する量、ならびに吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおいて、プラントで生成されたAN1トン当たり約3.5kg以下の非メタン炭化水素を維持する量で、吸収器の排ガス焼却炉に供給される。
【0005】
排ガス焼却炉を操作するための方法は、反応物流の流れをアンモ酸化反応器に導入するステップ;反応物流における炭化水素の量を判定し、反応物流の供給速度を判定するステップ;反応器の排出物を、アンモ酸化反応器から吸収器に運ぶステップ;吸収器の排ガスを、吸収器から吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップ;ならびに燃料ガスおよび空気を、吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップを含む。一態様では、吸収器の排ガス、燃料ガスおよび空気が、排ガス焼却炉の温度設定点の約10°F(5.56℃)以内に排ガス焼却炉における温度を維持する量で、吸収器の排ガス焼却炉に供給される。
別の態様では、排ガス焼却炉を操作するための方法は、反応物流の流れをアンモ酸化反応器に導入するステップ;反応物流における炭化水素の量を判定し、反応物流の供給速度を判定するステップ;反応器の排出物を、アンモ酸化反応器から吸収器に運ぶステップ;吸収器の排ガスを、吸収器から吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップ;ならびに燃料ガスおよび空気を、吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップを含む。一態様では、1セットの操作変数は、吸収器の排ガス焼却炉への燃料ガス流、および吸収器の排ガス焼却炉への空気流を含み、1セットの制御変数は、吸収器の排ガス焼却炉の煙道における酸素の量、および吸収器の排ガス焼却炉における温度を含む。この方法は、操作変数を調整することによる、少なくとも1セットの制御変数を制御するステップを含む。この態様では、操作変数は、フィードフォワード変数に基づいて変化する。
本方法の上記および他の態様、いくつかの態様の特徴および利点は、以下の図からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】AOGIのさらに詳細な概観を示す図である。
【0007】
対応する参照文字は、図面中のいくつかの概観の間の対応する構成成分を指し示す。当業者は、図中の構成要素は、簡潔さおよび明確さのために例証され、必ずしも原寸に比例していないことを認識するであろう。例えば、図におけるいくつかの構成要素の寸法は、様々な態様の理解を深める一助とするために、他の構成要素に対して誇張されていることがある。また、商業的に実行可能な態様では有用な、または必須の、一般的であるが十分に理解されている構成要素は、これらの様々な態様を、妨げることなく概観しやすくするために、描写されていないことが多い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明は、限定的な意味として解釈されるべきではないが、模範的な実施形態の一般的原理を説明する目的のためだけになされている。本発明の範囲は、特許請求の範囲に準拠して決定されるべきである。
アンモ酸化プロセス
図1は、アンモ酸化プロセスの系統図である。図を参照すると、このプロセスは、反応器10、クエンチ容器20、任意の排出物圧縮器30および吸収器40を含む。流れ1中のアンモニアおよび流れ2中の炭化水素(HC)供給物は、合わせた流れ3として反応器10に供給され得る。HC供給流2は、プロパン、プロピレン、イソブテン、イソブチレンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される炭化水素を含み得る。一態様では、炭化水素は、主にプロピレンである。触媒(
図1で示されていない)は、反応器10に存在し得る。酸素を含有するガスが、反応器10に供給され得る。例えば、空気は、空気圧縮器(
図1で示されていない)により圧縮し、反応器10に供給され得る。
アクリロニトリルは、反応器10中の触媒の存在下において、炭化水素、アンモニアおよび酸素の反応から、反応器10で生成される。アクリロニトリルを含む流れは、反応器10の上部から、反応器の排出物流4として流出し得る。反応器10で生成されたアクリロニトリルを含む反応器の排出物流4は、ライン11を通ってクエンチ容器20に運ばれ得る。
【0009】
クエンチ容器20では、反応器の排出物流4は、ライン12を経由してクエンチ容器20に入るクエンチ水流5との接触により冷却され得る。クエンチ水流5は、水に加えて酸を含み得る。アクリロニトリルを含む、冷却された反応器の排出物(副産物、例えばアセトニトリル、シアン化水素および不純物を含む)は、次いで、クエンチ流6として、ライン13を経由して排出物圧縮器30に運ばれ得る。
クエンチ流6は、排出物圧縮器30により圧縮され得、圧縮器の排出物流7として排出物圧縮器30から流出する。この方法は、圧縮器なしで操作するステップを含んでよい。圧縮器の排出物流7は、ライン14を経由して吸収器40の下部に運ばれ得る。吸収器40において、アクリロニトリルは、第2のまたは吸収器の水流8に吸収され得、これはライン15を経由して吸収器40の上部に入る。アクリロニトリルおよび他の副産物を含む水流または豊水流18は、次いで、吸収器40から、ライン19を経由して、生成物をさらに精製するための回収カラム(
図1で示されていない)に運搬され得る。吸収されなかった排出物9は、吸収器カラム40の上部からパイプ16を通って流出する。吸収されなかった排出物または吸収器の排出物9は、吸収器の排ガス焼却炉21(AOGI)または吸収器の排ガス酸化器(AOGO)で燃焼できる排ガスを含み得る。
【0010】
AOGIの操作
AOGI21のさらに詳細な概観は、
図2で示されている。
図2で示されているように、吸収器の排出物9、燃料ガス120および空気125は、AOGI21に入る。AOGI排出物ガス130は、AOGI煙道150に送られる。
環境許可要件は、AOGIの操作パラメータを定義できる。例えば、環境要件は、AOGI煙道ガスにおけるNO
x(NOx)、非メタン炭化水素、および/またはCOを必要量未満にする操作を必要とすることがある。AOGI煙道ガスにおけるこうした化合物の各量のモニタリングは、当業界で公知の方法による。この方法は、連続排出モニタリング系(CEMS)を含み得る。環境要件は、AOGIの操作を直接制御しないが、環境要件を達成するのに必要な操作条件および設定点を定義する一助となる。
【0011】
一態様では、方法は、AOGIを操作して、AOGI煙道ガスにおけるNOxレベルを制御するステップを含む。この態様では、方法は、プラントで生成されたAN1トン当たり約6kg以下のNOxを維持する量で、別の態様では、プラントで生成されたAN1トン当たり約5kg以下のNOx、別の態様では、約4kg以下のNOx(NOx)、また、別の態様では、約3kg以下のNOxを維持する量で、吸収器の排出物、燃料ガスおよび空気をAOGIに付与するステップを含む。この態様では、方法は、AOGI煙道ガスにおけるNOxを測定するステップを含む。
別の態様では、方法は、AOGIを操作して、AOGI煙道ガスにおける非メタン炭化水素(NMHC)を制御するステップを含む。この態様では、NMHCは、主に、プロパン、アクリロニトリル、アセトニトリルおよびプロピレンを含む。この態様では、方法は、プラントで生成されたAN1トン当たり約3.5kg以下のNMHCを維持する量で、別の態様では、プラントで生成されたAN1トン当たり約3kg以下のNMHC、別の態様では、約2.5kg以下のNMHC、また、別の態様では、約2kg以下のNMHCを維持する量で、吸収器の排出物、燃料ガスおよび空気をAOGIに付与するステップを含む。この態様では、方法は、AOGI煙道ガスにおけるNMHCを測定するステップを含む。
【0012】
別の態様では、方法は、AOGIを操作して、AOGI煙道ガスにおけるCOを制御するステップを含む。この態様では、方法は、プラントで生成されたAN1トン当たり約3.5kg以下のCOを維持する量で、別の態様では、プラントで生成されたAN1トン当たり約3kg以下のCO、別の態様では、約2.5kg以下のCO、また、別の態様では、約2.0kg以下のCOを維持する量で、吸収器の排出物、燃料ガスおよび空気をAOGIに付与するステップを含む。この態様では、方法は、AOGI煙道ガスにおけるCOを測定するステップを含む。
一態様では、方法は、吸収器の排出物を、吸収器からAOGI21に供給するステップ、ならびに燃料ガス120および空気125を、AOGI21に供給するステップを含む。吸収器の排出物、燃料ガスおよび空気は、燃料ガス供給速度を変化させることにより、AOGIの温度設定点の約10°F(5.56℃)以内、また、別の態様では、AOGIの温度設定点の約5°F(2.78℃)以内に、AOGI内温度を維持する量で、供給される。この態様では、温度は、AOGI21の内部で測定される。この方法は、熱交換器用に様々な公知の構造を含み得る。一態様では、吸収器の排ガス焼却炉の温度設定点は、吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおけるNOx、非メタン炭化水素、および/またはCOの必要量未満を達成するのに必要な最小温度、好ましくは、それらの各必要量を下回る量にするのに必要な最小温度である。
【0013】
一態様では、吸収器の排ガスは、未反応のプロピレンを含む。反応器は、爆発レベルのプロピレンを決してAOGIに到達させないように、制御系および停止系を含む。この態様では、反応器温度の制御系および停止系は、反応がないことを検出し、AOGIへの過剰なプロピレン流を防止する。
別の態様では、方法は、AOGIに供給された空気125を変化させることにより、吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおける酸素の量を部分的に制御するステップを含む。この態様では、吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおける酸素の量は、約5体積%以下、別の態様では、約3.5体積%以下、別の態様では、約3体積%以下、別の態様では、約2.5体積%以下、別の態様では、約2体積%以下、また、別の態様では、少なくとも約1体積%以下である。酸素は、AOGIの煙道150において測定される。
別の態様では、方法は、約95から約97%のプロセス全体のアクリロニトリル回収率を示す。関連するクエンチおよび吸収器の効率は、約99%超である。この態様では、吸収器の排ガス焼却炉に供給される燃料ガス対生成されたアクリロニトリルの比は、アクリロニトリル1トン当たり約3.3:1千標準立方フィート(MSCF/T)から約3.8:1(MSCF/T)、また、別の態様では、約3.4:1(MSCF/T)から約3.7:1(MSCF/T)の範囲で維持される。関連した態様では、吸収器の排ガス焼却炉に供給された空気対生成されたアクリロニトリルの比は、アクリロニトリル1トン当たり、1分に約1.7:1千標準立方フィート(MSCFM/T/時 AN)から約1.9:1(MSCFM/T/時 AN)の範囲で維持される。
【0014】
流動床反応器は、アクリロニトリルプラントの中心部である。反応器の効率(試薬変換および触媒損失の観点を含む)は、最適化しながら、反応器の特定の能力を増幅することを確実にするのが望ましい。反応器を正確に操作できないと、アクリロニトリルプラント全体の効率、信頼性または生成能力が著しく影響を受け、非常に広範な生成停止を引き起こすおそれがある。流動床の操作および性能は、選択される特定の作用条件に高度に感受性であり、業界は、そのような条件の変化にはきわめて慎重である。流動床の作用条件が変化し(例えば、反応器の圧力、反応器のガス速度、床の高さ、床圧力の降下対グリッド圧力の降下の比など)、触媒特性(粒径、粒径分布、微粒子の含有量、摩耗特性)が変化すると、触媒性能、ならびに関連する生成能力および効率もそのように変化し得る。アンモ酸化プロセスは、触媒の存在下において、アンモニア、酸素と、プロパン、プロピレン、イソブタンおよびイソブチレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される炭化水素を、約140kPa以下の圧力(絶対)および約0.5から約1.2メートル/秒の速度で、反応させて、反応器の排出物流を得るステップを含む。平均粒子直径が約10から100μであり、粒径分布の約0から30質量パーセントが約90μ超であり、約30から50質量パーセントが45μ未満である触媒を使用した場合、流動化速度(冷却コイルおよびディップレッグエリアを除外した、排出物の体積流量および反応器の断面積(「CSA」)に基づく)は、1.2m/秒まで、好ましくは0.55から0.85で操作できる。指し示された速度まででさえ、許容できる触媒損失で操作しつつ、上部の圧力が約0.50から約0.58kg/cm2、ならびに/またはサイクロンの圧力降下が15kPa以下、ならびに、流動床の上部を超える高さの微粒子の遊離が約5.5から約7.5mである反応器を操作することが可能と見出されている。これにより、単位反応器体積(タンジェント間)当たり、1時間に反応器体積の立方メートルにつき0.005から0.015メートルトン、別の態様では約0.0075から約0.0125、また、別の態様では、1時間に反応器体積の立方メートルにつき約0.009から約0.01メートルトンの生成能力が向上する見込みが生じる。
【0015】
ある態様では、方法は、反応器中で、炭化水素を操作または反応させるステップを含み、排出物の体積流量は、約0.5から約1.05m/秒の速度を有する(排出物の体積流量、ならびに冷却コイルおよびディップレッグエリアを除外した反応器の断面積(「CSA」)に基づく、すなわち、開口CSAの約90%)。この速度を使用する反応器系を設計および操作しながら、良好な流動化/触媒性能、およびサイクロンからの妥当な触媒のエントレインメント/触媒損失も達成する反応器系を設計および操作することが可能であり、その結果、速度は、ほぼこの範囲で、反応器の能力を向上させることが可能な程度まで維持され得ると見出されている。ある実施形態において、反応器は、約0.75m/秒から約0.95m/秒まで(CSAの90%および排出物ガスに基づく)の速度で操作され得、約0.50から約0.65kg/cm2、別の態様では約0.52から約0.58kg/cm2の上部の圧力を維持し得る。一態様では、メートル/秒でのサイクロン注入速度対メートル/秒での反応器の排出物速度の比は、約15以上、別の態様では、約20以上、別の態様では、約15から約30、別の態様では、約20から約30、別の態様では、約22から約25、別の態様では、約23から約26、また、別の態様では、約27から約29である。
【0016】
ある態様では、方法は、反応器中で炭化水素を操作または反応させるステップを含み、反応器は、円筒形反応器の高さ(タンジェント間)の約25%から約60%、別の態様では、約25%から約37%、別の態様では、約42%から約50%、別の態様では、約45%から約55%、また、別の態様では、約44%から約47%である高さの流動床を有する。
ある態様では、方法は、反応器中で炭化水素を操作または反応させるステップを含み、反応器は、反応器の直径の約60%から約110%、別の態様では、約60%から約80%、別の態様では、約70%から約100%、別の態様では、約75%から約90%、別の態様では、約80%から約90%、別の態様では、約85%から約95%、別の態様では、約70%から約85%、また、別の態様では、約85%から約90%である高さの流動床を有する。
【0017】
ある態様では、方法は、反応器中で炭化水素を操作または反応させるステップを含み、反応器は、約0.50から約0.65kg/cm2、別の態様では、約0.52から約0.58kg/cm2、別の態様では、約0.54から約0.6kg/cm2、また、別の態様では、約0.5から約0.55kg/cm2の範囲で、上部の圧力を有する。この範囲の反応器の上部の圧力は、この範囲より高い反応器の上部の圧力よりも改善した触媒性能の利益が得られる。ある態様では、方法は、約0.54から約0.56kg/cm2の範囲で、反応器を操作するステップを含む。
ある態様では、方法は、反応器中で炭化水素を操作または反応させるステップを含み、反応器供給物中のアンモニアの量は、アンモニア対炭化水素のモル比約1から約2、別の態様では、約1.25から約1.75、別の態様では、約1.4から約1.6、また、別の態様では、約1.25から約1.3を備える。
【0018】
別の態様では、方法は、反応器中で炭化水素を操作または反応させるステップを含み、反応器供給物中の空気の量は、反応器供給物中で空気対炭化水素の比約9から約12、別の態様では、約9から約11の比、別の態様では、約9から約10の比、別の態様では、約10.5から約11の比、別の態様では、約9.25から約9.75の比、また、別の態様では、約9.4から約9.6の比を備える。関連した態様では、反応器の排出物流は、約0.5から約1質量%の酸素を含む。方法は、反応器の排出物における酸素の量を連続して測定するステップ、およびそれに応じて空気対炭化水素のモル比を連続して調整するステップをさらに含み得る。酸素は、反応器の下流の任意の位置で測定され得る。
アクリロニトリルを含む反応器の排出物流を吸収するためのプロセスは、第1の水流で反応器の排出物流をクエンチして、アクリロニトリルを含むクエンチ流を得るステップ;クエンチ流を圧縮して、アクリロニトリルを含む排出物圧縮流を得るステップ;排出物圧縮流を、約300kPaから約500kPaの圧力(絶対)で吸収器に運ぶステップ;および吸収器において、第2の水流中のアクリロニトリルを吸収して、アクリロニトリルを含む豊水を得るステップを含む。
別の態様では、アクリロニトリルを含む反応器の排出物流を吸収するための方法、方法は、第1の水流で反応器の排出物流をクエンチして、アクリロニトリルを含むクエンチ流を得るステップ;クエンチ流を圧縮して、アクリロニトリルを含む排出物圧縮流を得るステップ;排出物圧縮流を吸収器に運ぶステップ;および吸収器において、約4℃から約45℃の温度を有する第2の水流中のアクリロニトリルを吸収して、アクリロニトリルを含む豊水を得るステップを含む。
【0019】
反応器、クエンチおよび/または吸収器の操作における変化は、望ましい排出レベルを達成するのに必要なAOGIの操作パラメータに影響を与えるおそれがある。例えば、反応器変換率における変化は、吸収器の排ガス組成に影響を与えるおそれがあり、どのくらい多くの燃料および酸素がAOGIに供給される必要があるかに影響を与えるおそれがある。この態様では、反応器のプロピレン変換率は、約95%から約100%未満になる。本明細書で使用されている「反応器のプロピレン変換率」は、アクリロニトリルおよび他の炭素含有生成物に変換される、反応器供給物中のプロピレンの量の百分率を指す。別の態様では、クエンチカラムの操作は、吸収器カラムの温度に影響を与えるおそれがあり、これが、最終的には、どのくらい多くの水が吸収器の排ガス中にあるかに影響を与えるおそれがある。吸収器の排ガスにおける水含有量の変化は、次いで、AOGIの操作に影響を及ぼすおそれがある。この態様では、約65℃から約85℃(あるタイプのクエンチ設計で)、および約100℃から約120℃(別のタイプのクエンチ設計で)の温度を有するクエンチカラムの排出物は、吸収器に運ばれる。関連した態様では、吸収器の排ガスは、約5質量%以下の水を有し、吸収器の排ガスにおける水のレベルは、吸収器の上部の温度が変化するにつれて変化し得る。別の態様では、クエンチカラムは、クエンチカラムの最終冷却器からの凝縮物において約3.5から約7、別の態様では、約3.5から約6、また、別の態様では、約5から約5.5のpHを示し得る。
【0020】
高度プロセス制御
反応器の供給速度(炭化水素の供給速度)における変化は、吸収器に入り、最終的にはAOGIに入るプロパンの量を変化させる。プロパンは、本来、反応器において触媒と不活性であると見出されている。プロパンは、燃料として作用し、フィードフォワード手段における燃料ガス流で変化が無効にならない場合、AOGI温度および煙道のO2に偏差が引き起こされ得る。プロピレン純度が変化するケースでも同じものが見られ、このため、異なる量のプロパンが吸収器およびAOGIに入る。したがって、AOGI温度およびO2における偏差を予測するために変化が使用され、その結果、燃料ガスの変化が無効になる場合、供給速度およびプロピレン純度(ならびにそれらの変化)を知ることで、AOGI火室の温度および煙道のO2をより良好に制御できる。
【0021】
モデル予測制御(MPC)は、高度プロセス制御(APC)としても公知であり、プロセスモデルを使用して、将来のプロセス挙動を予測し、次いで最適化した制御動作を実行に移して、望ましい目標からのプロセス偏差を無効にする。プロセスの制御と共に、MPCは、重要なプロセス変数を変動させて、プロセスを最も「経済的な」状態にしようとする。プロセスは、燃料ガス使用量の抑制、およびAOGI排出の改善を達成するためにMPCの使用を含む。
本明細書で使用されている「操作変数」という用語は、高度プロセス制御器により調整される変数を指す。この態様では、操作変数は、AOGIへの燃料ガス流量および空気流量を含む。「制御変数」という用語は、所定の値(設定点)または所定の範囲(設定範囲)内で、高度プロセス制御器により保持される変数を指す。この態様では、制御変数は、AOGIにおける温度およびAOGIの煙道ガス中のO2を含む。「変数の最適化」は、変数を最大化すること、または最小化すること、ならびに、所定の値で変数を維持することを指す。「フィードフォワード変数」は、操作変数の調整値の決定に使用される変数を指す。この態様では、フィードフォワード変数は、反応物流のアンモ酸化反応器中への流量、および反応物流における炭化水素の量を含む。
【0022】
モデル予測制御の一態様は、制御変数のモデルおよび利用できる測定を使用して、将来のプロセス挙動が予測されることである。制御器の出力は、性能指数を最適化するように計算され、性能指数は、予測される誤差、および計算される将来の制御変動の一次または二次関数である。各サンプリング時点で、制御の計算が繰り返され、予測は、最新の測定に基づいて更新される。この態様では、適切なモデルは、制御変数に対する操作変数およびフィードフォワード変数のステップ応答の効果を表現する1セットの実証的ステップ応答モデルを含むものである。
最適化されるパラメータの最適な値は、個別の最適化ステップから得られ、最適化される変数は、性能関数に含まれ得る。
モデル予測制御が適用され得る前に、まず、最適化される変数および制御変数に対する操作変数のステップ変化の効果が決定される。これにより、1セットのステップ応答係数が得られる。このステップ応答係数のセットは、プロセスのモデル予測制御の基盤を形成する。
【0023】
通常の操作中に、制御変数の予測値は、いくつかの将来の制御変動のために規則的に計算される。こうした将来の制御変動に関して、性能指数が計算される。性能指数は2つの項を含み、第一項は、各制御変動に対して予測される誤差の将来の制御変動の総和を表し、第二項は、各制御変動に対する操作変数における変化の将来の制御変動の総和を表す。各制御変数に対して、予測される誤差は、制御変数の予測値と制御変数の基準値の間の差である。予測される誤差には重み係数を掛け、制御変動に対する操作変数における変化は、変動抑制係数を掛ける。
あるいは、これらの項は、二乗項の総和であってよく、このケースでは、性能指数は二次である。さらに、操作変数、操作変数における変化、および制御変数に対して制約を設定できる。これにより、性能指数の最小化と同時に解決される別の1セットの等式が得られる。
最適化は、2つの方法で行うことができ;第1の方法は、性能指数の最小化は別として、個別に最適化することであり、第2の方法は、性能指数内で最適化することである。
最適化を個別に行う場合、最適化される変数は、各制御変動に対して予測される誤差中の制御変数として含まれ、最適化により、制御変数に対する基準値が得られる。
あるいは、最適化は、性能指数の計算内で行うと、これにより、適切な重み係数を有する性能指数における第三項が得られる。このケースでは、制御変数の基準値は、一定で留まる所定の定常状態の値である。
【0024】
性能指数は、将来の制御変動に対する操作変数の値を得るための制約を考慮に入れると、最小化される。しかし、次の制御変動だけは実行される。その結果、将来の制御変動に対する性能指数の計算が再度開始される。
ステップ応答係数を有するモデル、およびモデル予測制御に必要とされる等式は、吸収器の排ガス焼却炉のプロセスを制御するために実行されるコンピュータプログラムの部分である。予測制御を取り扱うことができるそのようなプログラムを搭載したコンピュータプログラムは、高度プロセス制御器と呼ばれる。利用され得る市販のコンピュータプログラムは、例えば、Aspen TechnologyのDMCplus(登録商標)およびEmersonのPredictPro(登録商標)を含む。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕排ガス焼却炉を操作するための方法であって、
反応物流の流れをアンモ酸化反応器に導入するステップ;
反応物流における炭化水素の量を判定し、反応物流の供給速度を判定するステップ;
反応器の排出物を、アンモ酸化反応器から吸収器に運ぶステップ;
吸収器の排ガスを、吸収器から吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップ;ならびに
燃料ガスおよび空気を、吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップ;
を含み、
吸収器の排ガス、燃料ガスおよび空気が、吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおいて、生成されたアクリロニトリル1トン当たり約6kg以下のNO
x
を維持する量、ならびに吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおいて、生成されたアクリロニトリル1トン当たり約3.5kg以下の非メタン炭化水素を維持する量で、吸収器の排ガス焼却炉に供給される、方法。
〔2〕吸収器の排ガス焼却炉における温度が、吸収器の排ガス焼却炉の温度設定点の約10°F(5.56℃)以内に維持される、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕反応物流における炭化水素が、プロパン、プロピレン、イソブテン、イソブチレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、前記〔1〕に記載の方法。
〔4〕炭化水素がプロピレンである、前記〔3〕に記載の方法。
〔5〕吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおいて、約5体積%以下の酸素を提供する、前記〔1〕に記載の方法。
〔6〕吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおいて、生成されたアクリロニトリル1トン当たり約3.5kg以下のCOを維持する、前記〔1〕に記載の方法。
〔7〕吸収器の排ガス焼却炉の温度設定点が、吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおけるNO
x
、非メタン炭化水素、および/またはCOの必要量未満を達成するのに必要な最小温度である、前記〔2〕に記載の方法。
〔8〕反応物流の流れをアンモ酸化反応器に導入するステップ;
反応物流における炭化水素の量を判定し、反応物流の供給速度を判定するステップ;
反応器の排出物を、アンモ酸化反応器から吸収器に運ぶステップ;
吸収器の排ガスを、吸収器から吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップ;ならびに
燃料ガスおよび空気を、吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップ;
を含み、
吸収器の排ガス、燃料ガスおよび空気が、排ガス焼却炉内の温度を、排ガス焼却炉の温度設定点の約10°F(5.56℃)以内に維持する量で、吸収器の排ガス焼却炉に供給される、排ガス焼却炉を操作する方法。
〔9〕排ガス焼却炉内の温度が、排ガス焼却炉の温度設定点の約5°F(2.78℃)以内に維持される、前記〔8〕に記載の方法。
〔10〕反応物流における炭化水素が、プロパン、プロピレン、イソブテン、イソブチレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、前記〔8〕に記載の方法。
〔11〕炭化水素がプロピレンである、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおいて、約5体積%以下の酸素を提供する、前記〔8〕に記載の方法。
〔13〕吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおいて、生成されたアクリロニトリル1トン当たり約6kg以下のNO
x
を維持する、前記〔8〕に記載の方法。
〔14〕吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおいて、生成されたアクリロニトリル1トン当たり約3.5kg以下の非メタン炭化水素を維持する、前記〔8〕に記載の方法。
〔15〕吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおいて、生成されたアクリロニトリル1トン当たり約3.5kg以下のCOを維持する、前記〔8〕に記載の方法。
〔16〕アンモ酸化反応器が、約95%~約100%未満のプロピレン変換率を有する、前記〔8〕に記載の方法。
〔17〕アンモ酸化反応器からの反応器の排出物が、クエンチカラムに運ばれ、約65℃から約85℃の温度を有するクエンチカラムの排出物が、前記吸収器に運ばれる、前記〔8〕に記載の方法。
〔18〕吸収器の排ガスが、約5質量%以下の水を含む、前記〔8〕に記載の方法。
〔19〕吸収器の排ガス焼却炉の温度設定点が、吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおけるNO
x
、非メタン炭化水素、および/またはCOの必要量未満を達成するのに必要な最小温度である、前記〔8〕に記載の方法。
〔20〕
反応物流の流れをアンモ酸化反応器に導入するステップ;
反応物流における炭化水素の量を判定し、反応物流の供給速度を判定するステップ;
反応器の排出物を、アンモ酸化反応器から吸収器に運ぶステップ;
吸収器の排ガスを、吸収器から吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップ;ならびに
燃料ガスおよび空気を、吸収器の排ガス焼却炉に供給するステップ;
を含み、
1セットの操作変数が、吸収器の排ガス焼却炉への燃料ガス流、および吸収器の排ガス焼却炉への空気流を含み、1セットの制御変数が、吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおける酸素の量、および吸収器の排ガス焼却炉における温度を含み、
少なくとも1セットの制御変数を制御することが、操作変数を調整することを含み、
フィードフォワード変数が、操作変数を変化させるために使用される、排ガス焼却炉を操作するための方法。
〔21〕フィードフォワード変数が、反応物流における炭化水素の量、および反応物流の供給速度を含む、前記〔20〕に記載の方法。
〔22〕吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおける酸素の量、および吸収器の排ガス焼却炉における温度をモデル予測制御に基づいて制御して、少なくとも1セットの制御変数を制御しながら、少なくとも1セットのパラメータを最適化するために、操作変数の同時制御動作を決定するステップを含む、前記〔20〕に記載の方法。
〔23〕吸収器の排ガス焼却炉における温度を、排ガス焼却炉の温度設定点の約10°F(5.56℃)以内にする、前記〔20〕に記載の方法。
〔24〕吸収器の排ガス焼却炉における温度が、吸収器の排ガス焼却炉の温度設定点の約5°F(2.78℃)以内に維持される、前記〔23〕に記載の方法。
〔25〕反応物流における炭化水素が、プロパン、プロピレン、イソブテン、イソブチレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、前記〔20〕に記載の方法。
〔26〕炭化水素がプロピレンである、前記〔25〕に記載の方法。
〔27〕吸収器の排ガス焼却炉の煙道ガスにおいて、約5体積%以下の酸素を提供する、前記〔20〕に記載の方法。
【実施例】
【0025】
(例1)
アクリロニトリル16T/時での燃料ガスおよび空気使用量
AOGI温度変化の効果:以下の表は、プラントを操作して、アクリロニトリル(AN)16T/時を生成する場合の、燃料ガスおよび空気使用量を比較する。ベースライン操作は、理想的なAOGI温度および煙道のO2について説明している。実際に、方法は、約10°F(5.56℃)高くAOGIを操作して、供給純度および反応器の供給速度を変化させるための緩衝液を得るステップを含み得る。表で示されているように、温度が10°F(5.56℃)上昇し、煙道のO2が一定に保たれる場合、燃料ガス使用量空気使用量は増加する。この例では、ベースライン操作と比較して、+10°で操作する際の燃料ガス使用量は約6.9%増加し、空気使用量は約2.1%増加した。この態様では、燃料ガス使用量は、ベースライン操作を約10°F(5.56℃)超える温度でのAOGIの操作と比較して、約6%から約7.5%増加し得、空気使用量は約1.5%から約2.5%増加し得る。
AOGI温度変化および煙道のO2変化の効果:表でさらに示されているように、煙道のO2が1.4%から1.6%増加する場合、ベースライン操作と比較して、燃料ガス使用量は約15%増加し、空気使用量は約7.4%増加した。この態様では、約1.4%の煙道のO2およびベースライン温度でのAOGIの操作と比較して、燃料ガス使用量は、約12%から約16%増加し得、空気使用量は約6%から約8%増加し得る。本明細書で提供される方法は、望ましいベースラインより+10°F(5.56℃)高くAOGIを操作させる必要性を低下させ、燃料ガスを節約し、空気をAOGIに付与する。
原材料純度の変化の効果:以下の表は、原材料純度の変化の効果を例証する。表で示されているように、原材料純度が1%低下し、燃料ガスおよび空気がベースラインレベルで維持される場合、AOGI温度は上昇する。ベースライン温度が維持される場合、燃料ガス使用量は減少し、空気は同一のままである。
本明細書で提供される方法は、原材料における純度の変化に基づき、AOGIへの燃料ガス供給の事前調整を可能にする。この燃料ガス供給の事前調整により、AOGIを望ましい温度に近づけたままにしつつ、燃料ガスの使用を抑えることが可能である。この態様では、燃料ガスを減少させてAOGI温度の維持が可能になった場合、約95.4%の原材料純度での燃料ガス使用量は、ベースライン操作の約49.1%未満であった。
【0026】
【0027】
(例2)
アクリロニトリル12T/時での燃料ガスおよび空気使用量
AOGI温度変化の効果:以下の表は、プラントを操作してアクリロニトリル(AN)12T/時を生成する場合の、燃料ガスおよび空気使用量を比較する。ベースライン操作は、理想的なAOGI温度および煙道のO2について説明している。実際に、方法は、約10°F(5.56℃)高くAOGIを操作して、供給純度および反応器の供給速度を変化させるために緩衝液を付与するステップを含み得る。表で示されているように、温度が10°F(5.56℃)上昇し、煙道のO2が一定に保たれる場合、燃料ガス使用量は増加する。この例では、ベースライン操作と比較して、+10°で操作する際の燃料ガス使用量は約3.7%増加し、空気使用量は約0.8%増加した。この態様では、燃料ガス使用量は、ベースライン操作を約10°F(5.56℃)超える温度でのAOGIの操作と比較して、約3%から約4%増加し得、空気使用量は、約0.5%から約1.0%増加し得る。
【0028】
AOGI温度変化および煙道のO2変化の効果:表でさらに示されているように、ベースライン操作と比較して、煙道のO2が2.6%から2.8%増加する場合、燃料ガス使用量は約7.7%増加し、空気使用量は約6.0%増加した。この態様では、約2.6%の煙道のO2およびベースライン温度でのAOGIの操作と比較して、燃料ガス使用量は約5%から約10%増加し得、空気使用量は約5%から約7%増加し得る。
原材料純度の変化の効果:以下の表は、原材料純度の変化の効果を例証する。表で示されているように、原材料純度が1%低下し、燃料ガスおよび空気がベースラインレベルで維持される場合、AOGI温度は、ベースライン温度よりも5.8%上昇する。この態様では、原材料純度の低下は、AOGI温度において、ベースライン温度よりも約5.5%から約6.5%高い上昇を引き起こし得る。原材料純度が1%上昇し、燃料ガスおよび空気がベースラインレベルで維持される場合、AOGI温度はベースライン温度よりも約6.2%低下する。この態様では、原材料純度における上昇は、AOGI温度の約5.5%から約6.5%の低下を引き起こし得る。
【0029】
【0030】
(例3)
原材料純度および供給速度の効果
原材料純度の変化の効果:以下の表は、原材料純度の変化の効果を例証する。表で示されているように、原材料純度が1.1%上昇し、燃料ガスおよび空気がベースラインレベルで維持される場合、AOGI温度は約4.5%低下する。この態様では、原材料純度における約1.1%の上昇は、AOGI温度における約4%から約5%の低下を引き起こし得る。
原材料純度が1.1%上昇し、AOGI温度がベースラインレベルで維持される場合、燃料ガス使用量は16.5%増加し、空気使用量は0.7%増加する。この態様では、原材料純度が1.1%上昇し、AOGI温度がベースラインレベルで維持される場合、燃料ガス使用量は、ベースラインレベルより約16%から約17%増加し得、空気使用量は、ベースラインレベルより約0.5%から約1%増加し得る。
【0031】
【表3】
反応器の供給速度の効果:以下の表は、反応器の供給速度における変化の効果を例証する。表で示されているように、供給速度が5%増加し、燃料ガスおよびAOGI温度がベースラインレベルで維持される場合、AOGI温度は約2°F(1.11℃)低下し、煙道のO2は約13.4%低下した。供給速度が10%低下し、燃料ガスおよびAOGI温度がベースラインレベルで維持される場合、AOGI温度は約6°F(3.34℃)上昇し、煙道のO2が約31%増加した。供給速度が10%低下し、AOGI温度および煙道のO2がベースラインレベルで維持される場合、燃料ガス使用量は約10%減少し、空気使用量は約10.2%まで減少した。この態様では、供給速度の約10%の低下は、燃料使用量の約8%から約12%の減少、および空気使用量の約9.5%から約10.5%の減少を引き起こし得る。
【0032】
【表4】
本明細書で開示されている本発明は、具体的な実施形態、その例および用途によって説明されているが、それらに、当業者によって多数の改変および変化が、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく行われ得る。