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特許7575447クロロプレン系ブロック共重合体、ラテックス、ラテックス組成物及びゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】クロロプレン系ブロック共重合体、ラテックス、ラテックス組成物及びゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20241022BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08F293/00
C08L53/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022510496
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011776
(87)【国際公開番号】W WO2021193560
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2020056386
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雄志
(72)【発明者】
【氏名】西野 渉
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】小林 直紀
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-001458(JP,A)
【文献】特開2011-012196(JP,A)
【文献】特開2003-292719(JP,A)
【文献】国際公開第2002/081561(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロック(A)5~15質量%と、クロロプレン単量体由来の構造単位を含むクロロプレン系重合体ブロック(B)85~95質量%を含むクロロプレン系ブロック共重合体であり、
前記クロロプレン系重合体ブロック(B)は、前記クロロプレン系重合体ブロック(B)を100質量%としたとき、前記クロロプレン単量体由来の構造単位を90質量%以上含み、
前記クロロプレン系ブロック共重合体100質量%に対して、トルエン不溶分が20~100質量%であるクロロプレン系ブロック共重合体。
【請求項2】
前記クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックス組成物の成形体を、130℃で30分間熱処理した後にJIS K 6251に準拠して測定した切断時引張強さが17MPa以上である請求項1に記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【請求項3】
前記重合体ブロック(A)の数平均分子量が10,000以上である、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【請求項4】
前記重合体ブロック(A)の分子量分布が2.0以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【請求項5】
前記重合体ブロック(A)が芳香族ビニル単量体単位からなる重合体ブロックである請求項1~のいずれか一項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【請求項6】
化学式(1)又は化学式(2)で表される構造の官能基を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【化1】
(化学式(1)中、Rは水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を表す。)
【化2】
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックス。
【請求項8】
請求項に記載のラテックス100質量部と、老化防止剤0.5~5.0質量部を含むラテックス組成物。
【請求項9】
加硫剤、及び加硫促進剤を含まない請求項に記載のラテックス組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体を含むゴム組成物。
【請求項11】
請求項のラテックスからなるゴム組成物。
【請求項12】
請求項又はに記載のラテックス組成物からなるゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレン系ブロック共重合体、ラテックス、ラテックス組成物及びゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロプレン系重合体ブロックを含むクロロプレン系ブロック共重合体に関する技術は種々提案されている。先行技術文献としては、アゾ基を含有するポリスチレンを開始剤としてクロロプレンを重合して得られる共重合体(例えば特許文献1参照)や、ジチオカルバメート化したポリクロロプレンに芳香族ビニル単量体を重合させた共重合体(例えば特許文献2参照)、クロロプレン系ポリマーに親水性オリゴマー又は親水性ポリマーを連結させた共重合体(例えば特許文献3参照)、芳香族ビニル化合物重合体のブロックとクロロプレン重合体のブロックを有し全体の数平均分子量とクロロプレン重合体のブロックの数平均分子量を特定した共重合体(例えば特許文献4参照)、アクリル酸エステル重合体のブロックとクロロプレン重合体のブロックを有する共重合体(例えば特許文献5参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-207710号公報
【文献】特開平3-212414号公報
【文献】特開2007-297502号公報
【文献】国際公開第2018/181801号
【文献】国際公開第2019/026914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ポリクロロプレン系ゴム組成物は目的とする機械的強度を得るために、硫黄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の加硫剤、及びチウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、グアニジン系、キサントゲン酸塩系、チアゾール系等の加硫促進剤の使用が不可欠であった。加硫促進剤は皮膚炎等の皮膚疾患を発症させるIV型アレルギーの原因物質であることから、加硫促進剤の削減や不使用化が重要なテーマとなっている。また、加硫促進剤の不使用化は、アレルギーの低減だけではなくコストダウンにも繋がることから、加硫促進剤を使用せずに十分な機械的強度を発現するゴム組成物が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、加硫剤や加硫促進剤を使用しなくても、柔軟性及び引張特性に優れた製品が得られるクロロプレン系ブロック共重合体、ラテックス、ラテックス組成物及びゴム組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下を要旨とするものである。
(1)単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロック(A)5~30質量%と、クロロプレン単量体を含むクロロプレン系重合体ブロック(B)70~95質量%を含むクロロプレン系ブロック共重合体であり、
前記クロロプレン系ブロック共重合体100質量%に対して、トルエン不溶分が20~100質量%であるクロロプレン系ブロック共重合体。
【0007】
(2)クロロプレン系ブロック共重合体100質量%中に、前記重合体ブロック(A)を5~15質量%と、前記クロロプレン系重合体ブロック(B)を85~95質量%含有する(1)に記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【0008】
(3)前記クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックス組成物の成形体を、130℃で30分間熱処理した後にJIS K 6251に準拠して測定した切断時引張強さが17MPa以上である(1)又は(2)に記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【0009】
(4)前記重合体ブロック(A)の数平均分子量が10,000以上である、(1)~(3)のいずれかに記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【0010】
(5)前記重合体ブロック(A)の分子量分布が2.0以下である、(1)~(4)のいずれかに記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【0011】
(6)前記重合体ブロック(A)が芳香族ビニル単量体単位からなる重合体ブロックである(1)~(5)のいずれかに記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【0012】
(7)化学式(1)又は化学式(2)で表される構造の官能基を有する、(1)~(6)のいずれかに記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【化1】
(化学式(1)中、Rは水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、メルカプト基又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を表す。)
【化2】
【0013】
(8)(1)~(7)のいずれか一項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックス。
【0014】
(9)(8)に記載のラテックス100質量部と、老化防止剤0.5~5.0質量部を含むラテックス組成物。
【0015】
(10)加硫剤、及び加硫促進剤を含まない(9)に記載のラテックス組成物。
【0016】
(11)(1)~(7)のいずれか一項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体を含むゴム組成物。
【0017】
(12)(8)のラテックス又は(9)~(10)に記載のラテックス組成物からなるゴム組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加硫剤や加硫促進剤を使用しなくても、柔軟性及び引張特性に優れた製品が得られるクロロプレン系ブロック共重合体、ラテックス、ラテックス組成物及びゴム組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「A~B」という記載は、A以上でありB以下であるという意味である。
【0020】
<クロロプレン系ブロック共重合体>
クロロプレン系ブロック共重合体は、単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロック(A)と、クロロプレン単量体を含むクロロプレン系重合体ブロック(B)を含むブロック共重合体である。クロロプレン系ブロック共重合体は、ブロック共重合体同士が化学結合している構造を有するものも含まれる。
【0021】
[重合体ブロック(A)]
重合体ブロック(A)は、単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロックである。このような単量体を用いることで、得られるクロロプレン系ブロック共重合体の切断時引張強さが向上する。好ましくはガラス転移温度が85℃以上の重合体が得られる単量体を用いるとよい。成形性の観点からは、ガラス転移温度が150℃以下の重合体が得られる単量体であれば好ましく、特に好ましくは120℃以下の重合体が得られる単量体である。ガラス転移温度は、例えば、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、150℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、本明細書においてガラス転移温度とは、JIS K 7121に準拠して測定した補外ガラス転移終了温度(T eg)である。重合体ブロック(A)が、単量体(A)を重合することで得られる重合体ブロックである場合、単量体(A)は、単量体Aを単独重合して、数平均分子量10000~30000のホモポリマー(A)としたとき、該ホモポリマー(A)が、上記ガラス転移温度を有する単量体であることが好ましい。
【0022】
重合体ブロック(A)を構成する単量体単位としては、芳香族ビニル単量体単位、メタクリル酸メチル単量体単位、アクリロニトリル単量体単位が挙げられる。好ましくは芳香族ビニル単量体に由来する単位が用いられ、スチレン単位が好適に用いられる。重合体ブロック(A)は、本発明の目的を損なわない範囲において、これら単量体同士の共重合により得られる重合体ブロック、またはこれら単量体と共重合可能な単量体単位からなる重合体ブロックであっても構わない。
【0023】
重合体ブロック(A)の数平均分子量は、得られるクロロプレン系ブロック共重合体の引張特性や成形性の観点から、10,000以上であることが好ましい。また、重合体ブロック(A)の分子量分布は、成形性の観点から、2.0以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値であり、以下記載の測定条件における測定値である。
装置名:HLC-8320(東ソー社製)
カラム:TSKgel GMHHR-Hを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
検量線:標準ポリスチレン(PS)を用いて作製した。
【0024】
[クロロプレン系重合体ブロック(B)]
クロロプレン系重合体ブロック(B)は、クロロプレン単量体(2-クロロ-1,3-ブタジエン)単位を含み、クロロプレン単量体主体とする。なお、クロロプレン系重合体ブロック(B)は、本発明の目的を損なわない範囲において、クロロプレン単量体単位と、クロロプレン単量体と共重合可能な単量体に由来する単位からなる重合体ブロックであっても構わない。クロロプレン系重合体ブロック(B)は、クロロプレン系重合体ブロック(B)を100質量%としたとき、クロロプレン単量体由来の構造単位を90質量%以上含むことが好ましい。また、クロロプレン系重合体ブロック(B)は、クロロプレン単量体由来の構造単位以外の繰り返し単位を含まないものとすることもできる。
【0025】
クロロプレン系ブロック共重合体の各構造単位の含有量は、重合体ブロック(A)5~30質量%、クロロプレン系重合体ブロック(B)70~95質量%であり、好ましくは重合体ブロック(A)5~15質量%、クロロプレン系重合体ブロック(B)85~95質量%である。重合体ブロック(A)が5質量%以上である場合に、得られるクロロプレン系ブロック共重合体の切断時引張強さが向上する。重合体ブロック(A)が30質量%以下である場合に、得られるクロロプレン系ブロック共重合体の柔軟性が向上する。重合体ブロック(A)は好ましくは15質量%以下である。クロロプレン系重合体ブロック(B)が70質量%以上である場合に、得られるクロロプレン系ブロック共重合体の柔軟性が向上する。クロロプレン系重合体ブロック(B)は、好ましくは85質量%以上である。クロロプレン系重合体ブロック(B)が95質量%以下である場合に、得られるクロロプレン系ブロック共重合体の切断時引張強さが向上する。クロロプレン系ブロック共重合体を100質量%としたとき、クロロプレン系ブロック共重合体に含まれる重合体ブロック(A)の含有率は、例えば、5、10、15、20、25、30質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)からなるものとすることができ、他の重合体ブロックを含まないものとすることができる。クロロプレン系ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)-重合体ブロック(B)のジブロック共重合体とすることができる。
【0026】
クロロプレン系ブロック共重合体の重量平均分子量は、特に制限はないが、成形加工性の観点から、好ましくは5~60万であり、特に好ましくは10~50万である。
【0027】
本実施形態のクロロプレン系ブロック共重合体のトルエン不溶分は、20~100質量%の範囲となる。トルエン不溶分が20質量%以上である場合に、切断時引張強さが向上する。
【0028】
本実施形態のクロロプレン系ブロック共重合体は、該クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックス組成物の成形体を、130℃で30分間熱処理した後にJIS K 6251に準拠して測定した切断時引張強さが17MPa以上となることが好ましい。切断時引張強さは、18MPa以上であることがより好ましく、19MPa以上であることがさらにより好ましく、20MPa以上であることがさらにより好ましい。上限は特に制限されないが、例えば、30MPa以下である。
【0029】
また、本実施形態のクロロプレン系ブロック共重合体は、該クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックス組成物の成形体を、130℃で30分間熱処理した後にJIS K 6251に準拠して測定した切断時伸びが900%以上であることが好ましく、905%以上であることがより好ましく、910%以上であることがさらにより好ましい。上限は特に制限されないが、例えば、1300%以下である。
【0030】
本実施形態のクロロプレン系ブロック共重合体は、該クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックス組成物の成形体を、130℃で30分間熱処理した後にJIS K 6251に準拠して測定した500%伸長時モジュラスが、3.0MPa以下であることが好ましく、2.9MPa以下であることがより好ましく、2.8MPa以下であることがさらにより好ましい。下限は特に制限されないが、例えば、1.0MPa以上である。
【0031】
本実施形態のクロロプレン系ブロック共重合体は、該クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックスを含むラテックス組成物及びゴム組成物からなる成形体が、130℃で30分間熱処理した後に上記した引張強度、切断時伸び、500%伸長時モジュラスを有するものとできる。成形体は、成形に際し、加硫剤及び加硫促進剤を用いないものとできる。引張強度を測定するため成形体は、実施例に記載の方法で得ることができる。
【0032】
クロロプレン系ブロック共重合体の切断時引張強さ、切断時伸び、500%伸長時モジュラスを調整するには、クロロプレン系ブロック共重合体のトルエン不溶分量を調整したり、クロロプレン系ブロック共重合体中の重合体ブロック(A)の含有量を調整したりすればよい。
【0033】
[クロロプレン系ブロック共重合体の製造方法]
本発明に係るクロロプレン系ブロック共重合体の製造方法について説明する。重合様式においては、特に制限はなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合等公知の方法で製造できるが、乳化重合が所望のクロロプレン系ブロック共重合体を得る上で好適である。
【0034】
重合方法は、所望のクロロプレン系ブロック共重合体が得られれば特に限定されないが、重合体ブロック(A)を合成する重合工程1の後に、クロロプレン系重合体ブロック(B)を合成する重合工程2からなる二段階の重合工程を経る製造方法により製造することが可能である。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ブロック共重合体の製造方法は、単量体(A)を含む原料を重合して重合体ブロック(A)を合成する重合工程1と、重合工程1のリビングラジカル乳化重合で得られた重合体ブロック(A)を含むラテックスに純水、乳化剤、及びクロロプレン単量体を含む原料を添加して乳化重合することでクロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックスを得る重合工程2を含む。
【0035】
(重合工程1)
重合工程1について具体的に説明する。重合工程1では、重合体ブロック(A)を構成する単量体をリビングラジカル乳化重合して重合体ブロック(A)を合成する。上記したように、ここで得られる重合体ブロック(A)は、上記したガラス転移温度を有することが好ましい。乳化重合で用いる乳化剤としては、特に限定されるものではないが、乳化安定性の観点からアニオン系又はノニオン系の乳化剤が好ましい。特に得られるクロロプレン系ブロック共重合体に適当な強度を持たせて過度の収縮及び破損を防ぐことができるという理由から、ロジン酸アルカリ金属塩を使用することが好ましい。乳化剤の濃度は、重合反応を効率的に行う観点から、重合体ブロック(A)を構成する単量体100質量%に対して、5~50質量%であることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、アゾ系化合物などを用いることができる。純水の添加量は、重合体ブロック(A)を構成する単量体100質量%に対して、100~300質量%が好ましい。純水の添加量が300質量%以下である場合に、得られるクロロプレン系ブロック共重合体のトルエン不溶分が20質量%以上となり、切断時引張強さが向上する。重合温度は、単量体の種類に応じて適宜決定すればよいが、10~100℃が好ましく、20~80℃が特に好ましい。
【0036】
(重合工程2)
重合工程2では、上記重合工程1のリビングラジカル乳化重合で得られた重合体ブロック(A)を含むラテックスに対して、純水、乳化剤、及びクロロプレン単量体を添加して乳化重合することで目的のクロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックスを得ることができる。クロロプレン単量体は、一括添加でも分添でも構わない。重合工程2の重合温度は、重合制御のしやすさの観点から10~50℃であることが好ましい。重合反応は重合停止剤を加えることにより停止させる。重合停止剤としては、例えばチオジフェニルアミン、4-第3ブチルカテコール、2,2'-メチレンビス-4-メチル-6-第3-ブチルフェノール等がある。乳化重合終了後の未反応単量体は、常法の減圧蒸留等の方法で除去することができる。上記に例示した本発明の一実施形態に係る製造方法により、トルエン不溶分が適切であるクロロプレン系ブロック共重合体を、より容易に得ることができる。
【0037】
重合工程2で得られたクロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックスには、本発明の目的を損なわない範囲で、重合後に凍結安定剤、乳化安定剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防腐剤などを任意に添加することができる。
【0038】
(回収工程)
クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックスからクロロプレン系ブロック共重合体を回収する方法については、特に限定はなく、凝固液に浸漬して回収する方法、メタノール等の貧溶媒により析出させる方法等、公知の方法を用いることができる。
【0039】
クロロプレン系ブロック共重合体は、下記化学式(1)、又は化学式(2)で表される構造の官能基を有することが好ましい。
【0040】
【化3】
(化学式(1)中、Rは水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、メルカプト基又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を表す。)
【化4】
【0041】
上記化学式(1)、又は化学式(2)で表される末端構造は、公知のRAFT剤の存在下で乳化重合を行うことで、ブロック共重合体に導入される。上記化学式(1)で表される構造を導く化合物は特に限定されるものではなく一般的な化合物を使用することができ、例えばジチオカルバメート類、ジチオエステル類が挙げられる。具体的にはベンジル1-ピロールカルボジチオエート(慣用名:ベンジル1-ピロールジチオカルバメート)、ベンジルフェニルカルボジチオエート、1-ベンジル-N,Nジメチル-4-アミノジチオベンゾエート、1-ベンジル-4-メトキシジチオベンゾエート、1-フェニルエチルイミダゾールカルボジチオエート(慣用名:1-フェニルエチルイミダゾールジチオカルバメート)、ベンジル-1-(2-ピロリジノン)カルボジチオエート)(慣用名:ベンジル-1-(2-ピロリジノン)ジチオカルバメート)、ベンジルフタルイミジルカルボジチオエート、(慣用名:ベンジルフタルイミジルジチオカルバメート)、2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート、(慣用名:2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート)、2-シアノブト-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート、(慣用名:2-シアノブト-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート)、ベンジル-1-イミダゾールカルボジチオエート、(慣用名ベンジル-1-イミダゾールジチオカルバメート)、2-シアノプロプ-2-イル-N,N-ジメチルジチオカルバメート、ベンジル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、シアノメチル-1-(2-ピロリドン)ジチオカルバメート、2-(エトキシカルボニルベンジル)プロプ-2-イル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、1-フェニルエチルジチオベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イルジチオベンゾエート、1-酢酸-1-イル-エチルジチオベンゾエート、1-(4-メトキシフェニル)エチルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、エトキシカルボニルメチルジチオアセタート、2-(エトキシカルボニル)プロプ-2-イルジチオベンゾエート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート、tert-ブチルジチオベンゾエート、2,4,4-トリメチルペンタ-2-イルジチオベンゾエート、2-(4-クロロフェニル)-プロプ-2-イルジチオベンゾエート、3-ビニルベンジルジチオベンゾエート、4-ビニルベンジルジチオベンゾエート、ベンジルジエトキシホスフィニルジチオフォルマート、tert-ブチルトリチオペルベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、ナフタレン-1-カルボン酸-1-メチル-1-フェニル-エチルエステル、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸、ジベンジルテトラチオテレフタラート、カルボキシメチルジチオベンゾエート、ジチオベンゾエート末端基を持つポリ(酸化エチレン)、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸末端基を持つポリ(酸化エチレン)、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]プロパン酸、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]コハク酸、3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエートカリウム、シアノメチル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル-(フェニル)ジチオカルバメート、ベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルメチル-4-クロロジチオベンゾエート、4-ニトロベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、1-シアノ-1-メチルエチル-4-クロロジチオベンゾエート、3-クロロ-2-ブテニル-4-クロロジチオベンゾエート、2-クロロ-2-ブテニルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、3-クロロ-2-ブテニル-1H-ピロール-1-ジチオカルボン酸、2-シアノブタン-2-イル4-クロロ-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエートが挙げられる。これらのなかでも特に好ましくは、ベンジル1-ピロールカルボジチオエート、ベンジルフェニルカルボジチオエートが用いられる。上記化学式(2)で表される構造を導く化合物は、特に限定されるものではなく一般的な化合物を使用することができ、例えば、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナート、ジベンジルトリチオカルボナート、ブチルベンジルトリチオカルボナート、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]-2-メチルプロピオン酸、2,2′-[カルボノチオイルビス(チオ)]ビス[2-メチルプロピオン酸]、2-アミノ-1-メチル-2-オキソエチルブチルトリチオカルボナート、ベンジル2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-メチル-2-オキソエチルトリチオカルボナート、3-[[[(tert-ブチル)チオ]チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、シアノメチルドデシルトリチオカルボナート、ジエチルアミノベンジルトリチオカルボナート、ジブチルアミノベンジルトリチオカルボナートなどのトリチオカルボナート類が挙げられる。これらのなかでも特に好ましくは、ジベンジルトリチオカルボナート、ブチルベンジルトリチオカルボナートが用いられる。
【0042】
[トルエン不溶分]
本実施形態のクロロプレン系ブロック共重合体のトルエン不溶分は、クロロプレン系ブロック共重合体100質量%に対して20~100質量%の範囲となる。トルエン不溶分が20質量%以上である場合に、ブロック共重合体同士が化学結合している構造を含むため、切断時引張強さが向上する。トルエン不溶分は、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、本明細書においてトルエン不溶分とは、凍結乾燥させたクロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックスをトルエンで溶解し、遠心分離の後に200メッシュ金網を用いてゲル分を分離し乾燥させた重量を測定し、以下の計算式から求められる。
(ゲル分を分離し乾燥させて得られた固体の重量)/(クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックスを凍結乾燥させて得られた固体の重量)×100
トルエン不溶分は、クロロプレン系ブロック共重合体重合時の原料の配合の種類及び量、並びに重合条件を制御し、重合体ブロックの種類及び量、例えば、RAFT剤等に由来する官能基の種類・量・構造を制御することによって調整することができる。
【0043】
<ラテックス>
本実施形態に係るラテックスは、クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックスである。本ラテックスは、凝固液に浸漬して成形することで浸漬成形体を得ることができる。当該浸漬成形体は、手袋、風船、カテーテル及び長靴等に好適に用いることができる。
【0044】
本実施形態のラテックスは、上記クロロプレン系ブロック共重合体の製造方法で述べた乳化重合で合成した重合終了時の液をそのままラテックスとして使用する方法、又は回収したクロロプレン系ブロック共重合体を、乳化剤を用いて強制的に乳化させてラテックスを得る方法等により得ることができるが、乳化重合で合成した重合終了時の液をそのままラテックスとして使用する方法が、簡便にラテックスを得ることができるため好適である。
【0045】
<ラテックス組成物・ゴム組成物>
本実施形態に係るラテックス組成物は、クロロプレン系ブロック共重合体を含む。また、本実施形態に係るゴム組成物は、クロロプレン系ブロック共重合体を含むゴム組成物である。クロロプレン系ブロック共重合体以外の原料は特に限定されず、目的や用途に応じて適宜選択することができる。クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックス組成物・ゴム組成物に含有されうる原料としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、充填剤又は補強剤、可塑剤、加工助剤や滑剤、老化防止剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0046】
本実施形態のラテックス組成物・ゴム組成物は、加硫剤又は加硫促進剤を含んでもよい。本発明の一実施形態に係るラテックス組成物・ゴム組成物が加硫剤及び/又は加硫促進剤を含む場合、ラテックス組成物・ゴム組成物を100質量%としたとき、加硫剤及び加硫促進剤の合計含有率を5質量%以下とすることができ、1質量%以下とすることがより好ましく、0.1質量%とすることがより好ましい。しかしながら、本実施形態のクロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックス組成物・ゴム組成物は、加硫を行わなくとも十分な機械的強度が発現する。このため、アレルギーの低減及びコストダウンの観点から、加硫剤及び加硫促進剤を含まないものが好ましい。
【0047】
耐熱性を向上させる老化防止剤として、通常のゴム用途に使用されている、ラジカルを捕捉して自動酸化を防止する一次老化防止剤と、ハイドロパーオキサイドを無害化する二次老化防止剤を添加することができる。それらの老化防止剤はラテックス組成物、及びゴム組成物中のラテックス成分100質量部に対して、それぞれ0.1質量部以上10質量部以下の割合で添加することができ、好ましくは2質量部以上5質量部以下の範囲である。これらの老化防止剤は単独使用のみならず2種以上を併用することも可能である。なお、一次老化防止剤の例としては、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、アクリレート系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、ワックスを挙げることができる。また、二次老化防止剤として、リン系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤などを挙げることができる。老化防止剤の例として特に限定するものではないが、N-フェニル-1-ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N'-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N'-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N'-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4'-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、7-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス-[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)-ヒドロシンナアミド、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-ホスホネート-ジエチルエステル、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメイト)]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル及び3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(ノニル・フェニル)フォスファイト、トリス(混合モノ-及びジ-ノニルフェニル)フォスファイト、ジフェニル・モノ(2-エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニル・モノトリデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソオクチル・フォスファイト、ジフェニル・ノニルフェニル・フォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)フォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルフォスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4'-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチル-ジ-トリデシルフォスファイト)、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)フルオロフォスファイト、4,4'-イソプロピリデン-ジフェノールアルキル(C12~C15)フォスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-フェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルフォスファイト)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジブチルハイドロゲンフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトール・ジフォスファイト及び水添ビスフェノールAペンタエリスリトールフォスファイトポリマー、2-メルカプトベンゾイミダゾール、p-クレソールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物などが挙げられる。
【0048】
上記ゴム組成物は、公知の機械や装置を用いて常法に従って製造することができる。
【実施例
【0049】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明を説明するが、これらは何れも例示的なものであって本発明の内容を限定するものではない。
【0050】
(実施例1)
(重合工程1)重合体ブロック(A-1)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水5450g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)262g、水酸化カリウム42.5g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)21.8g、スチレン単量体2500g、ブチルベンジルトリチオカルボナート43.3gを仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬社製、商品名:VA-044)27.3g添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程2に使用した。
【0051】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥して重合体ブロック(A-1)のサンプルを得た。得られたサンプルより重合体ブロック(A)の数平均分子量、分子量分布、及びガラス転移温度を分析により求めた。分析結果を表1に示す。なお、「数平均分子量」、「分子量分布」、「ガラス転移温度」の測定方法については後述する。
【0052】
(重合工程2)クロロプレン系重合体ブロック(B-1)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水2732g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)131g、水酸化カリウム21.3g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)10.9g、重合工程1で作製した重合体ブロック(A-1)を含むラテックス783gを仕込み、内温45℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。その後クロロプレン単量体3000gを2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。
【0053】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥してクロロプレン系ブロック共重合体のサンプルを得た。得られたサンプルよりクロロプレン系ブロック共重合体の重合体ブロック(A-1)とクロロプレン系重合体ブロック(B-1)の含有量(質量%)を分析により求めた。分析結果を表1に示す。なお、測定方法については後述する。また、サンプリングしたラテックスよりトルエン不溶分を求めた。分析結果を表1に示す。なお測定方法については後述する。
【0054】
(実施例2)
(重合工程1)重合体ブロック(A-2)の合成
実施例1と同様の手順で重合を行い、重合体ブロック(A-2)を合成した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程2に使用した。重合体ブロック(A-2)の数平均分子量、分子量分布、及びガラス転移温度を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0055】
(重合工程2)クロロプレン系重合体ブロック(B-2)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水2950g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)142g、水酸化カリウム23g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)11.8g、重合工程1で作製した重合体ブロック(A-2)を含むラテックス448gを仕込み、内温45℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。その後クロロプレン単量体3000gを2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。クロロプレン系ブロック共重合体の重合体ブロック(A-2)とクロロプレン系重合体ブロック(B-2)の含有量(質量%)とトルエン不溶分を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0056】
(実施例3)
(重合工程1)重合体ブロック(A-3)の合成
実施例1と同様の手順で重合を行い、重合体ブロック(A-3)を合成した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程2に使用した。重合体ブロック(A-3)の数平均分子量、分子量分布、及びガラス転移温度を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0057】
(重合工程2)クロロプレン系重合体ブロック(B-3)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水2334g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)112g、水酸化カリウム18.2g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)9.3g、重合工程1で作製した重合体ブロック(A-3)を含むラテックス1392gを仕込み、内温45℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。その後クロロプレン単量体3000gを2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。クロロプレン系ブロック共重合体の重合体ブロック(A-3)とクロロプレン系重合体ブロック(B-3)の含有量(質量%)とトルエン不溶分を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0058】
(実施例4)
(重合工程1)重合体ブロック(A-4)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水5450g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)262g、水酸化カリウム42.5g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)21.8g、スチレン単量体2500g、ブチルベンジルトリチオカルボナート32.5gを仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬社製、商品名:VA-044)20.5g添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程2に使用した。重合体ブロック(A-4)の数平均分子量、分子量分布、及びガラス転移温度を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0059】
(重合工程2)クロロプレン系重合体ブロック(B-4)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水1188g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)57g、水酸化カリウム9.3g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)4.8g、重合工程1で作製した重合体ブロック(A-4)を含むラテックス3147gを仕込み、内温45℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。その後クロロプレン単量体3000gを2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。クロロプレン系ブロック共重合体の重合体ブロック(A-4)とクロロプレン系重合体ブロック(B-4)の含有量(質量%)とトルエン不溶分を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0060】
(実施例5)
(重合工程1)重合体ブロック(A-5)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水5450g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)262g、水酸化カリウム42.5g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)21.8g、メチルメタクリレート単量体2500g、ブチル-2-シアノイソプロピルトリチオカルボネート29.6gを仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬社製、商品名:VA-044)20.5g添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程2に使用した。重合体ブロック(A-5)の数平均分子量、分子量分布、及びガラス転移温度を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0061】
(重合工程2)クロロプレン系重合体ブロック(B-5)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水2732g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)131.14g、水酸化カリウム21.3g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)10.9g、重合工程1で作製した重合体ブロック(A-5)を含むラテックス783gを仕込み、内温45℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。その後クロロプレン単量体3000gを2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。クロロプレン系ブロック共重合体の重合体ブロック(A-5)とクロロプレン系重合体ブロック(B-5)の含有量(質量%)とトルエン不溶分を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
(重合工程1)重合体ブロック(A-6)の合成
実施例1と同様の手順で重合を行い、重合体ブロック(A-6)を合成した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程2に使用した。重合体ブロック(A-6)の数平均分子量、分子量分布、及びガラス転移温度を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0063】
(重合工程2)クロロプレン系重合体ブロック(B-6)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水3036g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)146g、水酸化カリウム23.7g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)12.2g、重合工程1で作製した重合体ブロック(A-6)を含むラテックス316.5gを仕込み、内温45℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。その後クロロプレン単量体3000gを2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。クロロプレン系ブロック共重合体の重合体ブロック(A-6)とクロロプレン系重合体ブロック(B-6)の含有量(質量%)とトルエン不溶分を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
(重合工程1)重合体ブロック(A-7)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水5450g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)262g、水酸化カリウム42.5g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)21.8g、スチレン単量体2500g、ブチルベンジルトリチオカルボナート21.4gを仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬社製、商品名:VA-044)13.5g添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程2に使用した。重合体ブロック(A-7)の数平均分子量、分子量分布、及びガラス転移温度を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0065】
(重合工程2)クロロプレン系重合体ブロック(B-7)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水747g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)36g、水酸化カリウム5.8g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)3.0g、重合工程1で作製した重合体ブロック(A-7)を含むラテックス3822.9gを仕込み、内温45℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。その後クロロプレン単量体3000gを2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。クロロプレン系ブロック共重合体の重合体ブロック(A-7)とクロロプレン系重合体ブロック(B-7)の含有量(質量%)とトルエン不溶分を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0066】
(比較例3)
クロロプレン系重合体ブロック(B-8)のみの共重合体の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水3600g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)175g、水酸化カリウム28.4g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)16.0g、クロロプレン単量体4000g、ブチルベンジルトリチオカルボナート4.72gを仕込み、内温45℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬社製、商品名:VA-044)2.96g添加して重合を開始した。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。トルエン不溶分を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0067】
(比較例4)
(重合工程1)重合体ブロック(A-9)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水4616g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)206g、水酸化カリウム2.3g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)46.2g、スチレン単量体462g、ブチルベンジルトリチオカルボナート9.2gを仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬社製、商品名:VA-044)6.0g添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程2に使用した。重合体ブロック(A-9)の数平均分子量、分子量分布、及びガラス転移温度を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0068】
(重合工程2)クロロプレン系重合体ブロック(B-9)の合成
重合工程1の後、内温が45℃まで下がったところで、クロロプレン単量体4154gを2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。クロロプレン系ブロック共重合体の重合体ブロック(A-9)とクロロプレン系重合体ブロック(B-9)の含有量(質量%)とトルエン不溶分を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0069】
(比較例5)
(重合工程1)重合体ブロック(A-10)の合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水4616g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)206g、水酸化カリウム2.3g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)46.2g、スチレン単量体692g、ブチルベンジルトリチオカルボナート9.2gを仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬社製、商品名:VA-044)6.0g添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程2に使用した。重合体ブロック(A-10)の数平均分子量、分子量分布、及びガラス転移温度を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0070】
(重合工程2)クロロプレン系重合体ブロック(B-10)の合成
重合工程1の後、内温が45℃まで下がったところで、クロロプレン単量体3924gを2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。クロロプレン系ブロック共重合体の重合体ブロック(A-10)とクロロプレン系重合体ブロック(B-10)の含有量(質量%)とトルエン不溶分を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0071】
(比較例6)
トリブロック共重合体の合成
(第1ブロックの合成)
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水4613g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)204.4g、水酸化カリウム2.3g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)46.1g、スチレン単量体230g、ベンジル1-ピロールカルボジチオエート9.2gを仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬社製、商品名:VA-044)6.0g添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは次の重合工程に使用した。第1ブロックの数平均分子量、分子量分布、及びガラス転移温度を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表2に示す。
(第2ブロックの合成)
第1ブロックの合成の後、内温が45℃まで下がったところで、クロロプレン単量体4424gを添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。得られたラテックスを用いて次の重合工程に使用した。
(第3ブロックの合成)
第2ブロックの合成の後、内温を80℃まで昇温にし、スチレン単量体230gを仕込み、重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬社製、商品名:VA-044)6.0g添加して重合を開始した。重合を行った後、25℃まで冷却し重合を停止した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。合成したトリブロック共重合体の第1ブロックと第3ブロックであるスチレンブロックと、第2ブロックであるクロロプレンブロックの含有量(質量%)とトルエン不溶分を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表2に示す。
【0072】
(比較例7)
重合体ブロック(A)の単独重合体とクロロプレン系重合体ブロック(B)の単独重合体の混合物の作製
(重合体ブロック(A)の単独重合体の合成)
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水4666g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)224g、水酸化カリウム36.4g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)18.7g、スチレン単量体350g、ブチルベンジルトリチオカルボナート6.07gを仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬社製、商品名:VA-044)3.82gを添加して重合を開始した。スチレン単量体の重合率95%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させた。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングした。重合体ブロック(A)の単独重合体の数平均分子量、分子量分布、及びガラス転移温度を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表3に示す。
【0073】
(クロロプレン系重合体ブロック(B)の単独重合体の合成)
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水3960g、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成社製)193g、水酸化カリウム31.2g、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名:デモールN)17.6g、クロロプレン単量体4400g、1.9-ノナンジオールジメタクリレート89.8g、ブチルベンジルトリチオカルボナート5.19gを仕込み、内温45℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬社製、商品名:VA-044)3.26g添加して重合を開始した。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。
【0074】
(重合体ブロック(A)の単独重合体ラテックスとクロロプレン系重合体ブロック(B)の単独重合体ラテックスの混合)
得られた重合体ブロック(A)の単独重合体ラテックス4000gとクロロプレン系重合体ブロック(B)の単独重合体のラテックス4000gを容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブに仕込み、内温45℃にして200rpmで攪拌した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを用いて評価用のフィルム作製を行った。混合して得られるポリマー中の重合体ブロック(A)の単独重合体とクロロプレン系重合体ブロック(B)の単独重合体の含有量(質量%)とトルエン不溶分を実施例1と同様に分析により求めた。分析結果を表3に示す。
【0075】
[分析]
(重合体ブロック(A)の数平均分子量及び分子量分布測定)
数平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値であり、下記記載の測定条件における測定値である。
装置名:HLC-8320(東ソー社製)
カラム:TSKgel GMHHR-Hを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
検量線:標準ポリスチレン(PS)を用いて作製した。
【0076】
(重合体ブロック(A)のガラス転移温度)
ガラス転移温度は、JIS K 7121に準拠して示差走査熱量計を用い、以下の方法で測定した。
装置名:DSC1(Mettler Toledo社製)
手順:50ml/minの窒素気流下で、昇温速度10℃/minで120℃まで昇温して、10分間120℃に保った後、-60℃まで冷却し、昇温速度10℃/minで120℃まで昇温して得られたDSC曲線から、高温側のペースラインを低温側に延長した直線と、ピークの高温側の曲線にこう配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0077】
(クロロプレン系ブロック共重合体の重合体ブロック(A)とクロロプレン系重合体ブロック(B)の含有量測定)
熱分解ガスクロマトグラムと1H-NMRを用い、以下の方法で測定した。
熱分解ガスクロマトグラム 装置名:HP5890-II
カラム:DB-5 0.25mmφ×30m(膜厚1.0μm)
カラム温度:50℃(5min)→10℃/min→150℃→25℃/min→300℃
注入口温度:250℃
検出器温度:280℃
検出器:FID
1H-NMR 装置名:JNM-ECX-400(日本電子社製)
手順:重合体ブロック(A)とクロロプレン系重合体ブロック(B)からなるクロロプレン系ブロック共重合体を熱分解ガスクロマトグラムで測定し、重合体ブロック(A)由来のピークとクロロプレン系重合体ブロック(B)由来のピークの面積比と、1H-NMRを測定して得られたクロロプレン系ブロック共重合体中の重合体ブロック(A)とクロロプレン系重合体ブロック(B)の含有量から検量線を作成した。サンプリングしたラテックスをメタノールに混合して析出したクロロプレン系ブロック共重合体のサンプルを熱分解ガスクロマトグラムで測定し、重合体ブロック(A)由来のピークとクロロプレン系重合体ブロック(B)由来のピークの面積比から、上記で作成した検量線を用いてクロロプレン系ブロック共重合体中の重合体ブロック(A)とクロロプレン系重合体ブロック(B)の含有量を求めた。
【0078】
[引張試験用サンプルの作製]
(クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックスの調製)
重合工程2で得られたラテックス中のクロロプレン系ブロック共重合体100質量部(固形分換算)に対して、老化防止剤としてp-クレソールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物(商品名「ノクラックPBK」、大内新興化学工業株式会社製)2質量部、ラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール10」、花王株式会社製)0.3質量部、及び水を加えて配合物の固形分濃度が30質量%になるように調製し、陶器製ボールミルを用いて、20℃で16時間混合し、調製した。
(フィルムの作製)
外径50mmの陶器製の筒を、水62質量部、硝酸カリウム四水和物35質量部、及び炭酸カルシウム3質量部を混合した凝固液に1秒間浸して取り出した。4分間乾燥させた後、上記で調製したラテックスに2分間浸した。その後45℃の流水で1分間洗浄し、130℃で30分間加熱して水分を除去し、引張試験用のフィルム(140×150mm、厚み:0.2mm)を作製した。
【0079】
[引張特性の評価]
作製したフィルムを、130℃で30分間熱処理した後にJIS K 6251に準拠して500%伸長時モジュラス、切断時引張強さ及び切断時伸びを測定した。500%伸長時モジュラスは3.0MPa以下、切断時引張強さは17MPa以上、切断時伸びは900%以上を合格とした。
【0080】
[トルエン不溶分の測定]
重合工程2で得られたラテックスを凍結乾燥させて得られた固形分1gを2mm角に裁断し、コニカルビーカーに入れてトルエンで16時間溶解した。その後、遠心分離し、さらに200メッシュ金網を用いてゲル分を分離し、乾燥させた重量を測定して以下の式からトルエン不溶分を算出した。
(ゲル分を分離し乾燥させて得られた固体の重量)/(クロロプレン系ブロック共重合体を含むラテックスを凍結乾燥させて得られた固体の重量)×100
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
実施例1~5については、いずれも加硫剤や加硫促進剤を使用しなくても、500%伸長時モジュラス3.0MPa以下で柔軟性に優れ、切断時引張強さ17MPa以上、切断時伸び900%以上であり、引張特性に優れていた。一方、比較例1~7については、柔軟性及び引張特性のうちいずれかの物性において劣るものであった。